説明

安定な、小さい粒度のオルガノポリシロキサンエマルジョンの製造方法

150ナノメートル以下の粒度を有する安定な高粘度のオルガノポリシロキサンエマルジョンの製造方法、特に、標準的なホモジナイザーを用いることによる、オルガノポリシロキサンの乳化の容易かつ費用効果的な高速な完了に関する乳化重合法、それに続く、制御された温度における、オルガノポリシロキサンの重合に関する。前記方法は、望ましい粒度のエマルジョンを実現するための、少なくとも1種のアニオン性乳化剤との、非イオン性乳化材の選択的な組み合わせに関わる。重要なことに、非イオン性、および12〜15に近い混合物のHLB値を有するアニオン性乳化剤の選択的な混合物、および温度を50℃以下に維持することは、任意の標準的なホモジナイザーを用いて、高圧均質化の必要性を回避し、小さい粒子の安定なエマルジョンを有利に得ることができることがわかった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定な高粘度オルガノポリシロキサンエマルジョンの製造方法、特に、オルガノポリシロキサンの乳化の容易かつ費用効果的な高速な完了に関する乳化重合、また、それに続くオルガノポリシロキサンの重合に方法に関する。該方法は、容易かつ費用効果的であり、多種多様の有益な最終用途および適用のための、安定なオルガノポリシロキサンエマルジョンのエマルジョン製造に容易に適合することができる。重要なことには、本発明の方法によって製造されるシリコーンエマルジョンは、非常に安定であり、身の回りの世話、線維製品、ゴム、紙および他の類似の適用/用途を含む様々な最終用途の、有利かつ有益な多種多様の用途を有すると思われる、非常に狭い粒度分布を有する、150ナノメートル以下の平均の範囲(すなわちD50値)内にある。
【0002】
種々の最終用途に適した、変化する粒度を有するオルガノポリシロキサンエマルジョンを提供することは周知である。
【0003】
乳化重合法によって製造された、小さい粒度を有するオルガノポリシロキサンエマルジョンは、一般に、乳化の際のエマルジョンの安定性、およびより速いオルガノポリシロキサン重合に焦点をあてた、望ましい早く、容易な製造を提供できる点で好ましい。このような乳化重合生成物は、種々の方法によって製造されることが知られている。例えば、特公昭34−2041号公報は、強酸および強塩基を、重合触媒として用いる重合方法を開示している。米国特許第3697469号は、重合触媒としてイオン交換樹脂を用いている。米国特許第3360491号、米国特許第3697469号、米国特許第4228054号、米国特許第5726270号、米国特許第5817714号、米国特許第5895794号、米国特許第5925469号および米国特許第6071975号は、触媒としてアルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、脂肪族スルホン酸、シリルアルキルスルホン酸、脂肪族置換ジフェニルエーテルスルホン酸または硫酸水素アルキルを用いる重合を開示している。しかし、これらの全ての方法は、重合およびエマルジョン製造工程のために長い時間がかかる。また、ほとんどの方法は環状シロキサンにのみ限定される。
【0004】
米国特許第6245852号は、短時間で向上した安定性を有するオルガノポリシロキサンエマルジョンを製造する方法を開示している。該方法は、水中で、700〜3000Kg/cm2の範囲の運転圧の高圧ホモジナイザーを用いることによって、本質的に、有機スルホン酸、および有機硫酸エステル塩から選択される少なくとも1種のアニオン性の界面活性剤の存在下、低分子量のオルガノポリシロキサンを乳化し、分散させ、300nm以下の粒径を有する初期エマルジョンを生成し、次いで、エマルジョンを重合し、次いで最終的にエマルジョンを中和する工程を含む。
【0005】
米国特許第6245852号における開示から明らかなように、該方法は、乳化重合工程の時に、乳化時間を短縮するため、非常に高機能かつ非常に多い資本を必要とする機械システムの使用を必要とする。また、該方法は高圧システムを用いるので、該乳化機は、製造領域において安全な作業のために、多くの制御システムを必要とする。
【0006】
従って、前記米国特許第6245852号による方法は、高機能な高圧ホモジナイザーを用いることによって乳化時間を短縮することを示しているが、前記方法は、より速い重合を含む、全乳化工程のより速い完了のための要求に対処しているとは思われない。乳化重合法は、通常、オルガノポリシロキサンの乳化、およびそれに続くオルガノポリシロキサンの重合を含む。従って、それ自身によるより速い乳化は、乳化重合工程を完了するため、または工程をより早くするためには十分ではない。従って、乳化重合工程において、重合をより早くすることは重要である。
【0007】
この技術の前記状態は、乳化重合工程をより早くする工程の開発が必要であることを示す。また、より速い乳化重合工程を必要とする種々の最終用途/適用に適すると思われる粒子径の縮小は、大規模の商業生産、および多種多様の応用のこのようなエマルジョンの使用にとって好ましい。
【0008】
従って、本発明の基本的な目的は、一方では、容易で費用効果的であり、速い、一方では、より速い乳化のための複雑な機械装置のための必要性に変わる、容易性および費用効果を提供し、乳化重合工程における重合時間を短縮し、従って、身の回りの世話等の多種多様の用途のための、このような小さい粒子径のシリコーンエマルジョンの大規模な費用効果的商業生産に容易に適用することのできる、150nm以下の粒度を有するシリコーンエマルジョンの製造方法を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、全乳化重合時間を大きく短縮する、150ナノメートル以下の粒度を有するシリコーンエマルジョンの容易な製造方法を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、乳化工程の際に、より速いオルガノポリシロキサンのポリマー成長の助けとなる、150ナノメートル以下の粒度を有するシリコーンエマルジョンの製造方法に関する。
【0011】
本発明の更に他の目的は、選択的なエマルジョン形成、およびシリコーンエマルジョンの製造における、乳化および重合段階を短縮するための複雑な機械装置の必要性の回避を目的とする、150ナノメートル以下の粒度を有する、標準的なホモジナイザーを含む安定なシリコーンエマルジョンの製造に関する。
【0012】
従って、本発明の基本的な態様によれば、下記工程を含む、150ナノメートル以下の粒度を有する安定なエマルジョンの製造方法が提供される。
【0013】
i)(a)20〜80質量%の量のオルガノポリシロキサンまたはその混合物、(b)5〜30質量%の量の水、(c)1〜25質量%の量の、10〜19の範囲のHLBを有する選択的な非イオン性乳化剤および(d)1〜15質量%の量の、8〜19の範囲のHLBを有する選択的なアニオン性乳化剤を含む選択的な配合物を供給する工程、
ii)(1)の混合物を、標準的なホモジナイザーを用いて均質化し、オルガノポリシロキサンのポリマー成長を補助するか、ポリマーの粘度を少なくとも20000cpsにするような、50℃以下、好ましくは10〜40℃の範囲の温度に維持する工程、および
iii)アルカリによってエマルジョンを、pH範囲6〜8に中和する工程。
【0014】
重要なことに、本発明で容易な工程に従い、150ナノメートル以下のエマルジョンを得ることのできる、重大な様態の1つが、望ましい粒度のエマルジョンを得るために、非イオン性乳化剤と少なくとも1種のアニオン性乳化剤との併用の選択的な使用であると思われる。オルガノポリシロキサンエマルジョンにとって、12〜15に近いHLB値は、小さい粒子のエマルジョンを製造するのに役立つ、乳化剤または乳化剤の混合物の最適な値であると思われる。また、12〜15に近い、混合物のHLB値を有する非イオン性およびアニオン性乳化剤混合物は標準的なホモジナイザーを用いて、小さい粒子の安定なエマルジョンを製造するための最適な組み合わせを表すと思われる。
【0015】
前記の選択的な配合物において用いられる乳化剤の量は、エマルジョンを安定にするための選択的な寄与を有する。特に、前記小さい粒子のオルガノポリシロキサンエマルジョンを製造する方法においては、エマルジョンは、また、複雑な超高圧ホモジナイザーの使用の必要なしで、標準的なホモジナイザーを用いることにより、より速く小さい粒子のエマルジョンを製造するのに役立つ、重大なHLB値を有する界面活性剤の使用によって安定化される。
【0016】
更に、粒子の小さい粒度の狭い分布のためには、温度を制御することが重要である。有利には、50℃以下の温度でのエマルジョンの製造は、エマルジョン中でのオルガノポリシロキサンのより速いポリマー成長に、更に役立つことがわかる。エマルジョン製造の際の温度は、粒度を制御するのみでなく、粒度分布を制御し、内相粘度のより速い成長のために非常に重要であることがわかる。
【0017】
前述の本発明の方法においては、好ましくは微生物の増殖を防止するために、適切な殺生剤を加える。
【0018】
次いで、前記方法は、標準的なホモジナイザーを用いることにより小さい粒子のオルガノポリシロキサンを製造するために、界面活性剤の混合物を用い、150ナノメートル以下の粒度を達成するために、界面活性剤混合物の適切なレシピ、およびオルガノポリシロキサンおよび界面活性剤のレシピの製造を含む選択的な配合物を維持することが重要である。
【0019】
好ましい態様によれば、高い内相油粘度を有する、小さい粒度のエマルジョンの安定かつより速い製造についての前記方法は、下記工程を含む。
(i)エマルジョンの5〜30%の量の水、10〜19の範囲の乳化剤のHLB値を有する、少なくとも1種のアニオン性乳化剤および少なくとも1種の非イオン性乳化剤を含む、8〜30%の混合乳化剤、およびエマルジョンの20〜80%の範囲の、オルガノポリシロキサンまたはオルガノポリシロキサンの混合物の供給を含む、選択的な配合物を供給する工程、
(ii)エマルジョンの望ましい特徴により、温度を50℃以下、好ましくは20〜40℃の範囲に維持しながら、10分間から2時間、前記混合物を、標準ホモジナイザーを用いて均質化する工程、
(iii)内相油粘度が、より速く増大することを補助するために、前記エマルジョンを、5〜30℃の範囲で熟成させる工程、
(iv)アルカリを用いてエマルジョンを中和し、エマルジョン中の微生物の増殖を防止するために、最終的に殺生剤を添加する工程。
【0020】
冷却水を通すことにより、均質化の間、材料の温度を制御することができる。前記方法においては、非常に高い内相油粘度の上昇のための、望ましい熟成温度は5〜30℃の範囲である。一般に、非常に高い内相油粘度を達成するには1〜12時間を要する。500000cps未満の内相油粘度が必要な場合、混合完了の直後に、エマルジョンの中和を実施する。更に、目標とするポリマーの粘度、およびエマルジョン中の粒子の分布によって、望ましい混合時間も変化することがわかる。
【0021】
希釈工程の直後に、エマルジョンを中和する。一般に、中和には水溶性無機アルカリ水酸化物または有機アミンアルコールが用いられる。エマルジョンを中和するために、好ましくは、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムまたはトリエタノールアミンを用いる。
【0022】
本発明によれば、望ましい小さい粒度のエマルジョンを得るための重大なパラメータの1つには、的確な乳化剤および乳化剤の組み合わせが含まれる。従って、本発明は、選択的な乳化剤の組み合わせ、および乳化および重合温度が、方法を容易にし、高価で、かつ複雑な機械装置の使用を回避するための重大な部分を有する容易な方法で、小さい粒子のエマルジョンを製造することを実現する。
【0023】
従って、本発明は、低分子量オルガノポリシロキサンまたはオルガノポリシロキサン混合物から、安定な小さい粒子のエマルジョンを製造する方法を提供する。本発明の目的のために本明細書で言及するオルガノポリシロキサンは、α,ωヒドロキシ末端オルガノポリシロキサン、α,ωアルコキシ末端オルガノポリシロキサン、オルガノシクロポリシロキサンまたはそれらの混合物等の低分子量オルガノポリシロキサンを含む。
【0024】
分岐ポリシロキサンエマルジョンの場合、前記オルガノポリシロキサンと一緒に、三官能性または四官能性またはそれらの混合物が用いられる。
【0025】
ここで用いられる、前記α,ω官能性末端ブロック直鎖オルガノポリシロキサンは、好ましくは一般式Iのものである。
【0026】
【化1】

【0027】
式中、R1は水素および/または1〜10個の炭素原子の一価の炭化水素基および/またはヒドロキシル基および/または1〜8個の炭素原子を有するアルコキシ基である。一価の炭化水素基としてのR1の具体例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tertペンチル、n−ヘキシル等のヘキシル、n−ヘプチル等のヘプチル、n−オクチルおよび2,2,4−トリメチルペンチル等のイソオクチル等のオクチル、n−ノニル等のノニル、n−デシル等のデシル、n−ドデシル等のドデシル、n−オクタデシル等のオクタデシル、ビニルおよびアリル、シクロアルケニル等のアルケニル、フェニル、ナフチル、アントリルおよびフェナントリル等のアリール、o−、m−、p−トリル、キシリルおよびエチルフェニル等のアルキルアリール、ベンジル、α−およびβ−フェニルエチル等のアラルキルであり、その中で、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルが好ましく、メチルが特に好ましい。アルコキシ基のR1の具体例は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基またはフェノキシ基が挙げられるが、前記置換基に限定されない。
【0028】
前記式において、Rは異なっていてもよく、一価の炭化水素基である。Rの具体例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tertブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tertペンチル、n−ヘキシル等のヘキシル、n−ヘプチル等のヘプチル、n−オクチルおよび2,2,4−トリメチルペンチル等のイソオクチル等のオクチル、n−ノニル等のノニル、n−デシル等のデシル、n−ドデシル等のドデシル、n−オクタデシル等のオクタデシル、ビニルおよびアリル等のアルケニル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびメチルシクロヘキシル等のシクロアルキル、フェニル、ナフチル、アントリルおよびフェナントリル等のアリール、o−、m−p−トリル、キシリルおよびエチルフェニル等のアルキルアリール、ベンジル、α−およびβ−フェニルエチル等のアラルキル等のアルキル基であり、その中で、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルが好ましく、メチルが特に好ましい。
【0029】
前記式において、xは1〜100の整数である。
【0030】
本明細書で用いられるオルガノシクロシロキサンは下記構造を有する。
【0031】
【化2】

【0032】
式中、Rは独立的に、水素、またはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、n−ヘキシル等のヘキシル、n−ヘプチル等のヘプチル、n−オクチルおよび2,2,4−トリメチルペンチル等のイソオクチル等のオクチル、n−ノニル等のノニル、n−デシル等のデシル、n−ドデシル等のドデシル、n−オクタデシル等のオクタデシル等のアルキル基を含む、3〜10個の炭素原子の一価の炭化水素基、ビニルおよびアリル等のアルケニル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびメチルシクロヘキシル等のシクロアルキル、フェニル、ナフチル、アントリルおよびフェナントリル等のアリール、o−、m−、p−トリル、キシリルおよびエチルフェニル等のアルキルアリール、ベンジル、α−およびβフェニルエチル等のアラルキルであり、その中で、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルが好ましく、メチルが特に好ましい。nは3〜10の整数である。最も好ましいオルガノシクロシロキサンはオクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−テトラフェニルシクロテトラシロキサンである。
【0033】
本発明において用いられるオルガノポリシロキサンは、分岐単位の取り込みのために分岐されていてもよい。分岐単位は、オルガノポリシロキサンのフィルム形成特性を向上させるために導入される。分岐単位は、三官能性シランまたは四官能性シランまたはそれらの混合物であってもよい。三官能性シラン(III)および四官能性シラン(IV)は下記構造式を有する。
【0034】
【化3】

【0035】
式中、Rは異なっていてもよく、一価の炭化水素基である。Rの具体例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、n−ヘキシル等のヘキシル、n−ヘプチル等のヘプチル、n−オクチル、および2,2,4−トリメチルペンチル等のイソオクチル等のオクチル、n−ノニル等のノニル、n−デシル等のデシル、n−ドデシル等のドデシル、n−オクタデシル等のオクタデシル、ビニルおよびアリル等のアルケニル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびメチルシクロヘキシル等のシクロアルキル、フェニル、ナフチル、アントリルおよびフェナントリル等のアリール、o−、m−、p−トリル、キシリルおよびエチルフェニル等のアルキルアリール、ベンジル、α−およびβ−フェニルエチル等のアラルキルのアルキル基であり、その中で、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルが好ましく、メチルが特に好ましい。オルガノポリシロキサンの分岐の望ましい要求により、分岐単位は乳化工程の間に添加される。高度に分岐した構造を有するオルガノポリシロキサンを含むエマルジョンを製造するのに、エマルジョンの0.1〜5%の分岐単位が有用である。エマルジョン中で用いられる量は、慎重に制御しなければならず、そうでなければ、乳化工程の際にポリマーのゲル化が起こり、エマルジョンが不安定になる。分岐ポリシロキサンが必要でない場合、シランを添加しない。
【0036】
本発明によれば、アニオン性乳化剤は、150nm以下の粒度を有する、高い内相粘度のエマルジョンの、容易かつ高速な乳化工程のために重要な役割を有する。アニオン性界面活性剤は、有機スルホン酸から選択される。本発明の方法において用いられる、最も一般的なスルホン酸は、アルキルアリールスルホン酸、アルキルアリールポリオキシエチレンスルホン酸、アルキルスルホン酸およびアルキルポリオキシエチレンスルホン酸である。スルホン酸の構造は以下の通りである。
【0037】
【化4】

【0038】
式中、R2は異なっていてもよく、少なくとも6個の炭素原子を有する、一価の炭化水素基である。最も好ましいR2基は、以下の置換基、すなわち、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、セチル、ステアリル、ミリスチルおよびオレイルであるが、これらに限定されない。mは1〜25の整数である。本発明で用いられる最も好ましいアニオン性界面活性剤は、オクチルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、セチルベンゼンスルホン酸、αオクチルスルホン酸、αドデシルスルホン酸、αセチルスルホン酸、ポリオキシエチレンオクチルベンゼンスルホン酸、ポリオキシエチレンドデシルベンゼンスルホン酸、ポリオキシエチレンセチルベンゼンスルホン酸、ポリオキシエチレンオクチルスルホン酸、ポリオキシエチレンドデシルスルホン酸およびポリオキシエチレンセチルスルホン酸である。一般に、本発明の乳化工程においては、1〜15%のアニオン性界面活性剤が用いられる。好ましくは、最適な結果を得るために、本発明の乳化において、3〜10%のアニオン性界面活性剤が用いられる。アニオン性界面活性剤は、本発明の乳化工程において、2つの役割を有する。アニオン性界面活性剤は、縮合/開環の触媒として作用すると共に、エマルジョン製造のための界面活性剤として作用する。従って、アニオン性乳化剤を用いることによって、工程は、乳化工程の際の、オルガノポリシロキサンのポリマー成長のための他の触媒を必要としない。
【0039】
また、本発明によれば、容易かつ高速な方法におけるエマルジョンを製造するための乳化および重合の制御された温度と共に、アニオン性乳化剤と一緒に少なくとも1種の追加の乳化剤が必要であることが観察される。特に、アニオン性界面活性剤と一緒に、少なくとも1種の非イオン性乳化剤が、本発明のために高速かつ容易な乳化工程に役立つことがわかる。乳化工程を、より容易にするためには、10〜19のHLB値を有する非イオン性乳化剤が適している。この種類の最も有用な界面活性剤は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルおよびポリオキシアルキレンソルビタンエステルである。10〜19のHLB値を有する、いくつかの有用な界面活性剤は、ポリエチレングリコールオクチルエーテル、ポリエチレングリコールラウリルエーテル、ポリエチレングリコールトリデシルエーテル、ポリエチレングリコールセチルエーテル、ポリエチレングリコールステアリルエーテル、ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールドデシルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールセチルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールステアリルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールソルビタンモノステアレートおよびポリエチレングリコールソルビタンモノオレエートである。10〜19のHLB値を有する非イオン性界面活性剤は、工程をより容易にするために、本発明において非常に重要性を有する。
【0040】
一般に、乳化工程において、1〜25%の非イオン性界面活性剤が用いられる。好ましくは、最適な結果を得るために、5〜20%の非イオン性界面活性剤が本発明において用いられる。12〜15のHLB値を有する界面活性剤が、短時間で標準的なホモジナイザーを用いることによりオルガノポリシロキサンエマルジョンを製造するのに有用であることが当業界で周知であり、また、長期安定性を有するオルガノポリシロキサンのエマルジョン得るために、12〜15のHLB値を有する界面活性剤の混合物を用いることも周知である。
【0041】
また、本発明によれば、混合物中に少なくとも1種のアニオン性界面活性剤および1種の非イオン性界面活性剤を有する、好ましくは混合物が12〜15のHLB値を有するような比で乳化剤の選択的な配合物を提供することが重要である。
【0042】
本発明の乳化工程における重要な様態は、標準的なホモジナイザーを用いることにより、より速い方法で安定なエマルジョンを製造するだけでなく、150nm以下の小さい粒子のエマルジョンを製造する、界面活性剤の混合物の選択的な使用である。エマルジョンの粒度は、12〜15の混合物のHLB値を有するアニオン性および非イオン性乳化剤の比に大いに依存する。
【0043】
オルガノポリシロキサンのポリマー成長速度が、エマルジョンの粒度に大いに依存することも当業界で周知である。このような、乳化工程の際のオルガノポリシロキサンのポリマー成長速度は、150nmを超える粒度を有するオルガノポリシロキサンのエマルジョンと比較し、非常に高い。
【0044】
本発明によれば、乳化工程の際の温度は、エマルジョンの粒度、粒度の分布(すなわち、多分散性、1の値は悪く、0.1の値または0.1未満は非常に良好である)、および乳化工程の際のオルガノポリシロキサンのポリマー成長速度を制御するのに重要な役割を有する。温度が選択的な範囲内に維持されない場合、本発明の乳化工程において、粒度、粒子の分布およびポリマーの粘度の制御ができなくなることも観察される。たとえ、乳化剤に対する液体の適切な組み合わせによる乳化剤の最適な組み合わせを用いることによってエマルジョンを製造したとしても、温度制御が前記選択的範囲にない場合、最終的なエマルジョンの規格の相当な逸脱が起こることがわかる。50℃より低い温度の維持は、粒度、エマルジョン中の粒子の分布およびエマルジョン中のオルガノポリシロキサンのポリマー成長速度を制御するために有用である。
【0045】
更に、エマルジョン中の超高粘度(2百万cps以上)のオルガノポリシロキサンポリマーの場合、エマルジョンの熟成の際に、エマルジョンの温度を制御することも重要である。エマルジョンの内相において必要とされる超高粘度のオルガノポリシロキサンの場合、重合を速くするために、30℃より低い温度は有用である。熟成工程の際に、温度が30℃以上であると、乳化重合は著しく低下し、高温における超高粘度の達成が更に困難になる。従って、乳化重合工程による高粘度オルガノポリシロキサンポリマーの超高粘度ポリマーエマルジョンへの乳化工程の速い完了のため、温度は、エマルジョン製造工程の際、および熟成工程の際に重要な役割を有することが明らかである。従って、本発明の方法によれば、エマルジョン製造および熟成の際の温度制御と一緒に、HLB値12〜15を有する混合された乳化剤(少なくとも1種のアニオン性乳化剤および少なくとも1種の非イオン性乳化剤を含む)を組み合わせることは、標準的ホモジナイザーにより150nmより小さいエマルジョンを製造するのに有用な乳化工程に役立つ。
【0046】
成分は、標準的なホモジナイザーによって均質化される。有用な標準的剪断撹拌システムは、標準的な均質化法において用いられる、通常の単段の固定子−撹拌子ホモジナイザー、または多のタイプの標準的なホモジナイザー等であってもよい。均質化は、乳化工程の設計に依存し、バッチ中で、または連続的に実施することができる。投資の観点から、また、前記方法が、経済的な均質化システムを必要とし、高価な高圧均質化システムの使用を回避することが明らかである。
【0047】
重要なことに、本発明の方法に従って得られたエマルジョンが非常に安定であることが本発明によってわかる。特に、試験は、得られたエマルジョンを、45〜60℃の範囲、最も好ましくは55℃のオーブン中に1ヶ月置いた時、エマルジョン中のクリーミング、または分離または変形は観察されなかったことを示す。また、10℃/50℃の温度における、1ヶ月間の12時間凍結/解凍サイクルは、エマルジョン中のクリーミングまたは分離または変形を示さなかった。
【0048】
本発明の詳細、その目的および利点を、非限定的な、方法の模範的な実例に関連して更に詳細に以下に説明する。
【0049】
実施例
実施例I
乳化工程において、冷却ウォータージャケットを有する、100リットルの混合タンク内に、4.5kgの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸、HLB値14を有する、7kgのトリデシルアルコールエトキシレート、4.5kgの水を移した。成分を5分間混合した。31.22kgのWacker PDMシロキサン(40Cpsのα,ωヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン)を加え、単段固定子−撹拌子ホモジナイザーにより、粒度が70nmに低下するまで混合した。粒度が70nmになるまで撹拌を25分間続けた。混合の間、成分の温度を30℃未満に維持した。次いで、エマルジョンを30kgの水で希釈し、材料を30℃未満の温度に維持した。次いで、エマルジョンを85%トリエタノールアミンを用いて中和し、殺生剤として4ppmのKathon CGを加えた。全体の工程は1時間以内に実施した。
【0050】
エマルジョンにイソプロパノールを、エマルジョンに対してイソプロパノールが3:1の比になるように加えることによりポリマーを分離した。イソプロパノール層を排出し、流体層をイソプロパノールで3回洗浄した。真空オーブン内でポリマーを乾燥した。ポリマーの粘度は185000Cpsであった。
【0051】
エマルジョン粒度を、Malvern Zetasizer Nano−Zsにより測定した。結果は、0.09の多分散性を有するエマルジョンの70.3nmの粒度を示した。
【0052】
比較例IA
非イオン性界面活性剤を、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸に代えた以外は実施例Iに従って、乳白色のエマルジョンを製造した。実施例Iと同様、温度を30℃未満に維持し、全乳化工程は1時間以内に完了した。最終的に、85%トリエタノールアミンを用いてエマルジョンを中和し、4ppmのKathon CGを加えた。
【0053】
エマルジョンにイソプロパノールを、エマルジョンに対してイソプロパノールが3:1の比になるように加えることによりポリマーを分離した。イソプロパノール層を排出し、流体層をイソプロパノールで3回洗浄した。真空オーブン内でポリマーを乾燥した。ポリマーの粘度は70000Cpsであった。
【0054】
エマルジョン粒度を、Malvern Zetasizer Nano−Zsにより測定した。結果は、0.40の多分散性を有するエマルジョンの168nmの粒度を示した。
【0055】
前記記載は、比較例IAにおける1種の乳化剤の使用により、実施例Iと同様の粒子に到達することは不可能であり、Iと比較してIAにおける、より大きな粒度のエマルジョンはポリマー成長を妨げることを示した。従って、均一な168nmの粒度を実現した後、ジメチルポリシロキサンの粘度は実施例Iよりも低かった。IAにおける多分散性もIに比べて高い。
【0056】
比較例IB
非イオン性界面活性剤を、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸に代え、乳化工程の間に温度を制御しなかった以外は実施例Iに従って乳白色のエマルジョンを製造した。乳化工程の間、温度は55℃にまで上昇し、全乳化工程は1時間以内に完了した。最終的に、85%トリエタノールアミンを用いてエマルジョンを中和し、4ppmのKathon CGを加えた。
【0057】
エマルジョンにイソプロパノールを、エマルジョンに対してイソプロパノールが3:1の比になるように加えることによりポリマーを分離した。イソプロパノール層を排出し、流体層をイソプロパノールで3回洗浄した。真空オーブン内でポリマーを乾燥した。ポリマーの粘度は8000Cpsであった。
【0058】
エマルジョン粒度を、Malvern Zetasizer Nano−Zsにより測定した。結果は、0.80の多分散性を有するエマルジョンの185nmの粒度を示した。
【0059】
乳化工程の間、温度を維持しないので、IAのような流体粘度および粒度を達成することは不可能であった。
【0060】
比較例IC
乳化工程の間、温度を、選択された範囲内に維持しなかった以外は、実施例Iに従って、乳白色のエマルジョンを製造した。乳化工程の間、温度は55℃にまで上昇し、全乳化工程は1時間以内に完了した。最終的に、85%トリエタノールアミンを用いてエマルジョンを中和し、4ppmのKathon CGを加えた。
【0061】
エマルジョンにイソプロパノールを、エマルジョンに対してイソプロパノールが3:1の比になるように加えることによりポリマーを分離した。イソプロパノール層を排出し、流体層をイソプロパノールで3回洗浄した。真空オーブン内でポリマーを乾燥した。ポリマーの粘度は80000Cpsであった。
【0062】
エマルジョン粒度を、Malvern Zetasizer Nano−Zsにより測定した。結果は、0.80の多分散性を有するエマルジョンの125nmの粒度を示した。
【0063】
乳化工程の間、温度を維持しないので、IAのような流体粘度および粒度を達成することは不可能であった。
【0064】
実施例II
乳化工程において、冷却ウォータージャケットを有する、100リットルの混合タンク内に、3.0kgの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸、HLB値14を有する、3kgのトリデシルアルコールエトキシレート、4.5kgの水を移した。成分を5分間混合した。31.22kgのWacker PDMシロキサン(40Cpsのα,ωヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン)を加え、単段固定子−撹拌子ホモジナイザーにより、粒度が117nmに低下するまで混合した。粒度が117nmになるまで撹拌を25分間続けた。混合の間、成分の温度を30℃未満に維持した。0.22kgのメチルトリエトキシシランを加え、混合を10分間続けた。次いで、エマルジョンを31kgの水で希釈し、材料を、30℃未満の温度に維持した。エマルジョンを85%トリエタノールアミンを用いて中和し、殺生剤として4ppmのKathon CGを加えた。全体の工程は1時間以内に実施した。
【0065】
エマルジョンにイソプロパノールを、エマルジョンに対してイソプロパノールが3:1の比になるように加えることによりポリマーを分離した。イソプロパノール層を排出し、流体層をイソプロパノールで3回洗浄した。真空オーブン内でポリマーを乾燥した。ポリマーの粘度は826000Cpsであった。
【0066】
エマルジョン粒度を、Malvern Zetasizer Nano−Zsにより測定した。結果は、0.03の多分散性を有するエマルジョンの116nmの粒度を示した。
【0067】
比較例IIA
非イオン性界面活性剤を、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸に代えた以外は実施例IIに従って乳白色のエマルジョンを製造した。実施例IIと同様、温度を30℃未満に維持し、全乳化工程は1時間以内に完了した。最終的に、85%トリエタノールアミンを用いてエマルジョンを中和し、4ppmのKathon CGを加えた。
【0068】
エマルジョンにイソプロパノールを、エマルジョンに対してイソプロパノールが3:1の比になるように加えることによりポリマーを分離した。イソプロパノール層を排出し、流体層をイソプロパノールで3回洗浄した。真空オーブン内でポリマーを乾燥した。ポリマーの粘度は196000Cpsであった。
【0069】
エマルジョン粒度を、Malvern Zetasizer Nano−Zsにより測定した。結果は、0.40の多分散性を有するエマルジョンの185nmの粒度を示した。
【0070】
この実施例(比較例IIA)は、1種類のみの乳化剤を用いたので、実施例IIと同様の粒子に到達することは不可能であり、IIと比較してIIAにおける、より大きな粒度のエマルジョンはポリマー成長を妨げることを示した。従って、均一な185nmの粒度を実現した後、ジメチルポリシロキサンの粘度は実施例IIよりも低かった。
【0071】
比較例IIB
非イオン性界面活性剤を直鎖アルキルベンゼンスルホン酸に代え、乳化工程の間に本発明の提案する選択的な範囲のように温度を維持しなかった以外は実施例IIに従って乳白色のエマルジョンを製造した。乳化工程の間、温度は55℃にまで上昇し、全乳化工程は1時間以内に完了した。最終的に、85%トリエタノールアミンを用いてエマルジョンを中和し、4ppmのKathon CGを加えた。
【0072】
エマルジョンにイソプロパノールを、エマルジョンに対してイソプロパノールが3:1の比になるように加えることによりポリマーを分離した。イソプロパノール層を排出し、流体層をイソプロパノールで3回洗浄した。真空オーブン内でポリマーを乾燥した。ポリマーの粘度は87000Cpsであった。
【0073】
エマルジョン粒度を、Malvern Zetasizer Nano−Zsにより測定した。結果は、0.70の多分散性を有するエマルジョンの235nmの粒度を示した。
【0074】
乳化工程の間、温度を維持しないので、IIAのような流体粘度および粒度を達成することは不可能であった。
【0075】
実施例IIC
乳化工程の間に本発明において提案するような選択的な範囲に温度を維持しなかった以外は実施例IIに従って乳白色のエマルジョンを製造した。乳化工程の間、温度は55℃にまで上昇し、全乳化工程は1時間以内に完了した。最終的に、85%トリエタノールアミンを用いてエマルジョンを中和し、4ppmのKathon CGを加えた。
【0076】
エマルジョンにイソプロパノールを、エマルジョンに対してイソプロパノールが3:1の比になるように加えることによりポリマーを分離した。イソプロパノール層を排出し、流体層をイソプロパノールで3回洗浄した。真空オーブン内でポリマーを乾燥した。ポリマーの粘度は180000Cpsであった。
【0077】
エマルジョン粒度を、Malvern Zetasizer Nano−Zsにより測定した。結果は、0.80の多分散性を有するエマルジョンの140nmの粒度を示した。
【0078】
乳化工程の間、温度を維持しないので、IIのような流体粘度および粒度を達成することは不可能であった。
【0079】
実施例III
乳化工程において、冷却ウォータージャケットを有する、100リットルの混合タンク内に、4.0kgの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸、HLB値14を有する、7kgのトリデシルアルコールエトキシレート、4.5kgの水を移した。成分を5分間混合した。31.22kgのWacker PDMシロキサン(40Cpsのα,ωヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン)を加え、単段固定子−撹拌子ホモジナイザーにより、粒度が117nmに低下するまで混合した。粒度が117nmになるまで撹拌を25分間続けた。混合の間、成分の温度を30℃未満に維持した。0.22gのテトラエチルオルトシリケートを加え、混合を10分間続けた。次いで、エマルジョンを31kgの水で希釈し、材料を、30℃未満の温度に維持した。次いで、エマルジョンを25℃未満に5時間維持した。エマルジョンを5時間熟成させた後、85%トリエタノールアミンを用いて中和し、殺生剤として4ppmのKathon CGを加えた。熟成を含む全体の工程を6時間以内に実施した。
【0080】
エマルジョンにイソプロパノールを、エマルジョンに対してイソプロパノールが3:1の比になるように加えることによりポリマーを分離した。イソプロパノール層を排出し、流体層をイソプロパノールで3回洗浄した。真空オーブン内でポリマーを乾燥した。ポリマーの粘度は4526000Cpsであった。
【0081】
エマルジョン粒度を、Malvern Zetasizer Nano−Zsにより測定した。結果は、0.09の多分散性を有するエマルジョンの117nmの粒度を示した。
【0082】
比較例IIIA
非イオン性界面活性剤を、5.5kgの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸および5.5kgのラウリル硫酸ナトリウムの混合物に代えた以外は実施例IIIに従って乳白色のエマルジョンを製造した。実施例IIIと同様、温度を30℃未満に維持した。次いで、エマルジョンを25℃未満に5時間維持した。エマルジョンを5時間熟成させた後、85%トリエタノールアミンを用いて中和し、殺生剤として4ppmのKathon CGを加えた。熟成を含む全体の工程を6時間以内に実施した。
【0083】
エマルジョンにイソプロパノールを、エマルジョンに対してイソプロパノールが3:1の比になるように加えることによりポリマーを分離した。イソプロパノール層を排出し、流体層をイソプロパノールで3回洗浄した。真空オーブン内でポリマーを乾燥した。ポリマーの粘度は750000Cpsであった。
【0084】
エマルジョン粒度を、Malvern Zetasizer Nano−Zsにより測定した。結果は、0.50の多分散性を有するエマルジョンの170nmの粒度を示した。
【0085】
この比較例IIIAは、2種類の乳化剤を用いたので、実施例IIIと同様の粒子に到達することは不可能であり、IIIと比較してIIIAにおける、より大きな粒度のエマルジョンはポリマー成長を妨げることを示した。従って、均一な170nmの粒度を実現した後、ジメチルポリシロキサンの粘度は実施例IIIよりも低かった。
【0086】
比較例IIIB
非イオン性界面活性剤を直鎖アルキルベンゼンスルホン酸に代え、乳化工程の間に温度を維持しなかった以外は実施例IIIに従って乳白色のエマルジョンを製造した。乳化工程の間、温度は55℃にまで上昇した。次いで、エマルジョンを40〜45℃に5時間維持した。エマルジョンを5時間熟成させた後、85%トリエタノールアミンを用いて中和し、殺生剤として4ppmのKathon CGを加えた。熟成を含む全体の工程を6時間以内に実施した。
【0087】
エマルジョンにイソプロパノールを、エマルジョンに対してイソプロパノールが3:1の比になるように加えることによりポリマーを分離した。イソプロパノール層を排出し、流体層をイソプロパノールで3回洗浄した。真空オーブン内でポリマーを乾燥した。ポリマーの粘度は150000Cpsであった。
【0088】
エマルジョン粒度を、Malvern Zetasizer Nano−Zsにより測定した。結果は、0.78の多分散性を有するエマルジョンの230nmの粒度を示した。
【0089】
乳化工程の間、温度を維持しないので、IIIAのような流体粘度および粒度を達成することは不可能であった。
【0090】
実施例IIIC
乳化工程の間に、選択した範囲内に温度を維持しなかった以外は実施例IIIに従って乳白色のエマルジョンを製造した。乳化工程の間、温度は55℃にまで上昇した。次いで、エマルジョンを40〜45℃に5時間維持した。エマルジョンを5時間熟成させた後、85%トリエタノールアミンを用いて中和し、殺生剤として4ppmのKathon CGを加えた。熟成を含む全体の工程を6時間以内に実施した。
【0091】
エマルジョンにイソプロパノールを、エマルジョンに対してイソプロパノールが3:1の比になるように加えることによりポリマーを分離した。イソプロパノール層を排出し、流体層をイソプロパノールで3回洗浄した。真空オーブン内でポリマーを乾燥した。ポリマーの粘度は973000Cpsであった。
【0092】
エマルジョン粒度を、Malvern Zetasizer Nano−Zsにより測定した。結果は、0.80の多分散性を有するエマルジョンの138nmの粒度を示した。
【0093】
乳化工程の間、温度を維持しないので、IIIのような流体粘度および粒度を達成することは不可能であった。
【0094】
実施例IV
乳化工程において、冷却ウォータージャケットを有する、100リットルの混合タンク内に、4.5kgの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸、HLB値14を有する、7kgのトリデシルアルコールエトキシレート、4.5kgの水を移した。成分を5分間混合した。31.22kgのデカメチルシクロペンタシロキサンを加え、該成分を、単段固定子−撹拌子ホモジナイザーにより、粒度が70nmに低下するまで混合した。粒度が70nmになるまで撹拌を25分間続けた。混合の間、成分の温度を30℃未満に維持した。次いで、エマルジョンを30kgの水で希釈し、材料を、30℃未満の温度に維持した。エマルジョンを、85%トリエタノールアミンを用いて中和し、殺生剤として4ppmのKathon CGを加えた。全体の工程は1時間以内に実施した。
【0095】
エマルジョンにイソプロパノールを、エマルジョンに対してイソプロパノールが3:1の比になるように加えることによりポリマーを分離した。イソプロパノール層を排出し、流体層をイソプロパノールで3回洗浄した。真空オーブン内でポリマーを乾燥した。ポリマーの粘度は105000Cpsであった。
【0096】
エマルジョン粒度を、Malvern Zetasizer Nano−Zsにより測定した。結果は、0.08の多分散性を有するエマルジョンの90.5nmの粒度を示した。
【0097】
比較例IVA
非イオン性界面活性剤を、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸に代えた以外は実施例IVに従って乳白色のエマルジョンを製造した。実施例IVと同様、温度を30℃未満に維持し、全乳化工程は1時間以内に完了した。最終的に、85%トリエタノールアミンを用いてエマルジョンを中和し、4ppmのKathon CGを加えた。
【0098】
エマルジョンにイソプロパノールを、エマルジョンに対してイソプロパノールが3:1の比になるように加えることによりポリマーを分離した。イソプロパノール層を排出し、流体層をイソプロパノールで3回洗浄した。真空オーブン内でポリマーを乾燥した。ポリマーの粘度は24500Cpsであった。
【0099】
エマルジョン粒度を、Malvern Zetasizer Nano−Zsにより測定した。結果は、0.30の多分散性を有するエマルジョンの180nmの粒度を示した。
【0100】
この比較例IVAは、1種類のみの乳化剤を用いたので、実施例IVと同様の粒子に到達することは不可能であり、IVと比較してIVAにおける、より大きな粒度のエマルジョンはポリマー成長を妨げることを示した。従って、均一な180nmの粒度を実現した後、ジメチルポリシロキサンの粘度は実施例IVよりも低かった。
【0101】
比較例IVB
非イオン性界面活性剤を、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸に代え、乳化工程の間に本発明において選択する範囲内の温度を維持しなかった以外は実施例IVに従って乳白色のエマルジョンを製造した。乳化工程の間、温度は55℃にまで上昇し、全乳化工程は1時間以内に完了した。最終的に、85%トリエタノールアミンを用いてエマルジョンを中和し、4ppmのKathon CGを加えた。
【0102】
エマルジョンにイソプロパノールを、エマルジョンに対してイソプロパノールが3:1の比になるように加えることによりポリマーを分離した。イソプロパノール層を排出し、流体層をイソプロパノールで3回洗浄した。真空オーブン内でポリマーを乾燥した。ポリマーの粘度は6000Cpsであった。
【0103】
エマルジョン粒度を、Malvern Zetasizer Nano−Zsにより測定した。結果は、0.80の多分散性を有するエマルジョンの185nmの粒度を示した。
【0104】
乳化工程の間、温度を維持しなかったので、IVAと同様の流体粘度および粒度を達成することは不可能であった。
【0105】
実施例IVC
乳化工程の間に本発明において提案された、選択的範囲内の温度を維持しなかった以外は実施例IVに従って乳白色のエマルジョンを製造した。乳化工程の間、温度は55℃にまで上昇し、全乳化工程は1時間以内に完了した。最終的に、85%トリエタノールアミンを用いてエマルジョンを中和し、4ppmのKathon CGを加えた。
【0106】
エマルジョンにイソプロパノールを、エマルジョンに対してイソプロパノールが3:1の比になるように加えることによりポリマーを分離した。イソプロパノール層を排出し、流体層をイソプロパノールで3回洗浄した。真空オーブン内でポリマーを乾燥した。ポリマーの粘度は7000Cpsであった。
【0107】
エマルジョン粒度を、Malvern Zetasizer Nano−Zsにより測定した。結果は、0.80の多分散性を有するエマルジョンの148.5nmの粒度を示した。
【0108】
乳化工程の間、温度を維持しなかったので、IVと同様の流体粘度および粒度を達成することは不可能であった。
【0109】
前記結果は、本発明に基づいて、乳化剤混合物が、少なくとも1種のアニオン性乳化剤および少なくとも1種の非イオン性乳化剤を含む場合、簡単な単段固定子−撹拌子ホモジナイザーにより、小さい粒度のオルガノポリシロキサンを製造することが可能であるという事実を明らかに証明する。アニオン性乳化剤、またはアニオン性乳化剤の混合物は、簡単なホモジナイザーを用いることにより、150nm未満のオルガノポリシロキサンのエマルジョンを製造することができない。本発明によれば、また、乳化工程の間の温度制御が、粒度、エマルジョン粒子の多分散性およびポリマー成長性を制御するために重要な役割を有していることも明らかに理解される。温度を制御することなく、同じ製法を追随した場合、該製法によって製造されるエマルジョンは、乳化工程の間に温度が制御された、同一の製法により製造されたエマルジョンに比べ、悪い結果を有することも観察された。超高分子化合物についての低い熟成温度も、高温における熟成に比べ、ポリマー成長速度を向上させることが観察される。更に、前記結果は、150nm未満の粒度が、150nmを超える粒度を有するシリコーンエマルジョンに比べ、速いオルガノポリシロキサンポリマー成長に実質的に影響を及ぼすことを証明する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
150ナノメートル以下の粒度を有する安定なエマルジョンの製造方法において、
i)(a)20〜80質量%の量のオルガノポリシロキサンまたはその混合物、(b)5〜30質量%の量の水、(c)1〜25質量%の量の、10〜19の範囲のHLBを有する選択的な非イオン性乳化剤および(d)1〜15質量%の量の、8〜19の範囲のHLBを有する選択的なアニオン性乳化剤を含む選択的な配合物を供給する工程、
ii)(i)の混合物を、標準的なホモジナイザーを用いて均質化し、50℃以下、好ましくは10〜40℃の範囲の温度に維持して、オルガノポリシロキサンのポリマー成長速度を補助するか、ポリマーの粘度を少なくとも20000cpsにする工程、および
iii)アルカリによってエマルジョンを、pH範囲6〜8に中和する工程
を含む方法。
【請求項2】
用いられる乳化剤または乳化剤の混合物が、小さい粒度のオルガノポリシロキサンエマルジョンのために、好ましくは12〜15の範囲のHLB値を有する、請求項1に記載の、安定なエマルジョンの製造方法。
【請求項3】
高い内相油粘度を有する、小さい粒度のエマルジョンを安定に高速に製造する方法において、
(i)エマルジョンの5〜30%の量の水、10〜19、好ましくは12〜15の範囲の乳化剤のHLB値を有する、少なくとも1種のアニオン性乳化剤および少なくとも1種の非イオン性乳化剤を含む、8〜30%の混合乳化剤、およびエマルジョンの20〜80%の範囲の、オルガノポリシロキサンまたはオルガノポリシロキサンの混合物の供給を含む、選択的な配合物を供給する工程、
(ii)エマルジョンの望ましい特徴に応じて、温度を50℃以下、好ましくは20〜40℃の範囲に維持しながら、10分間から2時間、前記混合物を、標準ホモジナイザーを用いて均質化する工程、
(iii)前記エマルジョンを、5〜30℃の範囲で熟成させて、内相油粘度を、より速く増大させることを補助する工程、
(iv)アルカリを用いてエマルジョンを中和し、エマルジョン中の微生物の増殖を防止するために、最終的に殺生剤を添加する工程
を含む方法。
【請求項4】
内相油粘度を500000cps未満とするために、前記エマルジョンの中和を、混合完了直後に実施する、請求項1から3までのいずれか1項記載の安定なエマルジョンの製造方法。
【請求項5】
用いられる前記オルガノポリシロキサンが、低分子量のオルガノポリシロキサン、好ましくはα,ωヒドロキシ末端オルガノポリシロキサン、α,ωアルコキシ末端オルガノポリシロキサン、オルガノシクロポリシロキサンまたはそれらの混合物である、請求項1から4までのいずれか1項記載の安定なエマルジョンの製造方法。
【請求項6】
分岐ポリシロキサンエマルジョンとするために、三官能性、四官能性またはそれらの混合物を、オルガノポリシロキサンと一緒に用いる、請求項1から5までのいずれか1項記載の安定なエマルジョンの製造方法。
【請求項7】
用いられる前記α,ω官能性末端ブロック直鎖オルガノポリシロキサンが、好ましくは一般式I:
【化1】

[式中、R1は、水素および/または1〜10個の炭素原子の一価の炭化水素基および/またはヒドロキシル基および/または1〜8個の炭素原子を有するアルコキシ基であり、Rは異なっていてもよく、一価の炭化水素基であり、xは1〜100の整数である]のものである、請求項5または6のいずれか1項記載の安定なエマルジョンの製造方法。
【請求項8】
用いられる前記オルガノシクロポリシロキサンが、下記構造式:
【化2】

[式中、Rは独立的に水素、またはアルキル基、好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルを含む3〜10個の炭素原子の一価の炭化水素基であり、nは3〜10の整数である]を有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の安定なエマルジョンの製造方法。
【請求項9】
用いられる前記オルガノシクロシロキサンが、好ましくは、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−テトラフェニルシクロテトラシロキサンから選択される、請求項1から8までのいずれか1項記載の安定なエマルジョンの製造方法。
【請求項10】
用いられる前記オルガノシクロシロキサンが、枝分かれ単位、好ましくは、下記構造:
【化3】

[式中、Rは異なっていてもよく、一価の炭化水素基である]を有する三官能性シランまたは四官能性シランまたはそれらの混合物の導入のために、枝分かれしている、請求項1から8までのいずれか1項記載の安定なエマルジョンの製造方法。
【請求項11】
用いられる前記アニオン性乳化剤が、アニオン性界面活性剤、好ましくは、アルキルアリールスルホン酸、アルキルアリールポリオキシエチレンスルホン酸、アルキルスルホン酸およびアルキルポリオキシエチレンスルホン酸から選択される有機スルホン酸を含む、請求項1から10までのいずれか1項記載の安定なエマルジョンの製造方法。
【請求項12】
用いられるスルホン酸の構造が、
【化4】

[式中、R2は異なっていてもよく、少なくとも6個の炭素原子を有する一価の炭化水素基であり、最も好ましくはR2は、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、セチル、ステアリル、ミリスチルおよびオレイルであるが、これらの基に限定されず、mは1〜25の整数である]を含む、請求項11記載の安定なエマルジョンの製造方法。
【請求項13】
前記アニオン性界面活性剤が、1〜15%、好ましくは3〜10%の量で用いられ、好ましくは、オクチルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、セチルベンゼンスルホン酸、αオクチルスルホン酸、αドデシルスルホン酸、αセチルスルホン酸、ポリオキシエチレンオクチルベンゼンスルホン酸、ポリオキシエチレンドデシルベンゼンスルホン酸、ポリオキシエチレンセチルベンゼンスルホン酸、ポリオキシエチレンオクチルスルホン酸、ポリオキシエチレンドデシルスルホン酸およびポリオキシエチレンセチルスルホン酸から選択される、請求項1から12までのいずれか1項記載の安定なエマルジョンの製造方法。
【請求項14】
用いられる前記非イオン性乳化剤が、非イオン性界面活性剤を好ましくは1〜25%、更に好ましくは5〜20%の量で含み、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルおよびポリオキシアルキレンソルビタンエステルから選択され、好ましくは、ポリエチレングリコールオクチルエーテル、ポリエチレングリコールラウリルエーテル、ポリエチレングリコールトリデシルエーテル、ポリエチレングリコールセチルエーテル、ポリエチレングリコールステアリルエーテル、ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールドデシルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールセチルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールステアリルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールソルビタンモノステアレートおよびポリエチレングリコールソルビタンモノオレエートから選択される、請求項1から13までのいずれか1項記載の安定なエマルジョンの製造方法。
【請求項15】
実質的に明細書に記載され、添付した実施例を参照して説明されるような、150ナノメーター以下の粒度を有する安定なエマルジョンの製造方法。

【公表番号】特表2008−528775(P2008−528775A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553507(P2007−553507)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際出願番号】PCT/EP2006/000690
【国際公開番号】WO2006/081978
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】