説明

太陽電池

【課題】美観に優れ、かつ、変換効率が十分高い太陽電池を提供することを目的とする。
【解決手段】光電変換部30と、光電変換部30上に設けられた保護層9と、を備え、保護層9は、樹脂、及び、樹脂内に配置された、樹脂とは屈折率の異なる平均粒径2〜15μmのビーズを含み、保護層の表面粗さRaが400〜3000nmである太陽電池を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、光電変換部と、この光電変換部を覆う保護層と備える太陽電池が知られている。
【0003】
そして、特許文献1には、表面反射光を抑えるべく保護層の表面に凹凸を形成することが開示されている。また、特許文献2、3には、表面反射光を抑えるべく保護層中にビーズを含有させることが開示されている。また、特許文献4、5には、入射光の利用効率を高めるべく、保護層中に粒子を含有させることが開示されている。特許文献6,7には、太陽電池の外観品質を高めるべく、保護層に粒子を含有させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−139347号公報(特許3288876号公報)
【特許文献2】特開平11−330508号公報(特許4189056号公報)
【特許文献3】特開平6−45628号公報(特許3270901号公報)
【特許文献4】特開2008−91162号公報
【特許文献5】特開2009−16555号公報
【特許文献6】特開2001−185746号公報
【特許文献7】特開平11−340490号公報(特許3467424号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、最近では、保護層の粒子により光を散乱させることによって光電変換部のパターンを外部から視認しにくくなるようにして美観を向上させたいという要望がある一方、この場合でも散乱によって変換効率が低下することは抑制したいという要望もある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、美観に優れ、かつ、変換効率が十分高い太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る太陽電池は、光電変換部と、光電変換部上に設けられた保護層と、を備える。保護層は、樹脂、及び、樹脂内に配置された、樹脂とは屈折率の異なる平均粒径2〜15μmのビーズを含む。そして、保護層の表面粗さRaが400〜3000nmである。
【0008】
本発明によれば、保護層内に所定の粒径のビーズを含み、保護層の表面粗さが適切に定められていることにより、保護層のヘイズ値が十分に高くなると共に、光電変換部への光の入射効率も十分高いままに維持される。
【0009】
ここで、保護層は、樹脂100重量部に対しビーズを3〜40重量部含むことが好ましい。
【0010】
また、ビーズは、架橋アクリルビーズであることが好ましい。
【0011】
また、保護層の厚みに対するビーズの平均粒径の比が、0.05〜0.5であることが好ましい。
【0012】
また、保護層の樹脂は、飽和ポリエステルを主成分として含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、美観に優れ、かつ、変換効率が十分高い太陽電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、実施形態に係る太陽電池の概略断面図である。
【図2】図2は、図1の保護層の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
まず、本発明の太陽電池200の一例について説明する。図1に示すように、本実施形態に係る太陽電池200は、光電変換部100及び保護層9を備える。光電変換部100は、主として、基板10、下部電極20、光電変換層30、絶縁樹脂層6、及び、透明電極層7、配線層8を有する。
【0017】
基板10の材料は、特に限定されず、例えば、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PI(ポリイミド)、ポリアミド等の樹脂フィルムを挙げられる。基板10は、可撓性であることができるし、剛性を有していてもよい。
【0018】
下部電極20は、基板10上に設けられている。下部電極20の材料は導電材料であれば特に限定されないが、光を反射させるべく、アルミニウム、チタン、銀、ステンレス等の金属が挙げられる。下部電極20は、複数の金属層の積層体でもよい。下部電極20は、例えばスパッタリング法により形成できる。
【0019】
光電変換層30は、下部電極20上に設けられ、アモルファスシリコン系の太陽電池であれば、例えば、n型アモルファスシリコン薄膜30n、i型アモルファスシリコン薄膜30i、及び、p型アモルファスシリコン薄膜30pを下から順に有する。光電変換層30は、プラズマCVD、スパッタリング等の公知の方法により形成できる。光電変換層30は、上述のタイプに限定されず、他のタイプの光電変換層であっても構わない。
【0020】
透明電極層7は、光電変換層30上に形成されている。透明電極層7の材料としては、例えばITO(酸化インジウム−スズ化合物)が挙げられる。透明電極層7は、スパッタリング等の公知の方法により製造できる。
【0021】
光電変換層30、下部電極20及び透明電極層7には、レーザ等により形成された開口h1及びh2が形成されている。開口h1は、ユニットセルを形成すべく、下部電極20、光電変換層30、透明電極層7の積層構造を水平方向に分離し、互いに絶縁させるものである。
【0022】
開口h1には絶縁樹脂層6が埋め込まれている。絶縁樹脂層6は、例えば、絶縁インクを用いたスクリーン印刷法により形成することができる。例えば、絶縁インクとしては、特許第3594711号に示されるような、フェノキシ樹脂またはエポキシ樹脂と多官能イソシアネート化合物との混合物に有機溶剤を加えたもの、特開平11−140147に示されるような、飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、及びポリアミド樹脂の1種以上とメラミン樹脂との混合物に有機溶剤を加えたものを例示できる。有機溶剤としては、上記樹脂を溶解可能なものであればよく、例えば、シクロヘキサノン、イソホロン、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート等が挙げられる。これらは単独で用いても、混合して用いても良い。このような絶縁インクを、所望の位置にスクリーン印刷後、オーブンで加熱乾燥することにより、絶縁樹脂層6を形成できる。
【0023】
開口h2は、開口h1に近接してレーザ等により形成されている。
【0024】
配線層8は、開口h2を充填すると共に、近接する開口h1を充填する絶縁樹脂層6の頂部を乗り越えて隣接するユニットセルuの透明電極層7の上の一部にまで伸びている。これにより、各セルuが電気的に直列に接続されている。
【0025】
配線層8は、導電性であれば特に限定されないが、カーボンブラック、グラファイト、銀等の導電性粒子が樹脂中に分散した導電インキを用いると、スクリーン印刷により容易に形成できて好ましい。
【0026】
さらに、このような光電変換部100の上には、保護層9が全面に渡って形成されている。
【0027】
以下に、図2を参照して、保護層9について詳しく説明する。保護層9は、樹脂94及び複数のビーズ92を含む。
【0028】
樹脂94は、ビーズ92の屈折率と異なる屈折率を有すれば特に限定されない。好ましい樹脂は、飽和ポリエステル、エポキシ系樹脂、フェノキシ樹脂、あるいはウレタン樹脂を主成分(最大重量成分)として含むものであるが、オレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ケトン樹脂、アルキド樹脂、ロジン系樹脂、石油樹脂、マレイン酸樹脂、ブチラール樹脂、テルペン樹脂、クロマン−インデン樹脂等の樹脂も主成分として使用可能である。これらの樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
樹脂94は、上述の主成分以外に、添加成分を有していてもよい。添加成分としては、消泡剤等が挙げられる。
【0029】
ビーズ92は、球状粒子であれば特に限定されない。球状粒子は、容易に樹脂層中で分散させることができ、表面の凹凸も形成しやすい。
【0030】
ビーズ92の材質としては、樹脂94と屈折率が異なる材料であれば特に限定されないが、架橋アクリル樹脂、架橋スチレン樹脂、架橋ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂が好ましく、架橋アクリル樹脂が特に好ましい。ガラス等に比べて樹脂製のビーズは、樹脂94と密度が近いため、保護層9中において良好な分散が得やすい。また、架橋アクリル樹脂は、保護層形成用の塗料に含まれる、樹脂を溶解可能な溶媒による膨潤が特に少なく、溶媒の乾燥後もその表面形状が安定しているため好ましい。また、架橋アクリル樹脂は、光透過率に優れるため、樹脂に分散させた場合に、入射光のロスが少ない。
【0031】
ビーズの平均粒径は、2〜15μmである。この範囲の平均粒径のビーズを用いると、下記のような表面粗さの保護層9が得られやすい。平均粒径は、レーザー回折型粒度測定装置により得られた体積基準の粒度分布におけるd50として測定することができる。ビーズの平均粒径は、特に6〜15μmが好ましい。
【0032】
樹脂94とビーズ92との屈折率が互いに異なっていることで出射光の散乱が生じ、太陽電池200の美観を向上することができるが、その屈折率差は、例えば550nmの波長において、0.05以上であればよい。
【0033】
保護層9は、樹脂94を100重量部に対しビーズ92を3〜40重量部含むことが好ましく、7〜36重量部がより好ましい。
【0034】
また、保護層9の平均厚みに対するビーズ92の平均粒径の比が、0.05〜0.5であることが好ましい。保護層9の平均厚みは、例えば、4〜60μmとすることができる。
【0035】
さらに、保護層9の表面の表面粗さRaは、400〜3000nmとされている。表面粗さRaとは、(JIS B0601−1994)により定義される算術平均粗さRaである。
【0036】
このような保護層9は、樹脂、ビーズ、及び、溶媒を混合した塗料を作製し、光電変換部100上に塗布し、乾燥させることにより、容易に形成できる。溶媒としては、例えば、シクロヘキサノン、イソホロン、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、テルピネオール、オクタン、イソオクタン、デカン、イソデカン、デカリン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ブチルカルビトールアセテート、ブチルセロソルブアセテート等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
特に、スクリーン印刷で保護層9を形成することが好適である。例えば、スクリーンメッシュの目開きは150〜300μmとすることができ、スクリーンメッシュの材質はステンレス、ポリエステル、ナイロン等とすることができ、塗料の塗布厚みは5〜50μmとすることができる。
【0038】
塗料の塗布後に塗布膜を乾燥すると、ビーズの影響により、表面に上述の表面粗さの凹凸を有し、しかも、内部に上記の粒径のビーズが分散した保護層9を得ることができる。
【0039】
続いて、本は実施形態の作用について説明する。本実施形態では、図1の上方から光が入射した場合に、入射光は、保護層9、透明電極層7を通過して光電変換層30に到達し、光電変換が行われて、下部電極20及び透明電極層7間に電圧が発生する。
【0040】
このとき、光電変換層30から保護層9を通して外部に出射される光が好適に保護層9で散乱されるため、光電変換層30の配線パターン等が外部から視認し難くなり、太陽電池200の美観が向上する。また、保護層9を設けてもなお入射光の光電変換層30への入射効率が高く維持され、変換効率が十分に高くなる。
【0041】
この理由としては、保護層9の表面に適切な範囲の凹凸が形成されていること、及び、保護層9内に好適な大きさのビーズが含まれていることによるものと考えられる。
このような太陽電池200は、特に、時計の文字盤に配置される太陽電池として好適である。
【0042】
なお、本発明は上記実施形態に限られずさまざまな変形態様が可能である。
【0043】
例えば、太陽電池200の光電変換部100の構成は上記に限定されず、様々な形態のものを利用できる。
【0044】
例えば、基板10を貫通するように開口h2を形成して、背面から電極を取り出すようにしてもよい。
【0045】
さらに、配線層8と光電変換層30との色調差をさらに小さくする為に、配線層8上に、光電変換層30の色調と同等の色調を有する絶縁インキを印刷し乾燥を行うことも可能である。
【実施例】
【0046】
(実施例1)
1.ポリエチレンナフタレート基板(基板)上にアルミニウムとステンレスの積層体から成る下部電極をスパッタリングで形成した。
【0047】
2.次にPIN接合から成るアモルファスシリコン層(光電変換層)をプラズマCVDで下部電極上に形成した。
【0048】
3.次に、アモルファスシリコン層上に透明電極としてITO(酸化インジウム−スズ化合物)をスパッタリングにより成膜した。
【0049】
4.次にYAGレーザを用いて、下部電極、アモルファスシリコン層、及び、透明電極をレーザ加工して開口h1を形成し、セルの分断を行った。さらに、下部電極との導通を取るための開口h2も形成した。
【0050】
5.次に、絶縁インクを用いてスクリーン印刷により絶縁樹脂層用インクを印刷し、印刷後160℃オーブンで加熱乾燥し、ユニットセルを分断する絶縁樹脂層を形成した。
【0051】
6.次にカーボンブラックを分散した導電インキを用いて、スクリーン印刷で、配線層を形成した。印刷後、160℃オーブンで加熱乾燥した。これにより、光電変換部が完成した。
【0052】
7.次に、保護層用塗料を調整した。具体的には、150重量部の溶剤(γ−ブチロラクトン100重量部及びブチルセロソルブアセテート50重量部)に対して、飽和ポリエステル樹脂(バイロン200(TOYOBO))100重量部を攪拌機で攪拌しながら加えた。飽和ポリエステル樹脂が完全に溶解した後、消泡剤2.5部と架橋アクリルビーズ J−4PY(根上工業;平均粒径2.2μm)50重量部を攪拌しながらさらに添加し混合した。その後、硬化剤としてn−ブチル化メラミン樹脂(三井化学 ユーバン21R)を40重量部加え、混合後の溶液を保護層用塗料とした。
【0053】
8.次に、調整した保護層用塗料をスクリーン印刷で光電変換部の表面全面に渡って印刷し、乾燥した。このようにして、ユニットセルが5セル直列接続され、各ユニットセルの有効面積が40mmの太陽電池を作製した。
【0054】
9.このようにして製造した太陽電池を、蛍光灯200lx(ルクス)照度のもと、電流電圧特性を測定し、動作電圧2.6Vでの動作電流値(Iop)を比較した。
【0055】
(実施例2)
保護層用塗料のビーズを、架橋アクリルビーズG−400透明(根上工業;平均粒径14μm)とする以外は、実施例1と同様とした。
【0056】
(実施例3)
保護層用塗料のビーズを、架橋アクリルビーズG−800透明(根上工業;平均粒径6μm)とする以外は、実施例1と同様とした。
【0057】
(実施例4)
保護層用塗料のビーズを25重量部とする以外は、実施例3と同様とした。
【0058】
(実施例5)
保護層用塗料のビーズを10重量部とする以外は、実施例3と同様とした。
【0059】
(比較例1)
保護層用塗料の架橋アクリルビーズを、微粉末シリカ(エボニック社製平均粒径16nm)10部とする以外は、実施例5と同様とした。
【0060】
(評価)
保護層形成前の太陽電池の動作電流値と、保護層形成後の動作電流値とを測定し、その差を計算した。
【0061】
また、保護層の厚み、保護層の表面の表面粗さRa、保護層のヘイズ値を測定した。
【0062】
表面粗さRaは、Dektak 6M(アルバック(株))、stylus径12.5μm、測定レンジ2620KA、触針圧 3mgによりJIS B0601−1994に基づく算術平均粗さRaを測定した。
【0063】
ヘイズの測定はU−4000形、自記分光光度計(Hitachi)で、JIS K7105に示されるように、積分球を用いて、拡散透過率(Td)と全光線透過率(Tt)の比で算出した。算出した波長は人間の視感度曲線のピークである、550nmで比較を行った。
H=(Td/Tt)×100
H:ヘイズ(%)、Td:拡散透過率(%)、Tt:全光線透過率(%)
なお、ヘイズが55%以上であれば配線パターンを見え難くして美観を向上させる効果は十分あるが、ヘイズが70%以上であれば配線パターンが殆ど見え難くなり、より美観に優れる。
【0064】
これらの結果を表1に示す。
【表1】

【0065】
比較例1では、保護層形成前後で、Iop値が0.3μA低下した。これに対して、実施例では、保護層形成前後でのIop値の低下が少なくなった。粒径が6μm以上のものが、特に、Iop値低下抑制の効果が顕著であった。
【符号の説明】
【0066】
9…保護層、94…樹脂、92…ビーズ、100…光電変換部、200…太陽電池。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換部と、前記光電変換部上に設けられた保護層と、を備え、
前記保護層は、樹脂、及び、前記樹脂内に配置された、前記樹脂とは屈折率の異なる平均粒径2〜15μmのビーズを含み、
前記保護層の表面粗さRaが400〜3000nmである太陽電池。
【請求項2】
前記保護層は、前記樹脂100重量部に対し前記ビーズを3〜40重量部含む請求項1記載の太陽電池。
【請求項3】
前記ビーズは、架橋アクリルビーズである請求項1又は2記載の太陽電池。
【請求項4】
前記保護層の厚みに対する前記ビーズの平均粒径の比が、0.05〜0.5である請求項1〜3のいずれか一項記載の太陽電池。
【請求項5】
前記樹脂は、飽和ポリエステルを主成分として含む請求項1〜4のいずれか一項記載の太陽電池。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−166017(P2011−166017A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29057(P2010−29057)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】