媒体搬送装置、記録装置
【課題】紙ジャム処理時において搬送ローラーの影響を受けずに詰まった媒体を適切に除去することのできる媒体搬送装置を提供する
【解決手段】インクジェットプリンター1は、用紙を搬送する用紙搬送経路に、搬送駆動ローラー40と搬送従動ローラー41とを備えて構成された搬送手段39を備えている。また、用紙搬送経路を覆う状態と露呈させる状態とをとり得る湾曲反転ユニット3が設けられている。搬送従動ローラー41を搬送駆動ローラー40に向けて付勢する引っ張りばね31は、湾曲反転ユニット3の着脱に伴いばね長さが変化するように構成されており、湾曲反転ユニット3が取り外されると引っ張りばね31の付勢力が小さくなり、これにより紙ジャム処理時の用紙破れが防止される。
【解決手段】インクジェットプリンター1は、用紙を搬送する用紙搬送経路に、搬送駆動ローラー40と搬送従動ローラー41とを備えて構成された搬送手段39を備えている。また、用紙搬送経路を覆う状態と露呈させる状態とをとり得る湾曲反転ユニット3が設けられている。搬送従動ローラー41を搬送駆動ローラー40に向けて付勢する引っ張りばね31は、湾曲反転ユニット3の着脱に伴いばね長さが変化するように構成されており、湾曲反転ユニット3が取り外されると引っ張りばね31の付勢力が小さくなり、これにより紙ジャム処理時の用紙破れが防止される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体を搬送する媒体搬送装置、およびこれを備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ファクシミリやプリンターなどに代表される記録装置においては、媒体の一例としての記録用紙の両面に記録を実行可能なものがある。この様な記録装置は、例えば特許文献1に示されるような、記録用紙を反転させる反転経路を有しており、第1面(おもて面)に記録の行われた記録用紙は、バックフィードされて反転経路へと入り、そして第2面(うら面)を上にして、再び記録ヘッドと対向する領域へと搬送される。
【0003】
また、この様に記録用紙を反転させる反転経路を備えている場合、反転経路において紙ジャムが発生した場合に記録用紙を除去することが困難となる。その為、特許文献1や特許文献2に示されるように用紙搬送経路の一部を露呈させるカバー部材を設け、必要に応じてカバー部材を開放することにより用紙搬送経路の一部を露呈させて、詰まっている記録用紙を除去することができる様に構成される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−59599号公報
【特許文献2】特開2007−203707号公報
【特許文献3】特開昭63−286860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら紙ジャム処理の際、除去しようとする記録用紙が装置内の搬送経路において搬送ローラーによりニップされたままの状態であると、記録用紙を引き抜く際に破れてしまい、紙片が装置内に残留してしまう虞がある。この様な紙片は、殆どの場合装置の奥まった場所で発生することから、これを除去するのは非常に困難となる。
【0006】
そこで本発明はこの様な状況に鑑みなされたものであり、その目的は、紙ジャム処理時において搬送ローラーの影響を受けずに詰まった媒体を適切に除去することのできる媒体搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する為の、本発明の第1の態様に係る媒体搬送装置は、媒体を搬送する媒体搬送経路と、前記媒体搬送経路に設けられた第1ローラー、及び当該第1ローラーとの間で媒体をニップする第2ローラーを備えて構成された、媒体を搬送する媒体搬送手段と、前記第2ローラーを前記第1ローラーに向けて付勢する付勢手段と、前記媒体搬送経路を覆う第1の状態と前記媒体搬送経路を露呈させる第2の状態とをとり得る開閉体と、前記開閉体が前記第1の状態にあるときに前記付勢手段の付勢力を第1の付勢力とし、前記開閉体が前記第2の状態にあるときに前記付勢手段の付勢力を第1の付勢力より小さい第2の付勢力とする付勢力調整手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、前記開閉体が前記媒体搬送経路を露呈させる第2の状態にあるときに、前記第2ローラーを前記第1ローラーに向けて付勢する付勢手段の付勢力が前記付勢力調整手段によって小さく設定されるので、ジャム処理の際に媒体を容易に引き抜くことができ、媒体が破れて紙片として残ってしまう不具合を防止することができる。
【0009】
本発明の第2の態様に係る媒体搬送装置は、媒体を搬送する媒体搬送経路と、前記媒体搬送経路に設けられた第1ローラー、及び当該第1ローラーとの間で媒体をニップする第2ローラーを備えて構成された、媒体を搬送する媒体搬送手段と、前記媒体搬送経路を覆う第1の状態と前記媒体搬送経路を露呈させる第2の状態とをとり得る開閉体と、前記開閉体が前記第1の状態にあるときに前記第2ローラーを前記第1ローラーに接触させ、前記開閉体が前記第2の状態にあるときに前記第2ローラーを前記第1ローラーから離間させるローラー離間手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、前記開閉体が前記媒体搬送経路を露呈させる第2の状態にあるときに、前記ローラー離間手段により前記第2ローラーが前記第1ローラーから離間するので、ジャム処理の際に媒体を容易に引き抜くことができ、媒体が破れて紙片として残ってしまう不具合を確実に防止することができる。
【0011】
本発明の第3の態様は、第1の態様において、前記第2ローラーが、揺動軸を中心に揺動可能な揺動部材により支持され、前記付勢手段が、前記第2ローラーが前記第1ローラーに圧接する方向に前記揺動部材を付勢する引っ張りばねにより構成され、前記付勢力調整手段が、前記引っ張りばねの一端を支持するとともに前記引っ張りばねの付勢力が変化する方向に変位可能に設けられ、前記開閉体との非係合状態において前記付勢力が前記第2の付勢力となる場所に位置し、前記開閉体と係合することにより前記付勢力が前記第1の付勢力となる位置に保持されるガイド軸と、前記ガイド軸をその変位方向に案内するガイド部材と、を備えて構成されていることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、前記付勢力調整手段が、前記引っ張りばねを支持するガイド軸の変位により前記付勢力を調整する構成を備えるので、前記付勢力調整手段を、構造簡単にして低コストに構成することができる。
【0013】
本発明の第4の態様は、第2の態様において、前記第2ローラーが前記第1ローラーから離間している状態において前記第2ローラーより媒体搬送経路側に突出し、前記第2ローラーへの媒体の接触を防止する接触防止手段を備えることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、前記第2ローラーが前記第1ローラーから離間している状態において前記第2ローラーより媒体搬送経路側に突出し、前記第2ローラーへの媒体の接触を防止する接触防止手段を備えるので、ジャム処理時に媒体を引き抜く際、媒体の既記録領域が前記第2ローラーに接触し、前記第2ローラーを汚損することを防止できる。これにより次回記録時に媒体の記録面にインクが転着することを防止でき、適切な記録結果を得ることができる。
【0015】
本発明の第5の態様に係る記録装置は、媒体に記録を行う記録手段と、第1から第4の態様のいずれかに係る媒体搬送装置と、を備えたことを特徴とする。本態様によれば、記録装置において、上述した第1から第4の態様のいずれかと同様な作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るプリンターの用紙搬送経路を示す側断面図。
【図2】本発明の一実施形態に係るプリンターの用紙搬送経路を示す側断面図。
【図3】本発明の一実施形態に係るプリンターの用紙搬送経路を示す側断面図。
【図4】用紙搬送経路における搬送手段付近の拡大図(第1実施形態)。
【図5】用紙搬送経路における搬送手段付近の拡大図(第1実施形態)
【図6】用紙搬送経路における搬送手段付近の拡大図(第2実施形態)
【図7】用紙搬送経路における搬送手段付近の拡大図(第3実施形態)
【図8】用紙搬送経路における搬送手段付近の拡大図(第3実施形態)
【図9】用紙搬送経路における搬送手段付近の拡大図(第4実施形態)
【図10】用紙搬送経路における搬送手段付近の拡大図(第4実施形態)
【図11】用紙搬送経路における搬送手段付近の拡大図(第5実施形態)
【図12】用紙搬送経路における搬送手段付近の拡大図(第5実施形態)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は、以下説明する実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることを前提として、以下本発明の一実施形態を説明するものとする。
【0018】
図1〜図3は本発明に係る記録装置、そして更にその一例としてのインクジェットプリンター1の側断面図(概略図)、図4及び図5は用紙搬送経路における搬送手段39付近の拡大図である。また、図6以降は他の実施形態を示すものであり、図6は第2実施形態に係るインクジェットプリンターの用紙搬送経路における搬送手段39付近の拡大図、以下同様に図7及び図8は第3実施形態、図9及び図10は第4実施形態、図11及び図12は第5実施形態を示す図である。
【0019】
図1においてインクジェットプリンター1は装置底部に用紙給送部2を備えており、この用紙給送部2から用紙Pを送り出し、湾曲反転ユニット3にて湾曲反転させて記録ヘッド37の側へと給送し、記録を行う構成を備えている。尚、図1において破線R1はこのときの用紙Pの搬送ルート(通過軌跡)を示している。
【0020】
またインクジェットプリンター1は用紙Pの第1面(おもて面)に記録を行った後、これをバックフィード(図1及び図2において左方向)して湾曲反転ユニット3に送り込み、反転させ、第2面(うら面)を上にして再び記録ヘッド37の側へ搬送することができるように構成されている。即ち両面記録可能に構成されており、図2において破線R2はこのときの用紙Pの搬送ルート(通過軌跡)を示している。
【0021】
符号8はプリンター機構部の上部に設けられるスキャナーユニットを示しており、インクジェットプリンター1はこのスキャナーユニット8にて読み込んだ原稿画像を下部のプリンター機構部により印刷出力が可能な、所謂複合機として構成されている。尚、インクジェットプリンター1からスキャナーユニット8、及びインクジェット記録ヘッド37等の、搬送手段39より下流側の構成要素を除いた構成は、本発明に係る媒体搬送装置を構成する。
【0022】
以下、更に用紙搬送経路の構成について詳説する。用紙給送部2は用紙Pを収容する着脱可能な用紙カセット11と、給送ローラー18と、を備えている。用紙カセット11に収容された用紙Pの先端と対向する位置には分離斜面12が設けられており、給送ローラー18により送り出される用紙Pの先端が分離斜面12に摺接しつつ下流側へ給送されることで、給送されるべき最上位の用紙Pと、これに連れられて重送されようとする次位以降の用紙Pとの予備的な分離が行われる。
【0023】
給送ローラー18は、揺動軸20を中心にして図1及び図2の時計回り方向及び反時計回り方向に揺動可能な揺動部材19に軸支されており、且つ、図示しない駆動モーターの動力によって回転駆動されるように設けられている。給送ローラー18は、用紙給送時には用紙カセット11に収容された用紙Pの最上位のものに接して回転することにより、最上位の用紙Pを用紙カセット11から送り出す。尚、符号13は用紙給送時に用紙束を保持する摩擦パッドを示している。
【0024】
用紙カセット11から上方に送り出された用紙Pは、湾曲反転ユニット3に入る。この湾曲反転ユニット3は、反転ローラー22と、リタードローラー23と、中間ローラー24と、ガイド部材25、26と、を備え、ユニット化されてインクジェットプリンター1の装置本体に対し着脱自在に設けられている(図3の矢印方向)。
【0025】
反転ローラー22は、用紙Pを湾曲反転させる湾曲反転経路21の内側を形成する大径ローラーであり、本実施形態では用紙幅方向(図1〜図3の紙面表裏方向)において中心位置、即ち本実施形態に係るインクジェットプリンター1の給送基準位置に1つ、配置されている。尚、湾曲反転経路21の外側は、ガイド部材26や、更に図1〜図3では図示を省略するガイド部材等により形成される。
【0026】
反転ローラー22は、図示しない駆動モーターの動力により回転駆動されるよう設けられており、図1〜図3の時計回り方向に回転することにより、用紙Pを巻回しながら下流側へと搬送する。リタードローラー23は所定の回転摩擦抵抗が付与された状態で反転ローラー22に対して圧接可能に設けられており、反転ローラー22との間で用紙Pをニップすることにより、給送されるべき最上位の用紙Pと、これに連れられて重送されようとする次位以降の用紙Pとを分離する。
【0027】
尚、この付近の用紙給送経路には図示を省略する用紙戻しレバーが設けられており、リタードローラー23によって進行が止められた次位以降の用紙Pは、この用紙戻しレバーによって用紙カセット11へと戻されるように構成されている。
【0028】
中間ローラー24は自由回転可能なローラーであり、反転ローラー22との間で用紙Pをニップすることにより、反転ローラー22による用紙送りを補助する。ガイド部材25は、反転ローラー22と搬送駆動ローラー40との間に位置し、第1面に記録がおこなわれた用紙Pがバックフィードされる際に当該用紙Pを湾曲反転経路21に合流する位置(符号Aで示す)に案内する案内経路27と、用紙給送部2から送り出された用紙P及び案内経路27を通って反転させられる用紙Pのいずれもが経由する上側経路とを形成する。
【0029】
以上のように、湾曲反転経路21は、用紙給送部2から送り出された用紙Pを反転させる機能と、第1面に記録がおこなわれた用紙Pを反転させる機能との双方を担うので、第1面に記録がおこなわれた用紙Pを反転させる専用の反転経路を設ける必要がなく、小型化及び低コスト化が図られている。
【0030】
次に、中間ローラー24の下流側には、第1ローラーとしての搬送駆動ローラー40及び第2ローラーとしての搬送従動ローラー41とを備えて構成された、用紙Pを搬送する搬送手段39が設けられている。搬送駆動ローラー40は、本実施形態では用紙幅方向に長い金属軸の表面に耐摩耗性粒子が付着されて成り、図示を省略する駆動モーターにより回転駆動される。搬送従動ローラー41は、本実施形態では樹脂材料により形成され、搬送駆動ローラー40の長手方向に沿って適宜の間隔を空けて複数配置される。
【0031】
搬送従動ローラー41は、揺動部材としてのローラー支持部材30において自由回転可能に軸支されるとともに、搬送駆動ローラー40に対して圧接するよう設けられ、搬送駆動ローラー40との間で用紙Pをニップする。
【0032】
搬送従動ローラー41を支持するローラー支持部材30は、揺動軸30aを介してフレーム33に揺動可能に支持されるとともに、付勢手段としての引っ張りばね31により、搬送従動ローラー41を搬送駆動ローラー40に圧接させる揺動方向(図1〜図3において時計回り方向)に付勢された状態に設けられる。このローラー支持部材30は、搬送従動ローラー41を軸支するほか、上流側から給送される用紙Pを搬送駆動ローラー40と搬送従動ローラー41とのニップ点に案内する機能を果たす。
【0033】
尚このローラー支持部材30は、本実施形態では搬送駆動ローラー40の軸線方向(用紙幅方向)に沿って複数(本実施形態では3つ)配置される。また、符号6Aは引っ張りばね31によるローラー支持部材30の付勢力を調整する付勢力調整手段を示している(詳細は後述)。
【0034】
次に、搬送駆動ローラー40の下流側には、インクジェット記録ヘッド37と、紙案内部材45とが上下に対向配置されている。インクジェット記録ヘッド37はキャリッジ36の底部に設けられ、このキャリッジ36は前後に配置されたフレーム33、34にガイドされながら、図示を省略する駆動モーターの動力を受けて主走査方向(図1及び図2の紙面表裏方向)に往復動するよう設けられる。尚、このキャリッジ36には図示を省略するンクカートリッジが収容される。
【0035】
紙案内部材45においてインクジェット記録ヘッド37と対向する面には用紙搬送方向に延びるリブ45a、45b、45cが、用紙搬送方向の上流側から下流側に向かってこの順で所定間隔で配置され、また各リブが主走査方向に適宜の間隔を置いて複数設けられている(主走査方向の配置は図示せず)。用紙Pは、これらリブにより支持され、インクジェット記録ヘッド37との距離が規定される。
【0036】
次に、インクジェット記録ヘッド37と紙案内部材45とが対向する領域の下流側には用紙浮きを防止する補助ローラー46が設けられ、更にその下流側には排出駆動ローラー47と排出従動ローラー48とにより構成された用紙排出手段が設けられている。排出駆動ローラー47はゴムローラーにより構成され、図示を省略する駆動モーターにより回転駆動される。排出従動ローラー48は排出駆動ローラー47に軽く弾接するよう設けられた拍車であり、排出駆動ローラー47との間で用紙Pをニップする。これらローラーにより、記録の行われた用紙Pは、図示を省略するスタッカへ向けて排出される。
【0037】
尚、搬送駆動ローラー40は正逆回転可能に構成されており、即ち用紙Pをインクジェット記録ヘッド37の側へ搬送する第1方向(図1及び図2において右方向:下流側方向)と、湾曲反転経路を有する湾曲反転ユニット3の側へ搬送する第2方向(図1および図2において左方向:上流側方向)の双方向に用紙Pを搬送可能である。また排出駆動ローラー47についても同様に、正逆回転可能に構成されており、上記第1方向、第2方向いずれの方向にも用紙Pを搬送可能である。
【0038】
以上がインクジェットプリンター1の用紙搬送経路の構成であり、以下、引っ張りばね31によりローラー支持部材30を付勢する際の付勢力を調整する付勢力調整手段6Aについて詳説する。
【0039】
先ず、付勢力調整手段6Aと係合する開閉体としての湾曲反転ユニット3について更に説明する。湾曲反転ユニット3は、上述した様に湾曲反転経路21の構成部材である反転ローラー22、リタードローラー23、中間ローラー24、ガイド部材25、26、のこれらを含み、更にこれら構成部材の周辺部材も含めてユニット化されたものである。
【0040】
湾曲反転ユニット3は、上部カバー5に係止突起5bを備えており、湾曲反転ユニット3がプリンター本体に装着された際に係止突起5bがプリンター本体側の係止突起29に係止することで、湾曲反転ユニット3がプリンター本体に保持される様になっている。尚、係止突起5bは弾性片5aに形成されており、弾性片5aを下方に押し下げることで、係止突起5bと係止突起29との係合状態を解除できるようになっている。
【0041】
尚、湾曲反転ユニット3において上部カバー5は図示を省略する回動支点を中心に回動可能に設けられており、上部カバー5を回動させることによって、湾曲反転ユニット3の内部、より具体的には反転ローラー22、リタードローラー23、中間ローラー24、のこれらが露呈する様になっている。
【0042】
湾曲反転ユニット3は、以上の通り湾曲反転経路21の構成部材によりユニット化されており、湾曲反転ユニット3、つまり湾曲反転経路21それ自体がインクジェットプリンター1の装置本体から取り外し可能である。即ち湾曲反転ユニット3は、用紙搬送経路を覆う第1の状態(図1、図2)と用紙搬送経路を露呈させる第2の状態(図3)とをとり得る様になっているので、紙ジャムが生じた場合には湾曲反転ユニット3をプリンター本体から取り外すことで、詰まった用紙を容易に除去することができる。尚、湾曲反転ユニット3の内部で詰まった紙は、開閉可能な上部カバー5を開放することにより、容易に除去できる。
【0043】
また本実施形態では、反転ローラー22と、ニップローラーとしてのリタードローラー23との圧接状態を維持したまま、湾曲反転ユニット3が取り外し可能であるので、両ローラーによって詰まった用紙を把持しつつ引き出すことができ、ジャム処理がより一層容易となっている。
【0044】
更に、湾曲反転ユニット3を取り外すと、湾曲反転経路21と接続する用紙搬送経路が内側に露呈するので、装置の奥深い位置で紙ジャムが発生しても、詰まった紙を容易に取り除くことができる。特に本実施形態では、湾曲反転経路21と接続する搬送経路である案内経路27(図1)が略直線状の経路であって、湾曲反転ユニット3の取り外しによってその全領域が内側に露呈するので、案内経路27の奥深い位置でジャムが生じても、滞留する用紙を容易に除去することができる様になっている。
【0045】
次に、付勢力調整手段6Aについて説明する。付勢力調整手段6Aは、フレーム33に設けられたガイドフレーム35と、このガイドフレーム35において変位可能に支持されるガイド軸32と、を備えて構成されている。
【0046】
より詳しくは、ガイドフレーム35はフレーム35の両端部(用紙幅方向における両端部)に設けられており、引っ張りばね31の付勢力を変化させる方向に延びるガイド溝35aを有している。
【0047】
用紙幅方向に複数設けられたローラー支持部材30のそれぞれに対応して設けられた引っ張りばね31は、その一端がガイド軸32によって支持されており、他端がローラー支持部材30に固定され、ガイド軸32とローラー支持部材30との間で引っ張り力(付勢力)を発揮している。
【0048】
ここで、ガイド軸32は上述の通り引っ張りばね31の付勢力を変化させる方向に延びるガイド溝35aに遊挿されている為、ガイド軸32がガイド溝35a内で移動すると、これに伴って引っ張りばね31がローラー支持部材30を付勢する(引っ張る)付勢力が変化する様になっている。
【0049】
一方、ガイド軸32の両端部(ガイド部材35の近傍)は、湾曲反転ユニット3の両端部(用紙幅方向両端部)に設けられた規制フレーム28の先端(規制面28a)と係合可能となっており、湾曲反転ユニット3がプリンター本体に装着された第1の状態(図1、図4)では、規制フレーム28の規制面28aが引っ張りばね31の付勢力に抗してガイド軸32を引っ張りばね31の付勢力が最も大きくなる位置(ばね長さが最も長くなる位置)に保持する(以下、このときの引っ張りばね31の付勢力を「第1の付勢力」とする)。従ってこの状態では、搬送従動ローラー41が搬送駆動ローラー40に確実に圧接し、搬送手段39による確実な用紙搬送が行われる。
【0050】
次に、紙ジャム処理等が発生した際に湾曲反転ユニット3がプリンター本体から取り外されると、図5に示す様に規制フレーム28がガイド軸32から離れ、即ち湾曲反転ユニット3と付勢力調整手段6Aとの係合状態が解除される。これによりガイド軸32は、その自重および引っ張りばね31の付勢力の影響を受けることにより、引っ張りばね31の付勢力が最も小さくなる位置(ばね長さが最も短くなる位置)に移動する(以下、このときの引っ張りばね31の付勢力を「第2の付勢力」とする)。
【0051】
以上の通り、付勢力調整手段6Aによって、湾曲反転ユニット3の取付状態(第1の状態)にあるときに引っ張りばね31の付勢力が第1の付勢力とされ、湾曲反転ユニットの取り外し状態(第2の状態)にあるときに引っ張りばね31の付勢力が第1の付勢力より小さい第2の付勢力とされるので、ジャム処理の際に搬送駆動ローラー40と搬送従動ローラー41とによりニップされている状態の用紙を引き抜いても(図3において左方向)、用紙が破れて紙片として残ってしまうといった不具合の発生を防止することができる。
【0052】
ここで本実施形態では、プリンター本体に対して開閉体としての湾曲反転ユニット3が着脱可能に設けられ、規制フレーム28が前記着脱方向に沿って付勢力調整手段6Aとの係合及び係合解除を行うが、湾曲反転ユニット3がプリンター本体に対して回動可能に設けられ、これにより図6に示す様に規制フレーム(図6において符号28’)が湾曲反転ユニットの回動方向に沿って付勢力調整手段6Aとの係合及び係合解除を行う様に設けられていても良い(図6において湾曲反転ユニット3の回動軸は図示省略)。
【0053】
また、図4〜図6に示す実施形態では、湾曲反転ユニット6が直接付勢力調整手段6A(ガイド軸32)と係合するが、湾曲反転ユニット6と付勢力調整手段6Aとの間に他の変位可能な部材を配置し、当該他の変位可能な部材を介して湾曲反転ユニット3装着時にガイド軸32が押される様に構成されていても良い。
【0054】
また、上記実施形態では、搬送従動ローラー41を搬送駆動ローラー40に向けて付勢する付勢手段は引っ張りばね31により構成されているが、これに限られずどの様な形態であっても良い。例えば図7及び図8に示す第2実施形態に係る付勢力調整手段6Bでは、コイルばね50を用いている。
【0055】
コイルばね50は、一端50aがローラー支持部材30を付勢しており、他端50bが、ガイド軸32と係合している(このときのコイルばね50の付勢力を「第1の付勢力」とする)。そして湾曲反転ユニット3が取り外されると、図8に示す様にガイド軸32が変位し、コイルばね50の一端50aと他端50bとの開き角が開いて付勢力が小さくなる(このときのコイルばね50の付勢力を、第1の付勢力より小さい「第2の付勢力」とする)。この様な形態によっても、上記第1実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
【0056】
次に、図9及び図10に示す第4実施形態において、符号7はローラー離間手段を示している。即ち、上述した各実施形態では搬送従動ローラー41を搬送駆動ローラー40に向けて付勢する付勢手段の付勢力を小さくすることにより紙ジャム処理時に容易に用紙を引き抜き可能としているが、第4実施形態では、搬送従動ローラー41を搬送駆動ローラー40から離間させることにより、紙ジャム処理時の紙の破れを防止している。
【0057】
より詳しくは、ローラー支持部材30の後部上方には用紙幅方向に延びる軸51が設けられており、この軸51には、複数のローラー支持部材30のそれぞれに対応する位置にカム52が設けられ、軸51と一体に回転可能となっている。一方、軸51の両端部にはレバー部材53が設けられており、軸51と一体に回転可能となっている。
【0058】
またこのレバー部材53は、湾曲反転ユニット3の規制フレーム28(規制面28a)と係合可能となっている。尚、軸51は、図示を省略する付勢手段によって図9及び図10の時計回り方向(カム52がローラー支持部材30の後部を押し下げる方向)に付勢された状態となっている。
【0059】
湾曲反転ユニット3がプリンター本体に装着された状態では、図9に示す様にレバー部材53が規制フレーム28(規制面28a)によって押され、カム52とローラー支持部材30の後部との係合が解除された状態となっている。この状態では、図示する様にコイルばね50によって搬送従動ローラー41が搬送駆動ローラー40に圧接した状態となっている。
【0060】
この状態から湾曲反転ユニット3が取り外されると、図10に示す様にレバー部材53と規制フレーム28(規制面28a)との係合が解除され、カム52が回転し、ローラー支持部材30の後部が押し下げられ、ローラー支持部材30が揺動する。これにより、搬送従動ローラー41が搬送駆動ローラー40から離間するので、ジャム処理の用紙を引き抜いても、用紙が破れて紙片として残ってしまうといった不具合の発生を確実に防止することができる。
【0061】
尚、図9及び図10に示す第4実施形態において、搬送手段39より下流側では用紙Pに既にインクジェット記録が行われている可能性があり、この場合紙ジャム処理時に用紙Pを引き抜くと、搬送従動ローラー41に用紙記録面が接触してインクが転着する虞がある。そこで、搬送従動ローラー41への用紙の接触を防止する接触防止手段を設けることも好適である。
【0062】
図11及び図12に示す第5実施形態において、符号54は上記接触防止手段を構成する接触部材を示しており、この接触部材54は、複数のローラー支持部材30のそれぞれに対応して設けられ、フレーム33に取付固定されているとともに、搬送従動ローラー41の下流側と上流側とのそれぞれに規制部54a、54bを有している。尚、図11及び図12では、図面の複雑化を避けるため、コイルばね50の図示は省略している。
【0063】
規制部54a、54bは、搬送従動ローラー41が搬送駆動ローラー40に接した状態では、図11に示す様に搬送従動ローラー41に対して用紙搬送経路から退避した状態にあるが、ローラー支持部材30の揺動動作に伴って図12に示す様に搬送従動ローラー41よりも(相対的に)用紙搬送経路から突出した状態となる。従ってこれにより、ジャム処理時に用紙Pを引き抜く際、用紙Pの既記録領域が搬送従動ローラー41に接触し、搬送従動ローラー41をインクによって汚損することを防止できる。これにより次回記録時に用紙記録面にインク等が転着することを防止できる。
【0064】
尚、以上説明した実施形態はいずれも用紙の両面に記録を行う為の湾曲反転ユニット3を備えた構成における実施形態であるが、湾曲反転ユニットに限られず、用紙搬送経路を覆う状態(第1の状態)と用紙搬送経路を露呈させる状態(第2の状態)とをとり得る開閉体(カバー体など)を備えた構成であれば良いことは勿論である。
【符号の説明】
【0065】
1 インクジェットプリンター、2 用紙給送部、3 湾曲反転ユニット、5 上部カバー、6 付勢力調整手段、7 ローラー離間手段、8 スキャナーユニット、11 用紙カセット、12 分離斜面、13 摩擦パッド、18 給送ローラー、19 揺動部材、20 揺動軸、21 湾曲反転経路、22 反転ローラー、23 リタードローラー、24 中間ローラー、25、26 ガイド部材、27 案内経路、28 規制フレーム、28a 規制面、29 係止突起、30 紙案内部材、31 引っ張りばね、32 ばね支持軸、33、34 フレーム、35 ガイドフレーム、35a ガイド溝、36 キャリッジ、37 インクジェット記録ヘッド、39 搬送手段、40 搬送駆動ローラー、41 搬送従動ローラー、45 ローラー支持部材、46 補助ローラー、47 排出駆動ローラー、48 排出従動ローラー、50 コイルばね、51 回動軸、52 カム、53 レバー部材、54 接触防止部材、P 記録用紙
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体を搬送する媒体搬送装置、およびこれを備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ファクシミリやプリンターなどに代表される記録装置においては、媒体の一例としての記録用紙の両面に記録を実行可能なものがある。この様な記録装置は、例えば特許文献1に示されるような、記録用紙を反転させる反転経路を有しており、第1面(おもて面)に記録の行われた記録用紙は、バックフィードされて反転経路へと入り、そして第2面(うら面)を上にして、再び記録ヘッドと対向する領域へと搬送される。
【0003】
また、この様に記録用紙を反転させる反転経路を備えている場合、反転経路において紙ジャムが発生した場合に記録用紙を除去することが困難となる。その為、特許文献1や特許文献2に示されるように用紙搬送経路の一部を露呈させるカバー部材を設け、必要に応じてカバー部材を開放することにより用紙搬送経路の一部を露呈させて、詰まっている記録用紙を除去することができる様に構成される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−59599号公報
【特許文献2】特開2007−203707号公報
【特許文献3】特開昭63−286860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら紙ジャム処理の際、除去しようとする記録用紙が装置内の搬送経路において搬送ローラーによりニップされたままの状態であると、記録用紙を引き抜く際に破れてしまい、紙片が装置内に残留してしまう虞がある。この様な紙片は、殆どの場合装置の奥まった場所で発生することから、これを除去するのは非常に困難となる。
【0006】
そこで本発明はこの様な状況に鑑みなされたものであり、その目的は、紙ジャム処理時において搬送ローラーの影響を受けずに詰まった媒体を適切に除去することのできる媒体搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する為の、本発明の第1の態様に係る媒体搬送装置は、媒体を搬送する媒体搬送経路と、前記媒体搬送経路に設けられた第1ローラー、及び当該第1ローラーとの間で媒体をニップする第2ローラーを備えて構成された、媒体を搬送する媒体搬送手段と、前記第2ローラーを前記第1ローラーに向けて付勢する付勢手段と、前記媒体搬送経路を覆う第1の状態と前記媒体搬送経路を露呈させる第2の状態とをとり得る開閉体と、前記開閉体が前記第1の状態にあるときに前記付勢手段の付勢力を第1の付勢力とし、前記開閉体が前記第2の状態にあるときに前記付勢手段の付勢力を第1の付勢力より小さい第2の付勢力とする付勢力調整手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、前記開閉体が前記媒体搬送経路を露呈させる第2の状態にあるときに、前記第2ローラーを前記第1ローラーに向けて付勢する付勢手段の付勢力が前記付勢力調整手段によって小さく設定されるので、ジャム処理の際に媒体を容易に引き抜くことができ、媒体が破れて紙片として残ってしまう不具合を防止することができる。
【0009】
本発明の第2の態様に係る媒体搬送装置は、媒体を搬送する媒体搬送経路と、前記媒体搬送経路に設けられた第1ローラー、及び当該第1ローラーとの間で媒体をニップする第2ローラーを備えて構成された、媒体を搬送する媒体搬送手段と、前記媒体搬送経路を覆う第1の状態と前記媒体搬送経路を露呈させる第2の状態とをとり得る開閉体と、前記開閉体が前記第1の状態にあるときに前記第2ローラーを前記第1ローラーに接触させ、前記開閉体が前記第2の状態にあるときに前記第2ローラーを前記第1ローラーから離間させるローラー離間手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、前記開閉体が前記媒体搬送経路を露呈させる第2の状態にあるときに、前記ローラー離間手段により前記第2ローラーが前記第1ローラーから離間するので、ジャム処理の際に媒体を容易に引き抜くことができ、媒体が破れて紙片として残ってしまう不具合を確実に防止することができる。
【0011】
本発明の第3の態様は、第1の態様において、前記第2ローラーが、揺動軸を中心に揺動可能な揺動部材により支持され、前記付勢手段が、前記第2ローラーが前記第1ローラーに圧接する方向に前記揺動部材を付勢する引っ張りばねにより構成され、前記付勢力調整手段が、前記引っ張りばねの一端を支持するとともに前記引っ張りばねの付勢力が変化する方向に変位可能に設けられ、前記開閉体との非係合状態において前記付勢力が前記第2の付勢力となる場所に位置し、前記開閉体と係合することにより前記付勢力が前記第1の付勢力となる位置に保持されるガイド軸と、前記ガイド軸をその変位方向に案内するガイド部材と、を備えて構成されていることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、前記付勢力調整手段が、前記引っ張りばねを支持するガイド軸の変位により前記付勢力を調整する構成を備えるので、前記付勢力調整手段を、構造簡単にして低コストに構成することができる。
【0013】
本発明の第4の態様は、第2の態様において、前記第2ローラーが前記第1ローラーから離間している状態において前記第2ローラーより媒体搬送経路側に突出し、前記第2ローラーへの媒体の接触を防止する接触防止手段を備えることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、前記第2ローラーが前記第1ローラーから離間している状態において前記第2ローラーより媒体搬送経路側に突出し、前記第2ローラーへの媒体の接触を防止する接触防止手段を備えるので、ジャム処理時に媒体を引き抜く際、媒体の既記録領域が前記第2ローラーに接触し、前記第2ローラーを汚損することを防止できる。これにより次回記録時に媒体の記録面にインクが転着することを防止でき、適切な記録結果を得ることができる。
【0015】
本発明の第5の態様に係る記録装置は、媒体に記録を行う記録手段と、第1から第4の態様のいずれかに係る媒体搬送装置と、を備えたことを特徴とする。本態様によれば、記録装置において、上述した第1から第4の態様のいずれかと同様な作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るプリンターの用紙搬送経路を示す側断面図。
【図2】本発明の一実施形態に係るプリンターの用紙搬送経路を示す側断面図。
【図3】本発明の一実施形態に係るプリンターの用紙搬送経路を示す側断面図。
【図4】用紙搬送経路における搬送手段付近の拡大図(第1実施形態)。
【図5】用紙搬送経路における搬送手段付近の拡大図(第1実施形態)
【図6】用紙搬送経路における搬送手段付近の拡大図(第2実施形態)
【図7】用紙搬送経路における搬送手段付近の拡大図(第3実施形態)
【図8】用紙搬送経路における搬送手段付近の拡大図(第3実施形態)
【図9】用紙搬送経路における搬送手段付近の拡大図(第4実施形態)
【図10】用紙搬送経路における搬送手段付近の拡大図(第4実施形態)
【図11】用紙搬送経路における搬送手段付近の拡大図(第5実施形態)
【図12】用紙搬送経路における搬送手段付近の拡大図(第5実施形態)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は、以下説明する実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることを前提として、以下本発明の一実施形態を説明するものとする。
【0018】
図1〜図3は本発明に係る記録装置、そして更にその一例としてのインクジェットプリンター1の側断面図(概略図)、図4及び図5は用紙搬送経路における搬送手段39付近の拡大図である。また、図6以降は他の実施形態を示すものであり、図6は第2実施形態に係るインクジェットプリンターの用紙搬送経路における搬送手段39付近の拡大図、以下同様に図7及び図8は第3実施形態、図9及び図10は第4実施形態、図11及び図12は第5実施形態を示す図である。
【0019】
図1においてインクジェットプリンター1は装置底部に用紙給送部2を備えており、この用紙給送部2から用紙Pを送り出し、湾曲反転ユニット3にて湾曲反転させて記録ヘッド37の側へと給送し、記録を行う構成を備えている。尚、図1において破線R1はこのときの用紙Pの搬送ルート(通過軌跡)を示している。
【0020】
またインクジェットプリンター1は用紙Pの第1面(おもて面)に記録を行った後、これをバックフィード(図1及び図2において左方向)して湾曲反転ユニット3に送り込み、反転させ、第2面(うら面)を上にして再び記録ヘッド37の側へ搬送することができるように構成されている。即ち両面記録可能に構成されており、図2において破線R2はこのときの用紙Pの搬送ルート(通過軌跡)を示している。
【0021】
符号8はプリンター機構部の上部に設けられるスキャナーユニットを示しており、インクジェットプリンター1はこのスキャナーユニット8にて読み込んだ原稿画像を下部のプリンター機構部により印刷出力が可能な、所謂複合機として構成されている。尚、インクジェットプリンター1からスキャナーユニット8、及びインクジェット記録ヘッド37等の、搬送手段39より下流側の構成要素を除いた構成は、本発明に係る媒体搬送装置を構成する。
【0022】
以下、更に用紙搬送経路の構成について詳説する。用紙給送部2は用紙Pを収容する着脱可能な用紙カセット11と、給送ローラー18と、を備えている。用紙カセット11に収容された用紙Pの先端と対向する位置には分離斜面12が設けられており、給送ローラー18により送り出される用紙Pの先端が分離斜面12に摺接しつつ下流側へ給送されることで、給送されるべき最上位の用紙Pと、これに連れられて重送されようとする次位以降の用紙Pとの予備的な分離が行われる。
【0023】
給送ローラー18は、揺動軸20を中心にして図1及び図2の時計回り方向及び反時計回り方向に揺動可能な揺動部材19に軸支されており、且つ、図示しない駆動モーターの動力によって回転駆動されるように設けられている。給送ローラー18は、用紙給送時には用紙カセット11に収容された用紙Pの最上位のものに接して回転することにより、最上位の用紙Pを用紙カセット11から送り出す。尚、符号13は用紙給送時に用紙束を保持する摩擦パッドを示している。
【0024】
用紙カセット11から上方に送り出された用紙Pは、湾曲反転ユニット3に入る。この湾曲反転ユニット3は、反転ローラー22と、リタードローラー23と、中間ローラー24と、ガイド部材25、26と、を備え、ユニット化されてインクジェットプリンター1の装置本体に対し着脱自在に設けられている(図3の矢印方向)。
【0025】
反転ローラー22は、用紙Pを湾曲反転させる湾曲反転経路21の内側を形成する大径ローラーであり、本実施形態では用紙幅方向(図1〜図3の紙面表裏方向)において中心位置、即ち本実施形態に係るインクジェットプリンター1の給送基準位置に1つ、配置されている。尚、湾曲反転経路21の外側は、ガイド部材26や、更に図1〜図3では図示を省略するガイド部材等により形成される。
【0026】
反転ローラー22は、図示しない駆動モーターの動力により回転駆動されるよう設けられており、図1〜図3の時計回り方向に回転することにより、用紙Pを巻回しながら下流側へと搬送する。リタードローラー23は所定の回転摩擦抵抗が付与された状態で反転ローラー22に対して圧接可能に設けられており、反転ローラー22との間で用紙Pをニップすることにより、給送されるべき最上位の用紙Pと、これに連れられて重送されようとする次位以降の用紙Pとを分離する。
【0027】
尚、この付近の用紙給送経路には図示を省略する用紙戻しレバーが設けられており、リタードローラー23によって進行が止められた次位以降の用紙Pは、この用紙戻しレバーによって用紙カセット11へと戻されるように構成されている。
【0028】
中間ローラー24は自由回転可能なローラーであり、反転ローラー22との間で用紙Pをニップすることにより、反転ローラー22による用紙送りを補助する。ガイド部材25は、反転ローラー22と搬送駆動ローラー40との間に位置し、第1面に記録がおこなわれた用紙Pがバックフィードされる際に当該用紙Pを湾曲反転経路21に合流する位置(符号Aで示す)に案内する案内経路27と、用紙給送部2から送り出された用紙P及び案内経路27を通って反転させられる用紙Pのいずれもが経由する上側経路とを形成する。
【0029】
以上のように、湾曲反転経路21は、用紙給送部2から送り出された用紙Pを反転させる機能と、第1面に記録がおこなわれた用紙Pを反転させる機能との双方を担うので、第1面に記録がおこなわれた用紙Pを反転させる専用の反転経路を設ける必要がなく、小型化及び低コスト化が図られている。
【0030】
次に、中間ローラー24の下流側には、第1ローラーとしての搬送駆動ローラー40及び第2ローラーとしての搬送従動ローラー41とを備えて構成された、用紙Pを搬送する搬送手段39が設けられている。搬送駆動ローラー40は、本実施形態では用紙幅方向に長い金属軸の表面に耐摩耗性粒子が付着されて成り、図示を省略する駆動モーターにより回転駆動される。搬送従動ローラー41は、本実施形態では樹脂材料により形成され、搬送駆動ローラー40の長手方向に沿って適宜の間隔を空けて複数配置される。
【0031】
搬送従動ローラー41は、揺動部材としてのローラー支持部材30において自由回転可能に軸支されるとともに、搬送駆動ローラー40に対して圧接するよう設けられ、搬送駆動ローラー40との間で用紙Pをニップする。
【0032】
搬送従動ローラー41を支持するローラー支持部材30は、揺動軸30aを介してフレーム33に揺動可能に支持されるとともに、付勢手段としての引っ張りばね31により、搬送従動ローラー41を搬送駆動ローラー40に圧接させる揺動方向(図1〜図3において時計回り方向)に付勢された状態に設けられる。このローラー支持部材30は、搬送従動ローラー41を軸支するほか、上流側から給送される用紙Pを搬送駆動ローラー40と搬送従動ローラー41とのニップ点に案内する機能を果たす。
【0033】
尚このローラー支持部材30は、本実施形態では搬送駆動ローラー40の軸線方向(用紙幅方向)に沿って複数(本実施形態では3つ)配置される。また、符号6Aは引っ張りばね31によるローラー支持部材30の付勢力を調整する付勢力調整手段を示している(詳細は後述)。
【0034】
次に、搬送駆動ローラー40の下流側には、インクジェット記録ヘッド37と、紙案内部材45とが上下に対向配置されている。インクジェット記録ヘッド37はキャリッジ36の底部に設けられ、このキャリッジ36は前後に配置されたフレーム33、34にガイドされながら、図示を省略する駆動モーターの動力を受けて主走査方向(図1及び図2の紙面表裏方向)に往復動するよう設けられる。尚、このキャリッジ36には図示を省略するンクカートリッジが収容される。
【0035】
紙案内部材45においてインクジェット記録ヘッド37と対向する面には用紙搬送方向に延びるリブ45a、45b、45cが、用紙搬送方向の上流側から下流側に向かってこの順で所定間隔で配置され、また各リブが主走査方向に適宜の間隔を置いて複数設けられている(主走査方向の配置は図示せず)。用紙Pは、これらリブにより支持され、インクジェット記録ヘッド37との距離が規定される。
【0036】
次に、インクジェット記録ヘッド37と紙案内部材45とが対向する領域の下流側には用紙浮きを防止する補助ローラー46が設けられ、更にその下流側には排出駆動ローラー47と排出従動ローラー48とにより構成された用紙排出手段が設けられている。排出駆動ローラー47はゴムローラーにより構成され、図示を省略する駆動モーターにより回転駆動される。排出従動ローラー48は排出駆動ローラー47に軽く弾接するよう設けられた拍車であり、排出駆動ローラー47との間で用紙Pをニップする。これらローラーにより、記録の行われた用紙Pは、図示を省略するスタッカへ向けて排出される。
【0037】
尚、搬送駆動ローラー40は正逆回転可能に構成されており、即ち用紙Pをインクジェット記録ヘッド37の側へ搬送する第1方向(図1及び図2において右方向:下流側方向)と、湾曲反転経路を有する湾曲反転ユニット3の側へ搬送する第2方向(図1および図2において左方向:上流側方向)の双方向に用紙Pを搬送可能である。また排出駆動ローラー47についても同様に、正逆回転可能に構成されており、上記第1方向、第2方向いずれの方向にも用紙Pを搬送可能である。
【0038】
以上がインクジェットプリンター1の用紙搬送経路の構成であり、以下、引っ張りばね31によりローラー支持部材30を付勢する際の付勢力を調整する付勢力調整手段6Aについて詳説する。
【0039】
先ず、付勢力調整手段6Aと係合する開閉体としての湾曲反転ユニット3について更に説明する。湾曲反転ユニット3は、上述した様に湾曲反転経路21の構成部材である反転ローラー22、リタードローラー23、中間ローラー24、ガイド部材25、26、のこれらを含み、更にこれら構成部材の周辺部材も含めてユニット化されたものである。
【0040】
湾曲反転ユニット3は、上部カバー5に係止突起5bを備えており、湾曲反転ユニット3がプリンター本体に装着された際に係止突起5bがプリンター本体側の係止突起29に係止することで、湾曲反転ユニット3がプリンター本体に保持される様になっている。尚、係止突起5bは弾性片5aに形成されており、弾性片5aを下方に押し下げることで、係止突起5bと係止突起29との係合状態を解除できるようになっている。
【0041】
尚、湾曲反転ユニット3において上部カバー5は図示を省略する回動支点を中心に回動可能に設けられており、上部カバー5を回動させることによって、湾曲反転ユニット3の内部、より具体的には反転ローラー22、リタードローラー23、中間ローラー24、のこれらが露呈する様になっている。
【0042】
湾曲反転ユニット3は、以上の通り湾曲反転経路21の構成部材によりユニット化されており、湾曲反転ユニット3、つまり湾曲反転経路21それ自体がインクジェットプリンター1の装置本体から取り外し可能である。即ち湾曲反転ユニット3は、用紙搬送経路を覆う第1の状態(図1、図2)と用紙搬送経路を露呈させる第2の状態(図3)とをとり得る様になっているので、紙ジャムが生じた場合には湾曲反転ユニット3をプリンター本体から取り外すことで、詰まった用紙を容易に除去することができる。尚、湾曲反転ユニット3の内部で詰まった紙は、開閉可能な上部カバー5を開放することにより、容易に除去できる。
【0043】
また本実施形態では、反転ローラー22と、ニップローラーとしてのリタードローラー23との圧接状態を維持したまま、湾曲反転ユニット3が取り外し可能であるので、両ローラーによって詰まった用紙を把持しつつ引き出すことができ、ジャム処理がより一層容易となっている。
【0044】
更に、湾曲反転ユニット3を取り外すと、湾曲反転経路21と接続する用紙搬送経路が内側に露呈するので、装置の奥深い位置で紙ジャムが発生しても、詰まった紙を容易に取り除くことができる。特に本実施形態では、湾曲反転経路21と接続する搬送経路である案内経路27(図1)が略直線状の経路であって、湾曲反転ユニット3の取り外しによってその全領域が内側に露呈するので、案内経路27の奥深い位置でジャムが生じても、滞留する用紙を容易に除去することができる様になっている。
【0045】
次に、付勢力調整手段6Aについて説明する。付勢力調整手段6Aは、フレーム33に設けられたガイドフレーム35と、このガイドフレーム35において変位可能に支持されるガイド軸32と、を備えて構成されている。
【0046】
より詳しくは、ガイドフレーム35はフレーム35の両端部(用紙幅方向における両端部)に設けられており、引っ張りばね31の付勢力を変化させる方向に延びるガイド溝35aを有している。
【0047】
用紙幅方向に複数設けられたローラー支持部材30のそれぞれに対応して設けられた引っ張りばね31は、その一端がガイド軸32によって支持されており、他端がローラー支持部材30に固定され、ガイド軸32とローラー支持部材30との間で引っ張り力(付勢力)を発揮している。
【0048】
ここで、ガイド軸32は上述の通り引っ張りばね31の付勢力を変化させる方向に延びるガイド溝35aに遊挿されている為、ガイド軸32がガイド溝35a内で移動すると、これに伴って引っ張りばね31がローラー支持部材30を付勢する(引っ張る)付勢力が変化する様になっている。
【0049】
一方、ガイド軸32の両端部(ガイド部材35の近傍)は、湾曲反転ユニット3の両端部(用紙幅方向両端部)に設けられた規制フレーム28の先端(規制面28a)と係合可能となっており、湾曲反転ユニット3がプリンター本体に装着された第1の状態(図1、図4)では、規制フレーム28の規制面28aが引っ張りばね31の付勢力に抗してガイド軸32を引っ張りばね31の付勢力が最も大きくなる位置(ばね長さが最も長くなる位置)に保持する(以下、このときの引っ張りばね31の付勢力を「第1の付勢力」とする)。従ってこの状態では、搬送従動ローラー41が搬送駆動ローラー40に確実に圧接し、搬送手段39による確実な用紙搬送が行われる。
【0050】
次に、紙ジャム処理等が発生した際に湾曲反転ユニット3がプリンター本体から取り外されると、図5に示す様に規制フレーム28がガイド軸32から離れ、即ち湾曲反転ユニット3と付勢力調整手段6Aとの係合状態が解除される。これによりガイド軸32は、その自重および引っ張りばね31の付勢力の影響を受けることにより、引っ張りばね31の付勢力が最も小さくなる位置(ばね長さが最も短くなる位置)に移動する(以下、このときの引っ張りばね31の付勢力を「第2の付勢力」とする)。
【0051】
以上の通り、付勢力調整手段6Aによって、湾曲反転ユニット3の取付状態(第1の状態)にあるときに引っ張りばね31の付勢力が第1の付勢力とされ、湾曲反転ユニットの取り外し状態(第2の状態)にあるときに引っ張りばね31の付勢力が第1の付勢力より小さい第2の付勢力とされるので、ジャム処理の際に搬送駆動ローラー40と搬送従動ローラー41とによりニップされている状態の用紙を引き抜いても(図3において左方向)、用紙が破れて紙片として残ってしまうといった不具合の発生を防止することができる。
【0052】
ここで本実施形態では、プリンター本体に対して開閉体としての湾曲反転ユニット3が着脱可能に設けられ、規制フレーム28が前記着脱方向に沿って付勢力調整手段6Aとの係合及び係合解除を行うが、湾曲反転ユニット3がプリンター本体に対して回動可能に設けられ、これにより図6に示す様に規制フレーム(図6において符号28’)が湾曲反転ユニットの回動方向に沿って付勢力調整手段6Aとの係合及び係合解除を行う様に設けられていても良い(図6において湾曲反転ユニット3の回動軸は図示省略)。
【0053】
また、図4〜図6に示す実施形態では、湾曲反転ユニット6が直接付勢力調整手段6A(ガイド軸32)と係合するが、湾曲反転ユニット6と付勢力調整手段6Aとの間に他の変位可能な部材を配置し、当該他の変位可能な部材を介して湾曲反転ユニット3装着時にガイド軸32が押される様に構成されていても良い。
【0054】
また、上記実施形態では、搬送従動ローラー41を搬送駆動ローラー40に向けて付勢する付勢手段は引っ張りばね31により構成されているが、これに限られずどの様な形態であっても良い。例えば図7及び図8に示す第2実施形態に係る付勢力調整手段6Bでは、コイルばね50を用いている。
【0055】
コイルばね50は、一端50aがローラー支持部材30を付勢しており、他端50bが、ガイド軸32と係合している(このときのコイルばね50の付勢力を「第1の付勢力」とする)。そして湾曲反転ユニット3が取り外されると、図8に示す様にガイド軸32が変位し、コイルばね50の一端50aと他端50bとの開き角が開いて付勢力が小さくなる(このときのコイルばね50の付勢力を、第1の付勢力より小さい「第2の付勢力」とする)。この様な形態によっても、上記第1実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
【0056】
次に、図9及び図10に示す第4実施形態において、符号7はローラー離間手段を示している。即ち、上述した各実施形態では搬送従動ローラー41を搬送駆動ローラー40に向けて付勢する付勢手段の付勢力を小さくすることにより紙ジャム処理時に容易に用紙を引き抜き可能としているが、第4実施形態では、搬送従動ローラー41を搬送駆動ローラー40から離間させることにより、紙ジャム処理時の紙の破れを防止している。
【0057】
より詳しくは、ローラー支持部材30の後部上方には用紙幅方向に延びる軸51が設けられており、この軸51には、複数のローラー支持部材30のそれぞれに対応する位置にカム52が設けられ、軸51と一体に回転可能となっている。一方、軸51の両端部にはレバー部材53が設けられており、軸51と一体に回転可能となっている。
【0058】
またこのレバー部材53は、湾曲反転ユニット3の規制フレーム28(規制面28a)と係合可能となっている。尚、軸51は、図示を省略する付勢手段によって図9及び図10の時計回り方向(カム52がローラー支持部材30の後部を押し下げる方向)に付勢された状態となっている。
【0059】
湾曲反転ユニット3がプリンター本体に装着された状態では、図9に示す様にレバー部材53が規制フレーム28(規制面28a)によって押され、カム52とローラー支持部材30の後部との係合が解除された状態となっている。この状態では、図示する様にコイルばね50によって搬送従動ローラー41が搬送駆動ローラー40に圧接した状態となっている。
【0060】
この状態から湾曲反転ユニット3が取り外されると、図10に示す様にレバー部材53と規制フレーム28(規制面28a)との係合が解除され、カム52が回転し、ローラー支持部材30の後部が押し下げられ、ローラー支持部材30が揺動する。これにより、搬送従動ローラー41が搬送駆動ローラー40から離間するので、ジャム処理の用紙を引き抜いても、用紙が破れて紙片として残ってしまうといった不具合の発生を確実に防止することができる。
【0061】
尚、図9及び図10に示す第4実施形態において、搬送手段39より下流側では用紙Pに既にインクジェット記録が行われている可能性があり、この場合紙ジャム処理時に用紙Pを引き抜くと、搬送従動ローラー41に用紙記録面が接触してインクが転着する虞がある。そこで、搬送従動ローラー41への用紙の接触を防止する接触防止手段を設けることも好適である。
【0062】
図11及び図12に示す第5実施形態において、符号54は上記接触防止手段を構成する接触部材を示しており、この接触部材54は、複数のローラー支持部材30のそれぞれに対応して設けられ、フレーム33に取付固定されているとともに、搬送従動ローラー41の下流側と上流側とのそれぞれに規制部54a、54bを有している。尚、図11及び図12では、図面の複雑化を避けるため、コイルばね50の図示は省略している。
【0063】
規制部54a、54bは、搬送従動ローラー41が搬送駆動ローラー40に接した状態では、図11に示す様に搬送従動ローラー41に対して用紙搬送経路から退避した状態にあるが、ローラー支持部材30の揺動動作に伴って図12に示す様に搬送従動ローラー41よりも(相対的に)用紙搬送経路から突出した状態となる。従ってこれにより、ジャム処理時に用紙Pを引き抜く際、用紙Pの既記録領域が搬送従動ローラー41に接触し、搬送従動ローラー41をインクによって汚損することを防止できる。これにより次回記録時に用紙記録面にインク等が転着することを防止できる。
【0064】
尚、以上説明した実施形態はいずれも用紙の両面に記録を行う為の湾曲反転ユニット3を備えた構成における実施形態であるが、湾曲反転ユニットに限られず、用紙搬送経路を覆う状態(第1の状態)と用紙搬送経路を露呈させる状態(第2の状態)とをとり得る開閉体(カバー体など)を備えた構成であれば良いことは勿論である。
【符号の説明】
【0065】
1 インクジェットプリンター、2 用紙給送部、3 湾曲反転ユニット、5 上部カバー、6 付勢力調整手段、7 ローラー離間手段、8 スキャナーユニット、11 用紙カセット、12 分離斜面、13 摩擦パッド、18 給送ローラー、19 揺動部材、20 揺動軸、21 湾曲反転経路、22 反転ローラー、23 リタードローラー、24 中間ローラー、25、26 ガイド部材、27 案内経路、28 規制フレーム、28a 規制面、29 係止突起、30 紙案内部材、31 引っ張りばね、32 ばね支持軸、33、34 フレーム、35 ガイドフレーム、35a ガイド溝、36 キャリッジ、37 インクジェット記録ヘッド、39 搬送手段、40 搬送駆動ローラー、41 搬送従動ローラー、45 ローラー支持部材、46 補助ローラー、47 排出駆動ローラー、48 排出従動ローラー、50 コイルばね、51 回動軸、52 カム、53 レバー部材、54 接触防止部材、P 記録用紙
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を搬送する媒体搬送経路と、
前記媒体搬送経路に設けられた第1ローラー、及び当該第1ローラーとの間で媒体をニップする第2ローラーを備えて構成された、媒体を搬送する媒体搬送手段と、
前記第2ローラーを前記第1ローラーに向けて付勢する付勢手段と、
前記媒体搬送経路を覆う第1の状態と前記媒体搬送経路を露呈させる第2の状態とをとり得る開閉体と、
前記開閉体が前記第1の状態にあるときに前記付勢手段の付勢力を第1の付勢力とし、前記開閉体が前記第2の状態にあるときに前記付勢手段の付勢力を第1の付勢力より小さい第2の付勢力とする付勢力調整手段と、
を備えたことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項2】
媒体を搬送する媒体搬送経路と、
前記媒体搬送経路に設けられた第1ローラー、及び当該第1ローラーとの間で媒体をニップする第2ローラーを備えて構成された、媒体を搬送する媒体搬送手段と、
前記媒体搬送経路を覆う第1の状態と前記媒体搬送経路を露呈させる第2の状態とをとり得る開閉体と、
前記開閉体が前記第1の状態にあるときに前記第2ローラーを前記第1ローラーに接触させ、前記開閉体が前記第2の状態にあるときに前記第2ローラーを前記第1ローラーから離間させるローラー離間手段と、
を備えたことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項3】
請求項1に記載の媒体搬送装置において、前記第2ローラーが、揺動軸を中心に揺動可能な揺動部材により支持され、
前記付勢手段が、前記第2ローラーが前記第1ローラーに圧接する方向に前記揺動部材を付勢する引っ張りばねにより構成され、
前記付勢力調整手段が、前記引っ張りばねの一端を支持するとともに前記引っ張りばねの付勢力が変化する方向に変位可能に設けられ、前記開閉体との非係合状態において前記付勢力が前記第2の付勢力となる場所に位置し、前記開閉体と係合することにより前記付勢力が前記第1の付勢力となる位置に保持されるガイド軸と、
前記ガイド軸をその変位方向に案内するガイド部材と、を備えて構成されている、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項4】
請求項2に記載の媒体搬送装置において、前記第2ローラーが前記第1ローラーから離間している状態において前記第2ローラーより媒体搬送経路側に突出し、前記第2ローラーへの媒体の接触を防止する接触防止手段を備える、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項5】
媒体に記録を行う記録手段と、
請求項1から4のいずれか1項に記載の媒体搬送装置と、を備えた記録装置。
【請求項1】
媒体を搬送する媒体搬送経路と、
前記媒体搬送経路に設けられた第1ローラー、及び当該第1ローラーとの間で媒体をニップする第2ローラーを備えて構成された、媒体を搬送する媒体搬送手段と、
前記第2ローラーを前記第1ローラーに向けて付勢する付勢手段と、
前記媒体搬送経路を覆う第1の状態と前記媒体搬送経路を露呈させる第2の状態とをとり得る開閉体と、
前記開閉体が前記第1の状態にあるときに前記付勢手段の付勢力を第1の付勢力とし、前記開閉体が前記第2の状態にあるときに前記付勢手段の付勢力を第1の付勢力より小さい第2の付勢力とする付勢力調整手段と、
を備えたことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項2】
媒体を搬送する媒体搬送経路と、
前記媒体搬送経路に設けられた第1ローラー、及び当該第1ローラーとの間で媒体をニップする第2ローラーを備えて構成された、媒体を搬送する媒体搬送手段と、
前記媒体搬送経路を覆う第1の状態と前記媒体搬送経路を露呈させる第2の状態とをとり得る開閉体と、
前記開閉体が前記第1の状態にあるときに前記第2ローラーを前記第1ローラーに接触させ、前記開閉体が前記第2の状態にあるときに前記第2ローラーを前記第1ローラーから離間させるローラー離間手段と、
を備えたことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項3】
請求項1に記載の媒体搬送装置において、前記第2ローラーが、揺動軸を中心に揺動可能な揺動部材により支持され、
前記付勢手段が、前記第2ローラーが前記第1ローラーに圧接する方向に前記揺動部材を付勢する引っ張りばねにより構成され、
前記付勢力調整手段が、前記引っ張りばねの一端を支持するとともに前記引っ張りばねの付勢力が変化する方向に変位可能に設けられ、前記開閉体との非係合状態において前記付勢力が前記第2の付勢力となる場所に位置し、前記開閉体と係合することにより前記付勢力が前記第1の付勢力となる位置に保持されるガイド軸と、
前記ガイド軸をその変位方向に案内するガイド部材と、を備えて構成されている、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項4】
請求項2に記載の媒体搬送装置において、前記第2ローラーが前記第1ローラーから離間している状態において前記第2ローラーより媒体搬送経路側に突出し、前記第2ローラーへの媒体の接触を防止する接触防止手段を備える、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項5】
媒体に記録を行う記録手段と、
請求項1から4のいずれか1項に記載の媒体搬送装置と、を備えた記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−240813(P2012−240813A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114417(P2011−114417)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]