説明

媒体処理装置

【課題】構成を簡素化しながらも、媒体へのサーマルヘッドの当接位置の調整が行うことが可能で、媒体への印字品質を確保することが可能な媒体処理装置を提供すること。
【解決手段】媒体処理装置は、媒体2が搬送される媒体搬送路11と、媒体2に印字を行うサーマルヘッド3と、媒体搬送路11を挟んでサーマルヘッド3に対向配置される対向部5と、サーマルヘッド3を支持する支持部21と、支持部21に取り付けられ、サーマルヘッド3が対向部5に当接する方向および対向部5から離れる方向へサーマルヘッド3を移動させる駆動源20と、支持部21と対向部5とが取り付けられる本体部とを備えている。この媒体処理装置では、媒体の搬送方向Xにおける本体部への支持部21の取付位置の調整が可能であり、また、媒体の搬送方向Xにおける本体部への支持部21の取付位置を調整することで、対向部5へのサーマルヘッド3の当接位置の調整が可能になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱方式で媒体に印字を行うサーマルヘッドを備える媒体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクリボンに塗布されたインクをサーマルヘッドで加熱して、カード等の媒体にインクを転写させて印字を行う熱転写方式のカード印刷装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載のカード印刷装置では、ブラケットに固定されたサーマルヘッドが補助支持部材に固定され、この補助支持部材が支持部材に固定されている。また、このカード印刷装置では、支持部材は上下動可能となっており、支持部材が下降すると、サーマルヘッドがカードに当接してカードへの印字が行われる。
【0003】
また、このカード印刷装置では、補助支持部材の上部に細長い長孔がカードの移動方向と直交する方向に貫通するように形成され、補助支持部材の下部に丸孔がカードの移動方向と直交する方向に貫通するように形成されており、長孔には、ブラケットを補助支持部材に固定するためのネジが挿通され、丸孔には、ブラケットに固定されるピンが挿通されている。そのため、このカード印刷装置では、丸孔に挿通されるピンを中心にして、長孔の範囲内で補助支持部材に対してブラケットを相対回動させた後に、補助支持部材にブラケットを固定することが可能になっている。また、このカード印刷装置では、補助支持部材に対してブラケットを相対回動させることで、サーマルヘッドに形成される発熱抵抗体が最適接触位置でカードに当接するように、カードへのサーマルヘッドの当接角度の調整が行われている。
【0004】
なお、カード印刷装置等に用いられるサーマルヘッドの取付構造として、サーマルヘッドを保持するヘッドブラケットを圧縮コイルバネで付勢することで、サーマルヘッドに対向配置されるプラテンローラに向かってサーマルヘッドを付勢しているサーマルヘッドの取付構造が知られている(たとえば、特許文献2参照)。この特許文献2に記載のサーマルヘッドの取付構造では、カードの搬送方向に直交するカードの幅方向において、均等な接触圧で、サーマルヘッドをカードに当接させることが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平5−18855号公報
【特許文献2】特開平5−50701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のカード印刷装置では、サーマルヘッドに形成される発熱抵抗体が最適接触位置でカードに当接するように、カードへのサーマルヘッドの当接角度の調整が行われているため、印字のムラやカスレがなく、かつ、適切な濃度でカードに印字を行うことが可能になる。すなわち、このカード印刷装置では、カードへの印字品質を確保することが可能になる。しかしながら、このカード印刷装置では、カードへのサーマルヘッドの当接角度の調整を行うために、ブラケット、ピンおよび補助支持部材等が設けられている。すなわち、このカード印刷装置では、カードへのサーマルヘッドの当接角度の調整を行わなければ不要となるブラケット、ピンおよび補助支持部材等が、サーマルヘッドとカードとの当接角度の調整を行うために設けられている。そのため、このカード印刷装置では、その分だけ装置の構成が複雑になる。
【0007】
そこで、本発明の課題は、構成を簡素化しながらも、媒体へのサーマルヘッドの当接位置の調整が行うことが可能で、媒体への印字品質を確保することが可能な媒体処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の媒体処理装置は、媒体が搬送される媒体搬送路と、感熱方式で媒体に印字を行うサーマルヘッドと、媒体搬送路を挟んでサーマルヘッドに対向配置される対向部と、サーマルヘッドを支持する支持部と、支持部に取り付けられ、サーマルヘッドが対向部に当接する方向および対向部から離れる方向へサーマルヘッドを移動させる駆動源と、支持部と対向部とが取り付けられる本体部とを備え、媒体の搬送方向における本体部への支持部の取付位置の調整が可能であり、媒体の搬送方向における本体部への支持部の取付位置を調整することで、対向部へのサーマルヘッドの当接位置の調整が可能になっていることを特徴とする。
【0009】
本発明の媒体処理装置では、媒体の搬送方向における本体部への支持部の取付位置の調整が可能であり、また、媒体の搬送方向における本体部への支持部の取付位置を調整することで、対向部へのサーマルヘッドの当接位置の調整が可能になっている。そのため、本体部へ支持部を取り付けるための構成を用いて、媒体搬送路を挟んで対向配置される対向部へのサーマルヘッドの当接位置の調整を行うことが可能になる。すなわち、本体部へ支持部を取り付けるための構成を用いて、媒体へのサーマルヘッドの当接位置の調整を行うことが可能になる。したがって、媒体へのサーマルヘッドの当接位置の調整を行うための構成を別途、設けなくても、媒体へのサーマルヘッドの当接位置の調整が可能となる。その結果、本発明では、媒体処理装置の構成を簡素化しながらも、媒体へのサーマルヘッドの当接位置の調整が行うことが可能で、媒体への印字品質を確保することが可能になる。
【0010】
本発明において、媒体処理装置は、本体部へ支持部を取り付けるための複数の取付ネジを備え、支持部または本体部の一方には、取付ネジが挿通されるとともに媒体の搬送方向を長手方向とする少なくとも2個の長孔が形成され、支持部または本体部の他方には、長孔のそれぞれに係合する係合部が形成され、係合部には、取付ネジと係合するメネジが形成されていることが好ましい。このように構成すると、係合部を長孔に係合させた状態で、本体部に対して媒体の搬送方向に支持部をスライドさせることが可能になる。したがって、媒体の搬送方向における本体部への支持部の取付位置の調整が容易になる。すなわち、媒体へのサーマルヘッドの当接位置の調整が容易になる。
【0011】
本発明において、たとえば、支持部は、サーマルヘッドが固定されるヘッド固定部材と、駆動源が固定されるとともに本体部に固定される駆動源固定部材とを備え、ヘッド固定部材は、駆動源固定部材に回動可能に保持されている。
【0012】
本発明において、駆動源は、ソレノイドであり、支持部は、駆動源固定部材に取り付けられヘッド固定部材の回動中心となる回動中心軸を備え、ヘッド固定部材には、ソレノイドのプランジャに固定される固定ピンが係合する略四角形状または略U形状のピン係合溝と、回動中心軸が係合する略四角形状または略U形状の軸係合溝とが形成されていることが好ましい。このように構成すると、サーマルヘッドが媒体に当接しているときに、プランジャを中心にしてヘッド固定部材を回動させることが可能になる。したがって、ヘッド固定部材に固定されるサーマルヘッドの媒体への追従性を向上させることが可能になり、媒体への印字品質を向上させることが可能になる。また、このように構成すると、比較的容易に、ピン係合溝から固定ピンを取り外すことが可能になるとともに、軸係合溝から回動中心軸を取り外すことが可能になる。すなわち、比較的容易に、サーマルヘッドおよびヘッド固定部材を駆動源および駆動源固定部材から取り外すことが可能になる。したがって、サーマルヘッドの交換作業が容易になる。
【0013】
本発明において、媒体処理装置は、サーマルヘッドを対向部に向けて付勢するための付勢部材を備え、付勢部材は、媒体の搬送方向と媒体の厚さ方向とに直交する方向におけるヘッド固定部材の両端側のそれぞれに配置されていることが好ましい。このように構成すると、サーマルヘッドを媒体に追従させて、媒体の搬送方向と媒体の厚さ方向とに直交する方向において、均等な接触圧で、サーマルヘッドを媒体に当接させることが可能になる。
【0014】
本発明において、媒体処理装置は、サーマルヘッドを対向部に向けて付勢するための付勢部材を備え、サーマルヘッドが媒体に当接している状態では、サーマルヘッドと媒体との当接部分と、付勢部材と、回動中心軸とが媒体の搬送方向においてこの順番で配置されていることが好ましい。このように構成すると、サーマルヘッドの媒体への追従性を向上させるために、ヘッド固定部材に略四角形状または略U形状のピン係合溝と軸係合溝とが形成されている場合であっても、サーマルヘッドが媒体に当接したときに、駆動源固定部材に対してヘッド固定部材が浮き上がるのを防止することが可能になる。すなわち、付勢部材と、サーマルヘッドと媒体との当接部分と、回動中心軸とが媒体の搬送方向においてこの順番で配置されている場合には、サーマルヘッドが媒体に当接したときに、付勢部材の付勢力でサーマルヘッドと媒体との当接部分を支点として、駆動源固定部材に対してヘッド固定部材が浮き上がるが、サーマルヘッドと媒体との当接部分と、付勢部材と、回動中心軸とが媒体の搬送方向においてこの順番で配置されていると、駆動源固定部材に対してヘッド固定部材が浮き上がることがなくなる。したがって、所定の接触圧でサーマルヘッドを媒体に当接させることが可能になる。
【0015】
本発明において、媒体処理装置は、サーマルヘッドを対向部に向けて付勢するための付勢部材を備え、駆動源は、永久磁石を備えるソレノイドであり、ソレノイドのプランジャと永久磁石との吸着力によって、サーマルヘッドが対向部から離れている状態が維持され、プランジャと永久磁石との吸着状態が解除されると、付勢部材の付勢力によって、サーマルヘッドが媒体に当接している状態が維持されていることが好ましい。このように構成すると、サーマルヘッドが媒体に当接している状態およびサーマルヘッドが対向部から離れている状態では、ソレノイドに電流を供給する必要がなくなるため、媒体処理装置の省電力化を図ることが可能になる。また、サーマルヘッドが媒体に当接しているときには、媒体へ印字を行うための電流がサーマルヘッドに供給されるため、サーマルヘッドでの消費電流が大きくなるが、このように構成すると、サーマルヘッドが媒体に当接しているときにソレノイドに電流を供給する必要がなくなり、サーマルヘッドが媒体に当接しているときの媒体処理装置での消費電流を低減することが可能になる。また、サーマルヘッドが対向部から離れているときには、媒体処理装置は、待機状態にあるか、あるいは、媒体への印字処理以外の処理を行っているが、このように構成すると、サーマルヘッドが対向部から離れているときにソレノイドに電流を供給する必要がなくなり、待機時の媒体処理装置での消費電流を低減することや、印字処理以外の処理を行っているときの媒体処理装置での消費電流を低減することが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明の媒体処理装置では、構成を簡素化しながらも、媒体へのサーマルヘッドの当接位置の調整が行うことが可能で、媒体への印字品質を確保することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態にかかる媒体処理装置の斜視図である。
【図2】図1に示す媒体処理装置の、上ガイド部を開けた状態を示す斜視図である。
【図3】図1に示す媒体処理装置の内部に配置される印字ユニットとプラテンローラとを抜き出して示す側面図であり、(A)はサーマルヘッドがカードに当接している状態を示し、(B)はサーマルヘッドがプラテンローラから離れている状態を示す。
【図4】図1に示す媒体処理装置から印字ユニット等を取り外した状態の一部を示す斜視図である。
【図5】図3に示す印字ユニットおよびプラテンローラの斜視図であり、(A)はサーマルヘッドがプラテンローラに当接している状態を示し、(B)はサーマルヘッドがプラテンローラから離れている状態を示す。
【図6】図3に示す印字ユニットおよびプラテンローラを他の方向から示す斜視図である。
【図7】図3に示すヘッド固定部材の側面図である。
【図8】図3に示すサーマルヘッドのカードへの当接位置の調整時の状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
(媒体処理装置の概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる媒体処理装置1の斜視図である。図2は、図1に示す媒体処理装置1の、上ガイド部12を開けた状態を示す斜視図である。図3は、図1に示す媒体処理装置1の内部に配置される印字ユニット4とプラテンローラ5とを抜き出して示す側面図であり、(A)はサーマルヘッド3がカード2に当接している状態を示し、(B)はサーマルヘッド3がプラテンローラ5から離れている状態を示す。図4は、図1に示す媒体処理装置1から印字ユニット4等を取り外した状態の一部を示す斜視図である。
【0020】
本形態の媒体処理装置1は、たとえば、駐車場等に設置される発券機や清算機等の上位装置に搭載されて使用されるカードリーダであり、媒体としてのカード2に感熱方式で印字を行う印字機能を備えている。この媒体処理装置1は、図1〜図3に示すように、感熱方式でカード2に印字を行うサーマルヘッド3を有する印字ユニット4と、サーマルヘッド3に対向配置される対向部としてのプラテンローラ5と、磁気情報の再生や記録を行うための磁気ヘッド6と、媒体処理装置1内でカード2を搬送するための搬送ローラ7と、搬送ローラ7に対向配置されるパッドローラ8と、搬送ローラ7を駆動するためのローラ駆動機構9と、カード2が挿入、排出されるカード挿入排出部10とを備えている。
【0021】
カード2は、たとえば、厚さが0.18〜0.36mm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)カードである。このカード2の表面には、感熱方式によって印字が行われる感熱層またはロイコ、白濁等のリライト層(図示省略)が形成されている。また、カード2の裏面には、磁気情報が記録される磁気層または磁気ストライプ(図示省略)が形成されている。なお、カード2は、厚さが0.7〜0.8mm程度の塩化ビニール製のカードであっても良いし、所定の厚さの紙カード等であっても良い。
【0022】
本形態では、図1等のX方向にカード2が搬送される。すなわち、X方向は、カード2の搬送方向である。また、X方向に直交するZ方向は、媒体処理装置1内に取り込まれたときのカード2の厚さ方向であり、X方向とZ方向とに直交するY方向は、媒体処理装置1内に取り込まれたときのカード2の幅方向である。なお、以下の説明では、図1等のX1方向側を「前」側、X2方向側を「後(後ろ)」側、Y1方向側を「右」側、Y2方向側を「左」側、Z1方向側を「上」側、Z2方向側を「下」側とする。また、以下の説明では、図3の時計周りの回転方向を「時計方向」、反時計周りの回転方向を「反時計方向」とする。
【0023】
媒体処理装置1は、上述の構成に加え、カード2が搬送されるカード搬送路(媒体搬送路)11を形成する上ガイド部12と下ガイド部13と右側板14と左側板15とを備えており、上下方向における上ガイド部12と下ガイド部13との間であって、かつ、左右方向における右側板14と左側板15との間にカード搬送路11が形成されている。本形態では、上ガイド部12と下ガイド部13と右側板14と左側板15とによって、媒体処理装置1の本体部が構成されている。
【0024】
下ガイド部13の右端には、右側板14が固定され、下ガイド部13の左端には、左側板15が固定されている。また、上ガイド部12は、図2に示すように、下ガイド部13、右側板14および左側板15に対して、後端側を支点とする回動が可能となるように構成されている。具体的には、図4に示すように、右側板14の後端側および左側板15の後端側には、左右方向を軸方向とする軸16が固定されており、上ガイド部12の後端側は、軸16に回動可能に支持されている。すなわち、本形態の媒体処理装置1では、下ガイド部13に対して上ガイド部12が開閉可能となるように構成されており、上ガイド部12が軸16を中心にして反時計方向に回動すると、上ガイド部12が開き、上ガイド部12が軸16を中心にして時計方向に回動すると、上ガイド部12が閉じる。なお、軸16は、上ガイド部12を反時計方向へ付勢するネジリコイルバネ17に挿通されている。
【0025】
印字ユニット4は、上ガイド部12に取り付けられている。この印字ユニット4および印字ユニット4の周辺部の詳細な構成については後述する。
【0026】
プラテンローラ5は、下ガイド部13に回転可能に取り付けられている。具体的には、プラテンローラ5は、左右方向を軸方向とする回転が可能となるように下ガイド部13に取り付けられている。また、上述のように、プラテンローラ5は、サーマルヘッド3に対向配置されている。具体的には、プラテンローラ5は、カード搬送路11を挟んでサーマルヘッド3に対向配置されており、カード搬送路11にカード2がないときには、サーマルヘッド3とプラテンローラ5とは当接可能となっている。
【0027】
磁気ヘッド6は、下ガイド部13に取り付けられている。搬送ローラ7は、下ガイド部13に回転可能に取り付けられ、パッドローラ8は、上ガイド部12に回転可能に取り付けられている。ローラ駆動機構9は、搬送ローラ7の回転軸に固定されるプーリ、プーリに架け渡されるベルトおよび駆動モータ等を備えており、下ガイド部13に取り付けられている。カード挿入排出部10は、図1等に示すように、上ガイド部12、下ガイド部13、右側板14および左側板15の前端に固定されている。
【0028】
(印字ユニットおよびその周辺部の構成)
図5は、図3に示す印字ユニット4およびプラテンローラ5の斜視図であり、(A)はサーマルヘッド3がプラテンローラ5に当接している状態を示し、(B)はサーマルヘッド3がプラテンローラ5から離れている状態を示す。図6は、図3に示す印字ユニット4およびプラテンローラ5を他の方向から示す斜視図である。図7は、図3に示すヘッド固定部材28の側面図である。図8は、図3に示すサーマルヘッド3のカード2への当接位置の調整時の状態を説明するための図である。
【0029】
印字ユニット4は、上述のサーマルヘッド3に加え、サーマルヘッド3がプラテンローラ5に当接する方向およびプラテンローラ5から離れる方向へサーマルヘッド3を移動させる駆動源としてのソレノイド20と、サーマルヘッド3を支持する支持部21と、サーマルヘッド3をプラテンローラ5に向けて付勢するための付勢部材としての引張りコイルバネ22とを備えている。この印字ユニット4は、複数の取付ネジ23によって、上ガイド部12に形成される複数の取付突起24(図4参照)に固定されている。本形態では、図4に示すように、4本の取付突起24が上ガイド部12に形成されており、4本の取付ネジ23によって、印字ユニット4が上ガイド部12に固定されている。
【0030】
本形態のサーマルヘッド3は、カード2の表面に直接、当接してカード2に印字を行ういわゆるダイレクト方式のサーマルヘッドである。図3に示すように、サーマルヘッド3の先端部(図3(A)の下端部)は、左右方向から見たときの形状が所定の曲率半径を有する円弧状となる曲面状に形成されている。なお、サーマルヘッド3は、インクリボンを介してカード2に当接してカード2に印字を行ういわゆる熱転写式のサーマルヘッドであっても良い。すなわち、サーマルヘッド3は、インクリボンに塗布されたインクを加熱してカード2に印字を行う熱転写式のサーマルヘッドであっても良い。
【0031】
ソレノイド20は、図示を省略するコイルに電流が供給されると前後方向に移動するプランジャ(鉄心)25を備えている。本形態では、ソレノイド20の本体から前側に向かってプランジャ25が突出するように、ソレノイド20が配置されている。また、ソレノイド20の本体内部には、プランジャ25が引っ込んだ状態(すなわち、プランジャ25がソレノイド20の後端側に移動した状態)を維持するための永久磁石(図示省略)が配置されている。すなわち、本形態のソレノイド20は、プランジャ25が引っ込んだ状態での常時通電が不要なソレノイドであり、プランジャ25が突出した状態でワンショットのパルス通電を行えば、その後、コイルに電流を供給しなくても、プランジャ25と永久磁石との吸着力で、プランジャ25が引っ込み、かつ、プランジャ25と永久磁石との吸着力で、プランジャ25が引っ込んだ状態(プランジャ25の吸着状態)が維持される。なお、本形態の印字ユニット4は、後述のように、引張りコイルバネ22の付勢力によってプランジャ25が突出した状態が維持されるように構成されており、プランジャ25が引っ込んだ状態でワンショットのパルス通電を行えば、その後、コイルに電流を供給しなくても、引張りコイルバネ22の付勢力で、プランジャ25が突出し、かつ、引張りコイルバネ22の付勢力で、プランジャ25が突出した状態が維持される。
【0032】
プランジャ25の前端側には、左右方向を軸方向とする固定ピン26が固定されている。具体的には、固定ピン26の両端側がプランジャ25の左右方向に突出するように、プランジャ25の前端側に固定ピン26が固定されている。
【0033】
支持部21は、ソレノイド20が固定される駆動源固定部材27と、サーマルヘッド3が固定されるヘッド固定部材28とを備えている。駆動源固定部材27には、ヘッド固定部材28を回動可能に支持する回動中心軸29が取り付けられており、ヘッド固定部材28は、駆動源固定部材27に回動可能に保持されている。
【0034】
駆動源固定部材27は、たとえば、鋼板等の金属板で形成されており、ソレノイド20が固定される駆動源固定部27aと、回動中心軸29が取り付けられる2個の軸取付部27bとを備えている。X方向とY方向とから形成される平面をXY平面としたとき、駆動源固定部27aは、上ガイド部12が閉じている状態(図1の状態)でXY平面に略平行な略矩形状に形成されており、駆動源固定部27aの上面にソレノイド20が固定されている。軸取付部27bは、Z方向とX方向とから形成されるZX平面に略平行に形成されるとともに、駆動源固定部27aの左右両端のそれぞれから下側に向かって折れ曲がるように形成されている。
【0035】
駆動源固定部27aの四隅の近傍には、図6に示すように、前後方向を長手方向とする長孔27cが駆動源固定部27aを貫通するように形成されている。すなわち、駆動源固定部27aには、4個の長孔27cが形成されている。この長孔27cには、取付ネジ23が上側から挿通されている。軸取付部27bの前端側には、回動中心軸29の両端側のそれぞれが挿通されて取り付けられる取付孔が軸取付部27bを貫通するように形成されている。
【0036】
ヘッド固定部材28は、たとえば、樹脂で形成されており、サーマルヘッド3が固定されるヘッド固定部28aと、固定ピン26が係合するピン係合溝28bと回動中心軸29が係合する軸係合溝28cとが形成される溝形成部28dとを備えている。本形態では、ヘッド固定部28aによってヘッド固定部材28の前端側が構成され、溝形成部28dによってヘッド固定部材28の後端側が構成されている。
【0037】
ヘッド固定部28aは、下端側が開口する中空の略直方体状に形成されており、その内部にサーマルヘッド3が固定されている。具体的には、サーマルヘッド3の下端側がヘッド固定部28aの下端よりも下側に突出するように、ヘッド固定部28aの内部にサーマルヘッド3が固定されている。
【0038】
ヘッド固定部28aの前面には、サーマルヘッド3がプラテンローラ5に当接する方向へ移動していることを検出するための略板状の被検出部28eが前側に向かって突出するように形成されている。本形態では、図3(A)に示すように、印字ユニット4の前方に配置されるセンサ32の発光素子(図示省略)と受光素子(図示省略)との間を被検出部28eが遮ると、サーマルヘッド3がプラテンローラ5に当接する方向へ移動していることが検出される。
【0039】
ヘッド固定部28aの左右両側面のそれぞれには、引張りコイルバネ22の上端部が係合するバネ係合部28fが形成されている。具体的には、ヘッド固定部28aの左右両側面の上端側に、バネ係合部28fが形成されている。
【0040】
ピン係合溝28bは、溝形成部28dの上端側に形成されている。具体的には、図5に示すように、ZX平面と略平行で、かつ、左右方向に所定の間隔をあけた状態で形成される2枚の板状部28gのそれぞれにピン係合溝28bが形成されている。ピン係合溝28bは、左右方向で板状部28gを貫通するように形成されるとともに、上端側が開口するように形成されている。また、ピン係合溝28bは、略四角形状に形成されている。すなわち、ピン係合溝28bは、図7に示すように、左右方向から見たときの形状が略四角形状となる四角溝状に形成されている。
【0041】
図5に示すように、ピン係合溝28bの中には固定ピン26の両端側のそれぞれが配置されており、ピン係合溝28bに固定ピン26の両端側のそれぞれが係合している。本形態では、ピン係合溝28bの前後方向の幅は、固定ピン26の直径よりも大きくなっており、ピン係合溝28bの側面と固定ピン26との間には隙間が形成されている。
【0042】
軸係合溝28cは、溝形成部28dの下端側に形成されている。具体的には、図6に示すように、溝形成部28dの下端側の左右両端に形成される2個のブロック部28hのそれぞれに軸係合溝28cが形成されている。軸係合溝28cは、左右方向でブロック部28hを貫通するように形成されるとともに、下端側が開口するように形成されている。また、軸係合溝28cは、略U形状に形成されている。すなわち、軸係合溝28cは、図7に示すように、左右方向から見たときの形状が略U形状となるU溝状に形成されている。
【0043】
図6に示すように、軸係合溝28cの中には回動中心軸29の両端側のそれぞれが配置されており、軸係合溝28cに回動中心軸29の両端側のそれぞれが係合している。具体的には、回動中心軸29の両端側に形成される径の小さな小径部29aが軸係合溝28cの中に配置されている。本形態では、軸係合溝28cの前後方向の幅は、小径部29aの直径よりもわずかに大きくなっている。また、軸係合溝28cの上端側に配置される軸係合溝28cの底面の曲率半径は、小径部29aの半径よりもわずかに大きくなっている。そのため、軸係合溝28cの側面と小径部29aとの間にはわずかな隙間が形成されている。具体的には、カード2に印字する際に、カード2に対してサーマルヘッド3がブレない程度のほんのわずかな隙間であって、かつ、ヘッド固定部材28の回動に支障がない程度のほんのわずかな隙間(たとえば、0.1mm以下の隙間)が軸係合溝28cの側面と小径部29aとの間に形成されている。
【0044】
本形態では、左右方向における2枚の板状部28gの間隔は、プランジャ25の直径よりも大きくなっている。すなわち、2枚の板状部28gとプランジャ25との間には隙間が形成されている。また、左右方向における小径部29aの長さは、左右方向におけるブロック部28hの幅よりも大きくなっている。すなわち、左右方向における小径部29aの両端に形成される、回動中心軸29の小径部29a以外の部分と小径部29aとの間の段差面29b(図6参照)と、左右方向におけるブロック部28hの両端面との間には隙間が形成されている。
【0045】
引張りコイルバネ22の上端側は、ヘッド固定部材28のバネ係合部28fに係合している。すなわち、引張りコイルバネ22は、ヘッド固定部材28の左右両端側のそれぞれに配置されている。また、引張りコイルバネ22の下端側は、上ガイド部12に形成されるバネ係合部12a(図4参照)に係合している。本形態では、引張りコイルバネ22によって、ヘッド固定部材28が回動中心軸29を中心にして時計方向に付勢されている。すなわち、引張りコイルバネ22によって、サーマルヘッド3がプラテンローラ5に向かって付勢されている。
【0046】
取付突起24は、図4に示すように、上側に向かって突出する略円筒状に形成されている。この取付突起24の上端には、駆動源固定部材27の長孔27cに係合する係合部24aが上側に向かってわずかに突出するように形成されている。係合部24aの直径は、左右方向における長孔27cの幅よりもわずかに小さくなっている。また、係合部24aの直径は、取付突起24の他の部分の直径よりも小さくなっている。そのため、長孔27cの中に係合部24aが配置された状態では、駆動源固定部27aの下面は、係合部24aの径方向外側に広がる段差面に当接している。また、取付突起24の内周面には、取付ネジ23と係合するメネジが形成されている。なお、本形態の取付ネジ23はセルフタップネジであり、取付ネジ23を取付突起24の内周面にねじ込む際に、取付突起24の内周面にメネジが形成される。すなわち、組立前の取付突起24の内周面には、メネジが形成されておらず、組立時に取付突起24の内周面に、メネジが形成される。
【0047】
印字ユニット4では、図3(B)、図5(B)に示すように、プランジャ25が引っ込んでいるとき(すなわち、ソレノイド20の本体内部に配置される永久磁石とプランジャ25とが吸着しているとき)に、サーマルヘッド3がプラテンローラ5から離れている。すなわち、プランジャ25が引っ込んでいるときに、サーマルヘッド3はカード搬送路11から退避している。この状態で、図3(A)、図5(A)に示すように、ソレノイド20の本体から前側に向かってプランジャ25が突出すると(すなわち、ワンショットのパルス通電により永久磁石とプランジャ25との吸着状態が解除されると)、回動中心軸29を中心にして、ヘッド固定部材28が時計方向へ回動して、サーマルヘッド3がプラテンローラ5に当接する方向へ移動する。すなわち、プランジャ25が突出すると、サーマルヘッド3がカード2に当接する方向へ移動する。
【0048】
本形態では、ソレノイド20の本体内部に配置される永久磁石とプランジャ25との磁気的吸着力によって、サーマルヘッド3がカード搬送路11から退避している状態が維持されている。また、引張りコイルバネ22の付勢力によって、サーマルヘッド3がカード2に当接している状態が維持されている。また、本形態では、ヘッド固定部材28を時計方向および反時計方向へ回動させるときの初期動作時にワンショットのパルス通電(たとえば、100ms程度のパルス通電)が行われ、その後は、永久磁石とプランジャ25との磁気的吸着力によって、サーマルヘッド3がカード搬送路11から退避し、また、引張りコイルバネ22の付勢力によって、サーマルヘッド3がカード2に当接する方向へ移動する。
【0049】
また、本形態では、図3(A)に示すように、サーマルヘッド3がカード2に当接している状態では、サーマルヘッド3とカード2との当接部分と、引張りコイルバネ22と、回動中心軸29とが前後方向(カード2の搬送方向)においてこの順番で配置されている。具体的には、サーマルヘッド3がカード2に当接している状態では、サーマルヘッド3とカード2との当接部分と、ヘッド固定部材28に対する引張りコイルバネ22の作用点と、ヘッド固定部材28の回動中心位置とが前側から後ろ側に向かって、この順番で配置されている。すなわち、サーマルヘッド3がカード2に当接している状態では、サーマルヘッド3とカード2との当接部分を通過する上下方向に平行な仮想線L1と、引張りコイルバネ22の中心を通過する上下方向に平行な仮想線L2と、回動中心軸29の中心を通過する上下方向に平行な仮想線L3とは、前側から後ろ側に向かってこの順番で配置されている。
【0050】
さらに、本形態では、前後方向における上ガイド部12への支持部21の取付位置の調整が可能となっている。すなわち、本形態では、取付突起24の係合部24aを駆動源固定部材27の長孔27cに係合させた状態で支持部21を前後方向にスライドさせて、前後方向における上ガイド部12への印字ユニット4の取付位置の調整を行ってから、取付ネジ23によって、印字ユニット4が上ガイド部12に固定される。
【0051】
また、本形態では、ヘッド固定部材28は、駆動源固定部材27に回動可能に保持されているため、前後方向における取付突起24への駆動源固定部材27の取付位置を調整することで(すなわち、前後方向における上ガイド部12への印字ユニット4の取付位置を調整することで)、プラテンローラ5へのサーマルヘッド3の当接位置(当接角度)の調整が可能となっている。すなわち、前後方向における上ガイド部12への印字ユニット4の取付位置を調整することで、図8の実線、破線および二点鎖線で示すように、カード2へのサーマルヘッド3の当接位置(当接角度)の調整が可能となっている。
【0052】
具体的には、たとえば、前後方向における上ガイド部12への印字ユニット4の取付位置が設計上の基準位置にある場合には、図8の実線で示すように、サーマルヘッド3の先端部の中心位置がカード2に当接する。すなわち、カード2へのサーマルヘッド3の当接位置は、サーマルヘッド3の先端部の中心位置となる。
【0053】
また、印字ユニット4の取付位置を設計上の基準位置よりも後ろ側にすることで、図8の破線で示すように、カード2へのサーマルヘッド3の当接位置は、サーマルヘッド3の先端部の中心位置よりも前側(図8の右側)の位置になる。すなわち、印字ユニット4の取付位置を後ろ側に移動させると、カード2へのサーマルヘッド3の当接位置とプラテンローラ5の中心とを結んだ線と、サーマルヘッド3の先端部の中心位置を通過する上下方向に平行な中心線CLとによって、角度θRが形成される。この角度θRは、印字ユニット4の取付位置を後ろ側に移動させたときの、カード2へのサーマルヘッド3の当接角度となる。なお、サーマルヘッド3は、引張りコイルバネ22によって、プラテンローラ5に向かって付勢されているため、印字ユニット4の取付位置を設計上の基準位置よりも後ろ側にした状態でサーマルヘッド3をカード2に当接させると、図8に示すように、カード2は、引張りコイルバネ22の付勢力によってプラテンローラ5の面に沿って撓む。そのため、カード2へのサーマルヘッド3の当接位置は、サーマルヘッド3の先端部の中心位置よりも前側の位置になる。
【0054】
また、印字ユニット4の取付位置を設計上の基準位置よりも前側にすることで、図8の二点鎖線で示すように、カード2へのサーマルヘッド3の当接位置は、サーマルヘッド3の先端部の中心位置よりも後ろ側(図8の左側)の位置になる。すなわち、印字ユニット4の取付位置を前側に移動させると、カード2へのサーマルヘッド3の当接位置とプラテンローラ5の中心とを結んだ線と、サーマルヘッド3の先端部の中心位置を通過する上下方向に平行な中心線CLとによって、角度θFが形成される。この角度θFは、印字ユニット4の取付位置を前側に移動させたときの、カード2へのサーマルヘッド3の当接角度となる。なお、サーマルヘッド3は、引張りコイルバネ22によって、プラテンローラ5に向かって付勢されているため、印字ユニット4の取付位置を設計上の基準位置よりも前側にした状態でサーマルヘッド3をカード2に当接させると、図8に示すように、カード2は、引張りコイルバネ22の付勢力によってプラテンローラ5の面に沿って撓む。そのため、カード2へのサーマルヘッド3の当接位置は、サーマルヘッド3の先端部の中心位置よりも後ろ側の位置になる。
【0055】
本形態では、カード2への印字品質が最適になるように(すなわち、印字のムラやカスレがなく、かつ、最適な濃度でカード2に印字を行うことができるように)、カード2へのサーマルヘッド3の当接位置が調整された後に、取付ネジ23によって、印字ユニット4が上ガイド部12に固定される。
【0056】
なお、本形態におけるカード2へのサーマルヘッド3の当接位置の調整方法の考え方は、上述した特許文献1に記載のカード印刷装置におけるカードへのサーマルヘッドの当接角度の調整方法の考え方と同じである。すなわち、本形態では、カード2へのサーマルヘッド3の当接位置を調整することで、カード2へのサーマルヘッド3の当接角度θR、θFも調整されるが、この当接角度θR、θFの調整方法は、上述した特許文献1に記載のカード印刷装置において、補助支持部材に対してブラケットを相対回動させて、カードへのサーマルヘッドの当接角度を調整する調整方法と同じ考え方であり、本形態におけるカード2へのサーマルヘッド3の当接角度θR、θFは、特許文献1に記載のカード印刷装置におけるカードへのサーマルヘッドの当接角度に相当する。
【0057】
また、本形態では、以下の理由で、カード2へのサーマルヘッド3の当接位置の調整が行われる。すなわち、サーマルヘッド3の先端部は、左右方向から見たときの形状が所定の曲率半径を有する円弧状となる曲面状に形成されているが、この先端部の加工精度で、先端部の円弧の頂点と先端部の中心とがずれる場合がある。また、加熱温度の強度の中心が先端部の中心からずれる場合もある。さらに、プラテンローラ5の加工精度にもばらつきが生じる。そのため、サーマルヘッド3をカード2に当接させてカード2に印字を行う際に、カード2の印字のムラやカスレ等が生じる場合がある。この印字のムラやカスレ等の発生を防止するために、カード2へのサーマルヘッド3の当接位置の調整が行われる。
【0058】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、前後方向における上ガイド部12への印字ユニット4の取付位置を調整することで、カード2へのサーマルヘッド3の当接位置の調整が可能となっている。そのため、駆動源固定部材27の長孔27c、取付突起24および取付ネジ23等の、上ガイド部12へ印字ユニット4を取り付けるための構成を用いて、カード2へのサーマルヘッド3の当接位置の調整を行うことができる。したがって、カード2へのサーマルヘッド3の当接位置の調整を行うための構成を別途、設けなくても、カード2へのサーマルヘッド3の当接位置の調整を行うことができる。その結果、本形態では、媒体処理装置1の構成を簡素化しながらも、カード2へのサーマルヘッド3の当接位置の調整が行うことができ、カード2への印字品質を確保することが可能になる。
【0059】
また、本形態では、係合部24aを長孔27cに係合させた状態で、上ガイド部12に対して前後方向に印字ユニット4をスライドさせることができる。したがって、本形態では、前後方向における上ガイド部12への印字ユニット4の取付位置の調整が容易になり、その結果、カード2へのサーマルヘッド3の当接位置の調整が容易になる。
【0060】
本形態では、固定ピン26が係合する略四角形状のピン係合溝28bと、回動中心軸29が係合する略U形状の軸係合溝28cとがヘッド固定部材28に形成され、ヘッド固定部材28の左右両端側に引張りコイルバネ22が配置されている。また、左右方向に所定の間隔をあけた状態で形成される2枚の板状部28gのピン係合溝28bのそれぞれに固定ピン26の両端側のそれぞれが係合し、かつ、溝形成部28dの下端側の左右両端に形成される2個のブロック部28hのそれぞれの軸係合溝28cに回動中心軸29の両端側のそれぞれが係合している。さらに、2枚の板状部28gとプランジャ25との間には隙間が形成され、回動中心軸29の段差面29bと、左右方向におけるブロック部28hの両端面との間には隙間が形成されている。
【0061】
そのため、本形態では、サーマルヘッド3がカード2に当接しているときに、プランジャ25を中心にしてヘッド固定部材28が回動可能となっている。すなわち、本形態では、サーマルヘッド3がカード2に当接しているときに、プランジャ25を中心にしてサーマルヘッド3が回動可能となっている。したがって、本形態では、サーマルヘッド3のカード2への追従性を向上させることができ、カード2への印字品質を向上させることが可能になる。また、サーマルヘッド3のカード2への追従性を向上させることができるため、左右方向において、均等な接触圧で、サーマルヘッド3をカード2に当接させることが可能になる。
【0062】
本形態では、固定ピン26が係合する略四角形状のピン係合溝28bと、回動中心軸29が係合する略U形状の軸係合溝28cとがヘッド固定部材28に形成されている。そのため、印字ユニット4を上ガイド部12から取り外した後に、ソレノイド20の本体からプランジャ25を引き抜けば、容易に、ピン係合溝28bから固定ピン26を取り外すことができ、また、軸係合溝28cから回動中心軸29を取り外すことができる。すなわち、容易に、サーマルヘッド3およびヘッド固定部材28を印字ユニット4から取り外すことができる。したがって、サーマルヘッド3の交換作業が容易になる。
【0063】
本形態では、サーマルヘッド3がカード2に当接している状態では、サーマルヘッド3とカード2との当接部分と、引張りコイルバネ22と、回動中心軸29とが前後方向においてこの順番で配置されている。そのため、略U形状に形成される軸係合溝28cと回動中心軸29とが係合している場合であっても、サーマルヘッド3がカード2に当接したときに、駆動源固定部材27に対してヘッド固定部材28が浮き上がるのを防止することが可能になる。すなわち、引張りコイルバネ22と、サーマルヘッド3とカード2との当接部分と、回動中心軸29とが前後方向においてこの順番で配置されている場合には、サーマルヘッド3がカード2に当接したときに、引張りコイルバネ22の付勢力でサーマルヘッド3とカード2との当接部分を支点として、駆動源固定部材27に対してヘッド固定部材28が浮き上がるが、本形態では、このようなことがなくなる。その結果、本形態では、所定の接触圧でサーマルヘッド3をカード2に当接させることが可能になる。
【0064】
本形態では、ソレノイド20の本体内部に配置される永久磁石とプランジャ25との磁気的吸着力によって、サーマルヘッド3がカード搬送路11から退避している状態が維持され、引張りコイルバネ22の付勢力によって、サーマルヘッド3がプラテンローラ5に当接している状態が維持されている。そのため、サーマルヘッド3がカード搬送路11から退避している状態およびサーマルヘッド3がカード2に当接している状態では、ソレノイド20に電流を供給する必要がなくなる。したがって、本形態では、媒体処理装置1の省電力化を図ることが可能になる。
【0065】
また、サーマルヘッド3がカード2に当接しているときには、カード2へ印字を行うための電流がサーマルヘッド3に供給されるため、サーマルヘッド3での消費電流が大きくなるが、本形態では、サーマルヘッド3がカード2に当接しているときにソレノイド20に電流を供給する必要がなくなり、サーマルヘッド3がカード2に当接しているときの媒体処理装置1での消費電流を低減することができる。また、サーマルヘッド3がプラテンローラ5から離れているときには、媒体処理装置1は、待機状態にあるか、あるいは、カード2への印字処理以外の処理を行っているが、本形態では、サーマルヘッド3がプラテンローラ5から離れているときにソレノイド20に電流を供給する必要がなくなり、待機時の媒体処理装置1での消費電流を低減することや、印字処理以外の処理を行っているときの媒体処理装置1での消費電流を低減することが可能になる。
【0066】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0067】
上述した形態では、引張りコイルバネ22によって、サーマルヘッド3がプラテンローラ5に向かって付勢されている。この他にもたとえば、圧縮コイルバネや板バネ等の他のバネ部材によって、サーマルヘッド3がプラテンローラ5に向かって付勢されても良いし、ゴム等の弾性部材によって、サーマルヘッド3がプラテンローラ5に向かって付勢されても良い。
【0068】
上述した形態では、ピン係合溝28bは、略四角形状に形成されているが、ピン係合溝28bは、上端側が開口していれば他の形状に形成されても良い。たとえば、ピン係合溝28bは、略U形状に形成されても良い。また、上述した形態では、軸係合溝28cは、略U形状に形成されているが、軸係合溝28cは、下端側が開口していれば他の形状に形成されても良い。たとえば、軸係合溝28cは、略四角形状に形成されても良い。なお、ピン係合溝28bに代えて、丸孔状等のピン係合孔が形成されても良いし、軸係合溝28cに代えて、丸孔状等の軸係合孔が形成されても良い。
【0069】
上述した形態では、下ガイド部13に回転可能に取り付けられたプラテンローラ5がサーマルヘッド3に対向配置されている。この他にもたとえば、下ガイド部13に固定された固定ガイドがサーマルヘッド3に対向配置されても良い。すなわち、サーマルヘッド3に対向配置される対向部は固定ガイドでも良い。
【0070】
上述した形態では、略円筒状に形成された取付突起24の上端に係合部24aが形成されている。この他にもたとえば、上ガイド部12に平面状の平面部が形成されている場合には、この平面部から上側に突出するように、係合部24aが形成されても良い。また、上述した形態では、上ガイド部12側に係合部24aが形成され、印字ユニット4側に長孔27cが形成されているが、前後方向を長手方向とする長孔が上ガイド部12側に形成され、この長孔に係合する係合部が印字ユニット4側に形成されても良い。
【0071】
上述した形態では、サーマルヘッド3を移動させる駆動源は、ソレノイド20であるが、サーマルヘッド3を移動させる駆動源は、モータ等の他の駆動源であっても良い。また、上述した形態では、比較的小型の媒体処理装置1を例に本発明の実施の形態を説明したが、本発明の構成が適用される媒体処理装置は、カード等の媒体の発行機能を有する大型の媒体処理装置であっても良い。
【符号の説明】
【0072】
1 媒体処理装置
2 カード(媒体)
3 サーマルヘッド
5 プラテンローラ(対向部)
11 カード搬送路(媒体搬送路)
12 上ガイド部(本体部の一部)
13 下ガイド部(本体部の一部)
14 右側板(本体部の一部)
15 左側板(本体部の一部)
20 ソレノイド(駆動源)
21 支持部
22 引張りコイルバネ(付勢部材)
23 取付ネジ
24 取付突起
24a 係合部
25 プランジャ
26 固定ピン
27 駆動源固定部材
27c 長孔
28 ヘッド固定部材
28b ピン係合溝
28c 軸係合溝
29 回動中心軸
X 媒体の搬送方向
Z 媒体の厚さ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体が搬送される媒体搬送路と、感熱方式で前記媒体に印字を行うサーマルヘッドと、前記媒体搬送路を挟んで前記サーマルヘッドに対向配置される対向部と、前記サーマルヘッドを支持する支持部と、前記支持部に取り付けられ、前記サーマルヘッドが前記対向部に当接する方向および前記対向部から離れる方向へ前記サーマルヘッドを移動させる駆動源と、前記支持部と前記対向部とが取り付けられる本体部とを備え、
前記媒体の搬送方向における前記本体部への前記支持部の取付位置の調整が可能であり、
前記媒体の搬送方向における前記本体部への前記支持部の取付位置を調整することで、前記対向部への前記サーマルヘッドの当接位置の調整が可能になっていることを特徴とする媒体処理装置。
【請求項2】
前記本体部へ前記支持部を取り付けるための複数の取付ネジを備え、
前記支持部または前記本体部の一方には、前記取付ネジが挿通されるとともに前記媒体の搬送方向を長手方向とする少なくとも2個の長孔が形成され、
前記支持部または前記本体部の他方には、前記長孔のそれぞれに係合する係合部が形成され、
前記係合部には、前記取付ネジと係合するメネジが形成されていることを特徴とする請求項1記載の媒体処理装置。
【請求項3】
前記支持部は、前記サーマルヘッドが固定されるヘッド固定部材と、前記駆動源が固定されるとともに前記本体部に固定される駆動源固定部材とを備え、
前記ヘッド固定部材は、前記駆動源固定部材に回動可能に保持されていることを特徴とする請求項1または2記載の媒体処理装置。
【請求項4】
前記駆動源は、ソレノイドであり、
前記支持部は、前記駆動源固定部材に取り付けられ前記ヘッド固定部材の回動中心となる回動中心軸を備え、
前記ヘッド固定部材には、前記ソレノイドのプランジャに固定される固定ピンが係合する略四角形状または略U形状のピン係合溝と、前記回動中心軸が係合する略四角形状または略U形状の軸係合溝とが形成されていることを特徴とする請求項3記載の媒体処理装置。
【請求項5】
前記サーマルヘッドを前記対向部に向けて付勢するための付勢部材を備え、
前記付勢部材は、前記媒体の搬送方向と前記媒体の厚さ方向とに直交する方向における前記ヘッド固定部材の両端側のそれぞれに配置されていることを特徴する請求項4記載の媒体処理装置。
【請求項6】
前記サーマルヘッドを前記対向部に向けて付勢するための付勢部材を備え、
前記サーマルヘッドが前記媒体に当接している状態では、前記サーマルヘッドと前記媒体との当接部分と、前記付勢部材と、前記回動中心軸とが前記媒体の搬送方向においてこの順番で配置されていることを特徴とする請求項4または5記載の媒体処理装置。
【請求項7】
前記サーマルヘッドを前記対向部に向けて付勢するための付勢部材を備え、
前記駆動源は、永久磁石を備えるソレノイドであり、
前記ソレノイドのプランジャと前記永久磁石との吸着力によって、前記サーマルヘッドが前記対向部から離れている状態が維持され、前記プランジャと前記永久磁石との吸着状態が解除されると、前記付勢部材の付勢力によって、前記サーマルヘッドが前記媒体に当接している状態が維持されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の媒体処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−234695(P2010−234695A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86181(P2009−86181)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】