説明

媒体搬送機構および媒体処理装置

【課題】カード状記録媒体を搬送する駆動ローラ等の清掃の頻度が低くても、カード状記録媒体のジャムの発生を抑制することが可能な媒体搬送機構を提供する。
【解決手段】カード2を搬送する媒体搬送機構48は、カード2の一方の面に当接してカード2を搬送する第1駆動ローラ50、51、53、54と第2駆動ローラ52とからなる複数の駆動ローラと、第2駆動ローラ52に対向配置されるとともに第2駆動ローラ52に向かって付勢される第1パッドローラ72とを備えている。この媒体搬送機構48では、駆動ローラ50〜54は、カード2の搬送方向Wにおいて、カード2の長さよりも短い間隔で配置されており、カード2の一方の面と第2駆動ローラ52との接触位置CPは、カード2の厚み方向Vにおいて、第1駆動ローラ50、51、53、54に当接して搬送されるカード2の一方の面によって形成される仮想搬送面Sから第1方向V1側へずれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性を有するカード状記録媒体を搬送する媒体搬送機構およびこの媒体搬送機構を備える媒体処理装置に関する。
【0002】
なお、本明細書における「印字」には、カード状記録媒体に記された文字の他、カード状記録媒体に記された図形、記号および模様等が含まれるものとする。また、本明細書における「印字を行う」には、カード状記録媒体に文字を記すことの他、カード状記録媒体に図形、記号あるいは模様等を記すことが含まれるものとする。
【背景技術】
【0003】
従来、カードの表面に印字を行うサーマルヘッドを備えるカード処理装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のカード処理装置は、サーマルヘッドが配置される印字処理部と、カードの印字を消去する変色処理部とを備えている。また、このカード処理装置は、サーマルヘッドに対向配置されるプラテンローラを備えている。カードの搬送方向におけるサーマルヘッドおよびプラテンローラの前後のそれぞれには、カードを搬送する搬送ローラ対が配置されており、カードの搬送方向における搬送ローラ対の間隔は、カードの長さよりもわずかに短くなっている。
【0004】
特許文献1に記載のカード処理装置では、印字が行われる際に、カードの表面にサーマルヘッドが所定の圧力で当接した状態で、プラテンローラおよび搬送ローラ対によって、カードが搬送される。したがって、サーマルヘッドおよびプラテンローラの前後に配置される一方の搬送ローラ対を構成するローラ間にカードの先端が突入するときには、カードは、サーマルヘッドとプラテンローラとの間、および、他方の搬送ローラ対に挟まれている。
【0005】
また、このカード処理装置では、印字が行われずにカードが搬送されることがある。この際には、サーマルヘッドは、カードの搬送路から退避しており、カードの表面には、接触していない。したがって、サーマルヘッドおよびプラテンローラの前後に配置される一方の搬送ローラ対を構成するローラ間にカードの先端が突入するときには、カードは、他方の搬送ローラ対に挟まれているが、サーマルヘッドとプラテンローラとの間には挟まれておらず、プラテンローラの外周面に接触している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−243835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のカード処理装置は、印字処理部と変色処理部とを備えており、このカード処理装置で処理されるカードには、印字処理および消去処理が繰り返し行われる。そのため、このカード処理装置で使用されるカードは汚れやすい。また、このカード処理装置では、カードの汚れの影響で、特にサーマルヘッドの周辺に配置されるプラテンローラや搬送ローラ対が汚れやすい。カード、プラテンローラおよび搬送ローラ対が汚れると、カードとプラテンローラとの間の摩擦抵抗やカードと搬送ローラ対との間の摩擦抵抗が小さくなり、カードの搬送力が低下する。
【0008】
ここで、特許文献1に記載のカード処理装置では、カードに印字が行われる際には、カードの表面にサーマルヘッドが所定の圧力で当接しているため、プラテンローラの搬送力がカードに伝達される。したがって、このカード処理装置では、カードに印字が行われる場合、カードの汚れおよびプラテンローラや搬送ローラ対の汚れの影響で、カードの搬送力が低下しても、一方の搬送ローラ対を構成するローラ間にカードの先端が突入するときに、他方の搬送ローラ対の搬送力に加えてプラテンローラの搬送力がカードに伝達されやすいため、一方の搬送ローラ対を構成するローラ間にカードの先端が突入するときの負荷の影響で、カードが滑って搬送されないといった状況(カードジャム)は生じにくい。
【0009】
一方で、特許文献1に記載のカード処理装置では、印字が行われずにカードが搬送される際には、サーマルヘッドがカードの搬送路から退避しているため、プラテンローラの搬送力がカードに伝達されにくい。したがって、このカード処理装置では、印字が行われずにカードが搬送される場合、カードの汚れおよびプラテンローラや搬送ローラ対の汚れの影響で、カードの搬送力が低下すると、一方の搬送ローラ対を構成するローラ間にカードの先端が突入するときに、プラテンローラの搬送力がカードにさらに伝達されにくくなり、一方の搬送ローラ対を構成するローラ間にカードの先端が突入するときの負荷の影響で、カードが滑って搬送されないといった状況(カードジャム)が生じやすくなる。かかるカードジャムは、プラテンローラや搬送ローラ対の清掃の頻度を高めれば、回避することが可能であるが、清掃の頻度が高くなると、カード処理装置のメンテナンスが煩雑になる。
【0010】
そこで、本発明の課題は、カード状記録媒体を搬送する駆動ローラ等の清掃の頻度が低くても、カード状記録媒体のジャムの発生を抑制することが可能な媒体搬送機構を提供することにある。また、本発明の課題は、かかる媒体搬機構を備える媒体処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明の媒体搬送機構は、可撓性を有するカード状記録媒体を搬送する媒体搬送機構において、カード状記録媒体の一方の面に当接してカード状記録媒体を搬送する複数の第1駆動ローラおよび少なくとも1個の第2駆動ローラからなる複数の駆動ローラと、第2駆動ローラに対向配置されるとともに第2駆動ローラに向かって付勢されカード状記録媒体の他方の面に当接する第1パッドローラとを備え、複数の駆動ローラは、カード状記録媒体の搬送方向において、カード状記録媒体の長さよりも短い間隔で配置され、カード状記録媒体の厚み方向におけるカード状記録媒体の一方の面から離れる方向を第1方向とすると、カード状記録媒体の一方の面と第2駆動ローラとの接触位置は、カード状記録媒体の厚み方向において、複数の第1駆動ローラに当接して搬送されるカード状記録媒体の一方の面によって形成される仮想搬送面から第1方向側へずれていることを特徴とする。
【0012】
本発明の媒体搬送機構では、第2駆動ローラに向かって付勢される第1パッドローラが第2駆動ローラに対向配置されている。また、本発明では、カード状記録媒体の厚み方向におけるカード状記録媒体の一方の面から離れる方向を第1方向とすると、カード状記録媒体の一方の面と第2駆動ローラとの接触位置は、カード状記録媒体の厚み方向において、複数の第1駆動ローラに当接して搬送されるカード状記録媒体の一方の面によって形成される仮想搬送面から第1方向側へずれている。
【0013】
そのため、たとえば、第2駆動ローラから、第2駆動ローラと隣り合う第1駆動ローラに向かって搬送されるカード状記録媒体の先端がこの第1駆動ローラに到達する際には、カード状記録媒体の先端がこの第1駆動ローラに接触しやすくなって、この第1駆動ローラの搬送力がカード状記録媒体に伝達されやすくなる。したがって、本発明では、カード状記録媒体や駆動ローラが汚れて駆動ローラによるカード状記録媒体の搬送力が低下していても、第2駆動ローラと隣り合う第1駆動ローラにカード状記録媒体の先端が到達する際の、カード状記録媒体のジャムの発生を抑制することが可能になる。
【0014】
また、第2駆動ローラと隣り合う第1駆動ローラにカード状記録媒体が当接すると、カード状記録媒体が撓むため、可撓性を有するカード状記録媒体の復元力によって、第2駆動ローラと隣り合う第1駆動ローラとカード状記録媒体との接触圧が高くなる。したがって、この第1駆動ローラの搬送力がカード状記録媒体に伝達されやすくなる。その結果、本発明では、カード状記録媒体や駆動ローラが汚れて駆動ローラによるカード状記録媒体の搬送力が低下していても、第2駆動ローラと隣り合う第1駆動ローラとさらに隣り合う第1駆動ローラにカード状記録媒体の先端が到達する際の、カード状記録媒体のジャムの発生を抑制することが可能になる。
【0015】
このように、本発明では、カード状記録媒体や駆動ローラが汚れて駆動ローラによるカード状記録媒体の搬送力が低下していても、第2駆動ローラと隣り合う第1駆動ローラにカード状記録媒体の先端が到達する際、および、第2駆動ローラと隣り合う第1駆動ローラとさらに隣り合う第1駆動ローラにカード状記録媒体の先端が到達する際の、カード状記録媒体のジャムの発生を抑制することが可能になる。したがって、本発明では、駆動ローラ等の清掃の頻度が低くても、カード状記録媒体のジャムの発生を抑制することが可能になる。
【0016】
本発明において、たとえば、第1駆動ローラの回転中心と第2駆動ローラの回転中心とは、カード状記録媒体の厚み方向において同じ位置にあり、第2駆動ローラの径は、第1駆動ローラの径よりも小さくなっている。また、本発明において、たとえば、第2駆動ローラの径は、第1駆動ローラの径と等しく、第2駆動ローラの回転中心は、カード状記録媒体の厚み方向において、第1駆動ローラの回転中心よりも第1方向側にあっても良い。
【0017】
本発明において、カード状記録媒体と第2駆動ローラとの接触位置と、仮想搬送面とのカード状記録媒体の厚み方向における距離は、カード状記録媒体の厚みの半分以上、かつ、カード状記録媒体の厚み以下であることが好ましい。このように構成すると、カード状記録媒体の搬送負荷を低減しつつ、カード状記録媒体のジャムの発生を抑制することが可能になる。
【0018】
本発明において、たとえば、媒体搬送機構は、第1駆動ローラとして、第2駆動ローラと隣り合う第3駆動ローラと、第3駆動ローラを挟んで第2駆動ローラとは反対側で第3駆動ローラと隣り合う第4駆動ローラとを備えるとともに、第4駆動ローラに対向配置され第4駆動ローラに向かって付勢されるとともにカード状記録媒体の他方の面に当接する第2パッドローラを備え、カード状記録媒体の搬送方向における第2駆動ローラと第4駆動ローラとの間隔は、カード状記録媒体の長さよりも短くなっている。この場合には、第2駆動ローラから第4駆動ローラに向かって搬送されるカード状記録媒体の先端が第4駆動ローラと第2パッドローラとの間に突入する際の負荷が大きくなるため、カード状記録媒体の先端が第4駆動ローラと第2パッドローラとの間に突入する際にカード状記録媒体のジャムが発生しやすくなる。しかし、本発明では、可撓性を有するカード状記録媒体の復元力によって第3駆動ローラとカード状記録媒体との接触圧を高めることができるため、カード状記録媒体や駆動ローラが汚れて駆動ローラによるカード状記録媒体の搬送力が低下していても、第3駆動ローラの搬送力によって、カード状記録媒体の先端が第4駆動ローラと第2パッドローラとの間に突入する際のカード状記録媒体のジャムの発生を抑制することが可能になる。
【0019】
本発明において、たとえば、複数の駆動ローラは、カード状記録媒体の搬送方向が水平方向に対して傾くように配置されている。この場合には、斜め上方向に向かってカード状記録媒体が搬送されることがあるが、カード状記録媒体や駆動ローラが汚れて駆動ローラによるカード状記録媒体の搬送力が低下しているときに斜め上方向に向かってカード状記録媒体が搬送されると、重力の影響で、カード状記録媒体のジャムが発生しやすくなる。しかし、本発明では、第2駆動ローラと隣り合う第1駆動ローラの搬送力がカード状記録媒体に伝達されやすくなるため、カード状記録媒体や駆動ローラが汚れて駆動ローラによるカード状記録媒体の搬送力が低下しているときに斜め上方向に向かってカード状記録媒体が搬送されても、カード状記録媒体のジャムの発生を抑制することが可能になる。
【0020】
本発明の媒体搬送機構は、カード状記録媒体に所定の処理を行う媒体処理装置に用いることができる。この媒体処理装置では、駆動ローラ等の清掃の頻度が低くても、カード状記録媒体のジャムの発生を抑制することが可能になる。
【0021】
本発明において、媒体処理装置は、たとえば、カード状記録媒体の他方の面に印字を行う印字ヘッドおよび/またはカード状記録媒体の他方の面の印字を消去する消去ヘッドが配置される印字消去処理部を備え、媒体搬送機構は、印字消去処理部に配置されている。印字消去処理部では、カード状記録媒体が汚れやすく、かつ、カード状記録媒体の汚れの影響で駆動ローラが汚れやすいため、駆動ローラによるカード状記録媒体の搬送力が低下して、カード状記録媒体のジャムが発生しやすくなる。しかし、本発明では、第2駆動ローラと隣り合う第1駆動ローラの搬送力がカード状記録媒体に伝達されやすくなるため、カード状記録媒体や駆動ローラが汚れて駆動ローラによるカード状記録媒体の搬送力が低下していても、カード状記録媒体のジャムの発生を抑制することが可能になる。
【0022】
本発明において、たとえば、媒体搬送機構は、第1駆動ローラとして、第2駆動ローラと隣り合う第3駆動ローラを備え、第3駆動ローラは、印字ヘッドの印字部または消去ヘッドの消去部に対向配置されるプラテンローラである。この場合には、第3駆動ローラの幅は、第3駆動ローラ以外の第1駆動ローラの幅および第2駆動ローラの幅よりも広いことが好ましい。このように構成すると、第2駆動ローラと隣り合う第3駆動ローラとカード状記録媒体との接触面積が広くなるため、第3駆動ローラの搬送力がカード状記録媒体に効果的に伝達されやすくなる。したがって、カード状記録媒体や駆動ローラが汚れて駆動ローラによるカード状記録媒体の搬送力が低下していても、カード状記録媒体のジャムの発生を効果的に抑制することが可能になる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明の媒体搬送機構および媒体処理装置では、カード状記録媒体を搬送する駆動ローラ等の清掃の頻度が低くても、カード状記録媒体のジャムの発生を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態にかかる媒体処理装置の概略構成を説明するための側面図である。
【図2】図1に示す印字消去処理部の概略構成を説明するための側面図である。
【図3】図2のE−E方向から印字消去処理部の概略構成を説明するための底面図である。
【図4】図1に示す媒体搬送機構の構成を説明するための側面図である。
【図5】本発明の他の実施の形態にかかる媒体搬送機構の構成を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0026】
(媒体処理装置の概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる媒体処理装置1の概略構成を説明するための側面図である。
【0027】
本形態の媒体処理装置1は、カード状記録媒体2(以下、「カード2」とする。)に対して印字を行ってカード2を発行するとともに使用済みのカード2を回収するカード発行装置である。したがって、以下では、媒体処理装置1を「カード発行装置1」とする。このカード発行装置1は、カード2に印字を行う機能とカード2上の印字を消去する機能とを有する印字消去処理部3を備えている。
【0028】
また、カード発行装置1は、印字消去処理部3に加え、カード2に所定の情報を記録するとともにカード2に記録された情報を読み取る再生記録部4と、新たに発行されるカード2を印字消去処理部3へ供給するカード供給部5と、使用済みのカード2を回収するカード回収部6と、印字消去処理部3の内部をクリーニングするためのクリーニングカード(図示省略)を保管するクリーニングカード保管部7と、カード2の搬送方向を切り替える第1方向切替機構8および第2方向切替機構9と、カード2の挿入排出口11aが形成されたカード挿入排出部11とを備えている。
【0029】
なお、以下の説明では、図1に示すように互いに直交する3方向をX方向、Y方向およびZ方向とする。また、以下の説明では、X1方向側を「右」側、X2方向側を「左」側、Y1方向側を「上」側、Y2方向側を「下」側とする。また、Z方向を「前後方向」とする。
【0030】
図1に示すように、カード挿入排出部11は、カード発行装置1の右上端側に配置され、再生記録部4は、カード挿入排出部11の左方に配置されている。第1方向切替機構8は、再生記録部4の左方に配置され、カード回収部6は、再生記録部4の下方に配置されている。印字消去処理部3は、第1方向切替機構8の左下方に配置され、第2方向切替機構9は、印字消去処理部3の左下方に配置されている。クリーニングカード保管部7は、第2方向切替機構9の上方に配置され、カード供給部5は、クリーニングカード保管部7および第2方向切替機構9の左方に配置されている。
【0031】
カード2は、たとえば、厚さが0.7〜0.8mm程度の塩化ビニール製のカードであり、可撓性を有している。このカード2の表面には、感熱方式によって印字が行われる印字部(図示省略)が形成されている。すなわち、本形態のカード2は、所定回数の印字と印字の消去(印字/消去)が可能なリライタブルカードであり、所定回数の印字/消去が行われると、カード回収部6に回収される。また、本形態のカード2は、通信用のアンテナ(図示省略)が内蔵された非接触式のICカードである。なお、カード2は、磁気情報が記録される磁気ストライプが表面に形成された磁気カードや、表面にIC接点が固定された接触式のICカードであっても良い。また、カード2は、厚さが0.18〜0.36mm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)カードや、所定の厚さを有する紙カードであっても良い。
【0032】
上述のように、本形態のカード2は非接触式のICカードであるため、再生記録部4は、カード2内部のアンテナと通信を行うためのアンテナ15と、カード2の搬送を行うための2組の搬送ローラ対16とを備えている。カード回収部6は、回収前のカード2が一時的に保管されるカード保管部17と、カード2が回収されるリジェクトカセット18とを備えている。
【0033】
印字消去処理部3は、カード2の上面に当接して感熱方式でカード2の上面に印字を行う印字ヘッド(サーマルヘッド)19と、カード2の上面に当接して感熱方式でカード2の上面の印字を消去する消去ヘッド20とを備えている。すなわち、印字消去処理部3は、加熱された印字ヘッド19をカード2に当接させてカード2に印字を行うとともに、加熱された消去ヘッド20をカード2に当接させてカード2上の印字を消去する。この印字消去処理部3の詳細な構成については後述する。
【0034】
第1方向切替機構8は、印字消去処理部3と再生記録部4とカード回収部6との間でカード2の搬送方向を切り替える機能を果たしている。すなわち、第1方向切替機構8は、印字消去処理部3、再生記録部4またはカード回収部6から搬出されるカード2の搬送方向を変えて、印字消去処理部3、再生記録部4またはカード回収部6へカード2を搬入する。たとえば、第1方向切替機構8には、印字消去処理部3から右上方へ搬出されるカード2が搬入され、第1方向切替機構8は、このカード2を再生記録部4またはカード回収部6へ搬入する。
【0035】
この第1方向切替機構8は、カード2の搬送を行うための2組の搬送ローラ対21と、カード2の搬送方向の切替を行うための切替駆動機構22とを備えている。切替駆動機構22は、駆動モータ23、プーリ24、25およびタイミングベルト26等によって構成されている。この切替駆動機構22は、2組の搬送ローラ対21の略中間位置に配置されるプーリ25を回動中心として、2組の搬送ローラ対21を回動させる。
【0036】
本形態では、印字消去処理部3よりもカード挿入排出部11側に配置される搬送ローラ対16、21等は、印字消去処理部3の下方に配置される駆動モータ27に図示を省略するタイミングベルト等の伝達手段を介して連結されており、駆動モータ27によって駆動される。
【0037】
カード供給部5は、発行前のカード2が収納されるホッパーカセット30と、ホッパーカセット30に収納されたカード2を第2方向切替機構9に向かって送出するための送出機構31とを備えている。送出機構31は、カード2に係合してカード2を送出する爪部材32と、爪部材32を駆動するための駆動モータ33と、駆動モータ33の動力を爪部材32へ伝達するプーリ34、タイミングベルト35、スプロケット36およびチェーン37等の動力伝達手段とを備えている。
【0038】
クリーニングカード保管部7は、図示を省略するクリーニングカードの搬送ローラを備えている。このクリーニングカード保管部7は、印字消去処理部3の内部のクリーニングが必要となる場合に、第2方向切替機構9を介して印字消去処理部3にクリーニングカードを送出し、印字消去処理部3の内部のクリーニングが終了すると、第2方向切替機構9を介して印字消去処理部3からクリーニングカードを回収して保管する。
【0039】
第2方向切替機構9は、印字消去処理部3とカード供給部5とクリーニングカード保管部7との間でカード2の搬送方向を切り替える機能を果たしている。すなわち、第2方向切替機構9は、印字消去処理部3、カード供給部5またはクリーニングカード保管部7から搬出されるカード2またはクリーニングカードの搬送方向を変えて、印字消去処理部3またはクリーニングカード保管部7へカード2またはクリーニングカードを搬入する。たとえば、第2方向切替機構9には、カード供給部5から搬出されるカード2が搬入され、あるいは、クリーニングカード保管部7から搬出されるクリーニングカードが搬入され、第2方向切替機構9は、このカード2またはクリーニングカードを印字消去処理部3へ搬入する。
【0040】
この第2方向切替機構9は、カード2等の搬送を行うための2組の搬送ローラ対39と、カード2等の搬送方向の切替を行うための切替駆動機構41とを備えている。2組の搬送ローラ対39は、印字消去処理部3を構成する後述の駆動モータ75に図示を省略するタイミングベルト等の伝達手段を介して連結されており、駆動モータ75によって駆動される。切替駆動機構41は、駆動モータ42、プーリ43、44およびタイミングベルト45等によって構成されている。この切替駆動機構41は、2組の搬送ローラ対39の略中間位置に配置されるプーリ43を回動中心として、2組の搬送ローラ対39を回動させる。
【0041】
(印字消去処理部の概略構成)
図2は、図1に示す印字消去処理部3の概略構成を説明するための側面図である。
【0042】
印字消去処理部3は、上述の印字ヘッド19および消去ヘッド20に加え、カード2を搬送する媒体搬送機構としてのカード搬送機構48を備えている。カード搬送機構48は、カード2を搬送するための5個の駆動ローラ50〜54と、駆動ローラ50〜54を駆動する駆動機構55とを備えている。このカード搬送機構48の詳細な構成については後述する。
【0043】
また、印字消去処理部3は、カード2に当接する方向およびカード2から離れる方向へ印字ヘッド19を移動させる印字ヘッド駆動機構56と、カード2に当接する方向およびカード2から離れる方向へ消去ヘッド20を移動させる消去ヘッド駆動機構57とを備えている。印字消去処理部3の内部には、カード2が搬送されるカード搬送路58が形成されている。
【0044】
印字ヘッド駆動機構56は、印字ヘッド19を保持するヘッドホルダ60と、印字ヘッド19を移動させるためにヘッドホルダ60を回動させる印字ヘッド駆動モータ61とを備えている。印字ヘッド駆動モータ61の動力は、歯車列62、偏心カム63およびレバー64等を介してヘッドホルダ60に伝達される。ヘッドホルダ60は、偏心カム63の回転によるレバー64の移動に伴って、右端部の回動中心60bを中心にして回動する。
【0045】
ヘッドホルダ60の回動に伴って、印字ヘッド19は、図2の二点鎖線で示す上死点まで上昇し、また、図2の実線で示す下死点まで下降する。図2の実線で示す下死点近傍は、印字ヘッド19がカード2の上面に当接可能な印字可能位置である。なお、ヘッドホルダ60は、図示を省略する引張コイルバネによって、回動中心60bを中心にして、図2の反時計方向に付勢されており、カード2と印字ヘッド19とを所定の接触圧で当接させることが可能になっている。
【0046】
消去ヘッド駆動機構57は、印字ヘッド駆動機構56とほぼ同様に構成されている。すなわち、消去ヘッド駆動機構57は、消去ヘッド20を保持するヘッドホルダ65と、消去ヘッド20を移動させるためにヘッドホルダ65を回動させる消去ヘッド駆動モータ66とを備えている。消去ヘッド駆動モータ66の動力は、歯車列67、偏心カム68およびレバー69等を介してヘッドホルダ65に伝達される。ヘッドホルダ65は、偏心カム68の回転によるレバー69の移動に伴って、左端部の回動中心65bを中心にして回動する。
【0047】
ヘッドホルダ65の回動に伴って、消去ヘッド20は、図2の二点鎖線で示す上死点まで上昇し、また、図2の実線で示す下死点まで下降する。図2の実線で示す下死点近傍は、消去ヘッド20がカード2に当接可能な消去可能位置である。なお、ヘッドホルダ65は、図示を省略する引張コイルバネによって、回動中心65bを中心にして、図2の時計方向に付勢されており、カード2と消去ヘッド20とを所定の接触圧で当接させることが可能になっている。
【0048】
なお、印字消去処理部3では、カード2の上面に印字ヘッド19や消去ヘッド20が当接するため、印字ヘッド19や消去ヘッド20の熱の影響でカード2の上面が収縮して、カード2が下反りすることがある。また、印字消去処理部3は、印字ヘッド19の位置を検出するための位置検出機構(図示省略)と、消去ヘッド20の位置を検出するための位置検出機構(図示省略)とを備えている。
【0049】
(カード搬送機構の構成)
図3は、図2のE−E方向から印字消去処理部3の概略構成を説明するための底面図である。図4は、図1に示すカード搬送機構48の構成を説明するための側面図である。
【0050】
上述のように、印字消去処理部3は、第1方向切替機構8の左下方に配置されるとともに、第2方向切替機構9の右上方に配置されており、第1方向切替機構8と第2方向切替機構9との間でカード2を搬送する。すなわち、本形態では、右上がりの斜め方向(W方向)が印字消去処理部3におけるカード2の搬送方向となり、駆動ローラ50〜54は、カード2の搬送方向が水平方向に対して傾くように配置されている。なお、前後方向(Z方向)と搬送方向Wとに直交する方向(V方向)は、カード搬送路58を搬送されるときのカード2の厚み方向である。以下では、厚み方向Vのうち、下側に向かうV1方向を「第1方向」とする。
【0051】
駆動ローラ50〜54は、表面にゴム層が形成されたゴムローラである。この駆動ローラ50〜54は、カード2の搬送方向Wに所定の等間隔で配置されている。具体的には、駆動ローラ50〜54は、カード搬送路58の右上から左下に向かってこの順番で、かつ、一定の間隔P1でカード搬送路58に配置されている。本形態では、駆動ローラ50と駆動ローラ52との間隔P2(すなわち、駆動ローラ52と駆動ローラ54のとの間隔P2、および、駆動ローラ51と駆動ローラ53との間隔P2)がカード2の長さ(カード2の搬送方向Wの長さ)よりもわずかに短くなるように駆動ローラ50〜54が配置されている。また、駆動ローラ50〜54は、カード搬送路58の下側に配置されており、カード2の下面に当接する。
【0052】
駆動ローラ50には、パッドローラ71が対向配置され、駆動ローラ52には、パッドローラ72が対向配置され、駆動ローラ54には、パッドローラ73が対向配置されている。パッドローラ71〜73は、図示を省略する付勢部材によって、駆動ローラ50、52、54に向かって付勢されており、カード2の上面に当接する。駆動ローラ51は、カード2へ印字を行う際の印字ヘッド19の印字部に対向配置されるプラテンローラであり、駆動ローラ53は、カード2上の印字を消去する際の消去ヘッド20の消去部に対向配置されるプラテンローラである。
【0053】
本形態では、駆動ローラ50、51、53、54の径はいずれも、径D1であり、等しくなっている。また、図4に示すように、駆動ローラ52の径D2は、駆動ローラ50、51、53、54の径D1よりも小さくなっている。また、駆動ローラ50〜54の回転中心は、カード2の搬送方向Wに平行な中心線CL上にあり、カード2の厚み方向Vにおいて、駆動ローラ50〜54の回転中心は、同じ位置にある。
【0054】
そのため、図4に示すように、駆動ローラ50、51、53、54に当接して搬送されるカード2の下面によって形成される仮想面を仮想搬送面Sとすると、カード2の下面と駆動ローラ52との接触位置CPは、カード2の厚み方向Vにおいて、仮想搬送面Sから第1方向V1側へずれている。本形態では、厚み方向Vにおける接触位置CPと仮想搬送面Sとの距離dは、カード2の厚みの半分以上、かつ、カード2の厚み以下となっている。なお、図4では、説明の便宜上、見た目では、距離dがカード2の厚み以上となっている。
【0055】
図3に示すように、駆動ローラ51、53の幅(前後方向の幅)は、駆動ローラ50、52、54の幅よりも広くなっている。具体的には、駆動ローラ51の幅は、印字ヘッド19の幅に対応する幅となっており、カード2の幅よりも広くなっている。また、駆動ローラ53の幅は、消去ヘッド20の幅に対応する幅となっており、カード2の幅よりも広くなっている。
【0056】
なお、本形態の駆動ローラ50、51、53、54は、第1駆動ローラであり、駆動ローラ52は、第2駆動ローラである。また、駆動ローラ51、53は、第2駆動ローラである駆動ローラ52と隣り合う第3駆動ローラであり、駆動ローラ50、54は、第3駆動ローラである駆動ローラ51、53を挟んで第2駆動ローラである駆動ローラ52とは反対側で第3駆動ローラである駆動ローラ51、53と隣り合う第4駆動ローラである。さらに、パッドローラ72は、第2駆動ローラである駆動ローラ52に対向配置される第1パッドローラであり、パッドローラ71、73は、第4駆動ローラである駆動ローラ50、54に対向配置される第2パッドローラである。
【0057】
駆動機構55は、5個の駆動ローラ50〜54を一緒に駆動する駆動モータ75と、駆動モータ75の出力軸に固定されるプーリ76と、駆動ローラ51、53の回転軸のそれぞれに固定されるプーリ77と、プーリ76、77に架け渡されるベルト78と、プーリ77と隣接するように駆動ローラ51の回転軸に固定されるプーリ79、80と、プーリ77と隣接するように駆動ローラ53の回転軸に固定されるプーリ81と、駆動ローラ50の回転軸に固定されるプーリ82と、駆動ローラ52の回転軸に固定されるプーリ83と、駆動ローラ54の回転軸に固定されるプーリ84と、プーリ79、83に架け渡されるベルト85と、プーリ80、82に架け渡されるベルト86と、プーリ81、84に架け渡されるベルト87とを備えている。
【0058】
上述のように、駆動ローラ50、51、53、54の径はいずれも、径D1である。また、駆動ローラ52の径D2は、駆動ローラ50、51、53、54の径D1よりも小さくなっている。本形態では、駆動ローラ50、51、53、54の周速を合わせるため、プーリ79〜82、84のピッチ円の径は等しくなっている。また、駆動ローラ50〜54の周速を合わせるため、プーリ83のピッチ円の径は、プーリ79〜82、84のピッチ円の径よりも小さくなっている。具体的には、プーリ83のピッチ円の径は、プーリ79〜82、84のピッチ円の径の(D2/D1)倍となっている。
【0059】
前後方向におけるカード搬送路58の側面は、図3に示すように、2枚の側板89によって構成されている。2枚の側板89は、搬送方向Wと略平行に配置されており、前後方向でカード2をガイドする機能を果たしている。側板89には、カード2の厚み方向Vでカード2をガイドするための複数の搬送ガイド90が固定されている。本形態では、搬送ガイド90によって前後方向におけるカード2の両端部分がガイドされている。
【0060】
印字消去処理部3では、図2の実線で示すように、印字ヘッド19が下降した状態でカード2が搬送されてカード2に印字が行われ、また、図2の実線で示すように、消去ヘッド20が下降した状態でカード2が搬送されてカード2の印字が消去される。また、印字消去処理部3では、図2の二点鎖線で示すように、印字ヘッド19および消去ヘッド20が上昇した状態で(すなわち、印字および印字の消去が行われることなく)、カード2が搬送されることもある。
【0061】
ここで、図4に示すように、搬送されるカード2の下面が駆動ローラ51〜53に接触すると、カード2の下面と駆動ローラ52との接触位置CPが、カード2の厚み方向Vにおいて、仮想搬送面Sから第1方向V1側へずれているため、カード2は、パッドローラ72の付勢力で、駆動ローラ51、53の上端を支点として下方向へ撓む。また、カード2の下面と駆動ローラ52との接触位置CPが、カード2の厚み方向Vにおいて、仮想搬送面Sから第1方向V1側へずれているため、駆動ローラ52から駆動ローラ51または駆動ローラ53に向かう途中のカード2の下先端は、仮想搬送面Sよりも第1方向V1側にずれている。
【0062】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、搬送されるカード2の下面が駆動ローラ51〜53に接触すると、カード2は、パッドローラ72の付勢力で、駆動ローラ51、53の上端を支点として撓む。そのため、印字ヘッド19および消去ヘッド20が上昇した状態でカード2が搬送される場合であっても、可撓性を有するカード2の復元力によって、駆動ローラ51、53とカード2との接触圧が高くなる。したがって、カード2の右斜め上方向または左斜め下方向へさらにカード2が搬送されるときには、印字ヘッド19および消去ヘッド20が上昇した状態でカード2が搬送される場合であっても、駆動ローラ51または駆動ローラ53の搬送力がカード2に伝達されやすくなる。特に本形態では、駆動ローラ51、53の幅がカード2の幅よりも広くなっており、駆動ローラ51、53とカード2との接触面積が広くなるため、駆動ローラ51または駆動ローラ53の搬送力がカード2に効果的に伝達されやすくなる。
【0063】
したがって、本形態では、カード2が汚れやすい印字消去処理部3にカード搬送機構48が配置されるために、カード2の汚れに加えて、カード2の汚れの影響で駆動ローラ51〜53が汚れて駆動ローラ51〜53によるカード2の搬送力が低下していても、印字ヘッド19が上昇した状態で搬送されるカード2の先端が駆動ローラ50とパッドローラ71との間に突入する際、あるいは、消去ヘッド20が上昇した状態で搬送されるカード2の先端が駆動ローラ54とパッドローラ73との間に突入する際のカード2のジャムの発生を抑制することが可能になる。特に、駆動ローラ50とパッドローラ71との間にカード2の先端が突入する際には、カード2が右斜め上方向へ搬送されるため、重力の影響で、カード2のジャムが発生しやすくなるが、本形態では、駆動ローラ51とカード2との接触圧を高めることができるため、駆動ローラ50とパッドローラ71との間にカード2の先端が突入する際のカード2のジャムの発生を抑制することが可能になる。
【0064】
このように本形態では、カード2や駆動ローラ51〜53が汚れて駆動ローラ51〜53によるカード2の搬送力が低下していても、印字ヘッド19が上昇した状態で搬送されるカード2の先端が駆動ローラ50とパッドローラ71との間に突入する際、あるいは、消去ヘッド20が上昇した状態で搬送されるカード2の先端が駆動ローラ54とパッドローラ73との間に突入する際のカード2のジャムの発生を抑制することが可能になる。したがって、本形態では、駆動ローラ50〜54の清掃の頻度が低くても、カード2のジャムの発生を抑制することが可能になる。
【0065】
本形態では、厚み方向Vにおける接触位置CPと仮想搬送面Sとの距離dは、カード2の厚みの半分以上、かつ、カード2の厚み以下となっている。そのため、本願発明者の検討によると、カード2の搬送負荷を低減しつつ、カード2のジャムの発生を抑制することが可能になる。
【0066】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0067】
上述した形態では、カード2の厚み方向Vにおいて、カード2の下面と駆動ローラ52との接触位置CPを仮想搬送面Sから第1方向V1側へずらすために、駆動ローラ52の径D2は、駆動ローラ50、51、53、54の径D1よりも小さくなっており、かつ、カード2の厚み方向Vにおいて、駆動ローラ50〜54の回転中心は、同じ位置にある。この他にもたとえば、カード2の厚み方向Vにおいて、カード2の下面と駆動ローラ52との接触位置CPを仮想搬送面Sから第1方向V1側へずらすために、図5に示すように、駆動ローラ52の径D2が駆動ローラ50、51、53、54の径D1と等しく、かつ、カード2の厚み方向Vにおいて、駆動ローラ52の回転中心が駆動ローラ50、51、53、54の回転中心よりも第1方向V1側にあっても良い。すなわち、駆動ローラ52の径D2が駆動ローラ50、51、53、54の径D1と等しく、かつ、駆動ローラ50、51、53、54の回転中心が中心線CL上にあり、駆動ローラ52の回転中心が中心線CLよりも第1方向V1側に配置される中心線CL1上にあっても良い。
【0068】
また、カード2の厚み方向Vにおいて、カード2の下面と駆動ローラ52との接触位置CPを仮想搬送面Sから第1方向V1側へずらすために、駆動ローラ52の径D2が駆動ローラ50、51、53、54の径D1と等しく、かつ、カード2の厚み方向Vにおいて、駆動ローラ50〜54の回転中心が同じ位置にあるとともに、駆動ローラ52の表面硬度が駆動ローラ50、51、53、54の表面硬度よりも低くなっていても良い。
【0069】
上述した形態では、カード搬送機構48は、第1駆動ローラとして、4個の駆動ローラ50、51、53、54を備え、第2駆動ローラとして、1個の駆動ローラ52を備えているが、カード搬送機構48が備える第1駆動ローラの数は5個以上または2個あるいは3個であっても良いし、カード搬送機構48が備える第2駆動ローラの数は2個以上であっても良い。
【0070】
たとえば、カード搬送機構48は、駆動ローラ50、54の2個の第1駆動ローラと、駆動ローラ52の1個の第2駆動ローラとを備えていても良い。この場合には、駆動ローラ52から、駆動ローラ50(または駆動ローラ54)に向かって搬送されるカード2の下先端は、仮想搬送面Sよりも第1方向V1側にずれているため、カード2の先端が駆動ローラ50(または駆動ローラ54)に到達する際に、カード2の先端が駆動ローラ50(または駆動ローラ54)に当接しやすくなる。したがって、カード2の先端が駆動ローラ50(または駆動ローラ54)に到達する際に、駆動ローラ50(または駆動ローラ54)によるカード2の搬送力がカード2に伝達されやすくなる。その結果、この場合には、カード2や駆動ローラ50、52(または駆動ローラ52、54)が汚れて駆動ローラ50、52(または駆動ローラ52、54)によるカード2の搬送力が低下していても、駆動ローラ50(または駆動ローラ54)にカード2の先端が到達する際の、カード2のジャムの発生を抑制することが可能になる。
【0071】
上述した形態では、厚み方向Vにおける接触位置CPと仮想搬送面Sとの距離dは、カード2の厚みの半分以上、かつ、カード2の厚み以下となっている。この他にもたとえば、駆動ローラ51、53によるカード2の搬送力を確保してカード2のジャムの発生を抑制することができるのであれば、接触位置CPと仮想搬送面Sとの距離dは、カード2の厚みの半分より小さくても良い。また、カード2の搬送負荷が過大にならないのであれば、接触位置CPと仮想搬送面Sとの距離dは、カード2の厚みより大きくても良い。
【0072】
上述した形態では、駆動ローラ50〜54は、カード2の搬送方向が水平方向に対して傾くように配置されている。この他にもたとえば、駆動ローラ50〜54は、カード2の搬送方向が水平方向と平行になるように配置されても良い。
【0073】
上述した形態では、カード搬送機構48は、印字消去処理部3に配置されているが、カード搬送機構48は、印字消去処理部3以外の、カード2に対して所定の処理を行う媒体処理部に配置されても良い。この場合には、駆動ローラ51、53の幅は、駆動ローラ50、52、54の幅と等しくても良い。また、カード搬送機構48は、印字消去処理部3を有しない所定の媒体処理装置に用いられても良い。
【符号の説明】
【0074】
1 カード発行装置(媒体処理装置)
2 カード(カード状記録媒体)
3 印字消去処理部
19 印字ヘッド
20 消去ヘッド
48 カード搬送機構(媒体搬送機構)
50 駆動ローラ(第1駆動ローラ、第4駆動ローラ)
51 駆動ローラ(第1駆動ローラ、第3駆動ローラ、プラテンローラ)
52 駆動ローラ(第2駆動ローラ)
53 駆動ローラ(第1駆動ローラ、第3駆動ローラ、プラテンローラ)
54 駆動ローラ(第1駆動ローラ、第4駆動ローラ)
71、73 パッドローラ(第2パッドローラ)
72 パッドローラ(第1パッドローラ)
CP カード状記録媒体の一方の面と第2駆動ローラとの接触位置
D1 第1駆動ローラの径
D2 第2駆動ローラの径
d カード状記録媒体と第2駆動ローラとの接触位置と仮想搬送面との距離
S 仮想搬送面
V カード状記録媒体の厚み方向
V1 第1方向
W カード状記録媒体の搬送方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するカード状記録媒体を搬送する媒体搬送機構において、
前記カード状記録媒体の一方の面に当接して前記カード状記録媒体を搬送する複数の第1駆動ローラおよび少なくとも1個の第2駆動ローラからなる複数の駆動ローラと、前記第2駆動ローラに対向配置されるとともに前記第2駆動ローラに向かって付勢され前記カード状記録媒体の他方の面に当接する第1パッドローラとを備え、
複数の前記駆動ローラは、前記カード状記録媒体の搬送方向において、前記カード状記録媒体の長さよりも短い間隔で配置され、
前記カード状記録媒体の厚み方向における前記カード状記録媒体の一方の面から離れる方向を第1方向とすると、
前記カード状記録媒体の一方の面と前記第2駆動ローラとの接触位置は、前記カード状記録媒体の厚み方向において、複数の前記第1駆動ローラに当接して搬送される前記カード状記録媒体の一方の面によって形成される仮想搬送面から前記第1方向側へずれていることを特徴とする媒体搬送機構。
【請求項2】
前記第1駆動ローラの回転中心と前記第2駆動ローラの回転中心とは、前記カード状記録媒体の厚み方向において同じ位置にあり、
前記第2駆動ローラの径は、前記第1駆動ローラの径よりも小さいことを特徴とする請求項1記載の媒体搬送機構。
【請求項3】
前記第2駆動ローラの径は、前記第1駆動ローラの径と等しく、
前記第2駆動ローラの回転中心は、前記カード状記録媒体の厚み方向において、前記第1駆動ローラの回転中心よりも前記第1方向側にあることを特徴とする請求項1記載の媒体搬送機構。
【請求項4】
前記カード状記録媒体と前記第2駆動ローラとの接触位置と、前記仮想搬送面との前記カード状記録媒体の厚み方向における距離は、前記カード状記録媒体の厚みの半分以上、かつ、前記カード状記録媒体の厚み以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の媒体搬送機構。
【請求項5】
前記第1駆動ローラとして、前記第2駆動ローラと隣り合う第3駆動ローラと、前記第3駆動ローラを挟んで前記第2駆動ローラとは反対側で前記第3駆動ローラと隣り合う第4駆動ローラとを備えるとともに、前記第4駆動ローラに対向配置され前記第4駆動ローラに向かって付勢されるとともに前記カード状記録媒体の他方の面に当接する第2パッドローラを備え、
前記カード状記録媒体の搬送方向における前記第2駆動ローラと前記第4駆動ローラとの間隔は、前記カード状記録媒体の長さよりも短いことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の媒体搬送機構。
【請求項6】
複数の前記駆動ローラは、前記カード状記録媒体の搬送方向が水平方向に対して傾くように配置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の媒体搬送機構。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の媒体搬送機構を備え、前記カード状記録媒体に所定の処理を行うことを特徴とする媒体処理装置。
【請求項8】
前記カード状記録媒体の他方の面に印字を行う印字ヘッドおよび/または前記カード状記録媒体の他方の面の印字を消去する消去ヘッドが配置される印字消去処理部を備え、
前記媒体搬送機構は、前記印字消去処理部に配置されていることを特徴とする請求項7記載の媒体処理装置。
【請求項9】
前記媒体搬送機構は、前記第1駆動ローラとして、前記第2駆動ローラと隣り合う第3駆動ローラを備え、
前記第3駆動ローラは、前記印字ヘッドの印字部または前記消去ヘッドの消去部に対向配置されるプラテンローラであることを特徴とする請求項8記載の媒体処理装置。
【請求項10】
前記第3駆動ローラの幅は、前記第3駆動ローラ以外の前記第1駆動ローラの幅および前記第2駆動ローラの幅よりも広いことを特徴とする請求項9記載の媒体処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−104069(P2012−104069A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254375(P2010−254375)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】