説明

太陽電池用裏面保護シート

【課題】透過した太陽光線の反射率を高めることができるとともに、長期間にわたって高い反射率を維持することが可能な太陽電池用裏面保護シートを提供する。
【解決手段】太陽電池用裏面保護シート10は、耐候性樹脂層11と、耐候性樹脂層11の上に位置付けられて積層された白色ポリエチレンテレフタレート層14と、耐候性樹脂層11の上に位置付けられて積層されたシリコン酸化物蒸着層13と、シリコン酸化物蒸着層13の上に位置付けられて積層された、樹脂からなる球状粒子15aを含む球状粒子含有透明層15とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には、太陽電池モジュールの裏面側に配置される太陽電池用裏面保護シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールは、その性質上屋外に設置されることが多いので、太陽電池素子、電極、配線等を保護する目的で、表面側には、たとえば透明ガラス板が配置され、裏面側には、たとえば、アルミニウム箔と樹脂フィルムとの積層シート、または、樹脂フィルムの積層シート等が配置される。
【0003】
太陽電池モジュールの裏面側に配置される太陽電池用裏面保護シートは、バックシートとも呼ばれ、屋外に設置される太陽電池モジュールを保護するために耐候性や耐湿性が要求されている。
【0004】
また、裏面側まで透過した太陽光線を太陽電池素子の側に反射させて、その反射光を用いて変換効率を高めるという効果も裏面保護シートに期待されている。
【0005】
裏面保護シートとそれを備えた太陽電池モジュールの構造は、たとえば、特開2006−179557号公報(特許文献1)に記載されている。近年、小型化が進むにつれて、太陽電池モジュールに配列される多数個の太陽電池素子の間隔が狭くなってきている。このため、太陽電池素子間の隙間を通じて、太陽光線が裏面保護シートまで透過しにくくなっている。その結果、入射した太陽光線を効率的に発電に利用することができない。
【0006】
そこで、たとえば、特開2006−319250号公報(特許文献2)では、入射した太陽光線を効率的に利用して発電効率を促進するための太陽電池モジュール用バックシートの構造が提案されている。この太陽電池モジュール用バックシートは、一方の面に微細な凸部又は凹部を略均一に有する光拡散層と、反射性及びガスバリア性を有するアルミニウムの金属蒸着層とから構成されている。このように構成されたバックシートでは、バックシートまで透過した太陽光線を金属蒸着層の表面で反射させ、その反射光を光拡散層で拡散させて、乱反射させることによって、反射率を高め、入射した太陽光線を効率的に利用して発電効率を促進させている。
【特許文献1】特開2006−179557号公報
【特許文献2】特開2006−319250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のバックシートでは、反射光を効率的に用いて変換効率を高めることができるが、長期間の使用につれて、バックシート中の水分等に起因してアルミニウムの金属蒸着層が腐食により劣化し、変色することにより、反射率が低下する。すなわち、上記のバックシートは経時安定性に劣るという問題があった。
【0008】
そこで、この発明の目的は、透過した太陽光線の反射率を高めることができるとともに、長期間にわたって高い反射率を維持することが可能な太陽電池用裏面保護シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に従った太陽電池用裏面保護シートは、耐候性樹脂層と、この耐候性樹脂層の上に位置付けられて積層された白色ポリエチレンテレフタレート層と、耐候性樹脂層の上に位置付けられて積層されたシリコン酸化物蒸着層と、シリコン酸化物蒸着層の上に位置付けられて積層された、樹脂からなる球状粒子を含む球状粒子含有透明層とを備える。
【0010】
この発明の太陽電池用裏面保護シートにおいては、裏面保護シートまで透過した太陽光線がシリコン酸化物蒸着層の表面で反射し、その反射光は球状粒子含有透明層中の球状粒子の表面で拡散されて、乱反射する。これにより、透過した太陽光線の反射率を高めることができる。
【0011】
また、シリコン酸化物蒸着層は、アルミニウムの金属蒸着層よりも、裏面保護シート内の水分に対する耐性が高い。このため、裏面保護シート自体の耐候性を向上させることができるだけでなく、シリコン酸化物蒸着層が裏面保護シート内に存在する水分によって容易に腐食することがないので、長期間にわたって高い反射率を維持することができる。
【0012】
なお、白色ポリエチレンテレフタレート層は、高い白色度を有するので、裏面保護シートまで透過した太陽光線の反射率を高めることに寄与する。
【0013】
この発明の太陽電池用裏面保護シートにおいて、白色ポリエチレンテレフタレート層がシリコン酸化物蒸着層の上に積層され、球状粒子含有透明層が白色ポリエチレンテレフタレート層の上に積層されていてもよく、あるいは、シリコン酸化物蒸着層が白色ポリエチレンテレフタレート層の上に積層され、球状粒子含有透明層がシリコン酸化物蒸着層の上に積層されていてもよい。
【0014】
また、この発明の太陽電池用裏面保護シートにおいて、シリコン酸化物蒸着層は、ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面上に蒸着されることによって形成されていることが好ましい。
【0015】
さらに、この発明の太陽電池用裏面保護シートにおいて、耐候性樹脂層は、ポリエチレンナフタレートまたはフッ素樹脂のフィルムからなることが好ましい。
【0016】
この発明の太陽電池用裏面保護シートにおいて、球状粒子含有透明層は、平均粒径が4〜10μmの球状粒子を含む透明層であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
以上のようにこの発明によれば、透過した太陽光線の反射率を高めることができるとともに、長期間にわたって高い反射率を維持することが可能な太陽電池用裏面保護シートを得ることができるので、本発明の裏面保護シートを採用することにより、太陽電池モジュールの変換効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、この発明に従った一つの実施の形態としての太陽電池用裏面保護シートが適用される太陽電池モジュールの概略的な断面構造を示す図である。
【0019】
図1に示すように、太陽電池モジュール100には、多数個の太陽電池素子1が配列されている。これらの太陽電池素子1は電極2を介して相互に接続配線3によって電気的に接続され、太陽電池モジュール100全体としてはリード線4によって裏面側に端子5が取り出され、端子5は端子箱6に収納されている。エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂からなる充填材7が多数個の太陽電池素子1を封止するために配置されている。太陽電池モジュール100の受光面側に位置する充填材7の外表面には、透明ガラス層8が固着されている。太陽電池モジュール100の設置面側に位置する充填材7の外表面には、本発明の太陽電池用裏面保護シート10が固着されている。なお、太陽電池モジュール100の側面にはアルミニウム製枠部材9がシール材を介して取り付けられている。
【0020】
図2は、本発明の太陽電池用裏面保護シートの一つの実施の形態を示す断面図である。
【0021】
図2に示すように、太陽電池用裏面保護シート10は、耐候性樹脂層11と、耐候性樹脂層11の上に位置付けられて積層された白色ポリエチレンテレフタレート(PET)層14と、耐候性樹脂層11の上に位置付けられて積層されたシリコン酸化物蒸着層13と、シリコン酸化物蒸着層13の上に位置付けられて積層された、樹脂からなる球状粒子15aを含む球状粒子含有透明層15とを備える。この実施の形態では、白色ポリエチレンテレフタレート層14がシリコン酸化物蒸着層13の上に積層され、球状粒子含有透明層15が白色ポリエチレンテレフタレート層14の上に積層されている。シリコン酸化物蒸着層13は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム12の表面上に蒸着されることによって形成されている。
【0022】
図3は、本発明の太陽電池用裏面保護シートのもう一つの実施の形態を示す断面図である。
【0023】
図3に示すように、太陽電池用裏面保護シート20では、シリコン酸化物蒸着層13が白色ポリエチレンテレフタレート層14の上に積層され、球状粒子含有透明層15がシリコン酸化物蒸着層13の上に積層されている。シリコン酸化物蒸着層13は、ポリエチレンテレフタレートフィルム12の表面上に蒸着されることによって形成されている。その他の構成は、図2に示す太陽電池用裏面保護シート10と同様である。
【0024】
図2と図3に示す太陽電池用裏面保護シート10と20において、耐候性樹脂層11は、例えば、厚みが12〜50μmのポリエチレンナフタレート(PEN)、フッ素樹脂等のフィルムから形成される。白色ポリエチレンテレフタレート層14は、少なくとも一層の白色ポリエチレンテレフタレート層から構成され、例えば、酸化チタンを含有するポリエチレンテレフタレートのフィルムから形成され、厚みが38〜250μmである。シリコン酸化物蒸着層13は、少なくとも一層のシリコン酸化物蒸着層からなり、例えば、厚みが30〜80nmである。
【0025】
球状粒子含有透明層15は、塗布後の乾燥時の厚みが、例えば、0.3〜5μmである。球状粒子15aは、アクリルビーズからなるのが好ましい。球状粒子15aとして、アクリルビーズの代わりに、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、セルロースのビーズを用いてもよい。球状粒子15aの平均粒径は4〜30μmであることが好ましい。
【0026】
球状粒子含有透明層15は、例えば、球状粒子15aとしてアクリルビーズを、セルロース、ポリビニルブチラール、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリウレタン、アクリル、ポリエステル、ポリビニルアルコールなどのビヒクルを含む溶媒に、0.1〜50重量%の割合で分散させて塗布し、乾燥することによって形成される。
【0027】
球状粒子15aは、真球度が0.5以上、好ましくは0.8〜1.0である。真球度が0.5未満の場合は、裏面保護シートまで透過された太陽光線に対して所望の反射効果が得られなくなる。なお、真球度は、球状粒子15aを電子顕微鏡(SEM)で観察し、任意で選んだ20個の各粒子の最短径(最も短い直径:観察視野上又はその写真上で、個々の粒子を平行な2本の線分で挟みこんだときの最短距離)と最長径(最も長い直径:観察視野上又はその写真上で、個々の粒子を平行な2本の線分で挟みこんだときの最長距離)の比(最短径/最長径)をそれぞれ算出し、それらの比の平均値を示す。このような真球度を有する球状粒子15aは、公知又は市販のものを使用することができる。例えば、樹脂からなるビーズの場合は、鹸濁重合法又は乳化重合法によって、好適な球状粒子15aを得ることができる。
【0028】
球状粒子15aの平均粒径は、球状粒子15aを電子顕微鏡(SEM)で観察し、任意で選んだ20個の各粒子の最短径(最も短い直径:観察視野上又はその写真上で、個々の粒子を平行な2本の線分で挟みこんだときの最短距離)と最長径(最も長い直径:観察視野上又はその写真上で、個々の粒子を平行な2本の線分で挟みこんだときの最長距離)の平均((最短径+最長径)/2)をそれぞれ算出し、それらの総平均した値を示す。本発明では、図2と図3に示すように、球状粒子15aの大きさは、球状粒子含有透明層15内で平面上に1個ずつ並ぶ大きさであることが望ましいので、球状粒子含有透明層15の厚みに近い粒径であること、特に球状粒子含有透明層15の厚みの1/2以上であり、かつ、球状粒子含有透明層15の厚みの8倍以下の粒径であることが好ましい。
【0029】
本発明の球状粒子含有透明層15の形成材料には、上述したように溶媒、ビヒクルが含まれるが、具体的には以下に列挙される材料が用いられる。
【0030】
溶媒としては、例えば、トルエン等の芳香族系炭化水素、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、酢酸エチル等のエステル類、メチルエチルケトン等のケトン類、イソプロピルアルコール、変性アルコール等のアルコール系溶剤やこれらの混合溶剤を用いる。
【0031】
ビヒクルとしては、例えば、セルロース、ポリビニルブチラール、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリウレタン、アクリル、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体のうち、少なくとも一種類以上から選択することが好ましいが、さらに好ましくは、セルロース樹脂及びポリビニルブチラール樹脂が好ましい。
【0032】
本発明の球状粒子含有透明層15を形成するための塗布方法は、一般的なグラビアコート、シルクスクリーン、フレキソ等の任意の方式を用いればよい。例えば、グラビアコートが好ましく用いられる。塗布層の乾燥膜厚は限定的でないが、上述したように一般に0.3〜5μmが好ましく、特に0.8〜2μmとすることがより好ましい。
【0033】
なお、図2と図3に示す太陽電池用裏面保護シート10と20は、球状粒子含有透明層15が太陽電池モジュール100に近い側に配置され、耐候性樹脂層11が太陽電池モジュール100から遠い側に配置される。
【0034】
太陽電池用裏面保護シート10と20の製造方法としては、シリコン酸化物蒸着層13はポリエチレンテレフタレートフィルム12の表面上に蒸着されることによって形成され、球状粒子含有透明層15が上述した方法によって形成されるが、その他の層は、それぞれ、ドライラミネート法によって積層される。
【0035】
以上のように構成された本発明の太陽電池用裏面保護シート10(20)を太陽電池モジュール100に適用すると、図1に示されるように太陽電池モジュール100の受光面側に位置する透明ガラス層8を通じて入射された太陽光線は、太陽電池素子1で発電に寄与するとともに、太陽電池モジュール100の太陽電池用裏面保護シート10(20)まで透過した太陽光線がシリコン酸化物蒸着層13の表面で反射し、その反射光は球状粒子含有透明層15中の球状粒子15aの表面で拡散されて、乱反射する。これにより、透過した太陽光線の反射率を高めることができる。
【0036】
また、シリコン酸化物蒸着層13は、アルミニウムの金属蒸着層よりも、太陽電池用裏面保護シート10(20)内の水分に対する耐性が高い。このため、太陽電池用裏面保護シート10(20)自体の耐候性を向上させることができるだけでなく、シリコン酸化物蒸着層13が太陽電池用裏面保護シート10(20)内に存在する水分によって容易に腐食することがないので、長期間にわたって高い反射率を維持することができる。
【0037】
なお、白色ポリエチレンテレフタレート層14は、高い白色度を有するので、太陽電池用裏面保護シート10(20)まで透過した太陽光線の反射率を高めることに寄与する。
【0038】
以上のことから、本発明の太陽電池用裏面保護シート10(20)を太陽電池モジュール100に適用すると、透過した太陽光線の反射率を高めることができるとともに、長期間にわたって高い反射率を維持することが可能になるので、太陽電池モジュール100の変換効率を高めることができる。
【実施例】
【0039】
太陽電池用裏面保護シートの実施例、比較例の試料を次のようにして作製した。
【0040】
(実施例1)
図2に示すように、耐候性樹脂層11として厚みが25μmのPENフィルム(帝人株式会社製、製品名:ネオテックスQ51)の表面に、シリコン酸化物蒸着層13が形成されたPETフィルム12として厚みが12μmのシリカ蒸着PETフィルム(三菱樹脂株式会社製、製品名:テックバリアP2)を、ドライラミネート用接着剤を用いてドライラミネート法で接着した。ドライラミネート用接着剤としては、三井化学ポリウレタン株式会社製の製品名タケラックA315(100重量部)と製品名タケネートA50(10重量部)とを混合したウレタン系接着剤を、固形分の塗工量が3g/mとなるように用いた。そして、シリカ蒸着PETフィルムの上に、白色PET層14として厚みが188μmの白色PETフィルム(帝人株式会社製、製品名:帝人テトロンU2)を、同様にドライラミネート用接着剤を用いてドライラミネート法で接着した。さらに、白色PETフィルムの上に球状粒子含有透明層15を形成した。球状粒子含有透明層15は、溶媒としての酢酸エチルに、ビヒクルとしてのアクリル樹脂を含ませ、球状粒子15aとしての平均粒径が10μmのアクリルビーズを20重量%分散させて得られた混合用液を白色PETフィルムの上にグラビアコート法で塗布し、乾燥させることによって形成した。このようにして、本発明の実施例1としての太陽電池用裏面保護シート10を作製した。
【0041】
(比較例1)
上記の実施例1と同様にして、耐候性樹脂層11、シリコン酸化物蒸着層13が形成されたPETフィルム12、および、白色PET層14を順に積層したが、その上に球状粒子含有透明層15を形成しない、本発明の比較例1としての太陽電池用裏面保護シートを作製した。
【0042】
(実施例2)
図3に示すように、耐候性樹脂層11として厚みが25μmのPENフィルム(帝人株式会社製、製品名:ネオテックスQ51)の表面に、白色PET層14として厚みが188μmの白色PETフィルム(帝人株式会社製、製品名:帝人テトロンU2)を、ドライラミネート用接着剤を用いてドライラミネート法で接着した。ドライラミネート用接着剤としては、三井化学ポリウレタン株式会社製の製品名タケラックA315(100重量部)と製品名タケネートA50(10重量部)とを混合したウレタン系接着剤を、固形分の塗工量が3g/mとなるように用いた。そして、白色PETフィルムの上に、シリコン酸化物蒸着層13が形成されたPETフィルム12として厚みが12μmのシリカ蒸着PETフィルム(三菱樹脂株式会社製、製品名:テックバリアP2)を、同様にドライラミネート用接着剤を用いてドライラミネート法で接着した。さらに、シリカ蒸着PETフィルムの上に球状粒子含有透明層15を形成した。球状粒子含有透明層15は、溶媒としての酢酸エチルに、ビヒクルとしてのアクリル樹脂を含ませ、球状粒子15aとしての平均粒径が10μmのアクリルビーズを20重量%分散させて得られた混合用液を白色PETフィルムの上にグラビアコート法で塗布し、乾燥させることによって形成した。このようにして、本発明の実施例2としての裏面保護シート20を作製した。
【0043】
(比較例2)
上記の実施例2と同様にして、耐候性樹脂層11、白色PET層14、および、シリコン酸化物蒸着層13が形成されたPETフィルム12を順に積層したが、その上に球状粒子含有透明層15を形成しない、本発明の比較例2としての太陽電池用裏面保護シートを作製した。
【0044】
(比較例3)
図4に示すように、アルミニウム蒸着層16が形成されたPETフィルム12として厚みが12μmのアルミ蒸着PETフィルム(尾池工業株式会社製、製品名:テトライトPC)の表面に、白色PET層14として厚みが188μmの白色PETフィルム(帝人株式会社製、製品名:帝人テトロンU2)を、ドライラミネート用接着剤を用いてドライラミネート法で接着した。ドライラミネート用接着剤としては、三井化学ポリウレタン株式会社製の製品名タケラックA315(100重量部)と製品名タケネートA50(10重量部)とを混合したウレタン系接着剤を、固形分の塗工量が3g/mとなるように用いた。そして、白色PETフィルムの上に球状粒子含有透明層15を形成した。球状粒子含有透明層15は、溶媒としての酢酸エチルに、ビヒクルとしてのアクリル樹脂を含ませ、球状粒子15aとしての平均粒径が10μmのアクリルビーズを20重量%分散させて得られた混合用液を白色PETフィルムの上にグラビアコート法で塗布し、乾燥させることによって形成した。このようにして、本発明の比較例3としての裏面保護シート30を作製した。
【0045】
(比較例4)
上記の比較例3と同様にして、アルミニウム蒸着層16が形成されたPETフィルム12、および、白色PET層14を順に積層したが、その上に球状粒子含有透明層15を形成しない、本発明の比較例4としての太陽電池用裏面保護シートを作製した。
【0046】
(比較例5)
図5に示すように、白色PET層14として厚みが188μmの白色PETフィルム(帝人株式会社製、製品名:帝人テトロンU2)の表面に、アルミニウム蒸着層16が形成されたPETフィルム12として厚みが12μmのアルミ蒸着PETフィルム(尾池工業株式会社製、製品名:テトライトPC)を、ドライラミネート用接着剤を用いてドライラミネート法で接着した。ドライラミネート用接着剤としては、三井化学ポリウレタン株式会社製の製品名タケラックA315(100重量部)と製品名タケネートA50(10重量部)とを混合したウレタン系接着剤を、固形分の塗工量が3g/mとなるように用いた。そして、アルミ蒸着PETフィルムの上に球状粒子含有透明層15を形成した。球状粒子含有透明層15は、溶媒としての酢酸エチルに、ビヒクルとしてのアクリル樹脂を含ませ、球状粒子15aとしての平均粒径が10μmのアクリルビーズを20重量%分散させて得られた混合用液を白色PETフィルムの上にグラビアコート法で塗布し、乾燥させることによって形成した。このようにして、本発明の比較例5としての裏面保護シート40を作製した。
【0047】
(比較例6)
上記の比較例5と同様にして、白色PET層14、および、アルミニウム蒸着層16が形成されたPETフィルム12を順に積層したが、その上に球状粒子含有透明層15を形成しない、本発明の比較例6としての太陽電池用裏面保護シートを作製した。
【0048】
得られた実施例1,2と比較例1〜6の太陽電池用裏面保護シートについて、温度85℃、湿度85%の雰囲気中で1000時間経過するまで保持したときの平均反射率の時間的変化を測定した。平均反射率は、日光分光株式会社製の分光光度計(型番V−570)にφ60積分球(型番ISN−470)および10°傾斜スペーサーを取り付けた状態で波長域が400〜700nmでの20nm間隔の反射率の平均値を算出することによって求めた。
【0049】
その結果を図6と図7に示す。
【0050】
図6は、実施例1、比較例1、比較例3、比較例4の太陽電池用裏面保護シートの平均反射率の時間経過による変化を示し、実線は実施例1の太陽電池用裏面保護シート10(図2にて球状粒子含有透明層15が形成されたもの)、破線は比較例1の太陽電池用裏面保護シート(図2にて球状粒子含有透明層15が形成されていないもの)、一点鎖線は比較例3の太陽電池用裏面保護シート30(図4にて球状粒子含有透明層15が形成されたもの)、二点鎖線は比較例4の太陽電池用裏面保護シート(図4にて球状粒子含有透明層15が形成されていないもの)を示す。
【0051】
図7は、実施例2、比較例2、比較例5、比較例6の太陽電池用裏面保護シート20、40の平均反射率を時間経過による変化を示し、実線は実施例2の太陽電池用裏面保護シート20(図3にて球状粒子含有透明層15が形成されているもの)、破線は比較例2の太陽電池用裏面保護シート(図3にて球状粒子含有透明層15が形成されていないもの)、一点鎖線は比較例5の太陽電池用裏面保護シート40(図5にて球状粒子含有透明層15が形成されているもの)、二点鎖線は比較例6の太陽電池用裏面保護シート(図5にて球状粒子含有透明層15が形成されていないもの)を示す。
【0052】
図6と図7から、球状粒子含有透明層15が形成されていない裏面保護シート(破線、二点鎖線)に比べて、球状粒子含有透明層15が形成された裏面保護シート(実線、一点鎖線)は、反射率が高く、また、シリコン酸化物蒸着層13が形成された裏面保護シート(実線、破線)は、アルミニウム蒸着層16が形成された裏面保護シート(一点鎖線、二点鎖線)に比べて、長期間にわたって高い反射率を維持することが可能になり、経時劣化しないことがわかる。特に、図7から、アルミニウム蒸着層16の直上に球状粒子含有透明層15を形成した場合(一点鎖線)や、球状粒子含有透明層15を形成しないでアルミニウム蒸着層16を外表面に露出した場合(二点鎖線)は、時間の経過につれて反射率が低下する度合いが大きく、シリコン酸化物蒸着層13の直上に球状粒子含有透明層15を形成した場合(実線)や、球状粒子含有透明層15を形成しないでシリコン酸化物蒸着層13を外表面に露出した場合(破線)との差が顕著であることがわかる。
【0053】
今回開示された実施の形態と実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は以上の実施の形態と実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正と変形を含むものであることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】この発明に従った一つの実施の形態としての太陽電池用裏面保護シートが適用される太陽電池モジュールの概略的な断面構造を示す図である。
【図2】本発明の太陽電池用裏面保護シートの一つの実施の形態(実施例1)を示す断面図である。
【図3】本発明の太陽電池用裏面保護シートのもう一つの実施の形態(実施例2)を示す断面図である。
【図4】太陽電池用裏面保護シートの一つの比較の形態(比較例3)を示す断面図である。
【図5】太陽電池用裏面保護シートのもう一つの比較の形態(比較例5)を示す断面図である。
【図6】実施例1、比較例1、比較例3、比較例4の太陽電池用裏面保護シートの平均反射率の時間経過による変化を示す図である。
【図7】実施例2、比較例2、比較例5、比較例6の太陽電池用裏面保護シートの平均反射率の時間経過による変化を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
10,20:太陽電池用裏面保護シート、11:耐候性樹脂層、13:シリコン酸化物蒸着層、14:白色ポリエチレンテレフタレート層、15:球状粒子含有透明層、15a:球状粒子、100:太陽電池モジュール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐候性樹脂層と、
前記耐候性樹脂層の上に位置付けられて積層された白色ポリエチレンテレフタレート層と、
前記耐候性樹脂層の上に位置付けられて積層されたシリコン酸化物蒸着層と、
前記シリコン酸化物蒸着層の上に位置付けられて積層された、樹脂からなる球状粒子を含む球状粒子含有透明層とを備えた、太陽電池用裏面保護シート。
【請求項2】
前記白色ポリエチレンテレフタレート層は前記シリコン酸化物蒸着層の上に積層され、前記球状粒子含有透明層は前記白色ポリエチレンテレフタレート層の上に積層されている、請求項1に記載の太陽電池用裏面保護シート。
【請求項3】
前記シリコン酸化物蒸着層は前記白色ポリエチレンテレフタレート層の上に積層され、前記球状粒子含有透明層は前記シリコン酸化物蒸着層の上に積層されている、請求項1に記載の太陽電池用裏面保護シート。
【請求項4】
前記シリコン酸化物蒸着層は、ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面上に蒸着されることによって形成されている、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の太陽電池用裏面保護シート。
【請求項5】
前記耐候性樹脂層は、ポリエチレンナフタレートまたはフッ素樹脂のフィルムからなる、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の太陽電池用裏面保護シート。
【請求項6】
前記球状粒子含有透明層は、平均粒径が4〜10μmの球状粒子を含む透明層である、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の太陽電池用裏面保護シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−302361(P2009−302361A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−156243(P2008−156243)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(399054321)東洋アルミニウム株式会社 (179)
【Fターム(参考)】