説明

媒体処理装置

【課題】決済を行うときに、利用者が煩わしさを感じることなく、使用する電子決済の種別を簡単に選択することができ、利用者の利便性の向上を図った媒体処理装置を提供する。
【解決手段】無線通信部12が、媒体3に記録されている電子決済に用いる決済情報を、当該媒体3との無線通信により読み取る。表示13では、媒体3から読み取った決済情報毎に、電子決済の種別を表示する。そして、操作部14において、表示している種別の電子決済の中から、いずれかの選択を受け付け、選択された種別の電子決済について、前記読取手段が読み取った決済情報を上位装置である取引処理装置2に通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、媒体に記録されている電子決済に用いる決済情報を読み取り、読み取った決済情報を上位装置に通知する媒体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、取引等の決済が電子マネーで行える電子決済システムがあった。電子マネーとは、ICチップに価値情報として記録されている決済情報である。最近では、この決済情報を記録するICチップを備えた電子マネー機能付携帯電話の普及により、取引等の決済を電子マネーで行う利用者が増加している。電子マネー機能付携帯電話は、クレジットカード会社等から配信される決済機能アプリケーションプログラム(以下、決済機能アプリと言う)をダウンロードすることによって、ダウンロードした決済機能アプリによる種別の電子決済が行える。電子マネー(決済情報)は、電子決済の種別毎に異なる。すなわち、電子マネー機能付携帯電話は、クレジットカード会社等から配信される複数の決済機能アプリをダウンロードすることによって、複数種別の電子決済が行える。
【0003】
この電子決済は、POS端末等の取引処理装置に接続された媒体処理装置が、電子マネーを記録した電子マネー機能付携帯電話や、ICカード等の媒体と無線通信を行い、媒体が記憶している電子マネーを読み取り、読み取った電子マネーを取引処理装置に通知する。取引処理装置は、媒体処理装置から通知された電子マネーで取引等の決済を行い、処理結果を媒体処理装置に通知する。媒体処理装置は、取引処理装置からの通知にしたがって、媒体に記録されている今回の決済に使用された電子マネーを更新する。
【0004】
現在、店舗等で利用できる電子マネーの種別が異なっているのが現状である。電子マネー機能付携帯電話では、上述したように、ダウンロードしている決済機能アプリ毎に、その種別の電子マネーで決済が行えるのであるが、今回の決済に使用する電子マネーの種別(電子決済の種別)を、利用者の意志に関係なく取引処理装置側で勝手に決定すると、利用者の意に反した種別の電子マネーで決済が行われることがある。そこで、媒体側で決済に使用する電子マネーの種別に対して優先順位の登録が行え、取引処理装置がこの優先順位に基づいて今回の決済に使用する電子マネーの種別を決定することが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−151011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、決済に使用する電子マネーの種別に対して優先順位を登録する構成では、登録している優先順位に基づいて、決済に使用する電子マネーの種別が選択されることになるため、利用者が決済するときの状況に応じて使用する電子マネーの種別を選択することができないという問題がある。このことから、決済を行うときに、利用者が今回の決済で使用する電子マネーの種別を指定するのが望ましいのであるが、この場合には、利用者が使用できる電子マネーの種別と、今回取引する店舗等で利用できる電子マネーの種別を確認し、今回の決済で使用する電子マネーの種別を選択することになる。すなわち、利用者が、決済機能アプリをダウンロードしたことで使用可能になった電子マネーの種別や、今回取引する店舗等で利用できる電子マネーの種別の確認等を行わなければならず、利用者に煩わしさを感じさせるという問題がある。
【0006】
この発明の目的は、決済を行うときに、利用者が煩わしさを感じることなく、使用する電子決済の種別を簡単に選択することができ、利用者の利便性の向上を図った媒体処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の媒体処理装置は、上記課題を解決し、その目的を達するために、以下のように構成している。
【0008】
読取手段が、媒体に記録されている電子決済に用いる決済情報を、当該媒体との無線通信により読み取る。表示手段が、前記読取手段が読み取った決済情報毎に、電子決済の種別を表示する。そして、選択受付手段が前記表示手段が表示している種別の電子決済の中から、いずれかの選択を受け付け、通知手段が前記選択受付手段が受け付けた種別の電子決済について、前記読取手段が読み取った決済情報を上位装置に通知する。
【0009】
このように、表示手段において利用できる電子決済の種別を表示する構成としているので、利用者は電子決済が行える電子決済の種別を簡単に判断することができる。したがって、決済を行うときに、煩わしさを感じることなく、使用する電子決済の種別を簡単に選択することができる。
【0010】
なお、媒体処理装置は、対応していない種別の電子決済にかかる決済情報を読み取ったときには、その決済情報については無視すればよい。
【0011】
、また、前記表示手段、利用可能な電子決済の種別毎にランプを設け、前記読取手段が決済情報を読み取った電子決済の種別に対応するランプを点灯させる簡単な構成であってもよい。前記表示手段を、このような簡単な構成で実現すれば、本体のコストアップも抑えられる。
【0012】
さらに、前記読取手段が決済情報を読み取った電子決済の種別が1つであった場合には、前記選択受付手段による選択を受け付けることなく、前記通知手段に前記読取手段が読み取った決済情報を上位装置に通知することで、利用者に無駄な選択操作を行わせることがなく、利用者の利便性を一層向上させることができる。また、この場合には、表示手段における表示を禁止してもよい。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、決済を行うときに、利用者が煩わしさを感じることなく、使用する電子決済の種別を簡単に選択することができ、利用者の利便性の向上が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の実施形態である媒体処理装置について説明する。
【0015】
図1は、この発明の実施形態である媒体処理装置を適用した決済システムの構成を示す図である。この決済システムは、媒体処理装置1と、取引処理装置2と、を備えている。媒体処理装置1と、取引処理装置2と、はデータ通信ラインで接続されている。媒体処理装置1は、電子決済に用いる電子マネー(決済情報)を記録した、非接触式ICカードや、電子マネー機能付携帯電話等の媒体3と、無線通信を行って、この媒体3に記録されている電子マネーの読み取りや、記録されている電子マネーの更新(書き換え)を行う。ここでは、媒体3を、電子マネー機能付携帯電話として説明する。電子マネー機能付携帯電話は、クレジットカード会社等から配信される決済機能アプリケーションプログラム(以下、決済機能アプリと言う)をダウンロードすることによって、ダウンロードした決済機能アプリによる種別の電子決済が行える。電子マネーは、使用できる電子決済の種別毎に異なる。すなわち、電子マネー機能付携帯電話は、ダウンロードした決済機能アプリ毎に電子マネーを記憶することができ、ダウンロードした決済機能アプリ毎に対応する種別の電子決済が行える。取引処理装置2は、取引する商品の登録等を行うPOS端末である。特に図示していないが、取引処理装置2は、店舗サーバに接続されている。また、店舗サーバは、専用回線や公衆回線を介して決済センタ(不図示)に接続されている。電子決済で処理された取引情報は、取引処理装置1から決済センタに送られる。取引処理装置2が、媒体処理装置1の上位装置である。
【0016】
図2は、この媒体処理装置の操作面を示す図である。図3は、この媒体処理装置の主要部の構成を示すブロック図である。媒体処理装置1は、制御部11と、無線通信部12と、表示部13と、操作部14と、上位通信部15と、を備えている。制御部11は、本体各部の動作を処理し、後述する処理を実行する。無線通信部12は、媒体3と無線通信を行って、この媒体に記録されている決済情報の読み取りや、記録されている決済情報の更新を行う。無線通信部12は、本体操作面に設けられたアンテナ12aに近接された媒体3と無線通信が行える。すなわち、アンテナ12aから数cmの範囲が、無線通信エリアである。表示部13は、利用可能な種別の電子決済毎に、ランプ13aを有している。また、各ランプ13aに対応する電子決済の種別を本体正面に表記している。表示部13は、無線通信部12が媒体3から読み取った電子マネーの種別毎に、対応する種別の電子決済に応じたランプ13aを点灯する。また、操作部14は、ランプ13a毎に操作ボタン14aを有している。この操作ブタン14は、対応するランプ13aについての電子決済の種別の表記の下に配置されており、表記位置を押下することにより、対応する操作ボタン14aの操作が行える。上位通信部15は、データ通信ラインで接続された上位装置である取引処理端末2との通信を制御する。
【0017】
この媒体処理装置1は、無線通信部12で媒体3から読み取った電子マネーの種別毎に、表示部13の対応するランプ13aを点灯する。そして、点灯しているランプ13aに対応するいずれかの操作ボタン14aが操作されると、操作された操作ボタン14aに対応する種別の電子決済にかかる電子マネーを上位装置である取引処理装置2に通知する。ここで、取引処理装置2に通知する電子マネーは、今回媒体3から読み取った決済情報である。
【0018】
なお、媒体処理装置1は、媒体3から読み取った電子マネーが、利用できる種別のものでなければ、この種別の電子マネーについては無視する。また、媒体処理装置1は、利用できる種別の電子決済にかかる電子マネーが、媒体3から1つしか読み取れなかったときには、操作ボタン14aが操作されるのを待つことなく、その電子マネーを取引処理装置2に送信する。この場合には、媒体3から読み取った電子マネーに対応するランプ13aを点灯させなくてもよい。
【0019】
媒体処理装置1は、電子マネーを通知した取引処理装置2から、媒体3に記録されている電子マネーの更新指示があると、媒体3に対して電子マネーの更新(書き換え)を指示する。これにより、媒体3が記録している電子マネーを更新する。
【0020】
以下、この媒体処理装置1の動作の詳細について説明する。図4は、この媒体処理装置の動作を示すフローチャートである。媒体処理装置1は、上位装置である取引処理装置2から電子決済に用いる電子マネーの読み取り指示があるのを待つ(s1)。
【0021】
取引処理装置2は、取引する商品等にかかる取引データの入力が行われ、取引の決済を電子決済で行う旨の入力がなされると、媒体処理装置1に対して電子マネーの読み取りを指示する。媒体処理装置1は、上位通信部15で取引処理装置2からの電子マネーの読み取り指示を受信すると、無線通信部12での媒体3との無線通信を開始する(s2)。このとき、利用者が所持している媒体3を無線通信部12のアンテナ12aにかざし、この媒体3を無線通信部12の無線通信エリア内に位置させる。媒体処理装置1は、s2で無線通信エリア内に位置する媒体3に対して、応答を要求するポーリングコマンドの送信を開始し、媒体3からの応答があるまで、ポーリングコマンドを一定時間間隔で繰り返し送信する。利用者によって、無線通信部12の無線通信エリア内に位置された媒体3がこのポーリングコマンドを受信し、応答する。
【0022】
媒体処理装置1は、媒体3からの応答を受信すると(s3)、その媒体3に対して電子決済に使用する電子マネーの送信を要求する(s4)。媒体3は、媒体処理装置1の要求に対して、電子マネーを送信する。このとき、媒体3は、記録している電子マネーの種別毎に、その電子マネーにかかる情報を媒体処理装置1に送信する。媒体処理装置1は、媒体3から送信されてきた電子マネーにかかる情報を受信する毎に(s5)、受信した電子マネーに対応する電子決済の種別を判別する(s6)。また、媒体処理装置1は、s6で電子決済の種別が判別できた電子マネーにかかる情報を、一時的に制御部11に設けられているメモリ(不図示)に記憶する(s7、s8)。一方、媒体処理装置1は、s6で電子決済の種別が別できなかった電子マネーを無視する。s6で電子決済の種別が判別できない電子マネーは、媒体処理装置1が対応していない種別の電子決済にかかる電子マネーであるので、無視しても問題はない。
【0023】
媒体処理装置1は、媒体3からの電子マネーの受信が完了すると(s9)、今回判別できた電子決済の種別が1つであったかどうかを判定する(s10)。媒体処理装置1は、今回判別できた電子決済の種別が1つであれば、この種別の電子決済についてs8で記憶した電子マネーを取引処理装置2に通知する(s11)。また、媒体処理装置1は、今回判別できた電子決済の種別が2つ以上であれば、今回判別できた電子決済の種別毎に、対応するランプ13aを点灯し(s12)、ここで点灯したランプ13aに対応するいずれかの操作ボタン14aが操作されるのを待つ(s13)。s12では、今回判別できなかった種別の電子決済に対応するランプ13aについては、消灯状態を保持する。
【0024】
このように、媒体処理装置1は、決済が複数の種別の電子決済で行えるとき、決済が行える種別の電子決済に対応するランプ13aを点灯する。また、上述したように、本体正面には、各ランプ13aに対応する電子決済の種別が表記されている。したがって、利用者は、決済が行える種別の電子決済を簡単に認識できる。
【0025】
媒体処理装置1は、今回判別できたいずれかの種別の電子決済に応じた操作ボタン14aが利用者によって操作されると、今回操作された操作ボタン14aに対応する種別の電子決済にかかる電子マネーをメモリから読み出して、取引処理装置2に通知する(s14)。すなわち、利用者は、操作ボタン14aを操作することによって、今回の取引を決済する電子決済の種別を選択する。このとき、媒体処理装置1は、利用者によって選択されなかった種別の電子決済にかかる電子マネー(s8で記憶した電子マネー)をメモリから破棄する。
【0026】
取引処理装置2では、媒体処理装置1がs11、またはs14で通知した電子マネーを用いて、取引の決済が行われる。また、媒体処理装置装置1に対して、媒体3が記憶している決済情報の書き換えを指示する。媒体処理装置1は、取引処理装置2から媒体3が記憶している電子マネーの書換指示があると(s15)、媒体3に対して電子マネーの書き換えを指示する(s16)。媒体3は、この指示にしたがって、記録している電子マネーを書き換え、媒体処理装置1に完了通知を送信する。s15で、書き換えを指示する電子マネーは、今回の決済で使用した種別の電子決済にかかる電子マネーであって、今回の決済で使用していない種別の電子決済にかかる電子マネーまで書き換えを指示することはない。
【0027】
媒体処理装置1は、媒体3からの電子マネーの書換完了にかかる通知を受信すると(s17)、無線通信部12における媒体3との無線通信を停止し(s18)、s1に戻る。
【0028】
このように、媒体処理装置1では、利用者が複数の種別の電子決済が行える媒体3を用いて電子決済を行う場合に、利用可能な電子決済の種別を利用者に簡単に認識させることができるとともに、使用する種別の電子決済を簡単に選択させることができる。したがって、決済を行うときに、利用者が煩わしさを感じさせることがなく、利用者の利便性の向上が図れる。
【0029】
また、決済が行える種別の電子決済が1つである媒体3であれば、利用者による電子決済の種別の選択を不要にしているので、利用者に無駄な操作を行わせることがなく、利用者の利便性について一層の向上が図れる。また、決済が行える種別の電子決済が1つである媒体3である場合に、その種別に対応するランプ13aを点灯させるかどうかについてはどちらでもよい。
【0030】
また、上記の説明では、媒体3がダウンロードした決済機能アプリ毎に、対応する種別の電子決済が行える電子マネー機能付携帯電話であることを前提にして説明したが、媒体3は特定の種別の電子決済が行える非接触式ICカードであってもよい。また、この種の非接触式ICカードを複数枚収納した財布等が無線通信エリアに位置されたときにも、媒体処理装置1は、非接触ICカード毎に電子マネーを受信し、利用可能な種別の電子決済に対応するランプ13aを点灯させ、利用可能な電子決済の種別を利用者に簡単に認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明の実施形態である媒体処理装置を適用した決済システムの構成を示す図である。
【図2】媒体処理装置の操作面を示す図である。
【図3】媒体処理装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【図4】この媒体処理装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0032】
1−媒体処理装置
2−取引処理装置
3−媒体
11−制御部
12−無線通信部
12a−アンテナ
13−表示部
13a−ランプ
14−操作部
14a−操作ボタン
15−上位通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に記録されている電子決済に用いる決済情報を、当該媒体との無線通信により読み取る読取手段と、
前記読取手段が読み取った決済情報毎に、電子決済の種別を表示する表示手段と、
前記表示手段が表示している種別の電子決済の中から、いずれかの選択を受け付ける選択受付手段と、
前記選択受付手段が受け付けた種別の電子決済について、前記読取手段が読み取った決済情報を上位装置に通知する通知手段と、を備えた媒体処理装置。
【請求項2】
前記表示手段は、前記読取手段が決済情報を読み取った電子決済の種別毎に、その種別に対応するランプを点灯させる手段である、請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項3】
前記通知手段が決済情報を通知した上位装置からの指示にしたがって、媒体に記録されている決済情報を更新する更新手段を備えた、請求項1、または2に記載の媒体処理装置。
【請求項4】
前記読取手段が決済情報を読み取った電子決済の種別が1つであった場合には、前記選択受付手段による選択を受け付けることなく、前記通知手段に前記読取手段が読み取った決済情報を上位装置に通知させる制御手段を備えた請求項1〜3のいずれかに記載の媒体処理装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記読取手段が決済情報を読み取った電子決済の種別が1つであった場合には、前記表示手段による電子決済の種別の表示を禁止する手段である、請求項4に記載の媒体処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−25929(P2009−25929A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−186516(P2007−186516)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】