説明

太陽電池評価装置、及び、太陽電池評価方法

【課題】短時間で、より少ない演算量で標準試験条件の光を照射した場合の太陽電池の短絡電流を求める事を目的とし、ソーラーシミュレータの光量調整を容易に行う。
【解決手段】太陽電池評価装置は、測定対象の太陽電池に、所定のスペクトルと所定の放射照度を持った測定光を照射し、前記太陽電池に、特定の光と実質的に相似のスペクトルを持ち、当該特定の光の放射照度よりも低い放射照度を持った相似光と当該測定光とを重畳した重畳光を照射し、前記測定光、又は、前記重畳光を受けたときの前記太陽電池の短絡電流を、それぞれ測定し、前記測定光を受けたときに前記測定部で測定された第1短絡電流と前記重畳光を受けたときに前記測定部で測定された第2短絡電流との差分、及び、前記相似光の放射照度に基づいて、前記太陽電池が前記特定の光を受けたときの第3短絡電流を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池を評価するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽電池は広く普及し、メーカ間あるいは製品間で、激しく競争している。また、その組成も、単結晶シリコンから、アモルファスシリコン、薄膜シリコン、有機化合物等の多くの種類が開発されている。
【0003】
このような太陽電池は、材料及び構造に起因する固有の分光感度特性を有する。従って、その光電変換特性は、性能評価用の照射光の分光放射照度に大きく依存することになる。そこで、これらの太陽電池の光電変換効率を公正に評価するために、評価方法が、IEC60904(IEC:International Electrotechnical Commission:国際電気標準会議)やJISC8905〜C8991(JIS:Japanese Industrial Standards)で定義されている。太陽電池の性能測定は、国際的に協定された標準試験条件の下で、基準太陽光の分光放射照度(=E(λ))に近似させた分光放射照度(=L(λ))を持つソーラーシミュレータを用いて屋内で実施されることが多い。
【0004】
このソーラーシミュレータの分光放射照度は、基準太陽光の分光放射照度と完全には一致しておらず、異なるメーカ間ではもちろん、同じメーカにおいても機差が存在している。そのため、分光感度特性が同じ太陽電池であっても、異なるソーラーシミュレータで測定すると、太陽電池の発電量が異なってしまうという問題があった。図2は、前記の基準太陽光の分光放射照度E(λ)を示すものであり、IEC60904に示されたものである。また、図3には、ソーラーシミュレータの分光放射照度L(λ)の一例を示す。
【0005】
そこで、測定者は、例えば、産業技術総合技術研究所(=国際的に統一された基準太陽光スペクトル等を持っている国立又はそれに準じる機関)等の公的機関に、サンプルとなる太陽電池を送付して測定を依頼する。それに応じてこれらの公的機関は、所有している限りなく基準太陽光に近い高近似のソーラーシミュレータを用いることによって自然太陽光AM1.5、100mW/cmにおけるそのサンプルの短絡電流ISTCを求め、その測定値(=A)を記載して測定者に返送する。
【0006】
これを受けて測定者は、返送されて来たサンプルを、以降、自社の基準セルとして、ソーラーシミュレータの光量調整用に使用する。すなわち、測定者は、ソーラーシミュレータの照射光を基準セルに照射し、その短絡電流Iが前記測定値Aとなるように、ソーラーシミュレータの光量を調整する。そして、実際に測定すべき(検査対象の製品の)太陽電池の特性を測定する。これは、前述のように基準太陽光の分光スペクトルを厳密に再現することは困難であるが、可能な限り、各社のソーラーシミュレータをそれに合せ込むための手法である。
【0007】
また、非線形性の強い太陽電池を基準セルとして用いる場合、その太陽電池の標準試験条件の光による短絡電流ISTCを算出する方法として、以下の方法が提案されている(非特許文献1参照)。
【0008】
太陽電池の分光感度(微分分光応答)s~(Ij,λ)と、基準セルの標準試験条件の分光放射照度EAM1.5 λ(λ)とから求めたs(I)=∫s~(Ij,λ)・{EAM1.5 λ(λ)dλ/∫EAM1.5 λ(λ')dλ'}を用いて、
ESTC=∫0ISTC 1/s~(I)dI (ESTC=∫EAM1.5 λ(λ')dλ') ・・・・(式A)
を満足するISTCが、太陽電池の標準試験条件の光による短絡電流となる。この方法による基準セルの値付けも公的機関に依頼して行う。
【0009】
この方法で基準セルを値付けするには多くの種類の強度のバイアス光を順次照射して、各強度においてs~(I,λ)を測定する必要があり、多大な時間を要する。
【0010】
また、ソーラーシミュレータの調整に用いる基準セルを作成する場合、事前に測定者がサンプルを作成して産業技術総合技術研究所等の公的機関に送付し、公的機関によって測定された短絡電流の測定値とサンプルとを受け取る必要がある。そのことは、手間や、時間、費用がかかるという問題がある。しかも、測定すべき太陽電池の分光感度が変わる都度、新たに基準セルを作成する必要がある。従って、基準セルの作成にかかる時間や費用は膨大なものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【非特許文献1】J.Metzdorf“Calibration of solar cells: The differential spectral responsivity method” Applied Optics 1 May 1987 Vol.26 No.9 P.1701
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ここで、太陽電池は、図4に示すように、太陽電池に照射される照射強度が増えて、短絡電流が増加するに従い、長波長の分光感度が増加する。図5を用いて、放射照度と短絡電流と分光感度との関係をより詳細に説明する。参照符号F0で示されるグラフは、図4を模式化したグラフであり、参照符号F1、F2、F3等で示されるグラフはそれぞれ、図4の照射強度毎の分光感度を示すグラフである。これらのF1、F2、F3等のグラフから、照射強度を横軸に、短絡電流を縦軸に変換したグラフが作成される。作成したグラフは、照射強度がΔEだけ変化した場合に短絡電流がΔI変化するグラフ、例えば、参照符号Fa及びFbで示されるグラフとなる。
【0013】
ここで、線形特性の太陽電池の場合、短絡電流の変化は照射強度に依存せずに一定の値となるため、照射強度と短絡電流との関係を示すグラフは直線になる。しかし、太陽電池が非線形特性を持つ場合には、短絡電流の変化は照射強度により異なることになるため、照射強度と短絡電流との関係を示すグラフは、参照符号Faで示すような曲線のグラフになる。この例では、照射光エネルギーが増えるに従い、長波長側の感度が増えて、ΔI/ΔEの値が大きくなっている。
【0014】
従って、上述の技術では、太陽電池に照射するバイアス光を、非常に弱いバイアス光から略1.5・ESTC相当の強いバイアス光範囲で細かくバイアス光強度を変えて、そのときのs~(Ii,λ) (i=0,1,2,・・・,N)を測定する。そして、上記(式A)を満足するISTCを求めなければならない。すなわち、短絡電流ISTCを得る為に、多くの測定と多くの演算を行わなければない。従って、短絡電流ISTCを得るまでに、長時間を要することとなる。
【0015】
また、非線形性の強い太陽電池の短絡電流を求める場合、ESTC=∫0ISTC 1/s~(I)dIを満たすISTCは、誤差を含むことがある。
【0016】
更に、太陽電池に照射するバイアス光の強度の変化を細かく、すなわち、Nを大きくしないと積分誤差を生じることがあるので、積分∫s~(Ii,λ)・{EAM1.5 λ(λ)dλ/∫EAM1.5 λ(λ')dλ'}をN+1回計算するために、能力の高い演算処理装置が必要となる。また、安定したバイアス光が必要な放射照度範囲が広いので、バイアス光源の駆動制御部が複雑とならざるを得ず、高価になってしまうという問題がある。
【0017】
また、試験される太陽電池の分光応答と基準セルの分光応答とは必ずしも相似形ではない。従って、基準セルでISTCが得られるようにソーラーシミュレータを調整したとしても、ソーラーシミュレータの分光放射照度が標準試験条件の太陽光スペクトルに一致していない場合には、試験される太陽電池については標準試験条件の太陽光スペクトルに相当した光を照射したことにはならず、試験される太陽電池の特性評価に誤差を生じてしまう。
【0018】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、より少ない演算量と時間とで標準試験条件の光による被試験太陽電池そのものの短絡電流を容易に求めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一態様に係る太陽電池評価装置は、測定対象の太陽電池に、所定のスペクトルと所定の放射照度を持った測定光を照射することが可能であって、前記太陽電池に、特定の光と実質的に相似のスペクトルを持ち、当該特定の光の放射照度よりも低い放射照度を持った相似光と当該測定光とを重畳した重畳光を照射することが可能である照射部と、前記測定光、又は、前記重畳光を受けたときの前記太陽電池の短絡電流を、それぞれ測定する測定部と、前記測定光を受けたときに前記測定部で測定された第1短絡電流と前記重畳光を受けたときに前記測定部で測定された第2短絡電流との差分、及び、前記相似光の放射照度に基づいて、前記太陽電池が前記特定の光を受けたときの第3短絡電流を算出する短絡電流算出部とを備えることを特徴とする。
【0020】
また、上述の太陽電池評価装置において、前記照射部は、前記測定光を照射する第1光源部と、前記相似光を照射する第2光源部とから成り、前記第1光源部は、放射照度がそれぞれ異なる複数の測定光を照射し、前記短絡電流算出部は、前記複数の測定光それぞれについて、前記太陽電池が測定光を受けたときに前記測定部で測定された第1短絡電流と、当該測定光と前記相似光とを重畳した重畳光を受けたときに前記測定部で測定された第2短絡電流との差分を求め、そして、前記複数の測定光それぞれについての第1短絡電流又は第2短絡電流と、前記複数の測定光それぞれについて求めた前記各差分、及び、前記相似光の放射照度に基づいて、前記太陽電池が前記特定の光を受けたときの第3短絡電流を算出することを特徴とする。
【0021】
また、上述の太陽電池評価装置において、前記太陽電池評価装置は、更に、前記第2光源部が照射する前記相似光の放射照度を測定する放射照度測定部を備え、前記短絡電流算出部は、前記複数の測定光それぞれについて、前記太陽電池が測定光を受けたときに前記測定部で測定された第1短絡電流と、当該測定光と前記相似光とを重畳した重畳光を受けたときに前記測定部で測定された第2短絡電流との差分を求め、そして、前記複数の測定光それぞれについての第1短絡電流又は第2短絡電流と、前記複数の測定光それぞれについて求めた前記各差分、及び、前記放射照度測定部が測定した前記相似光の放射照度に基づいて、前記太陽電池が前記特定の光を受けたときの第3短絡電流を算出することを特徴とする。
【0022】
また、上述の太陽電池評価装置において、前記太陽電池評価装置は、更に、前記特定の光の放射照度を記憶する記憶部を備え、前記短絡電流算出部は、前記複数の測定光それぞれについて求めた各差分と前記第1短絡電流又は第2短絡電流と前記相似光の放射照度とから、前記複数の測定光それぞれのときの前記太陽電池の短絡電流を得るための特定の光と相似なスペクトルの各放射照度をそれぞれ算出し、算出した各放射照度の中から放射照度が前記特定の光の放射照度と近似している放射照度を選択し、この選択した放射照度と対応する前記太陽電池の短絡電流を、前記太陽電池が前記特定の光を受けたときの第3短絡電流とすることを特徴とする。
【0023】
また、上述の太陽電池評価装置において、前記照射部は、前記測定光を照射する第1光源部と、スペクトルがそれぞれ異なる複数のスペクトル光であって、当該複数のスペクトル光を所定の重み係数で荷重加減算したスペクトルが前記特定の光のスペクトルと実質的に相似で放射照度が特定の光の放射照度より小さい光となる当該複数のスペクトル光を順に照射する第2光源部とから成り、前記第1光源部は、放射照度がそれぞれ異なる複数の測定光を照射し、前記短絡電流算出部は、前記複数の測定光それぞれについて、前記第2光源部の複数のスペクトル光を順に前記測定光に重畳した重畳光を受けたときの各第2短絡電流と前記太陽電池が測定光のみを受けたときの第1短絡電流との各差分を求め、求めた各差分に前記所定の重み係数で荷重加減算した第1荷重加減算値を求め、順次重畳される複数のスペクトル光の放射照度を前記所定の重み係数で荷重加減算した第2荷重加減算値を求め、そして、前記複数の測定光それぞれについて求めた各第1短絡電流、前記第1荷重加減算値、及び、第2荷重加減算値に基づいて、前記太陽電池が前記特定の光を受けたときの第3短絡電流を算出することを特徴とする。
【0024】
また、上述の太陽電池評価装置において、前記短絡電流測定装置は、更に、前記第2光源部が照射する光の放射照度を測定する放射照度測定部を備え、前記放射照度測定部で測定した前記第2光源部の複数のスペクトル光の放射照度を前記所定の重み係数で荷重加減算した第2荷重加減算値を求めることを特徴とする。
【0025】
また、上述の太陽電池評価装置において、前記第2光源部が照射する複数のスペクトル光は、互いに波長帯域が異なることを特徴とする。
【0026】
また、上述の太陽電池評価装置において、前記測定光は、前記太陽電池に照射したときの短絡電流の差異が小さく、スペクトルがそれぞれ異なる複数のスペクトル光の組みの複数組みからなり、各組の前記短絡電流が異なるものであって、各組のなかの複数のスペクトル光を少なくともひとつの負の重み係数を含む各組の所定の重み係数で荷重加減算したスペクトルが前記特定の光のスペクトルと実質的に相似で放射照度が特定の光の放射照度より小さい光となるものであって、前記照射部は、各組の複数のスペクトル光それぞれを順に照射し、前記測定部は、複数組みのそれぞれの組について、各組の複数のスペクトル光それぞれを受けたときの前記太陽電池の短絡電流を測定し、前記短絡電流算出部は、複数組みのそれぞれの組について、前記各組において、複数のスペクトル光それぞれについて、当該組を代表する代表短絡電流を求めるとともに、各組の複数のスペクトル光それぞれを受けたときの短絡電流を当該組の所定の重み係数で荷重加減算した1荷重加減算値を求め、前記複数のスペクトル光の放射照度を当該組の所定の重み係数で荷重加減算した第2荷重加減算値を求め、そして、前記複数の測定光のそれぞれの組における、各代表短絡電流、各第1荷重加減算値、及び、各第2荷重加減算値に基づいて、前記太陽電池が前記特定の光を受けたときの第3短絡電流を算出することを特徴とする。
【0027】
また、上述の太陽電池評価装置において、前記短絡電流測定装置は、更に、前記照射部が照射する前記各組の前記複数のスペクトル光の放射照度を測定する放射照度測定部を備え、前記放射照度測定部で測定した各組の複数のスペクトル光の放射照度を当該組の所定の重み係数で荷重加減算した第2荷重加減算値を求めることを特徴とする。
【0028】
そして、本発明の他の一態様に係る太陽電池評価方法は、太陽電池評価装置で用いられる太陽電池評価方法であって、測定対象の太陽電池に、所定のスペクトルと所定の放射照度を持った測定光を照射することが可能であって、前記太陽電池に、特定の光と相似のスペクトルを持ち、当該特定の光の放射照度よりも低い放射照度を持った相似光と当該測定光とを重畳した重畳光を照射することが可能である照射ステップと、前記測定光を受けたときの前記太陽電池の第1短絡電流、又は、前記重畳光を受けたときの前記太陽電池の第2短絡電流を、それぞれ測定する測定ステップと、前記測定光を受けたときに前記測定ステップで測定された第1短絡電流と前記重畳光を受けたときに前記測定ステップで測定された第2短絡電流との差分、前記第1短絡電流、及び、前記相似光の放射照度に基づいて、前記太陽電池が前記特定の光を受けたときの第3短絡電流を算出する短絡電流算出ステップとを備えることを特徴とする。
【0029】
また、本発明の他の一態様に係る太陽電池評価方法は、太陽電池評価装置で用いられる太陽電池評価方法であって、測定対象の太陽電池に、所定のスペクトルと所定の放射照度を持った測定光を照射することが可能であって、前記太陽電池に、当該測定光と、所定の重み係数で荷重加減算すると特定の光と実質的に相似のスペクトルを持ち、当該特定の光の放射照度よりも低い放射照度になる複数の異なるスペクトルの光とを順次重畳した光を照射することが可能である照射ステップと、前記測定光受けたときの前記太陽電池の第1短絡電流、又は、前記重畳光を受けたときの前記太陽電池の各第2短絡電流を、それぞれ測定する測定ステップと、前記測定光を受けたときに前記測定ステップで測定された第1短絡電流と前記重畳光を受けたときに前記測定ステップで測定された各第2短絡電流を前記所定の重み係数で荷重加減算した第1荷重加減算値との差分と、前記第1短絡電流、及び前記複数の異なるスペクトルの光の放射照度を前記所定の重み係数で荷重加減算した第2荷重加減算値に基づいて、前記太陽電池が前記特定の光を受けたときの第3短絡電流を算出する短絡電流算出ステップとを備えることを特徴とする。
【0030】
また、本発明の他の一態様に係る太陽電池評価方法は、太陽電池評価装置で用いられる太陽電池評価方法であって、測定対象の太陽電池に、所定のスペクトルと所定の放射照度を持った測定光を照射することが可能であって、前記太陽電池に、少なくともひとつの負の重み係数を含む所定の重み係数で荷重加減算すると特定の光と実質的に相似のスペクトルを持ち、当該特定の光の放射照度よりも低い放射照度になる複数の異なるスペクトルの光を順次照射することが可能である照射ステップと、前記複数の異なるスペクトルの光を受けたときの前記太陽電池の短絡電流を、それぞれ測定する測定ステップと、前記所定の重み係数で荷重加減算して第1荷重加減算値と、前記複数の異なるスペクトルの光を受けたときの前記短絡電流から算出したそれらを代表する代表短絡電流、及び前記複数の異なるスペクトルの光の放射照度を前記所定の重み係数で荷重加減算した第2荷重加減算値に基づいて、前記太陽電池が前記特定の光を受けたときの第3短絡電流を算出する短絡電流算出ステップとを備えることを特徴とする。
【0031】
このような構成の太陽電池評価装置によれば、測定対象の太陽電池(被試験太陽電池)を用いて、この被試験太陽電池の標準試験条件での短絡電流を得ることが可能となる。すなわち、いわゆる値付けされた基準セルが不要であるので、公的機関で値付けするための時間、費用等を削減することが可能となる。
【0032】
また、分光応答度、微分分光応答度の測定が不要であるので、高価で大型の分光感度測定装置が不要となる。すなわち、被試験太陽電池の標準試験条件での短絡電流を、短時間で、安価に決定することが可能となる。
【0033】
また、基準セルの分光応答度、基準の分光応答度、基準の微分分光応答度と、被試験太陽電池の分光応答度が必ずしも一致せず、ソーラーシミュレータの調整において誤差を生じることが無くなる。
【0034】
尚、ソーラーシミュレータのスペクトルを、基準太陽光のスペクトルに高度に近似させることは、かなり困難であるが、本実施形態の太陽電池評価装置では、太陽光スペクトルに高度に近似させる必要がある光、すなわち、相似光は微弱(AM1.5の放射照度の1/1000〜1/100程度)でよいので、容易に相似光を作成できる。
【0035】
また、上述の太陽電池評価装置において、前記短絡電流算出部が算出した第3短絡電流と、前記測定部で測定される前記太陽電池の短絡電流とが近似するように、前記照射部が照射する照射光の放射照度又は分光照射照度を変更する調整部を更に備えることを特徴とする。
【0036】
また、上述の太陽電池評価装置において、前記短絡電流算出部が算出した第3短絡電流と、前記測定部で測定される前記太陽電池の短絡電流とが近似するように、前記第1光源部が照射する照射光の放射照度又は分光照射照度を変更する調整部を更に備えることを特徴とする。
【0037】
また、上述の太陽電池評価装置において、前記太陽電池の特性を評価する特性評価部を更に備え、前記調整部で変更された照射光を受けたときの前記太陽電池の特性を評価することを特徴とする。
【0038】
また、上述の太陽電池評価装置において、前記特性評価部は、前記太陽電池のI−V特性を評価するものであることを特徴とする。
【0039】
このような構成の太陽電池評価装置では、標準試験条件の光による太陽電池の短絡電流を容易に算出できるので、容易にソーラーシミュレータの光量を調整することが可能となり、評価対象の太陽電池の特性評価を正確かつ迅速に行う事が可能となる。
【発明の効果】
【0040】
本発明に係る太陽電池評価装置は、標準試験条件の光による太陽電池の短絡電流を短時間で容易に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の一形態に係る太陽電池評価装置の構成を示すブロック図である。
【図2】基準太陽光による分光放射照度を示すグラフである。
【図3】一例のソーラーシミュレータの分光放射照度を示すグラフである。
【図4】多結晶シリコン太陽電池における分光感度の照度依存性を示すグラフである。
【図5】図1の太陽電池評価装置における分光感度の考え方を説明するための図である。
【図6】図1の相似光の例を示す模式図である。
【図7】図1の主光源からの光に相似光を重畳した重畳光の例を示す模式図である。
【図8】図1の太陽電池評価装置が行う線形特性の太陽電池を用いたソーラーシミュレータ調整処理のフローチャートである。
【図9】図1の太陽電池評価装置が行う非線形特性の太陽電池を用いたソーラーシミュレータ調整処理のフローチャートである。
【図10】図1の太陽電池評価装置が行う波長バンドタイプのソーラーシミュレータ調整処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
<実施形態>
本実施形態は、上記(式A)ESTC=∫0ISTC 1/s~(I)dIを用いて、標準試験条件の光(EAM1.5 λ(λ))が照射されたときの太陽電池の短絡電流ISTCを算出する。しかし、本実施形態は、その際に必要な、太陽電池の分光感度(微分分光応答)s~(Ij,λ)を測定せずに、短絡電流ISTCを算出する。
【0043】
詳細には、(式A)の1/s~(I)が実測によって求められて、(式A)用いて短絡電流ISTCが算出される。すなわち、従来のように、バイアス光強度を細かく変化させて分光感度を測定することなく、短絡電流ISTCが算出される。
【0044】
<短絡電流の算出方法>
ここで、本実施形態での短絡電流の算出方法を説明する。
【0045】
測定対象の太陽電池に、ソーラーシミュレータの光を照射して短絡電流Iが得られている状態で、dE・{E(λ)/∫-∞+∞ E(λ')dλ'}の光を重畳させる。
【0046】
ソーラーシミュレータの光に重畳するこの光は、そのスペクトルを標準試験条件の光のスペクトルに高度に近似させた光であり、その放射照度を標準試験条件の光(EAM1.5λ(λ))の分光放射照度に比べて微弱、例えば、1/1000〜1/100程度にした光(以下、「相似光」という。)である。
【0047】
次に、ソーラーシミュレータの光に相似光を重畳した光(以下、「重畳光」という。)を太陽電池に照射したときの短絡電流Iを測定し、ソーラーシミュレータの光を照射したときに得られた短絡電流Iからの増分dIを求める。dIは、以下のように表される。s~(I,λ)は微分分光応答である。
dI=dE∫-∞+∞ s~(I,λ)・{E(λ)/∫-∞+∞ E(λ')dλ'}dλ
dEは、実際に重畳照射する相似光δEj(λ)=dE・{E(λ)/∫-∞+∞ E(λ')dλ'}の放射照度(分光放射照度ではない)を、校正された線形素子(基準検知器)で測定して求めたものである。
【0048】
このdI及びdEを、ソーラーシミュレータの光強度を変えて短絡電流を変化させて、複数の短絡電流Ijについて繰り返し測定する。そして、測定したdEj, dIjから、R(Ij)=(dEj/dIj) (j=0,1,2,・・・)を算出する。
【0049】
ここで、相似光δEj(λ)が標準試験条件AM1.5の分光放射照度分布に相似ならば、
R(Ij)は1/s~(Ij)=1/[∫-∞+∞ s~(Ij,λ)・{EAM1.5(λ)/∫-∞+∞ EAM1.5(λ')dλ'}dλ]に相当する。
【0050】
従って、R(Ij) (j=0,1,2,・・・)から
ESTC=∫0Isc R(I)dI
を満足するIscを求めることにより、s~(I,λ)を測定することなしに、この太陽電池の標準試験条件における短絡電流ISTCを算出することができることになる。尚、IとI+dIjはほぼ等しいのでR(Ij)はR(Ij+dIj)としてもよい。
【0051】
図6に、相似光の例を示し、図7に、重畳光の例を示す。符号α1で示されるグラフがEAM1.5λ(λ)の分光放射照度を示し、符号α2で示されるグラフが相似光の分光放射照度を示し、符号α3で示されるグラフがソーラーシミュレータの分光放射照度を示し、符号α4で示されるグラフが重畳光、すなわち、α3のグラフにα2のグラフを加算した分光放射照度を示す。尚、図6及び図7では、見易さの観点から、α2のグラフはα1のグラフに対し1/1000〜1/100とはなっていない。
【0052】
このように算出した短絡電流になるように、シミュレータを調整することで、容易にシミュレータの調整が可能となる。
【0053】
尚、R(Ij)を算出する毎に∫0IjR(I)dIを算出し、∫0Ij R(I)dI≧ESTCならR(Ij)の更新を終了してESTC=∫0Isc R(I)dIを満足するIscを算出するようにすれば効率的である。
【0054】
また、短絡電流を算出する条件は、標準試験条件に限定するものではない。例えば、所望の分光放射照度スペクトル分布の所望の放射照度の光を、仮想的に照射したときの短絡電流を算出することとしてもよい。更に、複数の強度状態のソーラーシミュレータの光それぞれは、スペクトルが相似である必要はない。
【0055】
一般化すると、短絡電流Ijの近傍の短絡電流を出力する複数の異なる分光放射照度スペクトルEji(λ) (i=0,1,・・・,N-1)の光を太陽電池に照射し、そのときの分光放射照度スペクトルEji(λ)の放射照度Eji、及び当該太陽電池の短絡電流Ijiを測定する。Iji(i=0,1,・・・,N-1)に大きな差異がないようにEji(λ)を決めておく。前記放射照度Ejiの測定は、前記分光放射照度スペクトルEji(λ)それぞれに対して値付けされた基準検知器で測定する。前記i=0,1,・・・,N-1の分光放射照度スペクトルのうちの二つの分光放射照度スペクトルEjl(λ)、Ejm(λ)について
Σlm αlm*{Ejl(λ)-Ejm(λ)}=dEj*Et(λ)/∫Et(λ')dλ'
を満足するように、少なくともひとつ以上の組(l,m)のEjl(λ)、Ejm(λ)、αlmを決めておく。
【0056】
そして、(Ejl-Ejm)の一次結合Σlm αlm*(Ejl-Ejm)を算出する。Σlm αlm*(Ejl-Ejm)は、以下の式で表される。
Σlm αlm*(Ejl-Ejm)=∫Σlm αlm*{Ejl(λ)-Ejm(λ)}dλ=dEj*∫Et(λ)dλ/∫Et(λ')dλ'
従って、dEjである。Et(λ)は例えばEAM1.5(λ)のような特定の分光放射スペクトルである。短絡電流についても、(Ijl-Ijm)=dIjlmの一次結合dIjlm αlm*dIjlmを算出する。
dIjlmは小さいから、以下のように表すことができる。
dIjlm=∫s~(Ij,λ)*{Ejl(λ)-Ejm(λ)}dλ
従って、
dIjlm αlm*(Ijl-Ijm)=∫s~(Ij,λ)*Σlm αlm*{Ejl(λ)-Ejm(λ)}dλ
=dEj*∫s~(Ij,λ)*Et(λ)dλ/∫Et(λ')dλ'
となる。ここで、IjはIjiのiについての平均値、Ij0などIji (i=1,2,・・・,N-1)を代表する代表短絡電流である。
【0057】
dEj、dIjよりR(Ij)=dEj/dIjを算出して、Σ R(Ij)*dIjが特定の放射照度
Et=∫Et(λ)dλに等しくなる電流値Iscを補間、関数近似などにより算出することにより、当該太陽電池に特定の分光放射スペクトルEt(λ)を照射したときに相当する短絡電流を得ることができる。
【0058】
さらに一般化するとΣlm αlm*{Ejl(λ)-Ejm(λ)}はΣi α'i*Eji(λ)と表すこともできるから、
Σi α'i*Eji(λ)=dEj*Et(λ)/∫Et(λ')dλ'
となるように分光放射照度スペクトルEji(λ)、α'iを決めておき、Eji(λ)を照射したときの放射照度Eji及びそのときの当該太陽電池の短絡電流Ijを測定する。
Σi α'i*Eji(λ)は小さく、dIj=Σi α'i*Ijiも小さいから、
dIj=dEj*∫s~(Ij,λ)*Et(λ)dλ/∫Et(λ')dλ'
である。ここでもIjはIji (i=1,2,・・・,N-1)を代表する代表短絡電流である。従って、
R(Ij)=dEj/dIjを算出して、Σ R(Ij)*dIjが特定の放射照度
Et=∫Et(λ)dλに等しくなる電流値Iscを補間、関数近似などにより算出することにより、当該太陽電池に特定の分光放射スペクトルEt(λ)を照射したときに相当する短絡電流を得ることができる。
【0059】
以下、上記方法により標準試験条件の光による太陽電池の短絡電流を求め、ソーラーシミュレータの調整を行う太陽電池評価装置を説明する。
【0060】
<太陽電池評価装置>
<構成>
図1は、太陽電池評価装置100の構成を示すブロック図である。
【0061】
太陽電池評価装置100は、主光源2、主光源駆動制御部1、光学系3a、光カプラ4、太陽電池5、相似光用光源7、相似光用光源駆動制御部6、光学系3b、光カプラ9、シャッター10、シャッター制御部11、放射照度検知器12、相似光測定部13、I−V測定部14、設定部15、表示部16、及び、演算制御部17で構成される。
【0062】
主光源2は、太陽電池5に光を照射するキセノンランプ等であり、主光源駆動制御部1は、主光源2の出力光の強度を制御する装置である。光学系3a、及び、光学系3bは、その用途に応じて光を集中、又は、コリメート(平行光化)させるためのレンズ等の光学素子である。
【0063】
光カプラ4は、複数の入射光を重畳して射出する光部品であり、光カプラ9は、入射光を2つの光に分配して射出する光部品である。光カプラ4、9は、例えばハーフミラー等の微小光学素子形光分岐結合器や溶融ファイバの光ファイバ形分岐結合器や光導波路形光分岐結合器等を利用することができる。
【0064】
相似光用光源7は、太陽電池5に照射する光を射出し、相似光用光源駆動制御部6は、相似光用光源7を制御し、所望のスペクトルであって所望の強度の光を射出させる装置である。相似光用光源7は、キセノンランプ等の1以上の光源と1以上のフィルターとの組み合わせで構成され、相似光を照射する。又は、重畳すると相似光となる複数の光、すなわち、スペクトル及び波長帯の何れか一方が異なる複数の光(以下、「スペクトル光」という。)を照射する。尚、この場合は、後述する演算制御部17において、各スペクトル光の放射照度の加重加減算を行う必要があることもある。光源とフィルターとの組み合わせとして、例えば、1つの光源と積層された複数のフィルターとの組み合わせ、1つの光源と複数のフィルターの順繰りの組み合わせ、複数の光源と1以上のフィルターとのそれらの特性に応じた組み合わせ等がある。尚、スペクトル光を用いた短絡電流の求め方は、後述の<変形例>の項で説明する。
【0065】
シャッター10は、太陽電池5に照射する相似光用光源7の出力光を遮る遮光装置であり、シャッター制御部11は、シャッター10の遮断状態と透過状態との切り替えを制御する装置である。
【0066】
放射照度検知器12は、光カプラ9から射出された光(相似光)の放射照度を測定する装置(基準検知器)であり、相似光測定部13は、放射照度検知器12で測定された放射照度dE(図5で示す放射照度ΔEの算出に用いる)を出力する。相似光の放射照度は予め記憶しておいてもよい。その場合は、放射照度検知器12及び相似光測定部13は無くてもよい。
【0067】
太陽電池5は、測定対象の太陽電池である。
【0068】
I−V測定部14は、太陽電池11のI−V特性を測定し、短絡電流の値等を出力する。
【0069】
主光源2から射出された光は、光学系3aを介し、光カプラ4を介して太陽電池5に入射する。
【0070】
一方、相似光用光源7から射出された光は、光学系3bを介して光カプラ9に入射し、光カプラ9で反射された相似光等は放射照度検知器12に入射する。残余の相似光は透過して、シャッター10に入射する。シャッター10に入射した相似光は、シャッター10が透過状態の場合には、光カプラ4を介して太陽電池5に入射する。すなわち、相似光用光源7から射出された相似光は、主光源2から射出されたバイアス光(以下、「主光源光」という。)と重畳されて、太陽電池5に入射する。また、シャッター10が遮蔽状態の場合には、シャッター10に入射した相似光は光カプラ4に入射せず、主光源2から射出された主光源光のみが、太陽電池5に入射する。
【0071】
演算制御部17は、主光源光と相似光とが重畳された重畳光が照射されたときの太陽電池5の短絡電流と、主光源光のみが照射されたときの太陽電池5の短絡電流とをI−V測定部14から取得し、その差分であるdI(図5で示す短絡電流ΔIに相当)を算出する。また、相似光測定部13から相似光の放射照度dEを取得し、<短絡電流の算出方法>の項で説明したように、dIとdEとから太陽電池5のEAM1.5 λ(λ)の光による短絡電流ISTCを算出する。更に、主光源駆動制御部1等を制御して太陽電池評価装置100全体を制御する。
【0072】
設定部15は、短絡電流測定処理を開始するコマンドや、処理を行う上で必要な主光源駆動制御部1等の制御部に対するパラメータ等の各種データを、太陽電池評価装置100に入力する機器である。例えば、キーボードやマウス等である。
【0073】
表示部16は、設定部15から入力されたコマンドやデータ、及び、演算制御部17が算出した短絡電流値等を出力(提示)する機器である。例えばCRTディスプレイ、LCD、有機ELディスプレイ、及び、プラズマディスプレイ等の表示装置やプリンタ等の印刷装置等である。
【0074】
太陽電池評価装置100の演算制御部17、設定部15、及び、表示部16等は、例えば、マイクロプロセッサ、メモリ及びその周辺回路を備えるコンピュータによって構成される。前記マイクロプロセッサは、いわゆるCPU(Central Processing Unit)等であり、メモリに記憶されているプログラムを実行することにより、太陽電池評価装置100は、機能的に、演算制御部17等を備えることになる。
【0075】
以下、太陽電池評価装置100を用いて上記方法で短絡電流を求め、ソーラーシミュレータの調整を行う具体例及び変形例を説明する。具体例1では、測定対象の太陽電池(被評価太陽電池)の分光応答が線形である場合の処理を説明し、具体例2では、被評価太陽電池の分光応答が非線形である場合の処理を説明する。また、変形例では、相似光を複数の波長バンドごとに作成する場合の処理を説明する。
【0076】
<具体例1>
図8は、測定対象の太陽電池(被評価太陽電池)の分光応答が線形である場合の、ソーラーシミュレータ(主光源2)の調整処理を示すフローチャートである。
【0077】
測定を開始する前に、標準試験条件の分光放射照度EAM1.5 λ(λ)から、照射光エネルギーESTC=∫EAM1.5 λ(λ)dλを算出し、ESTCを演算制御部17内のメモリに記憶しておく。
【0078】
まず、測定者が太陽電池5をセットし、測定開始コマンドを設定部15から入力すると、演算制御部17は、I−V測定部14から出力される太陽電池5の両端の電圧を0(ゼロ)にセットする(ステップS11)。
【0079】
測定開始コマンドが設定部15から入力されると、演算制御部17は、主光源駆動制御部1を制御し、予め設定されている放射照度の光(測定光)を主光源2から照射させる(ステップS12)。尚、放射照度は任意であるが、太陽光と同程度になるように大まかに設定しておけばよく、また、ここで測定者が、放射照度を調整してもよい。
【0080】
演算制御部17は、シャッター制御部11を制御してシャッター10を遮断状態にする。主光源光のみが照射された状態で短絡電流IがI−V測定部14によって測定され、演算制御部17は測定された短絡電流IをI−V測定部14から取得して記憶する(ステップS13)。次に、演算制御部17は、シャッター制御部11を制御してシャッター10を透過状態にする(ステップS14)。すなわち、太陽電池5には重畳光が照射された状態となる。重畳光が照射された状態で短絡電流IがI−V測定部14によって測定され、演算制御部17は測定された短絡電流IをI−V測定部14から取得して記憶する(ステップS15)。
【0081】
演算制御部17は、重畳光が照射された状態で測定された短絡電流Iと、主光源光のみが照射された状態で測定された短絡電流Iとの差分(増分)dIを算出する(ステップS16)。
【0082】
次に、相似光の放射照度dEが相似光測定部13によって測定され(ステップS17)、演算制御部17は、放射照度dEを相似光測定部13から取得し、その後、シャッター制御部11を制御してシャッター10を遮断状態にする(ステップS18)。相似光の放射照度dEを記憶している場合は、記憶されているdEを用いる。この場合は、放射照度検知器12及び相似光測定部13は無くてもよい。
【0083】
演算制御部17は、短絡電流ISTC=(dI/dE)×ESTCを算出する(ステップS19)。これで、太陽電池5のEAM1.5 λ(λ)の光による短絡電流ISTCが求められたことになる。演算制御部17は、求めた短絡電流ISTCを表示部16に表示する。
【0084】
演算制御部17は、主光源駆動制御部1を制御して、太陽電池5の短絡電流が、算出されたISTCと同じになるように、主光源2の光強度を調整する(ステップS20)。これで、主光源2(ソーラーシミュレータ)の調整が完了したことになる。
【0085】
演算制御部17は、調整が済んだ主光源2(ソーラーシミュレータ)を用いて、太陽電池5のI−V特性を測定する(ステップS21)。尚、ステップS20およびステップS21を測定者が行ってもよい。
【0086】
<具体例2>
図9は、測定対象の太陽電池(被評価太陽電池)の分光応答が非線形である場合の、ソーラーシミュレータ(主光源2)の調整処理を示すフローチャートである。分光応答が非線形である場合は、主光源2から照射される主光源光の強度を段階的に強くし、それぞれの強度において相似光を重畳する。その都度、短絡電流を測定する。測定した短絡電流と相似光の放射照度とから、分光放射スペクトルが標準試験条件の光のスペクトルに相似な光の放射照度Eを算出し、このEが標準試験条件の照射光エネルギーESTCと同じときの短絡電流を算出して、太陽電池5のEAM1.5 λ(λ)の光による短絡電流Iとする。尚、図8のフローチャートのステップS13〜18の処理、すなわち、主光源からの光のみを照射した場合と、相似光を重畳した重畳光を照射した場合との短絡電流の差分を求め、相似光の放射照度を測定する処理は、太陽電池の分光応答が非線形であるので、主光源(主光源2)の光強度を変える都度に実行されることになる(図9のフローチャートのステップS34〜39の処理参照)。
【0087】
測定を開始する前に、ESTCを演算制御部17内のメモリに記憶しておく。
【0088】
まず、測定者が太陽電池5をセットし、測定開始コマンドを設定部15から入力すると、演算制御部17は、I−V測定部14から出力される太陽電池5の両端の電圧を0(ゼロ)にセットする(ステップS31)。
【0089】
測定開始コマンドが設定部15から入力されると、演算制御部17は、主光源駆動制御部1を制御し、初期設定の放射照度の光を主光源2から照射させる(ステップS32)。この初期設定の放射照度は、太陽光と同程度よりも十分弱く設定しておく。また、演算制御部17は、変数E-1とインデックスjに0(ゼロ)を設定する(ステップS33)。変数Ejは、演算で求めた照射光エネルギーを格納する変数であり、インデックスjは、主光源2の光強度の変更回数を示すインデックスである。
【0090】
次に、演算制御部17は、シャッター制御部11を制御してシャッター10を遮断状態にする。主光源光のみが照射された状態で短絡電流IがI−V測定部14によって測定され、演算制御部17は測定された短絡電流IをI−V測定部14から取得して記憶する(ステップS34)。シャッター制御部11を制御してシャッター10を透過状態にする(ステップS35)。すなわち、太陽電池5には重畳光が照射された状態となる。重畳光が照射された状態で短絡電流I+dIがI−V測定部14によって測定され、演算制御部17は測定された短絡電流I+dIをI−V測定部14から取得して記憶する(ステップS36)。
【0091】
演算制御部17は、重畳光が照射された状態で測定された短絡電流I+dIと、主光源光のみが照射された状態で測定された短絡電流Iとの差分dIを算出する(ステップS37)。このdIは、図5のΔIに相当する。
【0092】
次に、相似光の放射照度dEが相似光測定部13によって測定され(ステップS38)、演算制御部17は、放射照度dEを相似光測定部13から取得する。相似光の放射照度dEを予め記憶している場合は、記憶されているdEを取得する。その後、シャッター制御部11を制御してシャッター10を遮断状態にする(ステップS39)。
【0093】
演算制御部17は、R=dE/dIを算出し(ステップS40)、図5のΔEに相当する値を以下の式で算出する。
ΔE=0.5×(Rj−1+R)×(I−Ij−1
そして、j=j−1の時に算出したEにΔEを加算して、現時点のEを求める(ステップS41)。尚、j=0のときは、Rj−1=R、及び、Ij−1=0(ゼロ)として算出する。
【0094】
演算制御部17は、現時点のEとESTCとを比較し(ステップS42)、その差が予め決められている誤差の範囲内であって、ほぼ同じであると判断される場合は(ステップS42:YES)、Iを、太陽電池5のEAM1.5 λ(λ)の光による短絡電流ISTCであると判断する(ステップS43)。この時点でIはISTCになっているから主光源2(ソーラーシミュレータ)の調整が完了したことになる。
【0095】
また、ステップS42において、Ej-1<ESTC、かつ、E>ESTCになった場合、すなわち、ESTCがEj-1とEとの間の値となっ場合、演算制御部17は、Ij-1、I、Ej-1、Eから直線補間でESTCに対応するISTCを算出する(ステップS43)。尚、一連のI、Eから多項式補間でESTCに対応するISTCを算出してもよい。そして、演算制御部17は、太陽電池5の短絡電流が、算出されたISTCと同じになるように、主光源2の光強度を調整する(ステップS44)。これで、主光源2(ソーラーシミュレータ)の調整が完了したことになる。
【0096】
演算制御部17は、求めた短絡電流ISTCを表示部16に表示する。
【0097】
演算制御部17は、調整が済んだ主光源2(ソーラーシミュレータ)を用いて、太陽電池5のI−V特性を測定する(ステップS45)。尚、ステップ44及びステップ45は測定者が行ってもよい。
【0098】
一方、ステップS42において、現時点のEとESTCとを比較し、同じでないと判断される場合(ステップS42:NO)、演算制御部17は、主光源駆動制御部1を制御して、主光源2の放射照度を所定量増加させ(ステップS47)、インデックスjに1加算する(ステップS46)。そして、ステップS34からの処理を行う。
【0099】
<変形例>
本変形例では、相似光を複数の波長バンドごとに作成する場合の処理を説明する。
【0100】
現実には、相似光を得ること、例えば、ハロゲンランプとフィルターとの組み合わせ、又は、Xeランプとフィルターとの組み合わせで所望の微小重畳光のスペクトルを得ることは難しいことが多い。
【0101】
例えば、AM1.5の太陽光スペクトルは、水の吸収帯において、その強度が低下している。従って、Xeランプとフィルターとの組み合わせを用いて得た相似光は、水の吸収帯の部分では、理想的な相似光との一致度が悪くなる。その場合に相似光を得るには、水の吸収がある波長バンドと、それ以外の波長バンドに分割して、波長バンドiの光Ei(λ) (λi≦λ<λi+1, i=0,1,・・・,N-1)を照射すればよい。λ0は測定対象の太陽電池の分光応答s~(Ij,λ)が0(ゼロ)より大きい最小の波長、λNは太陽電池のs~(Ij,λ)が0(ゼロ)より大きい最大の波長である。
【0102】
Ei(λ)は、
Σi=0N-1 αi・Ei(λ)=dEj・{E(λ)/∫λ0λN E(λ')dλ'}
を満足するように、すなわち波長バンドiの分光放射スペクトルEi(λ)を荷重加減算したスペクトルがE(λ)に相似になるように選ばれる。また、αiは、Ei(λ)とE(λ)の関係に基づいて事前に決定される。
【0103】
E(λ)はAM1.5の太陽光の分光放射照度とし、dEjはAM1.5の太陽光の分光放射照度と相似な微小な光の放射照度である。
【0104】
具体的には、太陽電池にシミュレータの光を照射して短絡電流Ijが得られている状態で、波長バンド0の光を重畳照射する。このときの短絡電流Ijからの増分dIj0を算出し、重畳照射した波長バンド0の光の放射照度dE'j0を校正された線形素子(基準検知器)で測定する。
【0105】
同様に順次、波長バンド1,2,・・・,i , i+1,・・・,N-1の光を、短絡電流Ijが得られている状態で重畳照射して、短絡電流のIjからの増分dIji及び重畳照射した波長バンドiの光の放射照度dE'jiを校正された線形素子で測定する。増分dIji
dIji=∫λ0λNs~(Ij,λ)・Ei(λ)dλ
である。dE'ji
dE'ji=∫λ0λNEi(λ)dλ
dE'jiに重み係数を用いて荷重加減算して次式によりdEjを算出する。・・・(処理A)
Σi=0N-1 αi・dE'ji=∫λ0λN Σi=0N-1 αi・Ei(λ)dλ
=dEj・∫λ0λN{E(λ)/∫λ0λN E(λ')dλ'}=dEj
一方増分dIjiに重み係数を用いて荷重加減算
dIji=0N-1 αi・dIjiを算出する。・・・(処理B)
dIji=0N-1 αi・dIji=∫λ0λNs~(Ij,λ)・{Σi=0N-1 αi・Ei(λ)}dλ
=dEj・∫λ0λNs~(Ij,λ)・E(λ)dλ/∫λ0λN E(λ')dλ'
である。
これらよりR(Ij)=(dEj/dIj)を算出する。・・・(処理C)
R(Ij)が算出できれば、上述の<短絡電流の算出方法>の説明と同様に、複数のシミュレータの光強度の状態でR(Ij)=(dEj/dIj) (j=0,1,2,・・・)を算出し、
ESTC=∫0Isc R(I)dI
を満足するIscを求める。このIscが標準試験条件のときの短絡電流ISTCである。すなわち、s~(I,λ)を測定することなしに太陽電池の標準試験条件における短絡電流を算出できる。太陽電池の短絡電流を測定して、それがISTCになるようにソーラーシミュレータを調整すればよい。
【0106】
尚、基準検知器は波長バンド毎に校正されているものとする。
【0107】
また、波長バンドの微弱な光それぞれのスペクトルは単色光でも、単色光よりも広い波長幅のスペクトルでもよい。さらに連続スペクトルを有するものであってもよい。それらの光強度を荷重加減算することにより評価したい光のスペクトル(例えばAM1.5など標準試験条件の光)に相似な微弱なスペクトルを得ることができるものであればよい。この場合はαiは負のものがあってもよい。
【0108】
図10は、相似光を複数の波長バンドごとに作成して、非線形の太陽電池を用いて、ソーラーシミュレータ(主光源2)の調整を行う処理を示すフローチャートである。尚、図10のフローチャートのステップS55〜63の処理、すなわち、主光源からの光のみを照射した場合と、相似光を重畳した重畳光を照射した場合との短絡電流の差分を求め、相似光の放射照度を測定する処理は、主光源(主光源2)の光強度を変えて、波長バンドを変える都度に実行されることになる。
【0109】
測定を開始する前に、ESTCを演算制御部17内のメモリに記憶しておく。また、波長バンドはN個に分割されているものとする。すなわち、波長バンド0〜波長バンドN−1の波長の光(以下、「スペクトル光」という。)を順次重畳する。
【0110】
まず、測定者が太陽電池5をセットし、測定開始コマンドを設定部15から入力すると、演算制御部17は、I−V測定部14から出力される太陽電池5の両端の電圧を0(ゼロ)にセットする(ステップS51)。
【0111】
測定開始コマンドが設定部15から入力されると、演算制御部17は、主光源駆動制御部1を制御し、初期設定の放射照度の光を主光源2から照射させる(ステップS52)。この初期設定の放射照度は、太陽光と同程度よりも弱く設定しておく。また、演算制御部17は、変数E-1とインデックスjに0(ゼロ)を設定する(ステップS53)。変数Ejは、演算で求めた照射光照度を格納する変数であり、インデックスjは、主光源2の光強度の変更回数を示すインデックスである。
【0112】
また、演算制御部17は、変数dI、dE、及び、インデックスiに0(ゼロ)を設定する(ステップS54)。インデックスiは、波長バンド数をカウントするインデックスである。変数dIは、短絡電流の増分を格納する変数であり、変数dEは、スペクトル光の放射照度を格納する変数である。
【0113】
次に、演算制御部17は、シャッター制御部11を制御してシャッター10を遮断状態にする。主光源光のみが照射された状態で短絡電流IがI−V測定部14によって測定され、演算制御部17は測定された短絡電流IをI−V測定部14から取得して記憶する(ステップS55)。
【0114】
演算制御部17は、相似光用光源駆動制御部6を制御して、波長バンドiのスペクトル光を照射させ、シャッター制御部11を制御してシャッター10を透過状態にする(ステップS56)。すなわち、太陽電池5には、主光源の光に波長バンドiのスペクトル光が重畳された重畳光が照射された状態となる。
【0115】
重畳光が照射された状態で短絡電流I+dIjiがI−V測定部14によって測定され、演算制御部17は測定された短絡電流I+dIjiをI−V測定部14から取得して記憶する(ステップS57)。
【0116】
演算制御部17は、重畳光が照射された状態で測定された短絡電流I+dIjiと、主光源の光のみが照射された状態で測定された短絡電流Iとの差分dIjiを算出し、記憶する(ステップS58)。演算制御部17は上述の(処理B)で示すように、差分dIjiを所定の重み係数αiで荷重加減算してdIを算出し、記憶する(ステップS59)。重み係数αiは事前に算出されて記憶されているものとする。
【0117】
次に、スペクトル光の放射照度dEjiが相似光測定部13によって測定され、演算制御部17が記憶する(ステップS60)。波長バンドiの光の放射照度dEjiは事前に測定して記憶しておき、ステップS60ではその値を読み出してもよい。演算制御部17は、上述の(処理A)で示すように、放射照度dEjiを前記の所定の重み係数αiで荷重加減算してdEを算出し、記憶する(ステップS61)。次に、演算制御部17は、シャッター制御部11を制御してシャッター10を遮断状態にする(ステップS62)。
【0118】
演算制御部17は、すべての波長バンドにおいて、それぞれの短絡電流の増分とスペクトル光の放射照度とを測定したかを判断する(ステップS63)。具体的には、iとN−1とを比較し、iの方が小さい場合は(ステップS63:NO)、まだ測定されていないと判断し、iに1加算して(ステップS70)、ステップS55からの処理を行う。一方、iとN−1が同じ場合は(ステップS63:YES)、すべての波長バンドにおける測定が終了したと判断し、照射光エネルギーEを求める処理を始める。
【0119】
次に、演算制御部17は、上述の(処理C)で示すように、Rを算出する(ステップS64)。
【0120】
演算制御部17は、図5のΔEに相当する値を以下の式で算出する。
ΔE=0.5×(Rj−1+R)×(I−Ij−1
そして、j=j−1の時に算出したEにΔEを加算して、現時点のEを求める(ステップS65)。
【0121】
演算制御部17は、現時点のEとESTCとを比較し(ステップS66)、同じであると判断される場合は(ステップS66:YES)、Iを、太陽電池5のEAM1.5 λ(λ)の光による短絡電流ISTCとする(ステップS67)。この時点でIはISTCになっているから主光源2(ソーラーシミュレータ)の調整が完了したことになる。
【0122】
また、ステップS66において、Ej-1<ESTC、かつ、E>ESTCになった場合、演算制御部17は、Ij-1、I、Ej-1、Eから直線補間でESTCに対応するISTCを算出する(ステップS67)。尚、一連のI、Eから多項式補間でESTCに対応するISTCを算出してもよい。そして、演算制御部17は、太陽電池5の短絡電流が、算出されたISTCと同じになるように、主光源2の光強度を調整する(ステップS68)。これで、主光源2(ソーラーシミュレータ)の調整が完了したことになる。
【0123】
演算制御部17は、求めた短絡電流ISTCを表示部16に表示する。
【0124】
演算制御部17は、調整が済んだ主光源2(ソーラーシミュレータ)を用いて、太陽電池5のI−V特性を測定する(ステップS69)。尚、ステップ68及びステップ69は測定者が行ってもよい。
【0125】
一方、ステップS66において、現時点のEとESTCとを比較し、同じでないと判断される場合(ステップS66:NO)、演算制御部17は、主光源駆動制御部1を制御して、主光源2の放射照度を所定量増加させ(ステップS72)、インデックスjに1加算する(ステップS71)。そして、ステップS54からの処理を行う。
【0126】
尚、この変形例の他の形態として、重畳する光として微弱連続スペクトルと(複数の)特定波長バンドの微弱光を切り替えて用いてもよい。この場合は、[微弱連続スペクトル+{Σi αi*特定波長バンドの微弱光i}]が、評価すべき分光放射照度スペクトルと相似形になるようにする。αiは負の量のものを含んでいてもよい。演算制御部17は、
dEj=微弱連続スペクトルの放射照度+{Σi αi*(特定波長バンドの微弱光の放射照度i)
dIj=微弱連続スペクトル重畳による電流増分+Σi αi*(特定波長バンドの微弱光重畳による電流増分i)
よりR(Ij)=dEj/dIjを算出する。
【0127】
更に、もう一つの形態として、重畳する光としてスペクトル形状の異なる複数の微弱連続スペクトル光を切り替えて用いてもよい。この場合は、{Σi αi*微弱連続スペクトル光i}が評価すべき分光放射照度スペクトルと相似形になるようにする。演算制御部17は、
dEj={Σi αi*微弱連続スペクトル光i}
dIji αi*(微弱連続スペクトル光iの重畳による電流増分i)
よりR(Ij)=dEj/dIjを算出する。
【0128】
また、実施形態では、相似光等の重畳する光を、ソーラーシミュレータ(主光源)とは別の手段で照射してソーラーシミュレータの光と重畳することとしているが、変化分のスペクトルがEAM1.5(λ)などの評価光の光のスペクトルに相似で放射照度が小さくなるようにソーラーシミュレータの光を少し変化させてもよい。変化させて作るスペクトル光は複数であってもよい。この場合は、ソーラーシミュレータの所定強度の光を基準として(すなわち、実施形態の主光源光に相当するものとして)、その基準強度からの差分を用いて、短絡電流を算出する。尚、この場合は、主光源の放射照度を測定する機能部が必要となる。
【0129】
具体的には、主光源から、複数種類の強度jの光を被試験太陽電池に照射する。更に、主光源は、各強度jの基準状態(j,0)から、N種類の主光源の強度、及び、スペクトルのうち、少なくとも一方を微小量変化させて、状態(j,i) (i=1,2,…N)の光を照射できるものとする。
【0130】
各状態(j,i)は、{N種類の状態(j,i)のスペクトル − 基準状態(j,0)のスペクトル}のiについての荷重加減算値が、前記評価光のスペクトルに相似になるように微小量変化させたものとなっている。
【0131】
演算制御部17は、微小量変化させた状態(j,i)の放射照度を測定し、{微小量変化させた状態(j,i)の放射照度 − 基準状態(j,0)の放射照度}を算出して、そのiについての荷重加減算値を得る。また、微小量変化させた状態(j,i)の短絡電流を測定し、{微小量変化させた状態(j,i)の短絡電流−基準状態(j,0)の短絡電流}を算出して、そのiについての荷重加減算値を得る。
【0132】
そして、演算制御部17は、主光源の各強度jについての前記放射照度変化量の荷重加減算値と短絡電流の変化量の荷重加減算値と基準状態(j,0)の短絡電流とに基づいて、上記<短絡電流算出方法>で説明したのと同様に、短絡電流を算出する。基準状態(j,0)の短絡電流は<短絡電流の算出方法>で説明した代表短絡電流に相当する。
【0133】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更及び/又は改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態又は改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態又は当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【符号の説明】
【0134】
1 主光源駆動制御部
2 主光源
3a 3b 光学系
4 9 光カプラ
5 太陽電池
6 相似光用光源駆動制御部
7 相似光用光源
10 シャッター
11 シャッター制御部
12 放射照度検知器
13 相似光測定部
14 I−V測定部
15 設定部
16 表示部
17 演算制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の太陽電池に、所定のスペクトルと所定の放射照度を持った測定光を照射することが可能であって、前記太陽電池に、特定の光と実質的に相似のスペクトルを持ち、当該特定の光の放射照度よりも低い放射照度を持った相似光と当該測定光とを重畳した重畳光を照射することが可能である照射部と、
前記測定光、又は、前記重畳光を受けたときの前記太陽電池の短絡電流を、それぞれ測定する測定部と、
前記測定光を受けたときに前記測定部で測定された第1短絡電流と前記重畳光を受けたときに前記測定部で測定された第2短絡電流との差分、及び、前記相似光の放射照度に基づいて、前記太陽電池が前記特定の光を受けたときの第3短絡電流を算出する短絡電流算出部と
を備えることを特徴とする太陽電池評価装置。
【請求項2】
前記照射部は、前記測定光を照射する第1光源部と、前記相似光を照射する第2光源部とから成り、
前記第1光源部は、放射照度がそれぞれ異なる複数の測定光を照射し、
前記短絡電流算出部は、前記複数の測定光それぞれについて、前記太陽電池が測定光を受けたときに前記測定部で測定された第1短絡電流と、当該測定光と前記相似光とを重畳した重畳光を受けたときに前記測定部で測定された第2短絡電流との差分を求め、そして、前記複数の測定光それぞれについての第1短絡電流又は第2短絡電流と、前記複数の測定光それぞれについて求めた前記各差分、及び、前記相似光の放射照度に基づいて、前記太陽電池が前記特定の光を受けたときの第3短絡電流を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池評価装置。
【請求項3】
前記太陽電池評価装置は、更に、前記第2光源部が照射する前記相似光の放射照度を測定する放射照度測定部を備え、
前記短絡電流算出部は、前記複数の測定光それぞれについて、前記太陽電池が測定光を受けたときに前記測定部で測定された第1短絡電流と、当該測定光と前記相似光とを重畳した重畳光を受けたときに前記測定部で測定された第2短絡電流との差分を求め、そして、前記複数の測定光それぞれについての第1短絡電流又は第2短絡電流と、前記複数の測定光それぞれについて求めた前記各差分、及び、前記放射照度測定部が測定した前記相似光の放射照度に基づいて、前記太陽電池が前記特定の光を受けたときの第3短絡電流を算出する
ことを特徴とする請求項2に記載の太陽電池評価装置。
【請求項4】
前記太陽電池評価装置は、更に、前記特定の光の放射照度を記憶する記憶部を備え、
前記短絡電流算出部は、前記複数の測定光それぞれについて求めた各差分と前記第1短絡電流又は第2短絡電流と前記相似光の放射照度とから、前記複数の測定光それぞれのときの前記太陽電池の短絡電流を得るための特定の光と相似なスペクトルの各放射照度をそれぞれ算出し、算出した各放射照度の中から放射照度が前記特定の光の放射照度と近似している放射照度を選択し、この選択した放射照度と対応する前記太陽電池の短絡電流を、前記太陽電池が前記特定の光を受けたときの第3短絡電流とする
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の太陽電池評価装置。
【請求項5】
前記照射部は、前記測定光を照射する第1光源部と、スペクトルがそれぞれ異なる複数のスペクトル光であって、当該複数のスペクトル光を所定の重み係数で荷重加減算したスペクトルが前記特定の光のスペクトルと実質的に相似で放射照度が特定の光の放射照度より小さい光となる当該複数のスペクトル光を順に照射する第2光源部とから成り、
前記第1光源部は、放射照度がそれぞれ異なる複数の測定光を照射し、
前記短絡電流算出部は、前記複数の測定光それぞれについて、前記第2光源部の複数のスペクトル光を順に前記測定光に重畳した重畳光を受けたときの各第2短絡電流と前記太陽電池が測定光のみを受けたときの第1短絡電流との各差分を求め、求めた各差分に前記所定の重み係数で荷重加減算した第1荷重加減算値を求め、順次重畳される複数のスペクトル光の放射照度を前記所定の重み係数で荷重加減算した第2荷重加減算値を求め、そして、前記複数の測定光それぞれについて求めた各第1短絡電流、前記第1荷重加減算値、及び、第2荷重加減算値に基づいて、前記太陽電池が前記特定の光を受けたときの第3短絡電流を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池評価装置。
【請求項6】
前記短絡電流測定装置は、更に、前記第2光源部が照射する光の放射照度を測定する放射照度測定部を備え、
前記放射照度測定部で測定した前記第2光源部の複数のスペクトル光の放射照度を前記所定の重み係数で荷重加減算した第2荷重加減算値を求める
ことを特徴とする請求項5に記載の太陽電池評価装置。
【請求項7】
前記第2光源部が照射する複数のスペクトル光は、互いに波長帯域が異なる
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の太陽電池評価装置。
【請求項8】
前記測定光は、前記太陽電池に照射したときの短絡電流の差異が小さく、スペクトルがそれぞれ異なる複数のスペクトル光の組みの複数組みからなり、各組の前記短絡電流が異なるものであって、各組のなかの複数のスペクトル光を少なくともひとつの負の重み係数を含む各組の所定の重み係数で荷重加減算したスペクトルが前記特定の光のスペクトルと実質的に相似で放射照度が特定の光の放射照度より小さい光となるものであって、
前記照射部は、各組の複数のスペクトル光それぞれを順に照射し、
前記測定部は、複数組みのそれぞれの組について、各組の複数のスペクトル光それぞれを受けたときの前記太陽電池の短絡電流を測定し、
前記短絡電流算出部は、複数組みのそれぞれの組について、前記各組において、複数のスペクトル光それぞれについて、当該組を代表する代表短絡電流を求めるとともに、各組の複数のスペクトル光それぞれを受けたときの短絡電流を当該組の所定の重み係数で荷重加減算した1荷重加減算値を求め、前記複数のスペクトル光の放射照度を当該組の所定の重み係数で荷重加減算した第2荷重加減算値を求め、そして、前記複数の測定光のそれぞれの組における、各代表短絡電流、各第1荷重加減算値、及び、各第2荷重加減算値に基づいて、前記太陽電池が前記特定の光を受けたときの第3短絡電流を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池評価装置。
【請求項9】
前記短絡電流測定装置は、更に、前記照射部が照射する前記各組の前記複数のスペクトル光の放射照度を測定する放射照度測定部を備え、
前記放射照度測定部で測定した各組の複数のスペクトル光の放射照度を当該組の所定の重み係数で荷重加減算した第2荷重加減算値を求める
ことを特徴とする請求項8に記載の太陽電池評価装置。
【請求項10】
前記短絡電流算出部が算出した第3短絡電流と、前記測定部で測定される前記太陽電池の短絡電流とが近似するように、前記照射部が照射する照射光の放射照度又は分光照射照度を変更する調整部を更に備える
ことを特徴とする請求項1ないし9の何れか1項に記載の太陽電池評価装置。
【請求項11】
前記短絡電流算出部が算出した第3短絡電流と、前記測定部で測定される前記太陽電池の短絡電流とが近似するように、前記第1光源部が照射する照射光の放射照度又は分光照射照度を変更する調整部を更に備える
ことを特徴とする請求項2ないし7の何れか1項に記載の太陽電池評価装置。
【請求項12】
前記太陽電池の特性を評価する特性評価部を更に備え、
前記調整部で変更された照射光を受けたときの前記太陽電池の特性を評価する
ことを特徴とする請求項10又は11に記載の太陽電池評価装置。
【請求項13】
前記特性評価部は、前記太陽電池のI−V特性を評価するものである
ことを特徴とする請求項12に記載の太陽電池評価装置。
【請求項14】
太陽電池評価装置で用いられる太陽電池評価方法であって、
測定対象の太陽電池に、所定のスペクトルと所定の放射照度を持った測定光を照射することが可能であって、前記太陽電池に、特定の光と相似のスペクトルを持ち、当該特定の光の放射照度よりも低い放射照度を持った相似光と当該測定光とを重畳した重畳光を照射することが可能である照射ステップと、
前記測定光を受けたときの前記太陽電池の第1短絡電流、又は、前記重畳光を受けたときの前記太陽電池の第2短絡電流を、それぞれ測定する測定ステップと、
前記測定光を受けたときに前記測定ステップで測定された第1短絡電流と前記重畳光を受けたときに前記測定ステップで測定された第2短絡電流との差分、前記第1短絡電流、及び、前記相似光の放射照度に基づいて、前記太陽電池が前記特定の光を受けたときの第3短絡電流を算出する短絡電流算出ステップと
を備えることを特徴とする太陽電池評価方法。
【請求項15】
太陽電池評価装置で用いられる太陽電池評価方法であって、
測定対象の太陽電池に、所定のスペクトルと所定の放射照度を持った測定光を照射することが可能であって、前記太陽電池に、当該測定光と、所定の重み係数で荷重加減算すると特定の光と実質的に相似のスペクトルを持ち、当該特定の光の放射照度よりも低い放射照度になる複数の異なるスペクトルの光とを順次重畳した光を照射することが可能である照射ステップと、
前記測定光受けたときの前記太陽電池の第1短絡電流、又は、前記重畳光を受けたときの前記太陽電池の各第2短絡電流を、それぞれ測定する測定ステップと、
前記測定光を受けたときに前記測定ステップで測定された第1短絡電流と前記重畳光を受けたときに前記測定ステップで測定された各第2短絡電流を前記所定の重み係数で荷重加減算した第1荷重加減算値との差分と、前記第1短絡電流、及び前記複数の異なるスペクトルの光の放射照度を前記所定の重み係数で荷重加減算した第2荷重加減算値に基づいて、前記太陽電池が前記特定の光を受けたときの第3短絡電流を算出する短絡電流算出ステップと
を備えることを特徴とする太陽電池評価方法。
【請求項16】
太陽電池評価装置で用いられる太陽電池評価方法であって、
測定対象の太陽電池に、所定のスペクトルと所定の放射照度を持った測定光を照射することが可能であって、前記太陽電池に、少なくともひとつの負の重み係数を含む所定の重み係数で荷重加減算すると特定の光と実質的に相似のスペクトルを持ち、当該特定の光の放射照度よりも低い放射照度になる複数の異なるスペクトルの光を順次照射することが可能である照射ステップと、
前記複数の異なるスペクトルの光を受けたときの前記太陽電池の短絡電流を、それぞれ測定する測定ステップと、
前記所定の重み係数で荷重加減算して第1荷重加減算値と、前記複数の異なるスペクトルの光を受けたときの前記短絡電流から算出したそれらを代表する代表短絡電流、及び前記複数の異なるスペクトルの光の放射照度を前記所定の重み係数で荷重加減算した第2荷重加減算値に基づいて、前記太陽電池が前記特定の光を受けたときの第3短絡電流を算出する短絡電流算出ステップと
を備えることを特徴とする太陽電池評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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