太陽電池電解液に用いられる化合物及びその製造方法、並びにその化合物を含有する電解液及び太陽電池
【課題】本発明は、太陽電池電解液に用いられる化合物及びその製造方法、並びにその化合物を含有する電解液及び太陽電池を提供する。
【解決手段】本発明は、下記式(I)で表される化合物を提供する。
式中、AはC2-3アルキレン基であり、mは2〜25の整数であり、nは3〜10の整数である。
さらに、本発明は、前記式(I)で表される化合物及び/又は式(II)で表される化合物を含有する色素増感太陽電池電解液を提供することにより、光電変換効率を向上させる。
【解決手段】本発明は、下記式(I)で表される化合物を提供する。
式中、AはC2-3アルキレン基であり、mは2〜25の整数であり、nは3〜10の整数である。
さらに、本発明は、前記式(I)で表される化合物及び/又は式(II)で表される化合物を含有する色素増感太陽電池電解液を提供することにより、光電変換効率を向上させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池電解液に用いられる化合物、特に色素増感太陽電池電解液に用いられる化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
人類の文明が発展するにつれて、世界中が深刻なエネルギー危機及び環境汚染などの問題に直面することになった。従って、低汚染で永続的に生産され続けるエネルギーは、全世界のエネルギー開発の目標となっている。太陽エネルギーは、上記の要求を満たすエネルギーの一つである。太陽電池は、太陽エネルギーを電力に直接変換することができ、全世界のエネルギー危機の解決に寄与するだけでなく、環境汚染の低減という要求を満たすこともできる。一般的に、太陽電池は、主として、半導体太陽電池(例えば、シリコン太陽電池(silicon solar cell))、及び光電気化学(photoelectrochemistry)太陽電池(例えば、色素増感太陽電池(Dye-Sensitized Solar Cell、DSSC))に分けられる。近年、Gratzelらによって、一連の色素増感太陽電池に関連する文献(例えばO'Regan, B.; Gratzel, M. Nature 1991, 353, 737(非特許文献1))が発表された。色素増感太陽電池は、製造コストが低いのみならず、重量が軽く、可撓性と光透過性を有し、大面積の製品を容易に製造することが可能であるなどの優れた点を有する。従って、色素増感太陽電池は、その様々な優れた特性によって、極めて有望な太陽電池となってきている。
【0003】
一般的に、色素増感太陽電池の構造は、カソード/アノード電極を含む。そのうち、カソードは、基板に導電層及び多孔質材料(例えば、二酸化チタン粒子)からなる多孔質膜が形成され、その上に光増感色素が塗布されているものである。また、アノードとカソードの間に、さらに電解質(electrolyte)層が設けられる。電極に形成された光増感色素が太陽光を吸収すると、電位差を生じさせ、さらに電流を生じさせることができる。台湾特開第2008/10167号公報(特許文献1)には、ナノワイヤに形成されたナノ粒子を利用して、ナノ粒子が光増感色素と接触する面積を増加させる色素増感太陽電池が開示されている。台湾特開第2009/05939号公報(特許文献2)には、電子注入効率を高めることにより、電池の効能を向上させる色素増感太陽電池が開示されている。また、台湾特開第2010/17955号公報(特許文献3)には、DSSCの製造コストをさらに低減するための、色素増感太陽電池に適用されるゲル電解質が開示されている。また、台湾特開第2010/20295号公報(特許文献4)には、高いモル吸収係数を有する色素化合物が開示されている。台湾特開第2010/36983号公報(特許文献5)には、より好ましいスペクトル応答及び光電変換効率を有する全光領域の光増感錯体が開示されている。また、台湾実用新案M380573号公報(特許文献6)には、改良された構造を有する電極が開示され、この電極は、色素増感太陽電池の色素吸着量と太陽エネルギー吸収能力を向上させることができ、導電ユニットにおける電子と正孔の再結合を抑制することもでき、さらに色素増感太陽電池の光電変換効率を増加させることができる。また、韓国の建国大学(Konkuk University)は、2010年、Electrochimica Acta 55(2010) 1483-1488に、「新規なイミダゾール系電解質の合成、及び色素増感太陽電池への応用(Synthesis of a novel imidazolium-based electrolytes and application for dye-sensitized solar cells)」と題した文献(非特許文献2)を発表し、その文献には、ポリ尿素(polyurea)とイミダゾール系化合物(imidazolium-based compound)とを共重合させたイオン化合物は、色素増感太陽電池に応用することが可能であることが開示されている。その文献に係る特許出願は2011年に公開され、公開番号はKR.10−2011−011158(特許文献7)であり、従来の電解質成分の代わりにイオン化合物を使用して、電解液において中性の前駆化合物を添加剤として使用していないことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】台湾特開第2008/10167号公報
【特許文献2】台湾特開第2009/05939号公報
【特許文献3】台湾特開第2010/17955号公報
【特許文献4】台湾特開第2010/20295号公報
【特許文献5】台湾特開第2010/36983号公報
【特許文献6】台湾実用新案M380573号公報
【特許文献7】韓国公開特許第10-2011-011158号公報(KR.10−2011−011158)
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】O'Regan, B.; Gratzel, M. Nature 1991, 353, 737
【非特許文献2】Electrochimica Acta 55(2010) 1483-1488
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在、色素増感太陽電池は、光電変換効率こそシリコン太陽電池ほど優れてないものの、コストが低いため、その光電変換効率を改善することができれば、太陽電池のメジャーな技術になる可能性がある。電極構造、色素、電解液などはいずれも電池の変換効率に影響を与える。従って、如何にして、上記の要素を改良して色素増感太陽電池の効率を向上させるかが、太陽電池業界が早期解決を望む課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記式(I)で表される化合物を提供する。
【化1】
式中、AはC2−3アルキレン基であり、mは2〜25の整数であり、nは3〜10の整数である。
【0008】
本発明の一つの具体的な実施例によれば、Aはエチレン基であり、mは2〜25の整数である。本発明の一つの具体的な実施例によれば、Aはイソプロピレン基であり、mは2〜15の整数である。本発明の一つの具体的な実施例によれば、式(I)で表される化合物は、太陽電池電解液に用いられる。本発明の一つの具体的な実施例によれば、式(I)で表される化合物は、色素増感太陽電池の電解液の製造に用いられる。
【0009】
さらに、本発明は、下記式(II)で表される化合物を提供する。
【化2】
式中、nは3〜10の整数である。本発明の一つの具体的な実施例によれば、式(II)で表される化合物は、前記式(I)で表される化合物の製造に用いられる。本発明の一つの具体的な実施例によれば、式(II)で表される化合物は、太陽電池電解液に用いられる。本発明の一つの具体的な実施例によれば、式(II)で表される化合物は、色素増感太陽電池の電解液の製造に用いられる。
【0010】
また、本発明は、前記式(I)及び/又は式(II)で表される化合物を含有する色素増感太陽電池電解液を提供する。
【0011】
また、本発明は、基板と、多孔質半導体膜と、導電膜と、前記式(I)及び/又は式(II)で表される化合物を含有する電解液と、色素化合物とを含む色素増感太陽電池を提供する。
【0012】
さらに、本発明は、ポリアルキレングリコール(polyalkylene glycol)化合物と、ヘキサメチレンジイソシアネートと、前記式(II)で表される化合物とを反応させる工程を含む、前記式(I)で表される化合物の製造方法を提供する。
【0013】
本発明の一つの具体的な実施例によれば、式(I)で表される化合物の製造方法は、ポリアルキレングリコール(polyalkylene glycol)化合物とヘキサメチレンジイソシアネート(hexamethylene diisocyanate、HDI)とを反応させることによりポリウレタン化合物中間体を得る工程と、前記ポリウレタン化合物中間体と前記式(II)で表される化合物とを反応させる工程とを含む。本発明の一つの具体的な実施例によれば、式(I)で表される化合物の製造方法は、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)と式(II)で表される化合物とを反応させることにより中間体を得る工程と、前記中間体とポリアルキレングリコール化合物とを反応させる工程とを含む。
【0014】
本発明の一つの具体的な実施例によれば、ポリアルキレングリコール化合物は、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールから選ばれるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明で提供される式(I)及び式(II)で表される化合物は、色素増感太陽電池の電解液に用いることが可能である。本発明の一つの具体的な実施例によれば、本発明で提供される式(I)及び/又は式(II)で表される化合物は、色素増感太陽電池の電解液添加剤とすることができる。本発明の式(I)及び/又は式(II)で表される化合物を含有する電解液は、暗電流を防止し、開放電圧(Voc)の向上を促進することができる。また、本発明の式(I)及び式(II)で表される化合物は、色素増感太陽電池の光電変換効率を向上させることができ、産業上の要求を十分に満たす。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】合成例1の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図1B】合成例1のGC-MSスペクトルを示す図である。
【図2A】合成例2の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図2B】合成例2のGC-MSスペクトルを示す図である。
【図3A】合成例3の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図3B】合成例3のGC-MSスペクトルを示す図である。
【図4】HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート、hexamethylene diisocyanate)のFTIRスペクトルを示す図である。
【図5】実施例1によるFTIRスペクトルを示す図である。
【図6】実施例2によるFTIRスペクトルを示す図である。
【図7】実施例3によるFTIRスペクトルを示す図である。
【図8】実施例4によるFTIRスペクトルを示す図である。
【図9】実施例5によるFTIRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、特定の具体的な実施例により、本発明を実施するための形態を説明する。この技術分野に習熟した者は、本明細書に記載された内容によって本発明の他の優れた点や効果を理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施例によって実施又は応用することもでき、本明細書における各項の詳しい内容も、異なる観点と応用に基づいて、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各種の修正と変更を施すことができる。
【0018】
本願で使用される用語「重量平均分子量」は、溶剤としてテトラヒドロフラン(THF)を利用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)の値である。
【0019】
本発明は、式(I)で表される化合物を提供する。
【化3】
式中、AはC2−3アルキレン基であり、mは2〜25の整数であり、nは3〜10の整数である。
【0020】
本発明の一つの具体的な実施例によれば、Aはエチレン基であり、mは2〜25の整数である。これらの具体的な実施例の一部の態様において、mは3〜20である。これらの具体的な実施例の一部の態様において、mは5〜20である。
【0021】
本発明の一つの具体的な実施例によれば、Aはイソプロピレン基であり、mは2〜15の整数である。これらの具体的な実施例の一部の態様において、mは2〜10である。
【0022】
本発明の一つの具体的な実施例によれば、式(I)におけるnは3〜10の整数であり、好ましくは3〜8の整数であり、より好ましくは3〜6の整数である。
【0023】
本発明の一つの具体的な実施例によれば、式(I)で表される化合物は、太陽電池の電解液、特に色素増感太陽電池の電解液に添加され使用されることができる。
【0024】
本発明の一つの具体的な実施例によれば、式(I)で表される化合物は、太陽電池の電解液に用いられる。本発明の一つの具体的な実施例によれば、式(I)で表される化合物は、色素増感太陽電池の電解液の製造に用いられる。本発明の一つの具体的な実施例によれば、式(I)で表される化合物は、色素増感太陽電池の電解液添加剤とすることができる。
【0025】
さらに、本発明は、式(II)で表される化合物を提供する。
【化4】
式中、nは3〜10の整数である。
【0026】
本発明の一つの具体的な実施例によれば、好ましくは、nは3〜8の整数であり、より好ましくは3〜6の整数である。
【0027】
本発明の一つの具体的な実施例によれば、式(II)で表される化合物を使用して式(I)で表される化合物を製造することができる。
【0028】
本発明の一つの具体的な実施例によれば、式(II)で表される化合物は、太陽電池の電解液、特に色素増感太陽電池の電解液に添加され使用されることができる。
【0029】
本発明の一つの具体的な実施例によれば、式(II)で表される化合物は、太陽電池の電解液に用いられる。本発明の一つの具体的な実施例によれば、式(II)で表される化合物は、色素増感太陽電池の電解液の製造に用いられる。本発明の一つの具体的な実施例によれば、式(II)で表される化合物は、色素増感太陽電池の電解液添加剤とすることができる。
【0030】
本発明によれば、ポリアルキレングリコール(polyalkylene glycol)化合物と、ヘキサメチレンジイソシアネートと、上記式(II)で表される化合物とを反応させることにより、式(I)で表される化合物を製造する。
【0031】
本発明の一つの具体的な実施例によれば、ポリアルキレングリコール化合物とヘキサメチレンジイソシアネート(hexamethylene diisocyanate、HDI)とを反応させることによりポリウレタン(polyurethane)化合物中間体を得た後、続いて前記ポリウレタン化合物中間体と式(II)で表される化合物とを反応させる方法により、式(I)で表される化合物を製造することができる。
【0032】
ポリアルキレングリコール化合物の実例は、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールを含むが、それらに限定されない。本発明の一つの具体的な実施例によれば、重量平均分子量が100〜1000であり、好ましくは200〜800であり、より好ましくは300〜600であるポリエチレングリコール(PEG)を使用して、式(I)で表される化合物を製造する。本発明の一つの具体的な実施例によれば、重量平均分子量が200〜1000であり、好ましくは200〜800であり、より好ましくは200〜600であるポリプロピレングリコール(PPG)を使用して、式(I)で表される化合物を製造する。ポリアルキレングリコール化合物とヘキサメチレンジイソシアネートとの反応によるポリウレタン化合物中間体の製造において、通常、反応時間は2〜4時間であって、通常、反応温度は80〜95℃である。
【0033】
ポリアルキレングリコール化合物とヘキサメチレンジイソシアネート(hexamethylene diisocyanate、HDI)とを反応させることによりポリウレタン(polyurethane)化合物中間体を得た後、続いて前記ポリウレタン化合物中間体と式(II)で表される化合物とを反応させる。通常、反応時間は2〜4時間であって、反応温度は80〜95℃である。
【0034】
本発明のもう一つの具体的な実施例によれば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)と式(II)で表される化合物とを反応させることにより中間体を得た後、続いて前記中間体とポリアルキレングリコール化合物とを反応させる方法により、式(I)で表される化合物を製造することができる。
【0035】
本発明によれば、ベンズイミダゾールと式(III)で表される化合物とを反応させることにより、式(II)で表される化合物を製造することができる。
【化5】
式中、nは3〜10の整数である。
【0036】
本発明の一つの具体的な実施例によれば、好ましくは、nは3〜8の整数であり、より好ましくは3〜6の整数である。
【0037】
通常、反応は溶剤の存在下で行われる。溶剤としては、特に制限がなく、この技術分野において一般的に用いられる溶剤を使用することができる。一種又は二種以上の溶剤を使用してもよい。二種又はそれより多くの種類の溶剤の混合物を使用する場合、混合割合は特に限定されない。
【0038】
溶剤の実例は、トルエン(Toluene)、ジメチルホルムアミド(dimethyl formamide、DMF)などを含むが、それらに限定されない。一種又は二種以上の溶剤を使用してもよい。二種又はそれより多くの種類の溶剤の混合物を使用する場合、混合割合は特に限定されない。
【0039】
通常、反応はアルカリの存在下で行われる。
【0040】
アルカリの実例は、カリウム tert-ブトキシド(Potassium tert-butoxide)、水酸化ナトリウム(sodium hydroxide、NaOH)、水酸化カリウム(Potassium hydroxide、KOH)を含むが、それらに限定されない。
【0041】
本発明の式(I)及び/又は式(II)で表される化合物は、太陽電池の電解液、特に色素増感太陽電池の電解液に添加され使用されることができる。
【0042】
さらに、本発明は、色素増感太陽電池に用いられる電解液を提供する。
【0043】
本発明の一つの具体的な実施例によれば、色素増感太陽電池の電解液の成分は、ヨウ化金属、ヨウ化イミダゾリウム誘導体又はそれらの組み合わせから選ばれる塩と、ヨウ素と、チオシアン酸グアニジンと、前記式(I)及び/又は式(II)で表される化合物と、溶剤とを含む。
【0044】
ヨウ化金属、ヨウ化イミダゾリウム誘導体又はそれらの組み合わせから選ばれる塩の含有量は、電解液の総重量を基準として、1〜20重量%である。
【0045】
ヨウ化金属の実例は、ヨウ化カリウム(Potassium iodide)、ヨウ化リチウム(Lithium iodide)、ヨウ化ナトリウム(Sodium iodide)及びそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。好ましくは、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、及びそれらの組み合わせである。
【0046】
ヨウ化イミダゾリウム誘導体の実例は、ヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム(1-Methyl-3-propylimidazolium iodide、PMII)、ヨウ化1,3−ジメチルイミダゾリウム(1,3-Dimethylimidazolium iodide)、ヨウ化1−メチル−3−エチルイミダゾリウム(1-Methyl-3-ethylimidazolium iodide)、ヨウ化1−メチル−3−ブチルイミダゾリウム(1-Methyl-3-butylimidazolium iodide)、ヨウ化1−メチル−3−ペンチルイミダゾリウム(1-Methyl-3-pentylimidazolium iodide)、ヨウ化1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウム(1-Methyl-3-hexylimidazolium iodide)、ヨウ化1−メチル−3−ヘプチルイミダゾリウム(1-Methyl-3-heptylimidazolium iodide)、ヨウ化1−メチル−3−オクチルイミダゾリウム(1-Methyl-3-octylimidazolium iodide)、ヨウ化1,3−ジエチルイミダゾリウム(1,3-Diethylimidazolium iodide)、ヨウ化1−エチル−3−プロピルイミダゾリウム(1-Ethyl-3-propylimidazolium iodide)、ヨウ化1−エチル−3−ブチルイミダゾリウム(1-Ethyl-3-butylimidazolium iodide)、ヨウ化1,3−ジプロピルイミダゾリウム(1,3-Dipropylimidazolium iodide)、ヨウ化1−プロピル−3−ブチルイミダゾリウム(1-Propyl-3-butylimidazolium iodide)及びそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。好ましくは、ヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム、ヨウ化1−メチル−3−エチルイミダゾリウム、ヨウ化1−メチル−3−ブチルイミダゾリウム、ヨウ化1−メチル−3−ペンチルイミダゾリウム、ヨウ化1,3−ジエチルイミダゾリウム、ヨウ化1−エチル−3−プロピルイミダゾリウム、及びそれらの組み合わせである。一種又は二種以上のヨウ化イミダゾリウムを使用してもよい。二種又はそれより多くの種類のヨウ化イミダゾリウムの混合物を使用する場合、混合割合は特に限定されない。
【0047】
ヨウ素の含有量は、電解液の総重量を基準として、1〜3重量%である。
【0048】
チオシアン酸グアニジン(Guanidine thiocyanate、GuNCS)の含有量は、電解液の総重量を基準として、1〜3重量%である。
【0049】
式(I)又は式(II)で表される化合物の含有量は、電解液の総重量を基準として、8〜85重量%である。
【0050】
溶剤の含有量は、電解液の総重量を基準として、5〜80重量%である。
【0051】
色素増感太陽電池電解液に用いられる溶剤の実例は、アセトニトリル(Acetonitrile)、3-メトキシプロピオニトリル(3-Methoxyl-propionitrile、3-MPN)、N-メチルピロリドン(N-Methyl-2-pyrrolidone、NMP)、炭酸プロピレン(propylene carbonate)、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)を含むが、それらに限定されない。一種又は二種以上の溶剤を使用してもよい。二種又はそれより多くの種類の溶剤の混合物を使用する場合、混合割合は特に限定されない。
【0052】
本発明の一つの具体的な実施例によれば、色素増感太陽電池の電解液は、必要に応じて他の添加剤を含んでもよい。添加剤の実例は、有機アミンヨウ化水素酸塩、ベンズイミダゾール誘導体、ピリジン誘導体、及びそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。
【0053】
有機アミンヨウ化水素酸塩の実例は、トリエチルアミンヨウ化水素酸塩(Triethylamine hydroiodide、THI)、トリプロピルアミンヨウ化水素酸塩 (Tripropylamine hydroiodide)、トリブチルアミンヨウ化水素酸塩(Tributylamine hydroiodide)、トリペンチルアミンヨウ化水素酸塩(Tripentylamine hydroiodide)、トリヘキシルアミンヨウ化水素酸塩(Trihexylamine hydroiodide)、及びそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。好ましくは、トリエチルアミンヨウ化水素酸塩、トリプロピルアミンヨウ化水素酸塩、トリブチルアミンヨウ化水素酸塩、及びそれらの組み合わせである。より好ましくは、トリエチルアミンヨウ化水素酸塩である。一種又は二種以上の有機アミンヨウ化水素酸塩を使用してもよい。二種又はそれより多くの種類の有機アミンヨウ化水素酸塩の混合物を使用する場合、混合割合は特に限定されない。
【0054】
ベンズイミダゾール誘導体、ピリジン誘導体の実例は、N-メチルベンズイミダゾール(N-Methylbenzimidazole、NMBI)、N-ブチルベンズイミダゾール(N-Butylbenzimidazole、NBB)、4-tert-ブチルピリジン(4-tert-Butylpyridine、4-TBP)、及びそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。一種又は二種以上のベンズイミダゾール誘導体及び/又はピリジン誘導体を使用してもよい。二種又はそれより多くの種類のベンズイミダゾール誘導体及び/又はピリジン誘導体の混合物を使用する場合、混合割合は特に限定されない。
【0055】
上記の電解液を使用して色素増感太陽電池を製造することができる。
【0056】
本発明の一つの具体的な実施例によれば、色素増感太陽電池は、色素化合物を含有する光電アノード(photoanode)、カソード(cathode)、及び光電アノードとカソードとの間に設けられる電解液層(electrolyte layer)を含む。本発明の一つの具体的な実施例によれば、電解液層は、カソードと光電アノードとが接する表面に形成される。本発明の一つの具体的な実施例によれば、色素増感太陽電池は、基板と、多孔質半導体膜と、導電膜と、電解液と、色素化合物とを含む。
【0057】
本発明の一つの具体的な実施例によれば、色素増感太陽電池の電解液は、前記式(I)及び/又は式(II)で表される化合物を含む。本発明の一つの具体的な実施例によれば、本発明で提供される式(I)及び/又は式(II)で表される化合物は、色素増感太陽電池の電解液添加剤とすることができる。
【0058】
本発明の色素増感太陽電池の製造方法としては、特に制限がなく、この技術分野における従来の方法で製造することができる。
【0059】
一般的に、透明な基板を使用する。基板の材質は特に制限がなく、透明な基材であれば、いずれも使用可能である。好ましくは、基板の材質は、色素増感太陽電池の外から侵入した水分もしくは気体に対する優れた遮断性、耐溶剤性、耐候性などを有する透明基材である。基板の実例は、石英、ガラスなどの透明な無機材料から作製された基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリイミド(PI)などの透明なプラスチック基板を含むが、それらに限定されない。好ましくは、透明基板の材質はガラスである。また、基板の厚さは特に制限がなく、光透過率、色素増感太陽電池の特性の要求に応じて調整することができる。
【0060】
本発明の色素増感太陽電池に用いられる多孔質半導体膜は、半導体微粒子で作製することができる。適宜な半導体微粒子は、シリコン、二酸化チタン、二酸化スズ、酸化亜鉛、三酸化タングステン、五酸化ニオブ(Nb2O5)、三酸化チタンストロンチウム(SrTiO3)及びそれらの組み合わせを含んでもよい。好ましい半導体微粒子は二酸化チタンである。通常、半導体微粒子の平均粒径は5〜500nmであり、好ましくは10〜50nmである。多孔質半導体膜の厚さは5〜25μmである。色素増感太陽電池において、一層又は複数層の多孔質半導体膜を有しても良い。複数層の多孔質半導体膜を作製する場合、それぞれを異なる粒径の半導体微粒子で作製する。すなわち、複数層において、各層に含まれる半導体微粒子が異なっている。例えば、まず粒径が5〜50nmである半導体微粒子を塗布厚さが5〜20μmになるように塗布した後、粒径が200〜400nmである半導体微粒子を塗布厚さが3〜5μmになるように塗布することができる。
【0061】
本発明によれば、光電アノードの製造方法としては、特に制限がなく、この技術分野における従来の方法で製造することができる。ただし、半導体微粒子を使用して色素増感太陽電池における多孔質半導体膜を作製する場合、光電アノードを製造する時は、予め半導体微粒子をペースト状物に調製した後、それを透明な導電基板に塗布する(例えば、ドクターブレード、スクリーン印刷、スピンコート、スプレーなど又は一般的な湿式塗布法が挙げられるが、それらに限定されない)。また、適切な膜厚を得るために、一回又は複数回の塗布を行ってもよい。
【0062】
一般的には、透明な導電膜を使用する。導電膜の材料は、酸化インジウムスズ(ITO)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)、酸化亜鉛−酸化ガリウム(ZnO-Ga2O3)、酸化亜鉛−酸化アルミニウム(ZnO-Al2O3)、又はスズを基材とした酸化物材料であっても良い。
【0063】
色素化合物は、導電膜の上に設けられ、多孔質半導体膜の孔隙に充填される。色素化合物としては、特に制限がなく、この技術分野に一般的に用いられる色素化合物を使用することができる。色素増感太陽電池を製造する時は、色素化合物を適切な溶剤に溶かして色素溶液を調製することができる。溶剤の実例は、アセトニトリル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール(例えば、tert-ブタノール)、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン又はこれらの混合物を含むが、それらに限定されない。色素増感太陽電池を製造する時は、多孔質半導体膜が塗布された透明基板を色素溶液に浸漬し、色素溶液中の色素を多孔質半導体膜に十分に吸着させることができる。
【0064】
色素増感太陽電池におけるカソードの材料としては、特に制限がなく、伝導性を有するいずれの材料であってもよい。あるいは、光電アノードに対向する表面に伝導性を有する伝導層さえ形成されていれば、カソード材料は絶縁材料であっても良い。通常、電気化学的に安定な物質を使用してカソードを作製することができ、その物質の実例は、白金、金、炭素及びその類似物を含むが、それらに限定されない。
【0065】
電解液層は、カソードと多孔質半導体膜との間に設けられる。上で述べた電解液を使用して、色素増感太陽電池を製造することができる。
【0066】
本発明の一つの具体的な実施例によれば、導電膜と多孔質半導体膜とを有する基板に、色素化合物を塗布して光電アノードを製造することができる。さらに、カソードを形成した後、電解液を注入して色素増感太陽電池を製造する。
【0067】
実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、それらの実施例は本発明の範囲を限定するためのものではない。なお、特に指定しない限り、下記の実施例と比較例において、いずれかの成分の含有量及びいずれかの物質の量を示す「%」及び「重量部」は重量基準である。
【実施例】
【0068】
下記の実施例は例示的に本発明の組成物と製造方法を述べるものに過ぎず、本発明を限定するものではない。この技術分野に習熟した者は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱しない限り、下記の実施例に各種修正と変更を施すことができる。従って、本発明の権利保護範囲は、本発明の特許請求の範囲に記載されるとおりである。
【0069】
式(II)で表される化合物の製造
【化6】
【0070】
合成例1
1−ベンズイミダゾールプロパノール(1-Benzimidazolepropanol)(化合物(IIa))
ベンズイミダゾール(Benzimidazole)(14.176g、0.12mol)とカリウム tert-ブトキシド(Potassium tert-butoxide)(14.80g、0.132mol)を三口フラスコに入れ、85mlのジメチルスルホキシド(Dimethyl sulfoxide、DMSO)を加えて、溶解するまで約1時間撹拌した。次に、50mlのビュレットで、3-クロロプロパノール(1-Chloro-3-hydroxypropane)(14.69g、0.15mol)を三口フラスコに一滴ずつ徐々に加えて、60℃、窒素ガス雰囲気下という反応条件で6時間撹拌した。反応終了後、酢酸エチル(Ethyl acetate)(250ml)と水(250ml)を加えて、抽出を3回繰り返した。有機層を無水硫酸マグネシウム(Magnesium sulfate(MgSO4))で乾燥した。硫酸マグネシウムをろ過除去した有機層の溶剤をロータリーエバポレーターで除去し、得られた固体を酢酸エチルで再結晶して純化した。続いて、ロータリーエバポレーターで有機溶剤を除去することにより、化合物(IIa)(17.3g、0.098mol、収率74%)を得た。
【化7】
【0071】
1H-NMRスペクトルとGC-MSスペクトルは、図1A、図1Bに示されるとおりである。GC-MSの測定条件は、下記の通りである。
GC/MS:6890N/5975B型
カラム:DB-5MS 30m×0.25mm×0.25μm
オーブン温度:60℃/3min、15℃/min、310℃/5min
注入温度:260℃
測定温度:300℃
流速:1.0mL/min
注入体積:1μL
スプリットレス(Splitless)
質量範囲:30〜550
配合溶剤:CH3OH
溶剤遅延:3.6min
【0072】
1H-NMR:(300MHz, CDCl3, ppm) : δ= 7.90 (s,1H), 7.76 (dd, J = 1.2. 1.2 Hz, 1H), 7.44 (dd, J = 1.2. 1.2Hz, 1H), 7.29-7.26 (m, 2H), 4.36 (t, J = 6.6 Hz, 2H), 3.58 (t, J = 5.7 Hz, 2H), 2.11-2.07(m, 2H).
GC-MS(m/z):176.22 calcd ; 176.1 found.
【0073】
合成例2
1−ベンズイミダゾールブタノール(1-Benzimidazolebutanol)(化合物(IIb))
ベンズイミダゾール(Benzimidazole)(20g、0.169mol)とカリウム tert-ブトキシド(Potassium tert-butoxide)(21.32g、0.19mol)を三口フラスコに入れ、130mlのジメチルスルホキシド(DMSO)を加えて、溶解するまで約1時間撹拌した。次に、50mlのビュレットで、4-クロロブタノール(4-Chloro-1-butanol)(25.5g、0.23mol)を三口フラスコに一滴ずつ徐々に加えて、60℃、窒素ガス雰囲気下という反応条件で6時間撹拌した。反応終了後、酢酸エチル(Ethyl acetate)(250ml)と水(250ml)を加えて、抽出を3回繰り返した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、硫酸マグネシウムをろ過除去した有機層の溶剤をロータリーエバポレーターで除去し得られた固体をカラムクロマトグラフィー法(酢酸エチル/メタノール、98:2、Rf=0.4)で純化した。続いて、ロータリーエバポレーターで有機溶剤を除去することにより、化合物(IIb)(13.8g、0.072mol、収率38%)を得た。
【化8】
【0074】
1H-NMRスペクトルとGC-MSスペクトルは、図2A、図2Bに示されるとおりである。GC-MSの測定条件は、下記の通りである。
GC/MS:6890N/5975B型
カラム:DB-5MS、30m×0.25mm×0.25μm
オーブン温度:60℃/3min、15℃/min、300℃/5min
注入温度:260℃
測定温度:300℃
流速:1.0mL/min
注入体積:1μL
スプリットレス(Splitless)
質量範囲:30〜550
配合溶剤:CH3OH
溶剤遅延:3.6min
【0075】
1H-NMR:(300MHz, CDCl3, ppm):δ= 7.90 (s,1H), 7.80 (dd, J = 2.4. 2.4 Hz, 1H), 7.41 (dd, J = 2.4. 2.4Hz, 1H), 7.31-7.26 (m, 2H), 4.24 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 3.69 (t, J = 6 Hz, 2H), 2.04-1.99(m, 2H), 1.64-1.58(m, 2H).
GC-MS(m/z):190.1 calcd ; 190.1 found.
【0076】
合成例3
1−ベンズイミダゾールヘキサノール(1-Benzimidazolehexanol)(化合物(IIc))
ベンズイミダゾール(Benzimidazole)(20g、0.169mol)とカリウム tert-ブトキシド(Potassium tert-butoxide)(22.45g、0.2mol)を三口フラスコに入れ、85mlのジメチルスルホキシド(DMSO)を加えて、溶解するまで約1時間撹拌した。次に、50mlのビュレットで、6-クロロ-1-ヘキサノール(6-Chloro-1-hexanol)(20g、0.2mol)を三口フラスコに一滴ずつ徐々に加えて、60℃、窒素ガス雰囲気下という反応条件で6時間撹拌した。反応終了後、酢酸エチル(Ethyl acetate)(250ml)と水(250ml)を加えて、抽出を3回繰り返した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、硫酸マグネシウムをろ過除去した有機層の溶剤をロータリーエバポレーターで除去し、得られた固体をカラムクロマトグラフィー法(酢酸エチル/メタノール、98:2、Rf=0.4)で純化した。続いて、ロータリーエバポレーターで有機溶剤を除去することにより、化合物(IIc)(28.46g、0.130mol、収率77%)を得た。
【化9】
【0077】
1H-NMRスペクトルとGC-MSスペクトルは、図3A,図3Bに示されるとおりである。GC-MSの測定条件は、下記の通りである。
GC/MS:6890N/5975B型
カラム:DB-5MS、30m×0.25mm×0.25μm
オーブン温度:60℃/3min、15℃/min、300℃/5min
注入温度:260℃
測定温度:300℃
流速:1.0mL/min
注入体積:1μL
スプリットレス(Splitless)
質量範囲:30〜550
配合溶剤:CH3OH
溶剤遅延:3.6min
【0078】
1H-NMR:(300MHz, DMSO, ppm):δ= 8.21 (s,1H), 7.65 (dd, J = 0.9. 0.9 Hz, 1H), 7.58 (d, J = 7.8Hz, 1H), 7.26-7.15 (m, 2H), 4.38-4.36 (m, 1H), 4.21 (t, J = 6.9 Hz, 2H), 3.34-3.33 (m, 2H), 1.79-1.74(m, 2H), 1.39-1.21(m, 4H).
GC-MS(m/z):218.14 calcd ; 218.1 found.
【0079】
式(I)で表される化合物の製造
【化10】
【化11】
【0080】
実施例1:化合物Ia-600の合成
まず、PEG 600(ポリエチレングリコール、Polyethylene Glycol、Mw=600)を75℃に昇温させ、撹拌下で、真空中で水を一晩(overnight)除去した。
【0081】
セパラブルフラスコを用いて、4.64gのPEG 600を加え、撹拌し、50℃に昇温させた後、速やかに2.86g のHDI(Hexamethylene diisocyanate、ヘキサメチレンジイソシアネート)を加えた。90℃に昇温させた後、2〜4時間保持した。HDIのFTIRスペクトルは、図4に示されるとおりである:C-H stretch 2940.19, 2861.91,-NCO- stretch 2273.23 cm-1。図中、約2273.23cm-1の位置には明らかな強い-NCO-特性吸収ピークが存在する。
【0082】
続いて、滴定法(ASTM D2572-97規格に従う)によりNCO(イソシアナート基、isocyanate-group、-N=C=O)の含有量を測定し、中間体の反応終点に達するか否かを判定した。反応が終点に達した後、75℃に降温させ、5.98gの中間体を取り、2.33gの化合物(IIa)を加えて、NCOの含有量が0になるまで温度を90℃に2〜4時間維持した。室温に降温させた。
【化12】
【0083】
FTIRスペクトルは、図5に示されるとおりである。(N-H 3332.50 cm-1, C=O 1713 cm-1.)
【0084】
図中、約3310〜3500cm-1の位置には-NH-特性吸収ピークが存在し、約1700〜1720cm-1の位置には非常に強いC=O特性吸収ピークが存在する。図中、この二つの吸収ピークはPUの特性官能基であるNHCOOの官能基を示し、この官能基が存在することは、-NCO-と-OH-とを反応させることにより前記官能基が出現したことを示す。
【0085】
実施例2:化合物Ib-600の合成
まず、PEG 600を75℃に昇温させ、撹拌下で、真空中で水を一晩除去した。
【0086】
セパラブルフラスコを用いて、4.64gのPEG 600を加え、撹拌し、50℃に昇温させた後、速やかに2.86g のHDIを加えた。90℃に昇温させた後、2〜4時間保持した。
【0087】
続いて、滴定法によりNCOの含有量を測定し、中間体の反応終点に達するか否かを判定した。反応が終点に達した後、75℃に降温させ、4.50gの中間体を取り、1.72gの化合物(IIb)を加えて、NCOの含有量が0になるまで温度を90℃に2〜4時間維持した。室温に降温させた。
【化13】
【0088】
FTIRスペクトルは、図6に示されるとおりである。(N-H 3332.50 cm-1, C=O 1713 cm-1.)
【0089】
図中、約3310〜3500cm-1の位置には-NH-特性吸収ピークが存在し、約1700〜1720cm-1の位置には非常に強いC=O特性吸収ピークが存在する。図中、この二つの吸収ピークはPUの特性官能基であるNHCOOの官能基を示し、この官能基が存在することは、-NCO-と-OH-とを反応させることにより前記官能基が出現したことを示す。
【0090】
実施例3:化合物Ic-600の合成
まず、PEG 600を75℃に昇温させ、撹拌下で、真空中で水を一晩除去した。
【0091】
セパラブルフラスコを用いて、16.71gのPEG 600を加え、撹拌し、50℃に昇温させた後、速やかに10.29g のHDIを加えた。90℃に昇温させた後、2〜4時間保持した。
【0092】
続いて、滴定法によりNCOの含有量を測定し、中間体の反応終点に達するか否かを判定した。反応が終点に達した後、75℃に降温させ、24.73gの中間体を取り、12.71gの化合物(IIc)を加えて、NCOの含有量が0になるまで温度を90℃に2〜4時間維持した。室温に降温させた。
【化14】
【0093】
FTIRスペクトルは、図7に示されるとおりである。(N-H 3332.50 cm-1, C=O 1717.92 cm-1.)
【0094】
図中、約3310〜3500cm-1の位置には-NH-特性吸収ピークが存在し、約1700〜1720cm-1の位置には非常に強いC=O特性吸収ピークが存在する。図中、この二つの吸収ピークはPUの特性官能基であるNHCOOの官能基を示し、この官能基が存在することは、-NCO-と-OH-とを反応させることにより前記官能基が出現したことを示す。
【0095】
実施例4:化合物Ic-300の合成
まず、PEG 300(ポリエチレングリコール、Polyethylene Glycol、Mw=300)を75℃に昇温させ、撹拌下で、真空中で水を一晩除去した。
【0096】
セパラブルフラスコを用いて、13.10gのHDIを加え、撹拌し、50℃に昇温させた後、17.00gの化合物(IIc)を徐々に加えて、90℃に昇温させた後、2〜4時間保持した。
【0097】
続いて、滴定法によりNCOの含有量を測定し、中間体の反応終点に達するか否かを判定した。反応が終点に達した後、75℃に降温させ、28.90gの中間体を取り、11.23gのPEG 300を加えて、NCOの含有量が0になるまで温度を90℃に2〜4時間維持した。室温に降温させた。
【化15】
【0098】
FTIRスペクトルは、図8に示されるとおりである。(N-H peak sharp 3330.15 cm-1, C=O 1700.19 cm-1.)
【0099】
図中、約3310〜3500cm-1の位置には-NH-特性吸収ピークが存在し、約1700〜1720cm-1の位置には非常に強いC=O特性吸収ピークが存在する。図中、この二つの吸収ピークはPUの特性官能基であるNHCOOの官能基を示し、この官能基が存在することは、-NCO-と-OH-とを反応させることにより前記官能基が出現したことを示す。
【0100】
実施例5:化合物Ic-400の合成
まず、PPG 400(ポリプロピレングリコール、Polypropylene glycol、Mw=400)を75℃に昇温させ、撹拌下で、真空中で水を一晩除去した。
【0101】
セパラブルフラスコを用いて、11.76gのHDIを加え、撹拌し、50℃に昇温させた後、15.26gの化合物(IIc)を徐々に加えて、90℃に昇温させた後、2〜4時間保持した。
【0102】
続いて、滴定法によりNCOの含有量を測定し、中間体の反応終点に達するか否かを判定した。反応が終点に達した後、75℃に降温させ、25.00gの中間体を取り、12.95gのPPG 400を加えて、NCOの含有量が0になるまで温度を90℃に2〜4時間維持した。室温に降温させた。
【化16】
【0103】
FTIRスペクトルは、図9に示されるとおりである。(N-H peak sharp 3335.92 cm-1, C=O 1700.19 cm-1.)
【0104】
図中、約3310〜3500cm-1の位置には-NH-特性吸収ピークが存在し、約1700〜1720cm-1の位置には非常に強いC=O特性吸収ピークが存在する。図中、この二つの吸収ピークはPUの特性官能基であるNHCOOの官能基を示し、この官能基が存在することは、-NCO-と-OH-とを反応させることにより前記官能基が出現したことを示す。
【0105】
色素増感太陽電池の製造及び効率の測定
測定例1:式(I)で表される化合物を含む電解液を使用することによる色素増感太陽電池の製造、及び効率の測定
粒径が20〜30nmである二酸化チタン微粒子を含むペースト状物を、一回又は複数回のスクリーン印刷により、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)で被覆されたガラス板(厚さ4mm、抵抗10Ω/□)に、焼成された多孔質二酸化チタン膜(多孔質半導体膜)の厚さが10〜12μmになるように塗布し、450℃で30分間焼成した。
【0106】
色素化合物(例えば、D719(Everlight社製))をアセトニトリル(acetonitrile)とt−ブタノール(t-butanol)の混合液(1:1 v/v)に溶かして、色素化合物の濃度が0.5Mである色素溶液を調製した。続いて、上記多孔質二酸化チタン膜を含有するガラス板を色素溶液に16時間〜24時間浸漬し、色素溶液中の色素を吸着させた後、ガラス板を取り出して乾燥することにより、光電アノード(photoanode)を得た。
【0107】
フッ素をドープした酸化スズで被覆されたガラス板に、電解液を注入するための孔径が0.75mmである孔を開けた。さらに、酸化スズガラス板に、塩化白金酸(H2PtCl6)溶液(1mLのエタノールに2mgの白金を含む)を塗布し、400℃に加熱して15分間処理することにより、カソード(cathode)を得た。
【0108】
厚さ60μmの熱可塑性ポリマー膜を光電アノードとカソードとの間に配置し、120℃〜140℃でこの二つの電極に圧力を加えることにより、この二つの電極を接着させた。
【0109】
電解液(配合成分を表1に示す)を注入し、さらに熱可塑性ポリマー膜で注入口を封止することにより、色素増感太陽電池を得た。
【表1】
【0110】
それぞれ上記実施例1、2、3、4及び5の化合物(式(I)で表される化合物)を電解液添加剤として用いて作製された色素増感太陽電池について、AM 1.5の照明下で、光電効率の測定を行った。測定項目は、短絡電流(Jsc)、開放電圧(Voc)、光電変換効率(η)及び曲線因子(FF)を含む。結果を下記表2に示す。
【0111】
比較例1:電解液は式(I)で表される化合物を含んでない
測定例1と同様に色素増感太陽電池を作製したが、電解液の配合成分に式(I)で表される化合物を加えなかった。測定の結果を下記表2に示す。
【0112】
比較例2:式(I)で表される化合物の代わりに、式(IV)で表される化合物を使用する。
測定例1の色素増感太陽電池の電解液の配合成分において、式(I)で表される化合物の代わりに、下記式(IV)で表される化合物[PEG 1000(ポリエチレングリコール、Polyethylene Glycol、Mw=1000)とヘキサメチレンジイソシアネート(Hexamethylene diisocyanate、HDI)と1-(3-アミノプロピル)イミダゾール(1-(3-Aminopropyl)imidazole)とを重合させたもの]を使用した。測定の結果を下記表2に示す。
【化17】
【0113】
【表2】
【0114】
表2に示されるように、本発明の式(I)で表される化合物の添加によって、色素増感太陽電池の光電変換効率を有効に向上させることができる。
【0115】
測定例2:式(II)で表される化合物を含む電解液を使用することによる色素増感太陽電池の製造、及び効率の測定
電解液(配合成分を表3に示す)を注入し、さらに熱可塑性ポリマー膜で注入口を封止することにより、色素増感太陽電池を得た。
【0116】
【表3】
【0117】
それぞれ上記合成例1〜3の化合物(IIa)、(IIb)、(IIc)を電解液添加剤として用いて作製された色素増感太陽電池について、AM 1.5の照明下で、光電効率の測定を行った。測定項目は、短絡電流(Jsc)、開放電圧(Voc)、光電変換効率(η)及び曲線因子(FF)を含む。結果を下記表4に示す。
【0118】
比較例3:測定例2の電解液の配合成分において、式(II)で表される化合物の代わりにN-ブチルベンズイミダゾール(NBB)を使用して、測定を行った。
【0119】
【表4】
【0120】
表4に示されるように、本発明の式(II)で表される化合物の添加によって、暗電流を防止し、開放電圧(Voc)の向上を促進することができる。また、本発明の式(II)で表される化合物は、色素増感太陽電池の光電変換効率を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明で提供された式(I)、(II)で表される化合物は、色素増感太陽電池の電解液に用いることが可能である。本発明の化合物を含有する電解液は、暗電流を防止し、開放電圧(Voc)の向上を促進することができる。また、本発明の式(I)及び/又は(II)で表される化合物の添加によって、色素増感太陽電池の光電変換効率を向上させることができ、産業上の要求を十分に満たす。
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池電解液に用いられる化合物、特に色素増感太陽電池電解液に用いられる化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
人類の文明が発展するにつれて、世界中が深刻なエネルギー危機及び環境汚染などの問題に直面することになった。従って、低汚染で永続的に生産され続けるエネルギーは、全世界のエネルギー開発の目標となっている。太陽エネルギーは、上記の要求を満たすエネルギーの一つである。太陽電池は、太陽エネルギーを電力に直接変換することができ、全世界のエネルギー危機の解決に寄与するだけでなく、環境汚染の低減という要求を満たすこともできる。一般的に、太陽電池は、主として、半導体太陽電池(例えば、シリコン太陽電池(silicon solar cell))、及び光電気化学(photoelectrochemistry)太陽電池(例えば、色素増感太陽電池(Dye-Sensitized Solar Cell、DSSC))に分けられる。近年、Gratzelらによって、一連の色素増感太陽電池に関連する文献(例えばO'Regan, B.; Gratzel, M. Nature 1991, 353, 737(非特許文献1))が発表された。色素増感太陽電池は、製造コストが低いのみならず、重量が軽く、可撓性と光透過性を有し、大面積の製品を容易に製造することが可能であるなどの優れた点を有する。従って、色素増感太陽電池は、その様々な優れた特性によって、極めて有望な太陽電池となってきている。
【0003】
一般的に、色素増感太陽電池の構造は、カソード/アノード電極を含む。そのうち、カソードは、基板に導電層及び多孔質材料(例えば、二酸化チタン粒子)からなる多孔質膜が形成され、その上に光増感色素が塗布されているものである。また、アノードとカソードの間に、さらに電解質(electrolyte)層が設けられる。電極に形成された光増感色素が太陽光を吸収すると、電位差を生じさせ、さらに電流を生じさせることができる。台湾特開第2008/10167号公報(特許文献1)には、ナノワイヤに形成されたナノ粒子を利用して、ナノ粒子が光増感色素と接触する面積を増加させる色素増感太陽電池が開示されている。台湾特開第2009/05939号公報(特許文献2)には、電子注入効率を高めることにより、電池の効能を向上させる色素増感太陽電池が開示されている。また、台湾特開第2010/17955号公報(特許文献3)には、DSSCの製造コストをさらに低減するための、色素増感太陽電池に適用されるゲル電解質が開示されている。また、台湾特開第2010/20295号公報(特許文献4)には、高いモル吸収係数を有する色素化合物が開示されている。台湾特開第2010/36983号公報(特許文献5)には、より好ましいスペクトル応答及び光電変換効率を有する全光領域の光増感錯体が開示されている。また、台湾実用新案M380573号公報(特許文献6)には、改良された構造を有する電極が開示され、この電極は、色素増感太陽電池の色素吸着量と太陽エネルギー吸収能力を向上させることができ、導電ユニットにおける電子と正孔の再結合を抑制することもでき、さらに色素増感太陽電池の光電変換効率を増加させることができる。また、韓国の建国大学(Konkuk University)は、2010年、Electrochimica Acta 55(2010) 1483-1488に、「新規なイミダゾール系電解質の合成、及び色素増感太陽電池への応用(Synthesis of a novel imidazolium-based electrolytes and application for dye-sensitized solar cells)」と題した文献(非特許文献2)を発表し、その文献には、ポリ尿素(polyurea)とイミダゾール系化合物(imidazolium-based compound)とを共重合させたイオン化合物は、色素増感太陽電池に応用することが可能であることが開示されている。その文献に係る特許出願は2011年に公開され、公開番号はKR.10−2011−011158(特許文献7)であり、従来の電解質成分の代わりにイオン化合物を使用して、電解液において中性の前駆化合物を添加剤として使用していないことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】台湾特開第2008/10167号公報
【特許文献2】台湾特開第2009/05939号公報
【特許文献3】台湾特開第2010/17955号公報
【特許文献4】台湾特開第2010/20295号公報
【特許文献5】台湾特開第2010/36983号公報
【特許文献6】台湾実用新案M380573号公報
【特許文献7】韓国公開特許第10-2011-011158号公報(KR.10−2011−011158)
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】O'Regan, B.; Gratzel, M. Nature 1991, 353, 737
【非特許文献2】Electrochimica Acta 55(2010) 1483-1488
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在、色素増感太陽電池は、光電変換効率こそシリコン太陽電池ほど優れてないものの、コストが低いため、その光電変換効率を改善することができれば、太陽電池のメジャーな技術になる可能性がある。電極構造、色素、電解液などはいずれも電池の変換効率に影響を与える。従って、如何にして、上記の要素を改良して色素増感太陽電池の効率を向上させるかが、太陽電池業界が早期解決を望む課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記式(I)で表される化合物を提供する。
【化1】
式中、AはC2−3アルキレン基であり、mは2〜25の整数であり、nは3〜10の整数である。
【0008】
本発明の一つの具体的な実施例によれば、Aはエチレン基であり、mは2〜25の整数である。本発明の一つの具体的な実施例によれば、Aはイソプロピレン基であり、mは2〜15の整数である。本発明の一つの具体的な実施例によれば、式(I)で表される化合物は、太陽電池電解液に用いられる。本発明の一つの具体的な実施例によれば、式(I)で表される化合物は、色素増感太陽電池の電解液の製造に用いられる。
【0009】
さらに、本発明は、下記式(II)で表される化合物を提供する。
【化2】
式中、nは3〜10の整数である。本発明の一つの具体的な実施例によれば、式(II)で表される化合物は、前記式(I)で表される化合物の製造に用いられる。本発明の一つの具体的な実施例によれば、式(II)で表される化合物は、太陽電池電解液に用いられる。本発明の一つの具体的な実施例によれば、式(II)で表される化合物は、色素増感太陽電池の電解液の製造に用いられる。
【0010】
また、本発明は、前記式(I)及び/又は式(II)で表される化合物を含有する色素増感太陽電池電解液を提供する。
【0011】
また、本発明は、基板と、多孔質半導体膜と、導電膜と、前記式(I)及び/又は式(II)で表される化合物を含有する電解液と、色素化合物とを含む色素増感太陽電池を提供する。
【0012】
さらに、本発明は、ポリアルキレングリコール(polyalkylene glycol)化合物と、ヘキサメチレンジイソシアネートと、前記式(II)で表される化合物とを反応させる工程を含む、前記式(I)で表される化合物の製造方法を提供する。
【0013】
本発明の一つの具体的な実施例によれば、式(I)で表される化合物の製造方法は、ポリアルキレングリコール(polyalkylene glycol)化合物とヘキサメチレンジイソシアネート(hexamethylene diisocyanate、HDI)とを反応させることによりポリウレタン化合物中間体を得る工程と、前記ポリウレタン化合物中間体と前記式(II)で表される化合物とを反応させる工程とを含む。本発明の一つの具体的な実施例によれば、式(I)で表される化合物の製造方法は、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)と式(II)で表される化合物とを反応させることにより中間体を得る工程と、前記中間体とポリアルキレングリコール化合物とを反応させる工程とを含む。
【0014】
本発明の一つの具体的な実施例によれば、ポリアルキレングリコール化合物は、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールから選ばれるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明で提供される式(I)及び式(II)で表される化合物は、色素増感太陽電池の電解液に用いることが可能である。本発明の一つの具体的な実施例によれば、本発明で提供される式(I)及び/又は式(II)で表される化合物は、色素増感太陽電池の電解液添加剤とすることができる。本発明の式(I)及び/又は式(II)で表される化合物を含有する電解液は、暗電流を防止し、開放電圧(Voc)の向上を促進することができる。また、本発明の式(I)及び式(II)で表される化合物は、色素増感太陽電池の光電変換効率を向上させることができ、産業上の要求を十分に満たす。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】合成例1の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図1B】合成例1のGC-MSスペクトルを示す図である。
【図2A】合成例2の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図2B】合成例2のGC-MSスペクトルを示す図である。
【図3A】合成例3の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図3B】合成例3のGC-MSスペクトルを示す図である。
【図4】HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート、hexamethylene diisocyanate)のFTIRスペクトルを示す図である。
【図5】実施例1によるFTIRスペクトルを示す図である。
【図6】実施例2によるFTIRスペクトルを示す図である。
【図7】実施例3によるFTIRスペクトルを示す図である。
【図8】実施例4によるFTIRスペクトルを示す図である。
【図9】実施例5によるFTIRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、特定の具体的な実施例により、本発明を実施するための形態を説明する。この技術分野に習熟した者は、本明細書に記載された内容によって本発明の他の優れた点や効果を理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施例によって実施又は応用することもでき、本明細書における各項の詳しい内容も、異なる観点と応用に基づいて、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各種の修正と変更を施すことができる。
【0018】
本願で使用される用語「重量平均分子量」は、溶剤としてテトラヒドロフラン(THF)を利用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)の値である。
【0019】
本発明は、式(I)で表される化合物を提供する。
【化3】
式中、AはC2−3アルキレン基であり、mは2〜25の整数であり、nは3〜10の整数である。
【0020】
本発明の一つの具体的な実施例によれば、Aはエチレン基であり、mは2〜25の整数である。これらの具体的な実施例の一部の態様において、mは3〜20である。これらの具体的な実施例の一部の態様において、mは5〜20である。
【0021】
本発明の一つの具体的な実施例によれば、Aはイソプロピレン基であり、mは2〜15の整数である。これらの具体的な実施例の一部の態様において、mは2〜10である。
【0022】
本発明の一つの具体的な実施例によれば、式(I)におけるnは3〜10の整数であり、好ましくは3〜8の整数であり、より好ましくは3〜6の整数である。
【0023】
本発明の一つの具体的な実施例によれば、式(I)で表される化合物は、太陽電池の電解液、特に色素増感太陽電池の電解液に添加され使用されることができる。
【0024】
本発明の一つの具体的な実施例によれば、式(I)で表される化合物は、太陽電池の電解液に用いられる。本発明の一つの具体的な実施例によれば、式(I)で表される化合物は、色素増感太陽電池の電解液の製造に用いられる。本発明の一つの具体的な実施例によれば、式(I)で表される化合物は、色素増感太陽電池の電解液添加剤とすることができる。
【0025】
さらに、本発明は、式(II)で表される化合物を提供する。
【化4】
式中、nは3〜10の整数である。
【0026】
本発明の一つの具体的な実施例によれば、好ましくは、nは3〜8の整数であり、より好ましくは3〜6の整数である。
【0027】
本発明の一つの具体的な実施例によれば、式(II)で表される化合物を使用して式(I)で表される化合物を製造することができる。
【0028】
本発明の一つの具体的な実施例によれば、式(II)で表される化合物は、太陽電池の電解液、特に色素増感太陽電池の電解液に添加され使用されることができる。
【0029】
本発明の一つの具体的な実施例によれば、式(II)で表される化合物は、太陽電池の電解液に用いられる。本発明の一つの具体的な実施例によれば、式(II)で表される化合物は、色素増感太陽電池の電解液の製造に用いられる。本発明の一つの具体的な実施例によれば、式(II)で表される化合物は、色素増感太陽電池の電解液添加剤とすることができる。
【0030】
本発明によれば、ポリアルキレングリコール(polyalkylene glycol)化合物と、ヘキサメチレンジイソシアネートと、上記式(II)で表される化合物とを反応させることにより、式(I)で表される化合物を製造する。
【0031】
本発明の一つの具体的な実施例によれば、ポリアルキレングリコール化合物とヘキサメチレンジイソシアネート(hexamethylene diisocyanate、HDI)とを反応させることによりポリウレタン(polyurethane)化合物中間体を得た後、続いて前記ポリウレタン化合物中間体と式(II)で表される化合物とを反応させる方法により、式(I)で表される化合物を製造することができる。
【0032】
ポリアルキレングリコール化合物の実例は、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールを含むが、それらに限定されない。本発明の一つの具体的な実施例によれば、重量平均分子量が100〜1000であり、好ましくは200〜800であり、より好ましくは300〜600であるポリエチレングリコール(PEG)を使用して、式(I)で表される化合物を製造する。本発明の一つの具体的な実施例によれば、重量平均分子量が200〜1000であり、好ましくは200〜800であり、より好ましくは200〜600であるポリプロピレングリコール(PPG)を使用して、式(I)で表される化合物を製造する。ポリアルキレングリコール化合物とヘキサメチレンジイソシアネートとの反応によるポリウレタン化合物中間体の製造において、通常、反応時間は2〜4時間であって、通常、反応温度は80〜95℃である。
【0033】
ポリアルキレングリコール化合物とヘキサメチレンジイソシアネート(hexamethylene diisocyanate、HDI)とを反応させることによりポリウレタン(polyurethane)化合物中間体を得た後、続いて前記ポリウレタン化合物中間体と式(II)で表される化合物とを反応させる。通常、反応時間は2〜4時間であって、反応温度は80〜95℃である。
【0034】
本発明のもう一つの具体的な実施例によれば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)と式(II)で表される化合物とを反応させることにより中間体を得た後、続いて前記中間体とポリアルキレングリコール化合物とを反応させる方法により、式(I)で表される化合物を製造することができる。
【0035】
本発明によれば、ベンズイミダゾールと式(III)で表される化合物とを反応させることにより、式(II)で表される化合物を製造することができる。
【化5】
式中、nは3〜10の整数である。
【0036】
本発明の一つの具体的な実施例によれば、好ましくは、nは3〜8の整数であり、より好ましくは3〜6の整数である。
【0037】
通常、反応は溶剤の存在下で行われる。溶剤としては、特に制限がなく、この技術分野において一般的に用いられる溶剤を使用することができる。一種又は二種以上の溶剤を使用してもよい。二種又はそれより多くの種類の溶剤の混合物を使用する場合、混合割合は特に限定されない。
【0038】
溶剤の実例は、トルエン(Toluene)、ジメチルホルムアミド(dimethyl formamide、DMF)などを含むが、それらに限定されない。一種又は二種以上の溶剤を使用してもよい。二種又はそれより多くの種類の溶剤の混合物を使用する場合、混合割合は特に限定されない。
【0039】
通常、反応はアルカリの存在下で行われる。
【0040】
アルカリの実例は、カリウム tert-ブトキシド(Potassium tert-butoxide)、水酸化ナトリウム(sodium hydroxide、NaOH)、水酸化カリウム(Potassium hydroxide、KOH)を含むが、それらに限定されない。
【0041】
本発明の式(I)及び/又は式(II)で表される化合物は、太陽電池の電解液、特に色素増感太陽電池の電解液に添加され使用されることができる。
【0042】
さらに、本発明は、色素増感太陽電池に用いられる電解液を提供する。
【0043】
本発明の一つの具体的な実施例によれば、色素増感太陽電池の電解液の成分は、ヨウ化金属、ヨウ化イミダゾリウム誘導体又はそれらの組み合わせから選ばれる塩と、ヨウ素と、チオシアン酸グアニジンと、前記式(I)及び/又は式(II)で表される化合物と、溶剤とを含む。
【0044】
ヨウ化金属、ヨウ化イミダゾリウム誘導体又はそれらの組み合わせから選ばれる塩の含有量は、電解液の総重量を基準として、1〜20重量%である。
【0045】
ヨウ化金属の実例は、ヨウ化カリウム(Potassium iodide)、ヨウ化リチウム(Lithium iodide)、ヨウ化ナトリウム(Sodium iodide)及びそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。好ましくは、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、及びそれらの組み合わせである。
【0046】
ヨウ化イミダゾリウム誘導体の実例は、ヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム(1-Methyl-3-propylimidazolium iodide、PMII)、ヨウ化1,3−ジメチルイミダゾリウム(1,3-Dimethylimidazolium iodide)、ヨウ化1−メチル−3−エチルイミダゾリウム(1-Methyl-3-ethylimidazolium iodide)、ヨウ化1−メチル−3−ブチルイミダゾリウム(1-Methyl-3-butylimidazolium iodide)、ヨウ化1−メチル−3−ペンチルイミダゾリウム(1-Methyl-3-pentylimidazolium iodide)、ヨウ化1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウム(1-Methyl-3-hexylimidazolium iodide)、ヨウ化1−メチル−3−ヘプチルイミダゾリウム(1-Methyl-3-heptylimidazolium iodide)、ヨウ化1−メチル−3−オクチルイミダゾリウム(1-Methyl-3-octylimidazolium iodide)、ヨウ化1,3−ジエチルイミダゾリウム(1,3-Diethylimidazolium iodide)、ヨウ化1−エチル−3−プロピルイミダゾリウム(1-Ethyl-3-propylimidazolium iodide)、ヨウ化1−エチル−3−ブチルイミダゾリウム(1-Ethyl-3-butylimidazolium iodide)、ヨウ化1,3−ジプロピルイミダゾリウム(1,3-Dipropylimidazolium iodide)、ヨウ化1−プロピル−3−ブチルイミダゾリウム(1-Propyl-3-butylimidazolium iodide)及びそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。好ましくは、ヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム、ヨウ化1−メチル−3−エチルイミダゾリウム、ヨウ化1−メチル−3−ブチルイミダゾリウム、ヨウ化1−メチル−3−ペンチルイミダゾリウム、ヨウ化1,3−ジエチルイミダゾリウム、ヨウ化1−エチル−3−プロピルイミダゾリウム、及びそれらの組み合わせである。一種又は二種以上のヨウ化イミダゾリウムを使用してもよい。二種又はそれより多くの種類のヨウ化イミダゾリウムの混合物を使用する場合、混合割合は特に限定されない。
【0047】
ヨウ素の含有量は、電解液の総重量を基準として、1〜3重量%である。
【0048】
チオシアン酸グアニジン(Guanidine thiocyanate、GuNCS)の含有量は、電解液の総重量を基準として、1〜3重量%である。
【0049】
式(I)又は式(II)で表される化合物の含有量は、電解液の総重量を基準として、8〜85重量%である。
【0050】
溶剤の含有量は、電解液の総重量を基準として、5〜80重量%である。
【0051】
色素増感太陽電池電解液に用いられる溶剤の実例は、アセトニトリル(Acetonitrile)、3-メトキシプロピオニトリル(3-Methoxyl-propionitrile、3-MPN)、N-メチルピロリドン(N-Methyl-2-pyrrolidone、NMP)、炭酸プロピレン(propylene carbonate)、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)を含むが、それらに限定されない。一種又は二種以上の溶剤を使用してもよい。二種又はそれより多くの種類の溶剤の混合物を使用する場合、混合割合は特に限定されない。
【0052】
本発明の一つの具体的な実施例によれば、色素増感太陽電池の電解液は、必要に応じて他の添加剤を含んでもよい。添加剤の実例は、有機アミンヨウ化水素酸塩、ベンズイミダゾール誘導体、ピリジン誘導体、及びそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。
【0053】
有機アミンヨウ化水素酸塩の実例は、トリエチルアミンヨウ化水素酸塩(Triethylamine hydroiodide、THI)、トリプロピルアミンヨウ化水素酸塩 (Tripropylamine hydroiodide)、トリブチルアミンヨウ化水素酸塩(Tributylamine hydroiodide)、トリペンチルアミンヨウ化水素酸塩(Tripentylamine hydroiodide)、トリヘキシルアミンヨウ化水素酸塩(Trihexylamine hydroiodide)、及びそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。好ましくは、トリエチルアミンヨウ化水素酸塩、トリプロピルアミンヨウ化水素酸塩、トリブチルアミンヨウ化水素酸塩、及びそれらの組み合わせである。より好ましくは、トリエチルアミンヨウ化水素酸塩である。一種又は二種以上の有機アミンヨウ化水素酸塩を使用してもよい。二種又はそれより多くの種類の有機アミンヨウ化水素酸塩の混合物を使用する場合、混合割合は特に限定されない。
【0054】
ベンズイミダゾール誘導体、ピリジン誘導体の実例は、N-メチルベンズイミダゾール(N-Methylbenzimidazole、NMBI)、N-ブチルベンズイミダゾール(N-Butylbenzimidazole、NBB)、4-tert-ブチルピリジン(4-tert-Butylpyridine、4-TBP)、及びそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。一種又は二種以上のベンズイミダゾール誘導体及び/又はピリジン誘導体を使用してもよい。二種又はそれより多くの種類のベンズイミダゾール誘導体及び/又はピリジン誘導体の混合物を使用する場合、混合割合は特に限定されない。
【0055】
上記の電解液を使用して色素増感太陽電池を製造することができる。
【0056】
本発明の一つの具体的な実施例によれば、色素増感太陽電池は、色素化合物を含有する光電アノード(photoanode)、カソード(cathode)、及び光電アノードとカソードとの間に設けられる電解液層(electrolyte layer)を含む。本発明の一つの具体的な実施例によれば、電解液層は、カソードと光電アノードとが接する表面に形成される。本発明の一つの具体的な実施例によれば、色素増感太陽電池は、基板と、多孔質半導体膜と、導電膜と、電解液と、色素化合物とを含む。
【0057】
本発明の一つの具体的な実施例によれば、色素増感太陽電池の電解液は、前記式(I)及び/又は式(II)で表される化合物を含む。本発明の一つの具体的な実施例によれば、本発明で提供される式(I)及び/又は式(II)で表される化合物は、色素増感太陽電池の電解液添加剤とすることができる。
【0058】
本発明の色素増感太陽電池の製造方法としては、特に制限がなく、この技術分野における従来の方法で製造することができる。
【0059】
一般的に、透明な基板を使用する。基板の材質は特に制限がなく、透明な基材であれば、いずれも使用可能である。好ましくは、基板の材質は、色素増感太陽電池の外から侵入した水分もしくは気体に対する優れた遮断性、耐溶剤性、耐候性などを有する透明基材である。基板の実例は、石英、ガラスなどの透明な無機材料から作製された基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリイミド(PI)などの透明なプラスチック基板を含むが、それらに限定されない。好ましくは、透明基板の材質はガラスである。また、基板の厚さは特に制限がなく、光透過率、色素増感太陽電池の特性の要求に応じて調整することができる。
【0060】
本発明の色素増感太陽電池に用いられる多孔質半導体膜は、半導体微粒子で作製することができる。適宜な半導体微粒子は、シリコン、二酸化チタン、二酸化スズ、酸化亜鉛、三酸化タングステン、五酸化ニオブ(Nb2O5)、三酸化チタンストロンチウム(SrTiO3)及びそれらの組み合わせを含んでもよい。好ましい半導体微粒子は二酸化チタンである。通常、半導体微粒子の平均粒径は5〜500nmであり、好ましくは10〜50nmである。多孔質半導体膜の厚さは5〜25μmである。色素増感太陽電池において、一層又は複数層の多孔質半導体膜を有しても良い。複数層の多孔質半導体膜を作製する場合、それぞれを異なる粒径の半導体微粒子で作製する。すなわち、複数層において、各層に含まれる半導体微粒子が異なっている。例えば、まず粒径が5〜50nmである半導体微粒子を塗布厚さが5〜20μmになるように塗布した後、粒径が200〜400nmである半導体微粒子を塗布厚さが3〜5μmになるように塗布することができる。
【0061】
本発明によれば、光電アノードの製造方法としては、特に制限がなく、この技術分野における従来の方法で製造することができる。ただし、半導体微粒子を使用して色素増感太陽電池における多孔質半導体膜を作製する場合、光電アノードを製造する時は、予め半導体微粒子をペースト状物に調製した後、それを透明な導電基板に塗布する(例えば、ドクターブレード、スクリーン印刷、スピンコート、スプレーなど又は一般的な湿式塗布法が挙げられるが、それらに限定されない)。また、適切な膜厚を得るために、一回又は複数回の塗布を行ってもよい。
【0062】
一般的には、透明な導電膜を使用する。導電膜の材料は、酸化インジウムスズ(ITO)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)、酸化亜鉛−酸化ガリウム(ZnO-Ga2O3)、酸化亜鉛−酸化アルミニウム(ZnO-Al2O3)、又はスズを基材とした酸化物材料であっても良い。
【0063】
色素化合物は、導電膜の上に設けられ、多孔質半導体膜の孔隙に充填される。色素化合物としては、特に制限がなく、この技術分野に一般的に用いられる色素化合物を使用することができる。色素増感太陽電池を製造する時は、色素化合物を適切な溶剤に溶かして色素溶液を調製することができる。溶剤の実例は、アセトニトリル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール(例えば、tert-ブタノール)、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン又はこれらの混合物を含むが、それらに限定されない。色素増感太陽電池を製造する時は、多孔質半導体膜が塗布された透明基板を色素溶液に浸漬し、色素溶液中の色素を多孔質半導体膜に十分に吸着させることができる。
【0064】
色素増感太陽電池におけるカソードの材料としては、特に制限がなく、伝導性を有するいずれの材料であってもよい。あるいは、光電アノードに対向する表面に伝導性を有する伝導層さえ形成されていれば、カソード材料は絶縁材料であっても良い。通常、電気化学的に安定な物質を使用してカソードを作製することができ、その物質の実例は、白金、金、炭素及びその類似物を含むが、それらに限定されない。
【0065】
電解液層は、カソードと多孔質半導体膜との間に設けられる。上で述べた電解液を使用して、色素増感太陽電池を製造することができる。
【0066】
本発明の一つの具体的な実施例によれば、導電膜と多孔質半導体膜とを有する基板に、色素化合物を塗布して光電アノードを製造することができる。さらに、カソードを形成した後、電解液を注入して色素増感太陽電池を製造する。
【0067】
実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、それらの実施例は本発明の範囲を限定するためのものではない。なお、特に指定しない限り、下記の実施例と比較例において、いずれかの成分の含有量及びいずれかの物質の量を示す「%」及び「重量部」は重量基準である。
【実施例】
【0068】
下記の実施例は例示的に本発明の組成物と製造方法を述べるものに過ぎず、本発明を限定するものではない。この技術分野に習熟した者は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱しない限り、下記の実施例に各種修正と変更を施すことができる。従って、本発明の権利保護範囲は、本発明の特許請求の範囲に記載されるとおりである。
【0069】
式(II)で表される化合物の製造
【化6】
【0070】
合成例1
1−ベンズイミダゾールプロパノール(1-Benzimidazolepropanol)(化合物(IIa))
ベンズイミダゾール(Benzimidazole)(14.176g、0.12mol)とカリウム tert-ブトキシド(Potassium tert-butoxide)(14.80g、0.132mol)を三口フラスコに入れ、85mlのジメチルスルホキシド(Dimethyl sulfoxide、DMSO)を加えて、溶解するまで約1時間撹拌した。次に、50mlのビュレットで、3-クロロプロパノール(1-Chloro-3-hydroxypropane)(14.69g、0.15mol)を三口フラスコに一滴ずつ徐々に加えて、60℃、窒素ガス雰囲気下という反応条件で6時間撹拌した。反応終了後、酢酸エチル(Ethyl acetate)(250ml)と水(250ml)を加えて、抽出を3回繰り返した。有機層を無水硫酸マグネシウム(Magnesium sulfate(MgSO4))で乾燥した。硫酸マグネシウムをろ過除去した有機層の溶剤をロータリーエバポレーターで除去し、得られた固体を酢酸エチルで再結晶して純化した。続いて、ロータリーエバポレーターで有機溶剤を除去することにより、化合物(IIa)(17.3g、0.098mol、収率74%)を得た。
【化7】
【0071】
1H-NMRスペクトルとGC-MSスペクトルは、図1A、図1Bに示されるとおりである。GC-MSの測定条件は、下記の通りである。
GC/MS:6890N/5975B型
カラム:DB-5MS 30m×0.25mm×0.25μm
オーブン温度:60℃/3min、15℃/min、310℃/5min
注入温度:260℃
測定温度:300℃
流速:1.0mL/min
注入体積:1μL
スプリットレス(Splitless)
質量範囲:30〜550
配合溶剤:CH3OH
溶剤遅延:3.6min
【0072】
1H-NMR:(300MHz, CDCl3, ppm) : δ= 7.90 (s,1H), 7.76 (dd, J = 1.2. 1.2 Hz, 1H), 7.44 (dd, J = 1.2. 1.2Hz, 1H), 7.29-7.26 (m, 2H), 4.36 (t, J = 6.6 Hz, 2H), 3.58 (t, J = 5.7 Hz, 2H), 2.11-2.07(m, 2H).
GC-MS(m/z):176.22 calcd ; 176.1 found.
【0073】
合成例2
1−ベンズイミダゾールブタノール(1-Benzimidazolebutanol)(化合物(IIb))
ベンズイミダゾール(Benzimidazole)(20g、0.169mol)とカリウム tert-ブトキシド(Potassium tert-butoxide)(21.32g、0.19mol)を三口フラスコに入れ、130mlのジメチルスルホキシド(DMSO)を加えて、溶解するまで約1時間撹拌した。次に、50mlのビュレットで、4-クロロブタノール(4-Chloro-1-butanol)(25.5g、0.23mol)を三口フラスコに一滴ずつ徐々に加えて、60℃、窒素ガス雰囲気下という反応条件で6時間撹拌した。反応終了後、酢酸エチル(Ethyl acetate)(250ml)と水(250ml)を加えて、抽出を3回繰り返した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、硫酸マグネシウムをろ過除去した有機層の溶剤をロータリーエバポレーターで除去し得られた固体をカラムクロマトグラフィー法(酢酸エチル/メタノール、98:2、Rf=0.4)で純化した。続いて、ロータリーエバポレーターで有機溶剤を除去することにより、化合物(IIb)(13.8g、0.072mol、収率38%)を得た。
【化8】
【0074】
1H-NMRスペクトルとGC-MSスペクトルは、図2A、図2Bに示されるとおりである。GC-MSの測定条件は、下記の通りである。
GC/MS:6890N/5975B型
カラム:DB-5MS、30m×0.25mm×0.25μm
オーブン温度:60℃/3min、15℃/min、300℃/5min
注入温度:260℃
測定温度:300℃
流速:1.0mL/min
注入体積:1μL
スプリットレス(Splitless)
質量範囲:30〜550
配合溶剤:CH3OH
溶剤遅延:3.6min
【0075】
1H-NMR:(300MHz, CDCl3, ppm):δ= 7.90 (s,1H), 7.80 (dd, J = 2.4. 2.4 Hz, 1H), 7.41 (dd, J = 2.4. 2.4Hz, 1H), 7.31-7.26 (m, 2H), 4.24 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 3.69 (t, J = 6 Hz, 2H), 2.04-1.99(m, 2H), 1.64-1.58(m, 2H).
GC-MS(m/z):190.1 calcd ; 190.1 found.
【0076】
合成例3
1−ベンズイミダゾールヘキサノール(1-Benzimidazolehexanol)(化合物(IIc))
ベンズイミダゾール(Benzimidazole)(20g、0.169mol)とカリウム tert-ブトキシド(Potassium tert-butoxide)(22.45g、0.2mol)を三口フラスコに入れ、85mlのジメチルスルホキシド(DMSO)を加えて、溶解するまで約1時間撹拌した。次に、50mlのビュレットで、6-クロロ-1-ヘキサノール(6-Chloro-1-hexanol)(20g、0.2mol)を三口フラスコに一滴ずつ徐々に加えて、60℃、窒素ガス雰囲気下という反応条件で6時間撹拌した。反応終了後、酢酸エチル(Ethyl acetate)(250ml)と水(250ml)を加えて、抽出を3回繰り返した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、硫酸マグネシウムをろ過除去した有機層の溶剤をロータリーエバポレーターで除去し、得られた固体をカラムクロマトグラフィー法(酢酸エチル/メタノール、98:2、Rf=0.4)で純化した。続いて、ロータリーエバポレーターで有機溶剤を除去することにより、化合物(IIc)(28.46g、0.130mol、収率77%)を得た。
【化9】
【0077】
1H-NMRスペクトルとGC-MSスペクトルは、図3A,図3Bに示されるとおりである。GC-MSの測定条件は、下記の通りである。
GC/MS:6890N/5975B型
カラム:DB-5MS、30m×0.25mm×0.25μm
オーブン温度:60℃/3min、15℃/min、300℃/5min
注入温度:260℃
測定温度:300℃
流速:1.0mL/min
注入体積:1μL
スプリットレス(Splitless)
質量範囲:30〜550
配合溶剤:CH3OH
溶剤遅延:3.6min
【0078】
1H-NMR:(300MHz, DMSO, ppm):δ= 8.21 (s,1H), 7.65 (dd, J = 0.9. 0.9 Hz, 1H), 7.58 (d, J = 7.8Hz, 1H), 7.26-7.15 (m, 2H), 4.38-4.36 (m, 1H), 4.21 (t, J = 6.9 Hz, 2H), 3.34-3.33 (m, 2H), 1.79-1.74(m, 2H), 1.39-1.21(m, 4H).
GC-MS(m/z):218.14 calcd ; 218.1 found.
【0079】
式(I)で表される化合物の製造
【化10】
【化11】
【0080】
実施例1:化合物Ia-600の合成
まず、PEG 600(ポリエチレングリコール、Polyethylene Glycol、Mw=600)を75℃に昇温させ、撹拌下で、真空中で水を一晩(overnight)除去した。
【0081】
セパラブルフラスコを用いて、4.64gのPEG 600を加え、撹拌し、50℃に昇温させた後、速やかに2.86g のHDI(Hexamethylene diisocyanate、ヘキサメチレンジイソシアネート)を加えた。90℃に昇温させた後、2〜4時間保持した。HDIのFTIRスペクトルは、図4に示されるとおりである:C-H stretch 2940.19, 2861.91,-NCO- stretch 2273.23 cm-1。図中、約2273.23cm-1の位置には明らかな強い-NCO-特性吸収ピークが存在する。
【0082】
続いて、滴定法(ASTM D2572-97規格に従う)によりNCO(イソシアナート基、isocyanate-group、-N=C=O)の含有量を測定し、中間体の反応終点に達するか否かを判定した。反応が終点に達した後、75℃に降温させ、5.98gの中間体を取り、2.33gの化合物(IIa)を加えて、NCOの含有量が0になるまで温度を90℃に2〜4時間維持した。室温に降温させた。
【化12】
【0083】
FTIRスペクトルは、図5に示されるとおりである。(N-H 3332.50 cm-1, C=O 1713 cm-1.)
【0084】
図中、約3310〜3500cm-1の位置には-NH-特性吸収ピークが存在し、約1700〜1720cm-1の位置には非常に強いC=O特性吸収ピークが存在する。図中、この二つの吸収ピークはPUの特性官能基であるNHCOOの官能基を示し、この官能基が存在することは、-NCO-と-OH-とを反応させることにより前記官能基が出現したことを示す。
【0085】
実施例2:化合物Ib-600の合成
まず、PEG 600を75℃に昇温させ、撹拌下で、真空中で水を一晩除去した。
【0086】
セパラブルフラスコを用いて、4.64gのPEG 600を加え、撹拌し、50℃に昇温させた後、速やかに2.86g のHDIを加えた。90℃に昇温させた後、2〜4時間保持した。
【0087】
続いて、滴定法によりNCOの含有量を測定し、中間体の反応終点に達するか否かを判定した。反応が終点に達した後、75℃に降温させ、4.50gの中間体を取り、1.72gの化合物(IIb)を加えて、NCOの含有量が0になるまで温度を90℃に2〜4時間維持した。室温に降温させた。
【化13】
【0088】
FTIRスペクトルは、図6に示されるとおりである。(N-H 3332.50 cm-1, C=O 1713 cm-1.)
【0089】
図中、約3310〜3500cm-1の位置には-NH-特性吸収ピークが存在し、約1700〜1720cm-1の位置には非常に強いC=O特性吸収ピークが存在する。図中、この二つの吸収ピークはPUの特性官能基であるNHCOOの官能基を示し、この官能基が存在することは、-NCO-と-OH-とを反応させることにより前記官能基が出現したことを示す。
【0090】
実施例3:化合物Ic-600の合成
まず、PEG 600を75℃に昇温させ、撹拌下で、真空中で水を一晩除去した。
【0091】
セパラブルフラスコを用いて、16.71gのPEG 600を加え、撹拌し、50℃に昇温させた後、速やかに10.29g のHDIを加えた。90℃に昇温させた後、2〜4時間保持した。
【0092】
続いて、滴定法によりNCOの含有量を測定し、中間体の反応終点に達するか否かを判定した。反応が終点に達した後、75℃に降温させ、24.73gの中間体を取り、12.71gの化合物(IIc)を加えて、NCOの含有量が0になるまで温度を90℃に2〜4時間維持した。室温に降温させた。
【化14】
【0093】
FTIRスペクトルは、図7に示されるとおりである。(N-H 3332.50 cm-1, C=O 1717.92 cm-1.)
【0094】
図中、約3310〜3500cm-1の位置には-NH-特性吸収ピークが存在し、約1700〜1720cm-1の位置には非常に強いC=O特性吸収ピークが存在する。図中、この二つの吸収ピークはPUの特性官能基であるNHCOOの官能基を示し、この官能基が存在することは、-NCO-と-OH-とを反応させることにより前記官能基が出現したことを示す。
【0095】
実施例4:化合物Ic-300の合成
まず、PEG 300(ポリエチレングリコール、Polyethylene Glycol、Mw=300)を75℃に昇温させ、撹拌下で、真空中で水を一晩除去した。
【0096】
セパラブルフラスコを用いて、13.10gのHDIを加え、撹拌し、50℃に昇温させた後、17.00gの化合物(IIc)を徐々に加えて、90℃に昇温させた後、2〜4時間保持した。
【0097】
続いて、滴定法によりNCOの含有量を測定し、中間体の反応終点に達するか否かを判定した。反応が終点に達した後、75℃に降温させ、28.90gの中間体を取り、11.23gのPEG 300を加えて、NCOの含有量が0になるまで温度を90℃に2〜4時間維持した。室温に降温させた。
【化15】
【0098】
FTIRスペクトルは、図8に示されるとおりである。(N-H peak sharp 3330.15 cm-1, C=O 1700.19 cm-1.)
【0099】
図中、約3310〜3500cm-1の位置には-NH-特性吸収ピークが存在し、約1700〜1720cm-1の位置には非常に強いC=O特性吸収ピークが存在する。図中、この二つの吸収ピークはPUの特性官能基であるNHCOOの官能基を示し、この官能基が存在することは、-NCO-と-OH-とを反応させることにより前記官能基が出現したことを示す。
【0100】
実施例5:化合物Ic-400の合成
まず、PPG 400(ポリプロピレングリコール、Polypropylene glycol、Mw=400)を75℃に昇温させ、撹拌下で、真空中で水を一晩除去した。
【0101】
セパラブルフラスコを用いて、11.76gのHDIを加え、撹拌し、50℃に昇温させた後、15.26gの化合物(IIc)を徐々に加えて、90℃に昇温させた後、2〜4時間保持した。
【0102】
続いて、滴定法によりNCOの含有量を測定し、中間体の反応終点に達するか否かを判定した。反応が終点に達した後、75℃に降温させ、25.00gの中間体を取り、12.95gのPPG 400を加えて、NCOの含有量が0になるまで温度を90℃に2〜4時間維持した。室温に降温させた。
【化16】
【0103】
FTIRスペクトルは、図9に示されるとおりである。(N-H peak sharp 3335.92 cm-1, C=O 1700.19 cm-1.)
【0104】
図中、約3310〜3500cm-1の位置には-NH-特性吸収ピークが存在し、約1700〜1720cm-1の位置には非常に強いC=O特性吸収ピークが存在する。図中、この二つの吸収ピークはPUの特性官能基であるNHCOOの官能基を示し、この官能基が存在することは、-NCO-と-OH-とを反応させることにより前記官能基が出現したことを示す。
【0105】
色素増感太陽電池の製造及び効率の測定
測定例1:式(I)で表される化合物を含む電解液を使用することによる色素増感太陽電池の製造、及び効率の測定
粒径が20〜30nmである二酸化チタン微粒子を含むペースト状物を、一回又は複数回のスクリーン印刷により、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)で被覆されたガラス板(厚さ4mm、抵抗10Ω/□)に、焼成された多孔質二酸化チタン膜(多孔質半導体膜)の厚さが10〜12μmになるように塗布し、450℃で30分間焼成した。
【0106】
色素化合物(例えば、D719(Everlight社製))をアセトニトリル(acetonitrile)とt−ブタノール(t-butanol)の混合液(1:1 v/v)に溶かして、色素化合物の濃度が0.5Mである色素溶液を調製した。続いて、上記多孔質二酸化チタン膜を含有するガラス板を色素溶液に16時間〜24時間浸漬し、色素溶液中の色素を吸着させた後、ガラス板を取り出して乾燥することにより、光電アノード(photoanode)を得た。
【0107】
フッ素をドープした酸化スズで被覆されたガラス板に、電解液を注入するための孔径が0.75mmである孔を開けた。さらに、酸化スズガラス板に、塩化白金酸(H2PtCl6)溶液(1mLのエタノールに2mgの白金を含む)を塗布し、400℃に加熱して15分間処理することにより、カソード(cathode)を得た。
【0108】
厚さ60μmの熱可塑性ポリマー膜を光電アノードとカソードとの間に配置し、120℃〜140℃でこの二つの電極に圧力を加えることにより、この二つの電極を接着させた。
【0109】
電解液(配合成分を表1に示す)を注入し、さらに熱可塑性ポリマー膜で注入口を封止することにより、色素増感太陽電池を得た。
【表1】
【0110】
それぞれ上記実施例1、2、3、4及び5の化合物(式(I)で表される化合物)を電解液添加剤として用いて作製された色素増感太陽電池について、AM 1.5の照明下で、光電効率の測定を行った。測定項目は、短絡電流(Jsc)、開放電圧(Voc)、光電変換効率(η)及び曲線因子(FF)を含む。結果を下記表2に示す。
【0111】
比較例1:電解液は式(I)で表される化合物を含んでない
測定例1と同様に色素増感太陽電池を作製したが、電解液の配合成分に式(I)で表される化合物を加えなかった。測定の結果を下記表2に示す。
【0112】
比較例2:式(I)で表される化合物の代わりに、式(IV)で表される化合物を使用する。
測定例1の色素増感太陽電池の電解液の配合成分において、式(I)で表される化合物の代わりに、下記式(IV)で表される化合物[PEG 1000(ポリエチレングリコール、Polyethylene Glycol、Mw=1000)とヘキサメチレンジイソシアネート(Hexamethylene diisocyanate、HDI)と1-(3-アミノプロピル)イミダゾール(1-(3-Aminopropyl)imidazole)とを重合させたもの]を使用した。測定の結果を下記表2に示す。
【化17】
【0113】
【表2】
【0114】
表2に示されるように、本発明の式(I)で表される化合物の添加によって、色素増感太陽電池の光電変換効率を有効に向上させることができる。
【0115】
測定例2:式(II)で表される化合物を含む電解液を使用することによる色素増感太陽電池の製造、及び効率の測定
電解液(配合成分を表3に示す)を注入し、さらに熱可塑性ポリマー膜で注入口を封止することにより、色素増感太陽電池を得た。
【0116】
【表3】
【0117】
それぞれ上記合成例1〜3の化合物(IIa)、(IIb)、(IIc)を電解液添加剤として用いて作製された色素増感太陽電池について、AM 1.5の照明下で、光電効率の測定を行った。測定項目は、短絡電流(Jsc)、開放電圧(Voc)、光電変換効率(η)及び曲線因子(FF)を含む。結果を下記表4に示す。
【0118】
比較例3:測定例2の電解液の配合成分において、式(II)で表される化合物の代わりにN-ブチルベンズイミダゾール(NBB)を使用して、測定を行った。
【0119】
【表4】
【0120】
表4に示されるように、本発明の式(II)で表される化合物の添加によって、暗電流を防止し、開放電圧(Voc)の向上を促進することができる。また、本発明の式(II)で表される化合物は、色素増感太陽電池の光電変換効率を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明で提供された式(I)、(II)で表される化合物は、色素増感太陽電池の電解液に用いることが可能である。本発明の化合物を含有する電解液は、暗電流を防止し、開放電圧(Voc)の向上を促進することができる。また、本発明の式(I)及び/又は(II)で表される化合物の添加によって、色素増感太陽電池の光電変換効率を向上させることができ、産業上の要求を十分に満たす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される化合物。
【化1】
式中、AはC2−3アルキレン基であり、
mは2〜25の整数であり、
nは3〜10の整数である。
【請求項2】
Aはエチレン基であり、mは2〜25の整数である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Aはイソプロピレン基であり、mは2〜15の整数である請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
nは3〜8の整数である請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
nは3〜6の整数である請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
太陽電池の電解液に用いられる請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
色素増感太陽電池の電解液に用いられる請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
請求項1に記載の式(I)で表される化合物及び/又は下記式(II)で表される化合物を含む色素増感太陽電池の電解液。
【化2】
式中、nは3〜10の整数である。
【請求項9】
nは3〜8の整数である請求項8に記載の色素増感太陽電池の電解液。
【請求項10】
nは3〜6の整数である請求項9に記載の色素増感太陽電池の電解液。
【請求項11】
ヨウ化金属、ヨウ化イミダゾリウム誘導体又はそれらの組み合わせから選ばれる塩と、ヨウ素と、チオシアン酸グアニジンと、溶剤とをさらに含む請求項8に記載の色素増感太陽電池の電解液。
【請求項12】
基板と、多孔質半導体膜と、導電膜と、請求項8に記載の色素増感太陽電池の電解液と、色素化合物とを含む色素増感太陽電池。
【請求項13】
前記電解液は、ヨウ化金属、ヨウ化イミダゾリウム誘導体又はそれらの組み合わせから選ばれる塩と、ヨウ素と、チオシアン酸グアニジンと、溶剤とをさらに含む請求項12に記載の色素増感太陽電池。
【請求項14】
ポリアルキレングリコール(polyalkylene glycol)化合物と、ヘキサメチレンジイソシアネートと、式(II)で表される化合物とを反応させる工程を含む、請求項1に記載の式(I)で表される化合物の製造方法。
【化3】
式中、nは3〜10の整数である。
【請求項15】
前記ポリアルキレングリコール化合物は、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールから選ばれるものである請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記ポリアルキレングリコール化合物は、重量平均分子量が100〜1000のポリエチレングリコールである請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
前記ポリアルキレングリコール化合物は、重量平均分子量が200〜1000のポリプロピレングリコールである請求項15に記載の製造方法。
【請求項1】
下記式(I)で表される化合物。
【化1】
式中、AはC2−3アルキレン基であり、
mは2〜25の整数であり、
nは3〜10の整数である。
【請求項2】
Aはエチレン基であり、mは2〜25の整数である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Aはイソプロピレン基であり、mは2〜15の整数である請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
nは3〜8の整数である請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
nは3〜6の整数である請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
太陽電池の電解液に用いられる請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
色素増感太陽電池の電解液に用いられる請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
請求項1に記載の式(I)で表される化合物及び/又は下記式(II)で表される化合物を含む色素増感太陽電池の電解液。
【化2】
式中、nは3〜10の整数である。
【請求項9】
nは3〜8の整数である請求項8に記載の色素増感太陽電池の電解液。
【請求項10】
nは3〜6の整数である請求項9に記載の色素増感太陽電池の電解液。
【請求項11】
ヨウ化金属、ヨウ化イミダゾリウム誘導体又はそれらの組み合わせから選ばれる塩と、ヨウ素と、チオシアン酸グアニジンと、溶剤とをさらに含む請求項8に記載の色素増感太陽電池の電解液。
【請求項12】
基板と、多孔質半導体膜と、導電膜と、請求項8に記載の色素増感太陽電池の電解液と、色素化合物とを含む色素増感太陽電池。
【請求項13】
前記電解液は、ヨウ化金属、ヨウ化イミダゾリウム誘導体又はそれらの組み合わせから選ばれる塩と、ヨウ素と、チオシアン酸グアニジンと、溶剤とをさらに含む請求項12に記載の色素増感太陽電池。
【請求項14】
ポリアルキレングリコール(polyalkylene glycol)化合物と、ヘキサメチレンジイソシアネートと、式(II)で表される化合物とを反応させる工程を含む、請求項1に記載の式(I)で表される化合物の製造方法。
【化3】
式中、nは3〜10の整数である。
【請求項15】
前記ポリアルキレングリコール化合物は、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールから選ばれるものである請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記ポリアルキレングリコール化合物は、重量平均分子量が100〜1000のポリエチレングリコールである請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
前記ポリアルキレングリコール化合物は、重量平均分子量が200〜1000のポリプロピレングリコールである請求項15に記載の製造方法。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2013−53150(P2013−53150A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−195565(P2012−195565)
【出願日】平成24年9月5日(2012.9.5)
【出願人】(512227421)臺湾永光化▲学▼工業股▲フン▼有限公司 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月5日(2012.9.5)
【出願人】(512227421)臺湾永光化▲学▼工業股▲フン▼有限公司 (2)
【Fターム(参考)】
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