説明

媒体掻き揚げ機構及び動力伝達装置

【課題】適正に媒体を掻き揚げることができる媒体掻き揚げ機構及び動力伝達装置を提供することを目的とする。
【解決手段】動力伝達装置1、媒体掻き揚げ機構3は、相互に噛み合って回転に伴って歯部で媒体を掻き揚げる複数の歯車6、7、8と、複数の歯車6、7、8が噛み合う噛合部10、11の歯側面とそれぞれ対向する一対の壁面14、15と、少なくとも一対の壁面14、15の一方における噛合部10、11と対向する位置に設けられ、媒体を収容可能な凹部16、17とを備えることを特徴とする。したがって、動力伝達装置1、媒体掻き揚げ機構3は、適正に媒体を掻き揚げることができる、という効果を奏する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体掻き揚げ機構及び動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の媒体掻き揚げ機構が適用された動力伝達装置として、例えば、特許文献1にはトロイダル型無段変速機を収容する第1収納室と動力分配装置を収容する第2収納室との間に各収納室の間を液密に封止する分離壁が設けられ、これら第1収納室と第2収納室とに異なる性質を有するオイルが充填された動力伝達装置が開示されている。この動力伝達装置は、第2収納室において最も低い位置に設けられた歯車が回転に伴って周辺に溜まっているオイルを掻き上げて、飛散させることで、第2収納室内の各部の潤滑を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−176862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような特許文献1に記載の動力伝達装置は、例えば、より効果的な媒体の掻き揚げの点で、更なる改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、適正に媒体を掻き揚げることができる媒体掻き揚げ機構及び動力伝達装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る媒体掻き揚げ機構は、相互に噛み合って回転に伴って歯部で媒体を掻き揚げる複数の歯車と、前記複数の歯車が噛み合う噛合部の歯側面とそれぞれ対向する一対の壁面と、少なくとも前記一対の壁面の一方における前記噛合部と対向する位置に設けられ、前記媒体を収容可能な凹部とを備えることを特徴とする。
【0007】
また、上記媒体掻き揚げ機構では、前記複数の歯車は、前記媒体の掻き揚げ方向に沿って配置されるものとすることができる。
【0008】
また、上記媒体掻き揚げ機構では、前記一対の壁面を含んで構成され内部に前記複数の歯車を収容すると共に底部に前記媒体を貯留する貯留部が設けられるハウジングを備えるものとすることができる。
【0009】
また、上記媒体掻き揚げ機構では、前記凹部は、前記噛合部に沿って設けられ、前記歯車の回転方向の下流側端部が前記複数の歯車のうちの前記媒体の掻き揚げ方向下流側に位置する側の前記歯部に沿って設けられるものとすることができる。
【0010】
また、上記媒体掻き揚げ機構では、前記凹部は、前記一対の壁面の両方に設けられるものとすることができる。
【0011】
また、上記媒体掻き揚げ機構では、前記歯車は、車両において動力を伝達する部材であるものとすることができる。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係る動力伝達装置は、オイルを貯留する貯留部と、相互に噛み合って回転に伴って歯部で前記オイルを掻き揚げる複数の歯車、前記複数の歯車が噛み合う噛合部の歯側面とそれぞれ対向する一対の壁面、及び、少なくとも前記一対の壁面の一方における前記噛合部と対向する位置に設けられ、前記オイルを収容可能な凹部を有するオイル掻き揚げ機構と、前記掻き揚げられた前記オイルを受け入れた後、当該オイルを分配するオイル受け部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る媒体掻き揚げ機構、動力伝達装置は、適正に媒体を掻き揚げることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、実施形態に係る動力伝達装置の断面図である。
【図2】図2は、実施形態に係る歯車の部分断面図である。
【図3】図3は、実施形態に係るハウジングの断面図である。
【図4】図4は、実施形態に係る動力伝達装置の部分断面図である。
【図5】図5は、変形例に係る動力伝達装置の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0016】
[実施形態]
図1は、実施形態に係る動力伝達装置の断面図、図2は、実施形態に係る歯車の部分断面図、図3は、実施形態に係るハウジングの断面図、図4は、実施形態に係る動力伝達装置の部分断面図、図5は、変形例に係る動力伝達装置の部分断面図である。
【0017】
本実施形態の媒体掻き揚げ機構としてのオイル掻き揚げ機構3は、例えば、図1に示すように、車両用の動力伝達装置1に潤滑機構として適用される。オイル掻き揚げ機構3は、動力伝達装置1のハウジング9の底部に貯留されているオイル(潤滑油)等の媒体を回転体であり動力伝達部材である歯車6、7、8が回転に伴って掻き揚げることで、掻き揚げたオイルを潤滑対象部位に分配し、これにより、潤滑対象部位を潤滑する。言い換えれば、オイル掻き揚げ機構3は、歯車6、7、8がオイルを掻き揚げて各部に分配するオイル供給装置である。
【0018】
具体的には、動力伝達装置1は、車両においてエンジン等の走行用駆動源から駆動輪への動力の伝達経路中に設けられる。動力伝達装置1は、変速機やディファレンシャルギヤ等を含んで構成され、走行用駆動源が発生させた動力を、動力伝達部材を介して駆動輪に伝達し、この結果、駆動輪の路面との接地面に駆動力[N]を作用させ、車両を走行させることができる。
【0019】
動力伝達装置1は、オイルを貯留する貯留部2と、貯留部2に貯留されたオイルを掻き揚げるオイル掻き揚げ機構3と、オイル掻き揚げ機構3によって掻き揚げられたオイルを受け入れた後、当該オイルを分配するオイル受け部としてのオイルレシーバ4、5とを含んで構成される。オイル掻き揚げ機構3は、複数の歯車6、7、8と、ハウジング9とを備える。
【0020】
複数の歯車6、7、8は、相互に噛み合って回転に伴って歯部6a、7a、8aで媒体としてのオイルを掻き揚げるものである。歯車6、7、8は、円板状、あるいは、円柱状に形成され、外周面に歯部6a、7a、8aが形成される。歯車6、7、8は、それぞれ円板状、あるいは、円柱状の中心軸線が回転軸線X6、X7、X8をなし、それぞれ回転軸線X6、X7、X8を回転中心として回転可能である。
【0021】
なお、本実施形態のオイル掻き揚げ機構3は、3つの歯車6、7、8を備えるものとして説明するが、オイル掻き揚げ機構3が備える歯車は、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。また、以下の説明では、特に断りのない限り、回転軸線X6、X7、X8に沿った方向を軸線方向といい、回転軸線X6、X7、X8に直交する方向、すなわち、軸線方向に直交する方向を径方向といい、回転軸線X6、X7、X8周りの方向を周方向という。また、径方向において回転軸線X6、X7、X8側を径方向内側といい、反対側を径方向外側という。
【0022】
ここで、歯車6、7、8は、図2に示すように、歯部6a、7a、8aの径方向外側の端部、すなわち、外周面側端部が歯先6b、7b、8bをなし、歯部6a、7a、8aにおいて回転軸線X6、X7、X8と交差(直交)する面、すなわち、歯部6a、7a、8aの側面が歯側面6c、7c、8cをなす。そして、歯車6、7、8は、周方向に隣り合う歯部6a、7a、8aの間が歯溝6d、7d、8dをなす。
【0023】
再び図1を参照して、複数の歯車6、7、8は、回転軸線X6、X7、X8が相互に平行になるように配置され、典型的には、オイルの掻き揚げ方向に沿って配置される。このオイル掻き揚げ機構3は、鉛直方向下側から上側に向かって歯車6、歯車7、歯車8の順で配置されている。すなわち、歯車7は、歯車6の鉛直方向上方に位置し、歯車8は、歯車7の鉛直方向上方に位置する。オイル掻き揚げ機構3は、歯車6の歯部6aと歯車7の歯部7aとが動力伝達可能に相互に噛み合うことで噛合部10を構成し、歯車7の歯部7aと歯車8の歯部8aとが動力伝達可能に相互に噛み合うことで噛合部11を構成する。
【0024】
ハウジング9は、内部にオイルレシーバ4、5や動力伝達装置1の動力伝達部材である歯車6、7、8を収容する部材である。ハウジング9は、歯車6、7、8等を収容する収容空間が隔壁12、13等によって複数の領域に区画されている。ハウジング9は、例えば、収容空間が隔壁12、13によって歯車6、7、8をそれぞれ収容する領域、オイルレシーバ4、5を形成する領域等に区画されている。貯留部2は、このハウジング9の底部、すなわち、ハウジング9の収容空間の鉛直方向下部に設けられる。オイルレシーバ4、5は、ハウジング9の上部、すなわち、ハウジング9の収容空間の鉛直方向上部に設けられる。
【0025】
上述の歯車6、7、8は、ハウジング9の収容空間において少なくとも一部が貯留部2に貯留されたオイルに浸る位置に配置される。典型的には、このオイル掻き揚げ機構3は、鉛直方向最下部に位置する歯車6が貯留部2のオイルに浸る位置に配置される。つまり、動力伝達装置1は、貯留部2にオイルが溜められて、歯車6の少なくとも一部がオイルに浸漬した状態で作動する。
【0026】
また、歯車8は、ハウジング9の収容空間内の鉛直方向上部で隔壁12と隔壁13との間から露出している。オイルレシーバ4、5は、ハウジング9の内部において、オイル掻き揚げ機構3によるオイルの掻き揚げ方向下流側に位置し、掻き揚げられたオイルを一時的に貯留し潤滑対象部位に分配する。ここでは、歯車6、7、8は、鉛直方向上側に向かってオイルを掻き揚げる構成となっており、歯車6、7、8によって掻き揚げられたオイルは、隔壁12と隔壁13との間を通ってオイルレシーバ4、5に運ばれる。オイルレシーバ4、5は、一時的に貯留したオイルをその自重を利用して移動させ潤滑対象部位に供給する。
【0027】
そして、本実施形態のオイル掻き揚げ機構3は、図1、図3、図4に示すように、複数の歯車6、7、8が噛み合う噛合部10、11の歯側面6c、7c、8cとそれぞれ対向する一対の壁面14、15と、少なくとも一対の壁面14、15の一方に設けられたオイルを収容可能な凹部としての収容溝16、17とを備えることで、より効果的なオイルの掻き揚げを実現している。
【0028】
一対の壁面14、15は、それぞれ噛合部10、11の歯側面6c、7c、8cに面して対向するように設けられるものである。一対の壁面14、15は、ハウジング9の一部をなす。つまり、ハウジング9は、上述した隔壁12、13と共に一対の壁面14、15を含んで構成される。上述の隔壁12、13は、歯車6、7、8の径方向外側に外周面と対向するように設けられ、歯部6a、7a、8aの歯先6b、7b、8bと対向する。一方、壁面14、15は、噛合部10、11の軸線方向両側にそれぞれ設けられ、壁面14が歯部6a、7a、8aの一方の歯側面6c、7c、8cと軸線方向に対向し、壁面15が歯部6a、7a、8aの他方の歯側面6c、7c、8cと軸線方向に対向する。言い換えれば、隔壁12、13は、壁面14と壁面15との間に立設するようにして設けられ、歯車6、7、8は、この壁面14と壁面15との間に設けられる。そして、本実施形態のハウジング9は、隔壁12、13と歯先6b、7b、8bとの隙間、壁面14、15と歯側面6c、7c、8cとの隙間ができる限り小さくなるように形成されている。
【0029】
収容溝16、17は、それぞれ、少なくとも一対の壁面14、15の一方、本実施形態では壁面14に設けられる。ここでは、収容溝16は、壁面14において、軸線方向に対して噛合部10と対向する位置に設けられ、収容溝17は、壁面14において、軸線方向に対して噛合部11と対向する位置に設けられる。収容溝16、17は、有底の溝として形成され、オイルを一時的に収容、貯留する空間として機能する。
【0030】
収容溝16、17は、それぞれ噛合部10、噛合部11に沿って略円弧状に設けられる。そして、収容溝16は、歯車6、7の回転方向の下流側端部16aが複数の歯車6、7のうちのオイルの掻き揚げ方向下流側、すなわち、鉛直方向上側に位置する歯車7側の歯部7aに沿って設けられる。つまり、収容溝16は、下流側端部16aが掻き揚げ方向上流側、すなわち、鉛直方向下側に位置する歯車6側の歯部6aに応じた位置には重ならないように設けられる。同様に、収容溝17は、歯車7、8の回転方向の下流側端部17aが複数の歯車7、8のうちのオイルの掻き揚げ方向下流側に位置する歯車8側の歯部8aに沿って設けられる。つまり、収容溝17は、下流側端部17aが掻き揚げ方向上流側に位置する歯車7側の歯部7aに応じた位置には重ならないように設けられる。
【0031】
上記のように構成されるオイル掻き揚げ機構3は、例えば、歯車6、7、8が回転することで、歯車6、7、8の歯部6a、7a、8aが貯留部2に貯留されたオイルをオイルレシーバ4、5側に向けて掻き揚げる。掻き揚げられたオイルは、一部がオイルレシーバ4、5内に流入する。オイルレシーバ4、5内に流入したオイルは、オイルレシーバ4、5から種々の油路を通って潤滑対象部位となる動力伝達装置1の各部に分配され、これらを潤滑、冷却する。
【0032】
このとき、オイル掻き揚げ機構3は、貯留部2のオイルが鉛直方向最下部の歯車6の歯溝6dに流入し、歯車6が歯溝6dにこのオイルを保持した状態で回転することで、オイルを歯車7側に掻き揚げる。この間、オイル掻き揚げ機構3は、歯車6の回転に伴って、噛合部10にて歯部6aが歯溝7dに入り込み、歯部7aが歯溝6dに入り込むことで、歯溝6d等の容積が減少し、歯溝6dに保持されていたオイルが歯部7aによって押し出される。オイル掻き揚げ機構3は、隔壁12、13と歯先6b、7b、8bとの隙間、壁面14、15と歯側面6c、7c、8cとの隙間ができる限り小さくなるように形成されているが、壁面14の噛合部10と対向する位置に、収容溝16が設けられているため、歯部7aによって歯溝6dから押し出されたオイルがこの収容溝16に流入して収容され、確保される。
【0033】
そして、オイル掻き揚げ機構3は、歯車6、7の回転に伴って、噛合部10の掻き揚げ方向下流側端部にて、歯部6aと歯部7aとの噛み合いが終わると、歯溝6d、7dに入り込んでいた歯部6a、7aが抜けて歯溝6d、7dの空間部が広がり容積が増加することで、この歯溝6d、7dの空間部に負圧が発生する。そして、オイル掻き揚げ機構3は、収容溝16の下流側端部16aがオイルの掻き揚げ方向下流側(鉛直方向上側)に位置する歯車7側の歯部7aに沿って設けられており、歯車6側の歯部6aに応じた位置には重ならないように設けられていることから、収容溝16に一時的に収容、貯留されていたオイルの大部分がこの負圧によって下流側端部16aの近傍から歯車7側の歯溝7dに流入する。そして、オイル掻き揚げ機構3は、歯車7が歯溝7dにオイルを保持した状態で回転することでオイルを歯車8側に掻き揚げる。
【0034】
同様に、オイル掻き揚げ機構3は、歯車7の回転に伴って、噛合部11にて、歯溝7dに保持されていたオイルが歯部8aによって押し出され、押し出されたオイルが収容溝17に流入して収容される。オイル掻き揚げ機構3は、歯車7、8の回転に伴って、収容溝17に一時的に収容、貯留されていたオイルが負圧によって下流側端部17aの近傍から歯車8側の歯溝8dに流入し、この歯車8が歯溝8dにオイルを保持した状態で回転することでオイルをオイルレシーバ4、5側に掻き揚げる。
【0035】
このようにして、オイル掻き揚げ機構3は、貯留部2に溜まっているオイルを低い位置にある歯車6から高い位置にある歯車8まで運んで効率よく比較的に高い位置、遠い位置まで掻き揚げることができる。これにより、オイル掻き揚げ機構3は、歯車6、7、8による掻き揚げによって十分な量のオイルをオイルレシーバ4、5に供給することができる。
【0036】
また、オイル掻き揚げ機構3は、隔壁12、13が歯車6、7、8によって掻き揚げたオイルのガイドとなることから、例えば、掻き揚げたオイルが鉛直方向上方の歯車8等にあたってしまうことを防止することができ、オイルレシーバ4、5側へのオイルの移動が歯車8等によって阻害されてしまうことを防止することができる。
【0037】
よって、動力伝達装置1は、オイル掻き揚げ機構3が上記のように、より効率よく、比較的に高い位置、遠い位置にオイルを供給することができることから、例えば、歯車6、7、8が比較的に低速で回転している段階であっても、オイルを適正にオイルレシーバ4、5まで掻き揚げることができると共に、歯車6が比較的に高速で回転するようになると、これに伴ってオイルレシーバ4、5に流入するオイルの量を効率よく増加し、相対的に多くすることができる。したがって、動力伝達装置1は、潤滑対象部位となる各部を適正に潤滑することができる。
【0038】
なお、この動力伝達装置1は、例えば、トラクションドライブ機構などと併設して設けられ、このトラクションドライブ機構に用いる高μなトラクションオイルとは異なる種類のオイルを用いて潤滑することで損失の増大を抑制するような構成であって、トラクションドライブ機構にトラクションオイルを供給する系統とは別系統で、動力伝達装置1にオイルを供給する潤滑系統を設ける構成である場合には、以下のような利点もある。すなわち、動力伝達装置1は、トラクションドライブ機構にトラクションオイルを供給する系統とは別系統で、動力伝達装置1にオイルを供給する潤滑系統として、この掻き揚げ式のオイル掻き揚げ機構3を用いることで、両系統のポンプ、クーラ配管等を個別に設けない構成とし製造コストの増加を抑制した上で、適正にオイルを潤滑対象部位に供給することができる構成とすることができる。
【0039】
以上で説明した実施形態に係るオイル掻き揚げ機構3によれば、相互に噛み合って回転に伴って歯部6a、7a、8aでオイルを掻き揚げる複数の歯車6、7、8と、複数の歯車6、7、8が噛み合う噛合部10、11の歯側面6c、7c、8cとそれぞれ対向する一対の壁面14、15と、少なくとも一対の壁面14、15の一方における噛合部10、11と対向する位置に設けられ、オイルを収容可能な収容溝16、17とを備える。以上で説明した実施形態に係る動力伝達装置1によれば、オイルを貯留する貯留部2と、上記オイル掻き揚げ機構3と、掻き揚げられたオイルを受け入れた後、このオイルを分配するオイルレシーバ4、5とを備える。したがって、動力伝達装置1、オイル掻き揚げ機構3は、オイルの掻き揚げ性能を向上することができ、適正にオイルを掻き揚げることができる。
【0040】
なお、上述した本発明の実施形態に係る媒体掻き揚げ機構及び動力伝達装置は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。
【0041】
以上の説明では、オイル掻き揚げ機構3は、収容溝16、17が壁面14に設けられるものとして説明したが、図5の変形例に示すように、収容溝16、17が一対の壁面14、15の両方に設けられる構成であってもよい。この場合、オイル掻き揚げ機構3は、軸線方向に対して、噛合部10、11の両側に収容溝16、17が位置することから、より効果的にオイルを掻き揚げて運ぶことができる。
【0042】
以上の説明では、媒体掻き揚げ機構は、車両用の動力伝達装置に適用されるものとして説明したがこれに限らない。以上の説明では、媒体は、オイル(潤滑油)であるものとして説明したがこれに限らない。
【符号の説明】
【0043】
1 動力伝達装置
2 貯留部
3 オイル掻き揚げ機構(媒体掻き揚げ機構)
4、5 オイルレシーバ(オイル受け部)
6、7、8 歯車
6a、7a、8a 歯部
6b、7b、8b 歯先
6c、7c、8c 歯側面
6d、7d、8d 歯溝
9 ハウジング
10、11 噛合部
12、13 隔壁
14、15 壁面
16、17 収容溝(凹部)
16a、17a 下流側端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に噛み合って回転に伴って歯部で媒体を掻き揚げる複数の歯車と、
前記複数の歯車が噛み合う噛合部の歯側面とそれぞれ対向する一対の壁面と、
少なくとも前記一対の壁面の一方における前記噛合部と対向する位置に設けられ、前記媒体を収容可能な凹部とを備えることを特徴とする、
媒体掻き揚げ機構。
【請求項2】
前記複数の歯車は、前記媒体の掻き揚げ方向に沿って配置される、
請求項1に記載の媒体掻き揚げ機構。
【請求項3】
前記一対の壁面を含んで構成され内部に前記複数の歯車を収容すると共に底部に前記媒体を貯留する貯留部が設けられるハウジングを備える、
請求項1又は請求項2に記載の媒体掻き揚げ機構。
【請求項4】
前記凹部は、前記噛合部に沿って設けられ、前記歯車の回転方向の下流側端部が前記複数の歯車のうちの前記媒体の掻き揚げ方向下流側に位置する側の前記歯部に沿って設けられる、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の媒体掻き揚げ機構。
【請求項5】
前記凹部は、前記一対の壁面の両方に設けられる、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の媒体掻き揚げ機構。
【請求項6】
前記歯車は、車両において動力を伝達する部材である、
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の媒体掻き揚げ機構。
【請求項7】
オイルを貯留する貯留部と、
相互に噛み合って回転に伴って歯部で前記オイルを掻き揚げる複数の歯車と、前記複数の歯車が噛み合う噛合部の歯側面とそれぞれ対向する一対の壁面と、少なくとも前記一対の壁面の一方における前記噛合部と対向する位置に設けられ、前記オイルを収容可能な凹部とを有するオイル掻き揚げ機構と、
前記掻き揚げられた前記オイルを受け入れた後、当該オイルを分配するオイル受け部とを備えることを特徴とする、
動力伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−145183(P2012−145183A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4934(P2011−4934)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】