説明

嫌気性処理装置およびこれを備える廃棄物処理システム

【課題】TSが高い条件で有機性廃棄物を処理する場合であっても、容器内を嫌気性に保ちつつ有機性廃棄物を容器内に供給することができる構造を備えた嫌気性処理装置を提供すること。
【解決手段】生ゴミ類をメタン発酵する本体容器11と、本体容器11に生ゴミ類を投入するための投入装置12と、メタン発酵処理されたあとに残る発酵残渣を本体容器11の外部に排出するための排出装置13とを備えるメタン発酵装置1である。投入装置12は、 本体容器11内の上部に配置され下端が当該本体容器11内で開放された筒状体22と、筒状体22の下方に配置されるとともに当該筒状体22の下端部22aを収容する中継容器23と、中継容器23内に収容され当該中継容器23内から本体容器11内へ生ゴミ類を供給するための供給機24とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生ゴミ・家畜糞尿・古紙・汚泥などの有機性廃棄物を嫌気性処理する嫌気性処理装置およびこれを備える廃棄物処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
嫌気性処理とは、嫌気性細菌を用いて有機性廃棄物を分解する生物処理のことをいう。嫌気性処理の例として、メタン発酵処理、水素発酵処理を挙げることができる。ここで、都市ゴミなどの廃棄物をメタン発酵可能な有機性廃棄物とメタン発酵に適さない廃棄物とに分別し、有機性廃棄物をメタン発酵処理する技術がある。メタン発酵処理とは、メタン菌の作用で有機性廃棄物を嫌気性分解する処理のことをいう。有機性廃棄物の分解により得られるメタンガスを利用して燃料、電気や熱の形でエネルギー回収することができる。
【0003】
メタン発酵処理は、処理対象物である有機性廃棄物の濃度(TS(固形物濃度))を15%以下程度に調整してメタン発酵させる湿式メタン発酵処理と、TSを15〜30%程度に調整してメタン発酵させる乾式メタン発酵処理と、に大別される。乾式メタン発酵処理は、湿式メタン発酵処理よりもTSの高い処理、すなわち高負荷処理であるため、乾式メタン発酵処理によると、湿式メタン発酵処理の場合に比して排水処理設備を小さくすることができる、という利点がある。この乾式メタン発酵処理に関する技術は、例えば特許文献1に記載されている。
【0004】
特許文献1にも記載されているように、通常、乾式メタン発酵処理では、処理対象物である有機性廃棄物の取り扱いを容易にし、且つ有機性廃棄物を好適にメタン発酵処理するために、実際には有機性廃棄物に水分を添加して水分調整が必要となる場合が多い。そのため、メタン発酵処理されたあとに残る発酵残渣は、脱水機などで固形分と水分とに固液分離され、分離された濾液(水分)は排水処理設備に送られて処理される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−17024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記したように、乾式メタン発酵処理によると、湿式メタン発酵処理の場合に比して排水処理設備を小さくすることができる、という利点がある。しかしながら、特許文献1にも記載されているように、従来のメタン発酵処理では、湿式・乾式に関係なく、残渣からの濾液(水分)を処理するための排水処理設備が必要であった。乾式メタン発酵と言えども、消化液を液肥利用する場合を除き、排水処理は必要であった。このような背景のもと、排水処理設備の不要な無排水式あるいは非常に小型の排水処理設備で済むメタン発酵処理が望まれている。
【0007】
ここで、排水処理設備をなくすためには、メタン発酵槽に投入する前に加水などの有機性廃棄物の水分調整を行わず、すなわち、TSが高いまま有機性廃棄物をメタン発酵処理することが考えられる。一方、メタン発酵処理においては、メタン発酵に用いる本体容器内を嫌気性に保つ必要があり、本体容器のシール性を高めることが重要である。従来の乾式メタン発酵処理では、モーノポンプや油圧ポンプなどを用いて有機性廃棄物を本体容器内に圧送して投入している。モーノポンプなどによる圧送によると密閉性が確保されるため、本体容器に設けられた有機性廃棄物の投入口は外部と遮断され、本体容器内は嫌気性に保たれる。しかしながら、TSの高い有機性廃棄物は、流動性が悪いためにモーノポンプなどを用いて圧送することが困難である。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、TSが高い条件で有機性廃棄物を処理する場合であっても、本体容器内を嫌気性に保ちつつ有機性廃棄物を本体容器内に供給することができる構造を備えた嫌気性処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
上記課題を解決するために本発明は、有機性廃棄物を嫌気性処理する本体容器と、前記本体容器に有機性廃棄物を投入するための投入装置と、嫌気性処理されたあとに残る残渣を前記本体容器の外部に排出するための排出装置と、を備え、前記投入装置は、前記本体容器内の上部に配置され、下端が当該本体容器内で開放された筒状体と、前記筒状体の下方に配置されるとともに、当該筒状体の下端部を収容する中継容器と、前記中継容器内に収容され、当該中継容器内から前記本体容器内へ有機性廃棄物を供給するための供給機と、を備える嫌気性処理装置を提供する。
【0010】
この構成によると、有機性廃棄物が筒状体に投入され中継容器内に落下し、有機性廃棄物は中継容器内に投入されていく。ここで、筒状体の下端部が中継容器内に収容されているので、中継容器内の液体によって、本体容器内への有機性廃棄物の投入部を外部と遮断できる。すなわち、TSが高い条件で通気性のある有機性廃棄物を処理する場合であっても、本体容器内を嫌気性に保ちつつ有機性廃棄物を本体容器内に供給することができる。なお、上記供給機を動作させることにより、中継容器内の有機性廃棄物を中継容器内から本体容器内へ供給する(落下させる)ことができる。
【0011】
また本発明において、前記本体容器底部の液体を前記中継容器に送るポンプを備えることが好ましい。
【0012】
この構成によると、本体容器底部の液体を中継容器に送ることで、中継容器の液面を一定レベルに維持することができる。筒状体の下端部は中継容器内に収容されているので、すなわち中継容器の液面よりも下に位置するようになり、本体容器の内部は液封され外部に対してより確実に遮断される。また、投入される有機性廃棄物中には空隙が存在するが、本体容器底部の液体を中継容器に入れることで、有機性廃棄物中の空隙をなくすことができ、外部との遮断性をより高めることができる。
【0013】
さらに本発明において、前記中継容器の底部は、一端側から他端側へ向かって下方に傾斜する傾斜面を有し、前記供給機は、前記中継容器の底部の傾斜面に沿って配置されることが好ましい。
【0014】
この構成によると、中継容器の底部を上記のような傾斜面とすることで、中継容器内から本体容器内へ有機性廃棄物を確実に供給することができる。また、中継容器の上部の開口面積が大きくなり、液面レベルの変動を抑えることができる。
【0015】
さらに本発明において、前記排出装置は、前記本体容器の底部に配置され、前記残渣を当該本体容器の外部に排出するための排出機と、前記排出機の上に配置され、末端部が前記本体容器の底部の液面よりも下方に位置された隔壁と、を備えることが好ましい。
【0016】
本体容器内に供給された有機性廃棄物中の水分は、発酵反応に従い有機性廃棄物からしみ出し徐々に本体容器の底に移動していく。この構成によると、末端部が本体容器底部の液面よりも下方に位置された隔壁により、本体容器の内部と外部とが排出装置側において液封される。これにより、排出装置側においても本体容器の内部と外部との遮断性をより高めることができる。
【0017】
さらに本発明において、前記本体容器底部の液体が前記排出装置の上部に送られるように形成されていることが好ましい。
【0018】
この構成によると、本体容器底部の液体を排出装置の上部に送ることで、排出装置内を移動する残渣中に空隙が存在したとしても、その空隙をなくすことができ、外部との遮断性をより高めることができる。
【0019】
さらに本発明において、前記本体容器の底部は、一端側から他端側へ向かって下方に傾斜する傾斜面を有し、前記排出装置は、前記本体容器の底部の傾斜面に沿って配置されることが好ましい。
【0020】
この構成によると、本体容器の底部を上記のような傾斜面とすることで、本体容器底部の液面レベルを維持しやすい。その結果、本体容器の内部と外部との液封をより確実なものとすることができる。
【0021】
さらに本発明において、前記排出装置の下方側端部が位置する前記本体容器の底部に、嫌気性細菌貯留槽が形成されていることが好ましい。
【0022】
この構成によると、中継容器や排出装置の上部に送る液体(嫌気性細菌を含む液体)を効率的に集めることができる。また、この液体に含まれる嫌気性細菌を用いて、本体容器内の嫌気性処理を好適に進行させることができる。
【0023】
また本発明は、その第2の態様によれば、本発明の嫌気性処理装置と、前記嫌気性処理装置から排出される残渣を焼却処理するための焼却炉と、を備える廃棄物処理システムを提供する。この廃棄物処理システムによると、TSが高い有機性廃棄物が処理対象物であったとしても、その嫌気性処理および焼却処理を好適に行うことができる。
【0024】
さらに本発明は、その第3の態様によれば、本発明の嫌気性処理装置の本体容器に有機性廃棄物を投入する有機性廃棄物投入方法であって、前記筒状体の下端部が前記中継容器に貯留された液体に浸漬した状態を保持しつつ上部に有機性廃棄物を供給して中継容器に当該有機性廃棄物を投入する投入工程と、前記供給機を動作させて、前記投入された有機性廃棄物を前記中継容器内から前記本体容器内へ供給する供給工程と、を備える有機性廃棄物投入方法を提供する。
【0025】
この構成によると、中継容器に貯留された液体により、本体容器の内部は常に外部と遮断される。これにより、本体容器内への有機性廃棄物の投入部を外部と遮断できる。すなわち、TSが高い条件で有機性廃棄物を処理する場合であっても、本体容器内を嫌気性に保ちつつ有機性廃棄物を本体容器内に供給することができる。なお、上記供給機を動作させることにより、中継容器内の有機性廃棄物を中継容器内から本体容器内へ確実に供給する(落下させる)ことができる。
【0026】
また本発明において、前記本体容器底部の液体を前記中継容器に送ることが好ましい。
【0027】
この構成によると、本体容器底部の液体を中継容器に送ることで、中継容器の液面を一定レベルに維持することができる。筒状体の下端部は中継容器内に収容されているので、すなわち中継容器の液面よりも下に位置するようになり、本体容器の内部は液封され外部に対してより確実に遮断される。また、投入される有機性廃棄物中には空隙が存在するが、本体容器底部の液体を中継容器に入れることで、有機性廃棄物中の空隙をなくすことができ、外部との遮断性をより高めることができる。
【0028】
さらに本発明は、その第4の態様によれば、本発明の嫌気性処理装置の本体容器に有機性廃棄物を投入し、かつ嫌気性処理されたあとに残る残渣を当該本体容器から排出する有機性廃棄物投入排出方法であって、前記筒状体の下端部が前記中継容器に貯留された液体に浸漬した状態を保持しつつ上部に有機性廃棄物を供給して中継容器に当該有機性廃棄物を投入する投入工程と、前記供給機を動作させて、前記投入された有機性廃棄物を前記中継容器内から前記本体容器内へ供給する供給工程と、嫌気性処理されたあとに残る残渣を前記排出装置により前記本体容器の外部に排出する排出工程と、を備える有機性廃棄物投入排出方法を提供する。
【0029】
この構成によると、投入装置側においては、中継容器内に貯留された液体により、本体容器の内部は外部と遮断される。これにより、本体容器内への有機性廃棄物の投入部を外部と遮断できる。一方、排出装置側においては、末端部が本体容器底部の液面よりも下方に位置された隔壁により、本体容器の内部と外部とが液封される。これにより、本体容器外部への有機性廃棄物の排出部を外部と遮断できる。これらの結果、TSが高い条件で有機性廃棄物を処理する場合であっても、本体容器内を嫌気性に保ちつつ有機性廃棄物を本体容器内に供給・排出することができる。
【0030】
また本発明において、前記本体容器底部の液体を前記中継容器および前記排出装置の上部に送ることが好ましい。
【0031】
この構成によると、本体容器底部の液体を中継容器に送ることで、中継容器の液面を一定レベルに維持することができる。筒状体の下端部は中継容器の液面よりも下に位置するようになり、本体容器の内部は液封され外部に対してより確実に遮断される。また、投入される有機性廃棄物中には空隙が存在するが、本体容器底部の液体を中継容器に入れることで、有機性廃棄物中の空隙をなくすことができ、外部との遮断性をより高めることができる。
【0032】
また、本体容器底部の液体を排出装置の上部に送ることで、排出装置内を移動する残渣中に空隙が存在したとしても、その空隙をなくすことができ、排出装置側においても外部との遮断性をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態に係る廃棄物処理システムを示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るメタン発酵装置を示す模式図である。
【図3】図2のA−A断面図およびB−B断面図である。
【図4】本発明に係るメタン発酵装置の他の実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る廃棄物処理システム100を示すブロック図である。以下に示す廃棄物処理システム100は、都市ゴミを処理対象物としている。また、廃棄物処理システム100を構成するメタン発酵装置1(嫌気性処理装置)は、都市ゴミから分別された有機性廃棄物(生ゴミや紙類)を処理対象物としている。なお、本発明の廃棄物処理システムは、都市ゴミに限らず、さまざまな一般廃棄物、産業廃棄物などを処理対象とすることができるシステムである。同様に、本発明の嫌気性処理装置は、生ゴミや紙類だけでなく、家畜糞尿・汚泥などの有機性廃棄物を処理することもできる装置である。
【0035】
(廃棄物処理システムの構成)
図1に示すように、本実施形態の廃棄物処理システム100は、メタン発酵装置1と、処理工程においてメタン発酵装置1の上流側に配置される分別機3と、メタン発酵装置1の下流側に配置される焼却炉2、脱硫塔5、およびガスホルダー6とを備えている。まず、全体説明として、廃棄物処理システム100を構成するこれらの機器を説明した後、廃棄物処理システム100による都市ゴミの処理概要について説明する。なお、メタン発酵装置1については、後述することとする。
【0036】
(分別機)
分別機3は、投入された都市ゴミをメタン発酵可能な有機性廃棄物(生ゴミや紙類)とメタン発酵に適さない廃プラスチックなどの廃棄物とに分別する機械である。分別機3としてはトロンメルなどの回転篩や風力選別、磁力選別などを必要に応じて組み合わせて使用する。また、トロンメル等での選別効率を高めるために分別の前処理として、破袋、破砕を行うことが好ましい。
【0037】
(焼却炉)
焼却炉2は、メタン発酵装置1から排出された発酵残渣と、分別機3により分別された廃プラスチックなどの廃棄物とを焼却処理する炉である。焼却炉2としては、ガス化溶融炉、固定床炉、流動床炉、ストーカ炉などがある。メタン発酵装置1から排出された発酵残渣は、一旦、ゴミピット4に入れられ、その後、焼却炉2にて焼却処理される。また、分別機3により分別された廃プラスチックなどの廃棄物もゴミピット4に一旦投入され、ゴミピット4から発酵残渣と廃プラスチックなどの廃棄物とが焼却炉2に投入される。
【0038】
(脱硫塔)
脱硫塔5は、メタン発酵装置1から排出されたバイオガス中に含まれる硫化水素を除去するための装置である。脱硫塔5には、湿式脱硫塔、乾式脱硫塔などがあり、単独でまたは組み合わせて使用される。湿式脱硫塔によれば、バイオガス中に含まれる二酸化炭素を除去することもできる。ここで、メタン発酵装置1から排出された直後のバイオガスの成分は、メタンが約60%、二酸化炭素が約40%であり、窒素・硫化水素などのその他ガスがバイオガス中に微量含まれている。バイオガスに含まれる二酸化炭素を除去してメタンガス濃度を高めることで、バイオガスの発熱量が高まる。なお、通常の湿式脱硫塔で二酸化炭素を完全に除去することはできない。また、乾式脱硫塔は、脱硫の仕上げとして用いられることが多い。
【0039】
(ガスホルダー)
ガスホルダー6は、脱硫塔5を出たバイオガスを貯留しておくものであり、脱硫塔5の後段に配置される。ガスホルダー6に貯留されたバイオガスを燃料として、例えば焼却炉などの補助燃料として利用したり、ガスエンジン・ガスタービン・燃料電池などを駆動し、電気や熱(温水)の形でエネルギー回収したりする。
【0040】
(都市ゴミの処理概要)
図1中の実線の矢印は固形物の流れを示し、点線の矢印はガスの流れを示している。破袋機、破砕機(図示せず)で前処理され分別機3により分別された有機性廃棄物(生ゴミ)は、メタン発酵装置1に送られメタン発酵装置1にてメタン発酵処理される。メタン発酵処理されたあとに残る発酵残渣は、メタン発酵装置1からゴミピット4に送られ、その後、焼却炉2に投入される。焼却炉2に投入された発酵残渣は、分別機3により分別された廃棄物とともに焼却処理される。一方、メタン発酵処理されて発生したバイオガスは、脱硫塔5を通って脱硫処理された後、ガスホルダー6に送られて貯留される。なお、メタン発酵装置1から取り出した発酵残渣を焼却処理するのではなく好気性発酵処理(堆肥化処理)してもよい。
【0041】
本実施形態の廃棄物処理システム100は、排水処理設備を有さないため、全体として敷設面積を小さくすることができる。なお、仮に排水処理設備を設けたとしても、その処理量は従来に比して極めて小さくすることができるので、この観点からも敷設面積を小さくすることができる。
【0042】
(メタン発酵装置(嫌気性処理装置))
メタン発酵装置1は、有機性廃棄物(生ゴミ/紙類)を嫌気性処理(メタン発酵)させる装置である。図2に、図1のメタン発酵装置1の詳細を示している。図3は、図2のA−A断面図およびB−B断面図である。
【0043】
図2に示すように、メタン発酵装置1は、有機性廃棄物(生ゴミ/紙類)をメタン発酵する本体容器11と、本体容器11に生ゴミなどを投入するための投入装置12と、メタン発酵処理されたあとに残る発酵残渣を本体容器11の外部に排出するための排出装置13と、本体容器11の底部に形成された嫌気性細菌貯留槽16とを備えている。以下、メタン発酵装置1を構成するこれらの機器について説明する。
【0044】
(投入装置)
投入装置12は、本体容器11に生ゴミ類を投入するための装置である。この投入装置12は、本体容器11の上方からその内部へ向けて本体容器11を貫通するように配設される筒状体22と、筒状体22の下方に配設される中継容器23と、中継容器23内に収容される電動の供給機24とを備えている。
【0045】
(筒状体)
筒状体22は、所定長さを有する筒状体であり、本体容器11の上方からその内部へ向けて本体容器11を鉛直方向に貫通している。筒状体22の下端は開口となっており、本体容器11内に開放されている。本体容器11における筒状体22の貫通部は、シールされる。なお、筒状体22の上端には、板状のゲート19が設けられている。ゲート19は、メタン発酵装置1の非常時やメンテナンスの際などに閉にされるものであり、通常は常時開とされる。また、筒状体22の容積が、生ゴミ類の投入量(1回当たりの投入量)よりも大きくなるように、筒状体22の直径や高さが決定される。
【0046】
(中継容器)
中継容器23は、筒状体22に投入された生ゴミ類を本体容器11内に供給する前に一旦溜めるための容器である。中継容器23の上面はその全面が開口にされている。また、中継容器23の底部は、一端側から他端側へ向かって下方に傾斜する傾斜面とされている。中継容器23の底部を傾斜面とすることで、中継容器23を水平に切断したときの仮想平面の面積は、底部から上部へ向かうにつれて大きくなり、また、中継容器の形態を同容量の直方体とした場合に比して、中継容器23の上部(上面)の開口面積は大きくなる。その結果、中継容器23の液面レベルD1の変動を抑えることができる。これは中継容器23への液体の供給を停止させる必要が生じた場合に有効である。なお、図3(a)に図2のA−A断面図を示したように、中継容器23は平面視において長方形であり、中継容器23に入れられた液体(嫌気性細菌(メタン菌)を含む液体)は、その4辺からオーバーフローして本体容器11内に散布される。液体散布により、本体容器11内の嫌気性処理(メタン発酵)は好適に進行する。
【0047】
中継容器23には、その上方から筒状体22の下端部22aが差し込まれている(筒状体22の下端部22aが中継容器23内に収容されている)。
【0048】
また、中継容器23の上面が本体容器11内の生ゴミ類の上面よりも上方に位置するように中継容器23は配設される。これにより、中継容器23内から本体容器11内への生ゴミ類の供給を停滞させることなく行うことができる。
【0049】
筒状体22の上部側面には液面計測装置またはサイトグラス(不図示)を取り付けることが好ましい。これにより、生ゴミ類の過投入を監視することができる。
【0050】
(供給機)
供給機24は、中継容器23内から本体容器11内へ生ゴミ類を供給するための装置である。供給機24は電動としているが油圧動としてもよい。また、本実施形態では、供給機24としてスクリューフィーダを例示しているが、前後動する掻き出し機などであってもよい。スクリューフィーダ、掻き出し機などの供給機24によると、TSが高い有機性廃棄物(流動性が悪い有機性廃棄物)であっても問題なく送ることができる。なお、供給機24の送り翼は、メッシュタイプのものがよい。メッシュタイプとすることで生ゴミ類の水切り(液切り)をすることができ、中継容器23の液面レベルD1の下降を防止することができる。また、本体容器11内への液体(メタン菌を含む液体)の偏った散布の防止にもなる。
【0051】
供給機24は、中継容器23の底部の傾斜面に沿って配置されている。垂直方向上向きへ生ゴミ類を移動させる場合に比して、中継容器23内から本体容器11内へ生ゴミ類を確実に供給することができる。なお、供給機24は、有機性廃棄物を供給しやすいように翼に沿う板(鋼板)を設けても良い。これにより、本体容器11内への生ゴミ類の供給効率を高めることができる。
【0052】
(本体容器)
本体容器11は、その内部で生ゴミ類をメタン発酵させるための容器である。例えば鋼板製の密閉容器(タンク)で、グラスウールなどの断熱材により周囲は被覆される。本体容器11の上部には、前記した投入装置12およびバイオガスを排出するためのノズル(排出口)が設けられる。本体容器11内の空間部は、バイオガスで満たされており、その圧力は例えば100〜150mmAqに調整される。図3(a)にその一部を示したように、本体容器11は平面視において長方形である。
なお、本体容器は長方形に限定されず、平面視において円形(容器自体が円筒形)であっても良い。
【0053】
また、本体容器11の底部は、容器側壁から中央へ向かって下方に傾斜する4つの傾斜面を有するように形成されている。すなわち四角錘状に形成されている(その一部形態を図3(b)に示している)。本体容器11の底部を下方に傾斜する傾斜面とすることで、当該底部を水平に切断したときの仮想平面の面積は、底部から上部へ向かうにつれて大きくなる。一方、本体容器11内に供給された生ゴミ類中の水分は、その固形分よりも比重が大きいため、生ゴミ類からしみ出し徐々に本体容器11の底に移動していく。本体容器11の底部を下方に傾斜する傾斜面とすることで、しみ出した水分(液体)の量が少ない場合でも本体容器11底部の液面レベルD3を所定のレベルに維持しやすくなる。
【0054】
なお、本体容器11の底部は、一端側から他端側へ向かって下方に傾斜する少なくとも1つの傾斜面を有すれば、傾斜面を有さない場合に比して液面レベルD3の維持はしやすくなるので、必ずしも4つの傾斜面を有する必要はない。
【0055】
また、本体容器11には、本体容器11内の生ゴミ類を水平方向に掻き混ぜるための攪拌装置(不図示)が設けられてもよい。この攪拌装置(不図示)の主たる目的は、本体容器11内の生ゴミのブリッジングを防止することであるが、この攪拌装置(不図示)による攪拌によりメタン発酵効率も向上する。また、本体容器11内の生ゴミを偏りなく均一にするために生ゴミ表面部を均す撹拌翼やスクレーパーのような掻き取り部材やプッシャーなどを設けてもよい。
【0056】
また、本体容器11内の生ゴミ類のブリッジングを防止するための他の方法としては、本体容器11の外部から本体容器11内の生ゴミ類に向けて、棒状部材を往復稼動させてもよい。このように棒状部材を利用する場合、本体容器11の壁面に棒状部材差し込み用のノズルを設ける。ノズルは複数設けることが好ましく、それぞれ高さを違えて設けることが好ましい。
【0057】
本体容器11下部の側面には、メンテナンス時などに使用されるマンホール(不図示)などが取り付けられる。
【0058】
ここで、メタン発酵処理には、35℃程度の中温発酵処理と、55℃程度の高温発酵処理とがある。したがって、メタン発酵処理するためには生ゴミ類を加温することが好ましい。本体容器11内へ生ゴミを投入する前にあらかじめ生ゴミ類を加温してもよいし、本体容器11自体に加温装置を設けてもよい。本体容器11自体に加温装置を設ける場合は、例えば、本体容器11の外周面に沿わせて螺旋状に巻くように加温水管(不図示)を敷設する方法がある。加温水管としては、鋼管・塩ビ管・可撓性のある樹脂製ホースなどが挙げられる。なお、循環するメタン菌含有溶液を加熱しても良い。
【0059】
(排出装置)
排出装置13は、本体容器11内でメタン発酵処理されたあとに残る発酵残渣を本体容器11の外部に排出するための装置である。排出装置13は、一端側から他端側(本実施形態では特に中央側)へ向かって下方に傾斜する本体容器11底部の傾斜面に沿って配置されている。ここで、排出装置13は電動としているが油圧動としてもよい。また、本実施形態では、排出装置13としてスクリューフィーダを例示しているが、前後動する掻き出し装置などであってもよい。スクリューフィーダ、掻き出し装置などの排出装置13によると、含水率の低い発酵残渣(流動性に乏しい発酵残渣)であっても問題なく送ることができる。なお、排出装置13を構成する排出機31の送り翼は、本体容器11の底面との間に若干隙間を有するため、排出装置13を傾斜させることで発酵残渣を排出する際に液の一部は底部へと流れ出る。これによって、発酵残渣を脱水することも可能である。更に、この送り翼をメッシュタイプとすることで発酵残渣の水切り(液切り)をより好適に行うことができる。液切りを行うことで、発酵残渣の含水率を下げると共に、本体容器11底部の液面レベルD3の大幅な下降を防止することができる。
【0060】
ここで、排出装置13は、スクリューフィーダ形式の排出機31と、排出機13の上に配置され末端部が本体容器11底部の液面レベルD3よりも下方に位置された隔壁32aとを備える。隔壁32aは、排出機31のケーシング32の一部である。隔壁32aの形状は、断面円弧の板形状であったり、平らな板形状であったりする。また、ケーシング32の上部下面には、シュート34(排出口)およびオーバーフロー管33が取り付けられている。なお、シュート34の下端には、板状のゲート19が設けられている。ゲート19は、メタン発酵装置1の非常時やメンテナンスの際などに閉にされるものであり、通常は常時開とされる。
【0061】
排出装置13、および投入装置12などを制御することにより、本体容器11内の生ゴミの滞留時間(固形物滞留時間)を調整する。本体容器11内の固形物滞留時間は、中温発酵処理の場合20日〜30日、高温発酵処理の場合約10日とされる。高温発酵処理を採用して固形物滞留時間を短くすれば、本体容器11の容積を小さくすることができる。
なお、発酵残渣の排出部分(排出装置13内)は、一部分解されて細かくなった発酵残渣が詰まった状態となっており、また、一部が液体に浸漬されており、これにより排出装置13側における本体容器11内のシール性が確保されている。このように、排出装置13側におけるシール性(外部との遮断性)は発酵残渣及び、または液体により確保されるため、排出装置13の位置は必ずしも限定されるものではなく、発酵残渣を本体容器11中央部から抜き出す構造であってもよく、あるいは本体容器11壁面近傍で抜き出す構造であってもよい。
【0062】
(嫌気性細菌貯留槽)
排出装置13の下方側端部が位置する本体容器11の底部には、嫌気性細菌貯留槽16が設けられている。嫌気性細菌貯留槽16は、生ゴミ類からしみ出し本体容器11の底に移動してきた液体(メタン菌を含む液体)を貯留するためのタンクである。嫌気性細菌貯留槽16を設けることで、中継容器23や排出装置13の上部などに送る液体を効率的に集めることができる。嫌気性細菌貯留槽16の天板には大気開放管18が取り付けられている。大気開放管18は、嫌気性細菌貯留槽16内の圧力を調整するためのものであり、その先端は大気に開放されており、通常は液体によって外部と嫌気性細菌貯留槽内部とが隔離されている。また、嫌気性細菌貯留槽16の底(下部)には液抜管17が取り付けられている。液抜管17は、その上端が嫌気性細菌貯留槽16の底面よりも上方に位置するように取り付けられている。ここで、本体容器11に投入される生ゴミ類の中には、石、ボルト・ナット、乾電池などの重量異物が紛れ込んでいることがある。液抜管17の上端を嫌気性細菌貯留槽16の底面よりも上方に位置させることで、これらの重量異物が液抜管17から出ていくことを防止している。これによってポンプが詰まる等の機器トラブルを好適に回避できる。
なお、これらの重量異物については嫌気性細菌貯留槽16に別途設けられた排出口(図示せず)から排出する。
【0063】
液抜管17には配管15を介してポンプPが接続されている。配管には散布装置14が接続されている。ポンプPは、嫌気性細菌貯留槽16に溜まった液体を抜き出して揚液する(散布装置14に送る)ためのポンプであり、液抜管17の近傍に配置されている。嫌気性細菌貯留槽16に溜まる液体は、粘性の高い液体であり、ポンプPとしては、例えばモーノポンプが用いられる。なお、粘性が低い液体を得られる場合は遠心ポンプなどを用いてもよい。
【0064】
散布装置14は、配管14aと、配管14aに取り付けられた複数のバルブ14bおよびノズル14cとから構成される。本実施形態では、中継容器23の上、筒状体22の内側、および排出装置13内の上部に、ノズル14cは配置されている。すなわち、中継容器23内、筒状体22内、および排出装置13内の上部に、本体容器11底部の液体を、嫌気性細菌貯留槽16を介して送液可能に構成されている。なお、配管14aは保温処理(被覆)されていることが好ましい。メタン菌の好適な状態を維持するためである。
【0065】
また、嫌気性細菌貯留槽16の天板には、メンテナンス時などに使用されるマンホール(不図示)などが取り付けられる。
【0066】
(メタン発酵装置の作動)
次に、メタン発酵装置1の作動について説明する。
【0067】
(投入工程)
筒状体22の上部に生ゴミ類を供給して、筒状体22の下端部に設けられた中継容器23に生ゴミ類を投入する。中継容器23内は液体が貯留されているため、投入された生ゴミ類は中継容器23の液体によって拡散される。
【0068】
投入装置12によると、筒状体22の下端部22aが中継容器23内に収容されているので、生ゴミ類は中継容器23内でその自重によりまたは、水分を吸収して中継容器底部に落下する。なお、浮遊性のゴミは筒状体22内で浮遊するものの、後から投入される他のゴミによって筒状体22内から押し出される。中継容器内は液体によって満たされているため、本体容器11の内部は外部と遮断される。これにより、TSが高い条件で有機性廃棄物を処理する場合であっても、本体容器内を嫌気性に保ちつつ有機性廃棄物を本体容器内に供給することができる。すなわち、例えばTSが50%の流動性が悪い有機性廃棄物であっても、容器内を嫌気性に保ちつつ問題なく有機性廃棄物を容器内に供給することができる。
【0069】
なお、本体容器11内の圧力を高める場合(例えば0.2MPa以上)、容器内圧力に伴い筒状体22内の液面が高くなるため、筒状体22の高さを高くする必要が出てくるが、このような場合、窒素などの不活性ガスを筒状体22内の上部空間に少量供給して、不活性ガスにより筒状体22内の液面を下げる(ただし、D1よりは高くする)ようにしても良い。同様に、下部の排出装置13内にも不活性ガスを供給して、不活性ガスにより排出装置13内の液面D4を下げる(ただし、D3よりは高くする)ようにしても良い。
【0070】
また、本体容器11底部の液体をポンプPで揚液し、散布装置14により中継容器23に送ることが好ましい。筒状体22の下端部22aが液面レベルD1よりも下に位置ようになり、本体容器11の内部は液封され外部に対してより確実に遮断される。なお、本体容器11底部の液体を中継容器23に常時送ることで、中継容器23の液面レベルD1を一定に維持することができる。また、筒状体22に投入される有機性廃棄物中には空隙が存在するが、本体容器11底部の液体を中継容器23に入れることで、有機性廃棄物中の空隙をなくすことができ、外部との遮断性をより高めることができる。
【0071】
さらには、散布装置14により、本体容器11底部の液体を筒状体22内にも送ることが好ましい。これにより、筒状体22内の有機性廃棄物中の空隙を確実になくすことができる。筒状体22内への液体供給の程度は、特に限定されないが、有機性廃棄物が軽量物であり十分に解きほぐされた状態の場合や、有機性廃棄物が十分に小さい形状で少量ずつ投入される場合、廃棄物の投入によって筒状体22内の液面の変動が少ないことから液体の供給を停止し、有機性廃棄物が体積が大きい場合や凝集した形状である場合、廃棄物の投入によって筒状体22内の液面の変動が大きくなることが予想されるため、液体を常時供給するようにしても良い。
【0072】
また、筒状体22内または中継容器23内に液体(メタン菌等の嫌気性菌含有液体)を散布することで、容器内のシール性を高めるだけでなく、生ゴミ類と嫌気性菌を効率よく接触させることが出来るため、容器内での嫌気処理(例えばメタン発酵)が進行しやすくなる。
【0073】
なお、本体容器11内で発生するバイオガスの圧力により、筒状体22内の液面レベルD2と中継容器23の液面レベルD1との差H1は例えば、100〜150mmとなる。
【0074】
(有機性廃棄物供給工程)
次に、供給機24を動作させて、生ゴミ類を中継容器23内から本体容器11内へ供給する。ここでは、供給機24の電動機Mをインバータ制御する構成にし、送り翼(スクリュー翼)の回転数を任意に変更できるようにしておくことが好ましい。生ゴミ類の性状に合わせて回転数を変更することで落下量を調整することができる。これによって、有機性廃棄物の供給に伴う中継容器内の液面の変動を制御することができるため、筒状体22の下端部のシール性を好適に保持できる。
なお、自重によって中継容器の底部に落下するものは供給機24により中継容器23内から本体容器11内に供給されるが、浮遊性の廃棄物の場合、一部は供給機24の上部で引っかかり本体容器11内に供給され、一部は後述するオーバーフローする液体と共に本体容器11内に落下する。
【0075】
なお、本体容器11底部の液体を中継容器23に常時入れる場合は、中継容器23の液面レベルD1を維持するようにする。また、常に中継容器23から液体がオーバーフローするように、液体の供給量や中継容器23へのゴミの投入量、中継容器23内から本体容器11内への生ゴミ類の供給量を調整しても良い(液体供給ポンプの回転数や中継容器へゴミを投入する投入装置の回転数、供給機24の回転数などを調整する)。
中継容器23内から常に液体がオーバーフローするように運転(例えば液体を常に供給する)することによって、筒状体の下端部が常に液面レベルD1よりも下方になるように運転することができる(液面保障)。
【0076】
(残渣排出工程)
次に、排出装置13を動作させて、嫌気性処理されたあとに残る発酵残渣を本体容器11の外部に排出する。ここで、排出装置13内は、一部分解されて細かくなった発酵残渣が詰まった状態となっておりシール性が確保されるが、排出機13の上に配置された隔壁32aにより、シール性がさらに強化される。末端部が本体容器11底部の液面レベルD3よりも下方に位置された上記の隔壁32aにより、本体容器11の内部と外部とが液封される。これにより、本体容器11の内部と外部との遮断性(シール性)がより高められるのである。
【0077】
さらには、本体容器11底部の液体を散布装置14により排出装置13内の上部に送ることが好ましい。これにより、排出装置13内を移動する発酵残渣中に空隙が存在したとしても、その空隙をなくすことができ、外部との遮断性(シール性)をさらに高めることができる。
【0078】
なお、本体容器11内で発生するバイオガスの圧力により、排出装置13内の液面レベルD4と本体容器11底部の液面レベルD3との差H2は例えば100〜150mmとなる。
本実施形態によると、本体容器11への供給装置12及び排出装置13を液封しているため、連続的に供給及び排出を行うことができ、その結果、嫌気性処理を連続的に行うことができる。また、大量に加水する必要がないため、得られる発酵残渣も含水率が低いことから処理が容易となる。
【0079】
(他の実施形態)
図4は、本発明に係るメタン発酵装置の他の実施形態を示す模式図である。本実施形態については、前記実施形態との相違点に重点をおいて説明する。また、前記実施形態の構成機器と同じ構成機器については同一の符号を付している。
【0080】
本実施形態のメタン発酵装置21と、前記実施形態のメタン発酵装置1との相違は、本実施形態のメタン発酵装置21の散布装置14にある。
【0081】
(散布装置)
本実施形態の散布装置14は、嫌気性細菌貯留槽16からポンプPを介して送られてきた液体を本体容器11内の上部(生ゴミ類(有機性廃棄物)の上方)から散布するための配管14aおよび複数のノズル14c、ならびに嫌気性細菌貯留槽16から送られてきた液体を本体容器11内の生ゴミ類の中に直接散布するための配管14aおよび複数のノズル14d、をさらに備えている。
【0082】
生ゴミ類の中に配置されたノズル14dの詳細を図4の右部に示している。このように、ノズル14dは、上端および側面が閉止され下端のみが開放された形状を有している。このような形状とすることで、ノズルの目詰まりを防止することができる。
【0083】
嫌気性細菌貯留槽16の液体を本体容器11の上部に送り本体容器11内に上方から散布することで、好適にメタン発酵を進行させることができる。また、嫌気性細菌貯留槽16の液体を生ゴミ類の中に直接散布することで、メタン菌を生ゴミ類の中にいきわたらせることができ、容器内全体で好適にメタン発酵を進行させることができる。
なお、散布装置14は有機性廃棄物の上方から散布するためのノズル及び、有機性廃棄物の内部に直接散布するノズルの両方を設ける必要は無く、いずれか片方のみを設けても良い。特に、有機性廃棄物が浸透しやすい廃棄物である場合、上方から散布するためのノズルのみで良い。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することが可能なものである。
【0085】
例えば、本発明において液封する液体は投入される有機性廃棄物が含有する水分が利用されるが、メタン発酵の過程で一部の水分は有機性廃棄物と共に外部へ排出され、一部の水分は発生するバイオガスと共に排出されるため、投入される廃棄物の含水率によっては液封するための水分が足りなくなるおそれがある。このため、必要に応じて外部から水分を追加することが好ましい。
また、運転開始時は液封するための十分な液体が無いため、予め中継容器内を水または種汚泥で満たしておくことが好ましい。
【0086】
また、分別機3の後段に破砕機を設け、前処理とは別に生ゴミを破砕して細かくしてメタン発酵装置1に供給しても良い。この場合、メタン発酵効率が向上する。
【0087】
また、焼却炉2と組み合わせて使用する場合、メタン発酵装置の加熱熱源として焼却炉廃熱を利用することができる。メタン発酵に利用される熱は低い温度でよいため、焼却炉2で発生した低温廃熱を好適に利用することができる。加熱の方法としては特に限定されないが、焼却炉2で発生した廃熱で水や空気を加温し、加温された温水や水蒸気、空気を利用して間接的にメタン発酵装置を加熱してもよく、また、焼却炉で発生する廃ガスを直接熱源として利用し、廃ガスで間接的に加熱もしくは直接接触させて加熱してもよい。
本発明によると、発酵残渣の含水率が通常のメタン発酵装置に比べると低くできるため、焼却炉に供給する際に、別途乾燥装置を設ける必要が無く、また、発酵残渣の供給によって焼却炉での熱量が大幅に低下することも抑制しうる。
また、メタン発酵装置の後段に脱水機を設け、焼却炉2に供給する発酵残渣のカロリーを向上させるようにしても良い。なお、脱水機で脱水された脱水ろ液は発酵槽(本体容器11)へ循環する。
【0088】
また、焼却炉2に代えて堆肥化装置(好気性処理設備)を設けてもよい。堆肥化装置としては、通常、発酵残渣に空気を供給して発酵させる好気発酵が利用できる。この場合、好気発酵させる際に攪拌させることが好ましい。また、好気発酵は発熱反応であるため、発生した熱を前段のメタン発酵の熱源として利用してもよい。
【0089】
なお、本実施形態においてはメタン菌を利用したメタン発酵について説明したが、本発明は、メタン菌に限らず、水素生成菌を利用した水素発酵にも利用することができる。
【符号の説明】
【0090】
1:メタン発酵装置(嫌気性処理装置)
2:焼却炉
11:本体容器
12:投入装置
13:排出装置
22:筒状体
23:中継容器
22a:筒状体の下端部
24:供給機


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物を嫌気性処理する本体容器と、
前記本体容器に有機性廃棄物を投入するための投入装置と、
嫌気性処理されたあとに残る残渣を前記本体容器の外部に排出するための排出装置と、を備え、
前記投入装置は、
前記本体容器内の上部に配置され、下端が当該本体容器内で開放された筒状体と、
前記筒状体の下方に配置されるとともに、当該筒状体の下端部を収容する中継容器と、
前記中継容器内に収容され、当該中継容器内から前記本体容器内へ有機性廃棄物を供給するための供給機と、を備える嫌気性処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の嫌気性処理装置において、
前記本体容器底部の液体を前記中継容器に送るポンプを備えることを特徴とする、嫌気性処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の嫌気性処理装置において、
前記中継容器の底部は、一端側から他端側へ向かって下方に傾斜する傾斜面を有し、
前記供給機は、前記中継容器の底部の傾斜面に沿って配置されることを特徴とする、嫌気性処理装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の嫌気性処理装置において、
前記排出装置は、
前記本体容器の底部に配置され、前記残渣を当該本体容器の外部に排出するための排出機と、
前記排出機の上に配置され、末端部が前記本体容器の底部の液面よりも下方に位置された隔壁と、
を備えることを特徴とする、嫌気性処理装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の嫌気性処理装置において、
前記本体容器底部の液体が前記排出装置の上部に送られるように形成されていることを特徴とする、嫌気性処理装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の嫌気性処理装置において
前記本体容器の底部は、一端側から他端側へ向かって下方に傾斜する傾斜面を有し、
前記排出装置は、前記本体容器の底部の傾斜面に沿って配置されることを特徴とする、嫌気性処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の嫌気性処理装置において
前記排出装置の下方側端部が位置する前記本体容器の底部に、嫌気性細菌貯留槽が形成されていることを特徴とする、嫌気性処理装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の嫌気性処理装置と、
前記嫌気性処理装置から排出される残渣を焼却処理するための焼却炉と、
を備える廃棄物処理システム。
【請求項9】
請求項1に記載の嫌気性処理装置の本体容器に有機性廃棄物を投入する有機性廃棄物投入方法であって、
前記筒状体の下端部が前記中継容器に貯留された液体に浸漬した状態を保持しつつ上部に有機性廃棄物を供給して当該中継容器に当該有機性廃棄物を投入する投入工程と、
前記供給機を動作させて、前記投入された有機性廃棄物を前記中継容器内から前記本体容器内へ供給する供給工程と、を備える有機性廃棄物投入方法。
【請求項10】
請求項9に記載の有機性廃棄物投入方法において、
前記本体容器底部の液体を前記中継容器に送ることを特徴とする、有機性廃棄物投入方法。
【請求項11】
請求項4に記載の嫌気性処理装置の本体容器に有機性廃棄物を投入し、かつ嫌気性処理されたあとに残る残渣を当該本体容器から排出する有機性廃棄物投入排出方法であって、
前記筒状体の下端部が前記中継容器に貯留された液体に浸漬した状態を保持しつつ上部に有機性廃棄物を供給して当該中継容器に当該有機性廃棄物を投入する投入工程と、
前記供給機を動作させて、前記投入された有機性廃棄物を前記中継容器内から前記本体容器内へ供給する供給工程と、
嫌気性処理されたあとに残る残渣を前記排出装置により前記本体容器の外部に排出する排出工程と、を備える有機性廃棄物投入排出方法。
【請求項12】
請求項11に記載の有機性廃棄物投入排出方法において、
前記本体容器底部の液体を前記中継容器および前記排出装置の上部に送ることを特徴とする、有機性廃棄物投入排出方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−188310(P2010−188310A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37311(P2009−37311)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】