説明

安定的な繊維積層体並びに該繊維積層体を製造するための方法及び装置

本発明は、2つの支持不織布と、これらの支持不織布との間に配置された、水流交絡により結合されている吸収能のある繊維材料を有する繊維積層体、並びに該繊維積層体を製造するための方法および装置に関する。本発明による繊維積層体は、離層に対する十分な安定性と高い吸収能とを有している。この場合、繊維積層体の面にわたってみて、2つの支持不織布の間には、吸収能のある繊維材料を有する領域と、外側層を形成する2つの支持不織布が直に互いに結合されている領域とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繊維積層体であって、2つの支持不織布と、これらの支持不織布の間に配置された吸収能のある繊維材料とを有していて、この繊維材料が水流交絡により結合されている形式、並びに前記繊維積層体を製造するための方法および装置に関する。
【0002】
EP1250482から、たとえばスパンボンド不織布といった少なくとも1つの支持不織布と、この支持不織布に載置された、衛生製品を製造するための木材パルプ層とから成る複合不織布を製造するための方法および装置が公知である。この場合、高吸収性の材料でコーティングされる前のスパンボンド不織布は予め結合するために乾燥結合され、次いで木材パルプ層が付与され、両方を水流交絡によって共に結合し、次いで乾燥する。
【0003】
さらにEP1524350には、特に、フィラメントから成る予め結合された少なくとも1つの紡績不織布と、親水性の繊維から成る少なくとも1つの繊維層とから成る吸収性の洗浄布といった繊維積層体が記載されている。この繊維積層体は流体力学的に結合されていて、この場合、流体力学的に結合された繊維積層体の表面にエンボス変形が施される。このような払拭・洗浄布を製造するに当たり、予め結合された紡績不織布から成る2つの担持体と、乾式パルプから成る内側の層とは、水流結合により互いに結合される。
【0004】
この種の製品は、コストと丈夫さとを顧慮して満足のいく特性を示しているものの、実践では、あまりに僅かな厚さと吸収能とにクレームが付けられる。さらに水噴流処理による個々の層の離層強度は十分ではないので、とりわけ湿潤された状態では層は容易に再び互いに分離する。この欠点は、前記EP1524350による、挿入された不織布層を予めエンボス加工すること、または結合された最終製品に事後エンボス加工することによって部分的に改められる。
【0005】
本発明の課題は、離層に対する十分な安定性と高い吸収能とを有している繊維積層体、並びにこの繊維積層体を製造するための方法および装置を提供することである。
【0006】
この課題は、請求項1記載の繊維積層体、並びにこの繊維積層体を製造するための相応の方法および相応の装置により解決される。
【0007】
本発明による繊維積層体は、2つの支持不織布と、両支持不織布の間に配置された吸収能のある繊維材料とを有している。この繊維積層体は水流交絡により固定される。この場合、繊維積層体の面にわたって見て、両支持不織布の間には、吸収能のある繊維材料を備えた領域と、両支持不織布が直に重なりあっている領域とがある。
【0008】
こうして、外側層を形成する両支持不織布が直に互いに結合される領域が提供される。離層に対する安定性は、これにより明らかに高められる。このことを、繊維積層体の乾燥した状態および湿った状態において離層を強制する力を測定した実験が示した。本発明による繊維積層体の湿った状態での安定性は、従来の繊維積層体に比べて特に著しく高められている。吸収能のある繊維材料は、両支持不織布との間のそれぞれカセット状に隔離された領域に存在する。繊維積層体の全体的な印象は、ベッドキルトの形式の包囲個所を備えた凹凸のある不織布の印象を与える。
【0009】
前記繊維積層体を製造するための方法においては、2つの支持不織布の間に吸収能のある繊維材料を位置するようになる。3つの層、つまり2つの支持不織布と、これらの間に位置する吸収能のある繊維材料とは、構造を付与する孔付きステンシルの上側で水流交絡によって結合される。この場合、ステンシルにおける開口はまさに、水噴流処理により、2つの支持不織布の間の吸収能のある繊維材料が、ステンシルのウェブからステンシルの開口の方向に側方に離れるようにして押し流されるように寸法設定されている。このために繊維積層体を製造するための適当な装置に、構造を付与する孔付きステンシルが備え付けられていて、このステンシルは0,5〜20mmの直径の開口を有している。この開口は、微細多孔性のシェルにおける既に公知の開口に比べて、明らかに大きく寸法設定されている。なぜならばシェルの開口は衝突する液体の排水のために設計されているのではなく、ウェブから離れる方向で押し流される、2つの支持不織布の間の吸収能のある繊維材料の繊維を収容するために設計されているからである。ウェブの幅は、有利には1〜5mmの間の範囲内において選択される。
【0010】
支持不織布として、有利には乾いた状態で予め結合されている、たとえばカレンダ掛けされている、たとえば短繊維から成る層または紡績不織布が使用される。
【0011】
有利な形式では、吸収能のある繊維材料は、たとえばティッシュのようなパルプ層として、または高吸収性の層として形成されている。
【0012】
支持不織布の面積重量は、通常3〜18g/cm、特に6〜10g/cmである。吸収能のある繊維材料の平均的な面積重量は、有利には8〜100g/cm、特に20〜50g/cmである。
【0013】
有利には、吸収能のある繊維材料を備えた領域は、繊維材料の面にわたって、繊維積層体に凹凸に類似した構造を与えるように分配されている。同様に、任意のジオメトリのこの種の構造をもって繊維積層体に視覚的に好ましい構成を、たとえば複数の構造によって形成された花柄の形式で与えるということも考慮可能である。
【0014】
本発明に係る繊維積層体は、2つの支持不織布と、該2つの支持不織布の間に配置された吸収能のある繊維材料とが設けられており、該繊維材料が、水流交絡により結合されている形式のものにおいて、繊維積層体の面にわたって見て、2つの支持不織布の間に存在している吸収能のある繊維材料を備えた領域と、2つの支持不織布が、直に重なり合っている領域とが設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る繊維積層体は、有利には、支持不織布が、互いに独立して、紡績不織布の層としてか、または短繊維層として形成されている。
【0016】
本発明に係る繊維積層体は、有利には、吸収能のある繊維材料が、パルプ層または高吸収性の層として形成されている。
【0017】
本発明に係る繊維積層体は、有利には、支持不織布が、乾燥した状態で予め結合されている。
【0018】
本発明に係る繊維積層体は、有利には、支持不織布の面積重量が、3〜18g/cmの間、殊に6〜10g/cmの間にある。
【0019】
本発明に係る繊維積層体は、有利には、吸収能のある繊維材料の平均的な面積重量が、8〜100g/cmの間、殊に20〜50g/cmの間にある。
【0020】
本発明に係る繊維積層体は、有利には、吸収能のある繊維材料を備えた領域が、前記2つの支持不織布の間で、当該繊維積層体に凹凸構造を付与する。
【0021】
本発明に係る繊維積層体を製造するための方法は、2つの支持不織布と、該2つの支持不織布との間に配置された吸収能のある繊維材料とを有する繊維積層体を製造するための方法であって、繊維積層体を、構造を与える孔付きステンシルの上方で水流交絡によって結合する方法において、水噴流処理により、吸収能のある繊維材料を、ウェブから側方に離れるようにステンシルの開口の方向に押し流すことを特徴とする。
【0022】
本発明に係る繊維積層体を製造するための装置は、2つの支持不織布と、該2つの支持不織布との間に配置された吸収能のある繊維材料とを有する繊維積層体を製造するための装置であって、繊維材料を水流交絡によって結合するユニットが設けられている形式のものにおいて、当該装置が、0,5〜20mmの直径の開口を備えた、構造を付与する孔付きステンシルを有していることを特徴とする。
【0023】
本発明に係る繊維積層体を製造するための装置は、孔付きステンシルが、構造を付与するドラムシェルとして形成されている。
【0024】
本発明に係る繊維積層体を製造するための装置は、孔付きステンシルが、構造を付与するエンドレスベルトとして形成されている。
【0025】
以下に、本発明を図面つき例示的に説明する。
【0026】
ドラムシェルの区分の上方の繊維積層体の側方横断面において、水噴流10が繊維積層体に当たる。この繊維積層体は上位に紡績不織布として形成された第1の支持不織布1と、この支持不織布1の下に吸収能のある繊維材料2と、下位に同様に紡績不織布として形成された第2の支持不織布3とを有している。繊維積層体の面にわたって見て所定の領域12には、吸収能のある繊維材料2が、上側の支持不織布1と下側の支持不織布3との間で囲まれている。所定の領域13では、上側の支持不織布1と下側の支持不織布3とは、直に重なり合うようになっている。この構造では、上方から発生する水噴流10が、吸収能のある繊維材料2をステンシル4のウェブ7から側方に離れるようにステンシル4の開口6の方向に押し流すようになっている。つまり水噴流10の衝撃は、吸収能のある繊維材料2を文字通りウェブ7から開口6の方向に押しやる。構造を付与するステンシル4の下側には、サポートスクリーン5が位置していて、その下側にはサポートドラムシェル11がある。サポートスクリーン5は、至極一般的には、多孔性のボディまたは微細孔性のシェルとして形成されていてもよい。ステンシル4の開口6の隣には、明らかにより小さな毛細開口8が図示されている。この毛細開口8は水の導出のために働き、そのために0,45mmよりも小さな範囲のより小さな直径を有している。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による繊維積層体を、ステンシルとドラムシェルと共に示した横断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 第1の支持不織布、 2 吸収能のある繊維材料、 3 第2の支持不織布、 4 構造を付与するステンシル、 5 サポートスクリーン、 6 ステンシルにおける開口、 7 ステンシルの開口の間にあるウェブ、 8 毛細開口、 10 水噴流、 11 サポートドラムシェル、 12 吸収能のある繊維材料を備えた領域、 13 2つの支持不織布が直に重なり合っている領域


【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維積層体であって、2つの支持不織布(1,3)と、該2つの支持不織布(1,3)の間に配置された吸収能のある繊維材料(2)とが設けられており、該繊維材料(2)が、水流交絡により結合されている形式のものにおいて、
繊維積層体の面にわたって見て、2つの支持不織布(1,3)の間に存在している吸収能のある繊維材料(2)を備えた領域(12)と、2つの支持不織布(1,3)が、直に重なり合っている領域(13)とが設けられていることを特徴とする、繊維積層体。
【請求項2】
前記支持不織布(1,3)が、互いに独立して、紡績不織布の層としてか、または短繊維層として形成されている、請求項1記載の繊維積層体。
【請求項3】
吸収能のある繊維材料(2)が、パルプ層または高吸収性の層として形成されている、請求項1または2記載の繊維積層体。
【請求項4】
前記支持不織布(1,3)が、乾燥した状態で予め結合されている、請求項1から3までのいずれか一項記載の繊維積層体。
【請求項5】
前記支持不織布(1,3)の面積重量が、3〜18g/cmの間、殊に6〜10g/cmの間にある、請求項1から4までのいずれか一項記載の繊維積層体。
【請求項6】
吸収能のある繊維材料(2)の平均的な面積重量が、8〜100g/cmの間、殊に20〜50g/cmの間にある、請求項1から5までのいずれか一項記載の繊維積層体。
【請求項7】
前記2つの支持不織布(1,3)の間に設けられている吸収能のある繊維材料(2)を備えた領域(12)が、当該繊維積層体に凹凸構造を付与する、請求項1から6までのいずれか一項記載の繊維積層体。
【請求項8】
2つの支持不織布(1,3)と、該2つの支持不織布(1,3)との間に配置された吸収能のある繊維材料(2)とを有する繊維積層体を製造するための方法であって、繊維積層体を、構造を与える孔付きステンシル(4)の上方で水流交絡によって結合する方法において、
水噴流処理により、吸収能のある繊維材料(2)を、ウェブ(7)から側方に離れるようにステンシル(4)の開口(6)の方向に押し流すことを特徴とする、繊維積層体を製造するための方法。
【請求項9】
2つの支持不織布(1,3)と、該2つの支持不織布(1,3)との間に配置された吸収能のある繊維材料(2)とを有する繊維積層体を製造するための装置であって、繊維材料(2)を水流交絡によって結合するユニットが設けられている形式のものにおいて、
当該装置が、0,5〜20mmの直径の開口(6)を備えた、構造を付与する孔付きステンシル(4)を有していることを特徴とする、繊維積層体を製造するための装置。
【請求項10】
孔付きステンシル(4)が、構造を付与するドラムシェルとして形成されている、請求項9記載の装置。
【請求項11】
孔付きステンシル(4)が、構造を付与するエンドレスベルトとして形成されている、請求項9記載の装置。

【公表番号】特表2009−511761(P2009−511761A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534901(P2008−534901)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【国際出願番号】PCT/EP2006/009579
【国際公開番号】WO2007/042180
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(504164239)フライスナー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【Fターム(参考)】