説明

安全笛付き摘み

【課題】 簡素な設計と少ない部品と低コストで生産でき、調理時に発生する蒸気で笛が鳴ることで沸騰を知らせ、調理器具内部圧力を調整できる調圧ダンパー内蔵式の安全性の高い安全笛付き摘みを提供することを目的とする。
【解決手段】
中央に貫通孔を有する螺子部と、螺子部が螺着され貫通孔と連通する笛貫通部を備えた笛基台部と、螺子部と笛基台部の対向面に形成された警笛発生部と、下端部に切り欠きを有し笛基台部を囲繞する蒸気排出カバーと、笛基台部の外周螺着部に螺着される下部螺着部と下部螺着部に段差部を介して連設された拡径部と段差部に形成された蒸気口とを有する摘み本体と、周壁と天板と周壁の下部に摘み本体の内壁下部の内蓋嵌着部と係合される係合部とを有する内蓋と、上蓋周壁と底板と上蓋周壁の下部に形設され摘み本体の内壁上部に係合する上蓋係合部とを有する上蓋と、を備える構成を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍋蓋等に取り付けられ、安全性が高く、蒸気により警笛を発する安全笛付き摘みに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、一部の高級で気密性の高い調理器具には蒸気を利用して音を出し沸騰を知らせ、沸騰後においては、火力を弱にして省エネルギーな調理を行うための笛吹摘みがあった。(特許文献1)には、「先端面に通孔を有し、かつ付帯田浦側より表面側に通説された中空のねじ部材と、そのねじ部材と螺合する凹状の底部を有する円筒形の周囲に把持部を一体形成し、底部側壁に噴出口を開設した本体と、該本体内に回動かつ上下動自在に嵌挿された内部に空間を有する栓状の操作部材とからなる鍋蓋用摘みにおいて、上記円筒部の底部内周囲に環状溝を形成するとともに、底板中央に笛孔を穿設し、その笛孔の開閉部材を上記操作部材の内部に突設する一方、上記環状溝に収まる操作部材の下部側壁に上記噴出口と重合する複数の開放口を横方向に設けてなることを特徴とする鍋蓋用警笛付つまみ」が開示されている。また、(特許文献2)には、「煮こぼれの発生を阻止するために、炊事空間の圧力が上昇して、鍋本体とふたの隙間から煮こぼれが発生する前に、炊事空間の水蒸気を排出して圧力を下げる事により、鍋本体とふたの隙間からの煮こぼれの発生を防止すると共に、凝結した一部の水蒸気を炊事空間内に還流させるような機構を持ったつまみを備えた炊事用鍋」が開示されている。
しかしながら上記従来の技術においては、以下のような課題を有していた。
(1)(特許文献1)に開示の技術は、調圧機構がないので、蒸気通通路を閉にした状態で使用すると沸騰後に噴きこぼれの恐れがあり、蒸気通路を閉にしたまま冷却される場合、調理器具内部の圧力が下がるので蓋の取り外しが困難になるという課題を有していた。また、鍋の気密性、蓋の重量、熱源の火力調整に対応できない場合、水滴が飛び散り周りが汚れるので、防止するために蓋をずらす等をする必要があり利便性に欠けるという課題を有している。
(2)(特許文献2)に開示の技術は、調理器具の内部圧力の上昇した場合は蒸気を排出するので噴きこぼれ等が起こらないが、警笛が鳴らないので側に居なければ加熱の調整のタイミングが分からず、エネルギーを無駄に消費する可能性が高いという課題を有していた。また、減圧時の調圧機能がないので、調理基部の内部圧力が下がった場合、蓋の取り外しが困難であるという課題を有している。
また、従来の笛付きセンサー摘みは、蒸気が直接上または横に抜ける構造の場合、開閉の操作において蒸気排出熱で火傷の危険性があり、デザイン上もフック式摘み等は難しいという課題を有していた。それらの課題を解決するため、本発明者は鋭意研究し、「蓋を持ち上げるだけで蓋の自重により蒸気通路を開状態にできるため、開と閉を混同することなく間違った状態での使用を防止できると共に、蒸気放出部をつまみの底部に配置することで誤って放出蒸気に手等が触れるのを防止でき使用性及び安全性に優れた鍋蓋等の警笛付きつまみ」の発明を完成し、特許を取得した(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】

【特許文献1】実開昭63−183924号公報
【特許文献2】特開2005−205136号公報
【特許文献3】特開2008−86444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
(1)(特許文献3)に開示の技術は、蒸気の排出口が下向きであるので、蒸気通路を開いた際に、蒸気により火傷する危険性があり改善して欲しいという要望があった。
(2)握力の弱った人でも重い蓋が持ち上げ易く、開閉が容易で安全に使用できるフック式の摘みが欲しいという要望があった。
【0005】
本発明は上記要望を解決するもので、簡素な設計と少ない部品と低コストで生産でき、調理時に発生する蒸気により笛が鳴ることで沸騰を知らせ、調理器具内部の圧力を調整できる調圧ダンパー内蔵式の安全性の高い安全笛付き摘みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来の課題を解決するために、本発明の安全笛付き摘みは、以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載の安全笛付き摘みは、(a)中央に貫通孔を有する螺子部と、前記螺子部が蓋の摘み取り付け孔を介して螺着されるとともに前記貫通孔と連通する笛貫通部を備えた笛基台部と、前記螺子部と前記笛基台部の対向面に形成された凹部からなる警笛発生部と、(b)下端部に蒸気排出用の切り欠きを有し、前記笛基台部を同芯状に囲繞する蒸気排出カバーと、(c)前記笛基台部の外周螺着部に螺着される下部螺着部と、前記下部螺着部に段差部を介して連設された拡径部と、前記段差部に形成された蒸気口と、を有する摘み本体と、(d)周壁と、天板と、前記周壁の下部に前記摘み本体の内壁下部の内蓋嵌着部と係合される係合部と、を有する内蓋と、(e)上蓋周壁と、底板と、前記上蓋周壁の下部に形設され前記摘み本体の内壁上部の係合溝に係合する上蓋係合部と、を有する上蓋と、を備える構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)摘み内部を通過する蒸気が、摘み内部で拡散するので、蒸気の温度が下がり、更に、蒸気排出カバーの切り欠きから鍋蓋上面に沿って排出されるので、蒸気が摘み上面や側面から直接噴出する従来の構造のものに比べ火傷の危険性を大幅に下げることができ安全性に優れる。
(2)沸騰すると警笛発生部から音が鳴り沸騰を知らせるので、沸騰後の火力の調整がスムーズに行え、無駄なエネルギーの浪費をなくすことができる。
(3)蒸気が拡散する部分の構造が二重壁とすることで、素手で摘みを持ち上げる場合でも熱くなく、安全性を高めることができる。
(4)蒸気の排出孔が摘みの上面や側面にないので、摘みの形状に関係なくフック式の摘み等も作成が可能で、様々なデザインに対応することができる。
(5)蒸気と共に摘み内部に入った煮汁等は下側から流れ、高温の蒸気が摘み内部に拡散するので細菌の発生も起こり難く、長時間使用しない場合は、容易に分解でき、内部を洗浄及び乾燥を容易に行うことができるので、衛生面にも優れている。
【0007】
ここで、螺子部、笛基台部、摘み本体、蒸気排出カバー、内蓋の材質としては、耐熱性及び耐食性を有する合成樹脂や硬質ゴムが好適に用いられる。笛基台部の笛貫通部は凹部に開口させ、その周壁は隆起させ、更に、その頂面は平坦な開閉ダンパーの陽動面に形成される。
また、開閉ダンパーの下面は摺動し易く、且つ、笛基台部の摺動面に密着して調圧ができるように摺動面全体を覆設する大きさに形成される。
上蓋と内蓋の対向面は平坦でも良いが、内蓋の高熱が上蓋に伝熱するのを緩和するために断熱層として空気層を形成するように、少なくともいずれか一方に突起や突条を設けても良い。
内蓋の周壁を摘み本体の内壁は密接するように形成される。内壁は硬質ゴムで形成しても良い。これにより、内壁内部に笛基台部の笛貫通部から噴出した蒸気の熱が摘み本体の外部に伝熱するのを防止できる。
上蓋の周壁と摘み本体の上蓋配設部は、密接できるように上蓋を上蓋配設部内側に嵌合若しくは、上蓋配設部の上蓋(外側)から覆設するように形成される。高温の蒸気が摘み本体の上蓋配設部と上蓋との隙間から洩れて事故を起こすのを防ぐためである。
【0008】
蒸気排出カバーの切り欠きは、1乃至複数が形成される。切り欠きが複数形成された場合、放出される蒸気が拡散されるとともに、その圧力が減圧されるとともに、蒸気は鍋蓋上面に沿って多方面に放出されるので火傷の危険性をより下げることができる。また、組み立て時に切り欠きの位置と摘み本体の蒸気口の位置をずらすことで、蒸気の移動距離を伸ばし、温度を下げてもよい。
また、蒸気排出カバーの切り欠きの周縁部に、蓋の外周方向に断面コの字形に突出する排出口を形設することで、蒸気が排出されるまでの移動距離が延びるので、より安全性を高めることもできる。排出口は、切り欠きの周縁部を延設して形成しても良いし、別途形成したものを取り付けても良い。
【0009】
警笛発生部としては、蒸気の通過により警笛を発生する種々の装置を用いてもよいし、螺子部と笛基台部の対向面に空間を設けることで警笛を発生するようにしてもよい。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の安全笛付き摘みであって、(a)前記内蓋の前記天板に穿設された回転軸の軸挿部と、(b)前記上蓋の前記底板に穿設された上蓋回転軸挿着部と、(c)平板に穿設されたダンパー孔と、前記平板の端部に穿設された回転軸挿通孔と、を備え、前記平板の下面が前記笛基台部の前記笛貫通部の周壁の上面を左右に摺動する開閉ダンパーと、(d)前記上蓋回転軸挿着部と、前記内蓋の前記軸挿部とを貫通して、前記開閉ダンパーの前記回転軸挿通孔に固定される回転軸と、(e)一端部が前記回転軸の頂部と固定され、前記上蓋の底板上面に配設された開閉レバーと、を備える構成を有している。
この構成により、請求項1で得られる作用に加え以下の作用が得られる。
(1)開閉ダンパーを開閉レバーで操作することにより、簡単に笛貫通部を開閉できるので、調理方法に合わせて蓋の気密性の有無を選択することができる。
(2)開閉ダンパーが閉の状態で熱源を止めると調理器具内部が減圧されるので、自動的に開閉ダンパーと笛基台部の摺動部が吸着状態になり気密性を保ち、冷めにくくすることができるとともに、蓋を開ける際など気密状態を解除するときは、開閉ダンパーを開にするだけで気圧差をなくして容易に開けることができる。
(3)開閉ダンパーが、上下可動とすることで、蒸気圧により鍋蓋が持ち上がる前に開閉ダンパーが持ち上がり、余分な蒸気を逃がすので、調理器具内部の圧力を一定に保つことができ、煮汁等の吹零れや蓋からの飛び散りを防止することができるとともに、無駄なエネルギーの放出を抑えることができる。
(4)鍋の構造や蓋の重さ等により、強い気密性を確保する場合は、固定レバーを固定位置に移動するだけで、簡単に閉状態をロックすることができる。
【0011】
回転軸、開閉ダンパーの材質としては、螺子部、笛基台部、摘み本体、蒸気排出カバーと同様に、耐熱性や耐食性に優れる合成樹脂やステンレス等の金属、或いはその組み合わせ等が用いられる。
開閉ダンパーの形状としては、笛貫通部を塞ぐことができればどのような形状でも良く、円盤状、板状、扇状等の種々の形状が挙げられる。
【0012】
上蓋には、開閉レバーの開閉の位置が分かるような表示部を形成してもよい。また、上から見て開閉の状態が分かりやすいシールを底板に貼っても良い。
【0013】
開閉ダンパーは、調理器具内部の蒸気の圧力によって上下に移動動できるようにしても良い。蒸気圧による上下動としては、開閉ダンパーの自重による方法、バネ等の弾性体を開閉ダンパーの上側に設置し、弾性力により上下動させる方法等がある。このとき、開閉ダンパーの浮き上がりを固定する固定レバーを形成しても良い。開閉ダンパーを閉位置にした状態で、固定レバーを摘み本体等に固定することで、鍋の形状や蓋の重さによっては、強い気密性を得ることができる。
また、開閉ダンパーの自重が軽く、圧力の調節ができない場合は、開閉ダンパーにボルトやナット等を錘として取り付けることで、調理器具内部の圧力を容易に調圧できる。この場合、開閉ダンパーの成型時に、ねじ山をきっておけば、錘の取り付けや調整が簡単となる。
安全笛付き摘みが用いられる蓋が、極厚で重い場合や薄く軽い場合等、開閉ダンパーの調圧の度合いを変更したい場合は、開閉ダンパーの重量や錘の重さ(個数)、弾性体の弾性力を調整することで容易に調圧することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明の安全笛付き摘みによれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1によれば、
(1)蒸気が摘み内部で拡散し、温度が下がった状態で鍋蓋上面に沿って排出されるとともに、蒸気が拡散する部分が二重壁であるので火傷の危険性が小さく、安全性の高い安全笛付き摘みを提供することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、
(1)レバーの操作により蒸気通路の開閉が容易であるので、減圧時の気圧差も容易になくすことができるとともに、調理器具内部の蒸気圧が自動で調節されるので、吹零れや飛び散りを防止することができ、無駄なエネルギー放出を抑えることができる安全笛付き摘みを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態1における安全笛付き摘みの上方から見た分解斜視図
【図2】実施の形態1における安全笛付き摘みの下方から見た分解斜視図
【図3】実施の形態1の安全笛付き摘みの全体斜視図
【図4】実施の形態1の安全笛付き摘みの開閉レバーを閉状態にした時の要部断面図
【図5】(a)実施の形態1の安全笛付き摘みの開閉レバーを閉状態にした時の要部断面図(b)実施の形態1の安全笛付き摘みの開閉レバーが閉状態で過熱された蒸気を逃がす時の要部断面図
【図6】実施の形態1の安全笛付き摘みの開閉ダンパーが固定された時の要部断面図
【図7】実施の形態2の安全笛付き摘みの要部断面図
【図8】実施の形態3の安全笛付き摘みの側面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しながら説明する。
なお、本発明はこの実施の形態に限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態1における安全笛付き摘みの上方から見た分解斜視図であり、図2は本実施の形態1における安全笛付き摘みの下方から見た分解斜視図であり、図3は本実施の形態1の安全笛付き摘みの全体斜視図である。
図1において、1は本実施の形態1における安全笛付摘み、2は蓋部Aに形成された摘み取付け孔Bに下方から挿入され蓋部Aに固定される螺子部、2aは螺子部2の軸芯部に形成された貫通孔、2bは螺子部2の外周に形成される螺子溝、3は蓋部Aの上方から蓋部Aを挟んで螺子部2と螺着する笛基台部、3aは笛基台部3の上端側中央に貫設される笛貫通部である。笛貫通部3aの上部の摺動面3cは膨出状に形成され、その表面は面一に形成されている。3bは笛基台部3の上部外周に形成される外周螺着部、4は笛基台部3の下部に覆設する蒸気排出カバー、4aは蒸気排出カバー4の下部に形成される切り欠き、4dは蒸気排出カバー4に形成された切り欠き4aの周縁部、5は笛基台部3の外周螺着部3bに螺着される摘み本体、5aは笛基台部3の外周螺着部3bと螺合する摘み本体5の下部内側に形成された下部螺合部、5bは下部螺合部5aと連設し段差部5fで大きく形成された拡径部、5cは段差部5fに形成された蒸気口、5dは拡径部5bと段差状に拡径されて形成された上蓋配設部、6は笛基台部3の笛貫通部3aを開閉する開閉ダンパー、開閉ダンパー6の下面は平坦に形成され笛貫通部3aの摺動面3cの上面を摺動する。6aは開閉ダンパー6に穿設されたダンパー孔、6bは開閉ダンパー6の端部に穿設される回転軸挿通孔、6cは開閉ダンパー6の下面に突設される固定レバー、6dはダンパー孔6aや回転軸挿通孔6bが穿設される開閉ダンパー6の平板、7は摘み本体5の内壁に嵌合される内蓋、7aは内蓋7の周壁、7bは内蓋7が摘み本体5の内蓋嵌着部5g(図4参照)と係合するための係合部、7cは内蓋の7上面にある天板、7dは天板7cに穿設され回転軸挿通孔6bと連通する軸挿部、8は内蓋7の上面に設置され摘み本体5の内壁上面に嵌着された上蓋、8aは上蓋8の底板、8bは底板8aの外周に形成された上蓋周壁、8cは底板8aに穿設され軸挿部7dと連通する上蓋回転軸挿着部、8dは底板8aの上蓋周壁8b側に形成された後述する開閉レバーの開閉状態を表示する表示部、8eは上蓋周壁8bの側面下部に形成され摘み本体5の上蓋配設部5dの上部係合部5hに係合される上蓋係合部、9は上蓋8の底板8a上面に設置され表示部8dの開印と閉印の間を回動する開閉レバー、9aは上蓋回転軸挿着部8cと連通するように開閉レバー9に形成された回転軸挿着部、10は開閉レバー9と上蓋8と内蓋7に挿通され開閉ダンパー6の回転軸挿通孔6bで係止される回転軸、10aは回転軸の上端側に形成され回転軸挿着部9aと嵌着される回転軸頂部、10bは回転軸10の下側に切削された回り止部、10cは回転軸10の下部に形成された割り溝、11は回転軸10に挿通し開閉ダンパー6の上側で回り止部10bに係止されるバネ、12は笛基台部3と蓋部Aとの間に配置される封止部、Cは蓋部Aの外周に沿って形成された受け溝である。
また、図2において、2cは螺合部2の内壁、3dは笛基台部3と螺着溝2bと螺合するための内部螺合部、4bは摘み本体5と嵌合させるためのカバー係止部、5eはカバー係止部4bと嵌合する本体係止部である。
【0018】
図4は本実施の形態1の安全笛付き摘みの開閉レバーを開状態にした時の要部断面図であり、図5(a)は本実施の形態1の安全笛付き摘みの開閉レバーを閉状態にした時の要部断面図であり、図5(b)は本実施の形態1の安全笛付き摘みが閉状態で過熱された蒸気を逃がす時の要部断面図であり、図6は本実施の形態1の安全笛付き摘みの開閉ダンパーが固定された時の要部断面図である。
図1で説明したものと同様のものは、同じ符号を付し説明を省略する。
2dは内壁2cで形成された第1の蒸気通路、4cは蒸気排出カバー4と摘み本体5とで形成される第3の蒸気通路、5fは摘み本体5の下部螺着部5aと拡径部5bの段差部、5gは摘み本体5と内蓋7の係合部7bが係合される内蓋嵌着部、5hは摘み本体5と上蓋8の上蓋係合部8eが係合される上部係合部、5iは開閉ダンパー6の固定レバー6cが固定される摘み本体5に形成された固定部、7eは内蓋7と笛基台部3とで形成される第2の蒸気通路、13は蒸気、14は上面凹部2e及び笛基台部3の内壁で形成される警笛発生部である。
【0019】
以上のように構成された本実施の形態1の安全笛付き摘み1について、その組み立てを図1を用いて説明する。
螺子部2を蓋部Aの摘み取付け孔Bに下方から挿入し、上方から封止部12を介して笛基台部3と螺合し、蓋部に固定する。
次に、笛基台部3を覆うように蒸気排出カバー4を摘み本体5の下部螺合部5aを笛基台部3の外周螺着部3bに螺合させ、摘み本体5によって蒸気排出カバー4を上側から固定する。
次いで、内蓋7の軸挿部7d、上蓋8の上蓋回転軸装着部8c、開閉レバー9の回転軸挿着部9aがそれぞれ重なるようにし、上方から回転軸10を挿通して連結する。連結後に、回転軸10にバネ11を挿着し、次いで、開閉ダンパー6の回転軸挿通孔6bに回転軸10を挿着する。
開閉ダンパー6、バネ11、内蓋7、上蓋8、開閉レバー9を回転軸10で連結した状態で、内蓋7を摘み本体5の内側の内蓋嵌着部5gと係合部7bを介して係合させ、内蓋7の上面側に、上蓋8の上蓋係合部8eを摘み本体5の上部係合部5hと係合させる。
これにより、螺子部2と笛基台部3は蓋部Aに固定されるとともに、開閉ダンパー6は開閉レバー9により摺動自在に構成され、更に、バネ11による弾性により、上下方向にも可動することができる。
このとき、開閉ダンパー6を上下方向に可動とするものとしては、バネ11のようなコイルバネに限定されるものではなく、板バネ等を用いてもよい。また、蓋部Aの重さによっては、バネ11の強度を調節することで、調理器具内部の蒸気圧の調圧の度合いを容易にコントロールすることができる。
また、調圧時に万一吹零れ、蒸気排出カバーから煮汁等が流れ出て、蓋部A表面の汚れと共に蓋部A表面を流れ落ちる場合でも、蓋部Aに受け部Cを備えるので、煮汁等が受け部Cに溜まり、煮汁等が調理器具内に戻ることを防ぐことができる。受け部Cが無い場合に吹零れた煮汁が調理器具内に戻るのを防ぐ方法としては、調理器具の径より大きい蓋部Aを用いる方法、調理器具の周囲に煮汁が落ちるように蓋部Aの周囲に庇を設ける方法等がある。
【0020】
次に、安全笛付き摘み1の開閉及び蒸気の流れについて図2〜4を用いて説明する。
蓋部Aで蓋をした鍋等の調理器具を加熱沸騰させる。このとき、開閉レバー9を表示部8dの開側に合わせておくことで、開閉ダンパー6のダンパー孔6aと笛基台部3の笛貫通部3aが重なり、蒸気通路が外部まで貫通状態となる。すると、蒸気13が第1の蒸気通路2d、貫通孔2aを通り、上面凹部2e及び笛基台部3の内壁で形成された警笛発生部14を通過した時に蒸気圧により警笛が出る。次に笛貫通部3a及びダンパー孔6aを抜けた蒸気13は、内蓋7の天板7cに当たり、第2の蒸気通路7eで拡散し、蒸気口5cから第3の蒸気通路4cを通り、摘みを持つ位置より離れた下側の蒸気排出カバー4の切り欠き4aから蓋部Aの上面にそって排出される。
このとき、第2の蒸気通路7eの容積は蓋とのバランスも考慮すると、直径で30〜80mm、高さ20〜80mm、容積で14〜400ccあればよいが、これに限定されるものではない。
また、蒸気排出カバー4の切り欠き4aの周縁部4dに、蓋部Aの外周方向に断面コの字形に突出する排出口を形設することで、蒸気13が排出されるまでの移動距離が延びるので、安全性を高めることができる。排出口は、切り欠きの周縁部4dを延設して形成しても良いし、別途形成したものを取り付けても良い。
【0021】
警笛が鳴った後は、強い火力が必要無いため、加熱調理器の加熱を弱め、開閉レバー9を表示部8dの閉側に合わせることで、開閉ダンパー6の平板6dを摺動させ平板6dによって蒸気の抜け道がふさがれ、警笛が止まる(図5(a)参照)。この状態で加熱を続け、蒸気圧が上昇していくと、バネ11が開閉ダンパー6を押さえる力よりも蒸気圧が勝るので、開閉ダンパー6が浮上する。そのため、蓋部Aが持ち上がる前に蒸気を少しだけ逃がすことで調理器具の内部圧を一定に保ち、安全弁の役目をする。
蒸気を逃がしたくない場合は、必要に応じて開閉ダンパー6の固定レバー6cを摘み本体5の固定部5iに固定することで、簡単に浮き上がりを防止できる。尚、固定レバー6c及び固定部5iは必要が無ければ設けなくても良い。
閉状態で加熱を止めると、調理器具内部は減圧され、開閉ダンパー6の平板6dが笛基台部3の笛貫通部3aの摺動面3cに吸着し、外部の空気を遮断する。また、減圧状態になることで調理器具内部と外部の気圧差が生じ、蓋が開かなくなる場合は、開閉レバー9を表示部8dの開側に合わせることで、気圧差をなくすことができ、簡単に開けることができる。
【0022】
以上のように本実施の形態1における安全笛付き摘み1は構成されているので、以下のような作用を有する。
(1)開閉レバーが閉のとき、レバーが一般的なセンサー摘みのように開閉の為に左右方向に動かし固定するのではなく、上下方向に移動し自動的に調圧を行う構造としたことにより、蒸気抜きがない状態と同じになり、火力を最小限の弱又はとろ火に絞っても、蒸気圧により蓋が持ち上がり、吹零れ等が起こっていた気密構造の熱伝導性の良い鍋の場合においても、吹零れたり、水滴が飛び散るのを防ぐことができ、更に、飛び散った汚れの掃除に余分な労力を不要とした。
(2)蓋の重さが摘み内部の気密構造と関係しているので、蓋が持ち上がる前に、摘み内部の調圧機能と開閉レバーの機能を持ち合わせた開閉ダンパーが蒸気を少しだけ逃がし、蒸気圧を調整し内部の圧力を一定に保ち、蓋からの吹零れや不快な飛び散りを防ぐことができ、快適に使用できるとともに、無駄なエネルギー放出を抑えることができる。
(3)開閉ダンパーの自然重力のみで圧力をコントロールできるが、例外として特に極厚で非常に重たい蓋の場合、バネ強度を少し加えるだけで簡単に、蓋の重さに合った圧力コントロールができる。
(4)鍋の形状、蓋の重さにより強い気密性が欲しい場合は、開閉レバーを閉の状態にし、笛基台部の笛基台部の摺動面と開閉ダンパーが密着した状態で、固定レバーを摘み本体の固定部に固定することで、開閉ダンパーの浮き上がりを防ぎ、気密性を得ることができる。
開閉ダンパーの浮き上がりを固定できる。
(5)通常、調圧弁を取り付ける場合は、蓋と摘み本体を固定式にして、圧力鍋や炊飯器等のようにピストン式の調圧弁や形状記憶合金を利用し、上方向に排出する場合が多く、いずれも固定された機種で使用されるため、形状や蓋の厚み、重さが違うとそれぞれの機種に合わせた部品が必要となりコストが高くなるという欠点があったが、本発明は着脱自在の組み立て式なので汎用性に優れる。
(6)熱源を止めると調理器具内部が減圧され、開閉ダンパーが閉の状態であれば、開閉ダンパーと笛基台部の摺動面が自動的に吸着状態になり気密状態を保つことができるので、空気の逆流を防止し、冷めやすくなるのを防ぐことができ、余熱を活用することができる。
(7)調理器具内部が減圧された状態で蓋を開ける際、開閉レバーを開方向へ動かすだけで開閉ダンパーを摺動させ笛貫通部を外気と連通できるので、気圧差をなくすことができ、簡単に開けることができる。
(8)蒸気が拡散する第2の蒸気通路が2重壁であるので熱くなり難く、素手で摘みを持って蓋を持ち上げることができ、安全性に優れる。
(9)蒸気と共に摘みの内部に入る煮汁等は、蒸気排出カバーの切り欠きから流れ出る構造になっており、使用中は高温の蒸気が常に拡散するので、細菌の発生が起こらず、衛生面的にも優れている。
(10)簡単に分解できる構造であるので、長時間使用しないときは分解して乾燥させることができる。
(11)ウォーターシールによる気密により水膜を破壊せず、省エネルギーを実現することができる。
(12)特に、弱火やとろ火の調節が難しい、近代のガスコンロ、IHコンロを利用して調理する場合、飛び散りによる不快な汚れを防止できる。
【0023】
(実施の形態2)
図7は本実施の形態2の安全笛付き摘みの要部断面図である。
実施の形態1における安全笛付き摘みと同様のものには同様の符号を付して説明を省略する。
20は実施の形態2における安全笛付き摘みである。
実施の形態2の安全笛付き摘み20が実施の形態1と異なる点は、開閉ダンパー6、内蓋7の軸挿部7d、上蓋8の上蓋回転軸挿着部8c、開閉レバー9、回転軸10、バネ11を備えない点である。
図5のように、螺子部2、笛基台部3、蒸気排出カバー4、摘み本体5までを実施の形態1と同様に組み立て、軸挿部のない内蓋7’を摘み本体5の内側の内蓋嵌着部5gと係合部7bを介して係合し、内蓋7’の上面側に、上蓋回転軸挿着部のない上蓋8’の上蓋係合部8eを摘み本体5の上部係合部5hと係合させる。
【0024】
以上のように本実施の形態2の安全笛付き摘み20は構成されているので、実施の形態1の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)蒸気を一旦、安全笛付き摘み内部で拡散し、蒸気排出カバーの複数の切り欠きより鍋蓋上面に沿って多方向に排出される構造のため、減圧され、蒸気の温度が下がり、直接噴出する場合に比べ火傷の危険性が少ない。
(2)拡散する部屋は2重壁構造であるので、素手で摘みを持って蓋を持ち上げる場合でも熱くなりにくく、安全性を飛躍的に向上させた。
(3)上向き、横向きに蒸気の排出口がないので、フック式笛付き摘みも可能になった。
(4)実施の形態1の安全笛付き摘みに比べ構造が簡素であるので、分解などがより容易に行え、メンテナンス性に優れる。
【0025】
(実施の形態3)
図8は実施の形態3の安全笛付き摘みの側面図である。
実施の形態1における安全笛付き摘みと同様のものには同様の符号を付して説明を省略する。
30は実施の形態3における安全笛付き摘み、31は摘み上面に形成されたフックである。
実施の形態3は、実施の形態1又は2の安全笛付き摘みにおいて、フック31を備えたものである。フック31は、上蓋8又は摘み本体5に直接形成しても良いが、上蓋8又は摘み本体5に接合部を設けて、フック31を接合しても良い。
開閉レバー9を備える場合、フック31は開閉レバー9の動作を阻害しなければ、どのように形成してもよい。
以上のように本実施の形態3の安全笛付き摘み30は構成されているので、実施の形態1又は2の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)フックに指や紐等を通して持ち上げる事ができるので、握力の弱った人も安全で容易に蓋Aを持ち上げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は簡素な設計と少ない部品と低コストで生産でき、調理時に発生する蒸気により笛が鳴ることで沸騰を知らせ、調理器具内部の圧力を調整できる調圧ダンパー内蔵式の安全性の高い安全笛付き摘みを提供することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 安全笛付き摘み
2 螺子部
2a 貫通孔
2b 螺合溝
2c 螺合部内壁
2d 第1の蒸気通路
2e 上面凹部
3 笛基台部
3a 笛貫通部
3b 外周螺着部
3c 摺動面
3d 内側螺合部
4 蒸気排出カバー
4a 切り欠き
4b カバー係止部
4c 第3の蒸気通路
4d 周縁部
5 摘み本体
5a 下部螺合部
5b 拡径部
5c 蒸気口
5d 上蓋配設部
5e 本体係止部
5f 段差部
5g 内蓋嵌着部
5h 上部係合部
5i 固定部
6 開閉ダンパー
6a ダンパー孔
6b 回転軸挿通孔
6c 固定レバー
6d 平板
7,7’ 内蓋
7a 周壁
7b 係合部
7c 天板
7d 軸挿部
7e 第2の蒸気通路
8,8’ 上蓋
8a 底板
8b 上蓋周壁
8c 上蓋回転軸挿着部
8d 表示部
8e 上蓋係合部
9 開閉レバー
9a 回転軸挿着部
10 回転軸
10a 回転軸頂部
10b 回り止部
10c 割り溝
11 バネ
12 封止部
13 蒸気
14 警笛発生部
20 安全笛付き摘み
30 安全笛付き摘み
31 フック
A 蓋部
B 摘み取付け孔
C 受け溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)中央に貫通孔を有する螺子部と、前記螺子部が蓋の摘み取り付け孔を介して螺着されるとともに前記貫通孔と連通する笛貫通部を備えた笛基台部と、前記螺子部と前記笛基台部の対向面に形成された凹部からなる警笛発生部と、(b)下端部に蒸気排出用の切り欠きを有し、前記笛基台部を同芯状に囲繞する蒸気排出カバーと、(c)前記笛基台部の外周螺着部に螺着される下部螺着部と、前記下部螺着部に段差部を介して連設された拡径部と、前記段差部に形成された蒸気口と、を有する摘み本体と、(d)周壁と、天板と、前記周壁の下部に前記摘み本体の内壁下部の内蓋嵌着部と係合される係合部と、を有する内蓋と、(e)上蓋周壁と、底板と、前記上蓋周壁の下部に形設され前記摘み本体の内壁上部の係合溝に係合する上蓋係合部と、を有する上蓋と、を備えることを特徴とする安全笛付き摘み。
【請求項2】
(a)前記内蓋の前記天板に穿設された回転軸の軸挿部と、(b)前記上蓋の前記底板に穿設された上蓋回転軸挿着部と、(c)平板に穿設されたダンパー孔と、前記平板の端部に穿設された回転軸挿通孔と、を備え、前記平板の下面が前記笛基台部の前記笛貫通部の周壁の上面を左右に摺動する開閉ダンパーと、(d)前記上蓋回転軸挿着部と、前記内蓋の前記軸挿部とを貫通して、前記開閉ダンパーの前記回転軸挿通孔に固定される回転軸と、(e)一端部が前記回転軸の頂部と固定され、前記上蓋の底板上面に配設された開閉レバーと、を備えることを特徴とする請求項1に記載の安全笛付き摘み。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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