安定化されたインターフェロン組成物
【課題】さらなるタンパク質薬学的組成物(IFN−β組成物を含む)を提供すること。
【解決手段】IFN−βおよび高度に精製されたマンニトールを含む、安定化された薬学的処方物が提供される。この高度に精製されたマンニトールは、高度に精製されていないマンニトールとともに処方されたIFN−βと比べてIFN−β付加物の形成を減少させることによって、その組成物を安定化させる。IFN−βまたはその改変体の液体または凍結乾燥組成物における安定性を増大させるための方法およびそのような組成物の貯蔵安定性を増大させるための方法もまた提供される。
【解決手段】IFN−βおよび高度に精製されたマンニトールを含む、安定化された薬学的処方物が提供される。この高度に精製されたマンニトールは、高度に精製されていないマンニトールとともに処方されたIFN−βと比べてIFN−β付加物の形成を減少させることによって、その組成物を安定化させる。IFN−βまたはその改変体の液体または凍結乾燥組成物における安定性を増大させるための方法およびそのような組成物の貯蔵安定性を増大させるための方法もまた提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、概して、薬学的組成物に関し、より詳細には、安定化された、液体のまたは凍結乾燥されたタンパク質(インターフェロンβなどを含む)の処方物に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
インターフェロンは、ウイルス、二本鎖RNA、他のポリヌクレオチド、抗原およびマイトジェンを含む多数のシグナルによって、細胞からの分泌が誘導される糖タンパク質のファミリーである。インターフェロンは、多数の生物学的活性を示し、これには、抗ウイルス性、抗増殖性および免疫調節活性が含まれる。少なくとも3つの異なる型のヒトインターフェロンα、βおよびγが、抗ウイルス活性および抗増殖活性を含む多数の因子に基づいて識別されている。
【0003】
インターフェロンβ(IFN−β)は、多発性硬化症(MS)を伴う患者にとって初めて有効であると同定された処置であり、そして再発性MSおよび弛張性MSに罹患した患者が受ける攻撃の数を減少することが実証された。IFN−β組成物はまた、B型肝炎およびC型肝炎の感染の処置において有用である。
【0004】
すべてのタンパク質ベースの医薬と同様に、治療剤としてIFN−βの使用において克服されねばならない1つの主要な障壁は、薬学的処方物におけるその不安定性から生じ得る薬学的有用性の喪失である。薬学的処方物におけるポリペプチドの活性および効力を脅かす物理的不安定性としては、変性ならびに可溶性および不溶性の凝集物の形成が挙げられ、他方、化学的不安定性としては、加水分解、イミド形成、酸化、ラセミ化および脱アミド課が挙げられる。これらの変化のいくつかは、目的のタンパク質の薬学的活性の喪失または低減をもたらすことが知られる。他の場合において、これらの変化の正確な効果は知られていないが、得られる分解産物はなおも、所望されない副作用についての可能性に起因して、薬学的に受容可能ではないと考えられるべきである。
【0005】
薬学的調製物においてポリペプチドの不安定性は、タンパク質ベースの医薬の承認のために設定されたガイドラインは、そのポリペプチドの活性および分子特性における変化が最小限であるべきであることが強調されているように、直接、それらの薬学的有用性に影響を与える。例えば、International Conference on Harmonization of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use(欧州連合、日本および米国における実行のための、医薬に関連する政策提言を行う三極機関)によって発行されたバイオテクノロジー/生物製剤の安定性試験に関する1995年11月30日の報告は、「分解産物形成の指標となる有意な定量的または定性的な変化が長期間の安定性、加速安定性、および/またはストレス安定性の研究の間に検出される場合、可能な有害性ならびに長期安定性プログラム内の分解産物の特徴づけおよび定量についての必要性に対して考慮が与えられるべきである。」と言及している。
【0006】
その結果、さらなるタンパク質薬学的組成物(IFN−β組成物を含む)についての必要性が存在する。この組成物は、還元性の不純物が実質的にない生理学的に適合可能な安定剤を含み、それにより、そのタンパク質を安定化し、そしてその薬学的有用性を増強する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
治療活性成分としてIFN−βおよび賦形剤として高度に精製されたマンニトールを含む組成物が提供される。その組成物は、高度に精製されていないマンニトールを含むIFN−β組成物と比較して、貯蔵の間の安定性の改善によって特徴付けられる。これらの組成物の製造方法もまた提供される。
上記目的を達成するために、本発明は、例えば、以下の手段を提供する。
(項目1) IFN−βまたはその改変体および高度に精製されたマンニトールを含む、組成物。
(項目2) 前記組成物は、安定性が増大していることによって特徴付けられる、項目1に記載の組成物。
(項目3) 前記組成物は、凍結乾燥されている、項目1に記載の組成物。
(項目4) 前記組成物は、液体である、項目1に記載の組成物。
(項目5) 前記高度に精製されたマンニトールは、約0.25(重量/容積)%〜約5(重量/容積)%の濃度で存在する、項目1に記載の組成物。
(項目6) 前記IFN−βまたはその改変体は、0.01mg/ml〜15mg/mlの濃度で存在する、項目1に記載の組成物。
(項目7) 前記処方物は、pH約3.0〜pH約9.0の範囲のpHを有する、項目1に記載の組成物。
(項目8) ヒトアルブミンもまた含有する、項目1に記載の組成物。
(項目9) 前記ヒトアルブミンは、約0.01(重量/容積)%〜約15(重量/容積)%の濃度で存在する、項目8に記載の組成物。
(項目10) IFN−βおよび高度に精製されたマンニトールを含む組成物であって、
該IFN−βは、組み換えヒトIFN−βであり、該組み換えヒトIFN−βは、約0.01mg/ml〜約15mg/mlの濃度で存在し、該高度に精製されたマンニトールは、約0.25(重量/容積)%〜約5(重量/容積)%の濃度で存在し、該組成物のpHは、約3.0〜約9.0の範囲にあり、そして
該組成物は、約0.01(重量/容積)%〜約15(重量/容積)%の濃度でヒトアルブミンをさらに含有する、
組成物。
(項目11) 前記組成物は、凍結乾燥されている、項目10に記載の組成物。
(項目12) 前記組成物は、液体であるかまたは凍結されている、項目10に記載の組成物。
(項目13) IFN−βおよび高度に精製されたマンニトールを含む組成物であって、
該IFN−βは、組み換えヒトIFN−βであり、該組み換えヒトIFN−βは、約0.01mg/ml〜約15mg/mlの濃度で存在し、該高度に精製されたマンニトールは、約0.25(重量/容積)%〜約5(重量/容積)%の濃度で存在し、該組成物のpHは、約3.0〜約9.0の範囲にあり、該組成物は、約0.01(重量/容積)%〜約15(重量/容積)%の濃度でヒトアルブミンおよび該組成物を等張性とするのに充分な塩化ナトリウムをさらに含有する、
組成物。
(項目14) 前記組成物は、凍結乾燥されている、項目13に記載の組成物。
(項目15) 前記組成物は、液体であるかまたは凍結されている、項目13に記載の組成物。
(項目16) IFN−βおよび高度に精製されたマンニトールを含む組成物であって、
該IFN−βは、組み換えヒトIFN−βであり、該組み換えヒトIFN−βは、約0.05mg/ml〜約1mg/mlの濃度で存在し、該高度に精製されたマンニトールは、約0.25(重量/容積)%〜約2.5(重量/容積)%の濃度で存在し、該組成物のpHは、約6.8〜約8.2の範囲にあり、そして該組成物は、約0.25(重量/容積)%〜約2.5(重量/容積)%の濃度でヒトアルブミンをさらに含有する、
組成物。
(項目17) 前記組成物は、該組成物を等張性とするために充分な塩化ナトリウムをさらに含む、項目16に記載の組成物。
(項目18) 前記組成物は液体であり、該液体は凍結または凍結乾燥されている、項目16に記載の組成物。
(項目19) 前記組成物は液体であり、該液体は凍結または凍結乾燥されている、項目17に記載の組成物。
(項目20) IFN−βおよび高度に精製されたマンニトールを含む組成物であって、
該IFN−βは、組み換えヒトIFN−βであり、該組み換えヒトIFN−βは、約0.25mg/mlの濃度で存在し、該高度に精製されたマンニトールは、約1.25(重量/容積)%の濃度で存在し、該組成物のpHは、約7.3〜約7.5の範囲にあり、そして該組成物は、約1.25(重量/容積)%の濃度でヒトアルブミンをさらに含有する、
組成物。
(項目21) 前記組成物は、該組成物を等張性とするために充分な塩化ナトリウムをさらに含む、項目20に記載の組成物。
(項目22) 前記組成物は、液体であり、該液体は凍結または凍結乾燥されている、項目20に記載の組成物。
(項目23) 前記組成物は、液体であり、該液体は凍結または凍結乾燥されている、項目21に記載の組成物。
(項目24) 前記IFN−βは、成熟したネイティブヒトIFN−βのアミノ酸配列を有するポリペプチドである、項目1に記載の組成物。
(項目25) 前記IFN−βは、グルコシル化されているかまたはグルコシル化されていない、項目24に記載の組成物。
(項目26) 前記IFN−βは、組換え産生される、項目1に記載の組成物。
(項目27) 項目1に記載の組成物を含む、予備充填されたシリンジ。
(項目28) 前記組成物は凍結されている、項目27に記載の予備充填されたシリンジ。
(項目29) IFN−βまたはその改変体およびマンニトールを含む組成物であって、該マンニトールは、20ppm未満の還元活性を有する、組成物。
(項目30) 薬学的ポリペプチドおよび高度に精製されたマンニトールを含む、組成物。
(項目31) 前記薬学的ポリペプチドは、ヒト成長ホルモン、インターフェロン、インターロイキン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球コロニー刺激因子、マクロファージコロニー刺激因子、β−グルコセレブロシダーゼ、チロトロピン、エタネルセプト(etanercept)、モノクローナル抗体、第VIIa因子、第VIII因子、ウロキナーゼ、アスパルギナーゼ、アニストレプラーゼ、およびアルテプラーゼからなる群より選択される、項目30に記載の組成物。
(項目32) 改善された安定性によって特徴付けられる、IFN−βまたはその生物学的に活性な改変体の処方物を生産する方法であって、該方法は:
IFN−βまたはその生物学的に活性な改変体および高度に精製されたマンニトールを、該IFN−βまたはその改変体を安定化するに充分な量で含む処方物を生産する工程を包含する、方法。
(項目33) 項目32に記載の方法によって生産される処方物。
(項目34) IFN−βまたはその生物学的に活性な改変体の処方物を生産する方法であって、該方法は、以下の工程:
a)クロマトグラフィーによって該IFN−βからドデシル硫酸ナトリウムおよび塩を取り除く工程;
b)該IFN−βと、ヒトアルブミンの溶液とを、約11.5〜約12.0のpHで合わせる工程;
c)該溶液のpHをHClで7.5に調整する工程;および
d)高度に精製されたマンニトールの溶液を加える工程、
を包含する、方法。
(項目35) 項目34に記載される方法によって生産される処方物。
(項目36) 前記処方物を凍結乾燥する工程をさらに包含する、項目34に記載の方法。
(項目37) 薬学的組成物におけるIFN−βまたはその改変体の安定性を増大させる方法であって、該方法は:
該組成物中に、該IFN−βまたはその改変体を安定化するのに充分な量の高度に精製されたマンニトールを取り込ませる工程、
を包含する、方法。
(項目38) 前記組成物を等張性にさせるに充分な塩化ナトリウムを加える工程をさらに包含する、項目34に記載の方法。
(項目39) 項目38に記載の方法によって生産される処方物。
(項目40) 前記処方物を凍結乾燥する工程をさらに包含する、項目38に記載の方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(発明の詳細な説明)
本発明は、安定性が増大したIFN−β薬学的組成物、およびそれらの調製方法に関する。この組成物は、IFN−βおよび高度に精製されたマンニトールを含む。この高度に精製されたマンニトールは、分解産物の形成を減少させることによってその処方物の安定性を増大させる。安定化されたIFN−β処方物は、より安全である(可能な有害な副作用が減少することに起因する)、およびより経済的である(処方物の寿命が増大することによる)という点で有利である。
【0009】
開示された組成物の安定性の増大は、高度に精製されたマンニトールの使用から生じる。本発明の新規な知見は、高度に精製されていないマンニトールがIFN−βと相互作用して所望されない付加物(分解産物)を生成する還元活性を含むのに対して、他方、高度に精製されたマンニトールは、この還元活性を含まず、そしてIFN−β処方物におけるこれらの付加物の形成を生じないことである。本明細書において提示される実験結果(実験の節における実施例1を参照のこと)は、IFN−β付加物形成を担う精製されていないマンニトール中に存在する還元活性は、還元糖活性ではないことを示す。なぜなら、高度に精製されていないマンニトールの存在下で形成された付加物は、既知の還元糖活性(例えば、デキストロース)を有する賦型剤の存在下で形成される付加物とは明らかに識別され得るからである。
【0010】
本明細書において用いられる「高度に精製されたマンニトール」とは、低レベルの還元活性を有するマンニトールをいう。高度に精製されたマンニトールの還元活性は、本明細書において別の場所において記載される還元活性アッセイによって測定されると20ppmUSP未満である。種々の実施形態において、高度に精製されたマンニトールの還元活性は、19ppm未満であり、18ppm未満であり、17ppm未満であり、16ppm未満であり、15ppm未満であり、14ppm未満であり、あるいは13ppm未満である。1つの実施形態において、高度に精製されたマンニトールはUSP(米国薬局方)またはACS(米国化学会)等級のマンニトールである。この等級のマンニトールは、1)メタノール抽出;2)炭素処理;3)限外濾過;および4)再結晶化のさらなる工程を受けている。高度に精製されたマンニトールは、その処方物を安定化するために十分な濃度で存在する。本発明に包含される処方物は、約0.1%(w/v)ほどの少なさの高度に精製されたマンニトールを有していてもよく、または約7.5%(w/v)ほどの多さの高度に精製されたマンニトールを有していてもよい。種々の実施形態において、このマンニトールは、約0.2〜約7.0%の濃度で存在し、約0.25%〜約2.5%の濃度で存在し、そして約1.25%の濃度で存在する。
【0011】
治療活性成分としてIFN−β、および賦型剤として高度に精製されたマンニトールを含む、液体および凍結乾燥の両方の薬学的組成物が開示される。本発明の目的のために、薬学的組成物または処方物に関し、用語「液体」とは、用語「水性」を包含することが意図される。IFN−β薬学的処方物に関し用語「凍結乾燥」とは、複数のバイアルの減圧下での迅速な凍結乾燥(フリーズドライ)をいう。このバイアルは各々、本発明のインターフェロン処方物の単位用量をその中に含む。上記凍結乾燥を行う凍結乾燥剤は市販されており、そして当業者によって容易に実施され得る。本発明の1つの実施形態において、液体組成物は凍結乾燥されている。
【0012】
本発明の液体または凍結乾燥されたIFN−β処方物は、「安定化される」。「安定化された」組成物あるいは「増大した安定性」または「改善された安定性」を有する組成物とは、高度に精製されていないマンニトールを用いて処方されたIFN−β組成物に対して貯蔵安定性が増大した組成物を意味する。安定性のこの増大は、高度に精製されていないマンニトールを用いた処方物との比較において、貯蔵の間のIFN−β付加物または分解産物の処方物における減少によって証明される。付加物または分解産物の形成は、本明細書において記載される質量分析アッセイを用いて測定され得る。安定化された、高度に精製されたマンニトール処方された本発明のIFN−β組成物は、本明細書において記載される質量分析アッセイによって決定されるように、USPマンニトール処方されたIFN−βにおいて、マンニトールなしで処方されるIFN−β組成物と比較したときに観察されるさらなるピークの非存在によって特徴付けられる。例えば、図9に示される、高度に精製されたマンニトールを用いて処方されたIFN−βの質量スペクトルを参照のこと。これは、図10に示されるマンニトールなしで処方されたIFN−βの質量スペクトルと比較してさらなるピークを示さない。対照的に、図11に示される、USPマンニトールで処方されたIFN−βの質量スペクトルは、マンニトールなしで処方されたIFN−βの質量スペクトルと比較して、多数のさらなるピーク(付加物)を解像する。本発明の安定化されたIFN−β薬学的処方物は、その効力を保持し、そして30℃で貯蔵したときに約2年までの期間にわたり、および25℃で貯蔵したときに少なくとも2年間、0.02mg/ml未満のグルコシル化されたIFN−βを含む。
【0013】
本発明の安定化された薬学的処方物は、IFN−βおよびその改変体を含む。本明細書において使用される用語「IFN−β」とは、IFN−βまたはその改変体(これは、ときに、IFN−β様ポリペプチドと呼ばれる)をいう。ヒトIFN−β改変体(これは、天然に存在するもの(例えば、IFN−β遺伝子座において生じる対立遺伝子改変体)であり得るか、または組換え産生され得る)は、ネイティブの成熟IFN−β配列と同じか、類似するか、または実質的に類似する、アミノ酸配列を有する。活性を保持するIFN−βフラグメントまたはIFN−βの短縮形態もまた、包含される。これらの生物学的に活性な、IFN−βのフラグメントまたは短縮形態は、全長IFN−βアミノ酸配列から、当該分野において周知の組換えDNA技術を用いてアミノ酸残基を除くことによって生成される。IFN−βポリペプチドは、グルコシル化されていてもよく、グルコシル化されていなくてもよい。なぜなら、文献において、グルコシル化されているIFN−βポリペプチドおよびグルコシル化されていないIFN−βポリペプチドの両方が質的に類似する特異的活性を示し、そして従ってグルコシル化部分は、IFN−βの生物学的活性に関与せず、そして寄与もしていないと報告されているからである。
【0014】
本明細書において含まれるIFN−β改変体は、ネイティブの成熟IFN−β配列のムテインを含む(例えば、米国特許第5,814,485号を参照のこと。これは、本明細書において参考として援用される)。ここでは、生物学的活性に必須ではない1つまたは複数のシステイン残基が故意に欠失されているか、または他のアミノ酸で置き換えられ、分子間架橋または不正確な分子間ジスルフィド結合形成のいずれかのための部位が除去されている。この型のIFN−β改変体は、ネイティブの成熟アミノ酸配列のアミノ酸17に見出されるシステインに代えて、グリシン、バリン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、チロシン、フェニルアラニン、ヒスチジン、トリプトファン、セリン、スレオニン、またはメチオニンを含む改変体を包含する。セリンおよびスレオニンは、それらがシステインと化学的に類似することから、もっとも好ましい置換物である。セリン置換がもっとも好ましい。例えば、ネイティブの成熟配列のアミノ酸17において見出されるシステインがセリンで置換されたIFN−β改変体を参照のこと(米国特許第5,814,485号)。システイン17はまた、当該分野において公知の方法を用いて欠失され得る(例えば、米国特許第4,588,584号を参照のこと。これは、本明細書において参考として援用される)。このことにより、ネイティブの成熟IFN−βよりも1アミノ酸短い成熟IFN−βムテインが生じる。例としてはまた、米国特許第4,530,787号;同第4,572,798号;および同第4,588,585号を参照のこと。従って、たとえば、その薬学的有用性を改善する1つまたは複数の改変体を有するIFN−β改変体もまた、本発明に包含される。
【0015】
当業者は、更なる変化が、IFN−βをコードするヌクレオチド配列への変異によって、インターフェロンの生物学的活性を変化させることなく、IFN−βアミノ酸配列における変化を生じることによって導入され得ることを理解する。従って、ネイティブの成熟IFN−βについてのアミノ酸配列とは異なる配列を有するIFN−β改変体をコードする、単離された核酸分子は、1または複数のヌクレオチドの置換、付加、または欠失を、本明細書に開示される対応するヌクレオチド配列へと導入し、それにより1または複数のアミノ酸の置換、付加または欠失が、コードされるIFN−βへと導入されることによって作製され得る。変異は、標準的な技術(例えば、部位特異的変異誘発およびPCR媒介変異誘発)によって導入され得る。そのようなIFN−β改変体もまた、本発明に包含される。
【0016】
例えば、保存的アミノ酸置換は、1または複数の予測された、好ましくは非必須のアミノ酸残基において行われ得る。「非必須」のアミノ酸残基とは、生物学的活性を変化させることなくIFN−βの野生型配列とは異なり得る残基である。他方、「必須」アミノ酸残基は、生物学的活性に必要である。「保存的アミノ酸置換」とは、そのアミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換される置換をいう。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該分野において定義されている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖を有するアミノ酸(たとえば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を包含する。そのような置換は、保存されたアミノ酸残基に対してはなされないか、あるいは、保存されたモチーフ内に存在するアミノ酸残基に対しては行われない。
【0017】
あるいは、改変体IFN−βヌクレオチド配列は、飽和変異誘発のような、IFN−βコード配列のすべてまたは部分にわたってランダムに導入される変異によって作製され得る。そして、得られた変異体は、IFN−βの生物学的活性についてスクリーニングされて、活性を保持する変異体を同定し得る。変異誘発の後、コードされるタンパク質は、組換え発現され得、そしてそのタンパク質の活性は、本明細書において記載される標準的なアッセイ技術を用いて決定され得る。
【0018】
IFN−βの生物学的に活性な改変体は、一般的に、比較の基礎として作用する、参照IFN−βポリペプチド(例えば、ネイティブヒトIFN−β)に対して、少なくとも80%、より好ましくは約90〜約95%またはそれを超えるか、そしてもっとも好ましくは約96%〜約99%またはそれを超えるアミノ酸配列同一性を有する。「配列同一性」とは、改変体ポリペプチド、ならびにその改変体のアミノ酸配列の、特定の連続セグメントが参照分子のアミノ酸配列とアラインメントし、そして比較されるとき、参照として作用するポリペプチド分子内に見出される、同じアミノ酸残基を意味する。
【0019】
配列同一性決定の目的のために2つの配列の最適なアラインメントの目的のために、改変体のアミノ酸配列の連続セグメントは、参照分子のアミノ酸配列に対して、さらなるアミノ酸残基を有し得るかまたはアミノ酸残基の欠失を有し得る。参照アミノ酸配列に対して比較するために使用される連続セグメントは、少なくとも20の連続アミノ酸残基を含む。改変体アミノ酸配列中へのギャップの挿入に伴う配列同一性の増大に関する補正は、ギャップペナルティを割り当てることによって行われ得る。配列アラインメントの方法は、当該分野において周知である。
【0020】
従って、任意の2つの配列の間のパーセント同一性の決定は、数学アルゴリズムを用いて達成され得る。配列の比較のために利用される、1つの好ましいが非限定的な数学アルゴリズムの例としては、Myers and Miller (1988)Comput.Appl.Biosci.4:11〜7のアルゴリズムが挙げられる。そのようなアルゴリズムは、ALIGNプログラム(バージョン2.0)において利用される。このプログラムは、GCGアラインメントソフトウェアパッケージの一部である。PAM120重量残基の表、12のギャップ長さペナルティ、および4のギャップペナルティが、アミノ酸配列の比較のときのALIGNプログラムに対して用いられ得る。2つの配列を比較する際に使用するための、別の好ましい非限定的な数学アルゴリズムの例は、Karlin
and Altschul(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−5877のアルゴリズムであり、これは、Karlin and Altshcul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci USA 90:5873−5877において改変される。そのようなアルゴリズムは、Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403〜410のNBLASTおよびXBLASTプログラムへと取り込まれている。BLASTアミノ酸配列検索は、XBLASTプログラムを用いて実施され得る。ここで、スコア=50であり、ワード長=3である。その結果、目的のポリペプチドと類似のアミノ酸配列が得られる。比較の目的のためのギャップのあるアラインメントを得るために、ギャップのあるBLASTは、Altschul et al.(1997)Nucleic Acids
Res.25:3389−3402に記載されるように利用され得る。あるいは、PSI−BLASTを使用して、分子間の離れた関係を検出するインターレイト検索を行うことができる。Altschul et al.(1997)前出を参照のこと。BLAST、ギャップのあるBLASTまたはPSI−BLASTのプログラムを利用する場合、デフォルトパラメータが使用され得る。http://www.ncbi.n1m.nih.govを参照のこと。Atlas of Protein Sequence and Structure 5:Suppl.3,National Biomedical Research Foundation,Washington,D.C.中のALIGNプログラム(Dayhoff(1978))、およびWisconsin Sequence Analysis Package,Version 8(Genetics Computer Group,Madison,Wisconsinから入手可能)中のプログラム(例えば、GAPプログラム)もまた参照のこと。ここでは、このプログラムのデフォルトパラメータが利用される。
【0021】
アミノ酸配列同一性の比率を考慮するとき、いくつかのアミノ酸残基位置は、タンパク質機能の特性に影響を与えない、保存的アミノ酸置換の結果として異なり得る。これらの場合、パーセント配列同一性は、上方に修正されて保存的に置換されたアミノ酸における類似性を説明することができる。そのような修正は当該分野において周知である。例えば、Myers and Miller(1988)Comput.Appl.Biosci.4:11−17を参照のこと。
【0022】
本発明に包含される生物学的に活性なIFN−β改変体は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)またはアルブミンに共有結合架橋されたIFN−βポリペプチドも含む。これらの共有結合のハイブリッドIFN−β分子は、特定の所望の薬学的特性(例えば、患者への投与後の血清半減期の延長)を有する。PEG−IFN付加物を作製するための方法は、モノメトキシポリエチレングリコールを化学改変してIFN−βと反応する活性化化合物を作製することを含む。PEG連結されたポリペプチドを作製および使用するための方法は、例えば、Delgado et al.(1992)Crit.Rev.Ther.Drug.Carrier Syst.9:249〜304に記載される。アルブミン融合ポリペプチドを作製する方法は、目的のポリペプチド(例えば、IFN−β)およびアルブミンのコード配列の融合を包含し、そして米国特許第5,876,969号に記載されており、これは、本明細書において参考として援用される。これらのハイブリッドIFN−β分子は、USPマンニトール中に存在する不純物と反応し、そして高度に精製されたマンニトールとともに処方されるとき、より安定である。
【0023】
本発明に包含されるIFN−βの生物学的に活性な改変体は、IFN−β活性(特に、IFN−βレセプターへの結合能)を保持するべきである。いくつかの実施形態において、IFN−β改変体は、参照IFN−βポリペプチド(たとえば、ネイティブなヒトIFN−β)の少なくとも約25%、約50%、約75%、約85%、約90%、約95%、約98%、約99%またはそれより高い生物学的活性を保持する。参照IFN−βポリペプチドの活性と比較してその活性が増加しているIFN−β改変体もまた包含される。IFN−β改変体の生物学的活性は、当該分野において公知の任意の方法によって測定され得る。そのようなアッセイの例は、以下に見出され得る:Fellous et al.(1982)Proc.Natl.Acad.Sci USA 79:3082−3086;Czerniecki et al.(1984)J.Virol.49(2):490−496;Mark et al.(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:5662−5666;Branca et al.(1981)Nature 277:221−223;Williams et al.(1979)Nature 282:582−586;Herberman et al.(1979)Nature 277:221−223;Anderson et al.(1982)J.Biol.Chem.257(19):11301−11304;および本明細書において記載されるIFN−β効力アッセイ(実施例2を参照のこと)。
【0024】
本発明の処方物のIFN−βは、以下を含むがそれらに限定されない任意の動物種に由来し得る:鳥類、イヌ、ウシ、ブタ、ウマおよびヒト。好ましくは、IFN−βは、その処方物が哺乳動物IFN−β障害の処置において使用されるべきときは、哺乳動物種に由来し、より好ましくは、これは、そのような障害について処置を受ける哺乳動物と同じ種の哺乳動物種由来である。
【0025】
本発明に包含されるIFN−βポリペプチドおよびIFN−β改変体ポリペプチドの非限定的な例は、以下に示される:Nagata et al.(1980)Nature 284:316−320;Goeddel et al.(1980)Nature 287:411−416;Yelverton et
al.(1981)Nucleic Acids Res.9:731−741;Streuli et al.(1981)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.78:2848−2852;EP028033BlおよびEP109748Bl。以下もまた参照のこと:米国特許第4,518,584号;第4,569,908号;第4,588,585号;第4,738,844号;第4,753,795号;第4,769,233号;第4,793,995号;第4,914,033号;第4,959,314号;第5,545,723号;および第5,814,485号。これらの開示は、本明細書において参考として援用される。これらの引用はまた、生物学的活性の喪失なしに変化され得るIFN−βポリペプチドの残基および領域に関するガイダンスを提供する。
【0026】
本発明の1つの実施形態において、安定化された薬学的処方物内のIFN−βは、ネイティブな成熟IFN−βポリペプチドである。別の実施形態において、これらの処方物におけるIFN−βは、成熟IFN−βポリペプチドであって、ネイティブの成熟配列のアミノ酸17に見出されるシステインは、上記に議論したようにセリンで置換される。しかし、本発明は、安定化された薬学的処方物内のIFN−βが任意の生物学的に活性なIFN−βポリペプチドであるかまたは本明細書において他の場所に記載される改変体である、他の実施形態を包含する。
【0027】
本発明のこのいくつかの実施形態において、IFN−βは、組換え産生される。「組換え産生されたIFN−β」とは、ネイティブの成熟なIFN−βに匹敵する生物学的活性を有し、そして組換えDNA技術によって調製されているIFN−βを意図する。IFN−βは、IFN−βポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞を培養することによって生成され得る。この宿主細胞は、ヌクレオチド配列を転写し得、その所望のタンパク質を産生し得る細胞であり、そして、原核生物(たとえば、E.coli)であり得、または真核生物(たとえば、酵母、昆虫または哺乳動物の細胞)であり得る。IFN−βの組換え産生の例は、以下に与えられる:Mantei et al.(1982)Nature 297:128;Ohno et al.(1982)Nucleic Acids Res.10:967;Smith et al.(1983)Mol.Cell.Biol.3:2156,ならびに米国特許第4,462,940号;第5,702,699号;および第5,814,485号;これらは、本明細書において参考として援用される。米国特許第 5,795,779号もまた参照のこと。ここでは、IFN−β−1aがチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞中で組換え産生される。これもまた、本明細書において参考として援用される。ヒトインターフェロン遺伝子は、組換えDNA(「rDNA」)技術を用いてクローニングされ、そしてE.coliにおいて発現されている(Nagola et al.(1980)Nature 284:316;Goeddel et al.(1980)Nature 287:411;Yelverton et al.(1981)Nuc.Acid Res.9:731;Streuli et al.(1981)Proc.Natl.Acad Sci.U.S.A.78:2848)。あるいは、IFN−βは、当該分野において公知の方法に従って、目的のIFN−βタンパク質を発現するように遺伝子操作されたトランスジェニック動物またはトランスジェニック植物によって産生され得る。
【0028】
あるいは、IFN−βは、ペプチド技術分野における当業者に公知のいくつかの任意の技術により化学合成され得る。たとえば、以下を参照のこと:Li et al.(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:2216−2220,Steward and Young(1984)Solid Phase Peptide Synthesis(Pierce Chemical Company,Rockford,Illinois),およびBaraney and Merrifield(1980)The Peptides:Analysis,Synthesis,Biology,ed.Gross and Meinhofer,Vol.2(Academic Press,New York,1980),pp.3−254(これは、固相ペプチド合成技術を議論する);ならびにBodansky(1984)Principles of Peptide Synthesis (Springer−Verlag,Berlin)ならびにGross and Meinhofer,eds.(1980)The Peptides:Analysis,Synthesis,Biology,Vol.1(Academic Press,New York)(これは、古典的な溶液合成を議論する)。IFN−βはまた、同時複数ペプチド合成の方法により化学的に調製され得る。例えば、以下を参照のこと:Houghten(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:5131−5135;および米国特許第4,631,211号。
【0029】
本発明により包含される組成物は、少なくて約0.01mg/mlのIFN−β〜多くて約15mg/ml(重量/容量)のIFN−βを有し得る。種々の実施形態において、IFN−βは、約0.015mg/ml〜約12.5mg/mlの濃度、約0.025mg/ml〜約10mg/mlの濃度、約0.05mg/ml〜約8mg/mlの濃度、約0.075mg/ml〜約6mg/mlの濃度、約0.1mg/ml〜約4mg/mlの濃度、約0.125mg/ml〜約2mg/mlの濃度、約0.175mg/ml〜約1mg/mlの濃度、約0.2mg/ml〜約0.5mg/mlの濃度、約0.225mg/ml〜約0.3mg/mlの濃度、ならびに約0.25mg/mlの濃度で存在する。
【0030】
いくつかの実施形態において、本発明の処方物は、薬学的に受容可能なキャリアを含む。「薬学的に受容可能なキャリア」とは、貯蔵、投与、および/または治療成分の治癒効果を容易にするために従来より当該分野において使用されているキャリアを意図する。キャリアはまた、IFN−βの所望されない任意の副作用を減少させ得る。適切なキャリアは、安定であるべき、すなわち、処方物における他の成分と反応し得ないべきである。これは、処置のために使用される投薬量および濃度においてレシピエントにおける有意な局所または全身性の有害作用を生成すべきではない。そのようなキャリアはは、一般に、当該分野において知られている。本発明に適切なキャリアは、アルブミン、ゼラチン、コラーゲン、ポリサッカリド、モノサッカリド、ポリビニル−ピロリドン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマー性アミノ酸、不揮発性油、オレイン酸エチル、リポソーム、グルコース、スクロース、ラクトース、マンノース、デキストロース、デキストラン、セルロース、ソルビトール、ポリエチレングリコール(PEG)などの従来使用される大きな安定した高分子である。徐放性キャリア(例えば、ヒアルロン酸)もまた、適切であり得る。特に、Prisell et al.(1992)Int.J.Pharmaceu.85:51−56、および米国特許第5,166,331号を参照のこと。この組成物中の他の受容可能な成分としては、等張性を改変する薬学的に受容可能な薬剤が挙げられるがそれらに限定されず、水、塩、糖、ポリオール、アミノ酸、および緩衝剤が含まれる。適切な緩衝剤の例としては、リン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、および他の有機酸またはその塩、ならびに等張性を改変する塩(例えば、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウムなど)が挙げられ、そして上記の緩衝剤をも含み得る。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態において、薬学的に受容可能なキャリアは、ヒトアルブミンである。ヒトアルブミンは、天然に存在するヒトアルブミンであり得るか、あるいは組換え産生されたヒトアルブミンであり得る。これらの2つの形態は、本明細書において総称して「ヒトアルブミン」と呼ぶ。本発明に包含される処方物は、少なくて約0.01%(重量/容量)のヒトアルブミン〜多くて約15%(重量/容量)ヒトアルブミンを有し得る。種々の実施形態において、ヒトアルブミンは、約0.025%〜約12.5%の濃度、約0.05%〜約10%の濃度、約0.1%〜約9%の濃度、約0.25%〜約8%の濃度、約0.5%〜約7%の濃度、約0.6%〜約2%の濃度、約0.7%〜約1.75%の濃度、約0.75%〜約1.5%の濃度、約1.2%〜約1.3%の濃度、ならびに約1.25%の濃度で存在する。
【0032】
薬学的組成物は、さらに、可溶化剤または可溶性増強剤を含み得る。グアニジウム基を含む化合物(もっとも好ましくは、アルギニン)は、IFN−βについて適切な可溶性増強剤である。そのような可溶性増強剤の例としては、アミノ酸アルギニン、およびアルギニンのアミノ酸類似体であって、IFN−βの可溶性を増強する能力を保持するものが挙げられる。そのような類似体としては、限定することなく、アルギニンを含むジペプチドおよびトリペプチドが挙げられる。さらなる適切な可溶化剤は、以下に議論される:米国特許第4,816,440号;第4,894,330号;同第5,004,605号;同第5,183,746号;同第5,643,566号;ならびにWang et al.(1980)J Parenteral Drug Assoc.34:452−462、これらは、本明細書において参考として援用される。
【0033】
本発明に包含される、非限定的な可溶化剤の例としては、IFN−βを可溶化するに適切な疎水性親水性バランスを有する表面活性剤(界面活性剤)が挙げられる。強力な天然のまたは合成のアニオン性表面活性剤(例えば、脂肪酸のアルカリ金属塩およびアルカリ金属アルキル硫酸塩)が使用され得る。そのような薬剤は、通常、10〜14の炭素原子を含む。ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)およびラウリル酸ナトリウムは、特に好ましい可溶化剤である。本発明の組成物において使用され得る他の可溶化剤の例としては、以下が挙げられるがそれらに限定されない:ドデシルスルホン酸ナトリウム、デシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、トリデシルスルホン酸ナトリウム、ミルスチン酸ナトリウム、カプロイル酸ナトリウム、ドデシルN−サルコシン酸ナトリウム、およびテトラデシルN−サルコシン酸ナトリウム。表面活性剤または乳化剤による医薬の古典的な安定化は、例えば、以下に記載される:Levine et al.(1991)J.Parenteral Sci.Technol.45(3):160−165。さらなる適切な表面活性剤は、以下に議論される:米国特許第4,507,281号;同第4,816,440号;および同第5,183,746号。これらは、本明細書において参考として援用される。
【0034】
上記に開示される薬剤に加え、他の安定化剤(例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)またはその塩の一つ(例えば、EDTA二ナトリウム)を加えて、液体薬学的組成物の安定性をさらに増強することができる。EDTAは、多くの酸化反応を触媒することが知られる金属イオンのスカベンジャーとして作用し、したがって、さらなる安定化剤を提供する。
【0035】
IFN−β処方物が、哺乳動物(例えば、ヒト)への送達に使用される場合、その組成物の等張性もまた、考慮事項である。従って、1つの実施形態において、IFN−βの注射可能な溶液のための組成物は、患者の血清または体液のものと同じかまたは類似する等張性を提供する。等張性を達成するために、塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、またはリン酸緩衝剤)は適切な濃度でその溶液に加えられ得る。
【0036】
処方物のpHもまた、考慮事項である。本発明の安定化されたIFN−β処方物は、約3.0〜約9の範囲のpHを有する。適切なpHの範囲は、例えば、約4.0〜約8.8、約5.0〜約8.6、約6.0〜約8.4、約6.8〜約8.2、約6.9〜約8.0、約7.0〜約7.8、約7.1〜約7.7、約7.2〜約7.6、および約7.3〜約7.5を包含する。
【0037】
本発明の、安定化された液体IFN−β処方物、または再構成された安定化された凍結乾燥されたIFN−β薬学的処方物の薬学的に有効な量が被検体に投与される。「薬学的に有効な量」とは、疾患または状態の処置、予防または診断において有用な量を意図する。投与の代表的な経路としては、経口投与、経鼻送達、肺送達、および非経口投与(経皮、静脈内、筋肉内、皮下、動脈内および腹腔内の注射または注入を含む)が挙げられるがそれらに限定されない。1つのそのような実施形態において、投与は、注射、好ましくは皮下注射による。本発明の組成物の注射可能形態としては、溶液、懸濁液およびエマルジョンが挙げられるがそれらに限定されない。代表的に、IFN−βの治療上有効な量は、約0.01μg/kg〜約5mg/kgの組成物、好ましくは約0.05μg/kg〜約1000μg/kg、より好ましくは約0.1μg/kg〜約500μg/kg、さらにより好ましくはなお約0.5μg/kg〜約30μg/kgを包含する。
【0038】
1つの実施形態において、IFN−βを含む安定化された薬学的組成物は、単位投薬量で処方され、そして溶液、懸濁液またはエマルジョンのような注射可能または注入可能な形態であり得る。さらに、この組成物は、乾燥形態で(例えば、凍結乾燥粉末)凍結貯蔵または調製され得る。これは、経口または非経口の投与経路を含む、種々の方法のいずれかによって、投与前に液体溶液、懸濁液またはエマルジョンへと再構成され得る。安定化された薬学的組成物は、メンブレン濾過によって滅菌され得、そして封入バイアルまたはアンプルのような単位用量または多数回用量の容器中に貯蔵される。当該分野において一般的に公知の薬学的組成物を処方するためのさらなる方法は、それらが開示される高度に精製されたマンニトールの有益な効果に有害に影響しない限り、本明細書に開示された薬学的組成物の貯蔵安定性をさらに増強するために使用され得る。処方物および薬学的に受容可能なキャリア、安定化剤などの選択の完全な議論は、以下に見出され得る:Reminington’s Pharmaceutical Sciences(1990)(18th ed.,Mack Pub.Co.,Eaton,Pennsylvania)、これは、本明細書において参考として援用される。
【0039】
いくつかの実施形態において、本発明の液体組成物は、シリンジ(本発明の「予備充填された」シリンジ)中に包装される。次に、1つの実施形態において、本発明の組成物を含む予備充填されたシリンジは、凍結され得る。この凍結された予備充填されたシリンジは、貯蔵または輸送の目的のために有用である。
【0040】
以下の実施例は、例示のために提供され、そして限定のために提供されるのではない。
【実施例】
【0041】
(実験)
(実施例1:安定性が増大したIFN−β薬学的処方物の開発)
I.序論
賦形剤としてデキストロースを含むIFN−β薬学的処方物は当該分野において知られている。そのような処方物が37℃以上の温度でインキュベートされるとき、これらの処方物におけるデキストロースは、IFN−βとともに共有結合付加物を形成し、これは、RP−HPLC(逆相高速液体クロマトグラフィー)によって検出され得る。USPマンニトールで処方されるIFN−βは、同じ条件下でRP−HPLC検出可能な共有結合付加物を形成しない。しかし、USPマンニトールは、IFN−βと合わせて、エレクトロスプレー質量分析によって検出される付加物種を形成する不純物を含む。USPマンニトール中の不純物の性質は、知られていない。これらの付加物(または分解産物)の形成は、薬学的に所望されないと考えられており、薬学的に受容可能ではないとまで考えられている。ポリペプチドベースの医薬についての現在のガイドラインは、処方物における分解産物の形成を最小限にすることの重要性を強調しているからである。分解産物は、所望されないかまたは受容可能ではないと考えられている。なぜなら、それらは、そのペプチドベースの医薬が所望されない副作用を生じる機会を増大するからである。本発明の新規な知見は、IFN−βがそれが高度に精製されたマンニトールと処方されるとき、安定性の増大を示し、その結果、その還元活性は、高度に精製されていないマンニトールで処方されるときと比べて、20ppm未満であることである。本発明のさらなる新規な知見は、メタノールでの抽出、炭素処理、限外濾過および再結晶化によるUSPマンニトールの精製が、20ppm未満の還元活性を伴うマンニトール調製物を生じることである。
【0042】
II.方法
これらの実験において使用するためのIFN−β−1bを、本質的に米国特許第4,462,940号および同第5,702,699号(これらは、参考として援用される)において記載されるようにE.coliにおいて生成した。ドデシル硫酸ナトリウムおよび塩をIFN−βからクロマトグラフィーにより除き;そしてIFN−β−1bを、ヒトアルブミンの溶液とpH11.5〜12.0で合わせた。溶液のpHを、HClで7.5に調整した。そして賦形剤((マンニトールまたはデキストロース)を含む溶液を加えて最終濃度を1.25%にした。その処方物におけるヒトアルブミンの最終濃度は、1.25%w/vであった。
【0043】
これらの処方物からのIFN−β−1bを、RP−HPLCによる質量分析のために調製した。この方法によって、クロマトグラムにおける分離したピーク(B1)として分離された後、グルコシル化したIFN−β−1bの定量が可能となる。この方法でのグルコシル化されたIFN−β−1bについての検出限界は、0.02mg/mlである。このピークの量が0.02mg/ml未満の場合、2つのピーク面積が合算され、そして処方されていないIFN−β参照と比較されて、IFN−β−1bの合計含量を得る。このピーク面積が0.02mg/mlを超える場合、その濃度は、独立に決定されそして報告される。
【0044】
以下の装置およびそのそれぞれの製造業者の指示マニュアルを分析に使用した。
【0045】
溶媒送達系:Waters 626 Gradient Pump
注射系:Waters 717およびAutosampler 200 ml注射ループ
ポリプロピレンオートサンプラーバイアル(Teflon septa付)
オートサンプラー温度制御を4℃に設定して冷蔵
84%アセトニトリルを針洗浄として使用する。
【0046】
カラムヒーター:Waters 600
カラムヒーターを40℃に設定
カラム:BAKERBOND Wide−Pore Butyl C4 RP−Column,300Å 5μm,4.6 mm(ID)250 mm,J.T.Baker part number 22010。
【0047】
カラムを、カラム標識において指示されるように溶媒流の方向に接続し、そしてカラムヒーターに配置した。
【0048】
検出器:Waters 486 UV Detector。
【0049】
波長を214nmに設定する。
【0050】
データシステム入力を減衰させない。
【0051】
データシステム:P.E.Nelson Turbochrom Data System
凍結乾燥させたIFN−β処方物サンプルを、1.20mlの0.54%塩化ナトリウムで再構成し、緩やかに反転させて混合し、そして雰囲気温度で30±5分間インキュベートした。キャリブレータは、処方されていないIFN−β参照である。キャリブレータストック溶液は、約0.5mg/mlにまで希釈され、そして希釈されたキャリブレータ溶液の濃度は、UV吸収によって決定される(6連の平均)。希釈されたキャリブレータ溶液の最終濃度は、UV吸収の読み取りの平均を1.7(IFN−β−1b吸光係数)で割ったものである。希釈されたキャリブレータ溶液濃度は、3つの顕著な形態に対する吸収によって決定される。次いで、キャリブレータ溶液を、作業用キャリブレータ溶液として使用するために0.25mg/mlに希釈した。
【0052】
オートサンプラーを、1回の注射あたり20μlで70分の間隔で注射するようにプログラムした。このデータシステム電圧範囲は1ボルトであり、サンプリング速度は、1秒あたり1点であり、そして獲得時間は70分であった。溶離液Aは0.1% TFA(トリフルオロ酢酸、HPLC等級)であり、そして溶離液Bは84%アセトニトリル(HPLC等級)および0.084% TFA(HPLC等級)であった。溶出流速を1.0ml/分(70%溶離液Aおよび30%溶離液B)に設定し、そしてカラムを1時間平衡化した。検出器の基底線およびシステムを平衡化した後、勾配ブランクを分析した。分析を、第二の勾配ブランクにおいて顕著なピークが存在しないときにはじめた。
【0053】
IFN−β濃度を、改変されていないIFN−β(「B」ピーク)およびグルコシル化されたIFN−β(「B1」ピーク)に対応するピークの面積の合計から決定する。例えば、キャリブレータ溶液が0.25mg/mlの処方されていないIFN−βである場合、IFN−β濃度(mg/ml)=(試験サンプル合計ピーク面積B1+B/キャリブレータ合計ピーク面積B1+B)×0.25mg/mlである。
【0054】
エレクトロスプレイ質量スペクトル(ES−MS)データを、このクロマトグラフィーからの画分を用いて得た。分析の前におのおののピークの画分を収集し、そして濃縮した。エレクトロスプレイ質量スペクトルを、Harvard シリンジポンプ(Harvard Apparatus,South Natick,MA)およびRheodyne 8125インジェクタ(100μM内径の溶融シリカチューブ付)を装着した、API 100単一四重極質量スペクトロメータ(Perkin−Elmer Sciex Instruments,Thornhill,Ontario,Canada)を用いて得た。質量スペクトルを、0.2Daの工程サイズを用いて6秒/走査で、140〜2500の範囲の質量/電荷比(m/z)を走査することによって正モードで記録した。質量スペクトロメータを、2mM酢酸アンモニウムを含む50:50:0.1の水:メタノール:蟻酸(v:v:v)中に3.3×10−5M PPG425、1×10−4M PPG1000および2×10−4M PPG2000(Aldrich Chemical Co.)を含むポリプロピレングリコール混合物を用いて較正した。タンパク質溶液(2μL中に20〜50pM)のアリコートを、49:40:1の水:アセトニトリル:酢酸中の質量スペクトロメータイオン供給源中に20μL/分で導入した。タンパク質は、低いpHでイオン供給源中に導入されることから、塩基性部位(例えば、アルギニン、リジンおよびヒスチジンの残基の側鎖における窒素原子)は、種々の程度でプロトン化されて、プロトン化についてアクセス可能な部位の数に依存して、多数の荷電状態を有する分子イオン(例えば、[M+H]+,[M+2H]2+)を生じる。検出器は、種々の荷電状態における分子イオンのm/z比を記録し、そして質量スペクトルは、Biotoolboxソフトウェア(Perkin−Elmer Sciex
Instruments)を用いてデコンボリューションをして、タンパク質の分子量を得ることができる。20kDaでの分子量測定の質量精度は、2kDa以内であった。
【0055】
マンニトールの還元活性を、USPプロトコルの改変によって決定した。このプロトコルは、ビシンコニン酸(BCA、Pierce、製造業者の指示に従って調製した)の存在下でのアルカリ溶液におけるCu2+の減少を測定する。BCAはCu1+と錯体を形成し、そしてこの錯体は、562nmでのピーク吸収(A)を伴う青色を有する。
【0056】
2つのマンニトールサンプル(500μlの150mg/mlマンニトール溶液)を、各々の条件についてアッセイした。標準曲線を、既知の還元活性を用いて、グルコース溶液の連続希釈を用いて作成した。500μlの調製されたBCA溶液を、各々の試験サンプル、標準サンプルおよびブランクに加え、そして60℃で40分間インキュベートした。グルコース標準を、線形曲線に適合させ、そしてマンニトール試験サンプルの還元活性(ppm)を、((マンニトールサンプルのA562/標準曲線の勾配)/(マンニトール含量mg/ml(1000))×106)として計算した。
【0057】
III.結果および考察
グルコシル化を、IFN−β−1bの分子量に加えられた162ダルトンの乗数として質量分析を用いて、デキストロース処方物において検出した。IFN−β−1bペプチドの分析によって、これらの付加物がタンパク質のリジン残基と還元糖との反応(アマドリ反応)から生じることが示唆された。図1は、デキストロース処方物の処方されたバルクのRP−HPLCクロマトグラムを、50℃で1週間貯蔵した凍結乾燥処方物に対して比較する。この図は、デキストロース処方物中のIFN−β−1bが50℃で容易に反応して凍結乾燥状態におけるB1ピークを生成することを示す。処方されたバルクのES−MS(図2)は、グルコース付加物(プラス162)に関連するピークを有しない。対照的に、インキュベートされた凍結乾燥デキストロース処方物の質量スペクトル(図3)は、広汎な改変を示す。従って、グルコースは、IFN−β−1bと反応して、ES−MSによってその全体構造が確認される、RP−HPLCによって検出される種を形成する。
【0058】
対照的に、USPマンニトールを用いて作製されたIFN−β−1b処方物は、RP−HPLCによってピークB1として検出可能である種を形成しない。図4は、50℃で7日にわたって保持される凍結乾燥処方物に対して、マンニトール処方されたバルクを比較する。明らかにピークB1は形成されていない。しかし、図5において処方されたバルクの質量スペクトルは、20040におけるピークの存在を示し、そして図6におけるインキュベートされた凍結乾燥マンニトール処方物の質量スペクトルは、20201に新たなピークを有する。マンニトールと形成された付加物の量は、ES−MSによって定量され得ない。しかし、この付加物のシグナルは、装置の検出限界付近にしばしばある。これらのピークの形成の機構は知られていない。IFN−β−1bとマンニトールとの反応では、デキストロースと形成された種またはグルコースを用いて形成された種のような種を形成せず、ピークB1は形成されない。従って、このデータは、IFN−β−1b付加物の形成を妨害するのに、より純粋な形態のマンニトールが必要とされることを示す。
【0059】
次いで、不純物を減少させるようにメタノール抽出されたマンニトールを、IFN−β−1bの安定性に対するその効果について試験した。IFN−β−1bを、メタノール抽出したマンニトールの3つの異なるロットを用いて処方し、そして処方されたバルクおよび最終容器の試験サンプルを、上述のRP−HPLCおよびES−MSアッセイを用いてアッセイした。図7は、未処理のマンニトールを用いて処方したIFN−β−1bの質量スペクトルを示し、そして図8は、メタノールを用いて精製された、同じロットのマンニトールを用いて処方されたIFN−β−1bの質量スペクトルを示す。3つすべてのロットのマンニトールが類似のパターンを示した。図17は、還元活性の半分より多くがメタノール処理によって除去されることを示す。明らかに、メタノール処理は、IFN−β−1bと複合体を形成する不純物を除去するが、いくらかは、この処理によって完全には除去されないかもしれない。
【0060】
マンニトールにおける残りの不純物を減少させるために、3つのさらなる工程を、精製プロセスに加えた。これらのさらなる工程は炭素処理、限外濾過および再結晶である。メタノール抽出、炭素抽出、限外濾過および再結晶マンニトールの3つのロットを上記のように試験した。呈色還元活性アッセイは、還元活性含量をさらなる精製工程が約10ppmまで低下させることを実証した(図17を参照のこと、サンプル7〜9)。処方物を、高度に精製されたマンニトールを用いて調製した。高度に精製されたマンニトールを用いて調製され、そしてネガティブコントロールとして同じ日に実行した処方物の質量スペクトル(図9)は、マンニトールなしに調製された処方されたバルク(図10)において存在しないさらなるピークは示さなかった。USPマンニトールを用いて調製された処方物の質量スペクトル(図11)もまた、ポジティブコントロールとして同じ日に実行した。従って、マンニトールの更なる処理は、還元活性が低く、そしてES−MSではIFN−β−1bと反応しないようである産物を生じる。
【0061】
(実施例2:高度に精製されたマンニトールを含むIFN−β処方物の安定性:短期加速研究)
I.導入
IFN−β−1bの実験的処方物を、上述のようにデキストロールおよびマンニトールを用いて調製し、そして加速安定性研究を行って、これらの処方物を比較した。処方物の安定性を、2つの異なる条件下で試験した。第一のものは高温ストレスに対してその処方物を供するためのものであり、そして第二のものは室温での長期貯蔵における安定性を測定するためのものであった。高度に精製されたマンニトールを含む処方物において、25℃で3ヶ月間後に変化は見られず、そしてその処方物の効力は、37℃で3ヶ月の貯蔵または50℃で1ヶ月の貯蔵の後も本質的に変化しないままであった。
【0062】
II.方法
各処方物のサンプルを8℃、25℃、または37℃で3ヶ月貯蔵した。さらに、2ヶ月の時点で、各温度からサンプルを採り、そしてさらに1ヶ月間50℃で貯蔵した。50℃シフトの目的は、貯蔵の最初の二ヶ月において発生し得た可能な変化を悪化させるためのものであり、従って25℃または37℃に2ヶ月配置することによって、8℃というもとの貯蔵温度に返還するときにその産物がより迅速に分解するようになるかどうかをより良好に決定することを可能にする。
【0063】
IFN−β−1bの特異的活性を以下のようにアッセイした。A549ヒト肺がん細胞(ATCC CCL 185)およびマウス脳心筋炎ウイルス(EMC株(ATCC VR−129B))は、American Type Culture Collectionから得た。処方物サンプルを、1.2ml希釈液(0.54% NaCl)で再構成し、増殖/アッセイ培地で連続希釈し、そして96ウェルアッセイプレートに、IFN−β−1b標準とともに加えた。各々のウェルにおいて希釈されたIFN−βの容量は、100μlであった。増殖/アッセイ培地(Earle塩および2.2g/L重炭酸ナトリウム、8.9%仔ウシ血清、1.79mML−グルタミン、89U/mlペニシリン、および89μgストレプトマイシン/mlを伴うEagle’s MEM)中のA549細胞に1×104細胞/ウェルの濃度で加えた。次いで、このプレートを加湿した37℃±2℃、5±1% CO2のインキュベーター中でインキュベートした。このインキュベーションの終わりに、細胞を、5と16との間の感染多重度でEMCウイルスに感染させた。次いで、このプレートを、24±1時間にわたって加湿した37±2℃、5±1%のCO2インキュベーター中でインキュベートした。この細胞を、予備加熱した(37℃)MTT(3−[4,5−ジメチルチアゾリル−2−イル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド、5mg/ml、50μl/ウェル)を用いて染色し、そして以前と同じように3.5時間〜4.5時間インキュベートした。この培地を、細胞から吸引し、そして100μlの染色可溶化溶液(81%v/v2−プロパノール、3%w/vドデシル硫酸ナトリウム、0.04N HCl)を、各ウェルに加えた。次いで、プレートを30〜60分間雰囲気温度にて暗所にてインキュベートした。次いで、プレートを、8±3分間マイクロプレートシェーカーにて振盪した。最後に、各ウェルの570nmでの吸光度をマイクロプレート分光光度計で測定した。IFN−β活性標準の活性を、線形回帰曲線に適合させ、そしてその試験サンプルの活性をこの曲線から決定した。各サンプルの特異的活性を、使用したサンプルの質量に基づいて計算した。
【0064】
IFN−β−1b濃度のRP−HPLC分析を上記のように行った。添加物処方物もまた、IFN−β−1bバンドの分子量における見かけ上の増大として還元型SDS−PAGEウェスタンブロットにおけるモニターした。
【0065】
III.結果および考察
マンニトール処方物の効力(特異的活性)は、この研究の間本質的に変化ないまま保持された。他方、デキストロース処方物の効力は増大した。37℃の温度への1ヶ月の暴露は、効力に対して影響がなかった(図14および15を参照のこと)。マンニトールIFN−β−1b処方物について、グリコシル化IFN−β−1bの量は、この研究の間にわたって、50℃でさえ、検出限界未満のままであった。対照的に、グリコシル化は、37℃で2ヶ月および50℃で2週間後にデキストロース処方物において検出されたが25℃で3ヶ月の貯蔵の後には検出されなかった。広汎なグリコシル化によって、合計のIFN−β−1bの含量を測定するにはクロマトグラムが多すぎるように改変された。このデキストロース処方物における付加物の形成もまた、37℃で2ヶ月の貯蔵または50℃で1ヶ月の貯蔵の後に、還元SDS−PAGEウェスタンブロットにおいて検出された。対照的に、どの貯蔵条件でもマンニトール処方物については、SDS−PAGEウェスタンブロットにおいて変化が観察されなかった。
【0066】
(実施例3:高度に精製されたマンニトールを含むIFN−β処方物の長期安定性)
高度に精製されたマンニトールを含む3つのロット(N006、N005およびN009)のIFN−β−1b処方物を、4℃、25℃または30℃において貯蔵し、そしてその安定性を、1年間にわたって3ヶ月の間隔で、およびさらに1年間6ヶ月の間隔でアッセイした。安定性は、上記の方法によってアッセイした。
【0067】
すべての3つのロットは、4℃および30℃において、24ヶ月を通じて効力を保持していた。データは、図16〜18に提示される。さらに、すべての3つのロットが、すべての温度およ時点において、ピークB1(グルコシル化されたIFN−β種)が0.02mg/mlを超えないことを実証した。
【0068】
当業者は、単なる慣用される実験を用いて、IFN−βについて本明細書において記載される本発明の特定の実施形態の多くの等価物を認識し、または確認することができる。さらに、当業者は、慣用的な実験を超えないものを用いて、例としてIFN−βを用いて提供される上記実験および処方物がタンパク質一般(もっとも特定すれば、薬学的タンパク質)に適用可能であることを認識し、または確認することができる薬学的タンパク質としては、以下のタンパク質を含むがそれらに限定されない:ヒト成長ホルモン、すべてのインターフェロン、すべてのインターロイキン、コロニー刺激因子(GM−CSF、G−CSF、M−CSF)、βグルコセレブロシダーゼ、チロトロピン、エタネルセプト(etanercept)、モノクローナル抗体(例えば、abciximab,basiliximab,palivizumab,rituximab,およびtranstuzumab)、血液因子(例えば、第VIIa因子および第VIII因子)、酵素(例えば、ウロキナーゼ、アスパルギナーゼ、アニストレプラーゼ、およびアルテプラーゼ)。このような等価物は、添付の特許請求の範囲に包含されるべきであることが意図される。
【0069】
本明細書において言及されるすべての刊行物および特許出願は、本発明が関連する分野の当業者のレベルの指標である。すべての刊行物および特許出願は、各々個々の刊行物または特許出願があたかも具体的かつ個々に、参考として援用されるべきと言及されたかのように、同程度に参考として援用される。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1は、1週間にわたって50℃にてインキュベートされたデキストロース処方されたIFN−βバルクおよび凍結乾燥された粉末についてのRP−HPLCのクロマトグラムの比較を示す。処方物におけるグルコース化されたIFN−β付加物の、50℃に保持される処方物は、(およそ画分48における)第二のピーク(B1)の外見として見られ、その後、(およそ画分49〜50における)メインのIFN−βピークが続く。実施例1を参照のこと。
【図2】図2は、バルクのデキストロース処方されたIFN−βについての質量スペクトルを示す。いくつかの小さなピークが、19878アム(原子質量単位)においてメインのIFN−βピークに加えて検出可能であった。実施例1を参照のこと。
【図3】図3は、バルク組成物から凍結乾燥され、そして50℃で1週間格納された、デキストロース処方されたIFN−βのサンプルについての質量スペクトルを示す。図2とは対照的に、主なピークは、IFN−β付加物に対応する。実施例1を参照のこと。
【図4】図4は、50℃で1週間インキュベートされた、USPマンニトール処方されたIFN−βバルクおよび凍結乾燥粉末についての、RP−HPLCクロマトグラムの比較を示す。処方物において50℃に保持された、グルコシル化されたIFN−β付加物の処方物(B1ピークの外見)は、見出されない。実施例1を参照のこと。
【図5】図5は、USPマンニトール処方されたIFN−βバルクの質量スペクトルを示す。IFN−βは、19880アムにおけるピークとして検出される。実施例1を参照のこと。
【図6】図6は、凍結乾燥し、そして50℃で1週間でインキュベートされた、USPマンニトール処方されるIFN−βの質量スペクトルを示す。さらなるピーク(付加物を示す)の形成がスペクトル中に見出され得る。実施例1を参照のこと。
【図7】図7は、精製されていないマンニトール処方されるIFN−βの質量スペクトルを示す。多数の付加ピーク(付加物を示す)の形成がこのスペクトルにおいて見出され得る。実施例1を参照のこと。
【図8】図8は、図7において使用されるのと同じロットからのメタノール抽出したマンニトールを用いて処方されたIFN−βの質量スペクトルを示す。付加物ピークの大きさおよび数は、実質的に減少した。実施例1を参照のこと。
【図9】図9は、高度に精製された(メタノール抽出、炭素処理、限外濾過、および再結晶化)マンニトールを含むIFN−β処方物の質量スペクトルを示す。3つの小さなピークのみが、改変されていないIFN−βを示す主なピークに加えて見られる。実施例1を参照のこと。
【図10】図10は、マンニトールの不在下で処方されるIFN−βの質量スペクトルを示す。このスペクトルから、図9に存在する主な二次ピークは、高度に精製されたマンニトールと相互作用することによって形成されないことが、これらがまた賦形剤の不在下で現れるのと同様に見出され得る。実施例1を参照のこと。
【図11】図11は、上記図9と同じ日に実施した、USPマンニトールで処方されるIFN−βの質量スペクトルを示す。このスペクトルは、USPマンニトールで処方されるIFN−βがさらなるピーク(付加物)を形成することを確認する。このピークは、高度に精製されたマンニトールを含むIFN−β処方物においては存在しない。実施例1を参照のこと。
【図12】図12は、実施例2に記載されるようなIFN−βデキストロース処方物についての安定性評価データを示す。
【図13】図13は、実施例2に記載されるような高度に精製されたマンニトールを含むIFN−β処方物についての安定性評価データを示す。
【図14A】図14Aは、実施例3に記載されるような高度に精製されたマンニトールを含むIFN−β処方物のロット006についての安定性評価データを示す。
【図14B】図14Bは、実施例3に記載されるような高度に精製されたマンニトールを含むIFN−β処方物のロット006についての安定性評価データを示す。
【図15A】図15Aは、実施例3に記載されるような高度に精製されたマンニトールを含むIFN−β処方物のロット008についての安定性評価データを示す。
【図15B】図15Bは、実施例3に記載されるような高度に精製されたマンニトールを含むIFN−β処方物のロット008についての安定性評価データを示す。
【図16A】図16Aは、実施例3に記載されるような高度に精製されたマンニトールを含むIFN−β処方物のロット009についての安定性評価データを示す。
【図16B】図16Bは、実施例3に記載されるような高度に精製されたマンニトールを含むIFN−β処方物のロット009についての安定性評価データを示す。
【図17】図17は、還元活性が種々のマンニトールサンプルに存在することを示す。サンプル1−3は、メタノール抽出も、炭素濾過も、限外濾過もされていないUSPマンニトールである。サンプル4−6は、メタノール抽出されたUSPマンニトールである。そしてサンプル7−9は、メタノール抽出され、炭素処理され、限外濾過され、そして再結晶化されたマンニトールである。
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、概して、薬学的組成物に関し、より詳細には、安定化された、液体のまたは凍結乾燥されたタンパク質(インターフェロンβなどを含む)の処方物に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
インターフェロンは、ウイルス、二本鎖RNA、他のポリヌクレオチド、抗原およびマイトジェンを含む多数のシグナルによって、細胞からの分泌が誘導される糖タンパク質のファミリーである。インターフェロンは、多数の生物学的活性を示し、これには、抗ウイルス性、抗増殖性および免疫調節活性が含まれる。少なくとも3つの異なる型のヒトインターフェロンα、βおよびγが、抗ウイルス活性および抗増殖活性を含む多数の因子に基づいて識別されている。
【0003】
インターフェロンβ(IFN−β)は、多発性硬化症(MS)を伴う患者にとって初めて有効であると同定された処置であり、そして再発性MSおよび弛張性MSに罹患した患者が受ける攻撃の数を減少することが実証された。IFN−β組成物はまた、B型肝炎およびC型肝炎の感染の処置において有用である。
【0004】
すべてのタンパク質ベースの医薬と同様に、治療剤としてIFN−βの使用において克服されねばならない1つの主要な障壁は、薬学的処方物におけるその不安定性から生じ得る薬学的有用性の喪失である。薬学的処方物におけるポリペプチドの活性および効力を脅かす物理的不安定性としては、変性ならびに可溶性および不溶性の凝集物の形成が挙げられ、他方、化学的不安定性としては、加水分解、イミド形成、酸化、ラセミ化および脱アミド課が挙げられる。これらの変化のいくつかは、目的のタンパク質の薬学的活性の喪失または低減をもたらすことが知られる。他の場合において、これらの変化の正確な効果は知られていないが、得られる分解産物はなおも、所望されない副作用についての可能性に起因して、薬学的に受容可能ではないと考えられるべきである。
【0005】
薬学的調製物においてポリペプチドの不安定性は、タンパク質ベースの医薬の承認のために設定されたガイドラインは、そのポリペプチドの活性および分子特性における変化が最小限であるべきであることが強調されているように、直接、それらの薬学的有用性に影響を与える。例えば、International Conference on Harmonization of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use(欧州連合、日本および米国における実行のための、医薬に関連する政策提言を行う三極機関)によって発行されたバイオテクノロジー/生物製剤の安定性試験に関する1995年11月30日の報告は、「分解産物形成の指標となる有意な定量的または定性的な変化が長期間の安定性、加速安定性、および/またはストレス安定性の研究の間に検出される場合、可能な有害性ならびに長期安定性プログラム内の分解産物の特徴づけおよび定量についての必要性に対して考慮が与えられるべきである。」と言及している。
【0006】
その結果、さらなるタンパク質薬学的組成物(IFN−β組成物を含む)についての必要性が存在する。この組成物は、還元性の不純物が実質的にない生理学的に適合可能な安定剤を含み、それにより、そのタンパク質を安定化し、そしてその薬学的有用性を増強する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
治療活性成分としてIFN−βおよび賦形剤として高度に精製されたマンニトールを含む組成物が提供される。その組成物は、高度に精製されていないマンニトールを含むIFN−β組成物と比較して、貯蔵の間の安定性の改善によって特徴付けられる。これらの組成物の製造方法もまた提供される。
上記目的を達成するために、本発明は、例えば、以下の手段を提供する。
(項目1) IFN−βまたはその改変体および高度に精製されたマンニトールを含む、組成物。
(項目2) 前記組成物は、安定性が増大していることによって特徴付けられる、項目1に記載の組成物。
(項目3) 前記組成物は、凍結乾燥されている、項目1に記載の組成物。
(項目4) 前記組成物は、液体である、項目1に記載の組成物。
(項目5) 前記高度に精製されたマンニトールは、約0.25(重量/容積)%〜約5(重量/容積)%の濃度で存在する、項目1に記載の組成物。
(項目6) 前記IFN−βまたはその改変体は、0.01mg/ml〜15mg/mlの濃度で存在する、項目1に記載の組成物。
(項目7) 前記処方物は、pH約3.0〜pH約9.0の範囲のpHを有する、項目1に記載の組成物。
(項目8) ヒトアルブミンもまた含有する、項目1に記載の組成物。
(項目9) 前記ヒトアルブミンは、約0.01(重量/容積)%〜約15(重量/容積)%の濃度で存在する、項目8に記載の組成物。
(項目10) IFN−βおよび高度に精製されたマンニトールを含む組成物であって、
該IFN−βは、組み換えヒトIFN−βであり、該組み換えヒトIFN−βは、約0.01mg/ml〜約15mg/mlの濃度で存在し、該高度に精製されたマンニトールは、約0.25(重量/容積)%〜約5(重量/容積)%の濃度で存在し、該組成物のpHは、約3.0〜約9.0の範囲にあり、そして
該組成物は、約0.01(重量/容積)%〜約15(重量/容積)%の濃度でヒトアルブミンをさらに含有する、
組成物。
(項目11) 前記組成物は、凍結乾燥されている、項目10に記載の組成物。
(項目12) 前記組成物は、液体であるかまたは凍結されている、項目10に記載の組成物。
(項目13) IFN−βおよび高度に精製されたマンニトールを含む組成物であって、
該IFN−βは、組み換えヒトIFN−βであり、該組み換えヒトIFN−βは、約0.01mg/ml〜約15mg/mlの濃度で存在し、該高度に精製されたマンニトールは、約0.25(重量/容積)%〜約5(重量/容積)%の濃度で存在し、該組成物のpHは、約3.0〜約9.0の範囲にあり、該組成物は、約0.01(重量/容積)%〜約15(重量/容積)%の濃度でヒトアルブミンおよび該組成物を等張性とするのに充分な塩化ナトリウムをさらに含有する、
組成物。
(項目14) 前記組成物は、凍結乾燥されている、項目13に記載の組成物。
(項目15) 前記組成物は、液体であるかまたは凍結されている、項目13に記載の組成物。
(項目16) IFN−βおよび高度に精製されたマンニトールを含む組成物であって、
該IFN−βは、組み換えヒトIFN−βであり、該組み換えヒトIFN−βは、約0.05mg/ml〜約1mg/mlの濃度で存在し、該高度に精製されたマンニトールは、約0.25(重量/容積)%〜約2.5(重量/容積)%の濃度で存在し、該組成物のpHは、約6.8〜約8.2の範囲にあり、そして該組成物は、約0.25(重量/容積)%〜約2.5(重量/容積)%の濃度でヒトアルブミンをさらに含有する、
組成物。
(項目17) 前記組成物は、該組成物を等張性とするために充分な塩化ナトリウムをさらに含む、項目16に記載の組成物。
(項目18) 前記組成物は液体であり、該液体は凍結または凍結乾燥されている、項目16に記載の組成物。
(項目19) 前記組成物は液体であり、該液体は凍結または凍結乾燥されている、項目17に記載の組成物。
(項目20) IFN−βおよび高度に精製されたマンニトールを含む組成物であって、
該IFN−βは、組み換えヒトIFN−βであり、該組み換えヒトIFN−βは、約0.25mg/mlの濃度で存在し、該高度に精製されたマンニトールは、約1.25(重量/容積)%の濃度で存在し、該組成物のpHは、約7.3〜約7.5の範囲にあり、そして該組成物は、約1.25(重量/容積)%の濃度でヒトアルブミンをさらに含有する、
組成物。
(項目21) 前記組成物は、該組成物を等張性とするために充分な塩化ナトリウムをさらに含む、項目20に記載の組成物。
(項目22) 前記組成物は、液体であり、該液体は凍結または凍結乾燥されている、項目20に記載の組成物。
(項目23) 前記組成物は、液体であり、該液体は凍結または凍結乾燥されている、項目21に記載の組成物。
(項目24) 前記IFN−βは、成熟したネイティブヒトIFN−βのアミノ酸配列を有するポリペプチドである、項目1に記載の組成物。
(項目25) 前記IFN−βは、グルコシル化されているかまたはグルコシル化されていない、項目24に記載の組成物。
(項目26) 前記IFN−βは、組換え産生される、項目1に記載の組成物。
(項目27) 項目1に記載の組成物を含む、予備充填されたシリンジ。
(項目28) 前記組成物は凍結されている、項目27に記載の予備充填されたシリンジ。
(項目29) IFN−βまたはその改変体およびマンニトールを含む組成物であって、該マンニトールは、20ppm未満の還元活性を有する、組成物。
(項目30) 薬学的ポリペプチドおよび高度に精製されたマンニトールを含む、組成物。
(項目31) 前記薬学的ポリペプチドは、ヒト成長ホルモン、インターフェロン、インターロイキン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球コロニー刺激因子、マクロファージコロニー刺激因子、β−グルコセレブロシダーゼ、チロトロピン、エタネルセプト(etanercept)、モノクローナル抗体、第VIIa因子、第VIII因子、ウロキナーゼ、アスパルギナーゼ、アニストレプラーゼ、およびアルテプラーゼからなる群より選択される、項目30に記載の組成物。
(項目32) 改善された安定性によって特徴付けられる、IFN−βまたはその生物学的に活性な改変体の処方物を生産する方法であって、該方法は:
IFN−βまたはその生物学的に活性な改変体および高度に精製されたマンニトールを、該IFN−βまたはその改変体を安定化するに充分な量で含む処方物を生産する工程を包含する、方法。
(項目33) 項目32に記載の方法によって生産される処方物。
(項目34) IFN−βまたはその生物学的に活性な改変体の処方物を生産する方法であって、該方法は、以下の工程:
a)クロマトグラフィーによって該IFN−βからドデシル硫酸ナトリウムおよび塩を取り除く工程;
b)該IFN−βと、ヒトアルブミンの溶液とを、約11.5〜約12.0のpHで合わせる工程;
c)該溶液のpHをHClで7.5に調整する工程;および
d)高度に精製されたマンニトールの溶液を加える工程、
を包含する、方法。
(項目35) 項目34に記載される方法によって生産される処方物。
(項目36) 前記処方物を凍結乾燥する工程をさらに包含する、項目34に記載の方法。
(項目37) 薬学的組成物におけるIFN−βまたはその改変体の安定性を増大させる方法であって、該方法は:
該組成物中に、該IFN−βまたはその改変体を安定化するのに充分な量の高度に精製されたマンニトールを取り込ませる工程、
を包含する、方法。
(項目38) 前記組成物を等張性にさせるに充分な塩化ナトリウムを加える工程をさらに包含する、項目34に記載の方法。
(項目39) 項目38に記載の方法によって生産される処方物。
(項目40) 前記処方物を凍結乾燥する工程をさらに包含する、項目38に記載の方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(発明の詳細な説明)
本発明は、安定性が増大したIFN−β薬学的組成物、およびそれらの調製方法に関する。この組成物は、IFN−βおよび高度に精製されたマンニトールを含む。この高度に精製されたマンニトールは、分解産物の形成を減少させることによってその処方物の安定性を増大させる。安定化されたIFN−β処方物は、より安全である(可能な有害な副作用が減少することに起因する)、およびより経済的である(処方物の寿命が増大することによる)という点で有利である。
【0009】
開示された組成物の安定性の増大は、高度に精製されたマンニトールの使用から生じる。本発明の新規な知見は、高度に精製されていないマンニトールがIFN−βと相互作用して所望されない付加物(分解産物)を生成する還元活性を含むのに対して、他方、高度に精製されたマンニトールは、この還元活性を含まず、そしてIFN−β処方物におけるこれらの付加物の形成を生じないことである。本明細書において提示される実験結果(実験の節における実施例1を参照のこと)は、IFN−β付加物形成を担う精製されていないマンニトール中に存在する還元活性は、還元糖活性ではないことを示す。なぜなら、高度に精製されていないマンニトールの存在下で形成された付加物は、既知の還元糖活性(例えば、デキストロース)を有する賦型剤の存在下で形成される付加物とは明らかに識別され得るからである。
【0010】
本明細書において用いられる「高度に精製されたマンニトール」とは、低レベルの還元活性を有するマンニトールをいう。高度に精製されたマンニトールの還元活性は、本明細書において別の場所において記載される還元活性アッセイによって測定されると20ppmUSP未満である。種々の実施形態において、高度に精製されたマンニトールの還元活性は、19ppm未満であり、18ppm未満であり、17ppm未満であり、16ppm未満であり、15ppm未満であり、14ppm未満であり、あるいは13ppm未満である。1つの実施形態において、高度に精製されたマンニトールはUSP(米国薬局方)またはACS(米国化学会)等級のマンニトールである。この等級のマンニトールは、1)メタノール抽出;2)炭素処理;3)限外濾過;および4)再結晶化のさらなる工程を受けている。高度に精製されたマンニトールは、その処方物を安定化するために十分な濃度で存在する。本発明に包含される処方物は、約0.1%(w/v)ほどの少なさの高度に精製されたマンニトールを有していてもよく、または約7.5%(w/v)ほどの多さの高度に精製されたマンニトールを有していてもよい。種々の実施形態において、このマンニトールは、約0.2〜約7.0%の濃度で存在し、約0.25%〜約2.5%の濃度で存在し、そして約1.25%の濃度で存在する。
【0011】
治療活性成分としてIFN−β、および賦型剤として高度に精製されたマンニトールを含む、液体および凍結乾燥の両方の薬学的組成物が開示される。本発明の目的のために、薬学的組成物または処方物に関し、用語「液体」とは、用語「水性」を包含することが意図される。IFN−β薬学的処方物に関し用語「凍結乾燥」とは、複数のバイアルの減圧下での迅速な凍結乾燥(フリーズドライ)をいう。このバイアルは各々、本発明のインターフェロン処方物の単位用量をその中に含む。上記凍結乾燥を行う凍結乾燥剤は市販されており、そして当業者によって容易に実施され得る。本発明の1つの実施形態において、液体組成物は凍結乾燥されている。
【0012】
本発明の液体または凍結乾燥されたIFN−β処方物は、「安定化される」。「安定化された」組成物あるいは「増大した安定性」または「改善された安定性」を有する組成物とは、高度に精製されていないマンニトールを用いて処方されたIFN−β組成物に対して貯蔵安定性が増大した組成物を意味する。安定性のこの増大は、高度に精製されていないマンニトールを用いた処方物との比較において、貯蔵の間のIFN−β付加物または分解産物の処方物における減少によって証明される。付加物または分解産物の形成は、本明細書において記載される質量分析アッセイを用いて測定され得る。安定化された、高度に精製されたマンニトール処方された本発明のIFN−β組成物は、本明細書において記載される質量分析アッセイによって決定されるように、USPマンニトール処方されたIFN−βにおいて、マンニトールなしで処方されるIFN−β組成物と比較したときに観察されるさらなるピークの非存在によって特徴付けられる。例えば、図9に示される、高度に精製されたマンニトールを用いて処方されたIFN−βの質量スペクトルを参照のこと。これは、図10に示されるマンニトールなしで処方されたIFN−βの質量スペクトルと比較してさらなるピークを示さない。対照的に、図11に示される、USPマンニトールで処方されたIFN−βの質量スペクトルは、マンニトールなしで処方されたIFN−βの質量スペクトルと比較して、多数のさらなるピーク(付加物)を解像する。本発明の安定化されたIFN−β薬学的処方物は、その効力を保持し、そして30℃で貯蔵したときに約2年までの期間にわたり、および25℃で貯蔵したときに少なくとも2年間、0.02mg/ml未満のグルコシル化されたIFN−βを含む。
【0013】
本発明の安定化された薬学的処方物は、IFN−βおよびその改変体を含む。本明細書において使用される用語「IFN−β」とは、IFN−βまたはその改変体(これは、ときに、IFN−β様ポリペプチドと呼ばれる)をいう。ヒトIFN−β改変体(これは、天然に存在するもの(例えば、IFN−β遺伝子座において生じる対立遺伝子改変体)であり得るか、または組換え産生され得る)は、ネイティブの成熟IFN−β配列と同じか、類似するか、または実質的に類似する、アミノ酸配列を有する。活性を保持するIFN−βフラグメントまたはIFN−βの短縮形態もまた、包含される。これらの生物学的に活性な、IFN−βのフラグメントまたは短縮形態は、全長IFN−βアミノ酸配列から、当該分野において周知の組換えDNA技術を用いてアミノ酸残基を除くことによって生成される。IFN−βポリペプチドは、グルコシル化されていてもよく、グルコシル化されていなくてもよい。なぜなら、文献において、グルコシル化されているIFN−βポリペプチドおよびグルコシル化されていないIFN−βポリペプチドの両方が質的に類似する特異的活性を示し、そして従ってグルコシル化部分は、IFN−βの生物学的活性に関与せず、そして寄与もしていないと報告されているからである。
【0014】
本明細書において含まれるIFN−β改変体は、ネイティブの成熟IFN−β配列のムテインを含む(例えば、米国特許第5,814,485号を参照のこと。これは、本明細書において参考として援用される)。ここでは、生物学的活性に必須ではない1つまたは複数のシステイン残基が故意に欠失されているか、または他のアミノ酸で置き換えられ、分子間架橋または不正確な分子間ジスルフィド結合形成のいずれかのための部位が除去されている。この型のIFN−β改変体は、ネイティブの成熟アミノ酸配列のアミノ酸17に見出されるシステインに代えて、グリシン、バリン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、チロシン、フェニルアラニン、ヒスチジン、トリプトファン、セリン、スレオニン、またはメチオニンを含む改変体を包含する。セリンおよびスレオニンは、それらがシステインと化学的に類似することから、もっとも好ましい置換物である。セリン置換がもっとも好ましい。例えば、ネイティブの成熟配列のアミノ酸17において見出されるシステインがセリンで置換されたIFN−β改変体を参照のこと(米国特許第5,814,485号)。システイン17はまた、当該分野において公知の方法を用いて欠失され得る(例えば、米国特許第4,588,584号を参照のこと。これは、本明細書において参考として援用される)。このことにより、ネイティブの成熟IFN−βよりも1アミノ酸短い成熟IFN−βムテインが生じる。例としてはまた、米国特許第4,530,787号;同第4,572,798号;および同第4,588,585号を参照のこと。従って、たとえば、その薬学的有用性を改善する1つまたは複数の改変体を有するIFN−β改変体もまた、本発明に包含される。
【0015】
当業者は、更なる変化が、IFN−βをコードするヌクレオチド配列への変異によって、インターフェロンの生物学的活性を変化させることなく、IFN−βアミノ酸配列における変化を生じることによって導入され得ることを理解する。従って、ネイティブの成熟IFN−βについてのアミノ酸配列とは異なる配列を有するIFN−β改変体をコードする、単離された核酸分子は、1または複数のヌクレオチドの置換、付加、または欠失を、本明細書に開示される対応するヌクレオチド配列へと導入し、それにより1または複数のアミノ酸の置換、付加または欠失が、コードされるIFN−βへと導入されることによって作製され得る。変異は、標準的な技術(例えば、部位特異的変異誘発およびPCR媒介変異誘発)によって導入され得る。そのようなIFN−β改変体もまた、本発明に包含される。
【0016】
例えば、保存的アミノ酸置換は、1または複数の予測された、好ましくは非必須のアミノ酸残基において行われ得る。「非必須」のアミノ酸残基とは、生物学的活性を変化させることなくIFN−βの野生型配列とは異なり得る残基である。他方、「必須」アミノ酸残基は、生物学的活性に必要である。「保存的アミノ酸置換」とは、そのアミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換される置換をいう。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該分野において定義されている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖を有するアミノ酸(たとえば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を包含する。そのような置換は、保存されたアミノ酸残基に対してはなされないか、あるいは、保存されたモチーフ内に存在するアミノ酸残基に対しては行われない。
【0017】
あるいは、改変体IFN−βヌクレオチド配列は、飽和変異誘発のような、IFN−βコード配列のすべてまたは部分にわたってランダムに導入される変異によって作製され得る。そして、得られた変異体は、IFN−βの生物学的活性についてスクリーニングされて、活性を保持する変異体を同定し得る。変異誘発の後、コードされるタンパク質は、組換え発現され得、そしてそのタンパク質の活性は、本明細書において記載される標準的なアッセイ技術を用いて決定され得る。
【0018】
IFN−βの生物学的に活性な改変体は、一般的に、比較の基礎として作用する、参照IFN−βポリペプチド(例えば、ネイティブヒトIFN−β)に対して、少なくとも80%、より好ましくは約90〜約95%またはそれを超えるか、そしてもっとも好ましくは約96%〜約99%またはそれを超えるアミノ酸配列同一性を有する。「配列同一性」とは、改変体ポリペプチド、ならびにその改変体のアミノ酸配列の、特定の連続セグメントが参照分子のアミノ酸配列とアラインメントし、そして比較されるとき、参照として作用するポリペプチド分子内に見出される、同じアミノ酸残基を意味する。
【0019】
配列同一性決定の目的のために2つの配列の最適なアラインメントの目的のために、改変体のアミノ酸配列の連続セグメントは、参照分子のアミノ酸配列に対して、さらなるアミノ酸残基を有し得るかまたはアミノ酸残基の欠失を有し得る。参照アミノ酸配列に対して比較するために使用される連続セグメントは、少なくとも20の連続アミノ酸残基を含む。改変体アミノ酸配列中へのギャップの挿入に伴う配列同一性の増大に関する補正は、ギャップペナルティを割り当てることによって行われ得る。配列アラインメントの方法は、当該分野において周知である。
【0020】
従って、任意の2つの配列の間のパーセント同一性の決定は、数学アルゴリズムを用いて達成され得る。配列の比較のために利用される、1つの好ましいが非限定的な数学アルゴリズムの例としては、Myers and Miller (1988)Comput.Appl.Biosci.4:11〜7のアルゴリズムが挙げられる。そのようなアルゴリズムは、ALIGNプログラム(バージョン2.0)において利用される。このプログラムは、GCGアラインメントソフトウェアパッケージの一部である。PAM120重量残基の表、12のギャップ長さペナルティ、および4のギャップペナルティが、アミノ酸配列の比較のときのALIGNプログラムに対して用いられ得る。2つの配列を比較する際に使用するための、別の好ましい非限定的な数学アルゴリズムの例は、Karlin
and Altschul(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−5877のアルゴリズムであり、これは、Karlin and Altshcul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci USA 90:5873−5877において改変される。そのようなアルゴリズムは、Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403〜410のNBLASTおよびXBLASTプログラムへと取り込まれている。BLASTアミノ酸配列検索は、XBLASTプログラムを用いて実施され得る。ここで、スコア=50であり、ワード長=3である。その結果、目的のポリペプチドと類似のアミノ酸配列が得られる。比較の目的のためのギャップのあるアラインメントを得るために、ギャップのあるBLASTは、Altschul et al.(1997)Nucleic Acids
Res.25:3389−3402に記載されるように利用され得る。あるいは、PSI−BLASTを使用して、分子間の離れた関係を検出するインターレイト検索を行うことができる。Altschul et al.(1997)前出を参照のこと。BLAST、ギャップのあるBLASTまたはPSI−BLASTのプログラムを利用する場合、デフォルトパラメータが使用され得る。http://www.ncbi.n1m.nih.govを参照のこと。Atlas of Protein Sequence and Structure 5:Suppl.3,National Biomedical Research Foundation,Washington,D.C.中のALIGNプログラム(Dayhoff(1978))、およびWisconsin Sequence Analysis Package,Version 8(Genetics Computer Group,Madison,Wisconsinから入手可能)中のプログラム(例えば、GAPプログラム)もまた参照のこと。ここでは、このプログラムのデフォルトパラメータが利用される。
【0021】
アミノ酸配列同一性の比率を考慮するとき、いくつかのアミノ酸残基位置は、タンパク質機能の特性に影響を与えない、保存的アミノ酸置換の結果として異なり得る。これらの場合、パーセント配列同一性は、上方に修正されて保存的に置換されたアミノ酸における類似性を説明することができる。そのような修正は当該分野において周知である。例えば、Myers and Miller(1988)Comput.Appl.Biosci.4:11−17を参照のこと。
【0022】
本発明に包含される生物学的に活性なIFN−β改変体は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)またはアルブミンに共有結合架橋されたIFN−βポリペプチドも含む。これらの共有結合のハイブリッドIFN−β分子は、特定の所望の薬学的特性(例えば、患者への投与後の血清半減期の延長)を有する。PEG−IFN付加物を作製するための方法は、モノメトキシポリエチレングリコールを化学改変してIFN−βと反応する活性化化合物を作製することを含む。PEG連結されたポリペプチドを作製および使用するための方法は、例えば、Delgado et al.(1992)Crit.Rev.Ther.Drug.Carrier Syst.9:249〜304に記載される。アルブミン融合ポリペプチドを作製する方法は、目的のポリペプチド(例えば、IFN−β)およびアルブミンのコード配列の融合を包含し、そして米国特許第5,876,969号に記載されており、これは、本明細書において参考として援用される。これらのハイブリッドIFN−β分子は、USPマンニトール中に存在する不純物と反応し、そして高度に精製されたマンニトールとともに処方されるとき、より安定である。
【0023】
本発明に包含されるIFN−βの生物学的に活性な改変体は、IFN−β活性(特に、IFN−βレセプターへの結合能)を保持するべきである。いくつかの実施形態において、IFN−β改変体は、参照IFN−βポリペプチド(たとえば、ネイティブなヒトIFN−β)の少なくとも約25%、約50%、約75%、約85%、約90%、約95%、約98%、約99%またはそれより高い生物学的活性を保持する。参照IFN−βポリペプチドの活性と比較してその活性が増加しているIFN−β改変体もまた包含される。IFN−β改変体の生物学的活性は、当該分野において公知の任意の方法によって測定され得る。そのようなアッセイの例は、以下に見出され得る:Fellous et al.(1982)Proc.Natl.Acad.Sci USA 79:3082−3086;Czerniecki et al.(1984)J.Virol.49(2):490−496;Mark et al.(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:5662−5666;Branca et al.(1981)Nature 277:221−223;Williams et al.(1979)Nature 282:582−586;Herberman et al.(1979)Nature 277:221−223;Anderson et al.(1982)J.Biol.Chem.257(19):11301−11304;および本明細書において記載されるIFN−β効力アッセイ(実施例2を参照のこと)。
【0024】
本発明の処方物のIFN−βは、以下を含むがそれらに限定されない任意の動物種に由来し得る:鳥類、イヌ、ウシ、ブタ、ウマおよびヒト。好ましくは、IFN−βは、その処方物が哺乳動物IFN−β障害の処置において使用されるべきときは、哺乳動物種に由来し、より好ましくは、これは、そのような障害について処置を受ける哺乳動物と同じ種の哺乳動物種由来である。
【0025】
本発明に包含されるIFN−βポリペプチドおよびIFN−β改変体ポリペプチドの非限定的な例は、以下に示される:Nagata et al.(1980)Nature 284:316−320;Goeddel et al.(1980)Nature 287:411−416;Yelverton et
al.(1981)Nucleic Acids Res.9:731−741;Streuli et al.(1981)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.78:2848−2852;EP028033BlおよびEP109748Bl。以下もまた参照のこと:米国特許第4,518,584号;第4,569,908号;第4,588,585号;第4,738,844号;第4,753,795号;第4,769,233号;第4,793,995号;第4,914,033号;第4,959,314号;第5,545,723号;および第5,814,485号。これらの開示は、本明細書において参考として援用される。これらの引用はまた、生物学的活性の喪失なしに変化され得るIFN−βポリペプチドの残基および領域に関するガイダンスを提供する。
【0026】
本発明の1つの実施形態において、安定化された薬学的処方物内のIFN−βは、ネイティブな成熟IFN−βポリペプチドである。別の実施形態において、これらの処方物におけるIFN−βは、成熟IFN−βポリペプチドであって、ネイティブの成熟配列のアミノ酸17に見出されるシステインは、上記に議論したようにセリンで置換される。しかし、本発明は、安定化された薬学的処方物内のIFN−βが任意の生物学的に活性なIFN−βポリペプチドであるかまたは本明細書において他の場所に記載される改変体である、他の実施形態を包含する。
【0027】
本発明のこのいくつかの実施形態において、IFN−βは、組換え産生される。「組換え産生されたIFN−β」とは、ネイティブの成熟なIFN−βに匹敵する生物学的活性を有し、そして組換えDNA技術によって調製されているIFN−βを意図する。IFN−βは、IFN−βポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞を培養することによって生成され得る。この宿主細胞は、ヌクレオチド配列を転写し得、その所望のタンパク質を産生し得る細胞であり、そして、原核生物(たとえば、E.coli)であり得、または真核生物(たとえば、酵母、昆虫または哺乳動物の細胞)であり得る。IFN−βの組換え産生の例は、以下に与えられる:Mantei et al.(1982)Nature 297:128;Ohno et al.(1982)Nucleic Acids Res.10:967;Smith et al.(1983)Mol.Cell.Biol.3:2156,ならびに米国特許第4,462,940号;第5,702,699号;および第5,814,485号;これらは、本明細書において参考として援用される。米国特許第 5,795,779号もまた参照のこと。ここでは、IFN−β−1aがチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞中で組換え産生される。これもまた、本明細書において参考として援用される。ヒトインターフェロン遺伝子は、組換えDNA(「rDNA」)技術を用いてクローニングされ、そしてE.coliにおいて発現されている(Nagola et al.(1980)Nature 284:316;Goeddel et al.(1980)Nature 287:411;Yelverton et al.(1981)Nuc.Acid Res.9:731;Streuli et al.(1981)Proc.Natl.Acad Sci.U.S.A.78:2848)。あるいは、IFN−βは、当該分野において公知の方法に従って、目的のIFN−βタンパク質を発現するように遺伝子操作されたトランスジェニック動物またはトランスジェニック植物によって産生され得る。
【0028】
あるいは、IFN−βは、ペプチド技術分野における当業者に公知のいくつかの任意の技術により化学合成され得る。たとえば、以下を参照のこと:Li et al.(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:2216−2220,Steward and Young(1984)Solid Phase Peptide Synthesis(Pierce Chemical Company,Rockford,Illinois),およびBaraney and Merrifield(1980)The Peptides:Analysis,Synthesis,Biology,ed.Gross and Meinhofer,Vol.2(Academic Press,New York,1980),pp.3−254(これは、固相ペプチド合成技術を議論する);ならびにBodansky(1984)Principles of Peptide Synthesis (Springer−Verlag,Berlin)ならびにGross and Meinhofer,eds.(1980)The Peptides:Analysis,Synthesis,Biology,Vol.1(Academic Press,New York)(これは、古典的な溶液合成を議論する)。IFN−βはまた、同時複数ペプチド合成の方法により化学的に調製され得る。例えば、以下を参照のこと:Houghten(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:5131−5135;および米国特許第4,631,211号。
【0029】
本発明により包含される組成物は、少なくて約0.01mg/mlのIFN−β〜多くて約15mg/ml(重量/容量)のIFN−βを有し得る。種々の実施形態において、IFN−βは、約0.015mg/ml〜約12.5mg/mlの濃度、約0.025mg/ml〜約10mg/mlの濃度、約0.05mg/ml〜約8mg/mlの濃度、約0.075mg/ml〜約6mg/mlの濃度、約0.1mg/ml〜約4mg/mlの濃度、約0.125mg/ml〜約2mg/mlの濃度、約0.175mg/ml〜約1mg/mlの濃度、約0.2mg/ml〜約0.5mg/mlの濃度、約0.225mg/ml〜約0.3mg/mlの濃度、ならびに約0.25mg/mlの濃度で存在する。
【0030】
いくつかの実施形態において、本発明の処方物は、薬学的に受容可能なキャリアを含む。「薬学的に受容可能なキャリア」とは、貯蔵、投与、および/または治療成分の治癒効果を容易にするために従来より当該分野において使用されているキャリアを意図する。キャリアはまた、IFN−βの所望されない任意の副作用を減少させ得る。適切なキャリアは、安定であるべき、すなわち、処方物における他の成分と反応し得ないべきである。これは、処置のために使用される投薬量および濃度においてレシピエントにおける有意な局所または全身性の有害作用を生成すべきではない。そのようなキャリアはは、一般に、当該分野において知られている。本発明に適切なキャリアは、アルブミン、ゼラチン、コラーゲン、ポリサッカリド、モノサッカリド、ポリビニル−ピロリドン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマー性アミノ酸、不揮発性油、オレイン酸エチル、リポソーム、グルコース、スクロース、ラクトース、マンノース、デキストロース、デキストラン、セルロース、ソルビトール、ポリエチレングリコール(PEG)などの従来使用される大きな安定した高分子である。徐放性キャリア(例えば、ヒアルロン酸)もまた、適切であり得る。特に、Prisell et al.(1992)Int.J.Pharmaceu.85:51−56、および米国特許第5,166,331号を参照のこと。この組成物中の他の受容可能な成分としては、等張性を改変する薬学的に受容可能な薬剤が挙げられるがそれらに限定されず、水、塩、糖、ポリオール、アミノ酸、および緩衝剤が含まれる。適切な緩衝剤の例としては、リン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、および他の有機酸またはその塩、ならびに等張性を改変する塩(例えば、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウムなど)が挙げられ、そして上記の緩衝剤をも含み得る。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態において、薬学的に受容可能なキャリアは、ヒトアルブミンである。ヒトアルブミンは、天然に存在するヒトアルブミンであり得るか、あるいは組換え産生されたヒトアルブミンであり得る。これらの2つの形態は、本明細書において総称して「ヒトアルブミン」と呼ぶ。本発明に包含される処方物は、少なくて約0.01%(重量/容量)のヒトアルブミン〜多くて約15%(重量/容量)ヒトアルブミンを有し得る。種々の実施形態において、ヒトアルブミンは、約0.025%〜約12.5%の濃度、約0.05%〜約10%の濃度、約0.1%〜約9%の濃度、約0.25%〜約8%の濃度、約0.5%〜約7%の濃度、約0.6%〜約2%の濃度、約0.7%〜約1.75%の濃度、約0.75%〜約1.5%の濃度、約1.2%〜約1.3%の濃度、ならびに約1.25%の濃度で存在する。
【0032】
薬学的組成物は、さらに、可溶化剤または可溶性増強剤を含み得る。グアニジウム基を含む化合物(もっとも好ましくは、アルギニン)は、IFN−βについて適切な可溶性増強剤である。そのような可溶性増強剤の例としては、アミノ酸アルギニン、およびアルギニンのアミノ酸類似体であって、IFN−βの可溶性を増強する能力を保持するものが挙げられる。そのような類似体としては、限定することなく、アルギニンを含むジペプチドおよびトリペプチドが挙げられる。さらなる適切な可溶化剤は、以下に議論される:米国特許第4,816,440号;第4,894,330号;同第5,004,605号;同第5,183,746号;同第5,643,566号;ならびにWang et al.(1980)J Parenteral Drug Assoc.34:452−462、これらは、本明細書において参考として援用される。
【0033】
本発明に包含される、非限定的な可溶化剤の例としては、IFN−βを可溶化するに適切な疎水性親水性バランスを有する表面活性剤(界面活性剤)が挙げられる。強力な天然のまたは合成のアニオン性表面活性剤(例えば、脂肪酸のアルカリ金属塩およびアルカリ金属アルキル硫酸塩)が使用され得る。そのような薬剤は、通常、10〜14の炭素原子を含む。ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)およびラウリル酸ナトリウムは、特に好ましい可溶化剤である。本発明の組成物において使用され得る他の可溶化剤の例としては、以下が挙げられるがそれらに限定されない:ドデシルスルホン酸ナトリウム、デシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、トリデシルスルホン酸ナトリウム、ミルスチン酸ナトリウム、カプロイル酸ナトリウム、ドデシルN−サルコシン酸ナトリウム、およびテトラデシルN−サルコシン酸ナトリウム。表面活性剤または乳化剤による医薬の古典的な安定化は、例えば、以下に記載される:Levine et al.(1991)J.Parenteral Sci.Technol.45(3):160−165。さらなる適切な表面活性剤は、以下に議論される:米国特許第4,507,281号;同第4,816,440号;および同第5,183,746号。これらは、本明細書において参考として援用される。
【0034】
上記に開示される薬剤に加え、他の安定化剤(例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)またはその塩の一つ(例えば、EDTA二ナトリウム)を加えて、液体薬学的組成物の安定性をさらに増強することができる。EDTAは、多くの酸化反応を触媒することが知られる金属イオンのスカベンジャーとして作用し、したがって、さらなる安定化剤を提供する。
【0035】
IFN−β処方物が、哺乳動物(例えば、ヒト)への送達に使用される場合、その組成物の等張性もまた、考慮事項である。従って、1つの実施形態において、IFN−βの注射可能な溶液のための組成物は、患者の血清または体液のものと同じかまたは類似する等張性を提供する。等張性を達成するために、塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、またはリン酸緩衝剤)は適切な濃度でその溶液に加えられ得る。
【0036】
処方物のpHもまた、考慮事項である。本発明の安定化されたIFN−β処方物は、約3.0〜約9の範囲のpHを有する。適切なpHの範囲は、例えば、約4.0〜約8.8、約5.0〜約8.6、約6.0〜約8.4、約6.8〜約8.2、約6.9〜約8.0、約7.0〜約7.8、約7.1〜約7.7、約7.2〜約7.6、および約7.3〜約7.5を包含する。
【0037】
本発明の、安定化された液体IFN−β処方物、または再構成された安定化された凍結乾燥されたIFN−β薬学的処方物の薬学的に有効な量が被検体に投与される。「薬学的に有効な量」とは、疾患または状態の処置、予防または診断において有用な量を意図する。投与の代表的な経路としては、経口投与、経鼻送達、肺送達、および非経口投与(経皮、静脈内、筋肉内、皮下、動脈内および腹腔内の注射または注入を含む)が挙げられるがそれらに限定されない。1つのそのような実施形態において、投与は、注射、好ましくは皮下注射による。本発明の組成物の注射可能形態としては、溶液、懸濁液およびエマルジョンが挙げられるがそれらに限定されない。代表的に、IFN−βの治療上有効な量は、約0.01μg/kg〜約5mg/kgの組成物、好ましくは約0.05μg/kg〜約1000μg/kg、より好ましくは約0.1μg/kg〜約500μg/kg、さらにより好ましくはなお約0.5μg/kg〜約30μg/kgを包含する。
【0038】
1つの実施形態において、IFN−βを含む安定化された薬学的組成物は、単位投薬量で処方され、そして溶液、懸濁液またはエマルジョンのような注射可能または注入可能な形態であり得る。さらに、この組成物は、乾燥形態で(例えば、凍結乾燥粉末)凍結貯蔵または調製され得る。これは、経口または非経口の投与経路を含む、種々の方法のいずれかによって、投与前に液体溶液、懸濁液またはエマルジョンへと再構成され得る。安定化された薬学的組成物は、メンブレン濾過によって滅菌され得、そして封入バイアルまたはアンプルのような単位用量または多数回用量の容器中に貯蔵される。当該分野において一般的に公知の薬学的組成物を処方するためのさらなる方法は、それらが開示される高度に精製されたマンニトールの有益な効果に有害に影響しない限り、本明細書に開示された薬学的組成物の貯蔵安定性をさらに増強するために使用され得る。処方物および薬学的に受容可能なキャリア、安定化剤などの選択の完全な議論は、以下に見出され得る:Reminington’s Pharmaceutical Sciences(1990)(18th ed.,Mack Pub.Co.,Eaton,Pennsylvania)、これは、本明細書において参考として援用される。
【0039】
いくつかの実施形態において、本発明の液体組成物は、シリンジ(本発明の「予備充填された」シリンジ)中に包装される。次に、1つの実施形態において、本発明の組成物を含む予備充填されたシリンジは、凍結され得る。この凍結された予備充填されたシリンジは、貯蔵または輸送の目的のために有用である。
【0040】
以下の実施例は、例示のために提供され、そして限定のために提供されるのではない。
【実施例】
【0041】
(実験)
(実施例1:安定性が増大したIFN−β薬学的処方物の開発)
I.序論
賦形剤としてデキストロースを含むIFN−β薬学的処方物は当該分野において知られている。そのような処方物が37℃以上の温度でインキュベートされるとき、これらの処方物におけるデキストロースは、IFN−βとともに共有結合付加物を形成し、これは、RP−HPLC(逆相高速液体クロマトグラフィー)によって検出され得る。USPマンニトールで処方されるIFN−βは、同じ条件下でRP−HPLC検出可能な共有結合付加物を形成しない。しかし、USPマンニトールは、IFN−βと合わせて、エレクトロスプレー質量分析によって検出される付加物種を形成する不純物を含む。USPマンニトール中の不純物の性質は、知られていない。これらの付加物(または分解産物)の形成は、薬学的に所望されないと考えられており、薬学的に受容可能ではないとまで考えられている。ポリペプチドベースの医薬についての現在のガイドラインは、処方物における分解産物の形成を最小限にすることの重要性を強調しているからである。分解産物は、所望されないかまたは受容可能ではないと考えられている。なぜなら、それらは、そのペプチドベースの医薬が所望されない副作用を生じる機会を増大するからである。本発明の新規な知見は、IFN−βがそれが高度に精製されたマンニトールと処方されるとき、安定性の増大を示し、その結果、その還元活性は、高度に精製されていないマンニトールで処方されるときと比べて、20ppm未満であることである。本発明のさらなる新規な知見は、メタノールでの抽出、炭素処理、限外濾過および再結晶化によるUSPマンニトールの精製が、20ppm未満の還元活性を伴うマンニトール調製物を生じることである。
【0042】
II.方法
これらの実験において使用するためのIFN−β−1bを、本質的に米国特許第4,462,940号および同第5,702,699号(これらは、参考として援用される)において記載されるようにE.coliにおいて生成した。ドデシル硫酸ナトリウムおよび塩をIFN−βからクロマトグラフィーにより除き;そしてIFN−β−1bを、ヒトアルブミンの溶液とpH11.5〜12.0で合わせた。溶液のpHを、HClで7.5に調整した。そして賦形剤((マンニトールまたはデキストロース)を含む溶液を加えて最終濃度を1.25%にした。その処方物におけるヒトアルブミンの最終濃度は、1.25%w/vであった。
【0043】
これらの処方物からのIFN−β−1bを、RP−HPLCによる質量分析のために調製した。この方法によって、クロマトグラムにおける分離したピーク(B1)として分離された後、グルコシル化したIFN−β−1bの定量が可能となる。この方法でのグルコシル化されたIFN−β−1bについての検出限界は、0.02mg/mlである。このピークの量が0.02mg/ml未満の場合、2つのピーク面積が合算され、そして処方されていないIFN−β参照と比較されて、IFN−β−1bの合計含量を得る。このピーク面積が0.02mg/mlを超える場合、その濃度は、独立に決定されそして報告される。
【0044】
以下の装置およびそのそれぞれの製造業者の指示マニュアルを分析に使用した。
【0045】
溶媒送達系:Waters 626 Gradient Pump
注射系:Waters 717およびAutosampler 200 ml注射ループ
ポリプロピレンオートサンプラーバイアル(Teflon septa付)
オートサンプラー温度制御を4℃に設定して冷蔵
84%アセトニトリルを針洗浄として使用する。
【0046】
カラムヒーター:Waters 600
カラムヒーターを40℃に設定
カラム:BAKERBOND Wide−Pore Butyl C4 RP−Column,300Å 5μm,4.6 mm(ID)250 mm,J.T.Baker part number 22010。
【0047】
カラムを、カラム標識において指示されるように溶媒流の方向に接続し、そしてカラムヒーターに配置した。
【0048】
検出器:Waters 486 UV Detector。
【0049】
波長を214nmに設定する。
【0050】
データシステム入力を減衰させない。
【0051】
データシステム:P.E.Nelson Turbochrom Data System
凍結乾燥させたIFN−β処方物サンプルを、1.20mlの0.54%塩化ナトリウムで再構成し、緩やかに反転させて混合し、そして雰囲気温度で30±5分間インキュベートした。キャリブレータは、処方されていないIFN−β参照である。キャリブレータストック溶液は、約0.5mg/mlにまで希釈され、そして希釈されたキャリブレータ溶液の濃度は、UV吸収によって決定される(6連の平均)。希釈されたキャリブレータ溶液の最終濃度は、UV吸収の読み取りの平均を1.7(IFN−β−1b吸光係数)で割ったものである。希釈されたキャリブレータ溶液濃度は、3つの顕著な形態に対する吸収によって決定される。次いで、キャリブレータ溶液を、作業用キャリブレータ溶液として使用するために0.25mg/mlに希釈した。
【0052】
オートサンプラーを、1回の注射あたり20μlで70分の間隔で注射するようにプログラムした。このデータシステム電圧範囲は1ボルトであり、サンプリング速度は、1秒あたり1点であり、そして獲得時間は70分であった。溶離液Aは0.1% TFA(トリフルオロ酢酸、HPLC等級)であり、そして溶離液Bは84%アセトニトリル(HPLC等級)および0.084% TFA(HPLC等級)であった。溶出流速を1.0ml/分(70%溶離液Aおよび30%溶離液B)に設定し、そしてカラムを1時間平衡化した。検出器の基底線およびシステムを平衡化した後、勾配ブランクを分析した。分析を、第二の勾配ブランクにおいて顕著なピークが存在しないときにはじめた。
【0053】
IFN−β濃度を、改変されていないIFN−β(「B」ピーク)およびグルコシル化されたIFN−β(「B1」ピーク)に対応するピークの面積の合計から決定する。例えば、キャリブレータ溶液が0.25mg/mlの処方されていないIFN−βである場合、IFN−β濃度(mg/ml)=(試験サンプル合計ピーク面積B1+B/キャリブレータ合計ピーク面積B1+B)×0.25mg/mlである。
【0054】
エレクトロスプレイ質量スペクトル(ES−MS)データを、このクロマトグラフィーからの画分を用いて得た。分析の前におのおののピークの画分を収集し、そして濃縮した。エレクトロスプレイ質量スペクトルを、Harvard シリンジポンプ(Harvard Apparatus,South Natick,MA)およびRheodyne 8125インジェクタ(100μM内径の溶融シリカチューブ付)を装着した、API 100単一四重極質量スペクトロメータ(Perkin−Elmer Sciex Instruments,Thornhill,Ontario,Canada)を用いて得た。質量スペクトルを、0.2Daの工程サイズを用いて6秒/走査で、140〜2500の範囲の質量/電荷比(m/z)を走査することによって正モードで記録した。質量スペクトロメータを、2mM酢酸アンモニウムを含む50:50:0.1の水:メタノール:蟻酸(v:v:v)中に3.3×10−5M PPG425、1×10−4M PPG1000および2×10−4M PPG2000(Aldrich Chemical Co.)を含むポリプロピレングリコール混合物を用いて較正した。タンパク質溶液(2μL中に20〜50pM)のアリコートを、49:40:1の水:アセトニトリル:酢酸中の質量スペクトロメータイオン供給源中に20μL/分で導入した。タンパク質は、低いpHでイオン供給源中に導入されることから、塩基性部位(例えば、アルギニン、リジンおよびヒスチジンの残基の側鎖における窒素原子)は、種々の程度でプロトン化されて、プロトン化についてアクセス可能な部位の数に依存して、多数の荷電状態を有する分子イオン(例えば、[M+H]+,[M+2H]2+)を生じる。検出器は、種々の荷電状態における分子イオンのm/z比を記録し、そして質量スペクトルは、Biotoolboxソフトウェア(Perkin−Elmer Sciex
Instruments)を用いてデコンボリューションをして、タンパク質の分子量を得ることができる。20kDaでの分子量測定の質量精度は、2kDa以内であった。
【0055】
マンニトールの還元活性を、USPプロトコルの改変によって決定した。このプロトコルは、ビシンコニン酸(BCA、Pierce、製造業者の指示に従って調製した)の存在下でのアルカリ溶液におけるCu2+の減少を測定する。BCAはCu1+と錯体を形成し、そしてこの錯体は、562nmでのピーク吸収(A)を伴う青色を有する。
【0056】
2つのマンニトールサンプル(500μlの150mg/mlマンニトール溶液)を、各々の条件についてアッセイした。標準曲線を、既知の還元活性を用いて、グルコース溶液の連続希釈を用いて作成した。500μlの調製されたBCA溶液を、各々の試験サンプル、標準サンプルおよびブランクに加え、そして60℃で40分間インキュベートした。グルコース標準を、線形曲線に適合させ、そしてマンニトール試験サンプルの還元活性(ppm)を、((マンニトールサンプルのA562/標準曲線の勾配)/(マンニトール含量mg/ml(1000))×106)として計算した。
【0057】
III.結果および考察
グルコシル化を、IFN−β−1bの分子量に加えられた162ダルトンの乗数として質量分析を用いて、デキストロース処方物において検出した。IFN−β−1bペプチドの分析によって、これらの付加物がタンパク質のリジン残基と還元糖との反応(アマドリ反応)から生じることが示唆された。図1は、デキストロース処方物の処方されたバルクのRP−HPLCクロマトグラムを、50℃で1週間貯蔵した凍結乾燥処方物に対して比較する。この図は、デキストロース処方物中のIFN−β−1bが50℃で容易に反応して凍結乾燥状態におけるB1ピークを生成することを示す。処方されたバルクのES−MS(図2)は、グルコース付加物(プラス162)に関連するピークを有しない。対照的に、インキュベートされた凍結乾燥デキストロース処方物の質量スペクトル(図3)は、広汎な改変を示す。従って、グルコースは、IFN−β−1bと反応して、ES−MSによってその全体構造が確認される、RP−HPLCによって検出される種を形成する。
【0058】
対照的に、USPマンニトールを用いて作製されたIFN−β−1b処方物は、RP−HPLCによってピークB1として検出可能である種を形成しない。図4は、50℃で7日にわたって保持される凍結乾燥処方物に対して、マンニトール処方されたバルクを比較する。明らかにピークB1は形成されていない。しかし、図5において処方されたバルクの質量スペクトルは、20040におけるピークの存在を示し、そして図6におけるインキュベートされた凍結乾燥マンニトール処方物の質量スペクトルは、20201に新たなピークを有する。マンニトールと形成された付加物の量は、ES−MSによって定量され得ない。しかし、この付加物のシグナルは、装置の検出限界付近にしばしばある。これらのピークの形成の機構は知られていない。IFN−β−1bとマンニトールとの反応では、デキストロースと形成された種またはグルコースを用いて形成された種のような種を形成せず、ピークB1は形成されない。従って、このデータは、IFN−β−1b付加物の形成を妨害するのに、より純粋な形態のマンニトールが必要とされることを示す。
【0059】
次いで、不純物を減少させるようにメタノール抽出されたマンニトールを、IFN−β−1bの安定性に対するその効果について試験した。IFN−β−1bを、メタノール抽出したマンニトールの3つの異なるロットを用いて処方し、そして処方されたバルクおよび最終容器の試験サンプルを、上述のRP−HPLCおよびES−MSアッセイを用いてアッセイした。図7は、未処理のマンニトールを用いて処方したIFN−β−1bの質量スペクトルを示し、そして図8は、メタノールを用いて精製された、同じロットのマンニトールを用いて処方されたIFN−β−1bの質量スペクトルを示す。3つすべてのロットのマンニトールが類似のパターンを示した。図17は、還元活性の半分より多くがメタノール処理によって除去されることを示す。明らかに、メタノール処理は、IFN−β−1bと複合体を形成する不純物を除去するが、いくらかは、この処理によって完全には除去されないかもしれない。
【0060】
マンニトールにおける残りの不純物を減少させるために、3つのさらなる工程を、精製プロセスに加えた。これらのさらなる工程は炭素処理、限外濾過および再結晶である。メタノール抽出、炭素抽出、限外濾過および再結晶マンニトールの3つのロットを上記のように試験した。呈色還元活性アッセイは、還元活性含量をさらなる精製工程が約10ppmまで低下させることを実証した(図17を参照のこと、サンプル7〜9)。処方物を、高度に精製されたマンニトールを用いて調製した。高度に精製されたマンニトールを用いて調製され、そしてネガティブコントロールとして同じ日に実行した処方物の質量スペクトル(図9)は、マンニトールなしに調製された処方されたバルク(図10)において存在しないさらなるピークは示さなかった。USPマンニトールを用いて調製された処方物の質量スペクトル(図11)もまた、ポジティブコントロールとして同じ日に実行した。従って、マンニトールの更なる処理は、還元活性が低く、そしてES−MSではIFN−β−1bと反応しないようである産物を生じる。
【0061】
(実施例2:高度に精製されたマンニトールを含むIFN−β処方物の安定性:短期加速研究)
I.導入
IFN−β−1bの実験的処方物を、上述のようにデキストロールおよびマンニトールを用いて調製し、そして加速安定性研究を行って、これらの処方物を比較した。処方物の安定性を、2つの異なる条件下で試験した。第一のものは高温ストレスに対してその処方物を供するためのものであり、そして第二のものは室温での長期貯蔵における安定性を測定するためのものであった。高度に精製されたマンニトールを含む処方物において、25℃で3ヶ月間後に変化は見られず、そしてその処方物の効力は、37℃で3ヶ月の貯蔵または50℃で1ヶ月の貯蔵の後も本質的に変化しないままであった。
【0062】
II.方法
各処方物のサンプルを8℃、25℃、または37℃で3ヶ月貯蔵した。さらに、2ヶ月の時点で、各温度からサンプルを採り、そしてさらに1ヶ月間50℃で貯蔵した。50℃シフトの目的は、貯蔵の最初の二ヶ月において発生し得た可能な変化を悪化させるためのものであり、従って25℃または37℃に2ヶ月配置することによって、8℃というもとの貯蔵温度に返還するときにその産物がより迅速に分解するようになるかどうかをより良好に決定することを可能にする。
【0063】
IFN−β−1bの特異的活性を以下のようにアッセイした。A549ヒト肺がん細胞(ATCC CCL 185)およびマウス脳心筋炎ウイルス(EMC株(ATCC VR−129B))は、American Type Culture Collectionから得た。処方物サンプルを、1.2ml希釈液(0.54% NaCl)で再構成し、増殖/アッセイ培地で連続希釈し、そして96ウェルアッセイプレートに、IFN−β−1b標準とともに加えた。各々のウェルにおいて希釈されたIFN−βの容量は、100μlであった。増殖/アッセイ培地(Earle塩および2.2g/L重炭酸ナトリウム、8.9%仔ウシ血清、1.79mML−グルタミン、89U/mlペニシリン、および89μgストレプトマイシン/mlを伴うEagle’s MEM)中のA549細胞に1×104細胞/ウェルの濃度で加えた。次いで、このプレートを加湿した37℃±2℃、5±1% CO2のインキュベーター中でインキュベートした。このインキュベーションの終わりに、細胞を、5と16との間の感染多重度でEMCウイルスに感染させた。次いで、このプレートを、24±1時間にわたって加湿した37±2℃、5±1%のCO2インキュベーター中でインキュベートした。この細胞を、予備加熱した(37℃)MTT(3−[4,5−ジメチルチアゾリル−2−イル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド、5mg/ml、50μl/ウェル)を用いて染色し、そして以前と同じように3.5時間〜4.5時間インキュベートした。この培地を、細胞から吸引し、そして100μlの染色可溶化溶液(81%v/v2−プロパノール、3%w/vドデシル硫酸ナトリウム、0.04N HCl)を、各ウェルに加えた。次いで、プレートを30〜60分間雰囲気温度にて暗所にてインキュベートした。次いで、プレートを、8±3分間マイクロプレートシェーカーにて振盪した。最後に、各ウェルの570nmでの吸光度をマイクロプレート分光光度計で測定した。IFN−β活性標準の活性を、線形回帰曲線に適合させ、そしてその試験サンプルの活性をこの曲線から決定した。各サンプルの特異的活性を、使用したサンプルの質量に基づいて計算した。
【0064】
IFN−β−1b濃度のRP−HPLC分析を上記のように行った。添加物処方物もまた、IFN−β−1bバンドの分子量における見かけ上の増大として還元型SDS−PAGEウェスタンブロットにおけるモニターした。
【0065】
III.結果および考察
マンニトール処方物の効力(特異的活性)は、この研究の間本質的に変化ないまま保持された。他方、デキストロース処方物の効力は増大した。37℃の温度への1ヶ月の暴露は、効力に対して影響がなかった(図14および15を参照のこと)。マンニトールIFN−β−1b処方物について、グリコシル化IFN−β−1bの量は、この研究の間にわたって、50℃でさえ、検出限界未満のままであった。対照的に、グリコシル化は、37℃で2ヶ月および50℃で2週間後にデキストロース処方物において検出されたが25℃で3ヶ月の貯蔵の後には検出されなかった。広汎なグリコシル化によって、合計のIFN−β−1bの含量を測定するにはクロマトグラムが多すぎるように改変された。このデキストロース処方物における付加物の形成もまた、37℃で2ヶ月の貯蔵または50℃で1ヶ月の貯蔵の後に、還元SDS−PAGEウェスタンブロットにおいて検出された。対照的に、どの貯蔵条件でもマンニトール処方物については、SDS−PAGEウェスタンブロットにおいて変化が観察されなかった。
【0066】
(実施例3:高度に精製されたマンニトールを含むIFN−β処方物の長期安定性)
高度に精製されたマンニトールを含む3つのロット(N006、N005およびN009)のIFN−β−1b処方物を、4℃、25℃または30℃において貯蔵し、そしてその安定性を、1年間にわたって3ヶ月の間隔で、およびさらに1年間6ヶ月の間隔でアッセイした。安定性は、上記の方法によってアッセイした。
【0067】
すべての3つのロットは、4℃および30℃において、24ヶ月を通じて効力を保持していた。データは、図16〜18に提示される。さらに、すべての3つのロットが、すべての温度およ時点において、ピークB1(グルコシル化されたIFN−β種)が0.02mg/mlを超えないことを実証した。
【0068】
当業者は、単なる慣用される実験を用いて、IFN−βについて本明細書において記載される本発明の特定の実施形態の多くの等価物を認識し、または確認することができる。さらに、当業者は、慣用的な実験を超えないものを用いて、例としてIFN−βを用いて提供される上記実験および処方物がタンパク質一般(もっとも特定すれば、薬学的タンパク質)に適用可能であることを認識し、または確認することができる薬学的タンパク質としては、以下のタンパク質を含むがそれらに限定されない:ヒト成長ホルモン、すべてのインターフェロン、すべてのインターロイキン、コロニー刺激因子(GM−CSF、G−CSF、M−CSF)、βグルコセレブロシダーゼ、チロトロピン、エタネルセプト(etanercept)、モノクローナル抗体(例えば、abciximab,basiliximab,palivizumab,rituximab,およびtranstuzumab)、血液因子(例えば、第VIIa因子および第VIII因子)、酵素(例えば、ウロキナーゼ、アスパルギナーゼ、アニストレプラーゼ、およびアルテプラーゼ)。このような等価物は、添付の特許請求の範囲に包含されるべきであることが意図される。
【0069】
本明細書において言及されるすべての刊行物および特許出願は、本発明が関連する分野の当業者のレベルの指標である。すべての刊行物および特許出願は、各々個々の刊行物または特許出願があたかも具体的かつ個々に、参考として援用されるべきと言及されたかのように、同程度に参考として援用される。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1は、1週間にわたって50℃にてインキュベートされたデキストロース処方されたIFN−βバルクおよび凍結乾燥された粉末についてのRP−HPLCのクロマトグラムの比較を示す。処方物におけるグルコース化されたIFN−β付加物の、50℃に保持される処方物は、(およそ画分48における)第二のピーク(B1)の外見として見られ、その後、(およそ画分49〜50における)メインのIFN−βピークが続く。実施例1を参照のこと。
【図2】図2は、バルクのデキストロース処方されたIFN−βについての質量スペクトルを示す。いくつかの小さなピークが、19878アム(原子質量単位)においてメインのIFN−βピークに加えて検出可能であった。実施例1を参照のこと。
【図3】図3は、バルク組成物から凍結乾燥され、そして50℃で1週間格納された、デキストロース処方されたIFN−βのサンプルについての質量スペクトルを示す。図2とは対照的に、主なピークは、IFN−β付加物に対応する。実施例1を参照のこと。
【図4】図4は、50℃で1週間インキュベートされた、USPマンニトール処方されたIFN−βバルクおよび凍結乾燥粉末についての、RP−HPLCクロマトグラムの比較を示す。処方物において50℃に保持された、グルコシル化されたIFN−β付加物の処方物(B1ピークの外見)は、見出されない。実施例1を参照のこと。
【図5】図5は、USPマンニトール処方されたIFN−βバルクの質量スペクトルを示す。IFN−βは、19880アムにおけるピークとして検出される。実施例1を参照のこと。
【図6】図6は、凍結乾燥し、そして50℃で1週間でインキュベートされた、USPマンニトール処方されるIFN−βの質量スペクトルを示す。さらなるピーク(付加物を示す)の形成がスペクトル中に見出され得る。実施例1を参照のこと。
【図7】図7は、精製されていないマンニトール処方されるIFN−βの質量スペクトルを示す。多数の付加ピーク(付加物を示す)の形成がこのスペクトルにおいて見出され得る。実施例1を参照のこと。
【図8】図8は、図7において使用されるのと同じロットからのメタノール抽出したマンニトールを用いて処方されたIFN−βの質量スペクトルを示す。付加物ピークの大きさおよび数は、実質的に減少した。実施例1を参照のこと。
【図9】図9は、高度に精製された(メタノール抽出、炭素処理、限外濾過、および再結晶化)マンニトールを含むIFN−β処方物の質量スペクトルを示す。3つの小さなピークのみが、改変されていないIFN−βを示す主なピークに加えて見られる。実施例1を参照のこと。
【図10】図10は、マンニトールの不在下で処方されるIFN−βの質量スペクトルを示す。このスペクトルから、図9に存在する主な二次ピークは、高度に精製されたマンニトールと相互作用することによって形成されないことが、これらがまた賦形剤の不在下で現れるのと同様に見出され得る。実施例1を参照のこと。
【図11】図11は、上記図9と同じ日に実施した、USPマンニトールで処方されるIFN−βの質量スペクトルを示す。このスペクトルは、USPマンニトールで処方されるIFN−βがさらなるピーク(付加物)を形成することを確認する。このピークは、高度に精製されたマンニトールを含むIFN−β処方物においては存在しない。実施例1を参照のこと。
【図12】図12は、実施例2に記載されるようなIFN−βデキストロース処方物についての安定性評価データを示す。
【図13】図13は、実施例2に記載されるような高度に精製されたマンニトールを含むIFN−β処方物についての安定性評価データを示す。
【図14A】図14Aは、実施例3に記載されるような高度に精製されたマンニトールを含むIFN−β処方物のロット006についての安定性評価データを示す。
【図14B】図14Bは、実施例3に記載されるような高度に精製されたマンニトールを含むIFN−β処方物のロット006についての安定性評価データを示す。
【図15A】図15Aは、実施例3に記載されるような高度に精製されたマンニトールを含むIFN−β処方物のロット008についての安定性評価データを示す。
【図15B】図15Bは、実施例3に記載されるような高度に精製されたマンニトールを含むIFN−β処方物のロット008についての安定性評価データを示す。
【図16A】図16Aは、実施例3に記載されるような高度に精製されたマンニトールを含むIFN−β処方物のロット009についての安定性評価データを示す。
【図16B】図16Bは、実施例3に記載されるような高度に精製されたマンニトールを含むIFN−β処方物のロット009についての安定性評価データを示す。
【図17】図17は、還元活性が種々のマンニトールサンプルに存在することを示す。サンプル1−3は、メタノール抽出も、炭素濾過も、限外濾過もされていないUSPマンニトールである。サンプル4−6は、メタノール抽出されたUSPマンニトールである。そしてサンプル7−9は、メタノール抽出され、炭素処理され、限外濾過され、そして再結晶化されたマンニトールである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載されるインターフェロン組成物。
【請求項1】
本明細書に記載されるインターフェロン組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【公開番号】特開2008−69171(P2008−69171A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−278231(P2007−278231)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【分割の表示】特願2002−540752(P2002−540752)の分割
【原出願日】平成13年11月7日(2001.11.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(591076811)カイロン コーポレイション (265)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【分割の表示】特願2002−540752(P2002−540752)の分割
【原出願日】平成13年11月7日(2001.11.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(591076811)カイロン コーポレイション (265)
【Fターム(参考)】
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