説明

妊娠高血圧腎症の危険性の検出

例えば子癇、軽度妊娠高血圧腎症、慢性高血圧症、EPH妊娠中毒、妊娠性高血圧症、加重型妊娠高血圧腎症、ヘルプ症候群または腎症などを含む、妊婦の高血圧障害の危険性を早期に予測する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、妊娠高血圧腎症を発症する妊婦の危険性を評価する方法に関する。具体的には、本発明は、妊婦に発症する妊娠高血圧腎症の危険性を早期に検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
妊娠高血圧腎症は、未経産妊娠の5%に影響を及ぼしており、世界的に毎年約4,000,000人の女性を苦しめている。これは、依然として世界中の母体死亡の主要因であり、著しく高い乳児罹患率および死亡率の原因である。さらに妊娠高血圧腎症は、高血圧症、冠状動脈疾患、脳卒中および2型糖尿病の危険性を増大させ、中年期以降の女性について健康管理上の影響がある。妊娠高血圧腎症の正確な病因は未知であるが、積み重ねられている証拠から、その疾患が、酸化的ストレスに関連する炎症過程および凝固過程に加えて、妊娠早期における子宮胎盤動脈の再形成の不良により十分に潅流しなかった胎盤と脈管構造を含む胎盤由来の要因に対する母性の応答との間の複雑な相互作用に起因していることが示唆されている。血漿の変化が、妊娠高血圧腎症の臨床的兆候に先行することがよく知られているので、予測バイオマーカーの同定には強い関心がある。胎盤ホルモン、血管形成因子および脂質を含む数多くのバイオマーカーの候補が、疾患の予測用に提案されてきた。現在までに、妊娠高血圧腎症の危険性を早期に予測する試験として臨床用途になるのに必要な特異度および感度を備えるいかなるバイオマーカーも(またはどんな組合せも)浮上していない。結果的に、臨床医は、最大の危険性があるこれら未経産婦に対して的を絞った調査または潜在的な予防治療を提供することができない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Setubal and Meidanis et al., Introduction to Computational Biology Methods (PWS Publishing Company, Boston, 1997);
【非特許文献2】Salzberg, Searles, Kasif, (Ed.) , Computational Methods in Molecular Biology, (Elsevier, Amsterdam, 1998)
【非特許文献3】Rashidi and Buehler, Bioinformatics Basics:Application in Biological Science and Medicine (CRC Press, London, 2000)
【非特許文献4】Ouelette and Bzevanis Bioinformatics:A Practical Guide for Analysis of Gene and Proteins (Wiley & Sons, Inc., 2nd ed., 2001).
【発明の概要】
【0004】
上述した問題の少なくとも1つを解決することが、本発明の目的である。
【0005】
出願人は、例えば妊娠約11週目〜17週目に妊娠高血圧腎症の危険性を予測する、妊娠高血圧腎症を発症する妊婦の危険性の早期予測に関連する代謝物のパネルを特定した。代謝物のパネルを、表1に示す。出願人は、表1の代謝物、特に、5−ヒドロキシトリプトファン、単糖、デカノイルカルニチン、メチルグルタル酸および/またはアジピン酸、オレイン酸、ドコサヘキサエン酸および/またはドコサトリイン酸、γ−ブチロラクトンおよび/またはオキソラン−3−オン、2−オキソ吉草酸および/またはオキソメチルブタン酸、アセト酢酸、ヘキサデセノイル−エイコサテトラエノイル−sn−グリセロール、スフィンゴシン−1−リン酸塩、スフィンガニン−1−リン酸塩およびビタミンD3誘導体(以降「好ましい代謝物」)を含む群から選択される代謝物の1つまたは複数の存在量(差分または変化した存在量)の変化は、その後に妊娠高血圧腎症を発症する(または発症した)女性の危険性の増大と関連していることを示す。したがって、本発明は、妊婦が通常の臨床的病徴を発症する前に、妊娠の早期段階で妊娠高血圧腎症を発症する危険性があることを決定する、または妊婦が妊娠高血圧腎症を発症する危険性があることの決定に役立つ手段として、1つまたは複数の代謝物を使用することに関する。表1の3つの代謝物については、参照の存在量(正常な妊娠における代謝物の存在量、すなわち陰性対照)と比較して減少した存在量が、妊娠高血圧腎症を発症する危険性の増大と相関するが、表1の代謝物の大部分に関しては、参照の存在量と比較して上昇した代謝物の存在量が、妊娠高血圧腎症を発症する危険性の増大と相関する。陽性対照を参照として使用してよいことはいうまでもない、その場合、表1の大部分の代謝物については、参照の存在量(妊娠高血圧腎症で妊娠中の代謝物の存在量)と比較して減少した代謝物の存在量が、妊娠高血圧腎症を発症する危険性の増大と相関し、その代謝物の1つに関しては、参照レベルと比較して増加した存在量が、妊娠高血圧腎症を発症する危険性の増大と相関する。
【0006】
【表1−1】

【0007】
【表1−2】

【0008】
【表1−3】

【0009】
【表1−4】

【0010】
【表1−5】

【0011】
本発明によると、妊娠高血圧腎症を発症する(または発症した)妊婦の危険性を予測する方法またはアッセイもしくは危険性の予測に役立つ方法またはアッセイであって、女性由来の生体試料をアッセイして、表1に示した群、特に5−ヒドロキシトリプトファン、単糖、デカノイルカルニチン、メチルグルタル酸および/またはアジピン酸、オレイン酸、ドコサヘキサエン酸および/またはドコサトリイン酸、γ−ブチロラクトンおよび/またはオキソラン−3−オン、2−オキソ吉草酸および/またはオキソメチルブタン酸、アセト酢酸、ヘキサデセノイル−エイコサテトラエノイル−sn−グリセロール、スフィンゴシン−1−リン酸塩、スフィンガニン−1−リン酸塩およびビタミンD3誘導体(好ましい代謝物)を含む群から選択される少なくとも1つの代謝物のバイオマーカーの存在量を決定するステップを含み、少なくとも1つの代謝物のバイオマーカーの参照の存在量と比較したその代謝物のバイオマーカーの変化した存在量が、妊娠高血圧腎症を発症する(または発症した)女性の危険性と相関する方法またはアッセイを提供する。好ましくは、本方法は、妊娠高血圧腎症の危険性を早期に予測する(または早期に検出する)のための方法であり、生体試料は、妊娠11週目から19週目、好ましくは11週目から18週間目、好ましくは11週目から17週目、および理想的には約15週目+/−1週間または2週間の妊婦から採取される。代謝物のバイオマーカーの参照の存在量は、試験の生体試料と同じ妊娠期間の週(+/−1週間または2週間)の妊婦から採取された参照の生体試料(または複数の試料、例えばプールされた複数の試料)から採取されることが理想的である。
【0012】
一態様において、参照の存在量とは、深刻でない妊娠の被験者から採取される生体試料中の代謝物マーカーの存在量である。深刻でない妊娠とは、妊娠高血圧腎症がない妊娠、または妊娠高血圧腎症がなく他のどんな合併症もない妊娠であってよい。その被験者は年齢が合致しており、理想的には未経産で、深刻でない妊娠の被験者であり、生体試料は、試験の被験者と同じ妊娠期間+/−4週間、3週間、2週間または1週間の被験者から採取されることが理想的である。したがって、参照の存在量は、妊娠11週目から19週目、好ましくは12週目から18週目、より好ましくは13週目から17週目、および理想的には約15週目+/−1週間の被験者から採取される生体試料から採取されてよい。別の実施形態において、参照の存在量は、妊娠高血圧腎症の被験者から採取される生体試料から採取されてよく、その生体試料は、理想的には試験の被験者と同じ妊娠期間+/−4週間、+/−3週間、+/−2週間、または+/−1週間に被験者から採取されてよい。この場合、変化した存在量は、妊娠高血圧腎症が起こらないこと(すなわち正常血圧の妊娠)を予測する、または予測に役立つであろう。代謝物マーカーのいずれかについて、変化した存在量の検出法は後述する。したがって例えば、変化した存在量を検出する手段として超高性能液体クロマトグラフィー−質量分析法を使用する場合、臨床的な意義での有意水準を、0.05に設定することが理想的である。
【0013】
したがって、一態様では、本発明は、好ましくは試験患者に由来する生体試料をアッセイし、表1から選択される1つの代謝物または理想的には表1から選択される少なくとも2つの代謝物の存在量を決定し、その代謝物、または各代謝物の存在量が参照の存在量と比較して変化しているかどうか決定することを含み、代謝物の変化した存在量は妊娠高血圧腎症の危険性の増大と相関する。その代謝物、または各代謝物は、好ましい代謝物の群から選択されることが理想的である。
【0014】
妊娠高血圧腎症は、未経産妊娠の5%に影響を及ぼしており、世界的に毎年約4,000,000人の女性を苦しめている。妊娠高血圧腎症の臨床的病徴は一般に妊娠20週目以前には現れず、できるだけ早い時期に妊娠高血圧腎症もしくは妊娠高血圧腎症の危険性を検出(または予測)して早期介入を可能にすることが望ましい。本発明の代謝物のバイオマーカーは、妊娠の早期段階、例えば臨床的病徴が出現するより前に、妊娠高血圧腎症を予測するまたは予測に役立てることができる。
【0015】
したがって一実施形態において、本発明は、理想的には妊娠の早期段階に妊婦が妊娠高血圧腎症を発症する(または発症した)危険性があることを決定するまたは決定に役立てる方法に関し、その方法は妊娠11週目から17週目に女性から通常通り採取される生体試料をアッセイし、5−ヒドロキシトリプトファンの存在量を決定するステップを含み、ヒドロキシトリプトファンの参照の存在量と比較した5−ヒドロキシトリプチオファンの変化した存在量は、妊娠高血圧腎症を発症する危険性の増大と相関する。5−ヒドロキシトリプトファンの変化した存在量は、予測力(オッズ比(95%信頼区間)の形式で)23.8を有する。したがって、5−ヒドロキシトリプトファンの変化した存在量を検出することにより、臨床症状を発症する前に妊娠高血圧腎症の危険性の増大が予測される。参照の存在量が妊娠高血圧腎症を発症しなかった被験者に由来する場合、存在量の減少は危険性を示している。しかし、参照の存在量が妊娠高血圧腎症を発症した被験者に由来する場合、上昇した存在量が危険性を示している。
【0016】
別の実施形態において、本発明は、理想的には妊娠の早期段階に、妊婦が妊娠高血圧腎症を発症する(または発症した)危険性があることを決定するまたは決定に役立てる方法に関し、その方法は妊娠11週目から17週目に女性から通常通り採取される生体試料をアッセイし、単糖(通常セドヘプツロースを含む)の存在量を決定するステップを含み、単糖の参照の存在量と比較した単糖の変化した存在量が、妊娠高血圧腎症を発症する危険性の増大と相関する。単糖の変化した存在量は、予測力(オッズ比(95%信頼区間)の形式で)6.1を有する。したがって、単糖の変化した存在量を検出することにより、臨床症状を発症する前に妊娠高血圧腎症の危険性の増大が予測される。参照の存在量が妊娠高血圧腎症を発症しなかった被験者に由来する場合、参照と比較して増加した存在量は危険性を示している。しかし、参照の存在量が妊娠高血圧腎症を発症した被験者に由来する場合、参照と比較して減少した存在量が危険性を示している。単糖の場合、試料中の全単糖の存在量を適切に決定する。
【0017】
別の実施形態において、本発明は、理想的には妊娠の早期段階に、妊婦が妊娠高血圧腎症を発症する(または発症した)危険性があることを決定するまたは決定に役立てる方法に関し、その方法は、妊娠11週目から17週目に女性から通常通り採取される生体試料をアッセイし、デカノイルカルニチンの存在量を決定するステップを含み、デカノイルカルニチンの参照の存在量と比較したデカノイルカルニチンの変化した存在量が、妊娠高血圧腎症を発症する危険性の増大と相関する。デカノイルカルニチンの変化した存在量は、予測力(オッズ比(95%信頼区間)の形式で)3.1を有する。したがって、デカノイルカルニチンの変化した存在量を検出することにより、臨床症状を発症する前に妊娠高血圧腎症の危険性の増大が予測される。参照の存在量が妊娠高血圧腎症を発症しなかった被験者に由来する場合、参照と比較して増加した存在量は危険性を示している。しかし、参照の存在量が妊娠高血圧腎症を発症した被験者に由来する場合、参照と比較して減少した存在量が危険性を示している。
【0018】
別の実施形態において、本発明は、理想的には妊娠の早期段階に、妊婦が妊娠高血圧腎症を発症する(または発症した)危険性があることを決定するまたは決定に役立てる方法に関し、その方法は妊娠11週目から17週目に女性から通常通り採取される生体試料をアッセイし、メチルグルタル酸、アジピン酸、またはメチルグルタル酸およびアジピン酸の存在量を決定するステップを含み、メチルグルタル酸、アジピン酸、またはメチルグルタル酸およびアジピン酸の参照の存在量と比較したメチルグルタル酸、アジピン酸、またはメチルグルタル酸およびアジピン酸の変化した存在量が、それぞれ妊娠高血圧腎症を発症する危険性の増大と相関する。メチルグルタル酸、アジピン酸、またはメチルグルタル酸およびアジピン酸の変化した存在量は、予測力(オッズ比(95%信頼区間)の形式で)2.6を有する。したがって、メチルグルタル酸、アジピン酸またはメチルグルタル酸およびアジピン酸の変化した存在量を検出することにより、臨床症状を発症する前に妊娠高血圧腎症の危険性の増大が予測される。参照の存在量が妊娠高血圧腎症を発症しなかった被験者に由来する場合、参照と比較して減少した存在量は危険性を示している。しかし、参照の存在量が妊娠高血圧腎症を発症した被験者に由来する場合、参照と比較して増加した存在量が危険性を示している。
【0019】
別の実施形態において、本発明は、理想的には妊娠の早期段階に、妊婦が妊娠高血圧腎症を発症する(または発症した)危険性があることを決定するまたは決定に役立てる方法に関し、その方法は妊娠11週目から17週目に女性から通常通り採取される生体試料をアッセイし、オレイン酸の存在量を決定するステップを含み、オレイン酸の参照の存在量と比較したオレイン酸の変化した存在量が、妊娠高血圧腎症を発症する危険性の増大と相関する。オレイン酸の調節存在量は、予測力、(オッズ比(95%信頼区間)の形式で)3.1を有する。したがって、オレイン酸の変化した存在量を検出することにより、臨床症状を発症する前に妊娠高血圧腎症の危険性の増大が予測される。参照の存在量が妊娠高血圧腎症を発症しなかった被験者に由来する場合、参照と比較して増加した存在量は危険性を示している。しかし、参照の存在量が妊娠高血圧腎症を発症した被験者に由来する場合、参照と比較して減少した存在量が危険性を示している。
【0020】
別の実施形態において、本発明は、理想的には妊娠の早期段階に、妊婦が妊娠高血圧腎症を発症する(または発症した)危険性があることを決定するまたは決定に役立てる方法に関し、その方法は妊娠11週目から17週目に女性から通常通り採取される生体試料をアッセイし、ドコサヘキサエン酸、ドコサトリイン酸、またはドコサヘキサエン酸およびドコサトリイン酸の存在量を決定するステップを含み、ドコサヘキサエン酸、ドコサトリイン酸、またはドコサヘキサエン酸およびドコサトリイン酸の参照の存在量と比較したドコサヘキサエン酸、ドコサトリイン酸、またはドコサヘキサエン酸およびドコサトリイン酸の変化した存在量が、それぞれ妊娠高血圧腎症を発症する危険性の増大と相関する。ドコサヘキサエン酸、ドコサトリイン酸、またはドコサヘキサエン酸およびドコサトリイン酸の変化した存在量は、予測力(オッズ比(95%信頼区間)の形式で)5.6を有する。したがって、ドコサヘキサエン酸、ドコサトリイン酸またはドコサヘキサエン酸およびドコサトリイン酸の変化した存在量を検出することにより、臨床症状を発症する前に妊娠高血圧腎症の危険性の増大が予測される。参照の存在量が妊娠高血圧腎症を発症しなかった被験者に由来する場合、参照と比較して増加した存在量は危険性を示している。しかし、参照の存在量が妊娠高血圧腎症を発症した被験者に由来する場合、参照と比較して減少した存在量が危険性を示している。
【0021】
別の実施形態において、本発明は、理想的には妊娠の早期段階に、妊婦が妊娠高血圧腎症を発症する(または発症した)危険性があることを決定するまたは決定に役立てる方法に関し、その方法は妊娠11週目から17週目に女性から通常通り採取される生体試料をアッセイし、γ−ブチロラクトン、オキソラン−3−オン、またはγ−ブチロラクトンおよびオキソラン−3−オンの存在量を決定するステップを含み、γ−ブチロラクトン、オキソラン−3−オン、またはγ−ブチロラクトンおよびオキソラン−3−オンの参照の存在量と比較したγ−ブチロラクトン、オキソラン−3−オン、またはγ−ブチロラクトンおよびオキソラン−3−オンの変化した存在量が、それぞれ妊娠高血圧腎症を発症する危険性の増大と相関する。γ−ブチロラクトン、オキソラン−3−オン、またはγ−ブチロラクトンおよびオキソラン−3−オンの変化した存在量は、予測力(オッズ比(95%信頼区間)の形式で)4.3を有する。したがって、γ−ブチロラクトン、オキソラン−3−オン、またはγ−ブチロラクトンおよびオキソラン−3−オンの変化した存在量を検出することにより、臨床症状を発症する前に妊娠高血圧腎症の危険性の増大が予測される。参照の存在量が妊娠高血圧腎症を発症しなかった被験者に由来する場合、参照と比較して増加した存在量は危険性を示している。しかし、参照の存在量が妊娠高血圧腎症を発症した被験者に由来する場合、参照と比較して減少した存在量が危険性を示している。
【0022】
別の実施形態において、本発明は、理想的には妊娠の早期段階に、妊婦が妊娠高血圧腎症を発症する(または発症した)危険性があることを決定するまたは決定に役立てる方法に関し、その方法は妊娠11週目から17週目に女性から通常通り採取される生体試料をアッセイし、2−オキソ吉草酸、オキソメチルブタン酸、または2−オキソ吉草酸およびオキソメチルブタン酸の存在量を決定するステップを含み、2−オキソ吉草酸、オキソメチルブタン酸、または2−オキソ吉草酸およびオキソメチルブタン酸の参照の存在量と比較した2−オキソ吉草酸、オキソメチルブタン酸、または2−オキソ吉草酸およびオキソメチルブタン酸の変化した存在量が、それぞれ妊娠高血圧腎症を発症する危険性の増大と相関する。2−オキソ吉草酸、オキソメチルブタン酸、または2−オキソ吉草酸およびオキソメチルブタン酸の変化した存在量は、予測力(オッズ比(95%信頼区間)の形式で)2.6を有する。したがって、2−オキソ吉草酸、オキソメチルブタン酸、または2−オキソ吉草酸およびオキソメチルブタン酸の変化した存在量を検出することにより、臨床症状を発症する前に妊娠高血圧腎症の危険性の増大が予測される。参照の存在量が妊娠高血圧腎症を発症しなかった被験者に由来する場合、参照と比較して増加した存在量は危険性を示している。しかし、参照の存在量が妊娠高血圧腎症を発症した被験者に由来する場合、参照と比較して減少した存在量が危険性を示している。
【0023】
別の実施形態において、本発明は、理想的には妊娠の早期段階に、妊婦が妊娠高血圧腎症を発症する(または発症した)危険性があることを決定するまたは決定に役立てる方法に関し、その方法は妊娠11週目から17週目に女性から通常通り採取される生体試料をアッセイし、アセト酢酸の存在量を決定するステップを含み、アセト酢酸の参照の存在量と比較したアセト酢酸の変化した存在量が、妊娠高血圧腎症を発症する危険性の増大と相関する。アセト酢酸の変化した存在量は、予測力(オッズ比(95%信頼区間)の形式で)2.9を有する。したがって、アセト酢酸の変化した存在量を検出することにより、臨床症状を発症する前に妊娠高血圧腎症の危険性の増大が予測される。参照の存在量が妊娠高血圧腎症を発症しなかった被験者に由来する場合、参照と比較して増加した存在量は危険性を示している。しかし、参照の存在量が妊娠高血圧腎症を発症した被験者に由来する場合、参照と比較して減少した存在量が危険性を示している。
【0024】
別の実施形態において、本発明は、理想的には妊娠の早期段階に、妊婦が妊娠高血圧腎症を発症する(または発症した)危険性があることを決定するまたは決定に役立てる方法に関し、その方法は、妊娠11週目から17週目に女性から通常通り採取される生体試料をアッセイし、ヘキサデセノイル−エイコサテトラエノイル−sn−グリセロールの存在量を決定するステップを含み、ヘキサデセノイル−エイコサテトラエノイル−sn−グリセロールの参照の存在量と比較したヘキサデセノイル−エイコサテトラエノイル−sn−グリセロールの変化した存在量が、妊娠高血圧腎症を発症する危険性の増大と相関する。ヘキサデセノイル−エイコサテトラエノイル−sn−グリセロールの変化した存在量は、予測力(オッズ比(95%信頼区間)の形式で)3.0を有する。したがって、ヘキサデセノイル−エイコサテトラエノイル−sn−グリセロールの変化した存在量を検出することにより、臨床症状を発症する前に妊娠高血圧腎症の危険性の増大が予測される。参照の存在量が妊娠高血圧腎症を発症しなかった被験者に由来する場合、参照と比較して増加した存在量は危険性を示している。しかし、参照の存在量が妊娠高血圧腎症を発症した被験者に由来する場合、参照と比較して減少した存在量が危険性を示している。
【0025】
別の実施形態において、本発明は、理想的には妊娠の早期段階に、妊婦が妊娠高血圧腎症を発症する(または発症した)危険性があることを決定するまたは決定に役立てる方法に関し、その方法は妊娠11目週から17週目に女性から通常通り採取される生体試料をアッセイし、スフィンゴシン−1−リン酸塩の存在量を決定するステップを含み、スフィンゴシン−1−リン酸塩の参照の存在量と比較したスフィンゴシン−1−リン酸塩の変化した存在量が、妊娠高血圧腎症を発症する危険性の増大と相関する。スフィンゴシン−1−リン酸塩の変化した存在量は、予測力(オッズ比(95%信頼区間)の形式で)3.3を有する。したがって、スフィンゴシン−1−リン酸塩の変化した存在量を検出することにより、臨床症状を発症する前に妊娠高血圧腎症の危険性の増大が予測される。参照の存在量が妊娠高血圧腎症を発症しなかった被験者に由来する場合、参照と比較して増加した存在量は危険性を示している。しかし、参照の存在量が妊娠高血圧腎症を発症した被験者に由来する場合、参照と比較して減少した存在量が危険性を示している。
【0026】
別の実施形態において、本発明は、理想的には妊娠の早期段階に、妊婦が妊娠高血圧腎症を発症する(または発症した)危険性があることを決定するまたは決定に役立てる方法に関し、その方法は妊娠11週目から17週目に女性から通常通り採取される生体試料をアッセイし、スフィンガニン−1−リン酸塩の存在量を決定するステップを含み、スフィンガニン−1−リン酸塩の参照の存在量と比較したスフィンガニン−1−リン酸塩の変化した存在量が、妊娠高血圧腎症を発症する危険性の増大と相関する。スフィンガニン1−リン酸塩の変化した存在量は、予測力(オッズ比(95%信頼区間)の形式で)2.6を有する。したがって、スフィンガニン−1−リン酸塩の変化した存在量を検出することにより、臨床症状を発症する前に妊娠高血圧腎症の危険性の増大が予測される。参照の存在量が妊娠高血圧腎症を発症しなかった被験者に由来する場合、参照と比較して増加した存在量は危険性を示している。しかし、参照の存在量が妊娠高血圧腎症を発症した被験者に由来する場合、参照と比較して減少した存在量が危険性を示している。
【0027】
別の実施形態において、本発明は、理想的には妊娠の早期段階に、妊婦が妊娠高血圧腎症を発症する(または発症した)危険性があることを決定するまたは決定に役立てる方法に関し、その方法は妊娠11週目から17週目に女性から通常通り採取される生体試料をアッセイし、ビタミンD3誘導体の存在量を決定するステップを含み、ビタミンD3誘導体の参照の存在量と比較したビタミンD3誘導体の変化した存在量が、妊娠高血圧腎症を発症する危険性の増大と相関する。ビタミンD3誘導体の変化した存在量は、予測力(オッズ比(95%信頼区間)の形式で)6.2を有する。したがって、ビタミンD3誘導体の変化した存在量を検出することにより、臨床症状を発症する前に妊娠高血圧腎症の危険性の増大が予測される。参照の存在量が妊娠高血圧腎症を発症しなかった被験者に由来する場合、参照と比較して増加した存在量は危険性を示している。しかし、参照の存在量が妊娠高血圧腎症を発症した被験者に由来する場合、参照と比較して減少した存在量が危険性を示している。ビタミンD3誘導体の場合、試料中の全ビタミンD3誘導体の存在量が、適切に決定される(すなわち25−ヒドロキシビタミンD3、1,25ジヒドロキシビタミンD3および24,25−ジヒドロキシビタミンD3)。
【0028】
表1の各バイオマーカーを使用して、妊娠高血圧腎症を発症する妊婦の危険性を通知するのに用いられることも理解されよう。本発明の方法またはアッセイにおいて複数のバイオマーカーが使用される場合、バイオマーカーの1つの変化した存在量は、妊娠高血圧腎症の存在または発症の危険性の増大を示す。2つ、3つ、4つのバイオマーカーの変化した存在量は、妊娠高血圧腎症の存在または発症の一層高い危険性を示す。本発明の方法はまた、母性の臨床的指標を表1の1つまたは複数のバイオマーカーと組み合わせて使用して、危険性を知らせることもできる。適切な臨床的指標(臨床的危険性の変数)には、他の臨床的指標を使用できるが、1つまたは複数の血圧、肥満指数(BMI)および年齢が含まれる。したがって好ましい実施形態において、本発明の方法は、表1の代謝物のバイオマーカー、特に好ましい代謝物から選択された代謝物の変化した存在量を、参照の存在量と比較して検出するステップを使用して妊娠高血圧腎症を発症する女性の危険性を予測し(または危険性の予測に役立て)、予測された危険性の値を提供するステップと、通常、血圧、BMIおよび年齢から選択される少なくとも1つの女性の臨床的な危険性の変数を得るステップと、予測された危険性の値および少なくとも1つの臨床的危険性の変数を妊娠高血圧腎症の全体の危険性と相関させるステップとを含む。その女性から、少なくとも2つの臨床的な危険性の変数(例えば、血圧と年齢、血圧とBMIまたは年齢とBMIなど)を取得することが好ましく、その予測された危険性の値および少なくとも2つのその臨床的な危険性の変数は、妊娠高血圧腎症の全体の危険性と相関する。少なくとも3つの臨床的な危険性の変数(例えば血圧、年齢およびBMI)を、その女性から取得することが理想的であり、その予測される危険性の値および少なくとも3つのその臨床的な危険性の変数は、妊娠高血圧腎症の全体の危険性と相関する。
【0029】
バイオマーカーの組合せを使用して、本発明の方法の予測力の増強に用いられることも理解されよう。したがって本発明の好ましい実施形態において、表1の代謝物区分の少なくとも2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種、11種、12種または13種の存在量を決定する。本発明において、表1の列は、代謝物区分を表す−したがって、メチルグルタル酸および/またはアジピン酸は1つの代謝物区分と見なされる。したがって、本発明の方法は、以下の13種の代謝物(好ましい代謝物)のほぼ全て、または全ての存在量を決定することを含むことが理想的である:5−ヒドロキシトリプトファン;単糖;デカノイルカルニチン;メチルグルタル酸および/またはアジピン酸;オレイン酸;ドコサヘキサエン酸および/またはドコサトリイン酸;γ−ブチロラクトンおよび/またはオキソラン−3−オン、2−オキソ吉草酸および/またはオキソメチルブタン酸;アセト酢酸;ヘキサデセノイル−エイコサテトラエノイル−sn−グリセロール;スフィンゴシン−1−リン酸塩;スフィンガニン−1−リン酸塩;およびビタミンD3誘導体。「ほぼ全て」という用語は、少なくとも10種、11種、12種、または13種の代謝物を意味するものと理解されるだろう。代謝物が「Aおよび/またはB」(例えば、γ−ブチロラクトンおよび/またはオキソラン−3−オン)と示されている場合、本明細書において、それは単一の代謝物と見なされ、その代謝物の存在量は一方の存在量、他方の存在量、またはその2つの代謝物の存在量の合計を意味する。本発明の方法は、上述した全13種類の代謝物の存在量を決定することを含むことが理想的である。
【0030】
本発明の方法は、妊娠高血圧腎症の危険性の早期検出に理想的に適している。これにより、早期に臨床的介入して疾患の経過を管理し、不良転帰を防止することが可能になる。したがって、生体試料を妊娠約15週目に被験者から採取し、その後に代謝物の存在量について分析してもよい。通常、生体試料は、血液または血液に由来し、例えば血清である。代謝物の存在量を決定する方法は当業者にはよく知られており、例えば、代謝物関連のピークを作成するための液体クロマトグラフィー法および質量分析法を含んでよい。相対的存在量は、これらのピークを相当する参照試料由来のピークと比較することにより決定することができる。2つの代謝物を含む代謝物区分について、相対的存在量は、2つの代謝物のピークの合計を参照試料に由来する代謝物のピークの合計と比較することによって、または代謝物のピークの一方を参照の代謝物のピークと比較することによって、決定される。本発明の中で相対的存在量が有意かどうか決定する方法については、後述する。
【0031】
したがって、好ましい実施形態において、本発明は、妊娠高血圧腎症の危険性の早期評価を提供する方法であって、5−ヒドロキシトリプトファン、単糖、デカノイルカルニチン、メチルグルタル酸および/またはアジピン酸、オレイン酸、ドコサヘキサエン酸および/またはドコサトリイン酸、γ−ブチロラクトンおよび/またはオキソラン−3−オン、2−オキソ吉草酸および/またはオキソメチルブタン酸、アセト酢酸、ヘキサデセノイル−エイコサテトラエノイル−sn−グリセロール、スフィンゴシン−1−リン酸塩、スフィンガニン−1−リン酸塩およびビタミンD3誘導体を含む複数の代謝物のバイオマーカーの存在量について、妊娠17週目までの患者から採取される血漿試料をアッセイするステップと、決定した各バイオマーカーの存在量を参照の存在量と関連付けるステップとを含む方法を提供する。したがって、例えば、ほぼ全ての代謝物の存在量(すなわち10種、11種、12種、または13種)が、各代謝物の参照の存在量と比較して変化している場合、これは妊娠高血圧腎症の高い危険性と相関する。反対に、代謝物区分のいずれの存在量も変化していない場合(すなわち0、1つ、2つ、または3つ)、これは妊娠高血圧腎症の危険性が増大しないことと相関する。上述した代謝物の全てで変化した存在量が検出される場合、これは少なくとも16.4(95%信頼区間7〜40)のオッズ比で相関しており、その患者は、妊娠高血圧腎症を発症しないより妊娠高血圧腎症を発症する可能性がずっと高いことを示している。
【0032】
本発明の一実施形態において、この方法は、代謝物区分のパネル、特に表1から選択されるパネルの変化した存在量を決定することを含む。一実施形態において、そのパネルは少なくとも1つのアミノ酸、少なくとも1つの炭水化物、少なくとも1つのカルニチン、少なくとも1つのジカルボン酸、少なくとも1つの脂肪酸および/またはケトン、少なくとも1つの脂肪酸および/またはケト酸、任意選択で少なくとも1つのケトン、少なくとも1つの脂質、少なくとも1つのリン脂質、少なくとも1つのケトまたは脂肪酸、ならびに、少なくとも1つのステロイドまたはステロイド誘導体を含む。アミノ酸は、5−ヒドロキシトリプトファンまたはタウリンが適当である。炭水化物は、単糖またはセドヘプツロースが適当である。カルニチンは、パルミトイルカルニチン、ステアロイルカルニチン、デカノイルカルニチン、オクタノイルカルニチン、アセチルカルニチンおよびドデカノイルカルニチンから選択されることが適当である。ジカルボン酸は、メチルグルタル酸および/またはアジピン酸が適当である。脂肪酸は、イソ吉草酸および/または吉草酸、オレイン酸、リノール酸、ドコサヘキサエン酸および/またはドコサトリイン酸、ヒドロキシオクタデカン酸および/またはオキソオクタデカン酸、ヘキサデカン酸、エイコサテトラエン酸、オクタデカン酸、およびドコサヘキサエン酸から選択されることが適当である。脂肪酸および/またはケトンは、γ−ブチロラクトンおよび/またはオキソラン−3−オンから選択されることが適当である。脂肪酸またはケト酸は、2−オキソ吉草酸および/またはオキソメチルブタン酸から選択されることが適当である。ケト脂肪酸またはヒドロキシ脂肪酸は、3−ヒドロキシブタン酸または2−ヒドロキシブタン酸、オキソテトラデカン酸および/またはヒドロキシテトラデセン酸、アセト酢酸およびオキソヘプタン酸から選択されることが適当である。脂質は、ジ−(ヘプタデカジエノイル)−エイコサノイル−sn−グリセロール、ヘキサデセノイル−エイコサテトラエノイル−sn−グリセロール、およびジ−(オクタデカジエノイル)−sn−グリセロールから選択されることが適当である。リン脂質は、ジオクタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、スフィンゴシン1−リン酸塩、およびスフィンガニン1−リン酸塩から選択されることが適当である。ステロイドまたはステロイド誘導体は、ビタミンD3誘導体、およびステロイドおよび/またはエチオコラン−3−α−オール7−オン3−グルクロニドから選択されることが適当である。
【0033】
通常この方法は、各代謝物それぞれの参照値と比較して少なくとも2つの代謝物区分のパネルの存在量を決定し、代謝物区分の存在量を妊娠高血圧腎症の発症の危険性と相関させることを含む。代謝物区分のパネルは、5−HTまたはSIPもしくは5−HTおよびSIPを含むことが適当である。一実施形態において、代謝物区分のパネルは、SIPおよび/または5−HTを、ドコサヘキサエン酸および/またはドコサトリイン酸および/またはオレイン酸との組合せで含む。代謝物区分のパネルは、5−HT、SIP、ドコサヘキサエン酸および/またはドコサトリイン酸およびオレイン酸を含み、任意選択で表1の残りの代謝物の少なくとも1種、2種、3種、4種、5種または6種との組合せを含むことが理想的である。
【0034】
本発明の好ましい実施形態において、本方法は、妊娠高血圧腎症の危険性を早期に検出する方法である。本明細書で使用される「早期に検出する」という用語は、妊娠11週目から19週目、11週目から18週目、11週目から17週目、11週目から16週目または11週目から15週目、好ましくは妊娠12週目から17週目、13週目から16週目および理想的には約15週目+/−1週間、2週間に危険性を検出することを意味すると理解されよう。
【0035】
生体試料(試験試料または対照試料)は、血液、血清、唾液、羊水、脳脊髄液を含む被験者または胎児から採取される任意の体液でよい。生体試料は、血清が理想的である。生体試料を採取する場合、被験者は絶食または非絶食であってよい。
【0036】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つの代謝物または代謝物区分の(参照値と比較した)存在量は、例えば質量分析法またはクロマトグラフィー法、通常液体クロマトグラフィー法を使用する相対的定量法を使用して決定される。したがって、任意の所与の代謝物に割り当てられた存在量の値を、相対的存在量で(例えば正常妊娠に由来する参照の存在量、または妊娠高血圧腎症の妊娠の参照の存在量と比較して)表して提供されてよい。本発明の特に好ましい一実施形態において、代謝物または代謝物区分の相対的存在量が、任意選択で試験試料が参照試料と前後して行われる質量分析法を使用して決定してよい。質量分析法は、飛行時間型の質量分析法または超高性能液体クロマトグラフィー−質量分析法が理想的である。本発明の別の実施形態において、代謝物または代謝物区分の相対的存在量は、任意選択で試料が参照試料と前後して流れる高速液体クロマトグラフィーを使用して決定してよい。
【0037】
一態様では、本発明は、妊婦に発症する妊娠高血圧腎症の危険性を早期に検出する方法に関し、生体試料、一般に妊娠4週目から25週目に妊婦から採取される血液または血清などの血液由来の産物を、表1から選択される代謝物(理想的には1つまたは複数の好ましい代謝物)の存在量について代謝物の参照の存在量と比較してアッセイするステップを含み、参照の存在量と比較したその代謝物の変化した存在量は、妊娠高血圧腎症を発症する女性の危険性と相関する。
【0038】
試験試料として同じ妊娠期間またはおよそ同じ妊娠期間(例えば+/−5週間、+/−4週間、+/−3週間、+/−2週間、および理想的には+/−1週間)に採取される試験試料が、任意選択で、正常な妊娠結果(陰性対照)の妊婦または妊娠高血圧腎症の妊婦(陽性対照)から採取される参照試料と前後して行われる質量分析法を使用して、変化した存在量を決定することが適当である。あるいは、質量分析計は、その代謝物または各代謝物についての参照の存在量の値を用いて予め設定されてよく、それに従ってその代謝物または各代謝物について機械が設定され、変化した相対的存在量が検出される。
【0039】
本発明の一実施形態において、本発明の方法は、血圧、年齢、尿タンパク質濃度、喫煙の有無、母性年齢、肥満指数、妊娠高血圧腎症または冠状動脈血管病の家族病歴、および超音波指標(胎児の生体計測ならびに臍および子宮動脈のドップラー波形解析の測定を含む)を含めて1つまたは複数の妊婦の追加的特徴を決定する追加のステップを含む。
【0040】
本発明は、妊婦が妊娠高血圧腎症を発症する危険性の評価または危険性の評価に役立つ手段として主に使用できる。しかし、本発明は、妊娠高血圧腎症の存在の診断、妊娠高血圧腎症の危険性の予測、症候群に起因して起こり得る患者結果の評価、および妊娠高血圧腎症治療の有効性評価の手段として使用してもよく、その有効性評価においては、1つまたは複数の本発明の代謝物マーカーのレベルを一定の治療期間にわたって評価し、その治療の有効性を監視する。予測に関しては、全ての代謝物区分を使用した場合、本発明の方法は、通常少なくとも50%、60%または70%の検出率を提供し、偽陽性率は高くても20%である。さらに、全ての代謝物区分を使用した場合、本発明の方法は、通常少なくとも70%、80%または90%の検出率を提供し、偽陽性率は高くても40%である。
【0041】
本発明の一実施形態において、本法は、妊娠高血圧腎症治療の有効性を監視する方法であり、表1の代謝物から選択されるある代謝物または複数の代謝物の存在量の変化は、治療の有効性と相関している。例えば、アッセイされる代謝物が、表1の群から選択される代謝物(ジカルボン酸および5−ヒドロキシトリプトファンを除く)である場合、その後の代謝物の存在量の減少は通常、治療の有効性を示している。通常本法には、その代謝物、または各代謝物の開始存在量レベルを決定する初期アッセイ、次いでさらに、治療過程の最中および/またはその後の、そのマーカー、または各マーカーの存在量レベルを監視するその代謝物、または各代謝物の存在量レベルの定期的な測定が含まれる。同様に、アッセイされる代謝物が、5−ヒドロキシトリプトファンまたは表1のジカルボン酸の1つである場合、その後の、代謝物の存在量の減少は通常、治療の有効性を示している。通常本法には、その代謝物、または各代謝物の開始時の存在量レベルを決定する初期アッセイ、次いでさらに、治療過程の最中および/またはその後の、そのマーカー、または各マーカーの存在量レベルの監視する、その代謝物、または各代謝物の存在量レベルの定期的な測定が含まれる。
【0042】
妊娠高血圧腎症の危険性の定量的な推定値を決定するステップは、多変量解析を使用する妊娠高血圧腎症の可能性の決定を含んでおり、通常その代謝物のバイオマーカー、または各代謝物のバイオマーカーの存在量、および一組の参照の存在量の値に由来する分布パラメータの使用を含むことが好ましい。多変量解析は、多変量判別式PLS−DAモデルまたは多変量判別式PC−CVAモデルを使用することが理想的である。
【0043】
本発明の方法は、妊娠高血圧腎症の早期予測に関する。しかし、本発明の方法はまた、例えば子癇、軽度妊娠高血圧腎症、慢性高血圧症、EPH妊娠中毒、妊娠性高血圧症、加重型妊娠高血圧腎症、ヘルプ症候群または腎症を含む妊婦における高血圧障害の危険性の早期予測にも適用可能である。さらに、本発明は妊娠したヒトに関して記載されているが、妊娠した高等哺乳動物にも適用可能である。
【0044】
本発明はまた、妊婦における妊娠高血圧腎症の予防または治療の方法にも関し、本発明の方法またはアッセイを使用して、妊婦における妊娠高血圧腎症の発症の危険性を確認する、または妊娠高血圧腎症の存在を診断するステップと、妊娠高血圧腎症を発症する危険性が増大していると確認される女性、または妊娠高血圧腎症であると診断される女性に対する臨床的介入を適用するステップとを含む。治療は、例えば抗高血圧症薬剤(例えば、レンニン阻害剤、アンギオテンシンII受容体遮断薬、ACE阻害薬)の投与、食事介入、などによる、血圧の管理を含んでよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】主成分の最適数(n=35)を使用したPC−CVAモデルの成分をプロットした図である。モデルの構築は、トレーニングデータセット(標本の67%、丸)で実施され、標本の「発見」セットから選んだホールドアウトデータセット(標本の33%、三角)上で検定された。黒=妊娠高血圧腎症、灰色 =対照、第1正準変量は、妊娠高血圧腎症と対照試料を最も良く判別する「豊富な情報」ピークの加重線型結合と見なすことができる。円で囲まれた領域は、トレーニングデータ成分から算出される95%χ2信頼領域である。
【図2】遺伝的アルゴリズム検索プログラムによって見出した、最終的に14種の代謝物の基準に対するCVAモデルの予測(C、対照、黒丸、PE、妊娠高血圧腎症、灰色三角)の図である。(a)は、発見段階のデータについてのモデル予測の図である。ROC曲線下面積 =0.90、オッズ比=16.4(95%信頼区間6.6〜40.6)、ホテリングのT2乗p値=2x10-6。(b)は、検証データについてのモデル予測の図である。ROC曲線下面積=0.90、オッズ比=39.5(95%信頼区間8.2〜189.4)、ホテリングのT2乗p値=2xl0-3
【図3】「発見」コホート内症例対照研究から選んだデータについて潜在ベクトルの最適数(n=1)を使用して、PLS−DAモデルをプロットした図である(淡い灰色は妊娠高血圧腎症を示す、濃い灰色は対照を示す)。5分割交差検定を使用してモデルの構築を実施した結果、R2=0.76およびQ2=0.68になった。R2分布プロットは、選んだモデルのR2値がH0無作為に分類した並べかえ分布(n=1000)(H0 randomly classified permutaion distribution)から著しく遠いことを示しており、したがって、無作為に起こる提示されたモデルの確率は、<0.001である。部分最小2乗法(PLS)成分は、「豊富な情報」ピークの加重線型結合と見なすことができ、妊娠高血圧腎症と対照試料を最も良く判別する。曲線下面積は、0.99であった。
【図4】「発見」コホート内症例対照研究から選んだ45種の指定した代謝物について、潜在ベクトルの最適数(n=1)を使用して、PLD−DAモデルの成分をプロットした図である。灰色=妊娠高血圧腎症、黒=対照。5分割交差検定を使用してモデルの構築を実施した結果、R2=0.58およびQ2=0.57になった。R2分布プロットは、選んだモデルのR2値がH0無作為に分類した並べかえ分布(n=1000)から著しく遠いことを示しており、したがって、無作為に起こる提示されたモデルの確率は、<0.001である。ROC曲線下面積は、0.96であった。
【図5】「検証」コホート内症例対照研究から選んだ38種の指定した代謝物について、潜在ベクトルの最適数(n=1)を使用して、PLD−DAモデルの成分をプロットした図である。これらの代謝物質は、発見研究において指定され、検証研究において検出された45種の代謝物のうちの38種である。灰色=妊娠高血圧腎症、黒=対照。5分割交差検定を使用してモデルの構築を実施した結果、R2=0.57およびQ2=0.53になった。R2分布プロットは、選んだモデルのR2値がH0無作為に分類した並べかえ分布(n=1000)から著しく遠いことを示しており、したがって、無作為に起こる提示されたモデルの確率は、<0.001である。ROC曲線下面積は、0.95であった。
【図6】遺伝的アルゴリズム検索プログラムによって、最終的に14種の代謝物署名についてPLS−DAモデルの予測を、明らかにした図である(C、対照、黒丸、PE、妊娠高血圧腎症、灰色正方形)。(a)は、発見段階のデータについてのモデル予測の図である。R2=0.54、Q2=0.52および曲線下面積=0.94、最適オッズ比=36(95%信頼区間:12〜108)、およびホテリングのT2乗p値=2x10-6。(b)は、検証データについてのモデル予測の図である、R2=0.43、Q2=0.39および曲線下面積=0.92、最適オッズ比=23(95%信頼区間:7〜73)、およびホテリングの2乗p値=2xl0-3
【図7】(a)14種の代謝物の発見モデルおよび(b)14種の代謝物の検証モデルのR2分布プロットを示す図である。その両方が、選んだモデルのR2値がH0無作為に分類した並べかえ分布(n=1000)から著しく遠いことを示しており、したがって、無作為に起こる提示されたモデルの確率は、<0.001である。
【図8】本発明による、妊婦が妊娠高血圧腎症を発症する危険性があることを検出または確認する方法を実施するためのシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明は全般に、特定の代謝物のレベルが妊娠高血圧腎症と関連しており、ひいてはこれらの代謝物が、通常では妊娠の早期段階に、妊娠高血圧腎症の診断および/または予測の変数として機能する可能性がある、という所見に基づいている。本明細書に示されたデータは、妊娠高血圧腎症の標準的な病徴が現れるよりも早く、この症候群の発症の初期段階にこれらのバイオマーカーの存在量が変化すること、ひいてはこのバイオマーカーがその症候群の早期検出を可能にする妊娠高血圧腎症の危険性の予測変数として機能できることを示している。このことは、症候群の検出が遅れると増大する妊娠高血圧腎症に関連した罹患率および死亡率として特に重要である。したがって本発明は、妊娠高血圧腎症を早期に検出するための手段を提供し、より早期の臨床的介入、ひいては結果の改善を可能にする。
【0047】
システム
本発明の実施形態はまた、妊婦には妊娠高血圧腎症を発症する危険性があるということを検出するおよび/または確認する方法を実施するためのシステム(およびコンピュータシステムになるコンピュータ読み取り可能な媒体)を提供する。
【0048】
本発明の実施形態は、機能的モジュールよって記述されることができ、そのモジュールはコンピュータで読み取り可能な媒体上に記録されたコンピュータが実行可能な命令によって規定され、その命令が実行された場合、コンピュータに方法のステップを遂行させる。そのモジュールは、明確にするために機能ごとに分離される。しかし、このモジュール/システムがコードの慎重なブロックに対応する必要はなく、記述された機能は、種々の媒体上に格納された種々のコード部分の実行により行われ、種々の回数実行できることを理解されたい。さらに、このモジュールは他の機能を遂行してもよく、したがって、このモジュールは、任意の特別な機能または機能群を有するとは限らないことを理解されたい。
【0049】
図8を全体的に参照すると、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体#30は、コンピュータによって接続可能である任意の利用可能な有形媒体であることができる。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、コンピュータで読み取り可能な命令、データ構造、プログラムモジュールまたは他のデータなどの情報を記憶するための任意の方法または技術でも実行される、揮発性および不揮発性、取り外し可能なおよび取り外し不可能な有形媒体を含む。コンピュータで読み取り可能な記憶媒体には、RAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(読出し専用メモリ)、EPROM(消去可能な半固定記憶装置)、EEPROM(電気的消去可能な半固定記憶装置)、フラッシュメモリまたは他のメモリ技術、CD−ROM(コンパクトディスク読出し専用メモリ)、DVD類(デジタル多用途ディスク)または他の光学式記憶媒体、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置または他の磁気記憶式媒体、他の型式の揮発性および不揮発メモリ、ならびに所望の情報の格納に使用でき、それを含むコンピュータおよび上述のいずれかの適当な組合せによって、アクセス可能な他の任意の有形の媒体、が含まれるがこれに限定されるものではない。
【0050】
1つまたは複数のコンピュータ読み取り可能な格納媒体上に組み込まれたコンピュータで読み取り可能なデータは、例えば1つまたは複数のプログラムの一部として命令を定義でき、その命令はコンピュータにより実行された結果として、1つまたは複数の本明細書に記載の機能および/または様々な実施形態、その変形およびその組合せを遂行することをコンピュータに命令する。これらの命令は、複数のプログラミング言語、例えばジャバ、J#、ビジュアルベーシック、C、C#、C++、フォートラン、パスカル、エッフェル、ベーシック、コボルなど任意のアセンブリ言語、またはそれらの様々な組合せのいずれかで書き込まれてもよい。これらの命令が組み込まれた、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体は、任意のシステムの1つまたは複数の構成要素上に存在してよく、または本明細書に記述されたコンピュータで読み取り可能な記憶媒体は、1つまたは複数のこれら構成要素を超えて分散されてもよい。
【0051】
コンピュータで読み取り可能な記憶媒体は、その上に格納されている命令を、本明細書で論じられる本発明の態様を実施させるために任意のコンピュータ資源上にロードするように、移動可能であってよい。加えて、上述のコンピュータで読み取り可能な媒体に格納された命令が、ホストコンピュータ上で動いているアプリケーションプログラムの一部として組み込まれた命令に限定されないことを理解されたい。むしろその命令は、コンピュータをプログラムし、本発明の態様を実施するために使用され得る任意の型のコンピュータコード(例えば、ソフトウェアまたはマイクロコードなど)として組み込まれてもよい。コンピュータで実行可能な命令は、適切なコンピュータ言語またはいくつかの言語の組合せで記述されてもよい。基本的なコンピュータを使った生命工学方法は、当業者に公知であり、例えば非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4に記載されている。
【0052】
本発明の特定の実施形態の機能的なモジュールは、最小限の決定システム#40、任意選択で、記憶デバイス#30、比較モジュール#80、および表示モジュール#110を含む。これら機能的モジュールは、1つまたは複数のコンピュータ上で、もしくは1つまたは複数のコンピュータネットワークを使用することによって、実行可能である。決定システムは、コンピュータで実行可能な命令を有し、例えばコンピュータで読み取り可能な形式で連続した情報を提供する。
【0053】
決定システム#40は、表1のバイオマーカーの少なくとも1つを検出するための任意のシステムを含むことができる。これらのシステムは、通常生体試料中の代謝物の相対的存在量を決定することになる。UPLC−MSなどの標準的な手順を使用することができる。
【0054】
加えて、血圧、BMI、年齢、身長、体重、ならびに腰、腕、脚の周囲長など他の因子を決定できる。これらの因子を、妊娠高血圧腎症の危険性を評価する際にバイオマーカーと一緒に使用してもよい。
【0055】
決定システムで決定された情報は、記憶デバイス#30によって、読み込まれることができる。本明細書において、「記憶デバイス」は、任意の適切な演算装置または処理装置、もしくはデータまたは情報を格納するように構成または適合された他のデバイスを含むものとする。本発明とともに使用するのに適した電子機器の例には、独立型の演算装置、ローカルエリアネットワーク(LAN)、広域ネットワーク(WAN)、インターネット、イントラネットおよびエクストラネット含むデータ電気通信網、ならびに局所型および分散型コンピュータ処理システムが含まれる。記憶デバイスにはまた、これらに限定されないが、磁気記録式媒体(フロッピーディスク、ハードディスク記憶媒体、磁気テープなど)、光学式記憶媒体(CD−ROM、DVDなど)、電子式記憶媒体(RAM、ROM、EPROM、EEPROMなど)、一般的なハードディスク、ならびにこれら種類の混成体(磁気式/光学式記憶媒体など)が含まれる。記憶デバイスは、代謝物の存在量の情報をその上に記録するように適合または構成されている。そのような情報は、例えば、インターネットを介して、ディスケットで、USB(汎用シリアルバス)を介して、または他の任意の適切な情報伝達方法を介して、電子的に伝達および読み込むことができるデジタル形式で提供されてよい。
【0056】
本明細書において、「格納される」は、記憶デバイス上に情報をコード化するプロセスを指す。当業技術者は、公知の媒体上に情報を記録する現在公知のいずれかの方法を容易に採用して、これら代謝物および他の妊娠因子と関連する情報を含んでいる製品を作製できる。
【0057】
一実施形態において、記憶デバイスに格納され、比較モジュールによって読み込まれる参照データは、例えば試料中の代謝物レベルを、正常の対照または妊娠高血圧腎症の対照と比較される。
【0058】
「比較モジュール」#80は、決定システムにおいて決定された連続した情報データを、参照試料および/または格納された参照データと比較するよう動作する、比較用の様々な使用可能なソフトウェアプログラムおよび書式を使用することができる。一実施形態において、比較モジュールはパターン認識技術を使用するように構成されており、1つまたは複数の登録項目からの情報を1つまたは複数の参照データのパターンと比較する。比較モジュールは、パターン比較用の既存の市販のソフトウェアまたは無料で入手できるソフトウェアを使用して構成されてよく、実行される具体的なデータの比較用に最適化されてよい。比較モジュールは、妊娠高血圧腎症と関連がある代謝物に関連するコンピュータで読み取り可能な情報を提供する。
【0059】
比較モジュール、または本発明の任意の他のモジュールは、関係型データベースの管理システムを動作させるオペレーティングシステム(例えばUNIX)、ワールドワイドウェブアプリケーション、およびワールドワイドウェブサーバを含んでよい。ワールドワイドウェブアプリケーションは、データベース言語命令文(例えば、構造化照会言語(SQL)命令文)の生成に必要な実行コードを含む。一般に、実行可能な形式は、埋め込み型SQL命令文を含みうる。加えて、ワールドワイドウェブアプリケーションは、サーバならびにサービス利用者の要求に接続されなければならない様々な外部データベースおよび内部データベースを含む様々なソフトウェア実体に対するポインタおよびアドレスを包含する構成ファイルを含んでよい。構成ファイルはまた、サーバ資源に対する要求を適切なハードウェア(必要に応じてそのサーバは、2つ以上の別々のコンピュータわたって分配されるであろう)に対して指示する。一実施形態において、ワールドワイドウェブサーバは、TCP/IPプロトコルに対応する。これらのローカルネットワークは、「イントラネット」と呼ばれる場合もある。そのようなイントラネットの利点は、ワールドワイドウェブ上にある公有データベース(例えば、GenBankまたはSwiss Proなどのワールドワイドウェブサイト)と容易に通信できることである。したがって、本発明の具体的に好ましい実施形態において、利用者は、ウェブブラウザおよびウェブサーバにより提供されるHTMLインターフェースを使用して、インターネットデータベース上にあるデータに(例えばハイパーテキストリンクを介して)直接接続することができる。
【0060】
比較モジュールは、所定の基準、または利用者により規定された基準に従ってコンピュータで読み取り可能な形態に処理され得るコンピュータで読み取り可能な比較結果を提供し、利用者の要求通りに格納され出力されてよい一部比較結果に基づいた情報内容を、表示モジュール#110を使用して提供する。
【0061】
比較結果に基づく情報内容は、正常な妊婦に由来してよい。あるいは、比較結果に基づく情報内容は、妊娠高血圧腎症の女性であってよい。
【0062】
本発明の一実施形態において、比較結果に基づく情報内容は、コンピュータモニタ#120上に表示される。本発明の一実施形態において、比較結果に基づく情報内容は、印刷可能な媒体#130、#140を介して表示される。表示モジュールは、コンピュータから受信し、コンピュータで読み取り可能な情報を利用者に表示するように構成された、任意の適切な装置であってもよい。非限定的な例には、例えば、Intel PENTIUM−型プロセッサ、Motorola PowerPC、Sun UltraSPARC、Hewlett−Packard PA−RISCプロセッサ、サニーベール、カリフォルニアのAdvanced Micro Devices(AMD)から入手可能な様々なプロセッサのいずれか、または他の任意の型のプロセッサに基づく汎用コンピュータ、フラットパネルディスプレイ、ブラウン管などの画像表示装置、ならびに様々な型のコンピュータプリンタが含まれる。
【0063】
一実施形態において、ワールドワイドウェブブラウザを利用して、比較結果に基づいた情報内容を表示するためのユーザインターフェースを提供する。本発明の他のモジュールは、ウェブブラウザインターフェースを有するように適合できることを理解されたい。利用者は、ウェブブラウザを介して、比較モジュールからの検索データに対する要求を構築してもよい。したがって、利用者は通常ボタン、プルダウンメニュー、スクロールバーなどグラフィカルユーザインターフェースで従来通り使用されるユーザインターフェース要素を指示し、クリックすることになる。
【0064】
したがって、本明細書に記載の方法は、システム(およびコンピュータシステムのもとになるコンピュータで読み取り可能な媒体)を提供し、妊娠高血圧腎症を発症する妊婦の危険性を検出するおよび/または確認する方法を遂行する。
【0065】
本明細書に記載のシステムおよびコンピュータで読み取り可能な媒体は、診断法を特一個人において遂行するための本発明の単なる具体例であり、本発明の範囲を制限するものではない。本明細書に記述のシステムおよびコンピュータで読み取り可能な媒体は、変形可能であり、本発明の範囲内に含まれるものとする。
【0066】
機械モジュールまたはコンピュータで読み取り可能な媒体で使用されるそれらは、多数の構成が想定されてよい。例えば機能は、単一の機械に提供されてよく、または複数の機械にわたって分散されてもよい。
【0067】
本発明は、コンピュータ上で実行された場合に、妊娠高血圧腎症を発症する妊婦の危険性を早期に検出するための方法をコンピュータに遂行させるコンピュータプログラムも提供する。この方法は、妊娠11週目から17週目に女性から採取される試験生体試料をアッセイすることによって、得られる少なくとも1つの表1の代謝物のバイオマーカーの存在量を入力するステップと、少なくとも1つの代謝物のバイオマーカーの存在量を、少なくとも1つの代謝物のバイオマーカーの参照の存在量と比較するステップと、比較ステップに基づいた妊娠高血圧腎症の危険性の定量的推定値を決定するステップとを含む。
【0068】
通常、5−ヒドロキシトリプトファン、単糖、デカノイルカルニチン、メチルグルタル酸および/またはアジピン酸、オレイン酸、ドコサヘキサエン酸および/またはドコサトリイン酸、γ−ブチロラクトンおよび/またはオキソラン−3−オン、2−オキソ吉草酸および/またはオキソメチルブタン酸、アセト酢酸、ヘキサデセノイル−エイコサテトラエノイル−sn−グリセロール、スフィンゴシン−1−リン酸塩、スフィンガニン−1−リン酸塩およびビタミンD3誘導体の群から選択される少なくとも1つの代謝物のバイオマーカーの存在量が、入力される。
【0069】
5−ヒドロキシトリプトファン、単糖、デカノイルカルニチン、メチルグルタル酸および/またはアジピン酸、オレイン酸、ドコサヘキサエン酸および/またはドコサトリイン酸、γ−ブチロラクトンおよび/またはオキソラン−3−オン、2−オキソ吉草酸および/またはオキソメチルブタン酸、アセト酢酸、ヘキサデセノイル−エイコサテトラエノイル−sn−グリセロール、スフィンゴシン−1−リン酸塩、スフィンガニン−1−リン酸塩およびビタミンD3誘導体を含む複数の代謝物のバイオマーカーの存在量が、入力されることが理想的である。
【0070】
妊娠高血圧腎症の危険性の定量的な推定値を決定するステップは、通常その代謝物のバイオマーカー、または各代謝物のバイオマーカーの存在量、および一組の参照の存在量の値に由来する分布パラメータの使用を含む多変量解析を使用する妊娠高血圧腎症の可能性の決定を含むことが好ましい。多変量解析には、多変量判別式PLS−DAモデルまたは多変量判別式PC−CVAモデルを使用することが理想的である。
【0071】
本発明はまた、本発明によるコンピュータプログラムを格納しているコンピュータプログラムの記録媒体も提供する。
【0072】
方法
参加者および標本
SCOPE研究は、妊娠高血圧腎症(ACTRN12607000551493)、妊娠期間に比べて小さい乳児(SGA)、および自然早産を含む妊娠後期の合併症に対する正確なスクリーニング法の開発を目的とする、前向きな多施設コホート研究である。正式な倫理的承認を地方倫理委員会から得(ニュージーランドAKX/02/00/364およびオーストラリアREC 1712/5/2008)、さらに全ての患者が書面による同意を提出した。単胎妊娠の健常な未経産女性を、14週目から16週目に募集し、妊娠の全期間にわたって追跡した。
【0073】
妊娠15週目より前に病院妊産婦検診、産科医、一般的な専門医または地域助産婦に行っている女性を、SCOPE研究への参加に勧誘した。除外基準は、以下を含む、1)基礎疾患(慢性高血圧症、糖尿病、腎疾患、全身性エリテマトーデス、抗リン脂質症候群、鎌状赤血球疾患、ヒト免疫不全ウイルス)、婦人科病歴、過去の中絶経験が3回以上、または流産経験が3回以上という理由から、妊娠高血圧腎症、SGAまたは自然早産の危険性が高いと見なされた、2)主要な胎児性形成異常または異常核型を有することが分かっていた、または3)妊娠結果を変化させる可能性がある介入(例えばアスピリン治療)を受けた。参加者は、妊娠15週目+1週間および20週目+1週間に調査助産婦によって、面談および検査され、20週目+1週間に超音波走査を受けた。面接時に、インターネットで接続される中央データベースに、完全な動作記録を含めてデータを入力した。
【0074】
15週目に収集されたデータには、詳細な人口統計学的、産科的、医学的情報および家族情報が含まれた。現在の妊娠データは、正確に出産予定日を算出するために妊娠早期の走査を含んだ。女性が特定の最終月経(LMP)日だった場合、以下のいずれかの場合に限りその出産予定日を調節した:1)妊娠16週目以内に行った走査から、妊娠走査とLMPによって、算出した出産予定日との間に7日間以上の差が明らかになった、または、2)20週目の走査において、妊娠走査とLMPから算出した出産予定日との間に10日間以上の差が明らかになった。LMP日付が不確実であった場合、走査日時を使用して出産予定日を算出した。膣出血など現在の妊娠合併症に関する情報を収集し、食物頻度アンケートを使用して妊娠前および妊娠中の食事の情報を取得した。妊娠前、第一三半期および15週目の葉酸および総合ビタミン剤、タバコ、アルコールならびに娯楽薬の使用について記録した。仕事、運動および座業活動、いびき、家庭内暴力および社会的支援に関して参加者に質問することよって、生活様式のアンケートの全ての項目に記入した。自覚ストレス(自覚ストレス調査票)、うつ(エジンバラ産後うつ病自己評価)、不安(短文式の状態特性不安検査による不安測定)および妊娠に対する行動反応(疾病に対する行動反応のアンケートから適合させた)を測定する有効な心理的尺度の全ての項目に記入した。母性の身体計測には、水銀またはアネロイド型血圧計を用いた2つの血圧記録、身長、体重ならびに腰、臀部、腕および頭部の周囲長が含まれた。中間尿検体におけるタンパク尿を、計量棒またはタンパク質クレアチニン比によって測定した。15週目の面接、母性の身体計測および参加者が全ての項目に記入した生活様式アンケート以後、収集された情報には、妊娠20週目±1週間に何らかの妊娠合併症が含まれた。20週±1週目の超音波検査には、胎児の測定(両頭頂径、頭囲、腹囲および大腿骨長)ならびに臍帯および子宮動脈のドップラー試験が含まれた。
【0075】
参加者は、調査助産婦により収集された妊娠結果データおよび乳児測定値を用いて、将来的に観察された。データ監視は、1)生活様式のアンケートの任意のデータ登録エラーも含めて参加者の全データを個別照合するステップと、2)特別注文のソフトウェアを使用して任意の系統的なデータ登録エラーも検出するステップとを含んだ。
【0076】
主な結果の測定
主要な結果は、妊娠高血圧腎症をタンパク尿(24時間の尿タンパク質が300mg以上、または随時尿タンパク質:クレアチニン比が30mg/mmolクレアチニン以上、または尿計量棒タンパク質が2+以上)を伴う妊娠高血圧症(妊娠20週目以後の分娩開始前に、4時間離れた少なくとも2点での収縮期血圧が140mmHg以上および/または拡張期血圧が90mmHg以上、もしくは4時間離れた少なくとも2点での分娩後の収縮期血圧が140mmHg以上および/または拡張期血圧が90mmHg以上)または何らかの妊娠高血圧腎症の多臓器合併症と規定した。多臓器合併症は、次のいずれかであった、1)血清クレアチニンの新たな増分が分娩前で100umol/L以上または分娩後で130umol/L以上と規定された急性腎不全、2)アスパラギン酸トランスアミナーゼの増加および/または45IU/L以上のアラニントランスアミナーゼおよび/または、激しい右側上腹部または心窩部痛もしくは肝破裂と規定された肝臓障害、3)子癇、差迫した子癇(反射亢進を伴う激しい頭痛および持続性の視覚障害)または脳溢血含を含む神経学的合併症、および4)血小板減少(血小板100×109/L未満)、播種性血管内血液凝固または溶血を含む血液学的合併症。
【0077】
合併症を伴わない妊娠を、妊娠高血圧腎症、SGA、自然早産または妊娠性高血圧症など他の何らかの妊娠合併症による合併症がない妊娠と既定した。
【0078】
発見段階
研究の発見段階には、オークランド(ニュージーランド)において、1628人の初期参加者内でコホート内症例対照研究が実施され、その妊娠結果は1608人(98.8%)であった。67人(4.2%)の女性が妊娠高血圧腎症を発症し、1021人(63.5%)は合併症のない妊娠であった。残りは、他の妊娠合併症があった。妊娠高血圧腎症を発症した60人の女性は、年齢、民族性およびBMIについて合併症を伴わない妊娠があった60人の対照と照合された。その研究を、試料を120個に制限して、超高性能液体クロマトグラフィー−質量分析法システムのシグナル安定性を最適に保証した。1
【0079】
検証段階
研究の検証段階に、アデレード(オーストラリア)において596人の初期参加者内でコホート内症例対照研究が実施され、その妊娠結果は595人(99.8%)であった。46人(7.7%)の女性が妊娠高血圧腎症を発症し、267人(44.9%)は合併症のない妊娠であった。残りは、他の妊娠合併症があった。妊娠高血圧腎症を発症した39人の女性は、年齢、民族性およびBMIについて合併症を伴わない妊娠があった40人の対照と照合された。
【0080】
妊娠高血圧腎症を、妊娠20週目以降(分娩開始前)または出産後期間中の血圧が140/90mmHg以上であり、タンパク尿(24時間の尿中タンパク質量が300mg以上、または随時尿中タンパク質:クレアチニン比が30mg/mmol以上、または尿計量棒タンパク質が++以上)および/または多臓器合併症の所見のいずれかを伴う、と規定した。2
【0081】
妊娠15週±1週目に静脈穿刺を行い、標準的手順に従って、血漿試料をBD EDTA−バキュテイナ(登録商標)管に採血し、氷上に置き、2400xg、4℃で遠心分離した。血漿を−80℃で一定分量で保管した。採血および保管の条件は、患者および対照間で同一にされ、採血と保管の間の時間は、それぞれ2.07時間(標準偏差0.90)および2.02時間(標準偏差0.96)(p値=0.78)であった。
【0082】
試薬、試料製剤および質量スペクトル解析
使用する全ての化学薬品および試薬は、分析試薬またはHPLC品質であり、Sigma−Aldrich(Poole、UK)またはThermoFisher Scientific(Loughborough、UK)から購入した。全ての試料は、タンパク質除去手順を使用して調製し、続いて超高性能液体クロマトグラフィー−質量分析計(ThermoFisher Scientific LTQ−Orbitrap質量分析計と連結されたWaters ACQUITY 超高性能液体クロマトグラフィーシステム)を使用して解析した。XCMSソフトウェアを使用して、未加工のプロファイルデータをピークテーブルに解析した。3次いで、再現性があるデータだけで統計分析を実施するために、データを厳密な信頼性保証手順に供した。試料の調製および超高性能液体クロマトグラフィー−質量分析解析に関連する全方法の全詳細は、添付の補足の方法資料に記載されている。
【0083】
試料を、70μLのHPLC品質水に再構成して調製し、続いてボルテックス混合し(15秒間)、遠心分離(11337g、15分間)し、バイアルに移した。試料を、エレクトロスプレーイオン化モードで動作させるLTQ−Orbitrap質量分析法システム(Thermo Fisher Scientific、Bremen、Germany)と連結されたACQUITY超高性能液体クロマトグラフィー(Waters Corp.Milford、USA)によって分析した。試料を、陽イオンモードで連続的に、続いて陰イオンモードで連続的に分析した。ACQUITY超高性能液体クロマトグラフィーBEH1.7μm−C18カラム(2.1x100mm、Waters Corp.Milford、USA)を使用して、クロマトグラフィー分離を行った。溶媒Aおよび溶媒Bは、それぞれ0.1%のギ酸水溶液および0.1%のギ酸メタノール溶液であった。陽性イオンモードでは、勾配溶出プロファイル(100%のAを1分間、その後15分間かけて100%のBへ勾配させ(曲線5)、続いて100%のBで4分間保持し、100%のAへ急速に復帰させ、2分間保持する)を用いて0.40mL.min-1の流速を適用した。陰性イオンモードでは、勾配溶出プログラム(100%のAを2分間、その後15分間かけて100%のBへ勾配させ(曲線4)、続いて100%のBで5分間保持し、100%のAへ急速に復帰させ、2分間保持する)を用いて0.36mL.min-1の流速を適用した。カラムおよび試料を、それぞれ50℃および4℃に維持した。10μLの試料をカラムに導入し、カラム溶出液の50%を質量分析計に移した。目標質量分解能30000(m/z400に規定した半値全幅)および走査時間0.4秒で動作するOrbitrap質量分析器を使用して50〜1000Thの質量範囲で、セントロイド質量走査を取得した。計測器製造会社(ThermoFisher Scientific、Bremen、Germany)が規定した較正混合物を使用して、各分析バッチの前に質量較正を行った。
【0084】
統計分析
スチューデントt検定、マン−ホイットニーのU検定、カイ2乗検定、またはフィッシャーの直接確率検定、必要に応じて(SAS(登録商標)システム9.1)を使用して、患者と対照の臨床データの比較を行った。
【0085】
発見段階
発見段階研究において、再現性よく検出された各代謝物のピークについてのデータの正規性に応じてマン−ホイットニー検定またはスチューデントt検定を使用して、患者および対照試料集団の平均値が等しいという帰無仮説を検定した。有意水準を、0.05に設定した。現段階で、偽陰性(第二種の過誤)の見込み数を最少限に保ったまま、数千の検出された特徴を潜在的な「豊富な情報」のピークの部分集合にまで減らすことを目的とする多重比較の補正は行わなかった。偽陽性候補のバイオマーカーを、本調査の検証段階で確認する。
【0086】
候補バイオマーカーの組合せの予測能力を評価するのに役立つデータ中の多変量潜在構造を発見するために、主成分分析法(PC)およびその後にPC−CVA法として公知の正準判別分析法(CVA)を使用して、有意なピークを単一の多変量判別式モデルに集約した。4PC段階は、データを直交させて一組の低次元な潜在的変数までそれを減らすために必要である。これらの変数(主成分−PC)は、データの中に基本的な分散構造を含んでいる。PCの最適数(したがって、最も強力な多変量モデル)を、100個のブートストラップ試料を使用して予測エラーの不偏推定値を生じさせ、.632+ブートストラップ法置換を採用することによって見出した。5分析の前に全てのピークデータを、パレート基準化した。6、7
【0087】
部分最小2乗判別分析法(PLS−DA)を使用して、有意なピークを単一の多変量判別モデルで組み合わせることによって、候補バイオマーカーの組合せの予測能力を評価する更なる分析を行った。PLS−DAモデルにおいて、使用した潜在因子の最適数を層別の5分割交差検定を使用して選択し、標準的なR2およびQ2測定を通じてモデルの品質を検証した、ここで、従属変数とPLS−DA予測の2乗相関係数であるR2から、使用可能な全てのデータを使用して「適合度」(0から1の値であって1は、完全相関である)が算定され、所定のPLS−DAモデルが構築される。Q2は「予測の良好さ」の尺度を提供し、交差検定の過程の間に作成した5つの予約データセットについての従属変数とPLS−DA予測の間の平均化された相関係数である。
【0088】
代謝学研究の標準的な手順に従って並べかえ検定(N=1000)を使用して、R2値を、考え得る全てのモデルの参照分布と比較することによって更なる検証を行い、最終的なPLS−DAモデルの強力さを確認した。ここで参照のR2分布は、測定された代謝プロファイルごとの患者/対照ラベルの無作為再割り付けに従って、考え得る全てのPLS−DAモデルを算定することによって得られる。正しくラベルされたモデルのR2値が参照分布の中心近くにある場合、そのモデルは単に無作為に割り付けられたモデルと変わりなく実行しており、ひいては無効である。ここに記述される全てのPLS−DAモデルについて関連する参照の分布図が提供され、そこから無作為に起こるその候補モデルの確率の推定値を推定できる。加えて、各PLS−DAモデルについて、識別能力の正確な評価を得られるように、受信者動作特性(ROC)曲線を決定した。
【0089】
データセット中のいずれかの構築された突出部を除去するための前処理ステップとして、単一の補正因子および1X10-3の交差設定を使用して、直接的な直交信号の補正を実施した。多変量解析の前に、全てのピークデータを単位変数に拡大縮小した。
【0090】
UPLC−MSに関連したピークを同定するために、Human Metabolome Database(HMDB)(http://www.hmdb.ca/)およびLipidmaps(http://www.lipidmaps.org/)の情報を用いて構築されたThe Manchester Metabolomics Databaseに対して、各ピークについて正確な質量を検索した。8観察された質量と理論的質量との質量差が5ppm未満で一致した場合、代謝物名(複数可)を、記録した。UPLC−MSを使用した場合、化学的内転(chemical adduction)、二量体化、多重帯電、同位体ピークおよび断片化に起因して、代謝物はしばしば複数回検出される。重複した同定ピークを除去した後、固有の代謝物の一覧を編集した。保持時間の誤差10秒未満および質量の一致の正確さが5ppm未満の代謝物についてだけ、最終的な同定を記録した。一旦同定したら、HMDBの「分類」階層(http://www.hmdb.cal/)を使用して、その代謝物を代謝物区分にグループ分けした。
【0091】
指定した各代謝物について、受信者動作特性(ROC)曲線を決定して一変量の識別バイオマーカーとして、各代謝物の有効性を評価した。加えて、各代謝物について、最適な無作為の識別決定境界を最適なヨーデンの指標法を使用して推定し、次いで関連する識別オッズ比を信頼区間95%(OR95%信頼区間)で算出した。9~10
【0092】
検証段階
発見段階の研究において、有意であることが明らかになった同定された代謝物を、検証研究において検出された代謝物のピークと照合した。一致が明らかになった場合、次いで発見段階と同じ手順を使用して、潜在的なバイオマーカーとしてその代謝物を一変量的に評価した。加えて、PC−CVAモデルおよび/またはPLS−DAモデルを構築して検証ピークの多変量の識別能力を評価した。
【0093】
最終的に、発見研究および検証研究の両方において、観察され指定された代謝物から得られる「最適な」多変量の識別モデルを探索した。遺伝的アルゴリズム型検索プログラムを使用して、妊娠高血圧腎症の発症について有効な予測規則をもたらした代謝物の部分集合を得た。この探索方法は、以前の研究において非常に良好であることが示されていた。11、12、13、14、15、16このアルゴリズムにおいて、一組の候補解は、徐々に最適状態へ進化する。その進化は、進化生物学に端を発した計算手法によって後押しされる。本発明者により考案されたアルゴリズムにおいて、各候補解(代謝物の部分集合)は、2つのそれぞれ独立な線形判別分析モデルを構築することにより評価され、1つは発見データをモデル化し、他方は検証データをモデル化する。候補の適応度は、これら2つのモデルの予測2乗平均平方根誤差(RMSEP)の合計に比例する。一旦最適な代謝物の部分集合が明らかになると、その予測能力を正準判別分析/部分最小2乗法判別分析法およびホテリングのt2乗検定法を使用して評価した。4発見データおよび検証データについてそれぞれ独立に評価を行った。
【0094】
全ての統計分析を、Matlab(登録商標)スクリプト言語(http://www.mathworks.com/)を使用して実行した。どんな欠損値も無視されるように全ての一変量アルゴリズムを実行した。最近隣法を使用して欠損値が帰属されるように全ての多変量アルゴリズムを実行した。17遺伝的アルゴリズム探索プログラムを、組織内で記述した。11スクリプトは、要求に応じて使用可能である。
【0095】
結果
発見段階
妊娠高血圧腎症の女性および対照の女性における母性特性および妊娠結果を、表2に示す。品質保証および一変量スクリーニングの後、UPLC−MSにより457個の豊富な情報の代謝物ピークが明らかになった。これら457個のピークを使用する多変量判別式モデル(PC−CVA)は、良好に判別することが判明し、ROC曲線下面積0.96、オッズ比68(95%信頼区間21〜216)をもたらした。これは、どんな単一の代謝物のピークよりもはるかによかった。.632+ブートストラップ再標本化法を使用して、モデルの選択を行った。図1は、PC−CVA成分プロットを示し、ここで試料の1/3をモデリング処理から無作為に除去し、テストセットとして使用した。テストセットモデル断言の分布はトレーニングセットに類似しており、テストセットのデータのわずか10%が対応する95%の信頼領域の外側にあり、このことは、これらのデータ範囲内に強力な多変量識別の情報があったことを示唆している。
【0096】
多変量判別式モデルPLS−DAを使用してさらに解析した結果、R2が0.76、Q2が0.68、およびROC曲線下面積(AUC)が0.99のモデルが得られた。5分割交差検定を使用してモデルの選択を行い、並べかえ検定を使用して最終的なモデルをさらに検証した。最終的なモデルは単一の潜在因子を使用しており、無作為に起こるこのモデルの確率は、0.001未満であった。PLS−DA成分プロットおよび並べかえ検定を図3に示す。
【0097】
UPLC−MSにより検出された457個の代謝物のピークのうち、70個が化学的に公知の代謝物としてうまく確認され、そのうち45個は定義されている分子的実体(表1)という意味で、「固有」だった。(Human Metabolome Database(HMDB)に基づいて)代謝物区分に分けたとき、11種の明瞭な分類が明らかになった。これらは、アミノ酸(AA)、炭水化物(Cb)、カルニチン(Cam)、エイコサノイド(Eic)、脂肪酸(FA)、ケトまたはヒドロキシ酸(KHA)、脂質(Lip)、リン脂質(PL)、ポルフィリン(Por)、ホスファチジルセリン(PS)およびステロイド(St)であった。
【0098】
45種の指定した代謝物だけを使用して、PC−CVAモデルを構築した。これは、ROC曲線下面積が0.90およびオッズ比23.5(95%信頼区間21〜216)を示した。PLS−DAモデルについても同様に、45種の指定した代謝物(1つの潜在因子)を使用して、R2が0.58、Q2が0.57、およびAUCが0.96(図4)の予測モデルを構築した。これらの結果から、全457個のピークモデルと比較したとき、診断能力がごくわずか低下することが判明した。
【0099】
検証段階
妊娠高血圧腎症の女性および対照の女性における母性特性および妊娠結果を、表2「後に妊娠高血圧腎症を発症した女性および対照の女性の特性および妊娠結果」、に示す。
【0100】
【表2−1】

【0101】
【表2−2】

【0102】
【表2−3】

【0103】
発見研究において指定された45種の有意な代謝物のうち、34種が検証研究においても検出された。これらの全代謝物は、ピーク応答において類似の変化を示した(29種は妊娠高血圧腎症の発症に進行した患者において増加し、5種は、低下した)。34種の代謝物を使用する多変量PC−CVAモデルは、ROC曲線下面積が0.86およびオッズ比が15(95%信頼区間4.4〜50.6)で合理的な予測であることが判明した。34種の代謝物(1つの潜在因子)を使用するPLS−DAモデルは、R2が0.57、Q2が0.53およびAUCが0.95の予測であることが判明した(図5)。
【0104】
妊娠高血圧腎症の代謝物サイン
最終的に、遺伝的アルゴリズム型探索プログラムを使用して、両方の研究からデータを掘り出し、最も強力に予測する一般的なモデルをもたらす指定された代謝物の部分集合を明らかにした。その遺伝的アルゴリズムから、13種の代謝物(好ましい代謝物)が選択された。発見研究および検証研究についてこれらの代謝物を使用したCVAモデルの予測を図2に示す。両方のモデルについてROC曲線下面積は0.90であり、発見データおよび検証データについてのオッズ比はそれぞれ16.4(95%信頼区間6.6〜40.6)および39.5(95%信頼区間8.2〜189.4)であった。加えて、図6は、PLS−DAモデルの予測が、発見研究についてはR2が0.54、Q2が0.52およびROC曲線下面積が0.94、および最適オッズ比36(95%信頼区間:12から108)、検証研究についてはR2が0.43、Q2が0.39およびROC曲線下面積が0.92および最適オッズ比23(95%信頼区間:7から73)であったことを示す。無作為に起こるこれらPLS−DAモデルの両側確率が0.001未満であることを、並べかえ検定は示した(図7)。13種の代謝物の組合せ効果も、ホテリングのT2乗統計を使用して試験した。この検定は、発見研究データについてのp値は2x10-6であり、検証研究データについてのP値は0.006を示した。P値は、大きさの異なる試料によって、明らかな影響を受けた(発見n=120、検証N=79)。
【0105】
図面に関して記載される本発明の実施形態は、コンピュータ装置および/またはコンピュータ装置において実行される工程を含む。しかし本発明はまた、コンピュータプログラム、特に本発明を実行に移すために適合されたキャリアの上、またはキャリアの中に格納されるコンピュータプログラムにまで拡張される。そのプログラムは、ソースコード、オブジェクトコード、もしくは部分的に機械語に翻訳された形態または本発明に従った方法の実装において、好適な他のいずれかの形態などのコード中間ソース(a code intermidiate source)およびオブジェクトコード、の形態であってよい。そのキャリアは、ROM(例えばCD−ROM)、または磁気記録媒体(例えばフロッピーディスクまたはハードディスク)などの記憶媒体を備えてよい。そのキャリアは、電気的または光学的ケーブルを介して、もしくは無線または他の手段により伝達され得る電気的または光学的信号であってよい。
【0106】
本明細書において、「備える、備える、備えた、および備えている(comprise、comprises、comprised、comprising)」という用語またはそのあらゆる変化形、および「含む、含む、含んだ、含んでいる(include、includes、included、およびincluding)」という用語またはそのあらゆる変化形は、完全に置き換え可能であると見なされ、それら全てには、最も幅広い解釈の可能性が与えられるべきであり、逆もまた同じである。
【0107】
本発明は、本発明の精神から逸脱することなく構成および詳細の変化が可能である上記の実施形態に制限されるものではない。
【0108】
【表3−1】

【0109】
【表3−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
妊娠高血圧腎症を発症する妊婦の危険性を早期に検出するアッセイであって、妊娠11週目から17週目に前記女性から得られた試験生体試料をアッセイして、5−ヒドロキシトリプトファン、単糖、デカノイルカルニチン、メチルグルタル酸および/またはアジピン酸、オレイン酸、ドコサヘキサエン酸および/またはドコサトリイン酸、γ−ブチロラクトンおよび/またはオキソラン−3−オン、2−オキソ吉草酸および/またはオキソメチルブタン酸、アセト酢酸、ヘキサデセノイル−エイコサテトラエノイル−sn−グリセロール、スフィンゴシン−1−リン酸塩、スフィンガニン−1−リン酸塩およびビタミンD3誘導体から選択される少なくとも1つの代謝物のバイオマーカーの存在量を決定するステップを含み、前記少なくとも1つの代謝物のバイオマーカーについての参照の存在量と比較した前記少なくとも1つの代謝物のバイオマーカーの変化した存在量が、妊娠高血圧腎症を発症する前記妊婦の危険性と相関することを特徴とするアッセイ。
【請求項2】
前記試験生体試料が妊娠14週目から16週目に前記女性から得られることを特徴とする請求項1に記載のアッセイ。
【請求項3】
前記参照の存在量が前記試験生体試料と同じ週の妊娠段階(+/−1週間)の被験者から得られる参照生体試料中の前記代謝物マーカーの存在量であり、前記被験者が深刻でない妊娠であることを特徴とする請求項1または2に記載のアッセイ。
【請求項4】
前記深刻でない妊娠が、妊娠高血圧腎症がない妊娠、または妊娠高血圧腎症がなく他のいずれの合併症もない妊娠であることを特徴とする請求項3に記載のアッセイ。
【請求項5】
前記参照の存在量が、妊娠高血圧腎症を発症した被験者から得られる生体試料中の前記代謝物マーカーの存在量であることを特徴とする請求項1に記載のアッセイ。
【請求項6】
バイオマーカー、5−ヒドロキシトリプトファン、単糖、デカノイルカルニチン、メチルグルタル酸および/またはアジピン酸、オレイン酸、ドコサヘキサエン酸および/またはドコサトリイン酸、γ−ブチロラクトンおよび/またはオキソラン−3−オン、2−オキソ吉草酸および/またはオキソメチルブタン酸、アセト酢酸、ヘキサデセノイル−エイコサテトラエノイル−sn−グリセロール、スフィンゴシン−1−リン酸塩、スフィンガニン−1−リン酸塩およびビタミンD3誘導体のうち実質的に全ての存在量を決定するステップと、
前記バイオマーカー全ての存在量を、妊娠高血圧腎症を発症する前記妊婦の危険性と相関させるステップと
を含むことを特徴とする前記請求項のいずれかに記載のアッセイ。
【請求項7】
5−ヒドロキシトリプトファン、単糖、デカノイルカルニチン、メチルグルタル酸および/またはアジピン酸、オレイン酸、ドコサヘキサエン酸および/またはドコサトリイン酸、γ−ブチロラクトンおよび/またはオキソラン−3−オン、2−オキソ吉草酸および/またはオキソメチルブタン酸、アセト酢酸、ヘキサデセノイル−エイコサテトラエノイル−sn−グリセロール、スフィンゴシン−1−リン酸塩、スフィンガニン−1−リン酸塩、およびビタミンD3誘導体、を含む複数のバイオマーカーの存在量を決定するステップと、
バイオマーカーの組合せの存在量を、妊娠高血圧腎症を発症する前記妊婦の危険性と相関させるステップと
を含むことを特徴とする前記請求項のいずれかに記載のアッセイ。
【請求項8】
前記女性から少なくとも1つの臨床的な危険性の変数を検出し、検出の感度および/または特異度を増加させるステップをさらに含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項9】
前記臨床的な危険性の変数が、血圧、BMI、年齢、妊娠高血圧腎症または冠状動脈血管病の家族歴、ならびに胎児の生体計測、臍および子宮動脈のドップラー波形解析の測定を含む超音波指標からなる群から選択されることを特徴とする請求項8に記載のアッセイ。
【請求項10】
前記アッセイが、バイオマーカーに基づいた予測危険性および前記少なくとも1つの臨床的な危険性の変数を、妊娠高血圧腎症を発症する全体の危険性と相関させることを含むことを特徴とする請求項8または9に記載のアッセイ。
【請求項11】
妊婦の年齢、BMIおよび血圧を含む複数の臨床的な危険性の変数を検出するステップと、
バイオマーカーの組合せならびに前記年齢、BMIおよび血圧の危険性の変数に基づく予測危険性を妊娠高血圧腎症を発症する全体の危険性と相関させるステップと
をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載のアッセイ。
【請求項12】
妊娠高血圧腎症に対する治療の有効性を監視するアッセイであって、妊娠高血圧腎症と診断され、妊娠高血圧腎症の治療を受けている妊婦に由来する生体試料中の表1の代謝物または各代謝物の存在量レベルを決定するステップと、
決定したその代謝物または各代謝物の存在量のレベルを、その代謝物または各代謝物についての参照の存在量値と相関させるステップと
を含むことを特徴とするアッセイ。
【請求項13】
前記代謝物のバイオマーカーが、5−ヒドロキシトリプトファン、単糖、デカノイルカルニチン、メチルグルタル酸および/またはアジピン酸、オレイン酸、ドコサヘキサエン酸および/またはドコサトリイン酸、γ−ブチロラクトンおよび/またはオキソラン−3−オン、2−オキソ吉草酸および/またはオキソメチルブタン酸、アセト酢酸、ヘキサデセノイル−エイコサテトラエノイル−sn−グリセロール、スフィンゴシン−1−リン酸塩、スフィンガニン−1−リン酸塩、およびビタミンD3誘導体からなる群から選択されることを特徴とする請求項12に記載のアッセイ。
【請求項14】
5−ヒドロキシトリプトファン、単糖、デカノイルカルニチン、メチルグルタル酸および/またはアジピン酸、オレイン酸、ドコサヘキサエン酸および/またはドコサトリイン酸、γ−ブチロラクトンおよび/またはオキソラン−3−オン、2−オキソ吉草酸および/またはオキソメチルブタン酸、アセト酢酸、ヘキサデセノイル−エイコサテトラエノイル−sn−グリセロール、スフィンゴシン−1−リン酸塩、スフィンガニン−1−リン酸塩、およびビタミンD3誘導体を含む複数のバイオマーカーの存在量を決定するステップと、
前記バイオマーカーの組合せの存在量を妊娠高血圧腎症の治療の有効性と相関させるステップと
を含むことを特徴とする請求項12に記載のアッセイ。
【請求項15】
高血圧障害を発症する妊婦の危険性を早期に検出するアッセイであって、妊娠11週目から17週目に前記女性から採取した試験生体試料をアッセイして、表1に記載の群から選択される代謝物のバイオマーカーの存在量を決定するステップを含み、前記代謝物のバイオマーカーについての参照の存在量と比較した前記代謝物のバイオマーカーの変化した存在量が、高血圧障害を発症する前記女性の危険性の増大と相関することを特徴とするアッセイ。
【請求項16】
前記高血圧障害が、子癇、軽度の妊娠高血圧腎症、慢性高血圧症、EPH妊娠中毒、妊娠性高血圧症、加重型妊娠高血圧腎症、ヘルプ症候群および腎症からなる群から選択されることを特徴とする請求項15に記載のアッセイ。
【請求項17】
妊婦における妊娠高血圧腎症の治療または予防のための方法であって、請求項1から11のいずれかに記載の方法によって、妊娠の早期段階に妊娠高血圧腎症を発症している女性の危険性を検出するステップと、
女性が妊娠高血圧腎症を発症する危険があると確認された場合、臨床的介入を適用して妊娠高血圧腎症を治療または予防するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
妊婦に関して、妊娠高血圧腎症の危険性を検出する方法を遂行するシステムであって、
前記妊婦に由来する試料中の、表1から選択される代謝物のバイオマーカー、特に5−ヒドロキシトリプトファン、単糖、デカノイルカルニチン、メチルグルタル酸および/またはアジピン酸、オレイン酸、ドコサヘキサエン酸および/またはドコサトリイン酸、γ−ブチロラクトンおよび/またはオキソラン−3−オン、2−オキソ吉草酸および/またはオキソメチルブタン酸、アセト酢酸、ヘキサデセノイル−エイコサテトラエノイル−sn−グリセロール、スフィンゴシン−1−リン酸塩、スフィンガニン−1−リン酸塩、およびビタミンD3誘導体から選択される代謝物のバイオマーカーの存在量を検出するための決定システムと、
任意選択で、前記決定システムにより作成された代謝物の存在量データを格納する記憶システムと、
前記決定システムからの存在量データを参照の存在量データと比較して妊娠高血圧腎症の危険性の定量的推定値を提供する比較システムと、
妊娠高血圧腎症の危険性の前記定量的推定値を表示する表示モジュールと
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項19】
前記決定システムが、質量分析計または液体クロマトグラフィー装置を含むことを特徴とする請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
コンピュータ上で実行されたときに、妊娠高血圧腎症を発症する妊婦の危険性を早期に検出するプロセスを前記コンピュータに遂行させるコンピュータプログラムであって、
妊娠11週目から17週週目に前記女性から得られる試験生体試料をアッセイすることによって得られる表1の少なくとも1つの代謝物のバイオマーカーの存在量を入力する命令と、
前記少なくとも1つの代謝物のバイオマーカーの存在量を、前記少なくとも1つの代謝物のバイオマーカーの参照の存在量と比較する命令と、
前記比較ステップに基づく妊娠高血圧腎症の危険性の定量的推定値を決定する命令と
を含むことを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項21】
5−ヒドロキシトリプトファン、単糖、デカノイルカルニチン、メチルグルタル酸および/またはアジピン酸、オレイン酸、ドコサヘキサエン酸および/またはドコサトリイン酸、γ−ブチロラクトンおよび/またはオキソラン−3−オン、2−オキソ吉草酸および/またはオキソメチルブタン酸、アセト酢酸、ヘキサデセノイル−エイコサテトラエノイル−sn−グリセロール、スフィンゴシン−1−リン酸塩、スフィンガニン−1−リン酸塩およびビタミンD3誘導体の群から選択される少なくとも1つの代謝物のバイオマーカーの存在量が入力されていることを特徴とする請求項20に記載のコンピュータプログラム。
【請求項22】
5−ヒドロキシトリプトファン、単糖、デカノイルカルニチン、メチルグルタル酸および/またはアジピン酸、オレイン酸、ドコサヘキサエン酸および/またはドコサトリイン酸、γ−ブチロラクトンおよび/またはオキソラン−3−オン、2−オキソ吉草酸および/またはオキソメチルブタン酸、アセト酢酸、ヘキサデセノイル−エイコサテトラエノイル−sn−グリセロール、スフィンゴシン−1−リン酸塩、スフィンガニン−1−リン酸塩およびビタミンD3誘導体を含む複数の代謝物のバイオマーカーの存在量が入力されていることを特徴とする請求項20に記載のコンピュータプログラム。
【請求項23】
妊娠高血圧腎症の危険性の前記定量的推定値を決定するステップが、多変量判別式PLS−DAモデルを使用する妊娠高血圧腎症の可能性の決定を含むことを特徴とする請求項20または21に記載のコンピュータプログラム。
【請求項24】
請求項20から23のいずれか一項に記載のコンピュータプログラムを格納していることを特徴とするコンピュータプログラムの記録媒体。
【請求項25】
請求項1から16のいずれか一項に記載のアッセイをコンピュータに遂行させるプログラム命令を含むことを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−515255(P2013−515255A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545311(P2012−545311)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【国際出願番号】PCT/EP2010/070446
【国際公開番号】WO2011/080170
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
2.UNIX
3.PENTIUM
【出願人】(512162074)ユニバーシティ カレッジ コーク ナショナル ユニバーシティ オブ アイルランド コーク (1)
【Fターム(参考)】