説明

定着装置および画像形成装置

【課題】加圧部材の温度低下を抑制することができる定着装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】定着ベルト62と、定着ベルト62に押し付けられながら回転する加圧ロール70と、定着ベルト62と加圧ロール70との接触部で用紙を定着するニップ部Nと、定着ベルト62と加圧ロール70とのニップ部Nにおける加圧ロール70の回転方向の中心から回転方向側で加圧ロール70と接触し、用紙の搬送方向と直交する軸方向長さよりも長いヒートパイプ80とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の定着装置としては、特許文献1ないし3に開示のものが知られている。たとえば、特許文献1には、加圧ローラに均熱ローラを接触させ、均熱ローラの温度に基づいて定着動作を制御する技術が開示されている。
【0003】
特許文献2には、熱源を有する加熱ローラの温度を測定し、温度の測定結果に基づいて熱源を制御する技術が開示されている。
【0004】
特許文献3には、無端ベルトと、無端ベルトを加熱する加熱手段と、無端ベルトの外周を加圧して定着ニップを形成する加圧手段と、無端ベルトに接触して無端ベルトの幅方向の温度を均一化する均熱化手段とを有する定着装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−2691号公報
【特許文献2】特開2005−128200号公報
【特許文献3】特開2005−77880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、加圧部材の温度低下を抑制することができる定着装置および画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、定着部材と、前記定着部材に押し付けられながら回転する加圧部材と、前記定着部材と前記加圧部材との接触部であって記録媒体を定着する定着部と、前記定着部よりも前記加圧部材の回転方向下流側で、前記記録媒体の搬送方向と直交する軸方向長さよりも長い領域で前記加圧部材と接触する温度均一化部材とを備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、定着部材と、前記定着部材に押し付けられながら回転する加圧部材と、前記定着部材と前記加圧部材との接触部であって記録媒体を定着する定着部と、前記定着部よりも前記加圧部材の回転方向下流側で、前記加圧部材と接触し、軸方向において前記記録媒体に接触しない領域の前記加圧部材から、前記記録媒体に接触する領域の前記加圧部材に熱を移動させることで該表面温度を均一化させる温度均一化部材とを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に係る発明において、前記定着部材は加熱手段により加熱され、前記記録媒体が前記定着部を通過するときに接触する接触領域より軸方向外側の部分における前記定着部材の表面温度を、前記接触領域における該表面温度よりも高く設定したことを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1または2に係る発明において、前記定着部材は加熱手段により加熱され、前記記録媒体が前記定着部を通過するときに接触する接触領域より軸方向外側の部分における前記定着部材の表面温度を、前記接触領域における該表面温度よりも低く設定したことを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項1ないし4のいずれかに係る発明において、前記加圧部材に空気を噴出する噴出手段を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項1ないし5のいずれかに係る発明において、前記定着部材は、前記加圧部材と向かい合って回転する支持部材と、前記支持部材に掛け回された無端状の帯状体とを備えることを特徴とする。
【0013】
請求項7に係る発明は、記録媒体に画像を形成する画像形成部と、前記記録媒体に形成された画像を該記録媒体に定着する請求項1ないし6のいずれかに記載の定着装置を備えた画像形成装置薄板状の記録媒体に画像を形成する画像形成部と、前記記録媒体に形成された画像を該記録媒体に定着する請求項1ないし6のいずれかに係る定着装置を備えた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、加圧部材の温度低下を抑制することができる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、加圧部材の温度低下を抑制することができる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、本構成を有しない場合と比較して加圧部材の温度低下を効果的に抑制することができる。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、薄い記録媒体を定着するときに記録媒体に含まれる水蒸気が膨張することに起因する画像の粒状化の発生を抑制することができる。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、記録媒体の厚さが厚いものから薄いものに変更となったときに記録媒体に含まれる水蒸気が膨張することに起因する画像の粒状化の発生を抑制することができる。
【0019】
請求項6に係る発明によれば、記録媒体の軸方向の寸法が小さいものに変更となったときの画像の光沢ムラの発生を抑制することができる。
【0020】
請求項7に係る発明によれば、加圧部材の温度低下を抑制することができる画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の全体を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る定着装置の全体を示す模式図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る定着装置の要部を示す断面図である。
【図4】本発明の一実施形態の変形例に係る定着装置の要部を示す断面図である。
【図5】本発明の一実施形態の変形例に係る定着装置の全体を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(1)画像形成装置の基本的な構成および動作
図1に示されるように、この画像形成装置1は、原稿を読み取って得たカラー画像情報やパーソナルコンピュータ等の画像データ入力装置から送られてくるカラー画像情報に基づいて画像処理を行い、電子写真方式によって記録媒体の一例としての用紙Pにカラー画像を形成するものである。記録媒体には、紙製の用紙の他にOHPシートのような樹脂製シートも含まれる。
【0023】
画像形成装置1は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー像を形成する画像形成部の一例としての画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kを備えている。画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kは、バックアップロール34と複数のロール32によって張られた無端状の中間転写ベルト30の進行方向に対して、画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kの順番で直列に配列されている。また、中間転写ベルト30は、各画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kを構成する像保持体としての感光体ドラム12と、それぞれに対向して配置される一次転写ロール16との間を通過し、バックアップロール34とこれに接触する画像転写部としての二次転写ロール36との間を通過している。
【0024】
さらに、感光体ドラム12の周囲には、感光体ドラム12の表面を一様に帯電させる帯電器22と、感光体ドラム12の表面に光を照射して静電潜像を形成する露光手段としての露光装置14と、静電潜像をトナーによりトナー像として可視化する現像装置15と、感光体ドラム12の表面の転写残留トナーなどを除去する感光体クリーナー20が設けられている。
【0025】
画像形成装置1の下部には、給紙手段41が配置されている。給紙手段41の左端部上方には、積層された用紙Pの最も上の1枚を取り出すピックアップロール42が配置され、ピックアップロール42の左側では、ガイド等によって搬送経路が上方に曲げられ、その先に搬送ロール対43が配置され、さらにガイド等によって搬送経路が右側に曲げられ、その先に搬送ロール対43が配置されている。搬送ロール対43の下流側には、用紙Pを一時停止させて斜行を矯正するレジストロール対44が配置されている。レジストロール対44の下流側には、前述のバックアップロール34と二次転写ロール36の対が配置され、これらの右側には、搬送ベルト45を経由して定着装置60が配置されている。定着装置60の下流側には排出ロール対46と排出ガイド47が配置されている。なお、定着装置60の構成については後に詳述する。
【0026】
次に、画像形成の動作を、代表してイエロートナー像を形成する画像形成ユニット10Yについて説明する。
【0027】
画像形成ユニット10Yに設けられた感光体ドラム12の表面は、帯電器22によって一様に帯電される。さらに、露光装置14が感光体ドラム12上に画像データに基づいた光ビームを出射してイエロー画像に対応した露光がなされ、感光体ドラム12の表面にイエロー画像に対応する静電潜像が形成される。
【0028】
感光体ドラム12上のイエロー画像に対応する静電潜像は、現像装置15の現像ロール18に保持されたトナーによって現像され、イエロートナー像となる。イエロートナー像は、一次転写ロール16の圧迫力と、一次転写ロール16に印加された転写バイアスによる静電吸引力によって、中間転写ベルト30上に一次転写される。
【0029】
この一次転写では、イエロートナー像の全てが中間転写ベルト30に転写されるわけではなく、一部は感光体ドラム12に残留する。また、感光体ドラム12の表面には、トナーの外添剤なども付着している。一次転写後の感光体ドラム12は、感光体クリーナー20との対向位置を通過し、感光体ドラム12上の転写残留トナーなどが除去される。その後、感光体ドラム12の表面は、次の画像形成サイクルのために帯電器22で再び帯電される。
【0030】
また、画像形成装置1では、各画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kの相対的な位置の違いを考慮したタイミングで、上記と同様の画像形成工程が各色の画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kにおいて行われ、中間転写ベルト30上に、順次、Y,M,C,Kの各色が重ねられ、多重トナー像が形成される。
【0031】
そして、たとえば給紙手段41からピックアップロール42及び搬送ロール対43を経てレジストロール44によって決められた搬送タイミングで二次転写ロール36へと搬送されてきた用紙Pに、転写バイアスが印加された二次転写ロール36の静電吸引力によって、中間転写ベルト30から多重トナー像が一括して転写される。なお、用紙Pに転写されなかった中間転写ベルト30上に残留したトナー等は、ベルトクリーナー33で回収される。
【0032】
さらに、用紙Pは、中間転写ベルト30から多重トナー像が転写された後、定着装置60へと搬送され、熱と圧力とにより用紙Pに多重トナー像が定着されてフルカラー画像が形成される。その後、用紙Pは排出ガイド47と排出ロール対46を経て排出される。
【0033】
(2)定着装置の構成
次に、定着装置60の構成について図2および図3を参照して説明する。これらの図において符号61は支持部材の一例としての定着ロールである。定着ロール61は、アルミニウムなどで形成された円筒状ロールであり、その内部には、加熱手段の一例としてのハロゲンランプ61aが定着ロール61の全長に亘って設けられている。ハロゲンランプ61aは、定着ロール61の軸方向位置によって異なる温度設定ができるように構成されている。定着ロール61は、図示を省略した駆動機構により図2において反時計回りに回転させられる。
【0034】
図3に示すように、符号Bで示す領域は、A4サイズの用紙Pの長辺を搬送方向へ向けて搬送する場合に、用紙Pと定着ロール61および後述する加圧ロール70とが接触する接触領域である。なお、以下の説明においては、この接触領域を「通紙領域B」と称し、通紙領域Bよりも外側のいずれのサイズの用紙Pも定着ロール61および加熱ロール70と接触することがない領域を「非通紙領域A」と称する。そして、ハロゲンランプ61aは、定着ロール61の非通紙領域Aの温度を通紙領域Bの温度よりも高くしたり、逆に、非通紙領域Aの温度を通紙領域Bの温度よりも低くすることができる。
【0035】
定着ロール61には、定着部材の一例としての定着ベルト62が掛け回されている。定着ロール61は、テンションロール63,64,65,66,67,68に掛け回され、一定の張力が与えられている。これらテンションロール63等は、アルミニウム等で形成され、テンションロール63,64の内部には、ハロゲンランプ61aと同等の機能を有するハロゲンランプ63a,64aが設けられている。
【0036】
定着ベルト62は、無端状のベルトであって、ポリイミド樹脂などで形成されたベース層と、ベース層の表面側(外周面側)に積層されたシリコーンゴム層と、さらにシリコーンゴム層の上に、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)などで形成された離型層とからなる多層構造で構成されている。
【0037】
定着ベルト62が巻き回された定着ロール61には、加圧部材の一例としての加圧ロール70が圧迫して接触させられている。加圧ロール70は、図3に示すように、アルミニウム等で形成された円筒状の芯金71の外周にシリコーンゴム層72を形成し、シリコーンゴム層72の外周にPFAからなる離型層73を設けたものである。シリコーンゴム層72は、定着ロール61に押されて弾性変形し、定着ロール61と加圧ロール70との間に定着部としてのニップ部Nが形成されている。加圧ロール70は、定着ベルト62の移動に伴って図2において時計回りに回転し、定着ベルト62の間に用紙Pを挟むことにより、定着ベルト62の熱と圧力とで用紙Pに多重トナー像が定着されてフルカラー画像が形成される。
【0038】
加圧ロール70の外周には、温度均一化部材の一例としてのヒートパイプ80が接触させられている。ヒートパイプ80は、加圧ロール70の軸方向長さよりも長く、加圧ロール70の温度がその部位によって異なる場合に、温度の高い部分から低い部分へ熱を伝達してそれらの部分の温度を均一な状態に近付ける機能を有する。ヒートパイプ80は、アルミニウム等で形成された円筒状のパイプの内部に、熱伝達媒体としての水81を充填したものである。ヒートパイプ80は、その両端部で回転自在に支持されるとともに図示を省略するバネによって加圧ロール70に押し付けられ、加圧ロール70の回転に伴って反時計回りに回転する。なお、温度均一化部材としては、水などの熱伝達媒体が充填されたヒートパイプの他に、銅の熱伝導率(0.94cal/cm・℃・sec)と同等以上の熱伝導率を有する金属製の丸棒なども用いることができる。
【0039】
ヒートパイプ80は、定着ロール61と加圧ロール70とのニップ部Nにおける加圧ロール70の回転方向の中心から、回転方向へ向けて加圧ロール70の回転中心回りに角度θをなす位置で加圧ロール70と接触している。すなわち、定着ロール61の中心O1と加圧ロール70の中心O2とを結んだ線分から加圧ロール70の回転方向へ向けて角度θの位置に、ヒートパイプ80の中心O3が位置している。
【0040】
(3)定着装置の作用
多重トナー像が二次転写された用紙Pは、図2において左側から定着ベルト62と加圧ロール70のニップ部Nに進入し、定着ベルト62の熱と圧力とで用紙Pに多重トナー像が定着されてフルカラー画像が形成される。その際、定着ベルト62は、定着ロール61のハロゲンランプ61a等により加熱されている。また、加圧ロール70は、定着ベルト62からの熱伝導により加熱されている。
【0041】
ここで、画像形成においては、画像の光沢度は低い方が好まれ、光沢度は定着ベルト62の温度を下げることによって低下させることができる。しかしながら、定着ベルト62の温度を下げると定着不良の発生が懸念される。一方、加圧ロール70の温度を高く設定すると、加圧ロール70の熱は用紙Pから二次転写されたトナーに伝達されるから、トナーは用紙P側の部分で充分に溶融し、用紙Pと強固に結合する。これに対して、二次転写されたトナーの定着ベルト62側の部分では、加圧ロール70の熱の影響は少ないから、光沢度は低く抑えられる。したがって、定着ベルト62の温度を高めることなく、加圧ロール70の温度を高く設定することにより、定着性を確保しつつ画像の光沢度を低く抑えることができる。
【0042】
しかしながら、厚い用紙Pに連続的に画像形成する場合には、加圧ロール70の熱が用紙Pにより多く奪われる。この点、本実施形態では加圧ロール70の外周にヒートパイプ80を接触させている。これにより、用紙Pによって加圧ロール70の通紙領域Bの熱が奪われても、非通紙領域Aの熱がヒートパイプ80によって通紙領域Bに伝達され、非通紙領域Aの温度と通紙領域Bの温度が均一な状態に近づく。したがって、厚い用紙Pに連続的に画像形成する場合においても、加圧ロール70の通紙領域Bの温度低下を抑制することができるので、定着性を確保しつつ画像の光沢度を低く抑えることができる。なお、本実施形態において「厚い用紙」とは、82g/m2以上の用紙をいう。
【0043】
本実施形態では、ヒートパイプ80は、定着ロール61と加圧ロール70とのニップ部Nにおける加圧ロール70の回転方向の中心から、回転方向へ向けて角度θの位置で加圧ロール70と接触し、ヒートパイプ80をニップ部Nに接近させてニップ部Nの下流側に配置している。ニップ部Nを通過した直後の加圧ロール70の表面では、通紙領域Bの温度が低下し非通紙領域Aとの温度差が激しい。このため、通紙領域Bと非通紙領域Aとの間でのヒートパイプ80による熱の伝達が効率良く行われ、通紙領域Bの温度と非通紙領域Aの温度をより均一な状態に近付けることができる。したがって、ヒートパイプ80はできるだけニップ部Nに近付けて配置することが望ましく、角度θは、90°以下、あるいは60°以下が良い。
【0044】
ここで、本実施形態のようなヒートパイプ80を備えない場合において、加圧ロール70の温度低下を抑制する手段としては、加圧ロール70の内部にハロゲンランプなどの加熱手段を設けることが考えられる。しかしながら、加圧ロール70は、芯金71の外周にシリコーンゴム層72を設けたもので、シリコーンゴム層72の熱伝導率が低い。このため、加圧ロール70の表面温度を素早く上昇させることが困難であるとともに加圧ロール70の構成が複雑化し、製造コストの面からも実現性が低い。これに対して、加圧ロール70の外部にその表面温度を上昇させる加熱手段を設ける場合には、製造コストが割高となって実現性が低い。なお、定着ベルト62の温度を高く設定して加圧ロール70の温度低下を抑制する場合には、画像の光沢度が上がってしまう。
【0045】
この点、本実施形態においては、新たな加熱手段を必要とすることなく、また、定着ベルト62の温度を高めることなく加圧ロール70の温度低下を抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態では、用紙Pのサイズや厚さにより定着ベルト62の加熱の態様を変化させている。たとえば、用紙PがA3サイズの場合には、ハロゲンランプ61a,63a,64aを全て点灯させ、B5サイズの場合にはいずれかのハロゲンランプ61a,63a,64aの点灯を停止する。このような制御は、給紙手段41が収容する用紙Pのサイズに基づいて行われる。
【0047】
また、定着ベルト62を介さずに定着ロール61を加圧ロール70に直接圧迫する構成においても、用紙Pのサイズや厚さによりハロゲンランプ61aへの通電を変更する。そのような構成で、用紙Pのサイズが大きいものから小さいものに変わった場合には、ハロゲンランプ61aへの通電を変更しても、定着ロール61の温度分布は、大きいサイズの用紙Pの場合の状態がしばらく続く。このため、定着ロール61の小さいサイズの用紙Pに対応する部分に温度差が生じ、形成した画像の光沢度にムラが生じることがあった。
【0048】
この点、上記実施形態では、熱容量の小さな定着ベルト62によって定着を行っているから、定着ベルト62の位置による温度差を均一な状態に速やかに近付けることができ、光沢度のムラの発生を抑制することができる。
【0049】
(4)実施形態の変更例
上記した実施形態において、ハロゲンランプ61a,63a,64aの温度設定を軸方向位置で変えて、定着ベルト62の非通紙領域Aの温度を通紙領域Bの温度よりも高く設定することができる。非通紙領域Aにおける定着ベルト62の温度を高くしても画像の光沢度に影響はないが、非通紙領域Aからヒートパイプ80を介して通紙領域Bに伝達される熱量が多く、通紙領域Bにおける加圧ロール70の温度低下を効果的に抑制することができる。
【0050】
上記とは逆に、定着ベルト62の非通紙領域Aの温度を通紙領域Bの温度よりも低く設定することも可能である。薄い用紙Pに画像形成を連続的に行う場合には、加圧ロール70から奪われる熱の量が少なく、加圧ロール70の温度が上昇し過ぎてしまうことがあり、そのような場合には、定着中の用紙Pから水蒸気が膨張することに起因して画像が粒状化する。そこで、定着ベルト62の温度を上記のように設定することにより、加圧ロール70の温度が上昇し過ぎないようにすることができる。なお、本実施形態において「薄い用紙」とは、82g/m2未満の用紙をいう。
【0051】
次に、厚い用紙Pの画像形成を行う場合には、加圧ロール70の温度は、用紙Pに奪われる熱量を見越して薄い用紙Pの画像形成を行う場合よりも高く設定される。したがって、厚い用紙Pから薄い用紙Pに画像形成を変更する場合に加圧ロール70の温度が高いままであると、定着中の用紙Pから水蒸気が膨張することに起因して画像が粒状化する。そこで、図5に示すように、加圧ロール70に空気を噴出する噴出手段の一例としてのファン95を備えることができる。ファン95は、加圧ロール70の軸方向の全域を冷却する。噴出手段は、ファン95に限らず、定着装置の外部に設けた送風手段にダクトを接続し、ダクトの端部を加圧ロール70に臨ませてもよい。
【0052】
また、ヒートパイプ80は上記実施形態に限定されず種各の変更が可能である。たとえば、図4に示すように、2つの回転可能なヒートパイプ90,91に無端状のベルト92を掛け回し、ベルト92を加圧ロール70に押し付けて構成することができる。このような態様では、ヒートパイプ90,91が複数であること、ベルト92が加圧ロール70に面接触することから、加圧ロール70の非通紙領域Aから通紙領域Bへの熱の伝達を効率よく行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に係る定着装置は、例えば、印刷機、複写機、プリンタ、ファクシミリ、およびこれらの機能を複合させた装置等の画像形成装置等に利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 画像形成装置
10Y,10M,10C,10K 画像形成ユニット
60 定着装置
61 定着ロール
61a ハロゲンランプ
62 定着ベルト
70 加圧ロール
80 ヒートパイプ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着部材と、
前記定着部材に押し付けられながら回転する加圧部材と、
前記定着部材と前記加圧部材との接触部であって記録媒体を定着する定着部と、
前記定着部よりも前記加圧部材の回転方向下流側で、前記記録媒体の搬送方向と直交する軸方向長さよりも長い領域で前記加圧部材と接触する温度均一化部材とを備えたことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
定着部材と、
前記定着部材に押し付けられながら回転する加圧部材と、
前記定着部材と前記加圧部材との接触部であって記録媒体を定着する定着部と、
前記定着部よりも前記加圧部材の回転方向下流側で、前記加圧部材と接触し、軸方向において前記記録媒体に接触しない領域の前記加圧部材から、前記記録媒体に接触する領域の前記加圧部材に熱を移動させることで該表面温度を均一化させる温度均一化部材とを備えたことを特徴とする定着装置。
【請求項3】
前記定着部材は加熱手段により加熱され、前記記録媒体が前記定着部を通過するときに接触する接触領域より軸方向外側の部分における前記定着部材の表面温度を、前記接触領域における該表面温度よりも高く設定したことを特徴とする請求項1または2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記定着部材は加熱手段により加熱され、前記記録媒体が前記定着部を通過するときに接触する接触領域より軸方向外側の部分における前記定着部材の表面温度を、前記接触領域における該表面温度よりも低く設定したことを特徴とする請求項1または2に記載の定着装置。
【請求項5】
前記加圧部材に空気を噴出する噴出手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の定着装置。
【請求項6】
前記定着部材は、前記加圧部材と向かい合って回転する支持部材と、前記支持部材に掛け回された無端状の帯状体とを備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の定着装置。
【請求項7】
記録媒体に画像を形成する画像形成部と、
前記記録媒体に形成された画像を該記録媒体に定着する請求項1ないし6のいずれかに記載の定着装置を備えた画像形成装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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