説明

定着装置および画像形成装置

【課題】本発明は、誘導加熱方式の定着装置において、交流磁界を生成する磁界生成部材の過剰な温度上昇を抑制する。
【解決手段】導電層が形成され、導電層が電磁誘導加熱されて発熱する定着ベルト61と、交流電流が供給されることで、定着ベルト61の導電層と交差する交流磁界を生成する励磁コイル82と、励磁コイル82に対峙して設けられ、励磁コイル82に向かって突出する突出部81bを有し、突出部81bによって励磁コイル82を支持する内側支持体81と、励磁コイル82を挟んで内側支持体81と対向して設けられ、励磁コイル82を内側支持体81に向けて押し付けて支持する外側支持体83とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
公報記載の従来技術として、例えば互いに接触しながら回転する定着ローラおよび加圧ローラを備え、記録材に転写されたトナー等を定着させる定着装置において、励磁コイルをコイルガイドで支持して定着ローラの外周面に対向するように配置し、励磁コイルに交流電流を流すことにより、定着ローラを誘導加熱するものが存在する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−014896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、誘導加熱方式の定着装置において、交流磁界を生成する磁界生成部材の過剰な温度上昇を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、導電層が形成され、当該導電層が電磁誘導加熱されて発熱することで記録材にトナーを定着する定着部材と、交流電流が供給されることで、前記定着部材の前記導電層と交差する交流磁界を生成する磁界生成部材と、前記磁界生成部材に対峙して設けられ、当該磁界生成部材に向かって突出する突出部を有し、当該突出部によって当該磁界生成部材を支持する第1支持部材と、前記磁界生成部材を挟んで前記第1支持部材と対向して設けられ、当該磁界生成部材を当該第1支持部材に向けて押し付けて支持する第2支持部材とを備える定着装置である。
【0006】
請求項2記載の発明は、前記定着部材は、回転可能に支持され、前記突出部は、前記定着部材の長手方向に沿って設けられることを特徴とする請求項1記載の定着装置である。
請求項3記載の発明は、前記磁界生成部材にて生成された交流磁界を前記定着部材に導く磁路を形成する磁心部材をさらに備え、前記第1支持部材は、前記定着部材と前記磁界生成部材との間に設けられ、前記第2支持部材は、前記磁界生成部材と前記磁心部材との間に設けられるとともに、当該磁界生成部材と当該磁心部材とが接触しないように、当該磁界生成部材および当該磁心部材を支持することを特徴とする請求項1または2記載の定着装置である。
請求項4記載の発明は、前記第2支持部材は、前記磁界生成部材に向かって突出する突出部を有し、前記第1支持部材の前記突出部と前記第2支持部材の前記突出部とが前記磁界生成部材に接することで、当該磁界生成部材を支持することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の定着装置である。
請求項5記載の発明は、前記第1支持部材または前記第2支持部材と前記磁界生成部材との間に、空気流を送り込む送風部材をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の定着装置である。
【0007】
請求項6記載の発明は、トナー像を形成するトナー像形成手段と、前記トナー像形成手段によって形成されたトナー像を記録材に転写する転写手段と、記録材に転写されたトナー像を記録材に定着する定着手段とを有し、前記定着手段は、導電層が形成され、当該導電層が電磁誘導加熱されて発熱することで記録材にトナーを定着する定着部材と、交流電流が供給されることで、前記定着部材の前記導電層と交差する交流磁界を生成する磁界生成部材と、前記定着部材と前記磁界生成部材との間に設けられる第1支持部材と、前記磁界生成部材を挟んで前記第1支持部材と対向するように設けられる第2支持部材と、前記第1支持部材または前記第2支持部材の少なくとも一方に設けられ、当該第1支持部材または当該第2支持部材と前記磁界生成部材との間に間隙が形成されるように、当該磁界生成部材を支持する突起とを備えることを特徴とする画像形成装置である。
【0008】
請求項7記載の発明は、前記定着部材は回転可能に支持され、前記突起は、前記定着部材の長手方向に複数、伸びて設けられ、複数の当該突起によって当該長手方向に前記間隙を形成することを特徴とする請求項6記載の画像形成装置である。
請求項8記載の発明は、前記定着手段にまたは当該定着手段とは別に設けられ、前記第1支持部材または前記第2支持部材と前記磁界生成部材との間に形成される前記間隙に空気流を送り込む送風手段をさらに有することを特徴とする請求項6または7記載の画像形成装置である。
請求項9記載の発明は、前記定着手段は、前記第2支持部材を挟んで前記磁界生成部材と対向するとともに、当該磁界生成部材と非接触に配置され、当該磁界生成部材にて生成された交流磁界を前記定着部材に導く磁路を形成する磁心部材をさらに備えることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項記載の画像形成装置である。
請求項10記載の発明は、前記突起は、前記第1支持部材および前記第2支持部材の双方に設けられることを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項記載の画像形成装置である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、誘導加熱方式の定着装置において、本構成を有していない場合に比べて、交流磁界を生成する磁界生成部材の過剰な温度上昇を抑制することができる。
請求項2記載の発明によれば、本構成を有していない場合に比べて、磁界生成部材を安定して支持することができる。
請求項3記載の発明によれば、磁界生成部材と磁心部材とを異なる部材で支持する場合に比べて、装置を小型化することができる。
請求項4記載の発明によれば、本構成を有していない場合に比べて、磁界生成部材と第1支持部材または第2支持部材との間において、磁界生成部材をより多く露出させることができる。
請求項5記載の発明によれば、本構成を有していない場合に比べて、第1支持部材または第2支持部材と磁界生成部材との間に、単位時間当たりに流れる空気の量を多くすることができる。
請求項6記載の発明によれば、誘導加熱方式の定着装置を搭載した画像形成装置において、本構成を有していない場合に比べて、交流磁界を生成する磁界生成部材の過剰な温度上昇を抑制することができる。
請求項7記載の発明によれば、本構成を有していない場合に比べて、磁界生成部材を安定して支持することができる。
請求項8記載の発明によれば、本構成を有していない場合に比べて、間隙において単位時間当たりに流れる空気の量を多くすることができる。
請求項9記載の発明によれば、磁界生成部材と磁心部材とを絶縁するための部材を第2支持部材とは別に設ける場合に比べて、装置を小型化することができる。
請求項10記載の発明によれば、本構成を有していない場合に比べて、間隙において磁界生成部材をより多く露出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態1の定着装置が適用される画像形成装置の構成例を示した図である。
【図2】実施の形態1の定着ユニットの構成を示す正面図である。
【図3】実施の形態1の定着ユニットの構成を示す断面図である。
【図4】定着ベルトの層構成を説明する図である。
【図5】(a)がエンドキャップ部材の側面図であり、(b)が(a)をVb方向から見たエンドキャップ部材の平面図である。
【図6】実施の形態1のIHヒータの構成を説明する断面図である。
【図7】実施の形態1のIHヒータの積層構造を説明する斜視図である。
【図8】実施の形態2のIHヒータの構成を説明する断面図である。
【図9】実施の形態3のIHヒータの構成を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[実施の形態1]
<画像形成装置の説明>
図1は本実施の形態の定着装置が適用される画像形成装置1の構成例を示した図である。図1に示す画像形成装置1は、所謂タンデム型のカラープリンタであり、画像データに基づき画像形成を行う画像形成部10、画像形成装置1全体の動作を制御する制御部31を備えている。さらには、例えばパーソナルコンピュータ(PC)3や画像読取装置(スキャナ)4等との通信を行って画像データを受信する通信部32、通信部32にて受信された画像データに対し予め定めた画像処理を施す画像処理部33を備えている。
【0012】
画像形成部10は、一定の間隔を置いて並列的に配置されるトナー像形成手段の一例である4つの画像形成ユニット11Y,11M,11C,11K(「画像形成ユニット11」とも総称する)を備えている。各画像形成ユニット11は、静電潜像を形成してトナー像を保持する感光体ドラム12、感光体ドラム12の表面を予め定めた電位で一様に帯電する帯電器13、帯電器13によって帯電された感光体ドラム12を各色画像データに基づき露光するLED(Light Emitting Diode)プリントヘッド14、感光体ドラム12上に形成された静電潜像を現像する現像器15、転写後の感光体ドラム12表面を清掃するドラムクリーナ16を備えている。
画像形成ユニット11各々は、現像器15に収納されるトナーを除いて略同様に構成され、それぞれがイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)のトナー像を形成する。
【0013】
また、画像形成部10は、各画像形成ユニット11の感光体ドラム12にて形成された各色トナー像が多重転写される中間転写ベルト20、各画像形成ユニット11にて形成された各色トナー像を中間転写ベルト20に順次転写(一次転写)する一次転写ロール21を備えている。さらに、中間転写ベルト20上に重畳して転写された各色トナー像を記録材(記録紙)である用紙Pに一括転写(二次転写)する二次転写ロール22、二次転写された各色トナー像を用紙P上に定着させる定着手段(定着装置)の一例としての定着ユニット60を備えている。なお、本実施の形態の画像形成装置1では、中間転写ベルト20、一次転写ロール21、および二次転写ロール22により転写手段が構成される。
【0014】
本実施の形態の画像形成装置1では、制御部31による動作制御の下で、次のようなプロセスによる画像形成処理が行われる。すなわち、PC3やスキャナ4からの画像データは通信部32にて受信され、画像処理部33により予め定めた画像処理が施された後、各色の画像データとなって各画像形成ユニット11に送られる。そして、例えば黒(K)色トナー像を形成する画像形成ユニット11Kでは、感光体ドラム12が矢印A方向に回転しながら帯電器13により予め定めた電位で一様に帯電され、画像処理部33から送信されたK色画像データに基づきLEDプリントヘッド14が感光体ドラム12を走査露光する。それにより、感光体ドラム12上にはK色画像に関する静電潜像が形成される。感光体ドラム12上に形成されたK色静電潜像は現像器15により現像され、感光体ドラム12上にK色トナー像が形成される。同様に、画像形成ユニット11Y,11M,11Cにおいても、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色トナー像が形成される。
【0015】
各画像形成ユニット11の感光体ドラム12に形成された各色トナー像は、一次転写ロール21により矢印B方向に移動する中間転写ベルト20上に順次静電転写(一次転写)され、各色トナーが重畳された重畳トナー像が形成される。中間転写ベルト20上の重畳トナー像は、中間転写ベルト20の移動に伴って二次転写ロール22が配置された領域(二次転写部T)に搬送される。重畳トナー像が二次転写部Tに搬送されると、そのタイミングに合わせて用紙保持部40から用紙Pが二次転写部Tに供給される。そして、重畳トナー像は、二次転写部Tにて二次転写ロール22が形成する転写電界により、搬送されてきた用紙P上に一括して静電転写(二次転写)される。
【0016】
その後、重畳トナー像が静電転写された用紙Pは、定着ユニット60まで搬送される。定着ユニット60に搬送された用紙P上のトナー像は、定着ユニット60によって熱および圧力を受け、用紙P上に定着される。そして、定着画像が形成された用紙Pは、画像形成装置1の排出部に設けられた用紙積載部45に搬送される。
一方、一次転写後に感光体ドラム12に付着しているトナー(一次転写残トナー)、および二次転写後に中間転写ベルト20に付着しているトナー(二次転写残トナー)は、それぞれドラムクリーナ16、およびベルトクリーナ25によって除去される。
このようにして、画像形成装置1での画像形成処理がプリント枚数分のサイクルだけ繰り返し実行される。
【0017】
<定着ユニットの構成の説明>
次に、本実施の形態の定着ユニット60について説明する。
図2および図3は本実施の形態の定着ユニット60の構成を示す図であり、図2は正面図、図3は図2におけるIII−III断面図である。
まず、断面図である図3に示すように、定着ユニット60は、交流磁界を生成するIH(Induction Heating)ヒータ80、IHヒータ80により電磁誘導加熱されてトナー像を定着する定着部材の一例としての定着ベルト61、定着ベルト61に対向するように配置された加圧ロール62、定着ベルト61を介して加圧ロール62から押圧される押圧パッド63を備えている。
さらに、定着ユニット60は、押圧パッド63等の構成部材を支持するホルダ65、IHヒータ80にて生成された交流磁界を誘導して磁路を形成する感温磁性部材64、感温磁性部材64を通過した磁力線を誘導する誘導部材66、定着ベルト61からの用紙Pの剥離を補助する剥離補助部材70を備えている。
さらに、正面図である図2に示すように、定着ユニット60は、IHヒータ80に対して冷却風を送風する送風手段(送風部材)としての送風ユニット300を備えている。
【0018】
<定着ベルトの説明>
図4は、定着ベルト61の層構成を説明する図である。定着ベルト61は、原形が円筒形状の無端のベルト部材で構成され、例えば原形(円筒形状)時の直径が30mm、幅方向長が370mmに形成されている。また、図4に示すように、定着ベルト61は、基材層611、基材層611の上に積層された導電発熱層612、トナー像の定着性を向上させる弾性層613、最上層に被覆された表面離型層614からなる多層構造のベルト部材である。
【0019】
基材層611は、薄層の導電発熱層612を支持するとともに、定着ベルト61全体としての機械的強度を形成する耐熱性のシート状部材で構成される。また、基材層611は、IHヒータ80にて生成された交流磁界が感温磁性部材64まで作用するように、磁界を通過させる物性(比透磁率、固有抵抗)を持った材質、厚さで形成される。一方、基材層611自身は、磁界の作用により発熱しないか、または発熱し難く構成される。
具体的には、基材層611として、例えば、厚さ30〜200μm(好ましくは50〜150μm)の非磁性ステンレススチール等の非磁性金属や、厚さ60〜200μmの樹脂材料等が用いられる。
【0020】
導電発熱層612は、導電層の一例であって、IHヒータ80にて生成される交流磁界によって電磁誘導加熱される電磁誘導発熱体層である。すなわち、導電発熱層612は、IHヒータ80からの交流磁界が厚さ方向に通過することにより、渦電流を発生させる層である。
通常、IHヒータ80に交流電流を供給する励磁回路88(後述する図6参照)の電源としては、安価に製造できる汎用電源が使用される。そのため、IHヒータ80により生成される交流磁界の周波数は、一般に、汎用電源による20k〜100kHzとなる。それにより、導電発熱層612は、周波数20k〜100kHzの交流磁界が侵入し通過するように構成される。
【0021】
導電発熱層612に交流磁界が侵入できる領域は、交流磁界が1/eに減衰する領域である「表皮深さ(δ)」として規定され、次の(1)式から導かれる。(1)式において、fは交流磁界の周波数(例えば、20kHz)、ρは固有抵抗値(Ω・m)、μは比透磁率である。
そのため、導電発熱層612の厚さは、周波数20k〜100kHzの交流磁界が導電発熱層612に侵入し通過するように、(1)式で規定される導電発熱層612の表皮深さ(δ)よりも薄層に構成される。また、導電発熱層612を構成する材料として、例えば、Au,Ag,Al,Cu,Zn,Sn,Pb,Bi,Be,Sb等の金属や、これらの金属合金が用いられる。
【0022】
【数1】

【0023】
具体的には、導電発熱層612として、厚さ2〜20μm、固有抵抗2.7×10−8Ω・m以下の例えばCu等の非磁性金属(比透磁率が概ね1の常磁性体)が用いられる。
また、定着ベルト61が定着設定温度まで加熱されるまでに要する時間(以下、「ウォームアップタイム」)を短縮する観点からも、導電発熱層612は、薄層に構成するのが好ましい。
【0024】
次に、弾性層613は、シリコーンゴム等の耐熱性の弾性体で構成される。定着対象となる用紙Pに保持されるトナー像は、粉体である各色トナーが積層して形成されている。そのため、ニップ部Nにおいてトナー像の全体に均一に熱を供給するには、用紙P上のトナー像の凹凸に倣って定着ベルト61表面が変形することが好ましい。そこで、弾性層613には、例えば厚みが100〜600μm、硬度が10°〜30°(JIS−A)のシリコーンゴムが好適である。
表面離型層614は、用紙P上に保持された未定着トナー像と直接接触するため、離型性の高い材質が使用される。例えば、PFA(テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、シリコーン共重合体、またはこれらの複合層等が用いられる。表面離型層614の厚さとしては、薄すぎると、耐摩耗性の面で充分でなく、定着ベルト61の寿命を短くする。その一方で、厚すぎると、定着ベルト61の熱容量が大きくなりすぎ、ウォームアップタイムが長くなる。そこで、表面離型層614の厚さとして、耐摩耗性と熱容量とのバランスを考慮し、1〜50μmが好適である。
【0025】
<押圧パッドの説明>
押圧パッド63は、シリコーンゴム等やフッ素ゴム等の弾性体や、LCP、PPS等の耐熱性樹脂で構成され、加圧ロール62と対向する位置にてホルダ65に支持される(図3参照)。そして、定着ベルト61を介して加圧ロール62から押圧される状態で配置され、加圧ロール62との間でニップ部Nを形成する。
また、押圧パッド63は、ニップ部Nの入口側(用紙Pの搬送方向上流側)のプレニップ領域63aと、ニップ部Nの出口側(用紙Pの搬送方向下流側)の剥離ニップ領域63bとで異なるニップ圧が設定されている。すなわち、プレニップ領域63aでは、加圧ロール62側の面がほぼ加圧ロール62の外周面に倣う円弧形状に形成され、均一で幅の広いニップ部Nを形成する。また、剥離ニップ領域63bでは、剥離ニップ領域63bを通過する定着ベルト61の曲率半径が小さくなるように、加圧ロール62表面から局所的に大きなニップ圧で押圧されるように形成される。それにより、剥離ニップ領域63bを通過する用紙Pに定着ベルト61表面から離れる方向のカール(ダウンカール)を形成して、用紙Pに対する定着ベルト61表面からの剥離を促進させている。
【0026】
なお、本実施の形態では、押圧パッド63による剥離の補助手段として、ニップ部Nの下流側に、剥離補助部材70を配置している。剥離補助部材70は、剥離バッフル71が定着ベルト61の回転移動方向と対向する向き(所謂カウンタ方向)に定着ベルト61と近接する状態でホルダ72によって支持される。そして、押圧パッド63の出口にて用紙Pに形成されたカール部分を剥離バッフル71により支持することで、用紙Pが定着ベルト61方向に向かうことを抑制する。
【0027】
<感温磁性部材の説明>
次に、感温磁性部材64は、定着ベルト61の内周面に倣った円弧形状で形成され、定着ベルト61の内周面とは予め定めた間隙(例えば、0.5〜1.5mm)を有するように近接させるが、非接触で配置される。感温磁性部材64を定着ベルト61と近接させて配置するのは、感温磁性部材64の温度が定着ベルト61の温度に対応して変化する、すなわち、感温磁性部材64の温度が定着ベルト61の温度と略同じ温度となるように構成するためである。また、感温磁性部材64を定着ベルト61と非接触で配置するのは、画像形成装置1のメインスイッチがオンされ、定着ベルト61が定着設定温度まで加熱される際に、定着ベルト61の熱が感温磁性部材64に流入するのを抑制して、ウォームアップタイムの短縮を図るためである。
【0028】
また、感温磁性部材64は、その磁気特性の透磁率が急変する温度である「透磁率変化開始温度」(後段参照)が、各色トナー像が溶融する定着設定温度以上であって、定着ベルト61の弾性層613や表面離型層614の耐熱温度よりも低い温度範囲内に設定された材質で構成される。すなわち、感温磁性部材64は、定着設定温度を含む温度領域において強磁性と非磁性(常磁性)との間を可逆的に変化する特性(「感温磁性」)を有する材質で構成される。そして、感温磁性部材64は、強磁性を呈する透磁率変化開始温度以下の温度範囲において磁路形成部材として機能し、IHヒータ80にて生成され定着ベルト61を透過した磁力線を内部に誘導して、感温磁性部材64の内部を通過する磁路を形成する。それにより、感温磁性部材64は、定着ベルト61とIHヒータ80の励磁コイル82(後述する図6参照)とを内部に包み込むような閉磁路を形成する。一方、透磁率変化開始温度を超える温度範囲においては、感温磁性部材64は、IHヒータ80にて生成され定着ベルト61を透過した磁力線を、感温磁性部材64の厚さ方向に横切るように透過させる。それにより、IHヒータ80にて生成され定着ベルト61を透過した磁力線は、感温磁性部材64を透過し、誘導部材66の内部を通過してIHヒータ80に戻る磁路を形成する。
なお、ここでの「透磁率変化開始温度」とは、透磁率(例えば、JIS C2531で測定される透磁率)が連続的に低下を開始する温度であり、例えば感温磁性部材64等の部材を透過する磁束量(磁力線の数)が変化し始める温度点をいう。したがって、透磁率変化開始温度は、物質が磁性を消失する温度であるキュリー点に近い温度となるが、キュリー点とは異なる概念を有するものである。
【0029】
感温磁性部材64に用いる材質としては、透磁率変化開始温度が例えば140(定着設定温度)〜240℃の範囲内に設定された例えばFe−Ni合金(パーマロイ)等の二元系整磁鋼やFe−Ni−Cr合金等の三元系の整磁鋼等が用いられる。例えば、Fe−Niの二元系整磁鋼においては約Fe64%、Ni36%(原子数比)とすることで225℃前後に透磁率変化開始温度を設定することができる。このようなパーマロイや整磁鋼等の金属合金等は、成型性や加工性に優れ、伝熱性も高く安価である等の理由から、感温磁性部材64に適する。その他の材質としては、Fe,Ni,Si,B,Nb,Cu,Zr,Co,Cr,V,Mn,Mo等からなる金属合金が用いられる。
また、感温磁性部材64は、IHヒータ80により生成された交流磁界(磁力線)に対する表皮深さδ(上記(1)式参照)よりも薄い厚さで形成される。具体的には、例えばFe−Ni合金を用いた場合には50〜300μm程度に設定される。
【0030】
<ホルダの説明>
押圧パッド63を支持するホルダ65は、押圧パッド63が加圧ロール62からの押圧力を受けた状態での撓み量が一定量以下となるように、剛性の高い材料で構成される。それにより、ニップ部Nにおける長手方向の圧力(ニップ圧N)の均一性を維持している。さらに、本実施の形態の定着ユニット60では、電磁誘導を用いて定着ベルト61を加熱する構成を採用していることから、ホルダ65は、誘導磁界に影響を与えないか、または与え難い材料であり、かつ、誘導磁界から影響を受けないか、または受け難い材料で構成される。例えば、ガラス混入PPS(ポリフェニレンサルファイド)等の耐熱性樹脂や、例えばAl,Cu,Ag等の常磁性金属材料等が用いられる。
【0031】
<誘導部材の説明>
誘導部材66は、感温磁性部材64の内周面に倣った円弧形状で形成され、感温磁性部材64の内周面とは予め定めた間隙(例えば、1.0〜5.0mm)を有する非接触に配置される。また、誘導部材66は、例えばAg,Cu,Alといった固有抵抗値が比較的小さい非磁性金属で構成される。そして、感温磁性部材64が透磁率変化開始温度以上の温度に上昇した際に、IHヒータ80により生成された交流磁界(磁力線)を誘導して、定着ベルト61の導電発熱層612よりも渦電流Iが発生し易い状態を形成する。それにより、誘導部材66の厚さは、渦電流Iが流れ易いように、表皮深さδ(上記(1)式参照)よりも充分に厚く(例えば、1.0mm)形成される。
【0032】
<定着ベルトの駆動機構の説明>
次に、定着ベルト61の駆動機構について説明する。
正面図である図2に示したように、ホルダ65(図3参照)の軸方向両端部には、定着ベルト61の両端部の断面形状を円形に維持しながら定着ベルト61を周方向に回転駆動するエンドキャップ部材67が固定されている。そして、定着ベルト61は、両端部からエンドキャップ部材67を介した回転駆動力を直接的に受けて、例えば140mm/sのプロセススピードで図3の矢印C方向に回転移動する。なお、本実施の形態においては、定着ベルト61の回転方向と直交する方向(定着ベルト61の幅方向)を、定着ベルト61の長手方向と呼ぶ。
ここで図5は、(a)がエンドキャップ部材67の側面図であり、(b)が図5(a)をVb方向から見たエンドキャップ部材67の平面図である。図5に示したように、エンドキャップ部材67は、定着ベルト61の両端部内側に嵌合される固定部67a、固定部67aより外径が大きく形成され、定着ベルト61に装着された際に定着ベルト61よりも半径方向に張り出すように形成されたフランジ部67d、回転駆動力が伝達されるギヤ部67b、ホルダ65の両端部に形成された支持部65aと結合部材166を介して回転自在に結合されたベアリング軸受部67cを備える。そして、上記図2に示したように、ホルダ65の両端部の支持部65aが定着ユニット60の筐体69の両端部に固定されることで、エンドキャップ部材67は、支持部65aに結合されたベアリング軸受部67cを介して回転自在に支持される。
エンドキャップ部材67を構成する材質としては、機械的強度や耐熱性の高い所謂エンジニアリングプラスチックスが用いられる。例えば、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、PEEK樹脂、PES樹脂、PPS樹脂、LCP樹脂等が適する。
【0033】
そして、図2に示すように、定着ユニット60では、駆動モータ90からの回転駆動力が伝達ギヤ91,92を介してシャフト93に伝達され、シャフト93に結合された伝達ギヤ94,95から両エンドキャップ部材67に伝達される。それによって、エンドキャップ部材67から定着ベルト61に回転駆動力が伝わり、エンドキャップ部材67と定着ベルト61とが一体となって回転駆動される。
このように、定着ベルト61が定着ベルト61の両端部から駆動力を直接受けて回転するので、定着ベルト61は安定して回転する。
【0034】
ここで、定着ベルト61が両端部のエンドキャップ部材67から駆動力を直接受けて回転する場合には、一般に、0.1〜0.5N・m程度のトルクが作用する。ところが、本実施の形態の定着ベルト61では、基材層611を機械的強度の高い例えば非磁性ステンレススチール等で構成している。そのため、定着ベルト61全体に0.1〜0.5N・m程度のねじりトルクが作用した場合でも、定着ベルト61には座屈等が生じ難い。
また、エンドキャップ部材67のフランジ部67dにより定着ベルト61の片寄りを抑えているが、その際の定着ベルト61には、一般に、端部(フランジ部67d)側から軸方向に向けて1〜5N程度の圧縮力が働く。しかし、定着ベルト61がこのような圧縮力を受けた場合においても、定着ベルト61の基材層611が非磁性ステンレススチール等で構成されていることから、座屈等の発生が抑制される。
上記のように、本実施の形態の定着ベルト61においては、定着ベルト61の両端部から駆動力を直接受けて回転するので、安定した回転が行われる。また、その際に、定着ベルト61の基材層611を機械的強度の高い例えば非磁性ステンレススチール等で構成することで、ねじりトルクや圧縮力に対して座屈等が発生し難い構成を実現している。さらには、基材層611および導電発熱層612を薄層に形成して、定着ベルト61全体としての柔軟性・フレキシブル性を確保しているので、ニップ部Nに倣った変形と形状復元とが行われる。
【0035】
図3に戻り、加圧ロール62は、定着ベルト61に対向するように配置され、定着ベルト61に従動して図3の矢印D方向に、例えば140mm/sのプロセススピードで回転する。そして、加圧ロール62と押圧パッド63とにより定着ベルト61を挟持した状態でニップ部Nを形成し、このニップ部Nに未定着トナー像を保持した用紙Pを通過させることで、熱および圧力を加えて未定着トナー像を用紙Pに定着する。
加圧ロール62は、例えば直径18mmの中実のアルミニウム製コア(円柱状芯金)621と、コア621の外周面に被覆された例えば厚さ5mmのシリコーンスポンジ等の耐熱性弾性体層622と、さらに例えば厚さ50μmのカーボン配合のPFA等の耐熱性樹脂被覆または耐熱性ゴム被覆による離型層623とが積層されて構成される。そして、押圧バネ68(図2参照)により例えば25kgfの荷重で定着ベルト61を介して押圧パッド63を押圧している。
【0036】
<IHヒータの説明>
続いて、定着ベルト61の導電発熱層612に交流磁界を作用させて電磁誘導加熱するIHヒータ80について説明する。
図6は、本実施の形態のIHヒータ80の構成を説明する断面図である。また、図7は、本実施の形態のIHヒータ80の積層構造を説明する斜視図である。図6に示したように、IHヒータ80は、交流磁界を生成する磁界生成部材の一例としての励磁コイル82、例えば耐熱性樹脂などの非磁性体から構成され、励磁コイル82を支持する内側支持体81および外側支持体83を備えている。また、IHヒータ80は、励磁コイル82にて生成された交流磁界の磁路を形成する磁心部材の一例としての磁心84を備えている。さらに、IHヒータ80は、磁界を遮蔽するシールド85、磁心を外側支持体83側に加圧する加圧部材86、励磁コイル82に交流電流を供給する励磁回路88を備えている。
【0037】
励磁コイル82は、相互に絶縁された例えば直径0.17mmの銅線材を例えば90本束ねたリッツ線が、中空部82aを形成するように、長円形状や楕円形状、長方形状等の中空き閉ループ状に巻かれて構成される。また、励磁コイル82は、励磁コイル82の長手方向が定着ベルト61の長手方向に沿うように配置されている。なお、本実施の形態では、中空き閉ループ状に巻かれたリッツ線がばらけないように、リッツ線の束は、結束テープ82bにより複数個所で結束されている。
そして、励磁コイル82に励磁回路88からあらかじめ定められた周波数の交流電流が供給されることにより、励磁コイル82の周囲には、閉ループ状に巻かれたリッツ線を中心とする交流磁界が生成される。励磁回路88から励磁コイル82に供給される交流電流の周波数は、一般に、上記した汎用電源により生成される20k〜100kHzが用いられる。
【0038】
本実施の形態の内側支持体81は、第1支持部材の一例であって、断面が定着ベルト61の表面形状に沿って湾曲した形状で形成される基部81aと、基部81aから励磁コイル82へ向かって突出する複数の突出部81bとから構成される。図7に示すように、複数の突出部81bは、突起の一例であって、それぞれ、内側支持体81における定着ベルト61の回転方向と直交するとともに、内側支持体81の一端から他端に向かう方向(定着ベルト61の長手方向)に沿って設けられる。さらに、複数の突出部81bは、それぞれ隣接する突出部81bとの間に間隔をとって設けられる。したがって、隣接する突出部81b同士の間には、内側支持体81における基部81aの表面が露出している。
また、内側支持体81を構成する材質としては、例えば、耐熱ガラス、ポリカーボネート、ポリエーテルサルフォン、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等の耐熱性樹脂、またはこれらにガラス繊維を混合した耐熱性樹脂等の耐熱性のある非磁性材料が用いられる。
【0039】
本実施の形態の外側支持体83は、第2支持部材の一例であって、断面が励磁コイル82の表面形状に沿って湾曲した形状で形成される。
また、外側支持体83を構成する材質としては、内側支持体81と同様に、例えば、耐熱ガラス、ポリカーボネート、ポリエーテルサルフォン、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等の耐熱性樹脂、またはこれらにガラス繊維を混合した耐熱性樹脂等の耐熱性のある非磁性材料が用いられる。ただし、外側支持体83を構成する材質としては、必ずしも内側支持体81と同様の材料を用いる必要はなく、例えば、シリコーンゴムなどの絶縁性および耐熱性を有する弾性体を用いてもよい。
【0040】
磁心84は、例えばソフトフェライト、フェライト樹脂、非晶質合金(アモルファス合金)、パーマロイ、整磁鋼等の高透磁率の酸化物や合金材質で構成される強磁性体が用いられる。磁心84は、励磁コイル82にて生成された交流磁界による磁力線(磁束)を内部に誘導し、磁心84から定着ベルト61を横切って感温磁性部材64方向に向かい、感温磁性部材64の中を通過して磁心84に戻るといった磁力線の通路(磁路)を形成する。すなわち、励磁コイル82にて生成された交流磁界が磁心84の内部と感温磁性部材64の内部とを通過するように構成して、磁力線が定着ベルト61と励磁コイル82とを内部に包み込むような閉磁路を形成する。それにより、励磁コイル82にて生成された交流磁界の磁力線が定着ベルト61の磁心84と対向する領域に集中される。
ここで、磁心84は磁路形成による損失が小さい材料が望ましい。具体的には、磁心84は渦電流損を小さくする形態(スリット等による電流経路遮断や分断化、薄板束ね等)での使用が望ましく、ヒステリシス損の小さい材料で形成されることが望ましい。
また、定着ベルト61の回転方向に沿った磁心84の長さは、感温磁性部材64の定着ベルト61の回転方向に沿った長さよりも小さく構成される。それにより、磁力線のIHヒータ80周辺への漏洩が減り、力率が向上する。さらには、定着ユニット60を構成する金属製部材への電磁誘導を抑え、定着ベルト61(導電発熱層612)での発熱効率を高める。
【0041】
<IHヒータ80の積層構造の説明>
続いて、本実施の形態のIHヒータ80の積層構造について説明する。
図7に示すように、本実施の形態のIHヒータ80は、定着ベルト61に近い側から順に、内側支持体81、励磁コイル82、外側支持体83、磁心84およびシールド85が順に積層された構造を備えている。
本実施の形態では、内側支持体81の突出部81bと外側支持体83の下側面(内側支持体81側の面)とで励磁コイル82を挟むことで、励磁コイル82を固定している。
本実施の形態の内側支持体81は、突出部81bの上面が、上記したエンドキャップ部材67に支持されて略円形状の軌跡を描きながら回転移動する定着ベルト61との距離が規定値(設計値)に設定されている。それにより、励磁コイル82が突出部81bの上面に密着して配置されることで、励磁コイル82と定着ベルト61との距離が設計値に設定されることになる。
【0042】
ここで、本実施の形態では、上述したように、内側支持体81の複数の突出部81bは、それぞれ隣接する突出部81bとの間に間隔を有するように、内側支持体81の長手方向に沿って形成されている。したがって、励磁コイル82と内側支持体81の基部81aとの間には、複数の突出部81bに沿って、内側支持体81の長手方向に向かう複数の間隙が形成される。また、複数の間隙の両端部(内側支持体81の一端側および他端側)は、それぞれ外部に露出しており、後述するように、送風ユニット300によりそれぞれの間隙に対して冷却風を流すことが可能になっている。
さらに、本実施の形態では、外側支持体83は、定着ベルト61の回転方向両端部が、内側支持体81における定着ベルト61の回転方向両端部に取り付けられる。それにより、外側支持体83は、外側支持体83の下側面が励磁コイル82に密着するように位置決めされる。
以上より、励磁コイル82は、内側支持体81における複数の突出部81bの上面と外側支持体83の下側面との間に密着して挟まれ、固定されることになる。
【0043】
また、本実施の形態の磁心84は、磁心84の両端部が内側支持体81における定着ベルト61の回転方向両側部に取り付けられる(図7参照)。それにより、磁心84の下側面(内側支持体81側の面)は、外側支持体83の上側面と接触して設置される。また、磁心84は、シールド85が内側支持体81に取り付けられることで、シールド85の下部面に設けられた加圧部材86により内側支持体81側に加圧される。
ここで、本実施の形態では、励磁コイル82と磁心84とが、外側支持体83を隔てて互いに接触しないように配置され、絶縁されている。したがって、励磁コイル82と磁心84とを絶縁するために励磁コイル82と磁心84との間にさらに空間を設ける必要がなく、本実施の形態の構成を有さない場合と比較して、装置を小型化することが可能になる。
なお、加圧部材86としては、例えばシリコーンゴム等やフッ素ゴム等の弾性体の他に、バネ等の弾性部材を用いてもよい。
【0044】
一般に、励磁コイル82にて交流磁界が生成されると、励磁コイル82近傍に配置された磁心84や定着ベルト61の内周面側に配置された感温磁性部材64等との間で相互に磁力が作用し、励磁コイル82自身に振動(磁歪)が発生する。そのため、内側支持体81に対して例えば接着剤等の所謂弾性体(ヤング率が低い材質)を用いて励磁コイル82を固定したとすると、定着ユニット60の長期に亘る累積使用により、励磁コイル82の振動が要因となって、接着剤等の弾性体と励磁コイル82との間が剥離し易くなる。そして、励磁コイル82が接着剤等の弾性体から剥離すると、励磁コイル82が内側支持体81上で位置ずれを起こし、或いは、励磁コイル82に変形が生じる。そうなると、励磁コイル82の定着ベルト61との距離が当初の設計値から外れ、磁心84を経て定着ベルト61を通過する磁力線の密度(磁束密度)が、定着ベルト61表面で部分的にばらつくこととなる。そのために、定着ベルト61で発生する渦電流Iの大きさに不均一が生じ、定着ベルト61表面での発熱量に部分的なばらつきが生じた状態が形成される場合がある。
【0045】
また、接着剤等の弾性体を用いて励磁コイル82を内側支持体81に固定する場合には、接着剤等が固化するまでの間、励磁コイル82を内側支持体81との位置ずれが生じないように固定しておく必要がある。ところが、励磁コイル82は例えばリッツ線を閉ループ状に束ねて固定されたものであるため、変形が生じ易い。そのため、接着剤等が固化するまで励磁コイル82を内側支持体81と位置ずれが生じないように固定しておくことは困難を伴い、励磁コイル82の内側支持体81に対する位置精度が低下し易くなる。励磁コイル82の内側支持体81に対する位置精度が低下すると、上記と同様に、定着ベルト61表面での発熱量に部分的なばらつきが生じた状態が形成される。
【0046】
そこで、本実施の形態のIHヒータ80では、励磁コイル82を内側支持体81の突出部81bと外側支持体83の下側面とで挟むことで、励磁コイル82を固定している。これにより、励磁コイル82を接着剤等で接着しない場合でも、励磁コイル82を定着ベルト61に対して位置決めすることが可能になる。したがって、励磁コイル82を接着剤等で接着しない場合には、接着剤等の剥がれに伴う励磁コイル82の位置ずれや励磁コイル82の変形が起こるのを抑制でき、定着ベルト61と励磁コイル82との間を初期に設定された位置関係に維持することが可能になる。
また、内側支持体81の複数の突出部81bは、内側支持体81の長手方向に沿って形成されているため、励磁コイル82を、長手方向にわたって均一に固定することができる。それにより、励磁コイル82と内側支持体81および外側支持体83との密着性が長手方向にわたって高められ、励磁コイル82と定着ベルト61との位置が長手方向にわたって設定される。
さらには、接着材等を用いる必要がないため、IHヒータ80の製造時には、接着剤等が固化するまでの時間を要さず、短時間かつ低コストで励磁コイル82を取り付けることができる。
【0047】
<送風ユニットの説明>
続いて、IHヒータ80に対して冷却風を送風する送風ユニット300について説明する。図2に示すように、送風ユニット300は、励磁コイル82を冷却するための冷却風を発生させるファン301と、ファン301により発生された冷却風をIHヒータ80に対して供給する供給ダクト302と、IHヒータ80を通過した冷却風を排出する排出ダクト303とを備える。
なお、本実施の形態においては、送風ユニット300を、定着ユニット60に設けたが、これに限られない。例えば、送風ユニット300のファン301、供給ダクト302および排出ダクト303を画像形成装置1本体に設け、定着ユニット60を画像形成装置1に取り付けることにより、送風ユニット300の供給ダクト302および排出ダクト303が定着ユニット60のIHヒータ80に対して接続されるように構成することも可能である。
【0048】
<定着動作の説明>
次に、本実施の形態の定着ユニット60における定着動作について説明する。
画像形成装置1の二次転写部T(図1参照)にて重畳トナー像が静電転写された用紙Pは、定着ユニット60の定着ベルト61と加圧ロール62とで形成されたニップ部N(図3参照)に向けて搬送される。用紙P表面のトナー像は、ニップ部Nにおいて、IHヒータ80により加熱された定着ベルト61と加圧ロール62とによって加熱押圧される。そして、トナー像が用紙Pの表面に溶融圧着され、定着される。
続いて、用紙Pは、定着ベルト61と加圧ロール62とで形成されたニップ部Nから送り出され、用紙P自身の剛性によって送り出された方向に直進しようとし、曲げ回される定着ベルト61から先端が剥離され、その用紙Pの先端と定着ベルト61との間に剥離補助部材70が入り込み、用紙Pを定着ベルト61表面から剥離する。その後、用紙Pは、画像形成装置1の排出部に設けられた用紙積載部45に搬送される。
【0049】
ここで、定着動作においてIHヒータ80により定着ベルト61が加熱される状態について述べる。
画像形成装置1においてトナー像形成動作が開始されると、制御部31(図1参照)はIHヒータ80の励磁回路88に制御信号を出力し、励磁コイル82に交流電流を供給する。励磁コイル82に交流電流が供給されることにより、励磁コイル82の周囲には、閉ループ状に巻かれたリッツ線を中心とする交流磁界が生成される。そして、励磁コイル82にて生成された交流磁界による磁力線は、定着ベルト61を透過し、感温磁性部材64の内部を通過して励磁コイル82に戻るという磁路を形成する。
磁力線が厚さ方向に横切る定着ベルト61の導電発熱層612では、単位面積当たりの磁力線の数(磁束密度)の変化量に比例した渦電流Iが発生する。そして、導電発熱層612に生じた渦電流Iは、導電発熱層612の固有抵抗値Rと渦電流Iの二乗との積であるジュール熱W(W=IR)を発生させる。このジュール熱Wにより、定着ベルト61が加熱される。
【0050】
ところで、本実施の形態における励磁コイル82は、導電発熱層612と同様に、固有の抵抗値を有する。したがって、励磁コイル82は、励磁回路88により定着ベルト61を加熱するための交流電流が供給されると、励磁コイル82自身の抵抗値によりジュール熱を発生し、自己発熱することになる。そして、自己発熱により励磁コイル82の温度が上昇すると、励磁コイル82自身の抵抗値が上昇し、励磁コイル82において消費する電力が多くなり、定着ベルト61にて効率的に渦電流Iを発生させることが困難になる。また、発熱量が大きい場合には、例えば、励磁コイル82が熱劣化し、励磁コイル82の耐久性が低下したり、励磁コイル82を構成するリッツ線同士の絶縁の確保が困難になったりすることがある。
このような事態が起こるのを抑制するために、本実施の形態のIHヒータ80は、励磁コイル82の過度な温度上昇を抑制する機能を備えている。
【0051】
<励磁コイルの温度上昇を抑制する機能の説明>
続いて、励磁コイル82の温度上昇を抑制する機能について説明する。
本実施の形態においては、上記定着動作を行うに際して、送風ユニット300のファン301により冷却風を発生させる。そして、IHヒータ80の一端側に設けられた供給ダクト302を介して、励磁コイル82と内側支持体81との間に形成された複数の間隙のそれぞれに対して、外部に露出する各間隙の一端側から冷却風を送り込んでいる。
各間隙に送り込まれた冷却風は、各間隙の内部を一端から他端へと流れ、そして、IHヒータ80の他端側に設けられた排出ダクト303を介して、IHヒータ80の外部に排出される。
【0052】
上述したように、本実施の形態の内側支持体81は長手方向に沿って複数の突出部81bを有しており、この突出部81bにて励磁コイル82を支持している(図6参照)。したがって、励磁コイル82と内側支持体81の基部81aとの間には、内側支持体81の長手方向に沿って、内側支持体81の一端から他端に向かう複数の間隙が形成されている。この複数の間隙は、それぞれ、内側支持体81の基部81a、隣接する2つの突出部81bおよび励磁コイル82に囲まれており、各間隙の内部では、励磁コイル82と内側支持体81とは接しておらず、励磁コイル82の表面が露出している。
したがって、冷却風は、励磁コイル82と内側支持体81との間に形成された各間隙の内部において励磁コイル82の表面に沿って流れることで、励磁コイル82にて発生した熱を励磁コイル82表面から奪い、IHヒータ80の外部へ放出することが可能になる。
これにより、本実施の形態の定着ユニット60では、励磁コイル82を冷却し、励磁コイル82の過剰な温度上昇を抑制することが可能になる。
【0053】
[実施の形態2]
続いて、本発明の実施の形態2について説明する。なお、実施の形態1と同様な構成については同じ符号を用い、ここではその詳細な説明を省略する。
図8は、実施の形態2のIHヒータ80の構成を説明する断面図である。図8に示すように、本実施の形態のIHヒータ80は、励磁コイル82、励磁コイル82を支持する内側支持体181および外側支持体183、磁心84、シールド85、加圧部材86および励磁回路88を備えている。
【0054】
本実施の形態の内側支持体181は、断面が定着ベルト61の表面形状に沿って湾曲した形状で形成される。
また、本実施の形態の外側支持体183は、断面が励磁コイル82の表面に沿って湾曲した形状で形成される基部183aと、基部183aから励磁コイル82に向かって突出する複数の突出部183bとから構成される。なお、複数の突出部183bは、突起の一例であって、それぞれ、定着ベルト61の回転方向と直交するとともに外側支持体183の一端から他端に向かう方向(定着ベルト61の長手方向)に沿って、隣接する突出部183bとの間に間隔をとって設けられる。
実施の形態1では、内側支持体81に複数の突出部81bを設けたが、実施の形態2では、内側支持体181側ではなく、外側支持体183に複数の突出部183bを設けた点で異なっている。
【0055】
本実施の形態では、内側支持体181の上側面(外側支持体183側の面)と外側支持体183の突出部183bとで励磁コイル82を挟むことで、励磁コイル82を固定している。本実施の形態の内側支持体181は、内側支持体181の上側面と、定着ベルト61との距離が規定値(設計値)に設定されている。それにより、励磁コイル82が内側支持体181の上側面に密着して配置されることで、励磁コイル82と定着ベルト61との距離が設計値に設定されることになる。
さらに、本実施の形態では、外側支持体183は、外側支持体183における定着ベルト61の回転方向両端部が、内側支持体181における定着ベルト61の回転方向両端部に取り付けられる。それにより、外側支持体183は、外側支持体183に形成された突出部183bの下面(内側支持体181側の面)が励磁コイル82に密着するように位置決めされる。
【0056】
ここで、本実施の形態では、上述したように、外側支持体183の複数の突出部183bは、それぞれ隣接する突出部183bとの間に間隔をとって、外側支持体183の長手方向に沿って形成されている。したがって、励磁コイル82と外側支持体183の基部183aとの間には、複数の突出部183bに沿って、外側支持体183の長手方向に向かう複数の間隙が形成される。そして、各間隙の内部では、励磁コイル82と外側支持体183とは接しておらず、励磁コイル82の表面が露出している。
【0057】
続いて、励磁コイル82の温度上昇を抑制する機能について説明する。
本実施の形態においては、上記定着動作を行うに際して、送風ユニット300のファン301により冷却風を発生させる。そして、IHヒータ80の一端側に設けられた供給ダクト302を介して、励磁コイル82と外側支持体183との間に形成された複数の間隙のそれぞれに対して、外部に露出する各間隙の一端側から冷却風を送り込んでいる。
各間隙に送り込まれた冷却風は、各間隙の内部を一端から他端へと流れ、そして、IHヒータ80の他端側に設けられた排出ダクト303を介して、IHヒータ80の外部に排出される。
【0058】
上述したように、本実施の形態では、励磁コイル82と外側支持体183の基部183aとの間には、外側支持体183の長手方向に沿って、外側支持体183の一端から他端に向かう複数の間隙が形成されている。この複数の間隙は、それぞれ、外側支持体183の基部183a、隣接する2つの突出部183bおよび励磁コイル82に囲まれており、各間隙の内部では、励磁コイル82と外側支持体183とは接しておらず、励磁コイル82の表面が露出している。
したがって、冷却風は、励磁コイル82と外側支持体183との間に形成された各間隙の内部において励磁コイル82の表面に沿って流れることで、励磁コイル82にて発生した熱を励磁コイル82表面から奪い、IHヒータ80の外部へ放出することが可能になる。
これにより、本実施の形態の定着ユニット60においても、励磁コイル82を冷却し、励磁コイル82の過剰な温度上昇を抑制することが可能になる。
【0059】
[実施の形態3]
続いて、本発明の実施の形態3について説明する。なお、実施の形態1と同様な構成については同じ符号を用い、ここではその詳細な説明を省略する。
図9は、実施の形態3のIHヒータ80の構成を説明する断面図である。図9に示すように、本実施の形態のIHヒータ80は、励磁コイル82、励磁コイル82を支持する内側支持体281および外側支持体283、磁心84、シールド85、加圧部材86および励磁回路88を備えている。
【0060】
本実施の形態の内側支持体281は、断面が励磁コイル82の表面に沿って湾曲した形状で形成される基部281aと、基部281aから励磁コイル82に向かって突出する複数の突出部281bとから構成される。なお、複数の突出部281bは、突起の一例であって、それぞれ、定着ベルト61の回転方向と直交するとともに内側支持体281の一端から他端に向かう方向(定着ベルト61の長手方向)に沿って、隣接する突出部281bとの間に間隔をとって設けられる。
また、本実施の形態の外側支持体283は、断面が励磁コイル82の表面に沿って湾曲した形状で形成される基部283aと、基部283aから励磁コイル82に向かって突出する複数の突出部283bとから構成される。なお、複数の突出部283bは、突起の一例であって、それぞれ、定着ベルト61の回転方向と直交するとともに外側支持体283の一端から他端に向かう方向(定着ベルト61の長手方向)に沿って、隣接する突出部283bとの間に間隔をとって設けられる。
実施の形態1では、内側支持体81に複数の突出部81bを設けたが、実施の形態3では、内側支持体281に複数の突出部281bを設けることに加えて、さらに、外側支持体283に複数の突出部283bを設けている点で異なっている。
【0061】
本実施の形態では、内側支持体281の突出部281bと外側支持体283の突出部283bとで励磁コイル82を挟むことで、励磁コイル82を固定している。本実施の形態の内側支持体281は、突出部281bの上面が、定着ベルト61との距離が規定値(設計値)に設定されている。それにより、励磁コイル82が突出部281bの上面に密着して配置されることで、励磁コイル82と定着ベルト61との距離が設計値に設定されることになる。
さらに、本実施の形態では、外側支持体283は、外側支持体283における定着ベルト61の回転方向両端部が、内側支持体281における定着ベルト61の回転方向両端部に取り付けられる。それにより、外側支持体283は、外側支持体283に形成された突出部283bの下面(内側支持体281側の面)が励磁コイル82に密着するように位置決めされる。
【0062】
ここで、本実施の形態では、上述したように、内側支持体281の複数の突出部281bは、それぞれ隣接する突出部281bとの間に間隔をとって、内側支持体281の長手方向に沿って形成されている。したがって、励磁コイル82と内側支持体281の基部281aとの間には、複数の突出部281bに沿って、内側支持体281の長手方向に向かう複数の間隙が形成される。そして、各間隙の内部では、励磁コイル82と内側支持体281とは接しておらず、励磁コイル82の表面が露出している。
さらに、本実施の形態では、外側支持体283の複数の突出部283bは、それぞれ隣接する突出部283bとの間に間隔をとって、外側支持体283の長手方向に沿って形成されている。したがって、励磁コイル82と外側支持体283の基部283aとの間には、複数の突出部283bに沿って、外側支持体283の長手方向に向かう複数の間隙が形成される。そして、各間隙の内部では、励磁コイル82と外側支持体283とは接しておらず、励磁コイル82の表面が露出している。
【0063】
続いて、励磁コイル82の温度上昇を抑制する機能について説明する。
本実施の形態においては、上記定着動作を行うに際して、送風ユニット300のファン301により冷却風を発生させる。そして、IHヒータ80の一端側に設けられた供給ダクト302を介して、励磁コイル82と内側支持体281との間に形成された複数の間隙、および、励磁コイル82と外側支持体283との間に形成された複数の間隙のそれぞれに対して、外部に露出する各間隙の一端側から冷却風を送り込んでいる。
各間隙に送り込まれた冷却風は、各間隙の内部を一端から他端へと流れ、そして、IHヒータ80の他端側に設けられた排出ダクト303を介して、IHヒータ80の外部に排出される。
【0064】
上述したように、本実施の形態では、励磁コイル82と内側支持体281の基部281aとの間には、内側支持体281の長手方向に沿って、内側支持体281の一端から他端に向かう複数の間隙が形成されている。この複数の間隙は、それぞれ、内側支持体281の基部281a、隣接する2つの突出部281bおよび励磁コイル82に囲まれており、各間隙の内部では、励磁コイル82と内側支持体281とは接しておらず、励磁コイル82の表面が露出している。さらに、本実施の形態では、励磁コイル82と外側支持体283の基部283aとの間には、外側支持体283の長手方向に沿って、外側支持体283の一端から他端に向かう複数の間隙が形成されている。この複数の間隙は、外側支持体283の基部283a、隣接する2つの突出部283bおよび励磁コイル82に囲まれており、各間隙の内部では、励磁コイル82と外側支持体283とは接しておらず、励磁コイル82の表面が露出している。
【0065】
したがって、冷却風は、励磁コイル82と内側支持体281との間に形成された各間隙の内部、および、励磁コイル82と外側支持体283との間に形成された各間隙の内部において励磁コイル82の表面に沿って流れ、励磁コイル82にて発生した熱を、励磁コイル82表面から奪い、IHヒータ80の外部へ放出することが可能になる。
これにより、本実施の形態の定着ユニット60では、励磁コイル82を冷却し、励磁コイル82の過剰な温度上昇を抑制することが可能になる。
【0066】
なお、実施の形態1〜3においては、複数の突出部(突出部81b、突出部183b、突出部281bおよび突出部283b)を、定着ベルト61の長手方向(励磁コイル82の長手方向)に沿うように設けた。励磁コイル82では、リッツ線の多くが励磁コイル82の長手方向に沿って配置されているため、複数の突出部を励磁コイル82の長手方向に沿って設けることで、本構成を有さない場合と比較して、冷却風を流す複数の間隙それぞれが、リッツ線に沿って配置されやすくなる。これにより、間隙の内部における励磁コイル82表面の凹凸が少なくなることで、冷却風が流れやすくなり、冷却風が励磁コイル82から奪った熱を、IHヒータ80の外部に放出しやすくなる。したがって、本構成を有さない場合と比較して、励磁コイル82の温度上昇をより抑制することが可能になる。
【0067】
さらに、複数の突出部を励磁コイル82の長手方向に沿って設けることで、励磁コイル82を構成するリッツ線に沿って突出部が配置されやすくなる。これにより、本構成を有さない場合と比較して、突出部とリッツ線とが交差しにくくなるため、内側支持体81(内側支持体181、内側支持体281)と外側支持体83(外側支持体183、外側支持体283)とで励磁コイルを挟んで支持した場合に、突出部により励磁コイル82が歪むことを抑制できる。したがって、本構成を有さない場合と比較して、安定して励磁コイル82を支持することが可能になる。
ただし、励磁コイル82の表面に沿って冷却風を流すことが可能な間隙を設けることができる構成であれば、突出部の形状および配置はこれに限られない。例えば、複数の突出部を定着ベルト61の回転方向に沿って設けたり、複数の突出部をドット状に設けたりしてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…画像形成装置、60…定着ユニット、61…定着ベルト、62…加圧ロール、64…感温磁性部材、66…誘導部材、70…剥離補助部材、80…IHヒータ、81…内側支持体、81a…基部、81b…突出部、82…励磁コイル、83…外側支持体、84…磁心、85…シールド、86…加圧部材、88…励磁回路、181…内側支持体、183…外側支持体、281…内側支持体、283…外側支持体、300…送風ユニット、301…ファン、302…供給ダクト、303…排出ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電層が形成され、当該導電層が電磁誘導加熱されて発熱することで記録材にトナーを定着する定着部材と、
交流電流が供給されることで、前記定着部材の前記導電層と交差する交流磁界を生成する磁界生成部材と、
前記磁界生成部材に対峙して設けられ、当該磁界生成部材に向かって突出する突出部を有し、当該突出部によって当該磁界生成部材を支持する第1支持部材と、
前記磁界生成部材を挟んで前記第1支持部材と対向して設けられ、当該磁界生成部材を当該第1支持部材に向けて押し付けて支持する第2支持部材と
を備える定着装置。
【請求項2】
前記定着部材は、回転可能に支持され、
前記突出部は、前記定着部材の長手方向に沿って設けられることを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項3】
前記磁界生成部材にて生成された交流磁界を前記定着部材に導く磁路を形成する磁心部材をさらに備え、
前記第1支持部材は、前記定着部材と前記磁界生成部材との間に設けられ、
前記第2支持部材は、前記磁界生成部材と前記磁心部材との間に設けられるとともに、当該磁界生成部材と当該磁心部材とが接触しないように、当該磁界生成部材および当該磁心部材を支持することを特徴とする請求項1または2記載の定着装置。
【請求項4】
前記第2支持部材は、前記磁界生成部材に向かって突出する突出部を有し、
前記第1支持部材の前記突出部と前記第2支持部材の前記突出部とが前記磁界生成部材に接することで、当該磁界生成部材を支持することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の定着装置。
【請求項5】
前記第1支持部材または前記第2支持部材と前記磁界生成部材との間に、空気流を送り込む送風部材をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の定着装置。
【請求項6】
トナー像を形成するトナー像形成手段と、
前記トナー像形成手段によって形成されたトナー像を記録材に転写する転写手段と、
記録材に転写されたトナー像を記録材に定着する定着手段とを有し、
前記定着手段は、
導電層が形成され、当該導電層が電磁誘導加熱されて発熱することで記録材にトナーを定着する定着部材と、
交流電流が供給されることで、前記定着部材の前記導電層と交差する交流磁界を生成する磁界生成部材と、
前記定着部材と前記磁界生成部材との間に設けられる第1支持部材と、
前記磁界生成部材を挟んで前記第1支持部材と対向するように設けられる第2支持部材と、
前記第1支持部材または前記第2支持部材の少なくとも一方に設けられ、当該第1支持部材または当該第2支持部材と前記磁界生成部材との間に間隙が形成されるように、当該磁界生成部材を支持する突起と
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
前記定着部材は回転可能に支持され、
前記突起は、前記定着部材の長手方向に複数、伸びて設けられ、複数の当該突起によって当該長手方向に前記間隙を形成することを特徴とする請求項6記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記定着手段にまたは当該定着手段とは別に設けられ、前記第1支持部材または前記第2支持部材と前記磁界生成部材との間に形成される前記間隙に空気流を送り込む送風手段をさらに有することを特徴とする請求項6または7記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記定着手段は、前記第2支持部材を挟んで前記磁界生成部材と対向するとともに、当該磁界生成部材と非接触に配置され、当該磁界生成部材にて生成された交流磁界を前記定着部材に導く磁路を形成する磁心部材をさらに備えることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記突起は、前記第1支持部材および前記第2支持部材の双方に設けられることを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−3564(P2013−3564A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138194(P2011−138194)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】