説明

定着用ローラ

【課題】 簡単な構造で確実に静電オフセットが防止できるとともに、ベルト式定着装置のみならず、加熱・加圧方式の定着装置にも適用できる定着用ローラ並びに同ローラを使用した定着装置を提供することにある。
【解決手段】芯金(1)、芯金(1)上に弾性層(2)が被覆され,さらに、弾性層(2)上に離型層(3)が被覆された定着ローラにおいて、通紙範囲外の芯金端部(1)に全周に渡る突部(1a)を設け、該突部(1a)と弾性層(2)上に被覆される離型層(3)とが接触するよう、離型層(3)を被覆する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写機、ファクシミリ、あるいはプリンタ等の画像形成装置において、静電オフセットを防止した定着用ローラ並びに定着用ローラを使用した定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、芯金上に多孔質弾性体層を設け、多孔質弾性体層上に導電性弾性体層、さらに、導電性弾性体層上にフッ素樹脂表層を設け、導電性弾性体層をローラ端面まで延出させ芯金と導通させることによりオフセット防止を行なう加圧ローラが知られている。(特許文献1)
しかし、この方法では、弾性層を2層構造としなくてはならないこと、また、芯金と電気的に導通させるため、導電性弾性体層をローラの端面まで延出させなくてはならない等,構造が複雑化してしまうという問題がある。
一方、この方法とは別な方法として、芯金上に離型層を有する2つのローラにおいて、一方のローラの導電性離型層の軸方向の長さを、他方のローラの離型層の軸方向の長さより長く、一方のローラの導電性離型層の端部を他方のローラの芯金に接触させることにより、静電オフセットを防止した、定着装置も提案されている。(特許文献2)
しかしながら、この方法においても、ベルト式定着装置では有効である反面、弾性層を有する加圧ローラと加熱ローラからなる加熱・加圧方式の定着装置においては、加圧ローラの弾性層の厚さにより、構造上、加圧ローラの離型層の端部を他方のローラ(加熱ローラ)の芯金に接触させることができないので、加熱・加圧方式の定着装置には適用できないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−116582号公報
【特許文献2】特開2004−240284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の第一の課題は、簡単な構造で確実に静電オフセットが防止できるとともに、加熱・加圧方式の定着装置のみならず、ベルト式定着装置にも適用できる定着用ローラ並びに同ローラを使用した定着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、通紙範囲外の芯金端部に導電性離型層が芯金と接触するための、突部を設けることに着目した結果、従来の問題を解消するに至った。
【0006】
かくして、本発明によれば、通紙範囲外の芯金端部に突部を設け、該突部と弾性層を被覆する離型層とが接触するよう、離型層が通紙範囲外まで延出して被覆されていることを特徴とする定着用ローラが提供される。
さらに、本発明の定着用ローラを使用した定着装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
上記の構成を採る本発明によれば、以下のような顕著な作用・効果が奏される。
a.従来のように、導電性弾性層を介することなく離型層を直接芯金に導通させているので、低抵抗で放電できるので確実に静電オフセットが防止できる。
b.格別の付帯部品を要することなく、芯金の一部に突部を設ける加工を施すだけでよいので、構造が簡略化できる。
c.本発明の定着用ローラは絶縁性あるいは離型層よりも高抵抗となる電気抵抗をもった導電性の弾性層を有する加圧ローラあるいはヒートローラに対しても適用できるので、ベルト式定着装置のみでなく加熱・加圧方式の定着装置にも適用できるので適用範囲が広がる。
以下、本発明について添付図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の定着用ヒートローラの一例を示す横断面図である。
【図2】本発明の定着用ヒートローラの別の態様を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について添付図面を参照しながら説明する。
図1では、本発明の定着用ヒートローラの一例を示し、(1)は芯金、(1a)は芯金(1)の端部、通紙外に設けられた、突部、(2)は芯金上に被覆された弾性層、(2a)は弾性層の端部、(3)は該弾性層(2)の外周に被覆された離型層、そして、(3a)は離型層(3)の延出部、(P)は通紙範囲の幅、(Q)は通紙範囲外の幅である。
図2は本発明の定着用ヒートローラの別の態様を示すが、芯金(1)、突部(1a)、離型層(3)、離型層(3)の延出部(3a)は図1と同じで、弾性層(2)の端部(2a)だけが相違している。
以下、本発明について、図1を参照しながら説明する。
本発明の第一の特徴は、通紙範囲外(Q)の芯金端部に突部(1a)を設け、該突部と弾性層(2)上に被覆される離型層(3)とが接触するよう、離型層(3)が通紙範囲外(Q)まで延出して被覆されていることにある。
こうすることで、芯金(1)の突部(1a)と弾性層(2)上に被覆される離型層(3)とが確実な導通を得ることができるので、離型層(3)のオフセットの原因となる静電気が確実に除去され、静電気によるオフセットが防止でき、安定した定着画像が得られる。
【0010】
芯金(1)の端部に形成する突部(1a)は、離型層(3)とのより確実な導通を得るため、芯金(1)の全周に渡って形成されていることが望ましい。
さらに、突部(1a)の形状としては、芯金(1)の全周に渡る突起状あるいはリングのいずれの形状でもよい。この場合、突部(1a)の個数についても、単数より、複数個の方がより好ましい。個々の突部の高さは0.1mm〜1.0mm、幅が0.2mm〜2.0mmであることが好ましい。また、隣合う突起の間隔は、0mm〜2.0mm程度とするのが望ましい。
なお、通紙範囲外の幅(Q)はあまり狭いと複数の突起が設けれなく、逆に幅が広すぎると、スペースの問題や材料の無駄が生じるので、これらを考慮し、通常0.5mm〜15mm程度設けておくのが望ましい。
【0011】
次に、本発明において、芯金(1)上の弾性層(2)に配される耐熱性ゴム状弾性体としては、シリコーンゴムあるいはフッ素ゴム等が挙げられるが、コストの点からはシリコーンゴムがより好ましい。この弾性層(2)の厚さは、二ップや硬度を考慮し、0.1mm〜2.0mmの範囲にあることが望ましい。さらに、ゴム弾性層(2)は発泡、非発泡いずれのゴム弾性体でもよく、仕様・用途に合わせて適宜選択すればよい。 芯金の突部については、ゴム弾性層(2)を被覆してしまうと離型層(3)と突部(1a)との導通が取れなくなるので、研磨する等して突部(1a)から除去しておく必要がある。
【0012】
さらに、ゴム弾性層(2)上に被覆する離型層(3)は、離型性に優れた導電性フッ素樹脂が好ましく用いられる。この離型層(3)の厚さは離型性と耐久性の両方を考慮したとき、10μm〜60μmの範囲にあることが望ましい。
本発明では、離型層(3)の静電気を芯金を介して除去するため、離型層(3)が芯金(1)の通紙範囲外(Q)にある突部(1a)にまで延出して被覆されている必要がある。
ここで、離型層(3)の静電気をより確実に除去するため、離型層(3)は導電性接着剤を介して接着されていることが望ましい。
【0013】
ここに、離型層(3)に使用する導電性フッ素樹脂の具体例としては、テトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等が挙げられる。これらの中で、離型性や屈曲性の面からテトラフルオロエチレン/パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)が特に好ましく、これらの樹脂にカーボン等の導電性付与剤が所定量添加された導電性フッ素樹脂が挙げられる。
【0014】
次に、図2に示す、本発明の定着用ヒートローラの別の態様について説明する。
上記した図1に示す態様では、弾性層(2)を芯金(1)の突部(1a)まで離型層(3)と同じ幅まで延長した例で説明したが、弾性層(2)が1.0mm以下の薄肉の場合には、弾性層(2)と離型層(3)との間の段差は小さいので、ゴム弾性層(2)を離型層(3)と同じ突部(1a)まで同じ幅に延出する必要はなく、弾性層(2)の端部(2a)が手前の通紙範囲内(P)あるいは図2に示す通紙範囲外(Q)の途中とし幅を狭めることも可能である。この場合には、弾性層(2)から延出した、離型層(3)の延出部(3a)は導電性プライマーを介して直接、芯金と接着されることになる。
この場合には、芯金(1)の突部(1a)に被覆された余分な弾性層(2)を表面研磨にて除去する必要が無く、製造工程が簡略化できる長所がある。
【0015】
次に、本発明の定着用ローラの製造方法について、ヒートローラの例を挙げて説明する。
先ず、要求される突起形状に合せ、アルミ芯金を研削加工して、芯金(1)の端部に突起(1a)を設ける。
次に液状シリコーンゴムを成型した後、加硫・固化してシリコーンゴム弾性層からなる弾性層(2)を形成する。突起(1a)に被覆されたシリコーンゴム弾性層を除去するため、突起(1a)が弾性層表面に出てくるまで表面研磨を行う。
そして、弾性層(2)上に導電接着剤を塗布した上で、導電性フッ素樹脂からなるチューブを被覆した離型層(3)を設け、本発明の定着用ヒートローラが得られる。
なお、上記の説明では、弾性層(2)を設けたヒートローラで説明したが、本発明を弾性層(2)を有した加圧ローラに適用してもよいことは言うまでもない。
なお、上記では芯金(1)上に液状シリコーンゴムを成型した後、加硫・固化してシリコーンゴム弾性層(2)を設けたが、押出成形による方法あるいは予めチューブ状に成形されたゴム弾性体を圧入する方法やコーティング等他の方法も選択可能である。
さらに、離型層(3)についても、弾性層(2)上に導電性フッ素樹脂を押出成形する方法あるいは、液状の導電性フッ素樹脂をコーティングする方法もある。
【実施例】
【0016】
以下に、本発明の定着用ヒートロールの実施例を示す。
「実施例1」
上述した製造方法において、通紙範囲外の幅Qが5.0mmに設定された、芯金端面から21.0mm、弾性層端部から0mm〜2.6mmの通紙範囲外に2箇所の山形形状の突部(1a)(高0.25mm、幅1.3mm、間隔0mm)設けたアルミニウムからなる芯金(1)(長さ259mm、通紙部外径24.3mm、厚み1.0mm)の外周に厚さが0.25mmのシリコーンゴムの弾性層(2)を被覆した。
次に、2箇所の突部(1a)上に被覆された余分なシリコーンゴムを除去するため、2箇所の突部(1a)が表れるまで表面研磨を行なった。
さらに、離型層(3)として弾性層(2)の外周に厚さ50μmのPFAからなる導電性フッ素樹脂チューブを被覆した。この際、シリコーンゴム弾性層(2)の表面には導電プライマーを塗布しておく。
こうして、ローラ全体の肉厚が0.3mm、幅220mmの図1に示す円筒状のヒートローラを作成した。
【0017】
上記の方法にて作成したヒートローラを定着装置に組込み、実機(コピー機)に使用した所、オフセツトは一切発生せず画像の定着性も良好であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明の定着用ロールは、誘導加熱方式のプリンタ、その他の誘導加熱機器にも適用できる。
【符号の説明】
【0019】
1 定着用ヒートローラの芯金
1a 芯金突部
2 定着用ヒートローラの弾性層
2a 弾性層の端部
3 定着用ヒートローラの離型層
3a 離型層の延出部
P 通紙範囲の幅
Q 通紙範囲外の幅





【特許請求の範囲】
【請求項1】
通紙範囲外の芯金端部に突部を設け、該突部と芯金上に被覆される離型層とが接触するよう、離型層が通紙範囲外まで延出して被覆されていることを特徴とする定着用ローラ。
【請求項2】
該芯金の突部を除いて該芯金と該離型層との間に弾性層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の定着用ローラ。
【請求項3】
該弾性層の端部が通紙範囲内、あるいは、通紙範囲外の途中にあることを特徴とする請求項2の記載の定着用ローラ。
【請求項4】
該突部が該芯金の全周に渡る突起あるいはリングである請求項1〜3のいずれかに記載の定着用ローラ。
【請求項5】
該突部の高さが0.1mm〜1.0mm、幅が0.2mm〜2.0mmである請求項1〜4のいずれかに記載の定着用ローラ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の定着用ローラを使用した定着装置。







【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−141334(P2011−141334A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−700(P2010−700)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【出願人】(000226932)日星電気株式会社 (98)
【Fターム(参考)】