説明

安定な均質溶融液の製造方法

1種以上のジアリールカーボネート、1種以上の高融点ジヒドロキシ芳香族化合物(mp>200℃)、エステル交換触媒及び適宜低融点ジヒドロキシ芳香族化合物を含有する固体混合物から200℃以下の温度で安定な均質溶融液を製造する。具体的には、4,4′−ビフェノール(mp282−284℃)を含有する固体混合物から、ジアリールカーボネート成分としてジフェニルカーボネート又はビス(メチルサリチル)カーボネートを用いて、温度約200℃で、安定な均質溶融液を製造する。初期の固体混合物中に相当量の高融点ジヒドロキシ芳香族化合物が存在する場合、安定な均質溶融液の形成には、エステル交換反応の存在が必要であることが分かる。種々の高融点ビスフェノール類:4,4′−ビフェノール、3,3,3,3′−テトラメチルスピロビインダンビスフェノール及び4,4′−スルホニルジフェノールを含有する固体混合物が、200℃、即ち純粋な状態の高融点ビスフェノール類の融点より著しく低い温度で安定な均質溶融液に変換される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホモポリカーボネート及びコポリカーボネートの製造に有用な安定な均質溶融液を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネートは、透明性、靱性、耐熱性、成形性を併せ持つことから、比較的低コストな熱可塑性樹脂として汎用されている。最も広く用いられているポリカーボネートはビスフェノールAポリカーボネートであり、全世界で毎年数十万トンが生産・販売されている。
【0003】
ポリカーボネートは、ホモポリカーボネートもコポリカーボネートも、溶剤の存在しない系で、つまりジアリールカーボネートと1種以上のビスフェノールをエステル交換触媒の存在下で加熱して溶融状態とする「溶融法」と称される方法で製造するのが有利である。溶融法には、塩化メチレンのような溶剤を用いてポリカーボネートを製造する一般的な界面法と比べて、幾つかの利点がある。塩化メチレンは低沸点の塩素含有炭化水素であり、これを使用すると、偶発的な環境汚染を避けるために、高価な工学的手段が必要となる。一般的な問題として溶融法は、排出物の抑制に関しての要求が低い。溶剤を使用せず、生成する唯一の主たる揮発性副生物であるフェノールは極めて高い沸点(bp182℃)をもち、そのため水冷凝縮器のような通常の工学的手段を用いて封じ込めるのがさほど困難でないからである。しかし、溶融法には幾つかの欠点があり、最も重大なのは反応体を約180〜約0.1mbarの低い圧力で250〜320℃の比較的高い温度に加熱しなければならないことである。高温の使用はほとんど必ず、望ましくない副反応が重合反応中に起こるという事態を招く。溶融法で生起する望ましくない副反応のうち最も注目すべきはフリース(Fries)反応である。ポリカーボネート生成物中にフリース反応生成物が存在すると、ポリカーボネート生成物の色、安定性及び流動性に悪影響を生じる。
【0004】
溶融法でポリカーボネートを製造する場合、溶融法に用いる反応体であるジアリールカーボネート及びジヒドロキシ芳香族化合物の溶融混合物を製造し、次にこれを重力流れによるか流体を圧送できるポンプにより1つの溶融反応器又は一連の溶融反応器に導入するのが好都合であることを確かめた。この方法は、ジアリールカーボネート及びジヒドロキシ芳香族化合物の融点が低い場合には難点がほとんどないが、ジアリールカーボネート又はジヒドロキシ芳香族化合物いずれかの融点が200℃を超える場合には、深刻な工学的な難問を提起する。ジアリールカーボネート及びジヒドロキシ芳香族化合物の混合物が高融点のビスフェノール、例えば4,4′−ビフェノールを含有する場合、溶融重合反応に供給原料として使用するのに適当な均質な溶融物を得るのが難しいことが多い。ジアリールカーボネート及び高融点ジヒドロキシ芳香族化合物の混合物から、溶融液の再凝固に関して、また溶融液を構成する個別成分の沈殿に関して安定である、安定な均質溶融液を生成する手段を見いだすことが強く望まれている。さらに、ジアリールカーボネート及び融点200℃を超えるジヒドロキシ芳香族化合物の混合物から、最高融点のジヒドロキシ芳香族化合物成分の融点より著しく低い温度で、安定な均質溶融液を生成する手段を見いだすことが強く望まれている。
【特許文献1】欧州特許出願公開第0673959号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0703262号明細書
【特許文献3】国際公開第01/38418号パンフレット
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明が提供する安定な均質溶融液の形成方法は、
1種以上のジアリールカーボネート、融点200℃を超える1種以上の第1のジヒドロキシ芳香族化合物、触媒量の1種以上のエステル交換触媒及び任意成分として融点200℃未満の1種以上の第2のジヒドロキシ芳香族化合物を含有する混合物を調製し、混合物は第1及び第2のジヒドロキシ芳香族化合物を合わせて合計モル数で含有し、
上記混合物を200℃以下の温度に加熱して安定な均質溶融液とする
工程を含む。
【0006】
別の観点では、本発明はコポリカーボネートの製造に安定な均質溶融液を用いることに関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明を一層よく理解できるように、以下に本発明の好適な実施形態及び本発明の範囲に含まれる実施例を詳しく説明する。以下の明細書及び特許請求の範囲で、多数の用語に言及するが、これらの用語は以下の意味をもつと定義される。
【0008】
単数表現は、文脈上明らかにそうでない場合以外は、複数も含む。
【0009】
「適宜」又は「任意成分として」は、後述する事象や状況が起こっても起こらなくてもよいことを意味し、関連する説明は事象が起こった場合と事象が起こらなかった場合両方を包含する。
【0010】
本明細書中で用いる用語「コポリカーボネート」は、2つ以上のジヒドロキシ芳香族化合物から誘導された構造単位を含有するポリカーボネートを示し、コポリカーボネート及びポリエステルカーボネートを包含する。
【0011】
「BPA」はビスフェノールA、即ち2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと定義される。
【0012】
本明細書中で用いる用語「ビスフェノールAのコポリカーボネート」は、BPA及び1種以上の他のジヒドロキシ芳香族化合物から誘導された繰り返し単位を含むコポリカーボネートを示す。
【0013】
本明細書中で用いる用語「溶融ポリカーボネート」は、1種以上のジアリールカーボネートと1種以上のジヒドロキシ芳香族化合物とのエステル交換を含む方法で製造したポリカーボネートを示す。
【0014】
本明細書中で用いる用語「触媒系」は、溶融ポリカーボネートの製造においてジヒドロキシ芳香族化合物とジアリールカーボネートとのエステル交換反応を促進する1種又は複数種の触媒を示す。
【0015】
「触媒量」は触媒性能が発揮される触媒の量を示す。
【0016】
本明細書中で用いる用語「ジヒドロキシ芳香族化合物」は、2つのヒドロキシ基を有する芳香族化合物、例えばビスフェノール類、具体的にはビスフェノールA又はジヒドロキシベンゼン類、具体的にはレゾルシノールを意味する。
【0017】
本明細書中で用いる用語「ヒドロキシ芳香族化合物」は、フェノールやp−クレゾールのような、1つの反応性ヒドロキシ基を有するフェノール化合物を意味する。
【0018】
本明細書中で用いる用語「脂肪族基」は、環状でない原子の直鎖状又は分岐状配列を有する原子価1以上の基を示す。この配列はヘテロ原子、例えば窒素、硫黄及び酸素を含んでも、或いは炭素と水素のみからなってもよい。脂肪族基の例としては、メチル、メチレン、エチル、エチレン、ヘキシル、ヘキサメチレンなどが挙げられる。4,4′−ジヒドロキシベンゾフェノンのカルボニル基は原子価2の脂肪族基である。
【0019】
本明細書中で用いる用語「芳香族基」は、少なくとも1つの芳香族基を含む、原子価1以上の基を示す。芳香族基の例としては、フェニル、ピリジル、フラニル、チエニル、ナフチル、フェニレン及びビフェニルが挙げられる。この用語は芳香族成分と脂肪族成分両方を含む基、例えばベンジル基を包含する。フルオレセイン中の無水フタル酸から誘導された構造単位は原子価2の芳香族基として定義される。
【0020】
本明細書中で用いる用語「脂環式基」は、環状であるが、芳香族ではない、原子の配列を含む、原子価1以上の基を示す。この配列はヘテロ原子、例えば窒素、硫黄及び酸素を含んでも、或いは炭素と水素のみからなってもよい。脂環式基の例としては、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、テトラヒドロフラニルなどが挙げられる。
【0021】
前述したように、本発明は安定な均質溶融液の製造方法を提供し、この方法は、
1種以上のジアリールカーボネート、融点200℃を超える1種以上の第1のジヒドロキシ芳香族化合物、触媒量の1種以上のエステル交換触媒及び任意成分として融点200℃未満の1種以上の第2のジヒドロキシ芳香族化合物を含有する混合物を調製し、混合物は第1及び第2のジヒドロキシ芳香族化合物を合わせて合計モル数で含有し、
上記混合物を200℃以下の温度に加熱して安定な均質溶融液とする
工程を含む。
【0022】
ジアリールカーボネート、第1のジヒドロキシ芳香族化合物、エステル交換触媒及び任意成分として第2のジヒドロキシ芳香族化合物を含有する混合物を調製する手段は特に限定されない。混合物は、バッチ式混合プロセスで、例えばヘンシェル(Henschel)ミキサーで混合することにより調製でき、或いは連続プロセスで調製でき、後者では例えば混合物の諸成分を第1加熱連続撹拌槽反応器(CSTR=continuous stirred tank reactor)に連続的に供給して部分的に溶融した混合物を得、これを1個以上の下流CSTRに連続的に供給し、ここで安定な均質溶融液の形成を完了する。一実施形態では、部分的に溶融した混合物を第2CSTRに連続的に供給し、第2CSTRの出力を第3CSTRに連続的に供給する。
【0023】
別の方法では、ジアリールカーボネート、第1のジヒドロキシ芳香族化合物、エステル交換触媒及び任意成分として第2のジヒドロキシ芳香族化合物を含有する混合物を同じ装置内で調製し、加熱する。例えば二軸スクリュウ押出機を200℃未満の温度で運転し、そこに第1及び第2のジヒドロキシ芳香族化合物、エステル交換触媒及びジアリールカーボネートを押出機のスロートから固形物として導入すると、生成した安定な均質溶融液が押出機内での約1分の合計滞留時間の後に押出機のダイ前面から出てくる。
【0024】
安定な均質溶融液自体は、融点200℃を超える1種以上の第1のジヒドロキシ芳香族化合物、1種以上のジアリールカーボネート、触媒量の1種以上のエステル交換触媒及び任意成分として融点200℃未満の1種以上の第2のジヒドロキシ芳香族化合物を含む初期に形成された混合物の諸成分間の化学反応の生成物である。基本的熱力学的考察から分かるように、このエステル交換触媒に媒介されたジアリールカーボネートと第1及び第2のジヒドロキシ芳香族化合物間の化学反応の生成物は、混合物の諸成分間の「部分」もしくは「完全」反応の生成物いずれかである。安定な均質溶融液が混合物の諸成分間の「完全」反応の生成物である場合には、その溶液は「十分に平衡化されている」といえ、これは所定の温度について、加熱する時間の長さに関わりなく、溶融液の組成にそれ以上の変化が起こらないことを意味する。十分に平衡化された均質溶融液の組成は平衡組成であり、溶融液の組成のさらなる変化に関して安定である。例えば、200℃で、1モルのジフェニルカーボネート、0.2モルの4,4′−ビフェノール(融点(mp)282−284℃)及び1×10−5モルの酢酸テトラブチルホスホニウムから調製した十分に平衡化された溶融液は、未反応のジフェニルカーボネート、フェノール副生物及び4,4′−ビフェノールのビスフェニルカーボネート並びに他の化学反応生成物を含有し、ここで未反応ジフェニルカーボネート、フェノール副生物、4,4′−ビフェノールのビスフェニルカーボネート並びに他の化学反応生成物の相対量は時間経過につれて一定のままである。十分に平衡化された溶融液中に存在する種々の生成物及び出発材料の相対量は、溶融液の温度に依存する。一般的問題として、平衡定数及び平衡状態の組成は温度に依存する。前述したように、本発明の方法に準じて調製した所定温度での十分に平衡化された溶融液は、平衡状態にあるので、組成の変化に関して安定であるばかりでなく、溶融液の再凝縮もしくは溶融液からの個別成分の沈殿に関しても安定である。
【0025】
ある実施形態では、安定な均質溶融液は、混合物の諸成分間の不完全な化学反応の生成物である。このような場合、所定の温度にある溶融液は依然として組成変化を受ける。変態方向の化学反応の速度が回復方向の化学反応の速度より速いからである。勿論、平衡状態では、両速度が等しい。「変態方向」の化学反応の例は、ジフェニルカーボネートと4,4′−ビフェノールとが反応して4,4′−ビフェノールのモノフェニルカーボネート及びフェノール副生物を形成する反応である。対応する「回復方向」の化学反応は単に逆のプロセス、即ちフェノール副生物が4,4′−ビフェノールのモノフェニルカーボネートと反応してジフェニルカーボネート及び4,4′−ビフェノールを形成する反応である。本発明の方法で製造した安定な均質溶融液が十分に平衡化されていない場合、溶融液は溶融液の再凝固又は溶融液からの個別成分の沈殿に関して「安定」である。前述したように、溶融液は、内在する化学反応が平衡に向かって進行するので、溶融液の組成の変化に関して安定でない
本発明の方法で製造した安定な均質溶融液を「溶融液」(melt solution)と呼ぶのは、200℃未満の温度で易流動性の均質な液体であるからである。「溶液」と称するものの、外生の溶剤は存在しない。場合によっては、例えばジアリールカーボネートと第1及び第2のジヒドロキシ芳香族化合物のモル量がほぼ等しい十分に平衡化された系において、系がそれ自身の溶剤、即ち副生ヒドロキシ芳香族化合物を発生することが考えられる。例えば安定な均質溶融液が1.05モルのジフェニルカーボネート、0.1モルの4,4′−ビフェノール、0.9モルのビスフェノールA及び2.5×10−4モルの酢酸テトラブチルホスホニウムから調製されている、またさらに系が「十分に平衡化され」ている例を考える。このような安定な均質溶融液は、約200℃で、約40重量%以下の副生ヒドロキシ芳香族化合物であるフェノールを含有し、これが溶剤として作用する。
【0026】
エステル交換触媒として四級ホスホニウム塩を用いる本発明の実施形態において、安定な均質溶融液は、エステル交換触媒としてアルカリ金属水酸化物(例えば水酸化ナトリウム)を用いて調製した溶融液と比較して、溶融液の色の変化に関して、安定性が向上している。本明細書中で用いる用語「安定な均質溶融液」は、溶融液が「十分に反応」していてもいなくてもよいが、溶融液の再凝縮及び溶融液からの個別成分の沈殿に関して安定であることを意味する。
【0027】
本発明の方法に用いるジアリールカーボネートには、構造式Iのジアリールカーボネートがある。
【0028】
【化1】

【0029】
式中のRは各々独立にハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C〜C20アルキル基、C〜C20アルコキシカルボニル基、C〜C20シクロアルキル基又はC〜C20アリール基であり、p及びqは各々独立に0〜5の整数である。
【0030】
ジアリールカーボネートの例には、ジフェニルカーボネート、ビス(4−メチルフェニル)カーボネート、ビス(4−クロロフェニル)カーボネート、ビス(4−フロロフェニル)カーボネート、ビス(2−クロロフェニル)カーボネート、ビス(2−フロロフェニル)カーボネート、ビス(4−ニトロフェニル)カーボネート、ビス(2−ニトロフェニル)カーボネート、ビス(メチルサリチル)カーボネート及びメチルサリチルフェニルカーボネートがある。
【0031】
本発明の方法に用いる「第1のジヒドロキシ芳香族化合物」は、融点200℃を超える、好ましくは約205℃〜約325℃の範囲にある。本発明の方法に用いることのできる第1のジヒドロキシ芳香族化合物としては、構造式IIのビスフェノール類、構造式IIIのスピロ環状ビスフェノール類及び構造式IVのビナフトール類が挙げられる。
【0032】
【化2】

【0033】
式中、Rは各々独立にハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C〜C20アルキル基、C〜C20シクロアルキル基又はC〜C20アリール基であり、n及びmは各々独立に0〜4の整数であり、Wは単結合、酸素原子、硫黄原子、SO基、C〜C20脂肪族基、C〜C20芳香族基、C〜C20脂環式基又は次式の基である。
【0034】
【化3】

【0035】
式中、R及びRは各々独立に水素原子、C〜C20アルキル基、C〜C20シクロアルキル基又はC〜C20アリール基であるか、或いはRとRとが一緒にC〜C20脂環式環を形成するもので、該C〜C20脂環式環は適宜1以上のC〜C20アルキル基、C〜C20アリール基、C〜C21アラルキル基、C〜C20シクロアルキル基又はこれらの組合せで置換されていてもよい。
【0036】
【化4】

【0037】
式中、Rは各々独立にハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C〜C20アルキル基、C〜C20シクロアルキル基又はC〜C20アリール基であり、u及びvは各々独立に0〜3の整数である。
【0038】
【化5】

【0039】
式中、R及びRは各々独立にハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C〜C20アルキル基、C〜C20シクロアルキル基又はC〜C20アリール基であり、yは各々独立に0〜3の整数、zは各々独立に0〜4の整数である。
【0040】
構造式IIのビスフェノールの例には、4,4′−ビフェノール、4,4′−スルホニルジフェノール、4,4′−スルホニルビス(2−メチルフェノール)、4,4′−ジヒドロキシベンゾフェノン、フルオレセイン及び4,4′−(9−フルオレニリデン)ジフェノールがある。
【0041】
構造式IIIのスピロ環状ビスフェノールの例には、6,6′−ジヒドロキシ−3,3,3′,3′−テトラメチルスピロビインダン、5,5′−ジフルオロー6,6′−ジヒドロキシ−3,3,3′,3′−テトラメチルスピロビインダン、6,6′−ジヒドロキシ−3,3,3′,3′,5,5′−ヘキサメチルスピロビインダン及び6,6′−ジヒドロキシ−3,3,3′,3′,5,5′,7,7′−オクタメチルスピロビインダンがある。
【0042】
構造式IVのビナフトールの例には、1,1′−ビ−2−ナフトール、(R)−(+)−1,1′−ビ−2−ナフトール及び(S)−(−)−1,1′−ビ−2−ナフトールがある。
【0043】
前述したように、本発明の方法で安定な均質溶融液を製造する元の混合物は、「第2のジヒドロキシ芳香族化合物」を含有してもよい。これは、融点200℃未満のジヒドロキシ芳香族化合物ならいずれでもよい。一実施形態では、任意成分の第2のジヒドロキシ芳香族化合物は、構造式Vのビスフェノール類である。
【0044】
【化6】

【0045】
式中、Rは各々独立にハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C〜C20アルキル基、C〜C20シクロアルキル基又はC〜C20アリール基であり、b及びcは各々独立に0〜4の整数であり、Wは単結合、酸素原子、硫黄原子、SO基、C〜C20脂肪族基、C〜C20芳香族基、C〜C20脂環式基又は次式の基である。
【0046】
【化7】

【0047】
式中、R及びR10は各々独立に水素原子、C〜C20アルキル基、C〜C20シクロアルキル基又はC〜C20アリール基であるか、或いはRとR10とが一緒にC〜C20脂環式環を形成するもので、該C〜C20脂環式環は適宜1以上のC〜C20アルキル基、C〜C20アリール基、C〜C21アラルキル基、C〜C20シクロアルキル基又はこれらの組合せで置換されていてもよい。
【0048】
構造式Vのビスフェノールの例には、ビスフェノールA、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン及び1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンがある。多くの場合ビスフェノールAが好ましい。
【0049】
本発明の方法に用いるエステル交換触媒は、ジヒドロキシ芳香族化合物とジアリールカーボネートとのエステル交換反応を有効に促進できる触媒ならいずれでもよい。本発明の方法に使用するのに有利なエステル交換触媒には、四級アンモニウム化合物、四級ホスホニウム化合物又はこれらの混合物がある。四級アンモニウム化合物、四級ホスホニウム化合物又はこれらの混合物を、他のエステル交換触媒、例えば水酸化ナトリウムなどの金属水酸化物、酢酸ナトリウムなどのカルボン酸の塩、メタンスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸の塩、リン酸水素二カリウム(KHPO)などの非揮発性酸の塩、CsNaHPOなどの混成アルカリ金属リン酸塩と併用してもよい。エステル交換触媒を単一の四級ホスホニウム塩、例えば酢酸テトラブチルホスホニウムに限定するのが好ましいこともある。
【0050】
本発明の一実施形態では、エステル交換触媒は、構造式VIの四級アンモニウム化合物を含む。
【0051】
【化8】

【0052】
式中のR11〜R14は各々独立にC〜C20脂肪族基、C〜C20脂環式基又はC〜C20芳香族基であり、Xは有機又は無機陰イオンである。陰イオンは、代表的には、水酸化物イオン、ハロゲン化物イオン、カルボン酸イオン、フェノキシドイオン、スルホン酸イオン、硫酸イオン、炭酸イオン及び重炭酸イオンからなる群から選択される。
【0053】
構造式VIの四級アンモニウム化合物の例には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドなどがある。
【0054】
本発明の一実施形態では、エステル交換触媒は、構造式VIIの四級ホスホニウム化合物を含む。
【0055】
【化9】

【0056】
式中のR15〜R18は各々独立にC〜C20脂肪族基、C〜C20脂環式基又はC〜C20芳香族基であり、Xは有機又は無機陰イオンである。陰イオンは、代表的には、水酸化物イオン、ハロゲン化物イオン、カルボン酸イオン、フェノキシドイオン、スルホン酸イオン、硫酸イオン、炭酸イオン及び重炭酸イオンからなる群から選択される。
【0057】
構造式VIIの四級ホスホニウム化合物の例には、テトラメチルホスホニウムヒドロキシド、テトラフェニルホスホニウムヒドロキシド、酢酸テトラフェニルホスホニウム、ギ酸テトラメチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウムヒドロキシド及び酢酸テトラブチルホスホニウムがある。多くの場合、酢酸テトラフェニルホスホニウム及び酢酸テトラブチルホスホニウムが好ましい。
【0058】
代表的には、エステル交換触媒の使用量は、第1及び第2のジヒドロキシ芳香族化合物の合計1モル当たり約1.0×10−8〜約1.0×10−3モル、好ましくは約1.0×10−6〜約2.5×10−4モルの触媒の範囲である。これは、触媒の量を、安定な均質溶融液を調製する元である混合物中に最初に存在するジヒドロキシ芳香族化合物すべての合計モル数に対して測定することを意味する。例えば、混合物が2モルの4,4′−ビフェノール(「第1のジヒドロキシ芳香族化合物」)、5モルのビスフェノールA(「第2のジヒドロキシ芳香族化合物」)、7.5モルのジフェニルカーボネート及びエステル交換触媒として酢酸テトラフェニルホスホニウムを含有すると仮定する。第1及び第2のジヒドロキシ芳香族化合物の合計1モル当たり約1.0×10−8〜約1.0×10−3モルの触媒レベルを達成するために、酢酸テトラフェニルホスホニウムを約7.0×10−8〜約7.0×10−3モルの酢酸テトラフェニルホスホニウムに相当する量添加する。エステル交換触媒が2つ以上の触媒種からなる、例えば酢酸テトラフェニルホスホニウムと水酸化ナトリウムの混合物である場合、第1及び第2のジヒドロキシ芳香族化合物の合計1モル当たり約1.0×10−8〜約1.0×10−3モルの触媒が意味するエステル交換触媒の量は、個々の触媒各々のモル数の和(PhPOAcモル数+NaOHモル数)を安定な均質溶融液を調製する元である混合物中に最初に存在するジヒドロキシ芳香族化合物すべてのモル数の和で割った商が、混合物中に最初に存在する全ジヒドロキシ芳香族化合物1モル当たり約1.0×10−8〜約1.0×10−3モルの全触媒の範囲にあることを意味する。
【0059】
エステル交換触媒は、1種以上のアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物又はこれらの混合物を含有してもよい。本発明の一実施形態では、エステル交換触媒は、1種以上のアルカリ金属水酸化物又は1種以上のアルカリ土類金属水酸化物を含有する。代表的には、触媒が金属水酸化物を含有する場合、その金属水酸化物が、混合物中に最初に存在する全ジヒドロキシ芳香族化合物1モル当たり約1×10−8〜約1×10−5モルの金属水酸化物に相当する量で存在する。アルカリ金属水酸化物の例には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムがある。アルカリ土類金属水酸化物の例には、水酸化カルシウム及び水酸化マグネシウムがある。
【0060】
エステル交換触媒は、カルボン酸のアルカリ金属塩、カルボン酸のアルカリ土類金属塩又はこれらの混合物を含有してもよい。本発明の一実施形態では、エステル交換触媒は、1種以上のカルボン酸のアルカリ金属塩又は1種以上のカルボン酸のアルカリ土類金属塩を含有する。本発明の一実施形態では、触媒は、アルカリ金属イオン(ナトリウムイオン)及びアルカリ土類金属イオン(マグネシウムイオン)両方を含有するテトラカルボン酸(エチレンジアミンテトラカルボン酸)の塩である、NaMgEDTAを含有する。
【0061】
エステル交換触媒は、1種以上の非揮発性無機酸の塩を含有してもよい。本発明の一実施形態では、触媒は1種以上の非揮発性無機酸の塩を含有する。非揮発性無機酸の塩の例には、NaHPO、NaHPO、NaHPO、KHPO、CsHPO及びCsHPOがある。
【0062】
エステル交換触媒は、1種以上のリン酸の混成アルカリ金属塩を含有してもよい。リン酸の混成アルカリ金属塩の例には、NaKHPO、CsNaHPO及びCsKHPOがある。
【0063】
一実施形態では、本発明の方法で調製した安定な均質溶融液を用いてコポリカーボネートを製造する。つまり、1種以上のジアリールカーボネート、融点200℃を超える1種以上の第1のジヒドロキシ芳香族化合物、触媒量の1種以上のエステル交換触媒及び融点200℃未満の1種以上の第2のジヒドロキシ芳香族化合物を含有する混合物を200℃未満の温度に加熱することによって製造した安定な均質溶融液を、第1連続撹拌槽反応器(CSTR)に導入し、反応器を約220〜280℃の範囲の温度及び180〜20mbarの範囲の圧力で運転する。第1連続撹拌槽反応器から出てくる生成物は、数平均分子量Mnが約1000〜約7500ダルトンの範囲にあるオリゴマー状コポリカーボネートである。第2工程で、このオリゴマー状コポリカーボネートを約15〜0.1mbarの範囲の圧力下で約280〜310℃の範囲の温度に加熱して、数平均分子量Mnが約8,000〜約50,000ダルトンの範囲にあるコポリカーボネート生成物を得る。本発明の一実施形態では、コポリカーボネート生成物は、4,4′−ビフェノール及びビスフェノールAに由来する繰り返し単位を含有し、これらの繰り返し単位の相対モル量が約0.1:1〜約10:1の範囲にある。
【実施例】
【0064】
以下に実施例を示して、どのように本発明の方法を実施し評価するかについて当業者に十分に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定することを意図したものではない。特記しない限り、部は重量部、温度は℃である。
【0065】
実施例1〜5(溶融液形成)
安定な均質溶融液を磁気撹拌バーを取り付けた一口丸底フラスコで調製した。外気条件下で、フラスコにジアリールカーボネート、高融点ビスフェノール、酢酸テトラブチルホスホニウム触媒及び適宜ビスフェノールAを、表1に記載のモル比でかつ合計重量で約5〜40gの安定な均質溶融液を生成するのに十分な量で仕込んだ。触媒は、約40重量%の酢酸テトラブチルホスホニウム(TBPA)を含有する水溶液として添加した。TBPA触媒溶液の添加容量は約5〜30μL(マイクロリットル)の範囲とした。各例で、触媒の使用量は混合物中に存在する全ビスフェノール1モル当たり約2.5×10−4モルのTBPAに相当した。次にフラスコに標準真空アダプターを取り付け、そのコックを開位置にした。こうしてフラスコの内部を実験中大気圧に維持した。次にフラスコを約200℃に予熱したオイルバスに沈め、フラスコの内容物を均質溶融液に達するまで約10分間にわたって観察した。次に溶融液の安定性を評価するために、溶融液を約200℃で約1時間撹拌した。実施例1〜5の各々で、均質溶融液は不変であった。
【0066】
比較例1〜12
実施例1〜5と同様の丸底フラスコに、表1に示す成分を、表1に示すモル比に相当するかつフラスコの内容物の合計重量が約5〜40gとなるような量で仕込んだ。その後の工程は実施例1〜5で説明したのと同じであった。比較例1〜12で調製した混合物はいずれも、200〜205℃で1時間加熱した後でも均質状態に達しなかった。
【0067】
表1にまとめたデータで本発明を具体的に説明する。データから分かるように、追加成分不在の場合、ジフェニルカーボネート対4,4′−ビフェノールのモル比が約2.22であるとき、ビスフェノール及びジフェニルカーボネートの安定な均質溶融液をエステル交換触媒の存在下で達成できる(実施例1)。ジフェニルカーボネート対4,4′−ビフェノールのモル比が低いと、200〜205℃の範囲で長時間加熱しても、均質溶融液は得られない。比較例7及び8では、かなりの量の低融点の追加成分を添加したが、混合物に触媒を入れなかった。比較例7及び8は、均質な溶融物を達成するにはエステル交換触媒が存在する必要があること、そして単にフェノールを添加することにより高融点ビスフェノールを含有する混合物の融点を降下しようとしてもうまくいかないことを示している。比較例7及び8で使用したフェノールのレベルが4,4′−ビフェノール及びジフェニルカーボネートの十分に平衡化した混合物に予想されるフェノールのレベルと同様であることは注目に値する。つまり、4,4′−ビフェノールの融点(282−284℃)よりはるかに低い温度(200℃)での均質溶融液の実現は、ジアリールカーボネートと高融点ビスフェノール成分との化学反応に依存していることが証明される。
【0068】
【表1】

【0069】
実施例2及び比較例9〜11は、ビス(メチルサリチル)カーボネート(BMSC)、4,4′−ビフェノール及びエステル交換触媒TBPAの混合物から安定な均質溶融液を調製する具体例である。データから、この3成分系で安定な均質溶融液を実現できるが、相当な量(高融点成分4,4′−ビフェノールに対して4.55モル当量)のBMSCが必要であることが分かる。実施例3から明らかなように、混合物に追加成分(本例ではBPA)を加えれば、このかなり過剰な量のBMSCを減らすことができる。最後に実施例4及び5は、第1のジヒドロキシ芳香族化合物としてビスフェノール類SBI(mp212−215℃)及びBPS(mp245−247℃)を含有する混合物から、高融点成分ビスフェノールの融点より著しく低い温度で、安定な均質溶融液を形成する具体例である。
【0070】
以上、本発明をその好適な実施形態について詳述したが、本発明の要旨の範囲内で種々の変更や改変が可能であることが当業者に明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定な均質溶融液の形成方法であって、
(a)1種以上のジアリールカーボネート、融点200℃を超える1種以上の第1のジヒドロキシ芳香族化合物、触媒量の1種以上のエステル交換触媒及び任意成分として融点200℃未満の1種以上の第2のジヒドロキシ芳香族化合物を含有する混合物を調製し、混合物は第1及び第2のジヒドロキシ芳香族化合物を合わせて合計モル数で含有し、
(b)上記混合物を200℃以下の温度に加熱して安定な均質溶融液とする
工程を含む方法。
【請求項2】
前記ジアリールカーボネートが構造式Iのジアリールカーボネートからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【化1】

式中、Rは各々独立にハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C〜C20アルキル基、C〜C20アルコキシカルボニル基、C〜C20シクロアルキル基又はC〜C20アリール基であり、p及びqは各々独立に0〜5の整数である。
【請求項3】
前記ジアリールカーボネートが、ジフェニルカーボネート、ビス(4−メチルフェニル)カーボネート、ビス(4−クロロフェニル)カーボネート、ビス(4−フロロフェニル)カーボネート、ビス(2−クロロフェニル)カーボネート、ビス(2−フロロフェニル)カーボネート、ビス(4−ニトロフェニル)カーボネート、ビス(2−ニトロフェニル)カーボネート、ビス(メチルサリチル)カーボネート、メチルサリチルフェニルカーボネートからなる群から選択される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
第1のジヒドロキシ芳香族化合物が構造式IIのビスフェノールである、請求項1記載の方法。
【化2】

式中、Rは各々独立にハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C〜C20アルキル基、C〜C20シクロアルキル基又はC〜C20アリール基であり、n及びmは各々独立に0〜4の整数であり、Wは単結合、酸素原子、硫黄原子、SO基、C〜C20脂肪族基、C〜C20芳香族基、C〜C20脂環式基又は次式の基である。
【化3】

式中、R及びRは各々独立に水素原子、C〜C20アルキル基、C〜C20シクロアルキル基又はC〜C20アリール基であるか、或いはRとRとが一緒にC〜C20脂環式環を形成するもので、該C〜C20脂環式環は適宜1以上のC〜C20アルキル基、C〜C20アリール基、C〜C21アラルキル基、C〜C20シクロアルキル基又はこれらの組合せで置換されていてもよい。
【請求項5】
構造式IIのビスフェノールが、4,4′−ビフェノール、4,4′−スルホニルジフェノール、4,4′−スルホニルビス(2−メチルフェノール)、4,4′−ジヒドロキシベンゾフェノン、フルオレセイン及び4,4′−(9−フルオレニリデン)ジフェノールからなる群から選択される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
第1のジヒドロキシ芳香族化合物が構造式IIIのスピロ環状ビスフェノールである、請求項1記載の方法。
【化4】

式中、Rは各々独立にハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C〜C20アルキル基、C〜C20シクロアルキル基又はC〜C20アリール基であり、u及びvは各々独立に0〜3の整数である。
【請求項7】
前記スピロ環状ビスフェノールが、6,6′−ジヒドロキシ−3,3,3′,3′−テトラメチルスピロビインダン、5,5′−ジフルオロー6,6′−ジヒドロキシ−3,3,3′,3′−テトラメチルスピロビインダン、6,6′−ジヒドロキシ−3,3,3′,3′,5,5′−ヘキサメチルスピロビインダン及び6,6′−ジヒドロキシ−3,3,3′,3′,5,5′,7,7′−オクタメチルスピロビインダンからなる群から選択される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記ジヒドロキシ芳香族化合物が構造式IVのビナフトールである、請求項1記載の方法。
【化5】

式中、R及びRは各々独立にハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C〜C20アルキル基、C〜C20シクロアルキル基又はC〜C20アリール基であり、yは各々独立に0〜3の整数、zは各々独立に0〜4の整数である。
【請求項9】
前記ビナフトールが、1,1′−ビ−2−ナフトール、(R)−(+)−1,1′−ビ−2−ナフトール及び(S)−(−)−1,1′−ビ−2−ナフトールからなる群から選択される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
第2のジヒドロキシ芳香族化合物が構造式Vのビスフェノールである、請求項1記載の方法。
【化6】

式中、Rは各々独立にハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C〜C20アルキル基、C〜C20シクロアルキル基又はC〜C20アリール基であり、b及びcは各々独立に0〜4の整数であり、Wは単結合、酸素原子、硫黄原子、SO基、C〜C20脂肪族基、C〜C20芳香族基、C〜C20脂環式基又は次式の基である。
【化7】

式中、R及びR10は各々独立に水素原子、C〜C20アルキル基、C〜C20シクロアルキル基又はC〜C20アリール基であるか、或いはRとR10とが一緒にC〜C20脂環式環を形成するもので、該C〜C20脂環式環は適宜1以上のC〜C20アルキル基、C〜C20アリール基、C〜C21アラルキル基、C〜C20シクロアルキル基又はこれらの組合せで置換されていてもよい。
【請求項11】
構造式Vのビスフェノールが、ビスフェノールA、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン及び1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンからなる群から選択される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記エステル交換触媒が四級アンモニウム化合物、四級ホスホニウム化合物又はこれらの混合物を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記四級アンモニウム化合物が構造式VIのものである、請求項12記載の方法。
【化8】

式中、R11〜R14は各々独立にC〜C20脂肪族基、C〜C20脂環式基又はC〜C20芳香族基であり、Xは有機又は無機陰イオンである。
【請求項14】
前記陰イオンが水酸化物イオン、ハロゲン化物イオン、カルボン酸イオン、フェノキシドイオン、スルホン酸イオン、硫酸イオン、炭酸イオン及び重炭酸イオンからなる群から選択される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記四級アンモニウム化合物がテトラメチルアンモニウムヒドロキシドである、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記四級ホスホニウム化合物が構造式VIIのものである、請求項12記載の方法。
【化9】

式中、R15〜R18は各々独立にC〜C20脂肪族基、C〜C20脂環式基又はC〜C20芳香族基であり、Xは有機又は無機陰イオンである。
【請求項17】
前記陰イオンが水酸化物イオン、ハロゲン化物イオン、カルボン酸イオン、フェノキシドイオン、スルホン酸イオン、硫酸イオン、炭酸イオン及び重炭酸イオンからなる群から選択される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記四級ホスホニウム化合物が酢酸テトラブチルホスホニウムである、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記エステル交換触媒が、第1及び第2のジヒドロキシ芳香族化合物の合計1モル当たり約1×10−8〜約1.0×10−3モルのエステル交換触媒に相当する量で存在する、請求項1記載の方法。
【請求項20】
前記エステル交換触媒がさらに、1種以上のアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物又はこれらの混合物を含有する、請求項12記載の方法。
【請求項21】
前記エステル交換触媒がさらに、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物及びこれらの混合物からなる群から選択される1種以上の金属水酸化物を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項22】
前記金属水酸化物の量が第1及び第2のジヒドロキシ芳香族化合物の合計1モル当たり約1×10−8〜約1×10−5モルの範囲にある、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記アルカリ金属水酸化物が水酸化ナトリウムであり、前記アルカリ土類金属水酸化物が水酸化カルシウムである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記エステル交換触媒が、1種以上のカルボン酸のアルカリ金属塩、カルボン酸のアルカリ土類金属塩又はこれらの混合物を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項25】
前記カルボン酸の塩がNaMgEDTAである、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記エステル交換触媒が1種以上の非揮発性無機酸の塩を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項27】
前記非揮発性酸の塩が、NaHPO、NaHPO、NaHPO、KHPO、CsHPO及びCsHPOからなる群から選択される、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記非揮発性酸の塩がリン酸の混成アルカリ金属塩である、請求項26記載の方法。
【請求項29】
前記リン酸の混成アルカリ金属塩が、NaKHPO、CsNaHPO及びCsKHPOからなる群から選択される、請求項28記載の方法。
【請求項30】
請求項1記載の安定な均質溶融液から製造したコポリカーボネート。
【請求項31】
安定な均質溶融液の形成方法であって、
(a)ジフェニルカーボネート、融点200℃を超える1種以上の第1のジヒドロキシ芳香族化合物、触媒量の1種以上のエステル交換触媒及びビスフェノールAを含有する混合物を調製し、
(b)上記混合物を200℃以下の温度に加熱して安定な均質溶融液とする
工程を含む方法。
【請求項32】
安定な均質溶融液の形成方法であって、
(a)ビス(メチルサリチル)カーボネート、融点200℃を超える1種以上の第1のジヒドロキシ芳香族化合物、触媒量の1種以上のエステル交換触媒及びビスフェノールAを含有する混合物を調製し、
(b)上記混合物を200℃以下の温度に加熱して安定な均質溶融液とする
工程を含む方法。

【公表番号】特表2006−505652(P2006−505652A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−550091(P2004−550091)
【出願日】平成15年10月24日(2003.10.24)
【国際出願番号】PCT/US2003/033719
【国際公開番号】WO2004/041908
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】