説明

官能化不織布物品

0.7〜15ミクロンの平均繊維サイズと、50〜95%の空隙容量と、不織布基材の表面にグラフトされたカチオン性アミノアルキル(メタ)アクリロイルモノマー単位を含むポリマーと、を有するグラフト化不織布基材が開示される。該物品は、オリゴヌクレオチド又はモノクローナル抗体(MAb)などの標的材料を流体混合物から精製又は分離するためのフィルタ要素として使用されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、官能化不織布基材、及びその調製方法に関する。本開示は更に、官能化不織布基材を使用するフィルタ、及び流体の濾過方法に関する。この官能化基材は、生物汚染物質などの生体物質を生体サンプルから選択的に濾過及び除去するのに有用である。
【背景技術】
【0002】
ウイルス及び生体ポリマー(例えば、タンパク質、炭水化物、脂質、及び核酸のような生細胞の構成成分又は生成物を含む)などの標的生体物質の検出、定量化、単離及び精製は、長年にわたって研究者の課題であり続けている。検出及び定量化は、診断にとって、例えば、様々な生理学的条件(例えば疾患)の指標として重要である。細胞培養又は発酵過程で精製される、モノクローナル抗体などの生体ポリマーの単離及び精製は、治療法にとって、及び生物医学研究において重要である。酵素のような生体ポリマーは、単離され、精製されて、甘味料、抗生物質及び様々な有機化合物、例えばエタノール、酢酸、リジン、アスパラギン酸及び生物学上有用な生成物(例えば抗体及びステロイド)の製造のために利用されてきた。
【0003】
クロマトグラフ分離及び精製操作は、気体又は液体であることができる移動相と固定相との間の溶質の交換に基づき、生体生成物混合物に対して行うことができる。固定相を有するそれぞれの溶質の様々な結合相互作用のため、溶液混合物の様々な溶質の分離が達成され、それ程強く相互に作用しない溶質と比較して、移動相の解離又は置換作用を受けたとき、より強い結合相互作用の滞留時間は一般により長くなり、このような方法で、分離及び精製が達成できる。
【0004】
大部分の現在の捕捉又は精製クロマトグラフィーは、従来のカラム技術によって行われる。これらの技術は、クロマトグラフィーを使用した処理量が低いことから、下流精製における深刻なボトルネックを有する。これらの問題を軽減する試みには、クロマトグラフィーカラムの直径を大きくすることが挙げられるが、これも、効果的かつ再現的にカラムを充填することが困難であるため、課題が残る。より大きいカラム直径も、問題となるチャネリングの発生を増やす。また、従来のクロマトグラフカラムでは、特定の水準を超える所望の生成物のブレークスルーが検出されると、吸収操作が中断される。これによって、吸着培地の動的又は有効容量が、全体的又は静的な容量より大幅に低くなる。更に、カラムを閉塞させてカラムを洗浄するのを困難にする、又は場合によってはカラムを再利用できなくする不必要な汚染物質から、選択的なタンパク質Aカラムを保護しなければならない。有効性が低下すると経済的に困難な結果となり、クロマトグラフィー樹脂のコストは高くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポリマー樹脂は、様々な標的化合物の分離及び精製に広く用いられる。例えば、ポリマー樹脂は、イオン基の存在に基づいて、目的化合物の大きさに基づいて、疎水性相互作用に基づいて、親和性相互作用に基づいて又は共有結合の形成に基づいて、目的化合物を精製又は分離するために用いることができる。当該技術分野では、拡散及び結合における限界を克服し、高い処理量及びより小さな圧力低下で操作され得る官能化膜の必要が存在する。当該技術分野では、宿主細胞タンパク質、細胞残屑、DNAフラグメント、ウイルス、及びモノクローナル抗体の製造中の生物学的供給流からの細胞残屑といった生物汚染物質の選択的除去に対して改善された親和力を有するポリマー基材の必要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、0.7〜15ミクロンの平均繊維サイズと、50〜95%の空隙容量と、不織布基材の表面にグラフトされたカチオン性アミノアルキル(メタ)アクリロイルモノマー単位を含むポリマーと、を有するグラフト化不織布基材を含む物品を提供する。該物品は、例えば、宿主細胞タンパク質、DNAフラグメント、ウイルス、及び細胞残屑、オリゴヌクレオチド、又はモノクローナル抗体(MAb)などの治療用タンパク質などの標的材料を、一般的な細胞産物収集技術によって生成された流体などの流体混合物から精製又は分離するためのフィルタ要素として使用されてもよい。具体的には、本開示の物品の1つ以上の層を深層濾過用途で使用してもよく、これらの層のそれぞれは、同一の又は異なる繊維サイズ、空隙容量、ポリマーグラフト化度、グラフト化ポリマーのモノマー組成、多孔性、嵩、引張強度及び表面積を有していてもよい。官能化基材は、更に、多孔質膜又は微多孔膜などの従来の濾過要素と組み合わされて使用されてもよい。
【0007】
本開示は、不織布基材を提供する工程と、不活性雰囲気中で不織布基材を電離放射線に暴露する工程と、続いて、該モノマーを不織布基材の表面にグラフト重合するために、グラフト化アミノアルキル(メタ)アクリロイルモノマーを含む溶液に暴露された基材を含浸させる工程と、を含む物品の製造方法を更に提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1及び比較例1の物品の濾過性能のプロット。
【図2】実施例4の濾過性能のプロット。
【図3】比較例6の濾過性能のプロット。
【図4】実施例9の濾過性能のプロット。
【図5】実施例11a〜11dの濾過性能のプロット。
【図6】複数のプリーツ状に成形される本開示による濾材の例示的実施形態の斜視図。
【図7】レンチキュラー形状で提供され、かつ本開示による濾材を備える例示的なフィルタ装置の断面図。
【図8】封入形態で提供され、かつ本開示による濾材を備える例示的なフィルタ装置の斜視及び部分切り欠き図。
【図9】封入形態で提供され、かつ本開示による第1のプリーツのついた媒体シリンダと第2のプリーツのついた媒体シリンダとを備える例示的なフィルタ装置の、図8の9−9で切断した断面図。
【図10】封入形態で提供され、かつコアを備える例示的なフィルタ装置の、図8の9−9で切断した断面図であり、本開示による濾材がコアの周囲に螺旋状に巻き付いている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、0.7〜15ミクロンの平均繊維サイズと、50〜95%の空隙容量と、不織布基材の表面にグラフトされたカチオン性アミノアルキル(メタ)アクリロイルモノマー単位を含むポリマーと、を有する不織布基材を含む物品を提供する。ポリマー官能化物品は、水性又は水性/有機溶剤溶液中のモノマーの電離放射線重合及び後続のグラフト重合によって不織布基材上に形成されたフリーラジカルで開始される、不連続の非架橋ヒドロゲルポリマーと記述することができる。本明細書で使用する時、「ヒドロゲル」は、含水ゲル、すなわち、親水性で水を吸収するが、水に不溶性のポリマーである。ヒドロゲルという用語は、水和の状態に関わらず用いられる。
【0010】
不織布基材は不織布ウェブであり、不織布ウェブの製造のための周知のプロセスのいずれかにより製造される不織布ウェブを含んでよい。本明細書で使用するとき、用語「不織布ウェブ」は、マット状の層間に、不規則に及び/又は一定方向に入れられた個々の繊維又はフィラメントの構造を有する布地を意味する。
【0011】
例えば、繊維性不織布ウェブは、カード、エアレイド、ウェットレイド、スパンレース、スパンボンド、電界紡糸、又はメルトスパン若しくはメルトブローンなどのメルトブローン法、あるいはこれらの組み合わせによって製造されることができる。スパンボンド繊維は、典型的には、押し出される繊維の直径を持つ微細で通常は円形をした複数個の紡糸口金の毛管から、溶融した熱可塑性ポリマーをフィラメントとして押し出し、急激に縮小させることにより形成された小径繊維である。メルトブロー繊維は、典型的には、溶融した熱可塑性物質を、融解した糸又はフィラメントとして、微細で通常は円形をした複数個の金型(die)毛管を通して、溶融した熱可塑性物質のフィラメントを捕捉してその直径を縮小させる高速の、通常は加熱されたガス(例えば、空気)の流れの中に押し出すことによって形成されている。その後、高速ガス流によって、メルトブロー繊維は移動され収集面上に堆積し、無作為に分散されたメルトブロー繊維のウェブを形成する。任意の不織布ウェブは、熱可塑性ポリマーの種類及び/又は厚さが異なる単一の繊維又は2つ以上の繊維から製造されてよい。
【0012】
ステープルファイバーもまた、ウェブ内に存在してよい。一般に、ステープルファイバーが存在することで、ブローマイクロファイバーのみからなるウェブよりも、より嵩高でより密度の低いものとなる。約20重量%以下のステープルファイバーが存在することが好ましく、より好ましくは約10重量%以下である。ステープルファイバーを含むこのようなウェブは、米国特許第4,118,531号(Hauser)に開示されている。
【0013】
不織布物品は、任意に、スクリムの1つ以上の層を更に含んでもよい。例えば、主表面の一方又は両方は、それぞれ任意に、スクリム層を更に含んでもよい。典型的には、繊維から製造される織布又は不織布の補強材であるスクリムは、不織布物品に強度を提供するために含まれる。好適なスクリム材料には、ナイロン、ポリエステル、繊維ガラス等が挙げられるが、これらに限定されない。スクリムの平均厚さは様々であり得る。典型的には、スクリムの平均厚さは、約25〜約100マイクロメートル、好ましくは約25〜約50マイクロメートルの範囲である。スクリムの層は、任意に、不織布物品に接合されてもよい。様々な接着剤を使用して、スクリムをポリマー材料に接合することができる。別の方法としては、スクリムは、不織布に熱接合されてもよい。
【0014】
不織布基材のマイクロファイバーは、Davies,C.N.、「The Separation of Airborne Dust and Particles,」Institution of Mechanical Engineers,London,Proceedings 1B,1952に記載された方法により計算した場合に、典型的には、約0.5〜15マイクロメートル、好ましくは約1〜6マイクロメートルの有効繊維長を有する。不織布基材は、好ましくは、約10〜400g/m、より好ましくは約10〜100g/mの坪量を有する。不織布基材の平均厚さは、カレンダー加工されていない非官能化基材では、好ましくは約.1〜10mm、より好ましくは約0.25〜5mmである。不織布ウェブの最小引張強度は、約4.0ニュートンである。不織布の引張強度は、ウェブ横断方向における良好な繊維接合及び絡み合いに起因して、ウェブ横断方向よりも機械方向で低いことは一般に認識されている。
【0015】
不織布ウェブの嵩は、ソリディティ(ウェブの体積の固体分率を定義するパラメータ)で測定される。低いソリディティ値は、ウェブの嵩が大きいことを示す。有用な不織布基材は、20%未満、好ましくは15%未満のソリディティを有する。ソリディティは、典型的にはαとして表わされる無単位の分数である。
【0016】
α=m÷ρ×L不織布
式中、mは、サンプル表面積あたりの繊維質量であり、ρは繊維密度であり、
不織布
は不織布の厚さである。ソリディティは、本明細書では不織布基材そのものを対象にして使用され、官能化不織布は対象とならない。不織布基材が2種類以上の繊維の混合物を含む場合、同じL不織布を用いて繊維のそれぞれの種類に対して個々のソリディティ(solidifies)が決定され、これら個々のソリディティを合計すると、ウェブのソリディティαが得られる。
【0017】
1つの例として、カレンダー加工又はグラフト化の前の不織布基材は、厚さ0.34mm、有効繊維長4.2μm、及びソリディティ13%から計算された平均孔径14μmを有するのが好ましい。カレンダー加工後、不織布ウェブは、厚さ0.24mm及びソリディティが18%を有し、平均孔径は8μmとなる。用語「平均孔径」(平均孔直径としても知られている)は、算術中央値繊維直径及びウェブのソリディティに関連付けられ、その値は、次式によって決定され、式中Dは平均孔径であり、dは算術中央値繊維直径であり、αはウェブのソリディティである。
【0018】
【数1】

【0019】
不織布基材は、1〜40ミクロン、好ましくは2〜20ミクロンの平均孔径を有するのが好ましい。平均孔径は、Freon TF(商標)を試験流体として使用して、Bubble Point and Mean Flow Pore Test Method Bによって、ASTM F 316−03 Standard Test Methods for Pore Size Characteristics of Membrane Filtersに従って測定されてもよい。
【0020】
不織布基材は、任意の好適な熱可塑性ポリマー材料から形成されてもよい。好適なポリマー材料には、ポリオレフィン、ポリ(イソプレン)、ポリ(ブタジエン)、フッ素化ポリマー、塩素化ポリマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテル、ポリ(エーテルスルホン)、ポリ(スルホン)、ポリ(ビニルアセテート)、ビニルアセテートのコポリマー(例えば、ポリ(エチレン)−コ−ポリ(ビニルアルコール))、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(ビニルエステル)、ポリ(ビニルエーテル)、ポリ(ビニルアルコール)、及びポリ(カーボネート)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
好適なポリオレフィンとしては、ポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)、ポリ(1−ブテン)、エチレンとプロピレンのコポリマー、αオレフィンコポリマー(例えば1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、及び1−デセンとエチレン又はプロピレンのコポリマー)、ポリ(エチレン−コ−1−ブテン)及びポリ(エチレン−コ−1−ブテン−コ−1−ヘキセン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
好適なフッ素化ポリマーとしては、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(フッ化ビニリデン)、フッ化ビニリデンのコポリマー(ポリ(フッ化ビニリデン−コ−ヘキサフルオロプロピレン)など)、及びクロロトリフルオロエチレンのコポリマー(例えばポリ(エチレン−コ−クロロトリフルオロエチレン))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
好適ポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,12、ポリ(イミノアジポイルイミノヘキサメチレン)、ポリ(イミノアジポイルイミノデカメチレン)、及びポリカプロラクタムが挙げられるが、これらに限定されない。好適なポリイミドには、ポリ(ピロメリットイミド)が挙げられる。
【0024】
好適なポリ(エーテルスルホン)としては、ポリ(ジフェニルエーテルスルホン)及びポリ(ジフェニルスルホン−コ−ジフェニレンオキシドスルホン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
好適なビニルアセテートのコポリマーには、ポリ(エチレン−コ−ビニルアセテート)、及びアセテート基の少なくとも一部が加水分解されていて、ポリ(エチレン−コ−ビニルアルコール)などの種々のポリ(ビニルアルコール)を与えるコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
好ましいポリマーは、本質的に親水性であり、電離放射線によって、例えばe−ビーム又はガンマ線に暴露することによって容易にグラフト化される。好ましいポリマーには、ポリアミド並びにエチレンビニルアルコールポリマー及びコポリマーが含まれる。1ミクロン以下の有効繊維長を有するナイロン不織布基材は、米国特許第7,170,739号(Aroraら)、同第7,112,389号(Aroraら)、同第7,235,122号(Brynerら)、及び米国特許出願第20040116026号(WO 04/02714と同じ)に記載されるものから選択されてもよい。1ミクロン以下の有効繊維長を有する有用なナイロン不織布基材はまた、DuPont(Wilmington,DE)からHMT(商標)16434及びHMT(商標)16435ハイブリッド膜技術膜として市販されている。
【0027】
本発明の不織布ウェブの製造方法についての更なる詳細は、Wente,Superfine Thermoplastic Fibers,48 INDUS.ENG.CHEM.1342(1956)又はWenteら、Manufacture Of Superfine Organic Fibers(Naval Research Laboratories Report No.4364,1954)に見出され得る。不織布基材の有用な調製方法は、U.S.RE39,399(Allen)、米国特許第3,849,241号(Butinら)、同7,374,416号(Cookら)、同第4,936,934号(Buehning)、及び同第6,230,776号(Choi)に記載されている。
【0028】
いくつかの実施形態において、不織布基材は、別の滑らかなロールにニップされている滑らかなロールを使用してカレンダー加工される。カレンダー加工された又は圧縮された不織布ウェブは、より均一な基材、及び未反応モノマーを除去するために後で行われる洗浄工程における寸法安定性をもたらす。したがって、好ましい実施形態では、本発明による不織布基材は、上記パターンエンボス加工に加えて、滑らかなロール及び固体バックアップロール(例えば、金属、ゴム、又は綿布で覆われた金属)で熱カレンダー加工される。カレンダー加工の間、滑らかなロールの温度及び圧力を厳密に制御することが重要である。広くは、繊維は、表面に被膜又は表皮を形成するなど、不織布基材に望ましくない特性を与えることなく、接点で最小限に熱融着される。例えば、ナイロン不織布基材を使用する場合、滑らかなロールの温度を約40℃〜100℃、より好ましくは約50℃〜75℃に保つのが好ましい。更に、滑らかなロールは、約10Kgf/cm(98N/cm)〜約50Kgf/cm(490N/cm)、より好ましくは約15Kgf/cm(147N/cm)〜約30Kgf/cm(294N/cm)の圧力で繊維ウェブと接触するべきである。カレンダー加工された不織布基材の平均厚さは、初期不織布の厚さの約2/3であるのが好ましい。
【0029】
官能化物品は、含浸溶液中でのモノマーの電離放射線重合及び後続のグラフト重合によって不織布基材上に形成されたフリーラジカルで開始される、不連続の非架橋ヒドロゲルポリマーと記述することができる。本明細書で使用する時、ヒドロゲルとは、含水ゲル、即ち、親水性で水を吸収するが、水に不溶性のポリマーである。用語ヒドロゲルは、水和の状態に関わらず用いられる。
【0030】
グラフト化ポリマーは、不織布基材から始まる、及び不織布基材によって支持される、ポリマーの巻きひげ(tendrils)を含み、ポリマー鎖(巻きひげ)は、不織布基材の侵入型間隙の中に延びる。グラフト化ポリマー鎖は、ペンダント4級アンモニウム基と、任意のペンダントポリ(アルキレンオキシド)基と、及び他の官能基とを有する。純水の存在下で、ヒドロゲルは、最大水和及び体積の状態に達する。ポリマーの巻きひげは橋かけせず、独立して移動自在であるので、グラフト化不織布物品は、非常にわずかな量の刺激対して大きな流動応答を有し得る。
【0031】
本発明の非架橋のグラフトヒドロゲルポリマーとは異なり、従来のヒドロゲルは、複数の架橋部位で架橋する個々のポリマーストランド又は巻きひげを含む。架橋の結果、ポリマーの分子量は無限大であり、「ゲル」は膨潤ポリマーネットワークを指し、ゲルの特性は、ポリマーの濃度、ポリマーの分子量及び架橋密度によって制御される。
【0032】
不織布基材の置換度、及びその表面にグラフトされたポリマーの重量に応じて、ヒドロゲルポリマーは、不織布基材の侵入型間隙を完全に充満し、これにより、官能化不織布物品を通る純水の流れを有効に遮断するバリアを提供することができ、所与の流動速度(定速)で大きなバックプレッシャー、又は所与の圧力(定圧)で非常に低い流量となる。純水中では、プラスに帯電した4級アンモニウム基は、互いに静電気的に反発して、グラフト化ポリマー鎖の最大伸長、及びその結果としてのヒドロゲルの最大水和が引き起こされる。
【0033】
濾過で使用される場合、ヒドロゲルは、塩、緩衝液、有機溶媒、温度、pH、汚染、又は生体分子などの微小の「トリガ」に応答して可逆的に膨張し、その結果として収縮する可能性があり、低圧で高流束がヒドロゲルネットワークを通ることになる。驚くべきことに、グラフトヒドロゲルネットワークは、「トリガされた」状態にあってその濾過性を失わない。そのような「トリガ」が無い場合、十分に膨張したヒドロゲルネットワークは、水分流動に対する抵抗性を提供することができる。
【0034】
最大水和状態で、ヒドロゲルは不織布基材によってのみ拘束され、最も著しくはx軸及びy軸内(不織布基材と同一面内)に拘束され、不織布基材の面に垂直な軸Zではその傾向は低い。ゲルはz軸上に拘束されにくい。不織布基材に拘束されたゲルは、z軸上で最大800%以上膨張し得るが、x軸及びy軸上では望ましくは100%未満、より好ましくは50%未満である。
【0035】
メルトブローンの技術分野では、不織布ウェブの状態は、(a)繊維を適切に積層するためにダイ及びコレクタを調整する、(b)繊維が溶融しすぎる及び繊維同士が接合するのを防止するために、溶融温度及び空気温度を調整する、(c)コレクタがダイに近接して近づきすぎることによって引き起こされる非対称を最小限にすることによって、z方向(不織布の面に対して垂直)の弾力性を最大にするように調整され得る。繊維同士が結びつく程度を低減するために、コレクタに突き当たる前の不織布繊維の温度は、ポリマー溶融温度より低いのが好ましい。望ましくは、不織布は、ヒドロゲルを膨張させるために、「z」方向(不織布の面に対して垂直)に最大限に伸張してもよい。
【0036】
ヒドロゲルは可逆的に収縮し、中性化合物、塩、緩衝液及び負に帯電したイオンなどの溶存種の存在下で、生じた隙間を通って水が流れることができる。溶解イオンなどの溶存種は、グラフト化ポリマー中のプラスに帯電した4級アンモニウム基とより効率的に電荷結合し、その結果、4級アンモニウム基の間の静電反発力が低減して、ヒドロゲルが収縮又は圧潰すると考えられている。あるいは、溶存種は、水(及び場合によっては溶媒)分子の水和層を置換することができ、その結果ヒドロゲルは不織布基材の周囲に圧潰する。したがって、物品は、本質的に不連続である、従がってヒドロゲルの孔又は隙間を可逆的に開いたり閉じたりすることができる、刺激応答性ヒドロゲル(「応答性ヒドロゲル」)を呈する。
【0037】
不織布基材は、不織布基材の表面にグラフトされたアミノアルキル(メタ)アクリロイルモノマー単位を含むポリマーを有する。ポリマーは、アミノアルキル(メタ)アクリロイルモノマー、任意にポリ(アルキレンオキシド)モノマー、及び任意にその他の親水性モノマーを含むグラフト化モノマーのe−ビーム開始重合によって、不織布基材の表面にグラフトされる。広くは、グラフト(コ)ポリマーは、
a)70〜100重量%、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは80〜98重量%のグラフト化アミノアルキル(メタ)アクリロイルモノマーと、
b)0〜20重量%、好ましくは2〜20重量%、より好ましくは5〜10重量%のグラフト化ポリ(アルキレンオキシド)モノマーと、
c)0〜10重量%の第2の親水性モノマーと、を含む
(各重量パーセントは全モノマー含有量の重量に対するものである)。
【0038】
一般に、全グラフト化モノマー含有量は、不織布基材の重量の0.5〜5倍であってもよい。不織布基材の侵入型間隙を充満するが、不織布基材の膨張を制限して流量を妨げないように、ポリマー鎖を橋かけして不織布の独立した繊維をグラフト化ポリマーストランドと結合させないのが望ましい。グラフト化ポリマーによるこの繊維同士の橋かけを低減するための1つの方法は、所定の繊維サイズに対するモノマー濃度を低くすることである。グラフト含浸溶液に水混和性有機溶媒を加えて、グラフトヒドロゲルポリマーの巻きひげの分子量を最大にし、かつ巻きひげの橋かけを低減することによって、グラフト化ポリマーの量が最大になり得ることが分かっている。
【0039】
不織布の侵入型間隙の中に詰まったヒドロゲルの巻きひげを有することで増大する流量圧力は、イオントリガ又は生物学的汚染物質そのものによって簡単に軽減する。侵入型間隙にヒドロゲルストランドを詰めることによって得られる利益は、汚染物質がヒドロゲルの水を置換することができる空隙容量の中にポリマーストランドを有する不織布の表面積が有効に拡大することである。詰まった構成のグラフトヒドロゲルポリマーの巻きひげを有する不織布の予想外の正味の効果は、汚損なしにかなり大量の可溶性及び不溶性生物的汚染物質を保持する能力であり、複数の長い可撓性のヒドロゲル巻きひげは、多重結合又は水素結合部位となる能力があり、著しく改善された耐塩性を有するアフィニティー吸着が可能となる。他の微多孔性の基材と異なり、不織布基材は、表面コーティングされた基材というよりはむしろ、グラフト化ポリマーの足場であると考えることができる。
【0040】
グラフト化アミノアルキル(メタ)アクリロイルモノマーは、式Iのアミノ(メタ)アクリレート又はアミノ(メタ)アクリルアミド、又はその第四級アンモニウム塩である。
【0041】
【化1】

【0042】
式II中、Rは水素又はメチル、好ましくはメチルであり、LはO−又は−NH−であり、Yはアルキレン(例えば、1個〜10個の炭素原子、1個〜6個の炭素原子、又は1個〜4個の炭素原子を有するアルキレン)である。各Rは独立して水素又はアルキル、好ましくはC〜Cアルキルである。あるいは、2個のR基は、これらが結合する窒素原子と一緒になって、芳香族であって、部分的に不飽和(すなわち、不飽和ではあるが芳香族ではない)、又は飽和である複素環式基を形成でき、この場合、複素環式基は任意に応じて、芳香族(例えば、ベンゼン)、部分的に不飽和(例えば、シクロヘキセン)、又は飽和(例えば、シクロヘキサン)である第2の環と融合することができる。第四級アンモニウム塩の対イオンは、多くの場合、ハロゲン化物、硫酸塩、リン酸塩、及び硝酸塩等である。このようなグラフト化モノマーは、四級アンモニウムモノマーであってもよい、即ち、−N(R基を有する(式中、各Rは上記した通りであり、Xは対アニオンである)。4級アンモニウム基を有するこのようなモノマーを、不織布基材の表面に直接グラフトしてもよく、又は、第1級、第2級、又は第3級アミン基を有するグラフト化アミノアルキル(メタ)アクリロイルモノマーをグラフトし、続いてアルキル化によって4級アンモニウム基に変換してもよい。
【0043】
式Iのいくつかの実施形態において、R基は、両方とも水素である。他の実施形態では、R基の1個は水素で、他の1個は、1〜10個、1〜6個、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキルである。更に他の実施形態では、R基は、この基が結合している窒素原子と結びついて複素環式基を形成する。複素環式基は、少なくとも1つの窒素原子を含み、酸素又は硫黄などの他のへテロ原子を含有することができる。代表的な複素環式基としては、イミダゾリルが挙げられるがこれに限定されない。複素環式基は、ベンゼン、シクロヘキセン又はシクロヘキサンなどの追加の環に結合されてもよい。追加の環に結合される代表的な複素環式基としては、ベンゾイミダゾリルが挙げられるがこれに限定されない。
【0044】
代表的なアミノアルキル(メタ)アクリレート(即ち、式IのLがオキシ)としては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート(diethylaminoethylmethacylate)、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート、N−tert−ブチルアミノプロピルメタクリレート、N−tert−ブチルアミノプロピルアクリレート及びその類などのN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0045】
例示のアミノ(メタ)アクリルアミド(即ち、式IのLが−NH−)には、例えば、N−(3−アミノプロピル)メタクリルアミド、N−(3−アミノプロピル)アクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド、N−(3−イミダゾリルプロピル)メタクリルアミド、N−(3−イミダゾリルプロピル)アクリルアミド、N−(2−イミダゾリルエチル)メタクリルアミド、N−(1,1−ジメチル−3−イミダゾリルプロピル)メタクリルアミド、N−(1,1−ジメチル−3−イミダゾリルプロピル)アクリルアミド、N−(3−ベンゾイミダゾリルプロピル)アクリルアミド、及びN−(3−ベンゾイミダゾリルプロピル)メタクリルアミドが含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
式Iのアミノアルキル(メタ)アクリロイルモノマーの例示的な四級塩には、(メタ)アクリルアミドアルキルトリメチルアンモニウム塩(例えば、3−メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド及び3−アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド)及び(メタ)アクリルオキシアルキルトリメチルアンモニウム塩(例えば、2−アクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、3−アクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド及び2−アクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0047】
グラフト化ポリマーは、任意に、ポリ(アルキレンオキシド)基を有する1官能性エチレン系不飽和グラフト化モノマー単位を含む。これらモノマーは、グラフト化アミノアルキル(メタ)アクリロイルモノマーと共重合して、不織布基材の表面上にグラフト化コポリマー鎖を形成する。存在する場合、これらモノマーは、全モノマーの重量に対して、2〜20重量%、より好ましくは5〜10重量%の量で用いられる。
【0048】
ポリ(アルキレンオキシド)基を有するモノマー単位は、次の式のものである。
【0049】
Z−Q−(CH(R)−CH−Q)−R、II
式中、Zは重合可能なエチレン性不飽和部分であり、Rは、H又はC〜Cアルキル基であり、Rは、H、C〜Cルキル基、アリール基、又はこれらの組み合わせであり、mは、2〜100、好ましくは5〜20であり、Qは、−O−、−NR−、−CO−、及び−CONRから選択される二価結合基である。
【0050】
一実施形態では、ポリ(アルキレンオキシド)基は、ポリ(エチレンオキシド)(コ)ポリマーである。別の実施形態では、ペンダントポリ(アルキレンオキシド)基は、ポリ(エチレンオキシド−コ−プロピレンオキシド)コポリマーである。かかるコポリマーは、ブロックコポリマー、ランダムコポリマー、又はグラジエントコポリマーであってもよい。
【0051】
モノマーの有用なエチレン性不飽和部分、Zには、以下のものを挙げることができる。
【0052】
【表1】

【0053】
式中、RはH又はMe、及びr=1〜10である。
【0054】
ポリ(アルキレンオキシド)基を有するモノマーは、例えば、1又は2官能性アルキレンオキシド(コ)ポリマー(典型的には市販されている)を反応性エチレン性不飽和化合物(例えば、(アクリレート)と反応させることにより調製することができる。ポリ(アルキレンオキシド)を終端させる官能基には、ヒドロキシ基、アミン基、及びカルボキシ基を挙げることができる。以下に限定されないが、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロイルクロライド、(メタ)アクリル酸無水物、及び2−イソシアナトエチルアクリレートを含むアクリレート誘導体のような様々な反応性エチレン性不飽和化合物を、使用することができる。好ましくは、モノマーは、1又は2官能性アルキレンオキシド(コ)ポリマーを無水(メタ)アクリル酸と反応させることにより調製される。典型的には、化学量論的な量のエチレン性不飽和反応物質を単官能性アルキレンオキシド(コ)ポリマー(モノヒドロキシ末端アルキレンオキシド(コ)ポリマーなど)と合わせると、一置換された生成物に100%転換される。
【0055】
好適な1官能性ポリ(アルキレンオキシド)モノマーの例としては、ポリ(エチレンオキシド)(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレンオキシド)(メタ)アクリレート、ポリ(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)(メタ)アクリレート、及びそれらの組み合わせが挙げられる。そのようなモノマーは、(C〜C)アルコキシ、アリールオキシ(例えば、フェノキシ)、及び(C〜C)アルカリルオキシなどの、1つの非反応性末端基を含んでいることが好ましい。これらの基は、直鎖又は分枝鎖であることができる。これらのモノマーは、広範な分子量のものであることができ、Sartomer Company(Exton,PA)、Shinnakamura Chemical Co.,Ltd.)(Tokyo,Japan)、Aldrich(Milwaukee,WI)、及びOsaka Organic Chemical Ind.,Ltd.(Osaka,Japan)のような供給元から市販されている。
【0056】
グラフト化ポリマーは、任意に、その他のエチレン系不飽和親水性グラフト化モノマー単位である「親水性モノマー」を含む。本明細書で使用するとき、「親水性モノマー」は、曇点に達することなく、少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも5重量%の水混和性(モノマー中の水)を有する重合可能なモノマーであり、ポリ(アルキレンオキシド)モノマーを含まず、非酸性官能基、又はグラフト重合を遅らせることになる基を含有する。グラフト化コポリマーは、このようなモノマー単位を0〜10重量%含んでもよい。存在する場合、ポリマーは、一般に、1〜10重量%のかかるモノマー単位を含む。
【0057】
好適な親水性モノマーの例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(HEMA)、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル、テトラヒドロフルフリルアクリレート、アクリルアミド、モノ−又はジ−N−アルキル置換アクリルアミド、グリセロールメタクリレート、及びこれらの組み合わせが挙げられる。好ましい極性モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(HEMA)、N−ビニルピロリドン、N−ビニルアセトアミド、メチルアクリルアミド、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0058】
ポリマーは非架橋であるので、モノマー混合物を含有する含浸溶液は、ポリエチレン性不飽和モノマー、即ち、架橋剤を含有しない。
【0059】
上記グラフト化モノマーに関し、不織布基材の表面にグラフトされるモノマーは、通常、e−ビームによるグラフト化のために、アクリル酸又は他の非アクリル酸重合性官能基のいずれかを有する。メタクリレート基は、ゆっくりとしたより均一な反応性、及びe−ビーム照射に暴露された不織布に対するそのようなメタクリレートの耐久性が理由で、(本明細書に記載の工程を用いて)不織布基材の表面にモノマーをグラフト化するのに好ましい。
【0060】
以下に更に詳細に記載するように、本発明の官能化基材は上記モノマーを用いて調製され、多孔質不織布のベース基材の表面にグラフト化ポリマーを提供することができる。上記グラフト化モノマーの2種類以上を使用する場合、単一反応工程でモノマーを不織布ベース基材上にグラフトし(即ち、電離放射線に暴露する)、続いて、本工程又は連続した工程において、全グラフト化モノマーを含浸させる(即ち、電離放射線への1回目の暴露の後、1種類以上のグラフト化モノマーを含浸させ、次に電離放射線への2回目の暴露を行い、この2回目の暴露の後に2回目の含浸を行う。
【0061】
このグラフト化工程は、不織布基材の表面上にラジカル種をもたらすことが更に理解されよう。モノマー溶液の含浸後、式Iのアミノアルキル(メタ)アクリロイルモノマーのカルボニルに対してα位の炭素にラジカルを形成して重合を開始し、1種類以上の更なるアミノアルキル(メタ)アクリロイルモノマー、式IIの1種類以上の任意のPEGモノマー、及び1種類以上の任意の第2の親水性モノマーで更に重合してもよく、以下に簡単に例示されるような、これらの基がポリマー鎖からペンダントするグラフト化ポリマーが得られる。
【0062】
基材−(MNR4+−(MPEG−(M
式中、−(MNR4+−は、「w個」の重合モノマー単位を有する式Iのグラフト化アミノアルキル(メタ)アクリロイルモノマーの残基を表し(wは少なくとも2である)、−(MPEGは、「x個」の重合モノマー単位を有する式IIの重合モノマーを表し(xはゼロであってもよく、及び好ましくは少なくとも1である)、−(Mは、y個の重合モノマー単位を有する重合された第2の親水性モノマーを表す(yはゼロであってもよく、好ましくは少なくとも1である)。ポリマーはランダム又はブロックであってもよい。ポリマーは、図のように、アミノアルキル(メタ)アクリロイルモノマーの残基を介して直接グラフトされてもよく、又は、本明細書に記載のように、−(MPEG)−モノマー又は親水性モノマーを介して直接グラフトされてもよい。
【0063】
グラフト化不織布基材の調製方法は、不織布基材を提供する工程と、不活性雰囲気中で不織布基材をe−ビーム放射線に暴露する工程と、グラフト化アミノアルキル(メタ)アクリロイルモノマーを含む溶液に暴露した基材を含浸させて、このモノマーを不織布基材の表面にグラフト重合する工程と、を含む。
【0064】
第1の工程では、不織布基材を、不活性雰囲気中でe−ビーム放射線などの電離放射線に暴露する。一般に、酸素がパージされたチャンバ内に基材を設置する。典型的には、チャンバは、フリーラジカル重合を阻害することが知られている少量の酸素(100ppm未満)とともに、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性雰囲気を含む。
【0065】
照射工程は、不織布基材表面上にフリーラジカル反応部位を形成するために、好ましくはイオン化e−ビーム又はガンマ線による該表面の電離放射を含み、続いてこの表面上にモノマーをグラフトする。「電離放射線」とは、ベース基材の表面(1つ又は複数)にフリーラジカル反応部位を形成するのに十分な線量及びエネルギーの放射線を意味する。電離放射線には、ガンマ、電子ビーム、X線及び他の形態の電磁放射線を挙げることができる。場合によっては、コロナ放射線は十分に高いエネルギー放射線であってよい。放射線は、十分に高エネルギーであり、そのため、ベース基材の表面に吸収されると、十分なエネルギーがその支持体に移動して、この支持体内の化学結合の開裂を生じ、結果として不織布基材上にフリーラジカル部位が形成される。不織布基材の1つ以上の層を電離放射線にさらしてもよい。
【0066】
高エネルギー放射線量は、キログレイ(kGy)で測定される。線量は、所望のレベルの単一線量で、又は累積すると所望のレベルになる複数線量で、管理されることができる。照射線量は、累積的に約1kGy〜約200kGyの範囲であり得る。照射線量は、例えばe−ビーム源から一度に供給され得ることができ、又は、ガンマ源から供給される線量のように、数時間にわたる低線量率で累積されてもよい。好ましくは、累積線量は、放射線損傷に耐性のある基材の場合、20kGy(2Mrad)を超える。
【0067】
電子ビームは、商業的供給源から容易に調達できるので、1つの好ましいグラフト化方法である。電子ビーム発生器は、Energy Sciences,Inc.(Wilmington,MA)製のESI「ELECTROCURE」EBシステム及びPCT Engineered Systems,LLC(Davenport,IA)製のBROADBEAM EB PROCESSORを含む種々の供給源から市販されている。いかなる所定の種類機器及び放射線試料位置であろうとも、放出される線量は、「放射線フィルム放射線線量測定装置の使用に関する基準」と題するASTM E−1275により測定することができる。エキストラクターグリッド電圧を変更することにより、供給源に対するビーム直径及び/又は距離、各種放射線線量率を得ることができる。
【0068】
照射工程では、十分な量の電離放射線に不織布基材を暴露して、不織布基材の表面上にフリーラジカルを形成する。チャンバは、十分な照射線量の放射線を提供することができる、少なくとも1つの装置を含んでもよい。単一装置は十分な照射線量の放射線を提供することができるが、2つ以上の装置、及び/又は単一装置を通る複数の経路を、特に比較的厚い不織布基材用に使用してもよい。典型的には、不織布基材を含む環境は、フリーラジカル重合を阻害することが知られている少量の酸素とともに、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性雰囲気を含む。
【0069】
線量は、質量単位当たり吸収されたエネルギーの全量である。線量は、一般にキログレイ(kGy)で表現される。グレイは、質量キログラム当たり1ジュールのエネルギーを供給するのに必要な放射線の量として定義される。基材が受け取る全線量は、線源の放射能、滞留時間(即ち、サンプルを照射する総使用時間)、線源からの距離、及び線源とサンプルとの間の材料の介在断面による減衰を含む、多くのパラメータに応じて決まる。線量は、典型的には滞留時間、線源への距離またはその両方を制御することにより調節される。
【0070】
一般に、約20〜40kGyの範囲内の線量が、グラフトヒドロゲルポリマーを生成するのに適することが見出された。所定のあらゆる組成物に関する全線量必要量は、所望のグラフト化の目標、選択されたモノマー、使用する基材、及び照射線量率の関数として異なる。したがって、線量率は、特定組成に要求される特性に基づいて選択することが可能である。線量率は、典型的には、0.0005kGy/秒(ガンマ)〜200kGy/秒(e−ビーム)の範囲内である。
【0071】
グラフト化性能が同等な他の放射線源を使用してもよく、電子ビームは高度で高速な線量供給速度を生成することができるので、所望の電離放射線源は、電子ビーム源を含む。電子ビーム(e−ビーム)は一般的に、約10−6Torr(0.00013Pa)に維持された真空チャンバ内の反射板と抽出グリッドとの間に保持されているタングステンワイヤフィラメントに高電圧を印加することによって発生する。フィラメントが、高電流で加熱され、電子を生成する。電子は、リペラープレートとエキストラクターグリッドにより金属フォイルの薄いウィンドウに向かって誘導され、加速される。10メートル/秒(m/sec)を超える速度で進行し、約100〜300キロ電子ボルトを所有する加速電子は、真空チャンバからフォイルウィンドウを通過し、いかなる物質が位置付けられていても直ちにフォイルウィンドウを超えて透過する。
【0072】
生成する電子の量は、電流に直接的に関係する。エキストラクターグリッド電圧が増加すると、タングステンワイヤフィラメントから引き出される電子の加速度又は速度は増加する。e−ビームによる加工は、コンピュータ調整する場合にはきわめて正確であることができ、正確な照射線量及び照射線量率の電子を不織布基材に向けることができる。
【0073】
チャンバ内部の温度は、望ましくは、従来の手段により周囲温度に保持される。任意の特定の機構に制限されることを意図しないが、不織布基材を電子ビームに暴露することにより、基材表面上にフリーラジカル部位が生じ、次に含浸工程で、この基材表面をグラフト化モノマーと引き続き反応させることができると考えられている。
【0074】
不織布基材が受ける全線量は、主として、基材の表面上に形成されるラジカル部位の数に影響を与え、続いて、不織布基材上にグラフト化モノマーがグラフトされる程度に影響を与える。線量は、電圧、ウェブ又はラインの速度及びビーム電流を含む多くのプロセスパラメーターにより決まる。線量は、線速度(即ち、不織布基材が照射装置の下を通過する速度)及び抽出グリッドに供給される電流を制御することにより、便利に調節することができる。実験的に測定された係数(機械定数)をビーム電流に乗せ、ウェブ速度で除することによって目標の線量(例えば、<10kGy)を利便的に算出し、曝露量を決定することができる。機械定数は、ビーム電圧の関数として変化する。
【0075】
電子ビーム放射線暴露の調整線量は滞留時間によって決まるが、不織布基材は、特定のポリマーに応じて、最小照射線量である約1キログレイ(kGy)から、実用的最大線量である約200kG未満の範囲の調整線量にさらされる。プロピレンポリマーなどの放射線感受性ポリマーに関し、その量は、典型的には約1キログレイ(kGy)の最小照射線量〜約10kGy未満の最大線量の範囲である。典型的には、プロピレンポリマーの劣化を防ぐ合計調整線量は、約9kGy未満〜約7kGyの範囲である。ナイロン又はPVDFなどの放射線感受性が低いポリマーは、より高い放射線線量、典型的には10〜70kGyにさらしてもよい。一般に、好適なガンマ線源は、400keV以上のエネルギーを有するガンマ線を放出する。典型的には、好適なガンマ線源は、500keV〜5MeVの範囲内のエネルギーを有するガンマ線を放出する。好適なガンマ線源の例には、コバルト60同位元素(約1.17及び1.33MeVのエネルギーをほぼ等しい割合で有する光子を放出する)及びセシウム137同位元素(約0.662MeVのエネルギーを有する光子を放出する)が挙げられる。線源からの距離は固定であることが可能であるか、あるいは標的又は線源の位置を変えることにより可変にすることが可能である。線源から放出されたガンマ線の放射線束は、一般に、線源からの距離の二乗、及び同位元素の半減期によって決まるような持続時間によって減衰する。
【0076】
本発明の方法では、不織布基材の表面上にフリーラジカル部位を有する照射された基材を、照射工程に続いて及び照射工程と同時ではなく、モノマー溶液に含浸する。不織布基材の表面上に生成されたフリーラジカル部位は、数分から数時間の範囲の平均寿命を有し、室温で約10時間以内に低濃度へと徐々に減衰する。ドライアイス温度などの低い温度は、ラジカルの寿命を助長する。あるいは、加湿及び亜酸化窒素は、ヒドロキシルラジカルの生成を介した基材のラジカル形成速度を速めることができる。グラフト重合プロセスによるグラフト化不織布の有効な結合吸収能は、不活性条件下に保持された約12時間の反応時間の後、ほとんど変化しない。不活性で72時間グラフト重合プロセスを維持すると、恐らくグラフト化ポリマーの増加により、12時間後に室温で(空気に暴露することによって)急冷されたサンプルの性能よりも、(実施例に記載されるような)酵母/糖蜜結合能が約10〜20%上昇する結果となることがわかっている。
【0077】
一般に、照射工程の直後に、照射された不織布基材にモノマー溶液を含浸させる。一般に、e−ビームを使用する場合、1時間、好ましくは10分以内に照射された基材を含浸させる。一般に、線源としてガンマを使用する場合、照射滞留時間が長いので、照射の直後に基材を含浸させなければならない。グラフト化モノマーの存在下で基材を電離放射線で照射すると、グラフト化不織布基材の濾過性能は、本方法によって調製された物品の濾過性能よりも劣ることがわかっている。
【0078】
含浸工程では、1種類以上のグラフト化モノマーを含有しかつ上記の量の含浸溶液に、不織布基材を接触させる。好適な含浸方法には、スプレーコーティング、フラッドコーティング、ナイフコーティング、マイヤーバーコーティング、ディップコーティング及びグラビアコーティングが挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
ラジカル部位がグラフト化モノマーと重合を開始するのに十分な時間の間、含浸溶液を不織布基材と接触させたままにする。モノマー溶液に含浸すると、12時間の暴露後にグラフト化反応はほぼ完了する、即ち、一般に約90+%完了する。その結果、不織布基材は、不織布基材の侵入型及び外側表面に結合したグラフト化ポリマー及び/又はコポリマーを含む。
【0080】
上述のように、含浸溶液は、不織布基材の表面上にグラフトするのに好適な1種類以上のグラフト化モノマーを含んでもよい。上記した例示のグラフト化モノマーの全てを溶液中に含むことができる。上記グラフト化モノマーの他に、含浸溶液は、例えば、紫外線硬化用の1種類以上の他の非グラフト化モノマー、界面活性剤、染料、顔料及び溶媒などの他の物質を含有することができる。
【0081】
含浸溶液中の各グラフト化モノマーの濃度は、多くの要因(含浸溶液中のグラフト化モノマー(1又は複数)、望ましいグラフト度、グラフト化モノマーの反応性及び使用溶媒が挙げられるが、これらに限定されない)に応じて変化してよい。典型的には、含浸溶液中のモノマーの全濃度は、含浸溶液の全重量を基準として約1重量%〜約100重量%、望ましくは、約5重量%〜約30重量%、より望ましくは約15重量%〜約25重量%の範囲である。
【0082】
含浸溶液は、水混和性有機溶媒とグラフト化モノマーとの水性混合物を更に含む。溶媒混合物は、分離用途で使用すると、グラフト化ポリマーのモルホロジー及び得られる流動速度に影響を与えることが見出されている。水の有機溶媒に対する比は多様であり得るが、典型的には、水対有機溶媒は1:1(v/v)超過、好ましくは5:1超過、より好ましくは7:1超過である。この比は、一般に、得られたグラフト化不織布基材が、目標とするバイオセパレーション用途のための結合能を最大限にする圧力及び流量応答を生成するように、調整される。
【0083】
水中の有機溶媒濃度は、不織布基材の繊維サイズを基準にして最適化されてもよい。広くは、有機溶媒の最適濃度は、繊維サイズが減少するにつれて高くなる。20%の3−[(メタアクリロイルアミノ)プロピル]塩化トリメチルアンモニウム(MAPTAC)モノマー含浸溶液を使用する場合、4μmの有効繊維長を有する不織布は、15%の有機溶媒水溶液を最適に使用する。有効繊維長が1μmの不織布ウェブ用の15% MAPTACモノマー含浸溶液は、30%の有機溶媒水溶液を最適に使用する。
【0084】
含浸溶液中の水混和性有機溶媒の量を調整することによって、基材の繊維を橋かけする及び空隙を閉鎖することなく、より多量のモノマーが不織布基材にグラフトされると考えられている。ウェブ空隙が橋かけされると、不織布は乾燥すると半透明の外観になり、流量は減少し、かつ膨張能力は低減する。繊維が小さいほど、不織布の孔を橋かけするモノマーの数は少なくなる。水混和性有機溶媒を更に加えることで橋かけを低減し、グラフト化ポリマー含量を増加させることができ(不織布基材の重量パーセントの関数として)、物品がより自由に膨張できるようになる。
【0085】
任意のこのような水混和性有機溶媒は、三級水素原子、又はグラフト重合を遅らせる他の基を有さないのが好ましい。いくつかの実施形態において、水混和性溶媒は、1〜4個の炭素原子を有する低級アルコール、2〜6個の炭素原子を有する低級グリコール、及び最も好ましくは3〜6個の炭素原子と1〜2個のエーテル結合とを有する低級グリコールエーテルなどの、プロトン基含有有機液体である。いくつかの実施形態では、ポリ(エチレングリコール)などの高級グリコールを使用してもよい。具体的な例は、メタノール、エタノール、n−ブタノール、t−ブチルアルコール、エチレングリコール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、プロポキシエタノール、ブトキシエタノール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、及びこれらの混合物である。
【0086】
他の実施形態では、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸メトキシエチル、酢酸エトキシエチル、酢酸プロポキシエチル、酢酸ブトキシエチル、リン酸トリエチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン及びジメチルスルホキシドといった脂肪族エステル、ケトン類及びスルホキシド類などの非プロトン性水混和性有機溶媒を使用することも可能である。
【0087】
不織布基材が所望の時間含浸された時点で、グラフト化ポリマー基を有する不織布基材は、任意に、残留モノマーを除去するためにすすがれてもよい及び/又は乾燥されてもよい。
【0088】
任意のすすぎ工程では、官能化不織布基材は1回以上洗浄され又はすすがれて、あらゆる未反応モノマー、溶媒、又はその他の反応副生成物を除去する。典型的には、官能化基材は、水リンス剤、アルコールリンス剤、水及びアルコールリンス剤の組合せ及び/又は溶媒リンス剤(例えば、アセトン、メチルエチルケトン等)を使用して最高3回まで洗浄又はすすがれる。アルコールリンス剤を使用する時、リンス剤には、イソプロパノール、メタノール、エタノール又は使用して実用的である全ての他のアルコール及び全ての残留モノマーに有効な溶媒を挙げることができるがこれらに限定されない。それぞれのすすぎ工程では、官能化基材は、すすぎ浴を通すか、又はすすぎ液を噴霧してもよい。いくつかの実施形態において、リンス剤はイオン緩衝溶液を含んでもよく、これは、ヒドロゲルの膨張、保有水の量を低減し、及び更にはこのすすぎ工程の間に不織布基材を弱めるのを回避する。
【0089】
任意の乾燥工程では、官能化基材を乾燥して、あらゆるすすぎ溶液を除去する。典型的には、官能化基材を比較的低いオーブン温度のオーブンで所望の時間(本明細書では「オーブン滞留時間」と称する)乾燥する。オーブン温度は、典型的には約60℃〜約120℃の範囲であり、オーブン滞留時間は、典型的には約120秒〜約600秒の範囲である。任意の従来のオーブンをこの任意の乾燥工程で使用することができる。他の実施形態では、乾燥工程をすすぎ工程の前に行なって、グラフトされていない残渣の抽出の前に揮発性成分を除去することができる点にも留意すべきである。任意の乾燥工程の後、乾燥した官能化基材をロール状に巻き取って、後で使用するために保管する。
【0090】
官能化不織布基材は、濾材、例えば水濾過用デバイスにおける濾材として特に適している。ポリマーがグラフトされて親水性になるとき、濾材は耐久性を持つ。濾過装置などの多くの水用濾過媒体では、水性NaOHに接触させる、又は水性NaOHで洗い流すことにより、濾材を洗浄又は消毒する。本明細書に記載する親水性多孔質基材は、NaOHに接触する、又はNaOHで洗い流すことができ、表面エネルギー及び湿潤性で明らかなように親水性を保持することができる。
【0091】
濾過用途で使用する場合、官能化基材の1つ以上の層を使用してもよく、これらの層のそれぞれは、同一の又は異なる平均繊維サイズ、空隙容量、ポリマーグラフト化度、グラフト化ポリマーのモノマー組成、多孔性、引張強度、及び表面積を有してもよい。いくつかの実施形態では、各後続層は、より細かい汚染物質を濾過できるように、より小さな有効孔径又はより小さな平均繊維サイズを有してもよい。グラフト化不織布基材は、平面状又はレンズ状ディスクとして構成されてもよい。いくつかの実施形態において、不織布基材はプリーツがつけられてもよい。プリーツがつけられたグラフト化不織布フィルタ要素を、複数の同心のプリーツがつけられた要素として組み合わせてもよい。グラフト化不織布基材を渦巻き状に巻いてもよい。更に、支持体を提供しかつ取り扱いを助けるために、グラフト化不織布基材を多孔質ウェブで封入してもよい。濾過用途では、不織布を垂直に又は水平に配置してもよい。
【0092】
図6は、本開示による例示的な濾材120を示す。図のように、濾材120は複数のプリーツ126を含んでいる。いくつかの実施形態において、プリーツがつけられた濾材120を、フィルタ装置又は他のフィルタ装置に組み込むことができる。プリーツ形状及びプリーツがつけられた媒体を含む濾過装置の例は、米国特許第6,521,011号(Sundetら)に見出すことができる。複数のプリーツ126が、米国特許出願第61/016149号(Lucas)(PCT出願第US08/86923号)に記載のような、平面的に配置されたプリーツを含み得るということも想定している。図の実施形態では、濾材120は、微多孔膜層124と共にグラフト化不織布基材122を含んでいる。典型的には、微多孔膜層124は、グラフト化不織布基材122の下流に位置付けられる。
【0093】
微多孔膜層124は、本開示を通して記載される1つ以上の微多孔膜を含んでもよい。いくつかの実施形態において、微多孔膜層124は、対称的に分布した孔径を有する単一領域を含む。他の実施形態では、微多孔膜層124は、非対称的に分布した孔径を含む単一領域を含む。更に他の実施形態では、微多孔膜層124は、複数の分離領域を含む。そのような実施形態では、分離領域のそれぞれは、対称的に又は非対称的に分布した孔径を含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、微多孔膜層124の1つ以上の領域は、官能化されることで、例えば、改善された親水性を有してもよい。官能化微多孔膜を提供する方法は、例えば、本開示の他の箇所に記載されている。
【0095】
微多孔膜層124は微多孔膜の複層を含んでもよく、各層が単一領域又は複数の分離領域を含んでもよい、ということも想定している。各領域は、対称的に又は非対称的に分布した孔径を含んでもよく、微多孔膜の各層は、特定の用途向けに所望通りに官能化又は非官能化されてもよい。一実施形態において、「ナイロン微多孔膜D1〜D6」と題する項で以下に記載されるように、微多孔膜層124は微多孔膜の3つの層を含んでもよく、各層は3つの分離領域を含む。
【0096】
グラフト化不織布基材122は、本開示を通して記載される1つ以上の不織布基材を含んでもよい。いくつかの実施形態では、グラフト化不織布基材122は、不織布の単層を含む。他の実施形態では、グラフト化不織布基材122は、同一の又は異なる構造を有する不織布材料の追加の層を有してもよい。例えば、グラフト化不織布基材122は、グラフト化不織布層の上流に位置付けられた非グラフト化不織布層を含んでもよい、ということを想定している。そのような実施形態では、より下流の層と比べて、密度が低い又は多孔性が増大した、より上流の層が設けられてもよい。
【0097】
図7は、本開示による例示的なフィルタ装置100を示している。図のように、フィルタ装置100は、レンズ形のフィルタカートリッジの形態で提供される濾材120を含む。レンズ形のフィルタカートリッジの例、及びレンズ形のフィルタカートリッジの製造方法は、例えば、Pulek et alに付与された、米国特許第6,464,084号、同第6,939,466号、同第7,178,676号、及び同第6,712,966号に見出すことができる。
【0098】
図のように、フィルタ装置100は、流体出口116と流体連通する中央コア142を有する分離要素140を備えている。典型的には、分離要素140は、第1の側144と第2の側146とを含み、それらの上に濾材120が配置されてもよい。第1の側144及び第2の側146は、典型的には、濾過機能性を提供しないが、開口ネットワークが備わっており、そこを通って流体が自由に流れることができる。図のように、濾材120は、第1の側144に位置付けられる第1の濾材ディスク150、及び第2の側146に位置付けられる第2の濾材ディスク154として提供される。第1及び第2の濾材ディスク150及び154はそれぞれ、外周縁部151、155と、内周縁部152、156とを個々に含む。いくつかの実施形態では、縁部シール150が、第1及び第2の濾材ディスク150及び154の周縁部151及び155を接合する。典型的には、内周縁部152及び156は、分離要素140の中央コア142に接合される。
【0099】
典型的な用途では、濾材120の下流表面は、分離要素140に近接して位置付けられる。濾材120はグラフト化不織布基材122を含んでいる。図示の実施形態では、濾材120は、グラフト化不織布基材122と、微多孔膜層124とを含む。典型的には、微多孔膜層124は、グラフト化不織布基材122の下流に位置付けられる。
【0100】
図8では、フィルタカプセル110と、フィルタカプセル110に接合されたフィルタキャップ112とを備える例示的なフィルタ装置100が示されている。図のように、フィルタキャップ112は、流体入口114と流体出口116とを含む。濾材120は、フィルタカプセル110の中に封入されており、流体入口114と流体出口116とを流体接続している。図8の切り欠きを通して見えるように、濾材120は、複数のプリーツ126を含む第1の媒体シリンダ130に成形される。濾過装置の例及び濾過装置の製造方法は、例えば、Bassettらに付与された米国特許第6,458,269号に見出すことができる。複数のプリーツを含むシリンダに成形される濾材の例は、例えば、Olsenに付与された米国特許第6,315,130号に見出すことができる。
【0101】
いくつかの実施形態において、本開示は、フィルタカプセルと、フィルタカプセルに接合されたフィルタキャップと、備えるフィルタカートリッジを提供し、フィルタキャップは、流体入口と流体出口とを含み、濾材はフィルタカプセルに封入される。いくつかの実施形態では、フィルタ装置のフィルタキャップは、流体入口と流体出口とを含み、濾材はフィルタカプセルに封入される。いくつかの実施形態において、濾材は、グラフト化不織布基材の下流に位置付けられる微多孔膜層を更に含む。
【0102】
したがって、本開示は、流体入口と、流体出口と、流体入口と流体出口とを流体接続する濾材と、を含むフィルタ装置を提供し、濾材はグラフト化不織布基材を含む。いくつかの実施形態において、本開示は、分離要素(140)と、縁部シール(150)と、流体入口と流体連通する中央コア(142)を備える分離要素と、第1の側(144)と、第2の側(146)と、分離要素の第1の側に位置付けられ、かつ外周縁部(151)と内周縁部(152)とを有する第1の媒体ディスク(150)を含む濾材と、分離要素の第2の側に位置付けられ、かつ外周縁部(155)と内周縁部(156)とを有する第2の媒体ディスク(154)と、を更に含むフィルタ装置を提供し、第1及び第2の媒体ディスクの外周縁部は、縁部シールによって接合されており、第1及び第2の媒体ディスクは、中央コアによって接合されている。
【0103】
図9は、図8に示されるフィルタ装置100の一実施形態の断面図を示しており、濾材120は、複数のプリーツ126を含む第1の媒体シリンダ130に成形される。図示の実施形態では、濾材120は、グラフト化不織布基材122と、微多孔膜層124とを含んでいる。典型的には、微多孔膜層124は、グラフト化不織布基材122の下流に位置付けられる。図9に示されるように、フィルタ装置100は、任意に、第1の媒体シリンダ130の中に位置付けられる第2の媒体シリンダ132を備える。そのような実施形態では、第2の媒体シリンダ132は、複数のプリーツを含んでもよい。複数のプリーツを含む内側及び外側の媒体シリンダを備えるフィルタモジュールの例は、例えば、Lucasらに付与された米国特許公開第2009/0020472 A1号に見出すことができる。
【0104】
したがって、いくつかの実施形態において、本開示は、濾材が、グラフト化不織布基材の下流に位置付けられる1つ以上の微多孔膜層を更に含む、フィルタ装置を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、濾材が複数のプリーツを含むフィルタ装置を提供する。
【0105】
いくつかの実施形態において、本開示は、液体から粒子状汚染物質を除去するためのフィルタ装置を提供し、該フィルタ装置は、上壁と、底壁と、上壁と底壁との間に延在する略円筒形側壁と、フィルタ要素(グラフト化不織布)を通る液体流路を画定する入口及び出口とを含むハウジングの中に配置されるフィルタ要素(グラフト化不織布)と、を含む。液体流路は、流体が(グラフト化不織布)を貫流するように、入口に隣接する上流部分と、出口に隣接する下流部分とを有する。フィルタ要素は、(グラフト化不織布)の下流であり得る微多孔膜を更に含んでもよく、その結果流体は、グラフト化不織布及び微多孔膜を通って入口から出口まで貫流する。
【0106】
図10は、図8に示されるフィルタ装置100の代替実施形態の断面図を示しており、フィルタ装置はコア160を更に備え、濾材120はコア160の周囲に螺旋状に巻き付いている。コア160は、典型的には濾過機能性を提供しないが、開口ネットワークが備わっており、そこを通って流体が自由に流れることができる。螺旋状に巻かれたフィルタカートリッジの例、及び螺旋状に巻かれたフィルタカートリッジの製造方法は、例えば、Pulekらに付与された米国特許第6,391,200号に見出すことができる。図示の実施形態では、濾材120は、グラフト化不織布基材122と、微多孔膜層124とを含んでいる。典型的には、微多孔膜層124は、グラフト化不織布基材122の下流に位置付けられる。いくつかの実施形態では、渦巻状に巻き付けられた濾材120の隣接する層の間を流体が流れ易くするのを助けるために、排水層が更に設けられてもよい。
【0107】
いくつかの実施形態において、本開示は、コア(160)を備え、濾材がコアの周囲に螺旋状に巻き付いているフィルタ装置を提供する。
【0108】
いくつかの実施形態において、官能化不織布基材は、微多孔膜などの従来のフィルタ要素と組み合わされてもよい。具体的には、本発明の官能化不織布基材の1つ以上の層を含むフィルタは、汚染物質を除去するための及び/又は追加の下流フィルタを含む後処理プロセスを保護するための「前置フィルタ」としての機能を果たすことができる。モノクローナル抗体を生産する場合、本発明の官能化不織布は、細胞残屑、凝集体(agglomorates)、DNAフラグメント、及び宿主細胞タンパク質で容易に詰まる、より細かい下流の微多孔性の濾過膜を保護するための、前置フィルタとしての機能を果たしてもよい。微小サイズの除去膜は、分離媒体、及び膜の下流に位置する充填タンパク質Aカラムの侵入型空隙経路の機能性を保証する働きをする。
【0109】
微多孔膜は、生物汚染物質で汚れることで知られているので、デプスフィルタと一般に呼ばれる前置フィルタを必要とする場合が多い。本明細書に記載の官能化不織布基材は、現在のセルロース/珪藻土デプスフィルタに効果的に取って代わることができる。官能化不織布基材は、微多孔膜を保護して、微多孔膜の耐用年数を延ばし、そして、膜は、開いたヒドロゲルネットワークからの任意の貫通汚染物質を捕捉して、グラフト化不織布の耐用年数を長くすることができる、という理由から(フィルタの濁度減少により測定した場合)、媒体の下で共に用いられる孔径絶対定格を有する微多孔膜が望ましい。
【0110】
濾過で使用する場合、対象となる生体サンプルと汚染物質とを含有する流体は、この2つを分離する応答性官能化不織布物品を通過することができる。いくつかの実施形態において、汚染物質はグラフト化ポリマーのヒドロゲルネットワークに保持され、対象となる生体サンプルは通過する。流体の生物学的汚染又は「トリガ」(例えばイオン強度、極性有機又は無機種、糖蜜、塩、緩衝液、タンパク質、細胞残屑、ウイルス等)の存在に応じて、グラフト化ポリマーのヒドロゲルの侵入型孔又はボイドを変更してもよい。背圧が高いと浄水流動(トリガなし)が低いことが分かっている。高い水圧は、ヒドロゲルを圧潰又は圧縮させて、流量を更に減少させる。この圧潰又は圧縮は、z方向の平均流路を減少させ、かつ累積生物汚染物質の保持容積を低減させて、滞留時間を更に短くする。したがって、グラフト化不織布は低圧でより良好に機能し、これにより、初期濾過工程の間、任意の剪断に感受性のあるタンパク質に対する剪断力が低減する。
【0111】
本明細書に記載のポリマーグラフト化不織布物品は、生物学的な流体相からの粒子及び不溶性汚染物質を、その膨張したマトリックスの至る所に保持することができる。少量の極性「トリガ」が存在する場合、水圧は急速に軽減される。各四級アンモニウムモノマー単位は、グラフト化ポリマー鎖の中の点電荷としての役割を果たし、水で全体的に構成されるイオンと電気の二重層、つまり水和層で囲まれていると考えられる。これは水分流動に抵抗する「剪断半径」を形成し、不織布のヒドロゲルネットワークを水圧で圧縮するように機能する。わずかなイオン的性質の差異は、二重層の内側及び外側シェルの崩壊を引き起こして、流量を増加させる。濾過中、「トリガ」への暴露後に背圧が軽減すると、水圧の欠如が原因で、不織布構造体は再度膨張する。
【0112】
濾過用途では、タンパク質などの自然発生的な巨大分子は、タンパク質のpKa及び緩衝液のpHに起因して、水中に分散した場合に電荷(汚染物質として負)を獲得する。例えば、負に帯電した細胞残屑は、電荷親和性によりヒドロゲルに結合し、正に帯電したモノクローナル抗体(mAb)などの実体は通過できる。ますます多くの物質がフィルタの深さを徐々に通過するにつれ、細胞残屑などの負に帯電した汚染物質は捕捉され、モノクローナル抗体などのプラスに帯電した物質は通過するので、不連続ゲルは圧潰する。フィルタ要素の動的容量に達するまでこれが継続する。
【0113】
生物濾過用途では、高い濾過圧力は、タンパク質の剪断及びそれに続く変性を引き起こす可能性があるので、望ましくない。非汚染水のポンピングから生じる超過圧力により、膨張した不織布が水圧下で圧潰する可能性があり、これによりz方向の平均流路が減少して親和性のための滞留時間が短くなり、かつ累積生物汚染物の保持容積が低減するので、流量が更に制限的で望ましくないものとなる。したがって、本発明の物品は、移動相からの粒子及び不溶性汚染物質を、低い濾過圧力で、膨張したマトリックスの至る所で保持することが可能となる。
【0114】
本発明のポリマー官能化不織布物品は、物品の有効期間にわたって過度の圧力を蓄積することなく、汚染物質を取り込む。濾材の通常の汚損機構は、媒体が移動相から粒子をふるい分けて取り出すと、粒子が孔の中又は媒体の表面上に固まることができるというものである。その後、流量は減少し、圧力が蓄積し、そしてこれは、ケーキ層が圧縮される場合に深刻になる可能性がある。本発明のポリマー官能化不織布物品は、汚染物質が不連続なヒドロゲルマトリックスに衝突できるようにし、そこで汚染物質はマトリックスの中に容易に拡散して、固化又は圧縮による汚損を妨げる。汚染物質が加わるほど、汚染物質がヒドロゲルポリマーの巻きひげ上に取り込まれかつ吸着されることから、不織布の侵入型間隙の中により大きなスペースが得られる。
【0115】
バイオセパレーション用途では、一般に、定速又は定圧モードのいずれかで「垂直流(normal flow)」濾過が行われる。定速モードでは、設定された量の流体がポンプから供給され、フィルタが汚れるにつれてフィルタ内の圧力が増加し、濾過プロセスは公称圧力値(通常約30psi(206.8kPa)以下)で停止して、標的タンパク質を手付かずにしておく。定圧モードでは、供給速度が停止する又は低くなって実際的ではなくなり、濾過プロセスが停止するまで、設定圧力が流体に印加され、かつ流通させられる。アフィニティークロマトグラフィーで用いられる典型的な低から高までの流速は、約50〜600LMH(リットル/(メートル時間)であり、又は前面の流速は.08〜1mL/(分−cm)である。47mmの試験用ハウジングは、約13cmの利用可能表面積を有するので、13mL/分の速度は、商業的手順において用いられる規定された高い600LMHと等価な性能である。層の数、各層の厚さ、繊維サイズ、及びグラフト化の量によっては、本発明の浄水流動は、1mL/(分−cm)(13mL/分)で75psi(517.1kPa)もの高さを観測した。極性トリガの導入により、この圧力は1psi(6.9kPa)未満まで減少する。緩衝液(トリガとして機能する)を非汚染水と共に放水することで、高圧に戻る。
【0116】
本明細書に記載のポリマーグラフト化不織布基材は、対称性又は非対称性微多孔膜(傾斜多孔度を有する)、及びこのような膜の単一層又は複層のような微多孔膜と組み合わされてもよい。有用な微多孔膜は、ナイロン、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、エチレン−トリクロロフルオロエチレンから製造されるものを、単層、複層等で含む。好ましくは、これらの膜は親水性である。微多孔膜は、0.01〜150μm、好ましくは0.1〜100μmの範囲の対称孔径、及び25〜500μmの厚さを有してもよい。別の実施形態では、グラフト化不織布基材は、0.01〜150μmの傾斜平均孔径を有する非対称性微多孔膜と組み合わされてもよい。他の実施形態では、各層が15〜0.02μm、好ましくは10〜0.8μmといった連続的に細くなる多孔性、及び75〜1200μmの全厚さを有する、微多孔膜の複層を組み合わせて使用してもよい。対称性多孔性及び傾斜した多孔性の両方を有する微多孔膜の複層を組み合わせて使用してもよい。更に、親水性、疎水性又は電荷結合能といった微多孔膜表面特性を変化させるために、微多孔膜をポリマーグラフト化してもよい。
【0117】
更に、グラフト化不織布基材の1つ以上の層を、微多孔膜の1つ以上の層と組み合わせてもよい。例えば、1〜5層のグラフト化不織布基材を、微多孔層(1又は複数)と組み合わせてもよい。グラフト化不織布基材の各層は、同じであっても異なっていてもよい。いくつかの実施形態において、これらの層は、特定の不織布基材、不織布基材の厚さ、その中に使用されるポリマー、繊維サイズ、多孔性、空隙容量、嵩、引張強度、表面積、グラフト重量又は密度、ポリマーグラフト化度、及び/又はグラフト化ポリマー中のモノマー濃度に関して同じであってもよく、又は異なっていてもよい。
【0118】
有用な市販の膜の例としては、CUNO Inc.(Meriden,Conn)から入手可能なLifeAssure(商標)又はSterAssure(商標)キャストナイロンが挙げられる。有用な微多孔膜は、米国特許第6,413,070号、同第6,513,666号、同第6,776,940号、同第6,056,529号、及び同第6,264,044号(Meyeringら);米国特許第5,006,247号(Dennisonら);米国特許第3,876,738号(Marinaccioら);米国特許第4,707,265号(Barnesら);並びに米国特許第4,473,474号(Ostreicherら)に開示されている。有用なグラフト化ポリマー官能化微多孔膜は、PCT/US2008/088106(2008年12月23日出願)に開示されている。
【0119】
微多孔膜とグラフト化不織布との組み合わせは、精密濾過膜を保護して、その耐用年数を延ばし、膜は、開いたヒドロゲルネットワークを通過するあらゆる貫流(breakthrough)汚染物質を捕捉して、グラフト化不織布の効率を改善する。濁度減少、UV、DNA定量化及びELISA法などの当該技術分野において既知の技術を用いて、汚染物質を測定することができる。
【0120】
多くのバイオ分離法は、例えばタンパク質Aカラムを使用するなどした捕捉工程の前に、0.2μmの滅菌グレードの微多孔膜を使用する。膜表面における粒径排除によって機能するこのような2次元膜は、遠心分離の直後に見られる高度に汚染されたバイオプロセス供給流(bioprocessing feed-streams)ですぐに汚れるので、デプスフィルタと一般に呼ばれる前置フィルタを必要とする。連続ディスクスタック型遠心機を使用する遠心分離は、大量浄化の第1の工程として広く採用されている。最も有効な遠心分離機は、先行する細胞培養、溶解、及び収集操作からの細胞成分全てを効果的に除去しない。したがって、(例えば下流のタンパク質Aカラムでの)分離の質を向上させるため、及び滅菌グレードの保護膜が早期汚損するのを防止するために、可溶性及び不溶性汚染物質(例えば細胞残屑、成長培地構成成分、DNA、及び可溶性宿主細胞タンパク質)を減少させるデプスフィルタの必要性が存在する。
【0121】
ポリマー官能化不織布基材は、媒体内(即ち、媒体の上流表面と下流表面との間)に汚染物質を捕捉するデプスフィルタ用途に理想的に適している。この物品は、吸着性深層フィルタモジュールに高い媒体充填密度を提供し、これにより改善された濾過効率が得られる。この物品は、吸着性深層フィルタモジュール内の所与の媒体質量に対して広い表面積を提供し、これにより高い流速(流量)が得られる。典型的には、高効率であるという望ましいフィルタ特性と、高流量であるという望ましいフィルタ特性を達成することの間にはトレードオフがある。しかしながら、本発明の官能化不織布基材は、流量を犠牲にすることなく高い媒体充填密度を有する深層フィルタモジュールを提供する。
【0122】
ポリマー官能化不織布基材は、主に、吸着、拡散、及び衝突機構によって機能し、したがって、サイズ排除、捕獲及び吸着の組み合わせによって作動する従来のデプスフィルタとは異なると考えられる。本発明のグラフト化不織布のプレ層としての利点は、広範囲の汚染種でその深さ全体を通じて十分に利用されることである。吸着、捕獲及びサイズ排除の組み合わせによって作動する従来のデプスフィルタは、上層を特定の汚染物質で不可避的に塞ぎ、媒体は十分に利用されない。
【実施例】
【0123】
別に記載されない限り、実施例中及び本明細書の他所における全ての部、パーセント、比率などは重量基準であり、実施例で使用された全ての試薬は、一般的な化学品供給業者から、例えばSaint Louis,MissouriのSigma−Aldrich Companyから入手され、若しくは入手可能であり、又は従来の方法により合成してもよい。
【0124】
以下の溶液及び試験手順を用いて本発明の膜を評価した。
【0125】
緩衝溶液
8gの塩化ナトリウム、0.2gの塩化カリウム、1.44gの第二リン酸ナトリウム、及び0.21gのリン酸ナトリウム一水和物(sodium phosphate monohydrate)をメスシリンダに加え、続いて800ミリリットル(mls.)の脱イオン(DI)水を21℃で加えて、1リットルの緩衝溶液を調製する。必要に応じて塩酸又は水酸化ナトリウム溶液を使用してpHを6.8〜7.4の範囲に調整し、その後、脱イオン(DI)水で体積を1リットルに調整した。
【0126】
1X酵母/糖蜜原料液
20gのビール酵母を250mLの緩衝溶液に加え、21℃で30分撹拌して原料液を調製した。高剪断ミキサーを2分間使用して混合物を更に混合し、その後、音響ホーンの設定7.5ワットで、超音波処理器(VIRTIS VEIRSONIC 600、SP Industries Company(Gardiner,New York))を使用して10分間音波処理した。約33mLの超音波処理済み酵母溶液を3000rpmで5分間遠心分離して、酵母上清を作製した。25mLのこの上清を1リットルのメスシリンダにデカントした。上清の2gの糖蜜を加え、上清を緩衝溶液で1リットルに希釈し、均一な原料液が形成されるまで撹拌した。原料液は約26比濁計濁度単位(NTU)の平均濁度を有していた。醸造用酵母のロット毎の変動に起因して、これらの手順後の濁度に大きなばらつきがあり得ることに留意されたい。
【0127】
2X酵母/糖蜜原料液
25mLでなく50mLの遠心分離で得た上清を1リットルのメスシリンダにデカントしたことを除き、1X酵母/糖蜜原料液を調製するために用いたのと同じプロセスに従ってこの原料液を作製した。糖蜜濃度は同じに保った。この原料液は約48NTUの平均濁度を有した。
【0128】
糖蜜のみの原料液
6gの糖蜜を1リットルの脱イオン水に加え、均質になるまで混合した。原料液の平均濁度は約14NTUであった。
【0129】
濾過試験I
MASTERFLEXポンプヘッド及び駆動装置(Cole−Parmer、Illinois)を使用して濾過実験を行った。貫流セル(Hach Company、Loveland,Colorado)を有するハック濁度計を使用して下流濁度測定値を得た。
【0130】
CUNO,Inc.から市販されている次のマルチゾーンナイロン膜を、次の順序に従って、最大孔径が上向きになるように47ミリメートルのフィルタホルダ(CUNO,Inc.)の底部フリットに設置した:STERASSURE GRADE PSA020(細孔構造0.65μm/0.65μm/0.2μm/0.2μm/0.65μm/0.65μm);LIFEASSURE GRADE BLA045(細孔構造0.8μm/0.8μm/0.45μm);LIFEASSURE BLA080(細孔構造2.5μm/2.5μm/0.8μm)。
【0131】
グラフト化不織布試験サンプル(実施例1に記載)から47mmディスクを3枚打ち抜き、これらをフィルタホルダの中の膜の上に装填したので、グラフト化不織布基材はフィルタホルダの上流となった。次に、フィルタホルダのOリングをグラフト化不織布物品の上に設置し、フィルタホルダを一緒にクランプした。次に、フィルタホルダに脱イオン水を充満し、グラフト化不織布を均衡に達するまで約10分間膨張させた。頂部の入口を通してフィルタホルダから水を出し、次に糖蜜原料液(前掲)を投入した。糖蜜原料液を13mL/分の一定流速でポンピングし、1インチ当たり(psi)25ポンド(172.4キロパスカル(kPa))に達するまで、容積出力及び圧力データを記録した。
【0132】
濾過試験II
濾過試験IIは、濾過試験Iで一般的に説明されたのと同様のプロセスに従い、MASTERFLEX装置をFILTER−TEC3−圧力領域デッドエンド濾過システム及びソフトウェア(Scilog,Inc.,Middleton,Wisconsin)で置き換え、試験及び測定のために濾過システムを3つの圧力領域に分割した。
【0133】
圧力領域1(P1)、3つのUNOステンレス鋼フィルタホルダに保持された6枚のグラフト化不織布基材(以下の実施例で記載される)(即ち1つのホルダー毎に2枚)。圧力領域1は、濾過アセンブリの中の最上又は上流層であり、入口流体ストリームに直接隣接している。
【0134】
圧力領域2(P2)、47mmステンレス鋼フィルタホルダ(部材番号2220、Pall Corporation(East Hills,New York)より入手)に保持されたナイロン微多孔膜(以下にD4、D5又はD6膜と記載される。実施例4、5及び9、D4では、D4微多孔膜はD5膜の上に置かれるので、D4の小さい方の細孔領域層はD5の大孔領域層に隣接し、D4の大きい方の細孔領域は入口流体ストリームに面した。これらは両方とも単一のPall Life膜ホルダーの中に設置された。圧力領域2は濾過アセンブリの中の中間層であり、圧力領域1と直接隣接しておりかつその下流である。
【0135】
圧力領域3(P3)、保持された0.2μmのSUPOR−200膜(Pall Corporation)。圧力領域3は濾過アセンブリの中の最下層であり、圧力領域2と直接隣接している。
【0136】
実施例に記載される酵母/糖蜜原料液1X又は2Xを、圧力領域の任意いずれか1つが25psi(172.4kPa)の圧力に達するまで、13又は15mL/分の一定流速でポンピングした。
【0137】
FILTER−TEC Scilog濾過装置を使用して、3つの圧力領域を用いる。圧力領域1(P1)は、グラフト化不織布基材層をモニタリングする。圧力領域2(P2)は、グラフト化ナイロン微多孔膜(D4、D5又はD6)の圧力をモニタリングする。圧力領域3(P3)は、Pall 0.2ミクロンの滅菌グレードフィルタをもモニタリングする。全てのホルダを直列に接続し、この構成により、3つの圧力領域の個別のモニタリングが可能になる。Scilog装置を一定流速に設定し、圧力及び容積出力データを自動的に表にする。圧力領域のいずれかの圧力が25psi(172.4kPa)に達したときに、試験手順を終了する。
【0138】
静的タンパク質吸収試験
ウシ血清アルブミンタンパク質(BSA)の紫外線吸収を測定して静的結合能を計算した。pH8に緩衝化した10ミリモル(mM)の3−(4−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)溶液中、50gのBSA溶液(4mg/mL、BSAグレードA7030(98%+純度))を調製した。開始BSA流体の紫外分光光度計測定を行って280nmにおける吸収ピーク高さを得た。次に、40mLのBSA緩衝液を50mLバイアル瓶に投入した。グラフト化不織布基材の47mmディスクをバイアル瓶に加え、キャップをし、ロッキングミキサー(型式VARI−MIX、Barnstead International,(Dubuque,Iowa)より入手)上で12時間振動させた。バイアル瓶からBSA試験流体のサンプルをピペットし、紫外分光光度計のキュベットに入れて、測定を行った。BSA静的結合能(1ミリリットル当たりのミリグラム(mg/mL)で報告された)を、試験溶液前後の紫外分光光度計測定値を用いて、開始ピーク高さから280nm波長における残りのピークを減じることによって計算された元の吸収高さの割合から得た。
【0139】
ナイロン不織布基材Aの調製
B−24K(商標)ナイロン−6ポリマー(BASF Corporation Engineering Plastics、Wyandotte,Michigan)を使用してメルトブローン不織布基材を作製した。標準的なメルトブローイング用のドリルで穴を開けたオリフィスダイの上の溶融温度は295℃、質量流量率は0.25g/孔/分であった。ダイ幅1メートル当たり350℃及び毎分27.8立方メートル(CMM)(毎分975立方フィート(SCFM))の熱風を用いて繊維を細くした。毎分1200メートル(m/分)の衝撃の面速度を有する繊維を小孔のあるテンレス鋼ベルト上のダイから0.30メートル収集し、ウェブを通って137m/分の面速度で引き出される200℃の空気の下で0.14秒間、その後同じ面速度の29℃の冷風によって0.8秒接合した。収集したウェブの坪量は、1平方メートル当たり48gであり、4.1μmの有効繊維長を有していた。ウェブの1リニアセンチメートル当たり(N/lcm)170ニュートンのニップ圧力を有する1.5m/分で移動する82℃に設定された2つの直径25cmの滑らかなスチールロールの間でカレンダー加工する前の収集したウェブは、0.4mmの厚さを有していた。得られたウェブの厚さは0.25mであった。
【0140】
ナイロン不織布基材B
ナイロン不織布基材Aを作製するために一般的に記述されたプロセスに従ってナイロン不織布基材Bを調製したが、B−24Kの代わりにB−3(商標)ナイロン−6(BASF Corporation)を使用した。標準的なメルトブローイング用のドリルで穴を開けたオリフィスダイの上の溶融温度は265℃、質量流量率は0.25g/孔/分であった。350度の1000SCFM(ダイ幅1メートル当28cmCMM)の熱風を用いて繊維を細くした。小孔のあるテンレス鋼ベルト上のダイから繊維を0.43メートル収集し、ウェブを通って137m/分の面速度で引き出される200℃の空気の下で0.14秒間、その後同じ面速度の29℃の冷風によって0.8秒接合した。収集したウェブの坪量は、1平方メートル当たり50gであり、5.8ミクロンの有効繊維長を有していた。ウェブの1リニアセンチメートル当たり176Nのニップ圧力を有する1.5m/分で移動する82℃に設定された2つの直径25cmの滑らかなスチールロールの間でカレンダー加工する前の収集したウェブは、0.81mmの厚さを有していた。得られたウェブの厚さは0.25mであった。
【0141】
エチレンビニルアルコールコポリマー(EVAL)不織布基材C
ナイロン不織布基材Aを作製するために一般的に記述されたプロセスに従ってEVAL不織布基材Cを調製したが、B−24Kの代わりにPOVAL C109B EVALポリマーペレット(Kuraray America,Inc.Houston,Texas)を使用し、コレクタとして小孔のあるテンレス鋼ベルトを有孔ドラムに交換した。
【0142】
溶融温度240℃及び質量流量率0.35g/穴/分で不織布基材を調製した。空気の4.5立方メートルに相当する速度、0℃、1分当たりのダイ面の1メートル当たり101.3kN/m(101.3kPa)(1気圧)で供給され、285℃に加熱された熱風を使用し繊維を細くした。有孔ドラムコレクターを用いてダイ面から繊維を17cm分集め、ウェブを作製した。
【0143】
作製された不織布基材は12.6μmの有効繊維長を有していた。ウェブは、約50グラム/平方メートル(gsm)の坪量と0.6mmの厚さとを有していた。0.04mmに設定された間隙を有し、温度は60℃、1.5m/分で移動し、ロール間のニップ圧力がリニアセンチメートル当たり105Nである2つの直径25cmの滑らかなクロムスチールロールの間で、ウェブをカレンダー加工した。得られたウェブの厚さは0.33mmであった。
【0144】
ナイロン微多孔膜D1〜D6
3つの領域の強化非対称性微小孔ナイロン膜を、米国特許第6,776,940号(Meyering et al.)に記載のプロセスを用いて調製した。上述のように、単一ベースポリマー添加配合物を3つの部分に分割し、三方加熱操作装置に適用した。添加配合物を3つの異なる温度に加熱して、3つの個別領域を得た。非対称性微多孔性膜を形成するために、用いる温度のそれぞれを選択して、それぞれの領域に孔径を形成した。第1の領域(上方領域)は最大孔径を有し、第2の領域(中間)領域は中間孔径を有し、第3の領域(下方領域)は最小孔径を有した。この膜は、3つの連続する、漸次的に小さくなる孔径の排除領域を有する単一層であった。
【0145】
D1微多孔膜の3つの領域の平均孔径は約0.45;0.30;及び0.20μmであった。
【0146】
D2微多孔膜の3つの領域の平均孔径は約1.0;0.8;及び0.65μmであった。
【0147】
D3微多孔膜の3つの領域の平均孔径は約5.0;2.4;及び1.2μmであった。
【0148】
D4微多孔膜は、米国特許第3,876,738号(Marinaccioら)に一般的に記載されている処方及び方法、並びに防衛公開T−103,601(Repetti)に一般的に記載されているプロセスを用いて、D3のより小さな孔径の表面を、D2のより大きな孔径の表面に積層して形成された。要約すると、Marinaccio参照文献の方法は、ポリマードープを薄層にキャストすることと、溶媒浴の中でこのドープを急冷して連続微多孔膜を形成することと、水浴の中で膜をすすいで残留溶媒を除去することと、を含む。これは、乾燥に機械を有する前は成形時のように湿潤している膜である。Marinaccio膜の成形時のように湿潤している層は、防衛公開T−103,601(Repetti)に記載されているやり方で積層されると、個々の層の間に強力な物理的接着を形成する能力を有している。要約すると、個別の層(個別の3つの領域の膜)を湿式積層し、キャスト及び急冷されているが場乾燥されていない膜を、軽い圧力下で結合し、その後一緒に乾燥する。
【0149】
多層湿式積層及び乾燥を達成するためのプロセス及び装置は、米国特許第4,707,265号に記載されているが、テンター炉のような他の市販の多層ウェブ加工及び乾燥装置を有利に採用することができることは理解される。最上層の下表面(より小さい孔径)が最下表面の上表面(より大きい孔径)と接触するように、濡れている層を物理的に接触して配置した。捕捉された空気をラミネート層から除去し、二層組み合わせ膜を、クロスウエブ若しくはダウンウエブ方向における収縮を制御及び最小化するように抑制された条件下で、乾燥装置中を移動させて、二層組み合わせ膜を形成した。6つの領域の平均孔径は、約5.0;2.4;1.2;1.0;0.8;及び0.65μmであった。
【0150】
D2をD1に積層したしたことを除き、D4と同じプロセスを用いてD5微多孔膜を形成した。6つの領域の平均孔径は、約1.0;0.8;0.65;0.45;0.30;及び0.20マイクロメートルであった。
【0151】
D6微多孔膜は、実施例D4と同じプロセスを用いて形成された3層非対称膜であり、D3(最上層)をD2(中間層)に積層し、これをD1(最下層)に積層した。より小さい孔径を有するD3の底面は、最大孔径を有するD2の上面に隣接して積層され、D3の上面は、小さい孔径を有するD2の底面に隣接して積層された。D6は、上面が最大孔径を有し、最下層に向かうにつれて孔径が小さくなる状態の9つの独立した多孔質領域を有していた。9つの領域の平均孔径は、約5.0;2.4;1.2;1.0;0.8;0.65;0.45;0.30;及び0.20μmであった。
【0152】
微多孔膜D4〜D6のグラフト官能化
重量で、15%の[3−(メタアクリロイルアミノ)プロピル]塩化トリメチルアンモニウム(MAPTAC)モノマー、15%のメタノール、10%のポリエチレングリコール(PEG 4000、平均分子量4,000g/モル)及び60%の水からなるグラフト化溶液に膜を含浸させることによって、D4〜D6微多孔膜を官能化した。膜を2つの4ミル(101.6μm)ポリエチレンテレフタレー(PET)ライナーの間には挟み、ゴムローラで圧延して空気及び溶液を除去し、大きな孔径をビームに向けた状態で毎分20フィート(fpm)(6.1m/分)のウェブ速度で電子ビームに通過させ、300キロボルトの加速電圧で40キログレイ(kGy)の線量を受けることによって、直接照射した。脱イオン水の中ですすいで膜を3回洗浄し、次に空気乾燥した。
【0153】
(実施例1)
グローブボックスの中で窒素雰囲気下でナイロン不織布基材Bの30cm×43cmサンプルの空気をパージし、ZIPLOC(商標)プラスチックバッグに挿入して密封した。次に、密封バッグをグローブボックスから取り出し、加速電圧300kV及びウェブ速度20フィート/分(6.1m/分)に設定した電子ビームに通過させることによって40キログレイ(kGy)の照射線量レベルに照射した。密封バッグを窒素雰囲気で制御されたグローブボックスに戻した後、照射された不織布基材を取り出して、照射されていない窒素パージZIPLOC(商標)バッグの内部に置いた。
【0154】
新しく調製した不織布サンプルに、重量で、15%の3−(メタアクリロイルアミノ)プロピル]塩化トリメチルアンモニウム(MAPTAC)モノマーと、15%のメタノールと、ヒドロキシ末端基を有する平均分子量4,000g/モル(PEG 4000)の10%のポリエチレングリコールと、60%の水とを含む100gの窒素パージ含浸溶液を含浸させ、窒素の大部分を放出した後にバッグを再密封した。この工程の間、グローブボックス内の酸素レベルを一般的に40パーツ・パー・ミリオン(ppm)より低く維持した。
【0155】
バッグの中でサンプルを平らに維持し、時々バッグを回転させることによって4時間むらなく飽和させた。得られたグラフト化ナイロン不織布基材をバッグから取り出し、2リットルの新しい脱イオン水を有するトレイの中に10分浸すことにより注意深く洗浄した。基材をトレイから取り出し、ペーパータオルの複層の間で圧縮し、新しい超純水を用いて洗浄プロセスを更に2回繰り返し、風乾した。糖蜜原料液を使用してグラフト化不織布基材を濾過試験Iに供した。結果は、同様に試験した比較のためのZetaPlus(商標)B0204 60ZA、及びB0204 90ZA深層濾過媒体(CUNO Inc.より入手可能)と共に図1に示されている。
【0156】
(実施例2a〜e及び3a〜e)
実施例1と同じグラフト化手順を用いてグラフト化不織布基材を調製した。実施例2a〜eでは、含浸溶液はそれぞれ15%のMAPTAC及び10%のPEG 4000を含有し、水及びメタノールの量は表1に示されるように様々であった。実施例3a〜eでは、含浸溶液はそれぞれ15% MAPTAC、10% PEG 4000及び5%ヒドロキシエチルアクリレート(HEa)を含有し、水及びメタノールの量は表1に示されるように様々であった。静的タンパク質吸収試験手順を用いて静的結合能を試験し、結果が表1に示されている。
【0157】
【表2】

【0158】
(実施例4)
実施例1と同じ一般的なグラフト化手順を用い、ナイロン不織布基材Bをナイロン不織布基材Aで置き換え、グラフト化溶液は、重量で、20%の3−[(メタアクリロイルアミノ)プロピル]塩化トリメチルアンモニウム(MAPTAC)モノマーと、15%のメタノールと、ヒドロキシ末端基を有し平均分子量4,000g/モル(PEG 4000)の10%のポリエチレングリコールと、55%の水とを含んだ。
【0159】
実施例4では、ナイロン不織布基材Aの1平方メートル当たり50グラム(gsm)のサンプルの空気をパージし、窒素雰囲気下でグローブボックスの中でZiplocバッグに挿入し、密封した。次に、Ziplocバッグをグローブボックスから取り出し、これを電子ビームに通過させることにより、300キロボルトの加速電圧で60kGy(キログレイ)の照射線量レベルに照射した。密封バッグをグローブボックスに戻した後、照射された不織布基材を取り出して、照射されていない窒素パージZIPLOC(商標)バッグの内部に置いた。
【0160】
新しく調製した不織布サンプルにグラフト化溶液を含浸させ、窒素の大部分を放出した後にバッグを再密封した。バッグの中でサンプルを平らに維持し、時々バッグを回転させることによって4時間むらなく飽和させた。実施例1と同様に、得られたグラフト化ナイロン不織布基材をバッグから取り出し、洗浄し、乾燥した。
【0161】
得られたグラフト化基材を、15mL/分でポンピングされる1X酵母/糖蜜原料液を用いて、濾過試験IIに従って評価した。図2に結果を示し、図中、FF=流速及びP1〜P3は圧力領域である。P1及びP2領域の圧力は試験全体でほぼ同一であり、直列のグラフト化不織布基材のいずれかに対する圧力低下が存在しないことを示していることが分かる。溶液約900mLの後、微多孔膜D4及びD5(P2)に圧力が蓄積し始め、グラフト化不織布基材の汚損が顕著になっているのを示している。圧力領域のいずれかの圧力が25psi(172.4kPa)に達したときに、試験手順を終了する。この試験は、0.2μmのPall膜上の領域3(P3)内の圧力は増加せず、グラフト化不織布基材(P1)及びマルチゾーン膜媒体上流は、代用の酵母細胞遠心分離(centrate)溶液からの濾過作業負荷を管理していたことを示していることも明らかにしている。全容積処理量は1400mLをわずかに上回った。数回繰り返し試して、約1NTU以下の平均出口濁度(全フィルタ通過後)を得た。
【0162】
(実施例5)
1X酵母/糖蜜原料液を7.5mL/分の一定流速で送り込んで、実施例4を繰り返した。試験結果は、流速(前面速度)が減少すると、原料液が有するグラフト化不織布濾過媒体との接触滞留時間の量が増加して、より良好な吸収が可能となることを示している。P2で記録した圧力の出現は約1300mLまで遅れ、このシステムは約2200mLの全処理量を有し、この時間の間、Pall膜(P3)は、上流のグラフト化不織布基材(P1)と微多孔膜(P2)とによって保護され続けた。
【0163】
比較例6:深層濾過媒体
ZetaPlus(商標)B0204 60ZA、及びB0204 90ZA深層濾過媒体(CUNO Inc.より入手可能)以外の深層濾過媒体を圧力領域1(P1)内の単一デプスフィルタホルダに装填した。圧力領域2(P2)はD5膜の上に設置されたD4膜であり、圧力領域3(P3)はPall Life膜ホルダーであった。
【0164】
酵母/糖蜜1X試験流体をScilog装置で15mL/分でポンピングした。(平均600mLの400mL〜800mLの全処理量範囲で多数回の繰り返し試験を行った。)D4及びD5膜、並びに0.2μm膜の圧力領域は増加を示さなかった。濁度はシステム出口で2NTU未満であった。結果を図3に示す。
【0165】
比較例7:膜のみ
グラフト化不織布基材を省略して比較例6を繰り返した。膜D4及びD5を大きな孔径を上に向けて圧力領域1及び2内のフィルタホルダに、及びPall微多孔膜を圧力領域3内に装填した。酵母/糖蜜1X試験流体をScilog装置で15mL/分でポンピングした。
【0166】
圧力25psi(172.4kPa)に達する前、濾過システムは約68mLの全処理量を有した。この低容量では0.2μm滅菌膜で圧力の増加は認められなかった。
【0167】
比較例8:滅菌グレードの膜のみ
グラフト化不織布基材及び膜D4及びD5を省略して比較例7を繰り返した。Pall0.2(Supor−200)膜を膜フィルタホルダの中に装填した。酵母/糖蜜1X試験流体をScilog装置で15mL/分でポンピングした。
【0168】
圧力の発現がすぐに始まり、濾過システムは定率容量に安定しなかった。25psi(172.4kPa)の圧力に達する前の全処理量はたったの約10mLであった。この比較例では、原料液が滅菌グレードの膜(Pall Supor−200膜)に到達する前に、グラフト化不織布基材と膜の組み合わせが生物濾過負荷を低減する。
【0169】
(実施例9)
含浸溶液が、重量で、20%の3−(メタアクリロイルアミノ)プロピル]塩化トリメチルアンモニウム(MAPTAC)モノマーと、5%のポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレートモノマー(PEGMEMA、M475、Sigma−Aldrich)と、15%のメタノールと、10%ポリエチレングリコール(PEG 4000)と、50%の水とを含有することを除き、実施例4の一般的な手順を用いた。一定流速は13mL/分であった。試験結果を図4のグラフに記録した。
【0170】
圧力の発現はP2で始まったが、システムは約1900mLの全処理量を有した。非帯電親水性PEGMEMAモノマーのグラフト共重合は、効率のわずかな低下をもたらし、濾過負荷の一部を微多孔性フィルタに移行させた。増加した処理量は、グラフト化不織布のPEGMEMAコポリマーによってもたらされたと考えられる。効率のわずかな低下は、増加圧力(P2)の発現の遅延時間の欠如から推定され、得られた圧力角はグラフに処理量(時間)として記録された膜の全てに関して増加した。システム出口の濁度は2NTUであった。
【0171】
(実施例10a及び10b)
実施例1に記載の含浸プロセスに従ってEVAL不織布基材Cをグラフトした。次に、得た膜を濾過試験IIに従って評価したが、圧力領域3に0.2μm Pall膜を有さず、糖蜜のみの原料液を使用した。実施例10aは、グラフト化EVAL不織布基材Cの6層を採用し、一方実施例10bはこのグラフト化不織布基材を10層使用した。
【0172】
実施例10aは1リットルの処理量と約0.8のNTUを有し、実施例10bは1.6リットルの処理量と同様のNTU値を有した。D4及びD5膜の汚損が原因で、試験は25psi(172.4kPa)圧力で終了した。
【0173】
比較例11a〜b及び実施例11c〜d:メタニル黄色色素による比較
80パーツ・パー・ミリオン(ppm)(Alfa Aesar(Ward Hill,Massachusetts)から入手)水溶液を調製した。メタニル黄色の別の150mM塩化ナトリウム80ppm水溶液を調製した。
【0174】
Masterflex(商標)ポンプヘッド及び駆動装置を使用して、実験用に30mL/分で染料溶液をポンピングした。これらの実施例では単一デプスフィルタホルダを使用した。媒体を通して溶液濾過し、濾液のキュベットサンプルを毎分採取し、濾液を455nm波長でUVフォトスペクトロメータを用いて分析した。
【0175】
対照として、濾過媒体ZETAPLUS−B0204 60ZA及びZETAPLUS−B0204 90ZA(Cuno Inc.)を単一デプスフィルタホルダに搭載し、上部媒体として60ZAを有した。次に、メタニル黄色のみの溶液を濾過し、濾液のキュベットサンプルを毎分採取し、濾液を455ナノメートル(nm)波長でUVフォトスペクトロメータを用いて分析し(11a)、記録した。メタニル黄色−塩化ナトリウム溶液を使用してこのプロセスを繰り返した(11b)。
【0176】
膜6を使用して比較例11a〜bの手順を実施例11c〜dに対して繰り返し、続いて、実施例1のグラフト化不織布基材の3層を単一デプスフィルタホルダの中に装填した。塩を含まないメタニル黄色色素を濾過し(実施例11c)、メタニル黄色−塩化ナトリウム溶液を用いて再度繰り返した(11d)。結果を図5に示す。
【0177】
0.8の読取値において、実施例11cは、対照(ZetaPlus(商標)11a)と同じブレイクスルーに達するのに約2倍の時間を要した。実施例11dは、塩の存在下で染料を結合する改善された性能を有することが分かった。
【0178】
(実施例12)
含浸溶液が、重量で、35%の3−(メタアクリロイルアミノ)プロピル]塩化トリメチルアンモニウム(MAPTAC)モノマー、15%のメタノール、及び50%の水であり、e−ビーム線量が120kGy照射線量であったこと以外は、実施例4の一般的な手順を用いた。100gのモノマー溶液(35gモノマー)を使用してウェブを含浸させ、不織布ウェブの質量は約6.5gであったので、投入グラフト率は約5.39:1(モノマー/不織布)であった。グラフト化不織布を、周囲室温、20%相対湿度で少なくとも24時間平衡させ、続いて、秤量した。洗浄されかつ乾燥されたグラフト化不織布ウェブの総平均重量比はグラフト化モノマー/不織布で4.98:1であった。
【0179】
得られたグラフト化不織布基材を、13mL/分でポンピングされる2X酵母/糖蜜原料液を使用して、濾過試験IIに従って評価した。全容積処理量は1385mLであった。(原料液の濁度及び処理量性能を相関させる。)この実施例は酵母/糖蜜の2X濃度を用いたので、処理量は1Xの試験結果の約半分となる。ここで1X原料溶液を使用したとすると、この実施例と実施例4を比べて、推定処理量2,770mLが適当である。出口濁度(全フィルタ通過後)は約1NTUであった。
【0180】
(実施例13)
オフライン担体(offlinecarrier)に約5kGy/時間を供給するコバルト60(Co60)パノラマ(panorama)ガンマ照射器を照射源として使用した。6インチ(15.2cm)のプラスチックコアがベースプレートの中心にクランプしてプラスチックコアの中心を分離させた、機械加工された取り外し可能なベースプレートを有する4.6Lアルミニウムキャニスターを作製した。密封を確実にするためのOリングを保持するために、ベースプレート、及び3インチ(7.6cm)のプラスチックコアを保持するためのアルミニウムキャップに溝を付けた(プラスチックコアとコアキャップをクランプするために使用する長ボルトは、Oリングとも嵌合するワッシャを有する)。したがって、不織布が備わっている場合のキャニスターの有効容積は約4リットルである。
【0181】
50gsmのナイロン不織布基材(基材A)をプラスチックコアに巻き付け、重量は約560g、外径はほぼ7.5インチ(19.1cm)であった。ロールがベースプレートの上にクランプされたときに、巻き付けられたナイロンウェブがベースプレートと接触するように、プラスチックコア及びナイロン不織布を同じ幅に切断する。流体がナイロンロールの縁部に直接流れ込むためのバルブ及び経路を可能にするためのポートを、ベースプレートに機械加工した。ベースプレートはまた、機械加工された2つの溝を有し(直径4及び6インチ(直径10及び15cm))、これによりポートからの流体はベースプレートと接触している不織布ロールの縁部の周囲に容易に分散することができる。したがって、ベースプレートのポートを通ってキャニスターに入る流体は、ナイロン不織布基材の縁部に入らなければならない。ベースプレートには、キャニスターの上蓋をベースプレートに対して保持するためのOリングと嵌合する別の溝もまた機械加工される。キャニスター上部は、ベースにボルトで留められるように作製され、更にバルブ用にポートが作られる。このキャニスターの正味の効果は、圧力又は真空を維持することが可能な不織布のロール用の保持具を提供することである。
【0182】
織布基材ロールを含むアルミニウムキャニスターのポータブル真空ポンプで真空を適用し、続いてキャニスターを窒素パージした。この手順を3回繰り返してキャニスターから酸素を除去し、内部に不活性環境を形成した。次に、この容器に真空をかけ、弁を閉じて密封し、その後更にバルブフィッティングでキャップした。不織布ウェブを有するキャニスターを合計で6時間ガンマ源に暴露して、約28kGyの累積線量を受けた。担体を含むオフライン担体は、暴露によって線量分布の外へと部分的に回転した。
【0183】
それとは別に、市販の圧力容器の中で含浸溶液を混合し、窒素を2時間バブリングすることによってパージした。次に、圧力容器を約24psi(165.5kPa)の窒素で充填して密封した。
【0184】
アルミニウム容器をガンマ源から取り除いた直後に、圧力容器から通じている溶液供給ラインを含浸溶液で充満し、かつアルミニウムキャニスターのベースプレートに接合して、空気連行を最小限にした。ベースプレートの弁を徐々に開き、キャニスターの不織布基材を含んでいる部分に溶液を充満し、重量で20%の3−(メタアクリロイルアミノ)プロピル]塩化トリメチルアンモニウム(MAPTAC)モノマーと、15%のメタノールと、65%の水を含む4.5リットルのモノマー溶液で不織布基材を完全に飽和させる。次に、キャニスターを密封し、開く前に内容物を12時間反応させた。グラフト化不織布基材を洗浄し、周囲室温、20%相対湿度で少なくとも24時間空気乾燥し、その後坪量した。
【0185】
実質上、初期含浸溶液の全てはヒドロゲルネットワークに含まれる。約3800gmのモノマー溶液(約760gのモノマー)を用いてキャニスターを充満し、不織布基材を含浸させた。不織布ウェブの質量は約560gであり、用いたモノマーの量は約760gであったので、投入グラフト率はで約1.36:1(モノマー/不織布)であった。洗浄し乾燥されたグラフト化不織布ウェブの総平均重量比は1.10:1(グラフト化ポリマー/不織布)であった。ガンマグラフト化基材を、13mL/分でポンピングされる2X酵母/糖蜜原料液を用いて濾過試験IIに従って評価し、596mL+/−51mLの平均処理量を有したことが分かった(ロールの内側から外側までのランダムにサンプリングした5回の試験の平均)。
【0186】
(実施例14)
キャニスターを8時間(約37kGy)照射し、グラフト化溶液が、重量で、25%の3−(メタアクリロイルアミノ)プロピル]塩化トリメチルアンモニウム(MAPTAC)モノマーと、15%のメタノールと、60%の水を含み、開くまで72時間反応させ、最後の真空工程を省略してキャニスターを窒素雰囲気に維持し、キャニスターをボックスの中に設置して照射工程中にキャニスターにドライアイスで充填して、不織布基材の表面に形成されるラジカルの有効期間を時間を延長したこと以外、このガンマグラフト化実施例は実施例13と同様に行われた。
【0187】
それとは別に、市販の圧力容器の中で含浸溶液を混合し、窒素を2時間バブリグすることによってパージした。次に、圧力容器を約24psi(165.5kPa)の窒素で充填して密封した。
【0188】
接続金具及び3フィート(91cm)の1/3インチ(0.64cm)ポリチューブで一時的な「のぞき窓」を作製し、液体がチューブに入るときの視認を可能にした(あらゆる流体が真空ポンプ及び計器に入らないようにした)。
【0189】
アルミニウム容器をガンマ源から取り除いた直後に、キャニスターから残っているドライアイスを出した。次に、キャニスターの上を流れる温水で2分間キャニスターを温めて、コーティング溶液が凍結するのを防いだ。のぞき窓をアルミニウムキャニスターのポートに接合し、真空ポンプをのぞき窓の反対側に接合した。次に、アルミニウムキャニスター及びのぞき窓に真空をかけ、続いて分離して装置全体が真空下にある状態にした。圧力容器から続く溶液供給ラインに含浸溶液を充満し、アルミニウムキャニスターのベースプレートを接合して、空気連行を最小限にした。ベースプレートの弁を徐々に開き、キャニスターの不織布基材を含んでいる部分に溶液を完全に充満させた。液体がチューブのぞき窓を流れるのが見えたら、弁を閉じた。したがって、モノマー溶液でキャニスターの中の不織布基材を完全に飽和した。次に、閉じているバルブフィッティングにキャップをしてキャニスターを密封し、開く前にキャニスターの内容物を72時間反応させ、続いて実施例13と同様に洗浄及び乾燥させ、周囲室温、20%相対湿度で少なくとも24時間平衡させ、続いて、秤量した。
【0190】
この実施例の投入グラフト率は約2.07:1(モノマー/不織布)であった。洗浄し乾燥されたグラフト化不織布ウェブの総平均重量比は1.10:1(グラフト化ポリマー/不織布)であった。グラフトコーティングに吸湿的に(hygroscopically)結合するあらゆる水分は、グラフト率を判定するための重量計算に含まれる。
【0191】
13mL/分でポンピングされる2X酵母/糖蜜原料液を使用して濾過試験IIに従って得られたガンマグラフト化基材を評価し、1035mL+/−119mLの平均処理量を有したことが分かった(ロールの内側から外側までのランダムにサンプリングした5回の試験の平均)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)0.7〜15ミクロンの平均繊維サイズと、50〜95%の空隙容量とを有する不織布基材と、該不織布基材の表面にグラフトされたカチオン性アミノアルキル(メタ)アクリロイルモノマー単位を含むポリマーと、を含む物品。
【請求項2】
前記不織布基材が、グラフト化の前に少なくとも4.0ニュートンの引張強度を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記不織布基材が、不織布基材の1平方メートル当たり15〜50mの表面積を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記不織布基材が、ASTM F 316−03 5に従って1〜40ミクロンの平均孔径を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記不織布基材が20%未満のソリディティを有する、請求項1に記載の物品。
【請求項6】
前記不織布基材が、スパンレイド、スパンレース、水流交絡、ウェットレイド、電気紡績、又はメルトブローン不織布基材である、請求項1に記載の物品。
【請求項7】
前記グラフト化ポリマーの重量が、不織布基材の重量の0.5〜5倍である、請求項1に記載の物品。
【請求項8】
前記不織布基材が、親水性熱可塑性ポリマーから調製される、請求項1に記載の物品。
【請求項9】
前記グラフト化コポリマーが、
a)80〜98重量%のグラフト化アミノアルキル(メタ)アクリロイルモノマー、
b)2〜20重量%のグラフト化ポリ(アルキレンオキシド)モノマー、
b)0〜10重量%の第2の親水性モノマー、の重合モノマー単位を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項10】
前記グラフト化コポリマーが次の式のものである請求項9に記載の物品:
−(MNR4+−(MPEG−(M
(式中、
−(MNR4+−は、w個の重合モノマー単位(wは少なくとも2である)を有するグラフト化アミノアルキル(メタ)アクリロイルモノマーの残基を表し、
−(MPEGは、x個の重合モノマー単位(xはゼロであってもよい)を有する重合ポリ(アルキレンオキシド)モノマーを表し、
−(Mは、y個の重合モノマー単位(yはゼロであってもよい)を有する重合親水性モノマー「c)」を表す。)
【請求項11】
前記コポリマーが、ランダム又はブロックコポリマーである、請求項10に記載の物品。
【請求項12】
前記グラフト化ブラシ状ポリマーが非架橋である、請求項1に記載の物品。
【請求項13】
前記不織布基材が、10〜400g/mの坪量を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項14】
前記不織布基材が、1マイクロメートル以下の平均有効繊維長を有するナイロン不織布基材である、請求項1に記載の物品。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の物品の製造方法であって、
a.不織布基材を提供することと、
b.不活性雰囲気中で前記不織布基材を電離放射線に暴露することと、
c.前記不織布基材の前記表面に前記モノマーをグラフト重合するために、前記暴露された基材に、グラフト化アミノアルキル(メタ)アクリロイルモノマーを含む溶液を含浸させることと、を含む方法。
【請求項16】
前記含浸溶液が、第2の親水性グラフト化モノマーを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記含浸溶液が、
a)80〜98重量%のグラフト化アミノアルキル(メタ)アクリロイルモノマーと、
b)2〜20重量%のグラフト化ポリ(アルキレンオキシド)モノマーと
b)0〜10重量%の第2の親水性モノマーと、を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記含浸溶液が、水性/水溶性有機溶媒溶液を含み、該有機溶媒が三級水素原子を有さない、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記不織布基材が、1〜200kGysの電離放射線に暴露される、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記含浸溶液がポリエチレン性不飽和モノマーを含まない、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
e−ビームエネルギーへの暴露が、前記不織布基材の前記表面上にフリーラジカル部位を生成して、前記モノマーのグラフト重合を開始する、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記余剰モノマー溶液を除去し、かつ乾燥させる工程を更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記グラフト化アミノアルキル(メタ)アクリロイルモノマーが次の式のものである請求項15に記載の方法:
【化1】

(式中、Rは、水素又はメチルであり;Lはオキシ又は−NH−であり;Yは;及び各Rは独立して水素又はアルキルである。)
【請求項24】
前記第2のグラフト化親水性モノマーが、ポリ(エチレンオキシド)モノアクリレートである、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
前記含浸溶液の前記グラフト化モノマーの前記重量が、前記不織布基材の前記重量0.5〜5である、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
前記含浸溶液中の前記グラフト化モノマーの前記重量が、前記含浸溶液の全重量を基準として5重量%〜30重量%である、請求項15に記載の方法。
【請求項27】
流体入口と、
流体出口と、
前記流体入口と前記流体出口とを流体接続する濾材と、を含むフィルタ装置であって、
前記濾材が、請求項1〜14のいずれかに記載のグラフト化不織布基材を含む、フィルタ装置。
【請求項28】
前記濾材が、前記グラフト化不織布基材の下流に位置付けられる微多孔膜層を更に含む、請求項27に記載のフィルタ装置。
【請求項29】
前記濾材が複数のプリーツを備える、請求項27又は28のいずれかに記載のフィルタ装置。
【請求項30】
フィルタカプセルと、
前記フィルタカプセルに接合されるフィルタキャップと、を更に含み、
前記フィルタキャップが、前記流体入口と前記流体出口とを含み、前記濾材が前記フィルタカプセルの中に封入される、請求項27に記載のフィルタ装置。
【請求項31】
前記濾材が、前記グラフト化不織布基材の下流に位置付けられる微多孔膜層を更に含む、請求項30に記載のフィルタ装置。
【請求項32】
前記濾材が、複数のプリーツを備える第1の媒体シリンダに成形される、請求項30又は31のいずれかに記載のフィルタ装置。
【請求項33】
前記第1の媒体シリンダの中に位置付けられる、第2の媒体シリンダを更に備え、その第2の媒体シリンダが、複数のプリーツを備える第2の濾材を含む、請求項32に記載のフィルタ装置。
【請求項34】
コアを更に備え、前記濾材が該コアの周囲に螺旋状に巻き付く、請求項30に記載のフィルタ装置。
【請求項35】
分離要素と;
縁部シールと;
前記流体入口と流体連通する中央コアと、
第1の側と、
第2の側と、を含む分離要素と;
前記分離要素の前記第1の側に位置付けられ、かつ外周縁部と内周縁部とを有する第1の媒体ディスクと、
前記分離要素の前記第2の側に位置付けられ、かつ外周縁部と内周縁部とを有する第2の媒体ディスクと、を含む前記濾材と;を含み、
前記第1及び第2の媒体ディスクの前記外周縁部が、前記縁部シールによって接合され、前記第1及び第2の媒体ディスクの前記内周縁部が、前記中央コアに接合される、請求項27に記載のフィルタ装置。
【請求項36】
前記第1及び第2の媒体ディスクが、前記グラフト化不織布基材の下流に位置付けられる微多孔膜層を更に含む、請求項35に記載のフィルタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−513546(P2012−513546A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543507(P2011−543507)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【国際出願番号】PCT/US2009/043229
【国際公開番号】WO2010/074773
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】