説明

太陽電池用基板の洗浄方法

【課題】基板の中間取扱い過程で発生しうる基板の汚染や破損などの発生を最小化し、基板に残留する汚染を有効に除去すること。
【解決手段】(S11)スライシング機にぶら下げて装着された太陽電池基板製造用インゴットを、切削油を供給しながら複数枚の薄片化された基板にスライシングし、垂直下方に平行にぶら下げられた状態の前記複数枚の薄片化された基板を洗浄機内に据え置く段階;(S12)上記垂直に据え置かれた薄片化された基板のスライスされた面の上に残存する切削油を除去する段階;(S13)上記薄片化された基板表面の洗浄力向上のためにその表面を活性化する段階;及び(S14)上記表面活性化された基板に対して化学的エッチングを行う段階;を含むことを特徴とする太陽電池用基板の洗浄方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池用基板の洗浄方法に関するものであって、さらに詳しくは、スライスされた基板を分離して移送するのではなく、スライシング機に安着された状態で直に洗浄工程を行うことで、中間取扱い過程で基板が割れたり、他の汚染源により汚染されることを防止したりして、基板の歩留りを高めることができる太陽電池用基板の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池用基板として活用するためには、インゴット状から薄片を製造するためのスライシング工程が必須である。このようなスライシング工程においては、切削機(スライシング機)の切削ブレードがインゴットと接するとき、有効に切削されるように切削油を使用している。このような切削油は、脂溶性と水溶性とに区分されるが、最近は環境問題などにより、脂溶性切削油よりは水溶性切削油が選好されている。
【0003】
なお、このような切削油はスライスされた基板の表面に残留し、切削過程に使用されたスラリーが基板の表面にくっつく現象が発生する。従って、これらスライスされた基板の表面に残留する多くの汚染物質を除去する洗浄作業を行わなければ、太陽電池用基板として使うことができない。もし、このような洗浄作業が不十分になされた状態で太陽電池用基板に用いれば、太陽電池の性能低下を惹起する重大な要因として働くようになる。従って、スライシング工程を行った後、スライスされた基板の洗浄作業は必須である。特に、基板が薄型化されるにつれて、スライスされた基板と隣接した基板との間により多くのスラリーが残留するようになり、基板の表面にも汚染物質がくっついて染みが形成されたりする。このような染みは太陽電池製造工程の中で反射防止膜を成膜する場合、色相変化を引き起こす原因として働き、最終的には太陽電池の品質を低下させ望ましくない。
【0004】
一方、スライスされた基板の洗浄工程などを行うためには、スライシング機から基板一つ一つを分離して図1に示したカセットなどに基板を搭載して運搬するなどの中間取扱い過程が必要である。
【0005】
しかし、かかる取扱い過程では、基板が割れたり、追加的な汚染源に露出しうる。また基板一つ一つをカセットなどに移送するなどの作業を行わなければならないので、インゴット一つ当たりの基板数が数百枚である場合には作業効率性が下がる短所が指摘されている。また、基板が薄型化されるにつれて、中間取扱いにおける損傷率がさらに増大しうるので、このような中間取扱い過程での様々な問題を有効に解決することが要求されている。
【0006】
現在まで、スライスされた基板の取扱い過程で発生しうる基板の割れや汚染問題を最小化しながらも、作業効率を高め、スライシング過程で発生するスラリーや汚れなどを基板から有効に除去するための努力が関連業界で倦まず弛まなく行われてきた。本発明は上述した技術的背景の下で案出された。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、スライスされた基板には各種の汚染物質が残留したり染みが発生したりするため、これを除去するための洗浄工程が必要である。ところが、このような洗浄工程を行うため、カセットのような基板運搬手段を通じて移送して別途の洗浄システムに搭載した後洗浄工程を行うための中間取扱い過程において、薄片化された基板が割れたり追加的に汚染されたりする問題が発生しうる。従って、本発明が解決しようとする技術的課題は、基板の中間取扱い過程で発生しうる基板の汚染や破損などの発生を最小化し、基板に残留する汚染を有効に除去することにある。本発明は、このような技術的課題を解決することができる太陽電池用基板の洗浄方法を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明が解決しようとする技術的課題の達成のために提供される本発明による太陽電池用基板の洗浄方法は、(S11)スライシング機にぶら下げて装着された太陽電池基板製造用インゴットを、切削油を供給しながら複数枚の薄片化された基板にスライシングし、垂直下方に平行にぶら下げられた状態の前記複数枚の薄片化された基板を洗浄機内に据え置く段階;(S12)上記垂直に据え置かれた薄片化された基板のスライスされた面の上に残存する切削油を除去する段階;(S13)上記薄片化された基板表面の洗浄力向上のためにその表面を活性化する段階;及び(S14)上記表面活性化された基板に対して化学的エッチングを行う段階;を含むことを特徴とする。
【0009】
上記(S11)段階で使用された切削油は、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコール(PPG)であることが望ましい。上記(S12)段階は、2kgf/cm〜3kgf/cmの圧力を持つ純水(DI water)を上記垂直に据え置かれた薄片化された基板の上部から下部へと噴射するスプレー方法、水中で下部から空気を注入するバブリング(bubbling)方法、洗浄機の下部に超音波を印加して異物を除去する方法、及び上記洗浄機の内部に据え置かれた上記薄片化された基板を攪拌する方法のうち一つまたは二つ以上の方法を用いて行うことが望ましい。上記(S13)段階は、シリコン成分を含むアルカリ性界面活性剤を40℃〜80℃の温度条件の下で上記薄片化された基板の表面に処理する方法で行うことが望ましい。上記(S14)段階の化学的エッチングは、5重量%〜80重量%の水酸化ナトリウム、10重量%〜13重量%の過酸化水素、及び残部純水からなるエッチング液を用いて行うことが望ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳しく説明するために実施例を挙げて説明し、発明に対する理解を助けるために添付図面を参照しながら詳しく説明する。しかし、本発明による実施例は種々の形態に変形されることができ、本発明の範囲が以下で詳述する実施例に限定されるものとして解釈されてはいけない。本発明の実施例は当業界で平均的な知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0011】
図2は、本発明に従って太陽電池用基板をスライスした後、その状態で洗浄工程を行う装置に関する写真であり、図3は、本発明による太陽電池用基板を洗浄する方法を説明するための工程フロー図である。
【0012】
図2から確認できるように、本発明は、太陽電池基板製造用インゴットをスライスした後、これを別途の手段、例えば、図1を参照して説明したような基板カセットなどに収納して洗浄装置へ運んで洗浄するのではなく、太陽電池基板製造用インゴットのスライシングがなされたその状態で直に洗浄作業が行われるようにすることに特徴がある。このような工程単純化を通じて、シリコン基板からスライスする際に使われた切削油を除去するための別途の洗浄システム内への運搬、取り扱う過程で発生する基板の割れやその他の汚染などの問題が解消できるので、基板の歩留りを向上させる長所がある。特に、シリコン基板の薄型化につれて、中間取扱い過程での歩留り低下の様々な要因が介在しうるところ、本発明は工程や取扱いの単純化により根本的にこのような問題を解決することができ、作業効率が向上する長所を持っている。
【0013】
図3において、本発明は、まず、スライシング機にぶら下げて装着された太陽電池基板製造用インゴットを、切削油を供給しながら複数枚の薄片化された基板にスライシングし、垂直下方に平行にぶら下げられた状態の前記複数枚の薄片化された基板を洗浄機内に据え置く段階(S11)、上記垂直に据え置かれた薄片化された基板のスライスされた面の上に残存する切削油を除去する段階(S12)、上記薄片化された基板表面の洗浄力向上のためにその表面に活性化する段階(S13)、及び上記表面活性化された基板に対して化学的エッチングを行う段階(S14)を含んで行う。
【0014】
上記(S11)段階で使用された切削油はポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコール(PPG)であることが望ましく、本発明による実施例においてはポリエチレングリコール(PEG)を使用した。
【0015】
上記(S12)段階は、2kgf/cm〜3kgf/cmの圧力を持つ純水を上記垂直に据え置かれた薄片化された基板の上部から下部へと噴射するスプレー方法、水中で下部から空気を注入するバブリング方法、洗浄機の下部に超音波を印加して異物を除去する方法及び洗浄機の内部に据え置かれた上記薄片化された基板を攪拌する方法のうち一つまたは二つ以上の方法で行えば、上記薄片化された基板のスライスされた面の上に残存する切削油を有効に除去することができる。本発明による実施例においては、ポリエチレングリコール(PEG)切削油を適用して基板をスライスし、2kgf/cmの噴射圧力を有する純水を用いて切削油を除去する工程を行った。上記噴射圧力の数値範囲に関して、上記下限に達していなければ、切削油の洗浄が十分になされないため望ましくなく、上記上限を超えれば、薄片化された基板に物理的な衝撃が加えられて物理的損傷が発生しうるため望ましくない。このように、上記(S11)段階の以後に薄片化された基板をスライシング機から分離しない状態で連続的に上記(S12)段階を行うことで、従来のように別途のカセット方式を用いた洗浄方法で発生する諸問題を解決することができる。
【0016】
上記(S13)段階において、シリコン(Si)成分を含むアルカリ性界面活性剤を上記薄片化された基板の表面に処理することで、上記薄片化された基板表面が活性化され洗浄力が向上する。このとき、上記アルカリ性界面活性剤としては、水酸化ナトリウム(NaOH)系、水酸化カリウム(KOH)系などを使用することができ、これらアルカリ性界面活性剤の濃度は、10重量%〜50重量%であり、このときの温度条件は、40℃〜80℃を維持することが望ましい。本発明による実施例においては、その濃度が20重量%である水酸化ナトリウムを60℃内外の温度条件の下で表面処理した。
【0017】
上記(S14)段階の化学的エッチングは、5重量%〜80重量%の水酸化ナトリウム、10重量%〜13重量%の過酸化水素、及び残部純水からなるエッチング液を用いて行えば、基板表面に発生した染みを有効に除去することができる。本発明による実施例においては、45重量%の水酸化ナトリウム、10重量%の過酸化水素、及び残部純水からなるエッチング液が使用された。
【0018】
上記エッチング液に含まれる水酸化ナトリウムの含量の数値範囲に関して、上記下限に達していなければ、シリコン基板の表面を有効にエッチングできないため望ましくなく、上記上限を超えれば、シリコン基板の表面が過度にエッチングされて染みが発生し得るため望ましくない。上記エッチング液に含まれる過酸化水素の含量の数値範囲に関して、上記下限に達していなければ、エッチング液が十分混ざらないため望ましくなく、上記上限を超えれば、基板の表面が過度に活性化されるため望ましくない。
【0019】
図4は、基板に対する洗浄工程が十分なされなくて表面に染みが形成されたことを示す写真であり、図5は、図4に示した基板表面の染みが、本発明による化学的エッチングにより完全に除去された結果を示す写真である。
【0020】
図4から確認できるように、基板のスライシング及び洗浄工程を一部行っても染みが形成され得るが、上述した上記(S14)段階の化学的エッチングを行えば、図5のように、基板の表面に形成された染みをきれいに除去することができる。
【0021】
以上のように、本発明の最適な実施例が開示された。ここで特定の用語が使われたが、これはただ当業者に本発明を詳しく説明するための目的で使われたものであって、意味限定や特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を制限するために使われたものではない。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明によれば、太陽電池用基板をスライスした後直にその状態で洗浄工程を行うことで、基板の中間取扱い過程で発生し得る基板の割れや追加的な汚染の問題を最小化することができ、基板の間に存在するスラリーと基板面上の各種の染みを有効に除去することができる。
【0023】
本明細書に添付される下記の図面は本発明の望ましい実施例を例示するものであって、発明の詳細な説明とともに本発明の技術思想をさらに理解させる役割を果たすものであるため、本発明はそのような図面に記載された事項にのみ限定されて解釈されてはいけない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来の方法に従ってスライスされた基板が中間取扱いによりカセットに搭載された状態を示す写真である。
【図2】本発明に従って太陽電池用基板をスライスした後、その状態で直に洗浄工程を行う装置に関する写真である。
【図3】本発明による太陽電池用基板を洗浄する方法を説明するための工程フロー図である。
【図4】基板に対する洗浄工程が十分なされなくて表面に染みが形成された状態を示す写真である。
【図5】図4に示されている基板表面の染みが本発明による化学的エッチングを行って完全に除去された結果を示す写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池用基板を洗浄する方法において、
(S11)スライシング機にぶら下げて装着された太陽電池基板製造用インゴットを、切削油を供給しながら複数枚の薄片化された基板にスライシングし、垂直下方に平行にぶら下げられた状態の前記複数枚の薄片化された基板を洗浄機内に据え置く段階;
(S12)上記垂直に据え置かれた薄片化された基板のスライスされた面の上に残存する切削油を除去する段階;
(S13)上記薄片化された基板表面の洗浄力向上のためにその表面を活性化する段階;及び
(S14)上記表面活性化された基板に対して化学的エッチングを行う段階;を含むことを特徴とする太陽電池用基板の洗浄方法。
【請求項2】
上記(S11)段階で使用された切削油は、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコール(PPG)であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池用基板の洗浄方法。
【請求項3】
上記(S12)段階は、2kgf/cm〜3kgf/cmの圧力を持つ純水(DI water)を上記垂直に据え置かれた薄片化された基板の上部から下部へと噴射するスプレー方法、水中で下部から空気を注入するバブリング(bubbling)方法、洗浄機の下部に超音波を印加して異物を除去する方法、及び上記洗浄機の内部に据え置かれた上記薄片化された基板を攪拌する方法のうち一つまたは二つ以上の方法で行うことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池用基板の洗浄方法。
【請求項4】
上記(S13)段階は、シリコン(Si)成分を含むアルカリ性界面活性剤を40℃〜80℃の温度条件で上記薄片化された基板の表面に処理する方法で行うことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池用基板の洗浄方法。
【請求項5】
上記(S14)段階の化学的エッチングは、5重量%〜80重量%の水酸化ナトリウム、10重量%〜13重量%の過酸化水素、及び残部純水からなるエッチング液を用いて行うことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池用基板の洗浄方法。


【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−166804(P2008−166804A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−337076(P2007−337076)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(501348265)シルトロン インク (27)
【Fターム(参考)】