説明

存在状況確認システム及び存在状況確認方法

【課題】 災害避難所やイベント会場等の一時的に使用される場所において人の存在状況をリアルタイムで把握するための存在状況確認システム及び存在状況確認方法を提供する。
【解決手段】 存在状況確認システム100は、物理アドレスの順番で配置され、起動して自らの固有物理アドレスを含む圧力検知データを無線通信にてアクセスポイントに送信する複数のセンサモジュール1、アクセスポイントを介して圧力検知データを受信し、圧力検知データより固有物理アドレスを取得し、物理アドレスの順番に従って配列された配置図に固有物理アドレスの位置を表示するよう指示する情報管理サーバ4を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害避難所やイベント会場等の一時的に使用される場所において人の存在状況をリアルタイムで把握するための存在状況確認システム及び存在状況確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人の着席状況を、座席等に予め設置されたICチップ等により検知し、着席状況等を確認するシステムが今日広く活用されている。例えば、無線タグを用いて映画館における着席状態、コインロッカーの使用状況等を確認するシステムが開示されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−2087204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載のシステムにおいては、予め座席やコインロッカー等に無線タグを常設しておく必要があった。又、無線タグとリーダーアンテナの位置関係によっては、無線情報が正しく送受信できないことがあった。又無線タグの価格や消費電力の問題があった。
【0004】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、災害避難所やイベント会場等の一時的に使用される場所において素早く設置・回収することが可能で、廉価で低消費電力の無線タグを用いて、無線電波を確実に送受信し、正確に人の存在状況を確認することができる存在状況確認システム及び存在状況確認方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の問題点を鑑みて、本発明の第1の特徴は、(イ)圧力負荷を検出する複数のセンサモジュール、センサモジュールより検出を通知されるアクセスポイント、通知を基に検知対象の存在状況を確認する情報管理サーバを備えるシステムであって、センサモジュールは、物理アドレスの順番で配置され、検出により自らの固有物理アドレスを含む圧力検知データを無線通信にてアクセスポイントに送信し、(ロ)情報管理サーバは、アクセスポイントを介して圧力検知データを受信し、圧力検知データより固有物理アドレスを取得し、物理アドレスの順番に従って配列された配置図に固有物理アドレスの位置を表示するよう指示する存在状況確認システムであることを要旨とする。
【0006】
更に本発明の第1の特徴は、(ハ)センサモジュールは、アクセスポイントに向けて圧力検知データを無線送信する第1のセンサモジュールと、圧力検知データをアクセスポイントに中継する第2のセンサモジュールとを備えることを加えても良い。
【0007】
本発明の第2の特徴は、(イ)複数のセンサモジュールが圧力負荷を検出し、アクセスポイントがセンサモジュールの検出を受信して情報管理サーバに通知し、情報管理サーバが通知を基に検知対象の存在状況を確認する存在状況確認方法であって、物理アドレスの順番で配置されるセンサモジュールが圧力を検出して自らの固有物理アドレスを含む圧力検知データを無線通信にてアクセスポイントに送信するステップと、(ロ)アクセスポイントを介して情報管理サーバが圧力検知データを受信し、圧力検知データより固有物理アドレスを取得し、物理アドレスの順番に従って配列された配置図に固有物理アドレスの位置を表示するよう指示するステップとを備える存在状況確認方法であることを要旨とする。
【0008】
本発明の第3の特徴は、(イ)圧力負荷を検出する複数のセンサモジュール、センサモジュールより検出を通知されるアクセスポイント、通知を基に検知対象の存在状況を確認する情報管理サーバを備える存在状況確認システムであって、センサモジュールが物理アドレスの順番に従い間隔を空けて二手方向に配置された面状部材を更に備える存在状況確認システムであることを要旨とする。
【0009】
本発明の第4の特徴は、(イ)圧力負荷を検出する複数のセンサモジュール、センサモジュールより検出を通知されるアクセスポイント、通知を基に検知対象の存在状況を確認する情報管理サーバを備える存在状況確認システムであって、センサモジュールが物理アドレスの順番に従い間隔を空けて長手方向に配置された線状部材を更に備える存在状況確認システムであることを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の存在状況確認システム及び存在状況確認方法によると、無線タグの設置・回収を素早く行い、災害避難所やイベント会場等の一時的に使用される場所においても簡易に且つ確実に検知対象の存在状況を管理することができる。又、低消費電力且つ安価な無線タグを用い、無線電波を確実に送受信し、正確に人の存在状況を確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係る存在状況確認システムについて説明する。尚、本発明の実施の形態において使用される機器、手法等は一例であり、本発明はこれらに限定されるものではないことは勿論である。
【0012】
(存在状況確認システム)
本発明の実施の形態に係る存在状況確認システム100は、図1に示すように、複数のセンサモジュール1、アクセスポイント2、IPネットワーク3、情報管理サーバ4、表示端末5等を備えている。
【0013】
センサモジュール1は、災害避難所やイベント会場等の一時的に使用される場所に設置される、圧力の有無により人等の検知対象の存在を検出する回路である。センサモジュール1の内部構成を図2(a)(b)に示す。センサモジュール1は電源となる電池6、圧力の負荷により通電する接点7a,7b、接点の通電を検知しセンサモジュール1を起動する処理部8、起動状態を図1のアクセスポイント2に対して送信する通信部9等を備えている。センサモジュール1は圧力が負荷されていない状態では図2(a)のように接点7a,7bが離れている為起動しないが、圧力が負荷されることにより図2(b)に示すように接点同士7a,7bが閉じられて通電(起動)するように構成されている。
【0014】
尚、通信部9は各センサモジュール1固有の物理アドレスを記憶しており、通電状態となるとアクセスポイント2へ対して物理アドレスを含む圧力検知データを無線通信する。センサモジュール1は、通電中はこの通信処理を最小限時間で、所定間隔毎に行う。これにより電力の消費は最小限に抑えられる。
【0015】
アクセスポイント2は、複数のセンサモジュール1から送信される無線電波を受信し、圧力検知データを受け取る。尚、本発明の実施の形態においては、複数のセンサモジュール1とアクセスポイント2間のセンサネットワーク技術として、ZigBee技術のアドホック中継を使用した場合について説明する。これによりアクセスポイント2から遠距離のセンサモジュール1であっても、他のセンサモジュール1とアドホック中継することにより、確実にアクセスポイントに電波を送信することができる。
【0016】
ZigBee技術について説明する。ZigBeeは、家電向けの短距離無線通信規格の一つであり、低速で転送距離が短い代わりに、安価で消費電力が少ないという特徴を持つ。基礎部分の電気的仕様はIEEE 802.15.4として規格化されている。データ転送速度は20Kbps〜250kbpsで使用する無線周波数帯によって異なり、2.4GHzでは250Kbps、902〜928MHzでは40Kbps、868〜870MHzでは20Kbpsとなる。ZigBee端末には中継機能があり、中継を繰り返す事でZigBee素子同士が通信を行える限り情報を伝える事が出来るという特徴を持つ。送受信の頻度にもよるが、乾電池程度の電力で100日〜数年間稼動し、電源も含めて完全に無配線でネットワークを構築する事が出来る。ひとつのZigBeeネットワークには、最大で65,528個(アドレスで0x0000〜0xFFF7)のZigBee端末を接続することが出来る。
【0017】
この方法により、センサモジュールが長く連なって配置され、端側のセンサモジュールとアクセスポイントとの間の距離が直接無線通信できなく成る程隔たる場合であっても、アクセスポイントへのアクセスが可能になる。
【0018】
なお、直接通信可能な距離で有ればセンサモジュールとアクセスポイントとの間でアドホック中継せずに直接通信出来るネットワークの構成方法を用いても良いことは言うまでもない。また、ZigBee技術以外のアドホック中継技術を採用しても良いことも勿論である。
【0019】
管理所側に設置される情報管理サーバ4は、アクセスポイント2を介して圧力検知データを受信し、圧力検知データより固有物理アドレスを取得し、物理アドレスの順番に従って配列された配置図に固有物理アドレスの位置を表示するよう指示する。
【0020】
表示端末5は、情報管理サーバ4の指示に従い、圧力検知データを在席情報としてに図3に示すように表示する。在席情報は管理者により閲覧される他、外部配信のためのインタフェースを用いて外部に提供してもよい。
【0021】
(存在状況確認用センサモジュール)
尚、本発明の実施の形態においては、複数のセンサモジュール1は間隔を空けて二手方向に、面状部材、例えば図4に示すようにシート状のカーペット10等の面に整列するように配置される。位置がずれないようにセンサモジュールの片面をカーペット10等に接着したり、内部に埋め込んだりしてもよい。この際、センサモジュール1の並びは、物理アドレス配列の構成順に対応して連番になるように配置する。この様にセンサモジュール1を整列配置し、図3の表示端末上の整列配置の表示状態と一致させる。このように配置することで、現実及び表示上のセンサモジュール1の設置位置が把握しやすくなり、更にセンサモジュール1の位置管理が容易となる。又、センサモジュール1をロール状態で保管し、必要時に開いて使用することにより、設置・回収等の運用管理における手間を削減する。この他、複数のセンサモジュール1を紐等で結びつけ、ロール状態で保存、運用してもよい。
【0022】
(存在状況確認システムの動作)
次に、存在状況確認システム100の動作について図5のフローチャートを用いて説明する。
【0023】
(a)先ずステップS101において、人等の検知対象がセンサモジュール1上に乗る等の動作によりセンサモジュール1の接点7a,7b(図2参照)に圧力が加えられ通電すると、処理部8がセンサモジュール1を起動させ、固有物理アドレスを含む圧力検知データを通信部9に送信するよう通知する。通信部9は圧力検知データをアクセスポイント2に向けて無線送信する。
【0024】
(b)ステップS102において、アクセスポイント2が無線可能範囲にあるか否かを判断し、アクセスポイント2が無線可能範囲に無い場合、ステップS103において、近くに設置されている他のセンサモジュール1がこの圧力検知データを受信し、アクセスポイント2近くに設置される他のセンサモジュール1に対して中継する。ステップS102及びS103は圧力検知データがアクセスポイント2に引き渡されるまで繰り返される。
【0025】
(c)ステップS104において、アクセスポイント2が、1つ以上のセンサモジュール1より圧力検知データを受信・収集すると、所定間隔毎にIPネットワーク3を介して情報管理サーバ4に送信する。
【0026】
(d)ステップS105においては、情報管理サーバ4は収集された圧力検知データを受信し、圧力検知データに含まれるセンサモジュール固有の物理アドレスを抽出する。抽出された物理アドレスは例えば図3に示すような在席配列位置と紐付けられており、「使用中」状態として点滅させる等の在席情報として表示端末5に表示される。
【0027】
(実施例1)
存在状況確認システム100は例えば、図6に示すように、複数のセンサモジュール1を面状部材、例えばシートや、カーペット10等の裏面又は内部に整列配置するように付着させて使用する。この際、センサモジュール1の物理アドレスの順番と整列配置状態が対応するように設置する。尚、各センサモジュール1の表面、すなわちセンサモジュール1の面上、センサモジュール近辺のカーペット面やその近辺に物理アドレスを印字等して表示し、展開時の設置状況を容易に把握できるようにしておくことが好ましい。センサモジュール1付きのカーペット10等は通常は図4のようにロール状に丸めて保管しておき、避難所やイベント会場等のセンサモジュール1の常設が難しい一時的に使用される会場にて、必要時に素早く広げて人等の存在状況確認の為に使用する。このように使用することで、イベント会場内の人数の大まかな把握、人の分布状況、人の通行状況等を確認したり、又は避難所等でセンサモジュール1の設置場所(起動が可能となる位置)に人々を配列させることで避難している人々の数をカウントすることもできる。
【0028】
(実施例2)
存在状況確認システム100においては、複数のセンサモジュール1を、図7に示すように、間隔を空けて長手方向に配置された線状部材、例えば紐11等に結びつける又は接着し、簡易座席の上や背面等に配置させて使用することもできる。この際、座席同士の間隔と紐11の長さが同じとなり、センサモジュール1が座席の中央等のセンサモジュール1の起動が可能となる位置にくるように予め紐11の長さを調整しておくことが好ましい。尚、紐11の代わりに、ある程度の伸縮が可能なゴムやコイルを使用しても構わない。尚、実施例2においても、上述したように、物理アドレスの順番とセンサモジュール1整列配置状態が対応するように設置し、表示端末5上の表示状態もこの整列配置状態と一致させることが望ましい。更に、各センサモジュール1の表面に物理アドレスを印字等し、展開時の設置状況を容易に把握できるようにしておくことが好ましい。紐付けされたセンサモジュール1は通常は図6のように保管用巻き込みロール12にロール状に丸めて保管しておき、一時会場等にて、必要時に素早く伸ばして人等の検知対象の存在状況確認の為に使用する。このように使用することで、イベント会場や避難所内の人数をカウントすることができる。
【0029】
(その他の実施例)
この他、人等の検知対象の存在位置が不定期な場所で使用する場合には、必要数分のセンサモジュール1をロールから引き出し、切り取って使用することも可能である。切り取って使用する場合は、センサモジュール1は紙やポリエステル等の切断しやすい材質にて所定間隔毎に結びつけ、ロール状に保管しておく。又、切り取って使用する場合は特にセンサモジュール1の配置位置が不明瞭になりやすいので、各センサモジュール1表面には鮮明に物理アドレスを表示することが好ましい。又、センサモジュール1背面に両面テープ等を予め接着させておき、椅子、ドア等への設置をし易くしておくことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態に係る存在状況確認システムの構成を示す図である。
【図2】センサモジュールの内部構成を示す図である。
【図3】表示端末上における検知対象の存在状況の表示画面を示す図である。
【図4】センサモジュールの保管状態を示す図である。
【図5】存在状況確認システムの動作を示すフロー図である。
【図6】存在状況確認システムの実施例1の使用状態を示す図である。
【図7】存在状況確認システムの実施例2の使用状態を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1…センサモジュール
2…アクセスポイント
3…IPネットワーク
4…情報管理サーバ
5…表示端末
6…電池
7a,7b…接点
8…処理部
9…通信部
10…カーペット
11…紐
12…保管用巻き込みロール
100…存在状況確認システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力負荷を検出する複数のセンサモジュール、前記センサモジュールより検出を通知されるアクセスポイント、前記通知を基に検知対象の存在状況を確認する情報管理サーバを備えるシステムであって、
前記センサモジュールは、物理アドレスの順番で配置され、前記検出により自らの固有物理アドレスを含む圧力検知データを無線通信にて前記アクセスポイントに送信し、
前記情報管理サーバは、前記アクセスポイントを介して前記圧力検知データを受信し、前記圧力検知データより前記固有物理アドレスを取得し、前記物理アドレスの順番に従って配列された配置図に前記固有物理アドレスの位置を表示するよう指示する
ことを特徴とする存在状況確認システム。
【請求項2】
前記センサモジュールは、
前記アクセスポイントに向けて前記圧力検知データを無線送信する第1のセンサモジュールと、
前記圧力検知データを前記アクセスポイントに中継する第2のセンサモジュール
とを備えることを特徴とする請求項1に記載の存在状況確認システム。
【請求項3】
複数のセンサモジュールが圧力負荷を検出し、アクセスポイントが前記センサモジュールの検出を受信して情報管理サーバに通知し、前記情報管理サーバが前記通知を基に検知対象の存在状況を確認する存在状況確認方法であって、
物理アドレスの順番で配置される前記センサモジュールが圧力を検出して自らの固有物理アドレスを含む圧力検知データを無線通信にて前記アクセスポイントに送信するステップと、
前記アクセスポイントを介して前記情報管理サーバが前記圧力検知データを受信し、前記圧力検知データより前記固有物理アドレスを取得し、前記物理アドレスの順番に従って配列された配置図に前記固有物理アドレスの位置を表示するよう指示するステップ
とを備えることを特徴とする存在状況確認方法。
【請求項4】
前記アクセスポイントに送信するステップは、
第1のセンサモジュールが前記アクセスポイントに向けて前記圧力検知データを無線送信するステップと、
第2のセンサモジュールが前記圧力検知データを前記アクセスポイントに中継するステップ
とを備えることを特徴とする請求項3に記載の存在状況確認方法。
【請求項5】
圧力負荷を検出する複数のセンサモジュール、前記センサモジュールより検出を通知されるアクセスポイント、前記通知を基に検知対象の存在状況を確認する情報管理サーバを備える存在状況確認システムであって、
前記センサモジュールが物理アドレスの順番に従い間隔を空けて二手方向に配置された面状部材
を更に備えることを特徴とする存在状況確認システム。
【請求項6】
圧力負荷を検出する複数のセンサモジュール、前記センサモジュールより検出を通知されるアクセスポイント、前記通知を基に検知対象の存在状況を確認する情報管理サーバを備える存在状況確認システムであって、
前記センサモジュールが物理アドレスの順番に従い間隔を空けて長手方向に配置された線状部材
を更に備えることを特徴とする存在状況確認システム。
【請求項7】
前記センサモジュールは、前記センサモジュールの面又はその近辺に前記センサモジュール固有の物理アドレスが表示されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の存在状況確認システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−92093(P2010−92093A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−258461(P2008−258461)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】