説明

媒体排出装置および画像形成装置

【課題】排紙トレイの媒体の良好な積載状態を得る媒体排出装置を提供する。
【解決手段】媒体2を挟持して回転し、前記媒体を積載する積載部16に向けて挟持した前記媒体を排出する排出ローラ対14を有し、前記排出ローラ対は、回転軸21の回転により回転する排出ローラ20と前記排出ローラの外周面に接触する従動ローラ22とにより挟持部を形成し、前記回転とともに前記媒体を挟持する前記挟持部が前記媒体の排出方向に対して上下動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体を排紙トレイに排出する媒体排出装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプリンタや複写機等の画像形成装置は、媒体を給紙トレイから1枚ずつ給紙して搬送し、レジストローラにより斜行を補正した後、画像形成部へと搬送し、その画像形成部で媒体上にトナー像を形成する。その後、画像形成装置は、画像形成部でトナー像を形成した媒体を定着装置へ搬送し、熱と圧力によりトナー像を定着する。さらに、画像形成装置は、定着装置でトナー像が定着された媒体を装置の上部へ搬送するための媒体排出装置で装置の外部へと搬送し、装置の上部に形成された排紙トレイに順次、積載するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−159142号公報(段落「0027」〜段落「0030」、図1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の技術においては、媒体排出装置で装置外へ排出される媒体の先端部は、自重により重力方向へ垂れ下がり、排紙トレイに積載された媒体の背面や端部に接触しながら排出されるため、表面や切断面が粗い媒体を排紙トレイへ排出する場合、排出される媒体の先端部が排紙トレイに積載された媒体の背面や端部に引っ掛かり、その積載済みの媒体を押し出して斜行させたり、排紙トレイから落下させたりし、また排出中の媒体が、積載済みの媒体に引っ掛かった先端部を起点に湾曲してしまう等、排紙トレイの媒体の積載状態が悪化してしまうという問題がある。
本発明は、このような問題を解決することを課題とし、排紙トレイの媒体の積載状態を良好にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのため、本発明は、媒体を挟持して回転し、前記媒体を積載する積載部に向けて挟持した前記媒体を排出する排出ローラ対を有し、前記排出ローラ対は、前記回転とともに、前記媒体を挟持する挟持部が前記媒体の排出方向に対して上下動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
このようにした本発明は、排紙トレイの媒体の積載状態を良好にすることできるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施例における排出部の構成を示す断面図
【図2】第1の実施例における排出部の構成を示す斜視図
【図3】第1の実施例におけるプリンタの構成を示す概略側断面図
【図4】第1の実施例における用紙排出動作を示す説明図
【図5】比較例の説明図
【図6】第2の実施例における媒体排出装置の駆動伝達手段の構成を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明による媒体排出装置および画像形成装置の実施例を説明する。
【実施例1】
【0009】
図3は第1の実施例におけるプリンタの構成を示す概略側断面図である。
図3において、1は画像形成装置としてのプリンタであり、媒体排出装置としての排出部15を備えたものである。
プリンタ1には、画像を記録する媒体としての用紙2を積層して収納する給紙カセット3がプリンタ1の底部に着脱可能に装着されている。給紙カセット3に収納された用紙2の上方には、ピックアップローラ4が回転可能に配設され、そのピックアップローラ4の周面に用紙2が図示しない付勢手段により押圧されている。このピックアップローラ4が図中反時計方向に回転することにより給紙カセット3に積層されて収納された用紙2を給紙する。
【0010】
用紙2の給紙方向におけるピックアップローラ4の下流の近傍には、給紙カセット3から上方へと1枚ずつ用紙2を繰り出すための給紙ローラ5とリタードローラ6とが対向して配設されている。
給紙ローラ5およびリタードローラ6の用紙2の搬送方向(図中一点鎖線の矢印で表す方向)における下流には、搬送ローラ対7が回転可能に配設され、さらに搬送ローラ対7の用紙2の搬送方向における下流には搬送ローラ対8が配設され、画像形成部9に用紙2を搬送する。
【0011】
画像形成部9は、現像剤としてのトナーを収容するトナーカートリッジ9a、露光装置としての記録ヘッド9b、像担持体としての感光ドラム9c、および感光ドラム9cに形成されたトナー像を用紙2に転写する転写ローラ9d等により構成され、搬送される用紙2に対して記録データに応じたトナー像を転写する。
【0012】
定着部10は、用紙2の搬送方向における画像形成部9の下流に配設され、画像形成部9において用紙2に転写されたトナー画像を加熱溶融により用紙2に定着させるものであり、加熱ローラ11と、その加熱ローラ11の周面に押圧されて接触する加圧ローラ12とにより構成されている。
定着部10の用紙2の搬送方向における下流には搬送ローラ対13が配設され、さらにその搬送ローラ対13の用紙2の搬送方向における下流には排出部15が配設されている。
【0013】
媒体排出装置としての排出部15は、図示しない駆動源により回転する排出ローラ対14を有し、その排出ローラ対14により搬送ローラ対13で搬送された用紙2を挟持して上方へ搬送し、装置外へ排出する。排出部15により装置外へ排出された用紙2は、プリンタ1の上部に配設された排紙トレイ16上に積載される。
なお、搬送される用紙2の位置を検知するために、用紙2の搬送方向における搬送ローラ対8の上流にセンサ17と、搬送ローラ対8と転写ローラ9dとの間にセンサ18と、定着部10と搬送ローラ対13との間にセンサ19とが配設されている。
【0014】
図1は第1の実施例における排出部の構成を示す断面図であり、図2は第1の実施例における排出部の構成を示す斜視図である。
図1および図2において、排出部15は、用紙2を挟持して回転し、用紙2を積載する積載部としての排紙トレイ16に向けて挟持した用紙2を排出し、その回転とともに、用紙2を挟持する挟持部としてのニップ部30が用紙2の排出方向に対して上下動する排出ローラ対14を備えている。
【0015】
その排出ローラ対14は、回転軸としての回転駆動軸21の回転により回転する排出ローラ20と、従動ローラとしてのピンチローラ22とが互いに外周面を接触させ、排出ローラ20がピンチローラ22の略上方になるように対向して配設されており、その排出ローラ20とピンチローラ22とにより用紙2を挟持して搬送する挟持部としてのニップ部30を形成している。なお、本実施例では、排出ローラ20がピンチローラ22の略上方になるように対向配置されたものとして説明するが、排出ローラ20は用紙2の排出方向におけるピンチローラ22の上流側または下流側に対向配置されていても良い。
【0016】
排出ローラ対14の上側のローラである排出ローラ20は、摩擦係数の大きい材料で円筒形状を成しており、回転駆動軸21の回転中心21aが排出ローラ20の外周における中心20aとは異なるように偏心して回転駆動軸21に固定されている。すなわち、排出ローラ20は、外周の中心と異なる位置に、回転駆動軸21が取り付けられており、回転駆動軸21と外周との距離が少なくとも2箇所で異なるようになっている。
【0017】
排出ローラ対14の下側のローラであるピンチローラ22は、両端部にピンチローラ22の外周における中心と同軸な支軸22aを有し、その支軸22aが排出部15の構造体の一部であるガイド23に案内されることにより、排出ローラ20の回転駆動軸21に近接または離間する方向(図1中の矢印Cおよび矢印Dが示す、排出部15における用紙2の排出方向に対して上下方向)に移動可能になっている。
【0018】
また、排出部15の構造体に固定された付勢手段としてのトーションスプリング24の先端は、支軸22aを支持するとともに、その支軸22aを排出ローラ20の回転駆動軸21の方向へ付勢している。したがって、ピンチローラ22の外周面は、排出ローラ20の外周面へ常に押圧されて接触しており、排出ローラ20の外周面との摩擦力により追従回転可能になっている。
【0019】
つまり、排出ローラ20とピンチローラ22との接触部であり、用紙2を挟持する挟持部としてのニップ部30は、回転駆動軸21および偏心した排出ローラ20の回転に伴って、図1中の矢印Cおよび矢印Dが示す、排出部15における用紙2の排出方向に対して上下方向へ移動するようになっている。
【0020】
次に、排出部内の用紙走行路の構造を図1に基づいて説明する。
定着器10で定着を終了した用紙2を画像形成装置の上部へ搬送するための用紙走行路25が、排出部15の搬送ローラ対13と排出ローラ対14との間に湾曲して配設されている。この用紙走行路25は、用紙走行面と直交する高さを十分に有するが、用紙2が略垂直方向に上昇して走行する走行路の中間(中央付近)には、用紙ガイド26と用紙ガイド28とが走行路を挟んで配設され、その用紙ガイド26および用紙ガイド28のそれぞれの先端部は用紙走行面と直交する高さにおける中央付近で隣接しており、用紙2が走行する経路を制限している。
【0021】
また、用紙ガイド26および用紙ガイド28は、通過する用紙2が走行する用紙走行路25の方向へスプリング27およびスプリング29により付勢され、用紙ガイド26および用紙ガイド28のそれぞれの先端部が用紙走行面と直交する高さにおける中央付近で隣接している。
【0022】
さらに、用紙走行路25の排出ローラ対14の直前、すなわち用紙2の搬送方向における上流側近傍の用紙走行面と直交する高さは、排出ローラ対14のニップ部30が上下動しても、搬送される用紙2の先端が確実にニップ部30に挟持される高さになっている。
なお、用紙走行路25の排出ローラ対14の直前に、排出ローラ20とピンチローラ22とにそれぞれ当接し、回動可能に構成された用紙ガイドを設け、搬送される用紙2の先端をニップ部30に案内するようにしても良い。
【0023】
上述した構成の作用について説明する。
まず、図1および図2に示す排出ローラ対14の動作を図4の第1の実施例における用紙排出動作を示す説明図を用いて説明する。
【0024】
図4(a)は排出ローラ20の回転駆動軸21と、偏心した排出ローラ20とピンチローラ22との接触部であるニップ部30とが最も離れた位置であることを示した図であり、このときニップ部30は用紙2の排出方向に対して最下の位置にあり、また用紙2の搬送速度は最大となる。ニップ部30から用紙2が排出される方向は、排出ローラ20の外周における中心とピンチローラ22の外周における中心とを結ぶ直線と直交する方向となり、例えば用紙2の排出方向は略水平方向となる。
【0025】
図4(b)は、図4(a)における回転駆動軸21が図中反時計回りに90度回転した位置であり、ニップ部30の高さは、図4(a)におけるニップ部30の高さと比較して上方(図1の矢印Cが示す方向)へ移動していることを示した図であり、このとき用紙2の排出方向は図4(a)と比較して下向きになる。
【0026】
図4(c)は、図4(a)における回転駆動軸21が図中反時計回りに180度回転した位置にあることを示した図であり、このときニップ部30の高さは用紙2の排出方向に対して最高の位置にあり、また用紙2の搬送速度は最小となる。用紙2の排出方向は図4(a)と同じ方向となる。
【0027】
図4(d)は、図4(a)における回転駆動軸21が図中反時計回りに270度回転した位置であり、ニップ部30の高さは、図4(c)におけるニップ部30の高さと比較して下方(図1の矢印Dが示す方向)へ移動していることを示した図であり、このとき用紙2の排出方向は図4(c)と比較して上向きになる。
【0028】
図4(b)および図4(d)における用紙2の搬送速度は同じであり、図4(a)における用紙2の搬送速度と図4(c)における用紙2の搬送速度との間になる。
また、図4(a)および図4(c)において、ニップ部30から用紙2が排出される方向は、排出ローラ20の外周における中心とピンチローラ22の外周における中心とを結ぶ直線と直交する方向となる。
【0029】
このように、回転駆動軸21の回転に連動してニップ部30の位置が用紙2の排出方向に対して上下動するため、排出ローラ対14に挟持された用紙2は排出方向に対して上下運動しながら排出されるので、ニップ部30だけでなく用紙2の先端部も排出方向に対して上下に振動しながら排出される。
【0030】
ここで、回転駆動軸を排出ローラの外周における中心に取り付けた比較例の動作を図5に基づいて説明する。
図5において、トナー画像が定着された用紙2は、排出ローラ対14から排出され、用紙2の先端部が重力方向へ垂れ下がり、排紙トレイ16に積載された用紙2の背面に突入角θで突き当たり、さらに排出が進むと用紙2の先端部は排紙トレイ16に積載された用紙2の背面に沿って移動し、用紙2の後端が排出ローラ14から離れると、用紙2の後端は自重によって落下し、落下した用紙2は排紙トレイ16の傾斜により排出部15側へ滑るので排紙トレイ16には複数の用紙2が後端を揃えた状態で積載される。
【0031】
通常の用紙2では、先端が排紙トレイ16に積載された用紙2の背面に沿って移動するとき、僅かな引っ掛かりがあっても、排出ローラ対14から排出方向へ力を受け、直ぐにその引っ掛かりから開放されるため、排出される用紙2の先端部と接する排紙トレイ16に積載された用紙2は移動せず、排紙トレイ16上に整列した状態で用紙2を積載することができる。
【0032】
しかし、用紙2の切断処理の不良等により、用紙2の端部が粗い場合、排出ローラ対14から排出される用紙2の先端部が排紙トレイ16に積載された用紙2の端部の窪みや突起に引っ掛かり、排紙トレイ16に積載された用紙2を図中矢印Gが示す方向へ押し出してしまうため、排紙トレイ16上の用紙2が傾いたりして用紙2の積載状態を悪くしてしまうことがある。また、用紙2の表面が粗い場合も、同様に排紙トレイ16上の用紙2の積載状態を悪くしてしまうことがある。
【0033】
さらに、定着部での圧力で先端部がカールした用紙2は、排紙トレイ16に積載された用紙2との突入角θが大きくなることがあり、そのような場合、排出される用紙2の先端部が排紙トレイ16に積載された用紙2を垂直方向に押す力が大きくなり、接触抵抗が増えて排紙トレイ16に積載済の用紙2を押し出し、排紙トレイ16上の用紙2の積載状態を悪くしてしまうこともある。
【0034】
本実施例では、排出ローラ20の回転駆動軸21の回転に連動して偏心した排出ローラ20とピンチローラ22との接触部であるニップ部30の位置を、用紙の排出方向に対して上下動(図1に示す矢印Cおよび矢印Dが示す方向に上下動)させて排出される用紙の先端部を用紙の排出方向に対して上下に振動させるようにしたことにより、排出される用紙の先端部が排紙トレイ16に積載された用紙の端部の窪みや突起に引っ掛かっても、排出される用紙の先端部は、図1の矢印Fで示すように用紙2の排出方向における上下に振動しているため、その引っ掛かりから開放しようとする力(例えば、図1中の矢印Eが示す力)が加わり、直ぐに引っ掛かりが開放されるので、排紙トレイ16上に整列した状態で用紙を積載することができるようになる。
【0035】
なお、本実施例では、回転駆動軸21を偏心させて排出ローラ20に取り付けることにより、排出ローラ20とピンチローラ22との接触部であるニップ部30の位置を上下動させて排出される用紙の先端部を用紙の排出方向に対して上下に振動させるようにしたが、それに限られるものでなく、排出ローラ20およびピンチローラ22を支持するそれぞれの回転軸をカム等の昇降機構により上下動させてニップ部30の位置を用紙の排出方向に対して上下動させるようにしても良い。
【0036】
ところで、本実施例では、上述の排出ローラ対14の動作で説明したように、排出ローラ対14で排出される用紙2の搬送速度が不等速であるため、図1に示す排出ローラ対14と搬送ローラ対13とで同時に用紙2が挟持されて搬送される間、その用紙2に弛みまたは引張りが生じる。なお、搬送ローラ対13の用紙搬送速度と、排出ローラ対14の平均用紙搬送速度とが略等しいものとする。
【0037】
そこで、図1に示すように、用紙走行路25の排出ローラ対14と搬送ローラ対13との間に用紙走行面と直交する走行路の高さにおける中央付近を用紙2が走行するように、スプリング27およびスプリング29でそれぞれ付勢された用紙ガイド26と用紙ガイド28とを、その先端が走行路の高さにおける略中央で隣接するように配設している。
【0038】
例えば、図4(a)に示す排出ローラ対14の位置で搬送される用紙2の先端がニップ部30に突入した場合、排出ローラ対14の用紙搬送速度は最大となっており、回転駆動軸21が一回転する間は用紙搬送速度が低下しているため、用紙走行路25で搬送される用紙2に弛みが生じる。
【0039】
このように用紙2に弛みが生じた場合、用紙走行路25は、図1に示すように、図中矢印Aが示す方向に突出するように湾曲しているため、用紙走行路25を搬送される用紙2の中間部は、図中矢印Aが示す方向へ弛み、用紙ガイド26を図1の矢印Aが示す方向へ移動させながら、湾曲する用紙走行路25の外周面側付近を走行する。このとき、用紙ガイド26は、用紙走行路25を搬送される用紙2から力を受けるが、その用紙ガイド26を付勢しているスプリング27の不勢力は、用紙2から受ける力より弱く設定しているので用紙ガイド26は図中矢印Aが示す方向へと移動し、用紙2の弛みを許容することができる。
【0040】
一方、例えば、図4(c)に示す排出ローラ対14の位置で搬送される用紙2の先端がニップ部30に突入した場合、排出ローラ対14の用紙搬送速度は最小となっており、回転駆動軸21が一回転する間は用紙搬送速度が上昇するため、用紙走行路25で搬送される用紙2に引っ張りが生じる。
【0041】
このように、用紙2に引っ張りが生じた場合、用紙走行路25は、図1に示すように、図中矢印Aが示す方向に突出するように湾曲しているため、用紙走行路25を搬送される用紙2の中間部は、図中矢印Bが示す方向へ引っ張られ、用紙ガイド28を図1の矢印Bが示す方向へ移動させながら、湾曲する用紙走行路25の内周面側付近を走行する。
【0042】
このとき、用紙ガイド28は、用紙走行路25を搬送される用紙2から力を受けるが、その用紙ガイド28を付勢しているスプリング29の不勢力は、用紙2から受ける力より弱く設定しているので用紙ガイド28は図中矢印Bが示す方向へと移動し、用紙2の引っ張りを許容することができる。
【0043】
なお、本実施例では、搬送ローラ対13の用紙搬送速度と、排出ローラ対14の平均用紙搬送速度とが略等しい場合の用紙走行路として説明したが、2つのローラ対の用紙搬送速度比によって、用紙ガイド26または用紙ガイド28のどちらか一方を備えない構成としても良い。
【0044】
以上説明したように、第1の実施例では、用紙を排出する排出部に、回転駆動軸が偏心した位置に取り付けられた排出ローラを用いたことにより、排出される用紙の先端部を用紙の排出方向に対して上下に振動させることができ、排出される用紙の先端部が引っ掛かり易く表面が粗い用紙を使用した場合であっても、排紙トレイに排出された用紙の積載性や整列性を向上させることができ、排紙トレイの用紙の積載状態を良好にすることができるという効果が得られる。
【実施例2】
【0045】
第2の実施例の構成は、排出ローラの回転駆動軸を正弦波の角速度で回転させる回転駆動手段を備えた構成としたものである。
【0046】
なお、第2の実施例における排出部の構成は、図1に示す第1の実施例の排出部の構成における用紙ガイド26、用紙ガイド28、スプリング27、およびスプリング29を備えない構成としたものであり、図1におけるそれ以外の構成は第1の実施例と同様である。
【0047】
また、第2の実施例におけるプリンタの構成は、図3に示す第1の実施例のプリンタの構成と同じなのでその説明を省略し、第2の実施例における排出部の斜視図も図2に示す排出部の斜視図と同様なのでその説明を省略する。さらに、上述した第1の実施例と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0048】
図6は第2の実施例における媒体排出装置の駆動伝達手段の構成を示す説明図である。図6(a)はギヤ31およびギヤ36の側面図であり、図6(b)は駆動伝達手段40の正面図であり、図6(c)は非円形ギヤ33および非円形ギヤ34の側面図である。
図6において、駆動伝達手段40は、図1および図2に示す排出ローラ20の回転駆動軸21を正弦波の角速度で回転させる回転駆動手段として機能するものであり、図示しない駆動源から駆動が伝達されるギヤ31と、ギヤ31と軸32で同軸回転する非円形ギヤ33と、非円形ギヤ33と噛み合う非円形ギヤ34と、非円形ギヤ34と軸35で同軸回転し、排出ローラの回転駆動軸21に駆動力を伝達するギヤ36とにより構成されている。
【0049】
この非円形ギヤ33および非円形ギヤ34は、例えば楕円形のギヤであり、一方の非円形ギヤが一定の角速度で回転した場合に、もう一方の非円形ギヤの角速度が正弦波になる形状に形成されている。
このように、正弦波の角速度で回転する回転駆動手段としての駆動伝達手段40で図1および図2に示す排出ローラ20の回転駆動軸21を回転させることにより、挟持部としてのニップ部30における排出ローラ20の周速度を一定にする。
【0050】
上述した構成の作用について説明する。
なお、第2の実施例においても図1および図2に示す排出ローラ対14(排出ローラ20、ピンチローラ22およびニップ部30)の動作は図4を用いて説明した第1の実施例と同様なのでその説明を省略する。
また、図4に示すように、排出ローラ20の回転駆動軸21の回転に連動してニップ部30の位置が用紙の排出方向に対して上下動するため、排出ローラ対14に挟持されて排出される用紙2は排出方向に対して上下運動をしながら排出され、用紙2の先端部も排出方向に対して上下に振動しながら排出されるのも第1の実施例と同様である。
【0051】
本実施例では、図1および図2に示す排出部15の図示しない駆動源と回転駆動軸21との間に、図6に示す通常の円形ギヤに加え、非円形ギヤを組み合わせたギヤ列である駆動伝達手段40を備えた構成としている。図6を用いて駆動伝達手段40および回転駆動軸21の動作を説明する。
【0052】
ギヤ31には図示しない一定の角速度で回転する駆動源から駆動力が伝わり、ギヤ31と軸32に固定され同軸回転する非円形ギヤ33を回転させ、その非円形ギヤ33と噛合する非円形ギヤ34に駆動を伝える。非円形ギヤ33は一定の角速度で回転するが、その非円形ギヤ33と噛合する非円形ギヤ34は正弦波の角速度となって回転する。
【0053】
正弦波の角速度で回転する非円形ギヤ34は、軸35で連結されたギヤ36に駆動力を伝え、さらに排出ローラが固定された回転駆動軸21の端部に設けられたギヤを正弦波の角速度で回転させる。したがって、回転駆動軸21が正弦波の角速度で回転する。
【0054】
第1の実施例では、回転駆動軸21は一定の角速度で回転しているため、排出ローラ20の偏心に応じた正弦波の周期で変化する搬送速度で用紙が排出されていたが、本実施例では、駆動伝達手段40がこの周期を打ち消すように、ギヤ比やギヤ配置が設定されているため、排出される用紙の搬送速度を一定にすることができる。
【0055】
また、排出される用紙の搬送速度を一定にすることにより、第1の実施例の図1における用紙ガイド26、用紙ガイド28、スプリング27、およびスプリング29を備えない構成とすることができる。
なお、本実施例では、非円形ギヤを使用した駆動伝達手段で回転駆動軸21を正弦波の角速度で回転させるようにしたが、それに限られることなく、駆動伝達手段に通常の円形ギヤを使用し、回転駆動手段としてのモータ等の駆動源を正弦波の角速度で回転させるようにしても良い。
【0056】
以上説明したように、第2の実施例では、第1の実施例の効果に加え、排出部の駆動源と回転駆動軸との間に、通常の円形ギヤに加え、非円形ギヤを組み合わせたギヤ列である駆動伝達手段を備えたことにより、回転駆動軸を正弦波の角速度で回転させることができ、排出部内の用紙走行路に用紙の弛みや引張りを吸収するための用紙ガイドやスプリング等の部品を削減することができ、製造コストを低減させることができるという効果が得られる。
また、用紙走行路の構造が簡素になるため、排出部内での用紙の走行を安定させることができるという効果が得られる。
【0057】
第1の実施例および第2の実施例では、画像形成装置をプリンタとして説明したが、それに限られることなく、媒体排出装置を有する画像形成装置であれば、ファクシミリ装置、複写装置、複合装置(MFP)としても良い。
【符号の説明】
【0058】
1 プリンタ
2 用紙
3 給紙カセット
4 ピックアップローラ
5 給紙ローラ
6 リタードローラ
7、8、13 搬送ローラ対
9 画像形成部
10 定着部
14 排出ローラ対
15 排出部
16 排紙トレイ
20 排出ローラ
21 回転駆動軸
22 ピンチローラ
23 ガイド
24 トーションスプリング
25 用紙走行路
26、28 用紙ガイド
27、29 スプリング
30 ニップ部
31、36 ギヤ
32、35 軸
33、34 非円形ギヤ
40 駆動伝達手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を挟持して回転し、前記媒体を積載する積載部に向けて挟持した前記媒体を排出する排出ローラ対を有し、
前記排出ローラ対は、前記回転とともに、前記媒体を挟持する挟持部が前記媒体の排出方向に対して上下動することを特徴とする媒体排出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の媒体排出装置において、
前記排出ローラ対は、回転軸の回転により回転する排出ローラと、前記排出ローラの外周面に接触する従動ローラとを有し、
前記排出ローラと前記従動ローラとにより前記挟持部を形成していることを特徴とする媒体排出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の媒体排出装置において、
前記排出ローラは、前記回転軸と外周との距離が少なくとも2箇所で異なるように前記回転軸が取り付けられていることを特徴とする媒体排出装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の媒体排出装置において、
前記排出ローラは、外周の中心と異なる位置に、前記回転軸が取り付けられていることを特徴とする媒体排出装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の媒体排出装置において、
前記従動ローラは、前記排出ローラの外周面に押圧されて接触しながら支軸を中心に従動回転するとともに、前記支軸が案内部材に案内されて前記排出ローラの回転軸へ近接または回転軸から離間する方向に移動可能であることを特徴とする媒体排出装置。
【請求項6】
請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の媒体排出装置において、
正弦波の角速度で回転する回転駆動手段を備え、
前記回転駆動手段で前記排出ローラの回転軸を回転させ、前記挟持部における前記排出ローラの周速度を一定にしたことを特徴とする媒体排出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の媒体排出装置において、
前記回転駆動手段は、一定の角速度で回転する駆動源の回転駆動を非円形ギヤにより正弦波の角速度で回転する回転駆動に変換する駆動伝達手段であることを特徴とする媒体排出装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の媒体排出装置を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−43738(P2013−43738A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181731(P2011−181731)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】