説明

定着装置、及び、画像形成装置

【課題】装置が小型化・低コストされて、立ち上がり時間が短く、非通紙領域の過昇温が生じにくい、定着装置、及び、画像形成装置を提供する。
【解決手段】定着補助ローラ22と張架ローラ23とによって張架される定着ベルト21と、定着ベルト21に圧接してニップ部を形成する加圧回転体31と、定着ベルト21の内周面に対向して定着ベルト21を加熱するヒータ25と、が設けられている。そして、張架ローラ23は、その内周面に幅方向にわたって接触するヒートパイプ24が内設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、又は、それらの複合機等の画像形成装置と、そこに設置される定着装置と、に関し、特に、加熱手段によって定着ベルトを直接的に加熱する定着装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、プリンタ等の画像形成装置において、複数のローラ部材に張架された定着ベルトを定着部材として用いるベルト方式の定着装置を設置する技術が知られている(例えば、特許文献1、2参照。)。
このようなベルト方式の定着装置は、厚さが薄くて低熱容量の定着ベルトを用いているために、定着ベルトが定着可能な所定温度に達するまでの立ち上がり時間を短くすることができる反面、小サイズ紙を連続通紙したとき等に定着ベルトにおける非通紙領域の熱が通紙領域に伝導しにくくて非通紙領域が過昇温してしまう不具合が生じやすいことが知られている。そして、このような不具合を解消するために、小サイズ紙の通紙領域と非通紙領域とをそれぞれ独立して加熱するヒータ、励磁コイル等の加熱手段を複数設置する技術も広く知られている。
【0003】
一方、特許文献1、3等には、加熱手段として励磁コイルを用いた電磁誘導加熱方式の定着装置において、定着ローラや加熱ローラにヒートパイプを設置する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の定着装置は、装置の小型化・低コスト化と、立ち上がり時間の短縮化と、非通紙領域の過昇温の軽減化と、のすべてを充分に達成することが難しかった。
特に、電磁誘導加熱方式の定着装置は、加熱手段となる励磁コイル・ユニットによって、装置が大型化・高コスト化してしまう問題があった。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、装置が小型化・低コストされて、立ち上がり時間が短く、非通紙領域の過昇温が生じにくい、定着装置、及び、画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の請求項1記載の発明にかかる定着装置は、少なくとも定着補助ローラと張架ローラとの2つのローラ部材によって張架されるとともに、所定方向に走行してトナー像を加熱して溶融する定着ベルトと、前記定着ベルトに圧接して記録媒体が搬送されるニップ部を形成する加圧回転体と、前記定着ベルトの内周面に対向して前記定着ベルトを加熱するヒータと、を備え、前記張架ローラは、その内周面に幅方向にわたって接触するヒートパイプが内設されたものである。
【0007】
また、請求項2記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項1に記載の発明において、前記ヒータを、幅方向の一端側から他端側にわたって前記定着ベルトの内周面に非接触で対向するように配設されたハロゲンヒータとしたものである。
【0008】
また、請求項3記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記張架ローラと前記ヒータとの間に、前記ヒータから射出された光を前記定着ベルトの内周面に向けて反射させる反射部材を設けたものである。
【0009】
また、請求項4記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項1〜請求項3のいずれかに記載の発明において、前記定着補助ローラと前記ヒータとの間に、前記ヒータから射出された光を前記定着ベルトの内周面に向けて反射させる反射部材を設けたものである。
【0010】
また、請求項5記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項1〜請求項4のいずれかに記載の発明において、前記ヒートパイプは、前記張架ローラの内周面における幅方向の全範囲に対して両端部にそれぞれ隙間をあけて接触するように配設されたものである。
【0011】
また、請求項6記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項1〜請求項5のいずれかに記載の発明において、前記定着補助ローラは、前記定着ベルトを介して前記加圧回転体に圧接するように配設されたものである。
【0012】
また、この発明の請求項7記載の発明にかかる画像形成装置は、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の定着装置を備えたものである。
【0013】
なお、本願において、「幅方向」とは、記録媒体の通紙方向に対して直交する方向であって、像担持体における主走査方向に対して平行な方向であるものと定義する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、定着ベルトの内周面に対向するようにヒータを設置するとともに、定着ベルトを張架する複数のローラ部材のうちの張架ローラにヒートパイプを内設しているため、装置が小型化・低コストされて、立ち上がり時間が短く、非通紙領域の過昇温が生じにくい、定着装置、及び、画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施の形態における画像形成装置を示す全体構成図である。
【図2】定着装置を示す構成図である。
【図3】張架ローラを幅方向に示す断面図である。
【図4】複数のヒータが設置された定着装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の形態.
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0017】
まず、図1にて、画像形成装置全体の構成・動作について説明する。
図1において、1は画像形成装置としてのタンデム型カラー複写機の装置本体、2は入力画像情報に基づいたレーザ光を発する書込み部、3は原稿Dを原稿読込部4に搬送する原稿搬送部、4は原稿Dの画像情報を読み込む原稿読込部、7は転写紙等の記録媒体Pが収容される給紙部、9は記録媒体Pの搬送タイミングを調整するレジストローラ、11Y、11M、11C、11BKは各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のトナー像が形成される感光体ドラム、12は各感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上を帯電する帯電部、13は各感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上に形成される静電潜像を現像する現像部、14は各感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上に形成されたトナー像を記録媒体P上に重ねて転写する転写バイアスローラ(1次転写バイアスローラ)、15は各感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上の未転写トナーを回収するクリーニング部、を示す。
【0018】
また、16は中間転写ベルト17を清掃する中間転写ベルトクリーニング部、17は複数色のトナー像が重ねて転写される中間転写ベルト、18は中間転写ベルト17上のカラートナー像を記録媒体P上に転写するための2次転写バイアスローラ、20は記録媒体P上のトナー像(未定着画像)を定着するベルト方式の定着装置、を示す。
【0019】
以下、画像形成装置における、通常のカラー画像形成時の動作について説明する。
まず、原稿Dは、原稿搬送部3の搬送ローラによって、原稿台から図中の矢印方向に搬送されて、原稿読込部4のコンタクトガラス5上に載置される。そして、原稿読込部4で、コンタクトガラス5上に載置された原稿Dの画像情報が光学的に読み取られる。
【0020】
詳しくは、原稿読込部4は、コンタクトガラス5上の原稿Dの画像に対して、照明ランプから発した光を照射しながら走査させる。そして、原稿Dにて反射した光を、ミラー群及びレンズを介して、カラーセンサに結像する。原稿Dのカラー画像情報は、カラーセンサにてRGB(レッド、グリーン、ブルー)の色分解光ごとに読み取られた後に、電気的な画像信号に変換される。さらに、RGBの色分解画像信号をもとにして画像処理部で色変換処理、色補正処理、空間周波数補正処理等の処理をおこない、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのカラー画像情報を得る。
【0021】
そして、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像情報は、書込み部2に送信される。そして、書込み部2からは、各色の画像情報に基づいたレーザ光(露光光)が、それぞれ、対応する感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上に向けて発せられる。
【0022】
一方、4つの感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKは、それぞれ、図1の時計方向に回転している。そして、まず、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面は、帯電部12との対向部で、一様に帯電される(帯電工程である。)。こうして、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上には、帯電電位が形成される。その後、帯電された感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK表面は、それぞれのレーザ光の照射位置に達する。
書込み部2において、4つの光源から画像信号に対応したレーザ光が各色に対応してそれぞれ射出される。各レーザ光は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色成分ごとに別の光路を通過することになる(露光工程である。)。
【0023】
イエロー成分に対応したレーザ光は、紙面左側から1番目の感光体ドラム11Y表面に照射される。このとき、イエロー成分のレーザ光は、高速回転するポリゴンミラーにより、感光体ドラム11Yの回転軸方向(主走査方向)に走査される。こうして、帯電部12にて帯電された後の感光体ドラム11Y上には、イエロー成分に対応した静電潜像が形成される。
【0024】
同様に、マゼンタ成分に対応したレーザ光は、紙面左から2番目の感光体ドラム11M表面に照射されて、マゼンタ成分に対応した静電潜像が形成される。シアン成分のレーザ光は、紙面左から3番目の感光体ドラム11C表面に照射されて、シアン成分の静電潜像が形成される。ブラック成分のレーザ光は、紙面左から4番目の感光体ドラム11BK表面に照射されて、ブラック成分の静電潜像が形成される。
【0025】
その後、各色の静電潜像が形成された感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK表面は、それぞれ、現像部13との対向位置に達する。そして、各現像部13から感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上に各色のトナーが供給されて、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上の潜像が現像される(現像工程である。)。
その後、現像工程後の感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK表面は、それぞれ、中間転写ベルト17との対向部に達する。ここで、それぞれの対向部には、中間転写ベルト17の内周面に当接するように転写バイアスローラ14が設置されている。そして、転写バイアスローラ14の位置で、中間転写ベルト17上に、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上に形成された各色のトナー像が、順次重ねて転写される(1次転写工程である。)。
【0026】
そして、転写工程後の感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK表面は、それぞれ、クリーニング部15との対向位置に達する。そして、クリーニング部15で、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上に残存する未転写トナーが回収される(クリーニング工程である。)。
その後、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK表面は、不図示の除電部を通過して、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKにおける一連の作像プロセスが終了する。
【0027】
他方、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上の各色のトナーが重ねて転写(担持)された中間転写ベルト17は、図中の時計方向に走行して、2次転写バイアスローラ18との対向位置に達する。そして、2次転写バイアスローラ18との対向位置で、記録媒体P上に中間転写ベルト17上に担持されたカラーのトナー像が転写される(2次転写工程である。)。
その後、中間転写ベルト17表面は、中間転写ベルトクリーニング部16の位置に達する。そして、中間転写ベルト17上に付着した未転写トナーが中間転写ベルトクリーニング部16に回収されて、中間転写ベルト17における一連の転写プロセスが終了する。
【0028】
ここで、中間転写ベルト17と2次転写バイアスローラ18との間(2次転写ニップである。)に搬送される記録媒体Pは、給紙部7からレジストローラ9等を経由して搬送されたものである。
詳しくは、記録媒体Pを収納する給紙部7から、給紙ローラ8により給送された記録媒体Pが、搬送ガイドを通過した後に、レジストローラ9に導かれる。レジストローラ9に達した記録媒体Pは、タイミングを合わせて、2次転写ニップに向けて搬送される。
【0029】
そして、フルカラー画像が転写された記録媒体Pは、搬送ベルトによって定着装置20に導かれる。定着装置20では、定着ベルトと加圧ローラとのニップ部にて、カラー画像(トナー)が記録媒体P上に定着される。
そして、定着工程後の記録媒体Pは、排紙ローラによって、装置本体1外に出力画像として排出されて、一連の画像形成プロセスが完了する。
なお、本実施の形態では、記録媒体Pの搬送速度(プロセス線速)が100〜300mm/秒程度に設定されている。
【0030】
次に、図2及び図3にて、画像形成装置本体1に設置される定着装置20の構成・動作について詳述する。
図2は、定着装置20を示す構成図である。図3は、張架ローラ23を幅方向に示す断面図である。
図2に示すように、定着装置20は、定着補助ローラ22(第1のローラ部材)、張架ローラ23(第2のローラ部材)、定着ベルト21(定着部材)、ヒータ25(加熱手段)、加圧回転体としての加圧ローラ31、温度センサ40、45、ガイド板38、分離板35、分離爪39、等で構成される。
【0031】
ここで、定着部材としての定着ベルト21は、ステンレス、ニッケル、アルミニウム、銅等の金属材料やポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン等の樹脂材料からなる層厚100μm以下のベース層(本実施の形態では、層厚20〜60μmのステンレスを用いている。)上に、弾性層、離型層が順次積層された多層構造の無端状ベルトである。定着ベルト21の弾性層は、層厚が100〜300μm程度であって、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、フッ素ゴム等の弾性材料で形成されている。定着ベルト21の離型層は、層厚が5〜40μm程度であって、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(4フッ化エチレンバーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂)、FEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、等で形成されている。定着ベルト21の表層に離型層を設けることにより、トナーT(トナー像)に対する離型性(剥離性)が担保されることになる。定着ベルト21は、2つのローラ部材(定着補助ローラ22と張架ローラ23とである。)に張架・支持されて、図2中の矢印方向に走行する。定着部材として熱容量の低い定着ベルト21を用いることで、装置の昇温特性が向上して、立ち上がり時間の短縮化が達成される。なお、本実施の形態では、定着ベルト21の周長が、30〜60mm程度に設定されている。
【0032】
定着補助ローラ22は、SUS304等からなる芯金22a上に、発泡シリコーンゴム、シリコーンゴム等の弾性材料からなる弾性層22b(アスカーC硬度が25〜50程度のものである。)が形成された外径30mm程度のローラ部材であって、加圧回転体としての加圧ローラ31に定着ベルト21を介して圧接してニップ部を形成する。特に、弾性層22bを発泡材料で形成する場合には、ニップ部におけるニップ幅(ニップ量)を比較的大きく設定できるとともに、定着ベルト21の熱が定着補助ローラ22に移行しにくくなる。定着補助ローラ22は、図2中の時計方向に回転する。
【0033】
図2及び図3を参照して、張架ローラ23は、アルミニウム等の熱伝導率の高い金属材料からなる芯金23a上に、ゴム材料からなる弾性層23bが形成されたローラ部材である。ここで、張架ローラ23は、その内周面に幅方向にわたって接触するヒートパイプ24が内設されているが、これについては後で図3を用いて詳しく説明する。
【0034】
図2を参照して、ヒータ25は、定着ベルト21の内周面に非接触で対向するように配設された1つのハロゲンヒータであって、定着ベルト21を内周面側から直接的に加熱する。また、ヒータ25は、幅方向中央部を加熱するものと幅方向両端部を加熱するものとの2本が設置されているのではなく、幅方向の一端側から他端側にわたって定着ベルト21の内周面に非接触で対向する1本が設置されている。
このように、定着ベルト21を加熱するヒータ25(加熱手段)として、安価なハロゲンヒータを1つだけ設置することで定着装置20の低コスト化・小型化が達成される。特に、ヒータ25は、定着ベルト21の外周面に対向するように配設されているのではなく、定着ベルト21の内周面に対向するように定着ベルト21の内部に収納(配設)されているために、装置の小型化が達成される。また、定着ベルト21は、定着補助ローラや加熱ローラ等に内設されたヒータによって間接的に加熱されるのではなく、ヒータ25によって直接的に加熱されるために、定着ベルト21の加熱効率を向上させることができる。
【0035】
ここで、ヒータ25は、その両端部が定着装置20の側板(不図示である。)に固定されている。そして、装置本体1の電源部(交流電源)により出力制御されたヒータ25からの輻射熱によって定着ベルト21が内周面側から加熱されて、加熱された定着ベルト21の表面から記録媒体P上のトナー像Tに熱が加えられる。ヒータ25の出力制御は、定着ベルト21表面に非接触で対向する温度センサ40(サーモパイル)によるベルト表面温度の検知結果に基いておこなわれる。詳しくは、温度センサ40の検知結果に基づいて定められる通電時間だけ、ヒータ25に交流電圧が印加される。このようなヒータ25の出力制御によって、定着ベルト21の温度(定着温度)を所望の温度(目標制御温度)に調整制御することができる。
【0036】
また、図示は省略するが、張架ローラ23は定着装置20の側板に対して図2の左右方向に揺動可能に保持されて、張架ローラ23がテンションプレートによって図2の右側に付勢されている。このような構成により、張架ローラ23は、定着ベルト21に所定のテンションを与えるローラ部材(テンションローラ)として機能することになる。なお、本実施の形態では張架ローラ23をテンションローラとして用いたが、張架ローラ23を定着装置の側板に回転自在に固定して、定着ベルト21にテンションを与えるローラ部材(テンションローラ)を別に設置することもできる。
【0037】
また、加圧回転体としての加圧ローラ31は、外径が30mm程度であって、主として、芯金32と、芯金32の外周面に接着層を介して形成された弾性層33と、からなる。加圧ローラ31の弾性層33は、フッ素ゴム、シリコーンゴム等のソリッドゴム材料で形成されている。なお、弾性層33の表層にPFA等からなる薄肉の離型層を設けることもできる。
そして、加圧ローラ31は、不図示の加圧機構によって定着ベルト21を介して定着補助ローラ22に圧接する。こうして、加圧ローラ31と定着ベルト21との間に、所望のニップ部が形成される。
【0038】
図2を参照して、定着ベルト21と加圧ローラ31との当接部(ニップ部である。)の入口側には、記録媒体Pの搬送を案内するガイド板38が配設されている。ガイド板35は、定着装置20の側板に固設されている。
また、定着ベルト21の外周面に対向する位置であって、ニップ部の出口側近傍には、分離板35が配設されている。分離板35は、定着工程後の記録媒体Pが定着ベルト21の回転に沿って定着ベルト12に巻き付いてしまう不具合を抑止する。
また、加圧ローラ31の外周面に対向する位置であって、ニップ部の出口側近傍には、分離爪39が配設されている。分離板39は、定着工程後の記録媒体Pが加圧ローラ31の回転に沿って加圧ローラ31に巻き付いてしまう不具合を抑止する。
【0039】
上述のように構成された定着装置20は、通紙時に次のように動作する。
装置本体1の電源スイッチ(主電源)が投入されると、交流電源からヒータ25に交流電圧が印加(給電)されるとともに、不図示の駆動モータに連結された加圧ローラ31の図2中の矢印方向の回転駆動が開始されて、その他の部材(定着ベルト21、定着補助ローラ22、張架ローラ23)も接触する相手部材との摩擦抵抗によって図2中の矢印方向にそれぞれ従動回転する。
その後、給紙部7から記録媒体Pが給送されて、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上の各色のトナーが記録媒体P上に未定着画像として担持される。未定着画像T(トナー像)が担持された記録媒体Pは、図2の矢印Y10方向に搬送されて、圧接状態にある定着ベルト21及び加圧ローラ31のニップ部に送入される。そして、定着ベルト21による加熱と、定着ベルト21(定着補助ローラ22)及び加圧ローラ31の押圧力とによって、記録媒体Pの表面にトナー像Tが定着される。その後、回転する定着ベルト21及び加圧ローラ31によってそのニップ部から送出された記録媒体Pは、矢印Y11方向に搬送される。
【0040】
以下、本実施の形態における定着装置20の、特徴的な構成・動作について、さらに詳しく説明する。
図3を参照して、本実施の形態において、張架ローラ23は、その内部が中空構造になっていて、その内周面に幅方向にわたって接触するようにヒートパイプ24が内設されている。また、本実施の形態において、張架ローラ23は、ヒートパイプ24が内設された円筒状の芯金23a、芯金23a上に積層された弾性層23b、芯金23aの両端にそれぞれ圧入された軸部23c、等で構成されている。また、ヒートパイプ24は、熱伝導性が高い銅等の金属材料からなる略円筒状の容器部24aの内部に、揮発性の液体24b(作動液)が減圧封入されている。
【0041】
そして、このように構成された張架ローラ23を設置することで、小サイズ紙(最大通紙領域に対して幅方向サイズが小さな記録媒体Pである。)が連続的に通紙された場合等において、記録媒体Pによって熱を奪われることなく過昇温しやすい非通紙領域の熱が、記録媒体Pによって熱を奪われやすい通紙領域に移動しやすくなる。
詳しくは、張架ローラ23において、幅方向(図3の左右方向である。)の両端部が中央部に比べて高温になると、それに合わせてヒートパイプ24の両端部の作動液24bが張架ローラ23から熱を吸収して沸騰する。そして、沸騰した作動液24bの蒸気が圧力差によって低温部(中央部)に流れて、ここで作動液の凝縮が起こり熱が放出される。そして、凝集した作動液24bは、容器部24aの内周面に形成された微小な溝(不図示であるが、幅方向に沿って延在するように周方向に放射状に複数形成されている。)による毛細管現象によって再びヒートパイプ24の両端部に移動する。このようなサイクルが繰り返されて、定着ベルト21の両端部の熱が張架ローラ23(ヒートパイプ24)を介して中央部に移動することになる。これにより、定着ベルト21の幅方向両端部の過昇温が防止される。
【0042】
すなわち、ヒートパイプ24が内設された張架ローラ23を用いることで、幅方向中央部を加熱するヒータと幅方向両端部を加熱するヒータとの2本のヒータを設置することなく、幅方向の一端側から他端側にわたって定着ベルト21の内周面に対向する1本のヒータ25を設置しても、小サイズ紙の連続通紙時等に生じる定着ベルトの温度ムラを防止することができる。
具体的に、図4(A)や図4(B)に示す定着装置200のように、幅方向中央部を加熱するヒータ250Aと、幅方向両端部を加熱するヒータ250Bと、を設置して、通紙する記録媒体Pのサイズに応じて通電するヒータ250A、250Bを選択するように構成した場合には、それらのヒータ250A、250Bを設置するための定着ベルト210の内部の空間を広く設定する必要があるため、定着装置200が大型化してしまう。また、定着ベルト210の周長が大きくなってベルト表面積が大きくなると、放熱の影響によって定着ベルト210の温度を所定温度に維持するための消費電力も大きくなってしまう。さらに、2本のハロゲンヒータ250A、250Bを使用する場合には、ヒータ同士が互いに熱を吸収又は遮蔽してしまい、定着ベルト210の加熱効率が低下してしまう。このようなことから、図4(A)や図4(B)に示すような定着装置200は、立ち上がり時間の短縮化を充分に達成することができない。
これに対して、本実施の形態における定着装置20は、上述した理由によって、装置の小型化・低コスト化と、立ち上がり時間の短縮化と、非通紙領域の過昇温の軽減化と、のすべてを充分に達成することができることになる。
【0043】
なお、本実施の形態では、ヒートパイプ24が、張架ローラ23の内周面における幅方向の全範囲に対して両端部にそれぞれ隙間をあけて接触するように配設されている。すなわち、張架ローラ23の内部において、軸部23cとヒートパイプ24の幅方向端部との間に隙間が設けられている。これにより、ヒートパイプ24が幅方向に熱膨張をした場合であっても、張架ローラ23が変形する不具合を防止することができる。
また、本実施の形態において、張架ローラ23上に設けた弾性層23bは、定着ベルト21との摩擦抵抗によって張架ローラ23を従動回転させるためのものであるため、その層厚はヒートパイプ24への熱移動を妨げないように極力薄く形成することが望ましい。
【0044】
ここで、図2を参照して、本実施の形態における定着装置20には、張架ローラ23とヒータ25との間に、ヒータ25から射出された光を定着ベルト21の内周面に向けて反射させる反射部材としての反射板51が設けられている。このように反射板51(反射部材)を設けることで、ヒータ25によって張架ローラ23が直接的に加熱されにくくなるとともに、定着ベルト21がヒータ25から直接的に照射される光の他に反射板51から反射されたヒータ25の光によっても加熱されることになるため、定着ベルト21の加熱効率が向上する。
同様に、本実施の形態における定着装置20には、定着補助ローラ22とヒータ25との間にも、ヒータ25から射出された光を定着ベルト21の内周面に向けて反射させる反射部材としての反射板52が設けられている。このように反射板52(反射部材)を設けることで、ヒータ25によって定着補助ローラ22が直接的に加熱されにくくなるとともに、定着ベルト21がヒータ25から直接的に照射される光の他に反射板52から反射されたヒータ25の光によっても加熱されることになるため、定着ベルト21の加熱効率が向上する。
【0045】
以上説明したように、本実施の形態では、定着ベルト21の内周面に対向するようにヒータ25を設置するとともに、定着ベルト21を張架する複数のローラ部材22、23のうちの張架ローラ23にヒートパイプ24を内設しているため、定着装置20が小型化・低コストされて、立ち上がり時間が短く、非通紙領域の過昇温を生じにくくすることができる。
【0046】
なお、本実施の形態では加圧回転体として加圧ローラ31を用いたが、加圧回転体として加圧ベルトを用いてもよい。そして、その場合にも、本実施の形態とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0047】
なお、本発明が本実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、本実施の形態の中で示唆した以外にも、本実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 画像形成装置本体(装置本体)、
20 定着装置、
21 定着ベルト(定着部材)、
22 定着補助ローラ(ローラ部材)、
23 張架ローラ(ローラ部材)、
24 ヒートパイプ、
25 ヒータ(ハロゲンヒータ)、
31 加圧ローラ(加圧回転体)、
51、52 反射板(反射部材)、 P 記録媒体。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0049】
【特許文献1】特開2004−246240号公報
【特許文献2】特許第4320234号公報
【特許文献3】特開2007−156171号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも定着補助ローラと張架ローラとの2つのローラ部材によって張架されるとともに、所定方向に走行してトナー像を加熱して溶融する定着ベルトと、
前記定着ベルトに圧接して記録媒体が搬送されるニップ部を形成する加圧回転体と、
前記定着ベルトの内周面に対向して前記定着ベルトを加熱するヒータと、
を備え、
前記張架ローラは、その内周面に幅方向にわたって接触するヒートパイプが内設されたことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記ヒータは、幅方向の一端側から他端側にわたって前記定着ベルトの内周面に非接触で対向するように配設されたハロゲンヒータであることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記張架ローラと前記ヒータとの間に、前記ヒータから射出された光を前記定着ベルトの内周面に向けて反射させる反射部材を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記定着補助ローラと前記ヒータとの間に、前記ヒータから射出された光を前記定着ベルトの内周面に向けて反射させる反射部材を設けたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の定着装置。
【請求項5】
前記ヒートパイプは、前記張架ローラの内周面における幅方向の全範囲に対して両端部にそれぞれ隙間をあけて接触するように配設されたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の定着装置。
【請求項6】
前記定着補助ローラは、前記定着ベルトを介して前記加圧回転体に圧接するように配設されたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の定着装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−220862(P2012−220862A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88847(P2011−88847)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】