定着装置を装備した画像形成装置
【課題】本発明の目的は、定着ニップ部内の押圧力の状態を判定し、定着ニップ部内の押圧力バランスを適時に変更して、長期に渡り紙シワ、光沢ムラ等のない画像形成装置を提供することである。
【解決手段】前記定着ニップ部により搬送される用紙の速度を検出する用紙速度検出手段を備え、幅方向のサイズが異なる用紙を各々前記定着装置に搬入させ、用紙速度検出手段で検出された用紙の速度のサイズ間差異に基づき定着ニップ部の前記幅方向における押圧力分布を変更して、長期に渡り紙シワ、光沢ムラ等のない画像形成装置の提供を可能にする。
【解決手段】前記定着ニップ部により搬送される用紙の速度を検出する用紙速度検出手段を備え、幅方向のサイズが異なる用紙を各々前記定着装置に搬入させ、用紙速度検出手段で検出された用紙の速度のサイズ間差異に基づき定着ニップ部の前記幅方向における押圧力分布を変更して、長期に渡り紙シワ、光沢ムラ等のない画像形成装置の提供を可能にする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙上のトナーを用紙上に定着する定着装置を備え、電子写真方式の複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に関し、特に、定着装置で生じる画像の光沢ムラ及び用紙のシワを防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ベルトニップ方式の定着装置は、無端状の圧接ベルトの内周面に配設される加圧ローラと押圧部材とが圧接ベルトを介して内蔵の加熱源で加熱される定着ローラの外周に押圧されており、コンパクトな構成で幅広い定着ニップ部が形成されている。そのために、画像の高光沢化、画像形成の高速化、及び画像形成装置の小型化に優れ、カラー画像形成装置に用いられている。
【0003】
近年、画像の品質に対して市場からの要求が高くなっており、光沢ムラ、あるいは紙シワもなく、高い光沢度のカラー画像を安定して出力可能な画像形成装置の提供が要望されている。
【0004】
定着装置で定着された画像の光沢ムラ、又は用紙のシワを防止する技術について下記の特許文献に記載される。
【0005】
特許文献1に記載の定着装置は、押圧部材と加圧ローラとの境界領域で記録材と定着ローラとの間に部分的な空気の滞留が生じないよう、定着ニップ部内での圧接ベルトと押圧部材と加圧ローラとで囲まれた空間(断面)を滑性シートで充分に充填される構成にし、定着ニップ部内の用紙搬送方向における圧力分布を改善している。そして、上記のベルトニップ式の定着装置においてコート紙などの透気性の低い記録材を定着処理した場合に起こる氷柱状の光沢ムラを解決している。
【0006】
特許文献2に記載の定着装置は、押圧部材の圧接面における両側部を幅方向の中央部より定着ローラの回転方向上流に突出させて、用紙が幅広の定着ニップ部に進入する際に、用紙の先端辺における両端部が用紙の中央部よりも早い段階で定着ローラと圧接ベルトとに狭持されるようにして用紙シワの発生を防止している。
【0007】
特許文献3に記載の定着装置は、定着ニップ部内の最下流側に位置する圧接部において押圧力を高く、幅方向の押圧力分布を均一にして、用紙の高い剥離性と良好な定着性を確保する。更に、圧接部より上流側の押圧部において両端部の押圧力が小さく、中央部の押圧力が大きくして、用紙の速度が中央部より両端部で速くなるようにして用紙シワを防止可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−146156号公報
【特許文献2】特開2006−276104号公報
【特許文献3】特開2006−58527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、広幅定着ニップ部内の幅方向における押圧力分布、押圧力バランスを適正に設定することにより、光沢ムラ、あるいは紙シワもなく、高い光沢度のカラー画像を出力可能な画像形成装置を提供できることが、特許文献1から3に開示されている。
【0010】
ところが、押圧部材の劣化等により定着ニップ部内の押圧力バランスが次第に変化し、紙シワ、光沢ムラ等の画像不良が突然に発生し、定着装置の修理及び再調整が必要になるという問題がある。また、定着装置の組立時に定着ニップ部内の押圧力の適正な設定において多大な時間を要するという問題がある。特許文献1から3にはこの課題について開示されていない。
【0011】
本発明の目的は、定着ニップ部内の押圧力の状態を判定し、定着ニップ部内の押圧力バランスを適時に変更して、長期に渡り紙シワ、光沢ムラ等のない画像形成装置を提供することである。また、定着ニップ部内の押圧力状態を簡易な機構で判定することが可能な画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題は、以下の発明を実現することにより達成される。
【0013】
1.用紙上に画像を形成する画像形成部と、
回動方向に回動する定着部材と、前記定着部材の表面に対し圧接する圧接部材と、を有し、前記定着部材の表面と前記圧接部材の表面とが互いに圧接し同方向に移動する定着ニップ部に前記画像形成部から搬入された用紙を通紙して用紙上の画像を定着する定着装置と、
前記定着ニップ部に拘束され検出領域を通過する用紙の速度を検出する用紙速度検出手段と、を備える画像形成装置であって、
前記回動方向と直交する幅方向のサイズが異なる用紙を各々前記定着装置に搬入させ、前記用紙速度検出手段で検出された用紙の速度におけるサイズ間差異に基づき、前記定着ニップ部の前記幅方向における押圧力分布を変更することを特徴とする画像形成装置。
【0014】
2.前記用紙の速度におけるサイズ間差異が所定範囲の外にある場合に前記所定範囲内に収めるよう、前記定着ニップ部の前記幅方向における押圧力分布を変更することを特徴とする1に記載の画像形成装置。
【0015】
3.前記用紙の速度におけるサイズ間差異が前記所定範囲を包含する第2所定範囲の外にある場合に、画像を形成する動作を停止することを特徴とする2に記載の画像形成装置。
【0016】
4.前記検出領域が、前記幅方向のサイズが最小である用紙が通過する前記幅方向における位置にあることを特徴とする1から3までの何れか1項に記載の画像形成装置。
【0017】
5.前記検出領域が、用紙の前記幅方向における中央が通過する位置であることを特徴とする4に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、定着ニップ部内の押圧力の状態を判定し、定着ニップ部内の押圧力分布を適時変更して常に定着ニップ部の押圧力バランスを適正状態に維持可能にし、長期に渡り紙シワ、光沢ムラ等の画像不良を防止すること可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る画像形成装置Aの構成を示す中央断面図である。
【図2】本発明に係る定着装置30を示す断面図である。
【図3】定着ニップ部N内の回動方向における押圧力分布の一例である。
【図4】加圧手段36を用紙Pの搬送方向上流側から観た断面図(図2のAA断面)と、加圧部材363の位置と押圧パッド364による押圧力の幅方向分布との関係を示す模式図と、である。
【図5】幅方向の中央部及び両側部で測定された、定着ニップ部N内における回動方向の押圧分布を示す一例である。
【図6】幅方向における位置Pjの定着ニップ部Nによって搬送される用紙Pの速度Vpj(相対値)を示し、速度Vpjの幅方向分布である。
【図7】用紙Pの幅方向サイズと、定着ニップ部Nで搬送される用紙Pの速度Vpとの関係(グラフ)の一例を示す。
【図8】押圧部Np内の幅方向押圧力を変化させた場合に、小サイズの用紙速度Vpに対する大サイズの用紙速度Vpの比率、つまり用紙速度Vpのサイズ間比率R(%)との関係(グラフ)を示す。
【図9】本発明に係る用紙速度検出手段VSの構成を示す模式図である。
【図10】画像データ上において用紙Pの表面凹凸による影(画像パターン)が変位する状態を示す模式図である。
【図11】本発明に係る、定着ニップ部Nにおける幅方向の押圧条件を調整する押圧調整制御に関係する制御関係のブロック図である。
【図12】制御部CUによって実行される定着装置30の押圧力調整制御の実施形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本欄の記載は請求項の技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。
【0021】
図1は、本発明に係る画像形成装置Aの構成を示す中央断面図である。
【0022】
画像形成装置Aはタンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、複数組の画像形成手段10Y、10M、10C、10K、ベルト状の中間転写体6、給紙搬送手段及び定着装置30等からなる。
【0023】
画像形成装置Aの上部には、自動原稿送り装置DFと原稿画像走査露光装置SCから成る画像読取装置Bが設置されている。自動原稿送り装置DFの原稿台上に載置された原稿dは、搬送手段により搬送され原稿画像走査露光装置SCの光学系により原稿の片面又は両面の画像が走査露光され、ラインイメージセンサCCDに読み込まれる。
【0024】
ラインイメージセンサCCDにより光電変換されて形成された信号は、画像処理部において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等が行われた後、露光手段3Y、3M、3C、3Kに送られる。
【0025】
イエロー(Y)色のトナー画像を形成する画像形成手段10Yは、感光体1Yの周囲に帯電手段2Y、露光手段3Y、現像手段4Y及びクリーニング手段8Yを配置している。マゼンタ(M)色のトナー画像を形成する画像形成手段10Mは、感光体1Mの周囲に帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M及びクリーニング手段8Mを配置している。シアン(C)色のトナー画像を形成する画像形成手段10Cは、感光体1Cの周囲に帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C及びクリーニング手段8Cを配置している。黒(K)色のトナー画像を形成する画像形成手段10Kは、感光体1Kの周囲に帯電手段2K、露光手段3K、現像手段4K及びクリーニング手段8Kを配置している。帯電手段2Yと露光手段3Y、帯電手段2Mと露光手段3M、帯電手段2Cと露光手段3C、及び帯電手段2Kと露光手段3Kは、潜像形成手段を構成する。
【0026】
なお、現像手段4Y、4M、4C、4Kは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及び黒(K)の小粒径のトナーとキャリアからなる2成分現像剤を内包する。
【0027】
中間転写体6は、複数のローラにより巻回され、図示しない駆動手段により回動可能に支持されている。
【0028】
定着装置30は、加熱された定着部材としての定着ローラ31と圧接部材としての圧接ベルト32との間に形成された定着ニップ部で用紙P上の未定着トナー像を加熱、加圧して定着する。
【0029】
画像形成部10は、各画像形成手段10Y、10M、10C、10Kと中間転写部7とで構成され、中間転写部7の一次転写手段7Y、7M、7C、7Kで各画像形成手段10Y、10M、10C、10Kで形成された各色のトナー像を中間転写体6上に逐次転写(1次転写)する。更に、中間転写部7の二次転写手段7Aで中間転写体6上の各色トナー像を給紙搬送部20から搬送された用紙Pに再度転写して用紙P上にカラー画像を形成する。
【0030】
給紙搬送部20は、用紙を収容する3つの給紙カセット21と、各給紙カセット21に収容された用紙Pを給紙する給紙手段22と、給紙手段22により給紙された用紙Pを連係してレジストローラ24に搬送する搬送ローラ23A、23B、23C、23Dと、搬送ローラから搬送された用紙Pを一旦停止した後に適切なタイミングに中間転写部に送り出すレジストローラ24と、で構成される。
【0031】
カラー画像が形成された用紙Pは、定着装置30で用紙P上のカラートナー像が定着され、その後に排紙ローラ25に挟持され機外に排紙されて排紙トレイ26上に載置される。
【0032】
定着装置30の入口には本発明に係る用紙センサISが配設されており、用紙センサISは定着装置30に搬入される用紙Pの表面状態を検知している。
【0033】
一方、二次転写手段7Aにより用紙Pにカラー画像を転写した後、用紙Pを曲率分離した中間転写体6は、クリーニング手段8Aにより残留トナーが除去される。
【0034】
なお、上記の画像形成装置Aはカラー画像を形成しているが、本発明に係る画像形成装置はモノクロ画像を形成するものでもよく、中間転写体6を有さないものでもよい。
【0035】
次に、本発明に係る定着装置30の主要構成について説明する。
【0036】
《定着装置30》
図2は、本発明に係る定着装置30を示す断面図である。
【0037】
本発明に係る定着装置30は、図2に示すように回動方向としての時計方向に回動し通紙路上方に配設された定着ローラ31と、回動方向としての反時計方向に回動し通紙路下方に配設された圧接ベルト32を有する。
【0038】
定着ローラ31と圧接ベルト32との間に形成される定着ニップ部Nは通紙経路を構成し、用紙P上のトナー像は定着ニップ部Nを通過する間に加熱及び加圧の作用を受けて用紙P上に定着される。図示のように、定着ニップ部Nは圧接ベルト32の回動方向における下流側の定着部Nfと定着部Nfに対し上流側の押圧部Npとから構成され、更に定着ローラ31の表面と圧接ベルト32の表面とが互いに圧接して同方向に移動するように構成される。
【0039】
定着ローラ31は、内部にハロゲンヒータH1を内蔵し、アルミニウムや鉄等から形成された円筒状の芯金31Aと、耐熱性の高いシリコーンゴムから成り芯金31Aに被覆された弾性層31Bと、更に弾性層31Bを被覆しPFA(パーフルオロアルキルビニルエーテル)若しくはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂から成る離型層31Cと、により構成されている。一例として、定着ローラ31の外径は80mm、弾性層の厚みは1.5mm(硬度15°JISA)で、表層の厚みは50μmである。
【0040】
定着ローラ31の外周面には、クリーニング手段38、分離爪39、及び図示しない温度センサ等が配置されている。
【0041】
圧接ベルト32は、約70μmの厚みのポリイミドで成り無端状の基体と、基体の外表面に被覆され180μmのシリコーンゴムで成る弾性層と、弾性層上に被覆され約50μmの厚みのPFA若しくはPTFEで成る離型層と、から構成される。
【0042】
圧接ベルト32は、用紙Pの導入部に近い入口ローラ33、用紙Pの出口部に近い圧接ローラ34、ステアリングローラ35、テンションローラ35Sの各支持ローラの外周を巻回して張設され、定着ローラ31の外周面に当接する。
【0043】
入口ローラ33は、内部に加熱源としてのハロゲンヒータH2を内蔵し、中空のステンレスから成る。一例として、その直径は20mmである。
【0044】
ステアリングローラ35は、圧接ベルト32の回動方向と直交する幅方向への片寄り(蛇行)を制御し、安定走行させるためのローラである。一例として、その直径は18mmである。
【0045】
分離爪39は、定着ローラ31の外周面に近接して、定着ローラ31から用紙Pを剥離する。
【0046】
圧接ローラ34(第1の張架ローラ)は、定着部Nfにおいて非図示の圧接機構により定着ローラ31に対して圧接ベルト32を介して圧接される。そして、圧接ローラ34は、中実のステンレス材から成り、幅方向における中央部の外径が両側部より大きい形状、所謂、クラウン形状を有し、定着部Nfの圧力を幅方向に均一している。従って、用紙P上のトナー像は、圧接ベルト32と定着ローラ31に挟持されながら定着部Nfで定着される。
【0047】
更に、圧接ローラ34は、定着ローラ31から用紙Pを分離する分離部材として機能するために、一例として、その直径は20mmである。また、圧接ローラ34は駆動源に連結されおり、その回転により圧接ベルト32が回動される。
【0048】
また、加圧手段36は、圧接ローラ34に対し圧接ベルト32の回動方向下流側に配設され、定着ローラ31に圧接ベルト32を内周面側から押圧し、定着ローラ31と圧接ベルト32とによる定着ニップ部Nを形成している。定着ニップ部Nは圧接ベルト32の回動方向に20mmの長さである。
【0049】
加圧手段36は、摺動シート36S、支持部材361、スペーサ362、加圧部材363、押圧パッド364等から構成される。
【0050】
支持部材361は、定着ローラ31に対し圧接・離間可能に変位する非図示の筐体に固定され、4mm厚さのSUS板で、押圧パッド364を支持するスペーサ362を支持する。スペーサ362は、約2mm厚さのアルミニュウム板で、幅方向に配設された2つの加圧部材363を支点にして支持されている。
【0051】
押圧パッド364は、例えば、JISA10の硬度を有するシリコーンゴムから成り、定着ローラ31の曲面に沿う形状に形成され、5〜10mmの厚みを有する。
【0052】
押圧パッド364は、定着ローラ31に圧接ベルト32を400〜800Nの荷重で押圧する。押圧パッド364の厚み、形状により、押圧部Np内におけて圧接ベルト回動方向の圧力分布を調整する。特に、圧接ベルト32の回動方向における圧力分布を調整する。
【0053】
図3は、定着部Nfと押圧部Npとを含む定着ニップ部N内の圧接ベルト回動方向における押圧力分布を示す、一例である。
【0054】
横軸は圧接ベルト32の回動方向における位置を示し、縦軸のPxは圧接ベルト32の回動方向における押圧力分布を示す。Xiは定着ニップ部Nの入口、Xoは定着ニップ部Nの出口である。P1は定着ニップ部N内の最大値であり、定着部Nfの中央にある。P2は押圧部Np内の最大値である。定着部Nfの圧力分布は、狭く急峻な曲線を示す。一方、押圧部Npの圧力分布は、広幅であり緩やかな曲線を示す。
【0055】
図2に戻り、以下説明する。摺動シート36Sは、約70μmの厚みを有するPI(ポリイミド)等からなる耐熱性シートで構成され、上流側の端部を支持部材361に固定される。更に、摺動抵抗を低くするためにエンボス加工されているものが好ましい。但し、これに限定されるものではない。
【0056】
潤滑剤供給部材37は、入口ローラ33に当接されており、内部に潤滑剤が含浸され、潤滑剤を入口ローラ33に介して圧接ベルト32の内面に供給する。潤滑剤供給部材37は袋状に形成されたPTFE多孔質膜の内部にフェルト等が詰められた構成であり、潤滑剤が予めフェルトに含浸されている。潤滑剤としては、粘度100〜1000csのジメチルシリコンオイル、あるいは粘度100〜1000csのメチルフェニルシリコンオイル等のシリコンオイルを用いることができる。
【0057】
2つの加圧部材363は支持部材361上を幅方向に変位可能に支持され、各加圧部材363は、ネジ溝の形成された穴を有し、ネジ山の形成された回転軸365の回転により、相互近接、あるいは離間させるよう変位可能である。回転軸365の一端は、非図示の筐体に固設された調整モータM1の軸に連結されている。
【0058】
図4(a)は、加圧手段36を用紙Pの搬送方向上流側から観た断面図(図2のAA断面)である。2つの加圧部材363は、調整モータM1の駆動により回転軸365が正転すると相互に近づく方向に変位し、そして、回転軸365が逆転すると相互に離れる方向に変位する。2つの加圧部材363は、図示の破線で示すPa位置から実線で示すPb位置までの範囲を移動可能である。調整モータM1はステッピングモータであり、2つの加圧部材363は調整モータM1の駆動制御により、幅方向における位置を適宜設定可能である。
【0059】
図4(b)は、加圧部材363の位置と、押圧パッド364による押圧力の幅方向分布との関係を示す模式図である。横軸は幅方向の位置を示し、Ycは用紙Pの幅方向の中央部が通過する位置であり、Yfは最大用紙サイズの奥側端部が通過する位置であり、Yfは最大用紙サイズの手前側端部が通過する位置である。縦軸は、押圧パッド364による押圧力の幅方向における分布(%)である。そして、太い実線C1は加圧部材363が図4(a)のPcで示す位置にある時の押圧力分布で、細い実線C2は加圧部材363が図4(a)のPbで示す位置にある時の押圧力分布で、破線C3は加圧部材363が図4(a)のPaで示す位置にある時の押圧力分布である。
【0060】
以上のように、調整モータM1の駆動制御により、2つの加圧部材363の幅方向における位置を適宜変更して、押圧パッド364による押圧力の幅方向分布(押圧力バランス)を適宜調整可能である。
【0061】
図5は、幅方向の中央部及び両側部で測定された、定着ニップ部N内における回動方向の押圧分布を示す一例である。細い実線Ccが中央部の押圧力分布曲線で、太い実線Ceが両側部の押圧力分布曲線である。ここでは、図4(a)において2つの加圧部材363がPbで示す幅方向の位置に変位している場合に対応する。
【0062】
調整モータM1の駆動制御により、押圧部Npの押圧力分布は変化するが、定着部Nfの押圧力は変化しない。
【0063】
[定着ニップ部Nの幅方向における押圧条件を調整する方法]
本発明者らは鋭意検討して、定着装置30により搬送される用紙Pの速度Vpと定着ニップ部の幅方向における押圧力分布との関係を見出した。更に、幅方向サイズが異なる複数種の用紙Pを給紙させ、定着装置30により搬送される用紙Pの速度Vpを定着ニップ部Nの上流側、あるいは下流側で検出して、用紙Pの速度Vpのサイズ間差異に基づき、定着ニップ部Nにおける幅方向の押圧力条件(分布)を調整して、光沢ムラ及び紙シワ等の画像不具合を防止できることを見出した。以下に詳しく説明する。
【0064】
図6は、幅方向における位置Pjの定着ニップ部Nによって搬送される用紙Pの速度Vpj(相対値)を示し、速度Vpjの幅方向分布である。調整モータM1の駆動制御により2つの加圧部材363を変位させて、押圧部Np内の幅方向における押圧力分布を図4(b)の細い実線C2のように形成させた場合の一例である。
【0065】
定着ニップ部Nの各位置Pjによって搬送される用紙Pの速度Vpjは、実際の用紙では測定できないために、用紙搬送方向に長く用紙搬送方向と直交する幅方向に小さい縦長帯状の試験紙を各位置Pjに搬入させて、後述で詳しく説明する用紙速度検出手段VSを用いて定着ニップ部Nにより搬送される用紙Pの速度を検出して得たものである。
【0066】
既に説明した通り、定着部Nfの幅方向における押圧分布は概ね均一であり、定着ニップ部N内の幅方向における変化は、押圧部Npの幅方向における押圧力の分布で定まる。押圧部Npの各位置Pjでは押圧力の高い領域では、圧接ベルト32が押圧パッド364の摩擦力が押圧力の低い両側部より大きくなるために、図4(b)の細い実線C2のような押圧分布の場合には中央部の押圧力が両側部より高く、圧接ベルト32の速度が相対的に小さくなり、用紙Pの速度Vpが相対的に小さくなるものと推測される。従って、図4(b)の細い実線C2のような押圧分布の場合には、各位置Pjにおける用紙Pの速度Vpjは、図6に示すように両側部に比較して中央部で小さくなる。
【0067】
また、逆に、図4(b)の破線C3のように幅方向のおける中央部の押圧力が両側部より小さい場合には、図6には示されていないが、各位置Pjにおける用紙Pの速度Vpjは両側部に比較して中央部で大きくなる。以上のことが確認されている。
【0068】
実際の用紙Pは、上記実験のように縦長帯状の用紙ではなく、定着ニップ部N(押圧部Np)の各位置Pjに対応して異なる速度で移動する圧接ベルト32の影響を受けることになる。そのために、幅方向サイズが異なる異種の用紙Pを搬送すると、定着ニップ部Nで搬送される用紙Pの速度Vpは、用紙種別(用紙の幅方向サイズ)に異なる値を示すことなる。
【0069】
図7は、用紙Pの幅方向サイズと、定着ニップ部Nで搬送される用紙Pの速度Vpとの関係(グラフ)の一例を示す。縦軸は基準値に対する用紙Pの速度Vp(相対値)であり、横軸は用紙Pの幅方向サイズ(mm)である。なお、基準値は圧接ベルト32及び用紙Pが滑りなく回動されると仮定した場合の用紙速度Vp(設計値)である。図7の例は、調整モータM1の駆動制御により2つの加圧部材363を変位させて、押圧部Np内の幅方向における押圧力分布を図4(b)の細い実線C2のように形成させた場合である。
【0070】
用紙速度Vpにおけるサイズ間差異が存在し、この一例に示すように、用紙速度Vpは用紙サイズに依存する。ここでは、大サイズの用紙Pの速度Vpは、小サイズの用紙Pの速度Vpより1.0%相当小さい。
【0071】
このように、用紙Pの速度Vpのサイズ間差異は、小サイズの用紙速度Vpに対する大サイズの用紙速度Vpの差分(%)で示すことができる。但し、これに限定されるものでなく、小サイズの用紙速度Vpに対する大サイズの用紙速度Vpの比率で示すことが出来る。つまり、用紙Pの速度Vpにおけるサイズ間差異は、幅方向におけるサイズが異なる用紙Pのそれぞれ速度Vpの比率を演算して得たサイズ間比率Rでも示すことができ、後記ではサイズ間差異としてサイズ間比率Rを用いる。
【0072】
図8は、押圧部Np内の幅方向押圧力を変化させた場合に、小サイズ(約100mm)の用紙速度Vpに対する大サイズ(約300mm)の用紙速度Vpの比率、つまり用紙速度Vpのサイズ間比率R(%)との関係(グラフ)を示す。ここでは、調整モータM1の駆動制御により押圧部Np内の幅方向押圧力分布を図4(b)の細い実線C2から破線C3の範囲で変化させている。
【0073】
横軸は調整モータM1の駆動制御により変位する加圧部材363の幅方向における位置を示し、加圧部材363は図4(a)のPaからPbの範囲で変位している。縦軸は、小サイズ(約100mm)の用紙速度Vpに対する大サイズ(約300mm)の用紙速度Vpの比率である、用紙速度Vpのサイズ間比率R(%)である。破線S2は良好な画像の出力を保証する第2所定範囲としての画質保証範囲を規定する下限値である。サイズ間比率Rが下限値未満になると、光沢ムラが用紙Pの幅方向における両側に発生する。破線S1は画質保証範囲を規定する上限値である。サイズ間比率Rが上限値S1超えになると、用紙Pの用紙搬送方向後方に紙シワ等の画像不良が発生する。制御部CUは、用紙速度Vpのサイズ間比率Rが下限値S2から上限値S1までの画質保証範囲Zw内に常に維持されるように、用紙速度Vpのサイズ間比率Rが画質保証範囲Zwの内部に設けた所定範囲Za内にあるか、否かを判定し、所定範囲Za外にあると判定した場合に、用紙速度Vpのサイズ間比率Rを所定範囲Zaの内部になるように加圧部材363の位置を幅方向に変位させる。なお、上記の所定範囲Zaは画質保証範囲Zwの内部に設けられ、換言すると画質保証範囲Zwに包含され、2つの所定値R1、R2(R1>R2)で規定されている。
【0074】
つまり、用紙速度Vpのサイズ間比率Rが所定値R1を超えていると、調整モータM1の回転を所定分だけ正転させて加圧部材363の位置を幅方向の側方に所定量だけ変位する。また、用紙速度Vpのサイズ間比率Rが所定値R2未満であると、調整モータM1の回転を所定分だけ逆転させ、同様に加圧部材363の位置を幅方向の中央側に変位する。
【0075】
なお、実際には、初期時の定着装置30のと、繰り返し使用された劣化時の定着装置30では、定着ニップ部N、特に押圧部Npにおける幅方向における押圧力分布が変化して、図8で示す加圧部材363の幅方向における位置と用紙Pの速度Vpにおけるサイズ間比率R(%)との関係(図8に示す特性曲線)が同一傾向を示しながら変化する。例えば、図8に示す特性曲線が初期と劣化時とで横軸方向にシフトするような事態が生じる。
【0076】
本発明に係る画像形成装置Aの制御部CUは、上記のような事態に対して、定期、あるいは不定期に幅方向サイズが異なる複数の用紙を給紙カセット21から搬送させ、用紙速度検出手段VSで用紙Pの速度を検出し、小サイズの用紙速度Vpに対する大サイズの用紙速度Vpの比率(%)、つまり用紙速度Vpのサイズ間比率R(%)を演算し、得られた用紙Pの速度Vpにおけるサイズ間比率R(%)に基づき調整モータM1を制御して、定着ニップ部N(押圧部Np)の幅方向押圧力(分布)を光沢ムラ、紙シワ等のない適正な範囲内に維持させることを可能にする。
【0077】
また、定着ニップ部Nに拘束され通過する用紙Pの速度Vpを検出するという簡単な用紙速度検出手段VS(機構)を用いて、幅方向サイズの異なる用紙Pを定着装置30に給送して、図8に示す関係を利用して、用紙速度検出手段VSで検出された用紙Pの速度Vpにおけるサイズ間比率R(サイズ間差異)に基づき定着ニップ部Nの押圧力バランス(分布)の状態を判定すること可能にする。更に、その判定結果に基づき、定着ニップ部Nの押圧力バランス(分布)をより適正状態に可能するものである。
【0078】
[用紙速度検出手段VS]
用紙速度検出手段VSは、定着装置30の入口部に配設され、定着ニップ部Nによって拘束され通過する用紙Pの幅方向における中央位置の表面凹凸を撮影する用紙センサISと、用紙センサISの信号に基づき用紙Pの速度を演算する速度演算部VCと、で構成される。つまり、用紙速度検出手段VSが用紙Pの速度Vpを検出する検出領域Agは、定着ニップ部Nによって拘束され通過する用紙の幅方向における中央が通過する領域である。
【0079】
図9は、本発明に係る用紙速度検出手段VSの構成を示す模式図である。
【0080】
用紙センサISは、用紙Pの上面を照射するLED等の光源IS3と、イメージセンサIS1と、用紙Pの上面をイメージセンサIS1上に結像させるテレセントリックレンズIS2と、イメージセンサ処理回路IS4と、調光回路IS5とから構成される。
【0081】
イメージセンサIS1は、複数の画素センサが二次元に配列されたエリアイメージセンサ)であり、C−MOSセンサ、あるいは電荷結合素子センサ等を用いている。
【0082】
テレセントリックレンズIS2は、被写体深度が深く、その範囲で倍率が一定で、視界による画像の歪みがなく、図9で示すようにレンズとの距離Lが変動する被写体(用紙P)の形状(寸法等)を常に精密に撮影可能である。
【0083】
光源IS3は用紙Pの表面に対し図示の角度θに適宜設定され、θは用紙Pの表面凹凸による影(陰影形状)が効果的に現れるような角度である。
【0084】
調光回路IS5は、光源IS3の強さを調整する、又は光源IS3の点灯を駆動している。
【0085】
イメージセンサ処理回路IS4はイメージセンサIS1を駆動する駆動回路と、イメージセンサIS1の出力信号からノイズを除去するノイズ除去処理回路と、アナログ画像信号をデジタル画像信号に変換するA/D変換処理回路と、多値画像信号を二値化する二値化処理回路等で構成される。イメージセンサIS1に撮像された画像をデジタル画像信号として順次出力するものである。
【0086】
図9において、矢印Xは用紙搬送方向を示し、矢印Yは用紙搬送方向に直交する幅方向における画像形成装置Aの後方を示す。用紙センサISは、X方向に移動する用紙Pの上面を撮影している。AgはイメージセンサIS1に結像される領域で、定着ニップ部Nによって拘束され通過する用紙の幅方向における中央が通過する領域である。
【0087】
速度演算部VCは、用紙センサISより出力されたデジタル画像信号(画像データ)に基づき用紙Pの移動速度を算出する。
【0088】
速度演算部VCは、用紙センサISが第1タイミングT1に撮影した第1画像データD1を自身内のメモリMの第1エリアにビットマップデータとして記憶する。そして、第1タイミングT1より所定期間Ta後の第2タイミングT2に用紙センサISが撮影した第2画像データD2を内部のメモリMの第2エリアに記憶する。
【0089】
次に、速度演算部VCは、画像データD1及び画像データD2をパターンマッチングさせて、第2画像データD2が第1画像データD1に対してシフトした画素数G(シフト画素数と称す)を演算する。なお、シフト画素数GはX方向のシフト画素数GxとY方向のシフト画素数Gyで成る。
【0090】
図10は、画像データ上において用紙Pの表面凹凸による影(画像パターン)が変位する状態を示す模式図である。
【0091】
図10(a)は、第1画像データD1をビットマップ状に展開した状態を表現している。図示のCgは用紙Pの表面凹凸による影の輪郭を示している。実際には輪郭Cgの内側は、影であり、2値データの“1”であり、その外側は2値データの“0”である。
【0092】
図10(b)は、第2画像データD2をビットマップ状に展開した状態を表現していて、図示のCgは影の輪郭であり、図示のCvは実際に存在しない第1画像データD1における影の輪郭の位置を示している。
【0093】
図10(c)は、図9(b)の部分領域Apを拡大したものであり、実際に存在しない影の輪郭の位置CvをX方向にシフト画素数Gxだけシフトし、Y方向にシフト画素数Gyだけシフトすると、CvとCgが一致する。つまり、画像データD1と画像データD2がパターンマッチングされること示している。通常、用紙PはX方向に搬送されており、Gxは正数であるが、Gyは負数、零、あるいは正数を示すが、ここでは無視できる程度に小さく、無視する。
【0094】
次に、速度演算部VCは、以下の(1)式を用いて、シフト画素数Gxに基づき、用紙Pが検出領域Agにおいて所定期間Taに移動した距離、つまり移動量Lxを演算(検出)する。
Lx=Φ×Lg×Gx・・・(1)
ΦはテレセントリックレンズIS2を有する用紙センサISの光学系の倍率である。LgはイメージセンサIS1の各画素間の距離である。
【0095】
更に、速度演算部VCは、以下の(2)式を用いて、シフト画素数Gxに基づき、検出領域Agにおける用紙Pの速度Vpを検出する。
【0096】
Vp=Lx/Tp=Φ×(Lg/Tp)×Gx・・・(2)
上記の用紙速度検出手段IPは、先端が検出位置に至った時から後端が検出位置に過ぎるまでの期間における用紙Pの速度Vpの推移を得ることが可能である。特に、定着ニップ部Nを通過するタイミングにおける用紙Pの速度を多数回に渡り検出することが可能であり、定着装置30で搬送される用紙Pの速度を高い精度で検出できる。
【0097】
なお、用紙速度検出手段IPは、これに限定されるものでなく、用紙の有無を検知する用紙センサを用いて用紙先端の通過タイミングと用紙後端の通過タイミングの時間差から用紙Pの速度Vpを求める方式でもよい。また、複数の用紙を通紙させて、各通紙で検出された用紙速度Vpの平均値を演算して、速度検出の精度を高めるようにしてもよい。
【0098】
[制御部]
図11は、本発明に係る、定着ニップ部Nにおける幅方向の押圧条件を調整する押圧調整制御に関係する制御関係のブロック図である。
【0099】
制御部CUは、画像形成装置A各部の全体制御を司り、更に、押圧部Npの幅方向における押圧力(分布)を調整する制御を実行する。図10は、上記の押圧力調整制御に関係する主要部のみで構成されているが、画像形成装置Aの各部に関係する他の制御ブロックは省略している。
【0100】
操作部OPは入力部、表示部で構成され、操作者に対する入出力インタフェースである。操作者は、画像形成装置Aに上記の押圧調整制御を定期に、不定期に実行させるための諸設定を操作部OPから行うことが出来る。また、操作者は上記の押圧調整制御が実行されている状況を表示部の表示内容から知ることが出来る。
【0101】
制御部CUは押圧力調整制御を実行する際に、給紙搬送部20の給紙カセット21に所定の大サイズ、小サイズの用紙Pが収容されていること確認し、仮に所定サイズの用紙が装填されていない場合には、所定サイズの用紙Pを収容させる旨を操作部OPの表示部に表示させる。所定サイズの用紙Pが収容されていることを確認すると、大サイズの用紙、小サイズの用紙の順に用紙Pを給紙カセット21から画像形成部10に給紙搬送させる。なお、押圧力調整制御を実行する場合には、画像形成部10は画像形成を行わず、白紙の用紙Pを定着装置30に搬送する。
【0102】
更に、用紙速度検出手段VSに定着装置30で搬送される各用紙Pの速度Vpを検出させる旨の指令を出力し、大小サイズの用紙速度Vpに関するデータが用紙速度検出手段VSから入力されると、用紙速度Vpのサイズ間比率Rを演算する。そして、得られたサイズ間比率Rに基づき、必要に応じて定着装置30の調整モータM1を回転させて、定着ニップ部N(押圧部Np)の幅方向押圧力(分布)を常に適正な範囲内に維持させている。
【0103】
図12は、制御部CUによって実行される定着装置30の押圧力調整制御の実施形態を示すフローチャートである。
【0104】
S101は、大小サイズの用紙の各々が複数の給紙カセット21に収容されているか否かを確認する工程である。否の場合(“No”の場合)に、S102工程に移行し、『未収容のサイズの用紙を収容して下さい』等のメッセージを操作部OPの表示部に表示させて、操作者による用紙収容を待機する。有の場合(“Yes”の場合)にはS103工程に移行する。
【0105】
S103は、給紙搬送部20、画像形成部10、用紙速度検出手段VSを作動させる工程である。
【0106】
次のS104は、用紙速度Vpの用紙速度検出手段VSからの入力を待機する工程であり、入力されると(“Yes”の場合に)、S105工程に移行する。
【0107】
S105は、それぞれ通紙された用紙Pの速度Vpのサイズ間比率R(%)を演算する工程である。
【0108】
次のS106〜S107工程は、S105工程で算出されたサイズ間比率Rが(下限値S2と上限値S1とで規定される)良好な画像出力を保証する画質保証範囲Zwにあるか否かを判定する工程である。画質保証範囲Zwの内部である判定する(S106工程で“Yes”、且つS107工程で“Yes”と判定する)と、S109工程に移行する。そして、画質保証範囲Zwの外であると判定する(S106工程で“No”、又はS107工程で“No”と判定する)と、S108工程に移行する。
【0109】
S108工程は機械の作動を停止させ、サービスマン等をコールするためのメッセージを操作部OPの表示部に表示させる工程であり、サービスマン等による装置の改修を委ね、一連の制御を終了する。
【0110】
つまり、S106工程で、紙シワが発生しない画質保証範囲Zwの上限値S1以下にサイズ間比率Rがあるか、否かを判定している。そして、“Yes”の場合、紙シワの発生は懸念されないので、S107工程に移行し、“No”の場合、紙シワの発生が懸念される状態にあると判定し、S108工程に移行する。
【0111】
また、S107工程で、光沢ムラが発生しない画質保証範囲Zwの下限値S2以下にサイズ間比率Rがあるか、否かを判定し、“Yes”の場合、光沢ムラの発生も懸念されないので次のS109工程に移行する。ところが“No”の場合、光沢ムラの発生が懸念される状態にあると判定し、S108工程に移行する。
【0112】
次のS109〜S110工程は、S105工程で算出されたサイズ間比率Rが所定範囲Za(所定値R1から所定値R2までの範囲)にあるか、否かを判定する工程であり、所定範囲Zaの範囲外である場合に、調整モータM1を所定方向に回転させて、押圧部Npの押圧力(分布)を画質保証範囲の中央側に変位させる。そして、サイズ間比率Rが所定範囲Zaの範囲内にある場合には、調整モータM1は作動せず、一連の押圧力調整制御を終了させる。
【0113】
S109工程は、算出されたサイズ間比率Rが所定範囲Zaの上限を規定する所定値R1以下であるか、否かを判定する工程である。そして、R1を越える場合(“No”の場合)、S111工程に移行する。R1以下である場合、S110工程に移る。
【0114】
S111工程は、加圧部材363の位置を幅方向における側方に変位させるために、調整モータM1を所定量分だけ正転方向に回転させる工程である。そして、S102工程に移行して押圧力調整制御を再度実行する。
【0115】
S110工程は、算出されたサイズ間比率Rが所定範囲Zaの下限を規定する所定値R2以上である否かを判定する工程であり、R2未満の場合(“No”の場合)、S112工程に移行する。そして、R2以上である場合、一連の押圧力調整制御を終了する。
【0116】
S112工程は、加圧部材363の位置を幅方向における内側に変位させるために、調整モータM1を所定量分だけ逆回転方向に回転させる工程である。そして、S102工程に移行して一連の押圧力調整制御を再度実行する。
【0117】
なお、調整モータM1を回転する所定量分は、一定値でもよく、サイズ間比率Rと調整モータM1の回転量(方向)と関連付けている対応表を用いてサイズ間比率Rに応じて定められた変数値でもよい。対応表を用いる場合には、押圧部Npの押圧力(分布)を画質保証範囲の中央部により高い精度で調整でき、常に光沢ムラ、紙シワの発生もなく画像安定性により優れた画像形成装置を提供できる。
【0118】
なお、上記実施例の画像形成装置は、定着部材として定着ローラ、圧接部材として圧接ベルトを用いた定着装置を有しているが、これに限定されるものでない。例えば、定着部材としてベルトを、圧接部材として加圧ローラを用いた定着装置でも構わない。また、定着部材、及び圧接部材の両方がローラ状である、あるいはベルト状であっても構わない。
【0119】
本発明に係る画像形成装置Aは、簡単な用紙速度検出手段VS(機構)の検出結果から用紙Pの速度Vpにおけるサイズ間比率R(サイズ間差異)に基づき定着ニップ部Nの押圧力バランス(分布)の状態を判定すること可能にしている。更に、その判定結果に基づき、定着ニップ部Nの押圧力バランス(分布)をより適正状態に変更することを実現するものを含むものである。
【符号の説明】
【0120】
A 画像形成装置
N 定着ニップ部
P 用紙
R サイズ間比率(サイズ間差異)
10 画像形成部
31 定着ローラ(定着部材)
32 圧接ベルト(圧接部材)
30 定着装置
Ag 検出領域
VS 用紙速度検出手段
Vp 用紙速度(用紙の速度)
Za 所定範囲
Zw 画質保証範囲(第2所定範囲)
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙上のトナーを用紙上に定着する定着装置を備え、電子写真方式の複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に関し、特に、定着装置で生じる画像の光沢ムラ及び用紙のシワを防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ベルトニップ方式の定着装置は、無端状の圧接ベルトの内周面に配設される加圧ローラと押圧部材とが圧接ベルトを介して内蔵の加熱源で加熱される定着ローラの外周に押圧されており、コンパクトな構成で幅広い定着ニップ部が形成されている。そのために、画像の高光沢化、画像形成の高速化、及び画像形成装置の小型化に優れ、カラー画像形成装置に用いられている。
【0003】
近年、画像の品質に対して市場からの要求が高くなっており、光沢ムラ、あるいは紙シワもなく、高い光沢度のカラー画像を安定して出力可能な画像形成装置の提供が要望されている。
【0004】
定着装置で定着された画像の光沢ムラ、又は用紙のシワを防止する技術について下記の特許文献に記載される。
【0005】
特許文献1に記載の定着装置は、押圧部材と加圧ローラとの境界領域で記録材と定着ローラとの間に部分的な空気の滞留が生じないよう、定着ニップ部内での圧接ベルトと押圧部材と加圧ローラとで囲まれた空間(断面)を滑性シートで充分に充填される構成にし、定着ニップ部内の用紙搬送方向における圧力分布を改善している。そして、上記のベルトニップ式の定着装置においてコート紙などの透気性の低い記録材を定着処理した場合に起こる氷柱状の光沢ムラを解決している。
【0006】
特許文献2に記載の定着装置は、押圧部材の圧接面における両側部を幅方向の中央部より定着ローラの回転方向上流に突出させて、用紙が幅広の定着ニップ部に進入する際に、用紙の先端辺における両端部が用紙の中央部よりも早い段階で定着ローラと圧接ベルトとに狭持されるようにして用紙シワの発生を防止している。
【0007】
特許文献3に記載の定着装置は、定着ニップ部内の最下流側に位置する圧接部において押圧力を高く、幅方向の押圧力分布を均一にして、用紙の高い剥離性と良好な定着性を確保する。更に、圧接部より上流側の押圧部において両端部の押圧力が小さく、中央部の押圧力が大きくして、用紙の速度が中央部より両端部で速くなるようにして用紙シワを防止可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−146156号公報
【特許文献2】特開2006−276104号公報
【特許文献3】特開2006−58527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、広幅定着ニップ部内の幅方向における押圧力分布、押圧力バランスを適正に設定することにより、光沢ムラ、あるいは紙シワもなく、高い光沢度のカラー画像を出力可能な画像形成装置を提供できることが、特許文献1から3に開示されている。
【0010】
ところが、押圧部材の劣化等により定着ニップ部内の押圧力バランスが次第に変化し、紙シワ、光沢ムラ等の画像不良が突然に発生し、定着装置の修理及び再調整が必要になるという問題がある。また、定着装置の組立時に定着ニップ部内の押圧力の適正な設定において多大な時間を要するという問題がある。特許文献1から3にはこの課題について開示されていない。
【0011】
本発明の目的は、定着ニップ部内の押圧力の状態を判定し、定着ニップ部内の押圧力バランスを適時に変更して、長期に渡り紙シワ、光沢ムラ等のない画像形成装置を提供することである。また、定着ニップ部内の押圧力状態を簡易な機構で判定することが可能な画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題は、以下の発明を実現することにより達成される。
【0013】
1.用紙上に画像を形成する画像形成部と、
回動方向に回動する定着部材と、前記定着部材の表面に対し圧接する圧接部材と、を有し、前記定着部材の表面と前記圧接部材の表面とが互いに圧接し同方向に移動する定着ニップ部に前記画像形成部から搬入された用紙を通紙して用紙上の画像を定着する定着装置と、
前記定着ニップ部に拘束され検出領域を通過する用紙の速度を検出する用紙速度検出手段と、を備える画像形成装置であって、
前記回動方向と直交する幅方向のサイズが異なる用紙を各々前記定着装置に搬入させ、前記用紙速度検出手段で検出された用紙の速度におけるサイズ間差異に基づき、前記定着ニップ部の前記幅方向における押圧力分布を変更することを特徴とする画像形成装置。
【0014】
2.前記用紙の速度におけるサイズ間差異が所定範囲の外にある場合に前記所定範囲内に収めるよう、前記定着ニップ部の前記幅方向における押圧力分布を変更することを特徴とする1に記載の画像形成装置。
【0015】
3.前記用紙の速度におけるサイズ間差異が前記所定範囲を包含する第2所定範囲の外にある場合に、画像を形成する動作を停止することを特徴とする2に記載の画像形成装置。
【0016】
4.前記検出領域が、前記幅方向のサイズが最小である用紙が通過する前記幅方向における位置にあることを特徴とする1から3までの何れか1項に記載の画像形成装置。
【0017】
5.前記検出領域が、用紙の前記幅方向における中央が通過する位置であることを特徴とする4に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、定着ニップ部内の押圧力の状態を判定し、定着ニップ部内の押圧力分布を適時変更して常に定着ニップ部の押圧力バランスを適正状態に維持可能にし、長期に渡り紙シワ、光沢ムラ等の画像不良を防止すること可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る画像形成装置Aの構成を示す中央断面図である。
【図2】本発明に係る定着装置30を示す断面図である。
【図3】定着ニップ部N内の回動方向における押圧力分布の一例である。
【図4】加圧手段36を用紙Pの搬送方向上流側から観た断面図(図2のAA断面)と、加圧部材363の位置と押圧パッド364による押圧力の幅方向分布との関係を示す模式図と、である。
【図5】幅方向の中央部及び両側部で測定された、定着ニップ部N内における回動方向の押圧分布を示す一例である。
【図6】幅方向における位置Pjの定着ニップ部Nによって搬送される用紙Pの速度Vpj(相対値)を示し、速度Vpjの幅方向分布である。
【図7】用紙Pの幅方向サイズと、定着ニップ部Nで搬送される用紙Pの速度Vpとの関係(グラフ)の一例を示す。
【図8】押圧部Np内の幅方向押圧力を変化させた場合に、小サイズの用紙速度Vpに対する大サイズの用紙速度Vpの比率、つまり用紙速度Vpのサイズ間比率R(%)との関係(グラフ)を示す。
【図9】本発明に係る用紙速度検出手段VSの構成を示す模式図である。
【図10】画像データ上において用紙Pの表面凹凸による影(画像パターン)が変位する状態を示す模式図である。
【図11】本発明に係る、定着ニップ部Nにおける幅方向の押圧条件を調整する押圧調整制御に関係する制御関係のブロック図である。
【図12】制御部CUによって実行される定着装置30の押圧力調整制御の実施形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本欄の記載は請求項の技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。
【0021】
図1は、本発明に係る画像形成装置Aの構成を示す中央断面図である。
【0022】
画像形成装置Aはタンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、複数組の画像形成手段10Y、10M、10C、10K、ベルト状の中間転写体6、給紙搬送手段及び定着装置30等からなる。
【0023】
画像形成装置Aの上部には、自動原稿送り装置DFと原稿画像走査露光装置SCから成る画像読取装置Bが設置されている。自動原稿送り装置DFの原稿台上に載置された原稿dは、搬送手段により搬送され原稿画像走査露光装置SCの光学系により原稿の片面又は両面の画像が走査露光され、ラインイメージセンサCCDに読み込まれる。
【0024】
ラインイメージセンサCCDにより光電変換されて形成された信号は、画像処理部において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等が行われた後、露光手段3Y、3M、3C、3Kに送られる。
【0025】
イエロー(Y)色のトナー画像を形成する画像形成手段10Yは、感光体1Yの周囲に帯電手段2Y、露光手段3Y、現像手段4Y及びクリーニング手段8Yを配置している。マゼンタ(M)色のトナー画像を形成する画像形成手段10Mは、感光体1Mの周囲に帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M及びクリーニング手段8Mを配置している。シアン(C)色のトナー画像を形成する画像形成手段10Cは、感光体1Cの周囲に帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C及びクリーニング手段8Cを配置している。黒(K)色のトナー画像を形成する画像形成手段10Kは、感光体1Kの周囲に帯電手段2K、露光手段3K、現像手段4K及びクリーニング手段8Kを配置している。帯電手段2Yと露光手段3Y、帯電手段2Mと露光手段3M、帯電手段2Cと露光手段3C、及び帯電手段2Kと露光手段3Kは、潜像形成手段を構成する。
【0026】
なお、現像手段4Y、4M、4C、4Kは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及び黒(K)の小粒径のトナーとキャリアからなる2成分現像剤を内包する。
【0027】
中間転写体6は、複数のローラにより巻回され、図示しない駆動手段により回動可能に支持されている。
【0028】
定着装置30は、加熱された定着部材としての定着ローラ31と圧接部材としての圧接ベルト32との間に形成された定着ニップ部で用紙P上の未定着トナー像を加熱、加圧して定着する。
【0029】
画像形成部10は、各画像形成手段10Y、10M、10C、10Kと中間転写部7とで構成され、中間転写部7の一次転写手段7Y、7M、7C、7Kで各画像形成手段10Y、10M、10C、10Kで形成された各色のトナー像を中間転写体6上に逐次転写(1次転写)する。更に、中間転写部7の二次転写手段7Aで中間転写体6上の各色トナー像を給紙搬送部20から搬送された用紙Pに再度転写して用紙P上にカラー画像を形成する。
【0030】
給紙搬送部20は、用紙を収容する3つの給紙カセット21と、各給紙カセット21に収容された用紙Pを給紙する給紙手段22と、給紙手段22により給紙された用紙Pを連係してレジストローラ24に搬送する搬送ローラ23A、23B、23C、23Dと、搬送ローラから搬送された用紙Pを一旦停止した後に適切なタイミングに中間転写部に送り出すレジストローラ24と、で構成される。
【0031】
カラー画像が形成された用紙Pは、定着装置30で用紙P上のカラートナー像が定着され、その後に排紙ローラ25に挟持され機外に排紙されて排紙トレイ26上に載置される。
【0032】
定着装置30の入口には本発明に係る用紙センサISが配設されており、用紙センサISは定着装置30に搬入される用紙Pの表面状態を検知している。
【0033】
一方、二次転写手段7Aにより用紙Pにカラー画像を転写した後、用紙Pを曲率分離した中間転写体6は、クリーニング手段8Aにより残留トナーが除去される。
【0034】
なお、上記の画像形成装置Aはカラー画像を形成しているが、本発明に係る画像形成装置はモノクロ画像を形成するものでもよく、中間転写体6を有さないものでもよい。
【0035】
次に、本発明に係る定着装置30の主要構成について説明する。
【0036】
《定着装置30》
図2は、本発明に係る定着装置30を示す断面図である。
【0037】
本発明に係る定着装置30は、図2に示すように回動方向としての時計方向に回動し通紙路上方に配設された定着ローラ31と、回動方向としての反時計方向に回動し通紙路下方に配設された圧接ベルト32を有する。
【0038】
定着ローラ31と圧接ベルト32との間に形成される定着ニップ部Nは通紙経路を構成し、用紙P上のトナー像は定着ニップ部Nを通過する間に加熱及び加圧の作用を受けて用紙P上に定着される。図示のように、定着ニップ部Nは圧接ベルト32の回動方向における下流側の定着部Nfと定着部Nfに対し上流側の押圧部Npとから構成され、更に定着ローラ31の表面と圧接ベルト32の表面とが互いに圧接して同方向に移動するように構成される。
【0039】
定着ローラ31は、内部にハロゲンヒータH1を内蔵し、アルミニウムや鉄等から形成された円筒状の芯金31Aと、耐熱性の高いシリコーンゴムから成り芯金31Aに被覆された弾性層31Bと、更に弾性層31Bを被覆しPFA(パーフルオロアルキルビニルエーテル)若しくはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂から成る離型層31Cと、により構成されている。一例として、定着ローラ31の外径は80mm、弾性層の厚みは1.5mm(硬度15°JISA)で、表層の厚みは50μmである。
【0040】
定着ローラ31の外周面には、クリーニング手段38、分離爪39、及び図示しない温度センサ等が配置されている。
【0041】
圧接ベルト32は、約70μmの厚みのポリイミドで成り無端状の基体と、基体の外表面に被覆され180μmのシリコーンゴムで成る弾性層と、弾性層上に被覆され約50μmの厚みのPFA若しくはPTFEで成る離型層と、から構成される。
【0042】
圧接ベルト32は、用紙Pの導入部に近い入口ローラ33、用紙Pの出口部に近い圧接ローラ34、ステアリングローラ35、テンションローラ35Sの各支持ローラの外周を巻回して張設され、定着ローラ31の外周面に当接する。
【0043】
入口ローラ33は、内部に加熱源としてのハロゲンヒータH2を内蔵し、中空のステンレスから成る。一例として、その直径は20mmである。
【0044】
ステアリングローラ35は、圧接ベルト32の回動方向と直交する幅方向への片寄り(蛇行)を制御し、安定走行させるためのローラである。一例として、その直径は18mmである。
【0045】
分離爪39は、定着ローラ31の外周面に近接して、定着ローラ31から用紙Pを剥離する。
【0046】
圧接ローラ34(第1の張架ローラ)は、定着部Nfにおいて非図示の圧接機構により定着ローラ31に対して圧接ベルト32を介して圧接される。そして、圧接ローラ34は、中実のステンレス材から成り、幅方向における中央部の外径が両側部より大きい形状、所謂、クラウン形状を有し、定着部Nfの圧力を幅方向に均一している。従って、用紙P上のトナー像は、圧接ベルト32と定着ローラ31に挟持されながら定着部Nfで定着される。
【0047】
更に、圧接ローラ34は、定着ローラ31から用紙Pを分離する分離部材として機能するために、一例として、その直径は20mmである。また、圧接ローラ34は駆動源に連結されおり、その回転により圧接ベルト32が回動される。
【0048】
また、加圧手段36は、圧接ローラ34に対し圧接ベルト32の回動方向下流側に配設され、定着ローラ31に圧接ベルト32を内周面側から押圧し、定着ローラ31と圧接ベルト32とによる定着ニップ部Nを形成している。定着ニップ部Nは圧接ベルト32の回動方向に20mmの長さである。
【0049】
加圧手段36は、摺動シート36S、支持部材361、スペーサ362、加圧部材363、押圧パッド364等から構成される。
【0050】
支持部材361は、定着ローラ31に対し圧接・離間可能に変位する非図示の筐体に固定され、4mm厚さのSUS板で、押圧パッド364を支持するスペーサ362を支持する。スペーサ362は、約2mm厚さのアルミニュウム板で、幅方向に配設された2つの加圧部材363を支点にして支持されている。
【0051】
押圧パッド364は、例えば、JISA10の硬度を有するシリコーンゴムから成り、定着ローラ31の曲面に沿う形状に形成され、5〜10mmの厚みを有する。
【0052】
押圧パッド364は、定着ローラ31に圧接ベルト32を400〜800Nの荷重で押圧する。押圧パッド364の厚み、形状により、押圧部Np内におけて圧接ベルト回動方向の圧力分布を調整する。特に、圧接ベルト32の回動方向における圧力分布を調整する。
【0053】
図3は、定着部Nfと押圧部Npとを含む定着ニップ部N内の圧接ベルト回動方向における押圧力分布を示す、一例である。
【0054】
横軸は圧接ベルト32の回動方向における位置を示し、縦軸のPxは圧接ベルト32の回動方向における押圧力分布を示す。Xiは定着ニップ部Nの入口、Xoは定着ニップ部Nの出口である。P1は定着ニップ部N内の最大値であり、定着部Nfの中央にある。P2は押圧部Np内の最大値である。定着部Nfの圧力分布は、狭く急峻な曲線を示す。一方、押圧部Npの圧力分布は、広幅であり緩やかな曲線を示す。
【0055】
図2に戻り、以下説明する。摺動シート36Sは、約70μmの厚みを有するPI(ポリイミド)等からなる耐熱性シートで構成され、上流側の端部を支持部材361に固定される。更に、摺動抵抗を低くするためにエンボス加工されているものが好ましい。但し、これに限定されるものではない。
【0056】
潤滑剤供給部材37は、入口ローラ33に当接されており、内部に潤滑剤が含浸され、潤滑剤を入口ローラ33に介して圧接ベルト32の内面に供給する。潤滑剤供給部材37は袋状に形成されたPTFE多孔質膜の内部にフェルト等が詰められた構成であり、潤滑剤が予めフェルトに含浸されている。潤滑剤としては、粘度100〜1000csのジメチルシリコンオイル、あるいは粘度100〜1000csのメチルフェニルシリコンオイル等のシリコンオイルを用いることができる。
【0057】
2つの加圧部材363は支持部材361上を幅方向に変位可能に支持され、各加圧部材363は、ネジ溝の形成された穴を有し、ネジ山の形成された回転軸365の回転により、相互近接、あるいは離間させるよう変位可能である。回転軸365の一端は、非図示の筐体に固設された調整モータM1の軸に連結されている。
【0058】
図4(a)は、加圧手段36を用紙Pの搬送方向上流側から観た断面図(図2のAA断面)である。2つの加圧部材363は、調整モータM1の駆動により回転軸365が正転すると相互に近づく方向に変位し、そして、回転軸365が逆転すると相互に離れる方向に変位する。2つの加圧部材363は、図示の破線で示すPa位置から実線で示すPb位置までの範囲を移動可能である。調整モータM1はステッピングモータであり、2つの加圧部材363は調整モータM1の駆動制御により、幅方向における位置を適宜設定可能である。
【0059】
図4(b)は、加圧部材363の位置と、押圧パッド364による押圧力の幅方向分布との関係を示す模式図である。横軸は幅方向の位置を示し、Ycは用紙Pの幅方向の中央部が通過する位置であり、Yfは最大用紙サイズの奥側端部が通過する位置であり、Yfは最大用紙サイズの手前側端部が通過する位置である。縦軸は、押圧パッド364による押圧力の幅方向における分布(%)である。そして、太い実線C1は加圧部材363が図4(a)のPcで示す位置にある時の押圧力分布で、細い実線C2は加圧部材363が図4(a)のPbで示す位置にある時の押圧力分布で、破線C3は加圧部材363が図4(a)のPaで示す位置にある時の押圧力分布である。
【0060】
以上のように、調整モータM1の駆動制御により、2つの加圧部材363の幅方向における位置を適宜変更して、押圧パッド364による押圧力の幅方向分布(押圧力バランス)を適宜調整可能である。
【0061】
図5は、幅方向の中央部及び両側部で測定された、定着ニップ部N内における回動方向の押圧分布を示す一例である。細い実線Ccが中央部の押圧力分布曲線で、太い実線Ceが両側部の押圧力分布曲線である。ここでは、図4(a)において2つの加圧部材363がPbで示す幅方向の位置に変位している場合に対応する。
【0062】
調整モータM1の駆動制御により、押圧部Npの押圧力分布は変化するが、定着部Nfの押圧力は変化しない。
【0063】
[定着ニップ部Nの幅方向における押圧条件を調整する方法]
本発明者らは鋭意検討して、定着装置30により搬送される用紙Pの速度Vpと定着ニップ部の幅方向における押圧力分布との関係を見出した。更に、幅方向サイズが異なる複数種の用紙Pを給紙させ、定着装置30により搬送される用紙Pの速度Vpを定着ニップ部Nの上流側、あるいは下流側で検出して、用紙Pの速度Vpのサイズ間差異に基づき、定着ニップ部Nにおける幅方向の押圧力条件(分布)を調整して、光沢ムラ及び紙シワ等の画像不具合を防止できることを見出した。以下に詳しく説明する。
【0064】
図6は、幅方向における位置Pjの定着ニップ部Nによって搬送される用紙Pの速度Vpj(相対値)を示し、速度Vpjの幅方向分布である。調整モータM1の駆動制御により2つの加圧部材363を変位させて、押圧部Np内の幅方向における押圧力分布を図4(b)の細い実線C2のように形成させた場合の一例である。
【0065】
定着ニップ部Nの各位置Pjによって搬送される用紙Pの速度Vpjは、実際の用紙では測定できないために、用紙搬送方向に長く用紙搬送方向と直交する幅方向に小さい縦長帯状の試験紙を各位置Pjに搬入させて、後述で詳しく説明する用紙速度検出手段VSを用いて定着ニップ部Nにより搬送される用紙Pの速度を検出して得たものである。
【0066】
既に説明した通り、定着部Nfの幅方向における押圧分布は概ね均一であり、定着ニップ部N内の幅方向における変化は、押圧部Npの幅方向における押圧力の分布で定まる。押圧部Npの各位置Pjでは押圧力の高い領域では、圧接ベルト32が押圧パッド364の摩擦力が押圧力の低い両側部より大きくなるために、図4(b)の細い実線C2のような押圧分布の場合には中央部の押圧力が両側部より高く、圧接ベルト32の速度が相対的に小さくなり、用紙Pの速度Vpが相対的に小さくなるものと推測される。従って、図4(b)の細い実線C2のような押圧分布の場合には、各位置Pjにおける用紙Pの速度Vpjは、図6に示すように両側部に比較して中央部で小さくなる。
【0067】
また、逆に、図4(b)の破線C3のように幅方向のおける中央部の押圧力が両側部より小さい場合には、図6には示されていないが、各位置Pjにおける用紙Pの速度Vpjは両側部に比較して中央部で大きくなる。以上のことが確認されている。
【0068】
実際の用紙Pは、上記実験のように縦長帯状の用紙ではなく、定着ニップ部N(押圧部Np)の各位置Pjに対応して異なる速度で移動する圧接ベルト32の影響を受けることになる。そのために、幅方向サイズが異なる異種の用紙Pを搬送すると、定着ニップ部Nで搬送される用紙Pの速度Vpは、用紙種別(用紙の幅方向サイズ)に異なる値を示すことなる。
【0069】
図7は、用紙Pの幅方向サイズと、定着ニップ部Nで搬送される用紙Pの速度Vpとの関係(グラフ)の一例を示す。縦軸は基準値に対する用紙Pの速度Vp(相対値)であり、横軸は用紙Pの幅方向サイズ(mm)である。なお、基準値は圧接ベルト32及び用紙Pが滑りなく回動されると仮定した場合の用紙速度Vp(設計値)である。図7の例は、調整モータM1の駆動制御により2つの加圧部材363を変位させて、押圧部Np内の幅方向における押圧力分布を図4(b)の細い実線C2のように形成させた場合である。
【0070】
用紙速度Vpにおけるサイズ間差異が存在し、この一例に示すように、用紙速度Vpは用紙サイズに依存する。ここでは、大サイズの用紙Pの速度Vpは、小サイズの用紙Pの速度Vpより1.0%相当小さい。
【0071】
このように、用紙Pの速度Vpのサイズ間差異は、小サイズの用紙速度Vpに対する大サイズの用紙速度Vpの差分(%)で示すことができる。但し、これに限定されるものでなく、小サイズの用紙速度Vpに対する大サイズの用紙速度Vpの比率で示すことが出来る。つまり、用紙Pの速度Vpにおけるサイズ間差異は、幅方向におけるサイズが異なる用紙Pのそれぞれ速度Vpの比率を演算して得たサイズ間比率Rでも示すことができ、後記ではサイズ間差異としてサイズ間比率Rを用いる。
【0072】
図8は、押圧部Np内の幅方向押圧力を変化させた場合に、小サイズ(約100mm)の用紙速度Vpに対する大サイズ(約300mm)の用紙速度Vpの比率、つまり用紙速度Vpのサイズ間比率R(%)との関係(グラフ)を示す。ここでは、調整モータM1の駆動制御により押圧部Np内の幅方向押圧力分布を図4(b)の細い実線C2から破線C3の範囲で変化させている。
【0073】
横軸は調整モータM1の駆動制御により変位する加圧部材363の幅方向における位置を示し、加圧部材363は図4(a)のPaからPbの範囲で変位している。縦軸は、小サイズ(約100mm)の用紙速度Vpに対する大サイズ(約300mm)の用紙速度Vpの比率である、用紙速度Vpのサイズ間比率R(%)である。破線S2は良好な画像の出力を保証する第2所定範囲としての画質保証範囲を規定する下限値である。サイズ間比率Rが下限値未満になると、光沢ムラが用紙Pの幅方向における両側に発生する。破線S1は画質保証範囲を規定する上限値である。サイズ間比率Rが上限値S1超えになると、用紙Pの用紙搬送方向後方に紙シワ等の画像不良が発生する。制御部CUは、用紙速度Vpのサイズ間比率Rが下限値S2から上限値S1までの画質保証範囲Zw内に常に維持されるように、用紙速度Vpのサイズ間比率Rが画質保証範囲Zwの内部に設けた所定範囲Za内にあるか、否かを判定し、所定範囲Za外にあると判定した場合に、用紙速度Vpのサイズ間比率Rを所定範囲Zaの内部になるように加圧部材363の位置を幅方向に変位させる。なお、上記の所定範囲Zaは画質保証範囲Zwの内部に設けられ、換言すると画質保証範囲Zwに包含され、2つの所定値R1、R2(R1>R2)で規定されている。
【0074】
つまり、用紙速度Vpのサイズ間比率Rが所定値R1を超えていると、調整モータM1の回転を所定分だけ正転させて加圧部材363の位置を幅方向の側方に所定量だけ変位する。また、用紙速度Vpのサイズ間比率Rが所定値R2未満であると、調整モータM1の回転を所定分だけ逆転させ、同様に加圧部材363の位置を幅方向の中央側に変位する。
【0075】
なお、実際には、初期時の定着装置30のと、繰り返し使用された劣化時の定着装置30では、定着ニップ部N、特に押圧部Npにおける幅方向における押圧力分布が変化して、図8で示す加圧部材363の幅方向における位置と用紙Pの速度Vpにおけるサイズ間比率R(%)との関係(図8に示す特性曲線)が同一傾向を示しながら変化する。例えば、図8に示す特性曲線が初期と劣化時とで横軸方向にシフトするような事態が生じる。
【0076】
本発明に係る画像形成装置Aの制御部CUは、上記のような事態に対して、定期、あるいは不定期に幅方向サイズが異なる複数の用紙を給紙カセット21から搬送させ、用紙速度検出手段VSで用紙Pの速度を検出し、小サイズの用紙速度Vpに対する大サイズの用紙速度Vpの比率(%)、つまり用紙速度Vpのサイズ間比率R(%)を演算し、得られた用紙Pの速度Vpにおけるサイズ間比率R(%)に基づき調整モータM1を制御して、定着ニップ部N(押圧部Np)の幅方向押圧力(分布)を光沢ムラ、紙シワ等のない適正な範囲内に維持させることを可能にする。
【0077】
また、定着ニップ部Nに拘束され通過する用紙Pの速度Vpを検出するという簡単な用紙速度検出手段VS(機構)を用いて、幅方向サイズの異なる用紙Pを定着装置30に給送して、図8に示す関係を利用して、用紙速度検出手段VSで検出された用紙Pの速度Vpにおけるサイズ間比率R(サイズ間差異)に基づき定着ニップ部Nの押圧力バランス(分布)の状態を判定すること可能にする。更に、その判定結果に基づき、定着ニップ部Nの押圧力バランス(分布)をより適正状態に可能するものである。
【0078】
[用紙速度検出手段VS]
用紙速度検出手段VSは、定着装置30の入口部に配設され、定着ニップ部Nによって拘束され通過する用紙Pの幅方向における中央位置の表面凹凸を撮影する用紙センサISと、用紙センサISの信号に基づき用紙Pの速度を演算する速度演算部VCと、で構成される。つまり、用紙速度検出手段VSが用紙Pの速度Vpを検出する検出領域Agは、定着ニップ部Nによって拘束され通過する用紙の幅方向における中央が通過する領域である。
【0079】
図9は、本発明に係る用紙速度検出手段VSの構成を示す模式図である。
【0080】
用紙センサISは、用紙Pの上面を照射するLED等の光源IS3と、イメージセンサIS1と、用紙Pの上面をイメージセンサIS1上に結像させるテレセントリックレンズIS2と、イメージセンサ処理回路IS4と、調光回路IS5とから構成される。
【0081】
イメージセンサIS1は、複数の画素センサが二次元に配列されたエリアイメージセンサ)であり、C−MOSセンサ、あるいは電荷結合素子センサ等を用いている。
【0082】
テレセントリックレンズIS2は、被写体深度が深く、その範囲で倍率が一定で、視界による画像の歪みがなく、図9で示すようにレンズとの距離Lが変動する被写体(用紙P)の形状(寸法等)を常に精密に撮影可能である。
【0083】
光源IS3は用紙Pの表面に対し図示の角度θに適宜設定され、θは用紙Pの表面凹凸による影(陰影形状)が効果的に現れるような角度である。
【0084】
調光回路IS5は、光源IS3の強さを調整する、又は光源IS3の点灯を駆動している。
【0085】
イメージセンサ処理回路IS4はイメージセンサIS1を駆動する駆動回路と、イメージセンサIS1の出力信号からノイズを除去するノイズ除去処理回路と、アナログ画像信号をデジタル画像信号に変換するA/D変換処理回路と、多値画像信号を二値化する二値化処理回路等で構成される。イメージセンサIS1に撮像された画像をデジタル画像信号として順次出力するものである。
【0086】
図9において、矢印Xは用紙搬送方向を示し、矢印Yは用紙搬送方向に直交する幅方向における画像形成装置Aの後方を示す。用紙センサISは、X方向に移動する用紙Pの上面を撮影している。AgはイメージセンサIS1に結像される領域で、定着ニップ部Nによって拘束され通過する用紙の幅方向における中央が通過する領域である。
【0087】
速度演算部VCは、用紙センサISより出力されたデジタル画像信号(画像データ)に基づき用紙Pの移動速度を算出する。
【0088】
速度演算部VCは、用紙センサISが第1タイミングT1に撮影した第1画像データD1を自身内のメモリMの第1エリアにビットマップデータとして記憶する。そして、第1タイミングT1より所定期間Ta後の第2タイミングT2に用紙センサISが撮影した第2画像データD2を内部のメモリMの第2エリアに記憶する。
【0089】
次に、速度演算部VCは、画像データD1及び画像データD2をパターンマッチングさせて、第2画像データD2が第1画像データD1に対してシフトした画素数G(シフト画素数と称す)を演算する。なお、シフト画素数GはX方向のシフト画素数GxとY方向のシフト画素数Gyで成る。
【0090】
図10は、画像データ上において用紙Pの表面凹凸による影(画像パターン)が変位する状態を示す模式図である。
【0091】
図10(a)は、第1画像データD1をビットマップ状に展開した状態を表現している。図示のCgは用紙Pの表面凹凸による影の輪郭を示している。実際には輪郭Cgの内側は、影であり、2値データの“1”であり、その外側は2値データの“0”である。
【0092】
図10(b)は、第2画像データD2をビットマップ状に展開した状態を表現していて、図示のCgは影の輪郭であり、図示のCvは実際に存在しない第1画像データD1における影の輪郭の位置を示している。
【0093】
図10(c)は、図9(b)の部分領域Apを拡大したものであり、実際に存在しない影の輪郭の位置CvをX方向にシフト画素数Gxだけシフトし、Y方向にシフト画素数Gyだけシフトすると、CvとCgが一致する。つまり、画像データD1と画像データD2がパターンマッチングされること示している。通常、用紙PはX方向に搬送されており、Gxは正数であるが、Gyは負数、零、あるいは正数を示すが、ここでは無視できる程度に小さく、無視する。
【0094】
次に、速度演算部VCは、以下の(1)式を用いて、シフト画素数Gxに基づき、用紙Pが検出領域Agにおいて所定期間Taに移動した距離、つまり移動量Lxを演算(検出)する。
Lx=Φ×Lg×Gx・・・(1)
ΦはテレセントリックレンズIS2を有する用紙センサISの光学系の倍率である。LgはイメージセンサIS1の各画素間の距離である。
【0095】
更に、速度演算部VCは、以下の(2)式を用いて、シフト画素数Gxに基づき、検出領域Agにおける用紙Pの速度Vpを検出する。
【0096】
Vp=Lx/Tp=Φ×(Lg/Tp)×Gx・・・(2)
上記の用紙速度検出手段IPは、先端が検出位置に至った時から後端が検出位置に過ぎるまでの期間における用紙Pの速度Vpの推移を得ることが可能である。特に、定着ニップ部Nを通過するタイミングにおける用紙Pの速度を多数回に渡り検出することが可能であり、定着装置30で搬送される用紙Pの速度を高い精度で検出できる。
【0097】
なお、用紙速度検出手段IPは、これに限定されるものでなく、用紙の有無を検知する用紙センサを用いて用紙先端の通過タイミングと用紙後端の通過タイミングの時間差から用紙Pの速度Vpを求める方式でもよい。また、複数の用紙を通紙させて、各通紙で検出された用紙速度Vpの平均値を演算して、速度検出の精度を高めるようにしてもよい。
【0098】
[制御部]
図11は、本発明に係る、定着ニップ部Nにおける幅方向の押圧条件を調整する押圧調整制御に関係する制御関係のブロック図である。
【0099】
制御部CUは、画像形成装置A各部の全体制御を司り、更に、押圧部Npの幅方向における押圧力(分布)を調整する制御を実行する。図10は、上記の押圧力調整制御に関係する主要部のみで構成されているが、画像形成装置Aの各部に関係する他の制御ブロックは省略している。
【0100】
操作部OPは入力部、表示部で構成され、操作者に対する入出力インタフェースである。操作者は、画像形成装置Aに上記の押圧調整制御を定期に、不定期に実行させるための諸設定を操作部OPから行うことが出来る。また、操作者は上記の押圧調整制御が実行されている状況を表示部の表示内容から知ることが出来る。
【0101】
制御部CUは押圧力調整制御を実行する際に、給紙搬送部20の給紙カセット21に所定の大サイズ、小サイズの用紙Pが収容されていること確認し、仮に所定サイズの用紙が装填されていない場合には、所定サイズの用紙Pを収容させる旨を操作部OPの表示部に表示させる。所定サイズの用紙Pが収容されていることを確認すると、大サイズの用紙、小サイズの用紙の順に用紙Pを給紙カセット21から画像形成部10に給紙搬送させる。なお、押圧力調整制御を実行する場合には、画像形成部10は画像形成を行わず、白紙の用紙Pを定着装置30に搬送する。
【0102】
更に、用紙速度検出手段VSに定着装置30で搬送される各用紙Pの速度Vpを検出させる旨の指令を出力し、大小サイズの用紙速度Vpに関するデータが用紙速度検出手段VSから入力されると、用紙速度Vpのサイズ間比率Rを演算する。そして、得られたサイズ間比率Rに基づき、必要に応じて定着装置30の調整モータM1を回転させて、定着ニップ部N(押圧部Np)の幅方向押圧力(分布)を常に適正な範囲内に維持させている。
【0103】
図12は、制御部CUによって実行される定着装置30の押圧力調整制御の実施形態を示すフローチャートである。
【0104】
S101は、大小サイズの用紙の各々が複数の給紙カセット21に収容されているか否かを確認する工程である。否の場合(“No”の場合)に、S102工程に移行し、『未収容のサイズの用紙を収容して下さい』等のメッセージを操作部OPの表示部に表示させて、操作者による用紙収容を待機する。有の場合(“Yes”の場合)にはS103工程に移行する。
【0105】
S103は、給紙搬送部20、画像形成部10、用紙速度検出手段VSを作動させる工程である。
【0106】
次のS104は、用紙速度Vpの用紙速度検出手段VSからの入力を待機する工程であり、入力されると(“Yes”の場合に)、S105工程に移行する。
【0107】
S105は、それぞれ通紙された用紙Pの速度Vpのサイズ間比率R(%)を演算する工程である。
【0108】
次のS106〜S107工程は、S105工程で算出されたサイズ間比率Rが(下限値S2と上限値S1とで規定される)良好な画像出力を保証する画質保証範囲Zwにあるか否かを判定する工程である。画質保証範囲Zwの内部である判定する(S106工程で“Yes”、且つS107工程で“Yes”と判定する)と、S109工程に移行する。そして、画質保証範囲Zwの外であると判定する(S106工程で“No”、又はS107工程で“No”と判定する)と、S108工程に移行する。
【0109】
S108工程は機械の作動を停止させ、サービスマン等をコールするためのメッセージを操作部OPの表示部に表示させる工程であり、サービスマン等による装置の改修を委ね、一連の制御を終了する。
【0110】
つまり、S106工程で、紙シワが発生しない画質保証範囲Zwの上限値S1以下にサイズ間比率Rがあるか、否かを判定している。そして、“Yes”の場合、紙シワの発生は懸念されないので、S107工程に移行し、“No”の場合、紙シワの発生が懸念される状態にあると判定し、S108工程に移行する。
【0111】
また、S107工程で、光沢ムラが発生しない画質保証範囲Zwの下限値S2以下にサイズ間比率Rがあるか、否かを判定し、“Yes”の場合、光沢ムラの発生も懸念されないので次のS109工程に移行する。ところが“No”の場合、光沢ムラの発生が懸念される状態にあると判定し、S108工程に移行する。
【0112】
次のS109〜S110工程は、S105工程で算出されたサイズ間比率Rが所定範囲Za(所定値R1から所定値R2までの範囲)にあるか、否かを判定する工程であり、所定範囲Zaの範囲外である場合に、調整モータM1を所定方向に回転させて、押圧部Npの押圧力(分布)を画質保証範囲の中央側に変位させる。そして、サイズ間比率Rが所定範囲Zaの範囲内にある場合には、調整モータM1は作動せず、一連の押圧力調整制御を終了させる。
【0113】
S109工程は、算出されたサイズ間比率Rが所定範囲Zaの上限を規定する所定値R1以下であるか、否かを判定する工程である。そして、R1を越える場合(“No”の場合)、S111工程に移行する。R1以下である場合、S110工程に移る。
【0114】
S111工程は、加圧部材363の位置を幅方向における側方に変位させるために、調整モータM1を所定量分だけ正転方向に回転させる工程である。そして、S102工程に移行して押圧力調整制御を再度実行する。
【0115】
S110工程は、算出されたサイズ間比率Rが所定範囲Zaの下限を規定する所定値R2以上である否かを判定する工程であり、R2未満の場合(“No”の場合)、S112工程に移行する。そして、R2以上である場合、一連の押圧力調整制御を終了する。
【0116】
S112工程は、加圧部材363の位置を幅方向における内側に変位させるために、調整モータM1を所定量分だけ逆回転方向に回転させる工程である。そして、S102工程に移行して一連の押圧力調整制御を再度実行する。
【0117】
なお、調整モータM1を回転する所定量分は、一定値でもよく、サイズ間比率Rと調整モータM1の回転量(方向)と関連付けている対応表を用いてサイズ間比率Rに応じて定められた変数値でもよい。対応表を用いる場合には、押圧部Npの押圧力(分布)を画質保証範囲の中央部により高い精度で調整でき、常に光沢ムラ、紙シワの発生もなく画像安定性により優れた画像形成装置を提供できる。
【0118】
なお、上記実施例の画像形成装置は、定着部材として定着ローラ、圧接部材として圧接ベルトを用いた定着装置を有しているが、これに限定されるものでない。例えば、定着部材としてベルトを、圧接部材として加圧ローラを用いた定着装置でも構わない。また、定着部材、及び圧接部材の両方がローラ状である、あるいはベルト状であっても構わない。
【0119】
本発明に係る画像形成装置Aは、簡単な用紙速度検出手段VS(機構)の検出結果から用紙Pの速度Vpにおけるサイズ間比率R(サイズ間差異)に基づき定着ニップ部Nの押圧力バランス(分布)の状態を判定すること可能にしている。更に、その判定結果に基づき、定着ニップ部Nの押圧力バランス(分布)をより適正状態に変更することを実現するものを含むものである。
【符号の説明】
【0120】
A 画像形成装置
N 定着ニップ部
P 用紙
R サイズ間比率(サイズ間差異)
10 画像形成部
31 定着ローラ(定着部材)
32 圧接ベルト(圧接部材)
30 定着装置
Ag 検出領域
VS 用紙速度検出手段
Vp 用紙速度(用紙の速度)
Za 所定範囲
Zw 画質保証範囲(第2所定範囲)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙上に画像を形成する画像形成部と、
回動方向に回動する定着部材と、前記定着部材の表面に対し圧接する圧接部材と、を有し、前記定着部材の表面と前記圧接部材の表面とが互いに圧接し同方向に移動する定着ニップ部に前記画像形成部から搬入された用紙を通紙して用紙上の画像を定着する定着装置と、
前記定着ニップ部に拘束され検出領域を通過する用紙の速度を検出する用紙速度検出手段と、を備える画像形成装置であって、
前記回動方向と直交する幅方向のサイズが異なる用紙を各々前記定着装置に搬入させ、前記用紙速度検出手段で検出された用紙の速度におけるサイズ間差異に基づき、前記定着ニップ部の前記幅方向における押圧力分布を変更することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記用紙の速度におけるサイズ間差異が所定範囲の外にある場合に前記所定範囲内に収めるよう、前記定着ニップ部の前記幅方向における押圧力分布を変更することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記用紙の速度におけるサイズ間差異が前記所定範囲を包含する第2所定範囲の外にある場合に、画像を形成する動作を停止することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記検出領域が、前記幅方向のサイズが最小である用紙が通過する前記幅方向における位置にあることを特徴とする請求項1から3までの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記検出領域が、用紙の前記幅方向における中央が通過する位置であることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項1】
用紙上に画像を形成する画像形成部と、
回動方向に回動する定着部材と、前記定着部材の表面に対し圧接する圧接部材と、を有し、前記定着部材の表面と前記圧接部材の表面とが互いに圧接し同方向に移動する定着ニップ部に前記画像形成部から搬入された用紙を通紙して用紙上の画像を定着する定着装置と、
前記定着ニップ部に拘束され検出領域を通過する用紙の速度を検出する用紙速度検出手段と、を備える画像形成装置であって、
前記回動方向と直交する幅方向のサイズが異なる用紙を各々前記定着装置に搬入させ、前記用紙速度検出手段で検出された用紙の速度におけるサイズ間差異に基づき、前記定着ニップ部の前記幅方向における押圧力分布を変更することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記用紙の速度におけるサイズ間差異が所定範囲の外にある場合に前記所定範囲内に収めるよう、前記定着ニップ部の前記幅方向における押圧力分布を変更することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記用紙の速度におけるサイズ間差異が前記所定範囲を包含する第2所定範囲の外にある場合に、画像を形成する動作を停止することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記検出領域が、前記幅方向のサイズが最小である用紙が通過する前記幅方向における位置にあることを特徴とする請求項1から3までの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記検出領域が、用紙の前記幅方向における中央が通過する位置であることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−168306(P2012−168306A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28249(P2011−28249)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
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