説明

完全に螺刻された生体吸収性の縫合糸アンカー

【課題】縫合糸が効果的に係止される縫合糸アンカーを提供する。
【解決手段】縫合糸アンカー100が、螺刻されたアンカー本体4を有し、アンカー本体は、第2中央口径と連通する第1中央口径を有する。縫合糸アンカーは、少なくとも部分的に第1中央口径の内側に配置されたループの形状をなす内部のアイレット32を有する。ループから延在する複数の端部は、ともに結ばれて少なくとも1つの結び目を形成し、その結び目は、アンカー本体の遠心端で設けられた第2中央口径内に収容される。結び目は、軟骨においてでさえも縫合糸の引き抜き強さを強め、強められた縫合糸の固着性をもたらし、且つアンカーの「引き戻し」を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科用縫合糸を骨へ固定する装置及び方法に係る。より詳細には、本発明は、関節鏡検査装置及び方法に係り、完全に螺刻された生体吸収性の縫合糸アンカーを用いて、縫合糸を骨へ固定する。ループが、縫合糸アンカーへと挿入される。
【背景技術】
【0002】
軟部組織が、骨から引き離されたとき、再付着が必要となる。従来技術では、縫合糸単体、スクリュー、ステープル、ウェッジ、及びプラグを含む様々なデバイスを用いて、軟部組織を骨へ掛止(secure)する。近年、この目的のため、種々の螺刻された縫合糸アンカーが、開発されてきた。幾つかの螺刻された縫合糸アンカーは、予め穿孔された穴へと挿入されるよう設計され、他の縫合糸アンカーは、自己穿刺である。
【0003】
縫合糸を取り付ける構造が破損した場合、縫合糸がアンカーから解離してしまうという問題が、生じ得る。縫合糸はまた、アンカーが中に挿入される骨細管の壁に沿った鋭利な又は粗い領域による切削又は剥離にしばしば晒される。
【0004】
更に、従来技術の縫合糸アンカーは、近心端から延在するアイレットを有し、骨表面下のアイレットの座ぐり(countersinking)を要する。これは、露呈されたアイレットに対する患者の組織の剥離を防ぐためである。その結果、アイレットへ取り付けられた縫合糸は、座ぐりしてある穴の骨の縁近くの剥離に弱い。座ぐり穴には、縫合糸アンカー100が導入される。加えて、生物分解性の従来技術のデバイスでは、アイレットは、急速に劣化する場合があり、縫合糸が、アンカーから早まって解離してしまう現象を引き起こす。
【特許文献1】米国特許第6,716,234号明細書
【特許文献2】米国特許第5,964,783号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、縫合糸が効果的に掛止されて、それによって縫合糸の解離を防ぎ且つアンカーの「引き戻し」を除去する、螺刻された縫合糸アンカーを提供することを目的とする。加えて、本発明は、組織から剥離せず且つ座ぐりを要しないアイレットを有する縫合糸アンカーを提供することを目的とする。本発明はまた、小さいコア径を有する縫合糸アンカーが、軟骨にあっても最大の引き抜き強さ及び最大の縫合糸の固着強さを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の縫合糸アンカーは、上述したような従来技術の不都合な点を、ループ形状を成すアイレットを有する、螺刻された縫合糸アンカーを提供することによって克服する。ループは、可撓性ストランド材料からなり、製造工程中に縫合糸アンカー内に配置される。縫合糸アンカーは、好ましくは生物分解性材料から形成される。
【0007】
本発明の螺刻された縫合糸アンカーは、中央本体、遠心端、及び近心端を有する。本体は、好ましくは、狭い遠心端から先細りになり、鈍端の又は丸くなった近心端に終端する。縫合糸アンカー本体の近心端は、好ましくは、長方形のドライバソケット又は口径を有し、口径は、ドライバヘッドを引受けるよう構成される。ドライバヘッドは、完全に螺刻された縫合糸アンカーを打ち込む。
【0008】
内部のループは、好ましくは完全に螺刻された中央本体の長さの半分を超える長さを通じて延在し、且つ近心端でアイレットを形成する。ループは、少なくとも部分的にドライバソケット内に設置される。組織を縛り付ける複数の縫合糸は、ループを通じてくくられてもよく、縫合糸が、最小限の摩擦で滑らかに滑動できるようにする。本発明の好ましい実施形態において、内部ループの複数の端部が、ともに結ばれて少なくとも1つの結び目を形成し、その結び目は、アンカー本体の遠心端で設けられた嵌め込まれた領域に収容される。結び目は、軟骨においてでさえも縫合糸の引き抜き強さを強め、強められた縫合糸の固着性をもたらし、且つアンカーの「引き戻し」を除去する。
【0009】
有効にも、本発明のアンカーは、少なくとも別の外科用器械(たとえばドリル又はカッティングパンチ等であり、縫合糸アンカーが挿入されるまえにパイロットホールを作成する)とともに滅菌包装に予め集合させることができるか、又はドライバ上に事前に搭載されることができる。ドライバは、パイロットホールにおいて、アンカーを、取り付けられた縫合糸とともに打ち込む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の他の特徴及び利点は、本発明の以下の説明において、添付の図面を参照して明らかになるであろう。
【0011】
次に図面を参照する。図面では、同様の要素を、同様の参照数字によって示す。図1〜図6は、本発明の完全に螺刻された(fully-threaded)生体吸収性の縫合糸アンカー100を示す。完全に螺刻された縫合糸アンカー100は、本体4を含み、本体4は、先細りの円柱の形で提供され且つ遠心端12及び近心端13を有する。
【0012】
図1に示すように、完全に螺刻された縫合糸アンカー100は、本体4周りを時計回りに巻きつく連続的なねじ6を設ける。ねじ部の頂は、幅広から狭く、アンカーの近心端から遠心端へと先細りになる。最も幅広の頂の表面を備えたアンカー100の近心のねじ部は、骨減少性の骨における薄い皮質骨へ係合するよう設計されて、アンカーの「引き戻し(pull back)」を防ぐ。「引き戻し」が起こることで、アンカーの後部が、骨に対して突き出る恐れがある。例示的な実施形態において、縫合糸アンカー100が、本体4周りに約8本のねじ山(thread flight)が巻きついた状態で提供され、水平面に対する各ねじ部の近心面の角度は、各ねじ部の遠心面の角度の略1/3乃至1/4である。たとえば、好ましい実施形態において、各ねじ部の近心面は、縫合糸アンカーの軸線に水平な平面に対して12°の角度を有する一方、各ねじ部の遠心面は、同じ水平面に対して45°の角度を有する。
【0013】
縫合糸アンカー100を、先端から近心端まで走っている連続するねじ部とともに設けることによって、ねじ部の潜在能力が最大化され且つ無駄な空間が最小化される。近心端には、ドライバが係合する。完全に螺刻された設計である本発明のアンカーは、突出するアイレットを備えた縫合糸アンカーと比べて引き抜き強さ(pull-out strength)が大いに向上し、且つ、座ぐられているアンカーに起こり得るアンカーの「引き戻し(pull-back)」を防ぐ。
【0014】
図1及び図4に示すように、縫合糸アンカー100は、円柱形状の口径即ちソケット10を有する。ソケット10は、近心端の長方形に形作られた開口11から始まり且つアンカー本体4の全長の2/3まで延在する。口径10の遠心に、アンカー本体は、結び目ソケット20を備える。結びソケット20は、アンカーの遠心端12から延在している。結び目ソケット20は、様々な形状及び構成を有してもよく、たとえば、図5に示すような円柱形状であってもよい。口径10は、通路40を通じて結び目ソケット20と連通する。
【0015】
長方形形状の開口11を画定する縫合糸アンカー100の近心面及び複数の関連縁部は、丸みがつけられ且つ滑らかである。好ましくは、開口11の周縁部を形成する縫合糸アンカー100の近心面は、丸みのある縁18(図4)を形成するので、開口11は、円柱形の口径10の主要部分よりも僅かに広がった直径を有する。滑らかで丸みのある近心端が、本発明のアンカーにおいて設けられ、口径10及び開口11を通じて糸通しされた縫合糸は、如何なる鋭利な縁部によっても剥離(abraded)することはなく、且つ近接する開口でのアンカーに対する圧力又は摩擦によってすり減ったりすることはない。
【0016】
好ましい実施形態において、開口11の直径φ2(図4)が、結び目ソケット20の直径と略等しいが、通路40の直径φ3より大きくアンカー本体4の外径φ1より小さい。好ましくは、アンカー本体4の外径φ1は、約3mm〜約8mmであり、より好ましくは、約5.5mmであり、且つ開口11及びソケット20の直径φ2は、約1.5mm〜約4.5mmであり、より好ましくは約3mmである。例示的な実施形態において、縫合糸アンカー100の本体4は、アンカーの近心端で螺刻の外径にわたって測定されるように約0.22インチ(5.5mm)の外部直径及び約0.6インチ(15mm)の長さを有する。
【0017】
図1を再び参照すると、好ましくは縫合糸である可撓性ストランド30が、アンカー本体4へと糸通しされ、縫合糸ストランド30の一端は、ソケット20、通路40及び口径10を通って糸通しされて、ループ又はアイレット32を形成する。アイレット32は、アンカー100の近心端13で口径10内に少なくとも部分的に設置される。締結糸アンカー100の遠心端12からアンカーを通って延在する端部31a、31bが、結束されて、少なくとも1つの結び目34を形成する。
【0018】
図1に示す好ましい実施形態において、ループ32は、アンカー本体4の近心端13から完全に嵌め込まれている。しかしながら、本発明はまた、ループ32が、縫合糸アンカー100から約0.5mmから約1.5mm、より好ましくは約1mmの距離だけ延出する実施形態についても意図する。代替の構成において、ループ32はまた、アンカー100の口径10の完全に外側に設置されてもよい。このように、図1の実施形態は、アンカー本体4内に完全に配置されたアイレット32を示すが、本実施形態は、例示的なものに過ぎず、本発明は、その実施形態に限定されるものではない。本発明のアイレットの位置及びサイズは、関節鏡検査工程の特性に従って決定され、且つ縫合糸の滑り特性を最適化するため、アンカー挿入の間アイレットを高精度に配向する(orientate)必要がある。
【0019】
図1の完全に嵌め込まれたループ32は、自己整合する能力を有し、アイレットの整合を決定する必要性はない。何故なら、アイレット整合は、組織端の配向に適用するからである。完全に嵌め込まれたループ32はまた、突出するアイレットを備えた従来のアンカーと比べて縫合糸の滑動性を高め、且つ縫合糸が、アンカーの滑らかな内側縁部に対して滑動することを可能にし、皮質骨の縁部から縫合糸が剥離する可能性を低減する。
【0020】
アンカー100の遠心端12で、可撓性ストランドの材料30は、少なくとも1つの結び目34を形成し、結び目34は、好ましくはひとえ結びである。結び目34は、結び目ソケット20に収容され、通路40を画定するアンカー本体4の領域35の最も遠心の面37に座している。通路40は、ソケット10及び20の直径より狭い直径を有する。アンカーからのストランド30の引き抜き強さを強めるため、結び目34は、随意に接着材料で被覆されてその強さを強め且つソケット20の壁への接着を促進する。結び目34は、軟骨においてでさえもストランド30の引き抜き強さを強め、固着性を高め、且つアンカーの「引き戻し」を除去する。
【0021】
ストランド30は、如何なる可撓性材料で形成されてもよい。好ましい実施形態において、ストランド30及びループ32は、Grafton他に付与された米国特許第6,716,234号明細書(特許文献1)に記載されているような高強度の縫合糸材料で形成されている。特許文献1の開示を、その全体を参照により本明細書に導入する。更なる複数の実施形態において、ストランド30は、Grafton他に付与された米国特許第5,964,783号明細書(特許文献2)に記載されている方法で、アンカーへとインサート成形されてもよい。特許文献2の開示もまた、その全体を参照により本明細書に導入する。
【0022】
アンカー本体4は、好ましくは半透明又は透明ポリマー材料から形成され、且つ好ましくはポリグリコール酸又はポリ乳酸ポリマーのような生体吸収性材料でできている。したがって、可撓性ストランド30は、完全に螺刻されたアンカー100の本体を通じて可視であり、それによりストランドがアンカー内に封入されたという、視覚的な確認をもたらす。有効にも、可撓性ストランドの材料30及びアンカー本体4は、ループ32がアンカー本体4より前に生物分解しないよう選択された材料でできている。本出願で用いているように、用語「生体吸収性」は、用語「生物分解性」「再吸収性」及び「吸収性」と言い換え可能であると考えられ、それら用語の意味は、デバイスが、時間ととともに体によって吸収されることができるという意味である。また、縫合糸アンカーの寸法間の計測、角度及び比率は、縫合糸アンカーが用いられる条件及び応用に適当であるよう、上述したものとは異なっていてもよい。
【0023】
随意に、縫合糸アンカーは、既にループ32を通って糸通しされた少なくとも1つの縫合糸ストランドが割り当てられていてもよい。たとえば、図1は、ループ32に取り付けられた縫合糸ストランド42、44を示し、ループ32は、縫合糸が、最小限の摩擦で滑らかに滑動することを可能にする。例示的な実施形態において、縫合糸ストランド42、44は、交互に配色されたFiberWire(商標)複合糸であってもよく、それにより修復強さを最大にし、縫合糸の管理の補助をし、且つ優れた結束特性を提供する。
【0024】
図7A、図8A、及び図9Aは、ドライバ200、300、400の様々な実施形態を示す。ドライバは、本発明の完全に螺刻された縫合糸アンカー100の導入に用いられる。図7Aは、カニュレーテッドドライバ200を示す。ドライバ200は、図1〜図6の完全に螺刻された縫合糸アンカー100及びループ32へ取り付けられた縫合糸ストランド42、44が、事前に搭載されている。図10〜図15及び図23〜図26を参照して以下により詳細に説明するように、縫合糸ストランド42、44は、ドライバ200のカニューレを通じて糸通しされ且つドライバのハンドル上のフックに掛止されて、ドライバのヘッドの遠心端が、アンカー100の開口11及び口径10へと挿入されることを可能にする。それによって、縫合糸アンカーは、パイロットホールへと押し込められる。
【0025】
図8Aは、本発明のドライバの第2の実施形態を示す。ドライバ300(図16〜図22により詳細に説明する)は、カニューレを挿入されず、むしろシャフト330においてスロット又は側部カニュレーション360とともに呈示される。スロットは、複数のニードル380(図8b)とともに設けられ且つアンカー100のループ32に取り付けられた複数の縫合糸ストランドを、スロット及びハンドル310の側部周りを通過させて、ハンドルのニードルスロット388に更に掛止されることを可能にする。
【0026】
図9Aは、本発明のドライバのまた別の実施形態を示し、本発明によれば、ドライバ400は、複数のパンチニードル440(図9b)を備えた複数の縫合糸ストランドと一緒に用いられる。パンチニードル440は、本発明のアンカー100のループ32へ取り付けられる。
【0027】
図10〜図15は、ドライバ200の第1の例示的な実施形態の詳細を示したものである。ドライバ200は、関節鏡検査工程の間、本発明の完全に螺刻された縫合糸アンカー100の導入に用いる。ドライバ200は、ヘッド250、シャフト230及びハンドル組立体210を備える。ドライバ200のヘッド250は、図1〜図6の完全に螺刻された縫合糸アンカー100のアンカーソケット10内に受け入れられるよう構成される。例示的な実施形態において、ドライバヘッドは、長方形に形作られ、且つ縫合糸アンカー100の開口11の幅及び長さと略一致する幅及び長さを有する。好ましくは、ドライバヘッドは、開口11より僅かに短く且つ僅かに小さい幅を有するので、嵌合がきつすぎず、それでも縫合糸アンカー100を骨へと打ち込むための安定した係合を確実にする。
【0028】
シャフト230は、好ましくは、細長く、狭い直径の本体を有する。その本体は、経皮的組織の穿刺を通じて実行される遠隔工程において用いるのに適当であり、経皮的組織の穿刺には、たとえば関節鏡検査、腹腔鏡検査及び他の侵襲的工程等がある。シャフトは、典型的には約5cmから約20cm、好ましくは約15cmの長さを有する。シャフト組立体の直径は、アクセスシース、カニューレ、トロカール等を通じて導入を促進させるよう十分に小さく、典型的には約10mmより小さく、好ましくは約5mmである。
【0029】
ハンドル組立体210は、好ましくは細長いダブルフック252を含み、ダブルフック252は、ハンドル組立体210の長さに略沿って延在し且つその近心端及び遠心端でフックを有し、且つクリップ260が、ダブルフック252の一端の領域で形成される。図23〜図26を参照して以下に詳細に説明するように、ドライバ200が、縫合糸アンカー100と係合するとき、ドライバ200の近心端を通過する縫合糸42、44の余分な長さを、ダブルフック252周りに巻きつけることができ、且つ縫合糸の複数の端部を、クリップ260に掛止できる。この方法で、縫合糸ストランド42、44は、もつれ又はそうでなければ外科医の作業を妨げることから守られる。
【0030】
ドライバ200は、好ましくは、約20in・lbのトルク(1in=2.54cm、1lbf=4.448N)の適用に耐えるよう構成される。好ましくは、必須ではないものの、少なくともシャフト及びドライバヘッドは、ステンレス銅からできている。しかしながら、本発明の縫合糸アンカー100を皮質骨へと導入するために必要な強度及び剛性を提供する他の材料が、用いられてもよい。
【0031】
アンカー100及びドライバ200は、予め形成された組立体として外科医に提供されてもよい。予め形成された組立体は、縫合糸42、44が、ループ32及びドライバ200のカニューレを通じて予め糸通しされ且つハンドル上に掛止された状態を備える。
【0032】
図16〜図22は、ドライバ300の第2の例示的な実施形態の詳細を示したものであり、ドライバ300は、関節鏡検査工程の間、好ましくはミニオープン(mini-open rotator cuff repairs)法のような開放性手術の間、本発明の完全に螺刻された縫合糸アンカー100の導入に用いられる。ドライバ300が上述したドライバ200とは異なる点は、ドライブ300は、完全に螺刻された縫合糸アンカー100の導入を可能し、その縫合糸アンカー100は、外科用縫合針を備えた少なくとも1つの縫合糸のストランドを取り付けてあることである。こうして、ドライバ300は、カニューレ挿入されず、むしろスロット又は側部カニュレーション360を含み、スロット又は側部カニュレーション360は、シャフト330の長さの約半分に設けられ且つ複数のブレイクエッジ(break edges)350によって画定される。側部カニュレーションは、カニュレーションにおいて受け入れられた縫合糸ストランド342、344(図8b)が、一端で外科用縫合針380(図8b)を設けるが、ドライバが、中央(完全に閉鎖された)カニュレーションを有する場合は、外科用縫合針380を設けることは不可能である。
【0033】
ドライバ300が縫合糸アンカー100と係合する際、複数のニードル380が取り付けられた縫合糸342、344の余分な長さを、ハンドル310の嵌め込まれた領域又は空隙388(図8A)に掛止できる。空隙388は、枢動可能なハッチ399を開くことによってアクセスされる。この方法で、複数のニードル380及び縫合糸ストランド342、344は、複数のタイダウンバー(tie-down bar)周りに巻きつけられる。タイダウンバーは、ハッチが閉じているとき、ハウジング空隙の内側に配置される。こうして、外科用縫合針380は、ハンドル310内に安全に格納されることができ、それゆえ、手術用手袋の如何なる突刺し、及びニードルの滅菌を維持するにあたっての如何なる問題をも防ぐ。
【0034】
図20〜図23は、ドライバ300のハンドル310に設けられたハウジング空隙388の詳細を示す。図20に示されているように、空隙388は、複数のスロット396及び複数のタイダウンバー393とともに設けられ、それにより外科用縫合針380が、スロット396及びバー393内に「置かれる」すなわち掛止されることを可能にする。所望であれば、ニードルを備えた又はニードルを備えない複数の縫合糸を、ハウジング空隙388内に収容することができる。空隙388は、枢動可能なハッチ399を開けることによってアクセスされる。ドライバ300はまた、図1〜図6の完全に螺刻された縫合糸アンカー100のアンカー開口11内に受け入れられるよう構成されている。
【0035】
図23〜図26は、図10〜図15のカニュレーテッドドライバを示し、ドライバは、図23の完全に螺刻された縫合糸アンカー100を搭載する。図24に示すように、2つの縫合糸ストランド42、44は、まずドライバ200のカニューレを通じて糸通しされ、且つドライバのドライバヘッド250の遠心端(図24)が、次にアンカー100の開口11へと挿入される。ドライバ200の近心端を出る複数の縫合糸は、ダブルフック252周りに巻きつけられ且つ/又はクリップ260に留められる。
【0036】
図27〜図30は、図16〜図22のドライバ300を示し、ドライバ300は、完全に螺刻された縫合糸アンカー100を搭載し、且つ複数の外科用縫合針380が取り付けられた2つの縫合糸ストランド342、344を設ける。図29に示すように、2つの縫合糸ストランド342、344は、まずドライバ300のシャフトの側部カニュレーション360を通過するので、ドライバのドライバヘッド350の遠心端が、次にアンカー100の開口11へと挿入される。側部カニュレーション360を通過した縫合糸は、ドライバ300の近心端へと引っ張られ、且つ縫合糸ストランド342、344は、ハウジング空隙388における複数のタイダウンバー393周りに巻きつけられる一方、複数のニードル380は、スロット396内に格納される。
【0037】
本発明による縫合糸アンカー100は、関節鏡検査工程に用いることができる。アンカーはまた、開放性の且つミニオープン法による外科手術に有効である。適用可能な手術の具体例としては、皮質骨・軟部組織の固着、バンカート及びSLAP損傷の肩の修復を含む。
【0038】
本発明の縫合糸アンカー100を用いた例示的な方法を、図33〜図36を参照しながら以下に説明する。図33は、本発明による縫合糸アンカーの導入を受けている骨部分900の概略的な断面図を示す。縫合糸アンカー100が挿入される穴を骨900に形成するため、パンチ910(図33)を、単体で又はタップ500(図34)との組み合わせのいずれかで用いてもよい。骨900が、軟骨である場合、穴を穿孔するのにパンチ910で十分であり得る。しかしながら骨が、硬い皮質骨である場合、パンチとタップとの組み合わせが、望ましい場合がある。好ましくは、形成された穴の直径が、導入される縫合糸アンカー100の直径よりもわずかに(たとえば、約1mm)小さく、それにより骨に縫合糸アンカー100の糸を良好に適用させることを確実にする。代替的に、セルフドリリング/セルフタッピングの縫合糸アンカーを、形成し且つ直接骨に挿入することができる。そのやり方は、アンカーをドライバと係合させ且つアンカーを回転させて、先述の穴を形成することなくアンカーが、直接骨へと進むようにする。
【0039】
図31及び図32は、タップ500の実施形態を示し、タップ500は、アンカー挿入の前に骨孔又はパイロットホールを用意するために用いられる。図31及び図32に示すように、タップ500は、シャフト502を含み、シャフト502は、近心端上でハンドル504を有し且つ遠心端上でタッピングヘッド506を有する。タッピングヘッド506は、先細りのらせん状切断部505に続いてトロカール先端508を含む。タップ500を用いると、縫合糸アンカーの穴が形成されて、縫合糸アンカーの導入に用いられるカニュレーテッドドライバのヘッドを受容する。
【0040】
次に、図35及び図36を参照する。本発明の完全に螺刻された縫合糸アンカーを搭載したドライバ200(たとえば、図26に示される)は、次に、骨900における用意された穴の開口に位置づけられ、アンカー100の近心面が骨の表面と同一平面になるまで回転される。次に、ドライバの先端が引き戻されて、縫合糸ストランド42、44が、現れる(図36)。アンカーの近心端が、組織の剥離を防ぐため骨表面下に座ぐられる必要がないため、本発明のアンカーは、従来技術のデバイスほど深く挿入される必要がなく、且つ導入された縫合糸アンカー周りの骨の縁部による縫合糸の剥離を回避する。
【0041】
本発明の縫合糸アンカーは、既に上述したことに加えて、複数の有効な点をもたらす。たとえば、縫合糸アンカー本体の全長に沿って設けられた複数のねじ部とともに、アンカーは、皮質骨における複数のねじ部によって最大限の確保が与えられ、複数のねじ部が海綿骨と接触するのみであった幾つかの従来技術のアンカーとは、異なっている。また、随意に接着材料で被覆された結び目を設けることによって、縫合糸アンカーは、多くの従来技術のアンカーよりも高いトルクで導入され、それゆえ、より一層の固着強さを有する。
【0042】
本発明を、その特定の実施形態に関連して述べてきたが、多くの他の変形及び変更及び他の用途が、当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明による、完全に螺刻された縫合糸アンカーの断面図であり、且つ縫合糸アンカーは、完全に螺刻された縫合糸アンカーの内部ループを通じてくくられた2つの縫合糸ストランドを備える。
【図2】図1の完全に螺刻された縫合糸アンカーの斜視図であるが、図1に示す、完全に螺刻された縫合糸アンカーの内部ループを通じてくくられた2つの縫合糸ストランドのない図である。
【図3】図2の完全に螺刻された縫合糸アンカーの近心端の図である。
【図4】図2の完全に螺刻された縫合糸アンカーの断面図である。
【図5】図2の完全に螺刻された縫合糸アンカーの遠心端の図である。
【図6】図2の完全に螺刻された縫合糸アンカーの別の斜視図である。
【図7A】カニュレーテッドドライバの第1の例示的な実施形態の斜視図であり、カニュレーテッドドライバは、図1〜図6の完全に螺刻された縫合糸アンカーとともに事前に搭載される。
【図7B】図7Aの完全に螺刻された縫合糸アンカーの拡大図である。
【図8A】本発明の完全に螺刻された縫合糸アンカーが事前に搭載されたドライバの第2の例示的な実施形態の斜視図であり、且つ完全に螺刻された縫合糸アンカーの内部ループを通じてくくられた2つの縫合糸ストランドへ、複数のニードルが取り付けられている。
【図8B】図8Aの完全に螺刻された縫合糸アンカーへ取り付けられた複数のニードルの拡大図である。
【図9A】本発明の完全に螺刻された縫合糸アンカーが事前に搭載されたドライバの第3の例示的な実施形態の斜視図であり、且つ完全に螺刻された縫合糸アンカーの内部ループを通じてくくられた2つの縫合糸ストランドへ、複数のパンチニードルが取り付けられている。
【図9B】図9Aの完全に螺刻された縫合糸アンカーの拡大図である。
【図10】図7Aに示すカニュレーテッドドライバの斜視図である。
【図11】図10のカニュレーテッドドライバの別の斜視図である。
【図12】図11のカニュレーテッドドライバの側面図である。
【図13】図10のカニュレーテッドドライバのハンドルの断面図である。
【図14】図10のカニュレーテッドドライバのハンドルの側面図である。
【図15】図10のカニュレーテッドドライバのハンドルの平面図である。
【図16】図8Aに示すドライバの平面図である。
【図17】図16に示すドライバの斜視図である。
【図18】図16に示すドライバのシャフト及びヘッドの側面図である。
【図19】図18に示すシャフト及びヘッドの平面図である。
【図20】図16のドライバのハンドルの平面図であり、カバーが取り除かれている。
【図21】図20に示すハンドルの近心端の図である。
【図22】図20のドライバの部分的に断面である側面図である。
【図23】図1の完全に螺刻された縫合糸アンカーの概略図を示し、完全に螺刻された縫合糸アンカーは、嵌め込まれたループを有し、且つ完全に螺刻された縫合糸アンカーの内部ループを通じてくくられた2つの縫合糸ストランドを備える。
【図24】図10〜図15のカニュレーテッドドライバの平面図を示し、カニュレーテッドドライバは、図23の完全に螺刻された縫合糸アンカー、及びドライバのカニューレを通じて糸通しされた2つの縫合糸ストランドを搭載する。
【図25】図23の完全に螺刻された縫合糸アンカーを搭載した図10〜図15のカニュレーテッドドライバの平面図を示し、且つドライバのカニューレを通じて糸通しされた2つの縫合糸ストランドの搭載経路を示す。
【図26】図23の完全に螺刻された縫合糸アンカーを搭載した図10〜図15のカニュレーテッドドライバの側面図を示し、且つドライバのカニューレを通じて糸通しされ且つドライバへ掛止された2つの縫合糸ストランドを示す。
【図27】図16〜図22に示すドライバの側面図を示し、複数のニードルが取り付けられた2つの縫合糸ストランドを有する完全に螺刻された縫合糸アンカーが、搭載される以前のドライバを示す。
【図28】図1の完全に螺刻された縫合糸アンカーの概略図を示し、完全に螺刻された縫合糸アンカーは、嵌め込まれた縫合糸のループ、及び完全に螺刻された縫合糸アンカーのループを通じてくくられた2つの縫合糸ストランドを有し、2つの縫合糸ストランドには、複数のニードルが取り付けられている。
【図29】図27のドライバの斜視図を示し、ドライバは、図28の完全に螺刻された縫合糸アンカー、及び2つの縫合糸ストランドを、搭載する。ニードルが取り付けられた2つの縫合糸ストランドは、ドライバの側部カニュレーションを通じて部分的に糸通しされる。
【図30】図27のドライバの別の斜視図を示し、ドライバは、図28の完全に螺刻された縫合糸アンカー並びにドライバに掛止される2つの縫合糸ストランド及び取り付けられたニードルを搭載する。
【図31】本発明の完全に螺刻された縫合糸アンカーのためのパイロットホールを作成するために用いられるパンチの斜視図である。
【図32】図31のパンチの遠心端の図である。
【図33】本発明の方法に従って且つ初期の段階で、縫合糸アンカーの導入を受けている骨断片の概略的な断面図である。
【図34】図33に示された導入に続き、縫合糸アンカーの導入の段階である図33の骨断片を示す。
【図35】図34に示された導入に続き、縫合糸アンカーの導入の段階である図33の骨断片を示す。
【図36】図35に示された導入に続き、縫合糸アンカーの導入の段階である図33の骨断片を示す。
【符号の説明】
【0044】
4 本体
6 ねじ
10 口径
11 開口
12 遠心端
13 近心端
18 丸みのある縁
20 結び目ソケット
30 可撓性ストランド
31a、31b 端部
32 アイレット
34 結び目
35 領域
37 領域35の最も遠心の面
40 通路
42、44、342、344 縫合糸ストランド
100 縫合糸アンカー
200、300、400 ドライバ
210 ハンドル組立体
230、330、502 シャフト
250 ヘッド
252 細長いダブルフック
260 クリップ
310、504 ハンドル
350 ブレイクエッジ
360 側部カニュレーション
380 ニードル
388 空隙
393 タイダウンバー
396 スロット
399 ハッチ
440 パンチニードル
500 タップ
505 先細りのらせん状切断部
506 タッピングヘッド
508 トロカール先端
900 骨部分
910 パンチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近心端及び遠心端を有するアンカー本体と;
少なくとも部分的に前記アンカー本体内に配置されるループであり、前記アンカー本体の前記遠心端で配置される結び目が結ばれる端部を有する、ところのループと、
を有する、
縫合糸アンカー。
【請求項2】
前記ループは完全に前記アンカー本体内に配置される、
請求項1記載の縫合糸アンカー。
【請求項3】
前記結び目は前記アンカー本体の前記遠心端で配置されるソケット内に設置される、
請求項1記載の縫合糸アンカー。
【請求項4】
前記ループは前記アンカー本体の口径内に設置される、
請求項3記載の縫合糸アンカー。
【請求項5】
前記口径は前記アンカーを打ち込むためのドライバヘッドを受けるよう構成される開口を有する、
請求項4記載の縫合糸アンカー。
【請求項6】
前記ループを通じて糸通しされる少なくとも1つの縫合糸ストランドを更に有する、
請求項1記載の縫合糸アンカー。
【請求項7】
前記縫合糸ストランドは一端で取り付けられるニードルを更に有する、
請求項6記載の縫合糸アンカー。
【請求項8】
前記アンカー本体は前記近心端から前記遠心端へ螺刻される、
請求項1記載の縫合糸アンカー。
【請求項9】
前記本体部は生体吸収性材料を有する、
請求項1記載の縫合糸アンカー。
【請求項10】
前記ループは超高分子量のポリエチレンから形成される縫合糸を有する、
請求項1記載の縫合糸アンカー。
【請求項11】
前記結び目は接着材料で被覆される、
請求項1記載の縫合糸アンカー。
【請求項12】
組織を骨へ取り付けるための縫合糸アンカー組立体であって:
遠心端、近心端、縦軸、外面、前記近心端で設置される第1中央口径、及び前記遠心端で設置される第2中央口径を有するアンカー本体を有する縫合糸アンカーと;
ループ及び結び目を有する可撓性材料の第1ストランドであり、可撓性材料の該第1ストランドは前記アンカー本体内に配置されているので、前記ループは前記第1中央口径内に配置され且つ前記結び目は前記第2中央口径内に配置される、ところの可撓性材料の第1ストランドと;
前記縫合糸アンカーへ取り付けられ且つ前記ループを滑動して通過する少なくとも1つの可撓性材料の第2ストランドと、
を有する、
ところの縫合糸アンカー組立体。
【請求項13】
前記第1中央口径は中央通路を通じて前記第2中央口径と連通する、
請求項12記載の縫合糸アンカー組立体。
【請求項14】
前記の第1及び第2中央口径は第1直径を有し、且つ前記中央通路は第2直径を有し、前記第2直径は前記第1直径より小さい、
請求項13記載の縫合糸アンカー組立体。
【請求項15】
前記ループは前記アンカー本体の前記近心端から前記アンカー本体の長さの約3分の1だけ嵌め込まれている、
請求項12記載の縫合糸アンカー組立体。
【請求項16】
前記アンカー本体は前記アンカー本体の前記外面から延在する複数のねじ山を有する、
請求項12記載の縫合糸アンカー組立体。
【請求項17】
前記アンカー本体は約5.5mmの外側直径を有する、
請求項12記載の縫合糸アンカー組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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