安定化された埋め込み型血管アクセスポート
【解決手段】 皮下に埋め込み可能な血管アクセスポートは、本体およびウィングを含む2つの部分を有する。前記本体は、隔壁に覆われたチャンバーを支持し、前記隔壁は、カラー(つば部)により前記チャンバーの上で定位置に保たれる。前記チャンバーは、医療製剤を投与するため、前記本体から延出したチューブなどを通じて血管構造に連結可能である。前記本体は、細長い形態であることが好ましい。前記ウィングは、幅を調整できるよう構成される。一実施形態において、前記ウィングは、前記本体に対し回転し、前記本体と同様な細長い形態を有する。前記ウィングは、回転されると前記本体から横方向へ延出し、前記本体の安定性を高める。別の実施形態において、前記ウィングは変形可能なウィングとして提供され、前記変形可能なウィングは、当該変形可能なウィングの挿入先である前記本体の空洞の側部開口部の外側へ横方向に拡張できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静脈などの血管構造と流通可能に配置する皮下埋め込み型医療装置に関し、この装置自体は、患者の血管構造へ治療製剤を投与するため、シリンジに連結された注射針などで皮膚を貫通してアクセスできる。より具体的には、本発明は、切開部の大きさを最小限にとどめるよう細長い形態を有し、埋め込み後に形状を変化させてより広い幅とより大きな安定性を呈するアクセスポートに関する。
【背景技術】
【0002】
皮下埋め込み型の血管アクセス(バスキュラーアクセス)用装置またはポートは、これまで長年にわたり使用されてきており、頻繁または定期的な治療薬注入または採血を必要とする患者に長期の血管アクセスを提供している。現在、ポートは、セルフシールの隔壁(セプタム)からアクセス可能なチャンバーと、脈管系内に配置されたカテーテルに接続された吐出口とを含む本体を有することが一般的である。前記ポートの基部は、身体に水平に当接するよう意図された当該ポートの略平坦な側部であり、前記隔壁は、一般に皮膚表面へ向かって配置される。これには多数の変形形態が可能である。前記隔壁は、凸型であっても凹型であってもよい。前記本体は、プラスチック、金属、または材料を組み合わせたものであってよい。前記隔壁は、前記基部と直接対向しても、あるいは前記基部に対し角度を成してもよい。
【0003】
現在の慣行において、前記ポートは、簡単な外科的処置により皮下ポケットに埋め込まれる。ポートの外形をより小さくする際に制約の1つとなるのが、体内にポートを配置した後の安定性の問題である。現在使用されているポートは、定位置に縫い留めないと体内で裏返って隔壁が上向きでなく下向きになってしまいアクセス不能になる嫌いがある。ポートが小さいほどこの裏返りの傾向は高まり、また切開部および縫い留め先となるポケットも小さくなって定位置へのポート縫い留めが困難になる。そのため、ポートの埋め込み外形を最小限に抑えながらポートの安定性を向上させる方法が必要とされている。そのような先行技術ポートの1つで、全体として細長い形態を呈し細長い隔壁を具備しているものが、米国特許第6,213,973号に説明されている。このような構成では切開部を若干小さくできるが、この先行技術アクセスポートは安定しないため、裏返りやすく、または望ましくない位置へ回転しやすい。
【0004】
そのため、埋め込み後の安定性および小さな切開部からの挿入に適した小型外形という双方の利点をもたらす血管アクセスポートであって、血管アクセスポートのサイズを最小化し、このような血管アクセスポートの患者への提供に伴う他の悪影響を最小限に抑えるものが必要とされている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では血管アクセスポートを提供し、この血管アクセスポートは、その本体の幅より広くなるよう幅が移行するウィングを独自に含む。これにより、前記ウィングは、前記アクセスポートに安定性をもたらす。
【0006】
最も好適な実施形態において、前記ウィングは細長い構造をしており、前記アクセスポートの本体の下面などに枢着される。前記本体の上面には隔壁に覆われたチャンバーを嵌装でき、前記隔壁は、カラー(つば部)により定位置に保たれる。前記チャンバーは、当該ポート内の連結部材と、それに伴うチューブであって血管構造へつながるチューブとを通じて前記血管構造と流通可能である。前記本体は、通常、細長い形態で、前記ウィングも細長い形態をしている。第1の位置において、前記ウィングは前記本体に整列した状態であり、これにより前記本体の断面輪郭が無視できない程度に拡大してしまっているが、前記細長い本体とともに小さな切開部を通過することはできる。埋め込み後、前記ウィングは(好ましくは最高90°)回転し、これにより当該ウィングの長手寸法が前記本体に対し横方向にもたらされ、前記本体と前記ウィングはともに略「X」字形を形成する。このように、前記ウィングおよび前記本体は安定したプラットフォームを提供して、前記隔壁が皮膚に面し利用可能になるよう前記隔壁の配向(向き)を保つ。前記本体および前記ウィングには、縫合糸を通せる適切な穴部が透設されることが最も好ましい。当該ポートの埋め込み後、このような縫合糸を強く引っ張ると、前記ウィングをその展開位置まで回転させることができる。この状態で前記縫合糸を結ぶと、前記ウィングをその展開位置に保つことができる。この縫合糸は、当該アクセスポートを取り出す際、容易に切断して除去可能である。次いで前記ウィングを元の位置に戻し、当該アクセスポートの埋め込みと逆の態様で、当該アクセスポート全体を取り出し用の小さな切開部から取り出すことができる。代替態様として、当該アクセスポートは、異なる方向に回転して当該アクセスポートを安定させる2若しくはそれ以上の剛性ウィングを有することができる。
【0007】
代替実施形態では、前記本体を細長く成形でき、その内部の、当該本体の下面付近に、端部開口部および少なくとも2つの側部開口部を伴った空洞を有するようにできる。また、弾性のある態様で横方向に伸縮できる変形可能なウィングが提供される。この変形可能なウィングは前記空洞の前記端部開口部より広い幅を有するが、横方向に十分収縮させることにより、前記端部開口部を通過し前記空洞に進入できるようになる。前記変形可能なウィングは、完全に挿入された時点で元の形態に拡張し、または元の形態の幅より広く拡張して、当該ウィングの横幅を広げる。この実施形態では、前記本体がまず埋め込まれる。次に、前記変形可能なウィングが同じ切開部から埋め込まれ、前記本体の前記端部開口部を通じて前記空洞内へ挿入される。前記変形可能なウィングが前記空洞に完全に挿入されると、当該ウィングの横方向の部分が拡張し、当該アクセスポートを使用に備えて有益に安定させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
種々の添付図面では全体にわたり同様な参照番号が同様の部分(部品)を表しており、これらの図面を参照すると、参照番号10は、皮下に埋め込まれるようになっている血管アクセスポートを示しており、当該ポート10の形状を変更すると埋め込み後にこれを安定させることができる。特に、このポート10は、その横方向の安定性を高めるため幅狭の初期配向から幅広の最終配向へと再位置決め可能なウィング70を伴った本体20を有する。これにより、このポート10は、可能な限り侵襲性を軽減する態様で皮膚Kに開けた皮下埋め込み用の小さな切開部Iから埋め込み可能でありながら、「ロールオーバー」(転倒)または他の望ましくない位置変化を生じにくくなる。
【0009】
本発明のポート10の細部は、好適な実施形態に基づき、本質的に、また特に図1〜3および8を参照して説明している。このポート10は、主に、最も好適な形態で細長い本体20から成る。この本体20は、その内部に延在するチャンバー30を含む。このチャンバー30の上層には、隔壁(セプタム)40がある。前記隔壁40は、(シリンジYなどに伴う)注射針が(前記皮膚Kの下層にある)前記隔壁40を貫通して前記チャンバー30にアクセスできるようにし、注射針を抜くと再封鎖する特徴を有している。カラー(つば部)50は、前記隔壁40を取り囲み、前記チャンバー30および前記本体20の上で前記隔壁40を固定する。連結部材60は、前記ポート10側からのインターフェースとして作用し、前記チャンバー30と、静脈Vなどの血管構造との間の流体流通を可能にする(図14)。また、この好適な実施形態によれば、細長いウィング70は、当該ポート10の一部として提供される。この細長いウィング70は、前記本体20の下面21に隣接するなどして、前記本体20に枢動可能に連結されている。最も好適な実施形態では、前記本体20上で前記ウィング70を回転可能に支持するリテーナ80が設けられる。前記ウィング70は、このようにして、前記本体20に整列した第1の位置から、この本体20の長軸に非平行で好ましくはこの本体20に実質的に垂直な第2の位置へ回転することができる。この第2の展開(配備)構成において、当該ポート10は、前記ウィング70の展開前に比較的小さい切開部Iから本体20も前記ウィング70も含めて挿入可能な態様を保ちつつ、横方向の安定性も強化される。
【0010】
より具体的には、また図4〜8および13を特に参照すると、前記本体20の特定の細部が説明されている。前記本体20は、生体適合性で当該ポート10の主要部分の成形に適したものとして選択された実質的に剛性の材料体である。例えば、この本体20は、生体適合性のステンレス鋼、生体適合性のチタン合金、または十分硬質で剛性の生体適合性プラスチック、複合材料、または他の硬質生体適合性材料で成形できる。
【0011】
この本体20は、前記チャンバー30を取り囲んで外周を形成し前記隔壁40およびカラー50を当該本体20上で保持するよう構成されることを条件に、種々の異なる幾何学的外形を有してよい。前記本体20は、長さが幅を超える細長い形態であることが最も好ましい。そのような細長い形態により、前記本体20は、安定性のための比較的大きなサイズを保ちながら、前記皮膚Kの比較的小さな切開部Iから挿入可能になる(図14)。ただし、前記本体20が実現するこのような安定性だけでは、この細長い本体20の長軸に実質的に垂直な1つの横軸の周りの回転に対する安定性がもたらされるだけである(図12の矢印Lに沿った回転に抵抗する)。以下詳述するように展開する前記ウィング70を利用すると、前記細長い本体20とともに横方向に完全な安定性が得られる。代替態様として、前記本体20は細長い形態にも細長くない形態にもでき、さらにより小さい本体20で高度な安定性を可能にするデュアルウィングポート110(図15および16)などの形態により一対のウィング70を設けることもできる。
【0012】
前記細長い本体20の場合、第1の端部24と第2の端部26との間の長さは、対辺28間の幅より2〜3倍大きいことが好ましい。前記本体20は下面21と反対側にある上面22を有し、この上面22と前記下面21との間の前記本体20の高さは一般に前記対辺28間の幅と同様だが、通常それよりわずかに小さいものになる。
【0013】
この好適な実施形態において、前記本体20は前記下面21に凹部23を有し、この凹部23は、前記リテーナ80の一部を受容して前記ウィング70を支持する。縁部(リム)25は、この凹部23を取り囲んで前記ウィング70およびリテーナ80の位置合わせを補助する。トンネル27は、前記本体20の前記第1の端部24付近で、前記上面22から前記対辺28の1つへと斜めに通過している。このトンネル27により、格納位置から展開位置へと前記ウィング70を動かす方法の一環として、以下詳述するように縫合糸Sまたは他の柔軟な糸を通過させることができる。前記本体20は、前記チャンバー30から前記第1の端部24へと延出した孔部29を有する。この孔部29は、前記チャンバー30と前記本体20外部との間の前記連結部材60を通じた流体流通に好適な構造をもたらす。この孔部29は、円柱形で前記本体20の前記下面21と平行に配置されることが好ましい。この孔部29には前記第1の端部24に隣接して段部を設けてよく、これにより当該孔部29に前記連結部材60を嵌合して、当該孔部29と、前記連結部材60内の導管62との間の直径移行を最小限に抑えることができる。
【0014】
前記本体20の種々の表面は、前記端部24、26へ向かってテーパーがかかっていることが好ましく、これにより当該本体20にやや流線形の外観がもたらされ、また、小さい切開部Iからの当該ポート10埋め込みをより困難にし若しくは当該ポート10の埋め込み後に体内構造に不要にひっかかるおそれのある尖った縁部若しくは尖りのない縁部を呈さないようにできる。
【0015】
特に図8を参照すると、前記本体20内の前記チャンバー30の細部が説明されている。このチャンバー30は、注射針が前記隔壁40を通過し、その下にある当該チャンバー30の一部へと到達した際に、薬剤または他の流体製剤の導入先となる領域を画成する。それらの製剤は、このチャンバー30から前記連結部材60を通過し、当該アクセスポート10を装着した血管構造(前記静脈Vなど)へと移動して、患者に有益に投与される。前記チャンバー30は、円柱形の止まり穴(めくら穴)で、前記本体20内で前記上面22に実質的に垂直方向に延在する凹部を形成し、前記下面21およびそれに設けられた前記凹部23に到達する直前で停止することが好ましい。このチャンバー30は、前記本体20の中心に位置合わせし、また前記下面21の前記凹部23に位置合わせすることが好ましい。また、前記チャンバー30は、実質的に平坦な底面32と、この底面32を取り囲む円柱形の側壁34とを有することが好ましい。このチャンバー30の壁は、投薬中、前記シリンジYの注射針(図14)が当該チャンバー30を突き抜けず、前記注射針の先端が当該チャンバー30内に留まるよう、十分硬質な材料で形成される。
【0016】
前記本体20の他の細部には、前記チャンバー30に外接し前記上面22から縦方向に延出したリング36が含まれる。このリング36により、前記隔壁40周囲で前記カラー50が位置合わせされ、前記本体20への前記カラー50の圧入または他の固定が容易になる。環状面38は、前記リング36の内側で前記上面22の一部を画成する。この環状面38は、略環状形態で、前記チャンバー30から前記リング36へ延出している。
【0017】
前記本体20の前記下面21は、前記下面21から垂直に下方へ延出したポスト(支柱)35を含むことが好ましい。このポスト35は、前記ウィング70が最大角度まで回転されて展開位置に移動した時点で、当該ウィング70の縁部(ボーダー)74が当該ポスト35に当接するよう、適切に配置される。このように、このポスト35は前記ウィング70の停止部材として作用し、前記ウィング70の過剰回転を防ぐ。
【0018】
特に図8および13を参照すると、この好適な実施形態に係る前記隔壁40の特定の細部が説明されている。前記隔壁40は、モノリシックな(一体型の)半剛性材料であり、通常、当該隔壁40に障害が生じるまでに、注射針を繰り返し通過させ、かつ何回も再封鎖する上で十分な弾性を有益に呈するシリコンまたは他の材料で形成される。この隔壁40は、前記チャンバー30と、前記リング36と、前記カラー50とにより境界を成す空間と同様な構造を有することが好ましく、これにより、当該隔壁40は、前記チャンバー30の上方端部を密閉し、前記本体20の前記上面22に固定されることが可能になる。
【0019】
特に、この隔壁40は、実質的に平面状の頂部42と、それに対向した実質的に平面状の底部44とを含むことが好ましい。前記頂部42は、必要に応じてわずかに凹型または凸型であってよい。前記隔壁40は、前記頂部42から前記底部44に延在する円柱形の湾曲した外周46を伴った略円柱型であることが好ましい。この外周46は、前記頂部42の直径が前記底部44の直径より小さくなるよう、前記頂部42付近に段部48を含むことが好ましい。前記段部48は前記カラー50の構造と相補的であることにより、さらに、前記隔壁40を前記カラー50に適切に位置合わせし、前記カラー50で前記本体20に固定できるようにしている。
【0020】
この隔壁40は、前記チャンバー30と、前記環状面38と、前記リング36と、前記カラー50との間に当該隔壁40のため設けられる空間よりわずかに大きいことが好ましい。そのため、当該隔壁40は、前記本体20に隣接して配備された状態では、わずかに圧縮される。これにより、この隔壁40は前記頂部42において上方へ若干膨らみ、前記底部44では前記チャンバー30内へと下方へ若干膨らむ。この隔壁40は、前記環状面38上に載置されて前記チャンバー30の上層となる完全に平面状の底部44を有してもよく、また段差を設けて前記チャンバー30内へわずかに延出するようにしてもよい。
【0021】
特に図4〜8および13を参照すると、この好適な実施形態に係る前記カラー50の特定の細部が説明されている。前記カラー50は、前記隔壁40および前記リング36の上方から圧入して前記本体20を固定し、前記本体20と当該カラー50との間で前記隔壁40を捉えるようサイズ調整された剛性のバンドであることが好ましい。前記カラー50には、その中心を貫通する開口部52がある。この開口部52は、前記隔壁40の前記頂部42と同様な直径を有するようサイズ調整される。前記カラー50には脚部54が含まれ、これは、実質的に平面状および環状で、前記リング36のすぐ外側で前記本体20の前記上面22に当接するようになっていることが好ましい。
【0022】
前記カラー50の内輪郭(内部輪郭)56は、前記脚部54から前記開口部52へ延出する。この内輪郭56は、前記本体20の前記リング36と、前記隔壁40の前記段部48とを受容するため種々の移行部を有して、前記カラー50と、前記リング36と、前記隔壁40との間に実質的に間隙のない嵌合がもたらされるようにする。前記内輪郭56は、前記本体20の前記リング36との間に締まりばめを有することにより、前記リング36の上から前記カラー50を前記本体20にしっかり圧入できるよう寸法調整されることが好ましい。同様に、前記カラー50の前記内輪郭56は、前記隔壁40の前記頂部42および前記外周46との間に締まりばめを有することにより、前記カラー50が前記隔壁40を若干圧縮するよう構成されることが好ましい。
【0023】
このカラー50は、前記開口部52から前記脚部54へ下方に延びる流線形の外面58を有する。この流線形の輪郭は、さらに、前記皮膚Kの小さな切開部Iから前記本体20を容易に挿通できるよう役立つ(図14)。
【0024】
特に図8および13を参照すると、この好適な実施形態に係る前記連結部材60の特定の細部が説明されている。この連結部材60は、前記本体20に圧入される別個の構造であるか、または前記本体20に連結されることが好ましく、当該連結部材60と静脈Vまたは他の血管構造との間に延在するチューブTと連結して、当該ポート10と前記静脈Vまたは他の血管構造との間の流路となるインターフェースを提供することができる。前記チューブTは、前記血管構造内へ直接入り込む十分小さなものにでき、または注射針または他の血管構造インターフェースに嵌装できる。
【0025】
前記連結部材60は略円柱型で管状の剛性構造であり、導管62を画成する中空内部を有している。また外面64は、前記本体20の前記第1の端部24からの排出口である前記孔部29に圧入されるよう、円柱形にサイズ調整されることが好ましい。この外面64は、前記チューブTを前記連結部材60に固定する上で役立つリブ65を含むことが好ましい。例えば、まず固定バンドを前記チューブTの外周に配置したのち、前記チューブTを前記連結部材60の前記外面64の外周に配置して、前記固定バンドが前記チューブT外面上で前記連結部材60の前記リブ65間へ移動するまで前記固定バンドを前記本体20へ向かって引っ張ると、前記チューブTを前記連結部材60にしっかり被せ固定することができる。
【0026】
前記連結部材60には、前記本体20内で固定される内端部66と、この内端部66と反対側にあり前記本体20から延出する外端部68とが含まれる。前記リブ65は、前記内端部66より前記外端部68の近くに位置し、好ましくは前記連結部材60の約1/3が前記本体20内に固定され、当該連結部材60の約2/3が前記本体20の外側に延出する。
【0027】
図8〜13を特に参照すると、この好適な実施形態に係る前記ウィング70の特定の細部が説明されている。このウィング70は、前記本体20とは別個に設けられているが前記リテーナ80で前記本体20に枢着された剛性構造であることが好ましい。このウィング70は、格納され折り畳まれた初期配向において当該ポート10の幅を広げないよう、前記本体20の前記下面21と同様な平面形の輪郭を有することが最も好ましい。当該ウィング70は、第1の先端71から第2の先端73へ延在し、これら先端71から73までの長さは、前記本体20の前記第1の端部24から前記第2の端部26までの長さと同様である。このウィング70には、前記本体20の前記下面21と隣接することが好ましい上側75と、この上側75と反対側にあり当該ポート10の最下部分を画成する基底面79とが含まれる。
【0028】
小穴77は、前記基底面79から前記上側75に貫通することが好ましい。この小穴77を設ける箇所では、前記上側75をわずかに切除することにより、前記小穴77に縫合糸Sを通すための、また初期の格納配向から最終的な展開配向へと前記ウィング70を引っ張るためのクリアランス(逃げ)を設けることが好ましい。前記ウィング70には中心穴72が透設されており、これを前記リテーナ80が貫通し、また前記本体20の前記縁部25が通過することにより、当該ウィング70は、前記本体20に対し位置合わせされ、回転可能になる。この好適な実施形態において、前記縁部74は、前記ウィング70の外周(境界)を画成し、全体として前記本体20の外周に合致する。段部76は、前記リテーナ80が前記ウィング70を前記本体20に隣接させて保持できるよう、前記穴72を取り囲んで形成されることが好ましい。ノッチ78は、前記本体20の前記下面21から下方に延出した前記ポスト35の位置に合わせて、前記縁部74の一部に設けられる。このノッチ78により、前記ウィング70は、前記ポスト35が障害となることなく格納位置まで完全に回転することができる。
【0029】
この好適な実施形態において、前記ウィングは、当該ウィング70の展開時に当該ポート10の全体的な幅を広げるよう、横方向(水平)に互いに逆方向へ延びる。あるいは、長さが前記本体20の約半分しかなく横1方向にのみ展開されるウィング、またはそれぞれ反対方向へ展開される2つの別個の短いウィングを設けることにより、若干の利点がもたらされる可能性があり、異なる実施形態は、異なる度合いの安定性および複雑度、そして他の独特の属性を提供する。
【0030】
特に図8および13を参照すると、この好適な実施形態に係る前記リテーナ80の特定の細部が説明されている。このリテーナ80は、前記本体20の前記下面21の前記凹部23への圧入により前記ポート10に連結される剛体であることが好ましい。このリテーナ80には、前記凹部23にしっかり嵌入されるようサイズ調整された円柱形の中央ディスク82が含まれる。フランジ84は前記中央ディスク82の下にあり、このフランジ84の直径は、前記中央ディスク82の直径より大きく、前記ウィング70の前記段部76に嵌入する上で十分大きく、前記ウィング70の前記穴72の直径を超える。前記リテーナ80の下面86は、前記ウィング70前記基底面79と同一平面上になるよう構成されている。前記リテーナ80を配備すると、前記ウィング70は、自由に回転できる状態になるが、前記ウィング70の回転軸に沿った前記本体20に対する平行移動は制限される。
【0031】
図15および16を特に参照すると、本発明の代替実施形態に係るデュアルウィングポート110の細部が説明されている。前記デュアルウィングポート110の本体20(図16)は、上述し図1〜14に示した単一のウィング70の代わりに一対のウィング120および130を回転可能に前記本体20へ取り付けることができるよう、前記凹部23および前記縁部25がわずかにサイズ調整される可能性があるという点を除き、前記ポート10の前記本体20と同一であることが好ましい。
【0032】
このデュアルウィングポート110には、第1のウィング120および第2のウィング130が含まれ、これらはそれぞれ前記本体20に枢着されている。これらのウィング120、130は、それぞれ細長い形態の別個の剛性構造であり、それぞれ前記好適な実施形態の前記リテーナ40と同様なリテーナ140により前記本体20に固定されている。可能性として、前記リテーナ140は、前記リテーナ140と前記本体20との間に前記2つのウィング120、130を挟持して受容するため、その中心軸方向に前記リテーナ40よりやや長いことが考えられる。
【0033】
前記ウィング120、130は、共通の平面内において、当該ウィング120、130の先端付近で少なくとも一部互いに角度を成して配向されることが好ましい。前記リテーナ140付近において、前記第2のウィング130は、前記第1のウィング120の下になるよう、前記第1のウィング120より前記リテーナ140の下面に近い位置になることが好ましい。前記ウィング120、130の各々の中央部分は環状形態であることが好ましく、また前記第1のウィング120は前記第2のウィング130の上方になるよう構成され、前記第2のウィング130は前記第1のウィング120の下方になるよう構成されていることが好ましい。前記ウィング120、130は、その環部から放射方向へ延出するに伴い段差が設けられ、前記第1のウィング120にはわずかに下方への段差、前記第2のウィング130にはわずかに上方への段差が付けられて、双方の前記ウィング120、130は、環状の中央部分から離れるほど厚みが増す。そのため、これらのウィング120、130は共通の厚みを有し、前記リテーナ140に隣接した前記環状の中央部分を除くすべての部分において共通の平面内に位置する。
【0034】
前記ウィング120、130は、逆方向に回転するよう構成されることが好ましい。特に、前記第1のウィング120は、(図15および16の矢印Dに沿って)時計回りに回転するよう構成されることが好ましい。これに対し、前記第2のウィング130は、(図15および16の矢印Eに沿って)反時計回りに回転するよう構成されることが好ましい。これらウィング120、130は、約60°回転した後に他方のウィング120、130に当接することにより、それぞれ互いの停止部材として作用し他方のウィング130、120の回転を終了させるよう構成されることが好ましい。回転が完了すると、前記ウィング120、130の双方および前記細長い本体20は、当該デュアルウィングポート110の安定性を高める6つの点を協動してその周辺にもたらす。
【0035】
図17〜20を特に参照すると、さらに別の代替実施形態に係る変形可能なウィングポート210の特定の細部が説明されている。この変形可能なウィングポート210は、剛性の回転ウィングを有さない代わりに、横方向に伸縮可能な変形可能なウィング250を有する。この変形可能なウィングポート210は、代替本体220を備えている。この代替本体は、その上面について前記好適な実施形態の前記本体20に類似しており、前記好適な実施形態の前記ポート10を参照して上述したものと同様なチャンバー30と、隔壁40と、カラー50と、連結部材60とを支持している。ただし、前記好適な実施形態の前記ウィング70および前記リテーナ80は、この変形可能なウィングポート210に含まれない。その代わり、前記代替本体220内で、当該代替本体220の最下部分および当該変形可能なウィングポート210の最下部分を画成する脚部240の近く、ただし、そこからわずかに離間されて空洞230が形成される。この脚部240は、前記代替本体220の他の部分から、前記空洞230分だけ離間される。前記空洞230は、天井232と下面234との間に実質的に一定の高さを有することが好ましい。この空洞230は、前記代替本体220外側まで横方向に延在する側部開口部235と、前記代替本体220の前記連結部材60と反対側の端部外側まで横方向に延在する端部開口部236とを有する。この端部開口部236は、必要に応じて前記連結部材60と共通の端部に位置させるよう反対側の端部に設けてもよい。前記変形可能なウィング250は、前記空洞230の高さと同様な高さの平面内で形成されるループ252として、前記天井232と前記下面234との間に構成されることが好ましい。このループ252は、内部が中空であり、したがって角(コーナー)で接合された複数の脚部254を伴って形成されることが好ましい。当該変形可能なウィング250は、第1の角256と、第2の角257と、第3の角258と、第4の角259とを含む4つの角を有するよう、略正方形であることが好ましい。前記第2の角257と前記第4の角259との間の距離は、当該変形可能なウィング250の横幅を決定する。この変形可能なウィング250を形成する材料は、拘束されていない状態で元の形状を維持できるよう、変形可能で弾性があることが好ましい。例えば、この変形可能なウィング250は、そのような特性を呈するニッケルチタンなどの金属で形成できる。また、特に前記角256、257、258、259に隣接した位置における前記ループ252の厚さおよび/または幅は、当該ウィング250のそのような弾性のある変形能をさらに促進するよう選択される。特に、このウィング250を形成する前記ループ252を前記角256、257、258、259でより幅狭にすると、前記ループ252が容易に曲がるようにできる。このような狭窄化は、ほとんど(またはすべて)の場合、前記ループ252の高さを実質的に保ちながら厚さを変更して行う。このような幾何学的構成により、前記ループ252は、幅方向に比較的容易に収縮するが、このループ252が常駐する水平平面以外の曲げには比較的おおむね抵抗する。
【0036】
前記変形可能なウィング250は、当該変形可能なウィングポート210が患者体内に埋め込まれた後、前記代替本体220の前記空洞230内に挿入される。この変形可能なウィング250は、単に当該変形可能なウィングポート210の安定性を高めるため提供されるものである。特に、当該変形可能なウィングポート210を望ましい位置に配置した後、前記空洞230の前記端部開口部236は、一般に、当該変形可能なウィングポート210の埋め込み口となった切開部に相対して延在する。その後、前記変形可能なウィング250が前記切開部から、前記端部開口部236内へ挿通される(図17の矢印Fに沿って)。小さな前記切開部を通過できるようにするため、前記変形可能なウィング250は、横方向に幅狭の形態になる(図18の矢印Hに沿って)よう、カニューレまたは他の拘束部材内に入れるなどして拘束される。この状態で、前記変形可能なウィング250は、その全体が前記端部開口部236を通過して前記空洞230内に進入する上で十分小さくなっているため、前記切開部から前記端部開口部236内へ(図18の矢印Gに沿って)差し入れることができる。
【0037】
この変形可能なウィング250が前記空洞230内に完全に入ると、前記第1の角256が当該空洞230の閉塞端部237に当接する。次いで前記側部の角257、259が前記側部開口部235に位置合わせされて、これらの側部開口部235を出て横方向へ弾性的に延出し、横方向に幅広の形態を実現できる(図19の矢印Jに沿って)。前記変形可能なウィング250は、伸縮する弾性材料で形成することが好ましいが、可塑的に変形させて前記端部開口部236を通過させたのち、前記第1の角256が前記空洞の前記閉塞端部237に当接したのちも、前記第2の角257および前記第4の角259が曲がって前記空洞230の前記側部開口部235を貫通しそこから横方向に延出するまで、前記第3の角258を押し続けることにより、横方向に拡張させる(矢印Jに沿って)ことも考えられる。したがって、前記変形可能なウィング250は伸縮性および弾性のものでよいが、永久的に曲げられるものでも若干本発明に従って機能することが可能である。この変形可能なウィング250が曲げ可能に構成されている場合、そのような曲げを生じる上で必要な負荷は、埋め込み後、当該変形可能なウィングポート210の前記隔壁40内へ医療従事者が注射剤を投与するため操作を行う際などに、当該変形可能なウィング250が無視できないほど曲がってしまわないよう、十分大きくすることが好ましい。
【0038】
必要であれば、エンドキャップを設けて前記端部開口部236を閉じ、前記変形可能なウィング250の前記第3の角258をさらに押し込むことができる。このエンドキャップにより、前記変形可能なウィング250をさらに安定させ、前記角258を押圧することで当該変形可能なウィング250の角257、259を横方向にさらに展開させて、当該変形可能なウィングポート210の安定性を全体としてさらに高めることもできる。図17〜19に図示した前記変形可能なウィング250では、拡張時の横幅が、当該変形可能なウィングポート210の前記代替本体220の幅の約2倍となっている。前記変形可能なウィング250にこれ以上の横幅拡張が望まれる場合は、当該変形可能なウィング250をより大きなサイズにするか、あるいは角256、258間の長さより角257、259間の幅の方を広くしたダイヤモンド形状にして、当該変形可能なウィング250を完全に挿入し横方向に拡張する(矢印Jに沿って)準備が整った時点で前記角257、259が図17〜19に示した状態よりさらに延出するようにできる。前記側部開口部250のサイズも、それに対応して前記変形可能なウィング250の特定の幾何学的構成を受容するよう調整することができる。前記変形可能なウィング250は4つの辺(側部)を有するよう示しているが、前記空洞230は異なる種々の数の開口部を有してよく、前記変形可能なウィング250は、望ましい度合いの安定性をもたらすため異なる種々の数の角および脚部を有する多角形であってよい。
【0039】
この変形可能なウィングポート210実施形態において、前記変形可能なウィング250は、付加的な縫合を行う上で好都合な位置を提供する。例えば、前記変形可能なウィングポート210を定位置に縫合してさらに安定させることが望ましい場合は、前記変形可能なウィング250が前記側部開口部235から延出する箇所で前記ループ252の脚部254周囲に縫合を施すことができる。当該変形可能なウィングポート210を取り出すことが望ましい場合は、前記端部開口部236内まで通過して前記第3の角258を把持できる適切な道具が提供可能である。前記本体220が静止した状態で前記第3の角258を引っ張ることにより、前記変形可能なウィング250を前記空洞230から取り出してカニューレまたは他の拘束部材内に引き込み、小さい切開部から効果的に取り出すことができる。次に、前記本体220も同じ小さな切開部から取り出せる。
【0040】
本開示は、本発明の実施用にその好適な実施形態および最良の形態を示すため提供するものである。以上、このように説明した本発明を鑑み、前記好適な実施形態には、本発明の開示の要旨を逸脱しない範囲で、種々の異なる変更(修正)形態が可能であることが明確に理解されるべきである。機能を実行(実施)する手段としての構造が識別(特定)された場合、その識別内容は、指定された前記機能を実行できるすべての構造を含むよう意図されている。本発明の構造は1つに連結(結合)されたものとして識別され、このような表現は、直接1つに連結され若しくは介在構造により1つに連結された構造を含むよう広義に解釈されるべきである。このような連結は、別段の制約がない限り、永続的なものであっても一時的なものであってもよく、また固定された態様であっても、あるいは何らかの形態の装着(結合)を保ちながら枢動、スライド(摺動)、または他の相対運動を可能にする態様であってもよい。
【0041】
産業上の応用性
本発明は、小さい切開部から埋め込むことのできる血管アクセスポートを提供するという産業上の応用性を呈する。
【0042】
本発明の別の目的は、皮下に埋め込み可能で、医療提供者が容易に使用できる血管アクセスポートを提供することである。
【0043】
本発明の別の目的は、皮下に埋め込み可能で、当該アクセス装置の埋め込みによる患者の容姿(外見)の変化を最小限に抑える小型の血管アクセスポートを提供することである。
【0044】
本発明の別の目的は、埋め込み後に安定化されることにより、埋め込み後も初期の埋め込み位置に保たれ、また「ロールオーバー」(転倒)または他の望ましくない位置変化が防止される血管アクセス装置(血管アクセスポート)を提供することである。
【0045】
本発明の別の目的は、皮下への埋め込み後に血管アクセスポートを安定させる方法を提供することである。
【0046】
本発明の別の目的は、利用可能な生体適合性材料から容易に製造でき、容易に埋め込むことができ、種々の医療従事者が使用できる血管アクセスポートを提供することである。
【0047】
産業上の応用性を実証するその他の本発明の目的は、本明細書に含まれる詳細な説明を注意深く読み、添付の図面を検討し、また添付の特許請求の範囲を検討することにより明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、本発明の安定化された埋め込み型血管アクセスポートの斜視図であり、当該アクセスポートは埋め込み前でウィングがその本体に整列した状態にある。
【図2】図2は、図1に示した前記アクセスポートの斜視図であり、当該アクセスポートのウィングは、前記本体に整列した第1の位置から、前記本体に対し傾斜した第2の位置へ向かって回転中である。
【図3】図3は、図1に示した前記アクセスポートの斜視図であるが、前記ウィングは、最終的な展開位置へ完全に回転した後、前記細長い本体に実質的に垂直になっており、縫合糸を使って展開位置に固定された状態にある。
【図4】図4は、図1に示した前記アクセスポートの上面図である。
【図5】図5は、図1に示した前記アクセスポートの側面図である。
【図6】図6は、図1に示した前記アクセスポートの底面図である。
【図7】図7は、図1に示した前記アクセスポートの端面図である。
【図8】図8は、図1に示した前記アクセスポートの全断面図である。
【図9】図9は、図3に示した前記アクセスポートの前記ウィングが完全に展開された状態の上面図である。
【図10】図10は、図9に示した前記アクセスポートの側面図である。
【図11】図11は、図9に示した前記アクセスポートの底面図である。
【図12】図12は、図9に示した前記アクセスポートの端面図である。
【図13】図13は、図1に示した前記アクセスポートの分解図であり、本発明の前記血管アクセス装置の種々の異なる部品がいかに結合されるかを示している。
【図14】図14は、本発明の前記ポートが患者体内の皮下に埋め込まれている状態の斜視図であり、破線では、当該ポートをその最終位置に埋め込む工程が示されており、またシリンジが当該ポートを通じていかに血管構造にアクセスできるかも示されている。
【図15】図15は、図1に示した前記アクセスポートの代替実施形態の底面図であり、当該代替アクセスポートは、この実施形態の本体に枢着された一対のウィングを有する。
【図16】図16は、図15に示したアクセスポートと同様なものの底面図であり、このポートの前記2つのウィングが回転した後の状態にある。
【図17】図17は、本発明の変形可能なウィングポート実施形態の代替本体および変形可能なウィングの断面図であり、前記変形可能なウィングは、当該変形可能なウィングポート内の空洞の外部で示されており、前記変形可能なウィングを挿入する前の状態にある。
【図18】図18は、図17に示した本発明の変形可能なウィングポート実施形態の代替本体および変形可能なウィングと同様なものの断面図であるが、当該変形可能なウィングポートの前記本体の前記空洞に前記変形可能なウィングを挿入する工程の最中である。
【図19】図19は、図17に示した本発明の変形可能なウィングポート実施形態の代替本体および変形可能なウィングと同様なものの全断面図であるが、当該変形可能なウィングポートの前記空洞に前記変形可能なウィングを埋め込み終わった後の状態である。
【図20】図20は、図17〜19の前記変形可能なウィングポートの端面図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、静脈などの血管構造と流通可能に配置する皮下埋め込み型医療装置に関し、この装置自体は、患者の血管構造へ治療製剤を投与するため、シリンジに連結された注射針などで皮膚を貫通してアクセスできる。より具体的には、本発明は、切開部の大きさを最小限にとどめるよう細長い形態を有し、埋め込み後に形状を変化させてより広い幅とより大きな安定性を呈するアクセスポートに関する。
【背景技術】
【0002】
皮下埋め込み型の血管アクセス(バスキュラーアクセス)用装置またはポートは、これまで長年にわたり使用されてきており、頻繁または定期的な治療薬注入または採血を必要とする患者に長期の血管アクセスを提供している。現在、ポートは、セルフシールの隔壁(セプタム)からアクセス可能なチャンバーと、脈管系内に配置されたカテーテルに接続された吐出口とを含む本体を有することが一般的である。前記ポートの基部は、身体に水平に当接するよう意図された当該ポートの略平坦な側部であり、前記隔壁は、一般に皮膚表面へ向かって配置される。これには多数の変形形態が可能である。前記隔壁は、凸型であっても凹型であってもよい。前記本体は、プラスチック、金属、または材料を組み合わせたものであってよい。前記隔壁は、前記基部と直接対向しても、あるいは前記基部に対し角度を成してもよい。
【0003】
現在の慣行において、前記ポートは、簡単な外科的処置により皮下ポケットに埋め込まれる。ポートの外形をより小さくする際に制約の1つとなるのが、体内にポートを配置した後の安定性の問題である。現在使用されているポートは、定位置に縫い留めないと体内で裏返って隔壁が上向きでなく下向きになってしまいアクセス不能になる嫌いがある。ポートが小さいほどこの裏返りの傾向は高まり、また切開部および縫い留め先となるポケットも小さくなって定位置へのポート縫い留めが困難になる。そのため、ポートの埋め込み外形を最小限に抑えながらポートの安定性を向上させる方法が必要とされている。そのような先行技術ポートの1つで、全体として細長い形態を呈し細長い隔壁を具備しているものが、米国特許第6,213,973号に説明されている。このような構成では切開部を若干小さくできるが、この先行技術アクセスポートは安定しないため、裏返りやすく、または望ましくない位置へ回転しやすい。
【0004】
そのため、埋め込み後の安定性および小さな切開部からの挿入に適した小型外形という双方の利点をもたらす血管アクセスポートであって、血管アクセスポートのサイズを最小化し、このような血管アクセスポートの患者への提供に伴う他の悪影響を最小限に抑えるものが必要とされている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では血管アクセスポートを提供し、この血管アクセスポートは、その本体の幅より広くなるよう幅が移行するウィングを独自に含む。これにより、前記ウィングは、前記アクセスポートに安定性をもたらす。
【0006】
最も好適な実施形態において、前記ウィングは細長い構造をしており、前記アクセスポートの本体の下面などに枢着される。前記本体の上面には隔壁に覆われたチャンバーを嵌装でき、前記隔壁は、カラー(つば部)により定位置に保たれる。前記チャンバーは、当該ポート内の連結部材と、それに伴うチューブであって血管構造へつながるチューブとを通じて前記血管構造と流通可能である。前記本体は、通常、細長い形態で、前記ウィングも細長い形態をしている。第1の位置において、前記ウィングは前記本体に整列した状態であり、これにより前記本体の断面輪郭が無視できない程度に拡大してしまっているが、前記細長い本体とともに小さな切開部を通過することはできる。埋め込み後、前記ウィングは(好ましくは最高90°)回転し、これにより当該ウィングの長手寸法が前記本体に対し横方向にもたらされ、前記本体と前記ウィングはともに略「X」字形を形成する。このように、前記ウィングおよび前記本体は安定したプラットフォームを提供して、前記隔壁が皮膚に面し利用可能になるよう前記隔壁の配向(向き)を保つ。前記本体および前記ウィングには、縫合糸を通せる適切な穴部が透設されることが最も好ましい。当該ポートの埋め込み後、このような縫合糸を強く引っ張ると、前記ウィングをその展開位置まで回転させることができる。この状態で前記縫合糸を結ぶと、前記ウィングをその展開位置に保つことができる。この縫合糸は、当該アクセスポートを取り出す際、容易に切断して除去可能である。次いで前記ウィングを元の位置に戻し、当該アクセスポートの埋め込みと逆の態様で、当該アクセスポート全体を取り出し用の小さな切開部から取り出すことができる。代替態様として、当該アクセスポートは、異なる方向に回転して当該アクセスポートを安定させる2若しくはそれ以上の剛性ウィングを有することができる。
【0007】
代替実施形態では、前記本体を細長く成形でき、その内部の、当該本体の下面付近に、端部開口部および少なくとも2つの側部開口部を伴った空洞を有するようにできる。また、弾性のある態様で横方向に伸縮できる変形可能なウィングが提供される。この変形可能なウィングは前記空洞の前記端部開口部より広い幅を有するが、横方向に十分収縮させることにより、前記端部開口部を通過し前記空洞に進入できるようになる。前記変形可能なウィングは、完全に挿入された時点で元の形態に拡張し、または元の形態の幅より広く拡張して、当該ウィングの横幅を広げる。この実施形態では、前記本体がまず埋め込まれる。次に、前記変形可能なウィングが同じ切開部から埋め込まれ、前記本体の前記端部開口部を通じて前記空洞内へ挿入される。前記変形可能なウィングが前記空洞に完全に挿入されると、当該ウィングの横方向の部分が拡張し、当該アクセスポートを使用に備えて有益に安定させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
種々の添付図面では全体にわたり同様な参照番号が同様の部分(部品)を表しており、これらの図面を参照すると、参照番号10は、皮下に埋め込まれるようになっている血管アクセスポートを示しており、当該ポート10の形状を変更すると埋め込み後にこれを安定させることができる。特に、このポート10は、その横方向の安定性を高めるため幅狭の初期配向から幅広の最終配向へと再位置決め可能なウィング70を伴った本体20を有する。これにより、このポート10は、可能な限り侵襲性を軽減する態様で皮膚Kに開けた皮下埋め込み用の小さな切開部Iから埋め込み可能でありながら、「ロールオーバー」(転倒)または他の望ましくない位置変化を生じにくくなる。
【0009】
本発明のポート10の細部は、好適な実施形態に基づき、本質的に、また特に図1〜3および8を参照して説明している。このポート10は、主に、最も好適な形態で細長い本体20から成る。この本体20は、その内部に延在するチャンバー30を含む。このチャンバー30の上層には、隔壁(セプタム)40がある。前記隔壁40は、(シリンジYなどに伴う)注射針が(前記皮膚Kの下層にある)前記隔壁40を貫通して前記チャンバー30にアクセスできるようにし、注射針を抜くと再封鎖する特徴を有している。カラー(つば部)50は、前記隔壁40を取り囲み、前記チャンバー30および前記本体20の上で前記隔壁40を固定する。連結部材60は、前記ポート10側からのインターフェースとして作用し、前記チャンバー30と、静脈Vなどの血管構造との間の流体流通を可能にする(図14)。また、この好適な実施形態によれば、細長いウィング70は、当該ポート10の一部として提供される。この細長いウィング70は、前記本体20の下面21に隣接するなどして、前記本体20に枢動可能に連結されている。最も好適な実施形態では、前記本体20上で前記ウィング70を回転可能に支持するリテーナ80が設けられる。前記ウィング70は、このようにして、前記本体20に整列した第1の位置から、この本体20の長軸に非平行で好ましくはこの本体20に実質的に垂直な第2の位置へ回転することができる。この第2の展開(配備)構成において、当該ポート10は、前記ウィング70の展開前に比較的小さい切開部Iから本体20も前記ウィング70も含めて挿入可能な態様を保ちつつ、横方向の安定性も強化される。
【0010】
より具体的には、また図4〜8および13を特に参照すると、前記本体20の特定の細部が説明されている。前記本体20は、生体適合性で当該ポート10の主要部分の成形に適したものとして選択された実質的に剛性の材料体である。例えば、この本体20は、生体適合性のステンレス鋼、生体適合性のチタン合金、または十分硬質で剛性の生体適合性プラスチック、複合材料、または他の硬質生体適合性材料で成形できる。
【0011】
この本体20は、前記チャンバー30を取り囲んで外周を形成し前記隔壁40およびカラー50を当該本体20上で保持するよう構成されることを条件に、種々の異なる幾何学的外形を有してよい。前記本体20は、長さが幅を超える細長い形態であることが最も好ましい。そのような細長い形態により、前記本体20は、安定性のための比較的大きなサイズを保ちながら、前記皮膚Kの比較的小さな切開部Iから挿入可能になる(図14)。ただし、前記本体20が実現するこのような安定性だけでは、この細長い本体20の長軸に実質的に垂直な1つの横軸の周りの回転に対する安定性がもたらされるだけである(図12の矢印Lに沿った回転に抵抗する)。以下詳述するように展開する前記ウィング70を利用すると、前記細長い本体20とともに横方向に完全な安定性が得られる。代替態様として、前記本体20は細長い形態にも細長くない形態にもでき、さらにより小さい本体20で高度な安定性を可能にするデュアルウィングポート110(図15および16)などの形態により一対のウィング70を設けることもできる。
【0012】
前記細長い本体20の場合、第1の端部24と第2の端部26との間の長さは、対辺28間の幅より2〜3倍大きいことが好ましい。前記本体20は下面21と反対側にある上面22を有し、この上面22と前記下面21との間の前記本体20の高さは一般に前記対辺28間の幅と同様だが、通常それよりわずかに小さいものになる。
【0013】
この好適な実施形態において、前記本体20は前記下面21に凹部23を有し、この凹部23は、前記リテーナ80の一部を受容して前記ウィング70を支持する。縁部(リム)25は、この凹部23を取り囲んで前記ウィング70およびリテーナ80の位置合わせを補助する。トンネル27は、前記本体20の前記第1の端部24付近で、前記上面22から前記対辺28の1つへと斜めに通過している。このトンネル27により、格納位置から展開位置へと前記ウィング70を動かす方法の一環として、以下詳述するように縫合糸Sまたは他の柔軟な糸を通過させることができる。前記本体20は、前記チャンバー30から前記第1の端部24へと延出した孔部29を有する。この孔部29は、前記チャンバー30と前記本体20外部との間の前記連結部材60を通じた流体流通に好適な構造をもたらす。この孔部29は、円柱形で前記本体20の前記下面21と平行に配置されることが好ましい。この孔部29には前記第1の端部24に隣接して段部を設けてよく、これにより当該孔部29に前記連結部材60を嵌合して、当該孔部29と、前記連結部材60内の導管62との間の直径移行を最小限に抑えることができる。
【0014】
前記本体20の種々の表面は、前記端部24、26へ向かってテーパーがかかっていることが好ましく、これにより当該本体20にやや流線形の外観がもたらされ、また、小さい切開部Iからの当該ポート10埋め込みをより困難にし若しくは当該ポート10の埋め込み後に体内構造に不要にひっかかるおそれのある尖った縁部若しくは尖りのない縁部を呈さないようにできる。
【0015】
特に図8を参照すると、前記本体20内の前記チャンバー30の細部が説明されている。このチャンバー30は、注射針が前記隔壁40を通過し、その下にある当該チャンバー30の一部へと到達した際に、薬剤または他の流体製剤の導入先となる領域を画成する。それらの製剤は、このチャンバー30から前記連結部材60を通過し、当該アクセスポート10を装着した血管構造(前記静脈Vなど)へと移動して、患者に有益に投与される。前記チャンバー30は、円柱形の止まり穴(めくら穴)で、前記本体20内で前記上面22に実質的に垂直方向に延在する凹部を形成し、前記下面21およびそれに設けられた前記凹部23に到達する直前で停止することが好ましい。このチャンバー30は、前記本体20の中心に位置合わせし、また前記下面21の前記凹部23に位置合わせすることが好ましい。また、前記チャンバー30は、実質的に平坦な底面32と、この底面32を取り囲む円柱形の側壁34とを有することが好ましい。このチャンバー30の壁は、投薬中、前記シリンジYの注射針(図14)が当該チャンバー30を突き抜けず、前記注射針の先端が当該チャンバー30内に留まるよう、十分硬質な材料で形成される。
【0016】
前記本体20の他の細部には、前記チャンバー30に外接し前記上面22から縦方向に延出したリング36が含まれる。このリング36により、前記隔壁40周囲で前記カラー50が位置合わせされ、前記本体20への前記カラー50の圧入または他の固定が容易になる。環状面38は、前記リング36の内側で前記上面22の一部を画成する。この環状面38は、略環状形態で、前記チャンバー30から前記リング36へ延出している。
【0017】
前記本体20の前記下面21は、前記下面21から垂直に下方へ延出したポスト(支柱)35を含むことが好ましい。このポスト35は、前記ウィング70が最大角度まで回転されて展開位置に移動した時点で、当該ウィング70の縁部(ボーダー)74が当該ポスト35に当接するよう、適切に配置される。このように、このポスト35は前記ウィング70の停止部材として作用し、前記ウィング70の過剰回転を防ぐ。
【0018】
特に図8および13を参照すると、この好適な実施形態に係る前記隔壁40の特定の細部が説明されている。前記隔壁40は、モノリシックな(一体型の)半剛性材料であり、通常、当該隔壁40に障害が生じるまでに、注射針を繰り返し通過させ、かつ何回も再封鎖する上で十分な弾性を有益に呈するシリコンまたは他の材料で形成される。この隔壁40は、前記チャンバー30と、前記リング36と、前記カラー50とにより境界を成す空間と同様な構造を有することが好ましく、これにより、当該隔壁40は、前記チャンバー30の上方端部を密閉し、前記本体20の前記上面22に固定されることが可能になる。
【0019】
特に、この隔壁40は、実質的に平面状の頂部42と、それに対向した実質的に平面状の底部44とを含むことが好ましい。前記頂部42は、必要に応じてわずかに凹型または凸型であってよい。前記隔壁40は、前記頂部42から前記底部44に延在する円柱形の湾曲した外周46を伴った略円柱型であることが好ましい。この外周46は、前記頂部42の直径が前記底部44の直径より小さくなるよう、前記頂部42付近に段部48を含むことが好ましい。前記段部48は前記カラー50の構造と相補的であることにより、さらに、前記隔壁40を前記カラー50に適切に位置合わせし、前記カラー50で前記本体20に固定できるようにしている。
【0020】
この隔壁40は、前記チャンバー30と、前記環状面38と、前記リング36と、前記カラー50との間に当該隔壁40のため設けられる空間よりわずかに大きいことが好ましい。そのため、当該隔壁40は、前記本体20に隣接して配備された状態では、わずかに圧縮される。これにより、この隔壁40は前記頂部42において上方へ若干膨らみ、前記底部44では前記チャンバー30内へと下方へ若干膨らむ。この隔壁40は、前記環状面38上に載置されて前記チャンバー30の上層となる完全に平面状の底部44を有してもよく、また段差を設けて前記チャンバー30内へわずかに延出するようにしてもよい。
【0021】
特に図4〜8および13を参照すると、この好適な実施形態に係る前記カラー50の特定の細部が説明されている。前記カラー50は、前記隔壁40および前記リング36の上方から圧入して前記本体20を固定し、前記本体20と当該カラー50との間で前記隔壁40を捉えるようサイズ調整された剛性のバンドであることが好ましい。前記カラー50には、その中心を貫通する開口部52がある。この開口部52は、前記隔壁40の前記頂部42と同様な直径を有するようサイズ調整される。前記カラー50には脚部54が含まれ、これは、実質的に平面状および環状で、前記リング36のすぐ外側で前記本体20の前記上面22に当接するようになっていることが好ましい。
【0022】
前記カラー50の内輪郭(内部輪郭)56は、前記脚部54から前記開口部52へ延出する。この内輪郭56は、前記本体20の前記リング36と、前記隔壁40の前記段部48とを受容するため種々の移行部を有して、前記カラー50と、前記リング36と、前記隔壁40との間に実質的に間隙のない嵌合がもたらされるようにする。前記内輪郭56は、前記本体20の前記リング36との間に締まりばめを有することにより、前記リング36の上から前記カラー50を前記本体20にしっかり圧入できるよう寸法調整されることが好ましい。同様に、前記カラー50の前記内輪郭56は、前記隔壁40の前記頂部42および前記外周46との間に締まりばめを有することにより、前記カラー50が前記隔壁40を若干圧縮するよう構成されることが好ましい。
【0023】
このカラー50は、前記開口部52から前記脚部54へ下方に延びる流線形の外面58を有する。この流線形の輪郭は、さらに、前記皮膚Kの小さな切開部Iから前記本体20を容易に挿通できるよう役立つ(図14)。
【0024】
特に図8および13を参照すると、この好適な実施形態に係る前記連結部材60の特定の細部が説明されている。この連結部材60は、前記本体20に圧入される別個の構造であるか、または前記本体20に連結されることが好ましく、当該連結部材60と静脈Vまたは他の血管構造との間に延在するチューブTと連結して、当該ポート10と前記静脈Vまたは他の血管構造との間の流路となるインターフェースを提供することができる。前記チューブTは、前記血管構造内へ直接入り込む十分小さなものにでき、または注射針または他の血管構造インターフェースに嵌装できる。
【0025】
前記連結部材60は略円柱型で管状の剛性構造であり、導管62を画成する中空内部を有している。また外面64は、前記本体20の前記第1の端部24からの排出口である前記孔部29に圧入されるよう、円柱形にサイズ調整されることが好ましい。この外面64は、前記チューブTを前記連結部材60に固定する上で役立つリブ65を含むことが好ましい。例えば、まず固定バンドを前記チューブTの外周に配置したのち、前記チューブTを前記連結部材60の前記外面64の外周に配置して、前記固定バンドが前記チューブT外面上で前記連結部材60の前記リブ65間へ移動するまで前記固定バンドを前記本体20へ向かって引っ張ると、前記チューブTを前記連結部材60にしっかり被せ固定することができる。
【0026】
前記連結部材60には、前記本体20内で固定される内端部66と、この内端部66と反対側にあり前記本体20から延出する外端部68とが含まれる。前記リブ65は、前記内端部66より前記外端部68の近くに位置し、好ましくは前記連結部材60の約1/3が前記本体20内に固定され、当該連結部材60の約2/3が前記本体20の外側に延出する。
【0027】
図8〜13を特に参照すると、この好適な実施形態に係る前記ウィング70の特定の細部が説明されている。このウィング70は、前記本体20とは別個に設けられているが前記リテーナ80で前記本体20に枢着された剛性構造であることが好ましい。このウィング70は、格納され折り畳まれた初期配向において当該ポート10の幅を広げないよう、前記本体20の前記下面21と同様な平面形の輪郭を有することが最も好ましい。当該ウィング70は、第1の先端71から第2の先端73へ延在し、これら先端71から73までの長さは、前記本体20の前記第1の端部24から前記第2の端部26までの長さと同様である。このウィング70には、前記本体20の前記下面21と隣接することが好ましい上側75と、この上側75と反対側にあり当該ポート10の最下部分を画成する基底面79とが含まれる。
【0028】
小穴77は、前記基底面79から前記上側75に貫通することが好ましい。この小穴77を設ける箇所では、前記上側75をわずかに切除することにより、前記小穴77に縫合糸Sを通すための、また初期の格納配向から最終的な展開配向へと前記ウィング70を引っ張るためのクリアランス(逃げ)を設けることが好ましい。前記ウィング70には中心穴72が透設されており、これを前記リテーナ80が貫通し、また前記本体20の前記縁部25が通過することにより、当該ウィング70は、前記本体20に対し位置合わせされ、回転可能になる。この好適な実施形態において、前記縁部74は、前記ウィング70の外周(境界)を画成し、全体として前記本体20の外周に合致する。段部76は、前記リテーナ80が前記ウィング70を前記本体20に隣接させて保持できるよう、前記穴72を取り囲んで形成されることが好ましい。ノッチ78は、前記本体20の前記下面21から下方に延出した前記ポスト35の位置に合わせて、前記縁部74の一部に設けられる。このノッチ78により、前記ウィング70は、前記ポスト35が障害となることなく格納位置まで完全に回転することができる。
【0029】
この好適な実施形態において、前記ウィングは、当該ウィング70の展開時に当該ポート10の全体的な幅を広げるよう、横方向(水平)に互いに逆方向へ延びる。あるいは、長さが前記本体20の約半分しかなく横1方向にのみ展開されるウィング、またはそれぞれ反対方向へ展開される2つの別個の短いウィングを設けることにより、若干の利点がもたらされる可能性があり、異なる実施形態は、異なる度合いの安定性および複雑度、そして他の独特の属性を提供する。
【0030】
特に図8および13を参照すると、この好適な実施形態に係る前記リテーナ80の特定の細部が説明されている。このリテーナ80は、前記本体20の前記下面21の前記凹部23への圧入により前記ポート10に連結される剛体であることが好ましい。このリテーナ80には、前記凹部23にしっかり嵌入されるようサイズ調整された円柱形の中央ディスク82が含まれる。フランジ84は前記中央ディスク82の下にあり、このフランジ84の直径は、前記中央ディスク82の直径より大きく、前記ウィング70の前記段部76に嵌入する上で十分大きく、前記ウィング70の前記穴72の直径を超える。前記リテーナ80の下面86は、前記ウィング70前記基底面79と同一平面上になるよう構成されている。前記リテーナ80を配備すると、前記ウィング70は、自由に回転できる状態になるが、前記ウィング70の回転軸に沿った前記本体20に対する平行移動は制限される。
【0031】
図15および16を特に参照すると、本発明の代替実施形態に係るデュアルウィングポート110の細部が説明されている。前記デュアルウィングポート110の本体20(図16)は、上述し図1〜14に示した単一のウィング70の代わりに一対のウィング120および130を回転可能に前記本体20へ取り付けることができるよう、前記凹部23および前記縁部25がわずかにサイズ調整される可能性があるという点を除き、前記ポート10の前記本体20と同一であることが好ましい。
【0032】
このデュアルウィングポート110には、第1のウィング120および第2のウィング130が含まれ、これらはそれぞれ前記本体20に枢着されている。これらのウィング120、130は、それぞれ細長い形態の別個の剛性構造であり、それぞれ前記好適な実施形態の前記リテーナ40と同様なリテーナ140により前記本体20に固定されている。可能性として、前記リテーナ140は、前記リテーナ140と前記本体20との間に前記2つのウィング120、130を挟持して受容するため、その中心軸方向に前記リテーナ40よりやや長いことが考えられる。
【0033】
前記ウィング120、130は、共通の平面内において、当該ウィング120、130の先端付近で少なくとも一部互いに角度を成して配向されることが好ましい。前記リテーナ140付近において、前記第2のウィング130は、前記第1のウィング120の下になるよう、前記第1のウィング120より前記リテーナ140の下面に近い位置になることが好ましい。前記ウィング120、130の各々の中央部分は環状形態であることが好ましく、また前記第1のウィング120は前記第2のウィング130の上方になるよう構成され、前記第2のウィング130は前記第1のウィング120の下方になるよう構成されていることが好ましい。前記ウィング120、130は、その環部から放射方向へ延出するに伴い段差が設けられ、前記第1のウィング120にはわずかに下方への段差、前記第2のウィング130にはわずかに上方への段差が付けられて、双方の前記ウィング120、130は、環状の中央部分から離れるほど厚みが増す。そのため、これらのウィング120、130は共通の厚みを有し、前記リテーナ140に隣接した前記環状の中央部分を除くすべての部分において共通の平面内に位置する。
【0034】
前記ウィング120、130は、逆方向に回転するよう構成されることが好ましい。特に、前記第1のウィング120は、(図15および16の矢印Dに沿って)時計回りに回転するよう構成されることが好ましい。これに対し、前記第2のウィング130は、(図15および16の矢印Eに沿って)反時計回りに回転するよう構成されることが好ましい。これらウィング120、130は、約60°回転した後に他方のウィング120、130に当接することにより、それぞれ互いの停止部材として作用し他方のウィング130、120の回転を終了させるよう構成されることが好ましい。回転が完了すると、前記ウィング120、130の双方および前記細長い本体20は、当該デュアルウィングポート110の安定性を高める6つの点を協動してその周辺にもたらす。
【0035】
図17〜20を特に参照すると、さらに別の代替実施形態に係る変形可能なウィングポート210の特定の細部が説明されている。この変形可能なウィングポート210は、剛性の回転ウィングを有さない代わりに、横方向に伸縮可能な変形可能なウィング250を有する。この変形可能なウィングポート210は、代替本体220を備えている。この代替本体は、その上面について前記好適な実施形態の前記本体20に類似しており、前記好適な実施形態の前記ポート10を参照して上述したものと同様なチャンバー30と、隔壁40と、カラー50と、連結部材60とを支持している。ただし、前記好適な実施形態の前記ウィング70および前記リテーナ80は、この変形可能なウィングポート210に含まれない。その代わり、前記代替本体220内で、当該代替本体220の最下部分および当該変形可能なウィングポート210の最下部分を画成する脚部240の近く、ただし、そこからわずかに離間されて空洞230が形成される。この脚部240は、前記代替本体220の他の部分から、前記空洞230分だけ離間される。前記空洞230は、天井232と下面234との間に実質的に一定の高さを有することが好ましい。この空洞230は、前記代替本体220外側まで横方向に延在する側部開口部235と、前記代替本体220の前記連結部材60と反対側の端部外側まで横方向に延在する端部開口部236とを有する。この端部開口部236は、必要に応じて前記連結部材60と共通の端部に位置させるよう反対側の端部に設けてもよい。前記変形可能なウィング250は、前記空洞230の高さと同様な高さの平面内で形成されるループ252として、前記天井232と前記下面234との間に構成されることが好ましい。このループ252は、内部が中空であり、したがって角(コーナー)で接合された複数の脚部254を伴って形成されることが好ましい。当該変形可能なウィング250は、第1の角256と、第2の角257と、第3の角258と、第4の角259とを含む4つの角を有するよう、略正方形であることが好ましい。前記第2の角257と前記第4の角259との間の距離は、当該変形可能なウィング250の横幅を決定する。この変形可能なウィング250を形成する材料は、拘束されていない状態で元の形状を維持できるよう、変形可能で弾性があることが好ましい。例えば、この変形可能なウィング250は、そのような特性を呈するニッケルチタンなどの金属で形成できる。また、特に前記角256、257、258、259に隣接した位置における前記ループ252の厚さおよび/または幅は、当該ウィング250のそのような弾性のある変形能をさらに促進するよう選択される。特に、このウィング250を形成する前記ループ252を前記角256、257、258、259でより幅狭にすると、前記ループ252が容易に曲がるようにできる。このような狭窄化は、ほとんど(またはすべて)の場合、前記ループ252の高さを実質的に保ちながら厚さを変更して行う。このような幾何学的構成により、前記ループ252は、幅方向に比較的容易に収縮するが、このループ252が常駐する水平平面以外の曲げには比較的おおむね抵抗する。
【0036】
前記変形可能なウィング250は、当該変形可能なウィングポート210が患者体内に埋め込まれた後、前記代替本体220の前記空洞230内に挿入される。この変形可能なウィング250は、単に当該変形可能なウィングポート210の安定性を高めるため提供されるものである。特に、当該変形可能なウィングポート210を望ましい位置に配置した後、前記空洞230の前記端部開口部236は、一般に、当該変形可能なウィングポート210の埋め込み口となった切開部に相対して延在する。その後、前記変形可能なウィング250が前記切開部から、前記端部開口部236内へ挿通される(図17の矢印Fに沿って)。小さな前記切開部を通過できるようにするため、前記変形可能なウィング250は、横方向に幅狭の形態になる(図18の矢印Hに沿って)よう、カニューレまたは他の拘束部材内に入れるなどして拘束される。この状態で、前記変形可能なウィング250は、その全体が前記端部開口部236を通過して前記空洞230内に進入する上で十分小さくなっているため、前記切開部から前記端部開口部236内へ(図18の矢印Gに沿って)差し入れることができる。
【0037】
この変形可能なウィング250が前記空洞230内に完全に入ると、前記第1の角256が当該空洞230の閉塞端部237に当接する。次いで前記側部の角257、259が前記側部開口部235に位置合わせされて、これらの側部開口部235を出て横方向へ弾性的に延出し、横方向に幅広の形態を実現できる(図19の矢印Jに沿って)。前記変形可能なウィング250は、伸縮する弾性材料で形成することが好ましいが、可塑的に変形させて前記端部開口部236を通過させたのち、前記第1の角256が前記空洞の前記閉塞端部237に当接したのちも、前記第2の角257および前記第4の角259が曲がって前記空洞230の前記側部開口部235を貫通しそこから横方向に延出するまで、前記第3の角258を押し続けることにより、横方向に拡張させる(矢印Jに沿って)ことも考えられる。したがって、前記変形可能なウィング250は伸縮性および弾性のものでよいが、永久的に曲げられるものでも若干本発明に従って機能することが可能である。この変形可能なウィング250が曲げ可能に構成されている場合、そのような曲げを生じる上で必要な負荷は、埋め込み後、当該変形可能なウィングポート210の前記隔壁40内へ医療従事者が注射剤を投与するため操作を行う際などに、当該変形可能なウィング250が無視できないほど曲がってしまわないよう、十分大きくすることが好ましい。
【0038】
必要であれば、エンドキャップを設けて前記端部開口部236を閉じ、前記変形可能なウィング250の前記第3の角258をさらに押し込むことができる。このエンドキャップにより、前記変形可能なウィング250をさらに安定させ、前記角258を押圧することで当該変形可能なウィング250の角257、259を横方向にさらに展開させて、当該変形可能なウィングポート210の安定性を全体としてさらに高めることもできる。図17〜19に図示した前記変形可能なウィング250では、拡張時の横幅が、当該変形可能なウィングポート210の前記代替本体220の幅の約2倍となっている。前記変形可能なウィング250にこれ以上の横幅拡張が望まれる場合は、当該変形可能なウィング250をより大きなサイズにするか、あるいは角256、258間の長さより角257、259間の幅の方を広くしたダイヤモンド形状にして、当該変形可能なウィング250を完全に挿入し横方向に拡張する(矢印Jに沿って)準備が整った時点で前記角257、259が図17〜19に示した状態よりさらに延出するようにできる。前記側部開口部250のサイズも、それに対応して前記変形可能なウィング250の特定の幾何学的構成を受容するよう調整することができる。前記変形可能なウィング250は4つの辺(側部)を有するよう示しているが、前記空洞230は異なる種々の数の開口部を有してよく、前記変形可能なウィング250は、望ましい度合いの安定性をもたらすため異なる種々の数の角および脚部を有する多角形であってよい。
【0039】
この変形可能なウィングポート210実施形態において、前記変形可能なウィング250は、付加的な縫合を行う上で好都合な位置を提供する。例えば、前記変形可能なウィングポート210を定位置に縫合してさらに安定させることが望ましい場合は、前記変形可能なウィング250が前記側部開口部235から延出する箇所で前記ループ252の脚部254周囲に縫合を施すことができる。当該変形可能なウィングポート210を取り出すことが望ましい場合は、前記端部開口部236内まで通過して前記第3の角258を把持できる適切な道具が提供可能である。前記本体220が静止した状態で前記第3の角258を引っ張ることにより、前記変形可能なウィング250を前記空洞230から取り出してカニューレまたは他の拘束部材内に引き込み、小さい切開部から効果的に取り出すことができる。次に、前記本体220も同じ小さな切開部から取り出せる。
【0040】
本開示は、本発明の実施用にその好適な実施形態および最良の形態を示すため提供するものである。以上、このように説明した本発明を鑑み、前記好適な実施形態には、本発明の開示の要旨を逸脱しない範囲で、種々の異なる変更(修正)形態が可能であることが明確に理解されるべきである。機能を実行(実施)する手段としての構造が識別(特定)された場合、その識別内容は、指定された前記機能を実行できるすべての構造を含むよう意図されている。本発明の構造は1つに連結(結合)されたものとして識別され、このような表現は、直接1つに連結され若しくは介在構造により1つに連結された構造を含むよう広義に解釈されるべきである。このような連結は、別段の制約がない限り、永続的なものであっても一時的なものであってもよく、また固定された態様であっても、あるいは何らかの形態の装着(結合)を保ちながら枢動、スライド(摺動)、または他の相対運動を可能にする態様であってもよい。
【0041】
産業上の応用性
本発明は、小さい切開部から埋め込むことのできる血管アクセスポートを提供するという産業上の応用性を呈する。
【0042】
本発明の別の目的は、皮下に埋め込み可能で、医療提供者が容易に使用できる血管アクセスポートを提供することである。
【0043】
本発明の別の目的は、皮下に埋め込み可能で、当該アクセス装置の埋め込みによる患者の容姿(外見)の変化を最小限に抑える小型の血管アクセスポートを提供することである。
【0044】
本発明の別の目的は、埋め込み後に安定化されることにより、埋め込み後も初期の埋め込み位置に保たれ、また「ロールオーバー」(転倒)または他の望ましくない位置変化が防止される血管アクセス装置(血管アクセスポート)を提供することである。
【0045】
本発明の別の目的は、皮下への埋め込み後に血管アクセスポートを安定させる方法を提供することである。
【0046】
本発明の別の目的は、利用可能な生体適合性材料から容易に製造でき、容易に埋め込むことができ、種々の医療従事者が使用できる血管アクセスポートを提供することである。
【0047】
産業上の応用性を実証するその他の本発明の目的は、本明細書に含まれる詳細な説明を注意深く読み、添付の図面を検討し、また添付の特許請求の範囲を検討することにより明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、本発明の安定化された埋め込み型血管アクセスポートの斜視図であり、当該アクセスポートは埋め込み前でウィングがその本体に整列した状態にある。
【図2】図2は、図1に示した前記アクセスポートの斜視図であり、当該アクセスポートのウィングは、前記本体に整列した第1の位置から、前記本体に対し傾斜した第2の位置へ向かって回転中である。
【図3】図3は、図1に示した前記アクセスポートの斜視図であるが、前記ウィングは、最終的な展開位置へ完全に回転した後、前記細長い本体に実質的に垂直になっており、縫合糸を使って展開位置に固定された状態にある。
【図4】図4は、図1に示した前記アクセスポートの上面図である。
【図5】図5は、図1に示した前記アクセスポートの側面図である。
【図6】図6は、図1に示した前記アクセスポートの底面図である。
【図7】図7は、図1に示した前記アクセスポートの端面図である。
【図8】図8は、図1に示した前記アクセスポートの全断面図である。
【図9】図9は、図3に示した前記アクセスポートの前記ウィングが完全に展開された状態の上面図である。
【図10】図10は、図9に示した前記アクセスポートの側面図である。
【図11】図11は、図9に示した前記アクセスポートの底面図である。
【図12】図12は、図9に示した前記アクセスポートの端面図である。
【図13】図13は、図1に示した前記アクセスポートの分解図であり、本発明の前記血管アクセス装置の種々の異なる部品がいかに結合されるかを示している。
【図14】図14は、本発明の前記ポートが患者体内の皮下に埋め込まれている状態の斜視図であり、破線では、当該ポートをその最終位置に埋め込む工程が示されており、またシリンジが当該ポートを通じていかに血管構造にアクセスできるかも示されている。
【図15】図15は、図1に示した前記アクセスポートの代替実施形態の底面図であり、当該代替アクセスポートは、この実施形態の本体に枢着された一対のウィングを有する。
【図16】図16は、図15に示したアクセスポートと同様なものの底面図であり、このポートの前記2つのウィングが回転した後の状態にある。
【図17】図17は、本発明の変形可能なウィングポート実施形態の代替本体および変形可能なウィングの断面図であり、前記変形可能なウィングは、当該変形可能なウィングポート内の空洞の外部で示されており、前記変形可能なウィングを挿入する前の状態にある。
【図18】図18は、図17に示した本発明の変形可能なウィングポート実施形態の代替本体および変形可能なウィングと同様なものの断面図であるが、当該変形可能なウィングポートの前記本体の前記空洞に前記変形可能なウィングを挿入する工程の最中である。
【図19】図19は、図17に示した本発明の変形可能なウィングポート実施形態の代替本体および変形可能なウィングと同様なものの全断面図であるが、当該変形可能なウィングポートの前記空洞に前記変形可能なウィングを埋め込み終わった後の状態である。
【図20】図20は、図17〜19の前記変形可能なウィングポートの端面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定化された埋め込み型アクセスポートであって、
凹部を有する本体であって、
前記凹部は、血管構造と流体流通させるようになっている、前記本体と、
前記凹部の上部を覆う隔壁であって、
前記隔壁は、注射針が当該隔壁を貫通できるようなっており、注射針の引き抜き後に再封鎖するようになっている、前記隔壁と、
前記本体に枢着された少なくとも1つの細長いウィングと
を組み合わせて有する、安定化された埋め込み型アクセスポート。
【請求項2】
請求項1記載のポートにおいて、前記本体は、全幅を超える長さを有する細長い形態である。
【請求項3】
請求項2記載のポートにおいて、前記細長いウィングは、前記本体に対し少なくとも2つの別個の位置を有し、当該位置は、前記本体に対し第2の位置より整列した状態になる第1の位置と、前記ウィングの端部が前記本体の側部を越え横方向へ延出した状態になる第2の位置とを含むものである。
【請求項4】
請求項3記載のポートにおいて、前記ウィングおよび前記本体の双方は、柔軟な糸を通すことのできる穴部を含むものである。
【請求項5】
請求項3記載のポートにおいて、前記ウィングは前記本体の下に配向され、前記ウィングが当該ポートの最下部分を画成するものである。
【請求項6】
請求項5記載のポートにおいて、前記ウィングに隣接した前記本体の前記下面からは停止ポスト(支柱)が延出し、当該ポストは、前記ウィングが前記ポストを越えて回転するのを防ぐようになっているものである。
【請求項7】
請求項1記載のポートにおいて、前記ポートは少なくとも2つの細長いウィングを含み、前記少なくとも2つの細長いウィングの各々は、前記本体に枢着されているものである。
【請求項8】
請求項7記載のポートにおいて、前記少なくとも2つの細長いウィングは、前記本体に対してそれぞれ異なる方向に回転するようになっているものである。
【請求項9】
請求項8記載のポートにおいて、前記少なくとも2つの細長いウィングは、前記本体の前記下面の下で共通の平面を共有する相補的形態を呈するよう成形されているため、当該ポートの最下面は、前記少なくとも細長いウィングの各々の一部により画成されるものである。
【請求項10】
修正可能な平面形の機能を備えた埋め込み型皮下血管アクセス装置であって、
凹部を有する本体であって、
前記凹部は、血管構造と流体流通させるようになっている、前記本体と、
前記凹部の上部を覆う隔壁であって、
前記隔壁は、当該隔壁を注射針が貫通できるようなっており、注射針の引き抜き後に再封鎖するようになっている、前記隔壁と、
前記本体の幅を超えるよう横幅が調整可能な可変の横方向寸法を有するようになっている少なくとも1つのウィングであって、当該ウィングが横方向へ延出して前記アクセス装置を安定させる状態で前記本体に取り付けられるようになっている、前記少なくとも1つのウィングと
を組み合わせて有する、埋め込み型皮下血管アクセス装置。
【請求項11】
請求項10記載のアクセス装置において、前記少なくとも1つのウィングは、前記本体に枢着された少なくとも1つの細長い剛性ウィングを含み、当該細長い剛性ウィングは、当該アクセス装置の埋め込み中は、埋め込み方向に整列するようになっており、当該少なくとも1つの細長い剛性ウィングの回転後は、埋め込み方向と非平行に延出するようになっているものである。
【請求項12】
請求項11記載のアクセス装置において、前記少なくとも1つの細長い剛性ウィングは、前記本体の中心点に連結されるものである。
【請求項13】
請求項12記載のアクセス装置において、前記少なくとも1つの細長い剛性ウィングは、前記凹部および前記隔壁と反対側の前記本体の側部において、前記本体に連結されるものである。
【請求項14】
請求項12記載のアクセス装置において、前記ウィングは少なくとも2つの細長い剛性ウィングを含み、当該2つの細長い剛性ウィングは、前記本体に対し枢動でき、また相互に枢動できるよう、前記本体にそれぞれ枢着されるものである。
【請求項15】
請求項10記載のアクセス装置において、前記ウィングは、横方向に幅狭の形態および横方向に幅広の形態を呈する少なくとも1つの変形可能なウィングを含み、前記変形可能なウィングは、前記横方向に幅狭の形態と前記横方向に幅広の形態との間で移行するようになっており、前記横方向に幅広の形態は、前記本体の幅より幅広であるものである。
【請求項16】
請求項15記載のアクセス装置において、前記本体は、その内部に空洞を含み、前記空洞は、少なくとも1つの端部開口部と、互いに略対向する2つの側部開口部とを通じて前記本体の外部へ開放されており、前記空洞は、前記少なくとも1つの変形可能なウィングの高さと少なくとも同じ高さを有し、前記空洞は、前記変形可能なウィングの一部が前記空洞の前記側部開口部から延出する状態で、前記変形可能なウィングを内部に受容するようになっているものである。
【請求項17】
請求項16記載のアクセス装置において、前記変形可能なウィングは、角(コーナー)で接合された4つの別個の辺(側部)を伴ったループとして形成され、前記ループの対角間の距離は、前記変形可能なウィングが前記横方向に幅広の形態である場合、前記本体の幅より大きくなり、前記ループの対角間の距離は、前記変形可能なウィングが前記横方向に幅狭の形態である場合、前記本体の幅より小さくなり、前記変形可能なウィングは、前記幅狭の形態から前記幅広の形態へ弾性的に移行するものである。
【請求項18】
埋め込み型皮下アクセスポートを安定させる方法であって、
アクセスポートを提供する工程であって、当該アクセスポートは、血管構造と流体流通させるようになっている凹部を内部に伴った本体と、前記凹部の上部を覆う隔壁であって、当該隔壁を注射針が貫通できるようになっており、注射針の引き抜き後に再封鎖するようになっている、前記隔壁と、前記本体の幅を超える横方向寸法を有する少なくとも1つのウィングであって、当該ウィングが横方向へ延出して前記アクセスポートを安定させる状態で前記本体に取り付けられるようになっている、前記少なくとも1つのウィングとを有する、前記提供する工程と、
少なくとも前記本体と同じだけ幅狭の第1の幅から、前記本体より幅広の第2の幅へ、前記ウィングを拡張させる工程と
を含む方法。
【請求項19】
請求項18記載の方法において、前記提供する工程は、細長い剛性ウィングとして前記少なくとも1つのウィングを構成する工程を含み、
前記拡張する工程は、前記細長い剛性ウィングを回転させる工程を含むものである。
【請求項20】
請求項18記載の方法において、前記提供する工程は、変形可能なウィングとして前記少なくとも1つのウィングを構成し、空洞であって、当該空洞に通じる端部開口部および2つの側部開口部を有する空洞を内部に含むよう前記本体を構成する工程を含み、
前記拡張する工程は、前記変形可能なウィングの幅を収縮させ、前記端部開口部から前記空洞に前記変形可能なウィングを挿入し、前記本体の前記空洞の側部開口部の外側へ前記変形可能なウィングを少なくとも部分的に拡張させる工程を含むものである。
【請求項1】
安定化された埋め込み型アクセスポートであって、
凹部を有する本体であって、
前記凹部は、血管構造と流体流通させるようになっている、前記本体と、
前記凹部の上部を覆う隔壁であって、
前記隔壁は、注射針が当該隔壁を貫通できるようなっており、注射針の引き抜き後に再封鎖するようになっている、前記隔壁と、
前記本体に枢着された少なくとも1つの細長いウィングと
を組み合わせて有する、安定化された埋め込み型アクセスポート。
【請求項2】
請求項1記載のポートにおいて、前記本体は、全幅を超える長さを有する細長い形態である。
【請求項3】
請求項2記載のポートにおいて、前記細長いウィングは、前記本体に対し少なくとも2つの別個の位置を有し、当該位置は、前記本体に対し第2の位置より整列した状態になる第1の位置と、前記ウィングの端部が前記本体の側部を越え横方向へ延出した状態になる第2の位置とを含むものである。
【請求項4】
請求項3記載のポートにおいて、前記ウィングおよび前記本体の双方は、柔軟な糸を通すことのできる穴部を含むものである。
【請求項5】
請求項3記載のポートにおいて、前記ウィングは前記本体の下に配向され、前記ウィングが当該ポートの最下部分を画成するものである。
【請求項6】
請求項5記載のポートにおいて、前記ウィングに隣接した前記本体の前記下面からは停止ポスト(支柱)が延出し、当該ポストは、前記ウィングが前記ポストを越えて回転するのを防ぐようになっているものである。
【請求項7】
請求項1記載のポートにおいて、前記ポートは少なくとも2つの細長いウィングを含み、前記少なくとも2つの細長いウィングの各々は、前記本体に枢着されているものである。
【請求項8】
請求項7記載のポートにおいて、前記少なくとも2つの細長いウィングは、前記本体に対してそれぞれ異なる方向に回転するようになっているものである。
【請求項9】
請求項8記載のポートにおいて、前記少なくとも2つの細長いウィングは、前記本体の前記下面の下で共通の平面を共有する相補的形態を呈するよう成形されているため、当該ポートの最下面は、前記少なくとも細長いウィングの各々の一部により画成されるものである。
【請求項10】
修正可能な平面形の機能を備えた埋め込み型皮下血管アクセス装置であって、
凹部を有する本体であって、
前記凹部は、血管構造と流体流通させるようになっている、前記本体と、
前記凹部の上部を覆う隔壁であって、
前記隔壁は、当該隔壁を注射針が貫通できるようなっており、注射針の引き抜き後に再封鎖するようになっている、前記隔壁と、
前記本体の幅を超えるよう横幅が調整可能な可変の横方向寸法を有するようになっている少なくとも1つのウィングであって、当該ウィングが横方向へ延出して前記アクセス装置を安定させる状態で前記本体に取り付けられるようになっている、前記少なくとも1つのウィングと
を組み合わせて有する、埋め込み型皮下血管アクセス装置。
【請求項11】
請求項10記載のアクセス装置において、前記少なくとも1つのウィングは、前記本体に枢着された少なくとも1つの細長い剛性ウィングを含み、当該細長い剛性ウィングは、当該アクセス装置の埋め込み中は、埋め込み方向に整列するようになっており、当該少なくとも1つの細長い剛性ウィングの回転後は、埋め込み方向と非平行に延出するようになっているものである。
【請求項12】
請求項11記載のアクセス装置において、前記少なくとも1つの細長い剛性ウィングは、前記本体の中心点に連結されるものである。
【請求項13】
請求項12記載のアクセス装置において、前記少なくとも1つの細長い剛性ウィングは、前記凹部および前記隔壁と反対側の前記本体の側部において、前記本体に連結されるものである。
【請求項14】
請求項12記載のアクセス装置において、前記ウィングは少なくとも2つの細長い剛性ウィングを含み、当該2つの細長い剛性ウィングは、前記本体に対し枢動でき、また相互に枢動できるよう、前記本体にそれぞれ枢着されるものである。
【請求項15】
請求項10記載のアクセス装置において、前記ウィングは、横方向に幅狭の形態および横方向に幅広の形態を呈する少なくとも1つの変形可能なウィングを含み、前記変形可能なウィングは、前記横方向に幅狭の形態と前記横方向に幅広の形態との間で移行するようになっており、前記横方向に幅広の形態は、前記本体の幅より幅広であるものである。
【請求項16】
請求項15記載のアクセス装置において、前記本体は、その内部に空洞を含み、前記空洞は、少なくとも1つの端部開口部と、互いに略対向する2つの側部開口部とを通じて前記本体の外部へ開放されており、前記空洞は、前記少なくとも1つの変形可能なウィングの高さと少なくとも同じ高さを有し、前記空洞は、前記変形可能なウィングの一部が前記空洞の前記側部開口部から延出する状態で、前記変形可能なウィングを内部に受容するようになっているものである。
【請求項17】
請求項16記載のアクセス装置において、前記変形可能なウィングは、角(コーナー)で接合された4つの別個の辺(側部)を伴ったループとして形成され、前記ループの対角間の距離は、前記変形可能なウィングが前記横方向に幅広の形態である場合、前記本体の幅より大きくなり、前記ループの対角間の距離は、前記変形可能なウィングが前記横方向に幅狭の形態である場合、前記本体の幅より小さくなり、前記変形可能なウィングは、前記幅狭の形態から前記幅広の形態へ弾性的に移行するものである。
【請求項18】
埋め込み型皮下アクセスポートを安定させる方法であって、
アクセスポートを提供する工程であって、当該アクセスポートは、血管構造と流体流通させるようになっている凹部を内部に伴った本体と、前記凹部の上部を覆う隔壁であって、当該隔壁を注射針が貫通できるようになっており、注射針の引き抜き後に再封鎖するようになっている、前記隔壁と、前記本体の幅を超える横方向寸法を有する少なくとも1つのウィングであって、当該ウィングが横方向へ延出して前記アクセスポートを安定させる状態で前記本体に取り付けられるようになっている、前記少なくとも1つのウィングとを有する、前記提供する工程と、
少なくとも前記本体と同じだけ幅狭の第1の幅から、前記本体より幅広の第2の幅へ、前記ウィングを拡張させる工程と
を含む方法。
【請求項19】
請求項18記載の方法において、前記提供する工程は、細長い剛性ウィングとして前記少なくとも1つのウィングを構成する工程を含み、
前記拡張する工程は、前記細長い剛性ウィングを回転させる工程を含むものである。
【請求項20】
請求項18記載の方法において、前記提供する工程は、変形可能なウィングとして前記少なくとも1つのウィングを構成し、空洞であって、当該空洞に通じる端部開口部および2つの側部開口部を有する空洞を内部に含むよう前記本体を構成する工程を含み、
前記拡張する工程は、前記変形可能なウィングの幅を収縮させ、前記端部開口部から前記空洞に前記変形可能なウィングを挿入し、前記本体の前記空洞の側部開口部の外側へ前記変形可能なウィングを少なくとも部分的に拡張させる工程を含むものである。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2009−536040(P2009−536040A)
【公表日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−550384(P2008−550384)
【出願日】平成19年1月10日(2007.1.10)
【国際出願番号】PCT/US2007/000662
【国際公開番号】WO2007/082003
【国際公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(509076823)ステルス セラピューティクス、インク. (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月10日(2007.1.10)
【国際出願番号】PCT/US2007/000662
【国際公開番号】WO2007/082003
【国際公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(509076823)ステルス セラピューティクス、インク. (1)
【Fターム(参考)】
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