説明

定着装置および画像形成装置

【課題】従来の定着装置は、特殊な媒体を用いた場合に、媒体に皺が発生する場合があった。
【解決手段】定着装置10は、加圧ローラ(第1のローラ)3と、加圧ローラ3に対向配置された定着ローラ(第2のローラ)2と、この定着ローラ2に張架され、加圧ローラ3と定着ローラ2との間を通過するように走行する定着ベルト(張架部材)4と、定着ベルト4を、加圧ローラ3に対して押圧する加圧パッド(押圧部材)5と、定着ベルト4を加熱する面状発熱体(加熱部材)6と、加圧ローラ3および定着ローラ2の少なくとも一方を、これら加圧ローラ3と定着ローラ2とが当接する方向およびその反対方向に移動させる支持プレート7および偏心カム16(移動機構)と、媒体の種類に応じて偏心カム16を駆動することにより、加圧ローラ3と定着ローラ2との当接状態を切り替える離接制御部(制御部)218とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像剤像を媒体に定着する定着装置、および定着装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プリンタ、複写機およびファクシミリ等の画像形成装置には、ベルトを用いて媒体に画像(現像剤像)を定着する定着装置を備えたものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−118440号公報(図2参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の定着装置では、特殊な媒体に画像を定着する際に、媒体に皺(定着皺)が発生する場合があった。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、定着時における媒体の皺の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る定着装置は、第1のローラと、第1のローラに対向配置された第2のローラと、第2のローラに張架され、第1のローラと第2のローラとの間を通過するように走行する張架部材と、張架部材を、第1のローラに対して押圧する押圧部材と、張架部材を加熱する加熱部材と、第1のローラおよび第2のローラの少なくとも一方を、第1のローラと第2のローラとが当接する方向およびその反対方向に移動させる移動機構と、媒体の種類に応じて、移動機構を駆動することにより、第1のローラと第2のローラとの当接状態を切り替える制御部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、定着時における媒体の皺の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施の形態における定着装置の構成(A)、およびそのニップ部の構成(B)を示す図である。
【図2】第1の実施の形態における定着ローラ(A)および加圧ローラ(B)の断面構造、および、その変形例(C)を示す図である。
【図3】第1の実施の形態における定着ベルトの断面構造(A)、および、その変形例(B)を示す図である。
【図4】第1の実施の形態における面状発熱体の構成を示す分解斜視図(A)および平面図(B)、並びに、その変形例を示す斜視図(C)である。
【図5】第1の実施の形態における移動機構の構成を示す斜視図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における定着装置の動作を示す図である。
【図7】第1の実施の形態における定着ローラおよび加圧パッドと、加圧ローラとの間のニップ圧を示す模式図である。
【図8】特殊媒体と定着ベルトとの関係を示す図である。
【図9】第1の実施の形態における定着装置を備えた画像形成装置の構成を示す図である。
【図10】図9の画像形成装置のプロセスユニットの構成を示す図である。
【図11】図9の画像形成装置100の制御系を示すブロック図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態における定着装置を示す図である。
【図13】第2の実施の形態における定着ローラ(A)および加圧ローラ(B)の断面構造、および、その変形例(C)を示す図である。
【図14】第2の実施の形態における定着ベルトの断面構造(A)、および、その変形例(B)を示す図である。
【図15】第2の実施の形態における定着装置の機構部分を示す斜視図である。
【図16】第2の実施の形態における定着装置の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
第1の実施の形態.
<定着装置の構成>
図1(A)は、本発明の第1の実施の形態における定着装置10の構成を示す図である。定着装置10は、電子写真法を用いた画像形成装置100(後述)において、印刷用紙、封筒、薬包等の媒体1にトナー(現像剤)を定着するものである。
【0010】
図1(A)に示すように、定着装置10は、第1のローラとしての加圧ローラ3と、この加圧ローラ3に対向配置された第2のローラとしての定着ローラ2と、定着ローラ2に張架された張架部材としての定着ベルト4とを備えている。ここでは、定着ローラ2が上側、加圧ローラ3が下側に配置されているが、上下関係は逆であっても良い。
【0011】
定着ベルト4の内側には、上記の定着ローラ2の他に、加圧部材としての面状発熱体6を取り付けた支持体65、張架部(案内部)としてのベルトガイド12、および、押圧部材としての加圧パッド5が配置されている。これらは、定着ベルト4の走行方向(矢印Dで示す時計回り方向)に沿って、定着ローラ2、支持体65、ベルトガイド12および加圧パッド5の順に配列されている。
【0012】
図1(B)は、定着ローラ2、加圧ローラ3および加圧パッド5を拡大して示す図である。加圧パッド5は、定着ローラ2に対して、定着ベルト4の走行方向における上流側に隣接して配置されている。定着ローラ2と加圧ローラ3との間、および加圧パッド5と加圧ローラ3との間には、それぞれニップ部が形成される。
【0013】
加圧パッド5は、加圧ローラ3の軸方向に沿って長い長尺形状を有しており、金属製の芯金51と、この芯金51の先端部に取り付けられた弾性体52とを有している。
【0014】
芯金51は、アルミニウム、鉄またはステンレス等の金属により形成されたパイプまたはシャフトである。弾性体52は、スポンジ状シリコンゴム、通常の(スポンジ状でない)シリコンゴム、またはフッ素ゴム等、耐熱性の高いゴム材料で形成されている。また、弾性体52の表面には、摺動性の良好なフッ素系のコーティング剤が塗布されている。
【0015】
また、加圧パッド5の長手方向(加圧ローラ3の軸方向)に、複数の第1スプリング(第1の付勢部材)53が等間隔で配置されており、加圧パッド5の弾性体52を加圧ローラ3に対して押圧している。なお、加圧パッド5に代えて、芯金の表面に弾性層を設けたローラを用いてもよい。
【0016】
図2(A)は、定着ローラ2の断面構造を示す図である。定着ローラ2は、金属製の芯金21と、芯金21の外周面に形成された弾性層22とを有している。芯金21は、アルミニウム、鉄またはステンレス等の金属で形成されたパイプまたはシャフトである。弾性層22は、スポンジ状シリコンゴム、通常のシリコンゴム、またはフッ素ゴム等、耐熱性の高いゴム材料で形成されている。芯金21の軸部には、ギアが取り付けられており、定着駆動モータ214(図11)の回転がギア列を介して伝達される。
【0017】
図2(B)は、加圧ローラ3の断面構造を示す図である。加圧ローラ3は、上記の定着ローラ2と同様、金属製の芯金31と、芯金31の外周面に形成された弾性層32とを有している。芯金31は、アルミニウム、鉄またはステンレス等の金属で形成されたパイプまたはシャフトである。弾性層32は、スポンジ状シリコンゴム、通常のシリコンゴム、またはフッ素ゴム等、耐熱性の高いゴム材料で形成されている。なお、加圧ローラ3の弾性層32の弾性力は、定着ローラ2の弾性層22の弾性力よりも大きい(すなわち、加圧ローラ3の方が硬い)。
【0018】
また、図2(C)に示すように、定着ローラ2の弾性層22の表面に、離型層23を形成してもよい。離型層23は、耐熱性および熱伝導性が高く、また成型後の表面自由エネルギーが低い樹脂、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、FEP(パーフルオロエチレン−プロペンコポリマー)等の代表的なフッ素系樹脂で形成され、厚さは10μm〜50μmが好ましい。加圧ローラ3についても同様である。
【0019】
図3(A)は、定着ベルト4の断面構造を示す図である。定着ベルト4は、無端状のベルトであり、基体41と、基体41の表面に形成された弾性層42と、弾性層42の表面に形成された離型層43とを有している。基体41が定着ベルト4の内周側であり、離型層43が定着ベルト4の外周側である。
【0020】
基体41は、例えばニッケル、ポリイミド、ステンレス等で形成されている。強度と可撓性を両立するため、厚さは30μm〜150μmが好ましい。弾性層42は、シリコンゴムまたはフッ素樹脂で形成されている。厚さは、シリコンゴムの場合には、低硬度と高熱伝導性を両立するため50μm〜300μmが好ましく、フッ素樹脂の場合には、摩耗による減肉と高熱伝導性を考慮して10μm〜50μmが好ましい。
【0021】
離型層43は、耐熱性および熱伝導性が高く、また成型後の表面自由エネルギーが低い樹脂、例えばPTFE、PFA、FEP等の代表的なフッ素系樹脂で形成される。離型層43の厚さは、10μm〜50μmが好ましい。なお、図3(B)に示すように、基体41の表面に離型層43を直接形成してもよい。
【0022】
図4(A)および(B)は、面状発熱体6の構成を示す分解斜視図および平面図である。面状発熱体6は、例えばセラミックスヒータ、ステンレスヒータ等であり、平板形状、または定着ベルト4に接する面が凸状の湾曲面となる形状を有している。図4(A)には、平板形状の面状発熱体6を示している。
【0023】
図4(A)において、面状発熱体6は、ステンレス(SUS430)等からなる基板61と、基板61の表面に形成された薄いガラス膜からなる電気絶縁層62と、電気絶縁層62の表面にスクリーン印刷等により形成されたニッケル−クロム合金または銀−パラジウム合金からなる抵抗発熱体63と、抵抗発熱体63の端部に形成された銀等の化学的安定性の高い金属(あるいはタングステン等の高融点金属)からなる電極64とを有している。さらに、面状発熱体6は、PTFE、PFA、FEP等の代表的なフッ素系樹脂により形成された保護層60により覆われている。
【0024】
図4(A)に示した平板形状の面状発熱体6の場合には、基板61側が定着ベルト4の内周面に接するようにしてもよく、また、保護層60側が定着ベルト4の内周面に接するようにしてもよい。
【0025】
図4(C)には、面状発熱体6の他の例を示す。図4(C)に示す例では、基板61の抵抗発熱体63が形成された面とは反対の面が、凸状の湾曲面(略円筒面)61aをなしており、この湾曲面61aが定着ベルト4の内周面に接触する。
【0026】
図1(A)に戻り、面状発熱体6を支持する支持体65は、定着ローラ2の軸方向に長い長尺部材であり、定着ベルト4の内周面に接する凸状の湾曲面(略円筒面)66を有し、この湾曲面66には、面状発熱体6を保持する凹部(保持部)67が形成されている。凹部67の深さは、この凹部67に取り付けられた面状発熱体6の表面が定着ベルト4の内周面に接するように設定されている。
【0027】
支持体65は、熱伝導性が高く、加工性が良好な金属、例えばアルミニウムや銅、またはこれらを主成分とする合金で形成されている。また、耐熱性と剛性が高い鉄、鉄系の合金、ステンレス等で形成してもよい。
【0028】
加圧ローラ3は、一対の支持プレート(支持部)7によって、加圧ローラ3の回転軸と平行な軸を中心として回動可能に保持されている。図5は、支持プレート7を含む移動機構70の構成を示す斜視図である。
【0029】
図5に示すように、加圧ローラ3の軸部34の両端には、回転時の駆動トルク軽減のため軸受部36が取り付けられており、これらの軸受部36は一対の支持プレート7に取り付けられている(図5には、一方の支持プレート7のみ示す)。支持プレート7は、軸受部36の中心から所定量シフトした位置に、回動支点となる孔部72を有している。支持プレート7の孔部72に、定着装置10のフレーム11に設けた支軸73を挿通し、eリングを支軸73に嵌合させることにより、支持プレート7が定着装置10のフレーム11に対して回動可能に取り付けられる。
【0030】
なお、定着装置10は、画像形成装置100(図9)の装置本体101に取り付けられているため、支持プレート7は画像形成装置100の装置本体101に対しても回動可能であることになる。
【0031】
支持プレート7は、加圧ローラ3の軸受部36を保持する部分(ブラケット部7a)から上方に延在しており、その上端部には、当接部71が形成されている。なお、ここでは、支持プレート7の上側部分は、支持体65(図1(A))側に湾曲している。
【0032】
図1(A)に戻り、支持プレート7の当接部71には、定着装置10のフレーム11に取り付けられた第2スプリング(第2の付勢部材)15の一端が固定されている。第2スプリング15は、支持プレート7の当接部71を、支持プレート7が回動支点(孔部)72を中心として反時計回り方向に回動するように付勢する。すなわち、第2スプリング15は、支持プレート7を、この支持プレート7に支持された加圧ローラ3を定着ローラ2に押圧する方向に付勢する。加圧ローラ3が定着ローラ2に押圧されることにより、両者の間にニップ部(図1(B))が形成される。
【0033】
ここで、回動支点72の中心から、第2スプリング15の付勢力が支持プレート7に作用する作用点Pまでの距離をL1とする。また、回動支点72の中心から、第2スプリング15の付勢力が加圧ローラ3を介して加圧パッド5に作用する作用点Qまでの距離をL2とする。本実施の形態では、L1>L2の関係が成立するように支持プレート7を構成している。このようにすれば、第2スプリング15の付勢力を、効果的に作用点Qに伝達することができる。
【0034】
当接部71を挟んで第2スプリング15と反対の側には、駆動部としての偏心カム16が配設されている。偏心カム16は、定着装置10のフレーム11に設けられた回転可能なシャフト17に、ノックピン18により取り付けられている。偏心カム16が取り付けられたシャフト17は、離接モータ218(図11)によって回転位置が制御される。
【0035】
上記の通り、定着ベルト4は、定着ローラ2、支持体65、ベルトガイド12および加圧パッド5に張架されて走行している。偏心カム16が図1(A)に示す回転位置にあるときには、偏心カム16は支持プレート7の当接部71から離間しており、支持プレート7は回動しない。この状態では、加圧ローラ3が、定着ローラ2および加圧パッド5に押圧されており、加圧ローラ3と定着ローラ2との間、および加圧ローラ3と加圧パッド5との間に、それぞれニップ部が形成されている(図1(B))。
【0036】
図6は、偏心カム16が所定角度回転した状態を示す。偏心カム16が、図1(A)に示した状態から所定角度(例えば90度)回転すると、図6(A)に示すように、偏心カム16が支持プレート7の当接部71に当接し、第2スプリング15を圧縮させて、支持プレート7を時計回り方向に回動させる。これにより、加圧ローラ3が定着ローラ2から離間する。なお、加圧ローラ3は加圧パッド5から離間する方向にも移動するが、加圧パッド5の第1スプリング53が伸長するため、加圧ローラ3は加圧パッド5と接触したままで、加圧ローラ3と加圧パッド5との間の圧力(ニップ圧)が減少することとなる。
【0037】
ここで、第1スプリング53が発生する付勢力をF1とし、第2スプリング15が発生する付勢力をF2とし、定着ベルト4の張力により第1スプリング53が定着ベルト4から受ける反力をF3とすると、図1(A)および図6(A)に示すどちらの状態においても、常に、F2>F1>F3の関係が成立するように構成されている。
【0038】
より具体的には、第2スプリング15の付勢力F2に起因して、加圧パッド5が定着ベルト4から受ける反力をF2’とすると、F2’>F1>F3の関係が成立するように構成されている。
【0039】
図7は、定着ローラ2と加圧ローラ3とのニップ部、および、加圧パッド5と加圧ローラ3とのニップ部で発生する圧力の例を示す模式図である。図1(A)の状態では、第1スプリング53の付勢力と第2スプリング15の付勢力とによって、定着ローラ2と加圧ローラ3とのニップ部、および、加圧パッド5と加圧ローラ3とのニップ部において、いずれも高い圧力(ニップ圧)が得られる。すなわち、図7に符号Aで示すように、広い範囲で、高いニップ圧が得られる。
【0040】
一方、図6に示す状態では、加圧ローラ3が定着ローラ2から離間するため、定着ローラ2と加圧ローラ3との間のニップ圧は0(ゼロ)となり、加圧パッド5と加圧ローラ3との間のニップ圧も減少する。すなわち、図7に符号Bで示すように、狭い範囲で、低いニップ圧が得られる。
【0041】
本実施の形態では、定着皺が発生しにくい通常の媒体に画像を定着する場合には、支持プレート7を、図1(A)に示す位置に保ち、定着ローラ2と加圧ローラ3との間、および、加圧パッド5と加圧ローラ3との間で、高いニップ圧を発生させる。
【0042】
一方、定着皺が発生しやすい特殊媒体(封筒、薬包等)に画像を定着する場合には、離接モータ218(図11)により偏心カム16を駆動し、図6(A)に示す位置まで支持プレート7を回動させて、加圧ローラ3を定着ローラ2から離間させ、且つ、加圧ローラ3と加圧パッド5との間のニップ圧を減少させる。なお、このような形態に限らず、例えば、媒体の厚さが所定厚さ未満であるときに、加圧ローラ3を定着ローラ2から離間させるようにしてもよい。
【0043】
なお、図1(A)に示すように、加圧パッド5と加圧ローラ3とのニップ部に対して図中右側には、媒体1をニップ部に案内するための媒体導入部13が配設されている。媒体導入部13は、媒体1の上下面に対応する上面13aおよび下面13bを有しており、ニップ部側に開口14を有している。
【0044】
媒体1がニップ部を通過する際に、媒体1の印刷面(表面)と非印刷面(裏面)と速度差が生じると、定着皺の原因となる。そこで、本実施の形態では、定着皺の発生しやすい特殊媒体を用いる場合には、上記のように狭い幅で、低いニップ圧を発生させ、これにより媒体1の印刷面と非印刷面との速度差を小さくし、定着皺の発生を抑制している。
【0045】
ここで、図6(A)に示すように加圧ローラ3が定着ローラ2から離間する方向に変位すると、定着ベルト4の走行経路も変位し、定着ベルト4の一部が、媒体導入部13の基準面である下面13bよりも下方(加圧ローラ3側)突出する。
【0046】
そのため、媒体1が、定着皺の発生しやすい特殊媒体であった場合には、加圧パッド5と加圧ローラ3とのニップ部よりも上流側で、図8に模式的に示すように、媒体1の搬送方向先端部が定着ベルト4に当接し、定着ベルト4に沿って湾曲する。すなわち、媒体1は、その印刷面(トナー像が転写された面)を伸ばす方向に湾曲した状態で搬送される。このように、媒体1を湾曲させて皺を伸ばした状態でニップ部に搬送することにより、定着皺の発生がより確実に防止される。
【0047】
なお、本実施の形態で用いるトナー(現像剤)は、結着樹脂として、ポリスチレン、スチレン/プロピレン共重合体、スチレン/ビニルナフタレン共重合体、スチレン/アクリル酸メチル共重合体、ポリエステル系重合体、ポリウレタン系重合体、エポキシ系重合体、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、または芳香族系石油樹脂を、単独または複数組み合わせたものである。また、必要に応じて、定着時のオフセットを防止するためのワックス、例えば、ポリエチレンワックス、プロピレンワックス、カルナウバワックス、または各種エステル系ワックスを含有させてもよい。
【0048】
<画像形成装置の構成>
次に、第1の実施の形態における定着装置10を備えた画像形成装置100について説明する。図9は、第1の実施の形態における定着装置10を備えた画像形成装置100の構成例を示す図である。画像形成装置100は、例えば、複写機、プリンタ、ファクシミリおよびMFP(Multifunction Periphral)等であるが、定着装置10を備えたものであれば、上記以外の画像形成装置であってもよい。また、図9に示す画像形成装置100は、カラー画像を形成するものであるが、単色の画像を形成するものであってもよい。
【0049】
画像形成装置100は、その本体101内に、ブラック、イエロー、マゼンタおよびシアンの現像剤像を形成するプロセスユニット(画像形成部)8K,8Y,8M,8Cを備えている。プロセスユニット8K,8Y,8M,8Cは、ここでは図中右から左に一列に配列されている。
【0050】
本体101の一方の側(図中右側)には、プロセスユニット8K,8Y,8M,8Cに媒体1(印刷用紙、封筒、薬包等)を供給する媒体供給部102が設けられている。媒体供給部102は、例えば、ユーザが手で媒体1を挿入する手差しトレイ、あるいは着脱可能な給紙カセットである。この媒体供給部102には、媒体1を一枚ずつ本体101内に送り込むピックアップローラ103が設けられている。本体101内には、媒体供給部102から供給された媒体の搬送路が、ここでは図中右から左に向かって形成されている。
【0051】
次に、プロセスユニット8K,8Y,8M,8Cの構成について説明する。プロセスユニット8K,8Y,8M,8Cは、使用するトナー(現像剤)を除いて共通の構成を有しているため、ここではプロセスユニット8Kの構成について説明する。
【0052】
図10は、プロセスユニット8Kの構成を示す図である。図10に示すように、画像形成ユニット8Kは、静電潜像担持体としての感光体ドラム81を備えている。感光体ドラム81は、図中時計回り方向に回転する。感光体ドラム81の回転方向に沿って、帯電装置としての帯電ローラ82と、露光装置としての印刷ヘッド83と、現像装置84とが順に配置されている。
【0053】
帯電ローラ82は、感光体ドラム81の表面を一様に帯電させる。印刷ヘッド83は、例えばLED(発光ダイオード)を有し、一様に帯電された感光体ドラム81の表面を露光して静電潜像を形成する。現像装置84は、所定の色のトナー(現像剤)を用いて、感光体ドラム81の表面の静電潜像を現像し、トナー像(現像剤像)を形成する。
【0054】
図9に戻り、プロセスユニット8K,8Y,8M,8Cの下方には、転写ユニット9が配置されている。転写ユニット9は、無端状の転写ベルト91と、この転写ベルト91が張架された駆動ローラ92およびテンションローラ93と、転写ベルト91を介して各プロセスユニット8K,8Y,8M,8Cの感光体ドラム81に対向する4つの転写ローラ(転写器)34とを備えている。
【0055】
駆動ローラ92は、転写ベルト91を駆動する駆動ローラであり、テンションローラ93は、転写ベルト91に張力を付与する従動ローラである。駆動ローラ92の回転により、転写ベルト91は、上記の媒体供給部102から供給された媒体1を保持して、矢印Cで示す方向に移動する。各転写ローラ94は、各感光体ドラム81の表面に形成されたトナー像を媒体1に転写するための転写電圧が付与されている。
【0056】
媒体1の搬送方向において画像形成ユニット8K,8Y,8M,8Cの下流側(図1における左側)には、上述した定着装置10が配置されている。
【0057】
定着装置10の下流側には、トナー像の定着が完了した媒体1を排出口108に向けて搬送する排出ローラ群105,106,107が配置されている。また、本体101の上部には、排出口108から排出された媒体1を積載する積載部109が設けられている。
【0058】
図11は、画像形成装置100の制御系を示すブロック図である。画像形成装置100の全体の制御を司る画像形成制御部200は、マイクロプロセッサ、ROM、RAM、入出力ポート、タイマ等を備えて構成されており、パーソナルコンピュータ等のホスト装置220から印刷データと制御コマンドを受信して画像形成装置のシーケンス制御を行う。
【0059】
I/F制御部201は、ホスト装置220に画像形成装置100の情報(プリンタ情報等)を送信すると共に、ホスト装置220から送信されたコマンドを解析し、また、ホスト装置220から送信されたデータを処理する。
【0060】
帯電電圧制御部202は、画像形成制御部200の指示により、プロセスユニット8K,8Y,8M,8Cの各感光ドラム81の表面をそれぞれ一様に帯電させるため、プロセスユニット8K,8Y,8M,8Cの各帯電ローラ82に帯電電圧を印加する制御を行う。
【0061】
ヘッド制御部203は、画像形成制御部200の指示により、各感光ドラム81の表面を露光して静電潜像を形成するため、印刷データに従って、プロセスユニット8K,8Y,8M,8Cの各印刷ヘッド83を駆動する制御を行う。
【0062】
現像電圧制御部204は、画像形成制御部200の指示により、各感光ドラム81の表面に形成された静電潜像を現像するため、プロセスユニット8K,8Y,8M,8Cの各現像装置84に現像電圧を印加する制御を行う。
【0063】
転写電圧制御部205は、画像形成制御部200の指示により、各感光ドラム81の表面に形成されたトナー像を媒体1に転写するため、各転写ローラ94に転写電圧を印加する制御を行う。
【0064】
画像形成駆動制御部206は、画像形成制御部200の指示により、感光ドラム81、帯電ローラ82および現像装置84の現像ローラを回転駆動するため、プロセスユニット8K,8Y,8M,8C毎に設けられたモータ211を駆動する制御を行う。
【0065】
ベルト駆動制御部207は、画像形成制御部200の指示により、ドライブローラ92を回転させて転写ベルト91を駆動するため、ベルト駆動モータ212を駆動する制御を行う。なお、ドライブローラ92の駆動に伴い、転写ベルト91、テンションローラ93および転写ローラ94も従動回転する。
【0066】
定着制御部208は、定着装置10の温度を検出するサーミスタ213から検出温度が入力され、定着装置10の面状発熱体6への通電をオン・オフ制御する。定着制御部208は、また、画像形成制御部200の指示により、定着装置10の定着ローラ2を回転させる定着駆動モータ214を駆動する制御を行う。なお、定着ローラ2に当接する加圧ローラ3および定着ベルト7は、定着ローラ2に従動回転する。
【0067】
給紙搬送制御部209は、画像形成制御部200の指示により、媒体1を給紙・搬送するため、給紙モータ215および搬送モータ216を駆動する制御を行う。給紙モータ215は、ピックアップローラ103を回転駆動し、搬送モータ216は、排出ローラ対105,106,107を回転駆動する。
【0068】
離接制御部210は、画像形成制御部200の指示により、離接モータ218を駆動して偏心カム16を回転させ、加圧ローラ3を、定着ローラ2および加圧パッド5に接近する方向または離間する方向に移動させる。なお、離接制御部210は、支持プレート7の回転位置を検出するフォトセンサ217の検出信号に基づいて、離接モータ218を駆動制御する。
【0069】
画像形成制御部200には、ユーザが媒体1の種類を入力するための操作部219が接続されている。ユーザが操作部219から入力した媒体1の種類に基づいて、画像形成制御部200は、加圧ローラ3を定着ローラ2および加圧パッド5に押圧させるか、あるいは、加圧ローラ3を定着ローラ2から離間させるかを判断し、離接制御部210に指示する。
【0070】
<画像形成装置の動作>
次に、画像形成装置100の基本動作を、図9〜図11を参照して説明する。まず、ユーザは、操作部219(図11)において、媒体1の種類として、特殊媒体(封筒、薬包のような定着皺の発生し易い媒体)または通常の媒体(特殊媒体でないもの)を選択する。印刷制御部200は、操作部214の入力に基づき、媒体1の種類を判断する。
【0071】
続いて、印刷制御部200は、ホスト装置220から印刷指示と印刷データを受信し、画像形成動作を開始する。まず、給紙搬送制御部209により給紙モータ215が駆動され、ピックアップローラ103が回転して媒体供給部102の媒体1を、一枚ずつプロセスユニット8K,8Y,8M,8Cに向けて給紙する。
【0072】
さらに、ベルト駆動制御部207によりベルト駆動モータ212が駆動されて、ドライブローラ92が回転する。これにより、媒体供給部102から供給された媒体1が、転写ベルト91で吸着保持され、プロセスユニット8K,8Y,8M,8Cに沿って搬送される。
【0073】
プロセスユニット8K,8Y,8M,8Cでは、帯電電圧制御部202によって帯電電圧が印加された帯電ローラ82が、感光体ドラム81の表面を一様に帯電する。さらに、ヘッド制御部203により印刷ヘッド83が駆動され、画像情報に応じて感光体ドラム81の表面を露光し、静電潜像を形成する。また、現像装置84は、現像電圧制御部204によって現像電圧が印加され、感光体ドラム81の表面の静電潜像をトナーにより現像し、トナー像を形成する。
【0074】
転写ベルトユニット9の各転写ローラ94には、転写電圧制御部205によって転写電圧が印加され、各プロセスユニット8Y,8M,8C,8Kの感光体ドラム81の表面のトナー像が、転写ベルト91上の媒体1に転写される。
【0075】
トナー像が転写された媒体1は、定着装置10に搬送される。定着装置10では、媒体1上のトナー像に熱および圧力が加えられ、トナー像が媒体1に定着する。定着装置10の動作については、後述する。トナー像が定着した媒体1は、排出ローラ対105,106,107により搬送され、排出口107からスタッカ部109に排出される。これにより、媒体1への画像形成が完了する。
【0076】
<定着装置の動作>
次に、定着装置10の動作について説明する。画像形成装置100の電源が投入されると、画像形成制御部200の指示により、定着制御部208が面状発熱体6に通電し、面状発熱体6がジュール熱を発する。面状発熱体6の発した熱は、定着ベルト4を介して定着ローラ2に伝達され、さらに加圧ローラ3および加圧パッド5にも伝達される。なお、定着制御部208は、サーミスタ213により検知される定着装置10内の温度に基づき、面状発熱体6への通電をオン・オフ制御し、定着ベルト4の温度を一定に保つ。
【0077】
画像形成制御部200は、上記の操作部219からの入力に基づき、媒体1の種類(特殊媒体か否か)を判断する。媒体1が、通常の媒体(特殊媒体でない媒体)であった場合には、偏心カム16を図1(A)に示す位置に保ち、加圧ローラ3を定着ローラ2に押圧したままとし、また、加圧パッド5と加圧ローラ3との間のニップ圧を減少させない。この場合、定着ローラ2と加圧ローラ3とのニップ部、および加圧パッド5と加圧ローラ3とのニップ部において、いずれも高いニップ圧が発生する。
【0078】
一方、媒体1が、定着皺が発生しやすい特殊媒体(封筒、薄紙、薬包等)であった場合には、離接制御部210により離接モータ218を駆動し、偏心カム16を図1(A)に示す位置から図6(A)に示す位置まで回転させて、偏心カム16が支持プレート71の当接部71を押圧する。これにより、支持プレート7が図中時計回り方向に回動し、加圧ローラ3が定着ローラ2から離間し、且つ、加圧ローラ3と加圧パッド5とのニップ圧が減少する。この場合、定着ローラ2と加圧ローラ3との間にはニップ部は形成されず、加圧パッド5と加圧ローラ3との間にのみニップ部が形成される。すなわち、狭い範囲に、低いニップ圧が発生する。
【0079】
この状態で、定着制御部208が定着駆動モータ214を駆動し、定着ローラ2が図中時計回り方向に回転する。定着ローラ2の回転に伴って、定着ローラ2に張架された定着ベルト4が同方向(符号Dで示す)に走行する。また、定着ローラ2に押圧されている加圧ローラ3は、図中反時計回り方向に回転する。
【0080】
媒体1は、プロセスユニット8K,8Y,8M,8Cで転写されたトナー像を上面に担持した状態で、媒体導入部13を通過して、加圧パッド5と加圧ローラ3とのニップ部に到達する。
【0081】
通常の媒体の場合には、加圧パッド5と加圧ローラ3との間、および定着ローラ2と加圧ローラ3との間にニップ部が形成されるため、媒体1は、広いニップ部を通過し、熱と高い圧力を比較的長い時間付与される。これにより、トナーが溶融し、媒体1の表面に定着される。
【0082】
一方、特殊媒体の場合には、加圧パッド5と加圧ローラ3とのニップ部のみが形成されるため、媒体1は、狭いニップ部を通過し、熱と低い圧力を比較的短い時間付与される。これにより、トナーが溶融し、媒体1の表面に定着される。
【0083】
媒体1がニップ部を通過する際に、媒体の印刷面と非印刷面とで速度差が生じると、定着皺の原因となる。そこで、本実施の形態では、定着皺の発生しやすい特殊媒体を用いる場合には、狭い幅で、低いニップ圧を発生することにより、媒体1の印刷面と非印刷面との速度差を小さくし、定着皺の発生を抑制している。
【0084】
<効果>
このように、第1の実施の形態における定着装置10では、特殊媒体を用いる場合には、通常媒体を用いる場合よりも、ニップ部の幅(ニップ幅)を狭くすることにより、特殊媒体の印刷面と非印刷面との速度差を小さくし、当該速度差に起因する定着皺の発生を防止することができる。
【0085】
また、定着ローラ2と加圧ローラ3とが離間した後も、加圧パッド5が第1スプリング53により加圧ローラ3に押し当てられているため、狭いニップ部(加圧パッド5と加圧ローラ3とのニップ部)を形成することができる。従って、この状態でも、媒体1に画像を定着することができる。
【0086】
また、定着ローラ2と加圧ローラ3とが離間した後も、加圧パッド5が定着ベルト4の内側から加圧ローラ3に押し当てられているため、定着ベルト4の張力を維持し、定着ベルト4と定着ローラ2との摩擦を確保することができる。そのため、定着ローラ2の回転トルクを定着ベルト4に伝達し、定着ベルト4を走行させることができる。従って、定着ベルト4が媒体1を定着装置10の下流側(例えば排出ローラ105)まで搬送する搬送力を確保することができる。
【0087】
また、ユーザが媒体の種類(封筒、薄紙、薬包等)を予め設定(選択)することにより、当該設定に基づき、画像形成制御部200が、加圧ローラ3を定着ローラ2および加圧パッド5に押圧する第1の動作状態と、加圧ローラ3を定着ローラ2から離間させ、且つ加圧パッド5と加圧ローラ3との間のニップ圧を減少させる第2の動作状態のいずれかを選択することができる。
【0088】
また、加圧ローラ3の移動に伴い、定着ベルト4の一部分が、媒体導入部13よりも下方(加圧ローラ3側)に突出するため、媒体導入部13を通過した特殊媒体の先端近傍を定着ベルト4に沿って湾曲させて皺を伸ばすことができ、定着皺の発生をより確実に防止することができる。
【0089】
第2の実施の形態.
<定着装置の構成>
図12は、本発明の第2の実施の形態における定着装置10Aの構成を示す図である。なお、第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同一の構成要素には、同一の符号を付す。
【0090】
図12に示すように、第2の実施の形態における定着装置10Aは、第1のローラとしての定着ローラ2Aと、この定着ローラ2Aに対向配置された第2のローラとしての加圧ローラ3Aと、この加圧ローラ3Aに張架された張架部材としての定着ベルト4とを備えている。第1の実施の形態1で説明した面状発熱体6(図1)は設けられておらず、定着ローラ2Aの内部に、加熱部材としてのハロゲンランプ2Hが設けられている。ここでは、定着ローラ2Aが上側、加圧ローラ3Aが下側に配置されているが、上下関係は逆であっても良い。
【0091】
定着ベルト4の内側には、上記の加圧ローラ3Aの他に、押圧部材としての加圧パッド5と、第1の張架部としての第1のベルトガイド110と、第2の張架部としての第2のベルトガイド120とが設けられている。これらは、定着ベルト4の走行方向(矢印D)に沿って、加圧ローラ3A、加圧パッド5、第2のベルトガイド120および第1のベルトガイド110の順に配列されている。
【0092】
加圧パッド5は、加圧ローラ3Aに対して、定着ベルト4の走行方向において下流側に隣接して配置されている。加圧ローラ3Aと定着ローラ2Aとの間、および加圧パッド5と定着ローラ2Aとの間には、それぞれニップ部が形成される。
【0093】
第1のベルトガイド110および第2のベルトガイド120は、定着ベルト4の内周面に接触する湾曲形状の外面111,121を有している。第1のベルトガイド110は、定着ベルト4の移動方向において加圧ローラ3Aの上流側に配置され、第2のベルトガイド120は、定着ベルト4の移動方向において加圧パッド5の下流側に配置されている。
【0094】
図13(A)は、定着ローラ2Aの断面構造を示す図である。第2の実施の形態の定着ローラ2Aは、熱源としてのハロゲンランプ2Hを有している。このハロゲンランプ2Hは金属製の芯金21により周囲を囲まれ、芯金21の外周面には弾性層22が形成されている。芯金21は、アルミニウム、鉄またはステンレス等の金属で形成されたパイプまたはシャフトである。弾性層22は、スポンジ状シリコンゴム、通常のシリコンゴム、またはフッ素ゴム等、耐熱性の高いゴム材料で形成されている。なお、第1の実施の形態と異なり、芯金21の軸部には、ギアは取り付けられていない。
【0095】
図13(B)は、加圧ローラ3Aの断面構造を示す図である。加圧ローラ3Aは、第1の実施の形態の加圧ローラ3と同様、金属製の芯金31と、芯金31の外周面に形成された弾性層32とを有している。芯金31は、アルミニウム、鉄またはステンレス等の金属で形成されたパイプまたはシャフトである。弾性層32は、スポンジ状シリコンゴム、通常のシリコンゴム、またはフッ素ゴム等、耐熱性の高いゴム材料で形成されている。
【0096】
なお、加圧ローラ3Aの弾性層32の弾性力は、定着ローラ2Aの弾性層22の弾性力よりも小さい(すなわち、定着ローラ2Aの方が硬い)。
【0097】
また、加圧ローラ3Aの軸部34(図15)には、第1の駆動伝達部としての駆動ギア38(図16)が取り付けられている。駆動ギア38への回転伝達については、後述する。
【0098】
なお、図13(C)に示すように、定着ローラ2Aの弾性層22の表面に、離型層23を形成してもよい。離型層23は、耐熱性および熱伝導性が高く、また成型後の表面自由エネルギーが低い樹脂、例えばPTFE、PFA、FEP等の代表的なフッ素系樹脂で形成され、厚さは10μm〜50μmが好ましい。加圧ローラ3Aについても同様である。
【0099】
図14(A)は、定着ベルト4の断面構造を示す図である。定着ベルト4は、第1の実施の形態で説明したように、基体41と、弾性層42と、離型層43とを有している。基体41が定着ベルト4の内周側であり、離型層43が定着ベルト4の外周側である。
【0100】
基体41は、例えばニッケル、ポリイミド、ステンレス等で形成されている。厚さは、強度と可撓性を両立するため、30μm〜150μmが好ましい。弾性層42は、シリコンゴムまたはフッ素樹脂で形成されており、厚さは、シリコンゴムの場合には、低硬度と高熱伝導性を両立するため50μm〜300μmが好ましく、フッ素樹脂の場合には、摩耗による減肉と高熱伝導性を考慮して10μm〜50μmが好ましい。離型層43は、耐熱性および熱伝導性が高く、また成型後の表面自由エネルギーが低い樹脂、例えばPTFE、PFA、FEP等の代表的なフッ素系樹脂で形成され、厚さは、10μm〜50μmが好ましい。なお、図14(B)に示すように、基体41の表面に離型層43を直接形成してもよい。
【0101】
図12に戻り、加圧パッド5は、第1の実施の形態でも説明したように、金属製の芯金51と、この芯金51の先端部に取り付けられた弾性体52とを有している。芯金51は、アルミニウム、鉄またはステンレス等の金属により形成されたパイプまたはシャフトである。弾性体52は、スポンジ状シリコンゴム、通常のシリコンゴム、またはフッ素ゴム等、耐熱性の高いゴム材料で形成されている。また、弾性体52の表面には、摺動性の良好なフッ素系のコーティング剤が塗布されている。
【0102】
また、加圧パッド5の長手方向(加圧ローラ3Aの軸方向)に、複数の第1スプリング53が等間隔で配置されており、加圧パッド5の先端(弾性体52)を定着ローラ2Aに押圧している。なお、加圧パッド5に代えて、芯金の表面に弾性層を有するローラを用いてもよい。
【0103】
図15は、定着装置10Aの機構部分を示す斜視図である。加圧ローラ3A、加圧パッド5、第1のベルトガイド110および第2のベルトガイド120は、加圧ローラ3Aの軸方向両端に配置された一対のフランジ部130(図15では、一方のみ示す)に組み込まれている。
【0104】
加圧ローラ3Aの軸部34は、フランジ部130に形成された円形の孔131に回転可能に係合することにより組み込まれる。加圧パッド5は、その長手方向の各端部に突出形成された一対の嵌合部55,56が、フランジ部130に形成された嵌合孔132,133に嵌合することにより組み込まれる。第1のベルトガイド110は、その端面に突出形成された嵌合部112が、フランジ部130に形成された嵌合孔134に嵌合することにより組み込まれる。第2のベルトガイド120は、その端面に突出形成された嵌合部122が、フランジ部130に形成された嵌合孔135に嵌合することにより組み込まれる。
【0105】
加圧ローラ3Aの軸方向において各フランジ部130の外側には、支持プレート140がそれぞれ設けられている。支持プレート140は、フランジ部130の外側の面に突出形成された突起部136に係合する嵌合孔141を有している。また、支持プレート140には、フランジ部130に形成されたネジ穴137に対応する位置に穴142を有している。この穴142を通して、ネジ143をネジ穴137に螺合させることにより、フランジ部130が支持プレート140に固定される。
【0106】
支持プレート140には、また、定着装置10Aのフレーム11に形成された支軸(回動支点)145に係合する係合穴144が形成されている。支持プレート140の係合穴144に支軸145を貫通させてeリングで固定することにより、支持プレート140は定着装置10Aのフレーム11に回動可能に取り付けられる。
【0107】
支持プレート140は、また、フランジ部130の孔131(加圧ローラ3Aの軸部を取り付ける孔)に対応する孔146を有している。加圧ローラ3Aの軸部34は、フランジ部130の孔131と支持プレート140の孔146とを貫通し、その軸部34の端部に駆動ギア38(図16)が取り付けられる。この駆動ギア38は、支持プレート140に回動支軸145と同軸に設けられた、第2の駆動伝達部としての伝達ギア148(図16)に係合している。この伝達ギア148には、第1の実施の形態で説明した定着駆動モータ214(図11)の回転が伝達される。
【0108】
図15には、フランジ部130および支持プレート140をそれぞれ一つのみ示すが、フランジ部130および支持プレート140は、いずれも加圧ローラ3Aの軸方向両側に設けられており、これらにより、加圧ローラ3A、加圧パッド5、第1のベルトガイド110および第2のベルトガイド120が支持されている。
【0109】
支持プレート140は、その上端近傍に、偏心カム16(図16)に当接する当接部147を有している。当接部147に対して偏心カム16と反対の側には、第2スプリング15(図16)が設けられている。偏心カム16と第2スプリング15の構成は、第1の実施の形態で説明した通りである。
【0110】
上記の構成において、フランジ部130と、支持プレート140と、偏心カム16と、離接モータ218とにより、加圧ローラ3Aを定着ローラ2Aに当接する方向およびその反対方向に移動させる移動機構が構成される。また、加圧ローラ3Aと、加圧パッド5と、駆動ギア38と、伝達ギア148と、第1のベルトガイド110と、第2のベルトガイド120と、フランジ部130と、支持プレート140とにより、当接部材ユニット150(図15)が構成される。
【0111】
なお、第2の実施の形態では、媒体10は、図12における左側から、定着ローラ2Aと加圧ローラ3Aとの間(ニップ部)に向かって導入される。定着装置10Aおよび画像形成装置100の他の構成は、第1の実施の形態で説明したとおりである。
【0112】
<定着装置の動作>
次に、定着装置10Aの動作について、図12および図16を参照して説明する。なお、適宜、図2に示した制御系を参照する。画像形成装置100の電源が投入されると、画像形成制御部200(図2)の指示により、定着制御部208が、定着ローラ2Aのハロゲンランプ2Hへの通電を制御して、ハロゲンランプ2Hがジュール熱を発する。定着ローラ2Aの熱は、定着ベルト4を介して加圧ローラ3Aおよび加圧パッド5に伝達される。なお、定着制御部208は、サーミスタ213により検知される定着装置10内の温度に基づき、ハロゲンランプ2Hへの通電をオン・オフ制御し、定着ベルト4の温度を一定に保つ。
【0113】
画像形成制御部200は、第1の実施の形態で説明した操作部219からの入力に基づき、媒体1が特殊媒体か否かを判断する。媒体1が、通常の媒体(特殊媒体でない媒体)であった場合には、偏心カム16を図12に示す位置に保ち、加圧ローラ3Aを定着ローラ2Aに押圧させたままとし、加圧パッド5と定着ローラ2Aとのニップ圧を減少させない。この場合、加圧ローラ3Aと定着ローラ2Aとのニップ部、および加圧パッド5と定着ローラ2Aとのニップ部において、いずれも高いニップ圧が発生する。
【0114】
一方、媒体1が、定着皺が発生しやすい特殊媒体(封筒、薄紙、薬包等)であった場合には、離接制御部210により離接モータ218を駆動し、偏心カム16を図12に示す位置から図16に示す位置まで回動させる。これにより、偏心カム16が支持プレート140の当接部147を押圧し、支持プレート140が図中時計回りに回動する。従って、加圧ローラ3Aが定着ローラ2Aから離間し、且つ、加圧パッド5と定着ローラ2Aとのニップ圧が減少する。この場合、加圧ローラ3Aと定着ローラ2Aとの間にニップ部は形成されず、加圧パッド5と定着ローラ2Aとの間にのみニップ部が形成される。すなわち、狭い範囲に、低いニップ圧が発生する。
【0115】
この状態で、定着制御部208が定着駆動モータ214を駆動し、その回転が、伝達ギア148と駆動ギア38を介して加圧ローラ3Aに伝達される。加圧ローラ3Aは図中時計回りに回転し、加圧ローラ3Aに張架された定着ベルト4が同方向(符号Dで示す)に移動する。また、加圧ローラ3Aに押圧されている定着ローラ2Aは、図中反時計回りに回転する。媒体1は、媒体導入部13を通過して、加圧ローラ3Aと定着パッド2Aとの間に達する。
【0116】
通常の媒体の場合には、加圧ローラ3Aと定着ローラ2Aとの間、および加圧パッド5と定着ローラ2Aとの間にニップ部が形成されているため、媒体1は広いニップ部を通過し、熱と高い圧力を比較的長い時間付与される。これにより、トナーが溶融し、媒体1の表面に定着される。
【0117】
一方、特殊媒体の場合には、加圧パッド5と定着ローラ2Aとのニップ部のみが形成されているため、媒体1は、狭いニップ部を通過し、熱と低い圧力を比較的短い時間付与される。これにより、トナーが溶融し、媒体1の表面に定着される。また、媒体1の印刷面と非印刷面との速度差を小さくすることができるため、定着皺の発生を抑制することができる。
【0118】
このように、本実施の形態における定着装置10Aにおいても、特殊媒体を用いる場合に、通常媒体を用いる場合よりもニップ部の幅を狭くすることにより、特殊媒体の印刷面と非印刷面との速度差を小さくし、当該速度差に起因する皺の発生を防止することができる。
【0119】
特に、定着ローラ2Aと加圧ローラ3Aとが離間した後も、加圧パッド5が定着ローラ2Aに押し当てられているため、狭いニップ部を形成することができる。従って、この状態でも、媒体1に画像を定着することができる。
【0120】
また、定着ローラ2Aと加圧ローラ3Aとが離間した後も、加圧パッド5が定着ベルト4の内側から定着ローラ2Aに押し当てられているため、定着ベルト4の張力を維持し、定着ベルト4と定着ローラ2Aとの摩擦を確保することができる。そのため、加圧ローラ3Aの回転トルクを定着ベルト4に伝達し、定着ベルト4による媒体1の搬送力を確保することができる。
【0121】
なお、上述した各実施の形態では、操作部219でのユーザの操作に基づいて、画像形成制御部200が特殊媒体か通常媒体かを判断したが、このような構成に限定されるものではない。例えば、パーソナルコンピュータ等のホスト装置220側で、特殊媒体か通常媒体かを設定するようにし、I/F制御部201を入力部として、画像形成制御部200が特殊媒体か通常媒体かの情報を取得するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0122】
1 媒体、 2,2A 定着ローラ、 3,3A 加圧ローラ、 4 定着ベルト、 5 加圧パッド、 6 面状発熱体(加熱部材)、 7 支持プレート(支持部)、 8K,8Y,8M,8C プロセスユニット(画像形成部)、 9 転写ユニット、 10 定着装置、 12 ベルトガイド(張架部)、 13 媒体導入部、 15 第2スプリング(第2の付勢部材)、 16 偏心カム(駆動部)、 65 支持体、 70 移動機構、 100 画像形成装置、 110 第1のベルトガイド(第1の張架部)、 120 第2のベルトガイド(第2の張架部)、 130 フランジ部、 140 支持プレート、 150 当接部ユニット、 200 画像形成制御部、 210 離接制御部、 218 離接モータ、 219 操作部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のローラと、
前記第1のローラに対向配置された第2のローラと、
前記第2のローラに張架され、前記第1のローラと前記第2のローラとの間を通過するように走行する張架部材と、
前記張架部材を、前記第1のローラに対して押圧する押圧部材と、
前記張架部材を加熱する加熱部材と、
前記第1のローラおよび前記第2のローラの少なくとも一方を、前記第1のローラと前記第2のローラとが当接する方向およびその反対方向に移動させる移動機構と、
媒体の種類に応じて、前記移動機構を駆動することにより、前記第1のローラと前記第2のローラとの当接状態を切り替える制御部と
を備えたことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記第1のローラは、加圧ローラであり、
前記第2のローラは、定着ローラであり、
前記移動機構は、前記加圧ローラを、前記定着ローラに当接する方向およびその反対方向に移動させることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記第1のローラは、定着ローラであり、
前記第2のローラは、加圧ローラであり、
前記移動機構は、前記加圧ローラを、前記定着ローラに当接する方向およびその反対方向に移動させることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項4】
前記媒体が特殊媒体であるとき、前記移動機構は、前記第1のローラおよび前記第2のローラの少なくとも一方を、前記第1のローラと前記第2のローラとが互いに離間する方向に移動させることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項5】
媒体を、前記第1のローラと前記張架部材との間に案内する媒体導入部と、
前記張架部材の走行方向において、前記第2のローラおよび前記押圧部材よりも上流側に配置され、前記張架部材を案内する案内部と
をさらに備え、
前記移動機構が、前記第1のローラを前記第2のローラから離間する方向に移動させた際に、前記張架部材の一部が前記媒体導入部よりも突出することを特徴とする請求項1または2に記載の定着装置。
【請求項6】
前記押圧部材を前記第1のローラに向けて付勢する第1の付勢部材と
前記第1のローラを前記第2のローラに向けて付勢する第2の付勢部材と、
を備え、
前記第2の付勢部材が発生する付勢力は、前記第1の付勢部材が発生する付勢力よりも大きいことを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項7】
前記張架部材が前記第2の付勢部材に及ぼす力は、前記第2の付勢部材が発生する付勢力よりも小さいことを特徴とする請求項6に記載の定着装置。
【請求項8】
前記移動機構が、前記第2のローラを前記第1のローラから離間する方向に移動させた際に、前記押圧部材が、前記第1のローラに対する押圧力が小さくなる方向に移動することを特徴とする請求項1または3に記載の定着装置。
【請求項9】
前記媒体が特殊媒体でないときには、前記移動機構は、前記第1のローラおよび前記第2のローラの少なくとも一方を、前記第1のローラおよび前記第2のローラが互いに当接する方向に移動させることを特徴とする請求項1から8までのいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項10】
前記第2のローラと略同軸上に、第1の駆動伝達部を備え、
前記移動機構は、前記第1のローラを保持し、前記第1のローラの回転軸からシフトした回動支点を中心として回動する支持部と、前記回動支点と略同軸上に配置され、第1の駆動伝達部と連結する第2の駆動伝達部とを備えることを特徴とする請求項1、3または8に記載の定着装置。
【請求項11】
前記第1の駆動伝達部および前記第2の駆動伝達部は、いずれもギアであることを特徴とする請求項10に記載の定着装置。
【請求項12】
前記第1のローラと前記第2のローラとの間に第1のニップ部が形成され、前記第1のローラと前記押圧部材との間に第2のニップ部が形成され、
前記移動機構が、前記第1のローラと前記第2のローラとを互いに離間させると、第2のニップ部のみが残ることを特徴とする請求項1から11までのいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項13】
前記第2のローラの回転により、前記張架部材が走行するよう構成され、
前記移動機構が、前記第1のローラと前記第2のローラとを互いに離間させた状態で、前記第2のローラの回転トルクが前記張架部材に伝達されることを特徴とする請求項1から12までのいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項14】
前記張架部材は、無端状ベルトであり、
前記押圧部材は、前記無端状ベルトの内側に配設され、前記無端状ベルトをその内側から前記第1のローラに対して押圧することを特徴とする請求項1から13までのいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項15】
媒体に画像を形成する画像形成部と、前記媒体に画像を定着する定着装置とを備えた画像形成装置であって、
前記定着装置が、
第1のローラと、
前記第1のローラに対向配置された第2のローラと、
前記第2のローラに張架され、前記第1のローラと前記第2のローラとの間を通過するように走行する張架部材と、
前記張架部材を、前記第1のローラに対して押圧する押圧部材と、
前記張架部材を加熱する加熱部材と、
前記第1のローラおよび前記第2のローラの少なくとも一方を、前記第1のローラと前記第2のローラとが当接する方向およびその反対方向に移動させる移動機構と、
媒体の種類に応じて、前記移動機構を駆動し、前記第1のローラと前記第2のローラとの当接状態を切り替える制御部と
を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2013−73207(P2013−73207A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214423(P2011−214423)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】