説明

安全ヘルメット

【課題】安全ヘルメットが、ヘルメットへと上下方向に調節可能であるように配置され、中央領域において音を通すことができるように構成されている耳プロテクタを有している。
【解決手段】耳プロテクタ2の上下方向の調節のために、次のように構成されている。前記それぞれの耳プロテクタ2またはヘルメット1の長手側に、少なくとも2つの挿入ピンまたは挿入ピン用の挿入穴をヘルメットの長手方向に等間隔で配置してなる少なくとも1つの列が設けられている。前記ヘルメット1または前記耳プロテクタ2に、少なくとも2つの挿入穴3a、4a、5a;3b、4b、5b;3c、4c、5cまたは挿入ピンのそれぞれをヘルメットの長手方向に等間隔で配置してなる少なくとも2つの列a、b、cが、互いに上下に配置されて設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耳プロテクタを備える安全ヘルメットに関する。
【背景技術】
【0002】
耳プロテクタは、耳を暖かくしてくれるが、周囲の音を知覚することができず、あるいは少なくとも満足に知覚することができないという欠点を有している。したがって、外部の温度に応じて取り外すことができる耳プロテクタを備えるヘルメットが知られている。
【0003】
しかしながら、多くのスポーツ、特には冬季のスポーツにおいて、これは不可能であることが多い。また、耳プロテクタは、冬季のスポーツのユーザの平均的な身体構造上の特徴に適合するようにされているため、耳の位置および大きさが異なる場合、耳を完全には覆わないことも多く、低温に対する最適な保護が保証されない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、周囲の音の知覚を損なうことなく低温に対する最適な保護を提供する耳プロテクタ付きのヘルメットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これは、本発明によれば、請求項1に記載の安全ヘルメットによって達成される。本発明の安全ヘルメットの有利な実施形態が、従属請求項に示されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の安全ヘルメットにおいては、耳プロテクタが、上下方向に調節可能であるようにヘルメットに配置される。さらに、耳プロテクタの中央領域が、好ましくは中央領域の断熱材料の開口を通じて音を通すことができるように構成される。
【0007】
その結果、耳プロテクタを、着用時に周囲の音の最適な知覚が保証されるように、音を通す中央領域がヘルメット着用者の聴覚伝導路の高さに位置するように調節することができる。同時に、ヘルメット着用者が、耳プロテクタを上下方向に調節することによって、耳全体が可能な限り最良に覆われるように保証でき、したがって低温に対する最適な保護を保証することができる。
【0008】
上下方向の調節のために、例えばベルクロ(Velcro)閉じ具を耳プロテクタとヘルメット殻との間に設けることができる。しかしながら、確実な固定を保証するために、それぞれの耳プロテクタが、好ましくはヘルメットの長手方向に列をなして配置された少なくとも2つの挿入ピンまたは挿入穴を有しており、ヘルメットの各側が、それぞれの耳プロテクタの少なくとも2つの挿入ピンを挿入するため、またはそれぞれの耳プロテクタの少なくとも2つの挿入穴へと挿入するために、ヘルメットの長手方向に等間隔で列をなして配置された少なくとも2つの挿入穴または挿入ピンを有している。上下方向の調節のために、ヘルメットまたは耳プロテクタのいずれかに、少なくとも2つの挿入穴または挿入ピンを、ヘルメットの長手方向において同じ距離に、しかしながら前記最初の2つの挿入穴または挿入ピンから上下方向にずらして配置してなる少なくとも1つのさらなる列が設けられている。ここで、「少なくとも2つ」は、「2つ以上」を意味するものと理解すべきである。
【0009】
例えば、それぞれの耳プロテクタに、3つの挿入穴をヘルメットの長手方向にずらし、すなわち列をなすように配置して設けることができる一方で、ヘルメットは、例えば外側に、例えばそれぞれが3つの挿入ピンからなる3つの列を、互いに上下に配置して有している。また、それぞれの耳プロテクタに、3列の挿入穴を互いに上下に配置して備え、ヘルメットに1列の挿入ピンを備えることもできる。
【0010】
しかしながら、好ましくは、それぞれの耳プロテクタが、例えば3つの挿入ピンをヘルメットの長手方向の列に配置して有する一方で、ヘルメットの内側に、例えばそれぞれが3つの挿入穴からなる3つの列が上下方向にずらされて設けられる。このようにして、特定の耳プロテクタの3つのピンを、ヘルメットの内側の所望の高さの3つの挿入穴へと挿入することができる。
【0011】
例えば、ヘルメットの各列の挿入穴の数が特定の耳プロテクタの挿入ピンの数よりも多い(すなわち、例えばそれぞれの耳プロテクタに2つのピンが存在し、ヘルメットの各列に4つの挿入穴が存在する)ならば、耳プロテクタを、上下方向だけでなく、ヘルメットの長手方向にも調節することができる。
【0012】
ヘルメット殻は、特にはヘルメットの後ろ側が襟首に向かって下方へと延びている場合に、耳の上方の内側に弧状の凹所を有することが多い。
【0013】
したがって、ヘルメットの長手方向の列にて配置される少なくとも3つの挿入ピンまたは挿入穴、ならびにこれらの挿入ピンまたは挿入穴から上下方向にずらして配置される挿入ピンまたは挿入穴も、やはり前記凹所に従って弧状に配置されるのが好ましい。
【0014】
耳プロテクタは、断熱材料によって構成される。この目的のため、それぞれの耳プロテクタが、例えばプラスチック発泡体に例えば皮革または布などで製作されたカバーを設けて製作された例えば剛な芯を有することができる。
【0015】
耳プロテクタの挿入ピンは、好ましくは、フレームまたは帯状部に設けられ、フレームまたは帯状部へと、断熱材料が例えば縫合または接着によって固定される。帯状部またはフレームは、挿入ピンと一緒に、好ましくは射出成型のプラスチック部品として一体に構成される。ヘルメットの両側の耳プロテクタを、例えば任意によりヘルメット殻の下方の襟首領域を延びるストラップ、例えばパッドによって、互いに接続することができる。
【0016】
耳プロテクタの中央領域を、音を通すことができるようにするために、好ましくは薄くて音を通すことができる布地によって封じられた開口が、断熱材料(すなわち、例えば発泡体コア)の中央領域に設けられる。
【0017】
互いに上下に位置する少なくとも2つの列にて配置される挿入穴は、好ましくは、ヘルメット殻の内側に配置される取り付け座に設けられる。板によって構成することができる取り付け座を、ヘルメット殻へと固定することができる。この目的のため、ヘルメット殻の少なくとも内側をプラスチック発泡体で構成でき、取り付け座に、発泡時に発泡体材料へと埋め込むことができるアンカーを備えることができる。アンカーを備える取り付け座を、射出成型のプラスチック部品によって構成することができる。
【0018】
ヘルメットの内側に、耳プロテクタの帯状部をも覆うパッドとして広がる柔軟な内張りを設けることができる。
【0019】
本発明の安全ヘルメットは、特には、スノーボーダーまたはスキーヤーなどといった冬季スポーツのユーザを意図している。しかしながら、例えば自転車用ヘルメットとして、あるいは建設現場において、低い外部温度において最適な聴覚が重要であるあらゆる場所で使用することができる。
【0020】
以下で、本発明の安全ヘルメットの実施形態を、添付の図面を参照しつつ例としてさらに詳しく説明する。
【実施例1】
【0021】
図1によれば、ヘルメット殻(1)を備える安全ヘルメットが、耳プロテクタを有しており、この図においては、ヘルメットの片側の耳プロテクタ(2)のみが示されている。
【0022】
この図は、ヘルメットの基本的な部品のみを示している。すなわち、ヘルメットは、通常あごひもをさらに有しており、任意により、通気穴および頭部の外周に合わせた調節のための装置(例えば、ヘルメットの内部に配置されたプラスチックリングへと作用する回転ノブによる)を有している。あごひもは、耳プロテクタ(2)を耳へと押し付けるべく、耳プロテクタ(2)の外側のループを通して案内することができる。
【0023】
図1〜図3によれば、耳プロテクタ(2)が、3つの位置へと上下方向に調節できるようにヘルメット殻(1)へと固定され、図1が、可能な3つの上下位置のうちの最も高い位置を示しており、図2が真ん中の位置を、図3が最も下方の位置を示している。
【0024】
図1〜図3および図5によれば、ヘルメット殻(1)の内側に、ヘルメットの長手方向に延びる3つの列a、b、cが設けられており、各列が、3つの挿入穴3a、4a、5a;3b、4b、5b;3c、4c、および5cを備えている。各列a、b、およびcの3つの挿入穴は、等間隔である。
【0025】
ヘルメット着用者の耳(図示せず)の上方の変わり目領域において、ヘルメット殻(1)は、下方へと延びる後ろ側に弧状の凹所(7)を有している。したがって、各列a、b、およびcの挿入穴も、同じ様相で弧状に配置されている。
【0026】
それぞれの耳プロテクタ(2)は、帯状部(8)および断熱部(9)を有している。断熱部(9)は、例えば皮革によって覆われている発泡体コアを有することができる。断熱部(9)の中央には、周囲の音を知覚することができるよう、開口(10)が設けられている。開口(10)は、薄い布地で封じることができる。断熱部(9)は、例えば縫合または接着によって帯状部(8)へと取り付けることが可能である。
【0027】
帯状部(8)は、3つの挿入ピン(11、12、13)を有している。帯状部(8)は、挿入ピンと共に、一体の射出成型のプラスチック部品として構成されている。3つの挿入ピンは、ヘルメット殻(1)の内側の各列(a、b、およびc)の挿入穴(3a、4a、5a;3b、4b、5b;3c、4c、5c)と同様に、帯状部(8)に等間隔で配置されている。さらに、挿入ピン(11、12、13)は、挿入穴(3a、4a、5a;3b、4b、5b;3c、4c、5c)と同じ曲率を有する円弧に配置されている。
【0028】
図5によれば、挿入穴(3a、4a、5a;3b、4b、5b;ならびに3c、4c、5c)は、ヘルメット殻(1)にほぼ面平行に広がってヘルメット殻(1)に固定されている板状の取り付け座(14)に設けられている。ヘルメット殻(1)は、内側にプラスチック発泡体層(15)を有しており、このプラスチック発泡体層(15)に、取り付け座(14)の例えばかご状のアンカー(図示せず)が、発泡時の埋め込みによって固定されている。
【0029】
図6の挿入ピン(11)によって示されているとおり、それぞれの挿入ピンは、キノコ状の頭部(16)を有している。挿入ピンとの係合のために、挿入穴は、図6による挿入穴(3a)のように、挿入時に広がって、挿入されたキノコ状の頭部(16)の背後に係合するように、弾性的に構成されている。この目的のため、板状の取り付け座(14)は、挿入穴(3a)によって示されているように、挿入穴へと開くスロット(17)を挿入穴の周囲に有している。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】安全ヘルメットの側面図であり、耳プロテクタが図2及び図3と異なる上下方向の位置にある。
【図2】安全ヘルメットの側面図であり、耳プロテクタが図1及び図3と異なる上下方向の位置にある。
【図3】安全ヘルメットの側面図であり、耳プロテクタが図1及び図2と異なる上下方向の位置にある。
【図4】耳プロテクタの側面図である。
【図5】ヘルメットの内側の挿入穴の図である。
【図6】耳プロテクタの一部分の断面であり、挿入ピンがヘルメットの内側の挿入穴へと挿入されている。
【符号の説明】
【0031】
1 ヘルメット
2 耳プロテクタ
11〜13 挿入ピン
3a、4a、5a;3b、4b、5b;3c、4c、5c 挿入穴
7 凹所
8 帯状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耳プロテクタ(2)を備える安全ヘルメットであって、
前記耳プロテクタ(2)が、上下方向に調節可能であるように前記ヘルメットへと配置され、中央領域において音を通すことができるように構成されていることを特徴とする安全ヘルメット。
【請求項2】
前記耳プロテクタ(2)の上下方向の調節のために、
前記それぞれの耳プロテクタ(2)または前記ヘルメット(1)の長手側に、少なくとも2つの挿入ピン(11〜13)または挿入ピン用の挿入穴をヘルメットの長手方向に等間隔で配置してなる少なくとも1つの列が設けられ、
前記ヘルメット(1)または前記耳プロテクタ(2)に、少なくとも2つの挿入穴(3a、4a、5a;3b、4b、5b;3c、4c、5c)または挿入ピンのそれぞれをヘルメットの長手方向に等間隔で配置してなる少なくとも2つの列(a、b、c)が、互いに上下に配置されて設けられていることを特徴とする請求項1に記載の安全ヘルメット。
【請求項3】
前記それぞれの耳プロテクタ(2)が、前記少なくとも2つの挿入ピン(11、12、13)をヘルメットの長手方向の列に配置して有しており、
前記挿入穴(3a、4a、5a;3b、4b、5b;3c、4c、5c)をヘルメットの長手方向に等間隔で、しかしながら上下方向にずらして配置してなる少なくとも2つの列(a、b、c)が、ヘルメット(1)の内側に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の安全ヘルメット。
【請求項4】
前記少なくとも3つの挿入ピン(11、12、13)または前記挿入穴(3a、4a、5a;3b、4b、5b;3c、4c、5c)が、各列に設けられていることを特徴とする請求項2または3に記載の安全ヘルメット。
【請求項5】
ヘルメット着用者の耳の上方の領域に弧状の凹所(7)を有しており、
列に配置された前記少なくとも3つの挿入ピン(11、12、13)または前記挿入穴(3a、4a、5a;3b、4b、5b;3c、4c、5c)が、前記凹所(7)に従って弧状に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の安全ヘルメット。
【請求項6】
前記それぞれの耳プロテクタ(2)が、上端に帯状部(8)を有しており、
前記ヘルメットの長手方向の列にて配置された前記挿入ピン(11、12、13)または前記挿入穴が、前記帯状部(8)に設けられていることを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載の安全ヘルメット。
【請求項7】
前記帯状部(8)が、前記挿入ピン(11、12、13)または前記挿入穴と共に、射出成型のプラスチック部品として構成されていることを特徴とする請求項6に記載の安全ヘルメット。
【請求項8】
前記挿入穴(3a、4a、5a;3b、4b、5b;3c、4c、5c)が、前記ヘルメット殻(1)の内側へと固定された取り付け座(14)に設けられていることを特徴とする請求項3から8のいずれか一項に記載の安全ヘルメット。
【請求項9】
前記ヘルメットの少なくとも内側が発泡体材料で構成され、
前記取り付け座(14)が、発泡時に発泡体材料へと埋め込むことができるアンカーを備えていることを特徴とする請求項8に記載の安全ヘルメット。
【請求項10】
前記アンカーを備える取り付け座(14)が、射出成型のプラスチック部品で構成されていることを特徴とする請求項9に記載の安全ヘルメット。
【請求項11】
前記取り付け座(14)が、板状に構成されていることを特徴とする請求項8から10のいずれか一項に記載の安全ヘルメット。
【請求項12】
前記挿入ピン(11、12、13)の端部が、キノコ状の頭部(16)を有しており、
挿入穴(3a、4a、5a;3b、4b、5b;3c、4c、5c)が、キノコ状の頭部の挿入時に広がって、挿入されたキノコ状の頭部(16)の背後に係合するように、弾性的に構成されていることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の安全ヘルメット。
【請求項13】
前記取り付け座(14)の挿入穴(3a、4a、5a;3b、4b、5b;3c、4c、5c)の周囲の領域に、挿入穴へと開いているスロット(17)が設けられていることを特徴とする請求項9から13のいずれか一項に記載の安全ヘルメット。
【請求項14】
断熱部(10)が、前記耳プロテクタ(2)の前記帯状部(8)へと取り付けられていることを特徴とする請求項6または7に記載の安全ヘルメット。
【請求項15】
前記断熱部(10)の中央領域に開口(10)が設けられていることを特徴とする請求項14に記載の安全ヘルメット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−46796(P2009−46796A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206490(P2008−206490)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VELCRO
【出願人】(507208152)ヘッド・ジャーマニー・ゲーエムベーハー (3)
【氏名又は名称原語表記】HEAD GERMANY GMBH
【住所又は居所原語表記】VELASKOSTRASSE 8,D−85622 FELDKIRCHEN,GERMANY
【Fターム(参考)】