説明

定着装置、及び定着装置を使用した印刷装置

【課題】本発明はハロゲンランプを使用し、印刷開始のウォームアップ時間を短縮する定着装置を提供するものである。
【解決手段】加熱手段を有する定着装置であって、電源電圧より低い定格の第1、第2の加熱手段を備える加熱ローラと、該加熱ローラに圧接して記録媒体を挟持搬送する加圧ローラと、上記第1の加熱手段、又は上記第1、第2の加熱手段の直列回路を選択する選択手段と、上記加熱ローラが所定温度以下の時、上記第1の加熱手段に電圧を供給し、上記加熱ローラが所定温度又は所定温度以上の時、上記第1、第2の加熱手段の直列回路に電圧を供給する制御手段とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は定着装置、及び定着装置を使用した印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、地球環境の保持が世界的に叫ばれ、地球温暖化防止会議を中心としてCO2(二酸化炭素)などの温室効果ガスの排出規制が実現化に向かっている。このような状況において、印刷装置においてもCO2削減に対応する取り組みが行われている。特に、印刷装置に使用される熱定着器は消費電力が大きく、印刷装置の消費電力削減のためには定着器による消費電力を削減することが重要である。
【0003】
例えば、最近の電子写真方式の印刷装置では、消費電力を削減するため、熱定着器への電源供給を印刷処理が終了した後、1分程度で省電力モードに移行させている。例えば、熱定着器に内蔵されたヒータへの通電を印刷処理終了後、1分程度で停止し、印刷装置をスリープモードに設定している。
【0004】
しかし、上記のような省電力モードへの移行制御を行うと、次の印刷処理を行う際、ウォームアップに長時間を要する。このため、ユーザからのウォームアップ時間の短縮の要望が強い。
【0005】
ここで、特許文献1は短時間での装置のウォームアップを維持しつつ、省電力可能な定着装置を用いた画像形成装置の発明である。この特許文献1に係る発明は、商用電源から電力供給されて定着ローラの幅方向中央部を加熱する発熱部をもつ中央加熱ヒータと、補助電源装置の放電中に点灯して定着ローラを加熱する補助ヒータとを備え、定着装置の立上げ時、又は復帰時、上記補助ヒータを点灯せず中央加熱ヒータを点灯して定着ローラのウォームアップを行う発明である。
【0006】
尚、定着器にハロゲンランプを使用する発明として、特許文献2及び3が提案されている。特許文献2はハロゲンランプのフィラメントの断線を防ぎ、ランプ寿命を伸ばす調光装置の発明であり、特許文献3はハロゲンランプの電力量を抑えることにより、装置全体の電力容量を小さくする感光材料処理装置に関する発明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−186665号公報
【特許文献2】特開平06−289575号公報
【特許文献3】特開平07−114990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1による定着器の温度制御は、商用電源から電力供給される中央加熱ヒータと補助電源装置から電源供給される補助ヒータを使用する構成であり、商用電源と共に、補助電源装置が必要である。一方、ウォームアップ時間を短縮する為には、例えばIH(Induction Heating)ヒータを使用することが考えられる。しかし、この場合大電力の高周波誘導回路が必要となり、装置のコストアップの原因となる。
【0009】
そこで、本発明はハロゲンランプを使用し、熱定着器のウォームアップ時間を短縮した定着装置、及び定着装置を使用した印刷装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は本発明によれば、電源電圧より低い定格の第1、第2の加熱手段を備える加熱ローラと、該加熱ローラに圧接して記録媒体を挟持搬送する加圧ローラと、前記第1の加熱手段、又は前記第1、第2の加熱手段の直列回路を選択する選択手段と、前記加熱ローラが所定温度以下の時、前記第1の加熱手段に電圧を供給し、前記加熱ローラが所定温度又は所定温度以上の時、前記第1、第2の加熱手段の直列回路に電圧を供給する制御手段とを有する定着装置を提供することによって達成できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、安価なハロゲンランプを使用した定着装置を使用でき、ウォームアップ時間の短い定着装置を提供することができる。また、この定着装置をプリンタ等の印刷装置に適用することによって、節電モードから短時間で印刷処理が可能な印刷装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】加熱ローラに設けられたヒータを駆動する回路構成を説明する図である。
【図2】本実施形態における印刷装置の内部構成を説明する断面図である。
【図3】定着装置の概略図である。
【図4】実施形態1の処理動作を説明するフローチャートである。
【図5】実施形態2の回路構成を説明する回路図である。
【図6】実施形態2の処理動作を説明するフローチャートである。
【図7】実施形態2の処理動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
(実施形態1)
図2は、本実施形態におけるプリンタ装置(印刷装置)の内部構成を説明する断面図である。同図に示すプリンタ装置1は、電子写真式で二次転写方式のタンデム型のカラープリンタ装置であり、4つの画像形成部2、中間転写ベルトユニット3、給紙部4、及び両面印刷用搬送ユニット5で構成されている。
【0014】
上記4つの画像形成部2は、同図の右から左へ4個の画像形成ユニット6(6M、6C、6Y、6K)を多段式に並設した構成からなる。上記4個の画像形成ユニット6のうち上流側(図の右側)の3個の画像形成ユニット6M、6C、及び6Yは、それぞれ減法混色の三原色であるマゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)の色トナーによるモノカラー画像を形成し、画像形成ユニット6Kは、主として文字や画像の暗黒部分等に用いられるブラック(K)トナーによるモノクロ画像を形成する。
【0015】
上記の各画像形成ユニット6は、トナー容器に収納されたトナーの色を除き全て同じ構成である。したがって、以下ブラック(K)用の画像形成ユニット6Kを例にしてその構成を説明する。
【0016】
画像形成ユニット6Kは、最下部に感光体ドラム7を備えている。この感光体ドラム7は、その周面が例えば有機光導電性材料で構成されている。この感光体ドラム7の周面近傍を取り巻いて、クリーナ8、帯電ローラ9、印字ヘッド11、及び現像器12の現像ローラ13が配置されている。
【0017】
現像器12は、上部のトナー容器に同図にはM、C、Y、Kで示すようにマゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)、ブラック(K)のいずれかのトナーを収容し、中間部には下部へのトナー補給機構を備え、下部には側面開口部に上述した現像ローラ13を備え、内部にトナー撹拌部材、現像ローラ13にトナーを供給するトナー供給ローラ、現像ローラ13上のトナー層を一定の層厚に規制するドクターブレード等を備えている。
【0018】
中間転写ベルトユニット3は、本体装置のほぼ中央で図の左右のほぼ端から端まで扁平なループ状になって延在する無端状の転写ベルト14と、この転写ベルト14を掛け渡されて転写ベルト14を図の反時計回り方向に循環移動させる駆動ローラ15と従動ローラ16を備えている。
【0019】
上記の転写ベルト14は、トナー像を直接ベルト面に転写(一次転写)されて、そのトナー像を更に用紙に転写(二次転写)すべく用紙への転写位置まで搬送するので、ここではユニット全体を中間転写ベルトユニットとしている。
【0020】
この中間転写ベルトユニット3は、上記扁平なループ状の転写ベルト14のループ内にベルト位置制御機構17を備えている。ベルト位置制御機構17は、転写ベルト14を介して感光体ドラム7の下部周面に押圧する導電性発泡スポンジから成る一次転写ローラ18を備えている。
【0021】
ベルト位置制御機構17は、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びイエロー(Y)の3個の画像形成ユニット6M、6C、及び6Yに対応する3個の一次転写ローラ18を鉤型の支持軸を中心に同一周期で回転移動させ、ブラック(K)の画像形成ユニット6Kに対応する1個の一次転写ローラ18を上記3個の一次転写ローラ18の周期と異なる回転移動周期で回転移動させて転写ベルト14を感光体ドラム7から離接させ、フルカラーモード(4個全部の一次転写ローラ18が転写ベルト14に当接)、モノクロモード(画像形成ユニット6Kに対応する一次転写ローラ18のみが転写ベルト14に当接)、及び全非転写モード(4個全部の一次転写ローラ18が転写ベルト14から離れる)に切換える。
【0022】
上記の中間転写ベルトユニット3には、上面部のベルト移動方向最上流側の画像形成ユニット6Mの更に上流側に、ベルトクリーナユニットが配置され、下面部のほぼ全面に沿い付けるように平らで薄型の廃トナー回収容器19が着脱自在に配置されている。
給紙部4は、上中下3段に配置された3個の給紙カセット21a〜21cを備え、3個の給紙カセット21a〜21cの給紙口(図の右方)近傍には、それぞれ用紙取出ローラ22、給送ローラ23、捌きローラ24、待機搬送ローラ対25が配置されている。待機搬送ローラ対25の用紙搬送方向(図の鉛直上方向)には、転写ベルト14を介して従動ローラ16に圧接する二次転写ローラ26が配設されて、用紙への二次転写部を形成している。
【0023】
この二次転写部の下流(図では上方)側には、熱定着手段としての熱定着装置27が配置され、熱定着装置27の更に下流側には、定着後の用紙を熱定着装置27から搬出する搬出ローラ対28、及びその搬出される用紙を装置上面に形成されている排紙トレー29に排紙する排紙ローラ対31が配設されている。尚、熱定着装置27は加熱ローラ40及び加圧ローラ41等で構成され、詳しく後述する。
【0024】
両面印刷用搬送ユニット5は、上記搬出ローラ対28と排紙ローラ対31との中間部の搬送路から図の右横方向に分岐した開始返送路32a、それから下方に曲がる中間返送路32b、更に上記とは反対の左横方向に曲がって最終的に返送用紙を反転させる終端返送路32c、及びこれらの返送路の途中に配置された4組の返送ローラ対33a、33b、33c、33dを備えている。上記終端返送路32cの出口は、給紙部4の下方の給紙カセット21に対応する待機搬送ローラ対25への搬送路に連絡している。
【0025】
また、本例において中間転写ベルトユニット3の上面部には、クリーニング部35、取り込みローラ36が配置されている。クリーニング部35は、転写ベルト14の上面に当接して廃トナーを擦り取って除去し、取り込みローラ36はクリーニング部35が除去した廃トナーを引き継いで、図示を省略したベルトクリーナユニットの一時貯留部に溜め込み、その溜め込まれた廃トナーを搬送スクリューにより落下筒内を上部まで搬送し、落下筒を介して廃トナー回収容器19に送り込んでいる。
【0026】
また、上記のクリーニング部35を適度の圧力で転写ベルト14に圧接させるため、中間転写ベルトユニット3側には、下方から転写ベルト14をクリーニング部35に向けて押圧する押圧ローラ37が設けられている。
【0027】
上記構成において、図3は上記熱定着装置27の構成をより具体的に説明する図である。同図において、熱定着装置27は加熱ローラ40と加圧ローラ41で構成され、加熱ローラ40と加圧ローラ41は圧接して配設されている。また、例えば加圧ローラ41を矢印方向に回動することによって、加熱ローラ40と加圧ローラ41間にトナー42が付着した用紙43を挟持し、矢印方向に搬送する。
【0028】
加熱ローラ40内には3本のヒータHT1〜HT3が配設され、加熱ローラ40を加熱する。用紙43に付着したトナー42は加熱ローラ40と加圧ローラ41間を挟持搬送される間、熱と圧力によって熔融し、用紙43に印字される。尚、用紙43に印字されたトナー(像)42´は前述の排紙トレー29に排出される。
【0029】
図1は、上記構成の加熱ローラ40に設けられたヒータを駆動する回路構成を説明する図である。加熱ローラ40には商用電源(AC入力)から電源ユニット45を介して電力供給が行われる。加熱ローラ40には3本のヒータHT1〜HT3が配設されている。
HT1は、例えば定格90Vのヒータであり、HT2は、例えば定格10Vのヒータであり、HT3は、例えば幅の狭い用紙を印刷する場合に使用するヒータである。
【0030】
電源ユニット45は2つのトライアックTr1、Tr2、及びスイッチ46で構成され、トライアックTr1はスイッチ46を介してヒータHT1、HT2に接続され、ヒータHT1、HT2の加熱制御を行う。また、トライアックTr2はヒータHT3に接続され、ヒータHT3の加熱制御を行う。尚、スイッチ46は駆動するヒータを選択するスイッチであり、スイッチ46が“1”側に切り替えられている場合、ヒータHT1のみを選択し、スイッチ46が“2”側に切り替えられている場合、ヒータHT1、HT2を選択し、ヒータHT1とHT2の直列回路を構成する。このスイッチ46の切り替えは、制御部47からの制御信号によって切り替え制御される。
【0031】
また、トライアックTr1及びTr2も制御部47からの制御信号によって駆動し、制御部47には加熱ローラ40に取り付けられた温度検知素子48からの温度検知信号が入力する。制御部47は温度検知素子48からの温度検知信号に基づいて、トライアックTr1及びTr2の駆動制御を行う。
【0032】
以上の構成において、以下に本実施形態の処理動作を説明する。図4は本例の加熱ローラ40の温度制御動作を説明するフローチャートである。先ず、スリープ状態であるプリンタ装置1の印刷開始ボタンを操作すると、ウェイクアップ処理を開始する(ステップ(以下、Sで示す)1)。具体的には、制御部47が温度検知素子48からの温度検知信号に基づいて、加熱ローラ40の温度を検出し、加熱ローラ40の温度が印刷可能温度以下であるか判断する(S2)。
【0033】
最初のこの判断では、加熱ローラ40の加熱処理を開始したばかりであり、加熱ローラ40の温度は印刷可能温度以下である(S2がYES)。このため、制御部47はスイッチ46を“1”に切り替え、トライアックTr1を制御する(S3)。例えば、トライアックTr1のゲート(G)に所定時間トリガ信号を印加し、トライアックTr1の駆動を開始し、ヒータHT1のみに電源供給を行う。この処理によって、ヒータHT1には電流が流れ、ヒータHT1は加熱ローラ40を加熱する。
【0034】
この時、加熱ローラ40は前述のように、定格90Vのヒータであり、商用電源100Vに対して定格以下のヒータである。このため、ヒータHT1には定格以上の電流が流れ、大きな熱量を発生し、加熱ローラ40を急速に加熱する。以後、制御部47は加熱ローラ40の温度を検出し、加熱ローラ40の温度が印刷可能温度以下である間(S2がYES)、上記処理を繰り返し、加熱ローラ40を加熱する。
【0035】
その後、加熱ローラ40の温度が印刷可能温度以上になると(S2がNO)、制御部47はスイッチ46に制御信号を出力し、スイッチ46を“2”に切り替え、トライアックTr1の制御を行う(S4)。すなわち、加熱ローラ40内の回路をヒータHT1とHT2の直列回路に切り替え、ヒータHT1とHT2を100Vの定格で駆動する。その後、用紙を給紙し、印刷処理を開始する(S5)。
【0036】
尚、ヒータHT3の駆動制御は、制御部47からの制御信号に基づいてトライアックTr2を駆動することによって行われる。例えば、ヒータHT3は加熱ローラ40の中央部の温度低下を中心に保障するものであり、制御部47は対応する制御信号をトライアックTr2に出力し、ヒータHT3の駆動制御を行う。
【0037】
前述の図1に示すヒータHT1、HT2の例の場合、ヒータHT1は定格90Vのヒータであり、ヒータHT2は定格10Vのヒータであり、何れも電源電圧100Vより低い定格のヒータである。したがって、上記処理(S3)において、ヒータHT1には定格以上の電圧が印加され、大きな電力が供給される。
【0038】
この場合、ハロゲンランプの特性からウォームアップ時の電力は、1000W×(100/90)^1.54=1176Wであり、更に電力に対する効率が(100/90)^1.83=1.21倍となり、1176W×1.21=1428W相当の電力によって加熱ローラ40を加熱する。したがって、加熱ローラ40を短時間で印刷可能状態に設定することができる。
【0039】
尚、スイッチ46が“2”に切り替えられ、ヒータHT1とHT2の直列回路を使用する場合には(S4)、ヒータに定格電圧が印加される為、電力は次の様になる。
通常動作時電力=1000W+111W=1111W
【0040】
以上のように本実施形態によれば、節電状態のプリンタ装置1を短時間で印刷可能状態に設定でき、ヒータの寿命も低下させることがない熱定着装置27を提供することができる。したがって、このような構成の熱定着装置27を使用することによって、ユーザの要望に適用した短時間での印刷開始が可能な印刷装置を提供することができる。

(実施形態2)
【0041】
次に、本発明の実施形態2について説明する。尚、本実施形態において使用される定着装置は前述の実施形態1の説明において使用されたプリンタ装置1に使用されるものである。また、熱定着装置27の構成も基本的に前述の図2に示す構成と同様であり、加熱ローラと加圧ローラが圧接して用紙を挟持搬送する構成である。
【0042】
図5は本実施形態の加熱ローラ50に設けられたヒータを駆動する回路構成を説明する図である。加熱ロー50には商用電源(AC入力)からトライアックTr3、Tr4を介して加熱ローラ50に電力供給が行われる。加熱ローラ50には2本のヒータHT4、及びHT5が配設されている。HT4は、例えば定格80Vのヒータであり、HT2は、例えば定格100Vのヒータである。したがって、本例においては、ヒータHT4が電源電圧より低い定格であり、ヒータHT5は電源電圧と同じ定格である。
【0043】
また、本例ではヒータHT4は加熱ローラ50の全幅に渡って配設され、ヒータHT5は加熱ローラ50の中央に配設されている。また、ヒータHT4はトライアックTr3によって駆動され、ヒータHT5はトライアックTr4によって駆動される。
【0044】
また、加熱ローラ50の端部には端部サーミスタ51が配設され、加熱ローラ50の中央には中央サーミスタ52が配設されている。トライアックTr3及びTr4はCPU53の制御によって駆動し、CPU53はROM54に記憶されたプログラムに従って制御を行う。また、CPU53には端部サーミスタ51から加熱ローラ50の端部の検出温度のデータが入力し、中央サーミスタ52から加熱ローラ50の中央部の検出温度のデータが入力する。CPU53は上記端部サーミスタ51及び中央サーミスタ52から入力する温度検知信号に基づいて、トライアックTr3及びTr4の駆動制御(オン、オフ制御)を行う。
【0045】
以上の構成において、以下に本実施形態の処理動作を説明する。
図6及び図7は本例の加熱ローラ50の温度制御動作を説明するフローチャートであり、図6は加熱ローラ50の全幅に渡って配設されたヒータHT4の駆動制御を説明するフローチャートであり、図7は加熱ローラ50の中央部に配設されたヒータHT5の駆動制御を説明するフローチャートである。
【0046】
先ず、図6に示すフローチャートに従って、ヒータHT4の駆動制御を説明する。スリープ状態であるプリンタ装置1の印刷開始ボタンを操作すると、ヒータHT4の駆動を開始する。具体的には、端部サーミスタ51が加熱ローラ50の端部の温度を検出し(ステップ(以下、STで示す)1)、CPU53は端部サーミスタ51からの検知信号に基づいて、加熱ローラ50の端部の温度が目標温度以上であるか判断する(ST2)。
【0047】
最初のこの判断では、前述と同様、加熱ローラ50の加熱処理を開始したばかりであり、加熱ローラ50の温度は目標温度以下である(ST2がYES)。このため、CPU53はトライアックTr3を駆動するためゲート(G)をトリガし、トライアックTr3の駆動を開始する(ST3)。
【0048】
この処理によって、ヒータHT4には電流が流れ、ヒータHT4は加熱ローラ50を加熱する。この時、ヒータHT4は定格90Vのヒータであり、前述と同様、商用電源100Vに対して定格以下のヒータである。このため、ヒータHT4には定格以上の電流が流れ、大きな熱量を発生し、加熱ローラ50を急速に加熱する。
【0049】
以後、CPU53は加熱ローラ50の端部の温度を検出し、加熱ローラ50の温度が目標温度以下である間(ST2がYES)、上記処理を繰り返し、加熱ローラ50を加熱する。
【0050】
その後、加熱ローラ50の温度が目標温度以上になると(S2がNO)、CPU53はトライアックTr3の駆動制御を行い、ヒータHT4の駆動を停止する(ST4、ST5)。すなわち、以後加熱ローラ50の温度制御をトライアックTr4を駆動制御することによって行う。
【0051】
すなわち、図7に示すフローチャートに従って、CPU53はトライアックTr4の駆動制御を行い、中央サーミスタ52から加熱ローラ50の中央部の温度データを測定し(ステップ(以下、STPで示す)1)、加熱ローラ50の中央部の温度が目標温度以下である時(STP2がYES)、CPU53はトライアックTr4を駆動するためゲート(G)をトリガし、トライアックTr4の駆動を開始する(STP3)。
【0052】
この処理によって、ヒータHT5に電流が流れ、ヒータHT5は加熱ローラ50を加熱し、加熱ローラ50の中央部の温度が目標温度以上になると(STP2がNO)、CPU53はトライアックTr4の駆動を停止し(STP4、STP5)、ヒータHT4によって加熱ローラ50の中央部の温度低下を中心に温度制御を行う。
【0053】
以上のように本実施形態によっても、節電状態のプリンタ装置1を短時間で印刷可能状態に設定でき、ヒータの寿命も低下させることがない熱定着装置を提供することができる。また、このような構成の熱定着装置を使用することによって、ユーザの要望に適用した短時間での印刷開始が可能な印刷装置を提供することができる。
【0054】
尚、以下に本実施形態の効果の例を示す。例えば、ヒータHT4として、80v、1KW定格のヒータを使用する場合、このヒータHT4に100vの電圧を印加するの、電力、及び光エネルギーは以下のようになる。
・電力 = 1000wx(1.25)^1.54=1410w
・光エネルギ= 1000wx(1.25)^3.38=2126w
また、ウォームアップ時間の短縮は、例えば30秒から21秒に短縮される。すなわち、通常30秒のウォームアップ時間を必要とする熱定着装置であれば、21秒で印刷処理を行うことができるようになる。
【0055】
また、省エネルギーについて検討すると、
1Kwx30秒 = 30000ジュール

1410wx21秒=29610ジュール
であり、消費する電力も削減することができる。
【0056】
本発明はいくつかの実施形態を説明したが、本発明は特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。以下、本件特許出願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0057】
付記1
電源電圧より低い定格の第1、第2の加熱手段を備える加熱ローラと、
該加熱ローラに圧接して記録媒体を挟持搬送する加圧ローラと、
前記第1の加熱手段、又は前記第1、第2の加熱手段の直列回路を選択する選択手段と、
前記加熱ローラが所定温度以下の時、前記第1の加熱手段に電圧を供給し、前記加熱ローラが所定温度又は所定温度以上の時、前記第1、第2の加熱手段の直列回路に電圧を供給する制御手段と、
を有することを特徴とする定着装置。
【0058】
付記2
前記第1、第2の加熱手段の直列回路に供給する電圧は、前記電源電圧と同じ定格の電圧であることを特徴とする付記1に記載の定着装置。
【0059】
付記3
電源電圧より低い定格の第1、第2の加熱手段を備える加熱ローラと、
該加熱ローラに圧接して記録媒体を挟持搬送する加圧ローラと、
前記第1の加熱手段、又は前記第1、第2の加熱手段の直列回路を選択する選択手段と、
前記加熱ローラが所定温度以下の時、前記第1の加熱手段に電圧を供給し、前記加熱ローラが所定温度又は所定温度以上の時、前記第1、第2の加熱手段の直列回路に電圧を供給する制御手段と、
前記記録媒体にトナー像を形成し、該トナー像が形成された記録媒体を前記加熱ローラと加圧ローラ間で挟持搬送して前記トナー像を前記記録媒体に定着し、該記録媒体を排出する画像形成処理手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【0060】
付記4
電源電圧より低い定格の第1の加熱手段と、前記電源電圧と同じ定格の第2の加熱手段とを備える加熱ローラと、
該加熱ローラに圧接して記録媒体を挟持搬送する加圧ローラと、
前記第1の加熱手段、又は前記第2の加熱手段を選択する選択手段と、
前記加熱ローラが所定温度以下の時、前記第1の加熱手段に電圧を供給し、前記加熱ローラが所定温度又は所定温度以上の時、前記第2の加熱手段に電圧を供給する制御手段と、
を有することを特徴とする定着装置。
【0061】
付記5
前記第1の加熱手段は前記加熱ローラの全幅に渡って設置され、前記第2の加熱手段は前記加熱ローラの中央部に設置されていることを特徴とする付記4に記載の定着装置。
【0062】
付記6
電源電圧より低い定格の第1の加熱手段と、前記電源電圧と同じ定格の第2の加熱手段とを備える加熱ローラと、
該加熱ローラに圧接して記録媒体を挟持搬送する加圧ローラと、
前記第1の加熱手段、又は前記第2の加熱手段を選択する選択手段と、
前記加熱ローラが所定温度以下の時、前記第1の加熱手段に電圧を供給し、前記加熱ローラが所定温度又は所定温度以上の時、前記第2の加熱手段に電圧を供給する制御手段と、
前記記録媒体にトナー像を形成し、該トナー像が形成された記録媒体を前記加熱ローラと加圧ローラ間で挟持搬送して前記トナー像を前記記録媒体に定着し、該記録媒体を排出する画像形成処理手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【符号の説明】
【0063】
1・・・プリンタ装置
2・・・画像形成部
3・・・中間転写ベルトユニット
4・・・給紙部
5・・・両面印刷用搬送ユニット
6、6M、6C、6Y、6K・・画像形成ユニット
7・・・感光体ドラム
8・・・クリーナ
9・・・帯電ローラ
11、11Y、11M、11C、11K・・印字ヘッド
12・・現像器
13・・現像ローラ
14・・転写ベルト
15・・駆動ローラ
16・・従動ローラ
17・・ベルト位置制御機構
18・・一次転写ローラ
19・・廃トナー回収容器
21・・給紙カセット
22・・用紙取出ローラ
23・・給送ローラ
24・・捌きローラ
25・・待機搬送ローラ対
27・・熱定着装置
28・・搬出ローラ対
29・・排紙トレー
31・・排紙ローラ対
32a・・開始返送路
32b・・中間返送路
32c・・終端返送路
33a、33b、33c、33d・・返送ローラ対
35・・クリーニング部
36・・取り込みローラ
37・・押圧ローラ
40・・加熱ローラ
41・・加圧ローラ
42・・トナー
43・・用紙
45・・電源ユニット
46・・スイッチ
47・・制御部
48・・温度検知素子
50・・加熱ローラ
51・・端部サーミスタ
52・・中央サーミスタ
53・・CPU
54・・ROM
HT1〜HT3・・ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電圧より低い定格の第1、第2の加熱手段を備える加熱ローラと、
該加熱ローラに圧接して記録媒体を挟持搬送する加圧ローラと、
前記第1の加熱手段、又は前記第1、第2の加熱手段の直列回路を選択する選択手段と、
前記加熱ローラが所定温度以下の時、前記第1の加熱手段に電圧を供給し、前記加熱ローラが所定温度又は所定温度以上の時、前記第1、第2の加熱手段の直列回路に電圧を供給する制御手段と、
を有することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記第1、第2の加熱手段の直列回路に供給する電圧は、前記電源電圧と同じ定格の電圧であることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
電源電圧より低い定格の第1、第2の加熱手段を備える加熱ローラと、
該加熱ローラに圧接して記録媒体を挟持搬送する加圧ローラと、
前記第1の加熱手段、又は前記第1、第2の加熱手段の直列回路を選択する選択手段と、
前記加熱ローラが所定温度以下の時、前記第1の加熱手段に電圧を供給し、前記加熱ローラが所定温度又は所定温度以上の時、前記第1、第2の加熱手段の直列回路に電圧を供給する制御手段とを有する定着装置を使用し、
前記記録媒体にトナー像を形成し、該トナー像を前記定着装置に搬送し、前記定着装置によって前記トナー像を前記記録媒体に熱定着する画像形成処理手段を、
有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
電源電圧より低い定格の第1の加熱手段と、前記電源電圧と同じ定格の第2の加熱手段とを備える加熱ローラと、
該加熱ローラに圧接して記録媒体を挟持搬送する加圧ローラと、
前記第1の加熱手段、又は前記第2の加熱手段を選択する選択手段と、
前記加熱ローラが所定温度以下の時、前記第1の加熱手段に電圧を供給し、前記加熱ローラが所定温度又は所定温度以上の時、前記第2の加熱手段に電圧を供給する制御手段と、
を有することを特徴とする定着装置。
【請求項5】
前記第1の加熱手段は前記加熱ローラの全幅に渡って設置され、前記第2の加熱手段は 前記加熱ローラの中央部に設置されていることを特徴とする請求項4に記載の定着装置。
【請求項6】
電源電圧より低い定格の第1の加熱手段と、前記電源電圧と同じ定格の第2の加熱手段とを備える加熱ローラと、
該加熱ローラに圧接して記録媒体を挟持搬送する加圧ローラと、
前記第1の加熱手段、又は前記第2の加熱手段を選択する選択手段と、
前記加熱ローラが所定温度以下の時、前記第1の加熱手段に電圧を供給し、前記加熱ローラが所定温度又は所定温度以上の時、前記第2の加熱手段に電圧を供給する制御手段 とを有する定着装置を使用し、
前記記録媒体にトナー像を形成し、該トナー像を前記定着装置に搬送し、前記定着装置によって前記トナー像を前記記録媒体に熱定着する画像形成処理手段を、
有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−173509(P2012−173509A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35280(P2011−35280)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000104124)カシオ電子工業株式会社 (601)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】