説明

安定な微生物の接種材料およびその製造方法

本発明は、微生物、固体担体、1つ以上の保護物質および水を含む安定な保存ペースト状の接種材料に関する。本発明は、さらに、固体担体を含む成長培地を使用する接種材料の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた保存安定性を有するペースト状の、安定で水を含有する微生物の接種材料および水を含有する微生物の接種材料の製造方法に関する。
【0002】
接種材料の機能は生きた微生物の活性に基づく。かかる産物はサイレージ保存のための生物学的調節剤、菌根の接種材料、窒素固定細菌の接種材料、プロバイオティクス細菌、パン酵母、食用キノコの種菌および乳酸菌を含む。
【背景技術】
【0003】
優良な保存安定性は、微生物の接種材料に必須である。かかる産物の貯蔵寿命は、例えば農業への適用のためには少なくとも3ヵ月、好ましくは12ヵ月であるべきである。
【0004】
微生物の接種材料は通常乾燥によって安定化される。これは、胞子を形成する微生物が長期の貯蔵寿命を達するために優良な方法である。しかしながら、多くの微生物および線虫は永続性のある胞子を形成せず、それゆえ、胞子の乾燥は複雑かつ非常に高価または不可能でさえあり得る。生きた微生物の乾燥は非常に厳しいユニット操作であり、通常は、生存能力のいくらかは乾燥方法に依存していつも失われている。乾燥はまた、厳密な無菌状態が必要とされる工程において雑菌の混入に対しても非常に脆弱である。
【0005】
生きた微生物を、細胞膜を安定化し、代謝を停止させ、浸透圧を調整し、または抗凍結剤として働くある種の保護剤を添加することにより非乾燥の形状で保存することもできる。培養物保存施設において微生物株は、一般的には極低温でグリセロール溶液中で保存される。かかる方法は接種材料の商業的な適用にはふさわしくない。
【0006】
微生物の接種材料を商業的スケールで製造する場合、該製剤は高価でなく、エンドユーザーによる使用が容易でなければならない。生物学的調節剤は、例えば、通常は灌漑システムを介して噴霧によって水懸濁液として使用されて土壌と混合されるか、または植物の根が該懸濁液中に浸される。同様に、種子のドレッシングまたはコーティングが一般的である。
【0007】
いずれの微生物の培養のための最も一般的な商業的方法も、水中発酵である。微生物の接種材料は、培養液から細胞塊および冠水させた胞子を分離することにより製造される。しかしながら、水中発酵は、特定の周知の欠点を有する。細胞は培養液から分離されなければならないので、大量の廃液がいつも生成する。さらに、液体培地中の微生物の成長形態は、安定な産物にとって理想的である永続的な生物ユニット、すなわち胞子の形成を必ずしも好まない。
【0008】
水中発酵の代わりのものは、固体発酵(SSF)である。固体発酵は、固体担体に対して水を含浸させた培養基上での微生物の培養方法として当業者に周知である。水中発酵に対して自由水の量が非常に少なく、固体粒子の表面上の微生物の成長形態が冠水成長とは異なる。
【0009】
含水の微生物の接種材料は、ほとんど市販されていない。微生物の接種材料は、通常は乾燥または半乾燥形状で保存され、液体形状で使用される。
【0010】
Torres et al.(J.Appl.Microbiol.94(330−339)2003)は、バイオコントロール酵母カンジダ サケ(Candida sake)の液体製剤を作製した。グリセロールまたはポリエチレングリコール(PEG)を、水分活性(a)を改善するために水中発酵で得られた細胞マスと混合し、様々な糖およびポリオールを保護物質として添加した。最終産物は液体であり、それ自体が保存され、いずれの固体担体の材料も含まない。
【0011】
US5587158においてWallおよびPrasadは、粉末状タルクおよびカオリンを含有する担体上での固体発酵により作製したコンドロステレウム プルプレウム(Chondrostereum purpureum)の調製を特許請求の範囲に記載している。コロニー化した成長培地は、それ自体が無菌的に冷蔵保存される。製剤は、希釈スクロース溶液(5%スクロースより薄い)、植物油、卵黄および粉末化したセルロースと培地とを混合することにより、木の切り株上で作られる。この特許で記載された該最終産物は、本質的に水和性粉末である。ペーストは応用目的のために作製されるが、保存用産物中で微生物を安定化させるためではない。
【0012】
WO0182704は、固体発酵により作製された噴霧可能な製剤を開示している。微生物は微細なピートなどの粒子状担体上で培養され、この形状で保存される。該固体培地は、噴霧による使用の直前に任意の増粘剤を含有する水中に懸濁される。この方法において、該産物は乾燥状態で保存され、懸濁液の状態で保存されない。この方法を使用して得られた産物は水和性粉末であり、噴霧可能なように使用時に液体中に懸濁されなければならない。
【0013】
Blachere et al.(Ann.Zool.Ecol.Anim.5,69−79,1973)は、水中発酵によりボーベリア ブロンクニアルティ(Beauveria brongniartii)を培養し、シリカ粉末、浸透圧活性物質(スクロースおよびグルタミン酸ナトリウムなど)、抗酸化剤(アスコルビン酸ナトリウム)および流動パラフィン−ポリオキシエチレングリセリンオレエートの混合物と混合する前に、遠心分離によって細胞マスを収集した。次いで、収集物を、換気された乾燥クローゼットで4℃で乾燥させた。この様式で乾燥させた出芽胞子は、4℃で8ヵ月間生存可能であった。この方法は、細胞の分離および乾燥後の慣用の液体発酵工程を記載している。製剤段階は、乾燥において産物の安定性を改良するためになされる。産物がペーストとして保存され得るという示唆はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、使用が容易でかつ実質的な劣化をせずに長期間保存可能な、微生物の接種材料の安定な保存ペーストを提供することである。産物の貯蔵寿命は、少なくとも2ヵ月、好ましくは6ヵ月、最も好ましくは12ヵ月であるべきである。
【0015】
別の目的は、生きた微生物を含有する接種材料の安定な保存ペーストの簡単な製造方法を提供することである。
【0016】
驚くべきことに、固体担体上で成長した微生物とともに固体担体を含有する成長培養基を多様な保護物質を含有する溶液と混合した時、生物ユニットの優れた長期に渡る安定性を有するペースト様の粘稠な懸濁液が得られることが見出された。
【0017】
したがって、該接種材料は、成長培地から細胞マスまたは胞子を分離する必要がなく、かつ微生物細胞または胞子を乾燥させる必要もなく製造可能である。微生物は、胞子を形成せず、従って乾燥させることは全くできないが、本発明によれば、容易に安定化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
SSFは一般的に微生物の接種材料、特に生物学的調節剤の製造に使用される。なぜなら、SSFが永続性のある高密度の胞子を得る効率的な方法だからである。担体が正確に選ばれれば、成長培地から細胞または胞子を分離する必要はなく、このことが水中培養と比べて下流の工程を非常に単純にする。かかる厳選された担体は、WO9218623に記載されており、その全ての内容が参照によって本発明に含まれる。新しい技術は、近年、SSFの利点を十分に利用するように、かつ微生物の接種材料がより良く使用できるように開発されてきた。かかる技術は、非公開特許出願FI20041253に記載されており、その全ての内容が参照によって本発明に含まれる。
【0019】
Mitchell et al.,Process Biochemistry 35(2000)1211−1225に示されるように、固体の培養基上で微生物を培養するための多様なタイプの反応装置が固体発酵のために開発されてきた。これらは、充填床反応装置、回転ドラム反応装置、気体−液体流動床反応装置および様々な種類のミキサー(米国特許公開2002031822号公報参照)が使用された反応装置を含む。
【0020】
本発明の方法によれば、固体担体が使用され、該担体は一つ以上の有機もしくは無機担体または両方の担体を含む。無機担体は好ましくはカオリン、ベントナイト、タルク、石膏、キトサン、バーミキュライト、パーライト、非晶質シリカもしくは粒状粘土、またはその混合物などである。このタイプの材料は、緩くて軽い粒状構造を形成するので、一般的に使用される。該粒状構造は、好ましくは粒子サイズが0.5〜50mmであり、表面積が大きい。有機担体は、好ましくは、セルロース、穀物、ふすま、おがくず、ピートもしくは木片またはその混合物などである。
【0021】
好ましい固体担体は、非晶質シリカであり、自己の重量の2倍を超える水分を吸収することができる。水分を含んだシリカの培地の粒状で、軽くかつ緩い構造は、固体培養に優れている。カオリン、ベントナイト、タルク、石膏、キトサンまたはセルロースなどの、他の不活性で小さな粒子サイズの担体粉末は、シリカと一緒に培地に添加してもよい。
【0022】
さらに、固体成長培地は、微生物のための追加の栄養素を含有し得る。典型的には、これらは炭化水素(糖、デンプン)、タンパク質または脂肪などの炭素源、有機形態(タンパク質、アミノ酸)、または無機窒素塩(アンモニウム塩および硝酸塩、尿素)の窒素源、微量元素あるいは他の成長因子(ビタミン、pH調整剤)を含む。固体成長培地は、超吸収剤(例えばポリアクリルアミド)などの構造的組成物のための補助を含有し得る。固体担体は、オイル、乳化剤および分散剤などの最終製剤の適用可能性を改良する成分も含有させることができる。
【0023】
接種材料のために培養されるべき微生物は、菌類を含む。菌類は酵母を含み、例えばフレビオプシス ギガンテア(Phlebiopsis gigantea)、グリオクラジウム エスピー.(Gliocladium sp.)、ネクトリア ピティロデス(Nectria pityrodes)、コンドロステレウム プルプレウム(Chondrostereum purpureum)、シュードザイマ フロックロサ(Pseudozyma flocculosa)、コニオチリウム ミニタンス(Coniothyrium minitans)、トリコデルマ エスピー.(Trichoderma sp.)、メタルヒジウム エスピー.(Metarrhizium sp.)、ベルティシリウム エスピー.(Verticillium sp.)、ミロセシウム エスピー.(Myrothecium sp.)またはベアウベリア バシアナ(Beauveria bassiana)などである。好ましくは、菌類はフレビオプシス ギガンテア(Phlebiopsis gigantea)、グリオクラジウム カテヌラタム(Gliocladium catenulatum)、ネクトリア ピティロデス(Nectria pityrodes)、ミロセシウム エスピー.(Myrothecium sp.)またはコンドロステレウム プルプレウム(Chondrostereum purpureum)である。菌類はさらにアガリクス ビスポルス(Agaricus bisporus)、レンチヌス エドデス(Lentinus edodes)またはプレウロタス オストレアタス(Pleurotus ostreatus)などのような食用キノコを含む。本発明による微生物は、ストレプトマイセス エスピー.(Streptomyces sp.)、バシルス ツリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)、他のバシルス エスピー.(Bacillus sp.)またはシュードモナス エスピー.(Pseudomonas sp.)などのバクテリア、好ましくはストレプトマイセス エスピー.(Streptomyces sp.)であり得る。さらに、線虫が、本発明により培養される微生物として使用され得る。
【0024】
接種材料は、液体または固体の形状で成長培地に供給される。
【0025】
液体培養基を接種材料として用いる場合、液体培養基は、例えば噴霧手法に使用可能な小さな粒子サイズを有する懸濁液の形状であり得る。
【0026】
接種材料が固体の形状である場合、固体成長培地を運搬するのと同様に植菌地点へ運搬され得る。好ましくは、固体接種材料は、スクリュー、バイブレーターまたはベルトコンベヤーを用いて運搬される。このことは、微生物が培養のために均一に無菌的に運搬可能であることを確実にする。
【0027】
固体成長培地上の微生物の培養は、培養条件、栄養および微生物自体にもよるが、通常1〜5週間かかる。ほとんどの場合で、胞子を形成している微生物が培養される時、胞子は生物ユニットの好ましい形状である。
【0028】
成長培地が微生物によってコロニー化される時、微生物を接種した該成長培地は、例えば浸透剤として機能する1つ以上の保護物質を含有する溶液と混合される。保護物質は、スクロース、フルクトース、ラクトース、トレハロース、グリセロール、ソルビトール、グリシンベタイン、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、カルボキシメチルセルロース、デンプンおよびペクチンまたはその混合物のような浸透圧活性物質、糖、ポリオールまたはポリマーから選択され得る。好ましくは、保護物質は、スクロース、ラクトース、トレハロース、ソルビトール、グリシンベタイン、ポリアクリルアミドから選択される。混合物は、均質で粘稠なペースト様の懸濁液を得るために攪拌される。粘稠なペースト様の懸濁液は、水分含量により、流動性のある懸濁液様のペーストから固体様のペーストまでであり得る。
【0029】
本発明においてペースト様の懸濁液を形成する時、水は、ペーストの水分含量が35重量%を超える量で使用される。十分な水が使用されるとき、集中的に成長するフィラメントが成長基質に結合し、大きな固体の塊が形成され得る。例えば、US5587158において、水分含量は過剰な成長を抑制するために低く保たれる(25%より低い)が、これは望まれない固体の塊を導くであろう。本発明において、ペーストの製剤が作製されるときに、塊が望まれ、続いて均質化で150μmより微細な粒子に破砕される。この方法では、最終ペーストは単一の品質を有し、溶液が形成されてもよい。これは噴霧装置のノズルを詰まらせない。
【0030】
本発明の産物は、安定した保存ペーストの形状の接種材料である。これは、0.25〜5重量%の微生物、5〜25重量%の固体担体、5〜35重量%の保護物質および100重量%までの水を含む。好ましくは、接種材料は、0.5〜1重量%の微生物、10〜15重量%の固体担体、5〜15重量%の保護物質および100重量%までの水を含む。
【0031】
該産物のpHは、一般的な酸(例えばリン酸)、塩基または緩衝液(例えばリン酸緩衝液)で容易に調節可能である。該産物の好ましいpHは、約4未満である。
【0032】
ペースト様懸濁液は、適切なサイズの密閉されたパッケージに詰められて保存される。好ましくは+4〜+8℃で冷却され、冷凍されまたは短期間室温で保存される。保存された接種材料のペーストは、35から90重量%の水、好ましくは約70重量%の水から構成される。
【0033】
希釈標準溶液を保存ペーストから使用するために調製するとき、該ペーストは均質な溶液を形成するように水と混合される。特別な混合装置や追加の物質は必要なく、したがって、使用は周囲の環境とは関係なく容易である。
【0034】
本発明は、以下の限定されない実施例によって、さらに記載される。
【実施例】
【0035】
実施例1
フレビオプシス ギガンテア(Rotstop、Verdera Oyの商標)は、シリカを基本とする固体成長培地上で培養された。
【0036】
P.ギガンテアに適した栄養溶液は、濃縮蒸留かす(CDG、Altia Oyj)9gを水道水33gに溶解して調製した。該溶液は、粒状成長培地を形成するために非晶質シリカ粉末(Degussa)15gとビーカー中で混合した。混合の前に石灰700mgを加えて、pHを調節した。該培地をオートクレーブ中で121℃で30分間滅菌した。
【0037】
冷却した培地に、ポテトデキストロース寒天皿から滅菌水へP.ギガンテア胞子を懸濁して得られた胞子懸濁液1mlを接種した。該菌を、培地全体でコロニー化し、胞子形成するまで28℃で10日間培養した。
【0038】
コロニー化した培地10gを、水分含量が約70%である粘稠なペースト様の懸濁液を形成するために、保護剤2.5gおよび滅菌水7.5gを含有する溶液10gと混合した。該保護物質は、
1)トレハロース
2)ソルビトール
3)トレハロース/ソルビトール(50/50)
4)トレハロース/グリシンベタイン(50/50)であった。
【0039】
該ペーストは、保存の前にUltra Turrax ホモジナイザーで150μmよりさらに小さな粒子サイズの懸濁液を形成するように均質化した。
【0040】
該懸濁液は、密閉されたプラスチックの試料ホルダー中に置き、冷蔵庫で4℃で保存した。懸濁液の生存率を月ごとに決定した:
【0041】
【表1】

【0042】
その結果、P.ギガンテアが少なくとも5ヵ月間は懸濁液製剤中で依然として生存していたことを示す。
【0043】
該ペーストは、林業従事者(forest harvester)によって深刻な病原菌ヘテロバシジオン アノサム(Heterobasidion annosum)に対する切り株の処理のために使用された。希釈標準溶液は、水25Lにペースト25gを混合して作製した。該溶液は、標準的な切り株処理装置によりトウヒの切り株に噴霧した。該使用は、他の切り株処理剤と同様に行なった。
【0044】
実施例2
コンドロステレウム プルプレウム−菌は、可溶性16−9−22庭用肥料(garden fertilizer)(Kemira GrowHow Oyj)0.8g、麦芽シロップ(Oy Maltax AB)15g、水359gおよび非晶質シリカ粉末(Degussa)150gを含有する培地上で培養された。該培地は、実施例1と同様に混合し、オートクレーブした。菌は、成長培地が完全にコロニー化されるまで22℃で11日間培養された。
【0045】
コロニー化した培地10gを、保護剤2.5gおよび滅菌水7.5gを含有する溶液10gと混合し、72%の水を含有する粘稠なペースト様の懸濁液を形成した。該保護物質は、
1)トレハロース
2)ソルビトール
3)トレハロース/ソルビトール(50/50)
4)スクロースであった。
【0046】
実施例1と同様に、試料を保存し、生存率を分析した。
【0047】
【表2】

【0048】
その結果は、C.プルプレウムが少なくとも12ヵ月間は懸濁液製剤中で優れた安定性を有したことを示した。
【0049】
C.プルプレウムのペーストは、保存前に実施例1に記載のように均質化した。該ペーストは、1:10の希釈液を作製してブラシでトウヒの切り株を処理することにより、トウヒ林の管理に使用した。
【0050】
実施例3
菌ミロセシウム エスピー.を、濃縮蒸留かす3.0g、水34.5g、石灰0.6gおよび非晶質シリカ粉末(Degussa)15gを含有する培地上で培養した。培地を実施例1と同様に混合し、オートクレーブした。該菌を、成長培地全体でコロニー化し、胞子形成するまで18℃で15日間培養した。
【0051】
コロニー化した培地10gを、保護剤2.5gおよび滅菌水0.5%ポリアクリルアミドの溶液7.5gを含有する溶液10gと混合し、71%の水を含有する粘稠なペースト様の懸濁液を形成した。該保護物質は、
1)トレハロース
2)ソルビトール
3)トレハロース/グリシンベタイン(50/50)であった。
【0052】
実施例1および2と同様に、試料を保存し、生存率を分析した。
【0053】
ミロセシウム エスピー.のペーストは、さらに小さな粒子サイズの懸濁液を形成するために、保存の前にUltra Turraxホモジナイザーで均質化された。
【0054】
【表3】

【0055】
ミロセシウム エスピー.は、少なくとも3ヵ月間は懸濁液製剤中で生存した。
【0056】
該ペーストは、標準的な種子コーティング装置を用いて、イネ科植物の種子をコーティングするためなどに使用された。ミロセシウム エスピー.は、種子の発芽および成長刺激因子として作用する。
【0057】
実施例4
ストレプトマイセス エスピー.K61株バクテリア(Mycostop、Verdera Oyの商標)は、コーンスティープソリッド(CSS、Roquette、France)5.2g、ラクトース(Merck)5.2、石灰5.2g、非晶質シリカ粉末(Degussa)100gおよび水道水240gを含有する固体成長培地上で培養された。該培地を、実施例1と同様に混合し、オートクレーブした。バクテリアは28℃で7日間培養された。
【0058】
コロニー化された培地10gを、以下の10gと混合した。
【0059】
1)10%スクロース溶液(製品中78%水)
2)20%スクロース溶液(製品中73%水)
【0060】
試料は、4℃で冷蔵庫でプラスチックの試料ホルダー中で保存された。
【0061】
【表4】

【0062】
その結果は、ストレプトマイセス エスピー.が少なくとも12ヵ月間は懸濁液製剤中で優れた安定性を有したことを示した。
【0063】
実施例5
ミロセシウム エスピー菌は、4つの異なる培地で培養された:
【0064】
【表5】

【0065】
培地を、実施例1と同様に混合し、オートクレーブした。該菌は、培地が完全にコロニー化されるまで、培地4以外では18℃で15日間培養され、培地4では3ヵ月間培養された。
【0066】
コロニー化された培地それぞれ10gを、スクロース2gおよび0.5%ポリアクリルアミド溶液8gを含有する溶液10gと混合し、約74%の水を含有する懸濁液を形成した。試料は、実施例1と同様に保存された。
【0067】
【表6】

【0068】
その結果は、ミロセシウム エスピーが少なくとも7ヵ月間は懸濁液製剤中で生存したことを示した。
【0069】
実施例6
グリオクラジウム カテヌラタム菌(Prestop、Verdera Oyの商標)を、濃縮蒸留かす5.3g、水33.8g、石灰0.53gおよび非晶質シリカ粉末(Degussa)15gを含有する培地上で培養した。該培地を、実施例1と同様に混合し、オートクレーブした。該菌は、成長培地全体でコロニー化し、胞子形成するまで、18℃で15日間培養した。
【0070】
コロニー化された培地10gを、以下の10gと混合した。
1)10%スクロース溶液(製品中79%水)
2)20%スクロース溶液(製品中74%水)
3)10%ラクトース溶液(製品中79%水)
2)20%ラクトース溶液(製品中74%水)
【0071】
実施例1と同様に、試料を保存し、生存率を分析した。
【0072】
【表7】

【0073】
その結果は、G.カテヌラタムが少なくとも12ヵ月間は懸濁液製剤中で優れた安定性を有したことを示した。
【0074】
製剤2約60kgは、保存の前に100Lのディスパゲーター(dispergator)で均質化された。該ペーストは、一般的な病気である雪腐病を管理するためにゴルフコース上の芝草に噴霧することによって使用された。希釈標準溶液は、水500から1000Lとペースト10kgを混合することにより作製し、芝草を標準的な噴霧装置で処理した。
【0075】
開示された本発明は変更し得るように明細書に記載された特定の方法論、プロトコルおよび試薬に限定されないことは、理解される。明細書中で使用された用語は特定の実施態様を記載する目的のためのみに使用し、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるであろう本発明の範囲を限定することを意図しないことも同様に理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)0.25〜5%(%w/w) 微生物
b)5〜25%(%w/w) 固体担体
c)5〜35%(%w/w) 保護物質
d)100%(%w/w)まで 水
を含む、安定な保存ペースト状の接種材料。
【請求項2】
a)0.5〜2%(%w/w) 微生物
b)10〜20%(%w/w) 固体担体
c)5〜15%(%w/w) 保護物質
d)100%(%w/w)まで 水
を含む、請求項1に記載の接種材料。
【請求項3】
該微生物が酵母を含む菌類、バクテリアまたは線虫であることを特徴とする、請求項1または2に記載の接種材料。
【請求項4】
該微生物がフレビオプシス ギガンテア(Phlebiopsis gigantea)、コンドロステレウム プルプレウム(Chondrostereum purpureum)、グリオクラジウム カテヌラタム(Gliocladium catenulatum)、ネクトリア ピティロデス(Nectria pityrodes)、ミロセシウム エスピー.(Myrothecium sp.)、またはストレプトマイセス エスピー.(Streptomyces sp.)であることを特徴とする、請求項3に記載の接種材料。
【請求項5】
該固体担体がカオリン、ベントナイト、タルク、石膏、キトサン、セルロース、穀物、ふすま、おがくず、ピートもしくは木片、バーミキュライト、パーライト、非晶質シリカもしくは粒状粘土またはその混合物から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の接種材料。
【請求項6】
該固体担体が非晶質シリカを含むことを特徴とする、請求項5に記載の接種材料。
【請求項7】
該固体担体が非晶質シリカとカオリン、ベントナイト、タルク、石膏、キトサンまたはセルロースとの混合物を含むことを特徴とする、請求項5に記載の接種材料。
【請求項8】
該保護物質が浸透圧活性物質、糖、ポリオールおよびポリマーから選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の接種材料。
【請求項9】
該保護物質がスクロース、フルクトース、ラクトース、トレハロース、グリセロール、ソルビトール、グリシンベタイン、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、カルボキシメチルセルロース、デンプンおよびペクチンまたはその混合物から選択されることを特徴とする、請求項8に記載の接種材料。
【請求項10】
a.微生物を固体担体上で培養する工程、
b.生きた微生物および/または微生物の胞子を含有する工程(a)由来の該固体担体を、1つ以上の保護物質を含有する溶液と混合する工程、
c.該混合物をホモジナイズし、35w%を超える水を含有する保存ペーストを形成する工程
を特徴とする、安定な保存ペースト状の接種材料を製造する方法。
【請求項11】
該固体担体がカオリン、ベントナイト、タルク、石膏、キトサン、セルロース、穀物、ふすま、おがくず、ピートもしくは木片、バーミキュライト、パーライト、非晶質シリカもしくは粒状粘土またはその混合物から選択されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
該固体担体が非晶質シリカを含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
該固体担体が非晶質シリカとカオリン、ベントナイト、タルク、石膏、キトサンまたはセルロースとの混合物を含むことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
該微生物が酵母を含む菌類、バクテリアまたは線虫であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
該微生物がフレビオプシス ギガンテア(Phlebiopsis gigantea)、コンドロステレウム プルプレウム(Chondrostereum purpureum)、グリオクラジウム カテヌラタム(Gliocladium catenulatum)、ネクトリア ピティロデス(Nectria pityrodes)、ミロセシウム エスピー.(Myrothecium sp.)、ストレプトマイセス エスピー.(Streptomyces sp.)であることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
該保護物質が浸透圧活性物質、糖、ポリオールおよびポリマーから選択されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
該保護物質がスクロース、フルクトース、ラクトース、トレハロース、グリセロール、ソルビトール、グリシンベタイン、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、カルボキシメチルセルロース、デンプンおよびペクチンまたはその混合物から選択されることを特徴とする、請求項16に記載の方法。

【公表番号】特表2008−526190(P2008−526190A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548851(P2007−548851)
【出願日】平成17年12月30日(2005.12.30)
【国際出願番号】PCT/FI2005/000559
【国際公開番号】WO2006/070061
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(507221346)
【Fターム(参考)】