説明

安定化剤分子を除去するアルブミン液

【課題】 本発明は、アルブミンの結合サイトを占拠できる安定化剤分子含有の出発アルブミン液よりアルブミン水溶液を製造する方法に関し、該方法は、他の分子に対するアルブミンの結合能(ABiC)を増加させる方法で、該安定化剤分子の少なくとも一部分を該出発アルブミン液のアルブミンから除去し該出発アルブミン液から分離することからなる。該方法を行うため、出発市販安定化アルブミン液を、より簡単で素早く安価に、そしてアルブミンに対して穏和な手法で調製処理可能な方法によりなされ、その方法は安定化剤分子の少なくとも一部、好ましくは安定化剤分子のすべてに対する固体吸着性物質の親和性が、対応安定化剤分子に対するアルブミンの親和性より高い固体吸着性物質と出発アルブミン液とを接触せしめ、アルブミンを該吸着性物質から分離せしめるもので、その方法は> 3のpHで行われる工程を含有しているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルブミンの結合サイトを占拠することのできる安定化剤分子を含有している出発アルブミン液よりアルブミン水溶液を製造する方法に関するもので、本製造方法は、他の分子、例えば、生理的な効果を有している分子に対してのアルブミンの結合能(albumin binding capacity; ABiC)を増加させる方法において、該安定化剤分子の少なくとも一部分を当該出発アルブミン液のアルブミンから除去して、該出発アルブミン液から分離することを含んだものである。
【背景技術】
【0002】
多くの重篤な病気であって、その結果臓器の不全を伴っている病気においては、血管のキャパシティーとその中に含まれる容積との間の不一致は中心的な役割を果たしている。その血管のキャパシティーが高すぎたり、該容積が小さすぎると、血圧の低下が起こり、臓器が十分に血液で満たされることがなくなる。その血管のキャパシティーが小さすぎたり、該容積が大きすぎると、血圧が上昇して、その結果心不全及び/又は肺水腫となったりする。
【0003】
血管における容積の突然の喪失及びゆっくりとした喪失の双方は、潅流が最低となり血圧が低下することになるであろう。失血が発生すると突然の容量の消失が起こるであろう。例えば、浸透圧制御タンパク質としてのアルブミンの濃度が減少する(例えば、肝疾患でその合成が影響を受けたとき)ことに起因して血管の基盤から細胞内の空間の中へ移動することによる体液の喪失の結果として、ゆっくりとした容積の消失が起こる。しかしながら、また、血管のキャパシティーの突然の増大及びゆっくりとした増大の双方も、また、血圧を低下せしめることになるであろう。例えば、ヒスタミン、ブラジキニン、カリクレイン、ロイコトリエン類、あるいは、プロスタグランジン類などの血管拡張作用を有する組織ホルモン類の急性のカスケードにより突然の血管の拡張が起こる。それらはアナフィラキシーショックの間に発生する。内臓ネットワークの細動脈中の血管拡張性物質が増加して存在することに連関して門脈の動脈で慢性的に血圧が上昇することによりゆっくりとした拡張が起こり、キャパシティーが大きくなることにより腹水形成を伴った肝腎障害症候群になる。
【0004】
それぞれの場合において該キャパシティーと容積の間には不一致が存在し、それらキャパシティーと容積とは二つの処理の処置方針により影響される。
【0005】
第一には、結晶状又はコロイド状の容積置換用溶液を投与することにより血管内の容積を大きくするような試みがなされることができる。もしそれにより動脈の平均血圧がすべての臓器に十分な血流を許容するといった範囲にせしめられないなら、そのときは、第二のステップで血管を狭くするような「昇圧剤」(血管収縮薬、例えば、カテコールアミン)が使用される。特に肝臓病や敗血症において起こっているように血管の緊張が失われている場合にそのような血管収縮処理が、脈管系のキャパシティーを回復させたり、さらには減少せしめるために使用される。
【0006】
高レベルの血管拡張剤を介して急性又は慢性の血管拡張を起こしている病気では、長期の容積増加のための注入により十分な血圧を維持することは血管収縮薬なしでは可能でない。そのような集中治療という医学上の問題の例としては、血圧の低下とか肝腎障害の問題を伴った肝不全症(血流の問題に起因して肝不全における二次的な腎不全症)又は敗血症が挙げられる。いずれの場合も高い死亡率に繋がっており、医学的にも費用がかかることになる。
【0007】
現在ある溶液剤は、容積置換用液体と血管収縮薬とを組み合わせて投与することが推奨されている。しかしながら、現在ある容積置換用液が血管の中で費やされる時間は限られているものである。結晶状の(塩を含有している)注入用溶液剤は、細胞内の空間の中にすぐさま拡散していく。ポリマーを持っている容積置換用溶液剤、例えば、デンプン溶液剤(ヒドロキシエチルデンプン、HAES)又はゼラチン溶液剤(Gelafundin)が、それらは水を結合しておく性質を有しており、その性質により血漿を血管中で液状に保ち、こうしてより長時間血管内の容積を高めておくことができるので、より長い時間血管中に存在せしめておくのに有効である。しかしながら、適合性がない故に人工物であるポリマーでは問題が生ずる。
【0008】
特に適している容積置換用の手法は、天然のコロイドである血清アルブミンの溶液というものである。血清アルブミンは、血漿増量剤として医療の分野で何年もの間使用されてきているもので、生物学的に最も寛容性のあるものとされており、かくして大変に高価であるが最も好ましい容積増量用の媒質であるとされている。
【0009】
灌注用のヒト血清アルブミンの溶液は市販されて入手可能である。しかしながら、低温殺菌処理や保存を可能とするために、アルブミンの自然におこるポリマー化を避けるために、それらの溶液には安定化剤が補充添加されている。通常、N-アセチルトリプトファン及びオクタン酸又はそのナトリウム塩が、単独で、または、組み合わせて、使用されている。これらの安定化剤はアルブミン分子に対して非常に高い結合親和性を有しており、アルブミンの生物学的機能に関する重要な結合サイトを占拠したり、ブロックする。
【0010】
メタアナリシスは、その他の血漿交換用溶液と比較して集中治療において血清アルブミン液を使用すると死亡率が増加することに繋がったということを示した〔Cochrane meta-analysis in BMJ 1998; 317, p 235-240(非特許文献1)〕。いくつかの特定の指示された症状を除いて、現在存在しているアルブミン潅注溶液は臨床的にいかなる利点も持っていないように見える。現在ある血清アルブミン液の製造方法(分画処理とそれに続く低温殺菌並びに安定化処理)は、血漿増量剤としての血清アルブミンの理論的に理想とされる性状にどのように悪い影響を与えているかということについては、現在のところ知られてはいない。文献では、安定化剤N-アセチルトリプトファン及びオクタン酸がある種の条件下では障害を与えるといった副作用を有するという一致していない言及がなされている。このように、もしこれらの安定化剤を患者にアルブミン液を投与する前に除くことができたなら、それらはアルブミンの重要な機能に対して必要とされている結合サイトを高い親和性を持って占拠したり、ブロックするので望ましいであろう。しかしながら、安定化剤のない(安定化剤フリーの)アルブミン液はアルブミンが自然とポリマー化するとか、こうして、そうした溶液は貯蔵性が劣るといった上記したような問題を有している。
【0011】
ヒト血清アルブミンがリガンドに結合するという生物学的に重要な能力は、多くの文献で扱われている。それを理解するための概要は、とりわけ、J. Peters Jr., All about Albumin, Academic Press, San Diego, New York, Boston, London, Sydney, Tokyo Toronto, 1996(非特許文献2)及びPacifici GM, Viani A, Methods of Determining Plasma and Textile Binding of Drugs, Clin Pharmacokinet, 1992, 23 (6): 449-468(非特許文献3)において見出すことができよう。アルブミンの結合能を決定するための非常に多くの様々な方法があるから、その結果を比較することは困難であり、その医学的な関連性に関して解釈を行うことは実際上不可能である。
【0012】
アルブミンの結合についての挙動を決定する新規な方法としては、ダンシルサルコシンに対するアルブミンの結合能 (ABiC)を測定することで構成されているものが挙げられる〔Klammt S, Brinkmann B, Mitzner S, Munzert E, Loock J, Stange J, Emmrich J, Liebe S, Albumin Binding Capacity (ABiC) is reduced in commercially available Human Serum Albumin preparations with stabilizers(アルブミンの結合能(ABiC)は安定化剤が入った市場で入手可能なヒト血清アルブミン製剤では低下せしめられる), Zeitschrift fur Gastroenterologie, Supplement 2001, 39: 24-27(非特許文献4)〕。これらの方法は、所定の実験条件下での試験用マーカーであるダンシルサルコシンの限外濾過処理されたものの測定、及び、参照用アルブミンに対して、この結合する能力(結合している量)がいかなる関係であるかを求めることに基づいている。
【0013】
健康な供血者と重篤な肝臓病を持った患者とを比較すると、血清アルブミンの結合能の顕著な低下が観察される。該低下は、血清アルブミンの結合サイトを外因性のリガンドが非常に大きく占拠することにより、調べられた患者での解毒作用機能の悪化の結果として説明されるものであった。特定のモデルマーカー(例えば、イブプロフェン)に対しての市場にあり入手可能なヒト血清アルブミン製剤の結合性についての挙動も、劇的に制限されていることが知られている。
【0014】
また、リガンドフリーのアルブミンにおいては、ダンシルサルコシンに対する結合能力は、もしN-アセチルトリプトファンを徐々に1:1のモル比になるまで添加していくと、100%から約60%まで減少すること(Klammt et al, 2001に従ってABiCを使用して測定された)が知られている。
【0015】
技術文献及び医学文献としては、提供者の血漿からの又はバイオテクノロジーにより製造された(リコビナント)アルブミンからのアルブミンの精製法に関する多くの文献が含まれる。しかしながら、これらの文献は、主にアルブミン分画のできるだけ純粋な調製とか血液血漿からのその他のタンパク成分あるいは毒性の可能性のある成分の除去、リコビナントの製造にあってはベクターシステムの除去に関するものである。
【0016】
市場にある血清アルブミン液中の安定化剤などの低分子量のリガンドを除去することは、1967年までは、イソオクタンと酢酸の混合物でもっての抽出に基づくグッドマン法〔Goodman’s methods: Goodman D S, Science, 125, 1996, 1957(非特許文献5)〕、又は、高い酸性度をもつ媒体中での自然発生的脂質層の形成に基づくウイリアムス法〔William’s methods: Williams E J and Foster J F, J Am Chem Soc, 81, 965, 1959(非特許文献6)〕を使用して行われていた。双方の方法は、極度に時間がかかるものであり、毒性をもつ潜在的可能性があり治療用製剤を製造するには適していないものである。こうした方法を使用して製造されたアルブミン液は、貯蔵にあたり安定性に非常に乏しいものである。
【0017】
1967年以降、オクタン酸などの遊離脂肪酸が安定化剤としてアルブミン液に添加されてきており、高い酸性にした後、活性炭で処理することにより該アルブミン液から取り除くことがなされてきた。該方法は、Chen et al, Journal of Biological Chemistry, volume 212, no 2, 25, January, p 173-181, 1967(非特許文献7)に最初に記載されている。その方法では、アルブミン液を酸(HCl)を使用して蒸留水中でpH3又はそれより低いpHの酸性にし、水素結合を破壊してアルブミン分子を折り畳みから解いて、相当する脂肪酸をプロトン化する。これにより、アルブミンと脂肪酸との間の結合を脂肪酸が小さな分子として活性炭に拡散することができる程度まで緩めるのである。次に、アルブミン液は活性炭と混合せしめられ、マグネティックスターラーを使用して氷浴中で1時間攪拌される。次に、混合物を20200gで遠心することにより活性炭を分離する。この方法で種々の脂肪酸を除去することができる。
脂肪酸を除去するためのこの標準的な処理方法(これまでの方法)は、pHやアルブミンに対する活性炭の量の比率などの様々な条件を詳細に研究したことに基礎をおいている。そこで、上記した標準的な処理方法は、断然、最も成功しているものであるのである。このようにアルブミン分子から安定化剤を除去することはアルブミン分子の構造を破壊し、高い酸性の媒体中で結合親和性を共同して低下せしめることによってのみ達成できるのである。3よりも高いという高pH値でヒト血清アルブミンから遊離脂肪酸を実質的に減少化せしめることはうまくいっていない。
【0018】
【非特許文献1】Cochrane meta-analysis in BMJ 1998; 317, p 235-240
【非特許文献2】J. Peters Jr., All about Albumin, Academic Press, San Diego, New York, Boston, London, Sydney, Tokyo Toronto, 1996
【非特許文献3】Pacifici GM, Viani A, Methods of Determining Plasma and Textile Binding of Drugs, Clin Pharmacokinet, 1992, 23 (6): 449-468
【非特許文献4】Klammt S, Brinkmann B, Mitzner S, Munzert E, Loock J, Stange J, Emmrich J, Liebe S, Albumin Binding Capacity (ABiC) is reduced in commercially available Human Serum Albumin preparations with stabilizers, Zeitschrift fur Gastroenterologie, Supplement 2001, 39: 24-27
【非特許文献5】Goodman D S, Science, 125, 1996, 1957
【非特許文献6】Williams E J and Foster J F, J Am Chem Soc, 81, 965, 1959
【非特許文献7】Chen et al, Journal of Biological Chemistry, volume 212, no 2, 25, January, p 173-181, 1967
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
該方法の重要な不利な点は、水性媒質中でかなりの酸性にすることによりアルブミン分子が構造的に変化してしまうことである。お互い同士をたがいに分離しているアミノ酸同士の間のループ形成結合が切断されているだけでなく、疎水性の結合のためのポケットが開けられており、それにより使用されている活性炭上のアルブミンの吸着量を増加させることになる。チェンら(Chen et al)は、彼らの方法の中でチャコールのペレットの中では20%のアルブミンが損失することになることに注意を払っている。該方法は、アルブミン分子の構造が変わることにより、保存中のヒト血清アルブミンが自然とポリマー化することを引き起こすので、市場にある治療用アルブミン液の主要な製造法としては適しているものではない。
【課題を解決するための手段】
【0020】
かくして、本発明の目的は、簡単で、素早く、そして、安価な手法で、安定化された市場価値のある出発アルブミン液を調製できる方法を提供することにある。その方法は、アルブミンに対して穏やかな方法であり、例えば、患者への投与の直前にベッドサイドで、アルブミンの構造にダメージを与えないで、該安定化剤の大部分を除去するとか、アルブミンの結合能を上昇せしめるというものである。
【0021】
特に、当該方法は、静脈の容積置換療法におけるアルブミンのすべての用途に関してアルブミン探索型内在性毒素を不動化するのに有意に有効であるが、さらにまた、アルブミンに対しての血漿交換法又は体外的なアルブミン透析などの対外的な毒物除去処理に対して有意であるSudlow II 結合サイトにおけるアルブミンの結合能を増加せしめるものであるべきである。
【0022】
本目的は、アルブミンの結合サイトを占拠することのできる安定化剤分子を含有している出発アルブミン液よりアルブミン水溶液を製造する方法で達成される。当該方法は、他の分子に対してのアルブミンの結合能(ABiC)を増加させる方法で、該安定化剤分子の少なくとも一部分を当該出発アルブミン液のアルブミンから除去して、該出発アルブミン液から分離することを含んだもので、
a) 使用されている該安定化剤分子の少なくとも一部分、好ましくは該安定化剤分子のすべてに対する親和性がアルブミンの該対応する安定化剤分子に対する親和性よりも大きな固体吸着性物質と該出発アルブミン液とを接触せしめ、そして本処理を> 3のpHで行い、そして
b) アルブミンを該吸着性物質から分離することを包含していることをすることを特徴としている。
【0023】
特に好ましくは、該方法は、pH 5〜9、より好ましくはpH 6〜8で行われる。特に好ましくは、該pHは、6.9〜7.5の範囲である。
【0024】
容積置換媒体としてのヒト血清アルブミン(human serum albunin; HSA)についての現在の医療用途の四分の一(全体で毎年約200トン)において、コロイド浸透という性質に加えて、トキシン類(例えば、ベンゾジアゼピン)に対するインタクトな結合性は大きな役割、すなわち、肝臓疾患に関連している兆候に対して大きな役割を果たしている。しかしながら、本性状は市場にある調製物では結合サイトを占拠し、アルブミンの結合能 (ABiC)を減少化せしめるようにする安定化剤(N-アセチルトリプトファンやオクタン酸)により制限を受けているものとなっている。本発明の方法は市場にある安定化されているアルブミン液を活性のあるpHでの処理操作を行うことなく投与する場所に近いところで調製処理に付すことを可能にする。調製された溶液は上昇せしめられたABiCを持ったアルブミンを含むものである。
【0025】
かくして、血漿増量剤としてのヒト血清アルブミンの性状は、臨床的に改善され、アルブミンの結合する力は、ヒト血清アルブミン (HSA)の生理的な輸送能力に匹敵するものとなる。患者の循環機能、腎臓機能及び脳の機能は、確実に影響を受けており、費用対効果は顕著に改善される。
【0026】
本発明は、相当するような処理工程を使用し且つ適している吸着性物質(吸着用物質)を使用し、市場にあるアルブミン液に含まれており且つ安定化のため及び自然と起こるポリマー化を防止するための安定化剤、特には中鎖脂肪酸類(例えば、オクタノエート)を、急激にpHを減少せしめることなく、大きな出費を払うことなく、十分な量で以って、簡単かつ素早く除去できるという驚くべき観察から生まれたもので、アルブミンの結合能 (ABiC)の測定可能な量の上昇を実現しているものである。本発明の方法は、市場にある安定化されたアルブミン液を即座の調製処理又はベッドサイドでの調製処理にかけるのに特に適しているものである。該得られたアルブミン液は、調製処理されたらすぐに患者に投与されることができる。本方法は、その溶液中のアルブミンが、先行技術で使用されているpHを急激に下げるといったような極端な条件に付されて、アルブミンの鎖の中のお互いに離れているアミノ酸の間の結合であり、ループの形成並びに結合サイトの性質を決定している結合を破壊することによりアルブミン分子の結合サイトから安定化剤を取り除くといったことではないという、さらに優れた点を有している。本発明の方法では、先行技術で知られたアルブミン分子の構造上の有害な変化は生起しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
定義
アルブミンの結合能又はアルブミン結合量(ABiC)
本明細書中、アルブミンの結合能(又はアルブミン結合量; ABiC)は、Klammt et alの方法を使用して決定される。第一に、アルブミン液中のアルブミンの濃度は、比濁法(ネフェロメトリー)により決定される。次に、当該アルブミン液は、希釈によりアルブミンの濃度150 μmol/l又は300 μmol/lに調整される。アルブミンの結合サイト II (ジアゼパム結合サイト)に対して特異性を有する蛍光マーカー(ダンシルサルコシン; dansylsarcosin, シグマ・ケミカル; Sigma Chemical)で、所定濃度の蛍光マーカーと、一容量のアルブミン液とを等モル比で混合し、25℃で20分間インキュベーション処理する。インキュベーション処理後、未結合の蛍光マーカーを限外濾過(Centrisart I, ザルトリウス、ゲッチンゲン、ドイツ国; 排除サイズ: 20000 ダルトン)によって分離して除き、該分離された溶液中の未結合の蛍光マーカーの量を蛍光測定法(Fluoroscan, Labsystems, フィンランド国; 励起光: 355 nm; 放射光: 460 nm)により決定する。蛍光を増強するためには、未結合の蛍光マーカーの溶液に150 μmol/l又は300 μmol/lの濃度のリガンドフリーのアルブミン(脂肪酸フリー; シグマ・アルドリッチ(Sigma Aldrich)より入手、粉末状のもの)を補充する。該サンプルアミノ酸溶液と同時に、参照用アルブミンの対応する溶液について同じ測定を行なう。参照用のものは、精製され且つ脱リガンド処理されたヒト血清アルブミン(BiSeKo, Biotest Pharma GmbH, Dreieich, ドイツ国)である。あるいは、該アルブミンは50人を超える健康な血液提供者(ドイツ国赤十字(Deutsches Rotes Kreuz)所定の基準を使用)からなる血清プールから得られることもできる。
本アルブミンの結合能 (ABiC)は、次式により計算される:
【0028】
【数1】

【0029】
NB: Klammt et alの方法及び上記の式に従って測定されたアルブミンの結合能 (ABiC)は、その結合サイトのすべてに対するアルブミンの絶対的な結合能(又は結合量)を与えるものではないが、参照用アルブミンと比較した場合の、Sudlow II 結合サイト(ジアゼパム結合サイト)に結合するリガンドに対する相対的な結合能(又は結合量)を与える。このように、それは100%より大きな値を有していることもできる。しかしながら、その特別な測定法は、該マーカーが当該結合状態から特別に追い出され易いのでアルブミンの結合能の僅かな変化を測定するのに特に適している。
【0030】
通常市場にあるアルブミン液、それはN-アセチルトリプトファン及び/又はオクタン酸(カプリル酸)又はそのNa塩でもって安定化せしめられているが、それらは、普通、本明細書で記載した決定方法を使用して測定されるように、60%より低いアルブミンの結合能を持つものである。本発明は、> 3のpH、好ましくは5〜9の範囲のpHで、アルブミン自体よりも使用された安定化剤(例えば、オクタン酸及び/又はN-アセチルトリプトファン)に対してより大きな親和性を有している吸着剤で吸着する方法を使用することに基づいたものである。本発明の方法を使用すると、市場にある安定化せしめられているアルブミン液中のアルブミンの結合能を、酸性にすることなしに100%より大きなもの(該参照用アルブミンに関して)に30分より短い時間で高めることができる。
【0031】
本発明の方法の本質的に優れた点は、アルブミンが、例えば、苛酷な酸性化処理あるいは変性手段の使用などの極端な条件下での実質的に構造上の変化を起こすものでなく、本質的にネイティブなコンフォメーションを保持するものであることにある。かくして、患者への点滴の後、そして安定化剤を除去した後の改善された結合能に起因して、市場にあるアルブミン製剤に比べかなり高い活性が得られる。本発明の方法のさらなる利点は、安価で且つ簡単な装置を使用して、安定化されたアルブミン液の安定化剤を素早く非常に減少せしめられて、安定化剤を極度に減少化せしめたアルブミン液を調製することができることにある。かくして、例えば、アルブミンの内部ループ構造を自発的に再生するようにすること(それにより減少化せしめられたアルブミン分子又はポリマー化せしめられたアルブミン分子が自然と形成されるか否かは不確かであるが)により、安定化剤を取り除いた後アルブミンを再生処理することが、必ずしも必要ないのである。普通、減少化処理の後、本発明のアルブミン液は、65000 ダルトンより大きな孔径を持った粒子用フィルターを通すのみで、存在するであろう粗いサイズの粒子を除去できる。これにより、投与時点の近くで(例えば、ベッドサイドで)本方法を行うことができる。
【0032】
普通、アルブミンは、例えば、血漿増量剤としてヒトに投与されるので、その場合は、本発明に従えば、ヒト血清アルブミン(HSA)が、有利に、使用される。本発明の方法は多くの安定化剤又はその他のリガンドを取り除くのに使用できるが、安定化剤分子であるN-アセチルトリプトファン及び/又はオクタン酸又はその陰イオン類を取り除くのに特に適している。本方法は、有利に、104より大きなKa値(会合定数)を持っているリガンドに対して使用することができる。
【0033】
本発明の方法の好ましい実施態様では、吸着性物質を含有しているカラム(クロマトグラフィーカラム)を通すように出発アルブミン液を供給して、出発アルブミン液と吸着性物質とを上記のステップa)で接触せしめる。
【0034】
本発明の方法の別の実施態様では、吸着性物質からなるベッドを通すように出発アルブミン液を供給して、出発アルブミン液と吸着性物質とを上記のステップa)で接触せしめる。特に適した例としては、ゆっくりと動いているスターラー又はバイブレーターを使用したり、あるいは、向流を使用して動かされている穏やかに動く流動床(ベッド)が挙げられる。これにより、吸着性物質が緊密に詰められているベッドの中のチャンネル(通路)や流路が、アルブミン液の通過を阻害したり、遮断するような非常に小さな粒子により占拠されることを防止する。
【0035】
既に記載したように、上記ステップb)での吸着性物質からのアルブミン液の分離は、
粒子用フィルターを通してアルブミン液を濾過することにより首尾よく行うことができる。ここで当該粒子用フィルターは、アルブミン分子を通すが、固体吸着性物質を通さないように選択される。
【0036】
本発明の方法のさらに好ましい実施態様では、吸着性物質粒子は、マトリックスに結合せしめられているか、あるいはマトリックス中に結合せしめられている。好適なマトリックス材料物質としては、支持体用繊維状物質(例えば、ポリマー製ファイバー繊維)又は開孔をもつポリマーフォームの構造体(例えば、連続細孔構造を有しているポリウレタンフォーム)が挙げられる。
本発明の方法のさらに別の実施態様では、吸着性物質の粒子は、吸着性物質の粒子が十分な間隔を取るようにしたり、適したチャンネルのサイズを与える「スペーサー」としての高度に多孔性の粒子に混合することにより、固体ベッドのリアクターとして単純に形成されているものである。高度に多孔性で連続細孔構造を有しているポリマーフォームに固定する場合、例えば、穴あけ処理により、チャンネルを同時に作ったり、あるいは、その後に作ったりすることもできる。本実施態様での有利なパック法としては、比較して高い粘性を有しているアルブミン液に低度のパーフュジョン用バックプレシャーを付与する繊維状物又は支持体ポリマーを使用し「ゆるく」詰めるものである。さらに、微細な粒子(ミクロ粒子)を滞留させるためのフィルターの仕様としては、上記した実施態様におけるよりももっと低いものである。
【0037】
本発明の方法のさらに好ましい実施態様では、該ステップa)及びb)はそれを数回繰り返すこともでき、好ましくは2〜6回繰り返して行われる。そこでは、それぞれの場合、ステップb)で得られた処理済みのアルブミン液をステップa)に戻すことがなされる。該安定化剤を減らす処理を改善するため、ステップa)では、再生された吸着性物質及び/又は新鮮な吸着性物質が安定化剤分子を取り除くために成功裡に使用される。これは、提供された装置の吸着性物質を交換することにより行うことができるが、特に好ましくは、吸着性物質を備えたいくつかの吸着用の機器又は装置を直列に配置し、それらを通してアルブミン液を連続的に供給せしめられることができる。
【0038】
本発明の方法のさらに好ましい実施態様では、ステップa)における出発アルブミン液中のアルブミンの濃度に対しての吸着性物質の量及び/又は出発アルブミン液と吸着性物質との接触時間は、製造されるアルブミン液のアルブミンの結合能(ABiC)であって、Klammt et alに従って測定されたアルブミンの結合能(ABiC)が、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、特に好ましくは少なくとも80%、そしてさらに特に好ましくは少なくとも90%であるように選択される。ここで必要とされる吸着性物質の量及び該接触時間は、使用される出発アルブミン並びに使用される装置に応じて選択され、それらは当業者により一般的な知識及び技能を使用して決定されることができる。
【0039】
本発明の方法のさらに好ましい実施態様では、ステップa)における出発アルブミン液中のアルブミンの濃度に対しての使用される吸着性物質の量及び/又は出発アルブミン液と吸着性物質との接触時間は、出発アルブミン液中の、結合された安定化剤分子、特にはN-アセチルトリプトファン及び/又はオクタン酸(カプリル酸)又はその陰イオン、及び未結合の安定化剤分子、特にはN-アセチルトリプトファン及び/又はオクタン酸(カプリル酸)又はその陰イオン、の濃度が、その出発濃度の70%より低いもの、好ましくは50%より低いもの、特に好ましくは30%より低いもの、そしてさらに特に好ましくは10%より低いものに減少せしめられているように選択される。吸着性物質の量及び該接触時間は、使用される出発アルブミン並びに使用される装置に応じて選択され、それらは当業者により一般的な知識及び技能を使用して決定されることができる。
【0040】
本発明の方法のさらに好ましい実施態様では、ステップa)における出発アルブミン液中のアルブミンの濃度に対しての使用される吸着性物質の量及び/又は出発アルブミン液と吸着性物質との接触時間は、出発アルブミン液中の、結合された安定化剤分子、特にはN-アセチルトリプトファン及び/又はオクタン酸(カプリル酸)又はその陰イオン、及び未結合の安定化剤分子、特にはN-アセチルトリプトファン及び/又はオクタン酸(カプリル酸)又はその陰イオン、の濃度がその出発濃度の3.5 mol/molアルブミンより低いもの、好ましくは2.5 mol/molアルブミンより低いもの、特に好ましくは1.5 mol/molアルブミンより低いもの、そしてさらに特に好ましくは0.5 mol/molアルブミンより低いものに減少せしめられているように選択される。
【0041】
特に好ましくは、本発明の方法を実施するための吸着性物質としては、カラム又はベッドあるいは支持体マトリックスに詰められて液体を運搬するチャンネルが吸着性物質の粒子の間に形成されているような粒子形態の材料物質が挙げられる。そこでは、使用された吸着性物質のすべての粒子の間に形成されたチャンネルの長さの全体に渡っての、該チャンネルの平均直径が、100 nmより大きく且つ1000 μmより小さい、好ましくは500 μmより小さい、より好ましくは300 μmより小さい、そして特に好ましくは200 μmより小さい、さらにより好ましくは100 μmより小さい。
【0042】
より小さなチャンネルの直径であればあるほど、アルブミン分子が吸着性物質により形成されたチャンネルの壁と接触することになる可能性がより大きくなるし、本発明の方法で安定化剤を減少せしめる速度がより高くなる。しかしながら、チャンネルの大きさは、アルブミンの流速が遅くなりすぎるので小さ過ぎてはならない。かくして、もし使用された吸着性物質のすべての粒子により形成されたチャンネルの長さの全体に渡っての、該チャンネルの平均直径が、100 nmより大きく且つ60 μmより小さい、特に好ましくは10 μmより小さいと、特に利点があることが証明された。
【0043】
本発明の方法の特に好ましい実施態様では、ステップa)における出発アルブミン液と吸着性物質との最低限の接触時間は、次のようになるように選択される:
【0044】
【数2】

【0045】
上記中、「dm」は、使用された吸着性物質のすべての粒子の間に形成されたチャンネルの長さの全体に渡っての、チャンネルの平均直径を意味する。
もしステップa)における出発アルブミン液と吸着性物質との最低限の接触時間が、次のようになるように選択されるならより効率的な安定化剤の減少化が起こる:
【0046】
【数3】

【0047】
上記中、「dm」は、吸着性物質のすべての粒子の間に形成されたチャンネルの長さの全体に渡っての、チャンネルの平均直径を意味する。
【0048】
本発明の方法の特に好ましい実施態様では、該吸着性物質は活性炭である。活性炭は、懸濁物を形成できる物質として、又は、粉末として、例えば、カラムに詰められた粉末として、あるいは、吸着性物質のベッドとして、有利に使用される。粉末中の活性炭粒子は当該粒子の間にチャンネルを形成することができ、そして該チャンネルが一方ではアルブミン液が十分な流速で吸着性物質を通って流れることを許容するように十分に大きなものであり、他方ではアルブミン液中のアルブミン分子が通過する間、高い頻度で活性炭粒子の表面と直接的に接触することになることができるように十分に狭いものであることは重要である。特に好ましくは、活性炭粉末は、該粒子の間に形成されたチャンネルが該記述の利点を持っているチャンネルの直径を有しているようなものである。かくして、活性炭粒子の間のチャンネルの平均直径は、活性炭粒子の間に形成されたチャンネルの長さの全体に渡ってでみて、100 nmより大きく、そして、1000 μmより小さく、好ましくは500 μmより小さく、特に好ましくは300 μmより小さく、より好ましくは200 μmより小さく、そしてさらに好ましくは100 μmより小さくあるべきである。
【0049】
あるいは、活性炭は、固体多孔性マトリックス、例えば、セルロース、樹脂又はその他のポリマー繊維、あるいは、開孔型のフォームから製造されたポリマーマトリックス中の吸着性物質として包埋されていることができる。マトリックス中に活性炭を包埋せしめる場合には、該マトリックスが、アルブミン液が流れて入ることを許容するもので、そして、該マトリックスがそれらとアルブミン液とが接触するように活性炭粒子を担持するものであるように注意すべきである。さらに、該マトリックス用材料物質の多孔性の程度は、該孔が上記したチャンネルの直径を有しているチャンネル形成して、アルブミン液が通って流れるのを許容できるようなものである。
【0050】
親水性を有している支持体マトリックスを有利に使用でき、当該支持体マトリックスは吸着性物質が湿った状態であることを許容するものである。そうした支持体マトリックスとしては、例えば、セルロース、その他の天然又は合成の親水性ポリマー類が挙げられる。
【0051】
活性炭自体は、その粒子の中にマクロ孔(マクロポア、> 25 nm)、メソ孔(メソポア、1-25 nm)、そしてミクロ孔(ミクロポア、<1 nm)を持っている多孔性の物質であり、その結果、その活性炭は非常に大きな内部表面積をもっている。これらの孔の大きさは、普通、モラセス値(molasses number、マクロ孔)、メチレンブルー吸着度(メソ孔)及びヨード吸着量(iodine number、ミクロ孔)により表わされる。内部表面積はBETを使用して決定され、m2/g活性炭で表わされる。一般的には活性炭は分子を孔の中に取り込み、それらをその中に保持したり、あるいは、表面の結合により物質を固定化する吸着用媒体として知られている。高度に多孔性であり且つ高い内部表面積を持つことから、活性炭はその重量あるいは外部容量に比べて非常に高い吸着能を有している。このことはこうした孔部に拡散することができるという分子に依存している。
【0052】
市場にあるアルブミン液の調製にかんする技術の状況では、活性炭を単独で使用したのでは、安定化されているアルブミン液中のアルブミン分子に非常に強く結合している安定化剤を、アルブミン分子から取り除くには不十分である、特には、許容されるような速度でないというものである、ということが示されている。また、これは、アルブミン液から安定化剤を取り除くためのこれまで方法では、吸着用媒体としての活性炭を3より高いpHでスラリーに添加しているが、しかしながらうまく成功してはいないといった方法で確認されている。唯一続いて行われる強く酸性化する処理やそれに伴うアルブミンの構造の変化又は変性が起こっているような公知の方法で安定化剤分子をアルブミンから除去し、且つ、それらをうまく活性炭に結合せしめることに成功しているだけである。
【0053】
本発明者等は、吸着性物質の粒子、特には活性炭の粒子を特定の配置にすると、すなわち、該粒子間のチャンネルが利点のあるサイズとなるようにすると、例えば、> 3のpHなどの穏和な条件で、以前より、アルブミン分子に強く結合している安定化剤分子の、より容易でかつより速い開放につながるということを今回発見した。当該チャンネルは100 nmより大きな平均直径を有しているもので、その結果、アルブミン分子は適切に入り込んでいくことができる。かくして、それらは、普通、活性炭での吸着がおこるメソ孔又はミクロ孔より実質的に大きなものでなければならない。該チャンネルの平均直径は、1000 μmより大きくないものであるべきである。該チャンネルの平均直径が小さいければ小さいほどそれが100 nmより大ききいものである限りにおいて、アルブミン分子からの安定化剤の除去速度はより大きくなるということが示された。優れていることに、吸着性物質の粒子は、該チャンネルが少なくとも一つの入口と一つの出口を有していて、その結果、入ってきたアルブミン分子がその中に補足されることはなくて、該チャンネルから出て行くことができるように配置されている。
【0054】
その上、吸着性物質として活性炭を使用した場合、もし活性炭(吸着性物質として使用するように様々な多孔性の程度並びに内部表面積を持つようにして得られたり、製造されたもの)が、モラセス値(IUPAC) 100〜400、好ましくは200〜300を持つようにされていると、安定化剤を除去する速度はさらに改善することができることを発見した。さらに優れていることに、それは、メチレンブルー吸着度(IUPAC) 1〜100 g/100 g活性炭、好ましくは10〜30 g/100 g活性炭、ヨード吸着量(IUPAC)500〜3000、好ましくは800〜1500、及び/又は、総内部表面積(BET) (IUPAC)100〜5000 m2/g活性炭、好ましくは800〜1400 m2/g活性炭を有している。
【0055】
本発明は、上記で規定した特性を有している吸着性物質並びに本発明の方法を実施するためのその用途にも関する。また、さらに本発明は本発明の方法を使用して製造されたアルブミン水溶液を低アルブミン血症の治療用の手段(製剤)、容積置換用媒体又は血漿増量剤、及び/又は、患者の体内循環、腎臓及び/又は脳の機能の改善のための手段(製剤)の製造用に使用することにも関する。該媒体は、アルブミンに対する親和性を有している生理物質を強く不動化することに向けられているものである。
【0056】
さらに、本発明は、本発明の方法を使用して製造されたアルブミン水溶液を血漿置換手段(血漿置換用剤)として又はアルブミン透析用の透析液として血液を精製するための手段の製造に使用することにも関する。特に後者の用途に関しては、本発明に従って製造されたアルブミン液は、リコンビナントヒト血清アルブミンなどのリガンドフリーのアルブミンの同等の溶液より実質的に比較的安価なものである。
【0057】
本発明の方法又は本発明の安定化剤減少化方法に従って製造されたアルブミン液は、医薬分野で大きな応用性を有している。重篤な肝臓病、緊張低下及び過動循環の問題を有している患者は制限されたアルブミンの結合能 (ABiC)を有しており、現在利用可能な標準的なアルブミン製剤によっては改善できない。これに関連し、実験的にはいまだ支持されているわけではないが、理論では、この制限された結合能力は、傷害された肝臓によっては、もはや生理的に十分な程度に解体されることが起こらないアルブミン探索トキシンが内因的に蓄積している結果である。市場にあるヒト血清アルブミンの製剤を使用して、この制限されているアルブミンの結合能を増強する試みは、その製造法により必要とされているように、安定化剤を有している製剤を過剰に入れすぎたことにより失敗に終わっているのである。しかしながら、これらの安定化剤はウイルスから保護することに関するアルブミン液の低温殺菌処理のために及び自然とポリマー化することに対して安全に保存するためには不可欠なものである。これらの安定化剤を除去するためには、これまで、極端に酸性にすることが必要であるとか、及び/又は、大量のアルブミンが失われることになる。本発明は、事前に活性な酸性化をなすこと無しに、改善されたアルブミンの結合能を有するアルブミン液を使用する時点の近くで製造するための方法を提供している。
【0058】
本発明に従って製造されたアルブミン液は、とりわけ、アルブミンのジアゼパム結合サイト(Sudlow 結合サイト II)に対して親和性を有しているトキシン類や血管作動性物質に対し高い結合能を有している安定化剤フリーのアルブミンでもっての容積置換手段として使用されることができる。本発明の方法は、装置に関して安価且つ経済的であり、その結果、容易に実施でき、例えば、患者に該溶液を注入する直前にベッドサイドで容易に実施できる。
【0059】
本発明に従って製造されたアルブミンは改善された結合能があるので、該アルブミン液は、コロイド性浸透圧上昇化作用、すなわち、脈管における水との結合効果により予測されるように、容積置換物として働くだけでなく、血管拡張性物質やその他の毒性物質を積極的に不動化することにより置換物として働くものである。これにより血管拡張作用が減少し、かくして、血管床を満たし、容積置換作用で相乗的な効果を得ることになる。最後に、平均動脈血圧にかなりの影響を与え、かくして、脈管系を潅流することが拡張期の血圧により示されることになる。
【0060】
さらに、本発明に従って製造されたアルブミン液は、アルブミン透析でリガンドが結合するのを改善するのに有利に使用されることができる。
【0061】
本発明の方法は、アルブミン液中の安定化剤を減らすことを、大きな速度で、すなわち、比較的短時間で行うことができるという利点を有している。かくして、市場にあるアルブミン液を10〜30分以内に処理することができ、そのアルブミンの結合能を実質的に上昇せしめることができる。該方法は、このように、市販の安定化されたアルブミン液をベッドサイドで調製処理するのにとりわけ適しているが、本発明はそれに限定されるものではない。病院又は診療所の薬剤調製部門やその他の設備あるいは企業などでその減少化処理を行うことも可能である。
【0062】
本発明の方法に従えば、オクタン酸(オクタン酸塩)及び/又はN-アセチルトリプトファン(N-アセチルトリプトファン塩)で安定化されている市場にあるアルブミン液を処理し、これら安定化剤のそれぞれの濃度を5 mol/molアルブミンより少ない、好ましくは1 mol/mol アルブミンより少ない、特に好ましくは0.2 mol/mol アルブミンより少ないといったこれら安定化剤のそれぞれの濃度にまで減らすことが可能である。本発明をここで幾つかの実施例を使用してさらに詳しく記載する。
実施例
【実施例1】
【0063】
〔充填型カラムでの粉末吸着性物質〕
安定化されているアルブミン液から安定化剤分子を減少化することに関して、効率を比較するための実験を行い、そこでは様々な吸着性物質調製物を製造してテストした。本発明の二つの吸着性物質の調製物として、規格活性炭Norit GAC 830 (Norit)を工業用グラインダーの中で各種の粒子サイズにまで粉にひく処理に付した。粉末にされた生成物の粒子サイズを顕微鏡的に測定し、市販のアナライザーを使用して測定した。本発明の第一のバッチ(A1)としては、活性炭Norit GAC 830を1 mm(D50)の粒子サイズにまで粉にひいた。本発明の第二のバッチ(A2)としては、活性炭Norit GAC 830を0.1 mm(D50)の粒子サイズにまで粉にひいた。D50は、50パーセンタイル値に相当するものである(下記参照)。比較例(V)として、押出し成形炭Norit ROX (Norit ROX extruded charcoal: Norit)を使用した。
【0064】
活性炭材料物質100 gを直径6 cm、高さ10 cmで網目ベースを備えたカラムに充填し、水を含ませた。170 ml/minの速度で再循環されている塩の溶液(ZLB Behring, pH 7.2) 330 ml中の市販の20 gのアルブミンを各カラムの中の吸着性物質を通るように流した。時間0の時点及び20, 30, 60及び120分後の時点で、オクタン酸、N-アセチルトリプトファン及びアルブミンの濃度並びにアルブミンの結合能(Klammt et al, 2001)を測定した。また、コントロールとして、時間が240, 1440及び2880分の時点で、それらの値を測定した。結果を、表1に示す。
【0065】
押出し成形炭Norit ROX材は、材料を押出し成形された形態のものであるので、カラムに充填したときには粒子の間に非常に広い空間部又はチャンネルを形成した。その直径はしばしば1 mmを越えるほどであったし、それは注水圧に関して有利であり、特には、100〜250 ml/minの速度で流すことを可能にする。しかしながら、本発明の粉末にした活性炭についてのバッチA1及びA2と比較すると、かなり大きなチャンネルを持ったこの吸着性物質は、短時間でアルブミンの結合能を増加せしめるには実用的には不適なものである。粉末にまで細かくされた活性炭である材料のバッチA1及びA2のカラムでは、チャンネルの直径は次式(I)で良好に近似して与えられる:
【0066】
【数4】

【0067】
上式中、RKは、粒子間の平均チャンネル半径であり、RPは、粒子自体の平均半径である。
【0068】
平均直径1 mm、すなわち、500 μmの半径RPを有しているバッチA1の粉末にされた粒子については、平均チャンネル半径RKは、77 μm、すなわち、平均チャンネル幅(平均直径)約150 μmであった。平均直径0.1 mm、すなわち、50 μmの半径RPを有しているバッチA2の粉末にされた粒子については、平均チャンネル半径RKは、7.7 μm、すなわち、平均チャンネル幅(平均直径)約15 μmであった。また、上記式に基づいたチャンネル幅の本計算の結果は、カラム物質のサンプルを樹脂に固定化し、顕微鏡観察することにより確認される。
【0069】
【表1】

【0070】
成形炭Norit ROXの結果は、上記の記載、すなわち、生理的な条件下で、特に中性pHで、これまで使用されていた実験条件の下での安定化剤の実質的な減少化処理、すなわち、大きなチャンネル幅を有している活性炭粉末又は懸濁物を使用する減少化処理が、60分間では可能ではないこと、つまり、実質的にアルブミンの結合能を上昇せしめるような量ではないことを確かめるものであった。
【0071】
驚くことに、本適用において与えられるデータに従って接触時間を延長すると、本活性炭でもってオクタン酸を減少化することとなり、それでアルブミンの結合能を高くすることになる。最低限必要とされる接触時間をチャンネルの幅の関数として見積もるためのガイドラインに従い、平均の幅(dm) 1000 μmとすると、接触時間は250 minをこえるところまで延長されるべきである。実験では、240 minの時点でABiCはたった80%を丁度上回る程度であり、一日後(1440 min)に測定した時にのみ90%を上回るといった許容される値となる。
【0072】
試験活性炭の表面構造を調べてみると、一方ではマクロ孔のみがアルブミン分子がある程度入っていくことを許容するが、膨大な大多数のメソ孔はアルブミンが通過することを可能にするには小さ過ぎるので、アルブミン分子の見えないほど小さな部分のみが実際のところ活性炭の表面と直接的に接触することができるものであることが示された。しかしながら、該マクロ孔は、孔部及び枝路の見えないほど小さな部分を外面の下のすぐのところで非常に迅速にアルブミン分子によってはもはや通過せしめられることができないメソ孔にせしめられる。マクロ孔がアルブミン分子が入ってくるのを許容する場合、大部分に関して、アルブミン分子は該孔部に捕捉され、それにより、特にはマクロ孔である活性炭でもって、多量のアルブミンの損失になってしまう。
【0073】
試験バッチA1及びA2は、より狭い平均チャンネル幅を造ることにより、例えば、粉末の比較的小さな平均直径を持っている粒子を使用することによりこの問題を解決することができるということを示している。さらに、その結果は、吸着性物質を配列することが安定化剤を除去する作用効果において本質的な役割を果たすものであり、それは吸着剤を選択すること単独では達成できないということを確認するものである。本発明の方法では、他方、アルブミン分子に適合するように大きさが決められているチャンネルを有している吸着性物質が使用される。これらのチャンネルの全部の長さをアルブミン分子は通過することができ、アルブミン分子が該吸着性物質の表面と非常に頻繁に且つ密接に接触することとなるように大きさが決められる。該チャンネルは平均の内部の幅又は平均直径で特徴付けられる。
【実施例2】
【0074】
〔流動床リアクターでの活性炭粒子懸濁物〕
活性炭の外側表面を粉にひく方法で大きくするのではなく、当該物質の粒子の間のチャンネルを最適化された平均チャンネル直径に調整することが、本発明でうまくいくことの原因であることを具体的に示すため、さらに実験として、同じ外側表面の面積を有している吸着性物質につき、様々なチャンネル幅とのみしたものに付き調べた。本事例では適している実験の上でのベーヒクルとしては、流動床であり、そこでは微細な微粒子の吸着性物質は、攪拌すること、振動すること、又は対流あるいは乱流により懸濁物に保たれる。当該流動床では、懸濁物中で均一に分布せしめられている粒子の間に形成された空間はアルブミンの流れのためのチャンネルを形成する。
流動床におけるチャンネルの直径は、良好な近似で次式(II)を使用して与えることができる:
【0075】
【数5】

【0076】
上式中、DKは、粒子間の平均チャンネル直径で、DPは、粒子自体の平均直径で、nは、粒子の数で、VWBは流動床の容積である。
所望の平均チャンネル直径のための流動床の容積は次式(IIa) を使用して容積に関して式(II)を解くことにより与えることができる:
【0077】
【数6】

【0078】
次に、チャンネルの直径を決定するため、流動床の容積、粒子数、そして粒子のサイズのみをバッチとして、所望のチャンネル直径を得ることができる。平均粒子直径DP及びマス中の粒子数を見積もるために必要とされるバルク密度(嵩密度)は、いずれも、その製造業者から入手するか、あるいは、簡単な標準的な手法を使用して測定できる。乾燥した粉末中の粒子の数nは、実用目的のためには、次式(III)を使用してバルク密度(充填)と粒子サイズにより決定できる:
【0079】
【数7】

【0080】
上式中、nは、乾燥した粉末の容積あたりの粒子の数で、VTSは、充填乾燥粉末の容積で、DPは、平均粒子直径である。特定の吸着性物質に対して乾燥粉末の密度が与えられたなら、その容積VTSは、重さを乾燥粉末密度で割り算することにより計算することができる。
【0081】
実際には、粒子は必ずしも常に理想的な球状であるものではないし、しばしば、いつも同じサイズであるものでもないので、幅広いサイズの分布となっている粒子に関しては、実際のところ、吸着剤の流動床中の懸濁物にある空間の分布は吸着剤粒子のサイズの分布に依存しているとされる。一般に、特には粉末化された吸着剤(例えば、Norit C Extra USP)では、粒子の分布を特徴付けている値、すなわち、サイズ分布のパーセンタイル値、例えば、D10及びD90が提供されている。D10及びD90値を使用し、粒子の約80%を包含しているサイズ分布の範囲が記述せしめられる。規定された重量又は乾燥粉末容積が流動床中で配分されているといったところの容積を、良好な近似で所望のチャンネル直径を生成するように、実用的な手法で見積もりを行うことができる。
【0082】
本例では、流動床の容積の上限値並びに下限値を決定するために、流動床の容積はDPの代わりにD10値を使用し、そして次にDPの代わりにD90値を使用して行うことができ、そこでは、本発明に従っての吸着剤粒子の間の隙間(チャンネルの幅)は、本発明に従って最適化せしめられる。D90値に基づいて計算して、最大の変動という結果を得ることとなり、そのために確実にアルブミンの結合能 (ABiC)を効果的に上昇せしめることを伴う脱リガンド処理することが可能である。
【0083】
チャンネルの幅の影響は次のようにして測定できる。1 gの活性炭/1 gのアルブミン (活性炭: Norit C Extra USP、Norit Nederland BV, Netherlandsより入手; 市販のアルブミン、アルブミンmmol当り5.2 mmoleのオクタノエート及び5.2 mmolのN-アセチルトリプトファンで安定化されている)の異なった容積の活性炭−アルブミン混合物を、NaCl溶液中の流動床に添加し、室温で30分間攪拌した。処理時間を経過した後、遠心して活性炭粒子をアルブミン液から分離した。次に、アルブミン、オクタノエート、そしてN-アセチルトリプトファンの濃度並びにABiCを測定し、得られたチャンネルの幅に関連して観察した。結果を表2に示す。
【0084】
【表2】

【0085】
・n50, n10, n90 = 平均粒子直径としてd50, D10又はD90パーセンタイル値を使用し式(III)を使用して計算された粒子サイズ
・Dk50, Dk10, Dk90 = 平均粒子直径としてd50, D10又はD90パーセンタイル値を使用し式(II)を使用して計算された平均チャンネル直径
・Oct/Alb = アルブミンに対してのオクタン酸のモル比
・NAC/Alb = アルブミンに対してのN-アセチルトリプトファンのモル比
【0086】
本結果は、明確に、流動床で平均チャンネル直径(DK50)を増加せしめることは、上記式(II)における流動床の容積の増加との直接的な関係の中で一定の粒子タイプや粒子数を表わすもので、吸着性物質の外側の表面積に関係なく、それはオクタノエートやN-アセチルトリプトファンを減少化せしめること及び得られるアルブミンが低下することになることを示している。同様に、その表では、本発明の具体的な実施態様のためのルール:
【0087】
【数8】

【0088】
を使用して、必要とされる最低限の接触時間に関し上限が30分より少ないようにチャンネル幅が選択されると(テスト1)、最適な減少化処理は30分以内に得られることが示されている。本例の場合、必要とされる最低限の接触時間に関し上限は、平均チャンネル直径5.2 μmに対応して、17.3 minであるが、NAC及びオクタン酸を最高に減少化できるし、ABiCは、110%の値にまで達する。テスト2〜6において、最低限の接触時間に関し上限値は超えるものではない。かくして、非常に良好に減少化できること及び改善されたABiC値が観察されたが、テスト1の至適な値は達成されなかった。
【0089】
実施例1及び2では、効果的に安定化剤を減少化せしめるためにアルブミン液と吸着性物質との間で必要とされる接触時間は、強く、吸着性物質のチャンネルの平均直径に依存していることが示されている。吸着性物質におけるチャンネルの平均直径を調和したものとすることにより、必要とされる接触時間は、影響されて、例えば、吸着性物質の充填されたカラムの中のアルブミン液のスループットの速度も影響される。
【実施例3】
【0090】
〔テキスタイル、連続気泡構造を有しているフォーム、又は、粉末混合体で吸着剤を固定化〕
下記に記載する具体例において、吸着剤粒子の間の本発明の距離、すなわち、チャンネルの幅は、通っていくことができるネットワーク中に「固定化」されていた。かくして、吸着性物質、例えば、活性炭の粒子は、支持体テキスタイル(例えば、ポリマーファイバー)、連続細孔構造を有しているポリマーフォーム構造体(例えば、連続細孔構造を有しているポリウレタンフォーム)を使用して、あるいは、単純に、高度に多孔性の粒子を「スペーサー」として混合することにより固体ベッドのリアクターの形態にされることができる。それは、お互いから吸着性物質粒子のための十分な間隔を作ることをなし、本発明によりチャンネル幅のあるバッチを提供している。高度に多孔性で連続気泡構造を有しているポリマーフォームに固定するに際して、例えば、穴あけ処理して、チャンネルを作るのは、同時、又は、その後でも可能である。また、これらのチャンネルの幅は、本発明に従ったチャンネル幅と最低限必要な接触時間との関係を規定するルールを満足する。
【0091】
優れていることには、本具体例では、テキスタイル又は支持体ポリマーを使用して「緩やかに」詰められていることが達成できる。それで高度に粘性であるアルブミン液には相対的に少しの背圧ということになる。加えて、ミクロ粒子を保つための濾過処理に求められる条件は、上記した具体例における程大きいものでない。繰り返すと、テキスタイル、連続気泡構造を有しているフォーム、又は、粉末混合体に、吸着剤を固定化する場合、平均チャンネル直径は、良好な近似で、次式(IV)により与えられる:
【0092】
【数9】

【0093】
上記式中、DKは、粒子間の平均チャンネル直径で、DPは、粒子自体の平均直径で、nは、粒子の数で、Vは、最終的な状態でのテキスタイル、粉末混合体又はフォームの容積である。
所望のチャンネルの直径は既知の粒子数及び既知の粒子直径に関して、適切な容量を次式(IV)を使用して計算することにより決定できる:
【0094】
【数10】

【0095】
吸着剤の重量及び最終的な容量についての有利な点を有している組合せについて計算するための基本は、実施例2の計算手法のための基本に相当しているものである。
【0096】
実験では、平均粒子サイズ23 μm (D50) (D10 = 5 μm, D90 = 82 μm)を備えた2 gの活性炭(Norit C Extra USP、NORIT Nederland BV, オランダから入手)を、繊維状のポリマー(本例ではセルロース)と交差結合する傾向を有しているポリマー(例えば、樹脂、ポリウレタン、ポリアクリルメタクリレート類など)からなる水性懸濁液/水溶液に混合した。そこでは、チャンネルの幅は、3.6 μmまでにされていた。そうして12分間より短い接触時間で適切に脱リガンド化を達成した。本発明の式:
【0097】
【数11】

【0098】
に従えば、最小限の接触時間の上限は、12分間である。式(IVa)を使用すると、重量2 gの場合、混合物の最終的な総容積に相当する容積12.5 mlが与えられた。吸着剤粒子及び交差結合された支持体ポリマーが通過するのを許さないように十分に小さなもの(例えば、5 μmのメッシュ)である密なメッシュのネットに該混合物を加えた。圧力勾配(1 atm)を通して流れ出させた後5 mmという乾燥時の厚さが得られるように当該ネット上に該混合物を配布せしめた。製造された吸着性物質は、全部で最終的な容積12.5 mlを有していた。上記式(IV)を使用してそして23 μmの粒子サイズd50を使用して計算されたその平均チャンネル直径Dkは、3.6 μmであった。
【0099】
市販の20%の安定化されているアルブミン液10 mlを1 ml/minの速度で該吸着性物質を通るようにそして乾燥する場合に圧力勾配を付与した場合と同じ流れの方向で市販の濾過用の装置にあるネットの表面に垂直となるように供給した。該処理されたアルブミン液のアルブミンの結合能は、本プロセスを使用して10分内に安定化剤を除去することで、45%から100%を越えるところまで高められた。アルブミンに対するオクタノエート及びN-アセチルトリプトファンの比率は、0.2 mmol/mmolより小さなものであった。
【実施例4】
【0100】
〔臨床応用〕
臨床試験で、アルブミンの結合能が高められている本発明のアルブミン液の効能を調べた。20 mg/dlをこえるビリルビン値を持ち且つ低張性循環や収縮過多性循環を伴うタンパク合成が制限を受けている(上昇したINR)といったエチル中毒性慢性肝硬変や重畳型肝炎C2に由来する肝不全患者30人を、無作為に抽出された治療効果の期待される集団として、それを二つのグループに分けた。一つのグループは、アルブミンの結合能が高められている本発明のアルブミン液で治療された。コントロール群はそれで治療されることはしなかった。腎臓及び脳の循環に関わるパラメーター及び最終的な臓器の機能は、テストの期間中及び2週間の観察時間の間、定期的にモニターされた。
【0101】
本結果は、添付の図面に示されている。
図1は、治療前及び2週間後の二つのテストグループの血中のアルブミン濃度を示す。
図2は、治療前及び2週間後の双方のテストグループからの血液の中のアルブミンのアルブミン結合能を示す。
図3は、治療前及び2週間後の双方のテストグループの動脈の平均血圧の変動を示す。
図4、5及び6は、治療前及び2週間後の双方のテストグループの収縮期の血圧、拡張期の血圧及び心拍を示す。
図7は、治療前及び2週間後の双方のテストグループのクレアチニンについて測定しての腎臓機能に及ぼす効果を示す。
図8は、治療前及び2週間後の双方のテストグループの肝性脳症に及ぼす効果を示す。本肝性脳症は血液が脳に回るのを制限し、アルブミンを捜し求めるものであるトキシン類及び血流の変化による結果である。
【0102】
本臨床試験の結果、アルブミンの結合能(ABiC)の向上は、動脈の平均血圧の改善と関連しており、その動脈の平均血圧の改善は明らかに心拍の増加によるよりは、拡張期血圧の上昇によりもたらされていることが示されている。このことは血管の拡張の減少は肝臓病においてしばしばアルブミンに対する親和性を有している血管拡張作用を持つ物質の作用の結果であることを医学的に示している。向上されたアルブミンの結合でもってそれらを不動化すると、このように、循環、腎臓及び脳の機能を改善する。最後に、血圧が改善されることに加えて、直接的に神経毒を持っている物質は改善されたABiCを持っているアルブミンにも結合するが、その神経毒を持っている物質をより結合するようにすることも起こすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】図1は、治療前及び2週間後の二つのテストグループの血中のアルブミン濃度を示す。
【図2】図2は、治療前及び2週間後の双方のテストグループからの血液の中のアルブミンのアルブミン結合能を示す。
【図3】図3は、治療前及び2週間後の双方のテストグループの動脈の平均血圧の変動を示す。
【図4】図4は、治療前及び2週間後の双方のテストグループの収縮期の血圧を示す。
【図5】図5は、治療前及び2週間後の双方のテストグループの拡張期の血圧を示す。
【図6】図6は、治療前及び2週間後の双方のテストグループの心拍を示す。
【図7】図7は、治療前及び2週間後の双方のテストグループのクレアチニンについて測定しての腎臓機能に及ぼす効果を示す。
【図8】図8は、治療前及び2週間後の双方のテストグループの肝性脳症に及ぼす効果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルブミンの結合サイトを占拠することのできる安定化剤分子を含有している出発アルブミン液よりアルブミン水溶液を製造する方法であって、該方法は、他の分子に対してのアルブミンの結合能(ABiC)を増加させる方法で、該安定化剤分子の少なくとも一部分を当該出発アルブミン液のアルブミンから除去して、該出発アルブミン液から分離することを含んでおり、
a) 使用されている該安定化剤分子の少なくとも一部分、好ましくは該安定化剤分子のすべてに対する親和性がアルブミンの該対応する安定化剤分子に対する親和性よりも大きな固体吸着性物質と該出発アルブミン液とを接触せしめ、そして本処理を> 3のpHで行い、そして
b) アルブミンを該吸着性物質から分離することを含むことをすることを特徴としているアルブミン水溶液製造方法。
【請求項2】
本方法を5〜9の範囲のpH、好ましくは6〜8の範囲のpH、特に好ましくは6.9〜7.5の範囲のpHで行うことを特徴としている請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アルブミンが、ヒト血清アルブミン(HSA)であることを特徴としている請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
除去される安定化剤分子が、N-アセチルトリプトファン及び/又はオクタン酸(カプリル酸)又はその陰イオン体を含むものであることを特徴としている請求項1〜3のいずれか一に記載の方法。
【請求項5】
吸着性物質を含有しているカラム(クロマトグラフィーカラム)を通すか、あるいは、吸着性物質により形成されているベッドを通して出発アルブミン液を供給することにより出発アルブミン液と吸着性物質とをステップa)で接触せしめることを特徴としている請求項1〜4のいずれか一に記載の方法。
【請求項6】
ステップb)での吸着性物質からのアルブミン液の分離を粒子用フィルターを通してアルブミン液を濾過することにより行うもので、該粒子用フィルターがアルブミン分子を通すが、固体吸着性物質を保持しているように選択されているものであることを特徴としている請求項1〜5のいずれか一に記載の方法。
【請求項7】
ステップa)及びb)は、それを数回繰り返すこともでき、好ましくは2〜6回繰り返し行われるもので、そこでは、それぞれの場合、ステップb)で得られた処理済みのアルブミン液をステップa)に戻すことがなされ、そして、再生された吸着性物質及び/又は新鮮な吸着性物質を安定化剤分子を取り除くために使用されることを特徴としている請求項1〜6のいずれか一に記載の方法。
【請求項8】
製造されるアルブミン液のアルブミンの結合能(ABiC)であって、Klammt et alに従って測定されたアルブミンの結合能(ABiC)が、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、特に好ましくは少なくとも80%、そしてさらに特に好ましくは少なくとも90%であるようにステップa)における出発アルブミン液中のアルブミンの濃度に対しての吸着性物質の量及び/又は出発アルブミン液と吸着性物質との接触時間が選択されることを特徴としている請求項1〜7のいずれか一に記載の方法。
【請求項9】
出発アルブミン液中の、結合された及び未結合の安定化剤分子、特にはN-アセチルトリプトファン及び/又はオクタン酸(カプリル酸)又はその陰イオン、の濃度が、その出発濃度の70%より低いもの、好ましくは50%より低いもの、特に好ましくは30%より低いもの、そしてさらに特に好ましくは10%より低いものに減少せしめられるようにステップa)における出発アルブミン液中のアルブミンの濃度に対しての使用される吸着性物質の量及び/又は出発アルブミン液と吸着性物質との接触時間が選択されることを特徴としている請求項1〜8のいずれか一に記載の方法。
【請求項10】
吸着性物質が、カラム又はベッド、あるいは、支持体マトリックスに詰められて液体を運搬するチャンネルが吸着性物質の粒子の間に形成されているような粒子形態の材料物質であり、そこでは、使用された吸着性物質のすべての粒子の間に形成されたチャンネルの長さの全体に対して、該チャンネルの平均直径が、100 nmより大きく且つ1000 μmより小さい、好ましくは500 μmより小さい、より好ましくは300 μmより小さい、そして特に好ましくは200 μmより小さい、さらにより好ましくは100 μmより小さいものであることを特徴としている請求項1〜9のいずれか一に記載の方法。
【請求項11】
吸着性物質のすべての粒子により形成されたチャンネルの長さの全体に渡っての、該チャンネルの平均直径が、100 nmより大きく且つ60 μmより小さい、特に好ましくは10 μmより小さいものであることを特徴としている請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ステップa)における出発アルブミン液と吸着性物質との最低限の接触時間が、
【数1】

上記中、「dm」は、使用された吸着性物質のすべての粒子の間に形成されたチャンネルの長さの全体に渡っての、チャンネルの平均直径を意味する
となるように選択されることを特徴としている請求項1〜11のいずれか一に記載の方法。
【請求項13】
ステップa)における出発アルブミン液と吸着性物質との最低限の接触時間が、
【数2】

上記中、「dm」は、吸着性物質のすべての粒子の間に形成されたチャンネルの長さの全体に渡っての、チャンネルの平均直径を意味する
となるように選択されることを特徴としている請求項1〜12のいずれか一に記載の方法。
【請求項14】
吸着性物質が活性炭であることを特徴としている請求項1〜13のいずれか一に記載の方法。
【請求項15】
活性炭がモラセス値(IUPAC) 100〜400、好ましくは 200〜300を有していることを特徴としている請求項14に記載の方法。
【請求項16】
活性炭がメチレンブルー吸着度(IUPAC) 1〜100 g/100 g活性炭、好ましくは10〜30 g/100 g活性炭を有していることを特徴としている請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
活性炭がヨード吸着量(IUPAC)500〜3000、好ましくは800〜1500を有していることを特徴としている請求項14〜16のいずれか一に記載の方法。
【請求項18】
活性炭が、総内部表面積(BET) (IUPAC)100〜5000 m2/g活性炭、好ましくは800〜1400 m2/g活性炭を有していることを特徴としている請求項14〜17のいずれか一に記載の方法。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか一に記載の方法を行うための、請求項1〜18のいずれか一に記載の特徴を有している吸着性物質。
【請求項20】
請求項1〜18のいずれか一に記載の方法を行うための、請求項19に記載の吸着性物質の用途。
【請求項21】
低アルブミン血症の治療用の手段の製造用の、請求項1〜18のいずれか一に記載の方法により製造されたアルブミン水溶液の用途。
【請求項22】
容積置換用手段又は血漿増量剤、あるいは、成分採血を用いての体外血液精製又はアルブミン透析のための溶液の製造用の、請求項1〜18のいずれか一に記載の方法により製造されたアルブミン水溶液の用途。
【請求項23】
患者の体内循環、腎臓及び/又は脳の機能の改善のための手段の製造用の、請求項1〜18のいずれか一に記載の方法により製造されたアルブミン水溶液の用途。
【請求項24】
請求項1〜18のいずれか一に記載の方法により製造されたアルブミン液。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−545626(P2008−545626A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510580(P2008−510580)
【出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際出願番号】PCT/EP2006/062234
【国際公開番号】WO2006/120226
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(507356718)アルブテック ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】