説明

嫌気的多環芳香族炭化水素分解菌

【課題】 難分解性の多環芳香族炭化水素を嫌気条件下で分解し、増殖することができる新規な細菌の提供。
【解決手段】 嫌気条件下で多環芳香族炭化水素を資化し、増殖することができるスルフロスピリラム・エスピー(Sulfurospirillum sp.)Phe91株(NITE P−13)、及び、嫌気条件下で多環芳香族炭化水素を資化し、増殖することができるディアフォロバクター・エスピー(Diaphorobactersp.)Phe82株(NITE P−16)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嫌気条件下で多環芳香族炭化水素を分解できるスルフロスピリラム(Sulfurospirillum)属及びディアフォロバクター(Diaphorobacter)属に属する細菌、及び該細菌を用いた多環芳香族炭化水素の分解に関する。
【背景技術】
【0002】
多環芳香族炭化水素(Polycyclic aromatic hydrocarbon)は、石油の流出、化石燃料の不完全な燃焼や化学工業プロセスの副産物として環境中に放出される(非特許文献1)。多くの多環芳香族炭化水素は毒性を有し、また低水溶性、低揮発性そして堆積物粒子に対する高親和性があることから、生分解を受けにくい難分解性化合物とされている。多環芳香族炭化水素を好気的に分解する微生物はよく知られているが(非特許文献2)、実際には地表下、地下水などの嫌気的な環境が汚染されているケースが多く、嫌気的条件下では好気性微生物は分解力を有しない。さらに、建造物の地下などの汚染は物理化学的除去が不可能であり、また好気性微生物を用いたバイオレメディエーションでは分解促進のために地下水を汲み上げるか又は空気を注入する操作が必要となり、これにはコストがかかる。
【0003】
一方、嫌気的に多環芳香族炭化水素を分解する細菌は、今までにいくつか単離されている。ビブリオ・エスピー(Vibrio sp.)NAP−4株とシュードモナス・エスピー(Pseudomonassp.)NAP−3株(非特許文献3)及びNaphS2株(非特許文献4)である。これらは、γプロテオバクテリア又はδプロテオバクテリアに属し、前者が硝酸還元細菌で、後者が硫酸還元細菌である。しかしながらこれらの細菌が分解できるのは2環のナフタレンまでであり、3環以上の芳香族炭化水素を嫌気的に分解できるピュアカルチャーはまだ発見されていない。
【0004】
【非特許文献1】Cerniglia, C. E.,Biodegradation,第3巻,第351-364頁,1992年
【非特許文献2】Cerniglia, C.E. and M.A. Heitkamp.,Metabolism of polycyclic aromatic hydrocarbond in the aquatic environment,第41-68頁,1989年
【非特許文献3】Rockne, K. J., J. C. Chee-Sanford, R. A. Sanford, B. P. Hedlund, J. T. Staley,及びS. E. Strand,Appl. Environ. Microbiol.,第66巻,第1595-1601頁,2000年
【非特許文献4】Galushko, A., D. Minz, B. Schink,及びF. Widdel.,Environ. Microbiol.,第1巻,第415-420頁,1999年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、嫌気条件下で多環芳香族炭化水素を資化し、増殖することができる新規な微生物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、石油汚染地下水中から多環芳香族炭化水素を嫌気的に分解することのできる新規細菌スルフロスピリラム・エスピーPhe91株及びディアフォロバクター・エスピーPhe82株を単離することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(5)である。
(1)嫌気条件下で多環芳香族炭化水素を資化し、増殖することができるスルフロスピリラム・エスピー(Sulfurospirillum sp.)Phe91株(NITE P−13)。
(2)嫌気条件下で多環芳香族炭化水素を資化し、増殖することができるディアフォロバクター・エスピー(Diaphorobacter sp.)Phe82株(NITE P−16)。
(3)以下の(A)及び(B)の性質を有するスルフロスピリラム(Sulfurospirillum)属に属する細菌又はその細菌培養物を含むことを特徴とする多環芳香族炭化水素分解剤。
(A)16S rRNA遺伝子の塩基配列が、配列番号1に示される塩基配列と98%以上の相同性を示す
(B)嫌気条件下で多環芳香族炭化水素を資化し、増殖することができる
上記多環芳香族炭化水素分解剤において、細菌はスルフロスピリラム・エスピーPhe91株(NITE P−13)であることが好ましい。
(4)以下の(A)及び(B)の性質を有するディアフォロバクター(Diaphorobacter)属に属する細菌又はその細菌培養物を含むことを特徴とする多環芳香族炭化水素分解剤。
(A)16S rRNA遺伝子の塩基配列が、配列番号2に示される塩基配列と98%以上の相同性を示す
(B)嫌気条件下で多環芳香族炭化水素を資化し、増殖することができる
上記多環芳香族炭化水素分解剤において、細菌はディアフォロバクター・エスピーPhe82株(NITE P−16)であることが好ましい。
(5)上記(3)又は(4)の多環芳香族炭化水素分解剤と多環芳香族炭化水素とを接触させて、多環芳香族炭化水素を分解することを特徴とする、多環芳香族炭化水素の分解方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、嫌気条件下で多環芳香族炭化水素を分解できる新規な細菌が提供される。これらの細菌を利用することにより、地下水、土壌などの嫌気的環境を汚染した多環芳香族炭化水素を効率的に分解除去することが可能である。また多環芳香族炭化水素分解細菌を含む製剤を調製することにより、当該製剤を汚染地下水などに投入することによって、簡便かつ迅速に多環芳香族炭化水素汚染を修復することができる。
【0009】
また本発明により、多環芳香族分解細菌を単離するための培地組成物及びスクリーニング方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
1.多環芳香族炭化水素を分解する細菌
本発明は、スルフロスピリラム属又はディアフォロバクター属に属し、かつ嫌気条件下で多環芳香族炭化水素を資化し、増殖することができる細菌を提供する。
【0012】
(1)スルフロスピリラム(Sulfurospirillum)属に属する新規な細菌
スルフロスピリラム属に属し、嫌気条件下で多環芳香族炭化水素を資化する細菌の代表的な菌株は、スルフロスピリラム・エスピーPhe91株(以下「Phe91株」と略記する)である。本発明者は、石油汚染地下水からPhe91株を単離し、このPhe91株が三環芳香族炭化水素であるフェナンスレンの分解能を有すること、また16S rRNA遺伝子の配列比較により新種の細菌であることを見出した。この細菌の詳細な菌学的性質は、実施例2に示すとおりである。スルフロスピリラム・エスピーPhe91株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに、受託番号NITE P−13として2004年7月7日付で寄託されている。
【0013】
また、Phe91株の16S rRNA遺伝子は配列番号1に示される塩基配列を有する。従って、スルフロスピリラム属に属し、かつ配列番号1に示される塩基配列と98%以上(好ましくは99%以上、最も好ましくは100%)の相同性を有する16S rRNA遺伝子を含む細菌は、多環芳香族炭化水素の分解活性を示す可能性がある。
【0014】
本発明のスルフロスピリラム・エスピーPhe91株は、後述するAHD−Non培地(表1)における生育、又は16S rRNA遺伝子の塩基配列(配列番号1)を指標として、石油汚染サンプルなどからスクリーニングすることにより得ることができる。
【0015】
本発明のPhe91株は、フェナンスレンなどの多環芳香族炭化水素に対し分解能を有するため、このような多環芳香族炭化水素で汚染された環境の浄化に利用することができる。Phe91株は発酵的に増殖できる菌であり、電子受容体が不足しているような環境でも、その炭化水素を発酵的に分解しエネルギーを獲得することができる。従って、例えば汚染地下排水などの嫌気的な環境下においても、電子受容体を添加することなく汚染物質の分解を進行させることができる。
【0016】
(2)ディアフォロバクター(Diaphorobacter)属に属する新規な細菌
ディアフォロバクター属に属し、嫌気条件下で多環芳香族炭化水素を資化する細菌の代表的な菌株は、ディアフォロバクター・エスピーPhe82株(以下「Phe82株」と略記する)である。本発明者は、石油汚染地下水からPhe82株を単離し、このPhe82株が三環芳香族炭化水素であるフェナンスレンの分解能を有すること、また16S rRNA遺伝子の配列比較により新規な細菌であることを見出した。この細菌の詳細な菌学的性質は、実施例2に示すとおりである。ディアフォロバクター・エスピーPhe82株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに、受託番号NITE P−16として2004年8月19日付で寄託されている。
【0017】
また、Phe82株の16S rRNA遺伝子は配列番号2に示される塩基配列を有する。従って、ディアフォロバクター属に属し、かつ配列番号2に示される塩基配列と98%以上(好ましくは99%以上、最も好ましくは100%)の相同性を有する16S rRNA遺伝子を含む細菌は、多環芳香族炭化水素の分解活性を示す可能性がある。
【0018】
本発明のディアフォロバクター・エスピーPhe82株は、後述するAHD−NO培地(表1)における生育、又は16S rRNA遺伝子の塩基配列を指標として、石油汚染サンプルなどからスクリーニングすることにより得ることができる。
【0019】
本発明のPhe82株は、フェナンスレンなどの多環芳香族炭化水素に対し分解能を有するため、このような多環芳香族炭化水素で汚染された環境の浄化に利用することができる。Phe82株は電子受容体に硝酸塩を利用し、炭化水素を分解しながら増殖することができる。従って、例えば汚染地下排水などの嫌気的な環境下では、電子受容体の硝酸塩を添加し、Phe82株の炭化水素分解活性を促進させることが好ましい。
【0020】
2.多環芳香族炭化水素分解細菌のための培地組成物及びスクリーニング
(1)培養方法
本発明者は、細菌が嫌気的条件下にて多環芳香族炭化水素を唯一の炭素源又はエネルギー源として利用するような培地を調製するため検討を行った。
【0021】
従来の嫌気性細菌の培養に用いられている培地としては、還元剤としてクエン酸チタニウム(III)を利用するZehnderらの培地(Zehnder, A. J. B. and Wuhrmann, K. Titanium(III) citrate as a nontoxic oxidation-reduction buffering system for the culture of obligate anaerobes. Science 194:1165-1166. 1976)が知られている。しかしながら、この培地では、偏性嫌気性細菌(Methanobacterium strain, Clostridium formicroaceticum, Bifidobacterium bifidum)やアルカリ性(pH10)通性嫌気性菌(Niimura, Y. 嫌気性菌培養のための簡便な還元剤Ti(III)-アルカリ性下の培養への応用-. Microbiol. Cult. Coll. Dec. 105-106. 1996)には有効であるが、通性嫌気性細菌(Escherichia coli, Pseudomonas denitrificans)には阻害があると報告されている。また、このクエン酸チタニウム(III)中のクエン酸塩が炭素源又はエネルギー源として利用される可能性も考えられた。そのため、これらの問題を解決するために、還元剤として塩化チタニウム(III)を培地に添加することを試みた。
【0022】
すなわち、本発明の培地組成物は、還元剤として塩化チタニウム(III)を含有することを特徴とする。この還元剤はpH7.0、25℃条件下で−235mVを示し、嫌気性細菌の培養に使用することができる。この還元剤を嫌気的多環芳香族炭化水素分解菌のスクリーニングに使用したところ、偏性嫌気性細菌(Desulfovibrio strain, Desulfotomaculum strain, Clostridium strainなど)と通性嫌気性細菌(Pseudomonas strain, Acidovoraxstrainなど)の両方を単離することができた。従って、この還元剤は、中性条件下(pH7.0)で偏性及び通性嫌気性細菌のいずれの培養にも有効であることが分かった。
【0023】
この還元剤には複合剤が添加されていないため、多く添加した場合には培地中に沈澱ができる。そのため、培地への添加量は、培地中1〜4mM濃度であることが好ましい。さらに、培地にあらかじめ酸化還元試薬(例えばレサズリン試薬)を添加し、その色の変化を利用して、還元する最少量のTi(III)Cl溶液を添加するのが最も好ましい。
【0024】
培地に添加するための0.2M塩化チタニウム(III)溶液(pH7.0)の調製方法は、限定するものではないが、例えば以下のとおりである。40ml超純水に20%TiCl溶液(Wako)10ml加え、飽和NaCO溶液でpH7.0に調整する。これをバイアル瓶に入れ、卓上焼却炉(還元銅)を使用して、無酸素Nガス下でしばらくバブリングする(5〜10分)。次に、ブチルゴム栓、アルミシールをしてオートクレーブ(121℃、20分)を行う。完全に冷えてからオートクレーブから取り出し、4℃で遮光冷蔵保存する。
【0025】
また本発明の培地組成物においては、低栄養環境中の微生物を接種源とする場合も考慮し、培地中の塩類成分の濃度を下げ、多環芳香族炭化水素の代わりにエネルギー源又は炭素源となりうるような有機炭素源を除去することが好ましい。さらに、培地pH調製のため、リン酸バッファー(pH7.0、最終濃度10mM)をあらかじめ添加しておくことが好ましい。
【0026】
本発明の培地組成物の組成例は表1に示している。表1中、「電子受容体」として示される添加物は、単離しようとする微生物の種類によって異なる。具体的には、硫酸還元細菌の培養時には硫酸ナトリウム1.42g(AHD−SO培地;最終濃度10mM)を、硝酸還元細菌の培養時には硝酸ナトリウム0.85g(AHD−NO培地;最終濃度10mM)を、鉄還元細菌の培養時にはアモルフィック鉄酸化物(III)10mM(AHD−Fe培地)を、マンガン還元細菌の培養時には酸化マンガン(IV)0.87g(AHD−Mn培地;最終濃度10mM)を添加し、発酵性細菌やメタン生成菌の培養時には無添加で(AHD−Non培地)、培地を調製する。
【0027】
(2)スクリーニング方法
本発明に係るスクリーニング方法は、上記培地組成物を用いて、多環芳香族炭化水素の存在下で被験微生物を培養することにより、目的とする多環芳香族炭化水素分解能を有する微生物を単離することができる。当業者であれば、本発明のスクリーニング方法を実施するための培養条件などを容易に理解することができる。
【0028】
3.多環芳香族炭化水素の分解
(1)多環芳香族炭化水素の分解剤
本発明に係る多環芳香族炭化水素分解剤は、多環芳香族炭化水素分解能を有する細菌(本明細書中、「多環芳香族炭化水素分解細菌」ともいう)又はその培養物を含むものである。
【0029】
多環芳香族炭化水素分解細菌としては、以下の(1)〜(2)の性質を有するスルフロスピリラム(Sulfurospirillum)属に属する細菌が含まれる:
(1)16S rRNA遺伝子の塩基配列が、配列番号1に示される塩基配列と98%以上の相同性を示す
(2)嫌気条件下で多環芳香族炭化水素を資化し、増殖することができる
あるスルフロスピリラム属に属する細菌が、上記(1)の性質を有するか否かは、その細菌の16S rRNA遺伝子の塩基配列を決定し、配列番号1と比較することにより、あるいは配列番号1に示される塩基配列に基づいて設計されたプローブを用いるハイブリダイゼーション等により確認することができる。また上記(2)の性質を有するか否かは、培養中の多環芳香族炭化水素の減りをGCMSで分析することにより、あるいは放射性多環芳香族炭化水素(14C−PAHs)を培地に添加し、分解産物の14COの蓄積を液体シンチレーションカウンターで測定することにより確認することができる。これらの確認方法は当技術分野で周知であり、当業者であれば適宜必要な実験を行って確認することができる。
【0030】
好ましい細菌としては、例えばスルフロスピリラム・エスピーPhe91株(NITE P−13)が挙げられる。
【0031】
また、多環芳香族炭化水素分解細菌としては、以下の(1)〜(2)の性質を有するディアフォロバクター(Diaphorobacter)属に属する細菌が含まれる:
(1)16S rRNA遺伝子の塩基配列が、配列番号2に示される塩基配列と98%以上の相同性を示す
(2)嫌気条件下で多環芳香族炭化水素を資化し、増殖することができる
あるディアフォロバクター属に属する細菌が、上記(1)の性質を有するか否かは、その細菌の16S rRNA遺伝子の塩基配列を決定し、配列番号2と比較することにより、あるいは配列番号2に示される塩基配列に基づいて設計されたプローブを用いるハイブリダイゼーション等により確認することができる。また上記(2)の性質を有するか否かは、培養中の多環芳香族炭化水素の減りをGCMSで分析することにより、あるいは放射性多環芳香族炭化水素(14C−PAHs)を培地に添加し、分解産物の14COの蓄積を液体シンチレーションカウンターで測定することにより確認することができる。これらの確認方法は当技術分野で周知であり、当業者であれば適宜必要な実験を行って確認することができる。
【0032】
好ましい細菌としては、例えばディアフォロバクター・エスピーPhe82株(NITE P−16)が挙げられる。
【0033】
本分解剤は、前述した細菌のうちの1種を単独で、又は複数種を組み合わせて含有することができ、また1種又は複数種の細菌から調製された培養物を含有してもよい。
【0034】
多環芳香族炭化水素分解細菌の培養物を得るには、通常の培養条件を用いて多環芳香族炭化水素分解細菌を培養すればよく、例えば、培地として、硝酸塩、硫酸塩等の電子受容体源、グルコース、酢酸塩、蟻酸塩、コハク酸塩等の炭素源、塩化アンモニウム等の窒素源を含有し、好ましくは、リン酸ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム等の無機塩類や微量金属類、アミノ酸類、ビタミン類等の微量成分を含有する培地を用いて、静置培養、振盪培養等の各種培養条件を用いて培養を行うことができる。また培地は、固体培地及び液体培地のいずれも使用することができる。ここで、培養の最適条件に関しては、用いる微生物の種類により異なるため、上記培地及び培養方法は用いる微生物に適するものに適宜選択及び調製され、また、温度、pH、培養期間等のその他の培養条件も適宜選択されて培養が行われることが好ましい。例えば、Phe91株を培養する際、培地としてAHD−Nonなどを使用し、好ましい培養条件は、温度20〜40℃、好ましくは約30℃において、pH6.0〜8.0であり、培養期間はおよそ10日間程度である。
【0035】
ここで多環芳香族炭化水素分解細菌の培養物を使用する場合には、細菌の培養物は、その培養物のまま使用してもよいし、培養物を濾過、遠心分離若しくは抽出等の精製処理を行って使用してもよいし、又は培養物を水等で希釈して使用してもよい。培養物は、上述した多環芳香族炭化水素分解細菌を培養することに調製することができ、その培養条件としては、後述するような通常の培養条件を用いればよい。
【0036】
本分解剤の形態は特に限定されず、多環芳香族炭化水素の分解細菌の菌体又はその培養物のそのままの形態、分解細菌の菌体又はその培養物を適当な溶媒中に溶解若しくは懸濁した形態、あるいは分解細菌の菌体又はその培養物を保存可能なように凍結又は乾燥した形態など、任意の形態をとることができる。このような形態は、当技術分野で公知の方法に従って適宜調製することができる。
【0037】
また、本分解剤は、他の成分を含んでもよい。他の成分は、多環芳香族炭化水素の分解細菌の菌体又はその培養物の多環芳香族炭化水素分解能を損なわないものであれば特に限定されるものではなく、例えば、その分解活性を誘導する溶媒(例えば、原油、ディーゼル油、エチルベンゼンなど)や有機炭素源(例えば、酢酸塩、グルコース、蟻酸塩、フマル酸塩等)、硝酸還元細菌であるPhe82株を使用する場合には硝酸塩等が挙げられる。
【0038】
本分解剤は、多環芳香族炭化水素と接触させて使用するが、ここで「接触」とは、多環芳香族炭化水素と共に多環芳香族炭化水素分解細菌の菌体を培養すること、多環芳香族炭化水素と多環芳香族炭化水素分解細菌の菌体又は培養物とを混合すること、多環芳香族炭化水素に多環芳香族炭化水素分解細菌の菌体又はその培養物を散布すること、多環芳香族炭化水素分解細菌の菌体又はその培養物を不織布等に接種したものを多環芳香族炭化水素に静置することなどを指す。
【0039】
また、使用量は、使用する細菌の種類、多環芳香族炭化水素の存在量などを考慮して、望ましい結果が得られるように決定しうる。
【0040】
(2)多環芳香族炭化水素の分解方法
本発明に係る多環芳香族炭化水素の分解方法(以下、「本分解方法」ともいう)は、多環芳香族炭化水素を嫌気的に分解することができる細菌を利用することにより、多環芳香族炭化水素を含有する対象物を処理する方法である。
【0041】
本分解方法においては、多環芳香族炭化水素を含むものであればいかなるものも分解対象とすることができる。具体的な対象物としては、土壌、地下水、工業排水などである。また具体的な多環芳香族炭化水素としては、二環のナフタレン、三環のフェナントレン、アントラセン、フルオレン、四環以上のベンゾフルオレン、ベンゾフェナントレン、ベンズアントラセン、クリセン、ナフタセン、ピレン、トリフェニレン、ベンゾナフタセン、ベンゾクリセン、ベンゾピレン、ジベンゾクリセン、ジベンゾペリレン、ジベンズアントラセン、コロネンなどが挙げられる。
【0042】
本分解方法では、多環芳香族炭化水素を、上述した分解細菌の菌体又はその培養物を含む分解剤と接触させることで、当該多環芳香族炭化水素を分解することができる。
【0043】
使用する多環芳香族炭化水素分解細菌の菌体又はその培養物の量は、使用する細菌の種類、多環芳香族炭化水素の存在量などを考慮して、望ましい結果が得られるように決定しうる。
【0044】
さらに、多環芳香族炭化水素の分解をさらに効率的に行うために、多環芳香族炭化水素分解細菌の菌体又はその培養物と共にその他の追加成分を使用してもよく、そのような追加成分としては、限定するものではないが、多環芳香族炭化水素分解細菌の分解活性を誘導する溶媒(例えば原油、ディーゼル油、エチルベンゼン)や有機炭素源(例えば、酢酸塩、グルコース、蟻酸塩、フマル酸塩等)、硝酸還元細菌であるPhe82株を使用する場合には硝酸塩等が挙げられる。
【0045】
以上のように、多環芳香族炭化水素分解細菌の菌体又はその培養物と多環芳香族炭化水素とを接触させることによって、土壌、地下水などに含まれる多環芳香族炭化水素を嫌気的に分解することができる。
[実施例]
【0046】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0047】
本実施例においては、嫌気的条件下にて多環芳香族炭化水素を分解する細菌を培養するためのAHD培地(Anaerobic hydrocarbon degrading medium)を調製した。この培地は、表1に示される成分を含み、還元剤として塩化チタニウム(III)、酸化還元試薬としてレサズリン溶液、硫黄源として硫化ナトリウム・九水和物を添加した。さらに、表1中、「電子受容体」は、単離しようとする微生物の種類によって異なる。具体的には、硫酸還元細菌の培養時には硫酸ナトリウム1.42g(AHD−SO培地;最終濃度10mM)を、硝酸還元細菌の培養時には硝酸ナトリウム0.85g(AHD−NO培地;最終濃度10mM)を、鉄還元細菌の培養時にはアモルフィック鉄酸化物(III)10mM(AHD−Fe培地)を、マンガン還元細菌の培養時には酸化マンガン(IV)0.87g(AHD−Mn培地;最終濃度10mM)を添加し、発酵性細菌やメタン生成菌の培養時には無添加で(AHD−Non培地)、培地を調製する。
【0048】
【表1】

【0049】
表1における×50溶液A、微量元素溶液SL−7、ビタミン溶液、及びセレナイト・タングステート溶液の組成を、それぞれ表2〜5に示す。
【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】
【表4】

【0053】
【表5】

【0054】
還元剤として使用する塩化チタニウム(III)溶液は以下のようにして調製した。すなわち、40ml蒸留水に20%塩化チタン溶液(Wako)10mlを加え、飽和炭酸ナトリウム溶液でpH7.0に調整し、バイアル瓶に入れ(瓶の半分くらい)、還元銅を使用して、無酸素Nガス下でしばらくバブリングした(5〜10分)。ブチルゴム栓、アルミシールをしてオートクレーブし、完全に冷えた後にオートクレーブから取り出し、4℃で遮光保存(アルミホイルを巻く)した。
【0055】
電子受容体として使用するアモルフィック鉄酸化物(III)は以下のように調製した。すなわち、0.4M塩化鉄(III)溶液(6.49g/100ml)を水酸化ナトリウムでpH7.0まで中和した。その後、脱塩水で塩化物の濃度が1mM以下になるまで洗浄した。X線回折で確認した(Lovley and Phillips, 1986 AEM. 51:683-689)。
【実施例2】
【0056】
本実施例においては、石油汚染地下水からの多環芳香族炭化水素分解細菌の単離及び同定を行った。
【0057】
実施例1で調製したPhe91株用のAHD−Non(電子受容体無添加;0.8%アガロース)培地とPhe82株用のAHD−NO(電子受容体として硝酸ナトリウムを使用;0.8%アガロース)培地をオートクレーブした後、冷めないうちに嫌気グローブボックス(高杉製作所)の中に入れた。その後、表1に示す後添加溶液を入れ、フェナンスレンが溶解しているエタノールをその培地に添加し、エタノールを揮発させた(フェナンスレン最終濃度1mM)。これをあらかじめ作成しておいたPhe91株用のADH−Non(1.5%バクトアガー)培地とPhe82株用のAHD−NO(1.5%バクトアガー)培地上にそれぞれ薄くコーティングした。
【0058】
愛媛県の地下石油備蓄タンクからサンプリングした石油汚染地下水を直接それらプレート培地上に塗布し、アネロパウチ(三菱ガス化学株式会社)に入れ、密封し、嫌気グローブボックス中で25℃で培養した。約2〜3ヶ月後の形成していたコロニーを拾い、AHD液体培地への植え継ぎを繰り返し、Phe91株及びPhe82株を単離した。
【0059】
継代培養している培地から培養液を少量とり、Watanabeらの方法(Watanabe, K., M. Teramoto, and S. Harayama. 1999. Appl. Environ. Microbiol. 65:2813-2819.)を一部改変し、以下の(1)〜(4):
(1)リバースプライマーの変更(1492r:5’-GGTTACCTTGTTACGACTT-3’;配列番号3)、
(2)PCR反応液の変更(15mM Tris−HCl;pH8.0,50mM KCl,2mM MgCl2,0.01%BSA,各dNTP 200μM,25pmolの各プライマー,及び10ngのDNA)、
(3)PCRサイクル数の変更(35サイクル)、
(4)BigDyeの変更(A BigDye terminater v3.1 cycle sequencing kit)
で行って、Phe91株とPhe82株の16S rRNA遺伝子をPCRにより増幅し、塩基配列を決定した。この配列を配列番号1(Phe91株)及び配列番号2(Phe82株)に示す。
【0060】
得られた配列を基にBLASTデータベースサーチを行ったところ、Phe91株はスルフロスピリラム・デレイアナム(Sulfurospirillum deleyianum)に近縁(97%相同)であり、Phe82株はディアフォロバクター・ニトロリデゥーセンス(Diaphorobacter nitroreducens)に近縁(99%)であることが分かった。
【0061】
スルフロスピリラム属に分類されている6種、すなわちスルフロスピリラム・デレイアナム(S. deleyianum)、スルフロスピリラム・マルティボランス(S. multivorans)、スルフロスピリラム・アーカコネンセ(S. arcachonense)、スルフロスピリラム・バーネシィー(S. barnesii)、スルフロスピリラム・アーセノフィラム(S. arsenophilum)、スルフロスピリラム・ハロレスピランス(S. halorespirans)との16S rRNA遺伝子解析(1336塩基対)から、もっとも近縁な細菌はスルフロスピリラム・デレイアナムで97%の相同性があり、及び後述する菌学的性質の比較から、スルフロスピリラム・デレイアナムは生育温度が20〜36℃である点、硝酸還元最終生成物がNHである点、亜硝酸還元ができる点、乳酸塩の資化性がない点でPhe91株はスルフロスピリラム属の新種であることがわかった(Schumacher, W., Kroneck, P. M. H., and Pfennig, N. “Comparative systematic study on ‘Spirillum’ 5175, Campylobacter and Wolinella species. Description of ‘Spirillum’ 5175 as Sulfurospirillum deleyianum gen. nov., spec. nov.” Arch. Microbiol. (1992) 158:287-293.)。
【0062】
また、Phe82株については、16S rRNA遺伝子解析(1340塩基対)から、もっとも近縁な細菌はディアフォロバクター・ニトロリデゥーセンス(Diaphorobacter nitroreducens)で99%の相同性があった。ディアフォロバクター属にはディアフォロバクター・ニトロリデゥーセンスの1種のみが報告されているだけであり、後述する菌学的性質を比較したところ、ディアフォロバクター・ニトロリデゥーセンスは菌体の長さが1.0〜1.8μmである点、至適生育pHが7.5〜8.0である点、グルコースの資化性がない点でPhe82株はディアフォロバクター属の新種であると結論付けた(Khan, S. T., and Hiraishi, A. “Diaphorobacter nitroreducens gen. nov., sp. nov., a poly (3-hydroxybutyrate)-degrading denitrifying bacterium isolated from activated sludge.” J. Gen. Appl. Microbiol. (2002) 48:299-308.)。
【0063】
以下、これら菌株の菌学的性質について説明する。
Phe91株
(1)形態的性質
a.全長3.0〜13.0μm、全幅0.4〜0.6μmの湾曲又はらせん状桿菌
b.鞭毛を持つ
c.運動性あり
(2)生理学的性質
a.グラム染色 陰性
b.オキシダーゼ −
c.カタラーゼ −
d.生育温度 20〜40℃
e.至適生育温度 30℃
f.生育pH 6.0〜8.0
g.至適生育pH 7.0
h.生育NaCl濃度 <1.0%
i.至適生育NaCl濃度 0%
j.硝酸還元最終生成物 NO
k.亜硝酸還元 −
l.乳酸塩の資化性 +
(3)化学物理学的性質
a.G+Cモル% 42.7
b.16S rRNA配列 配列番号1
【0064】
Phe82株
(1)形態的性質
a.全長2.0〜6.0μm、全幅0.5〜0.7μmの桿菌
b.鞭毛を持たない
c.運動性なし
(2)生理学的性質
a.グラム染色 陰性
b.オキシダーゼ +
c.カタラーゼ +
d.生育温度 20〜40℃
e.至適生育温度 30℃
f.生育pH 7.0〜8.8
g.至適生育pH 8.6
h.生育NaCl濃度 0〜2.5%
i.至適生育NaCl濃度 0%
j.グルコースの資化性 +
(3)化学物理学的性質
a.16S rRNA配列 配列番号2
【実施例3】
【0065】
本実施例においては、Phe91株及びPhe82株のフェナンスレン分解試験を行った。
【0066】
Phe91株を、2.5mMのフマル酸ナトリウムを含む改変AHD−Non培地(表1:還元剤をTi(III)Cl溶液15ml/Lからクエン酸Ti(III)溶液2.5ml/Lに変更した)で培養した。またPhe82株を、2.5mMの酢酸ナトリウムを含む改変AHD−NO培地で培養した。菌の増殖は菌を4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)で染色後、アイソポア黒色メンブレン(0.22μm、ミリポア)上に集菌し、蛍光顕微鏡で観察した。
【0067】
前培養の菌数が定常期に達した時に、嫌気グローブボックスの中で50mlのバイアル瓶に15mlの培地、15mlの培養液を入れ、テフロンコートブチルゴム栓をし、アルミキャップで蓋をした。これに0.1mg/Lの〔9−14C〕フェナンスレン、0.2mg/Lのフェナンスレン、0.2%(v/v)のディーゼル油又はヘプタメチルノナンを入れ、25℃で静置培養した。バイアル瓶気層中に発生した14COを無酸素窒素ガスで押し出し、オキソソールC14(National Diagnostics, Atlanta, USA)でトラップし、液体シンチレーションカウンターで測定した。また、対照として、121℃、20分間オートクレーブ滅菌したPhe91株とPhe82株を接種し、同様の操作を行った。この結果をそれぞれ図1a及び図1bに示す。
【0068】
図1a及びbの縦軸は、加えた〔9−14C〕フェナンスレンに対する〔14C〕COの発生比率を表す。また、図中の黒塗りの記号は生きた菌を接種した条件で、黒四角はヘプタメチルノナン、黒丸はディーゼル油を添加した場合を表し、白抜きの記号はオートクレーブ滅菌した菌を接種した条件で、白四角はヘプタメチルノナン、白丸はディーゼル油を添加した場合(対照)を表す。黒三角はオキソソールでコントロールとして示した。
【0069】
図1a及びbに示されるように、Phe91株及びPhe82株ともに生きた菌を接種したディーゼル油添加培地でフェナンスレンの分解が確認された。生きた菌を接種したヘプタメチルノナン添加培地のフェナンスレン分解はディーゼル油を添加した時の1/3であった。
【実施例4】
【0070】
本実施例においては、Phe91株及びPhe82株のフェナンスレン分解に関わる溶媒の影響を調べた。
【0071】
培地に添加する溶媒の種類によって分解活性が異なるか否かを実施例3と同様に試験した。使用した溶媒は原油、ディーゼル油、エチルベンゼン、ヘキサデカン及びヘプタメチルノナンの5種類で、30℃で培養した。この試験では0.2mg/Lのフェナンスレンは除いた。この結果をそれぞれ図2a及び図2bに示す。
【0072】
図2a及びbの縦軸は、加えた〔9−14C〕フェナンスレンに対する〔14C〕COの発生比率を表す。また、図中の黒塗りの記号は生きた菌を接種した条件で、黒丸は原油、黒三角はディーゼル油、黒四角はエチルベンゼン、黒菱形はヘキサデカン、黒逆三角はヘプタメチルノナンを添加した場合を表し、白抜きの記号はオートクレーブ滅菌した菌を接種した条件で、白丸は原油、白三角はディーゼル油、白四角はエチルベンゼン、白菱形はヘキサデカン、白逆三角はヘプタメチルノナンを添加した場合(対照)を表す。*(星)はオキソソールでコントロールとして示した。
【0073】
図2a及びbに示されるように、Phe91株及びPhe82株ともに原油、ディーゼル油又はエチルベンゼンを溶媒として添加した時に、フェナンスレンの分解が起こった。ヘプタメチルノナンの場合、わずかな分解が確認されたが、ヘキサデカンを添加した時は全く分解が起こらなかった。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明により、嫌気条件下で多環芳香族炭化水素を分解できる新規な細菌が提供される。これらの細菌を利用することにより、土壌、地下水などの嫌気的環境を汚染した多環芳香族炭化水素を効率的に分解除去することが可能である。また多環芳香族炭化水素分解細菌を含む製剤を調製することにより、当該製剤を汚染地下水などに投入することによって、簡便かつ迅速に多環芳香族炭化水素汚染を修復することができる。
【0075】
また本発明により、多環芳香族分解細菌を単離するための培地組成物及びスクリーニング方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1a】Phe91株のフェナンスレン分解の経時変化を示す。
【図1b】Phe82株のフェナンスレン分解の経時変化を示す。
【図2a】Phe91株のフェナンスレン分解に関わる溶媒の影響を示す。
【図2b】Phe82株のフェナンスレン分解に関わる溶媒の影響を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
嫌気条件下で多環芳香族炭化水素を資化し、増殖することができるスルフロスピリラム・エスピー(Sulfurospirillum sp.)Phe91株(NITE P−13)。
【請求項2】
嫌気条件下で多環芳香族炭化水素を資化し、増殖することができるディアフォロバクター・エスピー(Diaphorobacter sp.)Phe82株(NITE P−16)。
【請求項3】
以下の(A)及び(B)の性質を有するスルフロスピリラム(Sulfurospirillum)属に属する細菌又はその細菌培養物を含むことを特徴とする多環芳香族炭化水素分解剤。
(A)16S rRNA遺伝子の塩基配列が、配列番号1に示される塩基配列と98%以上の相同性を示す
(B)嫌気条件下で多環芳香族炭化水素を資化し、増殖することができる
【請求項4】
細菌がスルフロスピリラム・エスピーPhe91株(NITE P−13)である、請求項3記載の多環芳香族炭化水素分解剤。
【請求項5】
以下の(A)及び(B)の性質を有するディアフォロバクター(Diaphorobacter)属に属する細菌又はその細菌培養物を含むことを特徴とする多環芳香族炭化水素分解剤。
(A)16S rRNA遺伝子の塩基配列が、配列番号2に示される塩基配列と98%以上の相同性を示す
(B)嫌気条件下で多環芳香族炭化水素を資化し、増殖することができる
【請求項6】
細菌がディアフォロバクター・エスピーPhe82株(NITE P−16)である、請求項5記載の多環芳香族炭化水素分解剤。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか1項に記載の多環芳香族炭化水素分解剤と多環芳香族炭化水素とを接触させて、多環芳香族炭化水素を分解することを特徴とする、多環芳香族炭化水素の分解方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【公開番号】特開2006−87373(P2006−87373A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−278073(P2004−278073)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成15年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「生分解・処理メカニズムの解析と制御技術の開発 土壌中難分解性物質等の生分解・処理技術の開発」委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(591001949)株式会社海洋バイオテクノロジー研究所 (33)
【Fターム(参考)】