説明

安定化したインターフェロン液体製剤

インターフェロン(IFN)を含む安定化した無HSA液体医薬組成物について記載されている。この組成物は、緩衝液、アミノ酸及び抗酸化物質を含む溶液である。インターフェロンは、ヒト組み換えIFN-ベータであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターフェロンを含む安定化した無HSA液体医薬組成物に関するものであり、より詳細には、緩衝液、アミノ酸、及び抗酸化物質とを含むインターフェロン-ベータ製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
インターフェロンはサイトカインである。すなわち、細胞間でメッセージを伝達し、免疫系で極めて重要な役割を果たす可溶性タンパク質である。免疫系での役割は、感染を起こす微生物を破壊するのを助け、その結果として起こるあらゆる損傷を修復するというものである。インターフェロンは、感染した細胞から自然に分泌される物質であり、1957年に初めて同定された。その名称は、インターフェロンがウイルスの複製と産生を“インターフェアする(阻止する)”という事実に由来する。
【0003】
インターフェロンは、抗ウイルス活性と抗増殖活性の両方を示す。天然のヒト・インターフェロンは、生化学特性と免疫特性に基づいて3つの主要なクラスに分類されている。すなわち、インターフェロンα(白血球)、インターフェロンβ(線維芽細胞)、インターフェロンγ(免疫)である。インターフェロンαは、現在アメリカ合衆国その他の国々で、毛様細胞性白血病、性病いぼ、カポジ肉腫(後天性免疫不全症候群(エイズ)患者で一般に見られる癌)、慢性非A型肝炎、慢性非B型肝炎の治療に用いることが認められている。
【0004】
さらに、インターフェロン(IFN)は、ウイルスの感染に応答した身体により産生される糖タンパク質である。インターフェロンは、防護された細胞内でのウイルスの増殖を抑制する。IFNは低分子量のタンパク質からなり、作用は極めて非特異的である。すなわち1つのウイルスによって誘導されるIFNが、広い範囲の他のウイルスにも有効である。しかしIFNは種特異的である。すなわち1つの種が産生するIFNは、同じ種の細胞、または密接な関係のある種の細胞における抗ウイルス活性だけを刺激する。IFNは、その潜在的な抗腫瘍活性と抗ウイルス活性が研究された最初のサイトカイン群である。
【0005】
3つの主要なIFNは、IFN-α、IFN-β、IFN-γと呼ばれる。中心的なこれらのIFNは、最初は、出所となる細胞(白血球、線維芽細胞、T細胞)によって分類された。しかしいくつかのタイプが1つの細胞で産生されているらしいことが明確になってきた。そこで現在では、白血球IFNはIFN-αと呼ばれ、線維芽細胞IFNはIFN-βと呼ばれ、T細胞IFNはIFN-γと呼ばれている。第4のタイプのIFNとして、(バーキット・リンパ腫に由来する)“ナマルワ”細胞系で産生されるリンパ芽球腫様IFNも存在している。この細胞系は、白血球IFNと線維芽細胞IFNの両方の混合物を産生するようである。
【0006】
インターフェロン単位またはインターフェロンの国際単位(UまたはIU(国際単位を意味する))が、細胞の50%をウイルスによる損傷から保護するのに必要な量として定義されるIFN活性の1つの指標であることが報告されている。生物活性の測定に使用できるアッセイは、細胞変性効果抑制アッセイである(Rubinstein他、1981年;Familletti, P.C.他、1981年)。インターフェロンのためのこの抗ウイルス・アッセイでは、約1単位/mlのインターフェロンが、50%の細胞変性効果を生じさせるのに必要な量である。単位は、国立衛生研究所から提供されるHu-IFN-ベータの国際基準に対して決定される(Pestka, S.、1986年)。
【0007】
どのクラスのIFNも、異なるいくつかのタイプを含んでいる。IFN-βとIFN-γは、それぞれ単一の遺伝子の産物である。
【0008】
IFN-αに分類されるタンパク質は最も多彩なグループであり、約15のタイプを含んでいる。第9染色体上にIFN-α遺伝子のクラスターが存在していて、そこには少なくとも23個のメンバーが含まれている。そのうちの15個は活性であり、転写される。成熟IFN-αはグリコシル化されない。
【0009】
IFN-αとIFN-βはすべて同じ長さであり(アミノ酸が165個または166個)、類似した生物活性を持っている。IFN-γは長さがアミノ酸146個であり、αクラスとβクラスほどは似ていない。IFN-γだけが、マクロファージを活性化させたり、キラーT細胞の成熟を誘導したりできる。新しいタイプのこれら治療薬は、腫瘍に対する生体の応答に影響を及ぼし、免疫調節を通じて認識に影響を与えるため、生物学的応答調節薬(BRM)と呼ばれることがある。
【0010】
ヒト線維芽細胞インターフェロン(IFN-β)は抗ウイルス活性を持っており、ナチュラル・キラー細胞を刺激して腫瘍細胞を攻撃させることもできる。このインターフェロンは約20,000Daのポリペプチドであり、ウイルスと二本鎖RNAによって誘導される。組み換えDNA技術によってクローニングされた線維芽細胞インターフェロンの遺伝子のヌクレオチド配列(Derynk他、1980年)から、このタンパク質の完全なアミノ酸配列が得られた。長さはアミノ酸166個である。
【0011】
Shepardら(1981年)は、抗ウイルス活性を失わせる塩基842の位置の突然変異(位置141がシステイン→チロシン)と、ヌクレオチド1119〜1121が欠失したクローン変異体を報告した。
【0012】
Markら(1984年)は、塩基469(T)を(A)で置換する人工的突然変異を挿入することにより、位置17のアミノ酸をシステインからセリンに変化させた。得られたIFN-βは、“元の”IFN-βと同じくらい活性であり、長期保管中(-70℃)も安定であったことが報告されている。
【0013】
多発性硬化症(MS)のインターフェロン療法における最新の開発成果であるレビフ(登録商標)(セロノ社、組み換えヒト・インターフェロン-β)は、哺乳動物の細胞系から産生されるインターフェロン(IFN)-ベータ1aである。推奨されている国際非商標名(INN)は、“インターフェロン-ベータ1a”である。
【0014】
タンパク質をベースとしたあらゆる医薬品と同様、INF-ベータを治療薬として使用する際に乗り越えるべき1つの大きな障害は、医薬組成物の不安定性が原因で起こる可能性のある医薬としての効力の喪失である。
【0015】
医薬組成物に含まれるポリペプチドの活性と効力を脅かす物理的不安定性としては、変性並びに可溶性および不溶性の凝集体の形成があり、化学的不安定性としては、加水分解、イミドの形成、酸化、ラセミ化、脱アミド化などがある。これら変化のうちのいくつかにより、興味の対象であるタンパク質の医薬活性が失われたり低下したりすることが知られている。別の場合には、これらの変化がどのような効果をもたらすかは正確にわかっていないが、得られた分解生成物は、望ましくない副作用の危険性が潜在的にあるために、やはり医薬として許容できないと考えられる。
【0016】
医薬組成物に含まれるポリペプチドの安定化は、試行錯誤が主な役割を演じる分野に留まっている(Wang、1999年、Int. J. Pharm.、第185巻、129〜188ページ;WangとHanson、1988年、J. Parenteral Sci. Tech.、第42巻、S3〜S26ページに概説がある)。ポリペプチドの安定性を大きくするためにポリペプチド医薬製剤に添加される賦形剤としては、緩衝液、糖類、界面活性剤、アミノ酸、ポリエチレングリコール、ポリマーなどがあるが、これら化学物質の安定化効果は、そのタンパク質が何であるかによって異なる。
【0017】
米国特許出願公開2002/0172661には、イオン強度が小さく、pHが約3.0〜5.0であることを特徴とするIFN-ベータ製剤が記載されている。
【0018】
現在のIFN-ベータ製剤は、IFN-ベータの可溶性増大剤としてHSAを使用している。しかしHSAの使用には問題点がいくつかある。HSAはヒト血液製剤であるため、ヒトから採取せねばならない。リスクを減らす処置が取られるとはいえ、HSAなどのヒト血液製剤を使用すると、ヒト・ウイルス(例えばHIVやHCV)が混入する可能性がある。
【0019】
したがってIFN-ベータの可溶性を向上させるとともに、このタンパク質を安定化させて凝集体が形成されないようにする生理学的に適合性のある安定剤を含むことで、医薬としての有用性が増した別のIFN-ベータ医薬組成物が必要とされている。
【発明の開示】
【0020】
本発明の説明
本発明は、インターフェロン(IFN)を含む安定化した医薬組成物とその調製方法に関する。この組成物は、ヒト血清アルブミン(HSA)の不在下で調製される。この組成物をこの明細書では“無HSA”と呼ぶ。IFN無HSA医薬組成物は、インターフェロン(IFN)、またはそのアイソフォーム、ムテイン、融合タンパク質、機能的誘導体、活性な断片、塩のいずれかを含んでおり、緩衝液、アミノ酸及び抗酸化物質を含む溶液である。
【0021】
本発明の一実施態様によれば、この組成物は静菌剤を含んでいる。
【0022】
この明細書では、“インターフェロン”または“IFN”に、その名称で文献に記載されているあらゆる分子が含まれるものとする。例えば、上記の“背景技術”の項に記載したあらゆるタイプのIFNが含まれる。特にIFN-α、IFN-β、IFN-γが、上記の定義に含まれる。IFN-βが、本発明における好ましいIFNである。本発明に適したIFN-βは市販されており、例えばレビフ(登録商標)(セロノ社)、アボネックス(登録商標)(バイオジェン社)、ベータフェロン(登録商標)(シェリング社)として入手できる。本発明では、ヒト起源のインターフェロンを使用することも好ましい。この明細書では、インターフェロンという用語に、そのアイソフォーム、ムテイン、融合タンパク質、機能的誘導体、活性な断片、塩が含まれるものとする。
【0023】
この明細書では、“インターフェロン-ベータ(IFN-ベータまたはIFN-β)”という用語に、特にヒト起源の線維芽細胞インターフェロン(体液から単離することによって、あるいは宿主原核細胞または宿主真核細胞からDNA組み換え技術によって得られる)と、その塩、機能性誘導体、変異体、アナログ、活性な断片が含まれるものとする。好ましくは、IFN-ベータは、組み換えIFN-ベータ-1aを意味する。
【0024】
この明細書では、“ムテイン”という用語は、IFNのアナログのうちで、天然のIFNの1個以上のアミノ酸残基が別のアミノ酸残基で置換されていたり、天然のIFNの1個以上のアミノ酸残基が欠失していたり、天然のIFN配列に1個以上のアミノ酸残基が付加されていたりするが、得られる産物の活性は野生型IFNと比べて顕著に変化していないものを意味する。このようなムテインは、公知の合成法および/または部位特異的突然変異誘発技術によって、あるいは適切な他の任意の方法によって作られる。好ましいムテインとしては、例えばShepardら(1981年)またはMarkら(1984年)が記載しているものが挙げられる。
【0025】
このようなどのムテインもIFNと十分に重複したアミノ酸配列を持っていて、活性がIFNと実質的に同程度かそれ以上であることが好ましい。インターフェロンの生物学的機能は当業者によく知られており、しかも生物学的規格が確立していて、例えば国立生物学規格・規制協会(http://immunology.org/links/NIBSC)から入手することができる。
【0026】
IFNの活性を調べるバイオアッセイが知られている。IFNアッセイは、例えばRubinsteinら(1981年)が記載しているようにして実施することができる。例えば定型的な実験により、任意のムテインがIFNの活性と実質的に同程度かそれ以上の活性を持つかどうかを調べることができる。
【0027】
本発明で使用できるIFNのムテイン、またはそれをコードしている核酸としては、それに実質的に対応していてペプチドまたはポリヌクレオチドが置換された配列から成る有限数の集合がある。それらは、当業者であれば、この明細書に記載した教示またはガイドに基づき、難しい実験を行なうことなく容易に得ることができる。
【0028】
本発明のムテインにおける好ましい変化は、“保存された”置換として知られるものである。本発明のポリペプチドまたはタンパク質の保存されたアミノ酸置換としては、1つのグループ内の同義アミノ酸がある。同義アミノ酸は互いに十分に似た物理化学的性質を持っているため、そのグループのメンバー同士を置換してもその分子の生物機能が保持される。上記配列に対するアミノ酸の挿入や欠失によってその配列の機能を変えないものも可能であることは明らかである。それは特に、挿入または欠失がほんのアミノ酸数個(例えば30個未満であり、10個未満が好ましい)であって、しかも機能する立体配座となる上で極めて重要なアミノ酸(例えばシステイン残基)が移動しない場合に当てはまる。このような欠失および/または挿入によって産生されるタンパク質とムテインは、本発明の範囲に含まれる。
【0029】
同義アミノ酸のグループは、表Iに規定したものであることが好ましい。同義アミノ酸のグループは、表IIに規定したものであることがさらに好ましい。同義アミノ酸のグループは、表IIIに規定したものであることが最も好ましい。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
【表3】

【0033】
本発明で使用するIFNのムテインを得るのに利用できるタンパク質のアミノ酸置換法の具体例は、公知の任意の方法であり、例えば、Markらに付与された米国特許第4,959,314号、第4,588,585号、第4,737,462号;Kothsらに付与された米国特許第5,116,943号;Namenらに付与された米国特許第4,965,195号;Chongらに付与された米国特許第4,879,111号;Leeらに付与された米国特許第5,017,691号に記載されており;リジン置換されたタンパク質は、Shawらに付与された米国特許第4,904,584号に提示されている。IFN-ベータの具体的なムテインは、例えばMarksら(1984年)が報告している。
【0034】
“融合タンパク質”という用語は、IFNを含むポリペプチド、またはそのムテインで、例えば体液中の滞在時間が長い別のタンパク質と融合したものを意味する。IFNは、例えば別のタンパク質やポリペプチドなど(例えば免疫グロブリンやその断片)と融合させることができる。
【0035】
この明細書では、“機能性誘導体”に、IFNの誘導体、そのムテイン、その融合タンパク質が含まれる。これらは、各残基の上、あるいはN末端またはC末端の基の上に側鎖として存在する官能基から従来技術で知られている手段で作ることができ、医薬として許容される状態を維持している(すなわちIFNと実質的に同じ活性を失うことがなく、その機能性誘導体を含む組成物に毒性を与えない)限りは本発明に含まれる。このような誘導体として、例えば、抗原部位を隠して体液中のIFNの滞在時間を延ばすことのできるポリエチレングリコール側鎖がある。他の誘導体としては、カルボキシル基の脂肪族エステル;アンモニア、第一級アミン、第二級アミンのいずれかと反応させることによるカルボキシル基のアミド;アミノ酸残基の遊離アミノ基とアシル部分(例えばアルカノイル基または炭素環式アロイル基)で形成されたN-アシル誘導体;(例えばセリル残基またはトレオニル残基の)遊離ヒドロキシル基とアシル部分で形成されたO-アシル誘導体などがある。
【0036】
本発明では、IFN、ムテイン、融合タンパク質の“活性な断片”に、単独のタンパク質分子のポリペプチド鎖のあらゆる断片または前駆体、あるいは関連する分子または残基(例えば糖残基またはリン酸残基)が結合したタンパク質分子のポリペプチド鎖のあらゆる断片または前駆体、あるいはタンパク質分子または糖残基そのものの凝集体のあらゆる断片または前駆体が含まれる。ただしこの断片は、対応するIFNと比べて活性が顕著に低下していてはならない。
【0037】
この明細書では、“塩”という用語は、上記タンパク質またはそのアナログのカルボキシル基の塩と、上記タンパク質またはそのアナログのアミノ基の酸付加塩の両方を意味する。カルボキシル基の塩は公知の方法で形成することができ、例えば無機塩(ナトリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、鉄塩、亜鉛塩など)と、有機塩基との塩(例えばアミン(トリエタノールアミンなど)、アルギニン、リジン、ピペリジン、プロカインなどとの塩)がある。酸付加塩としては、例えば無機酸(例えば塩酸や硫酸)との塩や、有機酸(例えば酢酸やシュウ酸)との塩がある。もちろん、このようなどの塩も、本発明に関係するタンパク質(IFN)の生物活性(すなわち対応する受容体に結合する能力や、受容体にシグナル伝達を開始させる能力)を保持している必要がある。
【0038】
本発明では、組み換えヒトIFN-ベータと本発明の化合物を使用することが特に好ましい。
【0039】
特別なインターフェロン変異体が最近報告された。このいわゆる“コンセンサス・インターフェロン”は、IFNの自然には生じない変異体である(米国特許第6,013,253号)。本発明の好ましい一実施態様によると、本発明の化合物は、コンセンサス・インターフェロンと組み合わせて使用される。
【0040】
この明細書では、ヒト・インターフェロン・コンセンサス(IFN-con)は、天然には存在しないポリペプチドで、天然に存在するヒト白血球インターフェロンの亜型の配列の過半数を代表するIFN-αのサブセットに共通するアミノ酸残基を主に含んでいて、すべての亜型に共通するアミノ酸が存在することはない1つ以上の位置に、その位置に多く存在するアミノ酸を含むが、天然に存在する少なくとも1つの亜型ではその位置に存在していないどのアミノ酸残基も含まないものを意味する。IFN-conには、例えばIFN-con1、IFN-con2、IFN-con3と表わされるアミノ酸配列が含まれ、これらは米国特許第4,695,623号、第4,897,471号、第5,541,293号に開示されている。IFN-conをコードしているDNA配列は、これら特許に記載されているようにして作ること、あるいは他の標準的な方法で作ることができる。
【0041】
さらに別の好ましい一実施態様では、融合タンパク質がIg融合体を含んでいる。融合は、直接的であるか、あるいは短いリンカー・ペプチドを介してであることができる。リンカー・ペプチドとしては、長さがアミノ酸1〜3個のものや、より長くて例えばアミノ酸残基が13個のものが可能である。リンカー・ペプチドは、例えば配列E-F-M(グルタミン酸-フェニルアラニン-メチオニン)を持つトリペプチドにすること、またはグルタミン酸-フェニルアラニン-グリジンアラニン-グリジンロイシン-バリン-ロイシン-グリジングリジングルタミン-フェニルアラニン-メチオニンという13個のアミノ酸を含むリンカー配列にすることが可能であり、それをIFN配列と免疫グロブリン配列の間に導入できる。得られる融合タンパク質は特性が改善され、体液中の滞在時間(半減期)が延びたり、比活性が増大したり、発現レベルが増大したりする可能性がある。また、融合タンパク質の精製が簡単になる可能性もある。
【0042】
さらに別の好ましい一実施態様では、IFNをIg分子の定常領域と融合させる。IFNは、重鎖領域(例えばヒトのIgG1のCH2ドメインまたはCH3ドメイン)と融合させることが好ましい。Ig分子の他のアイソフォーム(例えばアイソフォームIgG2、IgG3、IgG4、または他のクラスのIgであるIgMやIgA)も、本発明の融合タンパク質を作るのに適している。融合タンパク質は、単量体でも多量体でもよく、ヘテロ多量体でもホモ多量体でもよい。
【0043】
さらに別の好ましい一実施態様では、機能性誘導体は、アミノ酸残基上の1つ以上の側鎖として存在する1つ以上の官能基に結合した少なくとも1つの部分を備えている。この部分は、ポリエチレングリコール(PEG)部分であることが好ましい。PEG化は、公知の方法で実施することができ、その方法は例えばWO 99/55377に記載されている。
【0044】
個人への投与量は、多数の因子に依存する。因子としては、薬物動態、投与経路、患者の状態と特性(性別、年齢、体重、健康状態、サイズ)、症状の進み具合、同時に実施している治療、治療の頻度、望む効果などがある。
【0045】
本発明に従って再発-弛張性MSを治療する際のIFN-ベータの投与量は、使用するIFN-ベータのタイプによって異なる。
【0046】
本発明によれば、IFNが大腸菌の中で産生される組み換えIFN-ベータ1b(商品名ベータセロン(登録商標)で市販されている)である場合には、2日に1回、一人あたり約250〜300μg、または8MIU〜9.6MIUの投与量で皮下投与することが好ましい。
【0047】
本発明によれば、IFNがチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)の中で産生される組み換えIFN-ベータ1a(商品名アボネックス(登録商標)で市販されている)である場合には、1週間に1回、一人あたり約30〜33μg、または6MIU〜6.6MIUの投与量で筋肉内投与することが好ましい。
【0048】
本発明によれば、IFNがチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)の中で産生される組み換えIFN-ベータ1a(商品名レビフ(登録商標)で市販されている)である場合には、1週間に3回(TIW)、一人あたり22〜44μg、または6MIU〜12MIUの投与量で皮下投与することが好ましい。
【0049】
本発明による活性成分の投与は、静脈内経路、筋肉内経路、皮下経路のいずれかで行なうことができる。IFNの好ましい投与経路は、皮下経路である。さらに好ましい投与経路は、筋肉内投与である。その場合、例えば1週間に1回投与することができる。
【0050】
IFNは、毎日、または2日に1回、またはそれよりも少ない頻度で投与することも可能である。IFNは、1週間に1回、または2回、または3回投与することが好ましい。
【0051】
“安定性”という用語は、本発明のインターフェロン製剤の物理的安定性、化学的安定性、立体配座安定性(生物学的効果の維持も含まれる)を意味する。タンパク質製剤の不安定性は、タンパク質分子が化学的に分解または凝集してより高次のポリマーを作ること、脱グリコシル化すること、グリコシル化が変化すること、酸化することによって、あるいは本発明に含まれるインターフェロン・ポリペプチドの少なくとも1つの生物活性を低下させる他のあらゆる構造変化が起こることによって、発生する可能性がある。
【0052】
“安定な”溶液または製剤は、その中に含まれるタンパク質の分解、修飾、凝集、生物活性の喪失などの程度が許容される程度に制御されていて、時間経過とともに許容できないほど大きくはなることはない溶液または製剤である。製剤は、表示されているインターフェロン活性の少なくとも約60%を12〜24ヶ月の期間にわたって保持することが好ましい。この割合は、少なくとも約70%であることがより好ましく、少なくとも約80%であることが最も好ましい。HSAを含まない安定化した本発明のIFN組成物は、2〜8℃で保管したときの保管期間が少なくとも約6ヶ月、12ヶ月、18ヶ月であることが好ましいが、この期間は少なくとも20ヶ月であることがより好ましく、少なくとも22ヶ月であることがさらに好ましく、少なくとも24ヶ月であることが最も好ましい。
【0053】
HSAを含まない本発明のIFN医薬組成物の安定性をモニターする方法として、従来技術の方法(例えば、この明細書に開示した実施例に記載してある方法)を利用できる。例えば本発明の液体医薬組成物を保管している間のIFN凝集体形成は、溶液に含まれる可溶性IFNの時間変化を測定することによって容易に明らかにすることができる。溶液中の可溶性ポリペプチドの量は、IFNの検出に適した多数の分析法で定量することができる。そのような方法として、例えば以下の実施例に記載した逆相(RP)-HPLC法、UV吸収分光法などがある。
【0054】
保管している間の液体製剤中の可溶性凝集体と不溶性凝集体の測定は、例えば以下の実施例に記載した分析用超遠心分離法を利用し、可溶性凝集体として存在する可溶性ポリペプチドの部分と、生物活性のある非凝集分子形態として存在する部分とを区別することによって達成できる。さらに、速度超遠心分離により、非共有結合オリゴマーと共有結合オリゴマーの両方を、定量的にも定性的にも検出することができる。同様に、(実施例に記載した)新規のサイズ排除(SE)-HPLC法(この明細書では“NEW SEC”と呼ぶ)により、非共有結合オリゴマーと共有結合オリゴマーの両方を、定量的にも定性的にも検出することができる。
【0055】
“複数回投与の使用”という表現には、インターフェロン製剤を含む単一のバイアル、アンプル、カートリッジを2回以上(例えば2、3、4、5、6回またはそれ以上)使用して注射することが含まれる。注射は、少なくとも約12時間、24時間、48時間の期間にわたって繰り返して行なうことが好ましい。この期間は、約12日間までであることが好ましい。次の注射までの時間間隔は、例えば6、12、24、48、72時間であることができる。
【0056】
“アミノ酸”という用語は、1個のアミノ酸、または複数のアミノ酸の組み合わせを意味する。その場合、どのアミノ酸も、遊離塩基の形態または塩の形態で存在している。アミノ酸の組み合わせを利用する場合、そのすべてのアミノ酸が遊離塩基の形態で存在すること、またはそのすべてのアミノ酸が塩の形態で存在すること、またはいくつかが遊離塩基の形態で存在し、残りが塩の形態で存在することができる。本発明の方法または本発明の製剤において用いるのが好ましいアミノ酸は、荷電した側鎖を有するアミノ酸(この明細書では、“荷電側鎖アミノ酸”と呼ぶ)であり、例えばアルギニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸が挙げられる。アミノ酸はリジンであることがより好ましい。個々のアミノ酸のあらゆる立体異性体(すなわちL異性体、D異性体、DL異性体)、またはそのような立体異性体の組み合わせを、その個々のアミノ酸が遊離塩基の形態または塩の形態で存在している限り、本発明の方法または本発明の製剤で用いることができる。L-立体異性体を用いることが好ましい。好ましいこれらアミノ酸のアナログも、本発明の製剤で使用できる。“アミノ酸アナログ”という用語は、天然に存在するアミノ酸の誘導体を意味する。適切なアルギニン・アナログとしては、例えば、アミノグアニジンやN-モノエチルL-アルギニンなどがある。上記の好ましいアミノ酸と同様、アミノ酸アナログは、遊離塩基の形態または塩の形態で用いられる。この明細書では、アミノ酸を安定剤とも呼ぶ。
【0057】
本発明の製剤で使用するアミノ酸は、治療活性のあるポリペプチドをさまざまなストレスから保護することで、インターフェロン-ベータ製剤の安定性を増大させる、および/または維持する。この明細書では、“ストレス”という用語に、熱、凍結、pH、光、撹拌、酸化、脱水、表面、剪断、凍結/解凍、圧力、重金属、フェノール化合物、変性剤などが含まれるが、これですべてではない。ストレスという用語には、インターフェロン-ベータを含む製剤の安定性を変化させる(すなわち、低下させる、または維持する、または増大させる)あらゆる因子が含まれる。アミノ酸の添加による安定性の増大および/または維持は、濃度に依存して起こる。すなわち、インターフェロン-ベータを含む本発明の製剤では、アミノ酸がなければ通常は凝集体またはオリゴマーの形成が見られるのに、アミノ酸の濃度が大きくなると、この製剤の安定性が増大する、および/または維持される。オリゴマーまたは凝集体の形成を減らし、そのことによってモノマー・タンパク質の安定性を増大させるために本発明の製剤で用いる特定のアミノ酸の量は、難しい実験を行なうことなく、当業者に一般に知られている方法で容易に決定することができる。
【0058】
“緩衝液”または“生理学的に許容される緩衝液”という表現は、医薬または獣医学において製剤中で使用しても安全であることがわかっていて、その製剤のpHを望む範囲に維持または制御する効果のある化合物の溶液を意味する。pHをわずかに酸性からわずかに塩基性の範囲の値に制御するための許容される緩衝液としては、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、アルギニン、トリス、ヒスチジンなどがある。“トリス”は、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールと、その医薬として許容されるあらゆる塩を意味する。好ましい緩衝液は、生理食塩水または許容される塩を含む酢酸塩緩衝液である。
【0059】
“等張剤”は、生理学的に許容されていて、製剤に適切な張性を与え、製剤と接触している細胞膜を新たな水流が通過することを阻止する化合物である。そのような目的では、一般に、グリジンなどの化合物を濃度がわかった状態で使用する。適切な他の等張剤としては、アミノ酸またはタンパク質(例えばグリジンまたはアルブミン)、塩(例えば塩化ナトリウム)、糖類(例えばデキストロース、マンニトール、スクロース、ラクトース)などが挙げられる。
【0060】
“抗酸化物質”という用語は、酸素または酸素由来のフリーラジカルが他の物質と相互作用するのを阻止する化合物を意味する。抗酸化物質は、物理的安定性と化学的安定性を大きくするために医薬系に一般に添加される多数の賦形剤の1つである。抗酸化物質は、ある種の薬または賦形剤が酸素に曝露されたりフリーラジカルの存在下に置かれたりしたときに起こる酸化プロセスを最少にするため、あるいは遅延させるために添加する。このプロセスは、光、温度、濃縮水素、微量の金属の存在、微量の過酸化物の存在を触媒として起こることがしばしばある。亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ尿素、メチオニン、エチレンジアミン四酢酸の塩(EDTA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)が、薬剤中の抗酸化物質としてよく用いられる。EDTAナトリウムは、酸化反応を触媒する金属イオンを封鎖することによって抗酸化物質の活性を大きくすることがわかっている。最も好ましい抗酸化物質はメチオニンである。この明細書では、抗酸化物質を安定剤とも呼ぶ。
【0061】
メチオニンは、遊離塩基の形態または塩の形態で存在することができる。メチオニンが遊離塩基の形態または塩の形態で存在している限り、メチオニンのあらゆる立体異性体(すなわちL異性体、D異性体、DL異性体)を本発明の方法または本発明の製剤で用いることができる。L-立体異性体を用いることが好ましい。メチオニンのアナログも本発明の製剤で使用できる。“メチオニンのアナログ”という用語は、天然に存在するメチオニンの誘導体を意味する。メチオニンのアナログも、本発明の製剤において遊離塩基の形態または塩の形態で用いることができる。
【0062】
抗酸化物質の添加による安定性の増大および/または維持は、濃度に依存して起こる。すなわち、アミノ酸がなければインターフェロン-ベータを含む本発明の製剤では通常は凝集体またはオリゴマーの形成が見られるのに、アミノ酸の濃度が大きくなると、インターフェロン-ベータを含むその製剤の安定性が増大する、および/または維持される。酸化、またはオリゴマー/凝集体の形成を減らすために本発明の製剤で用いる抗酸化物質(例えばメチオニン)の量は、難しい実験を行なうことなく、当業者に一般に知られている方法で容易に決定することができる。
【0063】
“静菌”という用語は、製剤に抗菌剤として作用させるために添加する化合物または組成物を意味する。静菌剤の具体例としては、フェノール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、アルキルパラベン(メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベンなど)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、チメロサールなどがある。静菌剤はベンジルアルコールであることが好ましい。
【0064】
“界面活性剤”という用語は、液体の表面張力を小さくしたり、2種類の液体間の界面張力を小さくしたり、液体と固体の間の界面張力を小さくしたりする可溶性化合物を意味する。なお表面張力とは、液体の表面に作用して表面積を最小にしようとする力である。界面活性剤は、医薬製剤にときどき使用されてきた。それは、例えば、低分子量の薬剤やポリペプチドを送達したり、薬剤の吸収状態を変化させたり、標的組織への薬剤の送達を変化させたりすることが目的である。よく知られている界面活性剤としては、ポリソルベート(ポリオキシエチレン誘導体;トゥイーン)やプルロニックがある。
【0065】
本発明の好ましい一実施態様によれば、インターフェロンを、プルロニック(登録商標)F77、プルロニックF87、プルロニックF88、プルロニック(登録商標)F68の中から選択した界面活性剤(プルロニックF68(BASF社、プルロニックF68はポロキサマー188としても知られる)が特に好ましい)とともに製剤化することにより、バイアルの表面および/または送達装置(例えば注射器、ポンプ、カテーテルなど)の表面への吸着によって起こる活性成分の損失が最少になった安定な製剤が得られることが見いだされた。インターフェロンを、プルロニック(登録商標)F77、プルロニックF87、プルロニックF88、プルロニック(登録商標)F68の中から選択した界面活性剤(プルロニックF68(BASF社、プルロニックF68はポロキサマー188としても知られる)が特に好ましい)とともに製剤化することにより、酸化とタンパク質凝集体の形成に対する抵抗力がより大きい安定な製剤が得られることも見いだされた。
【0066】
プルロニック界面活性剤は、エチレンオキシド(EO)とプロピレンオキシド(PO)のブロック・コポリマーである。プロピレンオキシド(PO)ブロックは、2つのエチレンオキシド(EO)ブロックに挟まれている。
【0067】
【化1】

【0068】
プルロニック界面活性剤は、以下に示す2ステップのプロセスで合成される。
1.プロピレンオキシドをプロピレングリコールの2つのヒドロキシル基に制御しながら付加することにより、望ましい分子量の疎水性物質を作り;
2.エチレンオキシドを添加してその疎水性物質を親水基の間に挟み込む。
【0069】
プルロニック(登録商標)F77では、ポリオキシエチレン(親水性物質)の割合が70%であり、疎水性物質(ポリオキシプロピレン)の分子量は約2,306Daである。
【0070】
プルロニックF87では、ポリオキシエチレン(親水性物質)の割合が70%であり、疎水性物質(ポリオキシプロピレン)の分子量は約2,644Daである。
【0071】
プルロニックF88では、ポリオキシエチレン(親水性物質)の割合が80%であり、疎水性物質(ポリオキシプロピレン)の分子量は約2,644Daである。
【0072】
プルロニックF68では、ポリオキシエチレン(親水性物質)の割合が80%であり、疎水性物質(ポリオキシプロピレン)の分子量は約1,967Daである。
【0073】
プルロニックF77の典型的な性質を以下に示す。
平均分子量:6600;
融点/流動点:48℃;
20℃における物理的形態:固体;
粘性率(ブルックフィールド)cps:480(25℃で液体、60℃でペースト、77℃で固体);
25℃における表面張力、ダイン/cm;
濃度0.1%:47.0
濃度0.01%:49.3
濃度0.001%:52.8
ヌジョールに対する25℃における界面張力、ダイン/cm;
濃度0.1%:17.7
濃度0.01%:20.8
濃度0.001%:25.5
25℃におけるドレーブス湿潤試験、秒
濃度1.0%:>360
濃度0.1%:>360
泡の高さ
50℃におけるロス・マイルス試験、0.1%、mm:100
26℃におけるロス・マイルス試験、0.1%、mm:47
400ml/分における動態、0.1%、mm:>600
水溶液中の曇点、℃
濃度1%:>100
濃度10%:>100
HLB(親水性-親油性バランス):25。
【0074】
プルロニックF87の典型的な性質を以下に示す。
平均分子量:7700;
融点/流動点:49℃;
20℃における物理的形態:固体;
粘性率(ブルックフィールド)cps:700(25℃で液体、60℃でペースト、77℃で固体);
25℃における表面張力、ダイン/cm;
濃度0.1%:44.0
濃度0.01%:47.0
濃度0.001%:50.2
ヌジョールに対する25℃における界面張力、ダイン/cm;
濃度0.1%:17.4
濃度0.01%:20.3
濃度0.001%:23.3
25℃におけるドレーブス湿潤試験、秒
濃度1.0%:>360
濃度0.1%:>360
泡の高さ
50℃におけるロス・マイルス試験、0.1%、mm:80
26℃におけるロス・マイルス試験、0.1%、mm:37
400ml/分における動態、0.1%、mm:>600
水溶液中の曇点、℃
濃度1%:>100
濃度10%:>100
HLB(親水性-親油性バランス):24。
【0075】
プルロニックF88の典型的な性質を以下に示す。
平均分子量:11400;
融点/流動点:54℃;
20℃における物理的形態:固体;
粘性率(ブルックフィールド)cps:2300(25℃で液体、60℃でペースト、77℃で固体);
25℃における表面張力、ダイン/cm;
濃度0.1%:48.5
濃度0.01%:52.6
濃度0.001%:55.7
ヌジョールに対する25℃における界面張力、ダイン/cm;
濃度0.1%:20.5
濃度0.01%:23.3
濃度0.001%:27.0
25℃におけるドレーブス湿潤試験、秒
濃度1.0%:>360
濃度0.1%:>360
泡の高さ
50℃におけるロス・マイルス試験、0.1%、mm:80
26℃におけるロス・マイルス試験、0.1%、mm:37
400ml/分における動態、0.1%、mm:>600
水溶液中の曇点、℃
濃度1%:>100
濃度10%:>100
HLB(親水性-親油性バランス):28。
【0076】
プルロニックF68の典型的な性質を以下に示す。
平均分子量:8400;
融点:52℃;
20℃における物理的形態:固体;
粘性率(ブルックフィールド)cps:1000(25℃で液体、60℃でペースト、77℃で固体);
25℃における表面張力、ダイン/cm;
濃度0.1%:50.3
濃度0.01%:51.2
濃度0.001%:53.6
ヌジョールに対する25℃における界面張力、ダイン/cm;
濃度0.1%:19.8
濃度0.01%:24.0
濃度0.001%:26.0
25℃におけるドレーブス湿潤試験、秒
濃度1.0%:>360
濃度0.1%:>360
泡の高さ
50℃におけるロス・マイルス試験、0.1%、mm:35
26℃におけるロス・マイルス試験、0.1%、mm:40
400ml/分における動態、0.1%、mm:>600
水溶液中の曇点、℃
濃度1%:>100
濃度10%:>100
HLB(親水性-親油性バランス):29。
【0077】
上記の性質と似た性質を持つ他のポリマーも本発明の製剤で使用できる。好ましい界面活性剤は、プルロニックF68と、それと似た性質を持つ界面活性剤である。
【0078】
プルロニックが、中でもプルロニックF68が、インターフェロンの安定性を望む保管期間(例えば12〜24ヶ月)を通じて維持するのに十分な濃度で、しかも表面(例えばバイアル、アンプル、カートリッジ、注射器)への吸着によるタンパク質の損失を阻止するのに十分な濃度で存在していることが好ましい。
【0079】
液体製剤中のプルロニック(特にプルロニックF68)の濃度は、約0.01mg/ml〜約10mg/mlであることが好ましい。この値は、約0.05mg/ml〜約5mg/mlであることがより好ましく、約0.1mg/ml〜約2mg/mlであることがさらに好ましく、約0.5mg/mlであることが最も好ましい。
【0080】
製剤中のIFN-ベータ1aの濃度は、約10μg/ml〜約800μg/mlであることが好ましい。この値は、約20μg/ml〜約500μg/mlであることがより好ましく、約30μg/ml〜約300μg/mlであることがさらに好ましく、約22、44、88、264μg/mlのいずれかであることが最も好ましい。
【0081】
本発明の製剤は、pHが約3.5〜約5.5であることが好ましい。この値は、約4.7であることがより好ましい。好ましい緩衝液は酢酸塩であり、好ましい対イオンは、ナトリウム・イオンまたはカリウム・イオンである。酢酸生理緩衝液は従来技術でよく知られている。全溶液中の緩衝液の濃度は、約5mM、9.5mM、10mM、50mM、100mM、150mM、200mM、250mM、500mMにすることができる。緩衝液の濃度は、約10mMであることが好ましい。特に好ましいのは、酢酸塩イオンが10mMで、pHが4.7±0.2の緩衝液である。
【0082】
本発明の組成物には抗酸化物質(例えばメチオニン)が約0.01〜約5.0mg/mlの濃度で存在していることが好ましい。この値は、約0.05〜約0.3mg/mlであることがより好ましく、約0.12mg/mlであることが最も好ましい。
【0083】
本発明の製剤中には、アミノ酸(例えばリジン)が約1mg/ml〜約100mg/mlの濃度で存在していることが好ましい。この値は、約10mg/ml〜約50mg/mlであることがより好ましく、約27.3mg/mlであることが最も好ましい。
【0084】
本発明には液体製剤が含まれる。好ましい溶媒は、注射用の水である。
【0085】
液体製剤は、単回投与または複数回投与にすることができる。複数回投与を目的とした本発明の液体インターフェロン製剤は、静菌剤として、例えばフェノール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、アルキルパラベン(メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベンなど)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、チメロサールを含んでいることが好ましい。特に好ましいのは、フェノール、ベンジルアルコール、m-クレゾールであり、その中でもベンジルアルコールがより好ましい。静菌剤は、製剤中に実質的に細菌が存在しない(注射に適した)状態を複数回の注射を行なう期間全体にわたって維持するのに有効な濃度となる量を使用する。その期間は、約12時間または24時間〜約12日間、好ましくは約6日間〜約12日間であることができる。静菌剤は、約0.1%(静菌剤の重量/溶媒の重量)〜約2.0%の濃度で存在していることが好ましい。この値は、約0.2%〜約1.0%であることがより好ましい。ベンジルアルコールの場合には、0.2%または0.3%の濃度が特に好ましい。
【0086】
しかし保存剤(例えばベンジルアルコール)の使用は複数回投与の製剤に限られることはなく、単回投与の製剤に保存剤を添加することもできる。本発明の一実施態様は、ベンジルアルコールを含む単回投与の製剤である。
【0087】
本発明による製剤のさらに別の一実施態様では、あとで説明する沈降速度分析で測定したとき、インターフェロン-ベータが、室温または2〜8℃において、モノマーの形態で少なくとも約96%または少なくとも約98%である(凝集体が4%未満、より好ましくは2%未満)。
【0088】
好ましい製剤は、インターフェロン-ベータ1a、ベンジルアルコール、リジンと、メチオニン、プルロニックF68、及び酢酸塩緩衝水溶液からなり、pHは3.7〜4.7に調節されていることが好ましい。
【0089】
本発明の製剤に含まれるインターフェロンの範囲は、再構成したときに濃度が約1.0μg/ml〜約50mg/mlとなる量であるが、より大きな濃度やより小さな濃度も可能であり、それは、考えている送達手段が何であるかによって異なる。例えば溶液製剤は、経皮パッチ法、肺送達法、経粘膜法、浸透圧法、マイクロポンプ法とは異なる。インターフェロンの濃度は、約5.0μg/ml〜約2mg/mlであることが好ましい。この値は、約10μg/ml〜約1mg/mlであることがより好ましく、約30μg/ml〜約100μg/mlであることが最も好ましい。
【0090】
本発明の製剤は、パッケージングしたときに24ヶ月にわたってインターフェロン活性の少なくとも約60%を維持することが好ましい。この値は、少なくとも約70%であることがより好ましく、少なくとも約80%であることが最も好ましい。
【0091】
本発明のさらに別の好ましい一実施態様により、上に説明した液体医薬製剤の製造方法が提供される。
【0092】
本発明のさらに別の好ましい一実施態様では、パッケージ化された医薬組成物を製造するため、上記の活性成分と賦形剤とを含む溶液を置くことを含む方法が提供される。
【0093】
本発明のさらに別の好ましい一実施態様では、ヒトが医薬として使用する製品として、上記の医薬組成物が収容されたバイアルを備えていて、その溶液を最初に使用してから約24時間後まで、またはそれ以上の期間にわたって有効であることを記した文書が添付された製品が提供される。文書には、溶液が約12日後まで有効であると記載されていることが好ましい。
【0094】
複数回投与製剤は、最初に使用した後、少なくとも約24時間の期間にわたって保管すること、または使用することができる。この期間は、少なくとも約4、5、6日間であることが好ましく、12日間までであることがさらに好ましい。製剤を最初に使用した後は、室温よりも低い温度(すなわち約25℃以下)で保管することが好ましい。この温度は、約10℃以下であることがより好ましく、約2〜8℃であることがさらに好ましく、約4〜6℃であることが最も好ましい。
【0095】
本発明の製剤は、計算で求めた量の賦形剤を緩衝溶液に添加した後、インターフェロンを添加することを含む方法で調製することができる。
【0096】
次に、得られる溶液を、バイアル、アンプル、カートリッジのいずれかに入れる。当業者であれば、この方法のいろいろな変形例を知っているであろう。例えば、成分を添加する順番、添加物を使用するかどうか、製剤を調製するときの温度とpHなどはすべて、濃度と投与法をどのようにするかを決める際に最適化すべき因子であろう。
【0097】
複数回投与製剤の場合には、活性成分(インターフェロン)を含む溶液に静菌剤を添加するか、静菌剤を別のバイアルまたはカートリッジに保管し、使用時に活性成分を含む溶液と混合する。
【0098】
本発明の製剤は、認可されている装置を用いて投与することができる。単一バイアル・システムを備える具体例としては、レビジェクト(登録商標)など、溶液を供給するためのオートインジェクタまたはペン式注射器がある。
【0099】
この明細書で権利を主張する製品には、パッケージ材料も含まれる。パッケージ材料は、管理機関により要求される情報に加え、その製品を使用できる条件が提供される。本発明のパッケージ材料は、必要な場合には、2バイアル式の湿潤/乾燥製品に関して、最終溶液を調製し、その最終溶液を24時間またはそれ以上の期間にわたって使用するための指示を患者に与える。単一バイアルの場合には、ラベルに、溶液を24時間以上の期間にわたって使用できることを記載する。この明細書で権利を主張する製品は、ヒトの医薬品として有用である。
【0100】
保管された安定な製剤は、透明な溶液として患者に提供することができる。この溶液は、1回だけ使用することや、複数回再利用することができ、しかも患者に対して一連の治療を1回または複数回行なうのに十分であるため、現在よりも便利な治療計画が提供される。
【0101】
この明細書に記載した安定な製剤または溶液としてのインターフェロン、あるいは保管された製剤または溶液としてのインターフェロンは、本発明に従い、さまざまな投与法で患者に投与することができる。投与法としては、従来技術でよく知られているように、皮下注射、筋肉内注射;経皮投与、肺投与、経粘膜投与、インプラント、浸透圧ポンプ、カートリッジ、マイクロポンプ、経口投与や、当業者が評価する従来技術でよく知られた他の手段などがある。
【0102】
“バイアル”という用語は、広く、含有された無菌状態において固体または液体の形態にインターフェロンを維持するのに適した容器を意味する。この明細書で使用するバイアルの具体例としては、アンプル、カートリッジ、ブリスター包装のほか、インターフェロンを注射器、ポンプ(浸透圧ポンプ)、カテーテル、経皮パッチ、肺スプレー、経粘膜スプレーを通じて患者に送達するのに適した他の容器などがある。非経口投与、肺投与、経粘膜投与、経皮投与する製品をパッケージングするのに適したバイアルは従来技術でよく知られており、認可されている。
【0103】
本発明の文脈における“治療”という用語は、疾患の進行に関するあらゆる好ましい効果(例えば、疾患が発症した後の病状の展開が緩和、逆行、軽減、鈍化すること)を意味する。
【0104】
IFN、そのアイソフォーム、ムテイン、融合タンパク質、機能性誘導体、活性な断片、塩のいずれかが含まれた本発明の医薬組成物は、このポリペプチドを用いた治療法に応答する臨床上の徴候を診断、予防、治療(局所または全身)するのに役立つ。そのような臨床上の徴候としては、例えば、中枢神経系(CNS)、脳、脊髄の異常や疾患(多発性硬化症など);自己免疫疾患(関節リウマチ、乾癬、クローン病など);癌(乳癌、前立腺癌、膀胱癌、腎臓癌、大腸癌など)などがある。
【0105】
この明細書に引用したあらゆる参考文献(その中には、学術論文または要約、アメリカ合衆国またはそれ以外の国の特許出願と特許などが含まれる)は、その引用文献に提示されているあらゆるデータ、表、図、文章を含め、その全体が参考としてこの明細書に組み込まれているものとする。さらに、この明細書で引用した参考文献の中で引用されている参考文献の全内容も、その全体が参考としてこの明細書に組み込まれているものとする。
【0106】
公知の方法のステップ、従来法のステップ、公知の方法または従来法への言及があるからといって、本発明のあらゆる特徴、説明、実施態様が、関連する従来技術に開示、教示、示唆されていることを意味するものでは決してない。
【0107】
特別な実施態様に関する上記の説明により本発明の一般的な性質が十分に明らかになったはずであるゆえ、第三者は、従来技術での知識(その中にはこの明細書で引用した参考文献の内容が含まれる)を適用することにより、難しい実験を行なったり、本発明の一般的な考え方から逸脱したりすることなく、さまざまな用途のために実施態様を容易に変更および/または改変することができる。したがってそのような改変や変更は、この明細書に示した教示とガイドに基づき、開示した実施態様の等価物の範囲に含まれるものとする。この明細書で用いる表現または用語は説明を目的としたものであって本発明を制限することは意図していないため、当業者は、この明細書の表現または用語を、この明細書に示した教示とガイドに当業者の知識を組み合わせて解釈すべきであることを理解されたい。
【実施例】
【0108】
実施例1−分析方法
【0109】
サイズ排除(SE)-HPLC法(この明細書では“NEW SE-HPLC”または“NEW SEC”と呼ぶ)と速度超遠心分離法(AUC)を利用し、ヒト・インターフェロン-ベータ1a(r-h INF-ベータ1aまたはr-hβIFN-1a)の凝集体とオリゴマーのレベルを測定した。以下に示すSE-HPLC法とAUC法により、非共有結合オリゴマーと共有結合オリゴマーの両方を、定量的にも定性的にも検出することができる。
【0110】
a.SE-HPLC - 純度試験
【0111】
全凝集体の含有量の検出は、TSK G2000SWXLカラム(東ソー・ハース社)上またはBioSuite(ウォーターズ社)上で実施する。溶離は、イソクラティク・モードで50mMの酢酸ナトリウム緩衝液と50mMのNaCl(pH3.8)を使用して0.5ml/分にて実施する。波長は215nmに設定する。実施時間は30分間である。
【0112】
88mcg/mlのサンプルを、そのまま100μl注入することによって分析する。
【0113】
b.沈降速度分析 - AUC
【0114】
1.方法の説明
【0115】
サンプルを、光路長が12mmである2チャンネルのチャコール-エポン製中心部材を有するセルに充填する。中心部材とサファイア製の窓を洗剤で洗浄した後、水に浸して表面をできるだけ透明にする。対応するプラセボを基準チャネルに充填する(装置は二重ビーム分光測光器のように機能する)。次に、充填したこれらセルをAN-50Ti分析ロータの中に配置し、ベックマン社のオプティマXL-1分析用遠心分離機の中に装填して20℃にする。次にロータを3000rpmにし、サンプルを(280nm、吸収のピーク)スキャンし、セルに適切に充填されていることを確認する。次にロータを最終実行速度である50000rpmにする。各サンプルについてこのロータ速度で50回スキャンした結果を記録する。
【0116】
データを、N.I.H.のPeter Schunkにより開発されたc(s)法を用いて分析し、彼の分析プログラムであるSEDFIT(バージョン8.7;Schunk, P.2000年、「Size-distribution analysis of macromolecules by sedimentation velocity ultracentrifugation and Lamm equation modelling」,Biophys. J.、第78巻,1606〜1619ページ)において実施した。
【0117】
この方法では、多数の生データを直接適合させて沈降係数の分布を導出する一方で、分散がデータに及ぼす影響をモデル化して精度を向上させる。この方法では、すべての化学種が同じ全体的な流体力学的形状を持つという仮定に基づいてそれぞれの沈降係数の値に分散係数を割り当てている(形状は、球の摩擦係数に対するその化学種の摩擦係数の比f/f0によって定義される)。次にf/f0の値を変化させ、各サンプルのデータに対して全体的に最もよく適合した状態を見いだす。分布は、0.51の最大エントロピー平滑化を利用して計算する。
【0118】
2.分析パラメータ
【0119】
- ロータのタイプ 8穴ロータ
- ロータの速度 50k rpm
- 中心部材 チャコール-エポン
- チャネルの長さ 12mm
- AUCを実行中の温度 20℃
- 検出波長 280nm
- サンプルの体積 432mcl
- 基準の体積 442mcl
【0120】
3.装置とソフトウエア
【0121】
分析用超遠心分離機モデルXL-1(ベックマン-コールター社)
SEDFIT、バージョン8.70bソフトウエア(Peter Schunk,国立衛生研究所)
オリジン、バージョン6.03ソフトウエア(ベックマン-コールター社)
プロテオーム・ラブXL-A/XL-1、バージョン5.0ソフトウエア(ベックマン-コールター社)
【0122】
c.RP-HPLCによるIFN-β1aの定量 - QUANT-HPLC
【0123】
以下に説明する逆相法により、サンプル中のIFN-β1aを定量することができる。
【0124】
タンパク質の定量は、C4, ワイド-ポア・ブチル5μm、4.6×250mmカラム(ベーカー社)上で実施する。波長は214nmに設定し、溶離は、以下の移動相と勾配を用いて1ml/分で実施する:
A=水/トリフルオロ酢酸0.1% - B=アセトニトリル/トリフルオロ酢酸0.1% - C=アセトニトリル。
【0125】
サンプルを、50μlのサンプルをそのまま(88mcg/mlのサンプル)注入することによって分析する。
【0126】
【表4】

【0127】
参照用標準材料を用いて用意した0.0125mg/ml〜0.2mg/mlの範囲の標準曲線と比較することにより、サンプルの定量を行なう。
【0128】
d.逆相(RP)-HPLCによる純度 - DEG/OX
【0129】
酸化した形態のIFN-β1aは完全な分子とは溶離の仕方が異なるため、以下に説明する逆相法によって酸化形態を検出することができる。
【0130】
酸化形態の定量は、40℃に維持したC4, スペルコシルLC-304カラム(スペルコ社)上で実施する。波長は208nmに設定し、溶離は、以下の移動相と勾配を用いて1ml/分で実施する:
A=水60%/アセトニトリル40%/ヘプタフルオロブチル酸0.14% - B=水20%/アセトニトリル80%/ヘプタフルオロブチル酸0.14% - C=水20%/アセトニトリル80%/トリフルオロ酢酸0.1%。
勾配:
【0131】
【表5】

【0132】
サンプルを、200μlのサンプルをそのまま(88mcg/mlのサンプル)注入することによって分析する。
【0133】
e.細胞変性効果抑制バイオアッセイ - CPE
【0134】
生物学的効果(抗ウイルス活性)
【0135】
IFN-β1aの生物活性を細胞変性効果(CPE)抑制バイオアッセイによって測定する。
【0136】
IFN-βがウイルス(水疱性口内炎ウイルス)の細胞変性効果から細胞(WISH細胞-ヒト羊膜組織)を保護することに基づく抗ウイルス・アッセイにより、生物活性を測定する。
【0137】
インターフェロンのバイオアッセイの原理は、多数のウイルス(例えば水疱性口内炎ウイルス(VSV))が細胞死を引き起こし、それを生体染色することによって可視化できるという事実に基づいている。
【0138】
次に、細胞変性効果を利用し、インターフェロンによる細胞の保護を定量化する。
【0139】
このアッセイでは、細胞死を間接的に測定する。細胞死は、生きている細胞が染料であるテトラゾリウム塩MTT(ジメチルチオテトラゾリウム)を取り込む量によって評価する。
【0140】
この方法では、保護された細胞の割合の自動的な分光測光測定及び、力価を統計学的に評価するための3点平行線アッセイを利用する。
【0141】
手順
【0142】
アッセイは、微量滴定プレートの中で実施する。
a.50μlの細胞培地(MEM/5%FBS)を各ウエルに添加する。
b.100μlのIFN-β1aサンプルまたは標準溶液(60〜100IUのhIFN-β/ml)をウエルに添加し、プレートの列から列へと3段階の1:1.5希釈を実施する。
c.50μlのWISH細胞懸濁液(0.78〜0.82×106細胞/ml)を各ウエルに添加し、プレートを、5%のCO2を含む湿潤なインキュベータの中で37℃にて18〜20時間インキュベートする。
d.VSV懸濁液を各ウエルに添加する。ただし、MEM/2.5%FBSを満たしたコントロール細胞ウエルは除く。
e.プレートを、5%のCO2を含む湿潤なインキュベータの中で37℃にて24時間インキュベートする。
f.倒立顕微鏡により、
(1)VSVコントロールの列において少なくとも80%の細胞損傷率が達成され、
(2)標準IFN-βの存在下で保護された割合の平均値が、非希釈標準では84%、1:1.5希釈液では45%、1.3希釈液では27%の範囲に入ることを確認した後、
培養物を特別な染料MTTで染色する。
g.592nmで自動的に分光測光の測定値を読み取ることにより、着色強度を測定する。
h.IFN-β1aの活性を定量化するため、ODの読み取り値をコンピュータ・プログラム(コロンボ・ソフトウエア)で分析する。
【0143】
実施例2−HSAを含まないインターフェロン-ベータ1a製剤の安定化
【0144】
以下の実験を行ない、アミノ酸(すなわちリジン)と抗酸化物質(すなわちメチオニン)を含む製剤が、さまざまな温度(2〜8℃、25℃、40℃)においてr-h IFN-ベータ1a製剤の保管に及ぼす保護効果を確認した。実験中は、以下の分析法を利用した(実施例1を参照のこと)。
- 生物活性(インビトロバイオアッセイ)
- アッセイ(RP-HPLC法)
- 酸化生成物(Deg-ox法)
- 二量体/凝集体(NEW SEC-HPLCとAUC。どちらの方法でも共有結合オリゴマーと非共有結合オリゴマーを検出できる)
- 定量的RP-HPLC法(Quant-HPLC)
- pH(電位差測定法)
【0145】
結果を表6〜表8に示す。
【0146】
1.手順:
【0147】
a.2〜8℃で保管/輸送したバルクを用いて製剤を製造した。バルク中のr-h IFN-ベータ1aの濃度は約0.5mg/mlであった。
a.薬剤物質を基剤の中に希釈することによって(2.に示してあるように)リジンを含む製剤を製造し、最終組成物(r-h IFN-ベータ1aの濃度は88mcg/ml)にした。
b.次に、この化合物溶液をナイロン製の0.2ミクロンの膜で濾過し、殺菌容器の中に回収した。次に、充填機械を用いて注射器に0.5mlを充填した。
c.次にこのサンプルを、それぞれ2〜8℃、25℃、40℃にした温度自動調節キャビネットの中で保管し、さまざまな安定化計画に従って約2ヶ月までの保管期間でテストした(40℃で保管したサンプルに関しては1〜3週間)。
【0148】
2.製剤の組成:
【0149】
a.0.088mg/mlのr-h インターフェロン-ベータ1a
b.27.3mg/mlのL-リジン・モノヒドロクロリド(コード1.05701、メルク社)
c.0.12mg/mlのL-メチオニン(コード1.05707、メルク社)
d.0.5mg/mlのプルロニックF68(ルトロールF68 DAC、USP/NF、BASF社)、5163315
e.10mMの酢酸ナトリウム、pH4.7
【0150】
3.結果:
【0151】
【表6】

【0152】
【表7】

【0153】
【表8】

【0154】
4.結論:
【0155】
保管に関する実験から、リジンと、メチオニンと、プルロニックF68とを含む製剤または組成物は、2〜8℃で非常に安定な状態を維持し、25℃では8週間まで非常に安定な状態を維持することがわかる。この組成物は、40℃では、モノマーの割合に関して3週間まで安定な状態を維持する(モノマーの割合は、常に98%を超える)。2つの異なる方法(AUCとNEW-SE-HPLC)によってこの結果が確認された。したがって本発明の製剤は、アミノ酸と抗酸化物質の組み合わせを含んでいることが好ましい。この組成物にはさらに界面活性剤を添加することが好ましい。
【0156】
アミノ酸がリジンであり、抗酸化物質がメチオニンであることが好ましい。界面活性剤の選択は、トゥイーン(例えばトゥイーン20)、プルロニック(登録商標)F77、プルロニックF87、プルロニックF88、プルロニックF68の中から行なうことが好ましい。より好ましいのは、界面活性剤がプルロニックF68になっていることである。
【0157】
製剤は、pHを3.5〜5.5の範囲に設定することが好ましい。より好ましいのは、製剤のpHを4.7に設定することである。
【0158】
リジンは約1mg/ml〜約100mg/mlの濃度で存在していることが好ましい。より好ましいのは、リジンが約27.3mg/mlの濃度で存在していることである。界面活性剤は、約0.01mg/ml〜約10mg/mlの濃度で存在していることが好ましい。より好ましいのは、界面活性剤が約0.5mg/mlの濃度で存在していることである。抗酸化物質は、約0.01mg/ml〜約5.0mg/mlの濃度で存在していることが好ましい。より好ましいのは、抗酸化物質が約0.12mg/mlの濃度で存在していることである。インターフェロンは、約10μg/ml〜約800μg/mlの濃度で存在していることが好ましい。より好ましいのは、インターフェロンが約88μg/mlの濃度で存在していることである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターフェロン(IFN)を含んで成る安定化した無HSA液体医薬組成物であって、当該製剤が緩衝液、アミノ酸及び抗酸化物質を含んで成る溶液である組成物。
【請求項2】
前記製剤が界面活性剤をさらに含んで成る、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記インターフェロンがIFN-ベータである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記IFN-ベータがヒト組み換えIFN-ベータである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記緩衝液が、前記組成物のpHを特定のpH値の±0.5単位の範囲内に維持するのに十分な量存在しており、その特定のpH値が約3.5〜約5.5である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記pH値が4.7±0.2である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記緩衝液が約5mM〜500mMの濃度で存在している、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記緩衝液が約10mMの濃度で存在している、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記緩衝液が酢酸塩緩衝液である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記アミノ酸が、荷電した側鎖を有するアミノ酸の群から選択される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記アミノ酸が、アルギニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸から選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記アミノ酸がリジンである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記リジンが約1mg/ml〜約100mg/mlの濃度で存在している、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記リジンが約27.3mg/mlの濃度で存在している、請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記界面活性剤が、トゥイーン、プルロニック(登録商標)F77、プルロニックF87、プルロニックF88及びプルロニックF68から選択される、請求項1〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記界面活性剤がプルロニックF68である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
前記界面活性剤が約0.01mg/ml〜約10mg/mlの濃度で存在している、請求項1〜16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
前記界面活性剤が約0.5mg/mlの濃度で存在している、請求項1〜17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
前記抗酸化物質がメチオニンである、請求項1〜18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
前記抗酸化物質が約0.01mg/ml〜約5.0mg/mlの濃度で存在している、請求項1〜19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
前記抗酸化物質が約0.12mg/mlの濃度で存在している、請求項1〜20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
前記インターフェロンが約10μg/ml〜約800μg/mlの濃度で存在している、請求項1〜21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
前記インターフェロンがヒト組み換えインターフェロン-ベータ1aであり、約22、44又は88μg/mlの濃度で存在している、請求項1〜22のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
前記インターフェロンが約88μg/mlの濃度で存在している、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
フェノール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)、塩化ベンズアルコニウム、塩化ベンズエトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム及びチメロサールから選択した静菌剤をさらに含んで成る、請求項1〜24のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
前記静菌剤がベンジルアルコールである、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
インターフェロン-ベータ1a、ベンジルアルコール、リジン、メチオニン、プルロニックF68及び酢酸塩緩衝水溶液から成る、請求項1〜26のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
前記インターフェロンが、モノマーとして少なくとも約96%又は約98%で存在する、請求項1〜27のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項29】
請求項1〜28のいずれか1項に記載の液体医薬製剤を含んで成り、使用前に無菌で保管に適した条件において密封された容器。
【請求項30】
前記容器が、前もって充填した注射器、バイアル又はオートインジェクタである、請求項29に記載の容器。
【請求項31】
多発性硬化症の治療に用いる薬を調製するための、請求項1〜28のいずれか1項に記載のIFN組成物の使用。

【公表番号】特表2008−500996(P2008−500996A)
【公表日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513938(P2007−513938)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【国際出願番号】PCT/EP2005/052414
【国際公開番号】WO2005/117949
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(504104899)アレス トレーディング ソシエテ アノニム (59)
【Fターム(参考)】