説明

定常状態灌流方法

虚血冠状動脈疾患を評価するための方法が提供される。この方法は、動物に血清タンパク質成分に結合するコントラスト剤を投与する工程、およびこの動物が充血を経験しているときの期間の間に動物の心筋層のMR画像を得る工程を含む。この方法は、上記動物の休息の期間の間にこの動物の心筋層の少なくとも1つのMRI走査を得る工程をさらに包含し、ここで、この少なくとも1つのMRI走査は、上記コントラスト剤がこの動物の血液中で定常状態平衡にある時間で起こる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、米国特許法第119条(e)の下、2005年2月3日に出願された米国仮出願番号第60/649,713号への優先権を主張し、この出願は、その全体が、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、MR画像形成法に関し、そしてより特定すれば、心筋層灌流を評価するための定常状態MR法に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
約1300万人の米国人が、虚血心臓疾患(IHD)を罹患している。IHDは、しばしば、冠状動脈のアテローム性動脈硬化症によってしばしば引き起こされ、心臓への正弦された血液および酸素流れを生じる。IHDの共通の臨床症状発現は、アンギナ、心筋梗塞(心臓発作)および心不全を含む。
【0004】
IHDの診断は、理想的には、灌流および冠状動脈開存性情報を含み得る。心筋層灌流を測定するために最も広く用いられる技法は、タリウムアイソトープまたはテクネチウムセスタミビ(MIBI)のような、注射可能な核試薬(例えば、「ホット」ラジオトレサー)を用いるSPECT(単一光子コンピューター断層撮影)画像形成プロトコールである。しばしば、患者は、心筋層灌流のSPECT評価で支援するためにストレス試験(例えば、踏み車運動ストレス試験)を受けることを要求される。運動ストレスの心臓効果はまた、冠状動脈血管拡張薬の静脈内投与によって薬学的に刺激され得る。代表的には、ストレスの間の上記核試薬の注入の後、心筋層は造影される。第2の再分配休息画像が、次いで、適切な休息期間(約3〜4時間)の後に得られる。あるいは、患者に、休息フェーズの間に第2の核試薬の2×濃度の投与量が与えられても良く、そして次に第2の休息画像が獲得される。臨床医は、2つの画像セットを比較し、虚血領域をストレス画像上の「冷」スポットとして診断する。しかし、SPECT画像形成は、その比較的低い感度および特異性に起因して決定的でない灌流データを生じ得る。
【0005】
最近、磁気共鳴画像形成(MRI)技法が、心筋層灌流を評価するために提案されている。一般に、MRIは、その非侵襲的性質、改良された空間解像を提供する能力、および単一期間における壁の動きおよび駆出率を含む、心臓性能のその他の重要な測定値を派生する能力のために人に訴える。現在のMRI灌流画像形成技法は、細胞外または血管内MRコントラスト剤の(ボーラス注入の後の)第1の通過(パス)の間の心筋層の迅速な画像形成を必要とし;この技法は、MRFP(磁気共鳴第1パス)灌流画像形成と称される。T1重み付け画像上で、虚血ゾーンは、正常に灌流される心筋層と比較したとき、遅延され、そしてより低い信号増強(例えば、過小強度)とともに出現する。心筋層信号強度 対 時間曲線が、次いで、灌流パラメーターを抽出するために分析され得る。強度の差異は、しかし、MRコントラスト剤が第1パスの後、全身循環中に希釈されるとき、急速に減少する。さらに、MRFP灌流画像形成の迅速なタイミング要求のために、患者は、MRI装置内側に位置決めする間に薬学的に誘導されるストレスを受けなければならない。迅速な画像形成はまた、得られる灌流マップの解像を制限し得、そして灌流の乏しい定量を生じ得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
虚血により損傷された心筋層は、可逆的および不可逆的に損傷された領域の両方を含むので、心筋層損傷の正確な特徴付け、特に、壊死(急性梗塞心筋層)、虚血、および生存心筋層組織間の鑑別が、適正な患者管理における重要な因子である。この特徴付けは、虚血事象(例えば、急性心筋梗塞)前後いずれかで冠状動脈微小血管に隣接する心筋層組織の灌流および/または再灌流状態の分析により支援され得る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(要旨)
本明細書中に提供されるのは、心筋層灌流を含む灌流を評価するための材料および方法である。これらの方法は、定常状態で実施され、それ故、画像形成が動的フェーズで行われるとき必要な技術的要求を低減する。血清成分に結合し、そして非コントラスト剤より長い半減期を示すコントラスト剤の使用は、画像解像度における実質的な増大、および広くなった獲得ウインドウの両方を許容する。
【0008】
従って、本明細書中に提供されるのは、虚血冠状動脈疾患の存在または不在を評価するMR方法であって、これは:
a)動物に、血清タンパク質成分に非共有結合により結合するMRコントラスト剤を静脈投与する工程;および
b)上記動物が充血応答を経験しているときの期間の間に上記動物の心筋層の少なくとも1つのMRI走査を得る工程を包含し、ここで、上記少なくとも1つのMRI走査が、上記コントラスト剤が上記動物の血液中で定常状態平衡にある時間で生じる。この少なくとも1つの充血MRI走査は、上記コントラスト剤の上記静脈投与の少なくとも3分後に得られ得る。
【0009】
1つの実施形態では、虚血冠状動脈疾患の存在または不在を評価するMR方法は:
a)動物に、血清タンパク質成分に共有結合しないMRコントラスト剤を静脈投与する工程;および
b)上記動物が充血応答を経験しているときの期間の間に上記動物の心筋層の少なくとも1つのMRI走査を得る工程を包含し、ここで、上記少なくとも1つのMRI走査が、上記コントラスト剤が上記動物の血液中で定常状態平衡にある時間で生じる。いくつかの場合には、上記MRコントラスト剤は、上記コントラスト剤の平衡相の間に上記動物の心筋層中の血液のMR信号を増大するに十分である循環中の半減期を有する。
【0010】
本明細書中に記載される任意の方法は、動物の休息の期間の間に動物の心筋層の少なくとも1つのMRI走査を得る工程を包含し、ここで、この少なくとも1つのMRI走査は、上記コントラスト剤が動物の血液中で定常状態平衡にあるときに起こる。
【0011】
特定の事例では、血清タンパク質成分は、HSAであり得、そしてコントラスト剤は、MS−325であり得る。MS−325は、血清タンパク質成分に共有結合しておらず、そしてせず;MS−325は、平衡フェーズの間に心筋層中の血液のMR信号を増大するに十分な循環中の半減期を有する。このようなコントラスト剤のその他の例は、例えば、米国特許第6,676,929号中に記載されている。
【0012】
充血応答は、上記動物に、A2Aアゴニスト、またはアデノシン、ジピリダモル、またはドブタミンのような、薬学的ストレス剤を投与することにより得られ得る。その他の事例では、充血応答は、身体ストレス、例えば、自転車または踏み車デバイスを利用する運動の結果として生成され得る。
【0013】
本明細書中に記載される方法は、少なくとも1つの休息MRI走査を、少なくとも1つの充血MRIと比較する工程を含み得、そして/または工程a)の後の任意の時間に上記動物の環状動脈の少なくとも1つのMRI走査を得る工程をさらに包含する。
【0014】
上記薬学的ストレス剤に対する解毒薬が、上記充血応答の終期に投与され得、例えば、上記心筋層の休息MRを得ることを可能するか、または上記手順が終了する場合充血を終了する。その他の事例では、休息走査および充血走査を得ることは(いずれかの順番で)、例えば、充血の期間を休息の期間と交互することによって繰り返され得る(そして逆また真実である)。それ故、特定の事例では、方法は、薬学的ストレス剤への解毒剤の投与の後に動物の心筋層の少なくとも1つのMR休息走査を得ることをさらに含み得、次に、充血応答の再達成が続き、例えば、薬学的ストレス剤の第2の投薬量の投与に際し、充血応答の第2(または次の)期間の間に動物の心筋層の少なくとも1つのMRI走査を得ることが続く。
【0015】
その他であることが規定されなければ、本明細書中で用いられるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する当業者によって共通して理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中で記載されるのと類似または等価な方法および材料が、本発明の実施または試験で用いられ得るけれども、適切な方法および材料が以下に記載される。本明細書中に述べられるすべての刊行物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、それらの全体が参考として本明細書中に援用される。矛盾の場合には、定義を含む本明細書は調整される。さらに、上記方法、材料、および例は、例示に過ぎず、そして制限的であることは意図されない。
【0016】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、添付の図面および以下の説明で提示される。本発明のその他の特徴、目的、および利点は、本明細書および図面、ならびに請求項から明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(詳細な説明)
(定義)
本開示で明瞭に規定されていない一般に用いられる化学的略号は、The American Chemical Society Style Guide、第2版;American Chemical Society、Washington、DC(1997)、「2001 Guidelines for Authors」J.Org.Chem.66(1)、24A(2001)、「A Short Guide to Abbreviations and Their Use in Peptide Science」J.Peptide.Sci.5、465〜471(1999)に見出され得る。
【0018】
本出願の目的には、用語「脂肪族」は、芳香族以外の任意の非環状または環状、飽和または不飽和炭素化合物を記述している。
【0019】
用語「アルキル」は、飽和脂肪族基を含み、これには、直鎖アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなど)、分岐鎖アルキル基(イソプロピル、tert−ブチル、イソブチルなど)、シクロアルキル(脂環式)基(シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル)、アルキル飽和シクロアルキル基、およびシクロアルキル置換アルキル基が含まれる。用語アルキルはさらに、炭化水素背骨(バックボーン)の1つ以上の炭素を置換する酸素、窒素、硫黄またはリン原子をさらに含み得るアルキル基を含む。特定の実施形態では、直鎖または分岐鎖アルキルは、その背骨中に6以下の炭素原子を有し(例えば、直鎖についてC〜C、分岐鎖についてC〜C)、そしてより好ましくは4以下である。同様に、好ましいシクロアルキルは、それらの環構造中に3〜8炭素原子を有し、そしてより好ましくは環構造中に5または6の炭素を有する。用語C〜Cは、1〜6炭素原子を含むアルキル基を含む。
【0020】
さらに、用語「アルキル」は、「非置換アルキル」および「置換アルキル」の両方を含み、この後者は、炭化水素背骨の1つ以上の炭素上の水素を置換する置換基を有するアルキル部分をいう。このような置換は、例えば、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシ、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アクリルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、サルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルフォンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロ環、アルキルアリール、または芳香族もしくはヘテロ芳香族部分を含む。シクロアルキルはさらに、例えば、上記に記載された置換基で置換され得る。「アリールアルキル」部分は、アリール(例えば、フェニルメチル(ベンジル))で置換されたアルキルである。用語「アルキル」はまた、天然および非天然のアミノ酸の側鎖を含む。用語「n−アルキル」は、直鎖(すなわち、非分岐)非置換アルキル基を意味する。
【0021】
用語「アルケニル」は、アルキルについて上記で記載されたように、置換されていてもいなくても良い脂肪族基を含み、少なくとも1つの二重結合および少なくとも1つの炭素原子を含む。例えば、用語「アルケニル」は、直鎖アルケニル基(例えば、エチレニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニルなど)、分岐鎖アルケニル基、シクロアルケニル(脂環式)基(シクロプロペニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル)、アルキルまたはアルケニル置換シクロアリケニル基、およびシクロアルキルまたはシクロアルケニル置換アルケニル基を含む。用語アルケニルはさらに、炭化水素背骨の1つ以上の炭素を置換する酸素、窒素、硫黄またはリン原子を含むアルケニル基を含む。特定の実施形態では、直鎖または分岐鎖アルケニル基は、その背骨中に6以下の炭素原子を有する(例えば、直鎖についてC〜C、分岐鎖についてC〜C)。同様に、シクロアルケニル基は、その環構造中に3〜8の炭素原子を、そしてより好ましくは、その環構造中に5または6の炭素を有し得る。用語C〜Cは、2〜6の炭素原子を含むアルケニル基を含む。
【0022】
さらに、用語アルケニルは、「非置換アルケニル」および「置換アルケニル」の両方を含み、この後者は、炭化水素背骨の1つ以上の炭素上の水素を置換する置換基を有するアルケニル部分をいう。このような置換は、例えば、アルキル基、アルキニル基、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルケニルチオカルボニル、アルコキシ、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アクリルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、サルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルフォンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロ環、アルキルアリール、または芳香族もしくはヘテロ芳香族部分を含む。
【0023】
用語「アルキニル」は、上記に記載のアルキルに対する、長さおよび可能な置換が類似の不飽和脂肪族基を含むが、これは、少なくとも1つの三重結合および2つの炭素原子を含む。例えば、用語「アルキニル」は、直鎖アルキニル基(例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニルなど)、分岐鎖アルキニル基、およびシクロアルキルまたはシクロアルケニル置換アルキニル基を含む。用語アルキニルはさらに、炭化水素背骨の1つ以上の炭素を置換する酸素、窒素、硫黄またはリン原子を含むアルキニル基を含む。特定の実施形態では、直鎖または分岐鎖アルキニル基は、その背骨中に6以下の炭素原子を有する(例えば、直鎖についてC〜C、分岐鎖についてC〜C)。用語C〜Cは、2〜6の炭素原子を含むアルキニル基を含む。
【0024】
一般に、用語「アリール」は、0〜4のヘテロ原子を含み得る、5および6員の単一環の芳香族基を含み、例えば、ベンゼン、フェニル、ピロール、フラン、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、およびピリミジンなどがある。さらに、用語「アリール」は、多環アリール基、例えば、ナフタレン、ベンゾキサゾール、ベンゾジオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチオフェン、メチレンジオキシフェニル、キノリン、イソキノリン、ナフトリジン、インドール、ベンゾフラン、プリン、ベンゾフラン、デアザプリン、またはインドリジンのような、三環、二環を含む。環構造中にヘテロ原子を有するようなアリール基はまた、「アリールヘテロ環」、「ヘテロ環」、「ヘテロアリール」または「ヘテロ芳香族」と称され得る。アリール基は、1つ以上の環位置において置換基で置換され得る。
【0025】
本出願の目的には、「DTPA」は、ジエチレントリアミンを含む構造を備える化学的化合物をいい、ここで、この2つの一級アミンは、2つのアセチル基に各々共有結合で結合され、そして二級アミンは、以下の式に従って共有結合で結合される1つのアセチル基を有する:
【0026】
【化1】

ここで、Xは、金属カチオン、好ましくは、O、OH、NH、OPO2−、またはNHR、またはORと配位し得るヘテロ原子電子供与基であり、ここで、Rは任意の脂肪族基である。各X基がtert−ブトキシ(tBu)であるとき、この構造は「DTPE」(エステルのための「E」)と称され得る。
【0027】
本発明の目的には、「DOTA」は、1,4,7,11−テトラアザシクロドデカンからなるサブ構造を含む化学的化合物をいい、ここで、これらアミンの各々は、以下の式に従って共有結合される1つのアセチル基を有する:
【0028】
【化2】

ここで、Xは上記で規定されている。
【0029】
本発明の目的には、「NOTA」は、1,4,7−トリアザシクロノナンからなるサブ構造を含む化学的化合物をいい、ここで、これらアミンの各々は、以下の式に従って共有結合された1つのアセチル基を有する:
【0030】
【化3】

ここで、Xは上記で規定されている。
【0031】
本発明の目的には、「DO3A」は、1,4,7,11−トリアザシクロドデカンからなるサブ構造を含む化学的化合物をいい、ここで、4つのアミンの3つは各々、以下の式に従って、共有結合された1つのアセチル基および中和電荷を有する置換基を有するを有する:
【0032】
【化4】

ここで、Xは上記で規定されており、そしてRは、非荷電の化学的成分、好ましくは水素、任意の脂肪族基、アルキル基、またはシクロアルキル基、およびその非荷電誘導体である。好ましいキレート「HP」−DO3Aは、R=−CH(CHOH)CHを有する。
【0033】
上記の4つの構造の各々では、示されたエチレンの炭素原子は、「背骨」炭素と称され得る。「bbDTPA」の名称は、DTPA分子への化学的結合の位置をいうために用いられ得る(「bb」は「骨格」)。本明細書で用いられるとき、bb(CO)DTPA−Gdは、DTPAのエチレン背骨炭素原子に結合したC=O部分を意味することに注目のこと。
【0034】
用語「キレート性リガンド」、「キレート性部分」および「キレート部分」は、金属イオンを配位し得る任意の多座リガンドをいうために用いられ得、DTPA(およびDTPE)、DOTA、DO3A、もしくはNOTA分子、または金属イオンを配位するか、または直接もしくは保護基の除去後そのようにし得るいずれかの本明細書でさらに規定されるような任意のその他の適切な多座キレート性リガンドを含む。用語「キレート」は、実際の金属リガンド複合体をいい、そしてこの多座リガンドは、最終的には、医療的に有用な金属イオンに配位することが理解される。
【0035】
本明細書で用いられるとき、用語「特異的結合親和性」は、コントラスト剤または組成物(例えば、小有機分子)の、その他の成分より大きな程度まで特定の生物学的成分によって取り込まれ、それによって保持され、またはそれに結合する能力をいう。この性質を有するコントラスト剤は、「標的」成分に「標的し」得ると言われる。この性質を欠くコントラスト剤は、「非特異的」または「非標的」剤と言われる。標的に対する結合基の結合親和性は、平衡解離定数「Kd」に関して表現される。
【0036】
本明細書で用いられるとき、用語「緩和性(relaxivity)」は、常磁性イオンまたはコントラスト剤のミリモル(mM)濃度あたりのMRI量1/T1または1/T2のいずれかにおける増加をいい、ここで、T1は、水プロトンまたは水以外の分子中に見出されるプロトンを含むその他の画像形成もしくは分光学的核種の長軸方向またはスピン−格子の緩和時間であり、そしてT2は、横方向またはスピン−スピンの緩和時間である。相体性は、mM−1−1の単位で表現される。
【0037】
本明細書における目的のための用語「標的結合」および「結合」は、コントラスト剤の標的との非共有結合的相互作用をいう。これらの非共有結合相互作用は、互いからは独立であり、そしてとりわけ、疎水性、親水性、双極子−双極子、pi−スタッキング、水素結合、静電的会合、またはLewis酸−塩基相互作用であり得る。
【0038】
本明細書で用いられるとき、「Gd」、「ガド(gado)」、または「ガドリニウム」へのすべての参照は、Gd(III)常磁性金属イオンを意味する。
【0039】
本発明は、心筋層灌流を評価するために有用なMRIを基礎にした方法およびコントラスト剤に関する。これら方法およびコントラスト剤の使用は、心筋層灌流マップの質を改善し得、そして灌流パラメーターのより正確な抽出を提供する。特に、本発明は、壊死(急性の梗塞心筋層)、虚血、および生存心筋層組織間の鑑別を容易にする。さらに、本発明のコントラスト剤のいくつかは、血清タンパク質成分に対する親和性を有し、そしてその他の生理学的機能または症状発現を評価するために用いられ得、ここで、このようなタンパク質成分は、正常濃度または不規則に高濃度いずれかで存在する。例えば、冠状動脈核磁気共鳴血管造影(MRA)は、灌流画像形成に加えてこのような試薬とともに実施され得る。
【0040】
(コントラスト剤)
本発明のコントラス剤は、血清タンパク質成分に非共有結合によって結合する。このような結合の結果として、これら方法における使用のためのコントラスト剤は、血清タンパク質成分に結合しないコントラスト剤と比較したとき、延長された血液半減期を示し得る。例えば、コントラスト剤は、HSAに非共有結合によって結合し得、そして非特異的なコントラスト剤と比較したとき、延長された血液半減期を示す。血液半減期を決定するための方法は、当業者に公知である;例えば、米国特許第6,676,929号を参照のこと。
【0041】
コントラスト剤は、1つ以上の生理学的に適合するキレート基(C)、血清標的結合部分(STBM)、および必要に応じてリンカー(L)を含み得る。これらコントラスト剤は、心筋層中に存在する血清タンパク質成分(「標的」)を標的にし、そしてそれに結合し、心筋層中のこの標的のMR画像形成を可能にする。
【0042】
コントラスト剤は以下の一般式を有し得る:
[STBM]−[L]−[C]
ここで、nは1〜10の範囲であり得、mは0〜10であり得、そしてpは1〜40の範囲であり得る。
【0043】
本発明の方法における使用のための特定のコントラスト剤は、例えば、米国特許第6,676,929号;米国特許第4,899,755号、米国特許第4,880,008号、米国公開番号第20040071705号、米国特許第6,803,030号、および米国公開番号第2003/0113265号に記載されている。
【0044】
例えば、米国特許第6,676,929号中に記載され、そして以下の構造:
【0045】
【化5】

ここでPhはフェニル、およびその薬学的に受容可能な塩、を有するMS−325のガドリニウムキレートは、本発明の方法において用いられ得る。その他の有用なコントラスト剤は、ガドベネートジメグルミン(Muttihanceとして知られる)、および米国特許第4,916,246号に提示されるその他、ならびにガドコレチン酸(gadocoletic acid)(B−22956として知られる)および米国特許第6,803,030号に記載されるようなその他を含む。その他のコントラスト剤は、以下の開示に従って調製され得る。
【0046】
(血清標的結合部分)
一般に、STBMは、血清タンパク質成分に対する親和性を有している。例えば、このSTBMは、1200μMより小さい(例えば、1000μMより小さい、500μMより小さい、100μMより小さい、または10μMより小さい)解離定数で血清タンパク質成分に結合し得る。いくつかの実施形態では、このSTBMは、心筋層細胞外マトリックス成分(例えば、コラーゲン)に対し、血清タンパク質成分に対する特異的結合親和性を有している。
【0047】
血清タンパク質成分は、制限されないで、血清アルブミン(例えば、HSA)、α酸糖タンパク質、グロブリン、フィブリノゲン、プラスミノゲン、プロトロンビン、血小板、およびリポタンパク質を含む。特定の場合では、HSAが好ましい。種々の成分がSTBMとして用いられ得る。例えば、STBMは小有機分子であり得る。小有機分子は、約2000ダルトンより小さい分子量、例えば、約100〜約750ダルトンの分子量を有し得る。脂肪親和性および/または両親媒性有機部分を含む小有機分子がSTBMとして用いられ得る。特定の場合では、本明細書中で用いられるとき「小有機分子」は、1〜4のアミノ酸、アミノ酸アナログ、ヌクレオシド、および/またはヌクレオチド、またはそれらの混合物を含み得る。有用なSTBMは、米国特許第6,676,929号(その中のPPBMとして識別される)、米国特許第6,803,030号(その中の胆汁酸、または胆汁酸残基として識別される)、および米国特許公開番号2003/0113265中に記載されている。その他の場合では、小有機分子は、ゼロアミノ酸、アミノ酸アナログ、ヌクレオシド、およびヌクレオチドを含む。
【0048】
その他の場合には、STBMは、ペプチドまたはペプチド模倣物であり得る。ペプチドまたはペプチド模倣物は、約5のアミノ酸またはアミノ酸アナログ(またはその組み合わせ)〜約25のアミノ酸またはアミノ酸アナログ(またはその組み合わせ)を含み得、そして約600ダルトン〜約3000ダルトンの分子量を有し得る。特定のペプチドまたはペプチド模倣物は、約10〜約20のアミノ酸またはアミノ酸アナログ(またはその組み合わせ)であり得る。
【0049】
ペプチド、ペプチド模倣物および小有機分子は、当該分野で周知の方法によって血清タンパク質成分への結合についてスクリーニングされ得、これには、平衡透析、アフィニティクロマリグラフィー、および血清タンパク質成分に結合してプローブの阻害または置換が含まれる。
【0050】
(金属キレート基)
コントラスト剤はまた、生理学的に適合する金属キレート基(C)を含む。このCは、当該技術分野で公知の任意の多くであり得、そして例えば、DTPA、DOTA、HP−DO3A、DOTAGA、NOTA、およびDTPA−BMAのような環状および非環状有機キレート剤を含む。MRIには、ガドリニウムジエチレントリアミンペンタアセテート(DTPA・Gd)、ガドリニウムテトラアミン1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N’’,N’’’−テトラアセテート(DOTA・Gd)、ガドリニウム1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリアセテート(DO3A・Gd)、およびbb(CO)DTPA・Gdが特に有用である。特定の実施形態では、DOTAGAが好適であり得る。Gd(III)で複合体化されて示されるDOTAGAの構造は、以下の通りである:
【0051】
【化6】

上記Cは、Gd(III)、Fe(III)、Mn(III)、Cr(III)、Cu(II)、Dy(III)、Ho(III)、Er(III)、Pr(III)、Eu(II)、Eu(III)、Tb(III)、Tb(IV)、Tm(III)、およびYb(III)を含む常磁性金属イオンに複合体化され得る。C基およびそれらを本発明のコントラスト剤中に取り込むための合成方法に関するさらなる情報は、WO01/09188およびWO01/08712中に見出され得る。
【0052】
(リンカー)
いくつかの実施形態では、上記STBMおよびCは、リンカー(L)を通じて共有結合により結合される。このLは、例えば、直線状、分岐または環状ペプチド配列を含み得る。1つの実施形態では、Lは、直線状ジペプチド配列G−G(グリシン−グリシン)を含み得る。STBMがペプチドを含む実施形態では、このLは、アミド部分として、MTGペプチドのN末端、C末端、またはN末端およびC末端の両方をキャップし得る。その他の例示のキャッピング部分は、スルホンアミド、尿素、チオ尿素およびカルバメートを含む。Lはまた、直線状、分岐、または環状アルカン、アルケン、アルキレン、アミド、およびホスホジエステル部分を含み得る。このLは、ケトン、エステル、アミド、エーテル、カーボネート、スルホンアミド、またはカルバメート官能性を含む1つ以上の官能基で置換され得る。企図される特定のLはまた、NH−CO−NH−;−CO−(CH−NH−、ここでn=1〜10;dpr;dab;−NH−Ph;−NH−(CH−、ここでn=1〜10;−CO−NH−;−(CH−NH−、ここでn=1〜10;−CO−(CH−NH−、ここでn=1〜10;および−CS−NH−を含む。Lおよびそれらをコントラスト剤、特に、ペプチドを含むコントラスト剤中に取り込むための合成方法のさらなる例は、WO01/09188およびWら01/08712中に提示されている。
【0053】
(コントラスト剤の性質)
本発明のコントラスト剤は、HSAのような血清タンパク質成分に非共有結合によって結合し得る。例えば、少なくとも10%(例えば、少なくとも50%、80%、90%、92%、94%、または96%)のコントラスト剤は、所望の成分に、コントラスト剤および標的の生理学的に相応した濃度で結合され得る。コントラスト剤の結合の程度は、種々の平衡結合方法、例えば、限外濾過法;平衡透析;アフィニティークロマトグラフィー;またはプローブ成分の競争結合阻害もしくは置換によって評価され得る。
【0054】
本発明のコントラスト剤は、標的結合(例えば、HSAに)の結果として高い緩和性を示し得、これは、より良好な画像解像度に至り得る。結合に際し、緩和性における増加は、代表的には、1.5倍以上である(例えば、緩和性における少なくも2、3、4、5、6、7、8、9、または10倍の増加)。緩和性における7〜8倍、9〜10倍、またはなお10倍より大きい標的にされるコントラスト剤は、特に有用である。代表的には、緩和性は、当業者に公知の方法によってNMR分光光度計を用いて測定される。
【0055】
(本発明のコントラスト剤の使用)
本明細書中に開示される方法は、虚血冠状動脈疾患および心筋層灌流をモニターおよび測定するために有用である。例えば、本明細書中に記載される方法は、虚血冠状動脈疾患の存在もしくは不在および/または心筋層梗塞の存在もしくは不在を決定し得る。
【0056】
この方法は:
a)先に記載のように、血清タンパク質成分に非共有結合によって結合するMRコントラスト剤を動物に静脈投与する工程;および
b)この動物が充血応答を経験しているときの期間の間に動物の心筋層の少なくとも1つのMRI走査を得る工程であって、ここで、充血MRI走査が、上記コントラスト剤が動物の血液中で定常状態平衡にいるときの期間で起こる工程を含み得る。
【0057】
動物は、任意の動物、例えば、ヒト、ネコ、イヌ、サル、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、鳥、ラット、またはマウスであり得る。投与のためのコントラスト剤は、上記のようであり得る。特定の場合では、MS−325が投与される。なぜなら、これは、血清タンパク質成分HSAに結合することが知られているからである。当業者が認識するように、投与される投薬量は、目的のコントラスト剤、患者の健康、血清成分に対するコントラスト剤の親和性、MR機械のタイプなどに依存するが、代表的には、この投薬量は、約0.01〜約0.2mmol/kg金属イオン(例えば、Gd3+)。
【0058】
本明細書で用いられるとき、用語「充血」は、生理学的理由のために器官または血管への最大の増加された血液供給に接近する点を意味する。充血応答は、運動で誘導されるか、または薬学的に誘導され得る。運動で誘導されるピークの充血は、「ストレス試験」(例えば、踏み車または運動自転車ストレス試験)として一般に知られるものによって達成され得、そして過剰の疲労、呼吸困難、中程度から重篤のアンギナ、低血圧、診断ST低下、または顕著な不整脈を含む、いくつかの臨床的に相応する終点を有する。運動が充血を誘導するために用いられる場合、この動物は、特定の場合には、充血が得られた後、充血MR走査を得る前に、少なくとも1分の間さらに運動し得る。
【0059】
運動で誘導されたピーク充血の心臓の効果はまた、薬学的に刺激され得る。例えば、特定の場合には、この充血応答は、動物に、A2Aアゴニストのような薬学的ストレス剤を投与することによって得られる。その他の場合には、薬学的ストレス剤は、アデノシン、ジピリダモル、およびドブタミンから選択される。
【0060】
充血の期間の間、投与されたコントラスト剤が定常状態平衡に到達したと仮定して、動物の心筋層組織の1つ以上のMR走査が得られ得る。本明細書で用いられるとき、「定常状態平衡」は、コントラスト剤が動物(例えば、ヒト)の血液中で平衡に到達したことを意味し、それが患者の血液と完全に混合されたことを意味する。この用語「定常状態平衡」は、投与の後、このコントラスト剤の濃度が一定のままであることを暗に意味することは意図されないことが注記されるべきである。なぜなら、当業者は、コントラスト剤が、循環から除去され、そして経時的に排泄されることを認識しているからである。それに代わって、用語定常状態平衡は、コントラスト剤が動物の血液中で良好に混合され、しかも、濃度が画像形成容量中の血液中で均一であり、そしてそれ故、この試薬の濃度勾配が血液中にほぼ存在しないことを反映することが意味される。それ故、例えば、血液中のコントラスト剤のボーラスを追跡するために、第1のパスの画像形成は、追跡する血液中の濃度勾配に依存するけれども、このようなボーラスが患者の血液全体に分散された後に本発明の方法を行う。
【0061】
一般に、MR画像の獲得は、コントラスト剤の最初のパスの分布について必要であるより少なくとも4〜5倍より大きい時間フレームで開始する。ヒトでは、コントラスト剤のボーラス静脈注入で、このボーラスは、代表的には、約12秒後に右の心臓を通過し、そしてさらに約12秒の後、左の心臓を通過する。それ故、この試薬(剤)の注入の時間から全体の心臓を通る最初のパスまで、約24〜30秒が経過する。このコントラスト剤の第2のパスは、通常、約45秒の後に観察される。
【0062】
定常状態平衡は、それ故、代表的には、約120秒の後に到達される。従って、MR走査は、約180秒(3分)、または約210秒、または約240秒(4分)、または約270秒、または約300秒(5分)後に実施され得る。特定の場合には、本明細書中に記載される方法における使用のためのコントラスト剤は、血清タンパク質成分に非共有結合で結合するので、それらは、延長された血液半減期を示す。従って、行われるMRI操作は、投与の後、約5分〜約10分後に、例えば、コントラスト剤の投与の後、約10、15、20、25、30、45、60分、約1.5時間、または約2時間でさえ実施され得る。それ故、例えば、MS−325が投与され得、そして画像形成は、投与後、約5分〜2時間、またはより好ましくは約10分〜約1時間で実施され得る。
【0063】
充血状態にある動物の心筋層組織のMR画像は、この動物が休息しているときとられた心筋層組織のMR画像と比較され得る。休息MR画像は、充血の誘導の前、または充血が弱まった後のいずれかで獲得され得る。例えば、薬学的ストレス剤に対する解毒剤が、充血応答を終えるために投与され得るか、この動物は、適切な期間の間運動することを止め得るか、またはアデノシン投与が停止され、そして休息MR画像が得られ得る。その他の場合には、休息MR画像は、充血の誘導の前に得られ得る。特定の場合では、薬学的ストレス剤を用いる際に、充血および休息の期間が、薬学的ストレス剤解毒剤を用いて繰り返され得、休息および充血の間の心筋層の複数のMR画像および/または走査を得る。
【0064】
休息MR走査は、コントラスト剤がまた血液中で定常状態平衡にあるときの期間で実施され得る。例えば、動物は、コントラスト剤を投与され得、そして休息走査は、一旦、コントラスト剤が血液中で定常状態平衡に到達したなら、例えば、先に概説したような期間に得られ得る。次いで、充血が誘導され得、そして充血走査が得られる(例えば、コントラスト剤が定常状態平衡にある間)。異常な、または低い灌流のゾーンは、充血画像中の正常心筋層と比較して低強度(より少ない強度)である。虚血冠状動脈疾患の程度または重篤度の評価は、この虚血ゾーンの程度(例えば、サイズ)および比較的低強度に基づきなされ得る。さらに、本明細書中に開示される方法は、冠状動脈疾患、虚血心臓疾患の位置および重篤度、および心筋層梗塞の存在または不在を決定し得る。
【0065】
上記方法における使用のための特定のコントラスト剤は、延長された血液半減期を示すので、MRA法(例えば、冠状動脈狭窄および開存度を評価するために)が、上記に記載された灌流法の前または後いずれかで実施され得る。例えば、MS−325を用いるMRA法は、当該分野で公知である;例えば、Radiology(2003年12月)229(3):811〜20(Epub2003年10月30日)を参照のこと。Multihanceを用いるMRA法もまた公知である;例えば、Eur.Radiology(2003年11月)Vol.13 Suppl 3:N19−27;J.Magn.Res.Imaging(2004年3月)19(3):261−73を参照のこと。
【0066】
特定のMR技法およびパルスシークエンスが、本発明の方法で好適であり得る。望ましいパルスシークエンスの例は、心臓ゲート2dスピンエコー(TE/TR=15/1RR)シークエンス、T重み付けスポイルエコーグラジエントシークエンス(心臓ゲート、フリップ/TE/TR=30゜/2/8)、IRプレップグラジエントエコーシークエンス、および操縦IR−プレップシークエンスを含む。当業者に周知である、その他のT重み付けシークエンス、例えば、正常に灌流された心筋層を画像形成するためのシークエンスもまた用いられ得る。同様に、当業者は、梗塞を検出するためのその他の適切なMRを基礎にした方法、例えば、T2重み付け画像形成、遅延ECS画像形成、および心筋層画像形成を認識する。
【0067】
コントラスト−増大および非コントラスト画像の獲得および/または比較、および/または1つ以上のコントラスト剤の使用を含む方法もまた用いられ得る。例えば、米国特許第6,549,798号および米国公開US−2003−0028101−Aに提示される方法もまた用いられ得る。
【0068】
(薬学的組成物)
本発明のコントラスト剤および組成物は、慣用の手順に従って、薬学的組成物として処方され得る。本明細書で用いられるとき、本発明のコントラスト剤または組成物は、薬学的に受容可能なその誘導体を含み得る。「薬学的に受容可能な」は、薬剤が、受容不能な副作用なくして動物に投与され得ることを意味する。「薬学的に受容可能な誘導体」は、レシピエントへの投与に際し、本発明のコントラスト剤または組成物またはその活性代謝物もしくは残基を(直接的または間接的に)提供し得る、本発明のコントラスト剤または組成物の任意の薬学的に受容可能な塩、エステル、エステルの塩、またはその他の誘導体を意味する。その他の誘導体は、哺乳動物に投与されるとき生体利用可能性を増大するもの(例えば、経口投与された化合物が血液中により容易に吸収されることを可能にすることによる)、または親化合物の生物学的区画(例えば、脳またはリンパ系)への送達を増大し、それによって親種に対する曝露を増大するものである。本発明のコントラスト剤または組成物の薬学的に受容可能な塩は、当該技術分野で公知の薬学的に受容可能な無機酸および有機酸由来の対イオンを含む。
【0069】
本発明の薬学的組成物は、経口および非経口投与の両方を含む任意の経路によって投与され得る。非経口投与は、制限されないで、皮下、静脈内、動脈内、介在性、包膜内、および腔内投与を含む。投与が静脈内であるとき、薬学的組成物は、時間で2回以上分割されたボーラスとして、または一定もしくは非線形流れ注入として与えられ得る。従って、本発明の組成物は、投与の任意の経路のために処方され得る。
【0070】
代表的には、静脈内投与のための組成物は、滅菌等張水性緩衝液中の溶液である。必要である場合、この組成物はまた、可溶化剤、安定化剤、および注入の部位で痛みを和らげるリドカインのような局所麻酔剤を含み得る。一般に、これら成分は、別個に、例えば、キット、または単位投薬量形態中に一緒に混合されて、例えば、乾燥した凍結乾燥された粉末または水のない濃縮物としてのいずれかで供給される。上記組成物は、活性単位にある活性薬剤の量を示すアンプルまたは袋のような密封してシールされたコンテナ中に貯蔵され得る。この組成物が、注入によって投与される場合、それは、滅菌薬学的グレードの「注入用の水」、生理食塩水、またはその他の適切な静脈内流体を含む注入瓶で分散され得る。上記組成物が注射によって投与されるべき場合、注射用の滅菌水のアンプルまたは生理食塩水のアンプルが、上記成分が投与の前に混合され得るように提供され得る。本発明の薬学的組成物は、薬学的に受容可能な成分、賦形剤、キャリア、アジュバントまたはビヒクルとともに、本発明のコントラスト剤およびその薬学的に受容可能な塩を含む。
【0071】
コントラスト剤は、好ましくは、注射可能な組成物の形態で患者に投与される。コントラスト剤を投与する方法は、好ましくは、非経口により、静脈内、動脈内、硬膜下腔内、介在性または腔内性を意味する。本発明の薬学的組成物は、その他の診断または治療薬剤と類似の様式でヒトを含む哺乳動物に投与され得る。
【実施例】
【0072】
(実施例1−定常状態にあるMS−325を用いる灌流のブタ研究)
家畜ブタ(約50kg体重)を麻酔し、そして挿管する。動物は、左回旋冠状動脈(LCX)の遠位部分を部分的に閉塞するために手術介入を受ける。較正された血管形成術バルーンをカテーテルによって、X線蛍光透視法によって案内し、大腿動脈から心臓まで送達される。それは、左回旋冠状動脈中に進行され、そして80〜90%狭窄の等価物を生成するように膨張される。このバルーンカテーテルは、膨張され、そして画像形成手順の持続時間の間一定の膨張圧力で維持され、冠状動脈中に静的損傷および狭窄を刺激する。
【0073】
このブタを次いでMRIスーツに輸送し、そして全身麻酔のままで、そして画像形成実験の持続時間の間挿管される。心筋層画像形成を計画するために十分なMRI偵察走査が獲得される。次いで、0.05mmol/kgのMS−325が、単一の静脈内注射として投与される。画像形成を開始する前に、この試薬が血液中で平衡を達成する十分な時間(約10分)経過させる。
【0074】
灌流画像形成は、MRIを、画像形成剤の低下されたT1に感作するために、飽和−回復グラジエントエコー法を用いて実施する。3つの短軸スライス(7.5mm、7.5mmスライス分離)が獲得され、その結果、17のAHA/ACC心筋層セグメントの16が可視化され得る。この実行で、心臓トリガーリングが心臓の動きを制御するために採用され、そして呼吸が一時停止され、横隔膜の動きをなくした。画像データは、各心拍の中央拡張期の間に獲得され、そして画像形成は約45秒間継続する。
【0075】
MR画像の分析は、左心室の前壁中に疑われる低強度領域を示した。血管拡張ストレスが次いで0.25mg/kg/分アデノシンの一定の注入で誘導される。アデノシン付与の5分後、アデノシン付与を持続しながら、画像形成が繰り返される。ストレスの間の対応する画像は、残りの心筋層壁とのより大きな程度の負のコントラストを示し、左回旋冠状動脈の障害と一致する灌流欠損を確認した。
【0076】
(実施例2)
家畜ブタ(約60kg体重)を麻酔し、そして挿管する。動物は、左回旋冠状動脈(LCX)の遠位部分を部分的に閉塞するために手術介入を受ける。較正された血管形成術バルーンをカテーテルによって、X線蛍光透視法によって案内し、大腿動脈から心臓まで送達される。それは、左回旋冠状動脈中に進行され、そして80〜90%狭窄の等価物を生成するように膨張される。このバルーンカテーテルは、膨張され、そして画像形成手順の持続時間の間一定の膨張圧力で維持され、冠状動脈中に静的損傷および狭窄を刺激する。
【0077】
このブタを次いでMRIスーツに輸送し、そして全身麻酔のままで、そして画像形成実験の持続時間の間挿管される。心筋層画像形成を計画するために十分なMRI偵察走査が獲得される。次いで、0.05mmol/kgのMS−325が、単一の静脈内注射として投与される。灌流画像形成を開始する前に、この試薬が血液中で平衡を達成する十分な時間(約10分)経過させる。
【0078】
灌流画像形成は、MRIを、画像形成剤の低下されたT1(TR=3.2ms、FA=12゜)に感作するために、グラジエントエコー法を用いて実施する。3つの短軸スライス10mmスライスが獲得され、その結果、17のAHA/ACC心筋層セグメントの16が可視化され得る。この実行で、心臓トリガーリングが心臓の動きを制御するために採用され、そして呼吸が一時停止され、横隔膜の動きをなくする。画像データ(106フェーズ−ステップ解像)は、各心拍の中央拡張期の間に一回獲得される。360の時間−シリーズの画像が約5分間に亘って獲得される。
【0079】
血管拡張ストレスが0.25mg/kg/分アデノシンの一定の注入で誘導される。MR画像の分析は、左心室の壁中の低強度領域を示し、灌流欠損を示し、これは、画像形成の間に注入される蛍光マイクロスフェアの測定により確認され、そして死後に分析される。
【0080】
(実施例3)
家畜ブタ(約60kg体重)を麻酔し、そして挿管する。動物は、左回旋冠状動脈(LCX)の遠位部分を部分的に閉塞するために手術介入を受ける。較正された血管形成術バルーンをカテーテルによって、X線蛍光透視法によって案内し、大腿動脈から心臓まで送達される。それは、左回旋冠状動脈中に進行され、そして80〜90%狭窄の等価物を生成するように膨張される。このバルーンカテーテルは、膨張され、そして画像形成手順の持続時間の間一定の膨張圧力で維持され、冠状動脈中に静的損傷および狭窄を刺激する。
【0081】
このブタを次いでMRIスーツに輸送し、そして全身麻酔のままで、そして画像形成実験の持続時間の間挿管される。心筋層画像形成を計画するために十分なMRI偵察走査が獲得される。次いで、0.05mmol/kgのMS−325が、単一の静脈内注射として投与される。灌流画像形成を開始する前に、この試薬が血液中で平衡を達成する十分な時間(約10分)経過させる。
【0082】
灌流画像形成は、MRIを、画像形成剤の低下されたT1(TR=5.0ms、FA=12゜)に感作するために、グラジエントエコー法を用いて実施する。3つの10mmの短軸スライスが獲得され、その結果、17のAHA/ACC心筋層セグメントの16が可視化され得る。この実行で、心臓トリガーリングが心臓の動きを制御するために採用され、そして呼吸が一時停止され、横隔膜の動きをなくする。データは、複数の心拍に亘って獲得され、その結果、189フェーズ−ステップ解像を備えた4セットの画像データが、3つのスライスの各々について約2分間に亘り獲得され、そして平均され3つの低ノイズ/高解像画像を生成する。
【0083】
血管拡張ストレスが、次いで0.25mg/kg/分アデノシンの一定の注入で誘導される。画像形成は、アデノシンストレスの間繰り返される。MR画像の分析は、心筋層壁中の低強度領域を示し、灌流欠損を示し、これは、画像形成の間に注入される蛍光マイクロスフェアの測定により確認され、そして死後に分析される。
【0084】
本発明の多くの実施形態を説明した。それにもかかわらず、本発明の思想および範囲から逸脱することなく種々の改変がなされ得ることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
虚血冠状動脈疾患の存在または不在を評価するMR方法であって:
a)動物に、血清タンパク質成分に非共有結合により結合するMRコントラスト剤を静脈投与する工程;および
b)該動物が充血応答を経験しているときの期間の間に該動物の心筋層の少なくとも1つのMRI走査を得る工程を包含し、ここで、該少なくとも1つのMRI走査が、該コントラスト剤が該動物の血液中で定常状態平衡にある時間で起こる、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの充血MRI走査が、前記コントラスト剤の前記静脈投与の少なくとも3分後に得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記動物の休息の期間の間に該動物の心筋層の少なくとも1つのMRI走査を得る工程をさらに包含し、ここで、該少なくとも1つのMRI走査が、前記コントラスト剤が該動物の血液中で定常状態平衡にある時間で起こる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記血清タンパク質成分が、HSAである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記コントラスト剤が、MS−325である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記コントラスト剤の約0.01〜約0.2mmol/kgが注入される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記充血応答が、前記動物に対して薬学的ストレス剤を与えることにより得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記薬学的ストレス剤が、A2Aアゴニストである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記薬学的ストレス剤が、アデノシン、ジピリダモル、およびドブタミンから選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記充血応答が、身体ストレスによって生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記身体ストレスが、自転車または踏み車デバイスを利用する運動の結果である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの休息MRI走査を、前記少なくとも1つの充血MRI走査と比較する工程をさらに包含する、請求項3に記載の方法。
【請求項13】
工程a)の後の任意の時間に前記動物の環状動脈の少なくとも1つのMRI走査を得る工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
虚血冠状動脈疾患の程度または重篤度を決定する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記薬学的ストレス剤に対する解毒薬が、前記充血応答の終期に投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項16】
前記動物の心筋層の少なくとも1つのMRI走査が、前記解毒剤の投与の後に得られ、ここで、該動物中の充血応答が薬学的ストレス剤の第2の投薬量の投与の際に再達成され、そしてここで、該動物の心筋層の少なくとも1つのMRI走査が、充血応答の第2の期間の間に得られる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
虚血冠状動脈疾患の存在または不在を評価するMR方法であって:
a)動物に、血清タンパク質成分に共有結合しないMRコントラスト剤を静脈投与する工程;および
b)該動物が充血応答を経験しているときの期間の間に該動物の心筋層の少なくとも1つのMRI走査を得る工程を包含し、ここで、該少なくとも1つのMRI走査が、該コントラスト剤が該動物の血液中で定常状態平衡にある時間で起こる、方法。

【公表番号】特表2008−528245(P2008−528245A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−554310(P2007−554310)
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【国際出願番号】PCT/US2006/004223
【国際公開番号】WO2006/084257
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(397050785)エピックス ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド (12)
【Fターム(参考)】