完全な2’改変核酸転写物を生成するための材料および方法
配列の中に完全な改変ヌクレオチド三リン酸が組み込まれているアプタマー治療薬を生産するための材料と方法が提供される。より詳細には、本発明は、T7 RNAポリメラーゼに関する。これを、精製すること、単離すること、そして/または組み換えることができる。1つの実施形態においては、639位と784位とに改変アミノ酸を含むT7 RNAポリメラーゼ(ここでは、784位の改変アミノ酸がアラニンである場合には、639の改変アミノ酸はフェニルアラニンではない)が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本仮特許出願は、米国特許法§119(e)の下、次の仮特許出願:2005年6月30日に出願された米国仮特許出願第60/696,292号の優先権を主張し、その全体は本明細書中に参考として援用される。本発明は一般に、核酸の分野、より詳細にはアプタマーに関する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、核酸(具体的には、修飾された酵素)を転写するための材料と方法、および修飾されたヌクレオチドの核酸(具体的には、アプタマー)への取り込みを増大させるための鋳型特異的重合において修飾された酵素を使用するための材料と方法に関する。加えて、本発明は、転写鋳型成分配列を選択するための方法と材料、転写物量を増大させるための(具体的には、SELEX(登録商標)法の際の転写物量を増大させるための)そのような成分配列の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
定義によると、アプタマーは、ワトソン−クリック(Watson−Crick)塩基対合以外の相互作用によってタンパク質のようないくつかの標的に対して高い特異性および親和性で結合する、単離された核酸分子である。アプタマーは核酸をベースとする分子であるが、アプタマーと他の核酸分子(例えば、遺伝子およびmRNA)の間には根本的に違いがある。後者においては、核酸構造は、その直鎖状の塩基配列を通じて情報をコードしており、したがって、この配列は、情報の保存機能に重要な配列である。全く対照的に、アプタマーの機能は、標的分子の特異的結合に基づき、これは、保存された直鎖状の塩基配列に依存するのではなく、むしろ、特定の二次構造/三次構造に依存する。すなわち、アプタマーは非コード配列である。アプタマーが有する場合がある何らかをコードする可能性は完全に偶然のものであり、そしてどんな形であっても、その同種の標的に対するアプタマーの結合において役割を担うことはない。したがって、同じ標的に対して、さらにその標的上の同じ部位に対して結合するアプタマーは、類似する直鎖状の塩基配列を共有する場合があるが、ほとんどの場合はそうではない。
【0004】
アプタマーはまた、特定のタンパク質に結合する自然界に存在している核酸配列とは異なっていなければならない。これらの後者の配列は、自然界に存在している核酸の転写、翻訳、および輸送に関係しているタンパク質の特定のサブグループ(すなわち、核酸結合タンパク質)に結合する生物体のゲノムの中に埋め込まれている自然界に存在している配列である。一方、アプタマーは、短い、単離された、自然界には存在しない核酸分子である。核酸結合タンパク質に結合するアプタマーを同定することができるが、ほとんどの場合は、そのようなアプタマーは、自然界において核酸結合タンパク質によって認識される配列に対しては、配列同一性をほとんど有していないか、または全く同一性はない。最も重要なことは、アプタマーは、(単に核酸結合タンパク質だけではなく)実質的に全てのタンパク質に結合することができ、さらには、目的の任意の標的(低分子、炭水化物、ペプチドなどを含む)のほとんどにも結合することができる。ほとんどの標的について、さらにはタンパク質についても、それに結合する自然界に存在している核酸配列は存在しない。そのような配列を有するこれらの標的(すなわち、核酸結合タンパク質)については、そのような配列は、堅く結合しているアプタマーと比較して、実際に使用される比較的低い結合親和性の結果として、アプタマーとは異なるであろう。
【0005】
アプタマーは、ファージディスプレイによって作成されるペプチドまたは抗体と同様に、選択された標的に特異的に結合すること、および標的の活性または結合相互作用を調節することができる。これは、例えば、アプタマーの結合によってそれらの標的の機能する能力をブロックすることができることによる。抗体と同様に、標的に対する特異的結合のこの機能的特性は固有の性質である。また、抗体と同様に、当業者は、標的に対するアプタマーに特徴的などの正確な構造を有するかを知ることはできない場合があるが、当業者は、正確な構造の定義が存在しない条件下でそのような分子を同定し、作成し、そして使用するための方法を知っている。
【0006】
アプタマーはまた、小さい分子治療薬のアナログでもあり、その中の1つの構造変化(しかし、一見、重要ではない)が、アプタマーの結合および/または他の活性(単数または複数)に劇的な効果(数桁)を及ぼす場合がある。一方、いくつかの構造変化は、どのような形でもほとんど、または全く効果がない場合もある。これは、アプタマーの二次構造/三時構造の重要性によって生じる。言い換えると、アプタマーは、その任意の標的に特異的に結合する化学的な接触を提供する、固定された立体構造で維持されている三次元構造である。結果として:(1)いくつかの領域または特定の配列は、(a)標的との接触の特異的な点として、および/または(b)標的と接触する分子の位置である配列として、不可欠であり;(2)いくつかの領域または特定の配列は一定の範囲の可変性を有しており、例えば、ヌクレオチドXはピリミジンでなければならないか、またはヌクレオチドYはプリンでなければならないか、または、ヌクレオチドXとYは相補的でなければならず;そして(3)いくつかの領域または特定の配列はいずれのものであってもよく、すなわち、これらは、原則的には、スペースエレメントであり、例えば、これらは、任意の長さのヌクレオチドの任意の並び、またはさらには、PEG分子のようなヌクレオチド以外のスペーサーでもあり得る。
【0007】
ランダムな配列のオリゴヌクレオチドのプールからインビトロでの選択プロセスによって発見された、成長因子、転写因子、酵素、免疫グロブリン、および受容体を含む130個を超えるタンパク質についてアプタマーが作成されている。典型的なアプタマーは、10〜15kDaの大きさ(20〜45ヌクレオチド)であり、これは、ナノモルからナノモル未満の親和性でその標的に結合し、そして密接に関係している標的を区別する(例えば、アプタマーは、通常は、同じ遺伝子ファミリーに由来する他のタンパク質には結合しないであろう)。一連の構造実験は、アプタマーが同じタイプの結合相互作用(例えば、水素結合、静電気的相補性、疎水的接触、立体排除)を使用することができ、これにより、抗体−抗原複合体における親和性および特異性が駆動されることを示している。
【0008】
アプタマーは、治療薬および診断薬としての使用のための多数の所望される特性(高い特異性および親和性、生物学的効力、ならびに優れた薬物動態特性を含む)を有する。加えて、これらは、抗体および他のタンパク質生物製剤を上回る、例えば、以下のような特異的な競合する利点を付与する:
1)速度および制御。アプタマーは、完全なるインビトロでのプロセスによって生産することができ、それにより、最初のリード化合物(lead)(治療薬のリード化合物を含む)の迅速な作成が可能になる。インビトロでの選択により、アプタマーの特異性および親和性をきっちりと制御することができ、そして、リード化合物(毒素標的および非免疫原性標的の両方に対するリード化合物を含む)の作成が可能となる。
【0009】
2)毒性および免疫原性。1つのクラスとしてのアプタマーは、治療上許容される毒性、または免疫原性が無いことが明らかにされている。多くのモノクローナル抗体の効力は、抗体自体に対する免疫応答によって厳密に制限され得るが、アプタマーに対する抗体を誘発することは極めて困難である。その理由は、ほぼおそらく、アプタマーがMHCを介してT細胞によっては提示され得ないこと、および免疫応答が通常は、核酸断片を認識することに慣れていないことである。
【0010】
3)投与。ほとんどの現在承認されている抗体療法は静脈内への注入(通常は、2〜4時間)によって投与されるが、アプタマーは、皮下注射によって投与することができる(皮下投与によるアプタマーの生体利用性は、サルでの実験においては>80%である(非特許文献1)。この差は、主に、比較的低い溶解度、したがって、ほとんどの治療用mAbについて必要な大きい容量が原因である。良好な可溶性(>150mg/mL)と比較的低い分子量(アプタマー:10〜15kDa;抗体:150kDa)を有するアプタマーの1週間の用量は、0.5mL未満の容量で注射によって投与することができる。加えて、小さいサイズのアプタマーは、抗体または抗体断片が入ることができない立体構造上の狭窄の領域に入り込むことができて、アプタマーに基づく治療薬または予防薬のなおさらに別の利点を示す。
【0011】
4)拡張性およびコスト。治療用のアプタマーは化学合成され、結果として、生産の要望を満たすために必要に応じて容易に拡張縮小する(scaled)ことができる。生産の拡張縮小における問題点は、現在、いくつかの生物製剤の有用性を制限しており、そして大規模なタンパク質の生産用プラントの資本コストは膨大であるが、1つの大規模なオリゴヌクレオチド合成装置によっては、100kg/年、生産を上昇させることができ、比較的少ない初期投資しか必要ではない。キログラム規模でのアプタマーの合成のための物品についての現在のコストは、$500/gと概算され、高度に最適化された抗体のコストに匹敵する。プロセスの開発において改善を続けることにより、物品のコストは、5年間で、<$100/gに下げられると予想される。
【0012】
5)安定性。治療用のアプタマーは化学的に頑丈である。これらは、本質的に、熱および変性剤のような要因に曝された後に活性を回復するように適応しており、そして、凍結乾燥させられた粉末として、室温で長時間(>1年)保存することができる。対照的に、抗体は、冷蔵して保存しなければならない。
【0013】
アプタマーの本来の安定性に加えて、修飾されたヌクレオチド(例えば、2’−修飾されたヌクレオチド)(これは、安価であり、毒性はなく、そして酵素的、化学的、熱的、および物理的分解に対する抵抗性を高めることができる)を、2002年12月3日に提出された米国特許出願第10/729,851号、および2004年6月21に提出された米国特許出願第10/873,856号に記載されているような、SELEX(登録商標)法の間に取り込ませることができる。SELEX(登録商標)プロセスの間に修飾されたヌクレオチドを取り込ませることは、多くの場合に、SELEX(登録商標)選択の後に起こり得る結合親和性および活性の消失の可能性があるので、SELEX(登録商標)後の修飾に好ましいが、SELEX(登録商標)プロセスの間の修飾されたヌクレオチド(例えば、2’−O−メチルヌクレオチド(「2−OMe」)の取り込みは、少ない転写物量の理由から、歴史的に困難である。溶液の条件および転写混合物は、2002年12月3日に提出された米国特許出願第10/729,851号、および2004年6月21に提出された米国特許出願第10/873,856号に記載されている。これらによっては、2’−OMeヌクレオチドが取り込まれているアプタマーについて、改善された転写物量が得られている。しかし、完全に2’−O−メチル化されたアプタマーについての転写物量は依然として解決できていない。
【0014】
治療薬としてのアプタマーの利点に加えて、安価な性質、低い毒性、そしてアプタマーの中への2’−OMeヌクレオチドの取り込みにより付与された高いヌクレアーゼ耐性を前提とすると、例えば、インビボでのアプタマー治療薬の安定性を長くするまたは増大させるために、完全に2’−O−メチル化されたアプタマーの転写物量を増大させるための材料および方法を得ることが有効であろう。本発明により、これらと他の要件を満たす改良された材料と方法が提供される。
【非特許文献1】Tuckerら、J.Chromatography B.(1999)732:203−212
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発明の要旨)
本発明は、T7 RNAポリメラーゼに関する。これは、精製することができ、単離することができ、そして/また、組み換え体でもあり得る。本明細書中で使用される場合は、用語「単離された」には、細胞または組織の中で組み換えによって発現させられた、本発明のポリメラーゼを含む。本明細書中で使用される場合は、用語「単離された」には、細胞または組織の中に入るように操作された本発明の核酸配列を含む。1つの実施形態においては、639位と784位とに改変アミノ酸を含むT7 RNAポリメラーゼ(ここでは、784位の改変アミノ酸がアラニンである場合には、639の改変アミノ酸はフェニルアラニンではない)が提供される。別の実施形態においては、378位に改変アミノ酸がさらに含まれている上記T7 RNAポリメラーゼが提供される。別の実施形態においては、266位に改変アミノ酸がさらに含まれている上記T7 RNAポリメラーゼが提供される。特定の実施形態においては、639位の改変アミノ酸はロイシンであり、784位の改変アミノ酸はアラニンである。さらなる実施形態においては、266位の改変アミノ酸はロイシンである。さらなる実施形態においては、378位の改変アミノ酸はアルギニンである。
【0016】
好ましい実施形態においては、改変アミノ酸は、2’−OMeヌクレオチド三リン酸のみを含む転写反応においては、ポリメラーゼによる、2’−OMe修飾を含む核酸の転写量を増大させる。特定の実施形態においては、転写量の増大は、転写が、アミノ酸が変化させられたT7 RNAポリメラーゼと改変アミノ酸を欠くT7 RNAポリメラーゼの両方について同じ転写条件下で行われた場合の、改変アミノ酸を欠くT7 RNAポリメラーゼに対する比較である。別の実施形態においては、改変アミノ酸は、2’−Omeヌクレオチド三リン酸に対する識別を低下させる。特定の実施形態においては、2’−OMeヌクレオチド三リン酸の識別の低下は、両方のポリメラーゼが同じ転写条件下で使用された場合の、改変アミノ酸を欠くT7 RNAポリメラーゼに対する比較である。この態様の特定の実施形態においては、改変アミノ酸を欠くT7 RNAポリメラーゼは、639位のアミノ酸がフェニルアラニンに変化させられており、そして、784位のアミノ酸がアラニンに変更されている野生型のT7 RNAポリメラーゼ、または、639位でチロシンがフェニルアラニンで置換されており、そして784位のヒスチジンがアラニンで置換されており、そして378位のリジン残基がアルギニン残基で置換されていることを除いて野生型のアミノ酸配列を有する変異体ポリメラーゼ(Y639F/H784A/K378R)である。
【0017】
特定の実施形態においては、配列番号1、配列番号2、配列番号102、および配列番号103からなる群より選択されるアミノ酸を含む単離されたポリペプチドが提供される。特定の実施形態においては、本発明のT7 RNAポリメラーゼを含む容器を含むキットが提供される。
【0018】
いくつかの実施形態においては、一本鎖の核酸を転写する方法が提供され、これには、変異体T7 RNAポリメラーゼを鋳型核酸とともに、転写を生じるために十分な反応条件下でインキュベートする工程を含む。
【0019】
別の実施形態においては、本発明のポリペプチドをコードする単離された核酸が提供される。特定の実施形態においては、配列番号122、配列番号123、配列番号124、および、配列番号125からなる群より選択される核酸配列が提供される。いくつかの実施形態においては、本発明の単離された核酸配列を含むベクターが提供される。特定の実施形態においては、プロモーターに動作可能であるように連結された本発明の核酸を含む発現ベクターが提供される。本発明の別の実施形態においては、本発明の発現ベクターを含む細胞が提供される。特定の実施形態においては、本発明の変異体T7 RNAポリメラーゼがその細胞によって発現される細胞が提供される。いくつかの実施形態においては、本発明のT7 RNAポリメラーゼをコードする核酸を含む容器を含むキットが提供される。
【0020】
別の実施形態においては、完全な2’−OMe核酸を転写する方法が提供される。この方法には以下の工程を含む:a)鋳型核酸を反応混合物中で、変異体RNAポリメラーゼ、核酸転写鋳型、およびヌクレオシド三リン酸を含む条件下でインキュベートする工程であって、ここでは、ヌクレオシド三リン酸は2’OMeである工程;ならびに、b)一本鎖の核酸が得られるように転写反応混合物を転写する工程であって、ここでは、転写物の最初のヌクレオチドを2’修飾され得ないことを除いて、一本鎖核酸のヌクレオチドの全てが2’−OMe修飾される工程。いくつかの実施形態においては、転写物の最初のヌクレオシドは2’−OHグアノシンであり得る。この方法のいくつかの実施形態においては、変異体RNAポリメラーゼは、639位と784位とに改変アミノ酸を含む変異体T7 RNAポリメラーゼであり、具体的には、784位の改変アミノ酸がアラニンである場合には、639位の改変アミノ酸はフェニルアラニンではない、639位と784位とに改変アミノ酸を含むT7 RNAポリメラーゼ)であり、特に、378位に改変アミノ酸、および/または266位に改変アミノ酸がさらに含まれているT7 RNAポリメラーゼである。特定の実施形態においては、本発明の方法で使用されるポリメラーゼにおいては、639位の改変アミノ酸はロイシンであり、784位の改変アミノ酸はアラニンである。さらなる実施形態においては、266位の改変アミノ酸は、本発明の方法で使用されるポリメラーゼについては、ロイシンである。さらなる実施形態においては、378位の改変アミノ酸は、本発明の方法で使用されるポリメラーゼについては、アルギニンである。特定の実施形態においては、配列番号1、配列番号2、配列番号102、および配列番号103からなる群より選択されるアミノ酸を含む単離されたポリペプチドが提供される。
【0021】
本発明の方法のいくつかの実施形態においては、転写反応には、さらにマグネシウムイオンを含む。別の実施形態においては、転写反応には、マンガンイオンがさらに含まれる。別の実施形態においては、マグネシウムイオンは、マンガンイオンよりも3.0から3.5倍高い濃度で、転写反応の中に存在する。個々のヌクレオチド三リン酸が1.0mMの濃度で転写反応の中に存在する別の実施形態においては、マグネシウムイオンの濃度は6.5mMであり、マンガンイオンの濃度は2.0mMである。個々のヌクレオチド三リン酸が1.5mMの濃度で転写反応の中に存在する別の実施形態においては、マグネシウムイオンの濃度は8mMであり、マンガンイオンの濃度は2.5mMである。個々のヌクレオチド三リン酸が2.0mMの濃度で転写反応の中に存在する別の実施形態においては、マグネシウムイオンの濃度は9.5mMであり、マンガンイオンの濃度は3.0mMである。
【0022】
別の実施形態においては、転写反応にはさらに、非2’−OMeグアノシン非三リン酸残基(具体的には、以下からなる群より選択される非2’−OMeグアノシン非三リン酸残基:グアノシン一リン酸、グアノシンニリン酸、2’−フルオログアノシン一リン酸、2’−フルオログアノシン二リン酸、2’−アミノグアノシン一リン酸、2’−アミノグアノシンニリン酸、2’−デオキシグアノシン一リン酸、および2’−デオキシグアノシンニリン酸)を含む。別の実施形態においては、転写鋳型には、T7 RNAポリメラーゼプロモーターを含む。別の実施形態においては、転写反応にはさらに、ポリエチレングリコールを含む。別の実施形態においては、転写反応には、無機ピロホスファターゼを含む。
【0023】
本発明の別の態様においては、アプタマーを同定するための方法が提供される。1つの実施形態においては、以下の工程を含む、アプタマーを同定するための方法が提供される:a)本発明の変異体ポリメラーゼ、および1種類以上の核酸転写鋳型を含む転写反応混合物を調製する工程、b)転写反応混合物を転写して、一本鎖の核酸の候補混合物を得る工程であって、ここでは、一本鎖の核酸のヌクレオチドのうち、必要に応じて1つを除く全てが2’修飾される工程、c)候補混合物を標的分子と接触させる工程、d)候補混合物から、候補混合物の親和性と比較して、標的分子に対して高い親和性を有する核酸を分ける工程、ならびに、e)高い親和性を有する核酸を増幅して、アプタマーを多く含む混合物を得る工程であって、ここでは、アプタマーの最初のヌクレオチドを2’修飾され得ないことを除き、標的分子に対する得プタマーに全て2’修飾されたヌクレオチドを含む工程。いくつかの実施形態においては、増幅工程f)には、(i)必要に応じて、標的に由来する親和性が高い核酸を解離させる工程、ii)核酸−標的複合体から解離した親和性が高い核酸を逆転写する工程、iii)逆転写された親和性が高い核酸を増幅する工程;ならびに、(ii)転写鋳型として増幅かつ逆転写された親和性が高い核酸を含む転写反応混合物を調製し、そして転写混合物を転写する工程を含む。
【0024】
本発明のアプタマーの同定方法のいくつかの実施形態においては、変異体RNAポリメラーゼは、639位と784位とに改変アミノ酸を含む変異体T7 RNAポリメラーゼであり、特に、639位と784位とに改変アミノ酸が含まれており、784位の改変アミノ酸がアラニンである場合には639位の改変アミノ酸はフェニルアラニンではないT7 RNAポリメラーゼであり、特に、378位に改変アミノ酸および/または266位に改変アミノ酸がさらに含まれているT7 RNAポリメラーゼである。特定の実施形態においては、本発明の方法で使用されるポリメラーゼにおいては、639位の改変アミノ酸はロイシンであり、784位の改変アミノ酸はアラニンである。さらなる実施形態においては、266位の改変アミノ酸は、本発明の方法で使用されるポリメラーゼについてはロイシンである。さらなる実施形態においては、378位の改変アミノ酸は、本発明の方法で使用されるポリメラーゼについてはアルギニンである。特定の実施形態においては、配列番号1、配列番号2、配列番号102、および配列番号103からなる群より選択されるアミノ酸を含む単離されたポリペプチドが、本発明のアプタマーの同定方法において使用される。
【0025】
いくつかの実施形態においては、転写反応の中のヌクレオチド三リン酸は全て、2’−OMe修飾される。1つの実施形態においては、1つ以上の核酸転写鋳型にはT7 RNAポリメラーゼプロモーターが含まれ、そしてリーダー配列は、T7 RNaポリメラーゼプロモーターのすぐ3’側にある。この態様のいくつかの実施形態においては、この方法には、工程a)からe)を反復して繰り返す工程を含む。
【0026】
本発明のアプタマーの同定方法のいくつかの実施形態においては、転写反応にはさらに、マグネシウムイオンを含む。別の実施形態においては、転写反応には、マンガンイオンがさらに含まれる。別の実施形態においては、マグネシウムイオンは、マンガンイオンよりも3.0から3.5倍高い濃度で、転写反応の中に存在する。個々のヌクレオチド三リン酸が1.0mMの濃度で転写反応の中に存在する別の実施形態においては、マグネシウムイオンの濃度は6.5mMであり、マンガンイオンの濃度は2.0mMである。個々のヌクレオチド三リン酸が1.5mMの濃度で転写反応の中に存在する別の実施形態においては、マグネシウムイオンの濃度は8mMであり、マンガンイオンの濃度は2.5mMである。個々のヌクレオチド三リン酸が2.0mMの濃度で転写反応の中に存在する別の実施形態においては、マグネシウムイオンの濃度は9.5mMであり、マンガンイオンの濃度は3.0mMである。
【0027】
この態様の別の実施形態においては、本発明のアプタマーの同定方法において使用される転写反応にはさらに、非2’−OMeグアノシン非三リン酸残基(特に、以下からなる群より選択される非2’−OMeグアノシン非三リン酸残基:グアノシン一リン酸、グアノシンニリン酸、2’−フルオログアノシン一リン酸、2’−フルオログアノシン二リン酸、2’−アミノグアノシン一リン酸、2’−アミノグアノシンニリン酸、2’−デオキシグアノシン一リン酸、および2’−デオキシグアノシンニリン酸)を含む。別の実施形態においては、転写鋳型には、T7 RNAポリメラーゼプロモーターを含む。別の実施形態においては、転写反応にはさらに、ポリエチレングリコールを含む。別の実施形態においては、転写反応には、無機ピロホスファターゼを含む。
【0028】
本発明はまた、特異的転写のための核酸鋳型の成分配列を選択する方法にも関する。1つの実施形態においては、成分配列は、鋳型特異的転写の転写物量を増大させる。特定の実施形態においては、本発明は、転写物量を増大させるためのリーダー配列を選択する方法、およびリーダー配列に対して、リーダー配列を含む核酸鋳型、および、本発明のリーダー配列と核酸鋳型を使用する方法に関する。本発明はまた、新規の変異体ポリメラーゼ、および転写におけるそれらの使用、特に、2’修飾されたヌクレオチドが取り込まれている(より具体的には、取り込まれているヌクレオチドの全てが2’修飾されている、例えば、2’−OMeである場合)転写物量を増大させるためのその使用にも関する。本発明はまた、転写物量を増大させるための改良された転写反応条件にも関する。本発明は、具体的には、上記の態様の2つおよび3つの組み合わせ、具体的には転写物の最初のヌクレオチド以外の全てが2’修飾、具体的には、2’−OMe修飾されている転写物(「完全なる2’−OMe」または「mRmY」または「MNA」転写物)の量を改善することに関する。
【0029】
本発明の第1の態様の1つの実施形態においては、転写を促進するための核酸鋳型成分配列を同定する方法が提供される。この方法には、以下の工程を含む:a)転写鋳型の候補のライブラリーを調製する工程であって、ここでは、鋳型には、プロモーター、プロモーターのすぐ3’側にある第1の固定された領域、第1の固定された領域のすぐ3’側にある縮重領域、および縮重領域の3’側にある第2の固定された領域を含む工程;b)転写反応において転写鋳型の候補のライブラリーを転写して、転写物のライブラリーを得る工程;c)転写混合物を逆転写して、cDNAの候補混合物を得る工程であって、ここでは、cDNA鋳型には5’末端と3’末端を含む工程;d)連結反応において、プロモーターをコードするDNA配列をcDNA鋳型の3’末端に連結する工程;e)cDNA鋳型を増幅して、転写鋳型の候補のライブラリーを得る工程;ならびに、f)転写鋳型の候補のライブラリーからの転写を増強するための核酸配列成分を同定する工程であって、ここでは、核酸配列成分には、縮重領域の少なくとも一部に由来する配列を含む工程。本発明のこの方法の1つの実施形態においては、工程f)には、i)個々の転写鋳型に転写鋳型の候補のライブラリーをクローニングする工程;ii)転写反応において個々の転写鋳型を転写して、転写物の量を得る工程;iii)個々の転写鋳型の転写物量を評価する工程;ならびに、iv)所定の転写物量を生じる転写鋳型中の核酸配列成分を同定する工程。本発明のこの方法の特定の実施形態においては、所定の転写物量は、転写鋳型の候補混合物を転写することにより工程b)で得られる転写物量よりも多い量である。
【0030】
本発明のこの方法の別の実施形態においては、工程f)には、転写鋳型の候補のライブラリーの縮重領域の塩基組成を分析する工程、および転写鋳型の候補のライブラリーの平均の塩基組成に基づいて核酸配列成分を同定する工程を含む。
【0031】
本発明のこの態様のいくつかの実施形態においては、この方法の工程b)にはさらに、転写された転写混合物をDNaseで処理する工程が府生まれる。本発明のこの方法のさらなる実施形態においては、工程b)にはさらに、転写された転写混合物を、転写された転写鋳型を転写反応の他の成分から分けることによって精製する工程を含む。本発明のこの方法の特定の実施形態においては、精製工程には、転写反応物を脱塩カラムを通過させることによって、転写反応緩衝液を置換することを含む。
【0032】
本発明のこの態様の別の実施形態においては、この方法の工程d)には、工程c)の前に行われる。本発明のこの態様の別の実施形態においては、この方法には、工程f)が行われる前に、工程b)からe)を1回以上繰り返す工程を含む。
【0033】
本発明のこの態様のさらなる実施形態においては、連結反応は、添え木で支えられた連結反応(splinted ligation reaction)であり、この連結反応には、核酸である添え木と、プロモーターをコードする5’−一リン酸化オリゴヌクレオチドを含む。
【0034】
本発明のこの態様の特定の実施形態においては、この方法で使用される転写反応には、1つ以上の改変ヌクレオチド三リン酸と変異したポリメラーゼを含む。いくつかの実施形態においては、改変ヌクレオチド三リン酸は、2’改変ヌクレオチド三リン酸、特に、2’−OMe改変ヌクレオチド三リン酸である。いくつかの実施形態においては、変異したポリメラーゼは、変異したT7 RNAポリメラーゼである。いくつかの実施形態においては、本発明の方法において使用される転写反応には、マグネシウムイオンおよびマンガンイオン(Mn2+)が含まれ、変異したT7 RNAポリメラーゼは、配列番号1、配列番号2、配列番号100、および配列番号101からなる群より選択される。
【0035】
本発明のこの態様のいくつかの実施形態においては、マグネシウムイオンは、マンガンイオン(Mn2+)よりも3.0から3.5倍高い濃度で、転写反応の中に存在する。個々のヌクレオチド三リン酸が1.0mMの濃度で転写反応の中に存在する本発明のこの態様のさらなる実施形態においては、マグネシウムイオンの濃度は6.5mMであり、マンガンイオンの濃度は2.0mMである。個々のヌクレオチド三リン酸が1.5mMの濃度で転写反応の中に存在する本発明のこの態様のさらなる実施形態においては、マグネシウムイオンの濃度は8mMであり、マンガンイオンの濃度は2.5mMである。個々のヌクレオチド三リン酸が2.0mMの濃度で転写反応の中に存在する本発明のこの態様のなおさらなる実施形態においては、マグネシウムイオンの濃度は9.5mMであり、マンガンイオンの濃度は3.0mMである。この方法のいくつかの実施形態においては、転写反応にはさらに、ポリアルキレングリコール、特に、ポリエチレングリコールを含む。この方法のいくつかの実施形態、具体的には、完全なる2’−OMe転写物が所望される実施形態においては、転写反応にはさらに、以下からなる群より選択されるグアノシン残基を含む:グアノシン一リン酸、グアノシンニリン酸、2’−フルオログアノシン一リン酸または2’−フルオログアノシン二リン酸、2’−アミノグアノシン一リン酸または2’−アミノグアノシンニリン酸、2’−デオキシグアノシン一リン酸または2’−デオキシグアノシンニリン酸、あるいは他の修飾されたヌクレオチド。さらなる実施形態においては、本発明の方法の転写反応には、無機ピロホスファターゼを含む。さらなる実施形態においては、本発明の方法の転写反応には、必要に応じて、以下からなる群に由来する組み合わせを含む:緩衝液、界面活性剤(例えば、Triton X−100)、ポリアミン(例えば、スペルミンまたはスペルミジン)、および還元剤(例えば、DTTまたはβME)。なおさらなる実施形態においては、本発明の方法の転写反応には、ヌクレオチド三リン酸、マグネシウムイオン、マンガンイオン(例えば、Mn2+)、ポリエチレングリコール、グアノシン一リン酸、無機ピロホスファターゼ、緩衝液、界面活性剤、ポリアミン、およびDTT、ならびに1種類以上のオリゴヌクレオチド転写鋳型、ならびに、T7 RNAポリメラーゼ(例えば、変異体T7 RNAポリメラーゼ(配列番号1、2、100、および101からなる群より選択される変異体T7 RNAポリメラーゼ))を含む。
【0036】
本発明の同定方法のいくつかの実施形態においては、転写鋳型の候補のライブラリーの第1の固定された領域は、2個、3個、4個、または5個のグアノシン残基から構成される。本発明のいくつかの実施形態においては、転写鋳型の候補のライブラリーの縮重領域には、少なくとも4個、10個、20個、または30個のヌクレオチドを含む。
【0037】
この方法のいくつかの実施形態においては、同定される核酸鋳型成分配列はリーダー配列である。いくつかの実施形態においては、リーダー配列には第1の固定された領域と、転写鋳型の候補のライブラリーの縮重領域の少なくとも一部に由来する配列を含む。いくつかの実施形態においては、本発明の方法にはさらに、同定されたリーダー配列をオリゴヌクレオチド転写鋳型の中に取り込ませる工程を含む。
【0038】
本発明によってはまた、本発明の同定方法によって同定されたリーダー配列も提供される。いくつかの実施形態においては、本発明のリーダー配列には、配列番号10から99からなる群より選択される配列のいずれか1つの中のヌクレオチド22からヌクレオチド32までの核酸配列を含む。いくつかの実施形態においては、本発明のリーダー配列には、配列番号10〜99からなる群より選択される配列の任意の1つの中のヌクレオチド18からヌクレオチド32までの核酸配列を含む。本発明によってはまた、本発明のリーダー配列を含むオリゴヌクレオチド転写鋳型も提供される。特定の実施形態においては、本発明により、配列番号3から6、および配列番号106からなる群より選択されるオリゴヌクレオチド転写鋳型が提供される。
【0039】
本発明の別の態様においては、核酸の転写物量を増大させるための方法が提供され、ここでは、転写は、オリゴヌクレオチド転写鋳型によって行われる。本発明のこの態様のいくつかの実施形態においては、転写物量を増大させる方法には、リーダー配列を含むオリゴヌクレオチド転写鋳型を用いて転写を行う工程を含む。ここでは、リーダー配列は、それについての転写物量の増大が所望される転写反応において使用されるものと同じヌクレオチド組成および/またはポリメラーゼおよび/または条件を使用して、本発明の同定方法によって同定される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
(発明の詳細な説明)
本発明の1つ以上の実施形態の詳細が、以下の付随する記載に示される。本明細書中に記載されるものと類似する、または同等の任意の方法と材料を本発明の実施および試験において使用することができるが、好ましい方法および材料がここに記載される。本発明の他の特徴、目的、および利点は、記載から明らかであろう。明細書中では、単数形には、状況が別の場所に明確に示されていない限りは、複数形も含まれる。他の場所で定義されていない限りは、本明細書中で使用される全ての技術用語および学術用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。矛盾する場合には、本明細書が支配するであろう。
【0041】
SELEX(登録商標)法
アプタマーを作成するための好ましい方法は、図1に概要が示される「Systematic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment」(「SELEX(登録商標)」)と題されており、また、インビトロ選択とも呼ばれるプロセスを用いる。SELEX(登録商標)プロセスは、標的分子に対して高度に特異的な結合を用いた核酸分子のインビトロでの発達のための方法であり、例えば、1990年6月11日に提出された米国特許出願番号07/536,428(現在は放棄されている)、「Nucleic Acid Ligands」と題されている米国特許第5,475,096号、および「Nucleic Acid Ligands」と題されている米国特許第5,270,163号(WO91/19813もまた参照のこと)に記載されている。選択と増幅の反復サイクルを行うことにより、SELEX(登録商標)を使用してアプタマーを得ることができ、これは、本明細書中では、何らかの所望されるレベルの標的結合親和性を有する「核酸リガンド」とも呼ばれる。
【0042】
SELEX(登録商標)プロセスは、核酸が様々な二次元構造および三次元構造を形成する十分な能力と、実質的にあらゆる化合物(モノマーであるか、またはポリマーであるかには問わない)とともにリガンドとして作用する(すなわち、特異的な結合対を形成する)それらのモノマーにおいて利用できる十分な化学的多用途性を有するという、独自の見識に基づく。任意の大きさの分子または組成物を、標的とすることができる。
【0043】
SELEX(登録商標)プロセスは、標的に結合する能力に基づく。したがって、SELEX(登録商標)手順によって得られたアプタマーは、標的結合特性を有するであろう。しかし、珍しい標的結合は、もし存在するとしても、アプタマーの結合の作用によって標的に対して発揮されるであろう機能的作用に対して何の情報も提供しない。
【0044】
標的分子の特性の変更には、標的の特性を変化させるために、標的上の特定の位置に結合するアプタマーが必要である。理論的には、SELEX(登録商標)法によっては、多数のアプタマーの同定が生じる場合があり、この場合は、個々のアプタマーが標的上の異なる部位に結合する。実際には、アプタマー−標的結合相互作用は、多くの場合は、標的上の1つ、または比較的少数の好ましい結合部位で起こり、これによって、相互作用についての安定であり、利用しやすい構造界面が提供される。さらに、SELEX(登録商標)法が生理学的標的分子について行われる場合には、当業者は通常は、標的に対するアプタマーの位置を制御することはできない。したがって、標的上のアプタマー結合部位の位置は、所望される効果を導くことができるか、または標的分子に対して何の効果も有していない可能性のあるいくつかの結合部位の1つである場合も、またそのような部位ではない場合も、あるいは、そのような部位に近い場合もある。
【0045】
標的に結合するその能力により、アプタマーが効果を有することが明らかになっている場合にもなお、その効果の存在を予測する、または前もって効果があるかどうかを知る方法はない。SELEX(登録商標)実験を行うことにおいては、当業者は、一定の確実性で、標的に対するアプタマーを得ることができる限りは、そのアプタマーが標的結合の特性を有するであろうことを知ることだけが可能である。同定されたアプタマーのいくつかはまた、それに対する結合を上回る効果をもまた標的に対して有しているであろうという期待においてSELEX(登録商標)実験を行うことができるが、これは不明確である。
【0046】
SELEX(登録商標)プロセスは、ランダマイズされた配列を含む一本鎖オリゴヌクレオチドの大きなライブラリーまたはプールについての開始点に依存している。オリゴヌクレオチドは、修飾された、または未修飾のDNA、RNA、もしくはDNA/RNAハイブリッドであり得る。いくつかの例においては、プールには、100%縮重または部分縮重オリゴヌクレオチドを含む。他の例においては、プールには、ランダマイズされた配列の中に組み込まれた少なくとも1つの固定された配列および/または保存された配列を含む、縮重または部分縮重オリゴヌクレオチドを含む。他の例においては、プールには、その5’末端および/もしくは3’末端に少なくとも1つの固定された配列および/または保存された配列を含む縮重または部分縮重オリゴヌクレオチドを含む。これには、オリゴヌクレオチドプールの分子全てによって共有されている配列を含む場合がある。固定された配列は、予め選択された目的のために取り込まれている、プールの中のオリゴヌクレオチドに共通している配列であり、例えば、以下にさらに記載されるCpGモチーフ、PCRプライマーのためのハイブリダイゼーション部位、RNAポリメラーゼのためのプロモーター配列(例えば、T3、T4、T7、およびSP6)、制限部位、またはホモポリマー配列(例えば、ポリAもしくはポリT帯(tract)、触媒コア、アフィニティーカラムに対する選択的結合のための部位、転写を促進するリーダー配列、および目的のオリゴヌクレオチドのクローニングおよび/または配列決定を容易にするための他の配列である。保存されている配列は、同じ標的に結合する多数のアプタマーによって共有されている、先に記載された固定された配列以外の配列である。
【0047】
プールのオリゴヌクレオチドには、好ましくは、縮重配列部分ならびに効率的な増幅に不可欠な固定された配列を含む。通常、最初のプールのオリゴヌクレオチドには、30〜40個のランダムなヌクレオチドの内部領域に隣接している固定された5’末端配列と3’末端配列を含む。縮重ヌクレオチドは、化学合成、およびランダムに切断された細胞性の核酸からの大きさによる選択を含む多数の方法で生産することができる。試験核酸における配列のバリエーションもまた、選択/増幅の繰り返しの前または間に、突然変異誘発によって導入、または、増大させることができる。
【0048】
オリゴヌクレオチドの縮重配列部分は任意の長さであり得、これには、リボヌクレオチドおよび/またはデオキシリボヌクレオチドが含まれ得、そして修飾された、または自然界には存在しないヌクレオチドあるいはヌクレオチドアナログが含まれ得る。例えば、米国特許第5,958,691号;同第5,660,985号;同第5,958,691号;同第5,698,687号;同第5,817,635号;同第5,672,695号、ならびにPCT公開番号WO92/07065を参照のこと。縮重オリゴヌクレオチドは、当該分野で周知の固相オリゴヌクレオチド合成技術を使用してホスホジエステル結合ヌクレオチドから合成することができる。例えば、Froehlerら、Nucl.Acid Res.14:5399−5467(1986)およびFroehlerら、Tet.Lett.27:5575−5578(1986)を参照のこと。ランダムオリゴヌクレオチドはまた、液相方法(例えば、トリエステル合成法)を使用して合成することもできる。例えば、Soodら、Nucl.Acid Res.4:2557(1977)およびHiroseら、Tet.Lett.,28:2449(1978)を参照のこと。自動合成装置上で行われる典型的な合成によっては、1016〜1017個の個々の分子が生じ、この数は、ほとんどのSELEX(登録商標)実験について十分である。配列の設計における縮重配列の十分に大きな領域によって、個々の合成された分子が特有の配列を示す可能性が高まる。
【0049】
オリゴヌクレオチドの最初のライブラリーは、DNA合成装置上での自動的な化学合成によって作成することができる。縮重配列を合成するためには、4種類のヌクレオチド全ての混合物が、合成プロセスの間にそれぞれのヌクレオチドの付加工程で添加され、それによってヌクレオチドの確率論的な取り込みが可能となる。上記のように、1つの実施形態においては、ランダムオリゴヌクレオチドには、完全なる縮重配列を含む;しかし、他の実施形態においては、縮重オリゴヌクレオチドには、ランダムではないかまたは部分的にランダムな配列のストレッチが含まれ得る。部分的にランダムな配列は、個々の付加工程で、様々なモル比で4種類のヌクレオチドを添加することによって作成することができる。
【0050】
RNAライブラリーが最初のライブラリーとして使用されるそのような例においては、これは典型的には、DNAライブラリーを合成すること、必要に応じて、PCR増幅を行うこと、その後、T7 RNAポリメラーゼまたは修飾されたT7 RNAポリメラーゼを使用してインビトロでDNAライブラリーを転写すること、そして転写されたライブラリーを精製することによって作成される。RNAライブラリーまたはDNAライブラリーは、その後、結合に好ましい条件下で標的と混合され、そして結合親和性および選択性の実質的な任意の所望される基準を満たすための同じ一般的な選択スキームを使用して、結合相互作用、分離、および増幅の段階的な繰り返しに供される。より具体的には、核酸の最初のプールを含む混合物を用いて開始されるSELEX(登録商標)法には、以下の工程を含む:(a)結合に好ましい条件下で、混合物を標的と接触させる工程;(b)標的分子に特異的に結合したそのような核酸から結合していない核酸を分離する工程;(c)必要に応じて、核酸−標的複合体を解離させる工程;(d)核酸−標的複合体から解離した核酸を増幅して、リガンドが多く含まれている核酸の混合物を得る工程;ならびに、(e)標的分子に対する特異性が高く、親和性が高い、核酸リガンドを得るために所望されるサイクル数と同じサイクル数、結合、分離、解離、および増幅の工程を繰り返す工程。RNAアプタマーが選択される場合には、SELEX(登録商標)法にはさらに、以下の工程を含む:(i)工程(d)の増幅の前に、核酸−標的複合体から解離した核酸を逆転写する工程;および(ii)プロセスを繰り返す前に、工程(d)による増幅させられた核酸を転写する工程。
【0051】
多数の可能性のある配列および構造を含む核酸混合物においては、所定の標的に対する結合親和性は広範囲に及ぶ。例えば、20ヌクレオチドのランダマイズされたセグメントを含む核酸混合物は、420種類の候補の可能性を有し得る。標的に対して高い親和性(低い解離定数)を有するものが、標的に結合する可能性が最も高い。分離、解離、および増幅の後、第2の核酸混合物が作成され、高い結合親和性を有する候補について富化させられる。得られる核酸混合物が主にわずか1種類または数種類の配列だけから構成されるまで、さらなる回の選択が最良のリガンドに段階的に有利に働く。これらは、その後、クローニングされ、配列決定され、そして1)標的結合親和性および/または2)標的機能に影響を与える能力について、リガンドまたはアプタマーとして個々に試験される。
【0052】
選択および増幅のサイクルは、所望される目的が達成されるまで繰り返される。最も一般的な場合には、選択/増幅は、結合強度においてそれ以上の有意な改善が、サイクルを繰り返しても得られなくなるまで続けられる。この方法では、通常、およそ1014種類の様々な核酸種の試料をサンプリングするために使用されるが、これは、約1018種類の核酸種のような多い試料にも使用される場合がある。一般的には、核酸アプタマー分子は、5から20サイクルの手順で選択される。1つの実施形態においては、不均質性は、最初の選択段階にのみ導入され、反復プロセス全体を通じては行われない。
【0053】
SELEX(登録商標)法の1つの実施形態においては、選択プロセスは、選択された標的に対して最も強く結合するそのような核酸リガンドを単離することについては十分に効果的であり、ここでは、わずかに1回の選択と増幅のサイクルが必要である。このような効率的な選択は、例えば、クロマトグラフィー型のプロセスにおいて起こり得、この場合、カラム上に結合させられた標的と会合する核酸の能力は、カラムによって親和性が最も高い核酸リガンドを十分に分離および単離できるそのような様式で操作される。
【0054】
多くの場合には、1つの核酸リガンドが同定されるまでにSELEX(登録商標)の反復工程を行うことは、必ずしも所望されない。標的特異的核酸リガンドの溶液には、保存されている多数の配列と、標的に対する核酸リガンドの親和性に有意な影響を与えることなく置換または付加することができる多数の配列を有する核酸構造またはモチーフのファミリーが含まれ得る。完了する前にSELEX(登録商標)プロセスを終わらせることにより、核酸リガンドの溶液のファミリーの多数のメンバーの配列を決定することができる。
【0055】
様々な核酸の一次構造、二次構造、および三次構造が存在することが知られている。ワトソン−クリック型以外の相互作用に関係していることが最も一般的に示されている構造またはモチーフは、ヘアピンループ、対称および非対称隆起(bulge)、偽結節、およびそれらの無数の組み合わせと呼ばれる。そのようなモチーフのほぼ全ての明らかになっているケースは、それらが、30個を越えないヌクレオチドの核酸配列の中で形成され得ることを示唆している。この理由について、連続するランダマイズされたセグメントを用いるSELEX(登録商標)手順が、約20個から約50個の間のヌクレオチド、そしていくつかの実施形態においては、約30個から約40個の間のヌクレオチドのランダマイズされたセグメントを含む核酸配列を用いて開始されることが、多くの場合に好ましい。1つの例においては、5’−固定された:ランダム:3’−固定された配列には、約30個から約40個のヌクレオチドのランダムな配列を含む。
【0056】
コアSELEX(登録商標)(core SELEX(登録商標))法は、多数の特異的な目的を達成するために改良されている。例えば、米国特許第5,707,796号には、特異的な構造特性(例えば、湾曲したDNA)を有する核酸分子を選択するために、ゲル電気泳動と組み合わせてSELEX(登録商標)プロセスを使用することが記載されている。米国特許第5,763,177号には、標的分子に結合することができる、および/または標的分子を光架橋させることができる、および/または標的分子を光不活化させることができる光反応性の基を含む核酸リガンドを選択するための、SELEX(登録商標)をベースとする方法が記載されている。米国特許第5,567,588号および米国特許第5,861,254号には、これにより、標的分子に対して高い親和性を有するオリゴヌクレオチドと低い親和性を有するオリゴヌクレオチドを非常に効率よく分離することができるSELEX(登録商標)をベースとする方法が記載されている。米国特許第5,496,938号には、SELEX(登録商標)プロセスが行われた後に、改良された核酸リガンドを得るための方法が記載されている。米国特許第5,705,337号には、その標的に対してリガンドを共有結合させるための方法が記載されている。
【0057】
SELEX(登録商標)法はまた、標的分子上の1つ以上の部位に結合する核酸リガンドを得るため、および標的上の特異的な部位に結合する非核酸種を含む核酸リガンドを得るためにも使用することができる。SELEX(登録商標)法によっては、いずれかの予想される標的(核酸結合タンパク質のような大きい生体分子および小さい生体分子、ならびに、それらの生物学的機能の一部として核酸に結合することは知られていないタンパク質、ならびに補因子および他の低分子を含む)に結合する核酸リガンドを単離および同定するための手段が提供される。例えば、米国特許第5,580,737号には、カフェインおよび密接に関係しているアナログであるテオフィリンに対して高い親和性で結合することができる、SELEX(登録商標)法によって同定された核酸配列が開示されている。
【0058】
Counter−SELEX(登録商標)プロセスは、1つ以上の非標的分子に対して交差反応性を有する核酸リガンド配列を排除することにより、標的分子に対する核酸リガンドの特異性を改善するための方法である。Counter−SELEX(登録商標)プロセスには、以下の工程を含む:(a)核酸の候補混合物を調製する工程;(b)候補混合物を標的と接触させる工程であって、ここでは、候補混合物と比較して標的に対して高い親和性を有する核酸を、候補混合物の残りから分離することができる工程;(c)候補混合物の残りから高い親和性を有する核酸を分離する工程;(d)必要に応じて、高い親和性を有する核酸を標的から解離させる工程;(e)高い親和性を有する核酸を1つ以上の非標的分子と接触させる工程であって、その結果、非標的分子(単数または複数)に対して特異的な親和性を有する核酸リガンドが除去される工程;ならびに、(f)標的分子に対してのみ特異的な親和性を有する核酸を増幅して、標的分子に対して比較的高い親和性と結合特異性を有する核酸配列について富化させられた核酸の混合物を得る工程。SELEX(登録商標)法について上記に記載されたように、選択と増幅のサイクルは、所望される目的が達成されるまで、必要に応じて繰り返される。
【0059】
治療薬およびワクチンとしての核酸の使用において起こる可能性がある1つの問題点は、それらのホスホジエステル形態のオリゴヌクレオチドが細胞内酵素および細胞外酵素(例えば、エンドヌクレアーゼおよびエキソヌクレアーゼ)によって、所望される効果が発現される前に体液中で迅速に分解されてしまう可能性があることである。したがって、SELEX(登録商標)法には、リガンドに対して改善された特性(例えば、改善されたインビボでの安定性または改善された送達特性)を付与する修飾されたヌクレオチドを含む親和性が高い核酸リガンドの同定を含む。このような修飾の例としては、糖および/またはリン酸および/または塩基部分での化学的置換が挙げられる。修飾されたヌクレオチドを含むSELEX(登録商標)によって同定された核酸リガンドは、例えば、米国特許第5,660,985号(ここでは、リボースの2’位、ピリミジンの5位、およびプリンの8位が化学修飾されているヌクレオチド誘導体を含むオリゴヌクレオチドが記載されている)、米国特許第5,756,703号(ここでは、様々な2’−修飾されたピリミジンを含むオリゴヌクレオチドが記載されている)、および米国特許第5,580,737号(ここでは、2’−アミノ(2’−NH2)、2’−フルオロ(2’−F)、および/または2’−O−メチル(2’−OMe)置換で修飾された1つ以上のヌクレオチドを含む特異性が高い核酸リガンドが記載されている)に記載されている。
【0060】
本発明において意図される核酸リガンドの修飾としては、さらなる変化、極性、疎水性、水素結合、静電気相互作用、および流動特性を、核酸リガンドの塩基に、または核酸リガンド全体に取り込ませる他の化学基を提供するものが挙げられるが、これらに限定はされない。ヌクレアーゼに耐性である縮重オリゴヌクレオチドの集団に対する修飾としてはまた、1つ以上の代わりのヌクレオチド間結合、別の糖、別の塩基、またはそれらの組み合わせを挙げることができる。このような修飾としては、以下が挙げられるが、これらに限定はされない:2’位置での糖修飾、5位でのピリミジンの修飾、8位でのプリンの修飾、環外アミンでの修飾、4−チオウリジンの置換、5−ブロモウラシルもしくは5−ヨードウラシルの置換;骨格の修飾、ホスホロチオエート、またはアルキルホスフェート修飾、メチル化、ならびに、特有の塩基の対合の組み合わせ(例えば、イソ塩基(isobase)であるイソシチジンとイソグアノシン)。修飾にはまた、3’および5’修飾(例えば、キャッピング)も含まれ得る。修飾にはまた、3’および5’修飾も含まれ得、例えば、キャッピング、例えば、エキソヌクレアーゼ耐性を高めるための3’−3’−dTキャップの付加も含まれ得る(例えば、米国特許第5,674,685号;同第5,668,264号;同第6,207,816号;および同第6,229,002号を参照のこと、これらのそれぞれはそれらの全体が引用により本明細書中に組み入れられる)。
【0061】
1つの実施形態においては、P(O)O基がP(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、P(O)NR2(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR’、CO、またはCH2(「ホルムアセタール」)もしくは3’−アミン(−NH−CH2−CH2−)によって置き換えられているオリゴヌクレオチドが提供される。式中、RまたはR’はそれぞれ独立して、H、または置換されたもしくは未置換のアルキルである。結合基は、−O−、−N−、または−S−結合によって隣接するヌクレオチドに結合させることができる。オリゴヌクレオチド中の全ての結合が同じである必要ではない。
【0062】
さらなる実施形態においては、オリゴヌクレオチドには修飾された糖基を含む。例えば、ヒドロキシル基の1つ以上がハロゲン、脂肪族基で置き換えられるか、またはエーテルもしくはアミンとして機能化させられる。1つの実施形態においては、フラノース残基の2’位は、O−メチル、O−アルキル、O−アリル、S−アルキル、S−アリル、またはハロ基のいずれかによって置換される。2’−修飾された糖の合成方法は、例えば、Sproat,ら、Nucl.Acid Res.19:733−738(1991);Cotten,ら、Nucl.Acid Res.19:2629−2635(1991);および、Hobbs,ら、Biochemistry 12:5138−5145(1973)に記載されている。他の修飾は当業者に公知である。このような修飾は、SELEX(登録商標)プロセスの前の修飾である場合も、また、SELEX(登録商標)プロセスの後の修飾(以前に同定された未修飾のリガンドの修飾)である場合も、あるいは、SELEX(登録商標)プロセスに組み込むことによって作成される場合もある。
【0063】
SELEX(登録商標)プロセス前の修飾、またはSELEX(登録商標)プロセスに組み込むことによって作成されるものによっては、それらのSELEX(登録商標)標的についての特異性と、改善された安定性(例えば、インビボでの安定性)の両方を有する核酸リガンドが得られる。核酸リガンドに対するSELEX(登録商標)プロセス後の修飾(例えば、SELEX(登録商標)プロセスの前の修飾によって取り込ませられたヌクレオチドを有する以前に同定されたリガンドの短縮、欠失、置換、またはさらなるヌクレオチド修飾によっては、改善された安定性(例えば、核酸リガンドの結合能力に有害な影響を与えることのないインビボでの安定性)が生じ得る。必要に応じて、修飾されたヌクレオチドがSELEX(登録商標)プロセス前の修飾によって取り込まれているアプタマーは、さらに、SELEX(登録商標)プロセス後の修飾(すなわち、SELEX後のSELEX(登録商標)後修飾プロセス)によって修飾することができる。
【0064】
SELEX(登録商標)方法には、米国特許第5,637,459号および同第5,683,867号に記載されているように、他の選択されたオリゴヌクレオチドおよび非オリゴヌクレオチド機能単位と選択されたオリゴヌクレオチドを組み合わせることを含む。SELEX(登録商標)法にはさらに、例えば、米国特許第6,011,020号、同第6,051,698号、およびPCT公開番号WO98/18480に記載されているように、診断用または治療用複合体の中で、選択された核酸リガンドを親油性または非免疫原性の高分子量の化合物と混合する工程を含む。これらの特許および特許出願には、広範な形状と他の特性、オリゴヌクレオチドの効率的な増幅および複製の特性と、ならびに、他の分子の所望される特性との組み合わせが教示されている。
【0065】
SELEX(登録商標)法による小さい可撓性のペプチドに対する核酸リガンドの同定もまた、研究されている。小さいペプチドは可撓性の構造を有しており、通常は、複数の立体構造の平衡状態で溶液中に存在している。したがって、結合親和性が、可撓性のペプチドに結合すると立体構造のエントロピーが失われることによって制限される可能性があると最初は考えられた。しかし、溶液中での小さいペプチドに対する核酸リガンドの同定の実現可能性は、米国特許第5,648,214号において明らかにされた。この特許では、物質Pに対する親和性が高いRNA核酸リガンドである11アミノ酸のペプチドが同定された。
【0066】
SELEX(登録商標)プロセスの一部として、標的に結合するように選択された配列は、その後、必要に応じて、所望される結合親和性を有する最小配列を決定するために最小化させられる。選択された配列および/または最小化された配列は、必要に応じて、例えば、結合親和性を高めるために、あるいは、配列中のどの位置が結合活性に不可欠であるかを決定するために、配列のランダム突然変異または特異的突然変異をおこなうことによって修飾される。
【0067】
2’−修飾されたSELEX(登録商標)法
治療薬としての使用、および/または特定のタイプの診断薬に適しているアプタマーにするためには、合成が安価であること、インビボで安全であり、そして安定であることが好ましい。野生型RNAおよびDNAアプタマーは、通常、インビボでは安定ではない。これは、ヌクレアーゼによる分解に対するそれらの感度がその原因である。ヌクレアーゼによる分解に対する耐性は、2’位置での修飾基の取り込みによって大幅に高めることができる。
【0068】
2’−フルオロ基および2’−アミノ基は、オリゴヌクレオチドのプールの中にうまく取り込ませられており、続いて、ここからアプタマーが選択されている。しかし、これらの修飾によっては、得られるアプタマーの合成のコストも大幅に上昇してしまい、いくつかの場合には、修飾されたヌクレオチドが、修飾されたオリゴヌクレオチドの分解によって宿主DNAの中に再循環する場合があり、続いてヌクレオチドがDNA合成のために基質として使用されてしまう可能性の理由から、安全性についての懸念を生じる可能性がある。
【0069】
本明細書中で提供されるような2’−O−メチル(「2’−OMe」)ヌクレオチドを含むアプタマーによって、これらの欠点の多くが克服される。2’−OMeヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドはヌクレアーゼ耐性であり、合成は安価である。2’−OMeヌクレオチドは生物学的システムの至るところに存在しているが、自然界に存在しているポリメラーゼは生理学的条件下での基質としての2’−OMe NTPを受け取ることはなく、したがって、宿主DNAへの2’−OMeヌクレオチドの再循環に関する安全性の懸念はない。2’−修飾されたアプタマーを作成するために使用されるSELEX(登録商標)法は、例えば、2002年12月3日に提出された米国仮特許出願番号60/430,761、2003年7月15日に提出された米国仮特許出願番号60/487,474号、2003年11月4日に提出された米国仮特許出願番号60/517,039号、2003年12月3日に提出された米国特許出願番号10/729,581、および、「Method for in vitro Selection of 2’−O−methyl Substituted Nucleic Acids」と題された2004年6月21日に提出された米国特許出願番号10/873,856に記載されている。これらのそれぞれは、それらの全体が引用により本明細書中に組み入れられる。
【0070】
本発明には、アプタマーの標的に結合し、その機能を調節するアプタマーが含まれ、これには、酵素による分解および化学的分解、ならびに、熱的および物理的分解に対して未修飾のオリゴヌクレオチドよりも安定なオリゴヌクレオチドを作成するための、修飾されたヌクレオチド(例えば、2’−位置に修飾を有するヌクレオチド)を含む。文献(例えば、Ruckmanら、J.Biol.Chem.1998 273,20556−20567−695を参照のこと)の中には2’−OMeを含むアプタマーのいくつかの例があるが、これらは、修飾された転写物のライブラリーのインビトロでの選択によって作成されたものである。ここでは、C残基およびU残基は、2’−フルオロ(2’−F)置換されており、そしてA残基およびG残基は2’−OHである。一旦、機能的配列が同定されると、その後、A残基およびG残基はそれぞれ、2’−OMe置換に対する耐容性について試験された。2’−OMe残基としての2’−OMe置換を寛容化する全てのA残基とG残基を有するアプタマーが再度合成された。この2段階の様式で作成されたアプタマーのA残基とG残基のほとんどは、2’−OMe残基での置換を寛容化するが、平均するとおよそ20%は寛容化しない。結果として、この方法を使用して作成されたアプタマーは、2個から4個の2’−OH残基を含む傾向にあり、そして安定性および合成のコストは、結果として危うくなる。それからアプタマーが選択され、SELEX(登録商標)法(および/またはそのバリエーションのいずれかおよび改善(本明細書中に記載されるものを含む))によって富化させられるオリゴヌクレオチドのプールの中で使用される安定化させられたオリゴヌクレオチドを生じる転写反応に修飾されたヌクレオチドを取り込ませることによって、本発明の方法は、2’−OMeで修飾されたヌクレオチドを有するアプタマーオリゴヌクレオチドを再度合成することにより、選択されたアプタマーオリゴヌクレオチドを安定化させる必要性を排除する。
【0071】
1つの実施形態においては、本発明により、ATP、GTP、CTP、TTP、およびUTPヌクレオチドの2’−OH、2’−F、2’−デオキシ、および2’−OMe修飾の組み合わせを含むアプタマーが提供される。別の実施形態においては、本発明により、ATP、GTP、CTP、TTP、およびUTPヌクレオチドの2’−OH、2’−F、2’−デオキシ、2’−OMe、2’−NH2、および2’−メトキシエチル修飾の組み合わせを含むアプタマーが提供される。好ましい実施形態においては、本発明により、全て、または実質的に全てが2’−OMeで修飾されたATP、GTP、CTP、TTP、および/またはUTPヌクレオチドを含むアプタマーが提供される。
【0072】
修飾されたポリメラーゼ
本発明の2’−修飾されたアプタマーは、修飾されたポリメラーゼ(例えば、フラノースの2’位置にブチル置換を有する修飾されたヌクレオチドが一定の割合での取り込まれている(これは野生型ポリメラーゼよりも高い割合である)修飾されたT7ポリメラーゼを使用して作成される。例えば、639位のチロシン残基がフェニルアラニンに変化させられている変異体T7ポリメラーゼ(Y639F)は、2’デオキシ、2’アミノ、および2’−フルオロヌクレオチド三リン酸(NTP)を基質として容易に利用することができ、そして様々な用途について修飾されたRNAを合成するために広く使用されている。しかし、この変異体T7ポリメラーゼは、報告によると、ブチル2’置換基(例えば、2’−OMeまたは2’−アジド(2’−N3)置換基)を有するNTPを容易に利用する(すなわち取り込む)ことはできない。ブチル2’置換基の取り込みについては、Y639F変異に加えて、784位のヒスチジンがアラニン残基に変化させられている変異体T7ポリメラーゼ(Y639F/H784A)が記載されており、そして、修飾されたピリミジンNTPを取り込ませるための限られた状況において使用されている。Padilla,R.and Sousa,R.,Nucleic Acids Res.,2002,30(24):138を参照のこと。639位のチロシン残基がフェニルアラニンに変化させられており、784位のヒスチジン残基がアラニンに変化させられており、そして378位のリジン残基がアルギニンに変化させられている変異体T7RNAポリメラーゼ(Y639F/H784A/K378R)は、修飾されたプリンおよびピリミジンNTP(例えば、2’−OMe NTP)を取り込ませるための限られた状況において使用されているが、これには、転写のための2’−OH GTPのスパイクを含む。Burmeisterら、(2005)Chemistry and Biology,12:25−33を参照のこと。転写のための2’−OH GTPスパイクを含めることによって、完全なる2’−OMeではなく、むしろ、2’−OH GTPの存在に依存し得るアプタマーを得ることができる。
【0073】
784位のヒスチジンがアラニン残基に変化させられている変異体T7ポリメラーゼ(H784A)もまた記載されている。Padillaら、Nucleic Acids Research,2002,30:138。Y639F/H784A変異体T7ポリメラーゼおよびH784A変異体T7ポリメラーゼのいずれにおいても、アラニンのような小さいアミノ酸残基への変化によって、よりかさの大きいヌクレオチド基質(例えば、2’−OMe置換されたヌクレオチド)の取り込みが可能となる。Chelliserry,K.and Ellington,A.D.,(2004)Nature Biotech,9:1155−60を参照のこと。かさの大きい2’修飾された基質を容易に取り込む変異をT7 RNAポリメラーゼの活性部位の中に有しているさらに別のT7 RNAポリメラーゼが記載されている。例えば、639位のチロシン残基がロイシンに変化させられた変異体T7 RNAポリメラーゼ(Y639L)である。しかし、活性は、多くの場合は、このような変異によって付与される高い基質特異性を犠牲にし、それによって、転写物量の減少を導く。Padilla R and Sousa,R.,(1999)Nucleic Acids Res.,27(6):1561を参照のこと。T7 RNAポリメラーゼ変異体P266Lは、プロモーターのクリアランスを促進することが記載されている(Guillerezら、(2005)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,102(17)5958)。このポリメラーゼはプロモーターに結合している最初の立体構造から、プロモーターに結合していない伸張した立体構造への移行を生じる。上記の変異体ポリメラーゼはいずれも、完全なる2’−OMe転写物を生じることは報告されていない。
【0074】
本発明によっては、オリゴヌクレオチドの転写量を増大させるための材料と方法が提供される。1つの実施形態においては、本発明により、オリゴヌクレオチドの中に修飾されたヌクレオチドを酵素的に取り込ませるために、修飾されたT7 RNAポリメラーゼを使用するための方法および条件が提供される。好ましい実施形態においては、本発明の転写方法と共に使用される修飾されたT7 RNAポリメラーゼには、2’−OH GTPの存在は必要ない。好ましい実施態様においては、修飾されたポリメラーゼは、639位のチロシン残基がロイシン残基に変化させられており、784位のヒスチジン残基がアラニン残基に変化させられている変異体T7 RNAポリメラーゼ(Y639L/H784A)である。別の好ましい実施形態においては、修飾されたポリメラーゼは、639位のチロシン残基がロイシン残基に変化させられており、784位のヒスチジン残基がアラニン残基に変化させられており、そして378位のリジン残基がアルギニン残基に変化させられている変異体T7 RNAポリメラーゼ(Y639L/H784A/K378R)である。別の実施形態においては、本発明の方法で使用される修飾されたポリメラーゼは、639位のチロシン残基がロイシンに変化させられている変異体T7 RNAポリメラーゼ(Y639L)であるが、なお別の実施形態においては、変異体T7 RNAポリメラーゼは、639位のチロシン残基がロイシン残基に変化させられており、そして378位のリジン残基がアルギニン残基に変化させられている変異体T7 RNAポリメラーゼ(Y639L/K378R)である。いずれの理論にも束縛されることは望ましくないが、K378R変異は、ポリメラーゼの活性部位付近ではなく、したがって、サイレント変異であると考えられる。別の実施形態においては、本発明の方法において使用される修飾されたポリメラーゼは、266位のプロリン残基がロイシンに変化させられており、639位のチロシン残基がロイシンに変化させられており、そして784位のヒスチジン残基がアラニン残基に変化させられている変異体T7 RNAポリメラーゼ(P266L/Y639L/H784A)であるが、なお別の実施形態においては、変異体T7 RNAポリメラーゼは、266位のプロリン残基がロイシンに変化させられており、639位のチロシン残基がロイシン残基に変化させられており、784位のヒスチジン残基がアラニン残基に変化させられており、そして378位のリジン残基がアルギニン残基に変化させられている(P266L/Y639L/H784A/K387R)。
【0075】
変異体T7 RNAポリメラーゼのアミノ酸配列は以下に示される:
【0076】
【化1】
【0077】
【化2】
【0078】
【化3】
2’−修飾された(例えば、2’−OMe)RNA転写物のプールを、ポリメラーゼが2’−修飾されたNTPを受け取る条件下で作成するために、Y639F、Y639F/K378R、Y639F/H784A、Y639F/H784A/K378R、Y639L/H784A、Y639L/H784A/K378R、Y639L、Y639L/K378R、P266L/Y639L/H784A、またはP226L/Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを使用することができる。好ましいポリメラーゼは、Y369L/H784A変異体T7 RNAポリメラーゼである。別の好ましいポリメラーゼは、Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼである。本発明の別の好ましいポリメラーゼは、P266L/Y639L/H784A変異体T7 RNAポリメラーゼまたはP266L/Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼである。他のT7 RNAポリメラーゼ(具体的には、かさの大きい2’置換基について高い慣用性を示すもの)もまた、本発明の方法において使用することができる。本明細書中に開示される条件が使用される鋳型特異的重合に使用される場合は、Y639L/H784A、Y639L/H784A/K378R、P266L/Y639L/H784A、またはP266L/Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを、全ての2’−OMe NTP(2’−OMe GTPを含む)の取り込みのために使用することができ、これには、Y639F、Y639F/K378R、Y639F/H784A、Y639F/H784A/K378R、Y639L、またはY639L/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを使用して得られるよりも多い転写物量が伴う。Y639L/H784A、Y639L/H784A/K378R、P266L/Y639L/H784A、またはP266L/Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼは、多量の2’−修飾(例えば、2’−OMe)を含むオリゴヌクレオチドを得るために使用することができるが、これには、2’−OH GTPは必要ではない。
【0079】
好ましい実施形態においては、本発明のY639L/H784A変異体T7 RNAポリメラーゼまたはY639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼは、多量の完全なる2’−OMe転写物量を促進するために、MNA転写混合物と共に使用される。いくつかの実施形態においては、Y639L/H784A変異体T7 RNAポリメラーゼまたはY639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼは、rRmY、dRmY、rGmH、fGmH、dGmH、dAmB、rRdY、dRdY、またはrN転写混合物と共に使用される場合もある。
【0080】
本明細書中で使用される場合は、2’−OMe A、G、C、およびU三リン酸のみを含む転写混合物はMNA混合物と呼ばれ、それから選択されたアプタマーはMNAアプタマーと呼ばれ、これには、2’−O−メチルヌクレオチドだけを含む。2’−OMe CおよびUと、2’−OH AおよびGを含む転写混合物は「rRmY」混合物と呼ばれ、それから選択されたアプタマーは「rRmY」アプタマーと呼ばれる。デオキシAおよびGと、2’−OMe UおよびCを含む転写混合物は「dRmY」混合物と呼ばれ、それから選択されたアプタマーは「dRmY」アプタマーと呼ばれる。2’−OMe A、C、およびUと、2’−OH Gを含む転写混合物は「dGmH」混合物と呼ばれ、それから選択されたアプタマーは「dGmH」アプタマーと呼ばれる。2’−OMe A、C、U、およびGと、2’−OMe A、U、およびCと2’−F Gが交互に含まれている転写混合物は「オルタネイティング混合物」と呼ばれ、それから選択されたアプタマーは「オルタネイティング混合物」アプタマーと呼ばれる。2’−OMe A、U、およびCと、2’−F Gを含む転写混合物は「fGmH」混合物と呼ばれ、それから選択されたアプタマーは「fGmH」アプタマーと呼ばれる。2’−OMe A、U、およびCと、デオキシGを含む転写混合物は「dGmH」混合物と呼ばれ、それから選択されたアプタマーは「dGmH」アプタマーと呼ばれる。デオキシAと、2’−OMe C、G、およびUを含む転写混合物は「dAmB」混合物と呼ばれ、それから選択されたアプタマーは「dAmB」アプタマーと呼ばれる。2’−OH Aと、2’−OMe C、G、およびUを含む転写混合物は「rAmB」混合物と呼ばれ、それから選択されたアプタマーは「rAmB」アプタマーと呼ばれる。2’−OHアデノシン三リン酸およびグアノシン三リン酸と、デオキシシチジン三リン酸およびチミジン三リン酸を含む転写混合物は「rRdY」混合物と呼ばれ、それから選択されたアプタマーは「rRdY」アプタマーと呼ばれる。全てが2’−OHヌクレオチドである転写混合物は「rN」混合物と呼ばれ、それから選択されたアプタマーは「rN」、「rRrY」、またはRNAアプタマーと呼ばれる。そして、全てがデオキシヌクレオチドである転写混合物は「dN」混合物と呼ばれ、それから選択されたアプタマーは「dN」、または「dRdY」、またはDNAアプタマーと呼ばれる。
【0081】
2’−修飾されたオリゴヌクレオチドは、全てが修飾されたヌクレオチドから合成される場合も、また、修飾されたヌクレオチドのサブセットを有する場合もある。全てのヌクレオチドを修飾することができ、そして全てが同じ修飾を含む場合もある。全てのヌクレオチドは修飾することができるが、様々な修飾を含む場合がある。例えば、同じ塩基を含む全てのヌクレオチドは、1つの修飾のタイプを有することができ、一方、他の塩基を含むヌクレオチドは異なるタイプの修飾を有することができる。全てのプリンヌクレオチドは1つのタイプの修飾を有することができ(または、未修飾である)、一方、全てのピリミジンヌクレオチドは別の異なるタイプの修飾を有することができる(または、未修飾である)。この様式では、転写物、または転写物のプールは、修飾の任意の組み合わせ(例えば、リボヌクレオチド(2’−OH)、デオキシリボヌクレオチド(2’−デオキシ)、2’−F、および2’−OMeヌクレオチドを含む)を使用して作成される。さらに別の修飾されたヌクレオチドには、1つ以上の修飾を同時に有しているヌクレオチド(例えば、ヌクレオチド間結合(例えば、ホスホロチオエート)での修飾と、糖(例えば、2−OMe)と塩基(例えば、イノシン)での修飾)が含まれ得る。
【0082】
転写条件
多数の要因が、2’−修飾されたSELEX(登録商標)法の転写条件に重要であることが決定されている。これはまた、以下に記載されるTerminal Region SELEX法に適用することもできる。例えば、修飾された転写物の量の増大が、特定のリーダー配列/変異体ポリメラーゼの組み合わせが使用されるいくつかの条件下で観察され得る。リーダー配列は、DNA転写鋳型の5’末端にある固定された配列の3’末端に取り込ませることができる配列である。リーダー配列は、通常、6〜15ヌクレオチドの長さであり、所定のヌクレオチド組成から構成され得る。例えば、これは、全てがプリンである場合も、また、プリンヌクレオチドとピリミジンヌクレオチドの特定の混合物である場合もある。
【0083】
変異体ポリメラーゼと本発明の転写条件とともに使用することができる鋳型の例(具体的には、Y639L/H784A、Y639L/H784A/K378R、P266L/Y639L/H784A、またはP266L/Y639L/H784A/K378Rとの組み合わせ)は、ARC2118(配列番号3)、ARC2119(配列番号4)、およびARC3428
【0084】
【化4】
である。
【0085】
加えて、2’−OH GTPの存在は、歴史的に、修飾されたヌクレオチドが取り込まれている転写物を得ることにおいて重要な要因である。転写は2つの期に分けることができる:第1期は開始期であり、この間に、NTPがGTPの3’−末端(または別の置換されたグアノシン)に付加されて、ジヌクレオチドが得られ、これは次いで、約10〜12ヌクレオチドに伸張させられる;第2期は伸張期であり、この間に、転写が最初の約10〜12ヌクレオチドの付加を超えて進行する。Y639F/K378R変異体またはY639F/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼと過剰の2’−OMe GTPを含む転写混合物に対して添加された少量の2’−OH GTPは、ポリメラーゼが2’−OH GTPを使用する転写を開始できるようにする(そして、2’−OH GTPを用いない場合よりも多量の2’−OMeを含む転写物を生じる)ために十分であったが、一旦転写が伸張期に入ると、2’−OMeと2’−OH GTPの間での識別の低さと、2’−OH GTPを上回る過剰の2’−OMe GTPによって、主に2’−OMe GTPの取り込みが可能となる。
【0086】
本発明により、変異体T7 RNAポリメラーゼ(例えば、Y639L/H784A、Y639L/H784A/K378R、P266L/Y639L/H784A、またはP266L/Y639L/H784A/K378R(これらは、多量の2’−OMe転写物を得るためには転写混合物中に2’−OH GTPは必要としない))が提供される。1つの実施形態においては、多量は、入力する転写鋳型あたりの平均の少なくとも1つの転写物を意味する。
【0087】
2’−OMeで置換されたヌクレオチドの転写物への取り込みにおける別の要因は、転写混合物中での2価のマグネシウムとマンガン(Mn2+)の両方の使用である。様々な濃度の塩化マグネシウムと塩化マンガンの様々な組み合わせが、2’−O−メチル化転写物の収量に影響を与えることが明らかにされており、塩化マグネシウムと塩化マンガンの最適濃度は、2価の金属イオンを錯化させるNTPの転写反応混合物中での濃度に依存する。完全なる2’−O−メチル化転写物(すなわち、全てが2’−OMe A、C、U、およびGヌクレオチド)の最大量を得るためには、個々のNTPが0.5mMの濃度で存在する場合には、およそ5mMの塩化マグネシウムと1.5mMの塩化マンガンの濃度が好ましい。個々のNTPの濃度が1.0mMである場合には、およそ6.5mMの塩化マグネシウムと2.0mMの塩化マンガンの濃度が好ましい。個々のNTPが1.5mMの濃度で存在する場合には、およそ8mMの塩化マグネシウムと2.5mMの塩化マンガンの濃度が好ましい。個々のNTPの濃度が2.0mMである場合には、およそ9.5mMの塩化マグネシウムと3.0mMの塩化マンガンの濃度が好ましい。いずれの場合には、2倍までのこれらの濃度から出発することによってもなお、有意な量の修飾された転写物が得られる。
【0088】
2’−OH GMP、グアノシン、または2’−OH糖部分以外の部位で置換された他の2’−OHグアノシンで転写を感作させることもまた、2’−OH GTPが含まれていない転写混合物については重要である。この効果は、ヌクレオチドを開始させるためのポリメラーゼの特異性によって生じる。結果として、この様式で作成された任意の転写物の5’−末端ヌクレオチドは、おそらく2’−OH Gである。GMP(またはグアノシン)の好ましい濃度は0.5mMであり、なおさらに好ましくは1mMである。転写反応物中にPEG、好ましくは、PEG−8000を含めることが、修飾されたヌクレオチドの最大の取り込みに有用であることもまた明らかになっている。
【0089】
転写物の中への2’−OMe ATP(100%)、2’−OMe UTP(100%)、2’−OMe CTP(100%)、および2’−OMe GTP(100%)(「MNA」)の最大の取り込みのためには、以下の条件を使用することができる:HEPES緩衝液200mM、DTT 40mM、スペルミジン2mM、PEG−8000 10%(w/v)、Triton X−100 0.01%(w/v)、MgCl2 8mM、MnCl2 2.5mM、2’−OMe NTP(それぞれ)1.5mM、2’−OH GMP、1mM(pH7.5)、Y369L/H784A/K378R変異体T7RNAポリメラーゼ 200nM、無機ピロホスファターゼ 5単位/ml、およびDNA鋳型。いくつかの実施態様においては、DNA鋳型は、好ましくは約5から500nMの濃度で存在し得る。必要に応じて、上記の転写条件と共に使用されるDNA鋳型には、両方の鋳型が同じ条件下で転写された場合に、そのようなリーダー配列が含まれていない鋳型と比較して転写量を増大させる、全てがプリンであるリーダー配列を含む。別の実施形態においては、リーダー配列は、プリンとピリミジンの混合物であり、これは、両方が同じ条件下で転写された場合に、そのようなリーダー配列が含まれていない鋳型と比較して転写量を増大させる。本明細書中で使用される場合は、1単位の無機ピロホスファターゼのは、pH7.2および25℃で1分あたりに1.0モルの無機オルトリン酸塩を遊離させるであろう酵素の量として定義される。反応は、約1から24時間行われ得る。
【0090】
個々の場合において、転写産物は、その後、SELEX(登録商標)プロセスへの投入のために使用されて、所定の標的に対する結合特異性を有するアプタマーを同定することができる、および/または保存されている配列を決定することができる。得られる配列はすでに安定化させられており、それによってSELEX(登録商標)後の修飾プロセスからこの工程が排除され、結果としてさらに高度に安定化させられたアプタマーが提供される。
【0091】
以下に記載されるように、2’置換されたヌクレオチドが完全に取り込まれている転写物の有用な量は、上記に記載される条件以外の条件下でも得ることができる。例えば、上記の転写条件についてのバリエーションとしては以下が挙げられる:
HEPES緩衝液の濃度は0から1Mまでの範囲であり得る。本発明によってはまた、5から10の間のpKaを有する他の緩衝物質(例えば、Tris−ヒドロキシメチル−アミノメタンを含む)の使用も意図される。
【0092】
DTT濃度は0から400mMの範囲であり得る。本発明の方法によってはまた、他の還元剤(例えば、メルカプトエタノールを含む)の使用も提供される。
【0093】
スペルミジンおよび/またはスペルミン濃度は0から20mMの範囲であり得る。
【0094】
PEG−8000濃度は、0から50%(W/v)の範囲であり得る。本発明の方法によってはまた、他の親水性ポリマー(例えば、他の分子量のPEGまたは他のポリアルキレングリコールを含む)の使用も提供される。
【0095】
Triton X−100濃度は、0から0.1%(w/v)の範囲であり得る。本発明の方法によってはまた、他の非イオン性界面活性剤(例えば、他のTriton−X界面活性剤を含む他の界面活性剤)の使用も提供される。
【0096】
MgCl2濃度は、0.5mMから50mMの範囲であり得る。MnCl2濃度は、0.15mMから15mMの範囲であり得る。MgCl2およびMnCl2はいずれも、記載される範囲で存在しなければならず、好ましい実施形態においては、約10から約3のMgCl2:MnCl2の割合で存在し、好ましくは、約3〜5:1の割合、より好ましくは約3〜4:1の割合である。
【0097】
2’−OMe NTP濃度(各NTP)は、5μMから5mMの範囲であり得る。
【0098】
2’−OH GTP濃度は、0μMから300μMの範囲であり得る。好ましい実施形態においては、転写は、2’−OH GTPが存在しない(0μM)条件で起こる。
【0099】
2’−OH GMP、グアノシン、または2’糖位置以外の位置で置換された2’−OH Gの濃度は、0から5mMの範囲であり得る。2’−OH GTPが反応に含まれない場合は、2’−OH GMPが必要であり、これは5μMから5mMの範囲であり得る。
【0100】
DNA鋳型濃度は、5nMから5μMの範囲であり得る。
【0101】
変異体ポリメラーゼ濃度は、2nMから20μMの範囲であり得る。
【0102】
無機ピロホスファターゼは0から100単位/mlの範囲であり得る。
【0103】
pHは、pH6からpH9の範囲であり得る。本発明の方法は、修飾されたヌクレオチドを取り込むほとんどのポリメラーゼの活性のpH範囲内で行うことができる。
【0104】
転写反応は約1時間から数週間、好ましくは、約1時間から約24時間生じることができる。
【0105】
加えて、本発明の方法により、例えば、EDTA、EGTA、およびDTTを含む転写反応においてキレート剤の状況に応じた使用が提供される。
【0106】
TERMINAL REGION SELEX(登録商標)法
いくつかの実施形態において鋳型特異的ヌクレオチド三リン酸の重合をプログラムするために使用される核酸転写鋳型配列の発見のための方法によっては、転写物量が増大させられ、これは、Terminal Region SELEX(登録商標)法(TR−SELEX(登録商標)法)として知られているSELEX(登録商標)法の変異形式である。本発明によっては、核酸転写鋳型成分配列(例えば、リーダー配列)を同定するための方法が提供され、その使用によって、転写物量、具体的には、TR−SELEX(登録商標)法を使用する鋳型特異的重合をプログラムするために使用される場合には、2’−修飾されたヌクレオチド(例えば、2’−OMeヌクレオチド)を含む転写物の量が増大する。
【0107】
2’−修飾されたヌクレオチドを含む転写物の量の増大を促進するリーダー配列を選択するために、オリゴヌクレオチド転写鋳型の候補のライブラリーが作成される。これには、鋳型依存性の様式での転写を可能にするプロモーター配列、添え木が当てられた連結を生じることができ、それによって、連結させられた鋳型上のプライマー結合部位に結合したプライマーの伸張による増幅を可能にするためのプロモーターのすぐ3’側にある1つ以上の固定されたヌクレオチドを含む第1の固定された領域;リーダー配列がそれから選択されるであろう縮重領域;および増幅を可能にするための3’末端に存在する固定された配列を含む。好ましい実施形態においては、ライブラリー鋳型の縮重領域は5’末端付近にあり、それによって5’固定された配列の長さが短くなる。
【0108】
転写鋳型のこのライブラリーは、必要に応じてPCR増幅させられ、その後、本明細書中に開示される条件下での、ポリメラーゼ(変異したT7 RNAポリメラーゼを含むがこれに限定はされない)、ヌクレオチド三リン酸(NTP)(1つ以上の2’−修飾されたNTPを含むがこれに限定はされない)、およびマグネシウムイオンを含む転写反応混合物を使用する転写を、プログラムするために使用される。得られる転写混合物は逆転写させられて、cDNAはいの候補混合物が得られ、これはその後、T7プロモーターをコードするDNA配列に連結させられる。必要に応じて、得られる転写混合物は最初に連結させられ、その後、逆転写させられる。転写物をコードするcDNAは、その後、PCRによって増幅させられ、クローンが、ゲル分析を使用して転写量についてアッセイされる。この様式で増幅させられた転写鋳型は、必要に応じて、さらに多量の転写物を得る必要がある場合には、さらなる回のTR−SELEX(登録商標)プロセスを行うために使用することができる(図2を参照のこと)。
【0109】
増幅させられた転写物のクローンの配列を分析して、転写(1つ以上の2’−修飾されたヌクレオチドが取り込まれている転写を含むが、これに限定はされない)を可能にする5’−リーダー配列エレメントを同定することができる。これらの5’リーダー配列エレメントは、2’−修飾されたヌクレオチドを含む核酸転写物の量の増大を促進するためにSELEX(登録商標)において使用することができるオリゴヌクレオチド転写鋳型の候補のライブラリーを設計するために有用である。TR−SELEX(登録商標)法によって同定された5’リーダー配列エレメント(下線で示される)が取り込まれており、そして、本明細書中に開示される条件を使用する2’−修飾されたヌクレオチド(例えば、2’−OMeヌクレオチド)を含むより転写物の量のさらなる増大を促進する好ましいDNA転写鋳型のライブラリーの例が以下に記載される。
【0110】
以下に列挙されるDNA転写鋳型のライブラリーの配列のそれぞれについて、5’リーダー配列エレメントは下線で示され、そして全ての配列は、5’−3’方向である。
【0111】
【化5】
2’−修飾された(例えば、2’−OMe)RNA転写物の転写混合物を、ポリメラーゼが2’−修飾されたNTPを受け取る条件下で作成するために、Y639F、Y639F/K378R、Y639F/H784A、Y639F/H784A/K378R、Y639L/H784A、Y639L/H784A/K378R、P266L/Y639L/H784A、またはP266L/Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを、本発明によって提供される方法によって同定された5’−リーダー配列とともに使用することができる。本発明の5’リーダー配列と共に使用される好ましいポリメラーゼは、2’−修飾されたヌクレオチドを含む最も多量の核酸転写物を提供する、先に記載されたY639L/H784A変異体RNAポリメラーゼである。本発明の5’−リーダー配列と共に使用される別の好ましいポリメラーゼは、Y639L/H784/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼである。他のT7 RNAポリメラーゼ、具体的には、かさの大きい2’−置換に高い慣用性を示すものもまた、本発明において使用することができる。
【0112】
候補のライブラリーの中にリーダー配列を取り込ませること、および2’−修飾されたヌクレオチドを含む核酸転写物の量の増大を促進する変異体ポリメラーゼ(例えば、Y639L/H784AおよびY639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼ)に加えて、転写条件に重要であることが決定されている上記の多数の要因を使用して、2’−修飾されたヌクレオチドを含む転写物の量をさらに増大させることができる。
【0113】
同定されたリーダー配列と、Y639F/H784A、Y639F/H784A/K378R、Y639L、Y639L/K378R、Y639L/H874A、Y639L/H874A/K378R、P266L/Y639L/H784A、またはP266L/Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを、2’−修飾されたヌクレオチド(例えば、ATP、GTP、CTP、TTP、およびUTPヌクレオチドの2’−OH、2’−F、2’−デオキシ、2’−OMe、および2’−NH2修飾)の任意の組み合わせを含むアプタマーを作成するために、本明細書中に記載される条件と共にSELEX(登録商標)において使用することができる。取り込まれている2’−修飾されたヌクレオチドは、好ましくは、2’−O−メチルヌクレオチドである。1つ以上の2’−O−メチルヌクレオチドを含むアプタマー組成物が好ましい。第1位のヌクレオチドを除き、100%の2’−O−プリンおよびピリミジンを含むアプタマー組成物が好ましい。1つの好ましい実施形態においては、同定されたリーダー配列の1つと、Y639L/H874A、Y639L/H784A/K378R、P266L/Y639L/H784A、またはP266L/Y639L/H784A/L378R変異体T7 RNAポリメラーゼが、完全なる2’−OMeヌクレオチドを含むさらに多量のアプタマーの転写物を生じるために、本明細書中に記載される条件と共にSELEX(登録商標)法において使用される。
【0114】
転写物への2’−OMe ATP(100%)、UTP(100%)、CTP(100%)、およびGTP(100%)(MNA)の最大の取り込みのためには、以下の条件が好ましい:HEPES緩衝液200mM、DTT 40mM、スペルミジン2mM、PEG−8000 10%(w/v)、Triton X−100 0.01%(w/v)、MgCl2 8mM、MnCl2 2.5mM、2’−OMe NTP(それぞれ)1.5mM、2’−OH GMP 1mM(pH7.5)、Y639L/H784A/K378R T7 RNAポリメラーゼ200nM、無機ピロホスファターゼ 5単位/ml、および誘導される転写条件下で転写量を増大させるリーダー配列。1つの実施形態においては、リーダー配列は、全てがプリンであるリーダー配列である。別の実施形態においては、リーダー配列は、プリンとピリミジンの混合物である。本明細書中で使用される場合は、1単位の無機ピロホスファターゼは、pH7.2および25℃で1分あたりに1.0モルの無機オルトリン酸塩を遊離させるであろう酵素の量として定義される。
【0115】
アプタマーの医薬品化学
一旦、所望される標的に結合するアプタマーが同定されると、いくつかの技術を、必要に応じて、同定されたアプタマーの配列の結合特性および/または機能的特性をさらに高めるために行うことができる。SELEX(登録商標)プロセス(例えば、2’−修飾されたSELEX(登録商標)法)によって同定された所望される標的に結合するアプタマー(例えば、MNAアプタマー)は、所望される結合特性および/または機能的特性を有する最小のアプタマー配列(本明細書中では「最小化された構築物」とも呼ばれる)を得るために、必要に応じて短縮させることができる。これを行うための1つの方法は、折り畳みプログラムおよび配列分析(例えば、保存されているモチーフおよび/または共変動を見るための選択によって得られるクローン配列をアラインメントすること)を使用して、最小化させた構築物の設計についての情報を得ることによる。生化学的プローブ実験もまた、最小化された構築物の設計についての情報を得るために、アプタマー配列の5’境界および3’境界を決定するために行うことができる。最小化された構築物は、その後、化学合成することができ、そしてそれらが由来する最小化されていない配列と比較して、結合特性および機能的特性について試験される。5’、3’、および/または内部欠失のシリーズを含むアプタマー配列の変異体もまた、直接化学的に合成することができ、それらが由来する最小化されていないアプタマー配列と比較して、結合特性および/または機能的特性について試験される。
【0116】
加えて、ドープされた(doped)再選択が、MNAアプタマーのような1つの活性のあるアプタマー配列(例えば、SELEX(登録商標)プロセス(2’−修飾されたSELEX(登録商標)プロセスを含む)によって同定された、所望される標的に結合するアプタマー)、または1つの最小化されたアプタマー配列の中での配列要件を研究するために使用される場合がある。ドープされた再選択は、目的の1つの配列に基づいて設計された合成の縮重プールを使用して行われる。縮重のレベルは、通常、野生型のヌクレオチド(すなわち、目的の1つの配列)とは70%から85%異なる。一般的には、自然界での変異を有する配列は、ドープされた再選択プロセスによって同定されるが、いくつかの場合には、配列の変化は親和性の改善を生じる。ドープされた再選択を使用して同定されたクローンによる複合配列情報は、次いで、最小結合モチーフを同定するために使用することができ、そして医薬品化学の研究を助けることができる。
【0117】
SELEX(登録商標)プロセス(2’−修飾されたSELEXプロセスおよびドープされた再選択を含む)を使用して同定されたアプタマー配列(例えば、MNAアプタマー)、および/または最小化されたアプタマー配列もまた、結合親和性および/または機能的特性を高めるための配列のランダム変異誘発または特異的変異誘発を行うため、あるいは、配列中のどの位置が結合活性および/または機能的特性に不可欠であるかを決定するために、アプタマーの医薬品化学(Aptermer Medicinal Chemistry)を使用する、必要に応じて修飾されたSELEX(登録商標)選択であり得る。
【0118】
アプタマーの医薬品化学はアプタマー改良技術であり、ここでは、変異体アプタマーのセットが化学合成される。これらの変異体のセットは、通常、1つの置換の導入によってもとのアプタマーとは異なり、そして、この置換の位置によって互いに異なる。その後、これらの変異体は互いに、そしてもとのものと比較される。特性の改良は、1つの置換を含めることが、特定の治療基準を満たすために必要なことの全てであり得ることが十分に確信される。
【0119】
あるいは、1変異体のセットから集められた情報は、1つ以上の置換が同時に導入された、変異体の更なるセットを設計するために使用することができる。1つの設計ストラテジーにおいては、1置換変異体は全て順位化され、上位の4つが選択され、これらの4つの1置換変異体の可能な二重(6種類)、三重(4種類)、および四重(1種類)の組み合わせ全てが合成され、アッセイされる。第2の設計ストラテジーにおいては、最上位の1置換変異体が新しい親と見なされ、この最高位に順位化された1置換変異体を含む、全ての可能な二重置換変異体が合成され、アッセイされる。他のストラテジーが使用される場合もあり、そしてこれらのストラテジーは、さらに改良された変異体が同定されることが続けられつつ、置換の数が段階的に増えるように繰り返して適用することができる。
【0120】
アプタマーの医薬品化学は、具体的には、置換の広範囲ではなく局所への導入を研究するための方法として使用され得る。アプタマーは、転写によって作成されるライブラリーの中で発見されるので、SELEX(登録商標)プロセスの間に導入される任意の置換は広範囲に導入されなければならない。例えば、ヌクレオチド間にホスホロチオエート結合を導入することが所望される場合には、これらは、全てのAにだけ(または全てのG、C、T、Uなど)導入することができる(広範囲で置換される)。いくつかのA(またはいくつかのG、C、T、Uなど)にホスホロチオエートを必要とする(局所的に置換された)が、他のAではこれを寛容化できないアプタマーは、このプロセスによって容易に発見することができる。
【0121】
アプタマーの医薬品化学プロセスによって利用することができる置換基の種類は、固相合成試薬としてそれらを作成し、そしてそれらをオリゴマー合成スキームに導入する能力によってのみ、制限される。このプロセスは、必ずしもヌクレオチドのみに限定されない。アプタマーの医薬品化学のスキームには、立体的大きさ、疎水性、親水性、親油性、疎油性、正電荷、負電荷、中性電荷、双性イオン、極性、ヌクレアーゼ耐性、立体構造の剛性、立体構造の可撓性、タンパク質結合特性、質量などを導入する置換が含まれ得る。アプタマーの医薬品化学のスキームには、塩基修飾、糖修飾、またはホスホジエステル結合修飾を含む場合がある。
【0122】
治療用のアプタマーの状況で有用であろう置換基の種類を考える場合には、以下のカテゴリーの1つ以上に入る置換基を導入することが所望され得る:
(1)体内にすでに存在している置換基、例えば、2’−でオキシ、2’−リボ、2’−メチルプリンもしくはピリミジン、または5−メチルシトシン。
【0123】
(2)承認されている治療薬のすでに一部である置換基、例えば、ホスホロチオエート結合させられたオリゴヌクレオチド。
【0124】
(3)上記の2つのカテゴリーの1つになるように加水分解されるかまたは分解される置換基、例えば、メチルホスホネート結合させられたオリゴヌクレオチド。
【0125】
(4)本発明のアプタマーには、本明細書中に記載されるアプタマーの医薬品化学によって開発されたアプタマーを含む。
【0126】
本発明のアプタマーの標的結合親和性は、アプタマーと標的(例えば、タンパク質)との間での一連の結合反応によって評価することができる。この場合、微量のP32−標識されたアプタマーが、緩衝化させられた媒体の中の標的の稀釈系列とともにインキュベートされ、その後、減圧濾過連結管を使用するニトロセルロース濾過によって分析される。本明細書中でドットブロット結合アッセイと記載されるこの方法では、(上から下に向かって)ニトロセルロース、ナイロンフィルター、およびゲルブロット紙からなる3層の濾過媒体が使用される。標的に結合したRNAはニトロセルロースフィルター上に捕捉され、一方、標的に結合していないRNAはナイロンフィルター上に捕捉される。ゲルブロット紙は、他のフィルターについての支持媒体として含まれる。濾過後、フィルター層は分離され、乾燥させられ、蛍光スクリーンに感光させられ、そしてphosphorimagingシステムを使用してそれから定量される。定量された結果は、アプタマー結合曲線を作成するために使用することができ、これから解離定数(KD)を計算することができる。好ましい実施形態においては、結合反応を行うために使用される緩衝化された媒体は、1×ダルベッコ(Dulbecco’s)PBS(Ca++とMg++を含む)と0.1mg/mLのBSAである。
【0127】
一般的には、標的の機能的活性を調節するアプタマーの能力(すなわち、アプタマーの機能的活性)は、インビトロおよびインビボのモデルを使用して評価することができる。これらのモデルは、標的の生物学的機能に応じて様々であろう。いくつかの実施形態においては、本発明のアプタマーは、標的の公知の生物学的機能を阻害する場合があり、一方、他の実施形態においては、本発明のアプタマーは、標的の公知の生物学的活性を刺激する場合もある。本発明のアプタマーの機能的活性は、アプタマー標的の公知の機能を測定するために設計されたインビトロおよびインビボでのモデルを使用して評価することができる。
【0128】
本発明のアプタマーは、当業者によって使用される多数の技術にしたがって診断目的のために、日常的に行われているように適応させることができる。診断的利用には、インビボまたはインビトロでの診断用途の両方が含まれ得る。使用者が、特定の位置または濃度で所定の標的の存在を同定できるようにするための診断薬だけが必要である。単に、標的との結合対を形成する能力だけで、診断目的のためのポジティブシグナルを誘発するには十分である場合がある。当業者は、当該分野で公知の手順によって、そのようなリガンドの存在を追跡するための標識タグを取り込むように、任意のアプタマーを適応させることもできるであろう。このようなタグは、多数の診断手順において使用することができる。
【0129】
免疫刺激モチーフを有するアプタマー
脊椎動物の免疫システムによる細菌のDNAの認識は、特定の配列の状況の中のメチル化されていないCGヌクレオチド(「CpGモチーフ」)の認識に基づく。このようなモチーフを認識する1つの受容体はToll様受容体9(「TLR9」)であり、これは、異なる微生物成分を認識することによって先天性免疫応答に関与しているToll様受容体のファミリー(およそ10種類のメンバー)のうちの1つのメンバーである。TLR9は、配列特異的様式で、メチル化されていないオリゴデオキシヌクレオチド(「ODN」)CpG配列に結合する。CpGモチーフの認識によって防御機構が始動させられ、これによって、先天性免疫応答と究極の後天性免疫応答が導かれる。例えば、マウスでのTLR9の活性化によっては、抗原提示細胞の活性化、MHCクラスIおよびII分子のアップレギュレーション、ならびに、重要な共刺激分子およびサイトカイン(IL−12およびIL−23を含む)の発現が誘導される。この活性化によっては、B細胞応答とT細胞応答が、直接的にも、そして間接的にも高められ、これには、TH1サイトカインIFN−γの活発なアップレギュレーションを含む。まとめると、CpG配列に対する応答によっては、感染性疾患に対する防御、ワクチンに対する改善された免疫応答、喘息に対する有効な応答、および改善された抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性が導かれる。したがって、CpG ODNは、感染性疾患に対する防御、免疫アジュバントまたはガン治療薬(単剤療法、またはmAbもしくは他の治療薬との組み合わせ)としての機能を提供することができ、そして、喘息およびアレルギー性の反応を軽減することができる。
【0130】
本発明のアプタマー(例えば、MNAアプタマー)には、1つ以上のCpG、または他の免疫刺激配列を含む場合がある。このようなアプタマーは、例えば、本明細書中に記載されるSELEX(登録商標)プロセスを使用して、様々なストラテジーによって同定または作成することができる。一般的には、これらのストラテジーは2つのグループに分けることができる。グループ1においては、ストラテジーは、CpGモチーフまたは他の免疫刺激配列、ならびに標的に対する結合部位の両方を含むアプタマーを同定または作成することに関する。この場合、標的(本明細書中以後、「非CpG標的」と呼ばれる)は、CpGモチーフまたは他の免疫刺激配列を認識することが知られているもの以外の標的であり、CpGモチーフに結合すると免疫応答を刺激することが公知である。
このグループの第1のストラテジーには、オリゴヌクレオチドのプールを使用してSELEX(登録商標)を行って、特異的な非CpG標的に対するアプタマーを得る工程(この場合、CpGモチーフは、固定された領域として、またはその一部として、プールの個々のメンバーの中に取り込まれており、例えば、いくつかの実施形態においては、プールのメンバーのランダマイズされた領域にはその中にCpGモチーフが取り込まれている固定された領域を含む)、ならびに、CpGモチーフを含むアプタマーを同定する工程を含む。このグループの第2のストラテジーには、SELEX(登録商標)を行って、特異的な非CpG標的(好ましくは、標的)に対するアプタマーを得、続いて、CpGモチーフの5’および/または3’末端への付加、あるいは、アプタマーの1つの領域(好ましくは、必須ではない領域)の中へのCpGモチーフの操作の選択を含む。このグループの第3のストラテジーには、SELEX(登録商標)を行って、特異的な非CpG標的に対するアプタマーを得る工程(この場合、プールの合成の間に、様々なヌクレオチドのモル比が1つ以上のヌクレオチドの付加において偏らせられ、その結果、プールの個々のメンバーのランダマイズされた領域はCpGモチーフについて富化させられる)、ならびに、CpGモチーフを含むアプタマーを同定する工程を含む。このグループの第4のストラテジーには、SELEX(登録商標)を行って、特異的な非CpG標的に対するアプタマーを得る工程、およびCpGモチーフを含むアプタマーを同定する工程を含む。このグループの第5のストラテジーには、SELEX(登録商標)を行って、特異的な非CpG標的に対するアプタマーを得る工程と、結合すると免疫応答を刺激するが、CpGモチーフが含まれていないアプタマーを同定する工程を含む。
【0131】
グループ2においては、ストラテジーは、CpGモチーフおよび/またはCpGモチーフの受容体(例えば、TLR9、または他のtoll様受容体)が結合する他の配列が含まれており、結合すると免疫応答を刺激するアプタマーを同定または作成することに関する。このグループの第1のストラテジーには、SELEX(登録商標)を行って、CpGモチーフまたは他の免疫刺激配列に結合し、そして結合すると、オリゴヌクレオチドのプールを使用して免疫応答を刺激することが公知である、標的に対するアプタマーを得る工程(この場合は、CpGモチーフは、固定された領域として、またはその一部として、プールの個々のメンバーの中に取り込まれており、例えば、いくつかの実施形態においては、プールのメンバーのランダマイズされた領域にはその中にCpGモチーフが取り込まれている固定された領域を含む)、ならびに、CpGモチーフを含むアプタマーを同定する工程を含む。このグループの第2のストラテジーには、SELEX(登録商標)を行って、CpGモチーフまたは他の免疫刺激配列に結合し、そして結合すると免疫応答を刺激し、その後、CpGモチーフをアプタマーの1つの領域(好ましくは、必須ではない領域)の5’末端および/または3’末端に付加するか、あるいはCpGモチーフをその領域の中に操作することが公知である、標的に対するアプタマーを得る工程を含む。このグループの第3のストラテジーには、SELEX(登録商標)を行って、CpGモチーフまたは他の免疫刺激配列に結合し、そして結合すると免疫応答を刺激することが公知である、標的に対するアプタマーを得る工程(この場合、プールの合成の間に、様々なヌクレオチドのモル比が1つ以上のヌクレオチドの付加において偏らせられ、その結果、プールの個々のメンバーのランダマイズされた領域はCpGモチーフの中で富化させられる)、ならびに、CpGモチーフを含むアプタマーを同定する工程を含む。このグループの第4のストラテジーには、SELEX(登録商標)を行って、特異的なCpGモチーフまたは他の免疫刺激配列に結合し、そして結合すると免疫応答を刺激することが公知である、標的に対するアプタマーを得る工程、およびCpGモチーフを含むアプタマーを同定する工程を含む。このグループの第5のストラテジーには、SELEX(登録商標)を行って、CpGモチーフまたは他の免疫刺激配列に結合することが公知である、標的に対するアプタマーを得る工程、および結合すると免疫応答を刺激するが、CpGモチーフが含まれていないアプタマーを同定する工程を含む。
【0132】
CpGモチーフの多種多様なクラスが同定されており、それぞれが、複数の事象の様々なカスケードにおいて認識されると、サイトカインおよび他の分子の放出、ならびに特定の細胞のタイプの活性化を生じる。例えば、CpG Motifs in Bacterial DNA and Their Immune Effects,Annu.Rev.Immunol.2002,20:709−760(引用により本明細書中に組み入れられる)を参照のこと。さらなる免疫刺激モチーフは、以下の米国特許に開示されており、これらのそれぞれは引用により本明細書中に組み入れられる:米国特許第6,207,646号;同第6,239,116号;同第6,429,199号;同第6,214,806号;同第6,653,292号;同第6,426,434号;同第6,514,948号;および同第6,498,148号。これらのCpGまたは他の免疫刺激モチーフのうちの任意のものを、アプタマーに取り込ませることができる。アプタマーの選択は、処置される疾患または障害に応じて様々である。好ましい免疫刺激モチーフは以下であり(左から右に5’から3’方向で示される)、式中、「r」はプリンを示し、「y」はピリミジンを示し、そして「X」は任意のヌクレオチドを示す:AACGTTCGAG(配列番号136);AACGTT;ACGT、rCGy;rrCGyy、XCGX、XXCGXX、およびX1X2CGY1Y2(式中、X1はGまたはAであり、X2はCではなく、Y1はGではなく、そしてY2は好ましくはTである)。
【0133】
CpGモチーフが、CpGモチーフに結合し、結合すると免疫応答を刺激することが公知である標的以外の特異的標的(「非CpG標的」)に結合するアプタマーに取り込まれている場合には、CpGは、好ましくは、アプタマーの必須ではない領域に存在する。アプタマーの必須ではない領域は、部位特異的変異誘発、欠失分析、および/または置換分析によって同定することができる。しかし、非CpG標的に結合するアプタマーの能力を有意には妨害しない任意の位置が使用される場合がある。アプタマー配列の中に埋め込まれていることに加えて、CpGモチーフは、アプタマーの5’末端および3’末端のいずれかまたは両方に付加させることができ、あるいは、別の方法でアプタマーに結合させることもできる。任意の結合位置または手段を、非CpG標的に結合するアプタマーの能力がそれにより有意に妨害されない限りは、使用することができる。
【0134】
本明細書中で使用される場合は、「免疫応答の刺激」は、(1)特異的応答の誘導(例えば、Th1応答の誘導)または特定の分子の生産の誘導、あるいは(2)特異的応答もしくは特定の分子の阻害もしくは抑制(例えば、Th2応答の阻害もしくは抑制)のいずれかを意味することができる。
【0135】
アプタマー治療薬の薬物動態および生体分布の調節
オリゴヌクレオチドをベースとする全ての治療薬(アプタマーを含む)の薬物動態特性を、所望される薬学的用途に適合するように合わせられることが重要である。細胞外標的に特異的なアプタマーは、細胞内送達に伴う問題に悩まされることはない(アンチセンスおよびRNAiをベースとする治療薬が用いられる場合と同様に)が、そのようなアプタマーは、なおも標的の臓器および組織に分布されることが可能でなければならず、そして所望される投与レジュメと一致する時間の間、体内に留まらなければならない(未修飾で)。
【0136】
したがって、本発明により、アプタマー組成物の薬物動態、具体的には、アプタマーの薬物動態を調整する能力に影響を与える材料および方法が提供される。アプタマーの薬物動態の調整能力(すなわち、それを調整する能力)は、アプタマーへの修飾部分(例えば、PEGポリマー)の結合、および/または修飾されたヌクレオチド(例えば、2’−フルオロもしくは2’−O−メチル)の取り込みによって行われて、核酸の化学的組成が変化させられる。アプタマーの薬物動態を調整する能力は、既存の治療的用途の改善において、あるいは、新しい治療的用途の開発において使用される。例えば、いくつかの治療的用途において、例えば、迅速な薬物のクリアランスまたは遮断が望まれる場合がある、抗新生物または救急処置の設定においては、循環中でのアプタマーの滞留時間を短くすることが望まれる。あるいは、他の治療的用途、例えば、治療薬の全身的循環が所望される維持療法においては、循環中でのアプタマーの滞留時間を長くすることが所望される場合がある。
【0137】
加えて、アプタマーの薬物動態の調整能力は、被験体の中でのアプタマー治療薬の生体分布を改善するために使用される。例えば、いくつかの治療的用途においては、特定のタイプの組織または特異的器官(または器官のセット)を標的化させるために、アプタマー治療薬の生体分布を変化させることが所望される場合がある。これらの用途においては、アプタマー治療薬は、特異的組織または器官(単数または複数)に優先的に蓄積する。他の治療的用途においては、所定の疾患、細胞の損傷、もしくは他の異常な病状を伴う、細胞マーカーまたは症状を示している組織に対して標的化させられることが所望される場合があり、その結果、アプタマー治療薬は、罹患した組織の中に優先的に蓄積する。例えば、2004年3月5日に提出された、「Controlled Modulation of the Pharmacokinetics and Biodistribution of Aptamer Therapeutics」と題された米国仮特許出願番号60/550790、および2005年3月7日に提出された、「Controlled Modulation of the Pharmacokinetics and Biodistribution of Aptamer Therapeutics」と題された米国特許出願番号10/−−−,−−−に記載されているように、アプタマー治療薬のPEG化(例えば、20kDaのPEGポリマーでのPEG化)は、炎症をおこしている組織を標的化するために使用され、その結果、PEG化されたアプタマー治療薬は、炎症を起こしている組織の中に優先的に蓄積する。
【0138】
アプタマー治療薬(例えば、アプタマー結合体または化学的性質が変化させられたアプタマー、例えば、修飾されたヌクレオチド)の薬物動態および生体分布プロフィールを決定するためには、様々なパラメーターがモニターされる。このようなパラメーターとしては、例えば、アプタマー組成物の半減期(t1/2)、血漿クリアランス(C1)、分布量(Vss)、濃度−時間曲線下面積(AUC)、観察される最大の血清濃度または血漿濃度(Cmax)、および平均滞留時間(MRT)が挙げられる。本明細書中で使用される場合は、用語「AUC」は、アプタマーの投与後の時間に対するアプタマー治療薬の血漿濃度のプロットの下の面積を意味する。AUC値は、所定のアプタマー治療薬の生体利用性(すなわち、アプタマー投与後に循環の中にある投与されたアプタマー治療薬の割合)および/または総クリアランス(C1)(すなわち、アプタマー治療薬が循環から除去される速度)を推測するために使用される。分布量は、体内に存在しているアプタマーの量に対するアプタマー治療薬の血漿濃度に関係する。Vssが大きければ大きいほど、より多量のアプタマーが血漿の外側で見られる(すなわち、管外遊出がより多い)。
【0139】
本発明により、インビボでの安定化させられたアプタマー組成物(例えば、MNAアプタマー)の薬物動態および生体分布を、アプタマー(例えば、MNAアプタマー)を調節部分(例えば、低分子、ペプチド、またはポリマーの末端基)に結合させることによって、あるいは、アプタマーの中に修飾されたヌクレオチドを取り込ませることによって、制御された様式で調節するための材料と方法が提供される。本明細書中に記載されるように、修飾部分の結合、および/またはヌクレオチド(単数または複数)の化学的組成を変化させることによって、循環の中でのアプタマーの滞留時間、および組織への分布の基本となる態様が変化させられる。
【0140】
ヌクレアーゼによるクリアランスに加えて、オリゴヌクレオチド治療薬は、腎臓濾過による排除の対象である。このように、濾過をブロックすることはできない限りは、静脈内に投与されたヌクレアーゼ耐性オリゴヌクレオチドは、通常、<10分のインビボでの半減期を示す。これには、血流から組織への迅速な分布を促進すること、または糸球体の有効なサイズカットオフを上回るようにオリゴヌクレオチドのみかけの分子量を大きくすることのいずれかによって行うことができる。以下に記載されるPEGポリマーに対する小さい治療薬の結合(PEG化)によっては、循環の中でのアプタマーの滞留時間を劇的に長くすることができ、それによって、投与頻度を減少させ、そして血管標的に対する有効性を高めることができる。
【0141】
アプタマーは、様々な修飾部分、例えば、高分子量のポリマー(例えば、PEG;ペプチド(例えば、Tat(HIV TAtタンパク質の13アミノ酸の断片(Vives,et al.,(1997)J.Biol.Chem.272(25):16010−7))、Ant(ショウジョウバエ(Drosophila)、アンテナペディア(antennapedia)ホメオチックタンパク質の第3のヘリックスに由来する16アミノ酸の配列(Pietersz,et al.,(2001)Vaccine 19(11−12):1397−405))、およびArg7(ポリアルギニン(Arg7)から構成される、短い、正電荷を有する細胞に浸透するペプチド(Rothbard,et al.,(2000)Nat.Med.6(11):1253−7;Rothbard,Jら、(2002)J.Med.Chem.45(17):3612−8)));ならびに、低分子(例えば、親油性化合物(例えば、コレステロール))に結合させることができる。本明細書中に記載される様々な結合体の間でも、アプタマーのインビボでの特性は、PEG基との複合体形成によって、最も大きく変化させられる。例えば、2’F修飾と2’−OMe修飾が混合されているアプタマー治療薬の20kDaのPEGポリマーとの複合体形成によって、腎臓濾過が邪魔され、そして健常な組織と炎症を起こしている組織の両方に対するアプタマーの分布が促進される。さらに、20kDaのPEGポリマー−アプタマー結合体は、アプタマーの腎臓濾過を防ぐことにおいて、40kDaのPEGポリマーとほぼ同等に有効であることが明らかにされている。PEG化の1つの効果は、アプタマーのクリアランスに対する効果であるが、20kDa部分の存在によって与えられた全身暴露の延長もまた、組織、特に、高度にかん流された器官の組織、および炎症を起こしている部位の組織へのアプタマーの分布を促進する。アプタマー−20kDaのPEGポリマー結合体は、炎症の部位へのアプタマーの分布を指示し、その結果、PEG化されたアプタマーは、炎症を起こしている組織に優先的に蓄積する。いくつかの場合には、20kDaのPEG化されたアプタマー結合体は、細胞(例えば、腎臓細胞)の内部に接近することができる。
【0142】
修飾されたヌクレオチドはまた、アプタマーの血漿クリアランスを調節するためにも使用することができる。例えば、2’−Fと2’−OMeの両方を安定化させる化学的特性が取り込ませられた結合していないアプタマー(これは、インビトロおよびインビボで高度なヌクレアーゼ安定性を示すので、現在のアプタマーの典型である)は、未修飾のアプタマーと比較すると、血漿からの迅速な消滅(すなわち、迅速な血漿クリアランス)と、組織内(主に、腎臓内)への迅速な分布を示す。
【0143】
PEG誘導核酸
上記のように、高分子量の非免疫原性ポリマーでの核酸の誘導には、核酸の薬物動態特性および薬力学的特性を変化させて、それらをさらに有効な治療薬とする可能性がある。活性についての好ましい変化としては、ヌクレアーゼによる分解に対する耐性の増大、腎臓による濾過の減少、免疫システムへの暴露の減少、および体全体への治療薬の分布の変化を挙げることができる。
【0144】
本発明のアプタマー組成物は、ポリアルキレングリコール(「PAG」)部分を用いて誘導することができる。PAG誘導核酸の例は、2003年11月21日に提出された米国特許出願番号10/718,833に見られる。これはその全体が引用により本明細書中に組み入れられる。本発明で使用される典型的なポリマーとしては、ポリエチレングリコール(「PEG」)が挙げられ、これは、ポリエチレンオキサイド(「PEO」)およびポリプロピレングリコール(ポリイソプロピレングリコールを含む)としても知られている。さらに、様々なアルキレンオキサイド(例えば、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド)のランダムコポリマーまたはブロックコポリマーを、多くの用途において使用することができる。その最も一般的な形態では、ポリアルキレングリコール(例えば、PEG)は、ヒドロキシル基でそれぞれの末端が終わる直鎖状ポリマーである:HO−CH2CH2O−(CH2CH2O)n−CH2CH2−OH。このポリマー、α−、ω−ジヒドロキシポリエチレングリコールもまた、HO−PEG−OHとして提示され、ここでは、PEG−の記号は以下の構造単位:−CH2CH2O−(CH2CH2O)n−CH2CH2−を示し、式中、nは、通常は、約4から約10,000の範囲である。
【0145】
示されるように、PEG分子は二官能性であり、しばしば「PEGジオール」と呼ばれる。PEG分子の末端部分は、比較的非反応性であるヒドロキシル部分(−OH基)であり、これは、他の化合物に対してその化合物の反応性部分にPEGを結合させるために、活性化させることも、または官能性部分に変換させることもできる。このような活性化させられたPEGジオールは、本明細書中ではニ活性化PEGと呼ばれる。例えば、PEGジオールの末端部分は、比較的非反応性であるヒドロキシル部分(−OH)のN−ヒドロキシスクシンイミドに由来するスクシンイミジル活性エステル部分での置換によって、アミノ部分との選択的反応のために、活性のあるカルボン酸エステルとして官能化させられている。
【0146】
多くの用途においては、原則的に非反応性である部分でPEG分子の一方の末端をキャップすることが所望され、その結果、PEG分子は一官能性(またはモノ活性化される)となる。活性化されたPEGに対して通常は複数の反応部位を示すタンパク質治療薬の場合には、二官能性の活性化させられたPEGによって、広範囲の架橋が導かれ、それによって得られる機能性凝集物の量は少ない。一活性化PEGを作成するためには、PEGジオールの末端上の1つのヒドロキシル部分が、通常は、非反応性メトキシ末端部分(−OCH3)で置換される。他方、PEG分子のキャップされていない末端は、通常、反応性末端部分になるように変換され、これは、タンパク質のような分子の表面上の反応性部位への結合のために活性化させることができる。
【0147】
PAGは、水および多くの有機溶媒の中での可溶性、毒性がない、および免疫原性がないという特性を通常有しているポリマーである。PAGの1つの用途は、不溶性分子に対してポリマーを共有結合させて、得られるPAG−分子「結合体」を可溶性にすることである。例えば、水不溶性の薬物であるパクリタキセルは、PEGに結合させられると水溶性になることが示されている。Greenwald,et al.,J.Org.Chem.,60:331−336(1995)。PAG結合体は、多くの場合は、可溶性および安定性を高めるためのみならず、分子の血液循環半減期を長くするためにも使用される。
【0148】
本発明のポリアルキル化化合物は、通常、5から80kDaの間の大きさであるが、任意の大きさを使用することができ、選択は、アプタマーと用途に応じて様々である。本発明の他のPAG化合物は、10から80kDaの間の大きさである。本発明のなお他のPAG化合物は、10から60kDaの間の大きさである。例えば、PAGポリマーは、少なくとも10、20、30、40、50、60、または80kDaの大きさであり得る。このようなポリマーは、直鎖状であっても、また、分岐していてもよい。いくつかの実施形態においては、ポリマーはPEGである。
【0149】
生物学的に発現させられたタンパク質治療薬とは対照的に、核酸治療薬は通常、活性化させられたモノマーヌクレオチドから化学合成される。PEG−核酸結合体は、同じ繰り返しによるモノマー合成を使用してPEGを取り込ませることによって調製することができる。例えば、ホスホルアミダイトの形態へと変換させられることにより活性化させられたPEGを、固相オリゴヌクレオチド合成に組み込ませることができる。あるいは、オリゴヌクレオチドの合成は、反応性PEG結合部位の部位特異的取り込みを用いて完了することができる。最も一般的には、これには、5’末端での遊離の第1級アミンの付加が伴う(固相合成の最後のカップリング工程において修飾因子を使用してホスホルアミダイトが取り込まれる)。このアプローチを使用して、反応性PEG(例えば、アミンと反応し、結合を形成するように活性化させられたもの)が、精製されたオリゴヌクレオチドと混合され、そしてカップリング反応が溶液中で行われる。
【0150】
治療薬の生体分布を変化させるPEG結合体の能力は、(例えば、流体力学半径について測定された)結合体の見かけの大きさを含む多数の要因に関係する。より大きい結合体(>10kDa)は、腎臓による濾過をより効率よくブロックすること、そして結果として、小さい高分子(例えば、ペプチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド)の血清半減期を長くすることが公知である。濾過をブロックするPEG結合体の能力が、およそ50kDaまでの大きさ(半減期は腎臓による排除ではなく、マクロファージによって媒介される代謝によって定義されるので、さらなる増大によっては最小の有益な効果しかない)のPEGを用いた場合に高まることが示されている。
【0151】
高分子量のPEG(>10kDa)の生産は難しく、非効率的であり、そして高価であり得る。高分子量のPEG−核酸結合体の合成のための経路として、これまでの研究では、高分子量の活性化PEGの作成に集中している。このような分子を作成するための1つの方法には、分岐している活性化PEGの形成が含まれ、その中では、2つ以上のPEGが活性化させられた基を有する中心のコアに結合させられている。これらの高分子量のPEG分子の末端部分(すなわち、比較的非反応性であるヒドロキシル(−OH)部分)は、他の化合物へのその化合物の反応部位での1つ以上のPEGの結合のために、活性化させることも、また官能性部分になるように変換することもできる。分岐している活性化PEGは2つ以上の末端を有する場合があり、そして、2つ以上の末端が活性化されている場合には、そのような活性化させられた高分子量PEG分子は、本明細書中では、マルチ活性化PEG(multi−activated PEG)と呼ばれる。いくつかの場合には、分岐しているPEG分子の中の全てではない末端が活性化させられる。分岐しているPEG分子の任意の2つの末端が活性化させられている場合には、そのようなPEG分子は、ニ活性化PEGと呼ばれる。分岐しているPEG分子の1つの末端だけが活性化させられているいくつかの場合には、そのようなPEG分子は一活性化と呼ばれる。このアプローチの一例として、リジンコアに対する2つのモノメトキシPEGの結合によって調製された活性化PEG(これは続いて、反応のために活性化させられる)が記載されている(Harrisら、Nature 第2巻:214−221,2003)。
【0152】
本発明によって、マルチPEG化核酸を含む高分子量のPEG−核酸(好ましくは、アプタマー)結合体の合成のための別のコスト効果の高い経路が提供される。本発明にはまた、PEG結合多量体オリゴヌクレオチド(例えば、二量体アプタマー)も含まれる。本発明はまた高分子量の組成物にも関し、ここでは、PEG安定化部分は、アプタマーの様々な部分を分けるリンカーである。例えば、PEGは、1つのアプタマー配列の中に結合させられ、その結果、高分子量のアプタマー組成物の直鎖状の並びは、例えば、核酸−PEG−核酸(−PEG−核酸)nであり、式中、nは1以上である。
【0153】
本発明の高分子量の組成物には、少なくとも10kDaの分子量を有するものを含む。組成物は通常は、10から80kDaの間の大きさの分子量を有する。本発明の高分子量の組成物は、少なくとも10、20、30、40、50、60、または80kDaの大きさである。
【0154】
安定化部分は、本発明の高分子量のアプタマー組成物の薬物動態特性および薬力学特性を改善する分子または分子の一部である。いくつかの場合には、安定化部分は、2つ以上のアプタマーもしくはアプタマードメインを本発明の高分子量のアプタマー組成物の近くにもたらすか、または本発明の高分子量のアプタマー組成物の全体的な回転の自由度の低下を提供する分子または分子の一部である。安定化部分は、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール)(これは、直鎖状であっても、分岐していてもよい)、ホモポリマー、またはヘテロポリマーであり得る。他の安定化部分としては、ポリマー(例えば、ペプチド核酸(PNA))が挙げられる。オリゴヌクレオチドもまた安定化部分であり得る。そのようなオリゴヌクレオチドとしては、修飾されたヌクレオチド、および/または修飾された結合(例えば、ホスホロチオエート)を挙げることができる。安定化部分は、アプタマー組成物の欠くことができない部分であり得、すなわち、これはアプタマーに共有結合させられる。
【0155】
本発明の組成物には、高分子量のアプタマー組成物が含まれ、その中では、2つ以上の核酸部分が少なくとも1つのポリアルキレングリコール部分に共有結合させられる。ポリアルキレングリコール部分は安定化部分としての役割を果たす。ポリアルキレングリコール部分がアプタマーのいずれかの末端に共有結合させられており、その結果、ポリアルキレングリコールが1つの分子の中で複数の核酸部分を結合させている組成物においては、ポリアルキレングリコールは連結部分と言われる。このような組成物においては、共有分子の一次構造には、直鎖状の並びの核酸−PAG−核酸を含む。1つの例は、核酸−PEG−核酸の一次構造を有する組成物である。別の例は、核酸−PEG−核酸−PEG−核酸の直鎖状の配置である。
【0156】
核酸−PEG−核酸結合体を生産するためには、1つの反応性部位(例えば、これは、一活性化させられている)を有するように核酸が最初に合成される。好ましい実施形態においては、この反応性部位は、オリゴヌクレオチドの固相合成の最後の工程として、修飾因子であるホスホルアミダイトの付加によって5’末端に導入されたアミノ基である。修飾されたオリゴヌクレオチドの脱保護および精製の後、これは、溶液中に高濃度(これは活性化させられたPEGの自発的な加水分解を最小にする)で再構成される。好ましい実施形態においては、オリゴヌクレオチドの濃度は1mMであり、そして再構成された溶液には200mMのNaHCO3−緩衝液(pH8.3)を含む。結合体の合成は、高度に精製された二官能性PEGのゆっくりとした段階的付加によって開始される。好ましい実施形態においては、PEGジオールは、プロピオン酸スクシンイミジルでの誘導によって両方の末端で活性化させられる(ニ活性化させられる)。反応後、PEG−核酸結合体は、ゲル電気泳動または液体クロマトグラフィーによって精製されて、完全に結合した種、部分的に結合した種、および未結合の種が分離される。連結された複数のPAG分子(例えば、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマーとして)、または小さいPAG鎖を連結させて、様々な長さ(または分子量)を得ることができる。様々な長さのPAG鎖の間では、非PAGリンカーを使用することができる。
【0157】
2’−O−メチル、2’−フルオロ、および他の修飾されたヌクレオチド修飾は、ヌクレアーゼに対してアプタマーを安定化させ、そしてそのインビボでの半減期を長くする。3’−3’−dTキャップもまた、エキソヌクレアーゼ耐性を高めることができる。例えば、米国特許第5,674,685号;同第5,668,264号;同第6,207,816号;および同第6,229,002号を参照のこと。これらはそれぞれ、それらの全体が引用により本明細書中に組み入れられる。
【0158】
反応性核酸のPAG誘導
高分子量のPAG−核酸−PAG結合体は、一官能性の活性化PEGの、1つ以上の反応部位を含む核酸との反応によって調製することができる。1つの実施形態においては、核酸はニ反応性であるかまたはニ活性化されたものであり、これには、以下の2つの反応部位を含む:従来のホスホルアミダイト合成(例えば、図13に示されるような3’−5’−ジ−PEG化)によってオリゴヌクレオチドの中に導入された5’−アミノ基と3’−アミノ基。別の実施形態においては、反応部位は、例えば、ピリミジンの5位、プリンの8位、または第1級アミンの結合のための部位としてのリボースの2’位を使用して、内部部位に導入することができる。このような実施形態においては、核酸はいくつかの活性化された部位または反応部位を有することができ、マルチ活性化と言われる。合成および精製の後、修飾されたオリゴヌクレオチドは、自発的な加水分解を最小限にしつつ、オリゴヌクレオチドの反応部位との選択的な反応を促進する条件下で、一活性化PEGと混合される。好ましい実施形態においては、モノメトキシ−PEGが、プロピオン酸スクシンイミジルで活性化させられ、そしてカップリング反応がpH8.3で行われる。二置換されたPEGの合成を駆動するためには、オリゴヌクレオチドと比較して立体量論的に過剰なPEGが提供される。反応後、PEG−核酸結合体が、ゲル電気泳動または液体クロマトグラフィーによって精製されて、完全に結合した種、部分的に結合した種、および未結合の種が分離される。
【0159】
結合ドメインはまた、それに結合させられた1つ以上のポリアルキレングリコール部分を有することもできる。そのようなPAGは様々な長さであり得、そして、適切な組み合わせで使用して、所望される分子量の組成物を得ることができる。
【0160】
特定のリンカーの作用は、その化学的組成および長さの両方により影響を受け得る。長すぎる、短すぎる、または標的と好ましくない立体的相互作用もしくはイオン性相互作用を形成するリンカーは、アプタマーと標的との間での複合体の形成を妨げるであろう。核酸の間の距離を開けるために必要であるよりも長いリンカーは、リガンドの有効濃度を下げることによって結合安定性を低下させる可能性がある。したがって、多くの場合には、標的に対するアプタマーの親和性を最大にするために、リンカーの組成および長さを最適化することが必要である。
【0161】
本明細書中で引用される全ての刊行物および特許文献は、個々のそのような刊行物または文献が具体的かつ個別に、引用により本明細書中に組み入れられることが示されているかのように、引用により本明細書中に組み入れられる。刊行物および特許文献の引用は、任意のものが適切な先行技術であることの承認として意図されるものではなく、その内容または日付としての何らかの承認を構成するものでもない。本発明はここに明細書によって記載されているが、当業者は、本発明は様々な実施形態において実施することができること、そして以下の記載と以下の実施例が説明の目的のためのものであって、以下の特許請求の範囲の限定ではないことを理解するであろう。
【0162】
本明細書中で引用される全ての刊行物および特許文献は、個々のそのような刊行物または文献が具体的かつ個別に、引用により本明細書中に組み入れられることが示されているかのように、引用により本明細書中に組み入れられる。刊行物および特許文献の引用は、任意のものが適切な先行技術であることの承認として意図されるものではなく、その内容または日付としての何らかの承認を構成するものでもない。本発明はここに明細書によって記載されているが、当業者は、本発明は様々な実施形態において実施することができること、そして以下の記載と以下の実施例が説明の目的のためのものであって、以下の特許請求の範囲の限定ではないことを理解するであろう。
【実施例】
【0163】
(実施例1)
TR−SELEX(登録商標)法を使用した5’−リーダー配列の同定
以下の構造(5’から3’方向で示す)を有する縮重DNAライブラリー:
T7プロモーター/G4/縮重20ヌクレオチド/3’−固定配列
を、以下の配列を用いて合成した:
【0164】
【化6】
このライブラリーを、3’−プライマーAGCTAGCTTACTGCATCGAC(配列番号104)と5’−プライマーTAATACGACTCACTATAG(配列番号105)を使用して増幅させた。次いで、二本鎖のライブラリーを、1×転写緩衝液(HEPES 200mM、DTT 40mM、スペルミジン2mM、Triton X−100 0.01%)を使用して、以下の条件下で37℃で一晩転写させた:2’−OMe ATP CTP、UTP、GTP、それぞれ1mM、2’−OH GTP 30μM、MgCl2 6.5mM、MnCl2 2.0mM、10%w/vのPEG−8000、1mMのGMP、無機ピロホスファターゼ 100μLの反応物について0.5単位、およびY639F/H784A/K378R T7 RNAポリメラーゼ 200nM。
【0165】
次いで、得られた混合物を沈殿させ(イソプロパノール、塩化ナトリウム、EDTA)、ゲルで精製し(10%PAGE)、ゲルから切り出して抽出し、DNase(RQ1、Promega,Madison WI)で処理し、PCRに使用した3’−プライマーを使用して65℃で逆転写させ(Thermoscript,Invitrogen,Carlesbad,CA)、そして以下のオリゴヌクレオチドを用いた添え木を当てられた連結反応物(splinted ligation reaction)の中に直接稀釈した。
T7プロモーターをコードする5’リン酸化オリゴヌクレオチド(ここでは、pは5’リン酸化される可能性がある)」
【0166】
【化7】
連結のための添え木
【0167】
【化8】
この混合物を熱で変性させ、アニーリングさせ、その後、T4 DNAリガーゼ(NEB Beverley MA)を添加し、その後、16℃で一晩インキュベーションした。連結工程に続いて、反応物を、SELEX(登録商標)法の次の回への投入のために転写された配列を増幅させるための、すでに記載したプライマーを用いるPCRの中に直接稀釈した。この反応図式を図2に示す。
【0168】
3回のTR−SELEX(登録商標)選択後、ライブラリーを、製造業者による説明書にしたがってTOPO TAクローニングキット(Invitrogen,Carlsbad,CA)を使用してクローニングし、配列決定し、そして縮重領域の中でのヌクレオチドの出現頻度を統計分析した。個々のクローンを、高濃度の転写物の転写の鋳型となるそれらの能力についてPAGE−ゲル分析によって評価し、次いで、最も多量の転写物を生じたそのような配列をライブラリーの設計に利用し、これを次いで、多量の転写物の転写の鋳型となるそれらの能力についてゲル分析によってアッセイした。図3は、3回のTR−SELEX(登録商標)選択の前および後の、20個の縮重位置の領域のヌクレオチド組成の平均の割合を示す。図3に示すように、転写物の中の5位から13位(縮重領域の中の1位から9位)までには、Gについての強い好みが記載され、それより後のヌクレオチドについては優先的に記載されたものはなかった。
【0169】
3回のTR−SELEX(登録商標)選択の後に配列決定によって発見されたクローンを、約200nMの鋳型、1×転写緩衝液(HEPES 200mM、DTT 40mM、スペルミジン2mM、Triton X−100 0.01%)、2’−OMe ATP CTP、UTP、GTP、それぞれ1mM、2’−OH GTP 30μM、MgCl2 6.5mM、MnCl2 2mM、10%w/vのPEG−8000、1mMのGMP、無機ピロホスファターゼ 100μLの反応物について0.5単位、およびY639F/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼ 200nMを使用して、2’−OMeヌクレオチドを転写するそれらの能力についてPAGE−ゲル分析によって、37℃で一晩、スクリーニングした。0回目によるクローンと比較した場合には、PAGE−ゲルによって見ることができるように、3回目からの1つのクローンの一例であるクローンAMX411.D6は、有意により多いMNA転写物を生じた。3回目から得られたクローンのDNA配列を以下に列挙する(全ての配列が5’から3’方向である):
【0170】
【化9】
【0171】
【化10】
【0172】
【化11】
【0173】
【化12】
【0174】
【化13】
【0175】
【化14】
【0176】
【化15】
(実施例2)
TR−SELEX(登録商標)法によって同定されたリーダー配列が取り込まれているライブラリー
実施例1に記載したようにTR−SELEX(登録商標)選択を使用して同定されたより高度に2’−修飾された転写物を生じるクローンから同定した5’−リーダー配列エレメント(縮重領域の最初の10ヌクレオチド)を利用して、2’−修飾されたヌクレオチドを含む転写物の量を増大させる目的で5’−固定領域にリーダー配列エレメントを取り込ませたライブラリーを設計した。1つの実施形態においては、設計ストラテジーにより、その後のPCR増幅を促進するためのさらに6〜8個の固定されたヌクレオチドがすぐ続く5’リーダー配列として、同定したクローンの最初の14ヌクレオチド(4個のグアノシンを含む5’固定領域と縮重領域の最初の10個のヌクレオチド)、このすぐ後ろに続く30〜40ヌクレオチドの長さの縮重領域、そのすぐ後に続く、これもまたその後のPCR増幅を促進する3’−固定領域を取り込ませた。
【0177】
同定したリーダー配列エレメントを取り込むように設計したライブラリーのDNA配列の例を以下に列挙する。
【0178】
以下に列挙するDNA転写鋳型のライブラリーの配列のそれぞれについて、5’−リーダー配列エレメントは下線で示し、そして全ての配列は5’から3’方向である。
【0179】
【化16】
リーダー配列が含まれていない制御DNA転写鋳型を、5’から3’方向で以下に列挙する。
【0180】
【化17】
新しく設計したライブラリーが、2’−O−メチルヌクレオチドを含む転写物の量の増大を促進するかどうかを試験するために、ライブラリーを、比較のために、2種類の修飾されたT7 RNAポリメラーゼ(Y639F/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼとY639L/H784A/K378R変異体ポリメラーゼ)(ポリメラーゼが含まれていない転写反応混合物をネガティブ対照として使用した)を使用して、約200nMの鋳型、1×転写緩衝液(HEPES 200mM、DTT 40mM、スペルミジン2mM、Triton X−100 0.01%)、2’−OMe ATP CTP、UTP、GTP、それぞれ1mM、2’−OH GTP 30μM、MgCl2 6.5mM、MnCl2 2.0mM、10%w/vのPEG−8000、1mMのGMP、Y639F/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼとY639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼ 200mM、無機ピロホスファターゼ 5単位/mLを含む転写混合物の中で、37℃で一晩、転写させた。個々の条件についての転写物量を、200μLの反応混合物を使用したPAGE−ゲル分析によって評価し、それぞれの条件についての転写物量を、ImageQuantバージョン5.2ソフトウェア(Molecular Dynamics)を使用してPAGE−ゲル分析のUV−シャドウイングによって定量した。
【0181】
図4には、PAGE−ゲル分析の定量結果をまとめる。これは、ポリメラーゼが含まれていない対照と比較した、Y639F/H784A/K378R(「FAR」)変異体T7 RNAポリメラーゼとY639L/H784A/K378R(「LAR」)変異体T7 RNAポリメラーゼの両方を用いて得られた転写物量の倍数増加を示している。図4に見ることができるように、完全なる2’−OMeを含む転写物の量の有意な改善が、Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを使用して、新しいリーダー配列エレメントが取り込まれている新しいライブラリーを転写させた場合に、Y639F/H784A/K378R変異体ポリメラーゼと比較して、見られた。注目すべきは、ARC2118、ARC2119、ARC2120によっては、Y639F/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼと比較して、Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼと組み合わせた場合に、有意に多い量の、2’−OMeを含む転写物が得られた。Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを使用することによって得られた転写物量の増加はまた、ARC2117を用いた場合にも見られた。これは、対照として使用した、新しく同定したリーダー配列エレメントが含まれていない、Y639F/H784A/K378R変異体ポリメラーゼを含む所定の条件下で転写されることが公知である以前に設計されたライブラリーである。これらの結果は、2’−OMeを含む転写物の収量を、Y639F/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼと比較して、Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを利用することによって増大させることができることを示している。加えて、TR−SELEX(登録商標)法によって同定したリーダー配列エレメントが取り込まれているいくつかの新しいライブラリー(ARC2118およびARC2119)のいくつかもまた、Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを使用した場合には、対照ライブラリーARC2117よりも多量の、2’−OMeを含む転写物を生じた。このことは、2’−OMeを含む転写物の収量の改善を、本発明の特定の新しく同定したリーダー配列と組み合わせてY639L/H784A/K378R変異体を利用することによって行うことができることを示している。
【0182】
(実施例3)
ポリメラーゼの発現および精製
変異体T7 RNAポリメラーゼは、本発明の方法での使用のためには、以下のように調製することができる。T7 RNAポリメラーゼ(核酸配列とアミノ酸配列はそれぞれ図5Aおよび5Bに示されており、そしてBull,J.Jら、J.Mol.Evol.,57(3),241−248(2003)に記載されている)は、LA変異体(Y639L/H784A)、LAR変異体(Y639L/H784A/K378R)、LLA変異体(P266L/Y639L/H784A)、またはLLAR変異体(P266L/Y639L/H784A/K378R)を生じるように変異させることができる。T7 RNAポリメラーゼは、発現ベクター(T7 RNAポリメラーゼ発現ベクターの一例は、米国特許出願番号5,869,320(その全体が引用により本明細書中に組み入れられる)に記載されている)の中に含めることができ、また、突然変異誘発の後に発現ベクターに挿入することもできる。変異させたT7 RNAポリメラーゼは、必要に応じて、タンパク質精製の際の使用を容易にするためのHis−タグを含むように操作することができる。
【0183】
639位にロイシン変異を含む相補的なオリゴヌクレオチド配列
【0184】
【化18】
を合成することができる。P226L変異のための相補的なオリゴヌクレオチド配列
【0185】
【化19】
を合成することができる。H784A変異のための相補的なオリゴヌクレオチド配列
【0186】
【化20】
を合成することができる。K378R変異のための相補的なオリゴヌクレオチド配列
【0187】
【化21】
を合成することができる。部位特異的変異は、製造業者の説明書に従ってQuickChange(登録商標)Site−Directed Mutagenesis Kit(Stratagene,La Jolla,CA)を使用して行うことができ、上記に示した変異の組み合わせを有する変異体ポリメラーゼをコードする核酸配列(図6)が得られる。本発明の変異体ポリメラーゼをコードする得られた核酸配列は、発現および精製のための標準的な技術を使用して、所望される発現ベクターの中に挿入することができる。
【0188】
発現および精製
変異体T7ポリメラーゼ核酸配列を含む発現ベクターを、BL21(DE3)コンピテント細胞(Stratagene,CA)に形質転換し、氷上で20分間インキュベートした。熱ショックを、42℃の中に試験管を2分間、差し込むことによって行った。氷上に試験管を1分間、差し込んだ後、1mLの培養液(「LB」)を添加し、37℃の震盪装置の中で45分間インキュベートした。100μlの培養液をLB+Amp寒天プレート上にプレートし、37℃で一晩インキュベートした。
【0189】
一晩培養したプレートからの1つのコロニーを、100mlのLB−Amp+(150μg/ml)に接種し、37℃で一晩おいた。2日目に、2リットルの予め温めておいたLB+Ampを含む2つの4リットルのフラスコに、50mlの一晩培養物を接種し、OD600が0.6〜0.8に達するまで、37℃で増殖させた。200μlの1MのIPTGを、それぞれの2Lの細胞培養物に、100μMの最終濃度で添加し、37℃でさらに3時間増殖させた。細胞を、5000rpmで10分間回転させることによってペレットとした。細胞を、200mlの溶解緩衝液(溶解緩衝液:50mMのTris−Cl、pH8.0、100mMのNaCl、5%のグリセロール、1mMのイミダゾール、βメルカプトエタノール(「BME」)5mM)の中に再度懸濁させ、6本の50mlの円錐菅に分けた。細胞を、それぞれのチューブについて出力レベル8で3×30”、超音波処理し、その後、細菌の破片を11,000rpmで60分間スピンダウンさせ、上清を0.22μMのフィルターを通して濾過した。イミダゾールを濾液に添加し、10mMの最終濃度とした。
【0190】
フィルターを、試料ポンプを使用して5mlのNi−NTAカラム(GE Healthcare Bio−Sciences,NJ)上にロードした。カラムを10倍容量(CV)の、20mMのイミダゾールを含む緩衝液A(緩衝液A:50mMのTris−Cl、pH8.0、100mMのNaCl、5%のグリセロール、10mMのイミダゾール、BME 10mM)で洗浄した。その後、カラムを、緩衝液A中の40mMから70mMのイミダゾール濃度の直線勾配を有する10CVの緩衝液で洗浄した。タンパク質を6CVの緩衝液B(緩衝液B:50mMのTris−Cl、pH8.0、100mMのNaCl、5%のグリセロール、250mMのイミダゾール、BME 10mM)で溶出させた。4〜12%のSDS−PAGE上で5μlの試料を用いた回収画分のチェックの後、目的の画分を全て混合し、1Lの透析緩衝液(透析緩衝液:50mMのTris−Cl、pH7.9、100mMのNaCl、50%のグリセロール、0.1mMのEDTA、0.1%のTriton X−100、BME 20mM)中で一晩透析した(透析管:Spectrum Spectra/por Molecular porous membrane(VWR)MWCO:12−14000)。透析緩衝液を12時間後に交換し、透析をさらに4時間行った。T7 RNAポリメラーゼの濃度は、Bradford,M.M.(1976)Anal.Biochem.72,248に記載されているようにBradfordアッセイを使用して測定した。
【0191】
(実施例4)
2’−O−メチルヌクレオチドを100%取り込む転写
実施例4A:2’−OH GTPを用いない2’−O−メチル転写
Y639L/H784A/K378R変異体ポリメラーゼの、2’−OH GTPの濃度に対する感度を試験するための実験を、2’−OH GTPの滴定を使用して行った。
【0192】
Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを使用した場合に高い転写物量を示した、TR−SELEX(登録商標)選択によって同定した新しいリーダー配列エレメント(実施例1に記載した)を取り込ませたARC2118とARC2119の2つのライブラリー(実施例2を参照のこと)を使用して、2’−OH GTPの濃度に対するY639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼの転写物の感度を試験した。転写は、2’−OH GTP(0〜160μM)の、1×転写緩衝液(HEPES 200mM、DTT 40mM、スペルミジン2mM、Triton X−100 0.01%)、約200nMの鋳型、2’−OMe ATP CTP、UTP、およびGTP、それぞれ1mM、MgCl2 6.5mM、MnCl2 2.0mM、PEG−8000 10%w/v、GMP 1mM、無機ピロホスファターゼ 5単位/mL、Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼ 200nMでの、37℃で一晩の滴定を使用して行った。
【0193】
それぞれの条件下での転写物量は、200μLの反応混合物を使用したPAGE−ゲル分析によってアッセイし、それぞれの条件についての転写物量を、ImageQuantバージョン5.2ソフトウェア(Molecular Dynamics)を使用したPAGE−ゲル分析のUV−シャドウイングによって定量した。図7に、PAGE−ゲル分析の定量結果をまとめ、これは、バックグラウンドと比較した、それぞれの条件を用いた場合の転写物量の倍数増加を示している。図7に見ることができるように、2’−OH GTPが含まれていない全ての条件下でY639L/H784A/K378Rを用いて転写させたARC2118およびARC2119と、2’−OH GTPが存在しない場合の収量は、2’−OH GTPが反応混合物中に含まれている場合の転写量に匹敵していた。これらの結果は、Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼが、Y639F/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼ(これは、転写に2’−OH GTPが必要である)とは対照的に、高い転写物量のために2’−OH GTPの存在を必要とはしないことを示している。
【0194】
TR−SELEX(登録商標)選択によって同定したリーダー配列(実施例1に記載した)と組み合わせた場合に、Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼと共に使用する最適な転写条件を決定するための実験を続けて行った。TR−SELEX(登録商標)選択によって同定した新しいリーダー配列エレメントを取り込ませたライブラリーであるARC2119(これは、Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼとともに使用すると有意に高い転写物量を示した)(実施例2を参照のこと)を使用して、転写物量に対する、2’−OMe NTP、マグネシウム、およびマンガンの濃度を変化させることの効果を試験した。
【0195】
転写は、1×転写緩衝液(HEPES 200mM、DTT 40mM、スペルミジン2mM、Triton X−100 0.01%)、約200nMの鋳型、2’−OMe ATP CTP、UTP、およびGTP(それぞれ、0.5mM、1mM、1.5mM、および2mM)、MgCl2(5mM、6.5mM、8mM、および9.5mM)、MnCl2 (1.5mM、2mM、2.5mM、3mM)、PEG−8000 10%w/v、GMP 1mM、無機ピロホスファターゼ 5単位/mL、Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼ 200mMを使用して、37℃で一晩行った。
【0196】
それぞれの条件下での転写物量は、200μLの反応混合物を使用したPAGE−ゲル分析によってアッセイし、それぞれの条件についての転写物量を、ImageQuantバージョン5.2ソフトウェア(Molecular Dynamics)を使用したPAGE−ゲル分析のUV−シャドウイングによって定量した。図8に、PAGE−ゲル分析の定量結果をまとめ、これは、バックグラウンドと比較した、それぞれの条件を用いた場合の転写物量の倍数増加を示している。2’−Ome NTPのコストとこの実験の結果に基づいて、1.5mMの各2’−OMe NTP(および8mMのMgCl2、2.5mMのMnCl2)を、本発明のリーダー配列とY639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを用いる使用に好ましい条件として採用した。
【0197】
実施例4B:Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを使用するMNA転写の忠実性と偏り:
Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを使用し、2’−OH GTPを使用しないMNAの転写の忠実性と偏りを評価するためのさらなる実験を行った。忠実性を試験するために、TR−SELEX(登録商標)選択によって同定した1つのクローニングした配列(実施例1に記載した)をPCRによって増幅させ、Y639L/H784A/K378Rポリメラーゼを使用し、そして2−OH GTPを使用しないMNA転写をプログラムするために使用し、PAGEによって精製し、残っているDNA鋳型をRQ1 DNaseを使用して消化させ(その後、DNA鋳型が存在していないことをPCRによってアッセイした)、そして転写された材料を逆転写させ(Thermoscript,Invitrogen,Carlsbad,CA)、次いでPCRによって増幅させた。このPCR産物を配列決定し、次いで、欠失、挿入、および置換の統計データを計算した。この実験で配列決定した1300塩基の中では、欠失および挿入は観察されず、3個の置換が観察された(図9を参照のこと)。これらの数は、30ヌクレオチドの縮重領域の中にコードされている配列情報が、93%の忠実性でSELEX(登録商標)の次の回に伝達されることを示唆している。この数は、野生型RNAについて測定される数を上回るほどに高い。
【0198】
ヌクレオチドの偏りを試験するためには、ライブラリーARC2118を以下の条件下で、37℃で一晩、転写させた:HEPES 200mM、DTT 40mM、スペルミジン2mM、Triton X−100 0.01%、約200nMの鋳型、2’−OMe ATP、CTP、UTP、およびGTP 各1mM(2’−OH GTPは含まれていない)、MgCl2(6.5mM)、MnCl2(2mM)、PEG−8000w/v 10%、GMP 1mM、無機ピロホスファターゼ 5単位/mL、Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼ 200nM。これをPAGEによって精製し、残っているDNA鋳型をRQ1 DNaseを使用して消化させ(その後、DNA鋳型が存在していないことをPCRによってアッセイした)、そして転写された材料を逆転写させ、PCRを使用して増幅させ、その後、クローニングおよび配列決定を行った。増幅させたライブラリーに由来する48個のクローンと最初のライブラリーに由来する48個のクローンを配列決定した。縮重領域の中でのヌクレオチドの出現率の統計データを、偏りが存在するかどうかを見るために試験した。図10に示したように、転写後のヌクレオチドの組成の割合は、それぞれのヌクレオチド(A、T、CおよびG)の割合がほぼ等しい最初のライブラリーのヌクレオチド組成の割合と非常に似ていた。このことは、転写にY639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを使用した場合には、ヌクレオチドの偏りは生じないことを示している。
【0199】
実施例4C:様々なリーダー配列を用いた場合の転写物量の比較
鋳型1から4:
多種多様のリーダー配列とともにY639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを使用した場合の転写量を比較するために、リーダー配列(配列番号126から129の1位から14位、以下)中のピリミジンに対して様々な割合のプリンを含む4種類の鋳型を、様々な定常領域を用いて合成した。DNA鋳型を、ABI EXPEDITE(登録商標)(Applied Biosystems,Foster City,CA)DNA合成装置を使用して合成し、標準的な方法によって脱保護した。配列(5’から3’方向で示す)は以下である:
【0200】
【化22】
鋳型を以下に示すそれらのそれぞれのプライマーを用いて増幅させた:
【0201】
【化23】
【0202】
【化24】
鋳型を、T7 RNAポリメラーゼ(Y639L/H784A/K378R)を含む15mLのインビトロでの転写反応において使用した。転写は、200mMのHepes、40mMのDTT、2mMのスペルミジン、0.01%のTriton X−100、10%のPEG−8000、8mMのMgCl2、2.5mMのMnCl2、1.5mMのmCTP、1.5mMのmUTP、1.5mMのmGTP、1.5mMのmATP、1mMのGMP、0.01単位/μLの無機ピロホスファターゼ、および約9μg/mLのT7 ポリメラーゼ(Y639L/H784A/K378R)、ならびに、0.2μMの鋳型DNAを使用して行った。RNAを沈殿させ、そして、10%の変性PAGE上で精製した。RNAを、300mMのNaOAc、20mMのEDTA中でゲルから一晩かけて溶出させ、沈殿させ、そしてUV Specを用いて定量した。収量は、試験した4種類のリーダー配列の間で大きくは異ならず、そして以下の表1Aに示す。
【0203】
【化25】
鋳型5から8
上記の鋳型1から4と同様に、複数のリーダー配列についての転写量を評価した。4種類の鋳型を様々な定常領域を用いて合成した。DNA鋳型を、ABI EXPEDITE(登録商標)(Applied Biosystems,Foster City,CA)DNA合成装置を使用して合成し、標準的な方法によって脱保護した。配列(5’から3’方向で示す)は以下である:
【0204】
【化26】
鋳型をそれらのそれぞれのプライマーを用いて増幅させた:
【0205】
【化27】
【0206】
【化28】
その後、鋳型を、T7 RNAポリメラーゼ(Y639L/H784A/K378R)を含む0.5mLのインビトロでの転写に使用した。転写は、200mMのHepes、40mMのDTT、2mMのスペルミジン、0.01%のTriton X−100、10%のPEG−8000、8mMのMgCl2、2.5mMのMnCl2、1.5mMのmCTP、1.5mMのmUTP、1.5mMのmGTP、1.5mMのmATP、1mMのGMP、0.01単位/μLの無機ピロホスファターゼ、および約9μg/mLのT7ポリメラーゼ(Y639L/H784A/K378R)、ならびに、0.2μMの鋳型DNAを使用して行った。RNAを沈殿させ、そして、10%の変性PAGE上にロードした。RNAを、ゲル上でUV吸光度によって視覚化した。収量は、収量は、試験した4種類のリーダー配列の間で大きくは異ならず、そして以下の表1Aに示す(相対的な転写量を示す)。
【0207】
【化29】
特定の実施形態においては、上記で同定した鋳型が、本発明の転写方法および/またはアプタマー選択方法において使用され得る。
【0208】
実施例4D:P266L/Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを使用したMNA転写
以下のDNA鋳型およびプライマーを使用して、二本鎖の転写鋳型を生じるためのポリメラーゼ連鎖反応をプログラムした。Nは、ATGCのそれぞれが存在する可能性がほぼ等しい縮重位置を示しており、全ての配列を、5’から3’方向で列挙する。PCR鋳型(ARC2118)
【0209】
【化30】
【0210】
【化31】
得られた二本鎖の転写鋳型を、その後、以下のようなそれぞれの試料についての200μLの転写混合物をプログラムするために使用した:HEPES(200mM)、DTT(40mM)、スペルミジン(2mM)、Triton X−100(0.01%)、MgCl2(8mM)、MnCl2(2.5mM)、PEG−8000(10%w/v)、1.5mMの各2’−OMe NTP、GMP 1mM、100〜200nMの転写鋳型、無機ピロホスファターゼ(1単位)、pH7.5、以下に示すように稀釈したT7変異体ポリメラーゼ(P266L/Y639L/H784A/K378R)。転写混合物を37℃で一晩インキュベートした(16時間)。
【0211】
インキュベーション後、混合物をイソプロパノールで沈殿させ、得られたペレットを溶解させ、変性PAGE(12.5%のアクリルアミド)を使用して60分間、25Wで変性させた。試料を視覚化させ、260nmでのUVシャドウによって定量した。
【0212】
【化32】
(実施例5)
Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを使用したアプタマーの選択
ヒトAng2(本明細書中以後、「h−Ang2」)に対するアプタマーを同定するための選択を、2’−OMeプリンヌクレオチドおよび2’−OMeピリミジンヌクレオチドからなるプール(本明細書中以後、「MNA」)を使用して行った。この選択ストラテジーによって、h−Ang2に特異的な高親和性アプタマーが得られた。
【0213】
ヒトAng2は、R&D Systems,Inc.(Minneapolis,MN)から購入した。T7 RNAポリメラーゼ(Y639L/H784A/K378R)を発現させ、そして上記の実施例3に記載したように精製した。2’−OMeプリンおよび2’−OMeピリミジンヌクレオチドは、TriLink BioTechnologies(San Diego,CA)から購入した。
【0214】
Ang2アプタマーの選択
プールの調製
配列
【0215】
【化33】
を有するDNA鋳型を、ABI EXPEDITE(登録商標)(Applied Biosystems,Foster City,CA)DNA合成装置を使用して合成し、標準的な方法によって脱保護した。鋳型を、プライマー
【0216】
【化34】
を用いて増幅させ、その後、T7 RNAポリメラーゼ(Y639L/H784A/K378R)でのインビトロでの転写のための鋳型として使用した。転写は、200mMのHepes、40mMのDTT、2mMのスペルミジン、0.01%のTriton X−100、10%のPEG−8000、8mMのMgCl2、2.5mMのMnCl2、1.5mMのmCTP、1.5mMのmUTP、1.5mMのmGTP、1.5mMのmATP、1mMのGMP、0.01単位/μLの無機ピロホスファターゼ、および約9μg/mLのT7ポリメラーゼ(Y639L/H784A/K378R)、ならびに、0.5μMの鋳型DNAを使用して行って、ARC2118 mRmYプールを作成した。
【0217】
選択
選択は、330pmole(2×1014個の分子)のMNA ARC2118プールを、100μLの最終容量の選択緩衝液(1×ダルベッコPBS(DPBS))の中で100pmoleのタンパク質と共に、室温で1時間インキュベートすることによって開始した。RNA−タンパク質複合体と、結合していないRNA分子を、0.45マイクロンのニトロセルローススピンカラム(Schleicher and Schuell,Keene,NH)を使用して分離させた。カラムをKOHで前処理し(1mLの0.5M KOH中のSoakカラムフィルター RTで15分間;スピンスルー(spin through)、1mLのdH2O中のSoakフィルター、RTで5分間;スピンスルー)、1mLの1×PBSで2回洗浄し、その後、プール:Ang2複合体を含む溶液をカラムに添加し、1500×gで2分間遠心分離した。フィルターを、500μLのDPBSで2回洗浄して、非特異的結合剤を除去した。RNAを、2×100μLの溶出緩衝液(7Mの尿素、100mMの酢酸ナトリウム、3mMのEDTA、予め95℃に加熱した)の添加によって溶出させ、その後、エタノールで沈殿させた。RNAを、製造業者の説明書にしたがって、プライマー(配列番号119)を使用して、ThermoScript RT−PCR(登録商標)システム(Invitrogen,Carlsbad,CA)を用いて逆転写させた。cDNAを、製造業者の説明書にしたがって、配列番号118および配列番号119を使用して、Taqポリメラーゼ(New England Biolabs,Beverly,MA)を用いてPCRによって増幅させた。鋳型を、プールの調製のために上記に記載したように転写させ、そして変性ポリアクリルアミドゲル上で精製した。
【0218】
2回目を、1回目と同じ方法で行った。3回目〜12回目は、疎水性プレート上に固定したh−Ang2を用いて行った。各回の選択は、100μLの1×DPBS中で室温で1時間、Nunc Maxisorp疎水性プレートの表面上に20pmoleのh−Ang2を固定させることによって開始した。プレートを、120μLのDPBSで5回洗浄し、その後、ブロック緩衝液(1×DPBS、および0.1mg/mLのBSA)とともに1時間インキュベートした。その後、上清を除去し、ウェルを、120μLのDPBSで5回洗浄した。プールのRNAを、空のウェルの中で室温で1時間、次いで、100μLのブロック緩衝液で予めブロックされたウェルの中で1時間、インキュベートした。3回目以降は、標的を固定したウェルを、ポジティブ選択工程の前に100μLのブロック緩衝液(1×PBS、0.1mg/mLのtRNA、0.1mg/mLのssDNA、および0.1mg/mLのBSA)の中で室温で1時間ブロックした。全ての場合に、固定されたh−Ang2に結合したプールのRNAを、逆転写(「RT」)混合物(3’プライマー、配列番号119、およびThermoscript RT,Invitrogen,Carlsbad,CA)の添加によって選択プレート中で直接逆転写させ、その後、65℃で1時間インキュベーションした。得られたcDNAを、PCRのための鋳型として使用し(Taqポリメラーゼ,New England Biolabs,Beverly,MA)、そして転写は1回目について記載したものと同じとした。それぞれの回についての条件は表3に示す。
【0219】
【化35】
【0220】
【化36】
MNAアプタマー結合分析
ドットブロット結合アッセイを、プールのタンパク質結合親和性をモニターするために、選択によって行った。微量の32Pで末端標識したプールのRNAをh−Ang2と混合し、30μLの最終容量においてDPBS緩衝液中で30分間、室温でインキュベートした。混合物をニトロセルロース膜、ナイロン膜、およびゲルブロット膜(上から下に)でアセンブリしたドットブロット装置(Minifold−1 Dot Blot,Acrylic,Schleicher and Schuell,Keene、NH)にアプライした。タンパク質に結合したRNAはニトロセルロースフィルター上に捕捉され、一方、タンパク質に結合していないRNAはナイロンフィルター上に捕捉される。h−Ang2結合の富化は、9回目から見られた。9回目、10回目、および12回目のプールの鋳型を、製造業者による説明書にしたがってTOPO TAクローニングキット(Invitrogen,Carlsbad,CA)を使用してクローニングし、そして26個の特有のクローンを化学合成のために選択し、解離定数(KD)を決定した。簡単に説明すると、合成のRNAをγ−32P ATPで5’末端を標識し、KD値を、ドットブロットアッセイと1×DPBS(w/Ca2+およびMg2+)(Gibco,カタログ番号14040,Invitrogen,Carlsbad,CA)の緩衝液条件を使用して決定した。KDは、データを以下の方程式にフィットさせることによって概算した:結合したRNAの割合=amplitude*(((AptConc+[h−Ang2]+KD)−SQRT((AptConc+[h−Ang2]+KD)2−4(AptConc*[h−Ang2])))/2*AptConc))+バックグラウンド。結果を以下の表4に報告する。
【0221】
26種類の特有の配列の中では、8種類は類似するモチーフを共有しており、そして類似する結合活性および阻害活性を有していた。これらの配列を、ファミリーIと同定した。ファミリーIIには、類似する結合活性および阻害活性を有していたモチーフを共有していた2種類の配列を含めた。
【0222】
MNAアプタマー機能の分析
Elisaアッセイ
いくつかのアプタマーをELISAアッセイにおいて試験した。ELISAアッセイは、Tie2受容体に対するAng2の結合を妨害するそれらの能力を測定するように設定した。Tie2受容体を捕捉するために、100μLのPBS(pH7.4)の中の150ngのTie2−Fc(R&D systems 313−TI−100−CF,Minneapolis,NY)を96ウェルMaxisorbプレート(NUNC#446612,Rochester,NY)上にのせ、そして4℃で一晩インキュベートした。捕捉の際には、50μLの様々な濃度の合成のRNAを、0.1%のBSAを含むPBS中の1.8nM(100ng/mLの最終Ang2濃度を有する50μLの3.6nMのAng2(200ng/mL)(R&D systems 623−AN−025/CF,Minneapolis,NY)と混合し、そして室温で1時間インキュベートした。捕捉溶液を一晩のインキュベーション後に除去し、そしてプレートを200μLのTBST(25mMのTris−HCl、pH7.5、150mMのNaCl、および0.01%のTween 20)で3回洗浄した。その後、プレートを、5%の無脂肪粉乳を含む200μLのTBSTで、室温で30分間ブロックした。ブロック後、プレートを、200μLのTBSTで再度3回、室温で洗浄し、合成のRNA:Ang2混合物をプレートに添加し、室温で1時間インキュベートした。その後、プレートを、200μLのTBSTで3回洗浄し、100μLのビオチニル化ヤギ抗Ang2抗体(1:1000;R&D Systems BAF623,Minneapolis、MN)を添加し、室温で1時間インキュベートした。200μLのTBSTでの3回の洗浄後、100μLのHRP結合ストレプトアビジン(1:200;R&D Systems #DY998,Minneapolis、MN)を添加し、そして室温で0.5時間インキュベートした。その後、プレートを再び200μLのTBSTで3回洗浄し、100μLのTMP溶液(Pierce,#34028)を添加し、そして、室温で5分間、暗所でインキュベートした。2NのH2SO4を含む100μLの溶液を反応を停止させるために添加し、そしてプレートをSpectroMaxによって450nmで読み取った。結果を、以下の表4の最後の列に示す。
【0223】
FACSアッセイ
ヒトの臍帯血内皮細胞(「HUVEC」)(ATCC)およびK293細胞(ヒトTie2受容体を過剰発現している細胞株)を使用して、細胞膜上のTie2受容体に対するAng2の結合を阻害する特異的MNA Ang2アプタマーのIC50を決定した。簡単に説明すると、組み換え体哺乳動物発現ベクターpCDMA3.1−Tie2を293細胞(ATCC,Manassas,VA)にトランスフェクトし、次いで、G418(Invitrogen,Carlsbad,CA)での選択後に安定なクローンを得た。フローサイトメトリーは、HUVECおよびK283細胞の両方の上でのTie2タンパク質の発現を示した。Ang2の滴定アッセイによって、さらに、HUVECおよびK293細胞上でのアプタマー阻害アッセイのためにAng2(R&D Systems.Minneapolis,MN)の量を決定した。これはそれぞれ、1μg/mLおよび0.1μg/mLであった。
【0224】
フローサイトメトリー結合アッセイにおいて、HUVECおよびK293細胞(2×105細胞/ウェル)を、V底96ウェルプレートの中でペレット化させ、これを続いて、MNAアプタマー/Ang2溶液の中に再度懸濁させ、そして2時間インキュベートした。アプタマー/Ang2溶液を、FACs緩衝液(PBS中の1%のBSA、0.2%のアジ化ナトリウム)中のAng2と共に、様々な投与量のアプタマー(100nM、33.3nM、11.1nM、3.7nM、1.2nM、0.411nM、0.137nM、および0.0456nM)を、氷上で30分間プレインキュベーションすることによって調製した。FACs緩衝液での3回の洗浄の後、細胞を、ビオチニル化抗ヒトAng2抗体(5μg/mL;R&D Systems,Minneapolis,MN)と共に30分間インキュベートし、続いて、ストレプトアビジンPE(1:10;BD Biosciences,San Jose,CA)とともにさらに30分間インキュベーションした。FACS分析は、FACScan(BD Biosciences,San Jose,CA)を使用して完了した。結果を以下の表4に報告する。
【0225】
(表4 抗Ang2 MNAアプタマーについての結合および機能の結果のまとめ)
【0226】
【化37】
【0227】
【化38】
(実施例6)
Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを使用したアプタマーの選択
ヒトIgE(本明細書中以後「h−IgE」)に対するアプタマーを同定するための選択を2’−OMeプリンヌクレオチドおよび2’−OMeピリミジンヌクレオチドからなるプール(本明細書中以後、「mRmY」)を使用して行った。この選択ストラテジーによって、h−IgEに特異的な高親和性アプタマーが得られた。
【0228】
ヒトIgEは、Athens Research & Technology(カタログ番号16−16−090705 Athens,GA)から購入した。T7 RNAポリメラーゼ(Y639L/H784A/K378R)を発現させ、そして上記の実施例3に記載したように精製した。2’−OMeプリンおよび2’−OMeピリミジンヌクレオチドは、TriLink BioTechnologies(San Diego,CA)から購入した。
【0229】
IgEアプタマーの選択
プールの調製
配列
【0230】
【化39】
を有するDNA鋳型を、ABI EXPEDITE(登録商標)(Applied Biosystems,Foster City,CA)DNA合成装置を使用して合成し、標準的な方法によって脱保護した。この鋳型を、プライマー
【0231】
【化40】
を用いて増幅させ、その後、T7 RNAポリメラーゼ(Y639L/H784A/K378R)でのインビトロでの転写のための鋳型として使用した。転写は、50mMのHEPES、10mMのDTT、0.5mMのスペルミジン、0.0025%のTriton X−100、10%のPEG−8000、8mMのMgCl2、2.5mMのMnCl2、1.5mMのmCTP、1.5mMのmUTP、1.5mMのmGTP、1.5mMのmATP、1mMのGMP、0.01単位/μLの無機ピロホスファターゼ、および約9μg/mLのT7ポリメラーゼ(Y639L/H784A/K378R)、ならびに、0.3μMの鋳型DNAを使用して行って、ARC2118 MNAプールを作成した。
【0232】
選択
選択は、330pmole(2×1014個の分子)のMNA ARC2118プールを、100μLの最終容量の選択緩衝液(1×ダルベッコPBS(DPBS))の中のBSAでブロックした疎水性プレート(Maxisorpプレート,Nunc,Rpchester,NY)に結合させた24pmoleのタンパク質とともに、室温で1時間インキュベートすることによって開始した。ウェルを、120μLのDPBSで4回洗浄して、非特異的結合剤を除去した。RNAを溶出させ、そして製造業者の説明書にしたがって、プライマー(配列番号119)を使用して、ThermoScript RT−PCR(登録商標)システム(Invitrogen,Carlsbad,CA)を用いて逆転写させた。cDNAを、製造業者の説明書にしたがって、配列番号118および配列番号119を使用して、Taqポリメラーゼ(New England Biolabs,Beverly,MA)を用いてPCRによって増幅させた。鋳型を、プールの調製のために上記に記載したように転写させ、そして変性ポリアクリルアミドゲル上で精製した。
【0233】
全ての回を、疎水性プレート上に固定したh−IgEを用いて行った。各回の選択は、100μLの1×DPBS中で室温で1時間、Nunc Maxisorp疎水性プレートの表面上に24pmoleのh−IgEを固定させることによって開始した。プレートを、120μLのDPBSで4回洗浄し、その後、ブロック緩衝液(1×DPBS、および0.1mg/mLのBSA)とともに1時間インキュベートした。その後、上清を除去し、ウェルを、120μLの1×DPBSで4回洗浄した。2回目からは、プールのRNAを、空のウェルの中で室温で1時間、次いで、100μLのブロック緩衝液で予めブロックされたウェルの中で1時間、インキュベートした。2回目以降は、非特異的競合剤をポジティブ対照工程(0.1mg/mLのtRNA,および0.1mg/mLのssDNA)に加えた。全ての場合に、固定されたh−IgEに結合したプールのRNAを、逆転写(「RT」)混合物(3’プライマー、配列番号119、およびThermoscript RT,Invitrogen,Carlsbad,CA)の添加によって選択プレート中で直接逆転写させ、その後、65℃で1時間インキュベーションした。得られたcDNAを、PCRのための鋳型として使用し(Taqポリメラーゼ,New England Biolabs,Beverly,MA)、そして転写は1回目について記載したものと同じとした。それぞれの回についての条件は表5に示す。
【0234】
【化41】
MNAアプタマーの結合分析
ドットブロット結合アッセイを、プールのタンパク質結合親和性をモニターするための選択によって行った。微量の32Pで末端標識したプールのRNAをh−IgEと混合し、30μLの最終容量においてDPBS緩衝液中で30分間、室温でインキュベートした。この混合物をニトロセルロース膜、ナイロン膜、およびゲルブロット膜(上から下に)でアセンブリしたドットブロット装置(Minifold−1 Dot Blot,Acrylic,Schleicher and Schuell,Keene、NH)にアプライした。タンパク質に結合したRNAはニトロセルロースフィルター上に捕捉され、一方、タンパク質に結合していないRNAはナイロンフィルター上に捕捉される。h−IgE結合の富化は、8回目から見られた。5回目、8回目、および12回目のプールの鋳型を、製造業者による説明書にしたがってTOPO TAクローニングキット(Invitrogen,Carlsbad,CA)を使用してクローニングした。配列決定データは、8回目のプールが、配列全体の59%を含む、1つの主要なクローンに集中していたことを明らかにした。この主要なクローンと3個の可能性のあるミニマー(minimer)を化学合成のために選択し、解離定数(KD)を決定した。簡単に説明すると、合成のRNAをγ−32P ATPで5’末端標識し、KD値を、ドットブロットアッセイと1×DPBS(w/Ca2+およびMg2+)(Gibco,カタログ番号14040,Invitrogen,Carlsbad,CA)の緩衝液条件を使用して決定した。KDは、データを以下の方程式にフィットさせることによって概算した:結合したRNAの割合=amplitude*(((AptConc+[h−IgE]+KD)−SQRT((AptConc+[h−IgE]+KD)2−4(AptConc*[h−IgE])))/2*AptConc))+バックグラウンド。主要なクローンは、約800pMのKDを有していた。最もよく結合したミニマーもまた、サルIgE(m−IgE)に対する結合について試験したが、サルIgEタンパク質に対して交差反応性である結合は示さなかった。この交差反応性がないことを、ELISAによっても確認した。3’末端上に反転したdTを有するミニマーを、医薬品化学プロセスのための親分子として使用した。
【0235】
医薬品化学
IgE特異的MNAミニマーの1つの化学的組成(図11)を、化合物の血漿安定性を維持したまま、親和性および効力を改善するために変化させた。このプロセスには最小化させたIgEアプタマーの誘導体のシリーズの設計、合成、および評価を含めた。ここでは、このシリーズの個々の誘導体には、どの残基が置換を寛容化するかを決定するために、予め決定したヌクレオチドの個々の出現頻度の1つの修飾を含めた。修飾の最初のセットは、個々の特有の2’−OMeヌクレオチドについてのデオキシヌクレオチドの置換とした。別の回の修飾においては、誘導体の1つのシリーズを合成した。ここでは、個々の誘導体に、様々なヌクレオチド間結合部位に1つのホスホロチオエート修飾を含めた。これらの初期段階での修飾において得られたデータを使用して、最小化したアプタマーについての構造と活性の関係(SAR)を確立した。続く段階での修飾においてはアプタマーを合成し、そして、最初のSARデータに基づいて設計した置換の複合的なセットを用いて試験した。複合的な置換のパネルから、その組成の中に導入された2’−デオキシ置換に対して2つの2’−OMeを有する39ヌクレオシドの長さのアプタマーを同定した。加えて、その組成の中に、1つの2’−OMeから2’−デオキシへの置換と、その中に取り込ませた4個のリン酸基からホスホロチオエートへの置換基を有する、39ヌクレオチドの長さの、得られた修飾された最小化したアプタマーを同定した。図12に示したように、このデオキシ/ホスホロチオエート修飾されたアプタマーは、最小化したが未修飾のもとのアプタマー、ならびに、2’−OMe置換について2つのデオキシを有するもとの最小化したアプタマーのいずれと比較しても、高い結合親和性を示した。
【0236】
血清安定性
最小化した未修飾の元のアプタマー、およびデオキシ/ホスホロチオエート修飾されたアプタマーを、ヒト、ラット、およびサルの血清の中でのそれらの安定性を決定するためにアッセイした。個々のアプタマーを、90%の血清中に5μMの最終濃度のなるように、1mlのプールした血清に添加した。アプタマーを、震盪させながら37℃でインキュベートし、そして時点は、0、0.5、1、4、24、48、72、および98時間とした。それぞれの時点で、インキュベートした試料からの90μlのストックを、10μlの0.5MのEDATに添加し、BIACORE 2000システムを使用する後の安定性についての分析のために、−20℃で凍結させた。
【0237】
全てのバイオセンサーによる結合の測定は、研究グレードのCM5バイオセンサーチップ(BIACORE Inc.,Piscataway,NJ)を取り付けたBIACORE 2000を使用して、25℃で行った。精製した組み換え体ヒトIgE(Athens Research & Technology,Athens,GA)を、アミノ−カプリング化学反応を使用してバイオセンサーの表面に固定した。これを行うために、2つのフローセルの表面を最初に、0.1MのNHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)と0.4MのEDC(3−(N,N−ジメチルアミン)プロピル−N−エチルカルボジイミド)の1:1混合物を、5μl/分の流速で7分間、最初に活性化させた。表面の活性化後、1つのフローセルに50μg/mlのIgEを、10μl/分で20分間かけて注入して、活性化さた表面に対する共有結合を確立させた。次に、1Mの塩酸エタノールアミン(pH8.5)を5μl/分で7分間かけて注入して、残っているエステルを不活化させた。ブランクとして使用したフローセルについては、1Mの塩酸エタノールアミン(pH8.5)を7分間かけて注入して、タンパク質の注入を行わずに、残っているエステルを不活化させた。
【0238】
アプタマーの鎖のセットを、標準曲線を作成するために調製したチップを通して進ませ、その後、全ての時点を分析した。標準曲線を確立するために、アプタマーを、4%のヒト血清と50mMのEDATを補充したHBS−P緩衝液(10mMのHEPES、pH7.4、150mMのNaCl、0.005%のSurfactant 20)の中に段階稀釈した(200nMから12.5nM)。全ての稀釈した試料を、20μl/分で5分間かけてBiacore 2000に注入し、3分間待った。チップを作成するために1NのNaClを、30μl/分で60秒間注入した。結合段階の最後に、RUピークの応答をアプタマーの濃度に対してプロットし、そして、標準曲線を4パラメーターロジステッィク関数(Four−Parameter logistic function)を使用して作成した。ヒト、ラット、およびサルの血清の中での活性なアプタマーの濃度を測定するために、時点の試料を、Biacore 2000への注入の直前に、HBS−Pの中に22.5倍に稀釈して、4%の最終血清濃度とした。個々の血清インキュベーション時間での機能的なアプタマーの濃度を、上記で作成した標準曲線を使用してRU応答単位を濃度に変換することによって計算した。さらなる量の対照測定として、2つのアプタマー標準物を、実験の最後に別々に試験して、BIACOREによって測定した濃度が標準物の20%未満となることを確実にした。最小化した未修飾の元のアプタマーと、デオキシ/ホスホロチオエート修飾されたアプタマーはいずれも、ヒト、ラット、およびサルの血清において、98時間で90%を上回る活性であることを決定した。
【0239】
本発明は、記載および実施例によってここに記載されており、当業者は、本発明を様々な実施形態で行うことができること、そして上記の記載および実施例は説明の目的のためのものであり、以下の特許請求の範囲を限定する目的のためのものではないことを理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0240】
【図1】図1は、ランダム配列オリゴヌクレオチドのプールからのインビトロでのアプタマーの選択(SELEX(登録商標))プロセスの模式図である。
【図2】図2は、Terminal Region SELEX(登録商標)(TR−SELEX(登録商標))法のフロー図を示す。
【図3】図3は、TR−SELEX(登録商標)選択の前(R0)および後(R3)の、転写鋳型の候補のライブラリーの20個の縮重位置から選択された領域の組み合わせられた平均のヌクレオチド組成のグラフによる分析を示す。
【図4】図4は、転写混合物の中での2’−OH GTPスパイク用いた、Y639F/H784A/K378R(「FAR」)変異体T7 RNAポリメラーゼおよびY639L/H784A/K378R(「LAR」)変異体T7 RNAポリメラーゼを使用した、ARC2118、ARC2119、ARC2120、およびARC2121についてのPAGEゲル分析のUVシャドウイングによって定量した、相対的な転写物量を示す。*は、所定の量が、LAR変異体ポリメラーゼを用いて転写されたARC2118に対する比較であることを示しており、これは、UV−シャドウによる最も多い定量された量を示す。
【図5】図5Aは、野生型T7 RNAポリメラーゼの核酸配列(配列番号120)を示し、そして図5Bはアミノ酸配列(配列番号121)を示す。
【図6A】図6Aは、変異体T7 RNAポリメラーゼY639L/H784Aの核酸配列(配列番号122)を示す。
【図6B】図6Bは、T7変異体ポリメラーゼY639L/H784A/K378Rの核酸配列(配列番号123)を示す。
【図6C】図6Cは、変異体T7ポリメラーゼP266L/Y639L/H784Aの核酸配列(配列番号124)を示す。
【図6D】図6Dは、変異体T7ポリメラーゼP266L/Y639L/H784A/K378Rの核酸配列(配列番号125)を示す。
【図7】図7は、転写混合物の中でのrGTP(2’−OH GTP)の滴定を用いた、Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを使用した、ARC2118およびARC2119についてのPAGEゲル分析のUVシャドウイング(UV shadowing)によって定量した、相対的な転写物量を示す。*は、所定の量が20μMのrGTPを用いて転写されたARC2118に対する比較であることを示しており、これは、UV−シャドウによる最も多い定量された量を示した。
【図8】図8は、転写混合物の中で様々な濃度の2’−OMe NTP(A、U、C、およびG)、MgCl2、およびMnCl2、ならびに、rGTPを含まないもの(2’−OH GTP)を用いた、Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを使用したARC2119についてのPAGEゲル分析のUVシャドウイングによって定量した、相対的な転写物量を示す。所定の量は、1mMの各2’−OMe NTP、6.5mMのMgCl2、および2mMのMnCl2の転写条件に対する比較である。
【図9】図9は、Y369F/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを使用した全てのRNAまたは2’−OMe転写物の厳密性(fidelity)と比較した、Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを用いた完全なる2’−OMe転写物(100%の2’−OMe A、U、C、G)のヌクレオチドの挿入、欠失、および置換の分析を示す表である。表中、(1)は、「Direct in Vitro Selection of a 2’−O−Methyl Aptamer to VEGF」Burmeisterら、(2005)Chemistry and Biology,12:25−33によるデータを示す。ここでは、転写はFAR T7変異体ポリメラーゼを用いて行われた。そして(2)は、転写がLAR T7変異体ポリメラーゼを用いて行われたことを示す。
【図10】図10は、1回のY639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを用いた完全なる2’−OMe転写、その後のDNase処理、逆転写、添え木で支えられた連結反応、およびPCR増幅の前、ならびに後の、完全なる2’−OMe転写物(100%の2’−OMe A、T、C、G)のヌクレオチド組成の割合の分析を示す表である。
【図11】図11は、5’から3’方向で示された、その3’末端にキャップ(黒色の丸)を有する最も小さいMNA抗IgEアプタマーの図である。
【図12】図12は、最小のMNA抗IgEアプタマー、2つのデオキシ置換を有する最小のMNA抗IgEアプタマー、および1つのデオキシ置換と複数のホスホロチオエート置換を有する最小のMNA抗IgEアプタマーの模式図である。それぞれが5’から3’方向で示されており、そしてそれぞれが、その3’末端にキャップ(黒色の丸)を有する。
【図13】図13は、標準的なモノPEG化(mono−PEGylation)、マルチPEG化(multiple PEGylation)、およびPEG化による二量体化を示す、様々なPEG化のストラテジーを示している図である。
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本仮特許出願は、米国特許法§119(e)の下、次の仮特許出願:2005年6月30日に出願された米国仮特許出願第60/696,292号の優先権を主張し、その全体は本明細書中に参考として援用される。本発明は一般に、核酸の分野、より詳細にはアプタマーに関する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、核酸(具体的には、修飾された酵素)を転写するための材料と方法、および修飾されたヌクレオチドの核酸(具体的には、アプタマー)への取り込みを増大させるための鋳型特異的重合において修飾された酵素を使用するための材料と方法に関する。加えて、本発明は、転写鋳型成分配列を選択するための方法と材料、転写物量を増大させるための(具体的には、SELEX(登録商標)法の際の転写物量を増大させるための)そのような成分配列の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
定義によると、アプタマーは、ワトソン−クリック(Watson−Crick)塩基対合以外の相互作用によってタンパク質のようないくつかの標的に対して高い特異性および親和性で結合する、単離された核酸分子である。アプタマーは核酸をベースとする分子であるが、アプタマーと他の核酸分子(例えば、遺伝子およびmRNA)の間には根本的に違いがある。後者においては、核酸構造は、その直鎖状の塩基配列を通じて情報をコードしており、したがって、この配列は、情報の保存機能に重要な配列である。全く対照的に、アプタマーの機能は、標的分子の特異的結合に基づき、これは、保存された直鎖状の塩基配列に依存するのではなく、むしろ、特定の二次構造/三次構造に依存する。すなわち、アプタマーは非コード配列である。アプタマーが有する場合がある何らかをコードする可能性は完全に偶然のものであり、そしてどんな形であっても、その同種の標的に対するアプタマーの結合において役割を担うことはない。したがって、同じ標的に対して、さらにその標的上の同じ部位に対して結合するアプタマーは、類似する直鎖状の塩基配列を共有する場合があるが、ほとんどの場合はそうではない。
【0004】
アプタマーはまた、特定のタンパク質に結合する自然界に存在している核酸配列とは異なっていなければならない。これらの後者の配列は、自然界に存在している核酸の転写、翻訳、および輸送に関係しているタンパク質の特定のサブグループ(すなわち、核酸結合タンパク質)に結合する生物体のゲノムの中に埋め込まれている自然界に存在している配列である。一方、アプタマーは、短い、単離された、自然界には存在しない核酸分子である。核酸結合タンパク質に結合するアプタマーを同定することができるが、ほとんどの場合は、そのようなアプタマーは、自然界において核酸結合タンパク質によって認識される配列に対しては、配列同一性をほとんど有していないか、または全く同一性はない。最も重要なことは、アプタマーは、(単に核酸結合タンパク質だけではなく)実質的に全てのタンパク質に結合することができ、さらには、目的の任意の標的(低分子、炭水化物、ペプチドなどを含む)のほとんどにも結合することができる。ほとんどの標的について、さらにはタンパク質についても、それに結合する自然界に存在している核酸配列は存在しない。そのような配列を有するこれらの標的(すなわち、核酸結合タンパク質)については、そのような配列は、堅く結合しているアプタマーと比較して、実際に使用される比較的低い結合親和性の結果として、アプタマーとは異なるであろう。
【0005】
アプタマーは、ファージディスプレイによって作成されるペプチドまたは抗体と同様に、選択された標的に特異的に結合すること、および標的の活性または結合相互作用を調節することができる。これは、例えば、アプタマーの結合によってそれらの標的の機能する能力をブロックすることができることによる。抗体と同様に、標的に対する特異的結合のこの機能的特性は固有の性質である。また、抗体と同様に、当業者は、標的に対するアプタマーに特徴的などの正確な構造を有するかを知ることはできない場合があるが、当業者は、正確な構造の定義が存在しない条件下でそのような分子を同定し、作成し、そして使用するための方法を知っている。
【0006】
アプタマーはまた、小さい分子治療薬のアナログでもあり、その中の1つの構造変化(しかし、一見、重要ではない)が、アプタマーの結合および/または他の活性(単数または複数)に劇的な効果(数桁)を及ぼす場合がある。一方、いくつかの構造変化は、どのような形でもほとんど、または全く効果がない場合もある。これは、アプタマーの二次構造/三時構造の重要性によって生じる。言い換えると、アプタマーは、その任意の標的に特異的に結合する化学的な接触を提供する、固定された立体構造で維持されている三次元構造である。結果として:(1)いくつかの領域または特定の配列は、(a)標的との接触の特異的な点として、および/または(b)標的と接触する分子の位置である配列として、不可欠であり;(2)いくつかの領域または特定の配列は一定の範囲の可変性を有しており、例えば、ヌクレオチドXはピリミジンでなければならないか、またはヌクレオチドYはプリンでなければならないか、または、ヌクレオチドXとYは相補的でなければならず;そして(3)いくつかの領域または特定の配列はいずれのものであってもよく、すなわち、これらは、原則的には、スペースエレメントであり、例えば、これらは、任意の長さのヌクレオチドの任意の並び、またはさらには、PEG分子のようなヌクレオチド以外のスペーサーでもあり得る。
【0007】
ランダムな配列のオリゴヌクレオチドのプールからインビトロでの選択プロセスによって発見された、成長因子、転写因子、酵素、免疫グロブリン、および受容体を含む130個を超えるタンパク質についてアプタマーが作成されている。典型的なアプタマーは、10〜15kDaの大きさ(20〜45ヌクレオチド)であり、これは、ナノモルからナノモル未満の親和性でその標的に結合し、そして密接に関係している標的を区別する(例えば、アプタマーは、通常は、同じ遺伝子ファミリーに由来する他のタンパク質には結合しないであろう)。一連の構造実験は、アプタマーが同じタイプの結合相互作用(例えば、水素結合、静電気的相補性、疎水的接触、立体排除)を使用することができ、これにより、抗体−抗原複合体における親和性および特異性が駆動されることを示している。
【0008】
アプタマーは、治療薬および診断薬としての使用のための多数の所望される特性(高い特異性および親和性、生物学的効力、ならびに優れた薬物動態特性を含む)を有する。加えて、これらは、抗体および他のタンパク質生物製剤を上回る、例えば、以下のような特異的な競合する利点を付与する:
1)速度および制御。アプタマーは、完全なるインビトロでのプロセスによって生産することができ、それにより、最初のリード化合物(lead)(治療薬のリード化合物を含む)の迅速な作成が可能になる。インビトロでの選択により、アプタマーの特異性および親和性をきっちりと制御することができ、そして、リード化合物(毒素標的および非免疫原性標的の両方に対するリード化合物を含む)の作成が可能となる。
【0009】
2)毒性および免疫原性。1つのクラスとしてのアプタマーは、治療上許容される毒性、または免疫原性が無いことが明らかにされている。多くのモノクローナル抗体の効力は、抗体自体に対する免疫応答によって厳密に制限され得るが、アプタマーに対する抗体を誘発することは極めて困難である。その理由は、ほぼおそらく、アプタマーがMHCを介してT細胞によっては提示され得ないこと、および免疫応答が通常は、核酸断片を認識することに慣れていないことである。
【0010】
3)投与。ほとんどの現在承認されている抗体療法は静脈内への注入(通常は、2〜4時間)によって投与されるが、アプタマーは、皮下注射によって投与することができる(皮下投与によるアプタマーの生体利用性は、サルでの実験においては>80%である(非特許文献1)。この差は、主に、比較的低い溶解度、したがって、ほとんどの治療用mAbについて必要な大きい容量が原因である。良好な可溶性(>150mg/mL)と比較的低い分子量(アプタマー:10〜15kDa;抗体:150kDa)を有するアプタマーの1週間の用量は、0.5mL未満の容量で注射によって投与することができる。加えて、小さいサイズのアプタマーは、抗体または抗体断片が入ることができない立体構造上の狭窄の領域に入り込むことができて、アプタマーに基づく治療薬または予防薬のなおさらに別の利点を示す。
【0011】
4)拡張性およびコスト。治療用のアプタマーは化学合成され、結果として、生産の要望を満たすために必要に応じて容易に拡張縮小する(scaled)ことができる。生産の拡張縮小における問題点は、現在、いくつかの生物製剤の有用性を制限しており、そして大規模なタンパク質の生産用プラントの資本コストは膨大であるが、1つの大規模なオリゴヌクレオチド合成装置によっては、100kg/年、生産を上昇させることができ、比較的少ない初期投資しか必要ではない。キログラム規模でのアプタマーの合成のための物品についての現在のコストは、$500/gと概算され、高度に最適化された抗体のコストに匹敵する。プロセスの開発において改善を続けることにより、物品のコストは、5年間で、<$100/gに下げられると予想される。
【0012】
5)安定性。治療用のアプタマーは化学的に頑丈である。これらは、本質的に、熱および変性剤のような要因に曝された後に活性を回復するように適応しており、そして、凍結乾燥させられた粉末として、室温で長時間(>1年)保存することができる。対照的に、抗体は、冷蔵して保存しなければならない。
【0013】
アプタマーの本来の安定性に加えて、修飾されたヌクレオチド(例えば、2’−修飾されたヌクレオチド)(これは、安価であり、毒性はなく、そして酵素的、化学的、熱的、および物理的分解に対する抵抗性を高めることができる)を、2002年12月3日に提出された米国特許出願第10/729,851号、および2004年6月21に提出された米国特許出願第10/873,856号に記載されているような、SELEX(登録商標)法の間に取り込ませることができる。SELEX(登録商標)プロセスの間に修飾されたヌクレオチドを取り込ませることは、多くの場合に、SELEX(登録商標)選択の後に起こり得る結合親和性および活性の消失の可能性があるので、SELEX(登録商標)後の修飾に好ましいが、SELEX(登録商標)プロセスの間の修飾されたヌクレオチド(例えば、2’−O−メチルヌクレオチド(「2−OMe」)の取り込みは、少ない転写物量の理由から、歴史的に困難である。溶液の条件および転写混合物は、2002年12月3日に提出された米国特許出願第10/729,851号、および2004年6月21に提出された米国特許出願第10/873,856号に記載されている。これらによっては、2’−OMeヌクレオチドが取り込まれているアプタマーについて、改善された転写物量が得られている。しかし、完全に2’−O−メチル化されたアプタマーについての転写物量は依然として解決できていない。
【0014】
治療薬としてのアプタマーの利点に加えて、安価な性質、低い毒性、そしてアプタマーの中への2’−OMeヌクレオチドの取り込みにより付与された高いヌクレアーゼ耐性を前提とすると、例えば、インビボでのアプタマー治療薬の安定性を長くするまたは増大させるために、完全に2’−O−メチル化されたアプタマーの転写物量を増大させるための材料および方法を得ることが有効であろう。本発明により、これらと他の要件を満たす改良された材料と方法が提供される。
【非特許文献1】Tuckerら、J.Chromatography B.(1999)732:203−212
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発明の要旨)
本発明は、T7 RNAポリメラーゼに関する。これは、精製することができ、単離することができ、そして/また、組み換え体でもあり得る。本明細書中で使用される場合は、用語「単離された」には、細胞または組織の中で組み換えによって発現させられた、本発明のポリメラーゼを含む。本明細書中で使用される場合は、用語「単離された」には、細胞または組織の中に入るように操作された本発明の核酸配列を含む。1つの実施形態においては、639位と784位とに改変アミノ酸を含むT7 RNAポリメラーゼ(ここでは、784位の改変アミノ酸がアラニンである場合には、639の改変アミノ酸はフェニルアラニンではない)が提供される。別の実施形態においては、378位に改変アミノ酸がさらに含まれている上記T7 RNAポリメラーゼが提供される。別の実施形態においては、266位に改変アミノ酸がさらに含まれている上記T7 RNAポリメラーゼが提供される。特定の実施形態においては、639位の改変アミノ酸はロイシンであり、784位の改変アミノ酸はアラニンである。さらなる実施形態においては、266位の改変アミノ酸はロイシンである。さらなる実施形態においては、378位の改変アミノ酸はアルギニンである。
【0016】
好ましい実施形態においては、改変アミノ酸は、2’−OMeヌクレオチド三リン酸のみを含む転写反応においては、ポリメラーゼによる、2’−OMe修飾を含む核酸の転写量を増大させる。特定の実施形態においては、転写量の増大は、転写が、アミノ酸が変化させられたT7 RNAポリメラーゼと改変アミノ酸を欠くT7 RNAポリメラーゼの両方について同じ転写条件下で行われた場合の、改変アミノ酸を欠くT7 RNAポリメラーゼに対する比較である。別の実施形態においては、改変アミノ酸は、2’−Omeヌクレオチド三リン酸に対する識別を低下させる。特定の実施形態においては、2’−OMeヌクレオチド三リン酸の識別の低下は、両方のポリメラーゼが同じ転写条件下で使用された場合の、改変アミノ酸を欠くT7 RNAポリメラーゼに対する比較である。この態様の特定の実施形態においては、改変アミノ酸を欠くT7 RNAポリメラーゼは、639位のアミノ酸がフェニルアラニンに変化させられており、そして、784位のアミノ酸がアラニンに変更されている野生型のT7 RNAポリメラーゼ、または、639位でチロシンがフェニルアラニンで置換されており、そして784位のヒスチジンがアラニンで置換されており、そして378位のリジン残基がアルギニン残基で置換されていることを除いて野生型のアミノ酸配列を有する変異体ポリメラーゼ(Y639F/H784A/K378R)である。
【0017】
特定の実施形態においては、配列番号1、配列番号2、配列番号102、および配列番号103からなる群より選択されるアミノ酸を含む単離されたポリペプチドが提供される。特定の実施形態においては、本発明のT7 RNAポリメラーゼを含む容器を含むキットが提供される。
【0018】
いくつかの実施形態においては、一本鎖の核酸を転写する方法が提供され、これには、変異体T7 RNAポリメラーゼを鋳型核酸とともに、転写を生じるために十分な反応条件下でインキュベートする工程を含む。
【0019】
別の実施形態においては、本発明のポリペプチドをコードする単離された核酸が提供される。特定の実施形態においては、配列番号122、配列番号123、配列番号124、および、配列番号125からなる群より選択される核酸配列が提供される。いくつかの実施形態においては、本発明の単離された核酸配列を含むベクターが提供される。特定の実施形態においては、プロモーターに動作可能であるように連結された本発明の核酸を含む発現ベクターが提供される。本発明の別の実施形態においては、本発明の発現ベクターを含む細胞が提供される。特定の実施形態においては、本発明の変異体T7 RNAポリメラーゼがその細胞によって発現される細胞が提供される。いくつかの実施形態においては、本発明のT7 RNAポリメラーゼをコードする核酸を含む容器を含むキットが提供される。
【0020】
別の実施形態においては、完全な2’−OMe核酸を転写する方法が提供される。この方法には以下の工程を含む:a)鋳型核酸を反応混合物中で、変異体RNAポリメラーゼ、核酸転写鋳型、およびヌクレオシド三リン酸を含む条件下でインキュベートする工程であって、ここでは、ヌクレオシド三リン酸は2’OMeである工程;ならびに、b)一本鎖の核酸が得られるように転写反応混合物を転写する工程であって、ここでは、転写物の最初のヌクレオチドを2’修飾され得ないことを除いて、一本鎖核酸のヌクレオチドの全てが2’−OMe修飾される工程。いくつかの実施形態においては、転写物の最初のヌクレオシドは2’−OHグアノシンであり得る。この方法のいくつかの実施形態においては、変異体RNAポリメラーゼは、639位と784位とに改変アミノ酸を含む変異体T7 RNAポリメラーゼであり、具体的には、784位の改変アミノ酸がアラニンである場合には、639位の改変アミノ酸はフェニルアラニンではない、639位と784位とに改変アミノ酸を含むT7 RNAポリメラーゼ)であり、特に、378位に改変アミノ酸、および/または266位に改変アミノ酸がさらに含まれているT7 RNAポリメラーゼである。特定の実施形態においては、本発明の方法で使用されるポリメラーゼにおいては、639位の改変アミノ酸はロイシンであり、784位の改変アミノ酸はアラニンである。さらなる実施形態においては、266位の改変アミノ酸は、本発明の方法で使用されるポリメラーゼについては、ロイシンである。さらなる実施形態においては、378位の改変アミノ酸は、本発明の方法で使用されるポリメラーゼについては、アルギニンである。特定の実施形態においては、配列番号1、配列番号2、配列番号102、および配列番号103からなる群より選択されるアミノ酸を含む単離されたポリペプチドが提供される。
【0021】
本発明の方法のいくつかの実施形態においては、転写反応には、さらにマグネシウムイオンを含む。別の実施形態においては、転写反応には、マンガンイオンがさらに含まれる。別の実施形態においては、マグネシウムイオンは、マンガンイオンよりも3.0から3.5倍高い濃度で、転写反応の中に存在する。個々のヌクレオチド三リン酸が1.0mMの濃度で転写反応の中に存在する別の実施形態においては、マグネシウムイオンの濃度は6.5mMであり、マンガンイオンの濃度は2.0mMである。個々のヌクレオチド三リン酸が1.5mMの濃度で転写反応の中に存在する別の実施形態においては、マグネシウムイオンの濃度は8mMであり、マンガンイオンの濃度は2.5mMである。個々のヌクレオチド三リン酸が2.0mMの濃度で転写反応の中に存在する別の実施形態においては、マグネシウムイオンの濃度は9.5mMであり、マンガンイオンの濃度は3.0mMである。
【0022】
別の実施形態においては、転写反応にはさらに、非2’−OMeグアノシン非三リン酸残基(具体的には、以下からなる群より選択される非2’−OMeグアノシン非三リン酸残基:グアノシン一リン酸、グアノシンニリン酸、2’−フルオログアノシン一リン酸、2’−フルオログアノシン二リン酸、2’−アミノグアノシン一リン酸、2’−アミノグアノシンニリン酸、2’−デオキシグアノシン一リン酸、および2’−デオキシグアノシンニリン酸)を含む。別の実施形態においては、転写鋳型には、T7 RNAポリメラーゼプロモーターを含む。別の実施形態においては、転写反応にはさらに、ポリエチレングリコールを含む。別の実施形態においては、転写反応には、無機ピロホスファターゼを含む。
【0023】
本発明の別の態様においては、アプタマーを同定するための方法が提供される。1つの実施形態においては、以下の工程を含む、アプタマーを同定するための方法が提供される:a)本発明の変異体ポリメラーゼ、および1種類以上の核酸転写鋳型を含む転写反応混合物を調製する工程、b)転写反応混合物を転写して、一本鎖の核酸の候補混合物を得る工程であって、ここでは、一本鎖の核酸のヌクレオチドのうち、必要に応じて1つを除く全てが2’修飾される工程、c)候補混合物を標的分子と接触させる工程、d)候補混合物から、候補混合物の親和性と比較して、標的分子に対して高い親和性を有する核酸を分ける工程、ならびに、e)高い親和性を有する核酸を増幅して、アプタマーを多く含む混合物を得る工程であって、ここでは、アプタマーの最初のヌクレオチドを2’修飾され得ないことを除き、標的分子に対する得プタマーに全て2’修飾されたヌクレオチドを含む工程。いくつかの実施形態においては、増幅工程f)には、(i)必要に応じて、標的に由来する親和性が高い核酸を解離させる工程、ii)核酸−標的複合体から解離した親和性が高い核酸を逆転写する工程、iii)逆転写された親和性が高い核酸を増幅する工程;ならびに、(ii)転写鋳型として増幅かつ逆転写された親和性が高い核酸を含む転写反応混合物を調製し、そして転写混合物を転写する工程を含む。
【0024】
本発明のアプタマーの同定方法のいくつかの実施形態においては、変異体RNAポリメラーゼは、639位と784位とに改変アミノ酸を含む変異体T7 RNAポリメラーゼであり、特に、639位と784位とに改変アミノ酸が含まれており、784位の改変アミノ酸がアラニンである場合には639位の改変アミノ酸はフェニルアラニンではないT7 RNAポリメラーゼであり、特に、378位に改変アミノ酸および/または266位に改変アミノ酸がさらに含まれているT7 RNAポリメラーゼである。特定の実施形態においては、本発明の方法で使用されるポリメラーゼにおいては、639位の改変アミノ酸はロイシンであり、784位の改変アミノ酸はアラニンである。さらなる実施形態においては、266位の改変アミノ酸は、本発明の方法で使用されるポリメラーゼについてはロイシンである。さらなる実施形態においては、378位の改変アミノ酸は、本発明の方法で使用されるポリメラーゼについてはアルギニンである。特定の実施形態においては、配列番号1、配列番号2、配列番号102、および配列番号103からなる群より選択されるアミノ酸を含む単離されたポリペプチドが、本発明のアプタマーの同定方法において使用される。
【0025】
いくつかの実施形態においては、転写反応の中のヌクレオチド三リン酸は全て、2’−OMe修飾される。1つの実施形態においては、1つ以上の核酸転写鋳型にはT7 RNAポリメラーゼプロモーターが含まれ、そしてリーダー配列は、T7 RNaポリメラーゼプロモーターのすぐ3’側にある。この態様のいくつかの実施形態においては、この方法には、工程a)からe)を反復して繰り返す工程を含む。
【0026】
本発明のアプタマーの同定方法のいくつかの実施形態においては、転写反応にはさらに、マグネシウムイオンを含む。別の実施形態においては、転写反応には、マンガンイオンがさらに含まれる。別の実施形態においては、マグネシウムイオンは、マンガンイオンよりも3.0から3.5倍高い濃度で、転写反応の中に存在する。個々のヌクレオチド三リン酸が1.0mMの濃度で転写反応の中に存在する別の実施形態においては、マグネシウムイオンの濃度は6.5mMであり、マンガンイオンの濃度は2.0mMである。個々のヌクレオチド三リン酸が1.5mMの濃度で転写反応の中に存在する別の実施形態においては、マグネシウムイオンの濃度は8mMであり、マンガンイオンの濃度は2.5mMである。個々のヌクレオチド三リン酸が2.0mMの濃度で転写反応の中に存在する別の実施形態においては、マグネシウムイオンの濃度は9.5mMであり、マンガンイオンの濃度は3.0mMである。
【0027】
この態様の別の実施形態においては、本発明のアプタマーの同定方法において使用される転写反応にはさらに、非2’−OMeグアノシン非三リン酸残基(特に、以下からなる群より選択される非2’−OMeグアノシン非三リン酸残基:グアノシン一リン酸、グアノシンニリン酸、2’−フルオログアノシン一リン酸、2’−フルオログアノシン二リン酸、2’−アミノグアノシン一リン酸、2’−アミノグアノシンニリン酸、2’−デオキシグアノシン一リン酸、および2’−デオキシグアノシンニリン酸)を含む。別の実施形態においては、転写鋳型には、T7 RNAポリメラーゼプロモーターを含む。別の実施形態においては、転写反応にはさらに、ポリエチレングリコールを含む。別の実施形態においては、転写反応には、無機ピロホスファターゼを含む。
【0028】
本発明はまた、特異的転写のための核酸鋳型の成分配列を選択する方法にも関する。1つの実施形態においては、成分配列は、鋳型特異的転写の転写物量を増大させる。特定の実施形態においては、本発明は、転写物量を増大させるためのリーダー配列を選択する方法、およびリーダー配列に対して、リーダー配列を含む核酸鋳型、および、本発明のリーダー配列と核酸鋳型を使用する方法に関する。本発明はまた、新規の変異体ポリメラーゼ、および転写におけるそれらの使用、特に、2’修飾されたヌクレオチドが取り込まれている(より具体的には、取り込まれているヌクレオチドの全てが2’修飾されている、例えば、2’−OMeである場合)転写物量を増大させるためのその使用にも関する。本発明はまた、転写物量を増大させるための改良された転写反応条件にも関する。本発明は、具体的には、上記の態様の2つおよび3つの組み合わせ、具体的には転写物の最初のヌクレオチド以外の全てが2’修飾、具体的には、2’−OMe修飾されている転写物(「完全なる2’−OMe」または「mRmY」または「MNA」転写物)の量を改善することに関する。
【0029】
本発明の第1の態様の1つの実施形態においては、転写を促進するための核酸鋳型成分配列を同定する方法が提供される。この方法には、以下の工程を含む:a)転写鋳型の候補のライブラリーを調製する工程であって、ここでは、鋳型には、プロモーター、プロモーターのすぐ3’側にある第1の固定された領域、第1の固定された領域のすぐ3’側にある縮重領域、および縮重領域の3’側にある第2の固定された領域を含む工程;b)転写反応において転写鋳型の候補のライブラリーを転写して、転写物のライブラリーを得る工程;c)転写混合物を逆転写して、cDNAの候補混合物を得る工程であって、ここでは、cDNA鋳型には5’末端と3’末端を含む工程;d)連結反応において、プロモーターをコードするDNA配列をcDNA鋳型の3’末端に連結する工程;e)cDNA鋳型を増幅して、転写鋳型の候補のライブラリーを得る工程;ならびに、f)転写鋳型の候補のライブラリーからの転写を増強するための核酸配列成分を同定する工程であって、ここでは、核酸配列成分には、縮重領域の少なくとも一部に由来する配列を含む工程。本発明のこの方法の1つの実施形態においては、工程f)には、i)個々の転写鋳型に転写鋳型の候補のライブラリーをクローニングする工程;ii)転写反応において個々の転写鋳型を転写して、転写物の量を得る工程;iii)個々の転写鋳型の転写物量を評価する工程;ならびに、iv)所定の転写物量を生じる転写鋳型中の核酸配列成分を同定する工程。本発明のこの方法の特定の実施形態においては、所定の転写物量は、転写鋳型の候補混合物を転写することにより工程b)で得られる転写物量よりも多い量である。
【0030】
本発明のこの方法の別の実施形態においては、工程f)には、転写鋳型の候補のライブラリーの縮重領域の塩基組成を分析する工程、および転写鋳型の候補のライブラリーの平均の塩基組成に基づいて核酸配列成分を同定する工程を含む。
【0031】
本発明のこの態様のいくつかの実施形態においては、この方法の工程b)にはさらに、転写された転写混合物をDNaseで処理する工程が府生まれる。本発明のこの方法のさらなる実施形態においては、工程b)にはさらに、転写された転写混合物を、転写された転写鋳型を転写反応の他の成分から分けることによって精製する工程を含む。本発明のこの方法の特定の実施形態においては、精製工程には、転写反応物を脱塩カラムを通過させることによって、転写反応緩衝液を置換することを含む。
【0032】
本発明のこの態様の別の実施形態においては、この方法の工程d)には、工程c)の前に行われる。本発明のこの態様の別の実施形態においては、この方法には、工程f)が行われる前に、工程b)からe)を1回以上繰り返す工程を含む。
【0033】
本発明のこの態様のさらなる実施形態においては、連結反応は、添え木で支えられた連結反応(splinted ligation reaction)であり、この連結反応には、核酸である添え木と、プロモーターをコードする5’−一リン酸化オリゴヌクレオチドを含む。
【0034】
本発明のこの態様の特定の実施形態においては、この方法で使用される転写反応には、1つ以上の改変ヌクレオチド三リン酸と変異したポリメラーゼを含む。いくつかの実施形態においては、改変ヌクレオチド三リン酸は、2’改変ヌクレオチド三リン酸、特に、2’−OMe改変ヌクレオチド三リン酸である。いくつかの実施形態においては、変異したポリメラーゼは、変異したT7 RNAポリメラーゼである。いくつかの実施形態においては、本発明の方法において使用される転写反応には、マグネシウムイオンおよびマンガンイオン(Mn2+)が含まれ、変異したT7 RNAポリメラーゼは、配列番号1、配列番号2、配列番号100、および配列番号101からなる群より選択される。
【0035】
本発明のこの態様のいくつかの実施形態においては、マグネシウムイオンは、マンガンイオン(Mn2+)よりも3.0から3.5倍高い濃度で、転写反応の中に存在する。個々のヌクレオチド三リン酸が1.0mMの濃度で転写反応の中に存在する本発明のこの態様のさらなる実施形態においては、マグネシウムイオンの濃度は6.5mMであり、マンガンイオンの濃度は2.0mMである。個々のヌクレオチド三リン酸が1.5mMの濃度で転写反応の中に存在する本発明のこの態様のさらなる実施形態においては、マグネシウムイオンの濃度は8mMであり、マンガンイオンの濃度は2.5mMである。個々のヌクレオチド三リン酸が2.0mMの濃度で転写反応の中に存在する本発明のこの態様のなおさらなる実施形態においては、マグネシウムイオンの濃度は9.5mMであり、マンガンイオンの濃度は3.0mMである。この方法のいくつかの実施形態においては、転写反応にはさらに、ポリアルキレングリコール、特に、ポリエチレングリコールを含む。この方法のいくつかの実施形態、具体的には、完全なる2’−OMe転写物が所望される実施形態においては、転写反応にはさらに、以下からなる群より選択されるグアノシン残基を含む:グアノシン一リン酸、グアノシンニリン酸、2’−フルオログアノシン一リン酸または2’−フルオログアノシン二リン酸、2’−アミノグアノシン一リン酸または2’−アミノグアノシンニリン酸、2’−デオキシグアノシン一リン酸または2’−デオキシグアノシンニリン酸、あるいは他の修飾されたヌクレオチド。さらなる実施形態においては、本発明の方法の転写反応には、無機ピロホスファターゼを含む。さらなる実施形態においては、本発明の方法の転写反応には、必要に応じて、以下からなる群に由来する組み合わせを含む:緩衝液、界面活性剤(例えば、Triton X−100)、ポリアミン(例えば、スペルミンまたはスペルミジン)、および還元剤(例えば、DTTまたはβME)。なおさらなる実施形態においては、本発明の方法の転写反応には、ヌクレオチド三リン酸、マグネシウムイオン、マンガンイオン(例えば、Mn2+)、ポリエチレングリコール、グアノシン一リン酸、無機ピロホスファターゼ、緩衝液、界面活性剤、ポリアミン、およびDTT、ならびに1種類以上のオリゴヌクレオチド転写鋳型、ならびに、T7 RNAポリメラーゼ(例えば、変異体T7 RNAポリメラーゼ(配列番号1、2、100、および101からなる群より選択される変異体T7 RNAポリメラーゼ))を含む。
【0036】
本発明の同定方法のいくつかの実施形態においては、転写鋳型の候補のライブラリーの第1の固定された領域は、2個、3個、4個、または5個のグアノシン残基から構成される。本発明のいくつかの実施形態においては、転写鋳型の候補のライブラリーの縮重領域には、少なくとも4個、10個、20個、または30個のヌクレオチドを含む。
【0037】
この方法のいくつかの実施形態においては、同定される核酸鋳型成分配列はリーダー配列である。いくつかの実施形態においては、リーダー配列には第1の固定された領域と、転写鋳型の候補のライブラリーの縮重領域の少なくとも一部に由来する配列を含む。いくつかの実施形態においては、本発明の方法にはさらに、同定されたリーダー配列をオリゴヌクレオチド転写鋳型の中に取り込ませる工程を含む。
【0038】
本発明によってはまた、本発明の同定方法によって同定されたリーダー配列も提供される。いくつかの実施形態においては、本発明のリーダー配列には、配列番号10から99からなる群より選択される配列のいずれか1つの中のヌクレオチド22からヌクレオチド32までの核酸配列を含む。いくつかの実施形態においては、本発明のリーダー配列には、配列番号10〜99からなる群より選択される配列の任意の1つの中のヌクレオチド18からヌクレオチド32までの核酸配列を含む。本発明によってはまた、本発明のリーダー配列を含むオリゴヌクレオチド転写鋳型も提供される。特定の実施形態においては、本発明により、配列番号3から6、および配列番号106からなる群より選択されるオリゴヌクレオチド転写鋳型が提供される。
【0039】
本発明の別の態様においては、核酸の転写物量を増大させるための方法が提供され、ここでは、転写は、オリゴヌクレオチド転写鋳型によって行われる。本発明のこの態様のいくつかの実施形態においては、転写物量を増大させる方法には、リーダー配列を含むオリゴヌクレオチド転写鋳型を用いて転写を行う工程を含む。ここでは、リーダー配列は、それについての転写物量の増大が所望される転写反応において使用されるものと同じヌクレオチド組成および/またはポリメラーゼおよび/または条件を使用して、本発明の同定方法によって同定される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
(発明の詳細な説明)
本発明の1つ以上の実施形態の詳細が、以下の付随する記載に示される。本明細書中に記載されるものと類似する、または同等の任意の方法と材料を本発明の実施および試験において使用することができるが、好ましい方法および材料がここに記載される。本発明の他の特徴、目的、および利点は、記載から明らかであろう。明細書中では、単数形には、状況が別の場所に明確に示されていない限りは、複数形も含まれる。他の場所で定義されていない限りは、本明細書中で使用される全ての技術用語および学術用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。矛盾する場合には、本明細書が支配するであろう。
【0041】
SELEX(登録商標)法
アプタマーを作成するための好ましい方法は、図1に概要が示される「Systematic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment」(「SELEX(登録商標)」)と題されており、また、インビトロ選択とも呼ばれるプロセスを用いる。SELEX(登録商標)プロセスは、標的分子に対して高度に特異的な結合を用いた核酸分子のインビトロでの発達のための方法であり、例えば、1990年6月11日に提出された米国特許出願番号07/536,428(現在は放棄されている)、「Nucleic Acid Ligands」と題されている米国特許第5,475,096号、および「Nucleic Acid Ligands」と題されている米国特許第5,270,163号(WO91/19813もまた参照のこと)に記載されている。選択と増幅の反復サイクルを行うことにより、SELEX(登録商標)を使用してアプタマーを得ることができ、これは、本明細書中では、何らかの所望されるレベルの標的結合親和性を有する「核酸リガンド」とも呼ばれる。
【0042】
SELEX(登録商標)プロセスは、核酸が様々な二次元構造および三次元構造を形成する十分な能力と、実質的にあらゆる化合物(モノマーであるか、またはポリマーであるかには問わない)とともにリガンドとして作用する(すなわち、特異的な結合対を形成する)それらのモノマーにおいて利用できる十分な化学的多用途性を有するという、独自の見識に基づく。任意の大きさの分子または組成物を、標的とすることができる。
【0043】
SELEX(登録商標)プロセスは、標的に結合する能力に基づく。したがって、SELEX(登録商標)手順によって得られたアプタマーは、標的結合特性を有するであろう。しかし、珍しい標的結合は、もし存在するとしても、アプタマーの結合の作用によって標的に対して発揮されるであろう機能的作用に対して何の情報も提供しない。
【0044】
標的分子の特性の変更には、標的の特性を変化させるために、標的上の特定の位置に結合するアプタマーが必要である。理論的には、SELEX(登録商標)法によっては、多数のアプタマーの同定が生じる場合があり、この場合は、個々のアプタマーが標的上の異なる部位に結合する。実際には、アプタマー−標的結合相互作用は、多くの場合は、標的上の1つ、または比較的少数の好ましい結合部位で起こり、これによって、相互作用についての安定であり、利用しやすい構造界面が提供される。さらに、SELEX(登録商標)法が生理学的標的分子について行われる場合には、当業者は通常は、標的に対するアプタマーの位置を制御することはできない。したがって、標的上のアプタマー結合部位の位置は、所望される効果を導くことができるか、または標的分子に対して何の効果も有していない可能性のあるいくつかの結合部位の1つである場合も、またそのような部位ではない場合も、あるいは、そのような部位に近い場合もある。
【0045】
標的に結合するその能力により、アプタマーが効果を有することが明らかになっている場合にもなお、その効果の存在を予測する、または前もって効果があるかどうかを知る方法はない。SELEX(登録商標)実験を行うことにおいては、当業者は、一定の確実性で、標的に対するアプタマーを得ることができる限りは、そのアプタマーが標的結合の特性を有するであろうことを知ることだけが可能である。同定されたアプタマーのいくつかはまた、それに対する結合を上回る効果をもまた標的に対して有しているであろうという期待においてSELEX(登録商標)実験を行うことができるが、これは不明確である。
【0046】
SELEX(登録商標)プロセスは、ランダマイズされた配列を含む一本鎖オリゴヌクレオチドの大きなライブラリーまたはプールについての開始点に依存している。オリゴヌクレオチドは、修飾された、または未修飾のDNA、RNA、もしくはDNA/RNAハイブリッドであり得る。いくつかの例においては、プールには、100%縮重または部分縮重オリゴヌクレオチドを含む。他の例においては、プールには、ランダマイズされた配列の中に組み込まれた少なくとも1つの固定された配列および/または保存された配列を含む、縮重または部分縮重オリゴヌクレオチドを含む。他の例においては、プールには、その5’末端および/もしくは3’末端に少なくとも1つの固定された配列および/または保存された配列を含む縮重または部分縮重オリゴヌクレオチドを含む。これには、オリゴヌクレオチドプールの分子全てによって共有されている配列を含む場合がある。固定された配列は、予め選択された目的のために取り込まれている、プールの中のオリゴヌクレオチドに共通している配列であり、例えば、以下にさらに記載されるCpGモチーフ、PCRプライマーのためのハイブリダイゼーション部位、RNAポリメラーゼのためのプロモーター配列(例えば、T3、T4、T7、およびSP6)、制限部位、またはホモポリマー配列(例えば、ポリAもしくはポリT帯(tract)、触媒コア、アフィニティーカラムに対する選択的結合のための部位、転写を促進するリーダー配列、および目的のオリゴヌクレオチドのクローニングおよび/または配列決定を容易にするための他の配列である。保存されている配列は、同じ標的に結合する多数のアプタマーによって共有されている、先に記載された固定された配列以外の配列である。
【0047】
プールのオリゴヌクレオチドには、好ましくは、縮重配列部分ならびに効率的な増幅に不可欠な固定された配列を含む。通常、最初のプールのオリゴヌクレオチドには、30〜40個のランダムなヌクレオチドの内部領域に隣接している固定された5’末端配列と3’末端配列を含む。縮重ヌクレオチドは、化学合成、およびランダムに切断された細胞性の核酸からの大きさによる選択を含む多数の方法で生産することができる。試験核酸における配列のバリエーションもまた、選択/増幅の繰り返しの前または間に、突然変異誘発によって導入、または、増大させることができる。
【0048】
オリゴヌクレオチドの縮重配列部分は任意の長さであり得、これには、リボヌクレオチドおよび/またはデオキシリボヌクレオチドが含まれ得、そして修飾された、または自然界には存在しないヌクレオチドあるいはヌクレオチドアナログが含まれ得る。例えば、米国特許第5,958,691号;同第5,660,985号;同第5,958,691号;同第5,698,687号;同第5,817,635号;同第5,672,695号、ならびにPCT公開番号WO92/07065を参照のこと。縮重オリゴヌクレオチドは、当該分野で周知の固相オリゴヌクレオチド合成技術を使用してホスホジエステル結合ヌクレオチドから合成することができる。例えば、Froehlerら、Nucl.Acid Res.14:5399−5467(1986)およびFroehlerら、Tet.Lett.27:5575−5578(1986)を参照のこと。ランダムオリゴヌクレオチドはまた、液相方法(例えば、トリエステル合成法)を使用して合成することもできる。例えば、Soodら、Nucl.Acid Res.4:2557(1977)およびHiroseら、Tet.Lett.,28:2449(1978)を参照のこと。自動合成装置上で行われる典型的な合成によっては、1016〜1017個の個々の分子が生じ、この数は、ほとんどのSELEX(登録商標)実験について十分である。配列の設計における縮重配列の十分に大きな領域によって、個々の合成された分子が特有の配列を示す可能性が高まる。
【0049】
オリゴヌクレオチドの最初のライブラリーは、DNA合成装置上での自動的な化学合成によって作成することができる。縮重配列を合成するためには、4種類のヌクレオチド全ての混合物が、合成プロセスの間にそれぞれのヌクレオチドの付加工程で添加され、それによってヌクレオチドの確率論的な取り込みが可能となる。上記のように、1つの実施形態においては、ランダムオリゴヌクレオチドには、完全なる縮重配列を含む;しかし、他の実施形態においては、縮重オリゴヌクレオチドには、ランダムではないかまたは部分的にランダムな配列のストレッチが含まれ得る。部分的にランダムな配列は、個々の付加工程で、様々なモル比で4種類のヌクレオチドを添加することによって作成することができる。
【0050】
RNAライブラリーが最初のライブラリーとして使用されるそのような例においては、これは典型的には、DNAライブラリーを合成すること、必要に応じて、PCR増幅を行うこと、その後、T7 RNAポリメラーゼまたは修飾されたT7 RNAポリメラーゼを使用してインビトロでDNAライブラリーを転写すること、そして転写されたライブラリーを精製することによって作成される。RNAライブラリーまたはDNAライブラリーは、その後、結合に好ましい条件下で標的と混合され、そして結合親和性および選択性の実質的な任意の所望される基準を満たすための同じ一般的な選択スキームを使用して、結合相互作用、分離、および増幅の段階的な繰り返しに供される。より具体的には、核酸の最初のプールを含む混合物を用いて開始されるSELEX(登録商標)法には、以下の工程を含む:(a)結合に好ましい条件下で、混合物を標的と接触させる工程;(b)標的分子に特異的に結合したそのような核酸から結合していない核酸を分離する工程;(c)必要に応じて、核酸−標的複合体を解離させる工程;(d)核酸−標的複合体から解離した核酸を増幅して、リガンドが多く含まれている核酸の混合物を得る工程;ならびに、(e)標的分子に対する特異性が高く、親和性が高い、核酸リガンドを得るために所望されるサイクル数と同じサイクル数、結合、分離、解離、および増幅の工程を繰り返す工程。RNAアプタマーが選択される場合には、SELEX(登録商標)法にはさらに、以下の工程を含む:(i)工程(d)の増幅の前に、核酸−標的複合体から解離した核酸を逆転写する工程;および(ii)プロセスを繰り返す前に、工程(d)による増幅させられた核酸を転写する工程。
【0051】
多数の可能性のある配列および構造を含む核酸混合物においては、所定の標的に対する結合親和性は広範囲に及ぶ。例えば、20ヌクレオチドのランダマイズされたセグメントを含む核酸混合物は、420種類の候補の可能性を有し得る。標的に対して高い親和性(低い解離定数)を有するものが、標的に結合する可能性が最も高い。分離、解離、および増幅の後、第2の核酸混合物が作成され、高い結合親和性を有する候補について富化させられる。得られる核酸混合物が主にわずか1種類または数種類の配列だけから構成されるまで、さらなる回の選択が最良のリガンドに段階的に有利に働く。これらは、その後、クローニングされ、配列決定され、そして1)標的結合親和性および/または2)標的機能に影響を与える能力について、リガンドまたはアプタマーとして個々に試験される。
【0052】
選択および増幅のサイクルは、所望される目的が達成されるまで繰り返される。最も一般的な場合には、選択/増幅は、結合強度においてそれ以上の有意な改善が、サイクルを繰り返しても得られなくなるまで続けられる。この方法では、通常、およそ1014種類の様々な核酸種の試料をサンプリングするために使用されるが、これは、約1018種類の核酸種のような多い試料にも使用される場合がある。一般的には、核酸アプタマー分子は、5から20サイクルの手順で選択される。1つの実施形態においては、不均質性は、最初の選択段階にのみ導入され、反復プロセス全体を通じては行われない。
【0053】
SELEX(登録商標)法の1つの実施形態においては、選択プロセスは、選択された標的に対して最も強く結合するそのような核酸リガンドを単離することについては十分に効果的であり、ここでは、わずかに1回の選択と増幅のサイクルが必要である。このような効率的な選択は、例えば、クロマトグラフィー型のプロセスにおいて起こり得、この場合、カラム上に結合させられた標的と会合する核酸の能力は、カラムによって親和性が最も高い核酸リガンドを十分に分離および単離できるそのような様式で操作される。
【0054】
多くの場合には、1つの核酸リガンドが同定されるまでにSELEX(登録商標)の反復工程を行うことは、必ずしも所望されない。標的特異的核酸リガンドの溶液には、保存されている多数の配列と、標的に対する核酸リガンドの親和性に有意な影響を与えることなく置換または付加することができる多数の配列を有する核酸構造またはモチーフのファミリーが含まれ得る。完了する前にSELEX(登録商標)プロセスを終わらせることにより、核酸リガンドの溶液のファミリーの多数のメンバーの配列を決定することができる。
【0055】
様々な核酸の一次構造、二次構造、および三次構造が存在することが知られている。ワトソン−クリック型以外の相互作用に関係していることが最も一般的に示されている構造またはモチーフは、ヘアピンループ、対称および非対称隆起(bulge)、偽結節、およびそれらの無数の組み合わせと呼ばれる。そのようなモチーフのほぼ全ての明らかになっているケースは、それらが、30個を越えないヌクレオチドの核酸配列の中で形成され得ることを示唆している。この理由について、連続するランダマイズされたセグメントを用いるSELEX(登録商標)手順が、約20個から約50個の間のヌクレオチド、そしていくつかの実施形態においては、約30個から約40個の間のヌクレオチドのランダマイズされたセグメントを含む核酸配列を用いて開始されることが、多くの場合に好ましい。1つの例においては、5’−固定された:ランダム:3’−固定された配列には、約30個から約40個のヌクレオチドのランダムな配列を含む。
【0056】
コアSELEX(登録商標)(core SELEX(登録商標))法は、多数の特異的な目的を達成するために改良されている。例えば、米国特許第5,707,796号には、特異的な構造特性(例えば、湾曲したDNA)を有する核酸分子を選択するために、ゲル電気泳動と組み合わせてSELEX(登録商標)プロセスを使用することが記載されている。米国特許第5,763,177号には、標的分子に結合することができる、および/または標的分子を光架橋させることができる、および/または標的分子を光不活化させることができる光反応性の基を含む核酸リガンドを選択するための、SELEX(登録商標)をベースとする方法が記載されている。米国特許第5,567,588号および米国特許第5,861,254号には、これにより、標的分子に対して高い親和性を有するオリゴヌクレオチドと低い親和性を有するオリゴヌクレオチドを非常に効率よく分離することができるSELEX(登録商標)をベースとする方法が記載されている。米国特許第5,496,938号には、SELEX(登録商標)プロセスが行われた後に、改良された核酸リガンドを得るための方法が記載されている。米国特許第5,705,337号には、その標的に対してリガンドを共有結合させるための方法が記載されている。
【0057】
SELEX(登録商標)法はまた、標的分子上の1つ以上の部位に結合する核酸リガンドを得るため、および標的上の特異的な部位に結合する非核酸種を含む核酸リガンドを得るためにも使用することができる。SELEX(登録商標)法によっては、いずれかの予想される標的(核酸結合タンパク質のような大きい生体分子および小さい生体分子、ならびに、それらの生物学的機能の一部として核酸に結合することは知られていないタンパク質、ならびに補因子および他の低分子を含む)に結合する核酸リガンドを単離および同定するための手段が提供される。例えば、米国特許第5,580,737号には、カフェインおよび密接に関係しているアナログであるテオフィリンに対して高い親和性で結合することができる、SELEX(登録商標)法によって同定された核酸配列が開示されている。
【0058】
Counter−SELEX(登録商標)プロセスは、1つ以上の非標的分子に対して交差反応性を有する核酸リガンド配列を排除することにより、標的分子に対する核酸リガンドの特異性を改善するための方法である。Counter−SELEX(登録商標)プロセスには、以下の工程を含む:(a)核酸の候補混合物を調製する工程;(b)候補混合物を標的と接触させる工程であって、ここでは、候補混合物と比較して標的に対して高い親和性を有する核酸を、候補混合物の残りから分離することができる工程;(c)候補混合物の残りから高い親和性を有する核酸を分離する工程;(d)必要に応じて、高い親和性を有する核酸を標的から解離させる工程;(e)高い親和性を有する核酸を1つ以上の非標的分子と接触させる工程であって、その結果、非標的分子(単数または複数)に対して特異的な親和性を有する核酸リガンドが除去される工程;ならびに、(f)標的分子に対してのみ特異的な親和性を有する核酸を増幅して、標的分子に対して比較的高い親和性と結合特異性を有する核酸配列について富化させられた核酸の混合物を得る工程。SELEX(登録商標)法について上記に記載されたように、選択と増幅のサイクルは、所望される目的が達成されるまで、必要に応じて繰り返される。
【0059】
治療薬およびワクチンとしての核酸の使用において起こる可能性がある1つの問題点は、それらのホスホジエステル形態のオリゴヌクレオチドが細胞内酵素および細胞外酵素(例えば、エンドヌクレアーゼおよびエキソヌクレアーゼ)によって、所望される効果が発現される前に体液中で迅速に分解されてしまう可能性があることである。したがって、SELEX(登録商標)法には、リガンドに対して改善された特性(例えば、改善されたインビボでの安定性または改善された送達特性)を付与する修飾されたヌクレオチドを含む親和性が高い核酸リガンドの同定を含む。このような修飾の例としては、糖および/またはリン酸および/または塩基部分での化学的置換が挙げられる。修飾されたヌクレオチドを含むSELEX(登録商標)によって同定された核酸リガンドは、例えば、米国特許第5,660,985号(ここでは、リボースの2’位、ピリミジンの5位、およびプリンの8位が化学修飾されているヌクレオチド誘導体を含むオリゴヌクレオチドが記載されている)、米国特許第5,756,703号(ここでは、様々な2’−修飾されたピリミジンを含むオリゴヌクレオチドが記載されている)、および米国特許第5,580,737号(ここでは、2’−アミノ(2’−NH2)、2’−フルオロ(2’−F)、および/または2’−O−メチル(2’−OMe)置換で修飾された1つ以上のヌクレオチドを含む特異性が高い核酸リガンドが記載されている)に記載されている。
【0060】
本発明において意図される核酸リガンドの修飾としては、さらなる変化、極性、疎水性、水素結合、静電気相互作用、および流動特性を、核酸リガンドの塩基に、または核酸リガンド全体に取り込ませる他の化学基を提供するものが挙げられるが、これらに限定はされない。ヌクレアーゼに耐性である縮重オリゴヌクレオチドの集団に対する修飾としてはまた、1つ以上の代わりのヌクレオチド間結合、別の糖、別の塩基、またはそれらの組み合わせを挙げることができる。このような修飾としては、以下が挙げられるが、これらに限定はされない:2’位置での糖修飾、5位でのピリミジンの修飾、8位でのプリンの修飾、環外アミンでの修飾、4−チオウリジンの置換、5−ブロモウラシルもしくは5−ヨードウラシルの置換;骨格の修飾、ホスホロチオエート、またはアルキルホスフェート修飾、メチル化、ならびに、特有の塩基の対合の組み合わせ(例えば、イソ塩基(isobase)であるイソシチジンとイソグアノシン)。修飾にはまた、3’および5’修飾(例えば、キャッピング)も含まれ得る。修飾にはまた、3’および5’修飾も含まれ得、例えば、キャッピング、例えば、エキソヌクレアーゼ耐性を高めるための3’−3’−dTキャップの付加も含まれ得る(例えば、米国特許第5,674,685号;同第5,668,264号;同第6,207,816号;および同第6,229,002号を参照のこと、これらのそれぞれはそれらの全体が引用により本明細書中に組み入れられる)。
【0061】
1つの実施形態においては、P(O)O基がP(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、P(O)NR2(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR’、CO、またはCH2(「ホルムアセタール」)もしくは3’−アミン(−NH−CH2−CH2−)によって置き換えられているオリゴヌクレオチドが提供される。式中、RまたはR’はそれぞれ独立して、H、または置換されたもしくは未置換のアルキルである。結合基は、−O−、−N−、または−S−結合によって隣接するヌクレオチドに結合させることができる。オリゴヌクレオチド中の全ての結合が同じである必要ではない。
【0062】
さらなる実施形態においては、オリゴヌクレオチドには修飾された糖基を含む。例えば、ヒドロキシル基の1つ以上がハロゲン、脂肪族基で置き換えられるか、またはエーテルもしくはアミンとして機能化させられる。1つの実施形態においては、フラノース残基の2’位は、O−メチル、O−アルキル、O−アリル、S−アルキル、S−アリル、またはハロ基のいずれかによって置換される。2’−修飾された糖の合成方法は、例えば、Sproat,ら、Nucl.Acid Res.19:733−738(1991);Cotten,ら、Nucl.Acid Res.19:2629−2635(1991);および、Hobbs,ら、Biochemistry 12:5138−5145(1973)に記載されている。他の修飾は当業者に公知である。このような修飾は、SELEX(登録商標)プロセスの前の修飾である場合も、また、SELEX(登録商標)プロセスの後の修飾(以前に同定された未修飾のリガンドの修飾)である場合も、あるいは、SELEX(登録商標)プロセスに組み込むことによって作成される場合もある。
【0063】
SELEX(登録商標)プロセス前の修飾、またはSELEX(登録商標)プロセスに組み込むことによって作成されるものによっては、それらのSELEX(登録商標)標的についての特異性と、改善された安定性(例えば、インビボでの安定性)の両方を有する核酸リガンドが得られる。核酸リガンドに対するSELEX(登録商標)プロセス後の修飾(例えば、SELEX(登録商標)プロセスの前の修飾によって取り込ませられたヌクレオチドを有する以前に同定されたリガンドの短縮、欠失、置換、またはさらなるヌクレオチド修飾によっては、改善された安定性(例えば、核酸リガンドの結合能力に有害な影響を与えることのないインビボでの安定性)が生じ得る。必要に応じて、修飾されたヌクレオチドがSELEX(登録商標)プロセス前の修飾によって取り込まれているアプタマーは、さらに、SELEX(登録商標)プロセス後の修飾(すなわち、SELEX後のSELEX(登録商標)後修飾プロセス)によって修飾することができる。
【0064】
SELEX(登録商標)方法には、米国特許第5,637,459号および同第5,683,867号に記載されているように、他の選択されたオリゴヌクレオチドおよび非オリゴヌクレオチド機能単位と選択されたオリゴヌクレオチドを組み合わせることを含む。SELEX(登録商標)法にはさらに、例えば、米国特許第6,011,020号、同第6,051,698号、およびPCT公開番号WO98/18480に記載されているように、診断用または治療用複合体の中で、選択された核酸リガンドを親油性または非免疫原性の高分子量の化合物と混合する工程を含む。これらの特許および特許出願には、広範な形状と他の特性、オリゴヌクレオチドの効率的な増幅および複製の特性と、ならびに、他の分子の所望される特性との組み合わせが教示されている。
【0065】
SELEX(登録商標)法による小さい可撓性のペプチドに対する核酸リガンドの同定もまた、研究されている。小さいペプチドは可撓性の構造を有しており、通常は、複数の立体構造の平衡状態で溶液中に存在している。したがって、結合親和性が、可撓性のペプチドに結合すると立体構造のエントロピーが失われることによって制限される可能性があると最初は考えられた。しかし、溶液中での小さいペプチドに対する核酸リガンドの同定の実現可能性は、米国特許第5,648,214号において明らかにされた。この特許では、物質Pに対する親和性が高いRNA核酸リガンドである11アミノ酸のペプチドが同定された。
【0066】
SELEX(登録商標)プロセスの一部として、標的に結合するように選択された配列は、その後、必要に応じて、所望される結合親和性を有する最小配列を決定するために最小化させられる。選択された配列および/または最小化された配列は、必要に応じて、例えば、結合親和性を高めるために、あるいは、配列中のどの位置が結合活性に不可欠であるかを決定するために、配列のランダム突然変異または特異的突然変異をおこなうことによって修飾される。
【0067】
2’−修飾されたSELEX(登録商標)法
治療薬としての使用、および/または特定のタイプの診断薬に適しているアプタマーにするためには、合成が安価であること、インビボで安全であり、そして安定であることが好ましい。野生型RNAおよびDNAアプタマーは、通常、インビボでは安定ではない。これは、ヌクレアーゼによる分解に対するそれらの感度がその原因である。ヌクレアーゼによる分解に対する耐性は、2’位置での修飾基の取り込みによって大幅に高めることができる。
【0068】
2’−フルオロ基および2’−アミノ基は、オリゴヌクレオチドのプールの中にうまく取り込ませられており、続いて、ここからアプタマーが選択されている。しかし、これらの修飾によっては、得られるアプタマーの合成のコストも大幅に上昇してしまい、いくつかの場合には、修飾されたヌクレオチドが、修飾されたオリゴヌクレオチドの分解によって宿主DNAの中に再循環する場合があり、続いてヌクレオチドがDNA合成のために基質として使用されてしまう可能性の理由から、安全性についての懸念を生じる可能性がある。
【0069】
本明細書中で提供されるような2’−O−メチル(「2’−OMe」)ヌクレオチドを含むアプタマーによって、これらの欠点の多くが克服される。2’−OMeヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドはヌクレアーゼ耐性であり、合成は安価である。2’−OMeヌクレオチドは生物学的システムの至るところに存在しているが、自然界に存在しているポリメラーゼは生理学的条件下での基質としての2’−OMe NTPを受け取ることはなく、したがって、宿主DNAへの2’−OMeヌクレオチドの再循環に関する安全性の懸念はない。2’−修飾されたアプタマーを作成するために使用されるSELEX(登録商標)法は、例えば、2002年12月3日に提出された米国仮特許出願番号60/430,761、2003年7月15日に提出された米国仮特許出願番号60/487,474号、2003年11月4日に提出された米国仮特許出願番号60/517,039号、2003年12月3日に提出された米国特許出願番号10/729,581、および、「Method for in vitro Selection of 2’−O−methyl Substituted Nucleic Acids」と題された2004年6月21日に提出された米国特許出願番号10/873,856に記載されている。これらのそれぞれは、それらの全体が引用により本明細書中に組み入れられる。
【0070】
本発明には、アプタマーの標的に結合し、その機能を調節するアプタマーが含まれ、これには、酵素による分解および化学的分解、ならびに、熱的および物理的分解に対して未修飾のオリゴヌクレオチドよりも安定なオリゴヌクレオチドを作成するための、修飾されたヌクレオチド(例えば、2’−位置に修飾を有するヌクレオチド)を含む。文献(例えば、Ruckmanら、J.Biol.Chem.1998 273,20556−20567−695を参照のこと)の中には2’−OMeを含むアプタマーのいくつかの例があるが、これらは、修飾された転写物のライブラリーのインビトロでの選択によって作成されたものである。ここでは、C残基およびU残基は、2’−フルオロ(2’−F)置換されており、そしてA残基およびG残基は2’−OHである。一旦、機能的配列が同定されると、その後、A残基およびG残基はそれぞれ、2’−OMe置換に対する耐容性について試験された。2’−OMe残基としての2’−OMe置換を寛容化する全てのA残基とG残基を有するアプタマーが再度合成された。この2段階の様式で作成されたアプタマーのA残基とG残基のほとんどは、2’−OMe残基での置換を寛容化するが、平均するとおよそ20%は寛容化しない。結果として、この方法を使用して作成されたアプタマーは、2個から4個の2’−OH残基を含む傾向にあり、そして安定性および合成のコストは、結果として危うくなる。それからアプタマーが選択され、SELEX(登録商標)法(および/またはそのバリエーションのいずれかおよび改善(本明細書中に記載されるものを含む))によって富化させられるオリゴヌクレオチドのプールの中で使用される安定化させられたオリゴヌクレオチドを生じる転写反応に修飾されたヌクレオチドを取り込ませることによって、本発明の方法は、2’−OMeで修飾されたヌクレオチドを有するアプタマーオリゴヌクレオチドを再度合成することにより、選択されたアプタマーオリゴヌクレオチドを安定化させる必要性を排除する。
【0071】
1つの実施形態においては、本発明により、ATP、GTP、CTP、TTP、およびUTPヌクレオチドの2’−OH、2’−F、2’−デオキシ、および2’−OMe修飾の組み合わせを含むアプタマーが提供される。別の実施形態においては、本発明により、ATP、GTP、CTP、TTP、およびUTPヌクレオチドの2’−OH、2’−F、2’−デオキシ、2’−OMe、2’−NH2、および2’−メトキシエチル修飾の組み合わせを含むアプタマーが提供される。好ましい実施形態においては、本発明により、全て、または実質的に全てが2’−OMeで修飾されたATP、GTP、CTP、TTP、および/またはUTPヌクレオチドを含むアプタマーが提供される。
【0072】
修飾されたポリメラーゼ
本発明の2’−修飾されたアプタマーは、修飾されたポリメラーゼ(例えば、フラノースの2’位置にブチル置換を有する修飾されたヌクレオチドが一定の割合での取り込まれている(これは野生型ポリメラーゼよりも高い割合である)修飾されたT7ポリメラーゼを使用して作成される。例えば、639位のチロシン残基がフェニルアラニンに変化させられている変異体T7ポリメラーゼ(Y639F)は、2’デオキシ、2’アミノ、および2’−フルオロヌクレオチド三リン酸(NTP)を基質として容易に利用することができ、そして様々な用途について修飾されたRNAを合成するために広く使用されている。しかし、この変異体T7ポリメラーゼは、報告によると、ブチル2’置換基(例えば、2’−OMeまたは2’−アジド(2’−N3)置換基)を有するNTPを容易に利用する(すなわち取り込む)ことはできない。ブチル2’置換基の取り込みについては、Y639F変異に加えて、784位のヒスチジンがアラニン残基に変化させられている変異体T7ポリメラーゼ(Y639F/H784A)が記載されており、そして、修飾されたピリミジンNTPを取り込ませるための限られた状況において使用されている。Padilla,R.and Sousa,R.,Nucleic Acids Res.,2002,30(24):138を参照のこと。639位のチロシン残基がフェニルアラニンに変化させられており、784位のヒスチジン残基がアラニンに変化させられており、そして378位のリジン残基がアルギニンに変化させられている変異体T7RNAポリメラーゼ(Y639F/H784A/K378R)は、修飾されたプリンおよびピリミジンNTP(例えば、2’−OMe NTP)を取り込ませるための限られた状況において使用されているが、これには、転写のための2’−OH GTPのスパイクを含む。Burmeisterら、(2005)Chemistry and Biology,12:25−33を参照のこと。転写のための2’−OH GTPスパイクを含めることによって、完全なる2’−OMeではなく、むしろ、2’−OH GTPの存在に依存し得るアプタマーを得ることができる。
【0073】
784位のヒスチジンがアラニン残基に変化させられている変異体T7ポリメラーゼ(H784A)もまた記載されている。Padillaら、Nucleic Acids Research,2002,30:138。Y639F/H784A変異体T7ポリメラーゼおよびH784A変異体T7ポリメラーゼのいずれにおいても、アラニンのような小さいアミノ酸残基への変化によって、よりかさの大きいヌクレオチド基質(例えば、2’−OMe置換されたヌクレオチド)の取り込みが可能となる。Chelliserry,K.and Ellington,A.D.,(2004)Nature Biotech,9:1155−60を参照のこと。かさの大きい2’修飾された基質を容易に取り込む変異をT7 RNAポリメラーゼの活性部位の中に有しているさらに別のT7 RNAポリメラーゼが記載されている。例えば、639位のチロシン残基がロイシンに変化させられた変異体T7 RNAポリメラーゼ(Y639L)である。しかし、活性は、多くの場合は、このような変異によって付与される高い基質特異性を犠牲にし、それによって、転写物量の減少を導く。Padilla R and Sousa,R.,(1999)Nucleic Acids Res.,27(6):1561を参照のこと。T7 RNAポリメラーゼ変異体P266Lは、プロモーターのクリアランスを促進することが記載されている(Guillerezら、(2005)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,102(17)5958)。このポリメラーゼはプロモーターに結合している最初の立体構造から、プロモーターに結合していない伸張した立体構造への移行を生じる。上記の変異体ポリメラーゼはいずれも、完全なる2’−OMe転写物を生じることは報告されていない。
【0074】
本発明によっては、オリゴヌクレオチドの転写量を増大させるための材料と方法が提供される。1つの実施形態においては、本発明により、オリゴヌクレオチドの中に修飾されたヌクレオチドを酵素的に取り込ませるために、修飾されたT7 RNAポリメラーゼを使用するための方法および条件が提供される。好ましい実施形態においては、本発明の転写方法と共に使用される修飾されたT7 RNAポリメラーゼには、2’−OH GTPの存在は必要ない。好ましい実施態様においては、修飾されたポリメラーゼは、639位のチロシン残基がロイシン残基に変化させられており、784位のヒスチジン残基がアラニン残基に変化させられている変異体T7 RNAポリメラーゼ(Y639L/H784A)である。別の好ましい実施形態においては、修飾されたポリメラーゼは、639位のチロシン残基がロイシン残基に変化させられており、784位のヒスチジン残基がアラニン残基に変化させられており、そして378位のリジン残基がアルギニン残基に変化させられている変異体T7 RNAポリメラーゼ(Y639L/H784A/K378R)である。別の実施形態においては、本発明の方法で使用される修飾されたポリメラーゼは、639位のチロシン残基がロイシンに変化させられている変異体T7 RNAポリメラーゼ(Y639L)であるが、なお別の実施形態においては、変異体T7 RNAポリメラーゼは、639位のチロシン残基がロイシン残基に変化させられており、そして378位のリジン残基がアルギニン残基に変化させられている変異体T7 RNAポリメラーゼ(Y639L/K378R)である。いずれの理論にも束縛されることは望ましくないが、K378R変異は、ポリメラーゼの活性部位付近ではなく、したがって、サイレント変異であると考えられる。別の実施形態においては、本発明の方法において使用される修飾されたポリメラーゼは、266位のプロリン残基がロイシンに変化させられており、639位のチロシン残基がロイシンに変化させられており、そして784位のヒスチジン残基がアラニン残基に変化させられている変異体T7 RNAポリメラーゼ(P266L/Y639L/H784A)であるが、なお別の実施形態においては、変異体T7 RNAポリメラーゼは、266位のプロリン残基がロイシンに変化させられており、639位のチロシン残基がロイシン残基に変化させられており、784位のヒスチジン残基がアラニン残基に変化させられており、そして378位のリジン残基がアルギニン残基に変化させられている(P266L/Y639L/H784A/K387R)。
【0075】
変異体T7 RNAポリメラーゼのアミノ酸配列は以下に示される:
【0076】
【化1】
【0077】
【化2】
【0078】
【化3】
2’−修飾された(例えば、2’−OMe)RNA転写物のプールを、ポリメラーゼが2’−修飾されたNTPを受け取る条件下で作成するために、Y639F、Y639F/K378R、Y639F/H784A、Y639F/H784A/K378R、Y639L/H784A、Y639L/H784A/K378R、Y639L、Y639L/K378R、P266L/Y639L/H784A、またはP226L/Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを使用することができる。好ましいポリメラーゼは、Y369L/H784A変異体T7 RNAポリメラーゼである。別の好ましいポリメラーゼは、Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼである。本発明の別の好ましいポリメラーゼは、P266L/Y639L/H784A変異体T7 RNAポリメラーゼまたはP266L/Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼである。他のT7 RNAポリメラーゼ(具体的には、かさの大きい2’置換基について高い慣用性を示すもの)もまた、本発明の方法において使用することができる。本明細書中に開示される条件が使用される鋳型特異的重合に使用される場合は、Y639L/H784A、Y639L/H784A/K378R、P266L/Y639L/H784A、またはP266L/Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを、全ての2’−OMe NTP(2’−OMe GTPを含む)の取り込みのために使用することができ、これには、Y639F、Y639F/K378R、Y639F/H784A、Y639F/H784A/K378R、Y639L、またはY639L/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを使用して得られるよりも多い転写物量が伴う。Y639L/H784A、Y639L/H784A/K378R、P266L/Y639L/H784A、またはP266L/Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼは、多量の2’−修飾(例えば、2’−OMe)を含むオリゴヌクレオチドを得るために使用することができるが、これには、2’−OH GTPは必要ではない。
【0079】
好ましい実施形態においては、本発明のY639L/H784A変異体T7 RNAポリメラーゼまたはY639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼは、多量の完全なる2’−OMe転写物量を促進するために、MNA転写混合物と共に使用される。いくつかの実施形態においては、Y639L/H784A変異体T7 RNAポリメラーゼまたはY639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼは、rRmY、dRmY、rGmH、fGmH、dGmH、dAmB、rRdY、dRdY、またはrN転写混合物と共に使用される場合もある。
【0080】
本明細書中で使用される場合は、2’−OMe A、G、C、およびU三リン酸のみを含む転写混合物はMNA混合物と呼ばれ、それから選択されたアプタマーはMNAアプタマーと呼ばれ、これには、2’−O−メチルヌクレオチドだけを含む。2’−OMe CおよびUと、2’−OH AおよびGを含む転写混合物は「rRmY」混合物と呼ばれ、それから選択されたアプタマーは「rRmY」アプタマーと呼ばれる。デオキシAおよびGと、2’−OMe UおよびCを含む転写混合物は「dRmY」混合物と呼ばれ、それから選択されたアプタマーは「dRmY」アプタマーと呼ばれる。2’−OMe A、C、およびUと、2’−OH Gを含む転写混合物は「dGmH」混合物と呼ばれ、それから選択されたアプタマーは「dGmH」アプタマーと呼ばれる。2’−OMe A、C、U、およびGと、2’−OMe A、U、およびCと2’−F Gが交互に含まれている転写混合物は「オルタネイティング混合物」と呼ばれ、それから選択されたアプタマーは「オルタネイティング混合物」アプタマーと呼ばれる。2’−OMe A、U、およびCと、2’−F Gを含む転写混合物は「fGmH」混合物と呼ばれ、それから選択されたアプタマーは「fGmH」アプタマーと呼ばれる。2’−OMe A、U、およびCと、デオキシGを含む転写混合物は「dGmH」混合物と呼ばれ、それから選択されたアプタマーは「dGmH」アプタマーと呼ばれる。デオキシAと、2’−OMe C、G、およびUを含む転写混合物は「dAmB」混合物と呼ばれ、それから選択されたアプタマーは「dAmB」アプタマーと呼ばれる。2’−OH Aと、2’−OMe C、G、およびUを含む転写混合物は「rAmB」混合物と呼ばれ、それから選択されたアプタマーは「rAmB」アプタマーと呼ばれる。2’−OHアデノシン三リン酸およびグアノシン三リン酸と、デオキシシチジン三リン酸およびチミジン三リン酸を含む転写混合物は「rRdY」混合物と呼ばれ、それから選択されたアプタマーは「rRdY」アプタマーと呼ばれる。全てが2’−OHヌクレオチドである転写混合物は「rN」混合物と呼ばれ、それから選択されたアプタマーは「rN」、「rRrY」、またはRNAアプタマーと呼ばれる。そして、全てがデオキシヌクレオチドである転写混合物は「dN」混合物と呼ばれ、それから選択されたアプタマーは「dN」、または「dRdY」、またはDNAアプタマーと呼ばれる。
【0081】
2’−修飾されたオリゴヌクレオチドは、全てが修飾されたヌクレオチドから合成される場合も、また、修飾されたヌクレオチドのサブセットを有する場合もある。全てのヌクレオチドを修飾することができ、そして全てが同じ修飾を含む場合もある。全てのヌクレオチドは修飾することができるが、様々な修飾を含む場合がある。例えば、同じ塩基を含む全てのヌクレオチドは、1つの修飾のタイプを有することができ、一方、他の塩基を含むヌクレオチドは異なるタイプの修飾を有することができる。全てのプリンヌクレオチドは1つのタイプの修飾を有することができ(または、未修飾である)、一方、全てのピリミジンヌクレオチドは別の異なるタイプの修飾を有することができる(または、未修飾である)。この様式では、転写物、または転写物のプールは、修飾の任意の組み合わせ(例えば、リボヌクレオチド(2’−OH)、デオキシリボヌクレオチド(2’−デオキシ)、2’−F、および2’−OMeヌクレオチドを含む)を使用して作成される。さらに別の修飾されたヌクレオチドには、1つ以上の修飾を同時に有しているヌクレオチド(例えば、ヌクレオチド間結合(例えば、ホスホロチオエート)での修飾と、糖(例えば、2−OMe)と塩基(例えば、イノシン)での修飾)が含まれ得る。
【0082】
転写条件
多数の要因が、2’−修飾されたSELEX(登録商標)法の転写条件に重要であることが決定されている。これはまた、以下に記載されるTerminal Region SELEX法に適用することもできる。例えば、修飾された転写物の量の増大が、特定のリーダー配列/変異体ポリメラーゼの組み合わせが使用されるいくつかの条件下で観察され得る。リーダー配列は、DNA転写鋳型の5’末端にある固定された配列の3’末端に取り込ませることができる配列である。リーダー配列は、通常、6〜15ヌクレオチドの長さであり、所定のヌクレオチド組成から構成され得る。例えば、これは、全てがプリンである場合も、また、プリンヌクレオチドとピリミジンヌクレオチドの特定の混合物である場合もある。
【0083】
変異体ポリメラーゼと本発明の転写条件とともに使用することができる鋳型の例(具体的には、Y639L/H784A、Y639L/H784A/K378R、P266L/Y639L/H784A、またはP266L/Y639L/H784A/K378Rとの組み合わせ)は、ARC2118(配列番号3)、ARC2119(配列番号4)、およびARC3428
【0084】
【化4】
である。
【0085】
加えて、2’−OH GTPの存在は、歴史的に、修飾されたヌクレオチドが取り込まれている転写物を得ることにおいて重要な要因である。転写は2つの期に分けることができる:第1期は開始期であり、この間に、NTPがGTPの3’−末端(または別の置換されたグアノシン)に付加されて、ジヌクレオチドが得られ、これは次いで、約10〜12ヌクレオチドに伸張させられる;第2期は伸張期であり、この間に、転写が最初の約10〜12ヌクレオチドの付加を超えて進行する。Y639F/K378R変異体またはY639F/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼと過剰の2’−OMe GTPを含む転写混合物に対して添加された少量の2’−OH GTPは、ポリメラーゼが2’−OH GTPを使用する転写を開始できるようにする(そして、2’−OH GTPを用いない場合よりも多量の2’−OMeを含む転写物を生じる)ために十分であったが、一旦転写が伸張期に入ると、2’−OMeと2’−OH GTPの間での識別の低さと、2’−OH GTPを上回る過剰の2’−OMe GTPによって、主に2’−OMe GTPの取り込みが可能となる。
【0086】
本発明により、変異体T7 RNAポリメラーゼ(例えば、Y639L/H784A、Y639L/H784A/K378R、P266L/Y639L/H784A、またはP266L/Y639L/H784A/K378R(これらは、多量の2’−OMe転写物を得るためには転写混合物中に2’−OH GTPは必要としない))が提供される。1つの実施形態においては、多量は、入力する転写鋳型あたりの平均の少なくとも1つの転写物を意味する。
【0087】
2’−OMeで置換されたヌクレオチドの転写物への取り込みにおける別の要因は、転写混合物中での2価のマグネシウムとマンガン(Mn2+)の両方の使用である。様々な濃度の塩化マグネシウムと塩化マンガンの様々な組み合わせが、2’−O−メチル化転写物の収量に影響を与えることが明らかにされており、塩化マグネシウムと塩化マンガンの最適濃度は、2価の金属イオンを錯化させるNTPの転写反応混合物中での濃度に依存する。完全なる2’−O−メチル化転写物(すなわち、全てが2’−OMe A、C、U、およびGヌクレオチド)の最大量を得るためには、個々のNTPが0.5mMの濃度で存在する場合には、およそ5mMの塩化マグネシウムと1.5mMの塩化マンガンの濃度が好ましい。個々のNTPの濃度が1.0mMである場合には、およそ6.5mMの塩化マグネシウムと2.0mMの塩化マンガンの濃度が好ましい。個々のNTPが1.5mMの濃度で存在する場合には、およそ8mMの塩化マグネシウムと2.5mMの塩化マンガンの濃度が好ましい。個々のNTPの濃度が2.0mMである場合には、およそ9.5mMの塩化マグネシウムと3.0mMの塩化マンガンの濃度が好ましい。いずれの場合には、2倍までのこれらの濃度から出発することによってもなお、有意な量の修飾された転写物が得られる。
【0088】
2’−OH GMP、グアノシン、または2’−OH糖部分以外の部位で置換された他の2’−OHグアノシンで転写を感作させることもまた、2’−OH GTPが含まれていない転写混合物については重要である。この効果は、ヌクレオチドを開始させるためのポリメラーゼの特異性によって生じる。結果として、この様式で作成された任意の転写物の5’−末端ヌクレオチドは、おそらく2’−OH Gである。GMP(またはグアノシン)の好ましい濃度は0.5mMであり、なおさらに好ましくは1mMである。転写反応物中にPEG、好ましくは、PEG−8000を含めることが、修飾されたヌクレオチドの最大の取り込みに有用であることもまた明らかになっている。
【0089】
転写物の中への2’−OMe ATP(100%)、2’−OMe UTP(100%)、2’−OMe CTP(100%)、および2’−OMe GTP(100%)(「MNA」)の最大の取り込みのためには、以下の条件を使用することができる:HEPES緩衝液200mM、DTT 40mM、スペルミジン2mM、PEG−8000 10%(w/v)、Triton X−100 0.01%(w/v)、MgCl2 8mM、MnCl2 2.5mM、2’−OMe NTP(それぞれ)1.5mM、2’−OH GMP、1mM(pH7.5)、Y369L/H784A/K378R変異体T7RNAポリメラーゼ 200nM、無機ピロホスファターゼ 5単位/ml、およびDNA鋳型。いくつかの実施態様においては、DNA鋳型は、好ましくは約5から500nMの濃度で存在し得る。必要に応じて、上記の転写条件と共に使用されるDNA鋳型には、両方の鋳型が同じ条件下で転写された場合に、そのようなリーダー配列が含まれていない鋳型と比較して転写量を増大させる、全てがプリンであるリーダー配列を含む。別の実施形態においては、リーダー配列は、プリンとピリミジンの混合物であり、これは、両方が同じ条件下で転写された場合に、そのようなリーダー配列が含まれていない鋳型と比較して転写量を増大させる。本明細書中で使用される場合は、1単位の無機ピロホスファターゼのは、pH7.2および25℃で1分あたりに1.0モルの無機オルトリン酸塩を遊離させるであろう酵素の量として定義される。反応は、約1から24時間行われ得る。
【0090】
個々の場合において、転写産物は、その後、SELEX(登録商標)プロセスへの投入のために使用されて、所定の標的に対する結合特異性を有するアプタマーを同定することができる、および/または保存されている配列を決定することができる。得られる配列はすでに安定化させられており、それによってSELEX(登録商標)後の修飾プロセスからこの工程が排除され、結果としてさらに高度に安定化させられたアプタマーが提供される。
【0091】
以下に記載されるように、2’置換されたヌクレオチドが完全に取り込まれている転写物の有用な量は、上記に記載される条件以外の条件下でも得ることができる。例えば、上記の転写条件についてのバリエーションとしては以下が挙げられる:
HEPES緩衝液の濃度は0から1Mまでの範囲であり得る。本発明によってはまた、5から10の間のpKaを有する他の緩衝物質(例えば、Tris−ヒドロキシメチル−アミノメタンを含む)の使用も意図される。
【0092】
DTT濃度は0から400mMの範囲であり得る。本発明の方法によってはまた、他の還元剤(例えば、メルカプトエタノールを含む)の使用も提供される。
【0093】
スペルミジンおよび/またはスペルミン濃度は0から20mMの範囲であり得る。
【0094】
PEG−8000濃度は、0から50%(W/v)の範囲であり得る。本発明の方法によってはまた、他の親水性ポリマー(例えば、他の分子量のPEGまたは他のポリアルキレングリコールを含む)の使用も提供される。
【0095】
Triton X−100濃度は、0から0.1%(w/v)の範囲であり得る。本発明の方法によってはまた、他の非イオン性界面活性剤(例えば、他のTriton−X界面活性剤を含む他の界面活性剤)の使用も提供される。
【0096】
MgCl2濃度は、0.5mMから50mMの範囲であり得る。MnCl2濃度は、0.15mMから15mMの範囲であり得る。MgCl2およびMnCl2はいずれも、記載される範囲で存在しなければならず、好ましい実施形態においては、約10から約3のMgCl2:MnCl2の割合で存在し、好ましくは、約3〜5:1の割合、より好ましくは約3〜4:1の割合である。
【0097】
2’−OMe NTP濃度(各NTP)は、5μMから5mMの範囲であり得る。
【0098】
2’−OH GTP濃度は、0μMから300μMの範囲であり得る。好ましい実施形態においては、転写は、2’−OH GTPが存在しない(0μM)条件で起こる。
【0099】
2’−OH GMP、グアノシン、または2’糖位置以外の位置で置換された2’−OH Gの濃度は、0から5mMの範囲であり得る。2’−OH GTPが反応に含まれない場合は、2’−OH GMPが必要であり、これは5μMから5mMの範囲であり得る。
【0100】
DNA鋳型濃度は、5nMから5μMの範囲であり得る。
【0101】
変異体ポリメラーゼ濃度は、2nMから20μMの範囲であり得る。
【0102】
無機ピロホスファターゼは0から100単位/mlの範囲であり得る。
【0103】
pHは、pH6からpH9の範囲であり得る。本発明の方法は、修飾されたヌクレオチドを取り込むほとんどのポリメラーゼの活性のpH範囲内で行うことができる。
【0104】
転写反応は約1時間から数週間、好ましくは、約1時間から約24時間生じることができる。
【0105】
加えて、本発明の方法により、例えば、EDTA、EGTA、およびDTTを含む転写反応においてキレート剤の状況に応じた使用が提供される。
【0106】
TERMINAL REGION SELEX(登録商標)法
いくつかの実施形態において鋳型特異的ヌクレオチド三リン酸の重合をプログラムするために使用される核酸転写鋳型配列の発見のための方法によっては、転写物量が増大させられ、これは、Terminal Region SELEX(登録商標)法(TR−SELEX(登録商標)法)として知られているSELEX(登録商標)法の変異形式である。本発明によっては、核酸転写鋳型成分配列(例えば、リーダー配列)を同定するための方法が提供され、その使用によって、転写物量、具体的には、TR−SELEX(登録商標)法を使用する鋳型特異的重合をプログラムするために使用される場合には、2’−修飾されたヌクレオチド(例えば、2’−OMeヌクレオチド)を含む転写物の量が増大する。
【0107】
2’−修飾されたヌクレオチドを含む転写物の量の増大を促進するリーダー配列を選択するために、オリゴヌクレオチド転写鋳型の候補のライブラリーが作成される。これには、鋳型依存性の様式での転写を可能にするプロモーター配列、添え木が当てられた連結を生じることができ、それによって、連結させられた鋳型上のプライマー結合部位に結合したプライマーの伸張による増幅を可能にするためのプロモーターのすぐ3’側にある1つ以上の固定されたヌクレオチドを含む第1の固定された領域;リーダー配列がそれから選択されるであろう縮重領域;および増幅を可能にするための3’末端に存在する固定された配列を含む。好ましい実施形態においては、ライブラリー鋳型の縮重領域は5’末端付近にあり、それによって5’固定された配列の長さが短くなる。
【0108】
転写鋳型のこのライブラリーは、必要に応じてPCR増幅させられ、その後、本明細書中に開示される条件下での、ポリメラーゼ(変異したT7 RNAポリメラーゼを含むがこれに限定はされない)、ヌクレオチド三リン酸(NTP)(1つ以上の2’−修飾されたNTPを含むがこれに限定はされない)、およびマグネシウムイオンを含む転写反応混合物を使用する転写を、プログラムするために使用される。得られる転写混合物は逆転写させられて、cDNAはいの候補混合物が得られ、これはその後、T7プロモーターをコードするDNA配列に連結させられる。必要に応じて、得られる転写混合物は最初に連結させられ、その後、逆転写させられる。転写物をコードするcDNAは、その後、PCRによって増幅させられ、クローンが、ゲル分析を使用して転写量についてアッセイされる。この様式で増幅させられた転写鋳型は、必要に応じて、さらに多量の転写物を得る必要がある場合には、さらなる回のTR−SELEX(登録商標)プロセスを行うために使用することができる(図2を参照のこと)。
【0109】
増幅させられた転写物のクローンの配列を分析して、転写(1つ以上の2’−修飾されたヌクレオチドが取り込まれている転写を含むが、これに限定はされない)を可能にする5’−リーダー配列エレメントを同定することができる。これらの5’リーダー配列エレメントは、2’−修飾されたヌクレオチドを含む核酸転写物の量の増大を促進するためにSELEX(登録商標)において使用することができるオリゴヌクレオチド転写鋳型の候補のライブラリーを設計するために有用である。TR−SELEX(登録商標)法によって同定された5’リーダー配列エレメント(下線で示される)が取り込まれており、そして、本明細書中に開示される条件を使用する2’−修飾されたヌクレオチド(例えば、2’−OMeヌクレオチド)を含むより転写物の量のさらなる増大を促進する好ましいDNA転写鋳型のライブラリーの例が以下に記載される。
【0110】
以下に列挙されるDNA転写鋳型のライブラリーの配列のそれぞれについて、5’リーダー配列エレメントは下線で示され、そして全ての配列は、5’−3’方向である。
【0111】
【化5】
2’−修飾された(例えば、2’−OMe)RNA転写物の転写混合物を、ポリメラーゼが2’−修飾されたNTPを受け取る条件下で作成するために、Y639F、Y639F/K378R、Y639F/H784A、Y639F/H784A/K378R、Y639L/H784A、Y639L/H784A/K378R、P266L/Y639L/H784A、またはP266L/Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを、本発明によって提供される方法によって同定された5’−リーダー配列とともに使用することができる。本発明の5’リーダー配列と共に使用される好ましいポリメラーゼは、2’−修飾されたヌクレオチドを含む最も多量の核酸転写物を提供する、先に記載されたY639L/H784A変異体RNAポリメラーゼである。本発明の5’−リーダー配列と共に使用される別の好ましいポリメラーゼは、Y639L/H784/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼである。他のT7 RNAポリメラーゼ、具体的には、かさの大きい2’−置換に高い慣用性を示すものもまた、本発明において使用することができる。
【0112】
候補のライブラリーの中にリーダー配列を取り込ませること、および2’−修飾されたヌクレオチドを含む核酸転写物の量の増大を促進する変異体ポリメラーゼ(例えば、Y639L/H784AおよびY639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼ)に加えて、転写条件に重要であることが決定されている上記の多数の要因を使用して、2’−修飾されたヌクレオチドを含む転写物の量をさらに増大させることができる。
【0113】
同定されたリーダー配列と、Y639F/H784A、Y639F/H784A/K378R、Y639L、Y639L/K378R、Y639L/H874A、Y639L/H874A/K378R、P266L/Y639L/H784A、またはP266L/Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを、2’−修飾されたヌクレオチド(例えば、ATP、GTP、CTP、TTP、およびUTPヌクレオチドの2’−OH、2’−F、2’−デオキシ、2’−OMe、および2’−NH2修飾)の任意の組み合わせを含むアプタマーを作成するために、本明細書中に記載される条件と共にSELEX(登録商標)において使用することができる。取り込まれている2’−修飾されたヌクレオチドは、好ましくは、2’−O−メチルヌクレオチドである。1つ以上の2’−O−メチルヌクレオチドを含むアプタマー組成物が好ましい。第1位のヌクレオチドを除き、100%の2’−O−プリンおよびピリミジンを含むアプタマー組成物が好ましい。1つの好ましい実施形態においては、同定されたリーダー配列の1つと、Y639L/H874A、Y639L/H784A/K378R、P266L/Y639L/H784A、またはP266L/Y639L/H784A/L378R変異体T7 RNAポリメラーゼが、完全なる2’−OMeヌクレオチドを含むさらに多量のアプタマーの転写物を生じるために、本明細書中に記載される条件と共にSELEX(登録商標)法において使用される。
【0114】
転写物への2’−OMe ATP(100%)、UTP(100%)、CTP(100%)、およびGTP(100%)(MNA)の最大の取り込みのためには、以下の条件が好ましい:HEPES緩衝液200mM、DTT 40mM、スペルミジン2mM、PEG−8000 10%(w/v)、Triton X−100 0.01%(w/v)、MgCl2 8mM、MnCl2 2.5mM、2’−OMe NTP(それぞれ)1.5mM、2’−OH GMP 1mM(pH7.5)、Y639L/H784A/K378R T7 RNAポリメラーゼ200nM、無機ピロホスファターゼ 5単位/ml、および誘導される転写条件下で転写量を増大させるリーダー配列。1つの実施形態においては、リーダー配列は、全てがプリンであるリーダー配列である。別の実施形態においては、リーダー配列は、プリンとピリミジンの混合物である。本明細書中で使用される場合は、1単位の無機ピロホスファターゼは、pH7.2および25℃で1分あたりに1.0モルの無機オルトリン酸塩を遊離させるであろう酵素の量として定義される。
【0115】
アプタマーの医薬品化学
一旦、所望される標的に結合するアプタマーが同定されると、いくつかの技術を、必要に応じて、同定されたアプタマーの配列の結合特性および/または機能的特性をさらに高めるために行うことができる。SELEX(登録商標)プロセス(例えば、2’−修飾されたSELEX(登録商標)法)によって同定された所望される標的に結合するアプタマー(例えば、MNAアプタマー)は、所望される結合特性および/または機能的特性を有する最小のアプタマー配列(本明細書中では「最小化された構築物」とも呼ばれる)を得るために、必要に応じて短縮させることができる。これを行うための1つの方法は、折り畳みプログラムおよび配列分析(例えば、保存されているモチーフおよび/または共変動を見るための選択によって得られるクローン配列をアラインメントすること)を使用して、最小化させた構築物の設計についての情報を得ることによる。生化学的プローブ実験もまた、最小化された構築物の設計についての情報を得るために、アプタマー配列の5’境界および3’境界を決定するために行うことができる。最小化された構築物は、その後、化学合成することができ、そしてそれらが由来する最小化されていない配列と比較して、結合特性および機能的特性について試験される。5’、3’、および/または内部欠失のシリーズを含むアプタマー配列の変異体もまた、直接化学的に合成することができ、それらが由来する最小化されていないアプタマー配列と比較して、結合特性および/または機能的特性について試験される。
【0116】
加えて、ドープされた(doped)再選択が、MNAアプタマーのような1つの活性のあるアプタマー配列(例えば、SELEX(登録商標)プロセス(2’−修飾されたSELEX(登録商標)プロセスを含む)によって同定された、所望される標的に結合するアプタマー)、または1つの最小化されたアプタマー配列の中での配列要件を研究するために使用される場合がある。ドープされた再選択は、目的の1つの配列に基づいて設計された合成の縮重プールを使用して行われる。縮重のレベルは、通常、野生型のヌクレオチド(すなわち、目的の1つの配列)とは70%から85%異なる。一般的には、自然界での変異を有する配列は、ドープされた再選択プロセスによって同定されるが、いくつかの場合には、配列の変化は親和性の改善を生じる。ドープされた再選択を使用して同定されたクローンによる複合配列情報は、次いで、最小結合モチーフを同定するために使用することができ、そして医薬品化学の研究を助けることができる。
【0117】
SELEX(登録商標)プロセス(2’−修飾されたSELEXプロセスおよびドープされた再選択を含む)を使用して同定されたアプタマー配列(例えば、MNAアプタマー)、および/または最小化されたアプタマー配列もまた、結合親和性および/または機能的特性を高めるための配列のランダム変異誘発または特異的変異誘発を行うため、あるいは、配列中のどの位置が結合活性および/または機能的特性に不可欠であるかを決定するために、アプタマーの医薬品化学(Aptermer Medicinal Chemistry)を使用する、必要に応じて修飾されたSELEX(登録商標)選択であり得る。
【0118】
アプタマーの医薬品化学はアプタマー改良技術であり、ここでは、変異体アプタマーのセットが化学合成される。これらの変異体のセットは、通常、1つの置換の導入によってもとのアプタマーとは異なり、そして、この置換の位置によって互いに異なる。その後、これらの変異体は互いに、そしてもとのものと比較される。特性の改良は、1つの置換を含めることが、特定の治療基準を満たすために必要なことの全てであり得ることが十分に確信される。
【0119】
あるいは、1変異体のセットから集められた情報は、1つ以上の置換が同時に導入された、変異体の更なるセットを設計するために使用することができる。1つの設計ストラテジーにおいては、1置換変異体は全て順位化され、上位の4つが選択され、これらの4つの1置換変異体の可能な二重(6種類)、三重(4種類)、および四重(1種類)の組み合わせ全てが合成され、アッセイされる。第2の設計ストラテジーにおいては、最上位の1置換変異体が新しい親と見なされ、この最高位に順位化された1置換変異体を含む、全ての可能な二重置換変異体が合成され、アッセイされる。他のストラテジーが使用される場合もあり、そしてこれらのストラテジーは、さらに改良された変異体が同定されることが続けられつつ、置換の数が段階的に増えるように繰り返して適用することができる。
【0120】
アプタマーの医薬品化学は、具体的には、置換の広範囲ではなく局所への導入を研究するための方法として使用され得る。アプタマーは、転写によって作成されるライブラリーの中で発見されるので、SELEX(登録商標)プロセスの間に導入される任意の置換は広範囲に導入されなければならない。例えば、ヌクレオチド間にホスホロチオエート結合を導入することが所望される場合には、これらは、全てのAにだけ(または全てのG、C、T、Uなど)導入することができる(広範囲で置換される)。いくつかのA(またはいくつかのG、C、T、Uなど)にホスホロチオエートを必要とする(局所的に置換された)が、他のAではこれを寛容化できないアプタマーは、このプロセスによって容易に発見することができる。
【0121】
アプタマーの医薬品化学プロセスによって利用することができる置換基の種類は、固相合成試薬としてそれらを作成し、そしてそれらをオリゴマー合成スキームに導入する能力によってのみ、制限される。このプロセスは、必ずしもヌクレオチドのみに限定されない。アプタマーの医薬品化学のスキームには、立体的大きさ、疎水性、親水性、親油性、疎油性、正電荷、負電荷、中性電荷、双性イオン、極性、ヌクレアーゼ耐性、立体構造の剛性、立体構造の可撓性、タンパク質結合特性、質量などを導入する置換が含まれ得る。アプタマーの医薬品化学のスキームには、塩基修飾、糖修飾、またはホスホジエステル結合修飾を含む場合がある。
【0122】
治療用のアプタマーの状況で有用であろう置換基の種類を考える場合には、以下のカテゴリーの1つ以上に入る置換基を導入することが所望され得る:
(1)体内にすでに存在している置換基、例えば、2’−でオキシ、2’−リボ、2’−メチルプリンもしくはピリミジン、または5−メチルシトシン。
【0123】
(2)承認されている治療薬のすでに一部である置換基、例えば、ホスホロチオエート結合させられたオリゴヌクレオチド。
【0124】
(3)上記の2つのカテゴリーの1つになるように加水分解されるかまたは分解される置換基、例えば、メチルホスホネート結合させられたオリゴヌクレオチド。
【0125】
(4)本発明のアプタマーには、本明細書中に記載されるアプタマーの医薬品化学によって開発されたアプタマーを含む。
【0126】
本発明のアプタマーの標的結合親和性は、アプタマーと標的(例えば、タンパク質)との間での一連の結合反応によって評価することができる。この場合、微量のP32−標識されたアプタマーが、緩衝化させられた媒体の中の標的の稀釈系列とともにインキュベートされ、その後、減圧濾過連結管を使用するニトロセルロース濾過によって分析される。本明細書中でドットブロット結合アッセイと記載されるこの方法では、(上から下に向かって)ニトロセルロース、ナイロンフィルター、およびゲルブロット紙からなる3層の濾過媒体が使用される。標的に結合したRNAはニトロセルロースフィルター上に捕捉され、一方、標的に結合していないRNAはナイロンフィルター上に捕捉される。ゲルブロット紙は、他のフィルターについての支持媒体として含まれる。濾過後、フィルター層は分離され、乾燥させられ、蛍光スクリーンに感光させられ、そしてphosphorimagingシステムを使用してそれから定量される。定量された結果は、アプタマー結合曲線を作成するために使用することができ、これから解離定数(KD)を計算することができる。好ましい実施形態においては、結合反応を行うために使用される緩衝化された媒体は、1×ダルベッコ(Dulbecco’s)PBS(Ca++とMg++を含む)と0.1mg/mLのBSAである。
【0127】
一般的には、標的の機能的活性を調節するアプタマーの能力(すなわち、アプタマーの機能的活性)は、インビトロおよびインビボのモデルを使用して評価することができる。これらのモデルは、標的の生物学的機能に応じて様々であろう。いくつかの実施形態においては、本発明のアプタマーは、標的の公知の生物学的機能を阻害する場合があり、一方、他の実施形態においては、本発明のアプタマーは、標的の公知の生物学的活性を刺激する場合もある。本発明のアプタマーの機能的活性は、アプタマー標的の公知の機能を測定するために設計されたインビトロおよびインビボでのモデルを使用して評価することができる。
【0128】
本発明のアプタマーは、当業者によって使用される多数の技術にしたがって診断目的のために、日常的に行われているように適応させることができる。診断的利用には、インビボまたはインビトロでの診断用途の両方が含まれ得る。使用者が、特定の位置または濃度で所定の標的の存在を同定できるようにするための診断薬だけが必要である。単に、標的との結合対を形成する能力だけで、診断目的のためのポジティブシグナルを誘発するには十分である場合がある。当業者は、当該分野で公知の手順によって、そのようなリガンドの存在を追跡するための標識タグを取り込むように、任意のアプタマーを適応させることもできるであろう。このようなタグは、多数の診断手順において使用することができる。
【0129】
免疫刺激モチーフを有するアプタマー
脊椎動物の免疫システムによる細菌のDNAの認識は、特定の配列の状況の中のメチル化されていないCGヌクレオチド(「CpGモチーフ」)の認識に基づく。このようなモチーフを認識する1つの受容体はToll様受容体9(「TLR9」)であり、これは、異なる微生物成分を認識することによって先天性免疫応答に関与しているToll様受容体のファミリー(およそ10種類のメンバー)のうちの1つのメンバーである。TLR9は、配列特異的様式で、メチル化されていないオリゴデオキシヌクレオチド(「ODN」)CpG配列に結合する。CpGモチーフの認識によって防御機構が始動させられ、これによって、先天性免疫応答と究極の後天性免疫応答が導かれる。例えば、マウスでのTLR9の活性化によっては、抗原提示細胞の活性化、MHCクラスIおよびII分子のアップレギュレーション、ならびに、重要な共刺激分子およびサイトカイン(IL−12およびIL−23を含む)の発現が誘導される。この活性化によっては、B細胞応答とT細胞応答が、直接的にも、そして間接的にも高められ、これには、TH1サイトカインIFN−γの活発なアップレギュレーションを含む。まとめると、CpG配列に対する応答によっては、感染性疾患に対する防御、ワクチンに対する改善された免疫応答、喘息に対する有効な応答、および改善された抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性が導かれる。したがって、CpG ODNは、感染性疾患に対する防御、免疫アジュバントまたはガン治療薬(単剤療法、またはmAbもしくは他の治療薬との組み合わせ)としての機能を提供することができ、そして、喘息およびアレルギー性の反応を軽減することができる。
【0130】
本発明のアプタマー(例えば、MNAアプタマー)には、1つ以上のCpG、または他の免疫刺激配列を含む場合がある。このようなアプタマーは、例えば、本明細書中に記載されるSELEX(登録商標)プロセスを使用して、様々なストラテジーによって同定または作成することができる。一般的には、これらのストラテジーは2つのグループに分けることができる。グループ1においては、ストラテジーは、CpGモチーフまたは他の免疫刺激配列、ならびに標的に対する結合部位の両方を含むアプタマーを同定または作成することに関する。この場合、標的(本明細書中以後、「非CpG標的」と呼ばれる)は、CpGモチーフまたは他の免疫刺激配列を認識することが知られているもの以外の標的であり、CpGモチーフに結合すると免疫応答を刺激することが公知である。
このグループの第1のストラテジーには、オリゴヌクレオチドのプールを使用してSELEX(登録商標)を行って、特異的な非CpG標的に対するアプタマーを得る工程(この場合、CpGモチーフは、固定された領域として、またはその一部として、プールの個々のメンバーの中に取り込まれており、例えば、いくつかの実施形態においては、プールのメンバーのランダマイズされた領域にはその中にCpGモチーフが取り込まれている固定された領域を含む)、ならびに、CpGモチーフを含むアプタマーを同定する工程を含む。このグループの第2のストラテジーには、SELEX(登録商標)を行って、特異的な非CpG標的(好ましくは、標的)に対するアプタマーを得、続いて、CpGモチーフの5’および/または3’末端への付加、あるいは、アプタマーの1つの領域(好ましくは、必須ではない領域)の中へのCpGモチーフの操作の選択を含む。このグループの第3のストラテジーには、SELEX(登録商標)を行って、特異的な非CpG標的に対するアプタマーを得る工程(この場合、プールの合成の間に、様々なヌクレオチドのモル比が1つ以上のヌクレオチドの付加において偏らせられ、その結果、プールの個々のメンバーのランダマイズされた領域はCpGモチーフについて富化させられる)、ならびに、CpGモチーフを含むアプタマーを同定する工程を含む。このグループの第4のストラテジーには、SELEX(登録商標)を行って、特異的な非CpG標的に対するアプタマーを得る工程、およびCpGモチーフを含むアプタマーを同定する工程を含む。このグループの第5のストラテジーには、SELEX(登録商標)を行って、特異的な非CpG標的に対するアプタマーを得る工程と、結合すると免疫応答を刺激するが、CpGモチーフが含まれていないアプタマーを同定する工程を含む。
【0131】
グループ2においては、ストラテジーは、CpGモチーフおよび/またはCpGモチーフの受容体(例えば、TLR9、または他のtoll様受容体)が結合する他の配列が含まれており、結合すると免疫応答を刺激するアプタマーを同定または作成することに関する。このグループの第1のストラテジーには、SELEX(登録商標)を行って、CpGモチーフまたは他の免疫刺激配列に結合し、そして結合すると、オリゴヌクレオチドのプールを使用して免疫応答を刺激することが公知である、標的に対するアプタマーを得る工程(この場合は、CpGモチーフは、固定された領域として、またはその一部として、プールの個々のメンバーの中に取り込まれており、例えば、いくつかの実施形態においては、プールのメンバーのランダマイズされた領域にはその中にCpGモチーフが取り込まれている固定された領域を含む)、ならびに、CpGモチーフを含むアプタマーを同定する工程を含む。このグループの第2のストラテジーには、SELEX(登録商標)を行って、CpGモチーフまたは他の免疫刺激配列に結合し、そして結合すると免疫応答を刺激し、その後、CpGモチーフをアプタマーの1つの領域(好ましくは、必須ではない領域)の5’末端および/または3’末端に付加するか、あるいはCpGモチーフをその領域の中に操作することが公知である、標的に対するアプタマーを得る工程を含む。このグループの第3のストラテジーには、SELEX(登録商標)を行って、CpGモチーフまたは他の免疫刺激配列に結合し、そして結合すると免疫応答を刺激することが公知である、標的に対するアプタマーを得る工程(この場合、プールの合成の間に、様々なヌクレオチドのモル比が1つ以上のヌクレオチドの付加において偏らせられ、その結果、プールの個々のメンバーのランダマイズされた領域はCpGモチーフの中で富化させられる)、ならびに、CpGモチーフを含むアプタマーを同定する工程を含む。このグループの第4のストラテジーには、SELEX(登録商標)を行って、特異的なCpGモチーフまたは他の免疫刺激配列に結合し、そして結合すると免疫応答を刺激することが公知である、標的に対するアプタマーを得る工程、およびCpGモチーフを含むアプタマーを同定する工程を含む。このグループの第5のストラテジーには、SELEX(登録商標)を行って、CpGモチーフまたは他の免疫刺激配列に結合することが公知である、標的に対するアプタマーを得る工程、および結合すると免疫応答を刺激するが、CpGモチーフが含まれていないアプタマーを同定する工程を含む。
【0132】
CpGモチーフの多種多様なクラスが同定されており、それぞれが、複数の事象の様々なカスケードにおいて認識されると、サイトカインおよび他の分子の放出、ならびに特定の細胞のタイプの活性化を生じる。例えば、CpG Motifs in Bacterial DNA and Their Immune Effects,Annu.Rev.Immunol.2002,20:709−760(引用により本明細書中に組み入れられる)を参照のこと。さらなる免疫刺激モチーフは、以下の米国特許に開示されており、これらのそれぞれは引用により本明細書中に組み入れられる:米国特許第6,207,646号;同第6,239,116号;同第6,429,199号;同第6,214,806号;同第6,653,292号;同第6,426,434号;同第6,514,948号;および同第6,498,148号。これらのCpGまたは他の免疫刺激モチーフのうちの任意のものを、アプタマーに取り込ませることができる。アプタマーの選択は、処置される疾患または障害に応じて様々である。好ましい免疫刺激モチーフは以下であり(左から右に5’から3’方向で示される)、式中、「r」はプリンを示し、「y」はピリミジンを示し、そして「X」は任意のヌクレオチドを示す:AACGTTCGAG(配列番号136);AACGTT;ACGT、rCGy;rrCGyy、XCGX、XXCGXX、およびX1X2CGY1Y2(式中、X1はGまたはAであり、X2はCではなく、Y1はGではなく、そしてY2は好ましくはTである)。
【0133】
CpGモチーフが、CpGモチーフに結合し、結合すると免疫応答を刺激することが公知である標的以外の特異的標的(「非CpG標的」)に結合するアプタマーに取り込まれている場合には、CpGは、好ましくは、アプタマーの必須ではない領域に存在する。アプタマーの必須ではない領域は、部位特異的変異誘発、欠失分析、および/または置換分析によって同定することができる。しかし、非CpG標的に結合するアプタマーの能力を有意には妨害しない任意の位置が使用される場合がある。アプタマー配列の中に埋め込まれていることに加えて、CpGモチーフは、アプタマーの5’末端および3’末端のいずれかまたは両方に付加させることができ、あるいは、別の方法でアプタマーに結合させることもできる。任意の結合位置または手段を、非CpG標的に結合するアプタマーの能力がそれにより有意に妨害されない限りは、使用することができる。
【0134】
本明細書中で使用される場合は、「免疫応答の刺激」は、(1)特異的応答の誘導(例えば、Th1応答の誘導)または特定の分子の生産の誘導、あるいは(2)特異的応答もしくは特定の分子の阻害もしくは抑制(例えば、Th2応答の阻害もしくは抑制)のいずれかを意味することができる。
【0135】
アプタマー治療薬の薬物動態および生体分布の調節
オリゴヌクレオチドをベースとする全ての治療薬(アプタマーを含む)の薬物動態特性を、所望される薬学的用途に適合するように合わせられることが重要である。細胞外標的に特異的なアプタマーは、細胞内送達に伴う問題に悩まされることはない(アンチセンスおよびRNAiをベースとする治療薬が用いられる場合と同様に)が、そのようなアプタマーは、なおも標的の臓器および組織に分布されることが可能でなければならず、そして所望される投与レジュメと一致する時間の間、体内に留まらなければならない(未修飾で)。
【0136】
したがって、本発明により、アプタマー組成物の薬物動態、具体的には、アプタマーの薬物動態を調整する能力に影響を与える材料および方法が提供される。アプタマーの薬物動態の調整能力(すなわち、それを調整する能力)は、アプタマーへの修飾部分(例えば、PEGポリマー)の結合、および/または修飾されたヌクレオチド(例えば、2’−フルオロもしくは2’−O−メチル)の取り込みによって行われて、核酸の化学的組成が変化させられる。アプタマーの薬物動態を調整する能力は、既存の治療的用途の改善において、あるいは、新しい治療的用途の開発において使用される。例えば、いくつかの治療的用途において、例えば、迅速な薬物のクリアランスまたは遮断が望まれる場合がある、抗新生物または救急処置の設定においては、循環中でのアプタマーの滞留時間を短くすることが望まれる。あるいは、他の治療的用途、例えば、治療薬の全身的循環が所望される維持療法においては、循環中でのアプタマーの滞留時間を長くすることが所望される場合がある。
【0137】
加えて、アプタマーの薬物動態の調整能力は、被験体の中でのアプタマー治療薬の生体分布を改善するために使用される。例えば、いくつかの治療的用途においては、特定のタイプの組織または特異的器官(または器官のセット)を標的化させるために、アプタマー治療薬の生体分布を変化させることが所望される場合がある。これらの用途においては、アプタマー治療薬は、特異的組織または器官(単数または複数)に優先的に蓄積する。他の治療的用途においては、所定の疾患、細胞の損傷、もしくは他の異常な病状を伴う、細胞マーカーまたは症状を示している組織に対して標的化させられることが所望される場合があり、その結果、アプタマー治療薬は、罹患した組織の中に優先的に蓄積する。例えば、2004年3月5日に提出された、「Controlled Modulation of the Pharmacokinetics and Biodistribution of Aptamer Therapeutics」と題された米国仮特許出願番号60/550790、および2005年3月7日に提出された、「Controlled Modulation of the Pharmacokinetics and Biodistribution of Aptamer Therapeutics」と題された米国特許出願番号10/−−−,−−−に記載されているように、アプタマー治療薬のPEG化(例えば、20kDaのPEGポリマーでのPEG化)は、炎症をおこしている組織を標的化するために使用され、その結果、PEG化されたアプタマー治療薬は、炎症を起こしている組織の中に優先的に蓄積する。
【0138】
アプタマー治療薬(例えば、アプタマー結合体または化学的性質が変化させられたアプタマー、例えば、修飾されたヌクレオチド)の薬物動態および生体分布プロフィールを決定するためには、様々なパラメーターがモニターされる。このようなパラメーターとしては、例えば、アプタマー組成物の半減期(t1/2)、血漿クリアランス(C1)、分布量(Vss)、濃度−時間曲線下面積(AUC)、観察される最大の血清濃度または血漿濃度(Cmax)、および平均滞留時間(MRT)が挙げられる。本明細書中で使用される場合は、用語「AUC」は、アプタマーの投与後の時間に対するアプタマー治療薬の血漿濃度のプロットの下の面積を意味する。AUC値は、所定のアプタマー治療薬の生体利用性(すなわち、アプタマー投与後に循環の中にある投与されたアプタマー治療薬の割合)および/または総クリアランス(C1)(すなわち、アプタマー治療薬が循環から除去される速度)を推測するために使用される。分布量は、体内に存在しているアプタマーの量に対するアプタマー治療薬の血漿濃度に関係する。Vssが大きければ大きいほど、より多量のアプタマーが血漿の外側で見られる(すなわち、管外遊出がより多い)。
【0139】
本発明により、インビボでの安定化させられたアプタマー組成物(例えば、MNAアプタマー)の薬物動態および生体分布を、アプタマー(例えば、MNAアプタマー)を調節部分(例えば、低分子、ペプチド、またはポリマーの末端基)に結合させることによって、あるいは、アプタマーの中に修飾されたヌクレオチドを取り込ませることによって、制御された様式で調節するための材料と方法が提供される。本明細書中に記載されるように、修飾部分の結合、および/またはヌクレオチド(単数または複数)の化学的組成を変化させることによって、循環の中でのアプタマーの滞留時間、および組織への分布の基本となる態様が変化させられる。
【0140】
ヌクレアーゼによるクリアランスに加えて、オリゴヌクレオチド治療薬は、腎臓濾過による排除の対象である。このように、濾過をブロックすることはできない限りは、静脈内に投与されたヌクレアーゼ耐性オリゴヌクレオチドは、通常、<10分のインビボでの半減期を示す。これには、血流から組織への迅速な分布を促進すること、または糸球体の有効なサイズカットオフを上回るようにオリゴヌクレオチドのみかけの分子量を大きくすることのいずれかによって行うことができる。以下に記載されるPEGポリマーに対する小さい治療薬の結合(PEG化)によっては、循環の中でのアプタマーの滞留時間を劇的に長くすることができ、それによって、投与頻度を減少させ、そして血管標的に対する有効性を高めることができる。
【0141】
アプタマーは、様々な修飾部分、例えば、高分子量のポリマー(例えば、PEG;ペプチド(例えば、Tat(HIV TAtタンパク質の13アミノ酸の断片(Vives,et al.,(1997)J.Biol.Chem.272(25):16010−7))、Ant(ショウジョウバエ(Drosophila)、アンテナペディア(antennapedia)ホメオチックタンパク質の第3のヘリックスに由来する16アミノ酸の配列(Pietersz,et al.,(2001)Vaccine 19(11−12):1397−405))、およびArg7(ポリアルギニン(Arg7)から構成される、短い、正電荷を有する細胞に浸透するペプチド(Rothbard,et al.,(2000)Nat.Med.6(11):1253−7;Rothbard,Jら、(2002)J.Med.Chem.45(17):3612−8)));ならびに、低分子(例えば、親油性化合物(例えば、コレステロール))に結合させることができる。本明細書中に記載される様々な結合体の間でも、アプタマーのインビボでの特性は、PEG基との複合体形成によって、最も大きく変化させられる。例えば、2’F修飾と2’−OMe修飾が混合されているアプタマー治療薬の20kDaのPEGポリマーとの複合体形成によって、腎臓濾過が邪魔され、そして健常な組織と炎症を起こしている組織の両方に対するアプタマーの分布が促進される。さらに、20kDaのPEGポリマー−アプタマー結合体は、アプタマーの腎臓濾過を防ぐことにおいて、40kDaのPEGポリマーとほぼ同等に有効であることが明らかにされている。PEG化の1つの効果は、アプタマーのクリアランスに対する効果であるが、20kDa部分の存在によって与えられた全身暴露の延長もまた、組織、特に、高度にかん流された器官の組織、および炎症を起こしている部位の組織へのアプタマーの分布を促進する。アプタマー−20kDaのPEGポリマー結合体は、炎症の部位へのアプタマーの分布を指示し、その結果、PEG化されたアプタマーは、炎症を起こしている組織に優先的に蓄積する。いくつかの場合には、20kDaのPEG化されたアプタマー結合体は、細胞(例えば、腎臓細胞)の内部に接近することができる。
【0142】
修飾されたヌクレオチドはまた、アプタマーの血漿クリアランスを調節するためにも使用することができる。例えば、2’−Fと2’−OMeの両方を安定化させる化学的特性が取り込ませられた結合していないアプタマー(これは、インビトロおよびインビボで高度なヌクレアーゼ安定性を示すので、現在のアプタマーの典型である)は、未修飾のアプタマーと比較すると、血漿からの迅速な消滅(すなわち、迅速な血漿クリアランス)と、組織内(主に、腎臓内)への迅速な分布を示す。
【0143】
PEG誘導核酸
上記のように、高分子量の非免疫原性ポリマーでの核酸の誘導には、核酸の薬物動態特性および薬力学的特性を変化させて、それらをさらに有効な治療薬とする可能性がある。活性についての好ましい変化としては、ヌクレアーゼによる分解に対する耐性の増大、腎臓による濾過の減少、免疫システムへの暴露の減少、および体全体への治療薬の分布の変化を挙げることができる。
【0144】
本発明のアプタマー組成物は、ポリアルキレングリコール(「PAG」)部分を用いて誘導することができる。PAG誘導核酸の例は、2003年11月21日に提出された米国特許出願番号10/718,833に見られる。これはその全体が引用により本明細書中に組み入れられる。本発明で使用される典型的なポリマーとしては、ポリエチレングリコール(「PEG」)が挙げられ、これは、ポリエチレンオキサイド(「PEO」)およびポリプロピレングリコール(ポリイソプロピレングリコールを含む)としても知られている。さらに、様々なアルキレンオキサイド(例えば、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド)のランダムコポリマーまたはブロックコポリマーを、多くの用途において使用することができる。その最も一般的な形態では、ポリアルキレングリコール(例えば、PEG)は、ヒドロキシル基でそれぞれの末端が終わる直鎖状ポリマーである:HO−CH2CH2O−(CH2CH2O)n−CH2CH2−OH。このポリマー、α−、ω−ジヒドロキシポリエチレングリコールもまた、HO−PEG−OHとして提示され、ここでは、PEG−の記号は以下の構造単位:−CH2CH2O−(CH2CH2O)n−CH2CH2−を示し、式中、nは、通常は、約4から約10,000の範囲である。
【0145】
示されるように、PEG分子は二官能性であり、しばしば「PEGジオール」と呼ばれる。PEG分子の末端部分は、比較的非反応性であるヒドロキシル部分(−OH基)であり、これは、他の化合物に対してその化合物の反応性部分にPEGを結合させるために、活性化させることも、または官能性部分に変換させることもできる。このような活性化させられたPEGジオールは、本明細書中ではニ活性化PEGと呼ばれる。例えば、PEGジオールの末端部分は、比較的非反応性であるヒドロキシル部分(−OH)のN−ヒドロキシスクシンイミドに由来するスクシンイミジル活性エステル部分での置換によって、アミノ部分との選択的反応のために、活性のあるカルボン酸エステルとして官能化させられている。
【0146】
多くの用途においては、原則的に非反応性である部分でPEG分子の一方の末端をキャップすることが所望され、その結果、PEG分子は一官能性(またはモノ活性化される)となる。活性化されたPEGに対して通常は複数の反応部位を示すタンパク質治療薬の場合には、二官能性の活性化させられたPEGによって、広範囲の架橋が導かれ、それによって得られる機能性凝集物の量は少ない。一活性化PEGを作成するためには、PEGジオールの末端上の1つのヒドロキシル部分が、通常は、非反応性メトキシ末端部分(−OCH3)で置換される。他方、PEG分子のキャップされていない末端は、通常、反応性末端部分になるように変換され、これは、タンパク質のような分子の表面上の反応性部位への結合のために活性化させることができる。
【0147】
PAGは、水および多くの有機溶媒の中での可溶性、毒性がない、および免疫原性がないという特性を通常有しているポリマーである。PAGの1つの用途は、不溶性分子に対してポリマーを共有結合させて、得られるPAG−分子「結合体」を可溶性にすることである。例えば、水不溶性の薬物であるパクリタキセルは、PEGに結合させられると水溶性になることが示されている。Greenwald,et al.,J.Org.Chem.,60:331−336(1995)。PAG結合体は、多くの場合は、可溶性および安定性を高めるためのみならず、分子の血液循環半減期を長くするためにも使用される。
【0148】
本発明のポリアルキル化化合物は、通常、5から80kDaの間の大きさであるが、任意の大きさを使用することができ、選択は、アプタマーと用途に応じて様々である。本発明の他のPAG化合物は、10から80kDaの間の大きさである。本発明のなお他のPAG化合物は、10から60kDaの間の大きさである。例えば、PAGポリマーは、少なくとも10、20、30、40、50、60、または80kDaの大きさであり得る。このようなポリマーは、直鎖状であっても、また、分岐していてもよい。いくつかの実施形態においては、ポリマーはPEGである。
【0149】
生物学的に発現させられたタンパク質治療薬とは対照的に、核酸治療薬は通常、活性化させられたモノマーヌクレオチドから化学合成される。PEG−核酸結合体は、同じ繰り返しによるモノマー合成を使用してPEGを取り込ませることによって調製することができる。例えば、ホスホルアミダイトの形態へと変換させられることにより活性化させられたPEGを、固相オリゴヌクレオチド合成に組み込ませることができる。あるいは、オリゴヌクレオチドの合成は、反応性PEG結合部位の部位特異的取り込みを用いて完了することができる。最も一般的には、これには、5’末端での遊離の第1級アミンの付加が伴う(固相合成の最後のカップリング工程において修飾因子を使用してホスホルアミダイトが取り込まれる)。このアプローチを使用して、反応性PEG(例えば、アミンと反応し、結合を形成するように活性化させられたもの)が、精製されたオリゴヌクレオチドと混合され、そしてカップリング反応が溶液中で行われる。
【0150】
治療薬の生体分布を変化させるPEG結合体の能力は、(例えば、流体力学半径について測定された)結合体の見かけの大きさを含む多数の要因に関係する。より大きい結合体(>10kDa)は、腎臓による濾過をより効率よくブロックすること、そして結果として、小さい高分子(例えば、ペプチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド)の血清半減期を長くすることが公知である。濾過をブロックするPEG結合体の能力が、およそ50kDaまでの大きさ(半減期は腎臓による排除ではなく、マクロファージによって媒介される代謝によって定義されるので、さらなる増大によっては最小の有益な効果しかない)のPEGを用いた場合に高まることが示されている。
【0151】
高分子量のPEG(>10kDa)の生産は難しく、非効率的であり、そして高価であり得る。高分子量のPEG−核酸結合体の合成のための経路として、これまでの研究では、高分子量の活性化PEGの作成に集中している。このような分子を作成するための1つの方法には、分岐している活性化PEGの形成が含まれ、その中では、2つ以上のPEGが活性化させられた基を有する中心のコアに結合させられている。これらの高分子量のPEG分子の末端部分(すなわち、比較的非反応性であるヒドロキシル(−OH)部分)は、他の化合物へのその化合物の反応部位での1つ以上のPEGの結合のために、活性化させることも、また官能性部分になるように変換することもできる。分岐している活性化PEGは2つ以上の末端を有する場合があり、そして、2つ以上の末端が活性化されている場合には、そのような活性化させられた高分子量PEG分子は、本明細書中では、マルチ活性化PEG(multi−activated PEG)と呼ばれる。いくつかの場合には、分岐しているPEG分子の中の全てではない末端が活性化させられる。分岐しているPEG分子の任意の2つの末端が活性化させられている場合には、そのようなPEG分子は、ニ活性化PEGと呼ばれる。分岐しているPEG分子の1つの末端だけが活性化させられているいくつかの場合には、そのようなPEG分子は一活性化と呼ばれる。このアプローチの一例として、リジンコアに対する2つのモノメトキシPEGの結合によって調製された活性化PEG(これは続いて、反応のために活性化させられる)が記載されている(Harrisら、Nature 第2巻:214−221,2003)。
【0152】
本発明によって、マルチPEG化核酸を含む高分子量のPEG−核酸(好ましくは、アプタマー)結合体の合成のための別のコスト効果の高い経路が提供される。本発明にはまた、PEG結合多量体オリゴヌクレオチド(例えば、二量体アプタマー)も含まれる。本発明はまた高分子量の組成物にも関し、ここでは、PEG安定化部分は、アプタマーの様々な部分を分けるリンカーである。例えば、PEGは、1つのアプタマー配列の中に結合させられ、その結果、高分子量のアプタマー組成物の直鎖状の並びは、例えば、核酸−PEG−核酸(−PEG−核酸)nであり、式中、nは1以上である。
【0153】
本発明の高分子量の組成物には、少なくとも10kDaの分子量を有するものを含む。組成物は通常は、10から80kDaの間の大きさの分子量を有する。本発明の高分子量の組成物は、少なくとも10、20、30、40、50、60、または80kDaの大きさである。
【0154】
安定化部分は、本発明の高分子量のアプタマー組成物の薬物動態特性および薬力学特性を改善する分子または分子の一部である。いくつかの場合には、安定化部分は、2つ以上のアプタマーもしくはアプタマードメインを本発明の高分子量のアプタマー組成物の近くにもたらすか、または本発明の高分子量のアプタマー組成物の全体的な回転の自由度の低下を提供する分子または分子の一部である。安定化部分は、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール)(これは、直鎖状であっても、分岐していてもよい)、ホモポリマー、またはヘテロポリマーであり得る。他の安定化部分としては、ポリマー(例えば、ペプチド核酸(PNA))が挙げられる。オリゴヌクレオチドもまた安定化部分であり得る。そのようなオリゴヌクレオチドとしては、修飾されたヌクレオチド、および/または修飾された結合(例えば、ホスホロチオエート)を挙げることができる。安定化部分は、アプタマー組成物の欠くことができない部分であり得、すなわち、これはアプタマーに共有結合させられる。
【0155】
本発明の組成物には、高分子量のアプタマー組成物が含まれ、その中では、2つ以上の核酸部分が少なくとも1つのポリアルキレングリコール部分に共有結合させられる。ポリアルキレングリコール部分は安定化部分としての役割を果たす。ポリアルキレングリコール部分がアプタマーのいずれかの末端に共有結合させられており、その結果、ポリアルキレングリコールが1つの分子の中で複数の核酸部分を結合させている組成物においては、ポリアルキレングリコールは連結部分と言われる。このような組成物においては、共有分子の一次構造には、直鎖状の並びの核酸−PAG−核酸を含む。1つの例は、核酸−PEG−核酸の一次構造を有する組成物である。別の例は、核酸−PEG−核酸−PEG−核酸の直鎖状の配置である。
【0156】
核酸−PEG−核酸結合体を生産するためには、1つの反応性部位(例えば、これは、一活性化させられている)を有するように核酸が最初に合成される。好ましい実施形態においては、この反応性部位は、オリゴヌクレオチドの固相合成の最後の工程として、修飾因子であるホスホルアミダイトの付加によって5’末端に導入されたアミノ基である。修飾されたオリゴヌクレオチドの脱保護および精製の後、これは、溶液中に高濃度(これは活性化させられたPEGの自発的な加水分解を最小にする)で再構成される。好ましい実施形態においては、オリゴヌクレオチドの濃度は1mMであり、そして再構成された溶液には200mMのNaHCO3−緩衝液(pH8.3)を含む。結合体の合成は、高度に精製された二官能性PEGのゆっくりとした段階的付加によって開始される。好ましい実施形態においては、PEGジオールは、プロピオン酸スクシンイミジルでの誘導によって両方の末端で活性化させられる(ニ活性化させられる)。反応後、PEG−核酸結合体は、ゲル電気泳動または液体クロマトグラフィーによって精製されて、完全に結合した種、部分的に結合した種、および未結合の種が分離される。連結された複数のPAG分子(例えば、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマーとして)、または小さいPAG鎖を連結させて、様々な長さ(または分子量)を得ることができる。様々な長さのPAG鎖の間では、非PAGリンカーを使用することができる。
【0157】
2’−O−メチル、2’−フルオロ、および他の修飾されたヌクレオチド修飾は、ヌクレアーゼに対してアプタマーを安定化させ、そしてそのインビボでの半減期を長くする。3’−3’−dTキャップもまた、エキソヌクレアーゼ耐性を高めることができる。例えば、米国特許第5,674,685号;同第5,668,264号;同第6,207,816号;および同第6,229,002号を参照のこと。これらはそれぞれ、それらの全体が引用により本明細書中に組み入れられる。
【0158】
反応性核酸のPAG誘導
高分子量のPAG−核酸−PAG結合体は、一官能性の活性化PEGの、1つ以上の反応部位を含む核酸との反応によって調製することができる。1つの実施形態においては、核酸はニ反応性であるかまたはニ活性化されたものであり、これには、以下の2つの反応部位を含む:従来のホスホルアミダイト合成(例えば、図13に示されるような3’−5’−ジ−PEG化)によってオリゴヌクレオチドの中に導入された5’−アミノ基と3’−アミノ基。別の実施形態においては、反応部位は、例えば、ピリミジンの5位、プリンの8位、または第1級アミンの結合のための部位としてのリボースの2’位を使用して、内部部位に導入することができる。このような実施形態においては、核酸はいくつかの活性化された部位または反応部位を有することができ、マルチ活性化と言われる。合成および精製の後、修飾されたオリゴヌクレオチドは、自発的な加水分解を最小限にしつつ、オリゴヌクレオチドの反応部位との選択的な反応を促進する条件下で、一活性化PEGと混合される。好ましい実施形態においては、モノメトキシ−PEGが、プロピオン酸スクシンイミジルで活性化させられ、そしてカップリング反応がpH8.3で行われる。二置換されたPEGの合成を駆動するためには、オリゴヌクレオチドと比較して立体量論的に過剰なPEGが提供される。反応後、PEG−核酸結合体が、ゲル電気泳動または液体クロマトグラフィーによって精製されて、完全に結合した種、部分的に結合した種、および未結合の種が分離される。
【0159】
結合ドメインはまた、それに結合させられた1つ以上のポリアルキレングリコール部分を有することもできる。そのようなPAGは様々な長さであり得、そして、適切な組み合わせで使用して、所望される分子量の組成物を得ることができる。
【0160】
特定のリンカーの作用は、その化学的組成および長さの両方により影響を受け得る。長すぎる、短すぎる、または標的と好ましくない立体的相互作用もしくはイオン性相互作用を形成するリンカーは、アプタマーと標的との間での複合体の形成を妨げるであろう。核酸の間の距離を開けるために必要であるよりも長いリンカーは、リガンドの有効濃度を下げることによって結合安定性を低下させる可能性がある。したがって、多くの場合には、標的に対するアプタマーの親和性を最大にするために、リンカーの組成および長さを最適化することが必要である。
【0161】
本明細書中で引用される全ての刊行物および特許文献は、個々のそのような刊行物または文献が具体的かつ個別に、引用により本明細書中に組み入れられることが示されているかのように、引用により本明細書中に組み入れられる。刊行物および特許文献の引用は、任意のものが適切な先行技術であることの承認として意図されるものではなく、その内容または日付としての何らかの承認を構成するものでもない。本発明はここに明細書によって記載されているが、当業者は、本発明は様々な実施形態において実施することができること、そして以下の記載と以下の実施例が説明の目的のためのものであって、以下の特許請求の範囲の限定ではないことを理解するであろう。
【0162】
本明細書中で引用される全ての刊行物および特許文献は、個々のそのような刊行物または文献が具体的かつ個別に、引用により本明細書中に組み入れられることが示されているかのように、引用により本明細書中に組み入れられる。刊行物および特許文献の引用は、任意のものが適切な先行技術であることの承認として意図されるものではなく、その内容または日付としての何らかの承認を構成するものでもない。本発明はここに明細書によって記載されているが、当業者は、本発明は様々な実施形態において実施することができること、そして以下の記載と以下の実施例が説明の目的のためのものであって、以下の特許請求の範囲の限定ではないことを理解するであろう。
【実施例】
【0163】
(実施例1)
TR−SELEX(登録商標)法を使用した5’−リーダー配列の同定
以下の構造(5’から3’方向で示す)を有する縮重DNAライブラリー:
T7プロモーター/G4/縮重20ヌクレオチド/3’−固定配列
を、以下の配列を用いて合成した:
【0164】
【化6】
このライブラリーを、3’−プライマーAGCTAGCTTACTGCATCGAC(配列番号104)と5’−プライマーTAATACGACTCACTATAG(配列番号105)を使用して増幅させた。次いで、二本鎖のライブラリーを、1×転写緩衝液(HEPES 200mM、DTT 40mM、スペルミジン2mM、Triton X−100 0.01%)を使用して、以下の条件下で37℃で一晩転写させた:2’−OMe ATP CTP、UTP、GTP、それぞれ1mM、2’−OH GTP 30μM、MgCl2 6.5mM、MnCl2 2.0mM、10%w/vのPEG−8000、1mMのGMP、無機ピロホスファターゼ 100μLの反応物について0.5単位、およびY639F/H784A/K378R T7 RNAポリメラーゼ 200nM。
【0165】
次いで、得られた混合物を沈殿させ(イソプロパノール、塩化ナトリウム、EDTA)、ゲルで精製し(10%PAGE)、ゲルから切り出して抽出し、DNase(RQ1、Promega,Madison WI)で処理し、PCRに使用した3’−プライマーを使用して65℃で逆転写させ(Thermoscript,Invitrogen,Carlesbad,CA)、そして以下のオリゴヌクレオチドを用いた添え木を当てられた連結反応物(splinted ligation reaction)の中に直接稀釈した。
T7プロモーターをコードする5’リン酸化オリゴヌクレオチド(ここでは、pは5’リン酸化される可能性がある)」
【0166】
【化7】
連結のための添え木
【0167】
【化8】
この混合物を熱で変性させ、アニーリングさせ、その後、T4 DNAリガーゼ(NEB Beverley MA)を添加し、その後、16℃で一晩インキュベーションした。連結工程に続いて、反応物を、SELEX(登録商標)法の次の回への投入のために転写された配列を増幅させるための、すでに記載したプライマーを用いるPCRの中に直接稀釈した。この反応図式を図2に示す。
【0168】
3回のTR−SELEX(登録商標)選択後、ライブラリーを、製造業者による説明書にしたがってTOPO TAクローニングキット(Invitrogen,Carlsbad,CA)を使用してクローニングし、配列決定し、そして縮重領域の中でのヌクレオチドの出現頻度を統計分析した。個々のクローンを、高濃度の転写物の転写の鋳型となるそれらの能力についてPAGE−ゲル分析によって評価し、次いで、最も多量の転写物を生じたそのような配列をライブラリーの設計に利用し、これを次いで、多量の転写物の転写の鋳型となるそれらの能力についてゲル分析によってアッセイした。図3は、3回のTR−SELEX(登録商標)選択の前および後の、20個の縮重位置の領域のヌクレオチド組成の平均の割合を示す。図3に示すように、転写物の中の5位から13位(縮重領域の中の1位から9位)までには、Gについての強い好みが記載され、それより後のヌクレオチドについては優先的に記載されたものはなかった。
【0169】
3回のTR−SELEX(登録商標)選択の後に配列決定によって発見されたクローンを、約200nMの鋳型、1×転写緩衝液(HEPES 200mM、DTT 40mM、スペルミジン2mM、Triton X−100 0.01%)、2’−OMe ATP CTP、UTP、GTP、それぞれ1mM、2’−OH GTP 30μM、MgCl2 6.5mM、MnCl2 2mM、10%w/vのPEG−8000、1mMのGMP、無機ピロホスファターゼ 100μLの反応物について0.5単位、およびY639F/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼ 200nMを使用して、2’−OMeヌクレオチドを転写するそれらの能力についてPAGE−ゲル分析によって、37℃で一晩、スクリーニングした。0回目によるクローンと比較した場合には、PAGE−ゲルによって見ることができるように、3回目からの1つのクローンの一例であるクローンAMX411.D6は、有意により多いMNA転写物を生じた。3回目から得られたクローンのDNA配列を以下に列挙する(全ての配列が5’から3’方向である):
【0170】
【化9】
【0171】
【化10】
【0172】
【化11】
【0173】
【化12】
【0174】
【化13】
【0175】
【化14】
【0176】
【化15】
(実施例2)
TR−SELEX(登録商標)法によって同定されたリーダー配列が取り込まれているライブラリー
実施例1に記載したようにTR−SELEX(登録商標)選択を使用して同定されたより高度に2’−修飾された転写物を生じるクローンから同定した5’−リーダー配列エレメント(縮重領域の最初の10ヌクレオチド)を利用して、2’−修飾されたヌクレオチドを含む転写物の量を増大させる目的で5’−固定領域にリーダー配列エレメントを取り込ませたライブラリーを設計した。1つの実施形態においては、設計ストラテジーにより、その後のPCR増幅を促進するためのさらに6〜8個の固定されたヌクレオチドがすぐ続く5’リーダー配列として、同定したクローンの最初の14ヌクレオチド(4個のグアノシンを含む5’固定領域と縮重領域の最初の10個のヌクレオチド)、このすぐ後ろに続く30〜40ヌクレオチドの長さの縮重領域、そのすぐ後に続く、これもまたその後のPCR増幅を促進する3’−固定領域を取り込ませた。
【0177】
同定したリーダー配列エレメントを取り込むように設計したライブラリーのDNA配列の例を以下に列挙する。
【0178】
以下に列挙するDNA転写鋳型のライブラリーの配列のそれぞれについて、5’−リーダー配列エレメントは下線で示し、そして全ての配列は5’から3’方向である。
【0179】
【化16】
リーダー配列が含まれていない制御DNA転写鋳型を、5’から3’方向で以下に列挙する。
【0180】
【化17】
新しく設計したライブラリーが、2’−O−メチルヌクレオチドを含む転写物の量の増大を促進するかどうかを試験するために、ライブラリーを、比較のために、2種類の修飾されたT7 RNAポリメラーゼ(Y639F/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼとY639L/H784A/K378R変異体ポリメラーゼ)(ポリメラーゼが含まれていない転写反応混合物をネガティブ対照として使用した)を使用して、約200nMの鋳型、1×転写緩衝液(HEPES 200mM、DTT 40mM、スペルミジン2mM、Triton X−100 0.01%)、2’−OMe ATP CTP、UTP、GTP、それぞれ1mM、2’−OH GTP 30μM、MgCl2 6.5mM、MnCl2 2.0mM、10%w/vのPEG−8000、1mMのGMP、Y639F/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼとY639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼ 200mM、無機ピロホスファターゼ 5単位/mLを含む転写混合物の中で、37℃で一晩、転写させた。個々の条件についての転写物量を、200μLの反応混合物を使用したPAGE−ゲル分析によって評価し、それぞれの条件についての転写物量を、ImageQuantバージョン5.2ソフトウェア(Molecular Dynamics)を使用してPAGE−ゲル分析のUV−シャドウイングによって定量した。
【0181】
図4には、PAGE−ゲル分析の定量結果をまとめる。これは、ポリメラーゼが含まれていない対照と比較した、Y639F/H784A/K378R(「FAR」)変異体T7 RNAポリメラーゼとY639L/H784A/K378R(「LAR」)変異体T7 RNAポリメラーゼの両方を用いて得られた転写物量の倍数増加を示している。図4に見ることができるように、完全なる2’−OMeを含む転写物の量の有意な改善が、Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを使用して、新しいリーダー配列エレメントが取り込まれている新しいライブラリーを転写させた場合に、Y639F/H784A/K378R変異体ポリメラーゼと比較して、見られた。注目すべきは、ARC2118、ARC2119、ARC2120によっては、Y639F/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼと比較して、Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼと組み合わせた場合に、有意に多い量の、2’−OMeを含む転写物が得られた。Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを使用することによって得られた転写物量の増加はまた、ARC2117を用いた場合にも見られた。これは、対照として使用した、新しく同定したリーダー配列エレメントが含まれていない、Y639F/H784A/K378R変異体ポリメラーゼを含む所定の条件下で転写されることが公知である以前に設計されたライブラリーである。これらの結果は、2’−OMeを含む転写物の収量を、Y639F/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼと比較して、Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを利用することによって増大させることができることを示している。加えて、TR−SELEX(登録商標)法によって同定したリーダー配列エレメントが取り込まれているいくつかの新しいライブラリー(ARC2118およびARC2119)のいくつかもまた、Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを使用した場合には、対照ライブラリーARC2117よりも多量の、2’−OMeを含む転写物を生じた。このことは、2’−OMeを含む転写物の収量の改善を、本発明の特定の新しく同定したリーダー配列と組み合わせてY639L/H784A/K378R変異体を利用することによって行うことができることを示している。
【0182】
(実施例3)
ポリメラーゼの発現および精製
変異体T7 RNAポリメラーゼは、本発明の方法での使用のためには、以下のように調製することができる。T7 RNAポリメラーゼ(核酸配列とアミノ酸配列はそれぞれ図5Aおよび5Bに示されており、そしてBull,J.Jら、J.Mol.Evol.,57(3),241−248(2003)に記載されている)は、LA変異体(Y639L/H784A)、LAR変異体(Y639L/H784A/K378R)、LLA変異体(P266L/Y639L/H784A)、またはLLAR変異体(P266L/Y639L/H784A/K378R)を生じるように変異させることができる。T7 RNAポリメラーゼは、発現ベクター(T7 RNAポリメラーゼ発現ベクターの一例は、米国特許出願番号5,869,320(その全体が引用により本明細書中に組み入れられる)に記載されている)の中に含めることができ、また、突然変異誘発の後に発現ベクターに挿入することもできる。変異させたT7 RNAポリメラーゼは、必要に応じて、タンパク質精製の際の使用を容易にするためのHis−タグを含むように操作することができる。
【0183】
639位にロイシン変異を含む相補的なオリゴヌクレオチド配列
【0184】
【化18】
を合成することができる。P226L変異のための相補的なオリゴヌクレオチド配列
【0185】
【化19】
を合成することができる。H784A変異のための相補的なオリゴヌクレオチド配列
【0186】
【化20】
を合成することができる。K378R変異のための相補的なオリゴヌクレオチド配列
【0187】
【化21】
を合成することができる。部位特異的変異は、製造業者の説明書に従ってQuickChange(登録商標)Site−Directed Mutagenesis Kit(Stratagene,La Jolla,CA)を使用して行うことができ、上記に示した変異の組み合わせを有する変異体ポリメラーゼをコードする核酸配列(図6)が得られる。本発明の変異体ポリメラーゼをコードする得られた核酸配列は、発現および精製のための標準的な技術を使用して、所望される発現ベクターの中に挿入することができる。
【0188】
発現および精製
変異体T7ポリメラーゼ核酸配列を含む発現ベクターを、BL21(DE3)コンピテント細胞(Stratagene,CA)に形質転換し、氷上で20分間インキュベートした。熱ショックを、42℃の中に試験管を2分間、差し込むことによって行った。氷上に試験管を1分間、差し込んだ後、1mLの培養液(「LB」)を添加し、37℃の震盪装置の中で45分間インキュベートした。100μlの培養液をLB+Amp寒天プレート上にプレートし、37℃で一晩インキュベートした。
【0189】
一晩培養したプレートからの1つのコロニーを、100mlのLB−Amp+(150μg/ml)に接種し、37℃で一晩おいた。2日目に、2リットルの予め温めておいたLB+Ampを含む2つの4リットルのフラスコに、50mlの一晩培養物を接種し、OD600が0.6〜0.8に達するまで、37℃で増殖させた。200μlの1MのIPTGを、それぞれの2Lの細胞培養物に、100μMの最終濃度で添加し、37℃でさらに3時間増殖させた。細胞を、5000rpmで10分間回転させることによってペレットとした。細胞を、200mlの溶解緩衝液(溶解緩衝液:50mMのTris−Cl、pH8.0、100mMのNaCl、5%のグリセロール、1mMのイミダゾール、βメルカプトエタノール(「BME」)5mM)の中に再度懸濁させ、6本の50mlの円錐菅に分けた。細胞を、それぞれのチューブについて出力レベル8で3×30”、超音波処理し、その後、細菌の破片を11,000rpmで60分間スピンダウンさせ、上清を0.22μMのフィルターを通して濾過した。イミダゾールを濾液に添加し、10mMの最終濃度とした。
【0190】
フィルターを、試料ポンプを使用して5mlのNi−NTAカラム(GE Healthcare Bio−Sciences,NJ)上にロードした。カラムを10倍容量(CV)の、20mMのイミダゾールを含む緩衝液A(緩衝液A:50mMのTris−Cl、pH8.0、100mMのNaCl、5%のグリセロール、10mMのイミダゾール、BME 10mM)で洗浄した。その後、カラムを、緩衝液A中の40mMから70mMのイミダゾール濃度の直線勾配を有する10CVの緩衝液で洗浄した。タンパク質を6CVの緩衝液B(緩衝液B:50mMのTris−Cl、pH8.0、100mMのNaCl、5%のグリセロール、250mMのイミダゾール、BME 10mM)で溶出させた。4〜12%のSDS−PAGE上で5μlの試料を用いた回収画分のチェックの後、目的の画分を全て混合し、1Lの透析緩衝液(透析緩衝液:50mMのTris−Cl、pH7.9、100mMのNaCl、50%のグリセロール、0.1mMのEDTA、0.1%のTriton X−100、BME 20mM)中で一晩透析した(透析管:Spectrum Spectra/por Molecular porous membrane(VWR)MWCO:12−14000)。透析緩衝液を12時間後に交換し、透析をさらに4時間行った。T7 RNAポリメラーゼの濃度は、Bradford,M.M.(1976)Anal.Biochem.72,248に記載されているようにBradfordアッセイを使用して測定した。
【0191】
(実施例4)
2’−O−メチルヌクレオチドを100%取り込む転写
実施例4A:2’−OH GTPを用いない2’−O−メチル転写
Y639L/H784A/K378R変異体ポリメラーゼの、2’−OH GTPの濃度に対する感度を試験するための実験を、2’−OH GTPの滴定を使用して行った。
【0192】
Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを使用した場合に高い転写物量を示した、TR−SELEX(登録商標)選択によって同定した新しいリーダー配列エレメント(実施例1に記載した)を取り込ませたARC2118とARC2119の2つのライブラリー(実施例2を参照のこと)を使用して、2’−OH GTPの濃度に対するY639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼの転写物の感度を試験した。転写は、2’−OH GTP(0〜160μM)の、1×転写緩衝液(HEPES 200mM、DTT 40mM、スペルミジン2mM、Triton X−100 0.01%)、約200nMの鋳型、2’−OMe ATP CTP、UTP、およびGTP、それぞれ1mM、MgCl2 6.5mM、MnCl2 2.0mM、PEG−8000 10%w/v、GMP 1mM、無機ピロホスファターゼ 5単位/mL、Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼ 200nMでの、37℃で一晩の滴定を使用して行った。
【0193】
それぞれの条件下での転写物量は、200μLの反応混合物を使用したPAGE−ゲル分析によってアッセイし、それぞれの条件についての転写物量を、ImageQuantバージョン5.2ソフトウェア(Molecular Dynamics)を使用したPAGE−ゲル分析のUV−シャドウイングによって定量した。図7に、PAGE−ゲル分析の定量結果をまとめ、これは、バックグラウンドと比較した、それぞれの条件を用いた場合の転写物量の倍数増加を示している。図7に見ることができるように、2’−OH GTPが含まれていない全ての条件下でY639L/H784A/K378Rを用いて転写させたARC2118およびARC2119と、2’−OH GTPが存在しない場合の収量は、2’−OH GTPが反応混合物中に含まれている場合の転写量に匹敵していた。これらの結果は、Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼが、Y639F/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼ(これは、転写に2’−OH GTPが必要である)とは対照的に、高い転写物量のために2’−OH GTPの存在を必要とはしないことを示している。
【0194】
TR−SELEX(登録商標)選択によって同定したリーダー配列(実施例1に記載した)と組み合わせた場合に、Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼと共に使用する最適な転写条件を決定するための実験を続けて行った。TR−SELEX(登録商標)選択によって同定した新しいリーダー配列エレメントを取り込ませたライブラリーであるARC2119(これは、Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼとともに使用すると有意に高い転写物量を示した)(実施例2を参照のこと)を使用して、転写物量に対する、2’−OMe NTP、マグネシウム、およびマンガンの濃度を変化させることの効果を試験した。
【0195】
転写は、1×転写緩衝液(HEPES 200mM、DTT 40mM、スペルミジン2mM、Triton X−100 0.01%)、約200nMの鋳型、2’−OMe ATP CTP、UTP、およびGTP(それぞれ、0.5mM、1mM、1.5mM、および2mM)、MgCl2(5mM、6.5mM、8mM、および9.5mM)、MnCl2 (1.5mM、2mM、2.5mM、3mM)、PEG−8000 10%w/v、GMP 1mM、無機ピロホスファターゼ 5単位/mL、Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼ 200mMを使用して、37℃で一晩行った。
【0196】
それぞれの条件下での転写物量は、200μLの反応混合物を使用したPAGE−ゲル分析によってアッセイし、それぞれの条件についての転写物量を、ImageQuantバージョン5.2ソフトウェア(Molecular Dynamics)を使用したPAGE−ゲル分析のUV−シャドウイングによって定量した。図8に、PAGE−ゲル分析の定量結果をまとめ、これは、バックグラウンドと比較した、それぞれの条件を用いた場合の転写物量の倍数増加を示している。2’−Ome NTPのコストとこの実験の結果に基づいて、1.5mMの各2’−OMe NTP(および8mMのMgCl2、2.5mMのMnCl2)を、本発明のリーダー配列とY639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを用いる使用に好ましい条件として採用した。
【0197】
実施例4B:Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを使用するMNA転写の忠実性と偏り:
Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを使用し、2’−OH GTPを使用しないMNAの転写の忠実性と偏りを評価するためのさらなる実験を行った。忠実性を試験するために、TR−SELEX(登録商標)選択によって同定した1つのクローニングした配列(実施例1に記載した)をPCRによって増幅させ、Y639L/H784A/K378Rポリメラーゼを使用し、そして2−OH GTPを使用しないMNA転写をプログラムするために使用し、PAGEによって精製し、残っているDNA鋳型をRQ1 DNaseを使用して消化させ(その後、DNA鋳型が存在していないことをPCRによってアッセイした)、そして転写された材料を逆転写させ(Thermoscript,Invitrogen,Carlsbad,CA)、次いでPCRによって増幅させた。このPCR産物を配列決定し、次いで、欠失、挿入、および置換の統計データを計算した。この実験で配列決定した1300塩基の中では、欠失および挿入は観察されず、3個の置換が観察された(図9を参照のこと)。これらの数は、30ヌクレオチドの縮重領域の中にコードされている配列情報が、93%の忠実性でSELEX(登録商標)の次の回に伝達されることを示唆している。この数は、野生型RNAについて測定される数を上回るほどに高い。
【0198】
ヌクレオチドの偏りを試験するためには、ライブラリーARC2118を以下の条件下で、37℃で一晩、転写させた:HEPES 200mM、DTT 40mM、スペルミジン2mM、Triton X−100 0.01%、約200nMの鋳型、2’−OMe ATP、CTP、UTP、およびGTP 各1mM(2’−OH GTPは含まれていない)、MgCl2(6.5mM)、MnCl2(2mM)、PEG−8000w/v 10%、GMP 1mM、無機ピロホスファターゼ 5単位/mL、Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼ 200nM。これをPAGEによって精製し、残っているDNA鋳型をRQ1 DNaseを使用して消化させ(その後、DNA鋳型が存在していないことをPCRによってアッセイした)、そして転写された材料を逆転写させ、PCRを使用して増幅させ、その後、クローニングおよび配列決定を行った。増幅させたライブラリーに由来する48個のクローンと最初のライブラリーに由来する48個のクローンを配列決定した。縮重領域の中でのヌクレオチドの出現率の統計データを、偏りが存在するかどうかを見るために試験した。図10に示したように、転写後のヌクレオチドの組成の割合は、それぞれのヌクレオチド(A、T、CおよびG)の割合がほぼ等しい最初のライブラリーのヌクレオチド組成の割合と非常に似ていた。このことは、転写にY639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを使用した場合には、ヌクレオチドの偏りは生じないことを示している。
【0199】
実施例4C:様々なリーダー配列を用いた場合の転写物量の比較
鋳型1から4:
多種多様のリーダー配列とともにY639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを使用した場合の転写量を比較するために、リーダー配列(配列番号126から129の1位から14位、以下)中のピリミジンに対して様々な割合のプリンを含む4種類の鋳型を、様々な定常領域を用いて合成した。DNA鋳型を、ABI EXPEDITE(登録商標)(Applied Biosystems,Foster City,CA)DNA合成装置を使用して合成し、標準的な方法によって脱保護した。配列(5’から3’方向で示す)は以下である:
【0200】
【化22】
鋳型を以下に示すそれらのそれぞれのプライマーを用いて増幅させた:
【0201】
【化23】
【0202】
【化24】
鋳型を、T7 RNAポリメラーゼ(Y639L/H784A/K378R)を含む15mLのインビトロでの転写反応において使用した。転写は、200mMのHepes、40mMのDTT、2mMのスペルミジン、0.01%のTriton X−100、10%のPEG−8000、8mMのMgCl2、2.5mMのMnCl2、1.5mMのmCTP、1.5mMのmUTP、1.5mMのmGTP、1.5mMのmATP、1mMのGMP、0.01単位/μLの無機ピロホスファターゼ、および約9μg/mLのT7 ポリメラーゼ(Y639L/H784A/K378R)、ならびに、0.2μMの鋳型DNAを使用して行った。RNAを沈殿させ、そして、10%の変性PAGE上で精製した。RNAを、300mMのNaOAc、20mMのEDTA中でゲルから一晩かけて溶出させ、沈殿させ、そしてUV Specを用いて定量した。収量は、試験した4種類のリーダー配列の間で大きくは異ならず、そして以下の表1Aに示す。
【0203】
【化25】
鋳型5から8
上記の鋳型1から4と同様に、複数のリーダー配列についての転写量を評価した。4種類の鋳型を様々な定常領域を用いて合成した。DNA鋳型を、ABI EXPEDITE(登録商標)(Applied Biosystems,Foster City,CA)DNA合成装置を使用して合成し、標準的な方法によって脱保護した。配列(5’から3’方向で示す)は以下である:
【0204】
【化26】
鋳型をそれらのそれぞれのプライマーを用いて増幅させた:
【0205】
【化27】
【0206】
【化28】
その後、鋳型を、T7 RNAポリメラーゼ(Y639L/H784A/K378R)を含む0.5mLのインビトロでの転写に使用した。転写は、200mMのHepes、40mMのDTT、2mMのスペルミジン、0.01%のTriton X−100、10%のPEG−8000、8mMのMgCl2、2.5mMのMnCl2、1.5mMのmCTP、1.5mMのmUTP、1.5mMのmGTP、1.5mMのmATP、1mMのGMP、0.01単位/μLの無機ピロホスファターゼ、および約9μg/mLのT7ポリメラーゼ(Y639L/H784A/K378R)、ならびに、0.2μMの鋳型DNAを使用して行った。RNAを沈殿させ、そして、10%の変性PAGE上にロードした。RNAを、ゲル上でUV吸光度によって視覚化した。収量は、収量は、試験した4種類のリーダー配列の間で大きくは異ならず、そして以下の表1Aに示す(相対的な転写量を示す)。
【0207】
【化29】
特定の実施形態においては、上記で同定した鋳型が、本発明の転写方法および/またはアプタマー選択方法において使用され得る。
【0208】
実施例4D:P266L/Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを使用したMNA転写
以下のDNA鋳型およびプライマーを使用して、二本鎖の転写鋳型を生じるためのポリメラーゼ連鎖反応をプログラムした。Nは、ATGCのそれぞれが存在する可能性がほぼ等しい縮重位置を示しており、全ての配列を、5’から3’方向で列挙する。PCR鋳型(ARC2118)
【0209】
【化30】
【0210】
【化31】
得られた二本鎖の転写鋳型を、その後、以下のようなそれぞれの試料についての200μLの転写混合物をプログラムするために使用した:HEPES(200mM)、DTT(40mM)、スペルミジン(2mM)、Triton X−100(0.01%)、MgCl2(8mM)、MnCl2(2.5mM)、PEG−8000(10%w/v)、1.5mMの各2’−OMe NTP、GMP 1mM、100〜200nMの転写鋳型、無機ピロホスファターゼ(1単位)、pH7.5、以下に示すように稀釈したT7変異体ポリメラーゼ(P266L/Y639L/H784A/K378R)。転写混合物を37℃で一晩インキュベートした(16時間)。
【0211】
インキュベーション後、混合物をイソプロパノールで沈殿させ、得られたペレットを溶解させ、変性PAGE(12.5%のアクリルアミド)を使用して60分間、25Wで変性させた。試料を視覚化させ、260nmでのUVシャドウによって定量した。
【0212】
【化32】
(実施例5)
Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを使用したアプタマーの選択
ヒトAng2(本明細書中以後、「h−Ang2」)に対するアプタマーを同定するための選択を、2’−OMeプリンヌクレオチドおよび2’−OMeピリミジンヌクレオチドからなるプール(本明細書中以後、「MNA」)を使用して行った。この選択ストラテジーによって、h−Ang2に特異的な高親和性アプタマーが得られた。
【0213】
ヒトAng2は、R&D Systems,Inc.(Minneapolis,MN)から購入した。T7 RNAポリメラーゼ(Y639L/H784A/K378R)を発現させ、そして上記の実施例3に記載したように精製した。2’−OMeプリンおよび2’−OMeピリミジンヌクレオチドは、TriLink BioTechnologies(San Diego,CA)から購入した。
【0214】
Ang2アプタマーの選択
プールの調製
配列
【0215】
【化33】
を有するDNA鋳型を、ABI EXPEDITE(登録商標)(Applied Biosystems,Foster City,CA)DNA合成装置を使用して合成し、標準的な方法によって脱保護した。鋳型を、プライマー
【0216】
【化34】
を用いて増幅させ、その後、T7 RNAポリメラーゼ(Y639L/H784A/K378R)でのインビトロでの転写のための鋳型として使用した。転写は、200mMのHepes、40mMのDTT、2mMのスペルミジン、0.01%のTriton X−100、10%のPEG−8000、8mMのMgCl2、2.5mMのMnCl2、1.5mMのmCTP、1.5mMのmUTP、1.5mMのmGTP、1.5mMのmATP、1mMのGMP、0.01単位/μLの無機ピロホスファターゼ、および約9μg/mLのT7ポリメラーゼ(Y639L/H784A/K378R)、ならびに、0.5μMの鋳型DNAを使用して行って、ARC2118 mRmYプールを作成した。
【0217】
選択
選択は、330pmole(2×1014個の分子)のMNA ARC2118プールを、100μLの最終容量の選択緩衝液(1×ダルベッコPBS(DPBS))の中で100pmoleのタンパク質と共に、室温で1時間インキュベートすることによって開始した。RNA−タンパク質複合体と、結合していないRNA分子を、0.45マイクロンのニトロセルローススピンカラム(Schleicher and Schuell,Keene,NH)を使用して分離させた。カラムをKOHで前処理し(1mLの0.5M KOH中のSoakカラムフィルター RTで15分間;スピンスルー(spin through)、1mLのdH2O中のSoakフィルター、RTで5分間;スピンスルー)、1mLの1×PBSで2回洗浄し、その後、プール:Ang2複合体を含む溶液をカラムに添加し、1500×gで2分間遠心分離した。フィルターを、500μLのDPBSで2回洗浄して、非特異的結合剤を除去した。RNAを、2×100μLの溶出緩衝液(7Mの尿素、100mMの酢酸ナトリウム、3mMのEDTA、予め95℃に加熱した)の添加によって溶出させ、その後、エタノールで沈殿させた。RNAを、製造業者の説明書にしたがって、プライマー(配列番号119)を使用して、ThermoScript RT−PCR(登録商標)システム(Invitrogen,Carlsbad,CA)を用いて逆転写させた。cDNAを、製造業者の説明書にしたがって、配列番号118および配列番号119を使用して、Taqポリメラーゼ(New England Biolabs,Beverly,MA)を用いてPCRによって増幅させた。鋳型を、プールの調製のために上記に記載したように転写させ、そして変性ポリアクリルアミドゲル上で精製した。
【0218】
2回目を、1回目と同じ方法で行った。3回目〜12回目は、疎水性プレート上に固定したh−Ang2を用いて行った。各回の選択は、100μLの1×DPBS中で室温で1時間、Nunc Maxisorp疎水性プレートの表面上に20pmoleのh−Ang2を固定させることによって開始した。プレートを、120μLのDPBSで5回洗浄し、その後、ブロック緩衝液(1×DPBS、および0.1mg/mLのBSA)とともに1時間インキュベートした。その後、上清を除去し、ウェルを、120μLのDPBSで5回洗浄した。プールのRNAを、空のウェルの中で室温で1時間、次いで、100μLのブロック緩衝液で予めブロックされたウェルの中で1時間、インキュベートした。3回目以降は、標的を固定したウェルを、ポジティブ選択工程の前に100μLのブロック緩衝液(1×PBS、0.1mg/mLのtRNA、0.1mg/mLのssDNA、および0.1mg/mLのBSA)の中で室温で1時間ブロックした。全ての場合に、固定されたh−Ang2に結合したプールのRNAを、逆転写(「RT」)混合物(3’プライマー、配列番号119、およびThermoscript RT,Invitrogen,Carlsbad,CA)の添加によって選択プレート中で直接逆転写させ、その後、65℃で1時間インキュベーションした。得られたcDNAを、PCRのための鋳型として使用し(Taqポリメラーゼ,New England Biolabs,Beverly,MA)、そして転写は1回目について記載したものと同じとした。それぞれの回についての条件は表3に示す。
【0219】
【化35】
【0220】
【化36】
MNAアプタマー結合分析
ドットブロット結合アッセイを、プールのタンパク質結合親和性をモニターするために、選択によって行った。微量の32Pで末端標識したプールのRNAをh−Ang2と混合し、30μLの最終容量においてDPBS緩衝液中で30分間、室温でインキュベートした。混合物をニトロセルロース膜、ナイロン膜、およびゲルブロット膜(上から下に)でアセンブリしたドットブロット装置(Minifold−1 Dot Blot,Acrylic,Schleicher and Schuell,Keene、NH)にアプライした。タンパク質に結合したRNAはニトロセルロースフィルター上に捕捉され、一方、タンパク質に結合していないRNAはナイロンフィルター上に捕捉される。h−Ang2結合の富化は、9回目から見られた。9回目、10回目、および12回目のプールの鋳型を、製造業者による説明書にしたがってTOPO TAクローニングキット(Invitrogen,Carlsbad,CA)を使用してクローニングし、そして26個の特有のクローンを化学合成のために選択し、解離定数(KD)を決定した。簡単に説明すると、合成のRNAをγ−32P ATPで5’末端を標識し、KD値を、ドットブロットアッセイと1×DPBS(w/Ca2+およびMg2+)(Gibco,カタログ番号14040,Invitrogen,Carlsbad,CA)の緩衝液条件を使用して決定した。KDは、データを以下の方程式にフィットさせることによって概算した:結合したRNAの割合=amplitude*(((AptConc+[h−Ang2]+KD)−SQRT((AptConc+[h−Ang2]+KD)2−4(AptConc*[h−Ang2])))/2*AptConc))+バックグラウンド。結果を以下の表4に報告する。
【0221】
26種類の特有の配列の中では、8種類は類似するモチーフを共有しており、そして類似する結合活性および阻害活性を有していた。これらの配列を、ファミリーIと同定した。ファミリーIIには、類似する結合活性および阻害活性を有していたモチーフを共有していた2種類の配列を含めた。
【0222】
MNAアプタマー機能の分析
Elisaアッセイ
いくつかのアプタマーをELISAアッセイにおいて試験した。ELISAアッセイは、Tie2受容体に対するAng2の結合を妨害するそれらの能力を測定するように設定した。Tie2受容体を捕捉するために、100μLのPBS(pH7.4)の中の150ngのTie2−Fc(R&D systems 313−TI−100−CF,Minneapolis,NY)を96ウェルMaxisorbプレート(NUNC#446612,Rochester,NY)上にのせ、そして4℃で一晩インキュベートした。捕捉の際には、50μLの様々な濃度の合成のRNAを、0.1%のBSAを含むPBS中の1.8nM(100ng/mLの最終Ang2濃度を有する50μLの3.6nMのAng2(200ng/mL)(R&D systems 623−AN−025/CF,Minneapolis,NY)と混合し、そして室温で1時間インキュベートした。捕捉溶液を一晩のインキュベーション後に除去し、そしてプレートを200μLのTBST(25mMのTris−HCl、pH7.5、150mMのNaCl、および0.01%のTween 20)で3回洗浄した。その後、プレートを、5%の無脂肪粉乳を含む200μLのTBSTで、室温で30分間ブロックした。ブロック後、プレートを、200μLのTBSTで再度3回、室温で洗浄し、合成のRNA:Ang2混合物をプレートに添加し、室温で1時間インキュベートした。その後、プレートを、200μLのTBSTで3回洗浄し、100μLのビオチニル化ヤギ抗Ang2抗体(1:1000;R&D Systems BAF623,Minneapolis、MN)を添加し、室温で1時間インキュベートした。200μLのTBSTでの3回の洗浄後、100μLのHRP結合ストレプトアビジン(1:200;R&D Systems #DY998,Minneapolis、MN)を添加し、そして室温で0.5時間インキュベートした。その後、プレートを再び200μLのTBSTで3回洗浄し、100μLのTMP溶液(Pierce,#34028)を添加し、そして、室温で5分間、暗所でインキュベートした。2NのH2SO4を含む100μLの溶液を反応を停止させるために添加し、そしてプレートをSpectroMaxによって450nmで読み取った。結果を、以下の表4の最後の列に示す。
【0223】
FACSアッセイ
ヒトの臍帯血内皮細胞(「HUVEC」)(ATCC)およびK293細胞(ヒトTie2受容体を過剰発現している細胞株)を使用して、細胞膜上のTie2受容体に対するAng2の結合を阻害する特異的MNA Ang2アプタマーのIC50を決定した。簡単に説明すると、組み換え体哺乳動物発現ベクターpCDMA3.1−Tie2を293細胞(ATCC,Manassas,VA)にトランスフェクトし、次いで、G418(Invitrogen,Carlsbad,CA)での選択後に安定なクローンを得た。フローサイトメトリーは、HUVECおよびK283細胞の両方の上でのTie2タンパク質の発現を示した。Ang2の滴定アッセイによって、さらに、HUVECおよびK293細胞上でのアプタマー阻害アッセイのためにAng2(R&D Systems.Minneapolis,MN)の量を決定した。これはそれぞれ、1μg/mLおよび0.1μg/mLであった。
【0224】
フローサイトメトリー結合アッセイにおいて、HUVECおよびK293細胞(2×105細胞/ウェル)を、V底96ウェルプレートの中でペレット化させ、これを続いて、MNAアプタマー/Ang2溶液の中に再度懸濁させ、そして2時間インキュベートした。アプタマー/Ang2溶液を、FACs緩衝液(PBS中の1%のBSA、0.2%のアジ化ナトリウム)中のAng2と共に、様々な投与量のアプタマー(100nM、33.3nM、11.1nM、3.7nM、1.2nM、0.411nM、0.137nM、および0.0456nM)を、氷上で30分間プレインキュベーションすることによって調製した。FACs緩衝液での3回の洗浄の後、細胞を、ビオチニル化抗ヒトAng2抗体(5μg/mL;R&D Systems,Minneapolis,MN)と共に30分間インキュベートし、続いて、ストレプトアビジンPE(1:10;BD Biosciences,San Jose,CA)とともにさらに30分間インキュベーションした。FACS分析は、FACScan(BD Biosciences,San Jose,CA)を使用して完了した。結果を以下の表4に報告する。
【0225】
(表4 抗Ang2 MNAアプタマーについての結合および機能の結果のまとめ)
【0226】
【化37】
【0227】
【化38】
(実施例6)
Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを使用したアプタマーの選択
ヒトIgE(本明細書中以後「h−IgE」)に対するアプタマーを同定するための選択を2’−OMeプリンヌクレオチドおよび2’−OMeピリミジンヌクレオチドからなるプール(本明細書中以後、「mRmY」)を使用して行った。この選択ストラテジーによって、h−IgEに特異的な高親和性アプタマーが得られた。
【0228】
ヒトIgEは、Athens Research & Technology(カタログ番号16−16−090705 Athens,GA)から購入した。T7 RNAポリメラーゼ(Y639L/H784A/K378R)を発現させ、そして上記の実施例3に記載したように精製した。2’−OMeプリンおよび2’−OMeピリミジンヌクレオチドは、TriLink BioTechnologies(San Diego,CA)から購入した。
【0229】
IgEアプタマーの選択
プールの調製
配列
【0230】
【化39】
を有するDNA鋳型を、ABI EXPEDITE(登録商標)(Applied Biosystems,Foster City,CA)DNA合成装置を使用して合成し、標準的な方法によって脱保護した。この鋳型を、プライマー
【0231】
【化40】
を用いて増幅させ、その後、T7 RNAポリメラーゼ(Y639L/H784A/K378R)でのインビトロでの転写のための鋳型として使用した。転写は、50mMのHEPES、10mMのDTT、0.5mMのスペルミジン、0.0025%のTriton X−100、10%のPEG−8000、8mMのMgCl2、2.5mMのMnCl2、1.5mMのmCTP、1.5mMのmUTP、1.5mMのmGTP、1.5mMのmATP、1mMのGMP、0.01単位/μLの無機ピロホスファターゼ、および約9μg/mLのT7ポリメラーゼ(Y639L/H784A/K378R)、ならびに、0.3μMの鋳型DNAを使用して行って、ARC2118 MNAプールを作成した。
【0232】
選択
選択は、330pmole(2×1014個の分子)のMNA ARC2118プールを、100μLの最終容量の選択緩衝液(1×ダルベッコPBS(DPBS))の中のBSAでブロックした疎水性プレート(Maxisorpプレート,Nunc,Rpchester,NY)に結合させた24pmoleのタンパク質とともに、室温で1時間インキュベートすることによって開始した。ウェルを、120μLのDPBSで4回洗浄して、非特異的結合剤を除去した。RNAを溶出させ、そして製造業者の説明書にしたがって、プライマー(配列番号119)を使用して、ThermoScript RT−PCR(登録商標)システム(Invitrogen,Carlsbad,CA)を用いて逆転写させた。cDNAを、製造業者の説明書にしたがって、配列番号118および配列番号119を使用して、Taqポリメラーゼ(New England Biolabs,Beverly,MA)を用いてPCRによって増幅させた。鋳型を、プールの調製のために上記に記載したように転写させ、そして変性ポリアクリルアミドゲル上で精製した。
【0233】
全ての回を、疎水性プレート上に固定したh−IgEを用いて行った。各回の選択は、100μLの1×DPBS中で室温で1時間、Nunc Maxisorp疎水性プレートの表面上に24pmoleのh−IgEを固定させることによって開始した。プレートを、120μLのDPBSで4回洗浄し、その後、ブロック緩衝液(1×DPBS、および0.1mg/mLのBSA)とともに1時間インキュベートした。その後、上清を除去し、ウェルを、120μLの1×DPBSで4回洗浄した。2回目からは、プールのRNAを、空のウェルの中で室温で1時間、次いで、100μLのブロック緩衝液で予めブロックされたウェルの中で1時間、インキュベートした。2回目以降は、非特異的競合剤をポジティブ対照工程(0.1mg/mLのtRNA,および0.1mg/mLのssDNA)に加えた。全ての場合に、固定されたh−IgEに結合したプールのRNAを、逆転写(「RT」)混合物(3’プライマー、配列番号119、およびThermoscript RT,Invitrogen,Carlsbad,CA)の添加によって選択プレート中で直接逆転写させ、その後、65℃で1時間インキュベーションした。得られたcDNAを、PCRのための鋳型として使用し(Taqポリメラーゼ,New England Biolabs,Beverly,MA)、そして転写は1回目について記載したものと同じとした。それぞれの回についての条件は表5に示す。
【0234】
【化41】
MNAアプタマーの結合分析
ドットブロット結合アッセイを、プールのタンパク質結合親和性をモニターするための選択によって行った。微量の32Pで末端標識したプールのRNAをh−IgEと混合し、30μLの最終容量においてDPBS緩衝液中で30分間、室温でインキュベートした。この混合物をニトロセルロース膜、ナイロン膜、およびゲルブロット膜(上から下に)でアセンブリしたドットブロット装置(Minifold−1 Dot Blot,Acrylic,Schleicher and Schuell,Keene、NH)にアプライした。タンパク質に結合したRNAはニトロセルロースフィルター上に捕捉され、一方、タンパク質に結合していないRNAはナイロンフィルター上に捕捉される。h−IgE結合の富化は、8回目から見られた。5回目、8回目、および12回目のプールの鋳型を、製造業者による説明書にしたがってTOPO TAクローニングキット(Invitrogen,Carlsbad,CA)を使用してクローニングした。配列決定データは、8回目のプールが、配列全体の59%を含む、1つの主要なクローンに集中していたことを明らかにした。この主要なクローンと3個の可能性のあるミニマー(minimer)を化学合成のために選択し、解離定数(KD)を決定した。簡単に説明すると、合成のRNAをγ−32P ATPで5’末端標識し、KD値を、ドットブロットアッセイと1×DPBS(w/Ca2+およびMg2+)(Gibco,カタログ番号14040,Invitrogen,Carlsbad,CA)の緩衝液条件を使用して決定した。KDは、データを以下の方程式にフィットさせることによって概算した:結合したRNAの割合=amplitude*(((AptConc+[h−IgE]+KD)−SQRT((AptConc+[h−IgE]+KD)2−4(AptConc*[h−IgE])))/2*AptConc))+バックグラウンド。主要なクローンは、約800pMのKDを有していた。最もよく結合したミニマーもまた、サルIgE(m−IgE)に対する結合について試験したが、サルIgEタンパク質に対して交差反応性である結合は示さなかった。この交差反応性がないことを、ELISAによっても確認した。3’末端上に反転したdTを有するミニマーを、医薬品化学プロセスのための親分子として使用した。
【0235】
医薬品化学
IgE特異的MNAミニマーの1つの化学的組成(図11)を、化合物の血漿安定性を維持したまま、親和性および効力を改善するために変化させた。このプロセスには最小化させたIgEアプタマーの誘導体のシリーズの設計、合成、および評価を含めた。ここでは、このシリーズの個々の誘導体には、どの残基が置換を寛容化するかを決定するために、予め決定したヌクレオチドの個々の出現頻度の1つの修飾を含めた。修飾の最初のセットは、個々の特有の2’−OMeヌクレオチドについてのデオキシヌクレオチドの置換とした。別の回の修飾においては、誘導体の1つのシリーズを合成した。ここでは、個々の誘導体に、様々なヌクレオチド間結合部位に1つのホスホロチオエート修飾を含めた。これらの初期段階での修飾において得られたデータを使用して、最小化したアプタマーについての構造と活性の関係(SAR)を確立した。続く段階での修飾においてはアプタマーを合成し、そして、最初のSARデータに基づいて設計した置換の複合的なセットを用いて試験した。複合的な置換のパネルから、その組成の中に導入された2’−デオキシ置換に対して2つの2’−OMeを有する39ヌクレオシドの長さのアプタマーを同定した。加えて、その組成の中に、1つの2’−OMeから2’−デオキシへの置換と、その中に取り込ませた4個のリン酸基からホスホロチオエートへの置換基を有する、39ヌクレオチドの長さの、得られた修飾された最小化したアプタマーを同定した。図12に示したように、このデオキシ/ホスホロチオエート修飾されたアプタマーは、最小化したが未修飾のもとのアプタマー、ならびに、2’−OMe置換について2つのデオキシを有するもとの最小化したアプタマーのいずれと比較しても、高い結合親和性を示した。
【0236】
血清安定性
最小化した未修飾の元のアプタマー、およびデオキシ/ホスホロチオエート修飾されたアプタマーを、ヒト、ラット、およびサルの血清の中でのそれらの安定性を決定するためにアッセイした。個々のアプタマーを、90%の血清中に5μMの最終濃度のなるように、1mlのプールした血清に添加した。アプタマーを、震盪させながら37℃でインキュベートし、そして時点は、0、0.5、1、4、24、48、72、および98時間とした。それぞれの時点で、インキュベートした試料からの90μlのストックを、10μlの0.5MのEDATに添加し、BIACORE 2000システムを使用する後の安定性についての分析のために、−20℃で凍結させた。
【0237】
全てのバイオセンサーによる結合の測定は、研究グレードのCM5バイオセンサーチップ(BIACORE Inc.,Piscataway,NJ)を取り付けたBIACORE 2000を使用して、25℃で行った。精製した組み換え体ヒトIgE(Athens Research & Technology,Athens,GA)を、アミノ−カプリング化学反応を使用してバイオセンサーの表面に固定した。これを行うために、2つのフローセルの表面を最初に、0.1MのNHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)と0.4MのEDC(3−(N,N−ジメチルアミン)プロピル−N−エチルカルボジイミド)の1:1混合物を、5μl/分の流速で7分間、最初に活性化させた。表面の活性化後、1つのフローセルに50μg/mlのIgEを、10μl/分で20分間かけて注入して、活性化さた表面に対する共有結合を確立させた。次に、1Mの塩酸エタノールアミン(pH8.5)を5μl/分で7分間かけて注入して、残っているエステルを不活化させた。ブランクとして使用したフローセルについては、1Mの塩酸エタノールアミン(pH8.5)を7分間かけて注入して、タンパク質の注入を行わずに、残っているエステルを不活化させた。
【0238】
アプタマーの鎖のセットを、標準曲線を作成するために調製したチップを通して進ませ、その後、全ての時点を分析した。標準曲線を確立するために、アプタマーを、4%のヒト血清と50mMのEDATを補充したHBS−P緩衝液(10mMのHEPES、pH7.4、150mMのNaCl、0.005%のSurfactant 20)の中に段階稀釈した(200nMから12.5nM)。全ての稀釈した試料を、20μl/分で5分間かけてBiacore 2000に注入し、3分間待った。チップを作成するために1NのNaClを、30μl/分で60秒間注入した。結合段階の最後に、RUピークの応答をアプタマーの濃度に対してプロットし、そして、標準曲線を4パラメーターロジステッィク関数(Four−Parameter logistic function)を使用して作成した。ヒト、ラット、およびサルの血清の中での活性なアプタマーの濃度を測定するために、時点の試料を、Biacore 2000への注入の直前に、HBS−Pの中に22.5倍に稀釈して、4%の最終血清濃度とした。個々の血清インキュベーション時間での機能的なアプタマーの濃度を、上記で作成した標準曲線を使用してRU応答単位を濃度に変換することによって計算した。さらなる量の対照測定として、2つのアプタマー標準物を、実験の最後に別々に試験して、BIACOREによって測定した濃度が標準物の20%未満となることを確実にした。最小化した未修飾の元のアプタマーと、デオキシ/ホスホロチオエート修飾されたアプタマーはいずれも、ヒト、ラット、およびサルの血清において、98時間で90%を上回る活性であることを決定した。
【0239】
本発明は、記載および実施例によってここに記載されており、当業者は、本発明を様々な実施形態で行うことができること、そして上記の記載および実施例は説明の目的のためのものであり、以下の特許請求の範囲を限定する目的のためのものではないことを理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0240】
【図1】図1は、ランダム配列オリゴヌクレオチドのプールからのインビトロでのアプタマーの選択(SELEX(登録商標))プロセスの模式図である。
【図2】図2は、Terminal Region SELEX(登録商標)(TR−SELEX(登録商標))法のフロー図を示す。
【図3】図3は、TR−SELEX(登録商標)選択の前(R0)および後(R3)の、転写鋳型の候補のライブラリーの20個の縮重位置から選択された領域の組み合わせられた平均のヌクレオチド組成のグラフによる分析を示す。
【図4】図4は、転写混合物の中での2’−OH GTPスパイク用いた、Y639F/H784A/K378R(「FAR」)変異体T7 RNAポリメラーゼおよびY639L/H784A/K378R(「LAR」)変異体T7 RNAポリメラーゼを使用した、ARC2118、ARC2119、ARC2120、およびARC2121についてのPAGEゲル分析のUVシャドウイングによって定量した、相対的な転写物量を示す。*は、所定の量が、LAR変異体ポリメラーゼを用いて転写されたARC2118に対する比較であることを示しており、これは、UV−シャドウによる最も多い定量された量を示す。
【図5】図5Aは、野生型T7 RNAポリメラーゼの核酸配列(配列番号120)を示し、そして図5Bはアミノ酸配列(配列番号121)を示す。
【図6A】図6Aは、変異体T7 RNAポリメラーゼY639L/H784Aの核酸配列(配列番号122)を示す。
【図6B】図6Bは、T7変異体ポリメラーゼY639L/H784A/K378Rの核酸配列(配列番号123)を示す。
【図6C】図6Cは、変異体T7ポリメラーゼP266L/Y639L/H784Aの核酸配列(配列番号124)を示す。
【図6D】図6Dは、変異体T7ポリメラーゼP266L/Y639L/H784A/K378Rの核酸配列(配列番号125)を示す。
【図7】図7は、転写混合物の中でのrGTP(2’−OH GTP)の滴定を用いた、Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを使用した、ARC2118およびARC2119についてのPAGEゲル分析のUVシャドウイング(UV shadowing)によって定量した、相対的な転写物量を示す。*は、所定の量が20μMのrGTPを用いて転写されたARC2118に対する比較であることを示しており、これは、UV−シャドウによる最も多い定量された量を示した。
【図8】図8は、転写混合物の中で様々な濃度の2’−OMe NTP(A、U、C、およびG)、MgCl2、およびMnCl2、ならびに、rGTPを含まないもの(2’−OH GTP)を用いた、Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを使用したARC2119についてのPAGEゲル分析のUVシャドウイングによって定量した、相対的な転写物量を示す。所定の量は、1mMの各2’−OMe NTP、6.5mMのMgCl2、および2mMのMnCl2の転写条件に対する比較である。
【図9】図9は、Y369F/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを使用した全てのRNAまたは2’−OMe転写物の厳密性(fidelity)と比較した、Y639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを用いた完全なる2’−OMe転写物(100%の2’−OMe A、U、C、G)のヌクレオチドの挿入、欠失、および置換の分析を示す表である。表中、(1)は、「Direct in Vitro Selection of a 2’−O−Methyl Aptamer to VEGF」Burmeisterら、(2005)Chemistry and Biology,12:25−33によるデータを示す。ここでは、転写はFAR T7変異体ポリメラーゼを用いて行われた。そして(2)は、転写がLAR T7変異体ポリメラーゼを用いて行われたことを示す。
【図10】図10は、1回のY639L/H784A/K378R変異体T7 RNAポリメラーゼを用いた完全なる2’−OMe転写、その後のDNase処理、逆転写、添え木で支えられた連結反応、およびPCR増幅の前、ならびに後の、完全なる2’−OMe転写物(100%の2’−OMe A、T、C、G)のヌクレオチド組成の割合の分析を示す表である。
【図11】図11は、5’から3’方向で示された、その3’末端にキャップ(黒色の丸)を有する最も小さいMNA抗IgEアプタマーの図である。
【図12】図12は、最小のMNA抗IgEアプタマー、2つのデオキシ置換を有する最小のMNA抗IgEアプタマー、および1つのデオキシ置換と複数のホスホロチオエート置換を有する最小のMNA抗IgEアプタマーの模式図である。それぞれが5’から3’方向で示されており、そしてそれぞれが、その3’末端にキャップ(黒色の丸)を有する。
【図13】図13は、標準的なモノPEG化(mono−PEGylation)、マルチPEG化(multiple PEGylation)、およびPEG化による二量体化を示す、様々なPEG化のストラテジーを示している図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
639位と784位とに改変アミノ酸を含む、単離されたT7 RNAポリメラーゼであって、該784位の改変アミノ酸がアラニンである場合には、該639位の改変アミノ酸はフェニルアラニンではない、単離されたT7 RNAポリメラーゼ。
【請求項2】
さらに378位に改変アミノ酸を含む、請求項1に記載の単離されたT7 RNAポリメラーゼ。
【請求項3】
さらに266位に改変アミノ酸を含む、請求項1〜2のいずれかに記載の単離されたT7 RNAポリメラーゼ。
【請求項4】
前記639位の改変アミノ酸がロイシンであり、前記784位の改変アミノ酸がアラニンである、請求項1〜3のいずれかに記載の単離されたT7 RNAポリメラーゼ。
【請求項5】
前記266位の改変アミノ酸がロイシンである、請求項1〜4のいずれかに記載の単離されたT7 RNAポリメラーゼ。
【請求項6】
前記378位の改変アミノ酸がアルギニンである、請求項1〜5のいずれかに記載の単離されたT7 RNAポリメラーゼ。
【請求項7】
前記改変アミノ酸が、2’−OMeヌクレオチド三リン酸のみを含む転写反応において、ポリメラーゼによる、2’−OMe修飾を含む核酸の転写量を増大させる、請求項1〜6のいずれかに記載の単離されたT7 RNAポリメラーゼ。
【請求項8】
前記転写量の増大が、転写が同じ転写条件下で行われた場合の、前記改変アミノ酸を欠くT7 RNAポリメラーゼに対する比較である、請求項8に記載の単離されたT7 RNAポリメラーゼ。
【請求項9】
前記改変アミノ酸によって、2’−OMeヌクレオチド三リン酸に対する識別が低下する、請求項1〜8のいずれかに記載の単離されたT7 RNAポリメラーゼ。
【請求項10】
前記2’−OMeヌクレオチド三リン酸に対する識別の低下が、前記改変アミノ酸を欠くT7 RNAポリメラーゼに対する比較である、請求項9に記載の単離されたT7 RNAポリメラーゼ。
【請求項11】
前記改変アミノ酸を欠くT7 RNAポリメラーゼが、639位のアミノ酸がフェニルアラニンに変化しており、そして784位のアミノ酸がアラニンに変化している野生型T7 RNAポリメラーゼである、請求項8または10に記載の単離されたT7 RNAポリメラーゼ。
【請求項12】
配列番号1、配列番号2、配列番号102、および配列番号103からなる群より選択されるアミノ酸を含む、単離されたポリペプチド。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のポリメラーゼを、転写を生じるために十分な反応条件下で鋳型核酸とともにインキュベートする工程を含む、一本鎖核酸を転写する方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載のポリペプチドをコードする、単離された核酸。
【請求項15】
配列番号122、配列番号123、配列番号124、および配列番号125からなる群より選択される、単離された核酸配列。
【請求項16】
請求項14または15に記載の単離された核酸配列を含む、ベクター。
【請求項17】
プロモーターに作動可能に連結された請求項14または15に記載の核酸を含む、発現ベクター。
【請求項18】
請求項17に記載の発現ベクターを含む、細胞。
【請求項19】
変異体T7 RNAポリメラーゼが前記細胞によって発現される、請求項18に記載の細胞。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれかに記載のT7 RNAポリメラーゼを含む容器を含む、キット。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれかに記載のT7 RNAポリメラーゼをコードする核酸を含む容器を含む、キット。
【請求項22】
完全な2’−OMe核酸を転写する方法であって、
a)変異体RNAポリメラーゼ、核酸転写鋳型、およびヌクレオシド三リン酸を含む反応混合物中で鋳型核酸をインキュベートする工程であって、該ヌクレオシド三リン酸が2’−OMeである、工程、ならびに、
b)一本鎖核酸を生じるために十分な時間の間、該転写反応混合物を転写する工程であって、該一本鎖核酸のヌクレオチドは、該転写物の最初のヌクレオチドが2’修飾され得ないことを除き、全てが2’−OMe修飾される、工程
を包含する、方法。
【請求項23】
前記変異体RNAポリメラーゼが、639位と784位とに改変アミノ酸を含む変異体T7 RNAポリメラーゼである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記変異体T7 RNAポリメラーゼが、請求項1から12のいずれか1項に記載の変異体T7 RNAポリメラーゼである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記転写反応が、さらにマグネシウムイオンを含む、請求項22から24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記転写反応が、さらにマンガンイオンを含む、請求項22から25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記転写反応が、さらに非2’−OMeグアノシン非三リン酸残基を含む、請求項22から26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記転写鋳型がT7 RNAポリメラーゼプロモーターを含む、請求項22から27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記マグネシウムイオンが、前記マンガンイオンよりも3.0から3.5倍高い濃度で前記転写反応の中に存在する、請求項26から28に記載の方法。
【請求項30】
各ヌクレオチド三リン酸が1.0mMの濃度で前記転写反応の中に存在し、マグネシウムイオンの濃度が6.5mMであり、そしてマンガンイオンの濃度が2.0mMである、請求項26から29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
各ヌクレオチド三リン酸が1.5mMの濃度で前記転写反応の中に存在し、マグネシウムイオンの濃度が8mMであり、そしてマンガンイオンの濃度が2.5mMである、請求項26から30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
各ヌクレオチド三リン酸が2.0mMの濃度で前記転写反応の中に存在し、マグネシウムイオンの濃度が9.5mMであり、そしてマンガンイオンの濃度が3.0mMである、請求項26から31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記転写反応がポリエチレングリコールをさらに含む、請求項22から32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記非2’−OMeグアノシン非三リン酸残基が、グアノシン一リン酸、グアノシンニリン酸、2’−フルオログアノシン一リン酸、2’−フルオログアノシン二リン酸、2’−アミノグアノシン一リン酸、2’−アミノグアノシンニリン酸、2’−デオキシグアノシン一リン酸、および2’−デオキシグアノシンニリン酸からなる群より選択される、請求項22から33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記転写反応が無機ピロホスファターゼを含む、請求項22から34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
アプタマーを同定するための方法であって、
a)請求項1から12のいずれか1項に記載の変異体ポリメラーゼと、1つ以上の核酸転写鋳型を含む転写反応混合物を調製する工程;
b)該転写反応混合物を転写して、一本鎖核酸の候補混合物を生じる工程であって、該一本鎖核酸のヌクレオチドのうち、必要に応じて1つを除く全てが2’修飾される、工程;
c)該候補混合物を標的分子と接触させる工程;
d)該候補混合物の親和性と比較して、該標的分子に対して高い親和性を有する核酸を、該候補混合物から分離する工程;ならびに、
e)該親和性が高い核酸を増幅して、アプタマーが富化した混合物を得る工程であって、それによって、該アプタマーの最初のヌクレオチドが2’修飾され得ないことを除き、全て2’修飾されたヌクレオチドを含む、該標的分子に対するアプタマーが同定される、工程、
を包含する、方法。
【請求項37】
前記増幅工程が
(i)必要に応じて、前記親和性が高い核酸を前記標的から解離させること;
ii)該核酸−標的複合体から解離した該親和性が高い核酸を逆転写すること;
iii)該逆転写された親和性が高い核酸を増幅すること;および
(ii)前記転写鋳型として該増幅かつ逆転写された親和性が高い核酸を含む転写反応混合物を調製し、前記転写混合物を転写すること、
を包含する、請求項36に記載の方法:
【請求項38】
前記転写反応物中のヌクレオチド三リン酸が全て2’−OMe修飾される、請求項36から37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記1つ以上の核酸転写鋳型が、T7 RNAポリメラーゼプロモーターと、該T7 RNAポリメラーゼプロモーターのすぐ3’側にあるリーダー配列を含む、請求項36から38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
工程a)からe)を繰り返し行うことを含む、請求項37から39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
転写を増強するための核酸鋳型成分配列を同定する方法であって、
a)転写鋳型の候補のライブラリーを調製する工程であって、該鋳型が、プロモーター、該プロモーターのすぐ3’側にある第1の固定領域、該第1の固定領域のすぐ3’側にある縮重領域、および該縮重領域の3’側にある第2の固定領域を含む、工程;
b)転写反応において該転写鋳型の候補のライブラリーを転写して、ある転写物量を有する転写混合物を得る工程;
c)該転写混合物を逆転写して、cDNA鋳型の候補混合物を得る工程であって、該cDNA鋳型が5’末端と3’末端を含む、工程;
d)連結反応において、該プロモーターをコードするDNA配列を該cDNA鋳型の3’末端に連結する工程;
e)該cDNA鋳型を増幅して、転写鋳型の候補のライブラリーを得る工程;ならびに
f)該転写鋳型の候補のライブラリーから転写を増強するための核酸配列成分を同定する工程であって、該核酸配列成分が、該縮重領域の少なくとも一部に由来する配列を含む、工程、
を包含する、方法。
【請求項42】
工程f)が、
i)個々の転写鋳型に前記転写鋳型の候補のライブラリーをクローニングする工程;
ii)転写反応において該個々の転写鋳型を転写して、ある転写物量を生じる工程;
iii)該個々の転写鋳型の転写物量を評価する工程;および
iv)所定の転写物量を生じる転写鋳型中の前記核酸配列成分を同定する工程
を包含する、請求項45に記載の方法。
【請求項43】
前記所定の転写物量が、前記転写鋳型の候補混合物を転写することにより工程b)で得られた転写物量よりも多い量である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
工程f)が、前記転写鋳型の候補のライブラリーの縮重領域の塩基組成を分析することと、該転写鋳型の候補のライブラリーの平均の塩基組成に基づいて前記核酸配列成分を同定することとを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
工程b)が、転写された転写混合物をDNaseで処理することをさらに含む、請求項41から44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記工程が、前記転写された転写鋳型を前記転写反応の他の成分から分離することによって、該転写された転写混合物を精製することをさらに含む、請求項41から45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記精製工程に、前記転写反応物を脱塩カラムに通過させることによって転写反応緩衝液を置換することを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
工程d)が工程c)の前に行われる、請求項41から47のいずれかに記載の方法。
【請求項49】
前記連結反応が添え木をあてられた連結反応であり、該連結反応が、核酸添え木と、前記プロモーターをコードする5’−一リン酸化オリゴヌクレオチドとを含む、請求項41から48のいずれかに記載の方法。
【請求項50】
工程f)を行う前に、工程b)からe)を2回以上繰り返すことをさらに含む、請求項41から49のいずれかに記載の方法。
【請求項51】
前記転写反応が、1つ以上の改変ヌクレオチド三リン酸と変異したポリメラーゼとを含む、請求項41から50のいずれかに記載の方法。
【請求項52】
前記1つ以上の改変ヌクレオチド三リン酸が2’改変ヌクレオチド三リン酸である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記変異したポリメラーゼが変異したT7 RNAポリメラーゼである、請求項51または52に記載の方法。
【請求項54】
前記改変ヌクレオチド三リン酸が2’−OMeヌクレオチド三リン酸である、請求項51から53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記転写反応が、マグネシウムイオンとマンガンイオンを含む、請求項51から54のいずれかに記載の方法。
【請求項56】
前記変異したT7 RNAポリメラーゼが、配列番号1、配列番号2、配列番号100、配列番号101、配列番号102、および配列番号103からなる群より選択される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記マグネシウムイオンが、前記マンガンイオン濃度よりも3.0から3.5倍高い濃度で前記転写反応の中に存在する、請求項55から56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
各ヌクレオチド三リン酸が1.0mMの濃度で前記転写反応の中に存在し、マグネシウムイオンの濃度が6.5mMであり、そしてマンガンイオンの濃度が2.0mMである、請求項55から56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
各ヌクレオチド三リン酸が1.5mMの濃度で前記転写反応の中に存在し、マグネシウムイオンの濃度が8mMであり、そしてマンガンイオンの濃度が2.5mMである、請求項55から56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
各ヌクレオチド三リン酸が2.0mMの濃度で前記転写反応の中に存在し、マグネシウムイオンの濃度が9.5mMであり、そしてマンガンイオンの濃度が3.0mMである、請求項55から56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記転写反応がポリアルキレングリコールをさらに含む、請求項41から60のいずれかに記載の方法。
【請求項62】
前記ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールである、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記転写反応が、グアノシン一リン酸、グアノシンニリン酸、2’−フルオログアノシン一リン酸、2’−フルオログアノシン二リン酸、2’−アミノグアノシン一リン酸、2’−アミノグアノシンニリン酸、2’−デオキシグアノシン一リン酸、および2’−デオキシグアノシンニリン酸からなる群より選択されるグアノシン残基をさらに含む、請求項41から61のいずれかに記載の方法。
【請求項64】
前記転写反応が無機ピロホスファターゼを含む、請求項41から63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
前記第1の固定領域が、2個、3個、4個、または5個のグアノシン残基から構成される、請求項41から64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
前記縮重領域が、少なくとも4個、10個、20個、または30個のヌクレオチドを含む、請求項41から65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
同定される前記核酸鋳型成分配列がリーダー配列である、請求項41から66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
前記リーダー配列が、前記第1の固定領域と、前記転写鋳型の候補のライブラリーの縮重領域に由来する配列を含む、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
請求項41から68のいずれか1項に記載の方法によって同定された、リーダー配列。
【請求項70】
配列番号10から99からなる群より選択される配列のいずれか1つのヌクレオチド22からヌクレオチド32までの核酸配列を含む、リーダー配列。
【請求項71】
配列番号10から99からなる群より選択される配列のいずれか1つのヌクレオチド18からヌクレオチド32までの核酸配列を含む、リーダー配列。
【請求項72】
請求項70から71のいずれか1項に記載のリーダー配列を含む、転写鋳型。
【請求項73】
配列番号3から6および106からなる群より選択される、オリゴヌクレオチド転写鋳型。
【請求項1】
639位と784位とに改変アミノ酸を含む、単離されたT7 RNAポリメラーゼであって、該784位の改変アミノ酸がアラニンである場合には、該639位の改変アミノ酸はフェニルアラニンではない、単離されたT7 RNAポリメラーゼ。
【請求項2】
さらに378位に改変アミノ酸を含む、請求項1に記載の単離されたT7 RNAポリメラーゼ。
【請求項3】
さらに266位に改変アミノ酸を含む、請求項1〜2のいずれかに記載の単離されたT7 RNAポリメラーゼ。
【請求項4】
前記639位の改変アミノ酸がロイシンであり、前記784位の改変アミノ酸がアラニンである、請求項1〜3のいずれかに記載の単離されたT7 RNAポリメラーゼ。
【請求項5】
前記266位の改変アミノ酸がロイシンである、請求項1〜4のいずれかに記載の単離されたT7 RNAポリメラーゼ。
【請求項6】
前記378位の改変アミノ酸がアルギニンである、請求項1〜5のいずれかに記載の単離されたT7 RNAポリメラーゼ。
【請求項7】
前記改変アミノ酸が、2’−OMeヌクレオチド三リン酸のみを含む転写反応において、ポリメラーゼによる、2’−OMe修飾を含む核酸の転写量を増大させる、請求項1〜6のいずれかに記載の単離されたT7 RNAポリメラーゼ。
【請求項8】
前記転写量の増大が、転写が同じ転写条件下で行われた場合の、前記改変アミノ酸を欠くT7 RNAポリメラーゼに対する比較である、請求項8に記載の単離されたT7 RNAポリメラーゼ。
【請求項9】
前記改変アミノ酸によって、2’−OMeヌクレオチド三リン酸に対する識別が低下する、請求項1〜8のいずれかに記載の単離されたT7 RNAポリメラーゼ。
【請求項10】
前記2’−OMeヌクレオチド三リン酸に対する識別の低下が、前記改変アミノ酸を欠くT7 RNAポリメラーゼに対する比較である、請求項9に記載の単離されたT7 RNAポリメラーゼ。
【請求項11】
前記改変アミノ酸を欠くT7 RNAポリメラーゼが、639位のアミノ酸がフェニルアラニンに変化しており、そして784位のアミノ酸がアラニンに変化している野生型T7 RNAポリメラーゼである、請求項8または10に記載の単離されたT7 RNAポリメラーゼ。
【請求項12】
配列番号1、配列番号2、配列番号102、および配列番号103からなる群より選択されるアミノ酸を含む、単離されたポリペプチド。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のポリメラーゼを、転写を生じるために十分な反応条件下で鋳型核酸とともにインキュベートする工程を含む、一本鎖核酸を転写する方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載のポリペプチドをコードする、単離された核酸。
【請求項15】
配列番号122、配列番号123、配列番号124、および配列番号125からなる群より選択される、単離された核酸配列。
【請求項16】
請求項14または15に記載の単離された核酸配列を含む、ベクター。
【請求項17】
プロモーターに作動可能に連結された請求項14または15に記載の核酸を含む、発現ベクター。
【請求項18】
請求項17に記載の発現ベクターを含む、細胞。
【請求項19】
変異体T7 RNAポリメラーゼが前記細胞によって発現される、請求項18に記載の細胞。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれかに記載のT7 RNAポリメラーゼを含む容器を含む、キット。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれかに記載のT7 RNAポリメラーゼをコードする核酸を含む容器を含む、キット。
【請求項22】
完全な2’−OMe核酸を転写する方法であって、
a)変異体RNAポリメラーゼ、核酸転写鋳型、およびヌクレオシド三リン酸を含む反応混合物中で鋳型核酸をインキュベートする工程であって、該ヌクレオシド三リン酸が2’−OMeである、工程、ならびに、
b)一本鎖核酸を生じるために十分な時間の間、該転写反応混合物を転写する工程であって、該一本鎖核酸のヌクレオチドは、該転写物の最初のヌクレオチドが2’修飾され得ないことを除き、全てが2’−OMe修飾される、工程
を包含する、方法。
【請求項23】
前記変異体RNAポリメラーゼが、639位と784位とに改変アミノ酸を含む変異体T7 RNAポリメラーゼである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記変異体T7 RNAポリメラーゼが、請求項1から12のいずれか1項に記載の変異体T7 RNAポリメラーゼである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記転写反応が、さらにマグネシウムイオンを含む、請求項22から24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記転写反応が、さらにマンガンイオンを含む、請求項22から25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記転写反応が、さらに非2’−OMeグアノシン非三リン酸残基を含む、請求項22から26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記転写鋳型がT7 RNAポリメラーゼプロモーターを含む、請求項22から27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記マグネシウムイオンが、前記マンガンイオンよりも3.0から3.5倍高い濃度で前記転写反応の中に存在する、請求項26から28に記載の方法。
【請求項30】
各ヌクレオチド三リン酸が1.0mMの濃度で前記転写反応の中に存在し、マグネシウムイオンの濃度が6.5mMであり、そしてマンガンイオンの濃度が2.0mMである、請求項26から29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
各ヌクレオチド三リン酸が1.5mMの濃度で前記転写反応の中に存在し、マグネシウムイオンの濃度が8mMであり、そしてマンガンイオンの濃度が2.5mMである、請求項26から30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
各ヌクレオチド三リン酸が2.0mMの濃度で前記転写反応の中に存在し、マグネシウムイオンの濃度が9.5mMであり、そしてマンガンイオンの濃度が3.0mMである、請求項26から31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記転写反応がポリエチレングリコールをさらに含む、請求項22から32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記非2’−OMeグアノシン非三リン酸残基が、グアノシン一リン酸、グアノシンニリン酸、2’−フルオログアノシン一リン酸、2’−フルオログアノシン二リン酸、2’−アミノグアノシン一リン酸、2’−アミノグアノシンニリン酸、2’−デオキシグアノシン一リン酸、および2’−デオキシグアノシンニリン酸からなる群より選択される、請求項22から33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記転写反応が無機ピロホスファターゼを含む、請求項22から34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
アプタマーを同定するための方法であって、
a)請求項1から12のいずれか1項に記載の変異体ポリメラーゼと、1つ以上の核酸転写鋳型を含む転写反応混合物を調製する工程;
b)該転写反応混合物を転写して、一本鎖核酸の候補混合物を生じる工程であって、該一本鎖核酸のヌクレオチドのうち、必要に応じて1つを除く全てが2’修飾される、工程;
c)該候補混合物を標的分子と接触させる工程;
d)該候補混合物の親和性と比較して、該標的分子に対して高い親和性を有する核酸を、該候補混合物から分離する工程;ならびに、
e)該親和性が高い核酸を増幅して、アプタマーが富化した混合物を得る工程であって、それによって、該アプタマーの最初のヌクレオチドが2’修飾され得ないことを除き、全て2’修飾されたヌクレオチドを含む、該標的分子に対するアプタマーが同定される、工程、
を包含する、方法。
【請求項37】
前記増幅工程が
(i)必要に応じて、前記親和性が高い核酸を前記標的から解離させること;
ii)該核酸−標的複合体から解離した該親和性が高い核酸を逆転写すること;
iii)該逆転写された親和性が高い核酸を増幅すること;および
(ii)前記転写鋳型として該増幅かつ逆転写された親和性が高い核酸を含む転写反応混合物を調製し、前記転写混合物を転写すること、
を包含する、請求項36に記載の方法:
【請求項38】
前記転写反応物中のヌクレオチド三リン酸が全て2’−OMe修飾される、請求項36から37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記1つ以上の核酸転写鋳型が、T7 RNAポリメラーゼプロモーターと、該T7 RNAポリメラーゼプロモーターのすぐ3’側にあるリーダー配列を含む、請求項36から38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
工程a)からe)を繰り返し行うことを含む、請求項37から39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
転写を増強するための核酸鋳型成分配列を同定する方法であって、
a)転写鋳型の候補のライブラリーを調製する工程であって、該鋳型が、プロモーター、該プロモーターのすぐ3’側にある第1の固定領域、該第1の固定領域のすぐ3’側にある縮重領域、および該縮重領域の3’側にある第2の固定領域を含む、工程;
b)転写反応において該転写鋳型の候補のライブラリーを転写して、ある転写物量を有する転写混合物を得る工程;
c)該転写混合物を逆転写して、cDNA鋳型の候補混合物を得る工程であって、該cDNA鋳型が5’末端と3’末端を含む、工程;
d)連結反応において、該プロモーターをコードするDNA配列を該cDNA鋳型の3’末端に連結する工程;
e)該cDNA鋳型を増幅して、転写鋳型の候補のライブラリーを得る工程;ならびに
f)該転写鋳型の候補のライブラリーから転写を増強するための核酸配列成分を同定する工程であって、該核酸配列成分が、該縮重領域の少なくとも一部に由来する配列を含む、工程、
を包含する、方法。
【請求項42】
工程f)が、
i)個々の転写鋳型に前記転写鋳型の候補のライブラリーをクローニングする工程;
ii)転写反応において該個々の転写鋳型を転写して、ある転写物量を生じる工程;
iii)該個々の転写鋳型の転写物量を評価する工程;および
iv)所定の転写物量を生じる転写鋳型中の前記核酸配列成分を同定する工程
を包含する、請求項45に記載の方法。
【請求項43】
前記所定の転写物量が、前記転写鋳型の候補混合物を転写することにより工程b)で得られた転写物量よりも多い量である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
工程f)が、前記転写鋳型の候補のライブラリーの縮重領域の塩基組成を分析することと、該転写鋳型の候補のライブラリーの平均の塩基組成に基づいて前記核酸配列成分を同定することとを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
工程b)が、転写された転写混合物をDNaseで処理することをさらに含む、請求項41から44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記工程が、前記転写された転写鋳型を前記転写反応の他の成分から分離することによって、該転写された転写混合物を精製することをさらに含む、請求項41から45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記精製工程に、前記転写反応物を脱塩カラムに通過させることによって転写反応緩衝液を置換することを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
工程d)が工程c)の前に行われる、請求項41から47のいずれかに記載の方法。
【請求項49】
前記連結反応が添え木をあてられた連結反応であり、該連結反応が、核酸添え木と、前記プロモーターをコードする5’−一リン酸化オリゴヌクレオチドとを含む、請求項41から48のいずれかに記載の方法。
【請求項50】
工程f)を行う前に、工程b)からe)を2回以上繰り返すことをさらに含む、請求項41から49のいずれかに記載の方法。
【請求項51】
前記転写反応が、1つ以上の改変ヌクレオチド三リン酸と変異したポリメラーゼとを含む、請求項41から50のいずれかに記載の方法。
【請求項52】
前記1つ以上の改変ヌクレオチド三リン酸が2’改変ヌクレオチド三リン酸である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記変異したポリメラーゼが変異したT7 RNAポリメラーゼである、請求項51または52に記載の方法。
【請求項54】
前記改変ヌクレオチド三リン酸が2’−OMeヌクレオチド三リン酸である、請求項51から53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記転写反応が、マグネシウムイオンとマンガンイオンを含む、請求項51から54のいずれかに記載の方法。
【請求項56】
前記変異したT7 RNAポリメラーゼが、配列番号1、配列番号2、配列番号100、配列番号101、配列番号102、および配列番号103からなる群より選択される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記マグネシウムイオンが、前記マンガンイオン濃度よりも3.0から3.5倍高い濃度で前記転写反応の中に存在する、請求項55から56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
各ヌクレオチド三リン酸が1.0mMの濃度で前記転写反応の中に存在し、マグネシウムイオンの濃度が6.5mMであり、そしてマンガンイオンの濃度が2.0mMである、請求項55から56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
各ヌクレオチド三リン酸が1.5mMの濃度で前記転写反応の中に存在し、マグネシウムイオンの濃度が8mMであり、そしてマンガンイオンの濃度が2.5mMである、請求項55から56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
各ヌクレオチド三リン酸が2.0mMの濃度で前記転写反応の中に存在し、マグネシウムイオンの濃度が9.5mMであり、そしてマンガンイオンの濃度が3.0mMである、請求項55から56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記転写反応がポリアルキレングリコールをさらに含む、請求項41から60のいずれかに記載の方法。
【請求項62】
前記ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールである、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記転写反応が、グアノシン一リン酸、グアノシンニリン酸、2’−フルオログアノシン一リン酸、2’−フルオログアノシン二リン酸、2’−アミノグアノシン一リン酸、2’−アミノグアノシンニリン酸、2’−デオキシグアノシン一リン酸、および2’−デオキシグアノシンニリン酸からなる群より選択されるグアノシン残基をさらに含む、請求項41から61のいずれかに記載の方法。
【請求項64】
前記転写反応が無機ピロホスファターゼを含む、請求項41から63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
前記第1の固定領域が、2個、3個、4個、または5個のグアノシン残基から構成される、請求項41から64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
前記縮重領域が、少なくとも4個、10個、20個、または30個のヌクレオチドを含む、請求項41から65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
同定される前記核酸鋳型成分配列がリーダー配列である、請求項41から66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
前記リーダー配列が、前記第1の固定領域と、前記転写鋳型の候補のライブラリーの縮重領域に由来する配列を含む、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
請求項41から68のいずれか1項に記載の方法によって同定された、リーダー配列。
【請求項70】
配列番号10から99からなる群より選択される配列のいずれか1つのヌクレオチド22からヌクレオチド32までの核酸配列を含む、リーダー配列。
【請求項71】
配列番号10から99からなる群より選択される配列のいずれか1つのヌクレオチド18からヌクレオチド32までの核酸配列を含む、リーダー配列。
【請求項72】
請求項70から71のいずれか1項に記載のリーダー配列を含む、転写鋳型。
【請求項73】
配列番号3から6および106からなる群より選択される、オリゴヌクレオチド転写鋳型。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2009−504139(P2009−504139A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519627(P2008−519627)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/025653
【国際公開番号】WO2007/005645
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(507272898)アーケミックス コーポレイション (7)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/025653
【国際公開番号】WO2007/005645
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(507272898)アーケミックス コーポレイション (7)
【Fターム(参考)】
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