説明

安定機構を有する乗用コンクリートトロエル

【課題】従来、乗用仕上げトロエルに発生する振動を減少することは困難であった。
【解決手段】本発明の乗用コンクリート仕上げトロエルにおいては、ギヤボックスまたはこれに結合した構成部分とフレーム間に安定機構を配置し、トロエルのロータアセンブリの振動を抑制せしめる。上記安定機構は上記フレームとピッチ制御ポスト間に配置したガススプリングとする。好ましくは、上記ガススプリングは上記ピッチ制御ポストの頂部に接近して配置せしめる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリート仕上げトロエル、特に、トロエル操作中の振動を軽減する安定機構を有する乗用コンクリートトロエルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
種々の装置がウエット コンクリートを平滑にするため、または仕上げるために用いられている。これらの装置には単純なハンド トロエルから手押しトロエルや自走乗用トロエル迄のものが含まれる。トロエルの操作モードにかかわらず動力トロエルはコンクリート表面に相対的に回転する1〜3個のロークを含んでいる。乗用仕上げトロエルは、手押しトロエルやハンドガイドトロエルに比べコンクリートの大きな区域をより速く且つ効率的に仕上げることができる。本発明はこのような乗用仕上げトロエルに適用される。
【0003】
本発明は特に操縦のため傾斜せしめることができるロータアセンブリを有する乗用トロエルのようなコンクリート仕上げトロエルに関するものである。代表的な乗用コンクリート仕上げトロエルは、一般に2または3個のロータアセンブリを含むケージを有するフレームを備えている。各ロータアセンブリは、被動軸と、この被動軸の底端から半径方向に外方に延びる複数のトロエルブレードとを有する。ロータアセンブリの被動軸は、フレーム上に取り付けられ対応するロータアセンブリのギヤボックスによって被動軸に接続される1つまたはそれ以上のエンジンによって駆動される。
【0004】
操縦者を含む仕上げトロエルの重量は、回転ブレードによってコンクリート表面に摩擦力として伝達されコンクリート表面は平滑とされる。各ブレードのピッチはトロエル使用中レバーまたはリンクシステムの操作によって被動軸に相対的に変え得る。この構成によって、特に、ピッチ制御ポストに設けられ、ロータアセンブリに接続されたクランクを操作することによって動力トロエルの操作中操縦者はブレードピッチを変え得る。一般に明らかなようにブレードピッチの調節によりトロエルによって仕上げられる面に加えられる圧力が変化する。このブレードピッチの調節によりトロエルの仕上げ特性が調節される。例えば、理想的な仕上げ操作においては、操作者は初めに初期高トルクで低速(約30rpmのオーダー)でブレードを操作する“浮動”操作とする。次いでコンクリートを15分間から30分間養生し、次いでトロエルの速度を好ましくは約150rpm以上200rpm迄の最大速度に次第に増大し、ブレードピッチを次第に増加して、仕上げまたは“バーニング”操作とする。
【0005】
操縦の目的で乗用トロエルのロータアセンブリを垂直軸に対し傾斜できる。ロータアセンブリの傾斜することによって、回転ブレードによってコンクリート面に加えられる力が被動軸の傾斜方向と直角方向にトロエルを進めるように作用する。即ち、ロータアセンブリの被動軸を左右及び前後に傾斜すればトロエルは夫々前後及び左右に進むようになる。乗用トロエルが2個のロータアセンブリを有する例ではトロエルを前進するためには双方のロータアセンブリの被動軸を左右に傾斜する必要があるが、トロエルを左右に進めるためには1つのロータアセンブリの被動軸は前後に傾斜できるようにする必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
総べての乗用仕上げトロエルにおける問題の1つは、回転ブレードと仕上げるべき面間の摺動接触から生ずる好ましくない振動に存する。これら振動の原因は完全には解明されていない。また、トロエルの或るサイズとブランドのものが振動により敏感である理由や、幾つかの振動減少技術がなぜより効果的であるかは完全には解明されていない。然しながら、振動発生の主な要素は既知であり“ステッキ−スリップ振動”または“チャター”と呼ばれている。ステッキ−スリップ振動は周期的サイクル運動の鋸歯状波によって特徴づけられ、遅い運動で物体が乾燥したまたは潤滑された面を摺動接触するときに発生する。移動物体が大きな接触面積を有するときは、特に、物体が回転するとき表面内の点に対する接線速度が回転軸からの半径方向の距離に応じて変化するためステッキ−スリップ現象は複雑である。表面に対する通常の負荷分布もまた、回転物体上の複数点負荷パターンを変化せしめる。チャターは摩擦係数に応じて増加し、接触圧に応じて減少する。
【0007】
48インチのような中間サイブのトロエル、即ち、約48インチの仕上げトロエルは36インチ トロエル及び60インチ トロエルよりもチャターに対してより敏感である。複合ブレードではなく鋼ブレードを用い、ブレードピッチが0〜5°と比較的に平らなときチャター発生が最大となる。硬化コンクリートの摩擦係数が最大のとき、チャターは一層発生し、また、コンクリートが部分的に硬化しているが或る程度の粘性を有するときに発生する。更に、所定のデザインのトロエルでは振動が複数回発生することが予想されるが、ロータアセンブリの回転数をベースとして周期的に繰り返し発生する。例えば、48インチ トロエルを0〜150rpmに加速したとき、所定の摩擦係数、所定のブレードピッチでトロエルの回転数が60、100及び125rpmのときチャターが発生する。これらの振動は、トロエル全体が上下及び左右に“ホップ”する場合に大きくなり、操縦者に不快感を与え、或る場合には振動するブレードによってコンクリートが調和される。トロエルのサイズに応じてこれらの振動によりピッチ制御ポストの頂部が2インチ以上振動する。これらの効果は、圧力を増加するためブレードピッチを増加することによって減少できるが、比較的軟らかいコンクリートまたは高ピッチブレードによってカットされる埋込繊維を有するコンクリートの選択の自由は無い。
【0008】
いかなる機械的システムにおいてもシステムの剛性、従ってスプリング定数を増加することによって、またはシステムを弱めることによって振動を減少できる。チャターを減少するための試みの第1はシステムの剛性を増加せしめることである。例えば、トロエルのフレームや他の構成成分の剛性を最大ならしめたホワイトマン社製仕上げトロエルでは、振動はそのピッチ制御ポストの振動で約1.5インチに減少した。然しながら、これらのものは、重量を増大し高価であり、トロエルの再デザイン化が必要とされている。合成プラスチックにより形成したブレードを用いれば、これは従来の鋼ブレードよりもスプリング定数が大幅に小さく、また、摩擦係数も低いためチャターを大きく減少できる。然しながら、これらのブレードは鋼ブレードよりより高価であり、その採用には限度がある。
【0009】
従って、従来の乗用コンクリート仕上げトロエルよりも操作中の振動を減少できる乗用コンクリート仕上げトロエルが望ましい。
【0010】
また、構成が簡単で、廉価な乗用コンクリート仕上げトロエルのための安定機構が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、上記の欠点を除去した動力コンクリート仕上げトロエルを得るにある。本発明においてはギヤボックスまたはギヤボックスに結合される構成部分とフレーム間に安定機構を配置する。このような安定機構はトロエルのロータ振動を減少せしめ、操縦の応答性を改良する。本発明の一実施例においては、安定機構は抑制具、好ましくは、フレームとピッチ制御ポスト間に配置されたガススプリングとする。好ましくは、このガススプリングは、ギヤボックスから離して配置し、機械的利益が得られるようにするためピッチ制御ポストの頂部に対して比較的に近く配置する。
【0012】
また、本発明の他の目的は、トロエルのフレームに対する乗用トロエルのギヤボックスからの振動の伝達を減少せしめる方法を得るにある。上記振動伝達の減少にはガススプリングを用い、合せて操縦の応答性を改良するのが好ましい。
【0013】
本発明の他の目的及び利益は以下図面と共に示す実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるべきではない。本発明は、本発明の精神を逸脱することなく種々増減変更できることは勿論である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下図面によって本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は本発明の安定機構100を有する自走乗用コンクリート仕上げトロエル20を示す。このトロエル20は操縦システム22を有し、この操縦システムではトロエル20のロータアセンブリ24と26の被動軸を傾斜することによってトロエルを操縦できる。本発明の操縦システム22は、トロエル20のケージ32を越えて延びる1つ好ましくは2つの制御レバー28と30とを有する。レバー28と30は、シート34上に乗っている操縦者によって操縦できるようトロエル20に関連して方向づける。
【0016】
ハンドル28と30は、ロータアセンブリ24と26に連結しトロエル20のフレーム36に相対的にロータアセンブリ24と26の位置を夫々操縦できるようにする。少なくとも1つのロータアセンブリのギヤボックスを2つの軸の周りで回動せしめてトロエルを横方向に進める代表的な例では、レバー28と30の少なくとも1つを前後及び左右に移動可能ならしめる。本発明は、トロエルのフレームに相対的に1つまたはそれ以上のロータアセンブリを傾斜することによって操縦できる。本発明の操縦システム22は1つまたはそれ以上のロータアセンブリをトロエルのフレームに関連して傾斜することにより操縦できる任意の動力コンクリート仕上げトロエルに適用可能である。また、手押しトロエルの構成を有する乗用動力トロエルにも本発明を適用することができる。
【0017】
図1と図2に示すように、本発明の好ましい実施例であるコンクリート仕上げトロエル20は、主構成成分として剛性金属フレーム36と、このフレーム36上に取り付けた上方デッキ38と、デッキ38上に設けた操縦者プラットフォームまたはペデスタル40と、及びデッキ38から下方に延び、仕上げるべき面上に仕上げトロエル20を支持せしめる左右のロータアセンブリ24と26とを有する。仕上げ操作を行なうためロータアセンブリ24と26を操縦者に向って、または反時計方向及び時計方向に夫々回動する。ケージ32をトロエル20の外周面に位置せしめ、仕上げるべき面近くに向ってフレーム36から下方に延ばす。ペデスタル40はデッキ38の中心部後方で長手方向に延び操縦者のシート34を支持する。燃料タンク44をペデスタル40の左側に配置し、防水剤タンク46をペデスタル40の右側に配置する。リフト ケージ アセンブリ48をペデスタル40とシート34の下側のデッキ38の上面に取り付ける。
【0018】
図1と図2に示すように、ロータアセンブリ24と26のそれぞれはギヤボックス58と、このギヤボックス58から下方に延びる被動軸60と、コンクリート表面によって支持されるよう被動軸60の下端から半径方向外方に延び、半径方向支持アーム64を介して被動軸60によって支持された複数の円周方向に離間したブレード62とを有する。各ギヤボックス58は、後述する理由でデッキ38及びフレーム36に相対的に傾斜するようデッキ38の下側に設ける。
【0019】
左右のロータアセンブリ24と26の夫々のブレード62のピッチは、専用のブレードピッチ調節アセンブリ70によって個々に調節する。各ブレードピッチ調節アセンブリ70には、垂直ポスト72と、このポスト72の頂部に設けたクランク74とを設け、このクランク74をブレード62のピッチを変えるためシート34上に位置した操縦者によって回動せしめる。
【0020】
代表的な構成では被動軸60の軸に直角に延びる軸の周りでブレード62を回動せしめる位置にスラストカラー76を位置せしめるためスラストカラーをヨーク78に協同せしめる。引張ケーブル80をポスト72を通してクランク74からヨーク78に延ばし、ヨーク78をクランク74に連結せしめ、クランク74を回動すればヨーク78の傾斜角度が調節され、スラストカラーが上下動し、その結果ブレードピッチを所望の値に調節できるようにする。ブレード62のピッチは、仕上げるべき材料のセット及びブレードによって加える抵抗を強くするためしばしば変えられる。各ポスト72は関連するギヤボックス58の枢支板59の頂部に固定する。従ってポスト72にはギヤボックスの振動が伝えられるが、この振動を抑制する構成をポストに用いれば、同じくギヤボックスの振動を抑制できる。
【0021】
ロータアセンブリ24と26及び仕上げトロエル20の他の動力構成部分は、操縦者シート34の下側に設けた内燃エンジン42のような動力源によって駆動せしめる。エンジン42のサイズは、トロエル20のサイズ及びエンジンによって駆動されるロータアセンブリの数によって変える。代表的な48インチの2つのロータのためには約35馬力のエンジンを用いる。ロータアセンブリ24と26はエンジン42に連結し操縦システム22により操縦の目的で傾斜せしめる。
【0022】
この型の代表的な乗用コンクリート仕上げトロエルにおいては、ロータアセンブリ24と26の一部または全部を傾斜し、ブレード62の回転により水平力を作りトロエル20を前進せしめるようにしている。操縦方法はロータアセンブリの傾斜方向と直角となる。即ち、ロータアセンブリを左右及び前後に傾斜すれば、トロエル20は前後及び左右に夫々動くようになる。操縦のために望まれる最も迅速な傾斜手段は、ギヤボックス58を含むロータアセンブリ24と26を全体として傾斜せしめることである。ギヤボックス58全体を傾斜せしめる好ましい実施例の内容は同様にして操縦制御のためロータアセンブリ24と26の他の構成部分をも傾斜せしめるシステムに適用できる。
【0023】
各ロータアセンブリ24と26の内側ブレード上の圧力が増加するようにギヤボックス58を横方向に傾斜すれば、トロエル20が前進されるようになり、各ロータアセンブリ24と26の外側ブレード上の圧力が増加するようにギヤボックス58を横方向に傾斜すればトロエル20が後進するようになる。左右方向操縦のためには1つのみのギヤボックス、例えば右側ロータアセンブリ24のギヤボックスを傾斜することが望まれ、右側ロータアセンブリ24を前方へ傾斜してロータアセンブリ24の前方ブレード上の圧力を増加すればトロエル20が右方に操縦される。同様にして、ロータアセンブリ24を後方へ傾斜してロータアセンブリ24の後方ブレード上の圧力を増加すればトロエル20が左側に操縦される。
【0024】
操縦システム22は、操縦者によるレバー28と30の操作に応じて左右のロータアセンブリ24と26のギヤボックス58を傾斜せしめる。図1に示すように操縦システム22には左右のロータ操縦リンケージ82と84とを設ける。左右方向操縦のために付加的要素を有する右側ロータ操縦リンケージ84のこの部分は別として、右と左のロータ操縦リンケージ82と84は、互いに鏡像関係にある。
【0025】
好ましい操縦リンケージは既知であり、ここでは説明しない。好ましい操縦リンケージ及び好ましい実施例の構成と操作は米国特許出願第11/782,844号に示されている。
【0026】
本発明の好ましい実施例においては安定機構100をフレーム36と各ギヤボックス58との間に設ける。各安定機構100は種々の位置に設けた種々の形となし得る。例えば、フレーム36の下側に設け、ギヤボックス58に直接接続せしめる。然しながら、安定機構100をピッチ制御ポスト72に接続すれば機械的振動抑制効果を高めることができることが見出された。この機械的利益を最大にするため安定機構100をピッチ制御ポスト72の頂部73にできるだけ近い位置でピッチ制御ポスト72に接続する。然しながら、略水平な面内に設けたとき安定機構100が最も効果的となることが判明した。各安定機構100はフレーム36のペデスタル40の上端にできるだけ近く取り付け、関連するピッチ制御ポスト72に連結する。上記取付位置はピッチ制御ポスト72の頂部から約7インチ下側で、ギヤボックス58から約18.75インチ上方とする。
【0027】
各安定機構100には、関連するピッチ制御ポスト72の側方への移動に抵抗するために延びる任意の機構を有せしめる。例えば、各安定機構100は1つまたはそれ以上の流体ショック吸収機構及びまたは弾性クッション吸収機構、好ましくは「ガススプリング」により構成せしめる。上記ガススプリングは、1500psi〜2500psiの圧力の窒素を充填したピストン シリンダーとする。このシリンダーから外方にガスによってピストンが突出し、所定値以上の外力によってシリンダー内に引き込まれるようにする。上記圧力が無くなればピストンが中立位置となる。好ましいガススプリングはAVM インダストリーズ LLC製のものである。
【0028】
本発明の実施例においては、2つの安定機構100は互いに同一であり、鏡像関係となるようフレーム36のペデスタル40上に取り付ける。図3〜図5においては右側の安定機構を示すが、左側のものと同一である。
【0029】
右側の安定機構100は、上記の型のガススプリングを有する。このガススプリングはガス封入シリンダー102と、このシリンダー102から延びるピストンロッド104とを有する。ピストンロッド104とシリンダー102の一方はフレーム36に取り付け、他方はピッチ制御ポスト72に取り付ける。この実施例においては、シリンダー102をフレーム36に取り付け、ピストンロッド104をピッチ制御ポスト72の頂部から約7インチ下方で、ギヤボックス58の枢支点から約18.75インチ上方でピッチ制御ポスト72に取り付ける。各安定機構100のピストンロッド104をフレーム36に取り付け、シリンダー102をピッチ制御ポスト72に取り付けるのが好ましい。ピストンロッドとシリンダー シールの循滑のため各安定機構10のピストンロッド104をシリンダーに相対的に下方に傾斜せしめるのがより好ましい。
【0030】
図3〜図5に示すように、ポスト72が振動を受けないが、ポスト72に加わるバイアス力に抵抗してガススプリングが僅かに圧縮されたとき、ガススプリングの長さが約12インチとなるようにする。ピストンシリンダー102とピストンロッド104の夫々には対応するボール接手106と108に結合される遊端を有せしめる。ピストンロッド104上のボール接手108は、ポスト72の内側に固定したブラケット112のねじ孔114に螺合した螺杆110に対接せしめる。シリンダー102上のボール接手106はフレーム36の孔118を通して延び、ナット120によりフレーム36に固定した螺杆116に対接せしめる。
【0031】
操作においては、ガススプリングは振動と、フレーム36に対する振動の伝達を予想を越えて減少する。乗用コンクリート仕上げトロエルのステッキ−スリップ現象により発生するピッチ制御ポスト72の頂部73の振動をガススプリングによって50%迄減少せしめる。実験ではワッカー コーポレーション社製の48インチ トロエルでブレードピッチが約3°のとき振動を50%以上、75%迄減少できた。実際上、ピッチ制御ポスト72の頂部73の振動は、安定機構100を有する場合は1/8インチ以下であり、安定機構100を有しない場合は約1インチであった。トロエル20のブレード ピッチとロータ操作速度に応じた振動減少の比較テストを行なった。大きな振動減少が安定機構100を設けた場合に得られる。ロータアセンブリ24と26は等しく且つ反対方向に振動し、チャターの間トロエルに生ずる振動は大きく増加した。然しながら、2つの安定機構100の抵抗もまた互いに等しく且つ対向し、振動抑制効果は累積的である。安定機構の好ましい実施例の効果は図6及び表1の比較例より明らかならしめる。
【0032】
【表1】

【0033】
表1と図6に示す比較曲線150、152及び154から明らかなように、ピッチポスト偏位によって測定された、安定機構100を有するワッカー コーポレーション社製 48インチ トロエルのチャターは、ピッチポスト偏位の全範囲を通して大きく減少している。図6において曲線152は安定機構100を有しない ワッカー コーポレーション社製 48インチ トロエル、曲線154は、ホワイトマン社製 48インチ トロエルの場合を示す。例えば、安定機構100を組み込んだワッカー コーポレーション社製 48インチ トロエルではブレードピッチ角0度においてチャターは2.03インチから0.07インチに97%減少する。この減少幅は全く予期できない値であった。ブレードピッチ角1.4度での47%の例外的な減少を除いて75%〜100%の大きな減少が他の総べてのブレードピッチ角で観察された。これらの観察から上述の型の安定機構を乗用トロエルに用いることによりブレードピッチ角の全範囲において平均してチャターを少なくとも50%、特別には少なくとも60%、より特別には75%以上減少することが判明した。
【0034】
安定機構100は操縦応答性を十分に改良せしめることが判明した。即ち、トロエル20が応答する前に、ロスト モーション ストロークで操縦者に要求される操縦制御レバー28と30の移動量よりも極めて小さい操縦制御レバーの移動量でトロエル20が加速または回転される。この応答性の増大の理由は完全には解明されていないが、ガススプリングがバイアス力でギヤボックス58を外側に傾斜せしめ、トロエル20を後方に移動せしめることは知られている。米国特許出願第11/782,844号に示されているトーションバーによって加えられるものに比べたとき上記バイアス効果は比較的に小さいがトロエル20の前進操縦の間のみならず総べてのとき、種々の傾斜によって操縦リンケージ82と84内に作られたコンプライアンスが累積され、その結果、操縦リンケージ82と84は操縦レバー操作に直ちに応答するようになる。
【0035】
本発明の実施例は本発明の精神の範囲内で種々変更できることは勿論である。例えば、2つ以上のロータを有する乗用動力コンクリート仕上げトロエル及び他の自走式仕上げトロエルに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の安定機構を有する乗用動力コンクリート仕上げトロエルの縦断正面図である。
【図2】図1に示す動力トロエルの2−2線断面図である。
【図3】1つの安定機構を有する図1及び図2に示す乗用トロエルの一部の平面図である。
【図4】1つの安定機構を有する図1及び図2に示す乗用トロエルの一部の正面図である。
【図5】トロエルの1つの安定機構の分解斜視図である。
【図6】本発明の当ていい機構を有するコンクリート仕上げトロエル内のチャターの比較線図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
上記フレームによって支持された操縦者席と、
回転軸と複数のブレードとを有し、動力トロエル操縦のため傾斜される少なくとも1つのロータアセンブリと、及び
上記ロータアセンブリとフレームに結合され、上記ロータアセンブリから上記フレームに伝達される振動を抑制する安定機構と
より成る乗用動力トロエル。
【請求項2】
上記ロータアセンブリが、上記ロータアセンブリの被動軸に連結された出力軸を有する傾斜可能なギヤボックスを含み、上記安定機構が上記ギヤボックスに連結されている請求項1記載のトロエル。
【請求項3】
上記ギヤボックスに設けられた、上記フレームを通して上方に延びるブレードピッチ制御ポストを有し、上記安定機構が上記ブレードピッチ制御ポストに連結されている請求項2記載のトロエル。
【請求項4】
トロエルの両側に配置された2つのカウンター回転ロータアセンブリを有し、各ロータのために分離安定機構が設けられている請求項1記載のトロエル。
【請求項5】
上記安定機構がガススプリングを有する請求項1記載のトロエル。
【請求項6】
上記安定機構が、システム内の振動をブレードピッチ角の全範囲で平均少なくとも50%減少する請求項1記載のトロエル。
【請求項7】
上記安定機構が、システム内の振動をブレードピッチ角の全範囲で平均少なくとも60%減少せしめる請求項6記載のトロエル。
【請求項8】
上記安定機構が、システム内の振動をブレードピッチ角の全範囲で平均少なくとも75%減少せしめる請求項7記載のトロエル。
【請求項9】
乗用コンクリートトロエルのロータアセンブリからフレームに伝達される振動を上記フレームと上記ロータアセンブリ間に配置した安定機構によって抑制する方法。
【請求項10】
上記安定機構がガススプリングを有する請求項9記載の方法。
【請求項11】
上記安定機構の一端が、傾斜可能なギヤボックスに接続され、このギヤボックスが上記ロータアセンブリの被動軸に連結された出力軸を有し、上記安定機構の他端が、上記ギヤボックスに設けた、上記フレームを通して上方に延びるブレードピッチポストに連結されている請求項10記載の方法。
【請求項12】
上記安定機構がシステム内の振動を、ブレードピッチ角の全範囲で平均で少なくとも50%減少せしめる請求項9記載の方法。
【請求項13】
上記安定機構が、システム内の振動をブレードピッチ角の全範囲で平均で少なくとも60%減少せしめる請求項12記載の方法。
【請求項14】
上記安定機構が、システム内の振動をブレードピッチ角の全範囲で平均で少なくとも75%減少せしめる請求項13記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−167790(P2009−167790A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8721(P2009−8721)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(508366385)ワッカー ニューソン コーポレーション (2)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Neuson Corporation
【Fターム(参考)】