説明

太陽電池

【課題】太陽光をさらに有効活用し、より多くの電力を得ることのできる太陽電池を提供することを課題とする。
【解決手段】光電変換素子と熱電変換素子を備え、前記光電変換素子が表面保護基板と裏面保護基板と枠体により囲まれており、且つ、前記熱電変換素子が前記裏面保護基板部分もしくは前記枠体部分に設置されていることを特徴とする太陽電池とした。また、光電変換素子と熱電変換素子を備え、前記光電変換素子が表面保護基板と裏面保護基板と枠体により囲まれており、且つ、前記熱電変換素子が前記裏面保護基板部分に設置されており、且つ、前記熱電変換素子が上部に光電変換素子が設けられておらず太陽光が通過する箇所に設置されていることを特徴とする太陽電池とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池に関し、さらに詳細には、より高い発電効率を備える太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化問題に対する内外各方面の関心が高まる中、二酸化炭素の排出抑制のために、種々努力が続けられている。化石燃料の消費量の増大は、大気中の二酸化炭素の増加をもたらし、その温室効果により地球の気温が上昇し、地球環境に重大な影響を及ぼす。化石燃料の代替エネルギーとしては、様々な検討がされているが、クリーンなエネルギー源である太陽光発電に対する期待が高まっている。
【0003】
太陽電池において、光電変換素子は太陽光のエネルギーを直接電気に換える太陽電池の心臓部を構成するものであり、シリコン、カドミウム−テルル、ゲルマニウム−ヒ素などの半導体が用いられる。現在、太陽電池素子として多用されているものに、単結晶、多結晶シリコン、アモルファスシリコン等がある。その構造としては、太陽電池素子単体をそのままの状態で使用することはなく、一般的に数枚〜数十枚の太陽電池素子を直列、並列に配線し、長期間(約20年)に亘って素子を保護するため種々パッケージングがおこなわれ、ユニット化されている。一般的に太陽光が当たる受光面を表面保護基板であるガラスで覆い、太陽電池内の太陽電池素子の固定および保護、電気絶縁の目的でエチレン−酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性プラスチックからなる充填材で間隙を埋め、さらに太陽電池素子裏面を裏面保護基板である太陽電池裏面保護シートで保護された構成からなっている。
【0004】
これらの太陽電池は、屋外で使用されるため、その構成、材質構造などにおいて、長期間にわたる過酷な自然環境に耐え得る、耐熱性、耐候性、耐加水分解性、防湿性等の耐久性が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭58−158976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、太陽電池においては、更なる発電効率の向上が求められている。しかしながら、現在の太陽電池は、太陽光の照射密度が最も高い夏に、熱に対する脆弱性から発電効率が低下してしまうという問題がある。そこで、本願にあっては、太陽光をさらに有効活用し、より多くの電力を得ることのできる太陽電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために請求項1に係る発明としては、光電変換素子と熱電変換素子を備え、前記光電変換素子が表面保護基板と裏面保護基板と枠体により囲まれており、且つ、前記熱電変換素子が前記裏面保護基板部分に設置されていることを特徴とする太陽電池とした。
【0008】
また、請求項2に係る発明としては、光電変換素子と熱電変換素子を備え、前記光電変換素子が表面保護基板と裏面保護基板と枠体により囲まれており、且つ、前記熱電変換素子が前記枠体部分に設置されていることを特徴とする太陽電池とした。
【0009】
また、請求項3に係る発明としては、光電変換素子と熱電変換素子を備え、前記光電変換素子が表面保護基板と裏面保護基板と枠体により囲まれており、且つ、前記熱電変換素子が前記裏面保護基板部分に設置されており、且つ、前記熱電変換素子が上部に光電変換素子が設けられておらず太陽光が通過する箇所に設置されていることを特徴とする太陽電池とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明の太陽電池にあっては、光電変換素子だけでなく、熱電変換素子を備え、光電変換素子と熱電変換素子を併用することにより大きい起電力を得ることができる。本発明の太陽電池にあっては、熱電変換素子を太陽電池の裏面保護基板もしくは枠体に設けることにより、光電変換素子の起電力を低下させることなく、熱電変換素子により発生する起電力をさらに追加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の太陽電池の模式断面図の一例(第1の態様)である。
【図2】図2は、本発明の太陽電池の模式断面図の一例(第2の態様)である。
【図3】図3は、本発明の太陽電池の模式断面図の一例(第3の態様)である。
【図4】図4は、本発明の太陽電池の模式断面図の一例(第4の態様)である。
【図5】図5は、本発明の太陽電池の模式断面図の一例(第4の態様)である。
【図6】図6は、従来の太陽電池の模式断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図6に、従来の太陽電池の模式断面図を示した。太陽電池は、表面保護基板1、(表面側)充填材層2、配線4を配設した光電変換素子3、(裏面側)充填材層2、および、裏面保護基板5を積層して得られる。次いで、これらを真空吸引等により一体化して加熱圧着成形し一体成形体し、最後に枠体6を装着して太陽電池とすることができる。
【0013】
ここで、本発明の太陽電池にあっては、光電変換素子だけでなく、熱電変換素子を備えることを特徴とする。本発明の太陽電池にあっては、光電変換素子と熱電変換素子を併用することにより、さらに大きい起電力を得ることができる。また、熱電変換素子を太陽電池の裏面保護基板もしくは枠体に設けることにより、熱伝変換素子により光電変換素子に入射する太陽光は遮られないので光電変換素子の起電力を低下させることなく、熱電変換素子により発生する起電力をさらに追加することができる。
【0014】
熱電変換素子は、2種類の金属(または半導体)の両端を接続し、その両端に温度差を設けると起電力が発生する現象であるゼーベック効果を利用するものである。具体的には、ペルチェ素子を逆作用させることにより、熱を電気に変換させることが可能となる。本発明の太陽電池の熱電変換素子にあっては、表面保護基板を通過する太陽光Lを利用し、表面保護基板と裏面保護基板と枠体で囲まれる太陽電池内部と太陽電池の外部の温度差により発電させるものである。
【0015】
太陽電池にあっては、光電変換素子表面に太陽光が入射するように太陽電池は配置される。したがって、裏面保護基板は光電変換素子の裏側に位置することにより影の部分となり、受光面側保護基板と裏面保護基板と枠体で囲まれる太陽電池内部と太陽電池の裏面保護基板の外側には温度差が生じる。本発明の太陽電池において、裏面保護基板の外側は屋根に設置した際に太陽光が照射することはほとんどなく影の部分となるため、熱電素子に対して十分な温度差を付与することが出来る。
【0016】
本発明の太陽電池にあっては、太陽電池内部と太陽電池の外部の温度差を利用して熱電変換素子の電力を発生させるものである。本発明の太陽電池にあっては、表面保護基板を通過した太陽光の光エネルギーだけでなく、熱エネルギーも利用するものである。
【0017】
図1に本発明の太陽電池の模式断面図の一例(第1の態様)を示した。
図1に示した本発明の太陽電池にあっては、裏面保護基板5の一部に熱電変換素子7が形成されている。本発明の太陽電池にあっては、図1のように、裏面保護基板の一部に熱電変換素子を埋め込むことが可能である。
【0018】
図2に本発明の太陽電池の模式断面図の一例(第2の態様)を示した。
図2に示した本発明の太陽電池にあっては、裏面保護基板5と熱電変換素子7が積層されている。本発明の太陽電池にあっては、図2のように裏面保護基板と熱電変換素子を積層させることができ、例えば、熱電変換素子上に直接、裏面保護基板形成材料を塗布し、裏面保護基板を形成することも可能である。なお、図2にあっては内側に裏面保護基板、外側に熱電変換素子を備える構成となっているが、本発明の太陽電池にあっては内側に熱電変換素子、外側に裏面保護基盤を備える構成となっていてもよい。
【0019】
図3に本発明の太陽電池の模式断面図の一例(第3の態様)を示した。
図3に示した太陽電池にあっては、裏面保護基板はなく、裏面保護基板の変わりに熱電変換素子7が用いられている。本発明の太陽電池にあっては、図3のように、裏面保護基板の代わりに熱電変換素子が用いられている。このとき、熱電変換素子の劣化を防ぐために熱電変換素子の表面に、保護層を積層してもよい。
【0020】
図4に本発明の太陽電池の模式断面図の一例(第4の態様)を示した。
図4に示した本発明の太陽電池にあっては、枠体6に熱電変換素子7が組み込まれている。本発明の太陽電池にあっては、図4のように、枠体の一部に熱電変換素子を埋め込むことが可能である。
【0021】
図5に本発明の太陽電池の模式断面図の一例(第5の態様)を示した。
図5に示した本発明の太陽電池にあっては、裏面保護基板5上に熱電変換素子7が設けられている。そして、裏面保護基板上の熱電変換素子は、上部に光電変換素子が設けられていない部分に設けられ、熱電変換素子が太陽光を受光できるように配置されている。さらには、熱電変換素子上には、隣接する光電変換素子間を通過する太陽光を熱電変換素子上に集光することのできるマイクロレンズ8が形成されている。本発明の太陽電池において、熱電変換素子は太陽光の熱エネルギーを利用するものである。図5のような構成の太陽電池とすることにより、光電変換素子の電力を低下させることなく、効率的に太陽光の熱を熱電変換素子に利用することができる。
【0022】
なお、本発明の太陽電池にあっては、図1乃至5の構成に限定されるものではない。例えば、本発明の太陽電池にあっては、裏面保護基板と枠体の両方に熱電変換素子を設けることも可能である。
【0023】
さらに詳細に本発明の太陽電池について説明する。
【0024】
本発明の太陽電池モジュ−ルを構成する受光面側の表面保護基板としては、太陽光の透過性、絶縁性等を有し、さらに、耐候性、耐熱性、耐光性、耐水性、防湿性、防汚性、その他等の諸特性を有し、物理的あるいは化学的強度性、強靱性等に優れ、極めて耐久性に富み、さらに、光起電力素子としての太陽電池素子の保護ということから、耐スクラッチ性、衝撃吸収性等に優れていることが必要である。上記の表面保護シ−トとしては、具体的には、公知のガラス板等、さらに、例えば、ポリアミド系樹脂(各種のナイロン樹脂)、ポリエステル系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アセタ−ル系樹脂、その他等の各種の樹脂フィルムないしシ−トを使用することもできる。上記の樹脂のフィルムないしシ−トとしては、2軸延伸した延伸フィルムないしシ−トを使用することができる。
【0025】
本発明の太陽電池を構成する充填材層としては、太陽光が入射し、これを透過して光電変換素子に太陽光が入射することから透明性を有することが必要であり、また、受光面側保護基板および裏面保護基板との接着性を有することも必要であり、光起電力素子の表面の平滑性を保持する機能を果たすために熱可塑性を有すること、さらには、光起電力素子の保護ということから、耐スクラッチ性、衝撃吸収性等に優れていることが必要である。具体的には、上記の充填材層としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマ−樹脂、エチレン−アクリル酸、または、酸変性ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルブチラ−ル樹脂、シリコ−ン系樹脂、エポキシ系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、その他等の樹脂の1種ないし2種以上の混合物を使用することができる。本発明においては、上記の充填材層を構成する樹脂には、耐熱性、耐光性、耐水性等の耐候性等を向上させるために、その透明性を損なわない範囲で、例えば、架橋剤、熱酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、光酸化防止剤、その他等の添加剤を任意に添加し、混合することができるものである。
【0026】
本発明の太陽電池を構成する光電変換素子としては、従来公知のもの、例えば、単結晶シリコン型太陽電池素子、多結晶シリコン型太陽電池素子等の結晶シリコン太陽電子素子、シングル接合型あるいはタンデム構造型等からなるアモルファスシリコン太陽電池素子、ガリウムヒ素(GaAs)やインジウム燐(InP)等のIII−V族化合物半導体太陽電子素子、カドミウムテルル(CdTe)や銅インジウムセレナイド(CuInSe)等のII−VI族化合物半導体太陽電子素子、有機太陽電池素子、その他等を使用することができる。さらに、薄膜多結晶性シリコン太陽電池素子、薄膜微結晶性シリコン太陽電池素子、薄膜結晶シリコン太陽電池素子とアモルファスシリコン太陽電池素子とのハイブリット素子等も使用することができる。
【0027】
本発明の太陽電池を構成する裏面保護基板としては、公知のプラスチック基板を用いることができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンジメタノール−テレフタレート(PCT)から選ばれるポリエステル基板、ポリカーボネート系基板、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)から選ばれるフッ素系基板、あるいはアクリル系基板等を用いることができる。
【0028】
また、裏面保護基板としては、これらのプラスチック基板を積層した積層フィルムを用いることもできる。さらには、水蒸気バリア性を付与するためにアルミ箔を積層したり、プラスチック基板上に酸化ケイ素等の無機酸化物薄膜層を形成することも可能である。裏面保護基板として、例えば、アルミ箔の両面に接着剤を介してポリエチレンテレフタレートフィルムを積層した裏面保護基板、また、アルミ箔の両面に接着剤を介してポリフッ化ビニルフィルムを積層した裏面保護基板を用いることができる。
【0029】
太陽電池を構成する枠体としては、金属製のもの、プラスチック製のものを使用することができる。枠体としては、例えば、アルミニウム型材が使用することができる。
【0030】
熱電変換素子としては、先ほども示したようにペルチェ素子を用いることができ、具体的な材料としては、BiTe系、BiSbTe系、PbTe系、GeTe系、PbSnTe系、FeSi系、ZnSb系、CoSb系、AgGeSbTe系、SiGe系等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
また、本発明の太陽電池を構成する配線としては、例えばアルミ配線、Cu配線等の金属配線を用いることができる。また、光電変換素子、熱電変換素子と配線の接合には、ハンダや銀ペーストといった金属ペーストを用いることができる。
【0032】
また、図5に示した太陽電池を構成するマイクロレンズとしては、透明樹脂を用いることができ、具体的には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などであり、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系アクリル樹脂、シリコーン系アクリル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィンポリマー、メチルスチレン樹脂、フルオレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン、エチレンビニルアセテートなどを用いることができる。
【0033】
以上により、本発明の太陽電池は製造される。
【符号の説明】
【0034】
1 表面保護基板
2 充填材層
3 光電変換素子
4 配線
5 裏面保護基板
6 枠体
7 熱電変換素子
8 マイクロレンズ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換素子と熱電変換素子を備え、
前記光電変換素子が表面保護基板と裏面保護基板と枠体により囲まれており、且つ、
前記熱電変換素子が前記裏面保護基板部分に設置されている
ことを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
光電変換素子と熱電変換素子を備え、
前記光電変換素子が表面保護基板と裏面保護基板と枠体により囲まれており、且つ、
前記熱電変換素子が前記枠体部分に設置されている
ことを特徴とする太陽電池。
【請求項3】
光電変換素子と熱電変換素子を備え、
前記光電変換素子が表面保護基板と裏面保護基板と枠体により囲まれており、且つ、
前記熱電変換素子が前記裏面保護基板部分に設置されており、且つ、
前記熱電変換素子が上部に光電変換素子が設けられておらず太陽光が通過する箇所に設置されている
ことを特徴とする太陽電池。





【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate