説明

太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルム

【課題】 耐加水分解性や耐候性等の耐環境性を改良し、漏れ電流の低減と軽量性を付与した太陽電池裏面封止用フィルムを提供する。
【解決手段】 下記式(1)および(2)を同時に満足する量の触媒由来のチタン化合物およびリン化合物を含むポリエステルフィルムであって、フィルムを構成するポリエステルの末端カルボキシル基濃度が40当量/トン以下であることを特徴とする太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルム。
0<WTi≦20 …(1)
1≦W≦300 …(2)
(上記式中、WTiはポリエステルフィルム中の触媒由来のチタン元素含有量(ppm)、Wはポリエステルフィルム中のリン元素含有量(ppm)を示す)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安価で耐加水分解、耐候性等に優れ、かつ軽量化を実現できる太陽電池裏面封止フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代のエネルギー源として太陽電池が注目を浴びるようになり、電気電子部品を始め大きいものでは建築分野まで開発が進められている。特に屋外で使用される太陽電池の場合、構成部品の一つに用いられる太陽電池裏面封止フィルムにおいては、自然環境に対する耐久性(耐加水分解、耐候性)が強く要求される。さらに電池の太陽光の電換効率の向上も要求され、太陽電池の裏面封止フィルムの反射光まで電換されるようになった。また、軽量性、強度および電池の加工性も要望されることから、かかる目的に好適なプラスチックフィルムが注目されるようになってきている。
【0003】
太陽電池裏面封止フィルムとしては、例えば、特許文献1および特許文献2等にポリエチレン系の樹脂やポリエステル系樹脂シートを用いたり、フッ素系フィルムを用いたりすることが知られている。また、各メーカーで反射光を電換し電換効率を向上する目的で白色に着色した2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、単にPETフィルムという)や装飾目的に黒色に着色したPETフィルムやフッ素系フィルムを裏面封止フィルムに用いた太陽電池が販売されている。
【0004】
また、耐熱ポリエステルフィルムとしては、特許文献3および特許文献4等に記載のフィルムが電気絶縁用フィルムとして知られ、低オリゴマー化、耐熱性向上の効果を有することが知られている。また、気泡を有するポリエステルフィルムとしては、特許文献5等に記載されている。しかし、これらのフィルムは太陽電池の裏面封止用フィルムとしての利用が提案されているが、使用時の耐候性や耐加水分解性において改良が要求されている。
【0005】
すなわち、従来、この分野に用いられていたPETフィルムは、耐環境性でもっとも要求される耐加水分解性に乏しいために、この分野の使用が制限されており、白色に着色されたPETフィルムは、耐候性や上記の耐加水分解性を改善できるものではなかった。
【0006】
また、フッ素系のフィルムは、耐加水分解性や耐候性に優れるが、ガスバリア性(特に水蒸気のバリア性)に乏しく、フィルムの腰が弱いという欠点があった。そのため、かかるフィルムは、バリア性の改良と裏面封止フィルム層の強度を持たすために、アルミニウム等の金属箔等を積層して使用されていた。しかし、このことは軽量化が要求されているこの分野の目的に反するし、コスト的にも不利である。
【0007】
また、ポリエチレンシートを用いたものは、比較的安価であるが、高温(例えば、100〜120℃)にさらされた時の耐熱性に難がある。
【特許文献1】特開平11−261085号公報
【特許文献2】特開平11−186575号公報
【特許文献3】特開昭58−209530号公報
【特許文献4】特開昭58−36573号公報
【特許文献5】特公平7−37098号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑みなされたものであって、安価で優れた機械特性、耐熱性を有するPETフィルムを用い、耐加水分解性や耐候性等の耐環境性を改良することと、漏れ電流の低減と軽量性を付与する太陽電池裏面封止用フィルムを提供することを解決課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を有するフィルムによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の要旨は、下記式(1)および(2)を同時に満足する量の触媒由来のチタン化合物およびリン化合物を含むポリエステルからなるフィルムであって、フィルムを構成するポリエステルの末端カルボキシル基濃度が40当量/トン以下であることを特徴とする太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルムに存する。
0<WTi≦20 …(1)
1≦W≦300 …(2)
(上記式中、WTiはポリエステルフィルム中のチタン元素含有量(ppm)、Wはポリエステルフィルム中のリン元素含有量(ppm)を示す)
【0011】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明でいう太陽電池とは、太陽光等の入射光を取り込んで電気に変換し、当該電気を蓄えるシステムをいい、通常は高光線透過材、太陽電池モジュール、充填樹脂層および裏面封止フィルムを基本構成とするものである。家屋の屋根に設置されるものや、電気、電子部品等として使用されるものであり、用途によりフレキシブルな性質や軽量であることが求められる場合がある。
【0012】
ここで高光線透過材とは、太陽光を効率よく入射させ、かつ内部の太陽電池モジュールを保護するもので、好ましくはガラスや高光線透過プラスチックやフィルムなどが用いられる。また、太陽電池モジュールは、太陽光を電気に変換し蓄えるもので、太陽電池の心臓部分である。太陽電池モジュールとしては、シリコン、カドミウム−テルル、ゲルマニウム−ヒ素などの半導体が用いられる。現在、多用されているものに、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン等がある。
【0013】
また、充填樹脂層とは、太陽電池内の太陽電池モジュールの固定および保護、電気絶縁の目的に用いられ、中でもエチレンビニルアセテート樹脂が性能と価格面で好ましく使用される。
【0014】
また、本発明でいう太陽電池裏面封止フィルムとは、太陽電池の裏側の太陽電池モジュールの保護が重要な役目であり、当該フィルムとしては、太陽電池モジュールに悪影響を与える外部からの水蒸気の進入を遮断するために、水蒸気バリア層が設けられているものが通常使用される。
【0015】
本発明で言う水蒸気バリア層とは、金属や金属酸化物を蒸着法やスパッタ法により設けることや塗布層を設けることにより、フィルムの表面や2層のフィルムの間に層として設けられた層をいうものであって、JIS Z0208−73の規格に準じて測定した、フィルムとしての水蒸気の透過値が、好ましくは3.0g/m/24Hr/0.1mm以下を達成できる層をいう。かかる金属としてはアルミニウムが好ましく使用され、また、金属の酸化物としては、珪素の酸化物あるいはアルミニウムの酸化物が好ましく使用されている。また、かかるガスバリア層は、電池の上部から漏れてくる太陽光を反射させる機能に加え、反射光も電換し、電換効率を向上させる機能も有するものである。
【0016】
本発明の太陽電池裏面封止フィルムは、太陽光の入射に対して上記の水蒸気バリア層よりも背面に設けられ、太陽電池のモジュールを保護する目的で使用される。
【0017】
本発明においてポリエステルフィルムに使用するポリエステルは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものを指す。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)等が例示される。
【0018】
本発明のポリエステルフィルムは、チタン化合物およびリン化合物の双方を含有することを必須とするものである。ここでいうチタン化合物とは、ポリエステル製造時の重縮合反応の触媒として添加するものを指し、チタン元素含有量は、20ppm以下である必要があり、好ましくは10ppm以下であり、下限は通常1ppmであるが、好ましくは2ppmである。チタン化合物の含有量が多すぎると、フィルム製造時に分解反応が起こりやすくなり、ポリエステルの分子量が低下して強度や耐熱性が劣るようになってしまい、加工工程での取り扱い性が悪くなったり、また太陽電池の部材として用いた時の耐候性、耐加水分解性が劣ったりするようになる。また、チタン元素含有量が少なすぎると、ポリエステル原料製造時の生産性が劣り、目的の重合度に達したポリエステル原料を得られない。また重縮合反応速度が遅くなって結果的に得られるポリエステルの末端カルボキシル基濃度が高くなってしまい、結果的に耐候性、耐加水分解性が劣るようになるという問題が発生する。一方、リン元素量は、1ppm以上であることが必要であり、好ましくは5ppm以上であり、上限は300ppm、好ましくは200ppm、さらに好ましくは100ppmである。上記したチタン化合物を特定量含有するとともに、リン化合物を含有させることにより、耐候性を高度に満足させることができる。すなわちチタンの触媒としての活性を低下させポリエステルが分解反応を起こすことを抑制することができる。リン化合物の含有量が多すぎると、ゲル化が起こり、異物となってフィルムの品質を低下させる原因となることがあるため好ましくない。本発明においては、チタン化合物、リン化合物を上記した範囲で含有する場合、上記した耐候性向上効果が高度に得られる。
【0019】
本願発明で触媒として添加して使用するチタン化合物としては、アルキルチタネートあるいはその部分加水分解物、酢酸チタン、蓚酸チタニル化合物など公知のものが使用でき、例えばテトラエチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネートなどを使用する。またリン化合物の例としては、リン酸、亜リン酸あるいはそのエステルホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、亜ホスホン酸化合物、亜ホスフィン酸化合物など公知のものが使用でき、具体例として正リン酸、ジメチルフォスフェート、トリメチルフォスフェート、ジエチルフォスフェート、ジエチルフォスフェート、トリエチルフォスフェート、ジプロピルフォスフェート、トリプロピルフォスフェート、ジブチルフォスフェート、トリブチルフォスフェート、ジアミルフォスフェート、トリアミルフォスフェート、ジヘキシルフォスフェート、トリヘキシルフォスフェート、ジフェニルフォスフェート、トリフェニルフォスフェート、エチルアシッドフォスフェート、ジメチルフォスファイト、トリメチルフォスファイト、ジエチルフォスフェート、トリエチルフォスフェート、ジプロピルフォスファイト、トリプロピルフォスファイト、ジブチルフォスファイト、トリブチルフォスファイト、ジフェニルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、ジアミルフォスファイト、トリアミルフォスファイト、ジヘキシルフォスファイト、トリヘキシルフォスファイトなどが挙げられる。
【0020】
また、上記チタン化合物およびリン化合物以外の金属化合物を含まないことが好ましいが、フィルムの生産性を向上すべく溶融時の体積固有抵抗値を低くするためマグネシウム、カルシウム、リチウム、マンガン等の金属を通常100ppm以下、好ましくは60ppm以下、最も好ましくは50ppm以下であれば含有させることができる。また、後述する粒子や各種添加剤を配合するためにマスターバッチ法を利用するなどの方法を用いる場合などで本願発明のポリエステルを製造するための触媒以外の金属成分としてアンチモンを含有することもできるが、本願発明の優れた耐加水分解性、耐候性を得るためにアンチモンのフィルム全体に対する含有量はアンチモン金属として好ましくは30ppm以下、さらに好ましくは20ppm以下とする。なおここでいう金属化合物には、後述するポリエステル中に配合する粒子は含まない。
【0021】
本発明においては、チタンを触媒として製造したポリエステルと、所定量のリン化合物を含有するポリエステルとを混合することにより、上記した量のチタンおよびリンの含有量としたフィルムを得ることにより、その優れた効果を発揮することができる。すなわち、チタンを触媒として重合してポリエステルを製造する場合、重合工程でリン化合物を添加すると、重合速度が遅くなり、生産性の悪化を招いたり、重合時間が長くなってかえって黄色味が強くなったり、末端カルボキシル基量が増加する等の問題が発生することがある。一方、チタン触媒のポリエステルを、リン化合物が存在しない状態でフィルムを製造する溶融押出工程に供すると、熱劣化のため黄色味が増し、かつ末端カルボキシル基量の増加が起こりやすくなる。本発明においては、かかる問題の発生を防止するため、所定量のリン化合物を含有するポリエステルをマスターバッチとして製造しておき、それをチタン触媒によるポリエステルと混合する方法が好ましい。リン化合物のマスターバッチを製造する方法としては、ゲルマニウム触媒により重合する方法、最少量のアンチモン触媒により重合する方法、チタン触媒によるポリエステルに溶融押出する工程で添加する方法などが挙げられるが、中でもゲルマニウム触媒を採用することが特に好ましい。フィルム中に含有させるリンと触媒としてのチタンとの比はモル比(P/Ti)として、1.0〜20.0の範囲が好ましく、さらに好ましくは5.0〜15.0の範囲である。かかる存在比の場合、触媒が不活性化されてポリエステルの分解反応が抑制されることにより耐候性が高度に満足される。
【0022】
本発明においてフィルムを構成するポリエステルの末端カルボキシル基量を特定範囲とするためには、通常のポリエステルに対し原料として末端カルボキシル基量を少ないものとする必要がある。本願発明で必要とするチタン触媒を用いることによりかかるポリエステルを得ることができ、かつリンの含有量を特定範囲とすることにより溶融押出工程においても熱分解等による末端カルボキシル基量の増加を防止することができるため、本用途における耐候性を向上するために優れた効果を享受することができる。その場合であっても触媒量が少なすぎる場合や重縮合反応工程での減圧が不十分なため重合時間が長すぎたり、逆に触媒量が多すぎたり重縮合温度が高すぎて分解反応が起こりやすい条件での重縮合を行うと、所定の末端カルボキシル基量の原料を得ることができなくなる。またフィルム製造において、溶融工程を経た再生原料を配合すると末端カルボキシル基量が増大するので、本願発明においてはかかる再生原料を配合しないことが好ましく、配合するとしても20重量%以下とすることが好ましい。
【0023】
なお、本発明で用いるポリエステルは、溶融重合後これをチップ化し、加熱減圧下または窒素等不活性気流中に必要に応じてさらに固相重合を施したものでもよい。得られるポリエステルの固有粘度は0.55dl/g以上であることが好ましく、0.60〜0.90dl/gであることがさらに好ましい。
【0024】
本発明におけるポリエステル層中には、易滑性付与を主たる目的として粒子を配合してもよい。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム酸化珪素、カオリン、酸化アルミニウム等の粒子が挙げられる。また、特公昭59−5216号公報、特開昭59−217755号公報等に記載されている耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0025】
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0026】
また、用いる粒子の平均粒径は、通常0.01〜10μmが好ましい。平均粒径が0.01μm未満の場合には、フィルムに易滑性を与える効果が不足する。一方、10μmを超える場合には、フィルム生産時に破断が頻発して生産性が低下する場合がある。
【0027】
さらに、ポリエステル中の粒子含有量は、フィルムを構成する全ポリエステルに対し通常0.0003〜1.0重量%、好ましくは0.0005〜0.5重量%の範囲である。粒子含有量が0.0003重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合があり、一方、1.0重量%を超えて添加する場合には粒径が大きすぎる場合と同様、フィルムの生産性が不十分な場合がある。なお本発明においては、後述する酸化チタン粒子、硫酸バリウム粒子、カーボンブラック粒子を含有する場合には、それ以外の粒子を配合する必要はない場合がある。
【0028】
ポリエステル中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応を進めてもよい。また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
【0029】
本発明のフィルムは、塗布や染料、顔料をフィルム中に配合することにより着色されていてもよく、中でも、耐候性を高度に保つため、高ヘーズを有するか白色に着色されていることが好ましい。白色のフィルムとするためには、フィルムが平均粒径1.0μm以下の酸化チタン粒子または平均粒径3μm以下の硫酸バリウム粒子を2重量%〜30重量%、好ましくは3重量%〜20重量%含有させる方法をとることが望ましい。酸化チタン粒子あるいは硫酸バリウム粒子の含有量が2重量%未満の場合は、耐候性向上効果が得られなくなることがある。一方、酸化チタン粒子または硫酸バリウム粒子の含有量が30重量%を越える場合や平均粒径がそれぞれ所定の範囲を越える場合は、上記した効果が得られない場合があり、またフィルム生産工程におけるフィルム破断が頻発して生産性が大きく低下するなどの問題が発生することがある。
【0030】
一方、高ヘーズのフィルムとする場合、ポリエステルと相溶性が低いポリマーをブレンドする方法や、粒子を含有させる方法が採用できる。但し当該ブレンドポリマー自身の耐候性等の問題もあり、本願においてはフィルムの耐候性を高度に保つため粒子を含有させる方法が好ましい。かかる目的で配合する粒子としては、前記易滑性向上を目的としたものと同様のものを使用できる。この場合のフィルムヘーズは、好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上、特に好ましくは40%である。
【0031】
また、太陽電池内部の隠蔽性から本願発明のフィルムは光学濃度計で測定した光学濃度が0.4以上、好ましくは0.6以上であることが望ましい。
【0032】
かかる隠蔽性を向上し耐候性を高める方法として、フィルム中にカーボンブラック粒子を0.5重量%〜30重量%含有させる方法も好ましく採用できる。かかるカーボンブラック粒子の含有量が上記した範囲以外の場合は、酸化チタンの含有量の場合と同様の問題が発生することがある。
【0033】
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、熱安定剤、潤滑剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、染料、顔料等を添加することができる。また耐候性を向上する目的で、ポリエステルに対して0.01〜5重量%の範囲で紫外線吸収剤特にベンゾオキサジノン系紫外線吸収剤等を含有させることができる。
【0034】
本発明のポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常20〜250μm、好ましくは25〜200μmの範囲である。
【0035】
以下、本発明のポリエステルフィルムの製造方法に関して具体的に説明するが、本発明の要旨を満足する限り、本発明は以下の例示に特に限定されるものではない。
【0036】
すなわち、公知の手法により乾燥したまたは未乾燥のポリエステルチップを溶融押出装置に供給し、それぞれのポリマーの融点以上である温度に加熱し溶融する。次いで、溶融したポリマーをダイから押出し、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。溶融押出工程においても、条件により末端カルボキシル基量が増加するので、本願発明においては、押出工程における押出機内でのポリエステルの滞留時間を短くすること、一軸押出機を使用する場合は原料をあらかじめ水分量が50ppm以下、好ましくは30ppm以下になるように十分乾燥すること、二軸押出機を使用する場合はベント口を設け、40ヘクトパスカル以下、好ましくは30ヘクトパスカル以下、さらに好ましくは20ヘクトパスカル以下の減圧を維持すること等の方法を採用する。
【0037】
本発明においては、このようにして得られたシートを2軸方向に延伸してフィルム化する。延伸条件について具体的に述べると、前記未延伸シートを、好ましくは縦方向に70〜145℃で2〜6倍に延伸し、縦1軸延伸フィルムとした後、横方向に90〜160℃で2〜6倍延伸を行い、150〜240℃で1〜600秒間熱処理を行うことが好ましい。さらにこの際、熱処理の最高温度ゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に0.1〜20%弛緩する方法が好ましい。また、必要に応じて再縦延伸、再横延伸を付加することも可能である。
【0038】
本発明においては、前記の通りポリエステルの溶融押出機を2台または3台以上用いて、いわゆる共押出法により2層または3層以上の積層フィルムとすることができる。層の構成としては、A原料とB原料とを用いたA/B構成、またはA/B/A構成、さらにC原料を用いてA/B/C構成またはそれ以外の構成のフィルムとすることができる。例えばA原料として本願発明にて使用する酸化チタン、硫酸バリウムまたはカーボンブラック粒子を含有するものを用いてA層を構成し、B原料としては当該粒子を含有しないかまたは含有量が少ない原料を用い、A/BまたはA/B/A構成のフィルムとすることができる。この場合B層の原料を自由に選択できることからコスト的な利点などが大きい。またA層原料にはその表面形状を調整するための粒子を含有させ、フィルムの取り扱い性を向上させることができる。さらに当該フィルムの再生原料を制限された範囲でB層に配合しても表層であるA層により表面粗度と隠蔽性の設計ができるので、さらにコスト的な利点が大きくなる。かかる粒子の表層における含有量が8重量%以上、好ましくは10重量%以上の場合、効果が顕著となる。但しフィルム全体のポリエステルに対するかかる粒子の全体の量は本願発明の範囲内であることが必要である。
【0039】
かくして得られる本発明のフィルムは、フィルムを構成するポリエステルの末端カルボキシル基量が40当量/トン以下、好ましくは30当量/トン以下、さらに好ましくは25当量/トン以下である。末端カルボキシル基量が40当量/トンを越えると、ポリエステルの耐加水分解性が劣るようになり、太陽電池の裏面封止用として用いた場合の劣化が早くなるという問題が起こってしまう。一方本願発明の耐加水分解性を鑑みるとポリエステルの末端カルボキシル基量の下限はないが、重縮合反応の効率等の点から通常5当量/トン程度である。ポリエステルフィルムの耐加水分解性は、フィルム全体に関連する特性であり、本願発明においては共押出による積層構造を有するフィルムの場合、当該フィルムを構成するポリエステル全体として末端カルボキシル基量が上記した範囲であることが必要である。同様に、本願発明において必要とする触媒として含有するチタンおよびリンの含有量は、共押出による積層構造を有するフィルムの場合、当該フィルムを構成するポリエステル全体として含有量が前述の範囲であることが必要である。
【0040】
本発明においては、水蒸気バリア性を向上するために金属や金属酸化物の蒸着層等を設けることもできるが、それらの層を形成する際の適性や接着性を向上すること、あるいはかかるバリア性を有するフィルムと接着して使用する場合の接着層との接着性を向上すること、フィルムを加工する工程や使用時の汚染防止のための帯電防止性を与えることを目的として、下引き層としての塗布層を設けることができる。かかる塗布層の形成に当たっては、フィルムを製造する工程内、特に縦方向に延伸した後、横方向の延伸の前に行う方法が、極めて薄い塗布層を形成できる点、塗布液の乾燥や硬化反応を製膜工程内で実施できることなどの点で好ましい。かかる塗布層としては、架橋剤と各種バインダー樹脂との組み合わせからなるものが好ましく、バインダー樹脂としては接着性の観点から、通常ポリエステル、アクリル系ポリマーおよびポリウレタンの中から選ばれたポリマーを採用する。上記のポリマーは、それぞれそれらの誘導体をも含むものとする。ここでいう誘導体とは、他のポリマーとの共重合体、官能基に反応性化合物を反応させたポリマーを指す。
【0041】
なお、必要に応じて、フィルムの製造後にオフラインコートでコートしてもよい。また片面、両面を問わない。コーティングの材料としては、オフラインコーティングの場合は水系および/または溶剤系いずれでもよいが、インラインコーティングの場合は、水系または水分散系が好ましい。
【0042】
本発明で塗布剤として用いる、上記のポリエステル、アクリル系ポリマー、ポリウレタンの中で特に好ましいポリマーは、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上、さらには40℃以上のものであり、ポリウレタンの中でもポリエステルポリウレタンであり、カルボン酸残基を持ち、その少なくとも一部はアミンまたはアンモニアを用いて水性化されているポリマーである。
【0043】
架橋剤樹脂としては、メラミン系、エポキシ系、オキサゾリン系樹脂が一般に用いられるが、塗布性、耐久接着性の点で、メラミン系樹脂が特に好ましい。メラミン系樹脂としては、単量体、あるいは2量体以上の多量体からなる縮合物のいずれであってもよく、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。
【0044】
本発明において、滑り性、固着性などをさらに改良するため、塗布層中に無機系粒子や有機系粒子を含有させることが好ましい。塗布剤中における粒子の配合量は、通常0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%である。かかる配合量が0.5重量%未満では、耐ブロッキング性が不十分となる場合があり、10重量%を超えると、フィルムの透明性を阻害し、画像の鮮明度が落ちる傾向がある。無機粒子としては、二酸化ケイ素、アルミナ、酸化ジルコニウム、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化バリウム、カーボンブラック、硫化モリブデン、酸化アンチモン等が挙げられる。これらの中では、二酸化ケイ素が安価でかつ粒子径が多種あるので利用しやすい。一方有機粒子としては、炭素−炭素二重結合を一分子中に2個以上含有する化合物(例えばジビニルベンゼン)により架橋構造を達成したポリスチレンまたはポリアクリレートポリメタクリレートが挙げられる。
【0045】
上記の無機粒子および有機粒子は表面処理されていてもよい。表面処理剤としては、例えば、界面活性剤、分散剤としての高分子、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などが挙げられる。塗布層中の粒子の含有量は通常10重量%以下が好ましく、さらには5重量%以下が好ましい。
【0046】
また、塗布層は、帯電防止剤、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料などを含有していてもよい。
【0047】
塗布剤は、水を主たる媒体とする限りにおいて、水への分散を改良する目的または造膜性能を改良する目的で少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は、水に溶解する範囲で使用することが必要である。有機溶剤としては、n−ブチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、メチルアルコール等の脂肪族または脂環族アルコール類、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類、n−ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール誘導体、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸アミル等のエステル類、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類、N−メチルピロリドン等のアミド類が挙げられる。これらの有機溶剤は、必要に応じて二種以上を併用してもよい。
【0048】
塗布剤の塗布方法としては、例えば、原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示されるような、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクターコーターまたはこれら以外の塗布装置を使用することができる。
【0049】
塗布層は、ポリエステルフィルムの片面だけに形成してもよいし、両面に形成してもよい。片面にのみ形成した場合、その反対面には必要に応じて上記の塗布層と異なる塗布層を形成して他の特性を付与することもできる。なお、塗布剤のフィルムへの塗布性や接着性を改良するため、塗布前にフィルムに化学処理や放電処理を施してもよい。また、表面特性をさらに改良するため、塗布層形成後に放電処理を施してもよい。
【0050】
塗布層の厚みは、最終的な乾燥厚さとして、通常0.01〜0.5μm、好ましくは0.015〜0.3μmの範囲である。塗布層の厚さが0.01μm未満の場合は、本発明の効果が十分に発揮されない恐れがある。塗布層の厚さが0.5μmを超える場合は、フィルムが相互に固着しやすくなったり、特にフィルムの高強度化のために塗布処理フィルムを再延伸する場合は、工程中のロールに粘着しやすくなったりする傾向がある。上記の固着の問題は、特にフィルムの両面に同一の塗布層を形成する場合に顕著に現れる
太陽電池の裏面封止フィルムにおいては、太陽電池モジュールに悪影響を与える外部からの水蒸気の浸入を遮断するために通常、水蒸気バリア層が設けられているものが使用される。ガスバリア性を付与させるには、アルミニウム等の金属や、ケイ素、アルミニウム等の金属の酸化物を真空蒸着やスパッタリング等の周知の方法でフィルムの表面に設ける方法等を採用できる。その厚みは通常100〜3000オングストロームの範囲である。この場合、本発明のフィルムとは別の12μm程度のフィルムにガスバリア層を設け、このフィルムを本発明のフィルム表面に接着積層する方法が用いられるが、本発明のフィルムに直接ガスバリア層を設ける方法も用いることができる。また、金属箔(例えば一般的なものはアルミニウム箔)をフィルム表面に接着積層する方法も用いることができる。この場合の金属箔の厚さは10〜50μmの範囲が、加工性とガスバリア性の点から好ましい。また塩化ビニリデン系の塗布層を設ける方法もあるが、耐候性等の点で不十分な場合がある。該ガスバリア層は必ずしもフィルムの表面にある必要がなく、例えば2層のフィルムの間に挟まれていてもよい。
【0051】
太陽電池は、例えば以下に示す構成で作製される。すなわち、高光線透過性を有する基材(ガラス、フィルム等)を表層とし、シリコン系等の太陽電池モジュールを、電気を取り出せるリード線を付与して配置し、エチレンビニルアセテート樹脂等の充填樹脂で固定し、その後ろ側(裏面)に、裏面封止用フィルムを設けて、外装材で固定して得られる。裏面封止用フィルムは、太陽電池モジュール側は太陽光を反射して電換効率を高めるべく高度な反射率を有する例えば白色のポリエステルフィルムなどが使用される。該フィルムと本願発明のフィルムとを貼り合せる構成において、これらのフィルム間に水蒸気バリア性を有するフィルムや金属箔を挟んだ構成で密着させた積層構造とする。本発明のフィルムはこの裏面封止用フィルムの中で外層側に配置されるフィルムとして使用された時に、耐候性、耐加水分解性を有するため、本用途における優れた効果を発揮する。
【発明の効果】
【0052】
本発明のフィルムは、耐加水分解性、耐候性に優れ、太陽電池裏面封止用として用いた場合、高度な耐久性を有し、かつ軽量化を実現でき、エネルギー効率的利用に寄与することができるものであり、工業的価値は極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法は次のとおりである。
【0054】
(1)ポリエステルの極限粘度の測定
ポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0055】
(2)平均粒径(d50:μm)の測定
遠心沈降式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所社製SA−CP3型)を使用して測定した等価球形分布における積算(重量基準)50%の値を平均粒径とした。
【0056】
(3)フィルム中の触媒由来元素の定量
蛍光X線分析装置((株)島津製作所社製型式「XRF−1500」)を用いて、下記表1に示す条件下で、フィルムFP法により単枚測定でフィルム中の元素量を求めた。積層フィルムの場合はフィルムを溶融してディスク状に成型して測定することにより、フィルム全体に対する含有量を測定した。なお、この方法での検出限界は、通常1ppm程度である。
【0057】
【表1】

【0058】
(4)末端カルボキシル基量(当量/トン)
いわゆる滴定法によって、末端カルボキシル基の量を測定した。すなわちポリエステルをベンジルアルコ−ルに溶解し、フェノ−ルレッド指示薬を加え、水酸化ナトリウムの水/メタノ−ル/ベンジルアルコ−ル溶液で滴定した。
【0059】
(5)耐加水分解性
82℃−95%RHの雰囲気にてフィルムをエージングし、フィルムの機械的特性として破断伸度を測定した。エージング処理前後での破断伸度の保持率(%)を下記の式にて算出し、下記の基準で判定した。
破断伸度保持率=(処理前の破断伸度−処理後の破断伸度)÷処理前の破断伸度×100
○:保持率が60%以上
△:保持率が30%〜60%
×:保持率が30%未満
【0060】
(6)耐候性
サンシャインカーボンアーク灯耐候性試験機を用い、JIS C 8917における光照射試験A−5による促進劣化試験を行った。すなわち該装置にて500時間処理を行い、処理前後での破断伸度保持率を(5)と同様の保持率として求め、以下の基準にて判定した。
○:保持率が50%以上
△:保持率が30%〜50%
×:保持率が30%未満
【0061】
(7)フィルムヘーズ
JISーK7105に準じ、日本電色工業社製積分球式濁度計NDHー300Aによりフィルムの濁度を測定した。
【0062】
(8)光学濃度(隠蔽度)
マクベス濃度計TD−904型を使用し、Gフィルター下の透過光濃度を測定
し、隠蔽度を求めた。この値が大きいほど隠蔽力が高いことを示す。
【0063】
以下に実施例および比較例を示すが、これに用いたポリエステルの製造方法は次のとおりである。
〈ポリエステルの製造〉
<ポリエステル(A)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒としてテトラブチルチタネート0.004重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた後、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には40パスカルとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.62に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステル(A)の極限粘度は0.62であった。
【0064】
<ポリエステル(B)の製造>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩を加えて反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物を重縮合槽に移し、正リン酸を添加した後、二酸化ゲルマニウム加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には40パスカルとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.65に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、ポリエステル(B1)のチップを得た。ポリエステル(B)の極限粘度は0.65であった。
【0065】
<ポリエステル(C)の製造方法>
ポリエステル(A)を出発原料とし、真空下220℃にて固相重合を行ってポリエステル(C)を得た。ポリエステル(C)の固有粘度は0.74、ポリマーの末端カルボキシル基量は8当量/トンであった。
【0066】
<ポリエステル(D)の製造方法>
ポリエステル(C)50重量部と平均粒径0.3μmの酸化チタン粒子50重量部とを混合し、ベント付二軸押出機にて溶融押出し、ポリエステル(D)を得た。
【0067】
<ポリエステル(E)の製造方法>
ポリエステル(C)50重量部と平均粒径0.8μmの硫酸バリウム粒子50重量部とを混合し、ベント付二軸押出機にて溶融押出し、ポリエステル(E)を得た。
【0068】
<ポリエステル(F)の製造方法>
ポリエステル(C)50重量部とカーボンブラック50重量部とを混合し、ベント付二軸押出機にて溶融押出し、ポリエステル(F)を得た。
【0069】
<ポリエステル(G)の製造方法>
ポリエステル(A)の製造において、テトラブトキシチタネートの添加量を変えた以外は、同様の方法で極限粘度0.62のポリエステル(G)のチップを得た。得られたポリエステル(E)の極限粘度は0.62であった。
【0070】
<ポリエステル(H)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.09重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.04部を添加した後、三酸化アンチモン0.04部を加え、さらにエチレングリコールに分散させた平均粒子径2.6μmのシリカ粒子0.08重量部を加えて4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には40パスカルとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.68に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステル(H)の極限粘度は0.68であった。
【0071】
<ポリエステル(I)の製造方法>
ポリエステル(A)の製造方法において、エチレングリコールに分散させた平均粒子径3.6μmのシリカ粒子1.0重量部を加えて、極限粘度0.60に相当する時点で重縮合反応を停止し、さらにポリエステル(C)の製造方法における固相重合と同様にして、極限粘度0.75のポリエステル(I)を得た。
【0072】
<ポリエステル(J)の製造方法>
ポリエステル(C)90重量部と紫外線吸収剤(サイテック社製「サイアソーブ3638」)10重量部とを混合し、ベント付二軸押出機にて溶融押出し、ポリエステル(J)を得た。
【0073】
実施例1:
ポリエステル(C)、(B)、(I)、(J)をそれぞれ、60%、5%、130%、5%の割合でブレンドした原料を、ベント付き二軸押出機により、290℃で溶融押出し、静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して未延伸シートを得た。次いで、83℃で縦方向に3.7倍延伸した後、テンターに導き、110℃で横方向に3.9倍延伸し、さらに225℃で熱処理を行い、厚さ50μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルム中のアンチモン、チタン、ゲルマニウム、リン元素含有量は、それぞれ0ppm(検出下限値以下)、5ppm、3ppm、50ppmであった。以下、各実施例、比較例にて得られたフィルム中のアンチモン、チタン、ゲルマニウム、リン元素含有量を、下記表1にまとめて示す。
【0074】
実施例2:
A層原料として、ポリエステル(C)、(B)、(I)をそれぞれ、45%、5%、50%の割合でブレンドした原料を用い、B層原料をポリエステル(C)、(B)、(I)、(J)をそれぞれ79%、5%、10%、6%の割合でブレンドしたものとし、2台のベント付二軸押出機に供給し、A/B/Aの積層構造とした。延伸条件は実施例1と同様にして、A層厚みが7μm、B層厚みが36μm、合計厚み50μmのポリエステルフィルムを得た。
【0075】
実施例3:
実施例2において、A層原料をポリエステル(C)、(B)、(E)をそれぞれ、71%、5%、24%、の割合でブレンドした原料とし、B層原料をポリエステル(C)、(B)、(E)、(J)をそれぞれ81%、5%、8%、6%の割合でブレンドした原料とした以外は、実施例2と同様にして、合計厚み50μmのポリエステルフィルムを得た。
【0076】
実施例4:
実施例2においてA層原料をポリエステル(C)、(B)、(D)をそれぞれ75%、5%、20%の割合でブレンドした原料とし、B層原料をポリエステル(C)、(B)、(D)、(J)をそれぞれ81%、5%、8%、6%の割合でブレンドした原料とした以外は実施例2と同様にして、厚み50μmのポリエステルフィルムを得た。
【0077】
実施例5:
実施例2においてA層原料をポリエステル(C)、(B)、(F)をそれぞれ85%、5%、10%の割合でブレンドした原料とし、B層原料をポリエステル(C)、(B)、(F)、(J)をそれぞれ81%、5%、8%、6%の割合でブレンドした原料とした以外は実施例2と同様にして、厚み50μmのポリエステルフィルムを得た。
【0078】
実施例6:
実施例2においてA層原料をポリエステル(C)、(B)、(E)をそれぞれ85%、5%、10%の割合でブレンドした原料とし、B層原料をポリエステル(C)、(B)、(E)、(J)をそれぞれ86%、5%、4%、5%の割合でブレンドした原料とした以外は実施例2と同様にして、厚み50μmのポリエステルフィルムを得た。
【0079】
実施例7:
実施例1において原料をポリエステル(C)、(B)、(I)、(J)をそれぞれ63.5%、1.5%、30%、5%の割合でブレンドした原料とした以外は実施例1と同様にして、厚み55μmのポリエステルフィルムを得た。
【0080】
実施例8:
実施例2においてA層原料をポリエステル(G)、(B)、(E)をそれぞれ74.5%、1.5%、24%の割合でブレンドした原料とし、B層原料をポリエステル(G)、(B)、(E)をそれぞれ90.5%、1.5%、8%の割合でブレンドした原料とした以外は実施例2と同様にして、厚み50μmのポリエステルフィルムを得た。
【0081】
実施例9:
実施例2においてA層原料をポリエステル(C)、(B)、(E)をそれぞれ71%、5%、24%の割合でブレンドした原料とし、B層原料をポリエステル(C)、(B)、(E)をそれぞれ87%、5%、8%の割合でブレンドした原料とした以外は実施例2と同様にして、厚み50μmのポリエステルフィルムを得た。
【0082】
実施例10:
実施例1において原料をポリエステル(C)、(B)、(I)をそれぞれ90%、5%、5%の割合でブレンドした原料とした以外は実施例1と同様にして、厚み45μmのポリエステルフィルムを得た。
【0083】
比較例1:
実施例1において、原料をポリエステル(H)100%とした以外は、実施例1と同様にして厚み50μmのポリエステルフィルムを得た。
【0084】
比較例2:
実施例1において、原料をポリエステル(C)、(I)を、それぞれ 70%、30%の割合でブレンドした原料とした以外は実施例1と同様にして、厚み50μmのポリエステルフィルムを得た。
【0085】
比較例3:
実施例2においてA層原料をポリエステル(C)、(E)をそれぞれ76%、24%の割合でブレンドした原料とし、B層原料をポリエステル(C)、(E)、(J)をそれぞれ86%、8%、6%の割合でブレンドした原料とした以外は実施例2と同様にして、厚み50μmのポリエステルフィルムを得た。
【0086】
比較例4:
ポリエステル(G)の製造において、さらに触媒のチタン化合物の量を増加させた条件として作成した原料を用い、該ポリエステルとポリエステル(B)、(I)をそれぞれ65%、5%、30%の割合でブレンドした原料とした以外は実施例1と同様にして、厚み50μmのポリエステルフィルムを得た。
得られたフィルムの物性値および太陽電池用封止フィルムとしての適性について表にまとめた。
【0087】
【表2】

【0088】
【表3】

【0089】
【表4】

【0090】
上記結果から、本発明の要件を満たすフィルムは、本用途としての適性が高いことがわかる。すなわち、実施例で得られたフィルムを太陽電池用封止フィルムの外装用として白色PETフィルム、アルミニウム蒸着PETフィルム、本願発明のフィルムの順に貼りあわせて使用した場合、優れた品質と耐久性を発揮した。特に白色および黒色のフィルムとして作成したフィルムは、耐候性の点で高度に優れた特性を発揮し、本用途における優れたフィルムであることがわかる。一方、比較例のフィルムは、耐加水分解性、耐候性に劣るため、本用途において必要とされる耐久性を満足できるものではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明のフィルムは、例えば、太陽電池の裏面封止用のフィルムとして好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)および(2)を同時に満足する量の触媒由来のチタン化合物およびリン化合物を含むポリエステルフィルムであって、フィルムを構成するポリエステルの末端カルボキシル基濃度が40当量/トン以下であることを特徴とする太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルム。
0<WTi≦20 …(1)
1≦W≦300 …(2)
(上記式中、WTiはポリエステルフィルム中の触媒由来のチタン元素含有量(ppm)、Wはポリエステルフィルム中のリン元素含有量(ppm)を示す)

【公開番号】特開2007−204538(P2007−204538A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−22634(P2006−22634)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000108856)三菱化学ポリエステルフィルム株式会社 (187)
【Fターム(参考)】