説明

定着用ロール及び定着用ベルト

【課題】優れた耐摩耗性を備える定着用ロールの提供。
【解決手段】基材と硬化性組成物を架橋することにより得られる含フッ素エラストマー表面層とを備える定着用ロール1であって、前記硬化性組成物は、非パーフルオロエラストマー(A)と、硬化剤(B)、40〜330℃でアンモニアを発生させる化合物(C)、及び、無機窒化物粒子(F)からなる群から選択される少なくとも1種と、を含み、前記フッ化ビニリデン系エラストマー(A1)は、パーフルオロオレフィン(a2)と、シアノ基、カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基を含有する単量体(a3)との共重合体であって、前記テトラフルオロエチレン−プロピレン系エラストマー(A2)は、テトラフルオロエチレンとプロピレンとシアノ基、カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基を含有する単量体との共重合体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着用ロール及び定着用ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
OA機器分野における印刷機や複写機では、トナー粒子が付着した転写材を加熱された定着用ロールと加圧用ロールとの間を通過させ、トナー粒子を溶融させて転写材に定着させる。定着用ロールの代わりに、定着用ベルトを用いる場合もある。
【0003】
定着用ロールや定着用ベルトには、定着時の加熱に耐え得るように優れた耐熱性が要求されるが、その他、離型性や、トナーに対する非粘着性、転写材との擦れに対する耐磨耗性等が要求される。また、鮮明な画像を得る観点からは、凹凸のあるトナー粒子に確実に接触するように、柔軟性に優れることも要求される。
【0004】
上記のような特性を改善することを目的として、定着用ロール表面にフッ素樹脂層を形成した定着用ロールが開示されている(例えば、特許文献1〜3参照)。また、特許文献4には、フッ素樹脂とポリチタノカルボシシランとの混合物を主成分とする被覆層を設けた定着ローラも開示されている。
【0005】
また、特許文献5には、フッ素ゴム100重量部に対して、体積平均粒径が0.01〜10.0μmの低分子量四フッ化エチレン樹脂微粒子を3〜70重量部配合したゴム組成物の加硫物を含有する表面層を有する電子写真用定着部材も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−109529号公報
【特許文献2】特開平7−281542号公報
【特許文献3】特開2005−121793号公報
【特許文献4】特開平3−179480号公報
【特許文献5】特開2001−235954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1〜3のようにフッ素樹脂層を定着用ロール表面に形成した場合、耐摩耗性の点では改善するが、柔軟性の点で不十分である。また、従来の表面がエラストマーからなる定着用ロールでは耐摩耗性の点で十分ではなく、表面がエラストマーからなり、かつ耐磨耗性にも優れる定着用ロールが求められていた。
【0008】
本発明は、表面がエラストマーからなり、かつ優れた耐摩耗性を備える定着用ロールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等が、耐磨耗性に優れる定着用ロールについて鋭意検討したところ、特定の含フッ素エラストマー層を表面に有する定着用ロールが、耐摩耗性に優れることを見出し、本発明は完成したものである。
【0010】
すなわち、本発明は、基材と硬化性組成物を架橋することにより得られる含フッ素エラストマー表面層とを備える定着用ロールであって、前記硬化性組成物は、フッ化ビニリデン系エラストマー(A1)及びテトラフルオロエチレン−プロピレン系エラストマー(A2)からなる群から選択される少なくとも1種の非パーフルオロエラストマー(A)と、硬化剤(B)、40〜330℃でアンモニアを発生させる化合物(C)、及び、無機窒化物粒子(F)からなる群から選択される少なくとも1種と、を含み、前記フッ化ビニリデン系エラストマー(A1)は、フッ化ビニリデン(a1)と、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)よりなる群から選ばれる少なくとも1種のパーフルオロオレフィン(a2)と、シアノ基、カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基を含有する単量体(a3)との共重合体であって、フッ化ビニリデンの共重合割合は20モル%を超える共重合体であり、テトラフルオロエチレン−プロピレン系エラストマー(A2)は、テトラフルオロエチレンと、プロピレンと、シアノ基、カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基を含有する単量体との共重合体であり、テトラフルオロエチレン及びプロピレンの合計100モル%に対して、テトラフルオロエチレン40〜70モル%、プロピレン30〜60モル%であることを特徴とする定着用ロールである。
【0011】
硬化剤(B)は、式(1):
【化1】

(式中、R1は同じかまたは異なり、−NH2、−NHR2、−OHまたは−SHであり、R2はフッ素原子または1価の有機基である)で示される架橋性反応基を少なくとも2個含む化合物、式(2):
【化2】

で示される化合物、式(3):
【化3】

(式中、Rf1は炭素数1〜10のパーフルオロアルキレン基)で示される化合物、および式(4):
【化4】

(式中、nは1〜10の整数)で示される化合物
よりなる群から選ばれる少なくとも1種の硬化剤であることが好ましい。
【0012】
アンモニア発生化合物(C)が、尿素またはアンモニウム塩であることが好ましい。
【0013】
本発明はまた、基材と硬化性組成物を架橋することにより得られる含フッ素エラストマー表面層とを備える定着用ベルトであって、
前記硬化性組成物は、フッ化ビニリデン系エラストマー(A1)及びテトラフルオロエチレン−プロピレン系エラストマー(A2)からなる群から選択される少なくとも1種の非パーフルオロエラストマー(A)と、
硬化剤(B)、40〜330℃でアンモニアを発生させる化合物(C)、及び、無機窒化物粒子(F)からなる群から選択される少なくとも1種と、
を含み、
前記フッ化ビニリデン系エラストマー(A1)は、フッ化ビニリデン(a1)と、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)よりなる群から選ばれる少なくとも1種のパーフルオロオレフィン(a2)と、シアノ基、カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基を含有する単量体(a3)との共重合体であって、フッ化ビニリデンの共重合割合は20モル%を超える共重合体であり、前記テトラフルオロエチレン−プロピレン系エラストマー(A2)は、テトラフルオロエチレン40〜70モル%とプロピレン30〜60モル%とシアノ基、カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基を含有する単量体との共重合体である
ことを特徴とする定着用ベルトでもある。
【発明の効果】
【0014】
本発明の定着用ロール及び定着用ベルトは、表面がエラストマーからなり、かつ優れた耐摩耗性を備える。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の定着用ロールの一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の定着用ロール及び定着用ベルトは、基材と硬化性組成物を架橋することにより得られる含フッ素エラストマー表面層とを備える。上記構成を有することによって、本発明の定着用ロール及び定着用ベルトは、優れた耐摩耗性を備える。また、柔軟性及び非粘着性にも優れており、定着用ロール及び定着用ベルトに要求される性能を兼ね備えるものである。
【0017】
前記硬化性組成物は、フッ化ビニリデン系エラストマー(A1)及びテトラフルオロエチレン−プロピレン系エラストマー(A2)からなる群から選択される少なくとも1種の非パーフルオロエラストマー(A)と、硬化剤(B)、40〜330℃でアンモニアを発生させる化合物(C)、及び、無機窒化物粒子(F)からなる群から選択される少なくとも1種と、を含む。
この時、フッ化ビニリデン系エラストマー(A1)は、フッ化ビニリデン(a1)と、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)よりなる群から選ばれる少なくとも1種のパーフルオロオレフィン(a2)と、シアノ基、カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基を含有する単量体(a3)との共重合体であって、フッ化ビニリデンの共重合割合は20モル%を超える共重合体であり、テトラフルオロエチレン−プロピレン系エラストマー(A2)は、テトラフルオロエチレンとプロピレンとシアノ基、カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基を含有する単量体との共重合体であり、テトラフルオロエチレン及びプロピレンの合計100モル%に対して、テトラフルオロエチレン40〜70モル%、プロピレン30〜60モル%である。
本発明の定着用ロール又は定着用ベルトは、上記の特定の硬化性組成物を架橋することにより得られる含フッ素エラストマー表面層を備えることで、優れた非粘着性及び耐摩耗性を兼ね備えるものである。また、本発明の定着用ロール又は定着用ベルトは、柔軟性にも優れる。
【0018】
以下、各成分について説明する。
【0019】
(A1)特定のフッ化ビニリデン(VdF)系エラストマー
特定のVdF系エラストマー(A1)は、VdF(a1)と、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)およびパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)よりなる群から選ばれる少なくとも1種のパーフルオロオレフィン(a2)と、シアノ基、カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基を含有する単量体(a3)との共重合体であるVdF系エラストマーである。
ただし、VdF系エラストマー(A1)は、VdFの共重合割合が、20モル%を超えていることが、低温での脆弱性を改善するために重要である。
【0020】
PAVEとしては、一般式(7):
CF=CFO(CFCFYO)−(CFCFCFO)−R (7)
(式中Yは、フッ素原子または−CFを表し、Rは、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。pは、0〜5の整数を表し、qは、0〜5の整数を表す。)
または、一般式(8):
CFX=CXOCFOR (8)
(式中、XはFまたはH;RはC〜Cの直鎖状もしくは分岐鎖状のフルオロアルキル基、C〜Cの環状のフルオロアルキル基、またはフルオロオキシアルキル基。ただし、H、Cl、Br、及び、Iから選択される1〜2個の原子を含んでもよい)
で表されるものを1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
一般式(7)、又は、一般式(8)で示されるものの中でも、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、又は、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)が好ましく、特にパーフルオロ(メチルビニルエーテル)が好ましい。
【0022】
これらはそれぞれ単独で、または任意に組み合わせて用いることができる。
【0023】
VdF系エラストマー(A1)は、VdF(a1)/パーフルオロオレフィン(a2)がモル比で、40〜90/60〜10であることが好ましく、45〜85/55〜15であることがより好ましく、50〜80/50〜20であることが更に好ましい。
【0024】
VdF(a1)と特定のパーフルオロオレフィン(a2)と単量体(a3)との共重合体(A1)としては、VdF/HFP/単量体(a3)共重合体、VdF/HFP/TFE/単量体(a3)共重合体、VdF/PAVE/単量体(a3)共重合体、VdF/TFE/PAVE/単量体(a3)共重合体、VdF/HFP/PAVE/単量体(a3)共重合体、VdF/HFP/TFE/PAVE/単量体(a3)共重合体が好ましい。これらの共重合体はいずれも、上記のVdF(a1)/パーフルオロオレフィン(a2)のモル比を満足することが好ましい。
【0025】
VdF/HFP/単量体(a3)共重合体は、VdF/HFPがモル比で、45〜85/55〜15であることが好ましく、より好ましくは、50〜80/50〜20であり、さらに好ましくは、60〜80/40〜20である。
【0026】
VdF/HFP/TFE/単量体(a3)共重合体は、VdF/HFP/TFEがモル比で、40〜80/10〜35/10〜35のものが好ましい。
【0027】
VdF/PAVE/単量体(a3)共重合体としては、VdF/PAVEがモル比で、65〜90/35〜10のものが好ましい。
【0028】
VdF/TFE/PAVE/単量体(a3)共重合体としては、VdF/TFE/PAVEがモル比で、40〜80/3〜40/15〜35のものが好ましい。
【0029】
VdF/HFP/PAVE/単量体(a3)共重合体としては、VdF/HFP/PAVEがモル比で、65〜90/3〜25/3〜25のものが好ましい。
【0030】
VdF/HFP/TFE/PAVE/単量体(a3)共重合としては、VdF/HFP/TFE/PAVEがモル比で、40〜90/0〜25/0〜40/3〜35のものが好ましく、40〜80/3〜25/3〜40/3〜25のものがより好ましい。
【0031】
シアノ基、カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基を含有する単量体(a3)は、硬化性組成物の良好な架橋特性および架橋物の耐熱性の観点から、VdF(a1)と特定のパーフルオロオレフィン(a2)の合計量に対して、0.1〜5モル%であることが好ましく、0.3〜3モル%であることがより好ましい。
【0032】
シアノ基、カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基を含有する単量体(a3)としては、たとえば、式(9)〜(12):
CY=CY(CF−X (9)
(式中、Yは水素原子またはフッ素原子、nは1〜8の整数である)
CF=CFCF−X (10)
(式中、Rは−(OCF−、−(OCF(CF))
であり、nは0〜5の整数である)
CF=CF(OCFCF(CF))O(CF−X (11)
(式中、mは0〜5の整数、nは1〜8の整数である)
CF=CF(OCFCF(CF))−X (12)
(式中、mは1〜5の整数)
(式(9)〜(12)中、Xは、シアノ基(−CN基)、カルボキシル基(−COOH基)またはアルコキシカルボニル基(−COOR基、Rは炭素数1〜10のフッ素原子を含んでいてもよいアルキル基))で表される単量体などがあげられ、これらをそれぞれ単独で、または任意に組み合わせて用いることができる。
単量体(a3)としては、なかでも、シアノ基を含有する単量体が好ましい。
【0033】
これらのVdF系エラストマー(A1)は、常法により製造することができる。
【0034】
また、これらの官能基のエラストマーへの導入方法としては、国際公開第00/05959号パンフレットに記載の方法も用いることができる。
【0035】
エラストマー中の上記官能基の存在は、例えば、赤外分光分析により確認できる。
【0036】
本発明で用いるVdF系エラストマー(A1)は、加工性が良好な点から、ムーニー粘度(ML1+10(121℃))が5〜140、さらには5〜120、特に5〜100であるものが好ましい。ムーニー粘度(ML1+10(121℃))は、ASTM−D1646およびJIS K6300に準じて測定する。
【0037】
(A2)TFE−プロピレン(Pr)系エラストマー
本発明で用いるTFE−Pr系エラストマー(A2)は、TFE単位とPr単位とシアノ基、カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基を含有する単量体とを有する非パーフルオロエラストマーであり、TFE単位とPr単位との合計量に対して、TFE単位が40〜70モル%、Pr単位が30〜60モル%である。
【0038】
また、TFE−Pr系エラストマー(A2)は、必要に応じて、全単量体単位100モル%に対して、VdF単位0〜15モル%および/またはPAVE単位0〜15モル%を含んでいてもよい。任意の単位であるVdF単位またはPAVE単位は、全単量体単位100モル%に対して、15モル%までであり、好ましくは10モル%までであり、これを超えると前者は耐アミン性、後者は高コストの点で好ましくない。
【0039】
TFE単位は、TFE単位とPr単位との合計量に対して40〜70モル%であり、好ましくは50〜65モル%であり、Prとこの範囲においてエラストマー性が得られる。
【0040】
Pr単位は、TFE単位とPr単位との合計量に対して30〜60モル%であり、好ましくは30〜50モル%であり、TFEとこの範囲においてエラストマー性が得られる。
【0041】
シアノ基、カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基を含有する単量体としては、VdF系エラストマー(A1)で説明した単量体(a3)が挙げられる。好ましい単量体も同じである。TFEとPrの合計量に対して、0.1〜5モル%であることが好ましく、0.3〜3モル%であることがより好ましい。
【0042】
また本発明で用いるTFE−Pr系エラストマー(A2)は、ムーニー粘度(ML1+10(121℃))が5〜100である。ムーニー粘度が5を下回ると加硫性が低下して加硫ゴムとしての十分な物理特性が出なくなり、100を超えると流動性が低下し、成型加工性が悪くなる傾向にある。好ましいムーニー粘度(ML1+10(121℃))は、10〜90である。
【0043】
本発明で用いるTFE−Pr系エラストマー(A2)は、通常の乳化重合法でも製造できるが、TFEとPrの重合速度は比較的遅いため、たとえば2段重合法(シード重合法)で製造するときは、効率よく製造できる。
【0044】
本発明では、VdF系エラストマー(A1)またはTFE−Pr系エラストマー(A2)の硬化のために、硬化剤(B)を単独で配合してもよいし、アンモニア発生化合物(C)を単独で配合してもよいし、または硬化剤(B)とアンモニア発生化合物(C)とを併用してもよい。
【0045】
本発明では、また、VdF系エラストマー(A1)またはTFE−Pr系エラストマー(A2)の硬化のために、無機窒化物粒子(F)を単独で配合してもよいし、硬化剤(B)と無機窒化物粒子(F)とを併用してもよいし、アンモニア発生化合物(C)と無機窒化物粒子(F)とを併用してもよいし、硬化剤(B)とアンモニア発生化合物(C)と無機窒化物粒子(F)とを併用してもよい。
【0046】
(B)硬化剤
硬化剤(B)としては、式(1):
【化5】

(式中、Rは同じかまたは異なり、−NH、−NHR、−OHまたは−SHであり、Rはフッ素原子または1価の有機基である)で示される架橋性反応基を少なくとも2個含む化合物、式(2):
【化6】

で示される化合物、式(3):
【化7】

(式中、Rは炭素数1〜10のパーフルオロアルキレン基)で示される化合物、および式(4):
【化8】

(式中、nは1〜10の整数)で示される化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
式(1)においてRが1価の有機基である場合、該1価の有機基としては、脂肪族炭化水素基、フェニル基またはベンジル基があげられる。具体的には、たとえば、Rの少なくとも1つが−CH、−C、−Cなどの炭素数1〜10、特に1〜6の低級アルキル基;−CF、−C、−CHF、−CHCF、−CHなどの炭素数1〜10、特に1〜6のフッ素原子含有低級アルキル基; フェニル基; ベンジル基;−C、−CHなどのフッ素原子で1〜5個の水素原子が置換されたフェニル基またはベンジル基;−C5−n(CF、−CH5−n(CF(nは1〜5の整数)などの−CFで1〜5個の水素原子が置換されたフェニル基またはベンジル基が好ましい。これらのうち、耐熱性が特に優れており、架橋反応性が良好であり、さらに合成が比較的容易である点から、フェニル基又は−CHがより好ましい。
【0047】
具体的な硬化剤(B)としては、式(1)で示される架橋性反応基を2個有する一般式(5):
【化9】

(式中、Rは前記と同じ、Rは、−SO−、−O−、−CO−、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数1〜10のパーフルオロアルキレン基、単結合手、または
【化10】

で示される基である)で示される化合物や、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−メルカプトフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3,4−ジアミノフェニル)ヘキサフルオロプロパンなどのほか、
式(6):
【化11】

(式中、Rは同じかまたは異なり、いずれも炭素数1〜10のアルキル基;フッ素原子を含有する炭素数1〜10のアルキル基;フェニル基;ベンジル基;フッ素原子および/または−CFで1〜5個の水素原子が置換されたフェニル基またはベンジル基である)で示される化合物があげられる。
【0048】
これらの具体例としては、限定的ではないが、たとえば2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3,4−ジアミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−(N−メチルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−(N−エチルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−(N−プロピルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−(N−フェニルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−(N−パーフルオロフェニルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−(N−ベンジルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンなどのビスアミノフェノール系硬化剤などがあげられる。
【0049】
硬化剤(B)の中でも、耐熱性が優れており、架橋反応性が特に良好である点から、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(OH−AF)、2,2−ビス[3−アミノ−4−(N−フェニルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(Nph−AF)、2,2−ビス(3,4−ジアミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(TA−AF)がさらに好ましい。
【0050】
これらの硬化剤(B)は、単独でも2種以上併用してもよい。
【0051】
これらの硬化剤(B)は、本発明で用いる特定の非パーフルオロエラストマー(A)が有するシアノ基、カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基という架橋性官能基と反応し、架橋物を与える。
【0052】
硬化剤(B)の添加量は、特定の非パーフルオロエラストマー(A)100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、0.5〜10質量部であることがより好ましい。硬化剤(B)が、0.1質量部未満であると、実用上充分な機械的強度、耐熱性、耐薬品性が得られない傾向があり、20質量部を超えると、架橋に長時間がかかるうえ、架橋物が硬くなり柔軟性がなくなる傾向がある。
【0053】
(C)40〜330℃でアンモニアを発生させる化合物(アンモニア発生化合物)
アンモニア発生化合物(C)は、特定の非パーフルオロエラストマー(A)が有する架橋性反応基の少なくとも1種がシアノ基である場合に、シアノ基が環化三量体(トリアジン環)を形成するトリアジン架橋系で、架橋反応を促進する働きをする。
【0054】
このトリアジン架橋では硬化剤は必須ではなく、架橋反応温度(40〜330℃)で発生したアンモニアが非パーフルオロエラストマー(A)のトリアジン架橋を引き起こすことにより硬化を生じさせる。したがって、本発明では、アンモニア発生化合物を単独で使用して硬化(トリアジン架橋)を生じさせることができるが、さらに硬化剤(B)を併用し、トリアジン架橋に加えて他の架橋を形成させてもよい。
【0055】
アンモニア発生化合物(C)としては、尿素またはその誘導体、アンモニウム塩が好ましくあげられ、尿素またはアンモニウム塩がより好ましい。アンモニウム塩としては有機アンモニウム塩でも無機アンモニウム塩でもよい。また、アンモニア発生化合物(C)としては、微量の水と反応して、アンモニアを発生させるものであってもよい。
【0056】
尿素の誘導体としては、ビウレア、チオウレア、尿素塩酸塩、ビウレットなどがあげられる。
【0057】
有機アンモニウム塩としては、特開平9−111081号公報、国際公開第00/09603号パンフレット、国際公開第98/23675号パンフレットに記載された化合物、たとえばパーフルオロヘキサン酸アンモニウム、パーフルオロオクタン酸アンモニウムなどのポリフルオロカルボン酸のアンモニウム塩;パーフルオロヘキサンスルホン酸アンモニウム、パーフルオロオクタンスルホン酸アンモニウムなどのポリフルオロスルホン酸のアンモニウム塩;パーフルオロヘキサンリン酸アンモニウム、パーフルオロオクタンリン酸アンモニウムなどのポリフルオロアルキル基含有リン酸またはホスホン酸のアンモニウム塩;安息香酸アンモニウム、アジピン酸アンモニウム、フタル酸アンモニウムなどの非フッ素系のカルボン酸またはスルホン酸のアンモニウム塩が例示できる。なかでも、非パーフルオロエラストマー(A)への分散性を考慮するとフッ素系のカルボン酸、スルホン酸またはリン酸のアンモニウム塩が好ましく、一方、安価な点からは、非フッ素系のカルボン酸、スルホン酸またはリン酸のアンモニウム塩が好ましい。
【0058】
無機アンモニウム塩としては、特開平9−111081号公報に記載された化合物、たとえば硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウムなどが例示でき、なかでも加硫特性を考慮すると、リン酸アンモニウムが好ましい。
【0059】
そのほか、アセトアルデヒドアンモニア、ヘキサメチレンテトラミン、ホルムアミジン、ホルムアミジン塩酸塩、ホルムアミジン酢酸塩、t−ブチルカルバメート、ベンジルカルバメート、HCFCFCH(CH)OCONH、フタルアミドなども使用できる。
【0060】
これらのアンモニア発生化合物(C)は、単独でも2種以上併用してもよい。
【0061】
アンモニア発生化合物(C)の添加量は発生するアンモニアの量により適宜選択すればよいが、単独で使用する場合は、通常、非パーフルオロエラストマー(A)100質量部に対して、0.05〜10質量部であり、0.1〜5質量部であることが好ましく、0.2〜3質量部であることがより好ましい。アンモニア発生化合物が、少なすぎると架橋密度が低くなるため、実用上、充分な耐熱性、耐薬品性を発現しない傾向があり、多くなりすぎると、スコーチの懸念があり保存安定性が悪くなるという問題があり、かつ含フッ素エラストマー表面層の色目に透明感がなくなる傾向がある。
【0062】
上記のように、硬化剤(B)とアンモニア発生化合物(C)を併用してもよい。これらを併用することで、機械的強度、耐熱性、耐薬品性、耐寒性に優れ、特に耐熱性と耐寒性にバランスよく優れた架橋物を与える。
【0063】
また、硬化剤(B)と併用する場合のアンモニア発生化合物(C)の添加量は、発生するアンモニアの量により適宜選択すればよいが、通常、特定の非パーフルオロエラストマー(A)100質量部に対して、0.01〜10質量部であり、0.02〜5質量部であることが好ましく、0.05〜3質量部であることがより好ましい。
【0064】
本発明では、また、アンモニア発生化合物(C)と無機窒化物粒子(F)とを併用してもよいし、硬化剤(B)とアンモニア発生化合物(C)と無機窒化物粒子(F)とを併用してもよい。
【0065】
(F)無機窒化物粒子
無機窒化物粒子(F)は、非パーフルオロエラストマー(A)が有する架橋性反応基の少なくとも1種がシアノ基である場合に、シアノ基が環化三量体(トリアジン環)を形成するトリアジン架橋系で、架橋反応を促進する働きをする。
【0066】
無機窒化物粒子(F)としては、特に限定されるものではないが、窒化ケイ素(Si)、窒化リチウム、窒化チタン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化バナジウム、窒化ジルコニウムなどがあげられる。これらの中でも、ナノサイズの微粒子が供給可能であること、半導体製造工程で嫌われる金属等を含んでいない点から、窒化ケイ素粒子であることが好ましい。また、これらの窒化物粒子は2種以上混合使用してもよい。
【0067】
無機窒化物粒子(F)の粒径としては、特に限定されるものではないが、1000nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることがさらに好ましい。下限値は特に限定されない。
【0068】
無機窒化物粒子(F)の添加量は、無機窒化物粒子(F)を単独で使用する場合、非パーフルオロエラストマー(A)100重量部に対して、0.1〜20重量部であることが好ましく、0.2〜5重量部であることがより好ましく、0.2〜1重量部であることがさらに好ましい。無機窒化物粒子(F)が、0.1重量部未満であると加硫密度が低くなるため、実用上、充分な耐熱性、耐薬品性を発現しない傾向があり、20重量部をこえると、スコーチの懸念があり保存安定性が悪くなるという問題があり、かつ含フッ素エラストマー表面層の色目に透明感が無くなる傾向がある。
【0069】
無機窒化物粒子(F)の添加量は、無機窒化物粒子(F)を硬化剤(B)またはアンモニア発生化合物(C)と併用する場合、非パーフルオロエラストマー(A)100重量部に対して、0.01〜1重量部であることが好ましく、その下限はより好ましくは0.03重量部、さらに好ましくは0.05重量部であり、その上限はより好ましくは0.7重量部、さらに好ましくは0.5重量部である。
【0070】
(D)他の成分
上記硬化性組成物は、必要に応じて硬化性組成物に配合される通常の添加物、たとえば充填剤、加工助剤、可塑剤、着色剤、安定剤、接着助剤などを配合することができ、前記のものとは異なる常用の硬化剤や架橋助剤を1種またはそれ以上配合してもよい。
【0071】
充填材(D1)は、架橋物の引張り強さ、モジュラス、硬度などの物性を向上させるものであり、本発明においても必要に応じて添加することができる。
【0072】
充填剤(D1)としては、たとえば金属酸化物、金属炭化物、金属ハロゲン化物、金属硫化物、金属塩、金属水酸化物などの金属系フィラー;カーボンブラック、黒鉛化カーボン、グラファイトなどの炭素系フィラー;ハイスチレン樹脂、フェノール樹脂、クマロン樹脂、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイドなどの有機物系フィラーの少なくとも1種が例示できる。
【0073】
金属酸化物としては、たとえば酸化ケイ素、酸化バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化銀、酸化ベリリウム、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化ホウ素、酸化カドミウム、酸化銅、酸化鉄、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化ハフニウム、酸化イリジウム、酸化ランタン、酸化リチウム、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化ニオブ、酸化ネオジブ、酸化ニッケル、酸化鉛、酸化プラセオジウム、酸化ロジウム、酸化アンチモン、酸化スカンジウム、酸化スズ、酸化ストロンチウム、酸化タンタル、酸化トリウム、酸化バナジウム、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムなどがあげられ、耐薬品性、化学的安定性に優れている点から、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウムが好ましい。補強性の点から、酸化ケイ素が特に好ましい。
【0074】
金属炭化物としては、たとえば炭化ホウ素、炭化カルシウム、炭化鉄、炭化マンガン、炭化チタン、炭化ケイ素、炭化バナジウム、炭化アルミニウムなどがあげられ、耐薬品性、化学的安定性に優れている点から、炭化ケイ素、炭化チタンが好ましい。
【0075】
金属ハロゲン化物としては、たとえば塩化銀、フッ化銀、塩化アルミニウム、フッ化アルミニウム、塩化バリウム、フッ化バリウム、塩化カルシウム、フッ化カルシウム、塩化カドミウム、塩化クロム、塩化セシウム、フッ化セシウム、塩化銅、塩化カリウム、フッ化カリウム、塩化リチウム、フッ化リチウム、塩化マグネシウム、フッ化マグネシウム、塩化マンガン、塩化ナトリウム、フッ化ナトリウム、塩化ニッケル、塩化鉛、フッ化鉛、塩化ルビジウム、フッ化ルビジウム、塩化スズ、塩化ストロンチウム、塩化タリウム、塩化バナジウム、塩化亜鉛、塩化ジルコニウムなどの金属塩化物または金属フッ化物や、これらの臭化物またはヨウ化物があげられ、吸湿性が小さく化学的安定性に優れている点から、フッ化アルミニウム、フッ化バリウムが好ましい。
【0076】
金属塩は式:M(Mは金属、Aは各種無機酸の残基、mおよびnはそれぞれの価数によって適宜決まる)で表されるものであり、たとえば各種金属の硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、チタン酸塩、ケイ酸塩、硝酸塩などがあげられる。具体例としては、たとえば硫酸アルミニウム、炭酸バリウム、硝酸銀、硝酸バリウム、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、チタン酸カルシウム、硫酸カドミウム、硫酸コバルト、硫酸銅、炭酸第一鉄、ケイ酸鉄、チタン酸鉄、硝酸カリウム、硫酸カリウム、硝酸リチウム、炭酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、チタン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マンガン、ケイ酸マンガン、炭酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、チタン酸ナトリウム、硫酸ニッケル、炭酸鉛、硫酸鉛、炭酸ストロンチウム、硫酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、炭酸亜鉛、硫酸亜鉛、チタン酸亜鉛などがあげられ、耐プラズマ性や化学的安定性に優れている点から、硫酸バリウム、硫酸アルミニウムが好ましい。
【0077】
金属水酸化物としては、たとえば水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどがあげられる。
【0078】
金属硫化物としては、硫化銀、硫化カルシウム、硫化カドミウム、硫化コバルト、硫化銅、硫化鉄、硫化マンガン、二硫化モリブデン、硫化鉛、硫化スズ、硫化亜鉛、二硫化タングステンなどがあげられる。
【0079】
カーボンブラックは、サーマルブラック、瀝青炭フィラー、ファーネスブラック、チャンネルブラックなどがあげられる。これらの中でも、成形品の耐圧縮永久ひずみ性の点から、瀝青炭フィラーが好ましく、力学物性の点から、瀝青炭フィラーとサーマルブラックの混合物が好ましい。
【0080】
充填材(D1)の添加量は、特定の非パーフルオロエラストマー(A)100質量部に対して、3〜50質量部であることが得られる含フッ素エラストマー表面層の力学物性が良好な点から好ましく、5〜45質量部であることが得られる含フッ素エラストマー表面層の引張り強度、伸びのバランスがさらに良好な点からより好ましい。
【0081】
また、瀝青炭フィラーとサーマルブラックの混合物を用いる場合、その混合重量比(瀝青炭フィラー/サーマルブラック)は、9/95〜80/20であることが好ましく、30/70〜70/30であることがより好ましい。前記範囲外であると、耐圧縮永久ひずみ性の悪化や耐圧縮割れ性の低下が認められることがある。
【0082】
前記硬化性組成物の各成分を混合する方法や順序は特に限定されない。たとえば、つぎの方法が例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0083】
(1−1)特定の非パーフルオロエラストマー(A)とアンモニア発生化合物(C)と硬化剤(B)を同時に混合する方法。
(1−2)(B)成分と(C)成分を予め混合した後、(A)成分と混合する方法。
(1−3)(A)成分の一部と(B)成分と(C)成分を予め混合してマスターバッチとした後、残りの(A)成分と混合する方法。
(1−4)(A)成分の一部と(B)成分を予め混合してマスターバッチとした後、残りの(A)成分および(C)成分と混合する(この場合、残りの(A)成分と(C)成分は予め混合されていてもよい)方法。
【0084】
無機窒化物粒子(F)を配合する場合は、非パーフルオロエラストマー(A)に添加してから公知の方法により混合すればよい。
【0085】
さらに他の添加剤(D)を配合する場合は、上記の各方法においていずれかの段階で他の添加剤(D)を配合すればよい。
【0086】
また、他の添加剤、特に充填剤(D1)を用いる場合、
(1−5)(B)成分と充填剤(D1)、さらに要すれば(A)成分の一部を予め混合してマスターバッチとし、残りの成分を混合する(この場合、残りの成分は予め混合されていてもよい)方法
も採用できる。
【0087】
なお、マスターバッチを調製するために使用する特定の非パーフルオロエラストマー(A)は、アンモニア発生化合物(C)の分散性を良好にする点から、全非パーフルオロエラストマー(A)の1〜50質量%が好ましい。また、マスターバッチ用に使用するエラストマーの量が少ない場合は、マスターバッチの調製に使用するエラストマーは必ずしも非パーフルオロエラストマー(A)でなくてもよく、別のエラストマー、たとえば、混合中にスコーチしないようなエラストマー、たとえばシアノ基またはカルボキシル基またはアルコキシカルボニル基を有していないエラストマーを単独または併用してもよい。別のエラストマーとしては、特定の非パーフルオロエラストマー(A)と相溶性が良好な点から、他のVdF系エラストマー、たとえばVdF系エラストマー(A1)において単量体(a3)を含まないVdF系エラストマー、またはプロピレン以外の単量体とTFEとのエラストマーが好ましい。
【0088】
また、マスターバッチの組成としては、たとえばマスターバッチ用のエラストマー100質量部に対して、硬化剤(B)をマスターバッチに配合する場合は硬化剤(B)を5〜120質量部、アンモニア発生化合物(C)をマスターバッチに配合する場合はアンモニア発生化合物(C)を5〜120質量部配合することが好ましい。
【0089】
上記硬化性組成物の各成分を混合する手段としては、通常のエラストマー用加工機械、たとえば、オープンロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどがあげられ、各成分を混合することにより上記硬化性組成物を調製することができる。この他、密閉式混合機を用いる方法によっても調製することができる。
【0090】
ところで、特定の非パーフルオロエラストマー(A)に固形物であるアンモニア発生化合物(C)の粉末を混練機やオープンロールなどで直接混練して、アンモニア発生化合物(C)を非パーフルオロエラストマー(A)中に分散させる場合、非パーフルオロエラストマー(A)の表面滑り性が高く、アンモニア発生化合物(C)を取り込むことは可能ではあるが、均一に練り込んで分散させることは容易ではない。
【0091】
アンモニア発生化合物(C)の非パーフルオロエラストマー(A)中への分散を均一にするためには、アンモニア発生化合物(C)に親和性を有する溶媒(E)を混合の場に存在させればよい。
【0092】
親和性溶媒(E)としては、水(E1)、またはアンモニア発生化合物(C)に親和性を有する有機溶媒(E2)が好ましい。
【0093】
具体的な有機溶媒(E2)としては、たとえばメタノール、エタノール、グリセリンなどのアルコール溶剤などがあげられる。
【0094】
特には、水(E1)が、安価な点や取扱いや除去が容易である点、環境に優しい点などから好ましい。
【0095】
親和性溶媒(E)を混合の場に存在させる方法としては、特に限定されるものではないが、アンモニア発生化合物(C)の分散性を高める観点から、あらかじめ親和性溶媒(E)とアンモニア発生化合物(C)との混合液として混合の場に添加することが好ましい。
【0096】
上記硬化性組成物の架橋は、たとえば、金型にて加熱圧縮する方法、加熱された金型に圧入する方法、押出機で押出した後架橋する方法などの通常の方法で行うことができる。架橋は通常、一次架橋、最後に二次架橋の順で行い、含フッ素エラストマー表面層を得ることができる。
【0097】
一次架橋条件としては、150〜230℃で5〜120分間加熱を行うことが好ましく、160〜200℃で5〜60分間加熱を行うことがより好ましく、170〜190℃で5〜60分間加熱を行うことが特に好ましい。架橋手段としては、公知の架橋手段を用いればよく、たとえば加熱架橋などをあげることができる。
【0098】
二次架橋条件としては、160〜320℃で2〜24時間加熱を行うことが好ましく、180〜310℃で4〜20時間加熱を行うことがより好ましい。架橋手段としては、公知の架橋手段を用いればよく、たとえばオーブン架橋などをあげることができる。
【0099】
上記硬化性組成物を架橋成形して、含フッ素エラストマー表面層を得ることができる。含フッ素エラストマー表面層は、耐薬品性、機械的強度、耐熱性、圧縮永久歪みなどに優れる。特に、含フッ素エラストマー表面層は、従来の非パーフルオロエラストマーからなる架橋成形物に比べて、高温に放置された後でも圧縮永久歪が小さいという優れた特性を示すので、高温環境下における使用に好適に使用できる。
【0100】
本発明の定着用ロール又は定着用ベルトは、基材と含フッ素エラストマー表面層とからなる。本発明の定着用ロールは、基材の表面に直接含フッ素エラストマー表面層を有するものであってもよいし、基材の表面に中間層を有し、中間層上に含フッ素エラストマー表面層を有するものであってもよい。中間層は、1層でもよいし、2層以上でもよい。具体的には、基材/含フッ素エラストマー表面層の構成でもよいし、基材/中間層/含フッ素エラストマー表面層のような構成や、基材/中間層1/中間層2/含フッ素エラストマー表面層のような構成でもよい。
【0101】
本発明の定着用ロール又は定着用ベルトにおいて、上記中間層としては、基材と含フッ素エラストマー表面層との接着性を高めることができる材料からなる層であることが好ましい。また、必要に応じて、その他の作用を有する中間層を更に形成してもよい。
【0102】
本発明の定着用ロールにおいて、上記基材は、管状の芯金であることが好ましい。芯金は、通常、鉄、アルミ等からなるものであるが、他の金属を用いてもよい。
【0103】
本発明の定着用ロールにおいて含フッ素エラストマー表面層の厚みは、その構成によって適宜選択すればよいが、基材/含フッ素エラストマー表面層の構成である場合には、0.1〜0.5mmであることが好ましく、0.2〜0.3mmであることがより好ましい。
【0104】
図1は、本発明の定着用ロールの一例を示す断面模式図である。定着用ロール1は、ヒーターランプ10を内側に備える管状の芯金11の外周に、シリコーンゴム等からなる中間層12を有しており、該中間層12上に含フッ素エラストマー表面層13を備えている。トナーが定着される用紙は、定着用ロール1と加圧ベルト20の間を通ることによって、トナーが用紙に定着する。
【0105】
本発明の定着用ベルトにおいて、上記基材は、定着時の加熱に耐え得るものであれば特に限定されないが、例えば、耐熱性樹脂からなることが好ましい。上記耐熱性樹脂としては、一般に耐熱性樹脂と称されているものであれば特に制約はないが、その中でもポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、又は、ポリアミドイミド樹脂が好ましく用いられる。
【0106】
本発明の定着用ベルトにおいて含フッ素エラストマー表面層の厚みは、その構成によって適宜選択すればよいが、基材/含フッ素エラストマー表面層の構成である場合には、0.1〜5.0mmであることが好ましく、0.2〜3.0mmであることがより好ましい。
【0107】
次に、本発明の定着用ロール又は定着用ベルトが有する含フッ素エラストマー表面層の形成方法について説明する。
【0108】
ここで、本発明の定着用ロールを得るための具体的方法について簡単に説明するが、本発明の定着用ロールを得る方法は、下記方法に限られるものではない。
【0109】
例えば、上述した混合方法により硬化性組成物を調製した後、管状の芯金上に硬化性組成物を押出成形して、未架橋の含フッ素エラストマー表面層を形成する。
その後、加熱等により含フッ素エラストマーを一次架橋させた後、続いて二次架橋を行い、芯金上に含フッ素エラストマー表面層が形成された定着用ロールを得る。
上記含フッ素エラストマーの一次架橋は押出成形と同時に行ってもよい。
【0110】
また、上述した混合方法により硬化性組成物を調製した後、押出成形法により上記硬化性組成物をチューブ状に成形する。次に、含フッ素エラストマーの一次架橋及び二次架橋を行い、チューブ状の含フッ素エラストマー成形体を得る。
その後、チューブ状の含フッ素エラストマー成形体内に芯金を通し、ついで加熱することで、芯金表面にチューブ状の含フッ素エラストマー成形体を接着させ、芯金上に含フッ素エラストマー表面層を形成する。
なお、上記二次架橋は、一次架橋後に行うものであれば、チューブ状の含フッ素エラストマー成形体に芯金を通した後に行ってもよい。
【0111】
本発明の定着用ロールが中間層を有する場合、共押出成形法を用いることもできる。
【0112】
次に、本発明の定着用ベルトを得るための具体的方法について簡単に説明するが、本発明の定着用ベルトを得る方法は、下記方法に限られるものではない。
【0113】
まず、定着用ベルトの内径に合せたアルミ芯金等の管状体上に、ポリイミド等からなる基材層を公知の方法により形成し、必要に応じて、シリコーンゴム等からなる中間層(弾性層)を基材層上に形成する。
また、上述した混合方法により硬化性組成物を調製した後、押出成形法によりチューブ状に成形し、加熱等により一次架橋を行い、架橋成形体を得る。その後、二次架橋を行うことによって、チューブ状の含フッ素エラストマー成形体を得る。
その後、チューブ状の含フッ素エラストマー成形体を、基材層又は中間層上に設け、加熱等により接着し、基材層又は中間層上に含フッ素エラストマー表面層を形成する。
最後に、上記の管状体から基材層、必要に応じて形成した中間層、及び、含フッ素エラストマー表面層からなる構造体を引き抜くことで、定着用ベルトが得られる。
【0114】
本発明の定着用ロール又は定着用ベルトを得る方法においては、必要に応じて、基材、中間層又は含フッ素エラストマー表面層に表面処理を行ってもよい。この表面処理としては、接着を可能とする処理方法であれば、その種類は特に制限されるものではなく、例えばプラズマ放電処理やコロナ放電処理等の放電処理、湿式法の金属ナトリウム/ナフタレン液処理等が挙げられる。また、表面処理としてプライマー処理も好適である。プライマー処理は常法に準じて行うことができる。プライマー処理を施す場合、表面処理されていないチューブの内表面をプライマー処理することもできるが、プラズマ放電処理、コロナ放電処理、金属ナトリウム/ナフタレン液処理等を予め施したチューブの内表面を更にプライマー処理すると、より効果的である。
【実施例】
【0115】
つぎに本発明を実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるもの
ではない。
【0116】
本発明における各種特性は以下の方法で測定した。
【0117】
<ムーニー粘度(ML1+10(121℃))>
ASTM−D1646およびJIS K6300に準じて測定する。
【0118】
<耐磨耗性>
テーパー磨耗試験機を用い、磨耗輪にコピー用紙(コクヨ社製KB用紙)を貼り、ロール表面に荷重200gで押し当てながら磨耗輪を60rpmの速度で回転させた。1万回転させた後のロール表面を光学顕微鏡で100倍に拡大して、表面の磨耗痕の有無を観察した。
【0119】
製造例1(CN基含有共重合体(A1−1)の合成)
内容積6リットルのステンレススチール製オートクレーブに、純水3.0リットルおよび乳化剤として、C11COONH 6.0gおよびCH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COONH 0.15g、リン酸水素二ナトリウム3.5g、水酸化ナトリウム0.6gを仕込み、系内を窒素ガスで充分に置換し脱気したのち、600rpmで撹拌しながら、80℃に昇温し、VdF、TFE、HFPの混合ガス(VdF/TFE/HFP=19/11/70モル%比)を、内圧が1.59MPa・Gになるように仕込んだ。ついで、1.8g/2mlの過硫酸アンモニウム(APS)水溶液、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCN(CNVE) 1.8gを窒素圧で圧入して反応を開始した。
【0120】
重合の進行により内圧が、1.48MPa・Gまで降下した時点で、マロン酸ジエチル1.0gを窒素圧にて圧入した。ついで圧力が1.58MPa・Gになるように、VdF、TFE、HFPの混合ガス(VdF/TFE/HFP=50/20/30モル%比)を圧入した。以後、反応の進行にともないVdF、TFE、HFPの混合ガスを圧入し、1.48〜1.58MPa・Gの間で、昇圧、降圧を繰り返すと共に、CNVEを30g、水酸化ナトリウムを1.2g窒素圧で圧入した。
【0121】
重合反応の開始から10時間後、VdF、TFE、HFPの合計仕込み量が1000gになった時点で、オートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出して固形分濃度25.4質量%の水性分散体4081gを得た。
【0122】
この水性分散体のうち2000gを、塩化マグネシウム水溶液2000g中に、撹拌しながらゆっくりと添加した。添加後1分間撹拌した後、凝析物を濾別し、この後水洗、濾別の操作をさらに3回繰り返し、70℃で24時間、乾燥させ、500gのポリマーを得た。
【0123】
分析の結果、この重合体のモノマー単位組成は、VdF/TFE/HFP/CNVE=50.6/18.8/29.6/1.0モル%であった。また赤外分光分析により測定したところ、ニトリル基の特性吸収が2169cm−1付近に認められた。また、この共重合体のムーニー粘度(ML1+10(121℃))は、85であった。
【0124】
製造例2(CN基含有共重合体(A1−2)の合成)
内容積6リットルのステンレススチール製オートクレーブに、純水3.0リットルおよび乳化剤として、C11COONH 6.0gおよびCH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COONH 0.15g、リン酸水素二ナトリウム3.5g、水酸化ナトリウム0.6gを仕込み、系内を窒素ガスで充分に置換し脱気したのち、600rpmで撹拌しながら、80℃に昇温し、VdF、HFPの混合ガス(VdF/HFP=50/50モル%比)を、内圧が1.59MPa・Gになるように仕込んだ。ついで、1.8g/2mlの過硫酸アンモニウム(APS)水溶液、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCN(CNVE)を1.8g窒素圧で圧入して反応を開始した。
【0125】
重合の進行により内圧が、1.48MPa・Gまで降下した時点で、マロン酸ジエチル1.0gを窒素圧にて圧入した。ついで圧力が1.58MPa・Gになるように、VdF、HFPの混合ガス(VdF/HFP=78/22モル%比)を圧入した。以後、反応の進行にともないVdF、HFPの混合ガスを圧入し、1.48〜1.58MPa・Gの間で、昇圧、降圧を繰り返すと共に、CNVEを30g、水酸化ナトリウムを1.2g窒素圧で圧入した。
【0126】
重合反応の開始から10時間後、VdF、HFPの合計仕込み量が1000gになった時点で、オートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出して固形分濃度25.3質量%の水性分散体4139gを得た。
【0127】
この水性分散体のうち2000gを、塩化マグネシウム水溶液2000g中に、撹拌しながらゆっくりと添加した。添加後1分間撹拌した後、凝析物を濾別し、この後水洗、濾別の操作をさらに3回繰り返し、70℃で24時間、乾燥させ、500gのポリマーを得た。
【0128】
分析の結果、この重合体のモノマー単位組成は、VdF/HFP/CNVE=77.8/21.2/1.0モル%であった。また赤外分光分析により測定したところ、ニトリル基の特性吸収が2169cm−1付近に認められた。また、この共重合体のムーニー粘度(ML1+10(121℃))は、88であった。
【0129】
実施例1
製造例1で得られたCN基含有共重合体(A1−1)100質量部に対して、尿素(キシダ化学(株)製)を0.6質量部、さらにカーボンブラック(CB)(Cancarb社製のThermax N990)を35質量部配合し、オープンロールにて混練して硬化性組成物を調製した。
【0130】
その後、二軸押出機を用いて、表面をサンドブラスト処理したアルミニウム製の芯金(外径50mm)上に、厚みが0.5mmになるように架橋性組成物を被覆して未架橋の含フッ素エラストマー表面層を有するロールを得た。得られたロールに対して、加熱架橋により、180℃で30分間加熱することにより含フッ素エラストマーを一次架橋させ、更に、200℃で8時間、290℃で8時間に維持された加熱炉中に入れ、二次架橋した含フッ素エラストマー表面層を有する定着用ロールを得た。
【0131】
実施例2
製造例1で得られたCN基含有共重合体(A1−1)100質量部に対して、窒化珪素を0.5質量部、さらにカーボンブラック(CB)(Cancarb社製のThermax N990)を20質量部配合し、オープンロールにて混練して硬化性組成物を調製した。
【0132】
その後、二軸押出機を用いて、表面をサンドブラスト処理したアルミニウム製の芯金(外径50mm)上に、厚みが0.5mmになるように架橋性組成物を被覆して未架橋の含フッ素エラストマー表面層を有するロールを得た。得られたロールに対して、加熱架橋により、180℃で30分間加熱することにより含フッ素エラストマーを一次架橋させ、更に、200℃で8時間、290℃で8時間に維持された加熱炉中に入れ、二次架橋した含フッ素エラストマー表面層を有する定着用ロールを得た。
【0133】
実施例3
製造例2で得られたCN基含有共重合体(A1−2)100質量部に対して、尿素(キシダ化学(株)製)を0.6質量部、さらにカーボンブラック(CB)(Cancarb社製のThermax N990)を35質量部配合し、オープンロールにて混練して硬化性組成物を調製した。
【0134】
その後、二軸押出機を用いて、表面をサンドブラスト処理したアルミニウム製の芯金(外径50mm)上に、厚みが0.5mmになるように架橋性組成物を被覆して未架橋の含フッ素エラストマー表面層を有するロールを得た。得られたロールに対して、加熱架橋により、180℃で30分間加熱することにより含フッ素エラストマーを一次架橋させ、更に、200℃で8時間、290℃で8時間に維持された加熱炉中に入れ、二次架橋した含フッ素エラストマー表面層を有する定着用ロールを得た。
【0135】
実施例4
製造例2で得られたCN基含有共重合体(A1−2)100質量部に対して、窒化珪素を0.5質量部、さらにカーボンブラック(CB)(Cancarb社製のThermax N990)を20質量部配合し、オープンロールにて混練して硬化性組成物を調製した。
【0136】
その後、二軸押出機を用いて、表面をサンドブラスト処理したアルミニウム製の芯金(外径50mm)上に、厚みが0.5mmになるように架橋性組成物を被覆して未架橋の含フッ素エラストマー表面層を有するロールを得た。得られたロールに対して、加熱架橋により、180℃で30分間加熱することにより含フッ素エラストマーを一次架橋させ、更に、200℃で8時間、290℃で8時間に維持された加熱炉中に入れ、二次架橋した含フッ素エラストマー表面層を有する定着用ロールを得た。
【0137】
比較例1
VdF/TFE/HFP(=50/20/30モル%比)共重合体(B1−1)100質量部に対して、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(bis−AF)を2.1質量部、カーボンブラック(MT−C、カンカーブ社製)を20質量部、水酸化カルシウム(Caldic#2000、協和化学工業(株)製)を6質量部、酸化マグネシウム(MA−150、協和化学工業(株)製)を3質量部配合し、オープンロールにて混練して硬化性組成物を調製した。
【0138】
その後、二軸押出機を用いて、表面をサンドブラスト処理したアルミニウム製の芯金(外径50mm)上に、厚みが0.5mmになるように架橋性組成物を被覆して未架橋の含フッ素エラストマー表面層を有するロールを得た。得られたロールに対して、加熱架橋により、170℃で10分間加熱することにより含フッ素エラストマーを一次架橋させ、更に、230℃で2に維持された加熱炉中に24時間入れ、二次架橋した含フッ素エラストマー表面層を有する定着用ロールを得た。
【0139】
比較例2
VdF/HFP(=78/22モル%比)共重合体(B1−2)100質量部に対して、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(bis−AF)を2.1質量部、カーボンブラック(MT−C、カンカーブ社製)を20質量部、水酸化カルシウム(Caldic#2000、協和化学工業(株)製)を6質量部、酸化マグネシウム(MA−150、協和化学工業(株)製)を3質量部配合し、オープンロールにて混練して硬化性組成物を調製した。
【0140】
その後、二軸押出機を用いて、表面をサンドブラスト処理したアルミニウム製の芯金(外径50mm)上に、厚みが0.5mmになるように架橋性組成物を被覆して未架橋の含フッ素エラストマー表面層を有するロールを得た。得られたロールに対して、加熱架橋により、170℃で10分間加熱することにより含フッ素エラストマーを一次架橋させ、更に、230℃に維持された加熱炉中に24時間入れ、二次架橋したフ含フッ素エラストマー表面層を有する定着用ロールを得た。
【0141】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明の定着用ロール又は定着用ベルトは、耐摩耗性、非粘着性及び柔軟性に優れるため、種々の定着装置に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0143】
1:定着用ロール
2、3、23:外部加熱装置
10:ヒーターランプ
11:芯金
12:中間層
13:含フッ素エラストマー表面層
20:加圧ベルト
22、24:ベルト搬送用ローラ
26:加圧パッド
41:温度センサー
50a、50b:剥離爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と硬化性組成物を架橋することにより得られる含フッ素エラストマー表面層とを備える定着用ロールであって、
前記硬化性組成物は、フッ化ビニリデン系エラストマー(A1)及びテトラフルオロエチレン−プロピレン系エラストマー(A2)からなる群から選択される少なくとも1種の非パーフルオロエラストマー(A)と、
硬化剤(B)、40〜330℃でアンモニアを発生させる化合物(C)、及び、無機窒化物粒子(F)からなる群から選択される少なくとも1種と、
を含み、
前記フッ化ビニリデン系エラストマー(A1)は、フッ化ビニリデン(a1)と、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)よりなる群から選ばれる少なくとも1種のパーフルオロオレフィン(a2)と、シアノ基、カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基を含有する単量体(a3)との共重合体であって、フッ化ビニリデンの共重合割合は20モル%を超える共重合体であり、
前記テトラフルオロエチレン−プロピレン系エラストマー(A2)は、テトラフルオロエチレンと、プロピレンと、シアノ基、カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基を含有する単量体との共重合体であり、テトラフルオロエチレン及びプロピレンの合計100モル%に対して、テトラフルオロエチレン40〜70モル%、プロピレン30〜60モル%である
ことを特徴とする定着用ロール。
【請求項2】
硬化剤(B)が、式(1):
【化1】

(式中、R1は同じかまたは異なり、−NH2、−NHR2、−OHまたは−SHであり、R2はフッ素原子または1価の有機基である)で示される架橋性反応基を少なくとも2個含む化合物、式(2):
【化2】

で示される化合物、式(3):
【化3】

(式中、Rf1は炭素数1〜10のパーフルオロアルキレン基)で示される化合物、および式(4):
【化4】

(式中、nは1〜10の整数)で示される化合物
よりなる群から選ばれる少なくとも1種の硬化剤である請求項1記載の定着用ロール。
【請求項3】
アンモニア発生化合物(C)が、尿素またはアンモニウム塩である請求項1または2記載の定着用ロール。
【請求項4】
基材と硬化性組成物を架橋することにより得られる含フッ素エラストマー表面層とを備える定着用ベルトであって、
前記硬化性組成物は、フッ化ビニリデン系エラストマー(A1)及びテトラフルオロエチレン−プロピレン系エラストマー(A2)からなる群から選択される少なくとも1種の非パーフルオロエラストマー(A)と、
硬化剤(B)、40〜330℃でアンモニアを発生させる化合物(C)、及び、無機窒化物粒子(F)からなる群から選択される少なくとも1種と、
を含み、
前記フッ化ビニリデン系エラストマー(A1)は、フッ化ビニリデン(a1)と、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)よりなる群から選ばれる少なくとも1種のパーフルオロオレフィン(a2)と、シアノ基、カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基を含有する単量体(a3)との共重合体であって、フッ化ビニリデンの共重合割合は20モル%を超える共重合体であり、
前記テトラフルオロエチレン−プロピレン系エラストマー(A2)は、テトラフルオロエチレンとプロピレンとシアノ基、カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基を含有する単量体との共重合体であり、テトラフルオロエチレン及びプロピレンの合計100モル%に対して、テトラフルオロエチレン40〜70モル%、プロピレン30〜60モル%である
ことを特徴とする定着用ベルト。

【図1】
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【公開番号】特開2013−68748(P2013−68748A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206529(P2011−206529)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】