説明

子宮内膜または子宮癌を評価するためのHE4及びそのほかの生化学的マーカーの使用

【解決手段】 本発明の開示は、患者の子宮内膜および子宮癌を評価するための、HE4/HE4aマーカーの使用に関連するものである。本開示は、さらに、子宮内膜および子宮癌の診断、グレーディング(悪性度分類)、およびステージング(病期格付け)に腫瘍マーカー(原文ではマーク)を使用することに関連するものである。本開示は、また、子宮内膜または子宮癌と診断された患者の予後および治療有効性の決定に関連するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、癌の診断、グレーディング(悪性度分類)、ステージング(病期格付け)、および予後の分野に関連するものである。更に詳しくは、本開示は、子宮内膜および子宮癌の分野に関連するものである。本開示は、さらに、タンパク質発現を使用する診断、グレーディング、ステージング、および予後の分野に関連するものである。
【背景技術】
【0002】
癌は広範囲な疾病を含んでおり、世界的に凡そ4人あたり1人が冒される。癌の及ぼす悪影響の厳しさは深刻であり、医療政策および治療、並びに社会一般にも影響している。多くの癌タイプの特徴は、悪性細胞の急速、かつ無制限な増殖であるため、癌治癒改善上、何よりも重要な問題は早期発見と診断の必要性である。早期発見は、癌による死亡を減らす最良の手段であることはよく認識されている。これを受けて、悪性疾患の存在を診断する正確で信頼できる基準を開発すべく、多数の試みがなされてきた。特に、癌細胞によって特異に発現されるか、または、悪性疾患を有する被験者において著しく高いレベルに達する腫瘍関連抗原として周知の血清学的に定義された抗原マーカーの使用を対象とした研究がなされてきた。
【0003】
しかしながら、腫瘍関連抗原の発現の高度な多様性のために、例えば癌腫関連抗原には極端に多種類あるため、癌診断に有用な更なる腫瘍マーカーが必要である。癌腫関連抗原に反応性のある多くのモノクローナル抗体が知られている。そのようなモノクローナル抗体は、糖タンパク質、糖脂質、およびムチンを包含する、様々な異なった腫瘍関連抗原に結合する。そのようなモノクローナル抗体の多くが、任意の細胞系統または組織タイプに由来する特定の腫瘍に限定発現を示す腫瘍関連抗原を認識する。
【0004】
特定のタイプの悪性腫瘍を同定するのに役立つと思われる腫瘍関連抗原の例は比較的少ない。モノクローナル抗体B72.3は、例えば、全部ではないが大抵の卵巣癌腫および圧倒的多数の非小細胞肺癌腫、結腸癌腫、および乳癌腫を含む多くの異なる癌腫に、選択的に発現される、高分子量(>106Da)の腫瘍関連ムチン抗原に特異的に結合する。しかしながら、腫瘍を外科的に切除した後に、B72.3により認識されるムチン抗原のような細胞関連の腫瘍マーカーを検知することは、腫瘤が体内に蓄積する前に悪性疾患を早期発見することが好ましいとする診断用スクリーニングに対しては、有用性が限られている。
【0005】
通常、蓄積した腫瘤が検知された後でのみ侵襲性手術が必要とされる外科的に切除した検体の腫瘍関連抗原スクリーニングによる特定のタイプの癌を診断する代わりとなるのは、非侵襲入性または最小程度の侵襲性の手法によって患者から採取した検体中に、前記抗原を検出するための組成物と方法を提供することである。卵巣、子宮内膜、およびその他の癌腫では、現在、例えば、血清または粘膜分泌物のような容易に採取できる体液中に検知可能な、多くの可溶性の腫瘍関連抗原がある。そのようなマーカーの1つはCA125で、これは、血流にも排出され、血清中に検出可能な癌腫関連抗原である(例えば、Bast et al.,1983 N.Eng.J.Med.309:883;Lloyd et al.,1997 Int.J.Canc.71:842)。血清および他の体液中のCA125のレベルは、卵巣、子宮内膜、およびその他の癌腫の診断および/または予後の概略を提供するための一環として、他のマーカーのレベルと共に測定されてきた、例えば、癌胎児性抗原(carcinoembryonic antigena:CEA)、扁平上皮癌抗原(squamous cell carcinoma antigen:SCC)、組織ポリペプチド特異抗原(tissue polypeptide specific antigen:TPS)、シアリルTNムチン(sialyl TN mucin:STN)、および胎盤のアルカリフォスファターゼ(placental alkaline phosphatase:PLAP)である(例えば、Sarandakou et al.,1997 Acta Oncol.36:755;Sarandakou et al.,1998 Eur.J.Gynaecol.Oncol.19:73;Meier et al.,1997 Anticanc.Res.17(4B):2945;Kudoh et al.,1999 Gynecol.Obstet.Invest.47:52;Ind et al.,1997 Br.J.Obstet.Gynaecol.104:1024;Bell et al. 1998 Br.J.Obstet.Gynaecol.105:1136;Cioffi et al.,1997 Tumori 83:594;Meier et al.1997 Anticanc.Res.17(4B):2949;Meier et al.,1997 Anticanc.Res.17(4B):3019)。
【0006】
しかしながら、高レベルの血清CA125のみ、或いは他の既知の指標との組み合わせでは、悪性腫瘍、または、卵巣または子宮内膜の癌腫のような特定の悪性腫瘍の決定的な診断が提供されない。例えば、膣液および血清中の高いCA125、CEA、およびSCCは、子宮頸癌と生殖路の癌に対してより、むしろ、良性の婦人科疾病の炎症に最も強く関連している(例えば、Moore et al.,1998 Infect.Dis.Obstet.Gynecol.6:182;Sarandakou et al.,1997 Acta Oncol.36:755)。高い血清CA125が神経芽細胞腫を伴うこともあり、高レベルのCEAとSCCは結腸直腸癌を伴うこともある。もう1つのマーカーである分化抗原メゾテリンは、正常な中皮細胞の表面およびさらにある種の癌細胞、例えば上皮の卵巣腫瘍および中皮腫上に発現される。メゾテリンに関連する組成物と方法(Chang et al.,1992 Canc.Res.52:181;Chang et al.,1992 Int.J. Canc.50:373;Chang et al.,1992 Int. J.Canc.51:548;Chang et al.,1996 PROC.Nat.Acad.Sci.USA 93:136;Chowdhury et al.,1998 PROC.Nat.Acad.Sci.USA 95:669;Yamaguchi et al.,1994 J.Biol.Chem.269:805;Kojima et al.,1995 J.Biol.Chem.270:21984)および構造的に関連するメゾテリン関連抗原(MRA;例えば、Scholler et al.,1999 PROC.Nat.Acad.Sci.USA 96:11531参照)は、癌の検知および治療での使用を含めて、WO 00/50900および米国特許出願第09/513,597号に記載されているように、当業者に周知である。マルチプルマーカー診断スクリーニングに有用な更なるマーカーが切実に必要となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の主題は、患者が子宮内膜または子宮癌に罹患しているかを評価する方法を含む。当該方法は、患者から採取した検体(例えば固型の組織検体、体液検体、または患者の身体の患部に接触した液体の検体)中のHE4の発現を評価することを含む。HE4の高い発現は、患者が子宮内膜または子宮癌に罹患している指標である。必要に応じて、HE4発現のレベルを、子宮内膜または子宮癌に罹患していない患者のHE4の発現に対応する参照値のような参照値と比較することができる。若しくは、検体中のHE4の発現を、初期に患者から採取した初期の検体中のHE4の発現と比較することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
好ましい実施形態では、前記方法は、さらに第2マーカー(例えばCA125および/またはSMRP)の、検体中のの発現を評価することを含む。該第2マーカーの高い発現は、患者が子宮内膜または子宮癌に罹患しているさらなる指標である。
【0009】
本開示は、また、子宮内膜または子宮癌に罹患している患者の治療に対する応答を評価する方法に関する。該方法は、治療期間中の異なる時期に患者から採取した検体中のHE4の発現を評価することを含む。後期における減少したHE4の発現(または、時の経過と共に起こる発現の低下)は、患者が該治療に応答していることを示すものである。第2マーカー(例えばCA125および/またはSMRP)の発現も、検体中で評価することができる。該第2マーカーの減少した発現は、患者が治療に応答しているさらなる指標である。
【0010】
本開示は、さらに、子宮内膜または子宮癌の治療を受けた患者の再発を評価する方法に関連するものである。当該方法は、治療後に患者から採取した検体中のHE4の発現を単独、または1種若しくはそれ以上の第2マーカーと共に評価することを含む。HE4の高い発現は、子宮内膜または子宮癌が患者に再発していることを示し、また、第2マーカーの高い発現は、患者に子宮内膜または子宮癌が再発しているさらなる指標である。HE4の発現は治療後に、例えば複数回評価することができる。時間の経過と共に増加するHE4の発現は、子宮内膜または子宮癌が患者に再発していることを示す。
【0011】
別の実施形態において、本開示は、患者が子宮内膜または子宮癌を発症する可能性を評価する方法に関連する。当該方法は、患者から採取した検体中のHE4の発現を単独又は1種若しくはそれ以上の第2マーカーと組み合わせて評価することを含む。HE4の高い発現は、患者が子宮内膜または子宮癌を発症する可能性の増大と相互に関連し、また、第2マーカーの高い発現は、患者が子宮内膜または子宮癌を発症するさらなる指標である。
【0012】
更に別の実施形態において、本開示は、子宮内膜または子宮癌に罹患の患者の腫瘍のステージングおよび/またはグレーディング方法に関連する。当該方法は、患者から採取した検体中のHE4の発現を、単独で、または、一種若しくはそれ以上の第2マーカーと組み合わせて、評価することを含む。HE4(および、もし評価されていれば、第2マーカー)の発現の増大は、癌がより進行した病期および/または癌のより高い悪性度を示す。
【0013】
本願明細書に開示された対象の更に別の態様は、子宮内膜または子宮癌と診断された患者の治療的介入(例えば化学療法)の必要性を評価する方法に関連する。当該方法は、患者から採取した検体中のHE4の発現を、単独または1種若しくはそれ以上の第2マーカーと組み合わせて評価することを含む。HE4(および、もし評価されていれば、第2マーカー)の高い発現は、患者の治療的介入の必要性を示す。
【0014】
表1は、実施例1に記載した実験で得たROC(Receiver Operating Characteristic:受信(診)者動作特性)曲線データの曲線下面積(Area Under Curve:AUC)分析の要約である。
【0015】
表2は、実施例2に記載したように、分析した各マーカーによって分類した一連の値に対して測定した血清腫瘍マーカーの平均値および病期分類である。
【0016】
表3は、実施例2に記載したように、各腫瘍マーカーに対して計算したROC―AUCである。
【0017】
表4は、実施例2で説明した組み合わせにおいて、各腫瘍マーカー毎に個別に90%特異度におけるロジスティック回帰分析である。
【0018】
表5は、実施例2に記載の組み合わせにおいて、各腫瘍マーカー毎に個別に95%特異度におけるロジスティック回帰分析である。
【0019】
表6は、実施例2に記載の組み合わせにおいて、各腫瘍マーカー毎に個別に98%特異度におけるロジスティック回帰分析である。
【0020】
本開示は、HE4a抗原が子宮内膜および子宮(「子宮体」)癌の存在、悪性度および病期分類の指標であるという発見に関連する。
【0021】
本開示の対象は、HE4マーカー、またはHE4と他の生物学的マーカーとの組み合わせを使用した女性の子宮内膜および子宮癌の評価に関連するものである。子宮内膜および子宮癌のマーカー(特にマーカーCA125およびSMRP)を併用したHE4の評価は、ヒト患者の前記癌の発生を診断し、かつ様々なタイプの治療に対する前記癌の応答を評価するのに使用可能である。更に、これらのマーカーの評価は、患者の前記癌の再発を監視するか、または患者がそのような癌を発症する可能性を評価するのに使用可能である。
【0022】
米国では、およそ40,880件の子宮癌が新規に診断され、7,310人が毎年死亡している。子宮癌は外科的に病期分類され、75%の患者が疾病ステージIである(Kottmeier,H.L.,Int.J.Gynaecol.Obstet.1971;9:172)。疾病ステージ1と診断され、中〜高程度の危険因子を有する患者の再発率は20〜30%である(Keys et al.,2,004,Gynecol.Oncol.;92(3):744−751;Creutzberg et al.,2003,Gynecol.Oncol.,89(2):201−209)。血清CA125値は、疾病ステージIIIおよびIVに進行した患者の約75%で上昇しているが、初期疾病ステージIおよびIIの患者の内僅か17%が上昇しているに過ぎない(Niloff et al,1984,Am.J.Obstet.Gynecol.,148(8):1057−1058;Berchuck et al.,1989,Cancer Res.,49(8):2091−2095;Olt et al., 1990,Obstet.Gynecol.Surv.,45:570−577)。高い血清CA125値は、子宮内膜癌の病期および頚部、リンパ節、および腹膜表面への転移と相互に関連づけられている。(Ginath et al.,2002,Int.J.Gynecol.Cancer,12(4):372−375;Vuento et al.,1997,Gynecol.Oncol.,64(1):141−146;Sood et al.,1997,Obstet.Gynecol.90(3):441−447;Hsieh et al.,2002,Gynecol.Oncol., 86(1):28−33;Powell et al.,2005,J.Reprod.Med.,50(8):585−590)。CA125は、現在、再発疾病の検知用の最も有用な血清腫瘍マーカーである。しかし、再発疾病の検知用にCA125を使用するのは、よくても限定されている。初期の疾病ステージにあるた患者の僅か10〜20%および無症候性で再発した疾病患者の25%が、高いCA125を有する(Niloff et al.,2002;Duk et al.,1986,Am.J.Obstet.Gynecol.,155(5):1097−1102)。CA15.3,CA19.9,CA72.4,CEA、OVX1、およびM−CSFを含む、多くの新規血清腫瘍マーカーが、子宮内膜癌の臨床的有用性を目指して研究されてきた。(Cherchi et al.1999,Eur.J.Gynaecol.Oncol.,20(4):315−317;Takeshima et al,1994,Gynecol Oncol 1994;54(3):321−326;Hareyama et al.,1996,J.Clin.Pathol.,49(12):967−970;Olt et al.,1996,Am.J.Obstet.Gynecol.Oncol.,65(2):291−296)。最近では、シャペロニン10のような子宮内膜癌用の新規なマーカー(原文にはmakersとあるがミススペル)を同定するためにプロテオーム解析が使用されている(Yang et al.,2,004,J.Proteome Res.,3(3):636−643)。子宮内膜癌に使用するためのマルチプルマーカーによる解析戦略を採用した研究は非常に稀であった。本願明細書に記載した方法が開示される以前から今日までにおいて、再発性疾患を検知するのに最も有望な組み合わせは、CA19.9を併用するCA125である(Lo et al.,1999,Cancer Detect.Prev.23(5):397−400)。
【0023】
定義
本願明細書に使用される「検体」の用語は、具体的に患者と関連があり、その患者に関する特定の情報を定め、計算し、または、推論できる物質を意味する。検体は全体的または部分的に、患者由来の生体物質から構成し得る。検体は、また、前記患者に関する情報を提供する検体で検査が行なえるように患者に接触させた物質であってもよい。検体は、さらに患者のものではないが、後に、第1の物質で患者に関する情報を定めるのに検査が出来る、他の物質に接触した物質でもよく、例えばプローブまたはメスの洗浄液でよい。検体は、当業者がいずれにしてもその検体から患者に関する情報を定めることが出来る限り、患者以外の生体物質源に接触していてもよい。検体ではない、外来の物質または情報を利用することで決定的に患者を当該検体に関連付け得ることも判っている。非限定的なの例によると、二重盲検法は検体と患者とを一致させるために図表かデータベースが必要である。
【0024】
本願明細書に使用される「患者」の用語は、その生体に関する情報を定める診断の対象である生物体を意味する。本願明細書に開示した方法の大部分の実施形態では、患者が人間であるが、前記方法は個々の人間に使用するように限定されていない。患者は人間の集団でもあってもよい。患者はさらに人間の一部分でもよい。この実施形態の非限定の例では、患者は、人体に結びつかな組織検体、または形質転換細胞系統でもよい。ある実施形態では、患者はさら人間以外の生物であってもよい。
【0025】
本願明細書に使用される「参照値」の用語は、ある検定結果と比較した時の特定の結果に統計的に相関する値を意味する。好ましい実施形態では、参照値は、HE4aの発現を既知の臨床結果と比較する研究の統計調査から決定する。そのような研究の幾つかを本願明細書の実施例の部において示している。しかし、本願明細書に開示した方法を使用した文献及び実験からの研究では、参照値の作成または補正のために使用できる。参照値は、また、患者の病歴、遺伝、年齢、およびその他の要因に特に関連する病状および結果を考察して決定することができる。
【0026】
本願明細書に使用される「体液」の用語は、実質的に内容物的には液体であるが、固体または粒子状物質を付随してもよい患者から採取した物質を意味する。体液は、さらに患者に由来しない物質および部分を含むことができる。例えば、体液は水で薄めたり、またはEDTAのような防腐剤を含むことができる。体液の非限定な例は、血液、血清、漿膜液体、血漿、リンパ液、尿、脳脊髄液、唾液、分泌組織、および器官の粘膜の分泌、膣分泌、母乳、涙、および非固形の腫瘍に関連する液体のような腹水を含む。さらなる例は、胸膜、心膜、腹膜、腹部、およびその他の体腔の体液などを含む。体液は、さらに患者または生体源に接触した液体溶液、例えば、細胞または臓器培地を含む、細胞および臓器の培養液、洗浄液等を含むものであっても良い。
【0027】
検体は、該検体が、治療薬または治療処置の施与前、施与時、施与後、またはその後実施するフォローアップ検査時に採取されていれば、「治療期間中」の患者から採取したものになる。この用語の使用は、前記治療の施与以前および以後に検体が得られる(つまり前記治療の有効性または再発を評価するため)場合、ならびに、長期に亘る治療の間多数の検体が断続的に得られる場合を明確に包含している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本願明細書に開示した方法は、ここに記載したようなタンパク質の「4−ジスルフィド・コア」ファミリーの一員であるHE4aに関連するものである。当該タンパク質の「4−ジスルフィド・コア」ファミリーは、ヒト精巣上体の4−ジスルフィド・コア・タンパク質、すなわち「HE4」を含む、異なる機能を有する酸および熱安定性小分子の異種混合グループを含む。(Kirchhoff et al.,1991 Biol.Reprod.45:350−357;Wang et al.,1999 Gene 229:101;Schummer et al.,1999 Gene 238:375)。
【0029】
HE4 cDNAは、初めてヒト精巣上体から単離され(Kirchhoff et al.,1991 Biol.Reprod.45:350−357)、またHE4 cDNAはその後、卵巣の癌腫から構築されたcDNAライブラリー中に高い頻度で検知された(Wang et al.,1999 Gene 229:101;Schummer et al.,1999 Gene 238:375)。タンパク質の「4−ジスルフィドコア」ファミリーの新しいメンバーであるHE4aは、本開示で使用した配列番号ID番号表示と共に、米国特許出願公開第2003/0108965号および米国特許出願第10/233,150号に記載されており、この文献はこの参照により本願明細書に組み込まれる。HE4aは、HE4に非常に類似しているが独自の配列を示す。
【0030】
本開示の目的のために、HE4またはHE4aの検知は同意語であると考慮し、また、どちらか一方の分子の検知は本願明細書に記載された方法で使用可能である。HE4aがHE4とは異なる分子であるかどうか、或いはHE4aの配列は単に公表されているHE4の配列の修正を表わしているだけかどうかは重要ではない。
【0031】
本願明細書に開示した方法はまた、部分的に、対象者における天然由来のHE4aの細胞表面および/または可溶化型を検知する組成物および方法に関連し、特定の癌腫(例えば子宮内膜癌)を有する患者における前記ポリペプチドを高いレベルで含む。したがって、この開示は、そのような細胞表面および/または可溶性HE4aポリペプチドの特異な検知による、被験者の悪性疾患の検知および診断に有用な組成物および方法を提供するものである。
【0032】
本願明細書に開示した方法によると、被験者または生体源由来の生体検体中に、可溶性のヒトHE4a抗原ポリペプチド(またはHE4aポリペプチド)を検知することができる。生体検体は、被験者または生体源由来の血液検体、生検検体、組織外植片、臓器培養、体液またはその他任意の組織または細胞調製物を採取して提供してもよい。被験者若しくは生体源は、人間若しくは人間以外の動物、初代細胞培養液、または、染色体に取り込まれたか、若しくはエピゾーム性の組み換え核酸配列、不死化若しくは不死化可能細胞系、体細胞ハイブリッド細胞ライン、分化したか、若しくは分化可能細胞系、および形質転換細胞系等を含んでいてもよい遺伝子的に操作された細胞系を含む(これに限定されるものではないが)培養適応細胞系でもよい。ここに開示した方法のある好ましい実施形態では、被験者または生体源が悪性疾患に罹患しているか、またはその危険にある疑いがあるかもしれず、その悪性疾患は、さらに好ましい実施形態では、子宮内膜癌腫のような子宮内膜癌かもしれない。また、ここに開示した方法のある他の好ましい実施形態では、被験者または生体源がこのような病気の危険がないか、または罹患していないことが既知であってもよい。
【0033】
特定の実施形態によると、生体検体は、被験者または生体源由来の少なくとも1個の細胞を含み、また、ある他の好ましい実施形態によると、生体検体は、CA−125または、可溶性のヒトメゾテリン関連抗原ポリペプチドなどの、もう1つの腫瘍マーカーを含む体液である。体液は、普通生理的温度で液体であり、被験者または生体源に存在するか、その後採取するか、発現さもなければ摘出した天然由来液体を含んでいてもよい。ある体液は、特定の組織、臓器、または局所領域に由来し、また、ある他の体液は被験者または生体源により全体または全身に亘っていてもよい。体液の非限定な例は、血液、血清、漿膜液体、血漿、リンパ液、尿、脳脊髄液、唾液、分泌組織、および器官の粘膜の分泌、膣分泌、母乳、涙、および非固形の腫瘍に関係する液体のような腹水を含む。さらなる例は、胸膜、心膜、腹膜、腹部、およびその他の体腔の体液などを含む。体液は、さらに被験者または生体源に接触した液体溶液、例えば、細胞または臓器調整培地を含む細胞および臓器の培養液、洗浄液、等を含むものであってもよい。他の好ましい実施形態では、生体検体は、血清、血漿または遠心分離した尿の上清のような無細胞溶液である。
【0034】
ある他の好ましい実施形態では、生体検体は、完全な細胞を含み、また、ある他の好ましい実施形態では、生体検体は、配列ID番号11または13に記載のアミノ酸配列を有するHE4a抗原ポリペプチドをコードする核酸配列を含む細胞抽出物、若しくはその断片、またはその変異体をを含む。ここに開示の方法の、さらなる他の実施形態では、評価する前に細胞を物理的または化学的に破裂または溶解して、細胞内容を分析に供することが望ましい。
【0035】
検体中の「天然由来の可溶型分子」は、例えば、糖タンパク質、糖脂質、リポタンパク質、プロテオリピッド、またはここ提供の生体検体の可溶性または無細胞成分である、他の任意の生体分子のような、可溶性タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、アミノ酸またはその誘導体、脂質、脂肪酸等、または、それらの誘導体;炭水化物、糖類、等、またはそれらの誘導体、核酸、ヌクレオチド、ヌクレオシド、プリン、ピリミジン、または関連分子、または、それらの誘導体など;またはそれらのどんな組み合わせでもよい。「天然由来の可溶型分子」とは、ここに提供されているような体液を含む生体検体中に溶液状態であるか、または、存在していて、正常な細胞の表面に結合していない分子を指す。例えば、可溶型の天然由来の分子は、溶質;重合体分子の複合体の一成分;細胞から排出、分泌、または移出される物質;コロイド;ミクロ粒子またはナノ粒子、または他の微細懸濁液粒子等を含む(これらに限定される必要はないが)。
【0036】
被験者に悪性疾患が存在するとは、被験者に、例えば新生、腫瘍、非接触阻害細胞または腫瘍形成的に形質転換した細胞などを含む異形成、癌性および/または形質転換細胞が存在することを指す。ここに開示した方法の内容の範囲で非限定の解説を行えば、悪性疾患とは、さらに、HE4a抗原ポリペプチド(またはHE4aポリペプチド)を分泌、排出、移出、または、放出する能力を有する癌細胞が被験者に存在し、そのようなポリペプチドの高いレベルが被験者由来の生体検体中に検知可能な状態にあることを指してもよい。好ましい実施形態では、例えば、そのような癌細胞は癌腫細胞のような悪性上皮細胞であり、また、特に好ましい実施形態では、そのような癌細胞は悪性中皮腫細胞であって、これは、例えば、胸膜、心膜、腹膜、腹部、およびその他の体腔の内面を覆っているのが見られる、扁平上皮または中皮細胞がトランスフォーム(悪性細胞に変化)した変異体である。
【0037】
本願明細書に開示した方法の中で最も好ましい実施形態では、その存在が悪性疾病の存在を示す腫瘍細胞は、原発性および転移性子宮内膜癌腫細胞を含む子宮内膜癌細胞である。子宮内膜癌としての悪性度を分類する基準は、原発性および転移性腫瘍由来ヒト子宮内膜癌細胞系の確認および特性解析と同様に、当該技術分野において公知である。他の実施形態では、前記悪性疾患は、中皮腫、膵臓癌腫、非小細胞肺癌、または扁平上皮癌腫および腺癌のような様々な癌腫のうちの何れをも含み、更に肉腫および血液の悪性腫瘍(例えば白血病、リンパ腫、骨髄腫など)を含む他の型の癌であってもよい。これらおよびその他の悪性疾患の分類は、当業者には既知であり、本開示は、不当な実験をしない、かかるな悪性疾患におけるHE4aポリペプチドの存在の決定法を提供する。
【0038】
参照値は本願明細書に含まれている実施例に提供されている。このような値はここに開示した方法を実行するのに適切である。しかし、本願明細書に開示した方法の使用は、これらのの参照値またはそのデータに限定されていないことに注目すべきである。当業者であれば自分の特定のニーズのための参照値を取得できる。そのような参照値は、患者が悪性である疑いがある子宮あるいは子宮内膜要部の生検手続きを経る時に、患者のHE4a発現を解析することで取得できる。そのような参照値を取得する方法は本願明細書に含まれており、実施例に提供されている。本願明細書に開示した方法の使用者は、患者の特定のカテゴリーに焦点を当てるために、本願明細書に提供されたものとは異なった参照値を取得たいと望むこともある。予想されることは、そのようなカテゴリーは、年齢、遺伝的背景、癌の危険性、病歴、血液型、体重のような体格、およびその他のカテゴリーが含まれる。
【0039】
本願明細書に提供されるように、被験者の悪性疾患の存在に対するスクリーニング方法は、HE4a抗原ポリペプチドに特異の抗体またはHE4aポリペプチドに特異な抗体を使用することを特徴とする。
【0040】
HE4a抗原ポリペプチド(またはHE4aポリペプチド)に特異な抗体は、モノクローナル抗体として、若しくはポリクローナル抗血清として容易に産生されるか、または、当該技術分野で公知の方法を使用して、望ましい特性を発揮するように計画した遺伝子操作による免疫グロブリン(Ig)として産生できる。例えば、非限定の解説を行えば、抗体は、組み換えのIgGs、免疫グロブリン由来の配列を有するキメラ融合タンパク質、または「ヒト化」抗体(参照、例えば、米国特許番号第5,693,762号、第5,585,089号、第4,816,567号、第5,225,539号、第5,530,101号明細書、およびそれらに引用された参照)を含んでいてもよく、これらすべては、本願明細書に開示した方法によってヒトHE4aポリペプチドの検知に使用されてもよい。このような抗体は、以下記載のようなHE4aポリペプチドによる免疫付与を含めて、本願明細書に提供されるように調製可能である。例えば、本願明細書に提供されているように、当業者が免疫原として使用するため、ごく普通にこれらのポリペプチドを調製できるように、HE4aポリペプチドをコードする核酸配列が開示されている。例えば、以下に詳述する2H5、3D8、および4H4のようなモノクローナル抗体は、本願明細書に開示した方法により、ある種の方法を実行するのに使用されてもよい。
【0041】
「抗体」の用語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、F(ab’)のようなそれらの断片、およびFab断片、ならびにHE4aポリペプチドと特異的に結合する分子であるどんな天然由来、または組み換え結合パートナーをも含む。抗体が、約10M−1以上、好ましくは、約10M−1以上、より好ましくは約10M−1以上、さらに好ましくは10M−1以上のKaでHE4aポリペプチドと結合する場合、抗体は、「免疫特異的」である、または特異的に結合すると定義する。結合パートナーまたは抗体の親和力は容易に、従来の技術、例えば、Scatchardら記載の技術、Ann.N.Y.Acad.Sci.51:660(1949)を使用して測定することができる。HE4aポリペプチドの結合パートナーとしての他のタンパク質の測定は、他のタンパク質またはポリペプチドと特異的に相互作用するタンパク質を同定し、採取する多くの既知の任意の方法、例えば、米国特許番号第5,283,173号明細書および米国特許番号第5,468,614号明細書またはそれらの同等特許記載のような酵母ツー−ハイブリッドスクリーニング・システム使用して実施可能である。本願明細書に開示した方法は、HE4aポリペプチドに特異的に結合する結合パートナーおよび抗体を調製するための、HE4aポリペプチドおよびHE4aポリペプチドのアミノ酸配列に基づくペプチドの使用を含む。
【0042】
抗体は、当業者に周知の任意の様々な技術においても調製可能である(例えば、Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1988参照)。特定の前記技術では、HE4aポリペプチドを含む免疫原、例えば表面上にHE4aポリペプチドを有する細胞、または単離したHE4aポリペプチドを最初、適切な動物(例えばハツカネズミ、ネズミ、ウサギ、ヒツジ、およびヤギ)に、好ましくは1回若しくはそれ以上の追加免疫付与を組み入れた予定スケジュールに従って注入し、当該動物を周期的に出血させる。次いで、HE4aポリペプチドに特異なポリクローナル抗体は、例えば、適切な固体担体に結合したポリペプチドを使用して親和性クロマトグラフィーによって抗血清から精製できる。
【0043】
HE4aポリペプチドまたはその変異体に特異なモノクローナル抗体は、例えばKohler and Milstein(1976 Eur.J.Immunol.6:511−519)の技術、およびその改良法を使用して、調製できる。簡単に言えば、これらの方法は、目的とする特異性(つまり目的とするメゾテリン・ポリペプチドとの反応性)を有する抗体を産生可能な不死細胞系を調製することを含む。そのような細胞系は、例えば上述のように免疫になった動物から採取した脾臓細胞から生成できる。その後、脾臓細胞は、例えば髄腫細胞融合パートナー、好ましくは免疫になった動物と同系であるものとの融合によって不死化される。例えば、脾臓細胞および骨髄腫細胞を数分間、ポリエチレングリコールまたは非イオン洗剤のような細胞膜融合促進物質と混ぜ合わせ、次に、髄腫細胞ではなく、ハイブリッド細胞の成長を支える選択培地上に低い密度で平板培養してもよい。好ましい選択技術は、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)選択法を使用することである。十分な時間、通常1〜2週間後にハイブリッドのコロニーが観察される。単一のコロニーを選び、該ポリペプチドに対する結合活性をテストする。反応性および特異性が高いハイブリドーマが好ましい。HE4aポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマが、ここに開示した方法において意図されているものである。
【0044】
モノクローナル抗体は、成長中のハイブリドーマ・コロニーの上清から単離してもよい。さらに、マウスまたは他の適切なホストのような適切な脊椎動物宿主の腹膜の体腔にハイブリドーマ細胞系を注入するような、様々な技術を使用して収率を上げるようにしてもよい。次いで、モノクローナル抗体を腹水液体または血液から採取してよい。汚染物質は、抗体からクロマトグラフィー、ゲルろ過、沈殿、および抽出のような従来の技術によって除去できる。例えば、抗体は、標準的技術を使用して、固定化タンパク質Gまたはタンパク質A上クロマトグラフィーによって精製できる。
【0045】
特定の実施形態によると、抗体の抗原結合断片の使用が好ましい場合がある。そのような断片は、標準的技術(例えばパパインで消化してFabおよびFc断片を生成)を使用して調製できるFab断片を含む。FabおよびFc断片は、標準的技術を使用して、親和性クロマトグラフィー(例えば固定化タンパク質A上)で単離できる。そのような技術は当該技術分野で周知であり、例えば、Weir,D.M.,Handbook of Experimental Immunology,1986,Blackwell Scientific,Bostonを参照。
【0046】
例えば、欧州特許第B1−0318554号明細書、米国特許第5,132,405号、第5,091,513号、および第5,476,786号明細書に開示されるように、様々なエフェクタータンパク質をコードする配列へ読み取り枠内(in−frame)でリンクした、DNA配列でコードした免疫グロブリンV−領域ドメインによってあらかじめ選択した抗原に対する特異な結合親和力を有する多機能の融合タンパク質は、当該技術分野で周知である。そのようなエフェクタータンパク質は、当業者が熟知している技術のうちのどれによってでも融合タンパク質の結合を検知するのに使用できるポリペプチド・ドメインを含み、該技術は、ビオチン類似配列(例えば、Luo et al.,1998 J.Biotechnol.65:225および引用文献を参照)、検知可能な標識部分を用いた直接共有結合による修飾、特定の標識リポーター分子への非共有結合による結合、検知可能基質の酵素による修飾、または固相担体上への固定化(共有または非共有結合)を含む(これに限定されるものではない)。
【0047】
本願明細書に開示された方法において使用される一本鎖抗体も、ファージ提示法(例えば、米国特許第5,223,409号明細書、Schlebusch et al.,1997 Hybridoma 16:47、および引用文献参照)のような方法で生成及び選択してもよい。簡単に示すと、この方法は、DNA配列をM13のような線状ファージの遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIに挿入する。マルチクローニングサイトを備えたいくつかのベクターが、挿入用に開発されている(McLafferty et al.,Gene 128:29−36,1993;Scott and Smith,Science 249:386−390,1990;Smith and Scott,Methods Enzymol.217:228−257,1993)。挿入されたDNA配列はランダムに生成してもよく、またはHE4aポリペプチドと結合するための既知の結合ドメインの変異体でもよい。一本鎖抗体は、この方法を使用して容易に生成できる。一般に、挿入断片は6〜20個のアミノ酸をコードする。挿入した配列によってコードされたペプチドは、バクテリオファージの表面に表示される。HE4aポリペプチドの結合ドメインを発現するバクテリオファージは、固定化HE4aポリペプチド、例えば、当該技術分野で公知の方法およびここに開示したような核酸のコード配列を使用して調製した組み換えポリペプチドと結合させて選択する。結合しなかったファージは、普通10mM Trisおよび1mM EDTAを含有する、無塩か低塩レベルの洗浄液で除去する。結合ファージは、例えば、含塩緩衝液で溶出する。NaCl濃度は、ファージがすべて溶出するまで段階的に増加させる。通常、より高い親和性で結合するファージは、より高い塩濃度で解離する。溶出したファージは、バクテリア宿主中で増殖させる。高い親和性で結合する数種のファージを求めてさらに選択を進める。次いで結合するファージの挿入断片のDNA配列を決定する。結合ペプチドの予測したアミノ酸の配列が判明した時点で、HE4aポリペプチドに特異な抗体としてここでの使用するのに充分なペプチドが組み換え手段または合成的に生成できる。抗体を融合タンパク質として生成する場合、組み換え手段が使用される。ペプチドは、また、親和性または結合を最大限にするために、二種類またはそれ以上の類似または非類似のペプチドの縦列配列として生成してもよい。
【0048】
HE4aポリペプチドに特異な抗体に反応性の抗原決定基を検知するため、検知試薬は通常、ここに記載のように調製できる抗体である。検体中のポリペプチドを検知する目的で抗体を使用するのに、当業者に公知の様々な検査フォーマットがあり、例えば、酵素免疫測定法(enzyme linked immunosorbent assay:ELISA)、放射免疫測定法(radioimmunoassay:RIA)、免疫蛍光法、免疫沈殿、平衡透析、免疫拡散、およびその他の技術を含む(これに限定されるものではないが)。例えば、 Harlow and Lane,Antibodies: A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1988;Weir,D.M.,Handbook of Experimental Immunology,1986,Blackwell Scientific,Boston)参照。例えば、検定は、ウエスターンブロットフォーマットで行うことが出来、その際、生体検体からのタンパク質調製物を、ゲル電気泳動にかけ、適切なメンブレンに移し、抗体と反応させる。次いで、メンブレン上の抗体の存在は、当該技術分野で公知であり、以下に記載の通り、適切な検知試薬を使用して検知できる。
【0049】
別の実施形態では、前記検定は、固体担体上に固定化した抗体を使用して、標的HE4aポリペプチドと結合させ、かつそれを検体の残部から除去することを含む。次いで、結合HE4aポリペプチドは、独特なHE4aポリペプチド抗原決定基と反応性の第二の抗体、例えば検知可能なリポーター部分を含有する試薬を使用して検知してもよい。非限定の例として、この実施形態によれば、独特な抗原決定基を認識する、固定化抗体および第二の抗体は、モノクローナル抗体2H5、3D8および4H4から選択した、ここに記載されているモノクローナル抗体のうちのどの二つでもよい。代わりに、競合検定を利用してもよく、その場合、HE4aポリペプチドを検知可能リポーター部分で標識し、前記固定化抗原を検体とインキュベーション後、固定化HE4aポリペプチドに特異な抗原と結合させる。標識したポリペプチドの前記抗体への結合を該検体成分が阻止する程度は、前記検体と固定化抗原との反応性を表し、その結果として該検体中のHE4aのレベルを表している。
【0050】
固体担体は、マイクロタイタープレート(微量検定板)のテストウエル、ニトロセルローズフィルタ、または別の適切なメンブレンのように、抗体を付着できる、当業者に公知の物質ならどれでもよい。代わりに、該担体は、ガラス、ファイバーグラス、ラテックス、またはポリスチレンまたはポリ塩化ビニールのようなプラスチックのビーズまたはディスクでよい。抗体は、当業者に公知で、特許および科学文献に充分記載されている様々な技術を使用して固体担体上に固定化できる。
【0051】
特定の好ましい実施形態によると、検体中のHE4a抗原ポリペプチドを検知するのための検定は、二抗体サンドイッチ型検定である。この検定は、先ず、通常マイクロタイタープレートのウエルである、固体担体上に固定化したHE4aのポリペプチドに特異な抗体(例えば2H5、3D8または4H4のようなモノクローナル抗体)を生体検体と接触させて、検体中の天然由来であって、抗体と反応性のある抗原決定基を有する可溶分子を前記固定化抗体と結合させ、(例えば、一般に室温で30分のインキュベーション時間で充分である)抗原抗体複合体、または、免疫複合体を生成するように実施してよい。次いで、検体中の未結合成分を固定化した免疫複合体から除去する。次に、HE4a抗原ポリペプチドに特異な第2抗体を加えるが、その際、第2抗体の抗原結合部位は、HE4aポリペプチドに対する固定化第1抗体の抗原結合部位への結合を競合的に抑制しない、(例えば、固体担体上の固定化モノクローナル抗体とは同一ではない、2H5、3D8、または4H4のようなモノクローナル抗体)。前記第2抗体は、それを直接検知できるように、ここに記載通りに検知可能に標識することができる。代わりに、第2抗体は、検知可能に標識した第2の(または「第2ステージ」)抗体を使用して、またはここに記載のような特定の検知試薬の使用により間接的に検知できる。二抗体サンドイッチ型免疫検定には、特定の抗原(例えばメゾテリン・ポリペプチド)を免疫学的に検知するのに多数の試薬および形態があることを、免疫検定に詳しい当業者が認識しているので、ここに開示した方法は、如何なる特定の検知法にも限定されない。
【0052】
上述の二抗体サンドイッチ型検定を使用した本願明細書に開示した方法の好ましい実施形態では、HE4a抗原ポリペプチドに特異な第1固定化抗体はポリクローナル抗体であり、また、HE4a抗原ポリペプチドに特異な第2抗体はポリクローナル抗体である。モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、およびこれらの組み合わせを含む、非競合的HE4a抗体同士のどんな組み合わせもここに開示した方法と共に使用できる。ここに開示した方法の他の実施形態では、HE4a抗原ポリペプチドに特異な固定化第1抗体はモノクローナル抗体であり、HE4a抗原ポリペプチドに特異な第2抗体はポリクローナル抗体である。ここに開示した方法の他の実施形態では、HE4a抗原ポリペプチドに特異な固定化第1抗体はポリクローナル抗体であり、HE4a抗原ポリペプチドに特異な第2抗体はモノクローナル抗体である。ここに開示した方法の他の実施形態では、HE4a抗原ポリペプチドに特異な固定化第1抗体はモノクローナル抗体であり、HE4a抗原ポリペプチドに特異な第2抗体はモノクローナル抗体である。例えば、これらの実施形態では、ここに記載のようなモノクローナル抗体である2H5、3D8および4H4は、HE4aポリペプチド上の独自の非競合的な抗原決定基(例えばエピトープ)を認識するので、これらのモノクローナル抗体のどんな対の組み合わせも使用できることに留意すべきである。ここに開示した前記方法の、他の好ましい実施形態では、HE4a抗原ポリペプチドに特異な固定化第1抗体および/またはHE4a抗原ポリペプチドに特異な第2抗体は、当該技術分野で公知で、ここに参照した抗体の種類のいずれでもよく、例えば、非限定の解説として述べれば、Fab断片、F(ab’)断片、免疫グロブリンV―領域融合タンパク質、または一本鎖抗体を含む。当業者は、ここに開示した方法が、ここに開示し、クレイムした方法における、他の抗体形式、断片、誘導体等の使用を包含することを理解するであろう。
【0053】
特に好ましい実施形態では、第2抗体は、酵素、染料、放射性核種、発光基、蛍光基、または、ビオチン等のような検知可能なレポーター部分または標識を含んでいてもよい。ここに開示した方法と共に、どんなリポーター部分または標識も、そのシグナルが洗浄後に担体上に残存する抗体の量に直接関連するか、または、比例する限り、使用できる。次いで、固体担体に結合したまま残存する第2抗体の量を、特定の検知可能なリポーター部分または標識に適切な方法を使用して決定する。放射性基については、シンチレーション計数またはオートグラフィーの方法が一般に適切である。抗原―酵素複合体は、様々な結合方法(参照総説として、例えば Scouten, W. H., Methods in Enzymology 135:30−65, 1987)を使用して調製できる。分光法を用いて染料(例えば、酵素反応の比色定量生成物を含む)、発光基および蛍光基を検知してもよい。ビオチンは、異なったリポーター基(一般に放射性、または、蛍光基、または酵素)に結合したアビディンまたはストレプトアビジンを使用して検知してもよい。酵素リポーター基は、基質を添加し、(特定の時間の間)、次いで反応生成物の分光分析、分光光度分析、または他の分析法によって検知できる。検体の抗原レベルは、標準規格および標準添加を用いて、周知の技術で測定してよい。
【0054】
別の実施形態によると、本願明細書に開示した方法は、生体源または被験者由来の生体検体中の免疫特異的に反応する抗体の検知により、悪性疾患の存在をスクリーニングするのに、ここに提供したような HE4a抗原ポリペプチドの使用を意図している。この実施形態によれば、検体中の可溶型で、天然由来の抗体のHE4a抗原ポリペプチドとの結合を検知するために、HE4a抗原ポリペプチド(または、ここに提供した短縮HE4a抗原ポリペプチドを含む、その断片か、または変異体)を、検知可能に標識し、生体検体に接触させる。例えば、HE4a抗原ポリペプチドは、容易に検知可能(例えば、放射能標識化)アミノ酸の生体外翻訳中の取り込みのような周知の方法に合わせて、ここに開示の配列を使用するか、または、他の検知可能リポーター部分を使用して、生合成的に標識できる。理論によって限定されたくないが、ここに開示した方法の本実施形態は、ここに開示したHE4a融合ポリペプチドのようなある種のHE4aポリペプチドが、特に免疫原性であるペプチドを提供し、したがって、特異に検知可能な抗体を産生することを意図している。例えば、この理論によれば、ある種のHE4a融合ポリペプチドは、盛んな免疫反応を誘発する、「非自己」抗原を表わことができるが、その一方で当該免疫系は、融合ドメインを欠くHE4aポリペプチドを容易に体液性または細胞性免疫を誘発しない「自己」抗原にもっと似ていると見なしているのかもしれない。
【0055】
上述のように、本願明細書に開示した方法は、一部分、可溶型HE4a抗原ポリペプチドが、ある種の癌腫の被験者では、かkる可溶性HE4aポリペプチドのレベルが高いことを含めて、被験者に自然に発生するという驚くべき発見に関連するものである。
【0056】
本願明細書に開示した方法による悪性疾患の存在のスクリーニング方法は、被験者由来の生体検体中に2種以上の腫瘍関連マーカーを検知することで、一層強化できる。従って、ここに開示した前記方法のある実施形態は、自然発生の可溶性検体の成分と、HE4a抗原ポリペプチドに特異な抗体との反応性を検知することに加えて、さらに当該技術分野で公知であり、ここに記載のような常法を使用して、悪性疾患の少なくとももう一つの可溶性マーカーの検知を含むスクリーニング法を提供する。上述のように、現在、容易に得られる体液の検体中に検知可能な、多くの可溶性の腫瘍関連抗原がある。例えば、ここに開示した方法のある実施形態は、Schollerらの記載(1999 Proc.Nat.Acad.Sci.USA 96:11531)および 米国特許第6,770,445号明細書に記載の新規な可溶性メゾテリン関連抗原(MRA)ポリペプチドのようなポリペプチドを含む、ヒトのメゾテリン・ポリペプチドに関連する。
【0057】
ここに提供したように、「メゾテリン・ポリペプチド」は、次のペプチドを含むアミノ酸配列を有する可溶性のポリペプチドで:
1EVEKTACPSGKKAREIDES 配列ID番号:14
さらに、MAb K−1(Chang et al.,1996 Proc.Nat.Acad.Sci.USA 93:136;MAb K−1は、例えばSignet Laboratories,Inc.,マサチュセツ州Dedhamから取得できる)。またはモノクローナル抗体OV569、4H3、3G3、または米国特許番号6,770,445明細書に記載のような1A6の免疫特異性結合を競合的に抑制する抗原結合部位を有する、少なくとも一種の抗体と反応性のある、少なくとも一個の抗原決定基を有する。
【0058】
本願明細書に開示した方法で使用するための、これらのさらなる可溶性腫瘍関連抗原は、メゾテリンとメゾテリン関連抗原である、CEA、CA125、シアリルTN、SCC、TPSおよびPLAP(例えば、Bast et al.,1983 N.Eng.J.Med.309:883;Lloyd et al.,1997 Int.J.Canc.71:842;Sarandakou et al.,1997 Acta Oncol.36:755;Sarandakou et al.,1998 Eur.J.Gynaecol.Oncol.19:73;Meier et al.,1997 Anticanc.Res.17(4B):2945;Kudoh et al.,1999 Gynecol.Obstet.Invest.47:52;Ind et al.,1997 Br.J.Obstet.Gynaecol.104:1024;Bell et al.1998 Br.J.Obstet.Gynaecol.105:1136;Cioffi et al.,1997 Tumori 83:594;Meier et al.1997 Anticanc.Res.17(4B):2949;Meier et al.,1997 Anticanc.Res.17(4B):3019参照)を含むことができ(これらに限定される必要はないが)、更に、本願明細書に提供した通り、その存在が、生体検体中に少なくとも1種の悪性疾患の存在と互いに関連できる、すべての既知のマーカーを含む。
【0059】
或いは、HE4aポリペプチドをコードする核酸配列は、標準的ハイブリッド形成および/または、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を使用して検知してもよい。適切なプローブおよびプライマーは、ここに提供したHE4a cDNA配列に基づいて当業者が設計できる。検定は、一般に、真核細胞、バクテリア、ウィルス、そのような生体源から採取した抽出物、および生命体に見出された体液のような様々な検体のうちのどれでも使用して行なってよい。
【0060】
実施例
一般法
本実施例で使用した基準組換えDNAおよび分子クローニング技術は、当該技術分野で公知であり、以下に記載されている。Sambrook,J.,Fritsch,E.F.and Maniatis,T.Molecular Cloning:A Laboratory Manual;Cold Spring Harbor Laboratory Press:Cold Spring Harbor,(1989)(Maniatis)およびT.J.Silhavy,M.L.Bennan,and L.W.Enquist,Experiments with Gene Fusions,Cold Spring Harbor Laboratory,ニューヨーク州 Cold Spring Harbor,N.Y.(1984)およびAusubel,F.M.et al.,Current Protocols in Molecular Biology,pub. by Greene Publishing Assoc.and Wiley−Interscience(1987)。
【0061】
略語の意味は以下のとおりである。「h」は時間、「min」は分、「sec」は秒、「d」は日数、、「mL」はミリリットル、「L」はリットル、「U」はユニット(単位)、「pM」はピコモル、「ROC」は受信(診)者動作特性、「AUC」は曲線下面積、「StDev」は標準偏差、「Min」は最小値、「Max」は最大値、および「p」はp値を意味する。
【0062】
以下に、本開示の主題について以下の実施例を参照して記載する。これらの実施例は、説明目的に提供されるものであり、前記主題はこれらの実施例に限定されることなく、むしろ本願明細書において提供される教示された結果から明白な変形例をすべて包含するものである。
【実施例1】
【0063】
子宮内膜癌の患者に対する新規な血清腫瘍マーカーHE4対CA−125の効用
米国では、およそ40,880件の子宮癌が新規に診断され、7,310人が毎年死亡している。子宮癌は、外科的にステージされ、75%が疾病ステージ1を示す。CA125の血清レベルは、進行期疾病を示す患者の約75%で上昇しているが、初期疾病の患者の内僅か17%が上昇しているだけである。再発疾病の検知用にCA125を使用するのは、よくても限定されている。無症候性で再発する疾病に罹った患者の僅か25%でCA125が上昇するだけである。早期の再発疾病を示す、よりよいマーカーが必要である。この研究の目的は、新規な血清腫瘍マーカーHE4の価値を検討し、それを子宮内膜癌用マーカーとしてCA−125と比較することであった。
【0064】
この実施例で使用した方法をここに記載する。
【0065】
本研究は、良性の疾病または子宮癌のいずれかのため子宮および卵巣の除去手術を受けるこになっていた患者のHE4およびCA−125を比較する、前向き(プロスペクティブ)IRB承認の研究であった。すべての患者からインフォームドコンセントを取り付けた。血液検体は、手術前に採血され、血清は採血から4時間以内に採取し、−80℃まで、凍結した。HE4およびCA−125のレベルはFujirebio DiagnosticsIncからの検定を使用して決定した。次いで、外科病理学的な結果を前記腫瘍マーカーレベル比較した。ROC曲線は各腫瘍マーカー毎に作成した。
【0066】
本実施例の実験結果を本願明細書に記載する。
【0067】
合計221人の患者をプロトコルに登録した;128人が良性症例および93人が子宮内膜癌。子宮内膜癌患者は、以下の外科的ステージを得た:62人、ステージI;4人、ステージII;19人、ステージIII;8人,ステージIV。HE4の平均は、子宮内膜癌患者で161pM(15〜1052)、良性の疾病患者で49.3pM(14〜254)であった。CA−125の平均は子宮内膜癌患者で52U/ml(3〜1427)であり、良性の疾病患者は46U/ml(3−773)であった。AUCを付した該ROC曲線をHE4およびCA−125について計算し、それぞれのカテゴリー毎に比較した。
【0068】
【表1】

【0069】
本願明細書に提供された情報から、HE4が子宮内膜癌のすべてのステージで上昇し、すべてのステージの子宮内膜癌の検知でCA−125より感度が高いと結論することができる。HE4は、子宮内膜癌患者の早期再発疾病用マーカーとして使用することができる。
【実施例2】
【0070】
この実施例で使用する方法を記載する。
【0071】
血清検体は、Women and Infants Hospital / Brown University で前向きIRB承認プロトコルに登録された患者、およびThe University of Texas MD Anderson Cancer CenterのIRB承認血清銀行から取得した。プロトコル登録患者はみな、研究用血液検体の採取に先立ってインフォームドコンセントに署名した。血液検体はすべて、手術直前の時期に採取、遠心分離し、血清を採取し、採取4時間以内に−80℃まで凍結した。続いて、患者はすべて、洗浄、骨盤、および大動脈周囲のリンパ節切除を含む正規の外科的ステージングで、子宮摘出および両側卵管卵巣摘除を伴う、試験開腹からなる手術を受けた。Women and Infants Hospitalから取得した血清検体は、Fujirebio Diagnostics Incの研究室で分析した。MD Anderson Cancer Centerから取得した検体は、現地で分析した。正常な対照検体は健常患者から採取した。CA125、HE4、CA72.4、SMRP、および尿のSMRPレベルの血清腫瘍マーカーレベルは、Fujirebio DiagnosticsIncからの検定を使用して決定した。ROC曲線は、各腫瘍マーカー毎に作成し、95%設定特異度での感度を決定した。
【0072】
この実施例の結果を記載する。
【0073】
外科的にステージ決定した子宮内膜癌患者から233件の血清検体を、健常対照血清検体156件と共に取得した。
【0074】
外科的に病期分類された子宮内膜癌患者の群では、、ステージIが151人、ステージIIが21人、ステージIIIが47人、ステージIVが14人であった。各マーカー分析値の平均血清腫瘍マーカーレベルを健常対照区、外科的ステージI患者,外科的ステージII〜IV患者について計算し、表2に示した。CA125、HE4、CA72.4、SMRP、および尿のSMRPレベルのROC曲線下の面積(ROC−AUC)を各マーカー毎に求めた(表3)。ロジスティック回帰分析を用いて、各腫瘍マーカーを個別に、子宮内膜癌検体対対照について、90%、95%、および98%の設定特異度で様々な組み合わせについて比較した(表4、5、および6)。個々のマーカーについての対照対子宮内膜癌の差別化の感度からHE4の成績が最良であることが判明した。子宮内膜癌のすべての病期に対して、95%の設定特異度で、CA125(p=0.0001)の25.2%に比べてHE4が44.9%の感度を有した。ステージIの症例では、CA125単独に比べて、HE4は感度が20.5%改善した(37.1%対16.6%、p=0.0001)(表3)。ステージII〜IVの疾病患者では、HE4の感度は95%の設定特異度で59.8%にまで上昇し、CA125(p=0.0001)のそれに対して18.3%の増加であった。
【0075】
任意の二つのマーカーの併用を分析すると、HE4とCA125か、またはHE4と尿のSMRPの併用で、子宮内膜癌のすべての病期で感度がそれぞれ48.7%と49.6%までに上昇する。ステージII−IV疾病の患者で、HE4およびCA125の併用の分析から、95%の設定特異度で感度が69.5%(訳者注、65.9%)の結果になった。これは、CA125単独に比して感度24.4%の増加を示した(p=0.0001)。HE4、CA125、および尿のSMRPの併用は、すべての子宮内膜癌患者でCA125の単独に比して26.1%いう最大の感度の進歩を示した。しかしながら、これは、HE4とCA125の併用に対して、感度が僅か2.6%改善しただけで、あまり有意義ではなかった。HE4は、ステージのIの子宮内膜癌の患者においても、CA125の感度16.6%に対して37.1%でより高感度であることが判明した。又しても、HE4とCA−125の併用で、CA125に比して感度が39.1%に上昇した。しかしながら、ステージIの疾病患者では、HE4、CA125、および尿のSMRPの併用で、感度は44.7%であって、CA125単独のそれに対して感度が28.1% (p=0.0001)上昇し最高であった。
【0076】
【表2】

【0077】
【表3】

【0078】
【表4】

【0079】
【表5】

【0080】
【表6】

【0081】
本願明細書に引用したすべての特許、特許出願、刊行物の開示内容は、この参照によってその全体が本願明細書に組み込まれるものである。
【0082】
本発明の主題を特定の実施形態に関して開示したが、ここに記載された主題の要旨から逸脱することなく、他の当業者が他の実施形態および変形を考案することができることは明白である。付記した請求項は、そのような実施形態および均等な変形をすべて含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者が子宮内膜または子宮癌に罹患しているかどうかを評価する方法であって、この方法は、前記患者から採取した検体中のHE4の発現を評価する工程を含み、HE4の高い発現は、前記患者が子宮内膜または子宮癌に罹患している指標である、方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記検体は、固体の組織検体である。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、前記検体は、患者から採取した体液である。
【請求項4】
請求項3記載の方法において、前記体液は、血液、血清、腹水、および膣液から成る群から選択するものである。
【請求項5】
請求項1記載の方法において、前記検体は、前記患者に接触した液体である。
【請求項6】
請求項5記載の方法において、前記液体は、腹膜の洗浄液および膣洗液から成る群から選択されるものである。
【請求項7】
請求項1記載の方法において、前記検体中のHE4の発現は参照値と比較されるものである。
【請求項8】
請求項7記載の方法において、前記参照値は、子宮内膜または子宮癌に罹患していない患者のHE4の発現に対応するものである。
【請求項9】
請求項1記載の方法において、前記検体中のHE4の発現は、初期に前記患者から採取した初期の検体中のHE4の発現と比較されるものである。
【請求項10】
請求項1記載の方法において、この方法は、さらに、
CA125およびSMRPから成る群から選択した第2マーカーの、前記検体中の発現を評価する工程を含み、前記第2マーカーの高い発現は、前記患者が子宮内膜または子宮癌に罹患しているさらなる指標である。
【請求項11】
請求項1記載の方法において、この方法は、さらに、
前記検体中のCA125およびSMRP両者の発現を評価する工程を含み、CA125およびSMRPのいずれかの高い発現は、患者が子宮内膜または子宮癌に罹患しているさらなる指標である。
【請求項12】
子宮内膜または子宮癌罹患患者の治療に対する応答を評価する方法であって、この方法は、治療期間中の異なる時期に前記患者から採取した検体中のHE4の発現を評価する工程を含み、後期における減少したHE4の発現は、患者が前記治療に応答していることを示すものである、方法。
【請求項13】
請求項12記載の方法において、この方法は、さらに、
CA125およびSMRPから成る群から選択される第2マーカーの前記検体中の発現を評価する工程を含み、前記第2マーカーの減少した発現は、前記患者が前記治療に応答しているさらなる指標である。
【請求項14】
請求項12記載の方法において、この方法は、さらに、
前記検体中のCA125およびSMRP両者の発現を評価する工程を含み、CA125およびSMRPの何れかの減少した発現は、前記患者が前記治療に応答しているさらなる指標である。
【請求項15】
子宮内膜または子宮癌の治療を受けたことのある患者の再発を評価する方法であって、この方法は、治療後、前記患者から採取した検体中のHE4の発現を評価する工程を含み、HE4の高い発現は、前記患者が子宮内膜または子宮癌が再発していることを示すものである、方法。
【請求項16】
請求項15記載の方法において、この方法は、さらに、
CA125およびSMRPから成る群から選択した第2マーカーの前記検体中の発現を評価する工程を含み、前記第2マーカーの高い発現は、前記患者に子宮内膜または子宮癌が再発しているさらなる指標である。
【請求項17】
請求項15記載の方法において、この方法は、さらに、
前記検体中のCA125およびSMRP両者の発現を評価する工程を含み、CA125およびSMRPの何れかの高い発現は、前記患者が子宮内膜または子宮癌が再発しているさらなる指標である。
【請求項18】
請求項15記載の方法において、前記治療後のHE4の発現は複数回評価されるものであり、HE4の発現の増大は、前記患者に子宮内膜または子宮癌が再発していることを示すものである。
【請求項19】
患者が子宮内膜または子宮癌を発症する可能性を評価する方法において、この方法は、前記患者から採取した検体中のHE4の発現を評価する工程を含み、HE4の高い発現は、前記患者が子宮内膜または子宮癌を発症する可能性の増大と相互に関連するものである、方法。
【請求項20】
請求項19記載の方法において、この方法は、さらに、前記検体中のCA125およびSMRPから成る群から選択される第2マーカーの発現を評価する工程を含み、前記第2マーカーの高い発現は、前記患者が子宮内膜または子宮癌を発症するさらなる指標である。
【請求項21】
請求項19記載の方法において、この方法は、さらに、
前記検体中のCA125およびSMRP両者の発現を評価する工程を含み、CA125およびSMRPの何れかの高い発現は、前記患者が子宮内膜または子宮癌を発症するさらなる指標である。
【請求項22】
子宮内膜または子宮癌罹患患者の腫瘍の病期を分類する方法において、この方法は、前記患者から採取した検体のHE4の発現を評価する工程を含み、HE4の発現の増大は、前記癌の病期がより進行していることを示すものである、方法。
【請求項23】
請求項22記載の方法において、この方法は、さらに、
前記検体中のCA125およびSMRPから成る群から選択される第2マーカーの発現を評価する工程を含み、前記第2マーカーの高い発現は、前記癌の病期がより進行していることを示すものである、方法。
【請求項24】
請求項22記載の方法において、この方法は、さらに、
前記検体中のCA125およびSMRP両者の発現を評価する工程を含み、CA125およびSMRPの何れかの高い発現は、前記癌の病期がより進行していることを示すものである。
【請求項25】
子宮内膜または子宮癌罹患患者の腫瘍の病期を分類する方法において、この方法は、前記患者から採取した検体のHE4の発現を評価する工程を含み、HE4の発現の増大は、前記癌の悪性度がより高いことを示すものである、方法。
【請求項26】
請求項25記載の方法において、この方法は、さらに、
前記検体中のCA125およびSMRPから成る群から選択される第2マーカーの発現を評価する工程を含み、前記第2マーカーの高い発現は、前記癌の悪性度が高いことをさらに示すものである。
【請求項27】
請求項25記載の方法において、この方法は、さらに、
前記検体中のCA125およびSMRP両者の発現を評価する工程を含み、CA125およびSMRPの何れかの高い発現は、前記癌の悪性度がより高いことをさらに示すものである。
【請求項28】
子宮内膜または子宮癌と診断された患者の治療的介在の必要性を評価する方法において、この方法は、前記患者から採取した検体のHE4の発現を評価する工程を含み、HE4の高い発現は、前記患者の治療的介在の必要性を示すものである、方法。
【請求項29】
請求項28記載の方法において、この方法は、さらに、
CA125およびSMRPから成る群から選択される第2マーカーの前記検体中の発現を評価する工程を含み、前記第2マーカーの高い発現は、前記患者の治療的介在の必要性をさらに示すものである。
【請求項30】
請求項28記載の方法において、前記治療的介在は、化学療法である。

【公表番号】特表2009−521953(P2009−521953A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−549562(P2008−549562)
【出願日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【国際出願番号】PCT/US2007/000215
【国際公開番号】WO2007/081767
【国際公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(507240118)フジレビオ アメリカ、インク. (3)
【Fターム(参考)】