説明

安定な酵素製剤及びその使用方法

本発明は、意図した酵素活性を維持しながら、周囲条件下での貯蔵のために好適な安定濃縮酵素組成物に関する。本発明はさらに、濃縮酵素組成物を含むキット、前記濃縮酵素組成物から創傷清拭溶液を調製するための方法、及び希釈された創傷清拭溶液を使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、意図した酵素活性を維持しながら、周囲条件下の貯蔵のために好適な安定した濃縮された酵素組成物に関する。本発明はさらに、濃縮された酵素組成物を含むキット、前記濃縮された酵素組成物から創傷清拭溶液を調製するための方法、及び希釈された創傷清拭溶液を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性潰瘍、特に糖尿病性潰瘍を持つ患者は、局所的及び全身的感染に対して高い危険性がある。脚及び足の潰瘍が頻繁に発生している場合には、これらの患者はまた、構造的な足の変形、制限された関節の運動及び切断の危険性もある。感染された潰瘍に対する治療は、血糖コントロール、抗生物質の全身投与及び細部まで行き届いた創部のケア、主に壊死組織のデブリドマンを含む。デブリドマンは典型的には外科的方法によって試みられるが、創傷清拭酵素の使用を含む非外科的方法は、手術に固有の失血や痛みを避けるように工夫されている。さらに、酵素デブリドマンは、傷ついた患者が外科的手法に関連した追加の外傷にさらされることを要求せず、しかも潰瘍と関連した緊急医療状態の即座の速い解決を与える。
【0003】
創傷清拭酵素はまた、湿疹、乾癬のような深刻な皮膚問題、及びしわ、にきび及び乾燥皮膚のようなあまり深刻でない皮膚状態を治療するために有用である(例えば、米国特許No.4524136,5439935,5441740,5554366,5853705、及び6780444に開示)。かかる酵素を含む商業的製品はまた、入手可能であり、例えばAccuzyme(登録商標)(パパイン)及びGranulex(登録商標)(トリプシン)があるが、それらの用途は創傷のデブリドマンに対して限定されている。
【0004】
米国特許No.4197291,4226854,4307081,4329430、及び5830739は、パイナップル植物から誘導された加水分解酵素、及びそれを含む組成物を開示する。米国特許出願No.2003/0026794は、皮膚の一つ以上の特定の層に影響を及ぼす少なくとも一つの酵素を使用して皮膚状態を治療するための方法を開示する。上述の酵素製剤は、室温での貯蔵のような標準的な貯蔵条件下では限られた保管寿命を持つ。
【0005】
酵素組成物は、貯蔵時の酵素活性の損失を阻止する成分によって安定化されてもよい。例えば、米国特許No.6692726は、酵素、塩化セチルピリジニウム、及び組成物に安定性を与える還元剤を含む安定な経口組成物を開示する。典型的には、かかる添加剤は、特定の酵素に対してだけ安定であり、さらに前記酵素の特定の使用に対して安定である。
【0006】
創傷上に酵素組成物を付与するための方法及び装置は、本願の発明者のものであるWO 03/011369,US 2004/0186421、及びWO 2005/070480に教示され、それらの全てはここに完全に述べられているように参照としてそれらの全体をここに組み入れる。これらの出願は、治療溶液、特に活性成分としてプロテアーゼを含む溶液を潰瘍のような創傷の上に連続的に流すための装置を開示する。
【0007】
さらに、本願の発明者によって、創傷領域を通してかつその上に数時間活性タンパク質分解酵素の流れを付与することが、効果的なデブリドマンを与えることが示された(Freemanら、Wound 16:201−205,2004年6月)。酵素のない緩衝溶液での同様の治療は効果的でないことが見出された。さらに、同様の時間にわたる酵素の静止した(流動しない)組成物での治療は効果が全くない。
【0008】
効果的な創傷清拭活性を維持しながら、長い保管寿命を有しかつ創傷清拭酵素を含む酵素組成物に対してまだ満たされていない需要がある。かかる組成物は、使用するのが容易であるべきであり、従っていかなる使用者によっても付与されることができ、必ずしも医療従事者によって付与される必要がないことが有利である。
【発明の開示】
【0009】
本発明は、タンパク質分解酵素、特にチオールプロテアーゼ、さらに特定するとパパインを含む安定組成物、それを含むキット、及び前記組成物を使用する酵素デブリドマンのための方法を提供する。本発明の組成物は、即座の希釈のために都合が良く、その調製のため及び局所投与のために医療従事者の補助を必要としない。本発明のキットは、簡単な混合工程によって創傷清拭組成物を形成する異なる成分からなる。
【0010】
本発明は、活性創傷清拭溶液が濃縮パパイン溶液、濃縮緩衝溶液、濃縮チオール化合物、及び好適な希釈溶液を含む濃縮物から即座に調製されることができ、それらの全てが創傷清拭溶液を構成するために混合される前に数ヶ月の貯蔵で維持されるという予期せぬ発見に部分的に基づく。驚くべきことに、長期間の貯蔵後であっても、本発明の組成物に貯蔵される酵素の活性は、希釈で完全に又は少なくともほとんど回復される。さらに、貯蔵から活性形態への回復は、簡単な仕事であり、患者又は必ずしも医療従事者でない他の人によって実施されることができる。予期せぬことに、前記濃縮物は長期間の貯蔵の間、クリアなままであり、粒状物質を含まない。
【0011】
一つの側面によれば、本発明は、少なくとも20mg/mlのチオールプロテアーゼを含むチオールプロテアーゼの非活性安定濃縮物を含み、さらに少なくとも一種の浸透物質を含む組成物であって、前記チオールプロテアーゼが活性化により5000〜50000USP単位/mgの範囲内のタンパク質分解活性を持つ組成物を提供する。ここで、パパイン活性の一つのUSP単位は、米国薬局方参照ガイドに記載されるようにカゼイン基質溶液から1mgのチロシンの当量を放出する。
【0012】
一つの実施態様によれば、チオールプロテアーゼは、パパイン、ブロメライン、及びフィシン(これらに限定されない)を含む植物から誘導されたシステインプロテアーゼからなる群から選択される。本実施態様によれば、チオールプロテアーゼはパパインである。
【0013】
本発明の範囲は、パパインのホモログ、アナログ、変異体、及び誘導体を包含し、これらのホモログ、アナログ、変異体、及び誘導体が本発明の原理に従って長期間、非活性形態で貯蔵された後、タンパク質分解を実施する能力、特に創傷における壊死組織のデブリドマン、又は皮膚の表面に積み上げられた死細胞の除去(化粧ピーリング)を実施する能力を保持しなければならないという条件を持つことを明白に理解されなければならない。
【0014】
別の実施態様によれば、チオールプロテアーゼの濃度は25〜45mg/mlの範囲内である。
【0015】
さらに別の実施態様によれば、非活性濃縮物は、粒状物質を全く含まない。
【0016】
さらに別の実施態様によれば、少なくとも一種の浸透物質は、塩化ナトリウム、グリセロール、マンニトール、デキストラン、ポリエチレングリコール(PEG)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。さらに別の実施態様によれば、少なくとも一種の浸透物質は少なくとも1%w/vの濃度の塩化ナトリウムである。さらに別の実施態様によれば、創傷清拭組成物は少なくとも3%w/vの塩化ナトリウムを含む。別の実施態様によれば、創傷清拭組成物は少なくとも5%w/vの塩化ナトリウムを含む。さらに別の実施態様によれば、創傷清拭組成物はグリセロール及び塩化ナトリウムを含み、グリセロールの濃度は最大30%v/vであり、塩化ナトリウムの濃度は最大18%w/vである。さらに別の実施態様によれば、少なくとも一種の浸透物質は最大20%v/vの濃度のグリセロールである。
【0017】
さらに別の実施態様によれば、非活性濃縮物は、活性化前の周囲温度での少なくとも一週間、好ましくは少なくとも一ヶ月、より好ましくは少なくとも6ヶ月の貯蔵で安定であり、活性化により前記チオールプロテアーゼは5000〜50000USP単位/mgの範囲内のタンパク質分解活性を持つ。さらに別の実施態様によれば、非活性濃縮物は、4〜10℃の範囲内の温度での少なくとも一週間、好ましくは少なくとも一ヶ月、より好ましくは少なくとも6ヶ月の貯蔵で安定であり、前記チオールプロテアーゼは活性化により5000〜50000USP単位/mgの範囲内のタンパク質分解活性を持つ。
【0018】
さらに別の実施態様によれば、組成物はさらに、N−(2−アセトアミド)−2−イミノ二酢酸緩衝液、酢酸緩衝液、コハク酸緩衝液、マレイン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、MES緩衝液、及びそれらの組み合わせから選択される緩衝液、好ましくは酢酸緩衝液を含む。
【0019】
さらに別の実施態様によれば、濃縮パパイン溶液のpHは3〜6pH単位の範囲内、好ましくはpH4〜5の範囲内である。
【0020】
さらに別の実施態様によれば、組成物は等張性である。さらに別の実施態様によれば、組成物は高張性である。
【0021】
さらに別の実施態様によれば、組成物は乾燥濃縮物である。
【0022】
さらに別の実施態様によれば、本発明は、少なくとも一種の希釈溶液に希釈された本発明の濃縮物を含む創傷清拭溶液を提供し、少なくとも一種の希釈溶液は少なくとも一種の還元剤、緩衝液、及び少なくとも一種のキレート化剤を含み、前記チオールプロテアーゼは5000〜50000USP単位/mgの範囲内のタンパク質分解活性を持ち、創傷清拭溶液は生理的なpHを持つ。
【0023】
さらに別の実施態様によれば、創傷清拭溶液は少なくとも6時間創傷清拭活性を示す。さらに別の実施態様によれば、創傷清拭溶液は少なくとも12時間創傷清拭活性を示す。さらに別の実施態様によれば、創傷清拭溶液は、4〜10℃で少なくとも6時間の貯蔵後、創傷清拭活性を示す。さらに別の実施態様によれば、創傷清拭溶液は、4〜10℃で少なくとも12時間の貯蔵後、創傷清拭活性を示す。
【0024】
さらに別の実施態様によれば、少なくとも一種の還元剤は、硫化物、シスタミン、グルタチオン、N−アセチルシステイン、システイン、及び塩酸システインからなる群から選択されるチオール化合物である。好ましい実施態様によれば、チオール化合物は塩酸システインである。
【0025】
さらに別の実施態様によれば、緩衝液は、トリスヒドロキシメチルアミノエタン(Tris)緩衝液、Hepes緩衝液、リシン緩衝液、グリシン緩衝液、MOPS緩衝液、イミダゾール緩衝液及びMES緩衝液からなる群から選択される。好ましい実施態様によれば、緩衝液はTris緩衝液である。
【0026】
さらに別の実施態様によれば、創傷清拭組成物は等張性である。さらに別の実施態様によれば、創傷清拭組成物は高張性である。
【0027】
さらに別の実施態様によれば、創傷清拭組成物のpHは7〜7.6のpH、好ましく7.2〜7.6のpHの範囲内である。
【0028】
さらに別の実施態様によれば、少なくとも一種のキレート化剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレン−ビス−(オキシエチレンニトロ)四酢酸(EGTA)、及びエチレンジニトリロ四酢酸(Titriplex III)からなる群から選択される。
【0029】
別の実施態様によれば、本発明は、創傷清拭組成物を調製するためのキットを提供し、キットは、少なくとも20mg/mlのチオールプロテアーゼを含むチオールプロテアーゼの非活性濃縮物を含み、所望により少なくとも一種の浸透物質を含む第一成分;少なくとも一種の還元剤の濃縮溶液を含む第二成分;及び少なくとも一種の緩衝剤及び少なくとも一種のキレート化剤を含む濃縮緩衝溶液である第三成分を含み、前記第一、第二及び第三成分を少なくとも一種の希釈溶液において混合することによって生理的なpHを有する創傷清拭溶液を提供し、前記チオールプロテアーゼは活性化により5000〜50000USP単位/mgの範囲内のタンパク質分解活性を持つ。
【0030】
一つの実施態様によれば、第一成分中のチオールプロテアーゼの濃度は25〜45mg/mlの範囲内である。
【0031】
別の実施態様によれば、チオールプロテアーゼは、パパイン、ブロメライン、及びフィシン(これらに限定されない)を含む植物から誘導されたシステインプロテアーゼからなる群から選択される。本実施態様によれば、チオールプロテアーゼはパパインである。
【0032】
さらに別の実施態様によれば、第一成分はpH3〜6の範囲内のpH、好ましくはpH4〜5の範囲内のpHを有する溶液である。別の実施態様によれば、前記第一成分は、酸性pHを維持できる緩衝液を含み、緩衝液は酢酸緩衝液、コハク酸緩衝液、マレイン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、MES緩衝液、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。好ましい実施態様によれば、緩衝液は酢酸緩衝液である。
【0033】
別の実施態様によれば、第一成分は、活性化前、周囲温度での少なくとも一週間、好ましくは少なくとも一ヶ月、より好ましくは少なくとも6ヶ月の貯蔵で安定である。さらに別の実施態様によれば、第一成分は、活性化前、4〜10℃の範囲内の温度での少なくとも一週間、好ましくは少なくとも一ヶ月、より好ましくは少なくとも6ヶ月の貯蔵で安定である。
【0034】
さらに別の実施態様によれば、少なくとも一種の還元剤は、硫化物、シスタミン、グルタチオン、N−アセチルシステイン、システイン、及び塩酸システインからなる群から選択されるチオール化合物である。好ましい実施態様によれば、チオール化合物は塩酸システインである。さらに別の実施態様によれば、第二成分のpHはpH1〜4の範囲内である。別の実施態様によれば、第二成分のpHはpH1〜2の範囲内である。
【0035】
さらに別の実施態様によれば、第三成分は、トリスヒドロキシメチルアミノエタン(Tris)緩衝液、Hepes緩衝液、リシン緩衝液、グリシン緩衝液、MOPS緩衝液、イミダゾール緩衝液、及びMES緩衝液からなる群から選択される緩衝剤を含む。好ましい実施態様によれば、第三成分はTris緩衝液である。特別な実施態様によれば、第一、第二及び第三成分と少なくとも一種の希釈溶液で希釈すると、緩衝剤は生理的pHの範囲内のpHを維持する。一つの実施態様によれば、生理的pHはpH7〜7.6、好ましくはpH7.2〜7.6の範囲内である。
【0036】
さらに別の実施態様によれば、第一、第二及び第三成分と少なくとも一種の希釈溶液で希釈すると、5000〜50000USP単位/mgの範囲内のタンパク質分解活性を有する希釈溶液が得られる。さらに別の実施態様によれば、希釈溶液は等張性である。さらに別の実施態様によれば、希釈溶液は高張性である。
【0037】
さらに別の実施態様によれば、少なくとも一種のキレート化剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレン−ビス−(オキシエチレンニトロ)四酢酸(EGTA)、及びエチレンジニトリロ四酢酸(Titriplex III)からなる群から選択される。
【0038】
さらに別の実施態様によれば、少なくとも一種の希釈溶液は、塩水、高浸透性塩水、及び少なくとも一種の浸透物質を含む塩水からなる群から選択される溶液を含む。
【0039】
さらに別の実施態様によれば、高浸透性塩水は少なくとも1%w/vの塩化ナトリウム、好ましくは少なくとも3%w/vの塩化ナトリウムを含む。別の実施態様によれば、高浸透性塩水は少なくとも5%w/vの塩化ナトリウムを含む。さらに別の実施態様によれば、少なくとも一種の浸透物質は、塩化ナトリウム、グリセロール、マンニトール、デキストラン、PEG及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。さらに別の実施態様によれば、高浸透性塩水はグリセロール及び塩化ナトリウムを含み、グリセロールの濃度は最大30%v/vであり、塩化ナトリウムの濃度は最大18%w/vである。
【0040】
さらに別の実施態様によれば、少なくとも一種の浸透物質は最大10%v/vである。さらに別の実施態様によれば、少なくとも一種の浸透物質の含有量は最大20%v/vである。
【0041】
一つの実施態様によれば、キットの各成分と創傷清拭溶液の容量の間の容量比は少なくとも1:10である。別の実施態様によれば、前記容量比は少なくとも1:20である。
【0042】
代替実施態様によれば、第一成分はさらに、可逆的な方法でパパインの創傷清拭活性を阻害することができる阻害剤を含む。別の代替実施態様によれば、少なくとも一種の阻害剤は、重金属、カルボニル試薬、アルデヒド、二硫化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0043】
さらに別の実施態様によれば、前記第一、第二及び第三成分の各々は乾燥物、固体又は凍結乾燥物である。
【0044】
さらに別の実施態様によれば、本発明は、以下のことを含む、創傷清拭溶液を調製するための方法を提供する:
(a)本発明のキットを準備する;そして
(b)キットの成分を少なくとも一種の希釈溶液と混合し、それによって生理的pHを有する創傷清拭組成物を得る、但し、前記創傷清拭溶液中の前記チオールプロテアーゼのタンパク質分解活性は5000〜50000USP単位/mgの範囲内である。
【0045】
さらに別の実施態様によれば、第一、第二及び第三成分は、互いに対していかなる順序でも少なくとも一種の希釈溶液に添加される。
【0046】
さらに別の実施態様によれば、創傷清拭溶液は少なくとも6時間創傷清拭活性を示す。さらに別の実施態様によれば、創傷清拭溶液は少なくとも12時間創傷清拭活性を示す。さらに別の実施態様によれば、創傷清拭溶液は、4〜10℃で少なくとも6時間の貯蔵後、創傷清拭活性を示す。さらに別の実施態様によれば、創傷清拭溶液は、4〜10℃で少なくとも12時間の貯蔵後、創傷清拭活性を示す。
【0047】
さらに別の実施態様によれば、方法は以下のことを含む:
(c)皮膚病変又は損傷した皮膚上に創傷清拭溶液を付与する;そして所望により
(d)前記皮膚病変又は損傷した皮膚を外傷用医薬材料で覆う。
【0048】
さらに別の実施態様によれば、工程(d)は、前記皮膚病変又は前記損傷した皮膚を通ってそしてそれの上に創傷清拭溶液の流れを運ぶことを含む。別の実施態様によれば、創傷清拭溶液の流れは、少なくとも6時間前記皮膚病変を通ってそしてそれの上に運ばれる。さらに別の実施態様によれば、工程(a)〜(d)は、反復して繰り返され、それによって各繰り返しは創傷清拭溶液の新しい部分で実施される。
【0049】
さらに別の実施態様によれば、方法は工程(c)の前に周囲温度で又は4〜10℃の範囲内の温度で創傷清拭溶液を貯蔵することを含む。
【0050】
さらに別の実施態様によれば、創傷清拭溶液を付与することは以下のことを含む:
皮膚病変又は損傷した皮膚の上に創傷清拭溶液の流れを付与し、前記組成物をそこから少なくとも一時間、好ましくは少なくとも6時間排出する。
【0051】
さらに別の実施態様によれば、流れは、組成物を含む少なくとも一つの貯蔵器と流体連通しているポンプによって誘導される。さらに別の実施態様によれば、流れは、ドリップカウンター(drip counter)によって誘導される。
【0052】
さらに別の実施態様によれば、皮膚病変は慢性潰瘍である。さらに別の実施態様によれば、慢性潰瘍は、糖尿病又は創傷領域上の長期の圧力と関連する。
【0053】
本発明の他の目的、特徴及び利点は以下の記載及び図面から明らかになるだろう。
【0054】
図面の簡単な記述
図1は、コントロール(未処理:C)に対する6時間(A)又は11時間(B)にわたって実施例1に従って調製されたパパイン溶液の流れで処理されたブタの創傷モデルの組織構造部分を示す。
【0055】
図2は、6時間(A)又は11時間(B)にわたって実施例2に従って調製されたパパイン溶液の流れで処理されたブタの創傷モデルの組織構造部分を示す。
【0056】
図3は、6時間(A)又は11時間(B)にわたって実施例3に従って調製されたパパイン溶液の流れで処理されたブタの創傷モデルの組織構造部分を示す。
【0057】
図4は、11時間にわたって実施例5に従って調製されたパパイン溶液の流れで処理されたブタの創傷モデルの組織構造部分を示す。
【0058】
図5は、壊死創傷デブリドマンの形態及び外観に対する異なる創傷清拭溶液の影響を示す。
【0059】
図6は、げっ歯類の点滴注入のための注入ポンプシステムを示す。
【0060】
図7A及び7Bは、パパイン溶液の保管寿命を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
定義
本明細書で使用される用語「パパイン」は、インビトロ及びインビボで創傷清拭活性を発揮することができる、植物から誘導されたチオールプロテアーゼのパパイン科のいかなる酵素も指す。パパインは、カリーカパパイヤラテックスから誘導されたスルフヒドリルプロテアーゼである。天然の純粋なパパインは、システインの如き穏やかな還元剤によって活性化されるまで、その自由SH官能基で部分的に反応性である。パパインは、部分的に精製された結晶形態又は粗パパインとして商業的に提供され、後者はパパイン、キモパパイン及びリゾチームを含む混合物である。本発明の原理によれば、用語「パパイン」は、タンパク質1mgあたり10000〜100000US単位の範囲内の活性を有するパパインを指し、そこではパパイン活性の一つのUSP単位は、米国薬局方の参照ガイドに記載されるようにカゼイン基質溶液からの1mgのチロシンの当量を放出するものである。
【0062】
用語「非活性形態」又は「不活性形態」は、本明細書では、意図された活性、即ち加水分解又はタンパク質分解活性を示さない酵素組成物を記載するために使用される。特に、非活性形態のパパインは、加水分解又はタンパク質分解活性を部分的に示すか又は実質的な加水分解又はタンパク質分解活性を全く示さず、それはその潜在的な加水分解活性を失わずに数ヶ月間貯蔵されることができる。
【0063】
用語「安定」は、本明細書では、非活性形態の貯蔵後であっても、活性化により所望の酵素活性を保持する非活性酵素組成物を記載するために使用される。安定な非活性酵素組成物の所望の活性は、好ましくは少なくとも一種のチオール化合物と希釈溶液に適切なpHを与えることができる少なくとも一種の緩衝液を含む溶液のような好適な溶液での希釈によって、容易に回復される。好ましくは、安定な非活性酵素組成物は粒状物質を含まない。
【0064】
本明細書で使用される用語「回復(reestablished)」は、インビボ及びインビトロでのパパインの全ての周知の酵素活性、特に加水分解活性、即ちタンパク質の構造的分解活性の回復を指す。
【0065】
用語「高張性(hypertonic)」及び「高浸透圧性(hyperosmolar)」は、本明細書では、少なくともわずかに高張性であるオスモル濃度を有する溶液、即ち塩水のような等張性流体より高い浸透圧を有する溶液を記載するために交換可能に使用される。このような溶液は、高浸透圧性塩水、及び、溶液のオスモル濃度を変更できる、特に等張性溶液のオスモル濃度を増大することができる少なくとも一種の浸透物質を含む塩水を含む。
【0066】
本明細書で使用される用語「周囲温度」は、10〜30℃の範囲、好ましくは10〜25℃の範囲内の温度を指す。
【0067】
本明細書で使用される用語「可逆的な方法」は、条件をなくすと阻害効果がなくなるというある条件下で、酵素の活性、特に加水分解酵素の創傷清拭活性を阻害する阻害能力、例えば化学的存在、生物学的存在又は環境的条件(例えばpH)を示す。例えば、EDTAのようなキレート化剤による金属結合酵素の活性の阻害は、過剰の金属の添加によって逆転されうる。特に、用語「可逆的な方法」は、酵素に永久の損傷を起こし、それによってフェニルメタンスルホニルフルオライド(PMSF)のように非可逆的な方法で所望の酵素活性を阻害する阻害能力を除外する。
【0068】
本明細書で使用される用語「デブリドマン」は、その最も一般的な意味で解釈されなければならず、創傷からの失活組織の除去、又は化粧ピーリングとしても知られる皮膚の表面からの死細胞の除去を指す。
【0069】
本発明を実施するための好ましい方式
本発明は、タンパク質分解酵素の技術から知られた多くの原理、及び他の治療様式のうち創傷デブリドマンのためのそれの使用を採用するが、本発明は幾つかの重要な領域で既知の技術から変化する。第一に、本発明は、成分、特に酵素成分の潜在的な活性が維持されながら、周囲条件で、創傷清拭組成物としての意図された使用の前に数週間及び数ヶ月維持されることができる貯蔵可能な成分を初めて提供する。第二に、貯蔵可能な成分から創傷清拭組成物を得ることは、好適な溶液における回復(再構成)だけを含む簡単な仕事であり、それは、これらの簡単な工程を行うことができるいかなる人によっても実施されることができ、必ずしも医療従事者によって実施される必要はない。
【0070】
酵素が貯蔵中にそれらの潜在的な活性を失わないような貯蔵の目的のために酵素調製物を安定化するための多数の方法が公知である。例えば、金属結合酵素に対してEDTAのような金属キレート化剤のある量の存在下の貯蔵は酵素活性を阻害し、それは、酵素活性のために要求される金属でEDTA酵素溶液をインキュベートすることによって回復されることができる。典型的には、過剰濃度のかかる金属/金属イオンが要求される。金属結合酵素は、金属が浸透によって酵素から移行するように金属キレート化剤でのインキュベーションの前又はその代わりに透析を受けてもよい。このような場合において、活性の回復はまた、透析された酵素溶液を酵素活性の回復に必要な金属イオンでインキュベートすることによって達成される。
【0071】
非活性形態の酵素を貯蔵する他の方法は、多孔質球における酵素固定、及び約50%のグリセロールを含む緩衝液における貯蔵を含む。上述の方法の各々は、活性が貯蔵後に回復されることができるように酵素の貯蔵のために潜在的に好適であるが、実際には、各個々の酵素は特定の貯蔵条件を要求する。もし貯蔵条件が酵素のため又は酵素によって発揮される酵素活性のために不適切であるなら、それはおそらく不活性なままであろう。従って、本発明は、パパイン、ブロメライン及びフィシンを含む植物から誘導されたシステインプロテアーゼの如き加水分解酵素、特にシステイン(チオール)プロテアーゼのための特別な貯蔵条件を規定することを目的とする。但し、他のタンパク質分解酵素も本発明の原理に従って貯蔵及び回復されることができる限り、おそらく使用されることができる。
【0072】
本発明のキットは、創傷清拭組成物中への混合のための少なくとも三つの別個の成分を含む:
非活性形態のチオールプロテアーゼを含む酵素組成物を含む第一成分、但し第一成分中のチオールプロテアーゼの濃度は創傷清拭組成物中のチオールプロテアーゼの濃度より少なくとも10倍高い;
チオールプロテアーゼを活性化することができる少なくとも一種の還元剤を含む第二成分、但し少なくとも一種の還元剤の濃度は創傷清拭組成物中の前記少なくとも一種の還元剤の濃度より少なくとも10倍高い;
濃縮緩衝溶液を含む第三成分、但しそれは第一及び第二成分及び少なくとも一種の希釈溶液で希釈されると、チオールプロテアーゼ、特にパパインの活性のために好適なpH範囲内のpHで生じた創傷清拭組成物のpHを維持することができる;
上記において、少なくとも一種の希釈溶液でのキットの三つの成分の混合は、生理的pHを有し、さらに10000〜100000USP単位/mgの範囲内のタンパク質分解活性を有する創傷清拭組成物を与える。
【0073】
あるいは、キットは第三成分の代わりに少なくとも一種の希釈溶液を含み、前記少なくとも一種の希釈溶液は少なくとも一種の緩衝剤、少なくとも一種のキレート化剤を含み、前記少なくとも一種の希釈溶液は等張性又は高張性である。
【0074】
好ましくは、キットの還元剤は、ガラス又は石英からなる容器で、より好ましくは窒素雰囲気下で又は減圧下で貯蔵される。
【0075】
本発明の原理によれば、本発明のキット内に含まれるチオールプロテアーゼは1mgあたり少なくとも30000USP単位の活性を有することが好ましい。かかる活性において、濃縮溶液及び最終溶液におけるチオールプロテアーゼの濃度は低下されてもよく、それによってキットの濃縮溶液の容積を低下することができる。
【0076】
一つの実施態様によれば、キットの各成分と創傷清拭組成物の間の容積比は少なくとも1:10である。別の実施態様によれば、前記容積比は少なくとも1:20である。最終溶液は約500mlであってもよく、従って輸液バッグに維持されてもよい。従って、キットの成分の各々一つの容積は一成分あたり最大50ml、好ましくは一成分あたり最大25ml、より好ましくは一成分あたり最大12.5mlである。
【0077】
キットの成分は、互いに混合されたり少なくとも一種の希釈溶液と混合されて創傷清拭活性を有する酵素組成物を与える前に、室温で又は4〜10℃の範囲内の温度で数週間及び数ヶ月間貯蔵しても安定である。
【0078】
本発明のキットの成分は濃縮溶液の形態で維持され貯蔵されることが好ましいが、成分は、所望により減圧下で、乾燥又は固体形態(例えば凍結乾燥)で維持されてもよい。乾燥組成物の回復は特別な穏やかな条件下での溶解を要求する。なぜならば、不適切な溶解、即ち加熱又は激しい攪拌下の溶解は、完全な又は部分的なタンパク質不活性化を生じうるからである。不完全な溶解はさらに、最終的な創傷清拭組成物内の成分の不適切な濃度を生じ、それによって創傷清拭活性の低下又は不足をもたらしうる。
【0079】
単一容器又は別個の容器にキットの成分の各々一つずつを貯蔵するために適切な貯蔵手段は、各成分の内容物と相互作用せず、しかも貯蔵条件下で安定している不活性材料から作られた容器でありうることができる。従って、キットの各成分を貯蔵するために好適な容器は、袋、瓶、バイアル、大容量非経口、小容量非経口、予め充填された注射器又はカセットを含む。貯蔵条件は滅菌又は無菌条件を含む。即ち、各成分は滅菌又は無菌に維持されることが好ましい。あるいは、各容器の内容物は容易に滅菌化されうる。さらに、好ましい実施態様では、容器が汚染されないことを維持しながら、各容器の内容物を全体的又は部分的に取り出してもよい。
【0080】
第一成分の高濃縮酵素溶液を数週間及び数ヶ月間不活性で安定に維持するためには、特に貯蔵中の自己消化、沈殿、凝集、及び不可逆的な不活性化を避けるために、本願の発明者は、溶液が酸性pH、特に3〜6、好ましくは4〜5の範囲のpHで維持されるべきであることを見出した。このような条件下では、チオールプロテアーゼの潜在的な活性は維持され、チオールプロテアーゼは沈殿、分解、自己消化又は凝集しない。さらに、キットの第一成分が他の成分及び少なくとも一種の希釈溶液と混合された後、最終的な創傷清拭組成物中に残る酢酸緩衝液は、チオールプロテアーゼの創傷清拭活性と実質的に相互作用しない。チオールプロテアーゼがこのような貯蔵条件下では凝集物及び/又は沈殿物を形成しないことは、第一成分の溶液においてチオールプロテアーゼの濃度が極めて高く、少なくとも20mg/ml、約100mg/ml以下であるということに照らすと予期されない。
【0081】
3〜6のpH範囲で緩衝能力を有する緩衝液が好ましい。このような緩衝液は、コハク酸緩衝液、マレイン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、MES緩衝液、酢酸緩衝液、及びそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0082】
第二成分は、チオール部分を含有する還元物質を含み、そこでは還元物質はチオール−タンパク質を活性化することができる。第二成分内の還元物質の濃度はかなり高く、特に最終的な創傷清拭組成物におけるその濃度より少なくとも10倍高い。高度に濃縮されているが、還元剤は貯蔵中、沈殿しないし、凝集しないし又はその潜在的な活性を失わない。好適な還元剤は硫化物、システイン及び塩酸システインを含むが、これらに限定されない。
【0083】
キットは、第三成分が前記第二成分、前記第一成分、及び少なくとも一種の希釈溶液(以下、「キャリア」とも称する)と混合されるとき、緩衝溶液が希釈され、従ってチオールプロテアーゼの創傷清拭活性を可能にし、同時に生理学的な用途、即ち創傷清拭組成物の意図される用途のために好適なpH範囲において創傷清拭組成物を維持できるように、濃縮緩衝溶液を含む第三成分を含む。従って、チオールプロテアーゼ、特にパパインのために最適であるpH範囲は相対的に幅広いが、本発明の創傷清拭組成物は生理学的に許容可能なpH範囲、即ち6.8〜7.7の範囲、好ましくは7〜7.6の範囲にある。第三成分の緩衝液の濃度は高く、特に最終創傷清拭溶液の緩衝液の濃度より少なくとも10倍高い。
【0084】
第三成分はさらに、少なくとも一種のキレート化剤を含む。
【0085】
創傷清拭組成物を形成するために本発明のキットの全ての成分と混合される少なくとも一種の希釈溶液は、キットの成分と混合されるために必要なキャリアの正確な容積を測定することを可能にする測定手段を有する別個の容器で与えられてもよい。あるいは、キャリアは、創傷清拭組成物を形成するために他の成分と混合されることが必要な正確な容積のキットの成分であってもよい。キャリアは、本発明のキットの成分の各々一つずつが容器中に最終的な創傷清拭組成物を形成するために添加される容器に与えられてもよい。容器は、袋、瓶、バイアル、大容量非経口、小容量非経口、予め充填された注射器又はカセットであってもよい。少なくとも一種の希釈溶液に対する各成分の添加の順序は重要でない。好ましくは、少なくとも一種の希釈溶液は、無菌もしくは滅菌であり、又は無菌又は滅菌になる目的のために容易に処理されてもよい。さらに、少なくとも一種の希釈溶液とキットの成分の混合中、混合物は汚染されないように維持されることが好ましい。ある実施態様によれば、混合は典型的には無菌/滅菌条件下で実施される。
【0086】
キャリアは、高浸透圧性塩水、浸透物質を含む塩水、及び浸透物質を含む高浸透圧性塩水のような高浸透圧性溶液であってもよい。
【0087】
高オスモル濃度は、細菌の増殖を防止するので、感染の公知の治療手段である。本発明は、このような高浸透圧溶液を使用すると、充血を誘導又は増強することによる潰瘍及び創傷治癒を促進することを初めて見出した。
【0088】
本発明のキット、組成物及び方法は、創傷、特に潰瘍、好ましくは糖尿病性潰瘍のような慢性潰瘍に対する効果的な治療を与えるために向けられている。米国における約1600万人の人々は糖尿病を持ち、その約15%は足及び脚の慢性潰瘍を発現し、それは治癒の遅い開放創である。糖尿病性潰瘍を持つ患者は、局所的及び全身的感染及び切断に対する高い危険がある。大多数の糖尿病性潰瘍は極めて深く、また不適切な血液供給を持つ。
【0089】
小さい切断又は切屑の痛みは領域中の神経損傷のために感じないかもしれず、その上、劣った循環は治癒時間を遅らせるので、このような潰瘍は診断される前に危険な創傷に発展しうる。床擦れ又は褥瘡性潰瘍としても知られる褥瘡はまた、致命的になりうる深刻な潰瘍に発展しうる。褥瘡の場合には、皮膚及び組織の潰瘍のある領域は、典型的には長期間の皮膚に対する連続した圧力又は他の継続した攻撃の結果として傷つけられ又は破壊される。典型的には、褥瘡は、皮膚及び下にある組織が骨と外部表面(例えばベッド又はいす)の間で圧搾されるときに発現する。褥瘡の最も一般的な場所は、骨ばっている隆起上であり、例えば肘、かかと、腰、尾骨、足首、肩、背中、及び頭のうしろ上である。一般に、褥瘡は、人が自分の体重を移さずに極めて長い間座ったり又は横たわったりする姿勢にあるときに起こる。従って、いす又はベッドに拘束される人は誰もその危険があるが、より一般的には高齢者及び弱者において観察される。例えば脳卒中による自制不可能や知覚の低下はまた、床擦れを発現する可能性を増大する。皮膚に対する一定の圧力は、皮膚及び隣接する組織へ栄養物及び酸素を供給する血管を部分的に又は完全に閉じるように圧搾し、領域への血液供給を低下させる。酸素及び栄養物の不存在又は深刻な減少は、皮膚、潜在的には下にある組織の死をもたらす。治療しないままであると、隣接組織は死に始め、最終的には骨に影響しうる潰瘍を生じうる。皮膚に開創を生じる深刻な潰瘍は、二次感染への移行を与えうる。特に、深刻な場合、褥瘡性潰瘍は死を招きうる。
【0090】
治療及び投与方式
本発明による壊死組織を創傷清拭するために有用な典型的な投与量は、病変の深刻さに従って決定される。一般に、本明細書において詳述された配合のいずれか一つに従ってチオールプロテアーゼを含む創傷清拭溶液の流れは、少なくとも一時間、病変の上にそして病変を通して運ばれる。病変はデブリドマンの進行を評価するために監視される。短時間の治療の中断は、流れの阻止及び患者の自由な移動を妨げる導管の除去によって実施される。導管が再び取り付けられる閉塞包帯は病変上に残されてもよい。
【0091】
治療は、本願の発明者のUS 2004/0186421又はWO 2005/070480に記載されているような装置を使用して適用されてもよい。このような装置は、中に形成された少なくとも一つの開口を有するハウジング、及び皮膚病変の周囲の皮膚に装置を固定するための手段を含み、前記ハウジングは、(i)第一長手方向軸を有し、かつ前記少なくとも一つの開口を通ってその長手方向軸に沿って調整可能であるように構成された少なくとも一つの入口チューブ;及び(ii)第二長手方向軸を有する少なくとも一つの出口チューブを含む。装置はさらに、創傷清拭溶液を保持するために適応された貯蔵器を含み、貯蔵器は一つ以上の入口と流体連通している。出口は、貯蔵器と治療領域の間の流れを制御するための弁を含んでもよい。好ましくは、出口はさらに、貯蔵器からのハウジングの断絶及び貯蔵器とハウジングの接続を可能にする手段を含み、それによって治療の中断を可能にする。
【0092】
流れ手段及び創傷清拭組成物からの患者の断絶及びそれらとの患者の接続の容易性は、創傷清拭処理を長期間適用することを可能にする。創傷清拭溶液の流れは少なくとも一時間続き、また個々の条件によって数時間続きうる。
【実施例】
【0093】
実施例1:安定でクリアな濃縮溶液からの創傷清拭組成物Iの調製
下記成分を含有するキットが与えられた:
1.10%(v/v)グリセロールを含有する0.05M酢酸緩衝液(pH4.3〜4.5)におけるパパイン(30000USP U/mgの比活性を持つMerck Cat.No.107149.5000,40mg/ml)の酵素溶液(25ml)。
2.塩酸システイン、25ml.0.1M,pH1.4。
3.Tris/EDTA,2M/0.04Mの25ml,pH7.85。
【0094】
全ての溶液は、クリアであり、沈殿物又は凝集物を含まなかった。三つの溶液は、0.9%塩水を含有する500ml溶液中へのそれらの添加によって希釈され、7.4±0.2の最終pH及び0.9%塩水におけるTris緩衝液0.1M、システインHCl 5mM,EDTA 2mM,2mg/mlパパイン及び0.5%グリセロールの最終濃度を有する溶液を与えた。
【0095】
実施例2:安定でクリアな濃縮溶液からの創傷清拭組成物IIの調製
下記成分を含有するキットが与えられた:
1.10%(v/v)グリセロールを含有する0.05M酢酸緩衝液(pH4.3〜4.5)におけるパパイン(30000USP U/mgの比活性を持つMerck Cat.No.107149.5000,40mg/ml)の酵素溶液(25ml)。
2.塩酸システイン、25ml.0.1M,pH1.4。
3.Tris/EDTA,2M/0.04Mの25ml,pH7.85。
【0096】
全ての溶液は、クリアであり、沈殿物又は凝集物を含まなかった。三つの溶液は、5%(w/v)塩水を含有する500ml溶液中へのそれらの添加によって希釈され、7.4±0.2の最終pH及び5%塩水におけるTris緩衝液0.1M、システインHCl 5mM,EDTA 2mM,2mg/mlパパイン及び0.5%グリセロールの最終濃度を有する高浸透圧性溶液を与えた。
【0097】
実施例3:安定でクリアな濃縮溶液からの創傷清拭組成物IIIの調製
下記成分を含有するキットが与えられた:
1.10%(v/v)グリセロールを含有する0.05M酢酸緩衝液(pH4.3〜4.5)におけるパパイン(30000USP U/mgの比活性を持つMerck Cat.No.107149.5000,40mg/ml)の酵素溶液(25ml)。
2.塩酸システイン、25ml.0.1M,pH1.4。
3.Tris/EDTA,2M/0.04Mの25ml,pH7.85。
【0098】
全ての溶液は、クリアであり、沈殿物又は凝集物を含まなかった。三つの溶液は、10%(v/v)グリセロールを含有する500ml溶液中へのそれらの添加によって希釈され、7.4±0.2の最終pH及び10.5%グリセロールにおけるTris緩衝液0.1M、システインHCl 5mM,EDTA 2mM,2mg/mlパパインの最終濃度を有する高浸透圧性溶液を与えた。
【0099】
実施例4:安定でクリアな濃縮溶液からの創傷清拭組成物IVの調製
下記成分を含有するキットが与えられた:
1.10%(v/v)グリセロールを含有する0.05M酢酸緩衝液(pH4.3〜4.5)におけるパパイン(30000USP U/mgの比活性を持つMerck Cat.No.107149.5000,40mg/ml)の酵素溶液(25ml)。
2.塩酸システイン、25ml.0.1M,pH1.4。
3.Tris/EDTA,2M/0.04Mの25ml,pH7.85。
【0100】
全ての溶液は、クリアであり、沈殿物又は凝集物を含まなかった。三つの溶液は、10%(v/v)グリセロール及び0.9%(w/v)塩水を含有する500ml溶液中へのそれらの添加によって希釈され、7.4±0.2の最終pH及び0.9%塩水における10.5%グリセロールにおけるTris緩衝液0.1M、システインHCl 5mM,EDTA 2mM,2mg/mlパパインの最終濃度を有する高浸透圧性溶液を与えた。
【0101】
実施例5:安定でクリアな濃縮溶液からの創傷清拭組成物Vの調製
下記成分を含有するキットが与えられた:
1.10%(v/v)グリセロールを含有する0.05M酢酸緩衝液(pH4.3〜4.5)におけるパパイン(30000USP U/mgの比活性を持つMerck Cat.No.107149.5000,40mg/ml)の酵素溶液(25ml)。
2.塩酸システイン、25ml.0.1M,pH1.4。
3.Tris/EDTA,2M/0.04Mの25ml,pH7.85。
【0102】
全ての溶液は、クリアであり、沈殿物又は凝集物を含まなかった。三つの溶液は、10%(v/v)グリセロール及び5%(w/v)塩水を含有する500ml溶液中へのそれらの添加によって希釈され、7.4±0.2の最終pH及び5%塩水における10.5%グリセロールにおけるTris緩衝液0.1M、システインHCl 5mM,EDTA 2mM,2mg/mlパパインの最終濃度を有する高浸透圧性溶液を与えた。
【0103】
実施例6:ブタの創傷モデルIの上に創傷清拭溶液を流すことによる創傷デブリドマン
動物調製及び治療プロトコル:
約30kgの重量の成熟した大きな白い雌ブタを落ち着かせ、ケタミン(100mg/ml)20mg/kg体重、キシラジン10%(2mg/kg体重)、及びアトロピン0.02mg/kg体重の筋肉注射で麻酔した。ブタは、純酸素におけるハロタン及びイソフルレン(1.5〜3%)の吸入混合物での全身麻酔下でかつ30〜50滴/分の一定速度でのHartman溶液(乳酸リンゲル液)の静脈内注入によって維持された。
【0104】
五つの筋肉二重皮弁の創傷が、Swindle(Swindle MM.Surgery,anesthesia and experimental techniques in swine.Iowa State University Press,米国,pp74−77,1998)に従ってブタの背中の背面上の(筋層内に延びる)9×3cmのサイズの脊椎傍領域上に誘発された。創傷誘発後7日で、全身麻酔下で、創傷は3.5×3.5cmの開口を与えて露出され、装置(Dermastream(登録商標);WO 03/011369,US 2004/0186421及びWO 2005/070480)は創傷の上に置かれ、皮膚周囲に取り付けられ、それらの入口及び出口部は溶液貯蔵器及び流体収集袋にそれぞれ接続された。
【0105】
五つの創傷のうち四つを、1ml/分の流速で6〜11時間、酵素又は塩水の6〜11時間の制御された流れに供した。一つの創傷はコントロールとして治療しなかった。
【0106】
創傷清拭酵素溶液は60000USP−U/mlの濃度でパパイン(Merck Cat.No 1.07149.5000,30000USP U/mgの比活性を有する)を含有し、実施例1に従って調製された。
【0107】
6〜11時間の治療後、流れを止め、DermaStream(登録商標)を全ての創傷から除去し、各創傷領域の表面の写真文書化を、高解像度で〜45°wの角度で創傷表面から20cmの距離でS3 Pro zoom Nikonカメラによって実施した。領域は全創傷部位と縁を含んでいた。
【0108】
ブタは、ペンタル(200mg/ml)1ml/1.5kg体重の筋肉注射によって犠牲にされ、全ての創傷から生検材料を摘出した。それは1×4cmサイズの創傷領域の長手方向のサンプリングを含んでいた。生検材料は通常の皮膚の縁並びに下にある傷ついていない筋層を含んでいた。試料は、4%パラホルムアルデヒドで48時間固定化され、パラフィンに包埋された。通常の縁から創傷限界の縁まで走る一つの無作為の代表的な切片(8μm)を各ブロックから収集し、ヘマトキシリンエオシン染色技術で染色した。
【0109】
ブタの創傷モデル上に6時間〜11時間、実施例1に従って調製されたパパイン溶液を流す創傷清拭効果は、未処置の創傷に比べて、図1に示された組織切片に与えられる。結果は、6時間の単一処置後に既に有意なデブリドマンが作用したことを明確に示す。
【0110】
実施例7:ブタの創傷モデルIIの上に創傷清拭溶液を流すことによる創傷デブリドマン
実施例2に記載された溶液を流すことを、実施例6に記載された実験構成を使用して6時間〜11時間、異なるブタの創傷の上に適用し、その結果を表2に与える。結果は、6時間後に既に効果的なデブリドマンを達成し、11時間以内に実質的な清浄化が充血の特徴のある外観を伴って達成されたことを示す。
【0111】
実施例8:ブタの創傷モデルIIIの上に本発明に従って調製された溶液を流すことによる創傷デブリドマン
実施例6に記載された実験構成を使用して6時間及び11時間、実施例3に記載された溶液を流す結果を図3に与える。結果は、6時間後に既に効果的なデブリドマンを達成したことを示す。
【0112】
実施例9:ブタの創傷モデルIVの上に本発明に従って調製された溶液を流すことによる創傷デブリドマン
実施例6に記載された実験構成を使用して11時間、実施例5に記載された溶液を流す結果を図4に与える。結果は、効果的なデブリドマンを示す。
【0113】
壊死創傷のデブリドマンの形態及び外観に対する異なる創傷清拭組成物の影響が図5に示される:A−6時間塩水5%におけるパパイン(40mg/ml)(左側−治療前、右側−治療後);B−6時間塩水0.9%及びグリセロール10%におけるパパイン(40mg/ml);C−6時間塩水5%及びグリセロール10%におけるパパイン(40mg/ml)。
【0114】
実施例10:安全性試験−急性皮膚刺激
2mg/mlを含む創傷清拭溶液(以下「Enzystream(登録商標)」とも称される)の皮膚刺激性反応の可能性の評価のために急性皮膚刺激研究を、雌のニュージーランド(NZW)のウサギ(n=3),3.0〜3.4kgにおいて行った。
【0115】
全てのウサギにおいて、ウサギの背中の指定された部位上への試験溶液の適用の4〜24時間前に、脊柱の両側をしっかりと切り取ることによって毛皮を除去した。各ウサギの背中上に、二つのコントロール部位及び二つの治療部位(各々約2.5×2.5cm)を調製した。各ウサギ上の二つの治療部位は0.5mlのEnzystream(登録商標)の最終創傷清拭溶液に供され、残りの二つの試験部位は同容量の塩水で治療された。試験溶液はまずガーゼ片に適用され、それは次いで4時間、それぞれの部位に直接適用された。4時間の露出時間の終了後に、ガーゼ片は除去された。
【0116】
観察及び検査:ウサギをガーゼ片の除去後に72時間観察した。72時間を越える長期間の観察が持続性皮膚反応の場合においてなされ、動物は、可逆性が見られるまで又は適用後最大14日まで毎日一回観察された。紅斑及び浮腫の兆候(皮膚反応の等級に従う)及び適用部位での反応は、治療後の1,4,24,48及び72時間後に評価された。動物が14日まで監視された場合には、さらなる検査は毎日一回行われた。全身性の副作用の検査は研究期間全体を通して毎日一回実施された。
【0117】
体重は試験部位への溶液適用前及び研究終了時(長期間の観察の場合には72時間又は14日後)に測定された。
【0118】
データ評価:試験溶液の潜在的な刺激効果の評価は、紅斑及び浮腫に対してはDraize刺激インデックスを使用する一次刺激インデックス(PII)スケールの測定に基づき(Draize,UL.:Dermal toxicity in appraisal of the safety of chemicals in food,drugs and cosmetics.The association of food and drug officials of the United States,Bureau of food and drug,Austin,TX.1959 Pages:46〜59)、ISO10993−10で特定されたように「ウサギの刺激反応分類」と比較された。適用部位のPIIは評価された:1時間ですぐに、4時間ガーゼ適用後、及び治療後24,48及び72時間。
【0119】
結果:全てのウサギにおける全体の皮膚刺激性反応は、PIIスコア(0〜1.9)に従うと「無視できる」〜「わずかな」反応をもたらし、1.05(「わずかな」)の平均を有していた。さらに、試験溶液に対する反応の臨床的兆候が全くないことはいずれのウサギにおいても明白であり、しかも全研究期間にわたって体重の異常な変化は全くなかった。
【0120】
実施例11:安全性試験−1時間注入中の急性毒物学
安全性評価のために雄のSpargue Dawleyラット(n=12),270−275gにおけるEnzyStream(登録商標)の1時間の静脈内注入の急性毒物学研究。
【0121】
全てのラットは、カテーテル挿入及び注入を介して頸部に対して70〜80分間、ハロタンガス麻酔で麻酔された。塩水−ヘパリンを充填されたポリエチレンカテーテルを頸静脈中に挿入した。試験配合物(コントロール−塩水又はEnzyStream(登録商標)溶液)の遅い自動注入は一時間にわたって1mg/mlパパイン溶液の1mlについて実施された。五匹のラットは塩水に供されたが、七匹のラットはEnzyStream(登録商標)溶液で治療された。
【0122】
投与量の論理的根拠:投与される溶液の量は1ml/動物重量〜250gであった。投与されるパパイン酵素の濃度は1mg/mlであった。これらの量は、臨床試験における一回の流しの間、治療創傷領域によって流された酵素溶液の50%の潜在的な吸収を示すために動物及び人間の体重並びに血液循環容量に従って計算された。この値は、臨床試験中の静脈性/糖尿病性潰瘍の治療時に実際に吸収される量より100倍高いと想定されうる。この想定は糖尿病及び静脈潰瘍の劣った血液循環に基づいており、従って身体/血液系への流体の侵入が最小になると想定されうる。
【0123】
注入後一時間で、カテーテルは引き抜かれ、血管及び皮膚は縫合された。動物は続く14日間監視され、ペンタル(200mg/ml)1ml/1.5kg体重の注入によって犠牲にされた。
【0124】
生理的かつ生化学的パラメータ:体重(BW)は静脈注入前及び注入後24,48,72時間、7及び14日で測定された。
【0125】
温度及び心電図(ECG)は注入前、注入中に10分ごとに、そして注入後3,24,48,72時間、7及び14日で測定された。
【0126】
血液試料は、注入期間前及び注入後3,24,48,72時間、7及び14日でCBC、肝臓及び腎臓機能及び電解質のために尾静脈から得られた。
【0127】
活力、及び食事、飲水、尿及び糞便分泌物の正常な挙動なパターンが毎日監視された。
【0128】
組織学:14日後、心臓;肺;腎臓及び副腎;肝臓;食道;気管;甲状腺;膵臓;胸腺;xyphoid軟骨;脾臓及び膝関節の主要な器官からの生検材料が全てのラットから除去され、すぐに4%燐酸緩衝されたホルムアルデヒドに48時間固定され、通常の組織学的手法によって処理され、パラフィンに包埋された。
【0129】
連続切片は8μm厚さで切断された。切片はヘマトキシリン及びエオシンで染色され、毒性効果のための組織学的検査のためにとられた。
【0130】
結果:静脈内注入の開始前の順応期間中、ラットの全ての監視されるパラメータは正常な生理学的な範囲内であった。体重(BW)、直腸温、心拍数、肝臓及び腎臓機能のための血液試験並びに血液電解質レベルは、塩水コントロ−ルと実験治療群の間の統計的な差を全く示さず、全て正常なデータ範囲内であった。BW変化の同様の動的プロファイルは実験及びコントロール群において示された:BWは注入手順後最初の3日間わずかに減少し、4日目で増加しはじめ、最終的に注入前のBWデータよりさらに高くなった。
【0131】
両動物群から12個の検査内部器官の組織切片において異常は検出されなかった。組織レベルで試験された全ての動物の全ての器官及び組織(塩水治療又はパパイン治療)は病理学的、形態学的変化又は他の副作用なしで正常な組織パターンを示した。
【0132】
上記の実験条件下で得られた結果は、ラットに一時間注がれたEnzystream(登録商標)創傷清拭溶液に対していかなる毒性の副作用も存在しないことを示す。
【0133】
実施例12:安全性試験−6時間注入中の急性毒物学
6時間の長期間の急性静脈内(i.v.)注入を通して実施例11に記載された同じ用量(1mg/mlパパイン溶液の1ml)でEnzystream(登録商標)溶液の静脈内注入の安全性評価を、8匹のSpargue Dawleyラット(4匹の雄及び4匹の雌)、270〜275グラム、麻酔された覚醒ラットにおいて行った。
【0134】
方法:全てのラットはFlunixin Megluminの一回の皮下注射で無痛覚にされ、その後実験構成調製のためにケタミン−キシラシンの注射によって麻酔された。ヘパリン化塩水を充填されたポリエチレンチューブを頸静脈中に挿入した。動物が覚醒状態に戻ってから約一時間後、試験配合物(コントロール−塩水又はEnzystream(登録商標))の遅い自動注入の開始は、スイベル2を通して細長い通路3の一端に接続された注入ポンプ1によって実施され、通路3の第二の端はつなぎ縄及び鞍部4を通して動物の皮膚と通じている(図6)。通路3は、ステンレス鋼のばねを含んでもよい。注入の速度は6時間、1mg/mlパパイン溶液の1mlの2.77μl/minであった。4匹のラットは塩水の注入を受けたが、他のラットはEnzystream(登録商標)溶液を投与された。
【0135】
6時間の注入後、カニューレを取りはずし、血管及び皮膚を縫合した。動物は、14日間監視され、CO窒息によって安楽死させた。
【0136】
生理的かつ生化学的パラメータ:体重は静脈内注入前及び注入後2,4,7及び14日で測定された。
【0137】
臨床的兆候は全14日の観察期間を通して毎日記録された。観察は皮膚、毛皮、目、粘膜、分泌物及び排出物の発生、自律神経活動(例えば、流涙、唾液分泌、立毛、瞳孔の大きさ、及び異常な呼吸パターン)の変化を含んでいた。
【0138】
活力、及び食事、飲水、尿及び糞便分泌物の正常な挙動なパターンもまた毎日監視された。
【0139】
CBC、肝臓及び腎臓機能、及び電解質に対する血液試料は、注入期間前及び24時間後にカニューレによって頸静脈から得られた。観察期間の終了時に、犠牲前に、血液試料は後部眼窩内洞(retro−orbital sinus)から得られた。
【0140】
組織学:心臓;肺;腎臓及び副腎;肝臓;食道;気管;甲状腺;膵臓;胸腺;xyphoid軟骨;脾臓;膝関節及び脳の主要な器官から生検材料が全てのラットから除去され、すぐに4%ホルムアルデヒド溶液に48時間保存され、通常の組織学的手法によって処理され、パラフィンに包埋された。連続切片は8μm厚さで切断された。切片はヘマトキシリン及びエオシンで染色され、毒性効果のための組織学的検査のためにとられた。
【0141】
結果:静脈内注入の開始前の順応期間中、ラットの全ての監視されるパラメータは正常な生理学的範囲内であった。
【0142】
生理的パラメータ:コントロール塩水治療又はEnzystream(登録商標)治療ラットにおいて全研究期間を通して顕著な臨床的兆候はないことは明らかであった。
【0143】
体重測定は両群において注入後2及び4日でわずかな一時的なBW損失を示したが、注入後7日で両群の全ての動物は体重の増加を示した。
【0144】
注入前及び注入後24時間に収集された血液試料中の電解質並びに肝臓及び腎臓機能のような臨床的化学パラメータの検査は、コントロール及びEnzystream(登録商標)治療群の両方において正常範囲内であった。両群から14日の研究期間の終了時に得られた血液学的及び生化学的パラメータの両方の測定は同様に、全てが正常範囲内であることを示した。
【0145】
組織学的所見:死体解剖レベルで、両群において肉眼的病理学的所見は全く観察されなかった。組織学的レベルで、全ての動物(塩水治療又はEnzystream(登録商標)治療)の全ての器官及び組織は、いかなる病理学的、形態学的変化も又は他の悪影響もなしで正常の組織学的パターンを示した。
【0146】
結果:上記の実験条件下の安全性研究で得られた結果は、6時間静脈内に注入されたときにEnzystream(登録商標)創傷清拭溶液に対する毒性の副作用もないことを明らかに示す。
【0147】
実施例13:保管寿命
可変量のグリセロール及びNaClを含有する濃縮されたパパイン溶液の4℃貯蔵時の貯蔵安定性(保管寿命)。
【0148】
方法:以下のように可変量のグリセロール及びNaClを含有する三つの濃縮酵素溶液が調製された(40mg/mlパパイン30000USP−U/mg各々):(I)5%グリセロール+0%NaCl;(II)30%グリセロール+0%NaCl、及び(III)30%グリセロール+18%NaCl。濃縮された酵素溶液は、使用するまでアルミニウム箔で包まれた、しっかりと封止された管に4℃で貯蔵された。
【0149】
各チェックポイントで試料は、各管から取り出され、新しく調製された緩衝液及びシステイン活性化剤溶液で予め形成された標準BAPNA基質パパインバイオアッセイに供された。
【0150】
残留酵素活性は、410nmで10分間、反応の傾きを比較することによって特徴づけられた。
【0151】
結果:図7A及び7Bによって示されるように、30%グリセロール及び18%NaClを含む酵素組成物は最も高い残留酵素活性を示す。酵素反応の最初の傾きのほとんど、約90%が4℃での12ヶ月のインキュベーションを通して安定に維持された。傾き分析(図7B)は、最初の3ヶ月の間の反応速度の低下が速く、続いて残留活性の安定化を示すが、これは酵素貯蔵安定性研究の十分な証拠となる現象である。
【0152】
特定の実施態様の前述の記載は、過度の実験なしでかつ一般的な概念から逸脱せずに、現在の知識を適用し、このような特定の実施態様を様々な用途のために容易に変更及び/又は適応することによって、他人がなしうる本発明の一般的な性質を十分に表わしており、それゆえ、このような適応及び変更は、開示された実施態様の意味及び均等の範囲内で理解されるべきであり、そのように意図される。本明細書において使用される語法又は用語は、説明の目的のためであり、限定されるものではないことを理解されるべきである。様々な開示された機能を実施するための手段、材料及び工程は、本発明から逸脱せずに様々な代替的形態をとりうる。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】コントロール(未処理:C)に対する6時間(A)又は11時間(B)にわたって実施例1に従って調製されたパパイン溶液の流れで処理されたブタの創傷モデルの組織構造部分を示す。
【図2】6時間(A)又は11時間(B)にわたって実施例2に従って調製されたパパイン溶液の流れで処理されたブタの創傷モデルの組織構造部分を示す。
【図3】6時間(A)又は11時間(B)にわたって実施例3に従って調製されたパパイン溶液の流れで処理されたブタの創傷モデルの組織構造部分を示す。
【図4】11時間にわたって実施例5に従って調製されたパパイン溶液の流れで処理されたブタの創傷モデルの組織構造部分を示す。
【図5】壊死創傷デブリドマンの形態及び外観に対する異なる創傷清拭溶液の影響を示す。
【図6】げっ歯類の点滴注入のための注入ポンプシステムを示す。
【図7A】パパイン溶液の保管寿命を示す。
【図7B】パパイン溶液の保管寿命を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも20mg/mlの不活性チオールプロテアーゼを含むチオールプロテアーゼの非活性濃縮物を含み、さらに少なくとも一種の浸透物質を含む組成物であって、前記チオールプロテアーゼが活性化により5000〜50000USP単位/mgの範囲内のタンパク質分解活性を持つ、組成物。
【請求項2】
チオールプロテアーゼはパパインである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
チオールプロテアーゼの濃度は25〜45mg/mlの範囲内である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも一種の浸透物質は、塩化ナトリウム、グリセロール、マンニトール、デキストラン、ポリエチレングリコール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
非活性濃縮物は、粒状物質を全く含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも一種の浸透物質は少なくとも1%w/vの濃度の塩化ナトリウムである、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも一種の浸透物質は最大20%v/vの濃度のグリセロールである、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも一種の浸透物質はグリセロール及び塩化ナトリウムを含み、グリセロールの濃度は最大30%v/vであり、塩化ナトリウムの濃度は最大18%w/vである、請求項4に記載の組成物。
【請求項9】
非活性濃縮物は、周囲温度での少なくとも一週間の貯蔵下で安定であり、活性化により前記チオールプロテアーゼは5000〜50000USP単位/mgの範囲内のタンパク質分解活性を持つ、請求項4に記載の組成物。
【請求項10】
非活性濃縮物は、周囲温度での少なくとも一ヶ月の貯蔵下で安定である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
非活性濃縮物は、周囲温度での少なくとも6ヶ月の貯蔵下で安定である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
非活性濃縮物は、4〜10℃の範囲内の温度での貯蔵下で安定であり、活性化により前記チオールプロテアーゼは5000〜50000USP単位/mgの範囲内のタンパク質分解活性を持つ、請求項4に記載の組成物。
【請求項13】
N−(2−アセトアミド)−2−イミノ二酢酸緩衝液、酢酸緩衝液、コハク酸緩衝液、マレイン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、MES緩衝液、及びそれらの組み合わせから選択される緩衝液、好ましくは酢酸緩衝液をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
3〜6pH単位の範囲内のpHを持つ、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物は等張性又は高張性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物は乾燥濃縮物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
少なくとも一種の希釈溶液に希釈された、請求項1に記載の濃縮物を含む創傷清拭溶液であって、少なくとも一種の希釈溶液は少なくとも一種の還元剤、緩衝液、及び少なくとも一種のキレート化剤を含み、創傷清拭溶液中の前記チオールプロテアーゼのタンパク質分解活性は5000〜50000USP単位/mgの範囲内であり、創傷清拭溶液は生理的なpHを持つ、創傷清拭溶液。
【請求項18】
少なくとも一種の還元剤は、硫化物、シスタミン、グルタチオン、N−アセチルシステイン、システイン、及び塩酸システインからなる群から選択されるチオール化合物である、請求項17に記載の創傷清拭溶液。
【請求項19】
チオール化合物は塩酸システインである、請求項18に記載の創傷清拭溶液。
【請求項20】
緩衝液は、トリスヒドロキシメチルアミノエタン(Tris)緩衝液、Hepes緩衝液、リシン緩衝液、グリシン緩衝液、MOPS緩衝液、イミダゾール緩衝液、及びMES緩衝液からなる群から選択される、請求項17に記載の創傷清拭溶液。
【請求項21】
緩衝液はTris緩衝液である、請求項20に記載の創傷清拭溶液。
【請求項22】
7〜7.6のpH単位の範囲内のpHを持つ、請求項17に記載の創傷清拭溶液。
【請求項23】
少なくとも一種のキレート化剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレン−ビス−(オキシエチレンニトロ)四酢酸(EGTA)、及びエチレンジニトリロ四酢酸(Titriplex III)からなる群から選択される、請求項17に記載の創傷清拭溶液。
【請求項24】
前記創傷清拭溶液は等張性又は高張性である、請求項17に記載の創傷清拭溶液。
【請求項25】
創傷清拭組成物を調製するためのキットであって、キットは、少なくとも20mg/mlのチオールプロテアーゼを含むチオールプロテアーゼの非活性濃縮物を含み、所望により少なくとも一種の浸透物質を含む第一成分;少なくとも一種の還元剤の濃縮溶液を含む第二成分;及び少なくとも一種の緩衝剤及び少なくとも一種のキレート化剤を含む濃縮緩衝溶液である第三成分を含み、前記第一、第二及び第三成分を少なくとも一種の希釈溶液において混合することによって生理的なpHを有する創傷清拭溶液を提供し、前記チオールプロテアーゼは活性化により5000〜50000USP単位/mgの範囲内のタンパク質分解活性を持つ、キット。
【請求項26】
チオールプロテアーゼはパパインである、請求項25に記載のキット。
【請求項27】
第一成分中のチオールプロテアーゼの濃度は25〜45mg/mlの範囲内である、請求項25に記載のキット。
【請求項28】
第一成分はpH3〜6の範囲内のpHを有する溶液である、請求項25に記載のキット。
【請求項29】
第一成分はpH4〜5の範囲内のpHを有する溶液である、請求項28に記載のキット。
【請求項30】
第一成分は、酢酸緩衝液、コハク酸緩衝液、マレイン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、MES緩衝液、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される緩衝液を含む、請求項25に記載のキット。
【請求項31】
緩衝液は酢酸緩衝液である、請求項30に記載のキット。
【請求項32】
第一成分は、周囲温度での少なくとも一週間の貯蔵下で安定である、請求項25に記載のキット。
【請求項33】
第一成分は、周囲温度での少なくとも6ヶ月の貯蔵下で安定である、請求項32に記載のキット。
【請求項34】
第一成分は、4〜10℃の範囲内の温度での貯蔵下で安定である、請求項33に記載のキット。
【請求項35】
少なくとも一種の還元剤は、硫化物、シスタミン、グルタチオン、N−アセチルシステイン、システイン、及び塩酸システインからなる群から選択されるチオール化合物である、請求項25に記載のキット。
【請求項36】
チオール化合物は塩酸システインである、請求項25に記載のキット。
【請求項37】
第二成分のpHはpH1〜4の範囲内である、請求項25に記載のキット。
【請求項38】
第三成分は、トリスヒドロキシメチルアミノエタン(Tris)緩衝液、Hepes緩衝液、リシン緩衝液、グリシン緩衝液、MOPS緩衝液、イミダゾール緩衝液、及びMES緩衝液からなる群から選択される緩衝剤を含む、請求項25に記載のキット。
【請求項39】
第一、第二及び第三成分と少なくとも一種の希釈溶液を混合した後、緩衝剤は生理的pHの範囲内のpHを維持する、請求項25に記載のキット。
【請求項40】
少なくとも一種のキレート化剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレン−ビス−(オキシエチレンニトロ)四酢酸(EGTA)、及びエチレンジニトリロ四酢酸(Titriplex III)からなる群から選択される、請求項25に記載のキット。
【請求項41】
少なくとも一種の希釈溶液は、塩水、高浸透性塩水、及び少なくとも一種の浸透物質を含む塩水からなる群から選択される溶液を含む、請求項25に記載のキット。
【請求項42】
創傷清拭溶液は等張性又は高張性である、請求項41に記載のキット。
【請求項43】
少なくとも一種の浸透物質は、塩化ナトリウム、グリセロール、マンニトール、デキストラン、ポリエチレングリコール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項41に記載のキット。
【請求項44】
高浸透性塩水は少なくとも1%w/vの塩化ナトリウムを含む、請求項41に記載のキット。
【請求項45】
高浸透性塩水はグリセロール及び塩化ナトリウムを含み、グリセロールの濃度は最大30%v/vであり、塩化ナトリウムの濃度は最大18%w/vである、請求項41に記載のキット。
【請求項46】
キットの各成分と創傷清拭溶液の容量の間の容量比は少なくとも1:10である、請求項25に記載のキット。
【請求項47】
キットの各成分と創傷清拭溶液の容量の間の容量比は少なくとも1:20である、請求項46に記載のキット。
【請求項48】
第一成分はさらに、可逆的な方法で前記チオールプロテアーゼのタンパク質分解活性を阻害することができる阻害剤を含む、請求項25に記載のキット。
【請求項49】
少なくとも一種の阻害剤は、重金属、カルボニル試薬、アルデヒド、二硫化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項48に記載のキット。
【請求項50】
前記第一、第二及び第三成分の各々は乾燥物、固体、又は凍結乾燥物である、請求項25に記載のキット。
【請求項51】
以下のことを含む、皮膚病変又は損傷した皮膚を創傷清拭するための方法:
(a)請求項25に記載のキットを準備する;
(b)第一、第二及び第三成分を少なくとも一種の希釈溶液と混合し、それによって生理的pHを有する創傷清拭溶液を得る、但し、前記創傷清拭溶液中の前記チオールプロテアーゼのタンパク質分解活性は5000〜50000USP単位/mgの範囲内である;
(c)皮膚病変又は損傷した皮膚上に創傷清拭溶液を付与する;そして所望により
(d)前記皮膚病変又は損傷した皮膚を外傷用医薬材料で覆う。
【請求項52】
チオールプロテアーゼはパパインである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
少なくとも一種の希釈溶液は、高浸透性塩水、及び少なくとも一種の浸透物質を含む塩水からなる群から選択される溶液を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
キットの第一、第二及び第三成分は、互いに対していかなる順序でも少なくとも一種の希釈溶液に添加される、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
キットの成分は、周囲条件での少なくとも一週間の貯蔵下で安定である、請求項51に記載の方法。
【請求項56】
創傷清拭溶液は、前記皮膚病変又は損傷した皮膚の上に付与される前に4〜10℃で少なくとも6時間の貯蔵下で安定である、請求項51に記載の方法。
【請求項57】
工程(c)は、前記皮膚病変又は前記損傷した皮膚を通ってそしてそれの上に創傷清拭溶液の流れを運ぶことを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
工程(a)〜(d)は、反復して繰り返される、請求項51に記載の方法。
【請求項59】
流れは、創傷清拭溶液を含む少なくとも一つの貯蔵器と流体連通しているポンプによって誘導される、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
流れは、ドリップカウンターによって誘導される、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
皮膚病変は慢性潰瘍である、請求項51に記載の方法。
【請求項62】
慢性潰瘍は、糖尿病又は創傷領域上の長期の圧力と関連する、請求項61に記載の方法。

【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−521521(P2009−521521A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−548072(P2008−548072)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【国際出願番号】PCT/IL2006/001492
【国際公開番号】WO2007/074454
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(501177609)ラモット・アット・テル・アビブ・ユニバーシテイ・リミテッド (14)
【氏名又は名称原語表記】RAMOT AT TEL AVIV UNIVERSITY LTD.
【Fターム(参考)】