説明

安定な水性G−CSF含有組成物

本発明は、緩衝物質としてコハク酸および/または酒石酸を含む、極めて安定な水性G−CSF含有組成物に関する。本発明はまた、前述の組成物から得ることのできる凍結乾燥品および粉末、ならびにこのような凍結乾燥品および粉末を含む薬物キットに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、G−CSFを含む水性組成物、G−CSFの凍結乾燥品または粉末、およびこれらの凍結乾燥品または粉末を含む医薬キットに関する。
【発明の詳細な説明】
【0002】
G−CSF(顆粒球コロニー刺激因子)は、サイトカインのファミリーに属する、天然に存在する増殖因子である。G−CSFは、造血において決定的な役割を果たし、好中球および好中球の後続細胞の成熟、増殖、分化、および生存を高める。臨床上では、G−CSFは、腫瘍の制御に、特に化学療法後の好中球減少症の治療に主に用いられ、骨髄移植および感染性疾患の治療にも適用される。
【0003】
天然に存在する形態のヒトG−CSFは、システイン残基を5個有する分子量約20000の糖タンパク質である。これらの残基のうち4個は、タンパク質の活性に決定的である分子内ジスルフィド結合を2つ形成している。G−CSFは、その天然の供給源から少量しか得ることができないので、薬物を調製するためには、例えば、CHO(チャイニーズハムスターの卵巣)細胞などの哺乳動物の細胞、または大腸菌などの原核生物の細胞で発現させることにより得ることができるリコンビナントの形態のG−CSFが主に用いられる。哺乳動物の細胞で発現されるリコンビナントのタンパク質は、グリコシル化のパターンが異なるという点で天然に存在するG−CSFと異なるが、大腸菌で発現された、細菌での発現の結果としてさらなるN末端のメチオニン残基を有することがあるタンパク質は、完全にグリコシル化を欠いている。
【0004】
G−CSFの製剤は、タンパク質が高度に疎水性であるために、特に、非グリコシル化のリコンビナントの形態のタンパク質の場合は比較的不安定である。分子はバイアル、シリンジなどの壁面に容易に吸着し、二量体またはより高次の凝集体を形成し、脱アミド、酸化、ジスルフィド結合の切断、またはタンパク質分解などの化学的修飾を受けるので、特にタンパク質を長期間貯蔵する際に、活性の損失のあることが多い。これは、例えば、G−CSFを一定の投与量で長期間にわたり投与する場合には、一方では費用上の理由で、他方では治療上の理由で不都合である。さらに、例えば、二量体化、酸化、または分解により形成された生成物は、望ましくない免疫反応を引き起こすことがある。加えて、従来のG−CSF製剤は、例えば、輸送中に液体製剤を振盪した結果生じるかもしれない機械的応力に、および1回のまたは繰返しの凍結および解凍に感受性がある。両者とも、多量体および凝集体の望ましくない形成、ならびに活性の損失をもたらすこともある。
【0005】
ドイツ特許公開第3723781号明細書は、有効成分としてG−CSFを含む、少なくとも1つの製薬上許容される界面活性剤、サッカライド、タンパク質、または有効成分を安定化するための高分子量の化合物を含む薬物を記載している。特に有利な界面活性剤として、脂肪族脂肪酸、例えば、モノオレイン酸またはモノラウリル酸の、ポリオキシソルビタンエステルが提唱されており、これらはヒト血清アルブミンおよびマンニトールと一緒に使用される。界面活性剤は、G−CSFの重量に対し1〜10000部の重量の量で用いるのが好ましい。pH値7.4が特定される水性のリン酸塩で緩衝化した製剤は、長時間にわたり4℃で安定である。
【0006】
しかし、記載されている医薬製剤にはいくつかの欠点がある。例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween(登録商標)80)などの界面活性剤が、特により高濃度で存在すると薬物の投与時に局所刺激を生じる可能性があるので、医学上完全に安全というわけではない。さらに、高温では、このような界面活性剤は、記載されているリン酸緩衝液中では、G−CSFの遊離システイン残基の接近性がより良くなるので、望ましくない二量体および多量体の形成に好都合に働き、したがってG−CSFの活性は高温では大変速やかに減少する。さらに安定化剤として大量に用いられるヒトおよび動物起源のタンパク質およびペプチドには抗原性の性質があるため、ヒトに免疫反応を引き起こすことがあるので、同様に潜在的なリスクを伴い、ウィルス汚染もまた完全に排除されないことがある。
【0007】
欧州特許出願公開第0373679号明細書は、G−CSFを、伝導率ができるだけ低いと有利である、pH値が2.75〜4.0の溶液中に調合すると、長期間にわたり安定を保つことができることを開示している。これらの製剤では、G−CSFの凝集を避けるために緩衝液を使用しないことが好ましいが、カルボン酸、クエン酸、乳酸、または酒石酸を、緩衝物質として2mM未満の少量で用いてもよい。しかし、生理的pH値に近いpH値を有する安定な製剤は、これらの条件下では不可能である。
【0008】
Herman,A.C.ら(「Characterisation,Formulation,and Stability of Neupogen(登録商標)(Filgrastim),a Recombinant Human Granulocyte−Colony Stimulating Factor」、Formulation Characterisation and Stability of Protein Drugs、p.303−p.328、R.PearlmanおよびY.J.Wang編集、Plenum Press、ニューヨーク、1996年)は、酢酸ナトリウム10mM、pH4.0、0.5%マンニトール、および0.004%ポリソルベート80を含む、非グリコシル化のリコンビナントG−CSFの安定化した組成物を記載している。このような組成物は、2〜8℃で、24ヶ月を超える間安定である。しかし、この系を使用して、よりpH値の高い安定な組成物は可能ではない。
【0009】
国際公開第94/14466号パンフレットは、緩衝物質として酢酸、乳酸、クエン酸、マレイン酸、リン酸、アルギニン、およびこれらの塩を含むことができ、pH値が2.5〜5.0および7〜8であるG−CSF含有の水性医薬製剤を開示している。これらの製剤では、例えば、溶液の振盪中に起こることがあるような機械的応力によるG−CSFの多量体および凝集体の形成は減少する。しかし、特に高温では、これらの調製物におけるG−CSFの活性は速やかに減少し、長期の安定性は十分ではない。
【0010】
欧州特許出願公開第0306824号は、ヒトタンパク質、特に、エリスロポエチンの安定化した調製物を記載しており、この調製物では、尿素、アミノ酸、および洗浄剤を添加することにより安定化が実現される。リン酸緩衝液など、注射用の溶液に用いられる緩衝液では、G−CSFはやはり高温では十分に安定ではない。
【0011】
国際公開第94/14465号パンフレットは、マルトース、サッカロース、ラフィノース、トレハロース、またはアミノ糖を含む、G−CSFの凍結乾燥した医薬製剤を開示している。しかし、これらの凍結乾燥物の水溶液も、長期間にわたり十分に安定ではない。
【0012】
欧州特許出願公開第1197221号は、リジン、ヒスチジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、スレオニン、およびアスパラギン、ならびに1つまたは複数の疎水性アミノ酸の群の、1つまたは複数のアミノ酸を含む、pH値が5〜7である長期間安定なG−CSF製剤を開示している。G−CSF分子のメチオニン残基の酸化を避けるために、製剤にアミノ酸であるメチオニンを加えている。
【0013】
本発明の目的は、血清タンパク質が存在しなくても、広いpH範囲にわたり、高温で長期間にわたり安定であり、特に、薬剤の適用に有用である水性のG−CSF含有の組成物を提供することであった。
【0014】
今や驚くべきことに、緩衝物質としてコハク酸および/または酒石酸を含む水性のG−CSF含有の組成物では、G−CSF分子の二量体化または酸化などの化学的修飾は殆ど起こらないので、このような組成物は、高温でも、長期間にわたり、広範なpH内で、かつ生理的条件に近いpH値でも安定であることが見出されている。したがって、長期間貯蔵しても、活性の損失は殆どない。G−CSF含有の凍結乾燥品または粉末を、再構成し、または溶解する場合でも、機械的応力の下、例えば、G−CSF含有の組成物をろ過し、バイアルに満たし、シリンジに充填し、輸送する間、および凍結し、解凍する間、コハク酸および/または酒石酸の存在により、G−CSFタンパク質の望ましくない凝集または他の二次反応が防止され、したがって活性の損失が防止される。
【0015】
したがって、本発明の目的は、緩衝物質として遊離酸および/またはその塩の形態のコハク酸および/または酒石酸を含む水性G−CSF含有組成物、その調製方法、ならびに医薬製剤を製造するためのそれらの使用である。
【0016】
本発明の別の一目的は、G−CSF、ならびに遊離酸および/またはその塩の形態のコハク酸および/または酒石酸を含む凍結乾燥品および粉末、それらを調製するための方法、ならびに医薬製剤を製造するためのそれらの使用である。
【0017】
本発明の別の一目的は、物理的に分離したa)G−CSF含有の凍結乾燥品または粉末、ならびにb)遊離酸および/またはその塩の形態のコハク酸および/または酒石酸を含む水性溶剤を含む医薬キットである。
【0018】
本発明のさらなる実施形態は、特許請求の範囲、および以下の説明から明らかとなる。
【0019】
本発明による組成物におけるG−CSFタンパク質は、哺乳動物、特にヒトからのあらゆるG−CSFタンパク質であってもよく、それらに由来する変異体がヒトG−CSFに特徴的である造血において生物学的活性を実質的に有する限り、変異体であってもよい。本明細書で用いられるG−CSFは、したがって、天然起源のG−CSF、および合成またはリコンビナントのG−CSF、ならびにこれらの変異体(例えば、G−CSF遺伝子を原核生物で発現させた場合に得られるN末端のメチオニン残基を有するリコンビナントのヒトタンパク質、G−CSFの融合タンパク質、および天然に発生するG−CSFの1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠失、または挿入により得られるG−CSFタンパク質など)が含まれる。このG−CSFは、グリコシル化されたものでも、非グリコシル化のものでもよい。非グリコシル化のG−CSFは、例えば、大腸菌などの原核生物の細胞で発現させることにより得られるが、グリコシル化されたG−CSFは、天然の供給源から分離することにより、CHO細胞などの原核生物の細胞で発現させることにより、または合成的グリコシル化により得ることができる。合成的に修飾されたG−CSFは、例えば、酵素的グリコシル化により、または化学的ペグ化により得ることができる。本発明による組成物に有用なG−CSFの変異体は、例えば、欧州特許公開第0456200号に記載されている。好ましくは、リコンビナントの非グリコシル化のG−CSFが本発明による組成物に用いられ、より好ましい実施形態では、G−CSFは、例えば、ドイツ特許公開第3723781号に示されたヒトG−CSFのアミノ酸配列、またはそれらに由来する配列を含む。
【0020】
本発明による水性組成物、凍結乾燥品、および粉末を調製する場合に、緩衝物質であるコハク酸および酒石酸は、遊離酸の形態で使用してもよく、塩の形態で使用してもよい。コハク酸および酒石酸の塩として、特に生理的に許容される塩、例えば、アルカリ塩、アルカリ土類塩、またはアンモニウム塩が使用される。アルカリ塩およびアンモニウム塩、特に二ナトリウム塩が好ましい。所望により、本発明による水性組成物は、コハク酸および酒石酸の他にさらなる緩衝物質を含むことができるが、これは必須ではない。
【0021】
緩衝物質であるコハク酸および酒石酸の濃度は、所望のpH値でpH安定化効果も十分な緩衝能も達成されるが、同時に凝集を避けるためにイオン濃度およびそれによる伝導度をできるだけ低く保つように選択すると有利である。通常、水性組成物で緩衝物質が使用される濃度は、0.5〜150mM、好ましくは1〜100mM、より好ましくは1〜50mM、例えば、2〜20mMである。コハク酸と酒石酸を組み合わせて用いる場合、これらの緩衝物質の全濃度がこれらの範囲内であると有利である。
【0022】
本発明による組成物のpH値は、通常3.5〜6.0、例えば、4.0〜5.9である。好ましくは、pHは4.0を超え、例えば4.1〜5.7であり、特に4.2〜5.5であり、例えば4.5〜5.5である。所望により、他の酸および塩基を使用して、pH値を所望の値にさらに調製してもよい。適切な酸は、例えば、塩酸、リン酸、酢酸、クエン酸、およびリン酸二水素ナトリウムまたはカリウムである。適切な塩基は、例えば、水酸化アルカリおよび水酸化アルカリ土類、炭酸アルカリ、酢酸アルカリ、クエン酸アルカリ、およびリン酸水素二アルカリ、例えば、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムおよび二カリウム、ならびにアンモニアである。
【0023】
本発明による組成物におけるG−CSFの濃度は、使用目的に実質的に依存する。濃度の上限は、緩衝液におけるG−CSFの溶解性に起因する。薬剤組成物では、G−CSFは薬剤として有効な量で存在し、濃度は通常5mg/ml以下であり、例えば、0.0001〜5mg/ml、好ましくは0.0005〜4mg/ml、より好ましくは0.001〜2.5mg/ml、例えば、0.01〜1.5mg/mlである。しかし、バルク溶液(より高い濃度の出発溶液)では、濃度は10mg/mlおよびそれを超えてもよい。
【0024】
本発明による組成物は、さらなる一般的な、特に生理的に許容される安定化剤、および/または補助剤、および不活性成分、例えば、界面活性剤、等張化剤、アミノ酸、還元剤、抗酸化剤、錯化剤、助溶剤(cosolvents)、希釈剤、およびカオトロピック剤を含むことができる。
【0025】
好ましくは、本発明による組成物は、1つまたは複数の界面活性剤、例えば、非イオン性界面活性剤、例えば、EP−A−1 197 221に記載されているもの、特に脂肪族脂肪酸のポリオキシエチレンソルビタンエステルを含む。例えば、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート 20の商標名で入手可能)、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート 40)、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート 60)、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート 65)、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート 80)、およびトリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート 85)を挙げることができ、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタンおよびモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンが好ましい。本発明の有利な安定化緩衝系のため、これらの界面活性剤を、所望により、大変少ない量で、例えば、組成物の全体積に対して0.0005〜0.04%(w/v)、好ましくは0.001〜0.02%(w/v)の量で用いることができる。
【0026】
本発明による組成物は、特に薬剤の目的に使用する場合、患者の血液と等張であると有利である。これは、緩衝物質の適切な濃度を選択することにより、早くも実現することができる。しかし、生理的に良好に許容される組成物を製造するために、糖または糖アルコールなどのさらなる等張化剤を加えてもよい。適切な等張化剤は、例えば、ショ糖、マルトース、フルクトース、ラクトース、マンニトール、ソルビトール、およびグリセロールである。好ましくは、マンニトールおよびソルビトールが用いられる。等張化するために塩を使用することも可能であるが、イオン濃度が大変高いとG−CSFの凝集体の形成に好都合に働くので、塩は通常低濃度でのみ加える。等張化剤は、通常、組成物の全体積に対して10.0%(w/v)までの量で加える。好ましくは7.5%までの量、より好ましくは6.0%までの量、例えば0.1〜5.5%(w/v)が用いられる。
【0027】
アミノ酸として、例えば、グリシン、スレオニン、トリプトファン、リジン、ヒドロキシリジン、アルギニン、ヒスチジン、システイン、オルニチン、フェニルアラニン、メチオニン、グルタミン、アスパラギン、またはこれらの塩が用いられる。アミノ酸またはアミノ酸の塩は、0.1〜100mM、好ましくは1〜50mMの濃度で用いると適切である。
【0028】
適切な還元剤は、特にイオウ含有の還元剤、例えば、チオグリセロール、グルタチオン、ジチオグリコール、チオジグリコール、N−アセチルシステイン、チオソルビトール、チオエタノールアミン、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ジチオスレイトール、または特に1〜7個の炭素原子を有するチオアルカン酸(thioalkane acids)がある。還元剤は、0.1〜100mM、好ましくは1〜50mMの濃度で用いると適切である。
【0029】
抗酸化剤として、例えば、アスコルビン酸またはその塩、アスコルビン酸パルミテート、アスコルビン酸ステアレート、没食子酸トリアミル(triamyl gallate)、α−トコフェロール、酢酸トコフェロール、およびブチルヒドロキシアニソールを用いることができる。抗酸化剤は、0.1〜100mM、好ましくは1〜50mMの濃度で用いると適切である。
【0030】
有用な錯化剤は、例えば、クエン酸塩、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)、ピロリン酸ナトリウム、またはメタリン酸ナトリウムである。好ましくは、遊離酸またはその塩の形態のクエン酸塩が錯化剤として用いられる。錯化剤は、通常0.01〜20mM、好ましくは0.1〜10mM、最も好ましくは0.2〜5mMの濃度で用いられる。
【0031】
カオトロピック剤として、例えば、尿素、塩酸グアニジニウム(guanidinium hydrochloride)、またはイソシアン酸グアニジニウム(guanidinium isocianate)を用いることができる。カオトロピック剤は、0.1〜50mM、好ましくは1〜30mMの濃度で用いると適切である。
【0032】
所望により、本発明によるG−CSF含有組成物は、ヒト血清タンパク質などのさらなるタンパク質も含むことができる。しかし、外来のタンパク質に関連する危険性のため、さらなるタンパク質のない組成物が好ましい。
【0033】
本発明による組成物の調製は、それ自体が周知の方法で行うことができる。通常は、緩衝物質、ならびに任意選択でさらなる安定化剤、および/または補助剤、および不活性成分を、適切な量で、通常は滅菌水である水性溶剤に最初に溶解する。必要であれば、コハク酸および/または酒石酸の溶液を用いて、あるいは、例として上記に述べたもののような他の酸または塩基を用いてpH値を調整する。滅菌フィルターを通したろ過などの通常の滅菌段階の後、G−CSFを所望の濃度で加える。しかし、最初に水性溶剤中のG−CSFを提供し、次いでコハク酸および/または酒石酸でpHを所望の値に調整することも可能である。
【0034】
本発明による組成物は、特に薬剤組成物として使用され、安定化剤、および補助剤、および任意選択で存在する不活性成分は、生理的に許容されなければならない。この薬剤組成物は、様々な適用形態で用いることができる。
【0035】
例えば、この組成物は、特に、静脈投与、筋肉内投与、または皮下投与のための、注射または注入のための溶液、あるいは経口投与のための組成物であることができる。しかし、この組成物を、ヒドロゲルまたはリポソームなどのさらなる薬剤適用形態を製造するために用いることもできる。これらの医薬製剤を、G−CSFを用いることができるあらゆる適応症に、例えば、好中球減少症の治療に、骨髄移植に、および感染性疾患および腫瘍疾患の治療に用いることができる。
【0036】
さらに、本発明の目的は、遊離酸および/またはその塩の形態のコハク酸および/または酒石酸を含む、G−CSF含有の凍結乾燥品および粉末である。このような凍結乾燥品および粉末は、例えば、単に凍結乾燥により、または噴霧乾燥などにより、それ自体が周知の方法で、上記に記載された水性組成物から得ることができる。これらの凍結乾燥品および粉末では、G−CSF、コハク酸および/または酒石酸、ならびに任意選択でさらなる緩衝物質、安定化剤、および補助剤、および不活性成分は、水中に再び溶解したときに、対応する水性組成物と同様に高温でも長期間にわたり安定であるG−CSF含有組成物が得られるような量で存在する。
【0037】
本発明による凍結乾燥品または粉末を、例えば、凍結乾燥品または粉末が適切な量の水性溶剤から物理的に分離されている医薬キットの形態で提供することができる。次いで、この安定な緩衝化された水性組成物を、あらゆる所望のときに、例えば医療関係者が、調製することができる。
【0038】
一代替として、安定な水性組成物を調製するために必要な緩衝物質、および任意選択でさらなる安定化剤、補助剤および不活性成分は、水性溶剤のみに存在することができ、凍結乾燥品または粉末はG−CSFを含むにすぎず、あるいは緩衝物質、安定化剤、および補助剤、および不活性成分は、凍結乾燥品または粉末にも、水性溶剤にも存在することができる。
【0039】
本発明は、ここで以下の実施例により、より詳細に説明するが、本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0040】
1.長期間のインキュベートおよび高pHおよび高温後の、G−CSF含有組成物の安定性
【0041】
最初に、緩衝物質である二ナトリウム塩の形態のコハク酸および酒石酸を、ポリソルベート80およびマンニトールの蒸留滅菌水溶液と共に溶解し、次いで、コハク酸または酒石酸の緩衝液を用いてpH値を所望の値に調整して、G−CSF含有組成物を室温で調製した。滅菌フィルター(孔径0.2μm、Millipore(登録商標))を通してろ過した後、市販の非グリコシル化のリコンビナントヒトG−CSFを加えた。
【0042】
このようにして調製した、本発明による組成物の正確な製剤、およびそのpH値を、以下の表1〜6に示す。
【0043】
【表1】





【0044】
【表2】



【0045】
【表3】



【0046】
【表4】



【0047】
【表5】



【0048】
【表6】



【0049】
このようにして調製した500μlの組成物を、エッペンドルフ管で、4±1℃、25±1℃、および37±1℃で8週間インキュベートした。0.5%(w/v)マンニトールおよび0.004%(w/v)ポリソルベート80を含む10mM酢酸ナトリウム緩衝液、pH4.0中G−CSF0.3mg/mlのG−CSF含有製剤、ならびに0.5%(w/v)マンニトールおよび0.004%(w/v)ポリソルベート80を含む10mMリン酸緩衝液、pH4.0、5.0、および7.5中G−CSF0.3mg/mlのG−CSF含有製剤を、対照として使用した。
【0050】
インキュベートの間、様々な時間点でサンプルを採取し、化学的に非修飾の単量体G−CSFの残留量に関して、およびG−CSFの生物学的活性に関して分析した。単量体G−CSFの残留量が多く、および/またはG−CSFタンパク質の生物学的活性が実質的に一定であったことより、タンパク質の化学的修飾がなく、またはわずかな化学的修飾しか生じなかったことが示された。
【0051】
化学的に非修飾の単量体G−CSFの残留量の測定を、C4 Vydacカラムを使用して逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)で行った。移動相は、溶離液Aとしてトリフルオロ酢酸(TFA)で酸性化した水、および溶離液BとしてTFAで酸性化したアセトニトリルを含んでいた。AとBのリニアグラジエントで、流速0.2ml/分で1時間、クロマトグラフィーを行った。注入量は5μlだった。検出波長は206nmで、外部標準物質として既知のG−CSFの希釈物を用いて評価を行った。G−CSFの残留量は、Herman,A.C.の方法(上述)に従って、100%に設定した0日目の単量体G−CSFの初期含有量のピーク面積(PA)の%として決定した。
【0052】
長期間インキュベートした後のG−CSFの生物学的活性を決定することによるG−CSFの安定化の証明を、NFS−60バイオアッセイを用いて行った(Tohyama,K.ら、Japanese J.Cancer Res.80巻、335〜340頁、1989年)。このアッセイでは、様々な濃度のG−CSFに対する反応として細胞増殖の誘発を測定することにより、G−CSFの活性を決定した。デヒドロゲナーゼの活性を測定することにより、NFS−60細胞の増殖を追跡した。デヒドロゲナーゼは、臭化3−(4,5−ジメチルチアゾリル−2)2,5−ジフェニルテトラゾリウム(3−(4,5−dimethylthiatholyl−2)2,5−diphenyltetrazoliumbromide)(MTT)を還元して、ホルマザン(formazan)を生じるが、これを対照波長620nmを用い検出波長570nmで測光法により決定することができる。デヒドロゲナーゼ活性、および、したがって形成されたホルマザンの量は、NFS−60細胞の細胞計測数に直接相関がある。
【0053】
得られた結果を、以下に記載する。
【0054】
<コハク酸緩衝液を含む製剤において25℃でインキュベートした後のG−CSFの残留量>
【0055】
4週間および8週間インキュベートした後に25℃でインキュベートした組成物1〜27をRP−HPLC分析したところ(表1〜3、図1〜3)、25℃で8週間インキュベートした後でも、20、10、および5mMコハク酸緩衝液中におけるG−CSFの含有量は、組成物中の初期含有量に比べて依然として大変高いことが示された。本発明による組成物におけるG−CSFの安定性は、10mM酢酸、pH4.0を含む従来の製剤におけるG−CSFの安定性と比較可能であるが、ただし、かなり高いpH値においてである。図1〜3は、様々なpH値のコハク酸緩衝液を含む製剤の代表例を、pH4.0の従来の酢酸製剤と比較して示す。図1は、試験開始時(100%)、ならびにpH4.5、5.0、および6.0の20mMコハク酸緩衝液で4週間および8週間インキュベートした後のG−CSFの含有量を示す。図2は、試験開始時(100%)、ならびにpH4.0、4.5、5.0、および6.0の10mMコハク酸緩衝液で4週間および8週間インキュベートした後のG−CSFの含有量を示す。図3は、試験開始時、ならびにpH4.0、4.5、5.5、および6.0の5mMコハク酸緩衝液で4週間および8週間インキュベートした後のG−CSFの含有量を示す。
【0056】
4℃でインキュベートした場合、酢酸塩、およびコハク酸/酒石酸で緩衝化したG−CSF溶液は、記載されたpHの範囲内で比較可能であった(データは示さず)。
【0057】
<酒石酸緩衝液を含む製剤において25℃でインキュベートした後のG−CSFの残留量>
【0058】
4週間および8週間インキュベートした後に25℃でインキュベートした、組成物28〜54をRP−HPLC分析したところ(表4〜6、図4〜6)、25℃で8週間インキュベートした後でも、20、10、および5mM酒石酸緩衝液におけるG−CSFの含有量は、組成物中の初期含有量に比べて依然として大変高いことが示された。再度、本発明による組成物におけるG−CSFの安定性は、10mM酢酸塩、pH4.0を含む従来の製剤におけるG−CSFの安定性と比較可能であった。図4〜6は、pH4.0の従来の酢酸塩の製剤と比較した、様々なpH値の酒石酸緩衝液を含む製剤の代表例を示す。図4は、試験開始時(100%)、ならびにpH4.0、5.0、5.5、および6.0の20mM酒石酸緩衝液で4週間および8週間インキュベートした後のG−CSFの含有量を示す。図5は、試験開始時(100%)、ならびにpH4.5、5.5、および6.0の10mM酒石酸緩衝液で4週間および8週間インキュベートした後のG−CSFの含有量を示す。図6は、試験開始時(100%)、ならびにpH4.0、4.5、5.0、および6.0の5mMコハク酸緩衝液で4週間および8週間インキュベートした後のG−CSFの量を示す。
【0059】
4℃でインキュベートした場合、酢酸塩、およびコハク酸/酒石酸で緩衝化したG−CSF溶液は、記載されたpHの範囲内で比較可能であった(データは示さず)。
【0060】
<様々な緩衝液において37度でインキュベートした後のG−CSFの残留量>
【0061】
さらなる試験では、10mMコハク酸および酒石酸緩衝液、pH5.0において(製剤58および59)、10mM酢酸緩衝液、pH4.0において(製剤60)、ならびに10mMリン酸緩衝液、pH4.5、5.0、および7.5において(製剤55〜57)、37℃におけるG−CSFの長期の安定性を測定した(表7)。単量体G−CSFの量を、前の試験同様RP−HPLCを用いて測定し、図7および8に図示する。結果は、コハク酸緩衝液および酒石酸緩衝液を含む製剤中のG−CSFの含有量は、90日インキュベートした後でも10mM酢酸緩衝液、pH4.0中に観察される含有量と比較可能であったことを示している。それとは対照に、pH5.0の10mMリン酸緩衝液を含む製剤中のG−CSFの含有量は13日後でも劇的に減少し、20日後では無視できるほどに低値である。
【0062】
【表7】



【0063】
<コハク酸緩衝液および酒石酸緩衝液中で25℃および37℃でインキュベートした後のG−CSFの生物学的活性>
【0064】
上記2.2の下に記載されたバイオアッセイを用いて、25℃および37℃で貯蔵したいくつかの代表的製剤(表1〜6の、3、4、5、13、14、23、32、および41)を分析すると、本発明による緩衝物質であるコハク酸または酒石酸を様々な濃度(5〜20mM)で、かつ様々なpH値(pH4.5〜pH5.5)で含むG−CSF製剤の生物学的活性は、90日のインキュベート後でさえも、かつ25℃および37℃のストレスの条件下でも依然として初期の活性の80〜120%であることが示された(表8)。
【0065】
【表8】



【0066】
上記に記載した試験は、本発明による組成物におけるG−CSFの活性は、生理的pH値に近いpH値でも、長期間にわたり、かつ少なくとも37℃までの温度で安定であることを実証している。結果は、10mM酢酸塩、pH4.0における製剤と比較可能であり、pH5.0および7.5の10mMリン酸緩衝液を含む製剤よりも大幅に優れている。
【0067】
2.機械的応力に対するG−CSF製剤の安定性
【0068】
G−CSF含有組成物を、実施例1に記載したとおりに、室温で、最初に緩衝物質である二ナトリウム塩の形態のコハク酸および酒石酸を、任意選択で界面活性剤(ポリソルベート20またはポリソルベート80)および等張化剤(マンニトールまたはソルビトール)と共に、蒸留滅菌水中に溶解し、次いでコハク酸緩衝液または酒石酸緩衝液を用いてpH値を所望の値に調整することにより調製した。滅菌フィルター(孔径0.2μm、Millipore(登録商標))を通してろ過した後、市販の非グリコシル化リコンビナントヒトG−CSFを加えた。
【0069】
SCFインスタントシリンジ(instant syringes)(フランス、グルノーブル、Becton Dickinson)に、調製した組成物のサンプルを500μl充填し、機械的応力を生じるために、室温で、Vortex(登録商標)装置上で10秒間撹拌した。
【0070】
撹拌後の凝集に関するG−CSF組成物の試験を、Agilent Series 1100装置を用いてPhenomenex社のBioSep SEC S2000カラム(7.8×300mm、5μm)でサイズ排除クロマトグラフィーにより行った。溶離液として、NaCl 50mMを含む50mMリン酸緩衝液、pH7.0を使用した。イソクラティックにより流速0.4ml/分で45分間、カラム温度20℃で分析を行った。注入量は15〜25μlであり、15μgのタンパク質量に相当する。検出波長は214nmであり、Biorad社のゲルろ過標準物質(BioRad Art.Nos.151〜1901)を用い、溶出体積に対する分子量をプロットすることによりサイズの評価を行った。凝集体の形成は%で表され、機械的応力を与える前の単量体G−CSFの初期含有量に対する、サンプル中のG−CSFの二量体および高次の凝集体の量を示し、存在する単量体および凝集体に対するピーク面積から計算される。
【0071】
サンプルの組成、および試験の結果を、以下の表9に示す。示した値は、各3回の試験の平均値を表す。
【0072】
【表9】




【0073】
結果は、高温でpH値が5.0でも、コハク酸で緩衝化した製剤では、酢酸塩で緩衝化した製剤よりも、機械的応力を与えた後の凝集が少ないことを示している。したがって、本発明による組成物は、従来の組成物よりも機械的応力に対してより安定している。
【0074】
3.凍結および解凍後のG−CSF製剤の安定性
【0075】
3.1 低濃度の組成物の安定性
【0076】
G−CSF濃度が0.6mg/mlであるG−CSF含有組成物を調製した。実施例2に記載したとおりに調製を行った。
【0077】
安定性を試験するために、調製した組成物のサンプル500μlを、−70℃で一晩サンプルを凍結させ翌日20℃で解凍することにより1回の凍結/解凍サイクル下においた。解凍後、単量体G−CSFの残留量について、実施例2に記載したSECを用いてサンプルを速やかに分析した。
【0078】
試験の結果を以下の表10に示す。示した値は、3回の試験の平均値である。
【0079】
【表10】



【0080】
3.2 高濃度の組成物の安定性
【0081】
実施例3.1にしたがって、G−CSF含有組成物を調製した。ただしG−CSF濃度は3.0mg/mlとした。
【0082】
実施例3.1に記載したように安定性の試験を行った。ただし調製した組成物のサンプル1000μlを凍結/解凍サイクルに用いた。解凍後、実施例2に記載したようにサンプルをSECにさらし、サンプル中のG−CSF2量体および高次の凝集体の含有量を決定し、サンプル中の単量体G−CSFの初期含有量に対する%で表した。
【0083】
試験の結果を、以下の表11に示す。示された値は、3回の試験の平均値である。
【0084】
【表11】



【0085】
2量体および高次の凝集体の形成は、また、等電点電気泳動法により確認した(結果は示さず)。
【0086】
結果は、1回の凍結/解凍サイクル後、コハク酸で緩衝化したG−CSF製剤は、4.0を超えるpH値でも殆ど未変化の形態のG−CSFを依然として含むが、酢酸塩で緩衝化した製剤中の単量体G−CSFの含有量は大幅に減少することを示している。本発明による組成物は、したがって、従来の組成物よりも大幅に凍結/解凍サイクルに安定である。
【0087】
結論として、上記の試験は、本発明による組成物におけるG−CSFは、生理的pH値に近いpH値において、かつ少なくとも37℃までの温度で、長期間にわたり安定であることを示している。したがって、本発明による組成物は、例えば、生理的pH値による皮膚刺激を避けることができる注射用溶液に大変有用である。コハク酸および/または酒石酸の存在により、タンパク質を再構成する場合、例えば溶解中に、望ましくないG−CSFの反応をさらに防止する。加えて、本発明による組成物は機械的応力に対して安定であり、そのためこれらの製剤は、難なくろ過し、バイアルに満たし、またはシリンジに充填することができるだけではなく、あらゆる危険性なしに長距離にわたり輸送することもできる。本発明による組成物は、繰返しの凍結および解凍に対しても安定であり、このためG−CSF製剤の貯蔵安定性をさらにもっと延長することができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】RP−HPLCで測定し、0日目の単量体G−CSF(100%)の初期含有量のピーク面積(PA)の%として表した、pH値4.5〜6.0の20mMコハク酸緩衝液で25℃で4週間および8週間インキュベートした後の単量体G−CSFの残留量を、pH4.0の10mM酢酸緩衝液と比較して示す図である。
【図2】pH値4.0〜6.0の10mMコハク酸緩衝液で25℃で4週間および8週間インキュベートした後の単量体G−CSFの残留量を、pH4.0の10mM酢酸緩衝液と比較して示す図である。
【図3】pH値4.0〜6.0の5mMコハク酸緩衝液で25℃で4週間および8週間インキュベートした後の単量体G−CSFの残留量を、pH4.0の10mM酢酸緩衝液と比較して示す図である。
【図4】pH値4.0〜6.0の20mM酒石酸緩衝液で25℃で4週間および8週間インキュベートした後の単量体G−CSFの残留量を、pH4.0の10mM酢酸緩衝液と比較して示す図である。
【図5】pH値4.5〜6.0の10mM酒石酸緩衝液で25℃で4週間および8週間インキュベートした後の単量体G−CSFの残留量を、pH4.0の10mM酢酸緩衝液と比較して示す図である。
【図6】pH値4.0〜6.0の5mM酒石酸緩衝液で25℃で4週間および8週間インキュベートした後の単量体G−CSFの残留量を、pH4.0の10mM酢酸緩衝液と比較して示す図である。
【図7】pH4.5、5.0、および7.5の10mMリン酸緩衝液で37℃で13日および20日インキュベートした後の単量体G−CSFの残留量を示す図である。
【図8】pH5.0の10mMコハク酸緩衝液または酒石酸緩衝液で37℃で30日および90日インキュベートした後の単量体G−CSFの残留量を、pH4.0の10mM酢酸緩衝液と比較して示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緩衝物質として、遊離酸および/またはその塩の形態のコハク酸および/または酒石酸を含む水性G−CSF含有組成物であって、酒石酸濃度が2mM未満であり、pH値が4.0以下であり、緩衝物質としてコハク酸を含まない組成物は除外する組成物。
【請求項2】
組成物のpH値が3.5〜6.0、好ましくは4.0〜5.8、より好ましくは4.5〜5.5である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
コハク酸および/または酒石酸の塩が、アルカリ塩、アルカリ土類塩、またはアンモニウム塩から選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
コハク酸および/または酒石酸の塩が二ナトリウム塩である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
コハク酸および/または酒石酸が、0.5〜150mM、好ましくは1〜100mM、より好ましくは1〜50mMの濃度で存在する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
G−CSFが、0.0001〜5mg/ml、特に0.0005〜4mg/ml、好ましくは0.01〜1.5mg/mlの濃度で存在する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
1種または複数のさらなる安定化剤および/または補助剤、ならびに不活性成分、特に、界面活性剤、等張化剤、アミノ酸、還元剤、抗酸化剤、錯化剤、およびカオトロピック剤からなる群から選択される不活性成分をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
界面活性剤が、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、およびトリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンからなる群から選択される非イオン性界面活性剤である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
錯化剤がクエン酸塩である、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
等張化剤が、マンニトールおよび/またはソルビトールである、請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
医薬製剤としての、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
医薬製剤が、注射または注入のための溶液である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
G−CSF、ならびに遊離酸および/またはその塩の形態のコハク酸および/または酒石酸を含む、凍結乾燥品または粉末。
【請求項14】
コハク酸および/または酒石酸の塩が、アルカリ塩、アルカリ土類塩、またはアンモニウム塩から選択される、請求項13に記載の凍結乾燥品または粉末。
【請求項15】
コハク酸および/または酒石酸の塩が、二ナトリウム塩である、請求項13または14のいずれか一項に記載の凍結乾燥品または粉末。
【請求項16】
1種または複数のさらなる安定化剤、および/または補助剤、ならびに、特に、界面活性剤、等張化剤、アミノ酸、還元剤、抗酸化剤、錯化剤、およびカオトロピック剤からなる群から選択される不活性成分をさらに含む、請求項13〜15のいずれか一項に記載の凍結乾燥品または粉末。
【請求項17】
錯化剤がクエン酸塩である、請求項16に記載の凍結乾燥品または粉末。
【請求項18】
緩衝物質として遊離酸および/またはその塩の形態のコハク酸および/または酒石酸を含む水性G−CSF含有組成物を、それぞれ凍結乾燥または噴霧乾燥することにより得ることができる、請求項13〜17のいずれか一項に記載の凍結乾燥品または粉末。
【請求項19】
物理的に分離された、
a)G−CSF含有凍結乾燥品または粉末、および
b)遊離酸および/またはその塩の形態のコハク酸および/または酒石酸を含む水性溶剤
を含む、医薬キット。
【請求項20】
G−CSF含有凍結乾燥品または粉末が、遊離酸および/またはその塩の形態のコハク酸および/または酒石酸を含む、請求項19に記載の医薬キット。
【請求項21】
凍結乾燥品もしくは粉末、および/または水性溶剤が、1種または複数のさらなる安定化剤、および/または補助剤、ならびに、特に、界面活性剤、等張化剤、アミノ酸、還元剤、抗酸化剤、錯化剤、およびカオトロピック剤からなる群から選択される不活性成分をさらに含む、請求項19または20に記載の医薬キット。
【請求項22】
緩衝物質として遊離酸および/またはその塩の形態のコハク酸および/または酒石酸を含む水性溶剤中にG−CSFを溶解するステップを含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物を調製するための方法。
【請求項23】
請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物を凍結乾燥または噴霧乾燥するステップを含む、請求項13から18のいずれか一項に記載の凍結乾燥品または粉末を調製するための方法。
【請求項24】
G−CSFを安定化するための、遊離酸および/またはその塩の形態の、コハク酸および/または酒石酸の使用。
【請求項25】
医薬製剤を製造するための、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物の使用、または請求項13〜18のいずれか一項に記載の凍結乾燥品または粉末の使用。
【請求項26】
医薬製剤がヒドロゲルまたはリポソームを含む、請求項25に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−509101(P2007−509101A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536040(P2006−536040)
【出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【国際出願番号】PCT/EP2004/011875
【国際公開番号】WO2005/039620
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(506136302)ヘキサル バイオテック フォルシュング ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】