説明

安定な農薬分散液

【課題】 農業用オイル中のある種の農薬の安定な分散液を提供する。
【解決手段】 本発明の分散液は、粒状農薬、農業用オイル、及び、幾つかの場合には共重合された極性モノマーを有する農業用オイル溶解性ポリマーを含む。また、安定な分散液を形成する方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用オイル中の農薬の安定な分散液、及び該分散液を形成する方法に関する。特に、本発明は、0.5〜10ミクロンの粒子サイズを有し、塩素化ニトリル、トリアゾール、アルアルキルトリアゾール、トリアゾールアニリド、ベンズアミド、アルキルベンズアミド、ジフェニルエーテル、ピリジンカルボン酸、クロロアニリン、有機ホスフェート、ホスホン酸グリシン塩、及びこれらの混合物からなる群から選択される農薬;農業用オイル;及び3,000〜120,000の重量平均分子量を有し、2.5〜35重量%の共重合された極性モノマーを有する農業用オイル溶解性ポリマー;を含む、農業用オイル中の農薬の安定な分散液に関する。また、本発明は、2〜10ミクロンの粒子サイズを有するエチレンビスジチオカルバメート;農業用オイル;及び3,000〜90,000の重量平均分子量を有し、0〜35重量%の共重合された極性モノマーを有する農業用オイル溶解性ポリマー;を含む農業用オイル中の農薬の安定な分散液に関する。本発明は、また、この安定な分散液を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第3,773,926号には、植物の処理方法及びそのための組成物が開示されており、該組成物は、N−ビニル−2−ピロリジノン(4〜15%)/アルキルメタクリレート(85〜96%)コポリマー分散剤を用いて公知の農業用オイル中に分散したある種の農薬を含む。分散剤ポリマーは、約300,000〜約1,000,000の平均分子量を有すると開示されている。
【0003】
米国特許第3,131,119号には、親水性基と親油性基とのバランスを有する有機溶媒可溶性ポリマーを用いてオイル中に分散された、エチレンビスジチオカルバミン酸及びジメチルジチオカルバミン酸のようなジチオカルバミン酸の塩を含む組成物が開示されている。親油性基は、8〜24個の炭素原子を有する炭化水素基によって与えられる。親水性基は、多重エーテル基、カルボニル基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、アミド基及びアミノ基によって与えられる。有機溶媒可溶性ポリマーは、約100,000〜約2,000,000の分子量を有すると開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
種々の農薬の安定な分散液に対する必要性が未だ存在する。本発明者らは、驚くべきことに、従来開示されていたものよりも低い分子量を有する農業用オイル溶解性ポリマーを用いて、種々の安定な分散液を調製することができることを見出した。これらの組成物によって、分散液(また、濃縮物とも考えられる)を、栽培用途において有効に用いるために、暑い気候条件下においても、製造し保存することが容易になる。したがって、本発明は、農業用オイル中のある種の農薬の安定な分散液、及び該安定な分散液を形成する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、0.5〜10ミクロンの粒子サイズを有し、塩素化ニトリル、トリアゾール、アルアルキルトリアゾール、トリアゾールアニリド、ベンズアミド、アルキルベンズアミド、ジフェニルエーテル、ピリジンカルボン酸、クロロアニリン、有機ホスフェート、ホスホン酸グリシン塩、及びこれらの混合物からなる群から選択される農薬;農業用オイル;及び3,000〜120,000の重量平均分子量を有し、2.5〜35重量%の共重合された極性モノマーを有する農業用オイル溶解性ポリマー;を含む農業用オイル中の農薬の安定な分散液が提供される。
【0006】
本発明の第2の態様によれば、2〜10ミクロンの粒子サイズを有するエチレンビスジチオカルバメート;農業用オイル;及び3,000〜90,000の重量平均分子量を有し、0〜35重量%の共重合された極性モノマーを有する農業用オイル溶解性ポリマー;を含む農業用オイル中の農薬の安定な分散液が提供される。
【0007】
本発明の第3の態様によれば、塩素化ニトリル、トリアゾール、アルアルキルトリアゾール、トリアゾールアニリド、ベンズアミド、アルキルベンズアミド、ジフェニルエーテル、ピリジンカルボン酸、クロロアニリン、有機ホスフェート、ホスホン酸グリシン塩からなる群から選択される農薬;農業用オイル;及び3,000〜120,000の重量平均分子量を有し、2.5〜35重量%の共重合された極性モノマーを有する農業用オイル溶解性ポリマー;を配合し、農薬が0.5〜10ミクロンの粒子サイズを有するまで、該配合物を混合又は剪断することを含む、農業用オイル中の農薬の安定な分散液を形成する方法が提供される。
【0008】
本発明の第4の態様によれば、エチレンビスジチオカルバメート;農業用オイル;及び3,000〜90,000の重量平均分子量を有し、0〜35重量%の共重合された極性モノマーを有する農業用オイル溶解性ポリマー;を配合し、エチレンビスジチオカルバメートが2〜10ミクロンの粒子サイズを有するまで、該配合物を混合又は剪断することを含む、農業用オイル中の農薬の安定な分散液を形成する方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
「農業用オイル中の農薬の安定な分散液」という用語は、分散工程中にゲル化しなかった分散液、即ち、例えば、農薬、ポリマー及び農業用オイルの配合物を混合及び剪断するのに用いられるホモジナイザー、ビーズミル又はボールミル中においてゲル化しなかった分散液を意味する。安定な分散液は、ポリマーの不存在下で同様の方法で調製された同一の農薬の分散液と比較して安定である。更に下記の初期特性を満足する分散液が好ましい。更に、54℃で1〜2週間保持した後に以下の特性を満足する分散液がより好ましい。測定される特性の通常の所望の値を示す。
【0010】
初期特性:外観=ゲル物なし;
粘度=2000cps未満、最も好ましくは1000cps未満。
54℃で1〜2週間後:
外観=ゲル物なし;
粘度=2000cps未満、最も好ましくは1000cps未満;
分離%=最上に明澄な液体;分離10%未満;
沈降=ジャーの底部の粘稠な沈降;なし。
【0011】
「粒子サイズ」という用語は、例えばCoulter LS−30粒径測定器のようなレーザー粒径測定装置によって測定される容量平均直径を意味する。
【0012】
ここでの農薬は、塩素化ニトリル、トリアゾール、アルアルキルトリアゾール、トリアゾールアニリド、ベンズアミド、アルキルベンズアミド、ジフェニルエーテル、ピリジンカルボン酸、クロロアニリン、有機ホスフェート、ホスホン酸グリシン塩、及びこれらの混合物のような粒状の栽培学的に有効な殺菌剤、除草剤及び殺虫剤を包含する。また、農薬と、他の有機又は無機の栽培学的に活性の成分、例えばDithane+Indar、Dithane+クロロタロニル,Dithane+サイモキサニル、及びDithane+銅ヒドロキシドとの混合物も包含される。代表的な農薬の例及びその物理特性を表1に示す。
【0013】
【表1】

【0014】
注:Dithane、Systhane、Indar、Pulsar、Kerb、Visor、Goal及びStamは、ローム アンド ハース カンパニーの商標である。BravoはISK Bioscienceの商標であり、Galleryはダウ エランコの商標である。ImidanはGowan Co.の商標である。Roundupはモンサントの商標である。RH−7821はローム アンド ハース カンパニーの製品である。
【0015】
典型的には、本発明の安定な分散液及び安定な分散液を形成する方法において用いる農薬は、結晶質であり、50℃を超える融点、200を超える分子量、パラフィン系溶媒中での低い、典型的には1%未満の溶解度を有し、例えばエステル、カルボニル、ヒドロキシ及びシアノのような極性官能基を有するものであった。
【0016】
本発明の安定な分散液及び安定な分散液を形成する方法において用いる農業用オイルは、典型的には高い純度で、概して単一の脂肪族化学構造を有する、栽培用途に好適なオイルである。これらは、典型的にはC20〜C26の炭素鎖長を有する分岐鎖又は直鎖であってよい。これらは、少ない臭気、有機及び有機金属化合物に対する低い溶解性、生物種に対する低い植物毒性、及び低い揮発性によって特徴付けられる。市販の農業用オイルの例は、Orchex796、Orchex692、Sunspray7N、Sunspray11N、Oleo Branco、Isopar M、Isopar V、100Neutral及びExxsol D−130である。鉱油、例えば植物油、ピーナッツ油及び綿実油のようなクロップオイル(crop oil)又は合成油のような他のオイルも許容できる。
【0017】
農業用オイルの典型的な特性は、以下の通りである。
60/60°Fにおける比重:0.750〜0.900;
引火点:>120°F;
100°Fにおける粘度,SSU:50〜150;
非スルホン化残渣:>90%;
蒸留範囲:350°F〜450°F;
【0018】
本発明の安定な分散液及び安定な分散液を形成する方法において用いる農業用オイル溶解性ポリマーは、典型的には、エチレン性不飽和モノマーから形成される付加ポリマーである。そのホモポリマーが農業用オイル中に可溶性の1以上のモノマーと、1以上の極性モノマーとのコポリマーが好ましい。1以上のアルキル(メタ)アクリレートと1以上の極性モノマーとのコポリマーがより好ましい。
【0019】
ここで用いるアルキル(メタ)アクリレートとは、アルキルメタクリレート及びアルキルアクリレートを意味し、アルキル基が1〜15個の炭素原子を有するアルキルメタクリレート及びアルキルアクリレートの例は、メチルメタクリレート(MMA)、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート(BMA)及びアクリレート(BA)、イソブチルメタクリレート(IBMA)、ヘキシル及びシクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート(EHA)、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、デシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート(IDMA、分岐鎖(C10)アルキル異性体混合物をベースとする)、ウンデシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート(ラウリルメタクリレートとしても知られている)、トリデシルメタクリレート、テトラデシルメタクリレート(ミリスチルメタクリレートとしても知られている)、ペンタデシルメタクリレート及びこれらの組み合わせである。ドデシル−ペンタデシルメタクリレート(DPMA)、ドデシル、トリデシル、テトラデシル及びペンタデシルメタクリレートの直鎖及び分岐鎖異性体の混合物、及びラウリル−ミリスチルメタクリレート(LMA)、ドデシル及びテトラデシルメタクリレートの混合物もまた有用である。アルキル基が16〜24個の炭素原子を有するアルキル(メタクリレート)の例は、ヘキサデシルメタクリレート、ヘプタデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、ノナデシルメタクリレート、エイコシルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート(BehMA)及びこれらの組み合わせである。セチル−エイコシルメタクリレート(CEMA)、ヘキサデシル、オクタデシル及びエイコシルメタクリレートの混合物、及びセチル−ステアリルメタクリレート(SMA)、ヘキサデシル及びオクタデシルメタクリレートの混合物もまた有用である。
【0020】
上記記載のアルキルメタクリレート及びアルキルアクリレートは、概して、工業グレードの長鎖脂肪族アルコールを用いた標準的なエステル化方法によって調製され、これらの商業的に入手し得るアルコールは、アルキル基中に10〜15個又は16〜20個の炭素原子を有する種々の鎖長のアルコールの混合物である。したがって、本発明の目的のためには、アルキルメタクリレートは、示された個々のアルキルメタクリレート製品のみでなく、主要部分が示された特定のアルキルメタクリレートであるアルキルメタクリレートの混合物も包含するものである。これらの商業的に入手し得るアルコールを用いてアクリレート及びメタクリレートエステルを調製することにより、上記記載のLMA、DPMA、SMA及びCEMAモノマー混合物が得られる。
【0021】
極性モノマーは、例えば、ヒドロキシ基又は窒素含有基を有していてよい。極性モノマーは、好ましくは、ヒドロキシル、カルボン酸、塩基性窒素又はヘテロ環式官能基を有する。極性モノマーの例は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えばヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、ジアルキルアミノ(C〜C)アルキル(メタ)アクリレート、例えばジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、及びジアルキルアミノ(C〜C)アルキル(メタ)アクリルアミド、例えばジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(DMAPMAm)、ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、2−エチル−5−ビニルピリジン、3−メチル−5−ビニルピリジン、2,3−ジメチル−5−ビニルピリジン、2−メチル−3−エチル−5−ビニルピリジン、メチル置換キノリン及びイソキノリン、1−ビニルイミダゾール、2−メチル−1−ビニルイミダゾール(MVI)、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルブチロラクタム及びN−ビニルピロリドン(NVP)である。
【0022】
典型的な農業用オイル中におけるオイル溶解性を達成するために、アクリレート/メタクリレートモノマーのアルキル側鎖は、平均で少なくとも約C〜Cであるべきである。しかしながら、典型的には、ポリマー中の極性モノマーの量が増加するほど、オイル溶解性を保持するために、(メタ)アクリレートコモノマー中のアルキル側鎖の平均鎖長を増加させなければならない。したがって、10重量%を超える共重合されたDMAPMAm(塩基性窒素)又は共重合されたHPMA(遊離ヒドロキシ)を有するポリマーは、典型的には、C〜CアルキルではなくC16〜C18アルキルを有するアルキル側鎖が大量に必要である。C12〜C20メタクリレートと、10〜15重量%のDMAPMAmとのコポリマーが好ましい。ステアリルメタクリレート(SMA)と10〜20重量%のDMAPMAmとのコポリマーがより好ましい。
【0023】
分散される農薬に応じて典型的には3,000〜120,000又は3,000〜90,000であるポリマーの重量平均分子量は、配合物の粘度にも影響を与える可能性があり、分子量がより高いと、より高い溶液粘度が導かれる。溶液粘度がより高いと、粒子の易動性が低下して、それによって分離及び沈降が遅延する可能性がある。しかしながら、溶液粘度がより高いと、農薬分散液の流動性、移動性及び容易な希釈が妨げられる可能性がある。15,000〜90,000の重量平均分子量が好ましく、20,000〜75,000の重量平均分子量がより好ましい。
【0024】
ポリマーは、典型的には、農業用オイル中における付加重合によって、好ましくはモノマーの逐次付加フリーラジカル重合によって調製される。ポリマーは、典型的には、重合開始剤、農業用オイル、及び場合によっては連鎖移動剤の存在下で、モノマーを混合することによって調製される。反応は、撹拌下、不活性雰囲気中、約60〜140℃、より好ましくは115〜125℃の温度で行なうことができる。反応は、典型的には、約4〜10時間、あるいは所望の程度の重合に到達するまで、行なわれる。当業者に認識されているように、反応の時間及び温度は、開始剤の選択に依存し、これにしたがって変化させることができる。ポリマーを当該技術において公知の方法によって調製して、グラフトポリマー、ブロックコポリマー、星型コポリマー或いは変動組成コポリマー並びにランダムコポリマーを形成することができる。
【0025】
この重合に有用な開始剤は、ペルオキシ、ヒドロペルオキシ及びアゾ開始剤、例えばアセチルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシイソブチレート、カプロイルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)及びt−ブチルペルオクトエートのような任意の周知のフリーラジカル生成化合物である。開始剤濃度は、通常、モノマーの全重量を基準として、0.025〜1重量%、より好ましくは0.05〜0.25%である。また、連鎖移動剤を重合反応に加えて、ポリマーの分子量を制御することもできる。好ましい連鎖移動剤は、ラウリル(ドデシル)メルカプタンのようなアルキルメルカプタンであり、用いる連鎖移動剤の濃度は、約0.1〜約10重量%である。
【0026】
農業用オイル中における農薬の分散液は、典型的には、原体の粒状農薬又は例えば水和剤(wettable powder)及び分散性粒状物のような配合された粒状農薬組成物のいずれかである農薬を用いて得られる。
【0027】
原体の粒状農薬は、80〜98重量%の活性成分含量を有し、室温において固体である。水和剤及び分散性粒状物は、45重量%〜75重量%の活性成分含量を有し、以下の代表的な組成:農薬45〜75重量%;キャリヤ20〜50重量%;分散剤2〜10重量%;及び界面活性剤2〜10重量%;を有していた。水和剤及び分散剤粒状物は、典型的には、2〜10ミクロンの範囲の平均粒子サイズに粉砕されていた。
【0028】
本発明の分散液は、典型的には、希釈液として、オイル又はオイル/水/界面活性剤キャリヤ中として圃場に施される。スプレータンク混合物は、例えば界面活性剤アジュバント、乳剤及び水和剤のような他の配合された農業用組成物を含んでいてよい。施用は、粉又は気圧スプレー装置によって行なうことができる。
【0029】
実施例1:農業用オイル溶解性ポリマーの調製
ポリマー3の調製。5ガロンの反応容器に、熱電対、温度制御器、パージガス導入口、パージガス出口を有する水冷還流凝縮器、スターラー及び添加タンクを取り付けた。添加タンクに、ステアリルメタクリレート(純度96.5%)4137.07pbw、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(純度100%)704.52pbw、ミネラルスピリット中のt−ブチルペルオクトエートの50%溶液(Lupersol PMS)40.00pbw、ドデシルメルカプタン30.00pbwのモノマー混合物4911.59gを入れた。添加タンク中のモノマー混合物の60%(2946.95g)及びOrchex 796オイル736.74gを、反応容器に入れ、次に窒素で30分フラッシュした後、熱をかけて、反応容器の内容物を120℃にした。反応容器の内容物が120℃に達したら、添加タンク中のモノマー混合物の残りを、90分かけて反応容器に一定速度で加えた。モノマー混合物添加の終了時に、反応容器内の温度を100℃に低下させて、ステアリルメタクリレート314.21pbw、ミネラルスピリット中のt−ブチルペルオクトエートの50%溶液(Lupersol PMS)60.00pbw、Orchex 796オイル750.00pbwからなる供給流1124.21gを、120分かけて一定速度で加えた。次に、反応容器の内容物を100℃で30分保持した。保持時間の終了時において、反応温度を120℃に上昇させ、ミネラルスピリット中のt−ブチルペルオクトエートの50%溶液(Lupersol PMS)10.00pbw及びOrchex 796オイル250.00pbwの260.00gを反応容器に加えた。反応を120℃で30分保持した。30分間の保持時間の終了時に、Orchex 796オイル6000.00gをバッチに加えた。次に、バッチを約120℃で更に30分保持して、均一な溶液を生成させた。形成された生成物は、32.65重量%のポリマー固形分含量、100℃(210°F)において38センチストークスの粘度を示した。ポリマーへのモノマー転化率は、98%であると算出された。
【0030】
実施例2:極性モノマーのグラフト化による農業用オイル溶解性ポリマーの調製
ポリマー38の調製(表2)。1リットルの反応容器に、熱電対、温度制御器、パージガス導入口、パージガス出口を有する水冷還流凝縮器、スターラー及び添加漏斗を取り付けた。添加漏斗に、ステアリルメタクリレート(純度97.5%)230.77重量部(pbw)、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(純度100%)12.50pbw、ミネラルスピリット中のt−ブチルペルオクトエートの50%溶液(Lupersol PMS)1.50pbw、ドデシルメルカプタン2.13pbwのモノマー混合物259.39gを入れた。添加漏斗中のモノマー混合物の30%(77.82g)を反応容器に入れ、次に窒素で30分フラッシュした後、熱をかけて反応容器の内容物を115℃にした。反応容器の内容物が115℃に達したら、添加漏斗中のモノマー混合物の残りを、反応容器に60分かけて一定速度で加えた。モノマー混合物添加の終了時に、ミネラルスピリット中のt−ブチルペルオクトエートの50%溶液(Lupersol PMS)1.00pbw及びOrchex 796オイル37.50pbwのチェイサー供給流38.50gを、90分かけて一定速度で加えた。チェイサー流供給の30分後、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(純度100%)12.50gを、別の供給流として、15分かけて反応容器に加えた。チェイサー流供給の終了時に、反応容器の内容物を115℃で60分保持した。60分の保持時間の終了時に、Orchex 796オイル522.94gをバッチに加えた。次に、バッチを約115℃で更に30分保持して、均一な溶液を生成させた。形成された生成物は、28.53重量%のポリマー固形分含量、100℃(210°F)において22cStの粘度を示した。ポリマーへのモノマー転化率は約95%であると算出された。
【0031】
実施例3:更なる農業用オイル溶解性ポリマーの調製
実施例1の方法にしたがって更なるポリマーを調製した。組成及び物理特性を下表2に示す。
【0032】
【表2】

【0033】
【表3】

【0034】
実施例4:農薬の分散液の調製及び評価
試験した組成物は、典型的には、農薬固形分=50部;ポリマー固形分=0〜5.0部;Orchex 796オイル=42〜50部であった(ポリマー固形分は、オイル中において固形分27%〜74%として供給された)。
【0035】
表3における全ての試料は、ポリマー固形分は、「ポリマーNo」の欄において「なし」として示される0%、或いは5重量%であり、ポリマーNo.18に関する実験に関しては2重量%のポリマー固形分を有していた。ポリマーを、風袋秤量ステンレススチールビーカー中に秤量し、次にOrchex 796オイルを加えた。混合物を、スパチュラを用いて手で混合した。農薬を秤量紙上に秤量し、撹拌しながらポリマー/オイル混合物にゆっくりと加えた。混合物を、スパチュラを用いて十分に手で混合した。
【0036】
直接ホモジナイズするには粘稠な試料及び乾燥フロアブル組成物は、ホモジナイズの前に予め分散させた。試料が十分に混合されて流動性混合物になるまで、分散させた。
【0037】
全ての試料を、Silverson Model L4Rホモジナイザーを用いてホモジナイズした。パワーダイアルをゆっくりと2/3パワーに増加させた。原体及び水和剤から調製した試料は10分間ホモジナイズした。乾燥フロアブルは、粒状物が均一に分散されたように見えるまでホモジナイズした。試料は、また、ホモジナイズ中に、試料容器を穏やかに渦流させることによって混合した。試料を、自由流動液体(okと報告)又はゲル化(ゲルと報告)として評価した。
【0038】
粗い粒子サイズの農薬から出発した組成のものに関しては、ビーズ(Eiger)粉砕を行なった。50mlのEigerミル(Eiger MachineryからのModel M50)のビーズ室中に、1mmのガラスビーズ45mlを装填した。冷却水を通し、2.54cm(1インチ)のサンプルをサンプル漏斗にそそぎ入れた。試料混合物を用いて、3500rpmで1分間、粉砕を行なった。試料を放出容器中に取り出し、吹き出しを行なって更に試料をミルから押出した。残留試料を試料漏斗に加えた。試料を、3500rpmで10〜30分粉砕した。この処理は、0.5〜10ミクロンの粒子サイズを有する農薬の分散液を与えるのに十分であると考えられた。激しいゲル化(ゲルと報告)の兆候があった場合には、試料を直ちに取り出した。粉砕の後、試料を容器中に取り出した。満足できる調製物に関する評価は、初期の観察、及び初期において許容できる場合には54℃で1週間保存後の観察に基づくものであった。試験は、以下のものを包含していた。
【0039】
(1)外観:試料を、自由流動液体(okと報告)又はゲル化(ゲルと報告)として評価した。
(2)粘度:試料を室温に冷却した。試料を、金属スパチュラを用いて40秒撹拌した。Brookfield粘度計LVT、No.3スピンドル及び60/3での速度設定ノブを用いて粘度を測定した。2回の読みの平均を報告した。
(3)保存安定性:54℃で1週間保存した後、試料をオーブンから取り出し、室温に冷却した。試料を、ゲル化及び分離に関して観察した。試料が分離している場合には、表層の底層に対する比を、分離%として記録した。金属スパチュラを材料中に挿入し、容器の底を探索した。スパチュラを、粘着粘稠沈殿に関して観察し、観察された場合には記録した。激しくゲル化又は分離しなかった試料の粘度を上記のように測定して記録した。
【0040】
評価した特性:
初期:
外観:液体又はゲルのいずれかの混合物;ゲル化なしが望ましい
粘度:2000cps未満、好ましくは1000cps未満が望ましい
54℃で2週間保存の後:
外観:液体又はゲルのいずれかの混合物;ゲル化なしが望ましい
粘度:2000cps未満、好ましくは1000cps未満が望ましい
分離%:表層の明澄な液体の分離;10%未満が望ましい
沈殿:ジャーの底部に粘稠の沈殿;なしが望ましい
【0041】
結果を以下のキーワードによって分類した。下記に特性が低下する順番で示す。
ok=液体,<粘度1000cps,<分離10%,沈殿なし。
sep=保存後に10%を超える分離
visc1=保存前に1000cpsを超える粘度
visc2=保存後に1000cpsを超える粘度
sed=粘度に影響を与えるのに十分に激しい沈殿(流動すれば合格)
bead=ビーズ粉砕中又はその後にゲル化(試料は流動すれば合格)
gel=速やか又はホモジナイズ後に(試料は流動すれば合格)
【0042】
ホモジナイザー中又はビーズミル中でゲル化を示すオイル懸濁液は許容できない。他のものは全て許容できるが、品質の程度には差がある。
【0043】
【表4】

【0044】
【表5】

【0045】
【表6】

【0046】
【表7】

【0047】
【表8】

【0048】
【表9】

【0049】
【表10】

【0050】
【表11】

【0051】
実施例5:Goal(オキシフルオルフェン)オイル分散液の調製及び評価
10%のポリマーNo.50、42%のGoal 95 Technical、43%の100中性オイル、及び5%のLatron CS−7(アジュバント−界面活性剤;ローム アンド ハース カンパニーから入手)を、一緒にホモジナイズした後、30分Eiger粉砕した。満足できる分散液が製造された。
【0052】
実施例6:Goal/Glyphosateオイル分散液の調製及び評価
3.35%のGoal(流動性オイル)、53.65%のGlyphosate、3.5%のポリマーNo.51、34.5%の100N中性オイル、及び5%のTriton X−114の混合物を、セラミックジャー中に秤量した。次に、1/4インチのセラミック粉砕媒体をセラミックジャーに加えた。セラミックジャーを、ローラー上に配置し、40rpmで70時間ボール粉砕した。満足できる分散液が製造された。
【0053】
実施例7:RH7281分散液の調製及び評価
40%のRH7281ベンズアミド、3%のポリマーNo.52、及び57%の100N中性オイルの混合物を、一緒に配合し、実施例3の方法にしたがって、ホモジナイズし、Eiger粉砕した。組成物の試料を、実験室内において雰囲気温度で7カ月保存したところ、均一な外観で分離は見られなかった。
【0054】
実施例8:Glyphosate分散液の調製及び評価
グリホセートイソプロピルアンモニウム塩の試料を、2〜5ミクロンの粒子サイズにジェットエア粉砕した。グリホセートイソプロピルアンモニウム塩45.0g、3.5gのポリマーNo.53、及び47.85gのChevron100中性オイルの試料を、ビーカー内で混合し、ビーカー内で、Ultra−Turrax T25ホモジナイザー(Janke&Kunke製)を用いて、2〜3分ホモジナイズした。生成物分散液は、許容できるものであり、自由流動性のオフホワイトの流体で、ゲル化していなかった。粘度は、25℃で303cpsであった(Brookfield粘度計、スピンドル#1,100rpm)。
【0055】
実施例9:Dithane/サイモキサニル分散液の調製及び評価
50部のDithane原体(活性成分86%)、6部のサイモキサニル(活性成分95%)、及び5部のポリマー試料No.36を含み、Orchex 796オイルで100部にした混合物を調製した。混合物を、5分間ホモジナイズし、5分間ビーズ粉砕した。粘度2000cpsの均一な分散液が得られた。40℃で1週間後、分散液は2500cpsの粘度を有していた。
【0056】
実施例10:Dithane/銅ヒドロキシドの調製及び評価
30部のDithane原体(活性成分86%)、28部の銅ヒドロキシド(銅65%)、及び5部のポリマー試料No.36を含み、Orchex 796オイルで100部にした混合物を調製した。混合物を、5分間ホモジナイズし、5分間ビーズ粉砕した。粘度1500cpsの均一な分散液が得られた。40℃で1週間後、分散液は1700cpsの粘度を有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.5〜10ミクロンの粒子サイズを有し、塩素化ニトリル、トリアゾール、アルアルキルトリアゾール、トリアゾールアニリド、ベンズアミド、アルキルベンズアミド、ジフェニルエーテル、ピリジンカルボン酸、クロロアニリン、有機ホスフェート、ホスホン酸グリシン塩、及びこれらの混合物からなる群から選択される農薬;農業用オイル;及び3,000〜120,000の重量平均分子量を有し、2.5〜35重量%の共重合された極性モノマーを有する農業用オイル溶解性ポリマー;を含む農業用オイル中の農薬の安定な分散液。
【請求項2】
農薬が、クロロタロニル(chlorothalonil)、マイクロブタニル(myclobutanil)、フェンブコナゾール(fenbuconazole)、チフルザミド(thifluzamide)、イソキサベン(isoxaben)、プロピザミド(propyzamide)、チアゾピル(thiazopyr)、オキシフルオルフェン(oxyfluorfen)、グリホセート(glyphosate)ソプロピルアンモニウム塩、プロパニル(propanil)、ホスメット(phosmet)、及びこれらの混合物からなる群から選択される請求項1に記載の分散液。
【請求項3】
ポリマーが、20,000〜75,000の重量平均分子量を有する請求項1又は2に記載の分散液。
【請求項4】
ポリマーが、10〜20重量%の該共重合された極性モノマーを有する請求項1又は2又は3に記載の分散液。
【請求項5】
ポリマーが、85〜90重量%のC12〜C20メタクリレート及び10〜20%のジメチルアミノプロピルメタクリルアミドを有する請求項1又は2又は3に記載の分散液。
【請求項6】
2〜10ミクロンの粒子サイズを有するエチレンビスジチオカルバメート;農業用オイル;及び3,000〜90,000の重量平均分子量を有し、0〜35重量%の共重合された極性モノマーを有する農業用オイル溶解性ポリマー;を含む農業用オイル中の農薬の安定な分散液。
【請求項7】
塩素化ニトリル、トリアゾール、アルアルキルトリアゾール、トリアゾールアニリド、ベンズアミド、アルキルベンズアミド、ジフェニルエーテル、ピリジンカルボン酸、クロロアニリン、有機ホスフェート、ホスホン酸グリシン塩からなる群から選択される農薬;農業用オイル;及び3,000〜120,000の重量平均分子量を有し、2.5〜35重量%の共重合された極性モノマーを有する農業用オイル溶解性ポリマー;を配合し、農薬が0.5〜10ミクロンの粒子サイズを有するまで、該配合物を混合又は剪断することを含む、農業用オイル中の農薬の安定な分散液を形成する方法。
【請求項8】
エチレンビスジチオカルバメート;農業用オイル;及び3,000〜90,000の重量平均分子量を有し、0〜35重量%の共重合された極性モノマーを有する農業用オイル溶解性ポリマー;を配合し、エチレンビスジチオカルバメートが2〜10ミクロンの粒子サイズを有するまで、該配合物を混合又は剪断することを含む、農業用オイル中の農薬の安定な分散液を形成する方法。

【公開番号】特開2010−275326(P2010−275326A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206431(P2010−206431)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【分割の表示】特願平10−120265の分割
【原出願日】平成10年4月30日(1998.4.30)
【出願人】(501035309)ダウ アグロサイエンシィズ エルエルシー (197)
【Fターム(参考)】