定着装置及びそれを備えた画像形成装置
【課題】被転写材がカールしている場合であっても、ニップ部に被転写材を円滑に進入させて被転写材にシワが生じることを防止し、また画像に「にじみ」を生じさせることのない定着装置を提供する。
【解決手段】定着ローラ11と加圧ローラ12とのニップ部Nよりも用紙搬送方向上流側に、搬送されてきた用紙Pの未定着トナー像形成面と反対側の面と接触して、ニップ部Nに用紙Pを案内するガイド部材14を設ける。そして、ガイド部材14を、細長い板状の基部140と、基部140の長手方向両端に揺動支持部141で揺動可能に軸支された揺動部142a,142bとから構成する。揺動部142a,142bは、揺動支持部141を中心として、基部140と同一平面をなす通常位置と、通常位置よりも加圧ローラ12から離れた突出位置とに移動可能とする。
【解決手段】定着ローラ11と加圧ローラ12とのニップ部Nよりも用紙搬送方向上流側に、搬送されてきた用紙Pの未定着トナー像形成面と反対側の面と接触して、ニップ部Nに用紙Pを案内するガイド部材14を設ける。そして、ガイド部材14を、細長い板状の基部140と、基部140の長手方向両端に揺動支持部141で揺動可能に軸支された揺動部142a,142bとから構成する。揺動部142a,142bは、揺動支持部141を中心として、基部140と同一平面をなす通常位置と、通常位置よりも加圧ローラ12から離れた突出位置とに移動可能とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着回転体と加圧回転体とのニップ部に、トナー画像が載った被転写材を通過させて、トナー画像を被転写材に溶融定着させる定着装置及びそれを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、感光体表面に形成された静電潜像にトナーを付着させて現像し、現像されたトナー画像を用紙などの被転写材に転写させた後、定着装置によってトナー画像を被転写材に定着させる。
【0003】
ここで、一般的に使用される定着装置は、圧接した一対のローラのニップ部に被転写材を通過させて加熱・加圧を行い、トナー画像を被転写材に溶融定着するものである。そして、多くの定着装置では、被転写材の画像形成面と接触するローラのみを加熱する構成が用いられている。
【0004】
被転写材としては、通常の用紙やハガキ、封筒など材質や厚さの異なる種々のものが用いられる。このため、封筒などの厚い被転写材を用いるときに、薄紙などの薄い被転写材と同じ条件で定着を行うと被転写材にシワが生じることがあった。また、被転写材の両面に画像形成を行う場合、一方面側のトナー画像を定着する際に被転写材に反り(以下、「カール」と記すことがある)が生じ、もう一方面側のトナー画像を定着する際、被転写材のカールが原因でシワが生じることがあった。
【0005】
図12に、従来の定着装置おいて、定着ローラ11と加圧ローラ12とのニップ部Nに、カールした用紙Pが搬送されてきたときの状態図を示す。そして、図13に、図12のA5−A5線断面図を示す。ニップ部Nよりも用紙搬送方向上流側に幅方向に細長い板状のガイド部材14’が設けられている。ガイド部材14′を通過した用紙Pの先端部は自由状態となって、用紙Pの中央部Pcはガイド部材14′の延長線に沿って進む一方、カールしている用紙Pの両端部Peは加圧ローラ12側へ近づいた位置で進むことになる。この結果、加圧ローラ12には用紙Pの両端部Peが初めに当接し、次いで用紙Pの中央部Pcが当接することになり、用紙Pの両端部Peのニップ部Nに進入するタイミングが中央部Pcよりも遅れてしまい、この遅れが用紙にシワが発生するす原因の一つとなっていた。
【0006】
カールした被転写材の両端部が加圧ローラに接触しないように、ガイド部材を予め定着ローラ側に寄せて設けておくことも考えられるが、定着ローラは高温に加熱されているので、トナーが溶融してガイド部材に付着したり、ガイド部材が熱変形するおそれがある。
【0007】
そこで、例えば、特許文献1では、定着ローラと加圧ローラとのニップ部に被転写材を案内するガイドの角度を、加圧ローラの加圧力の切り替え動作に連動させて変化させて、被転写材にシワが発生するのを防止する技術が提案されている。
【0008】
また、特許文献2では、定着装置の被転写材進入方向上流側に設ける加熱ローラ側の案内部材を特定の形状として、被転写材にシワが発生するのを防止する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010-271504号公報
【特許文献2】特開平11-184285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1の提案技術では、被転写材の進行方向先端辺の両端部が中央部に対して湾曲している場合、被転写材の前記両端部が中央部よりも先に加圧ローラに当たり、ニップ部への進入が中央部よりも遅れる結果、被転写材にシワが発生する不具合を防止できない。
【0011】
また、特許文献2の提案技術では、カールの小さいあるいはカールのない被転写材の場合には、被転写材がニップ部に進入する前に定着ローラに先に接触して、トナーが溶融して画像に「にじみ」が発生することがある。
【0012】
本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、被転写材がカールしている場合であっても、ニップ部に被転写材を円滑に進入させて被転写材にシワが生じることを防止し、また画像に「にじみ」を生じさせることのない定着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、定着回転体と、この定着回転体に圧接してニップ部を形成する加圧回転体と、前記定着回転体を加熱する熱源と、搬送されてきた被転写材の未定着トナー像形成面と反対側の面と接触して、前記ニップ部に被転写材を案内するガイド部材とを備え、前記ニップ部に被転写材を通過させることによって未定着トナー像を被転写材に溶融定着させる定着装置であって、前記ガイド部材は、被転写材の搬送方向に対して垂直方向に細長い板状体であって、長手方向の両端部が、通常位置と通常位置よりも加圧回転体から離れた突出位置とに移動可能であることを特徴とする定着装置が提供される。
【0014】
ここで、前記ガイド部材としては、基部と、この基部の長手方向両端に揺動可能に支持された揺動部とを有するものが好ましい。
【0015】
また、前記ガイド部材の長手方向の両端部は、通常位置と突出位置との間で多段階に移動可能であるのが好ましい。
【0016】
さらに、被転写材のカール方向及びカール量を検出する検出手段をさらに設け、前記検出手段によって検出された被転写材のカール方向及びカール量に応じて、前記ガイド部材の長手方向の両端部を移動させるのが好ましい。
【0017】
前記ガイド部材の長手方向の両端部は、それぞれ独立して移動可能とするのが好ましい。
【0018】
そしてまた、前記ガイド部材の被転写材と接触する面に複数の吸引孔を形成すると共に、前記複数の吸引孔から空気を吸う吸気手段を設け、前記吸気手段によって前記複数の吸引孔から空気を吸い、被転写材が前記ガイド部材に沿って搬送されるようにしてもよい。
【0019】
また、少なくとも被転写材の先端が前記ガイド部材に到達した後、前記ニップ部を通過するまでの間、前記ガイド部材の長手方向の両端部を突出位置とするのが好ましい。
【0020】
本発明によれば、定着装置として前記のいずれかに記載の定着装置を用いたことを特徴とする画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明の定着装置では、ガイド部材の両端部を通常位置と突出位置とに移動可能とし、カールした被転写材が搬送されてきた場合には、ガイド部材の両端部を突出位置として、被転写材の搬送方向先端辺の左右両端部が中央部よりも先に加圧回転体に当たるのを防止する。これにより、被転写材がニップ部に円滑に進入するようになり、被転写材にシワが発生することが防止される。また、画像に「にじみ」が発生するのが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一実施形態を示す概略構成図。
【図2】定着装置付近の拡大構成図。
【図3】図2においてA1方向から見た図。
【図4】図2においてA2方向から見た図。
【図5】カールした用紙をガイド部材で定着装置に搬送する際の状態図。
【図6】図5のA3−A3線断面図。
【図7】検出手段の実施形態例を示す構成図。
【図8】図6においてA4方向から見た図。
【図9】揺動部の移動手段の実施形態例を示す構成図。
【図10】本発明に係る定着装置の他の実施形態を示す構成図。
【図11】本発明の定着装置の制御例を示すフローチャート。
【図12】従来の定着装置における、カールした用紙をガイド部材で定着装置に搬送する際の状態図。
【図13】図12のA5−A5線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を図に基づいてより詳しく説明するが本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。
【0024】
図1に、本発明に係る画像形成装置の一実施形態を示す概略構成図に示す。図1に示す画像形成装置7は、トナー像を担持し、反時計回りに回転駆動する円筒状の感光体(静電潜像担持体)Dの周囲に、感光体Dの表面を一様に帯電させる帯電装置2と、感光体D表面に光を照射して静電潜像を形成する露光装置3と、感光体Dにトナーを供給し感光体D上の静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置4と、現像装置4によって形成された感光体D上のトナー像を用紙(被転写材)Pに転写する転写ローラ(転写装置)5と、用紙Pに転写されずに感光体D上に残留したトナーを除去するクリーニング装置6とを備えている。
【0025】
帯電装置2は、スコロトロン方式の帯電装置であって、感光体Dに対向する面側が開口した箱状のシールド電極22と、シールド電極22内に張架された放電電極21と、シールド電極22の開口に取り付けられたグリッド電極23とを有する。放電電極21に数kVの電圧が印加されるとコロナ放電が発生し、これに感光体Dの表面が一様に帯電される。なお、帯電装置2の種類は特に限定されるものでなく、ローラ方式の帯電部材、ブレード状の帯電部材、ブラシ状の帯電部材等を用いてももちろん構わない。
【0026】
露光装置3は、帯電装置2によって一様に帯電された感光体Dの表面に、例えばパソコンなどの外部装置から入力される画像データに基づいて、選択的に光を照射して露光を行い、感光体Dの表面に所定の静電潜像を形成する。
【0027】
現像装置4は、ハウジング41と、感光体Dに対向し回転可能に設けられた現像ローラ42と、現像ローラ42に向かって現像剤を搬送する3つの搬送ローラ43とを備える。ハウジング41内にはトナーとキャリア(いずれも不図示)とからなる現像剤が収容されている。現像ローラ42に現像バイアス電圧を印加すると、現像ローラ42に印加される電圧と感光体Dの静電潜像との電位差に基づいて、トナーが感光体Dに移動し、感光体D上の静電潜像がトナーによって可視像化(トナー画像)される。
【0028】
転写ローラ5は、転写ローラ5に連結された駆動モータ(不図示)によって回転可能に設けられるとともに付勢部材(不図示)によって感光体Dに圧接している。また転写ローラ5には、不図示の電圧印加手段によって、トナーの帯電極性と逆極性の電圧が印加される。感光体Dと転写ローラ5との間を用紙が通過する際に、転写ローラ5に前記電圧が印加され、感光体Dに形成されたトナー画像が用紙Pに転写する。
【0029】
クリーニング装置6は、感光体Dに圧接するクリーニングブレード61を備え、感光体D表面に残留する未転写トナーを感光体Dから除去する。
【0030】
現像装置4の下部には、用紙Pを収納した給紙カセット51が配置されている。給紙カセット51内に収納された用紙Pは、給紙カセット51の上方側部に配置された給紙ローラ53の回転によって最上紙から順に1枚ずつ搬送路に送り出される。給紙カセット51から送り出された用紙Pは、感光体Dの回転とタイミングを合わせて転写ローラ5と感光体Dの間に送り出され、前述の通りトナー画像が用紙Pに転写される。
【0031】
画像形成装置7は、感光体Dから用紙Pに転写されたトナー画像を定着させる定着装置1を備えている。定着装置1は、熱源としてのハロゲンヒータHを内蔵した定着ローラ(定着回転体)11と、定着ローラ11に圧接する加圧ローラ(加圧回転体)12とを有する。定着ローラ11と加圧ローラ12とのニップ部Nを用紙Pが通過する際に、トナー画像が加熱及び加圧されて用紙Pに溶融定着する。その後、用紙Pは、排紙トレイ72へ排出される。また、用紙Pの両面に画像形成する場合は、定着装置1を通過した用紙Pはスイッチバックされて第2搬送路W2に送られ、第1搬送路W1に合流して、感光体Dと転写ローラ5の間に再び送られ、前記と同様にトナー画像が用紙Pに転写され、定着装置1で定着される。
【0032】
画像形成装置7には、画像形成装置7に関係する構成要素を総合的に制御する制御装置71を備えており、この制御装置71は、感光体D、現像ローラ42、転写ローラ5、給紙ローラ53及び定着ローラ11などの回転駆動、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、ハロゲンヒータHなどの作動を制御する。
【0033】
図2に、定着装置1の基本構造を示す概説図を示す。定着装置1は、定着ローラ11と加圧ローラ12とを備える。加圧ローラ12は、バネなどの不図示の付勢手段によって定着ローラ11に圧接し、定着ローラ11と加圧ローラ12との間にニップ部Nが形成される。定着ローラ11は、不図示の回転駆動手段によって図中反時計回りに回転し、これによって加圧ローラ12は時計回りに従動回転する。定着ローラ11の、ニップ部Nよりも回転方向下流側には、定着ローラ11の表面から用紙Pを剥がすための分離爪13が設けられている。
【0034】
ニップ部Nよりも用紙搬送方向上流側には、用紙Pのカールを検出する検出手段16と、ニップ部Nに用紙Pを案内するガイド部材14と、ガイド部材14の長手方向両端を揺動させる移動手段15とが設けられている。そして、ニップ部Nよりも用紙搬送方向下流側は、案内壁55aと案内壁55bとで第1搬送路W1が形成され、用紙Pを排紙トレイ72の方向に導く。
【0035】
まず、ガイド部材14について説明する。図3に、図2のA1方向から、案内壁54aを取り外した状態のガイド部材14と加圧ローラ12を見た図を示す。また、図4に、図2のA2方向から見た図を示す。ガイド部材14は、細長い板状の基部140と、基部140の長手方向両端に揺動支持部141で揺動可能に軸支された揺動部142a,142bとを有する。揺動部142a,142bは、揺動支持部141を中心として、基部140と同一平面をなす通常位置と、通常位置よりも加圧ローラ12から離れた突出位置とに移動可能である。
【0036】
図5に、搬送方向先端の幅方向両端部Pe(図6に図示)が加圧ローラ側にカールした用紙Pをガイド部材14で定着装置1に搬送する際の状態図を示す。また、図6に、図5のA3−A3線断面図を示す。なお、図6では定着ローラ11や案内壁54aを省略している。図6に示すように、ガイド部材14の揺動部142a,142bは突出位置とされ、両端部Peが加圧ローラ側にカールした用紙Pは、揺動部142a,142bによって幅方向中央部Pcよりも定着ローラ側に持ち上げられた状態でニップ部Nに案内される。これにより、用紙Pの先端部がガイド部材14を通過した所では、用紙Pの両端部Pe及び中央部Pcの、加圧ローラ12からの距離はほぼ同じになり、用紙Pの両端部Peと中央部Pcとはニップ部Nにほぼ同時に進入し用紙Pにおけるシワの発生は防止される。
【0037】
ガイド部材14の揺動部142a、142bの移動量は、用紙Pのカールの程度によって変化させる。具体的には、検出手段16によって用紙Pのカール量等を検出し、この検出結果に基づいて移動手段15を制御して、ガイド部材14の揺動部142a、142bを移動させる。図7に、用紙Pのカールを検出する検出手段16の一例を示す概説図を示す。検出手段16は、感光体Dと転写ローラ5とのニップ部よりも用紙搬送方向下流側に設けられている。検出手段16は、L字状の検出レバー162と、検出レバー162と一体に形成された扇型の検知板163と、検知板163の位置を検知する光センサ列165とを有する。検出レバー162は軸161に回動可能に取り付けられ、検出レバー162の一方端側は、案内壁54bから第1搬送路W1内に出没自在とされ、検出レバー162の他方端側には、装置本体に一方が固定された引張りコイルばね167が取り付けられ、検出レバー162は常に反時計回りに付勢されている。光センサ列165は、検知板163によって遮断又は反射される光を感知して検出レバー162の回転量を検出する。
【0038】
搬送されてきた用紙Pが検出レバー162に接触すると、検出レバー162は、引張りコイルばね167の付勢力に抗して時計回りに回転する。このとき、検出レバー162の回転角度は、用紙Pのカール量によって変化する。すなわち、用紙Pのカール量が大きいほど、検出レバー162の回転角度は大きくなる。検出レバー162が回転すると、前述のように、検出レバー162と共に検知板163が回転し、検知板163の回転量が光センサ列165によって検出される。上記構成の検出手段16は、図8に示すように、第1搬送路W1の幅方向両端部に設けるのが望ましい。
【0039】
なお、図7及び図8に示した検出手段は、用紙Pが検出レバー162に接触することによって用紙Pのカール量を検出する構成であったが、透過型フォトセンサーなど非接触で用紙Pのカール量を検出するものであってももちろん構わない。
【0040】
図9に、ガイド部材14の揺動部142a、142bを移動させる移動手段15の概説図を示す。この図に示す移動手段15a,15bは、検出手段16a,16b(図8に図示)の検出信号に基づいてそれぞれ独立して駆動するものであり、この図では、移動手段15aは、揺動部142aを突出位置に移動させた状態であり、移動手段15bは、揺動部142bを通常位置とした状態である。なお、移動手段15a,15bの駆動源を1つとして揺動部142a、142bを同じ量だけ移動させるようにしても構わない。この場合、検出手段16は1つで足りる。
【0041】
移動手段15a,15bは同じ構造であるので、以下、移動手段15aについて説明する。移動手段15aは、当接ピン151と、当接ピン151を軸方向に移動自在に保持するホルダー152と、モーターMとを備える。モーターMの駆動軸153の先端部には雄ねじ部材154が取り付けられ、当接ピン151に形成された穴155の内周面に螺刻された雌ねじに雄ネジ部材154が螺合している。そして、モーターMの駆動によって駆動軸153と共に雄ネジ部材154が回動し、当接ピン151を軸方向に移動させる。
【0042】
揺動部142a,142bの移動量は、連続的あってもよいし、多段階であってもよい。また、揺動部142a,142bの、突出位置から通常位置方向への移動は、揺動部142a,142bにそれぞれ設けられた引張りコイルばね159a,159bの付勢力によって行われる。
【0043】
なお、揺動部142a,142bを移動させる手段としては上記構成の他、ソレノイドなど従来公知の移動手段を用いることができる。ただし、ソレノイドを用いた場合、揺動部142a,142bは通常位置と突出位置との2つの位置間のみを移動することになる。
【0044】
図10に、本発明に係る定着装置の他の実施形態を示す。この図に示す定着装置は、前記実施形態の定着装置に、ガイド部材14に用紙Pを引き寄せる吸引手段を設けたものである。具体的には、ガイド部材14の基部140に多数の吸引孔143を形成すると共に、用紙Pの通過面と反対側に吸気ファン(吸気手段)17を配置し、基部140と吸気ファン17との間をダクト171で連結したものである。このような構成によれば、用紙Pの中央部Pcは、ガイド部材14の基部140に引き寄せられ、基部140に沿ってニップ部Nに搬送されるので、用紙Pの両端部Peがガイド部材14の揺動部142a,142bによって加圧ローラから離れる方向に変形されても、用紙Pは先端が浮くことなくニップ部Nに進入し、用紙Pのシワ発生が一層効果的に防止される。
【0045】
図11に、定着装置1の動作制御例を示すフローチャートを示す。ステップS1において画像形成設定が両面印刷かどうかがまず判断され、画像形成設定が両面印字であれば、ステップS2及びステップS3において用紙のカール方向及びカール量が所定方向及び所定量以上かが判断される。そして、用紙のカール方向及びカール量が所定方向及び所定量以上と判断されると、ステップS4において吸気ファン17が駆動される。次いで、ステップS5において移動手段15a、15bが駆動され、ガイド部材14の揺動部142a、142bが所定位置に移動される。そして、ステップS6において、所定時間が経過かしたかどうかが判断される。所定時間経過すれば、画像形成動作が終了したとして、ステップS7において一連のジョブが終了したかどうかが次に判断される。一連のジョブが終了していなければ、ステップS1に戻って上記制御が繰り返され、一連のジョブが終了すれば制御は終了される。なお、ステップS6で設定する所定時間は、用紙Pの先端がガイド部材14の位置に到達してニップ部Nを通過するまでの時間とすることが望ましい。
【0046】
一方、ステップS1,S2,S3において、画像形成設定が両面印字ではない場合、又は、用紙のカール方向が所定方向ではない場合、又は、用紙のカール量が所定量以上でない場合には、ガイド部材14の揺動部142a、142bは通常位置とされる。
【0047】
以上説明した実施形態では、定着ローラ11と加圧ローラ12の一対のローラ構成であったが、定着回転体及び加圧回転体として無端状ベルトを用いた構成など従来公知の構成のものを用いてもよい。さらに、定着回転体を加熱する熱源として、ハロゲンヒータの他、誘導加熱や抵抗発熱体など従来公知の構成のものを用いることができる。そして、本発明の画像形成装置としては、モノクロ及びカラーの複写機、プリンタ、ファクシミリ及びこれらの複合機などいずれであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の定着装置では、ガイド部材14の揺動部142a,142bを通常位置と突出位置とに移動可能とし、カールした用紙Pが搬送されてきた場合には、揺動部142a,142bを突出位置として、用紙Pの搬送方向先端側辺の左右両端Peが中央部Pcよりも先に加圧ローラ12に当たるのを防止するので、用紙Pが定着装置1のニップ部Nに円滑に進入するようになり、用紙Pにシワが発生することが防止され有用である。
【符号の説明】
【0049】
1 定着装置
7 画像形成装置
H ハロゲンヒータ(熱源)
N ニップ部
P 用紙(被転写材)
11 定着ローラ(定着回転体)
12 加圧ローラ(加圧回転体)
14 ガイド部材
16 検出手段
17 吸気ファン(吸気手段)
140 基部
142a、142b 揺動部
143 吸引孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着回転体と加圧回転体とのニップ部に、トナー画像が載った被転写材を通過させて、トナー画像を被転写材に溶融定着させる定着装置及びそれを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、感光体表面に形成された静電潜像にトナーを付着させて現像し、現像されたトナー画像を用紙などの被転写材に転写させた後、定着装置によってトナー画像を被転写材に定着させる。
【0003】
ここで、一般的に使用される定着装置は、圧接した一対のローラのニップ部に被転写材を通過させて加熱・加圧を行い、トナー画像を被転写材に溶融定着するものである。そして、多くの定着装置では、被転写材の画像形成面と接触するローラのみを加熱する構成が用いられている。
【0004】
被転写材としては、通常の用紙やハガキ、封筒など材質や厚さの異なる種々のものが用いられる。このため、封筒などの厚い被転写材を用いるときに、薄紙などの薄い被転写材と同じ条件で定着を行うと被転写材にシワが生じることがあった。また、被転写材の両面に画像形成を行う場合、一方面側のトナー画像を定着する際に被転写材に反り(以下、「カール」と記すことがある)が生じ、もう一方面側のトナー画像を定着する際、被転写材のカールが原因でシワが生じることがあった。
【0005】
図12に、従来の定着装置おいて、定着ローラ11と加圧ローラ12とのニップ部Nに、カールした用紙Pが搬送されてきたときの状態図を示す。そして、図13に、図12のA5−A5線断面図を示す。ニップ部Nよりも用紙搬送方向上流側に幅方向に細長い板状のガイド部材14’が設けられている。ガイド部材14′を通過した用紙Pの先端部は自由状態となって、用紙Pの中央部Pcはガイド部材14′の延長線に沿って進む一方、カールしている用紙Pの両端部Peは加圧ローラ12側へ近づいた位置で進むことになる。この結果、加圧ローラ12には用紙Pの両端部Peが初めに当接し、次いで用紙Pの中央部Pcが当接することになり、用紙Pの両端部Peのニップ部Nに進入するタイミングが中央部Pcよりも遅れてしまい、この遅れが用紙にシワが発生するす原因の一つとなっていた。
【0006】
カールした被転写材の両端部が加圧ローラに接触しないように、ガイド部材を予め定着ローラ側に寄せて設けておくことも考えられるが、定着ローラは高温に加熱されているので、トナーが溶融してガイド部材に付着したり、ガイド部材が熱変形するおそれがある。
【0007】
そこで、例えば、特許文献1では、定着ローラと加圧ローラとのニップ部に被転写材を案内するガイドの角度を、加圧ローラの加圧力の切り替え動作に連動させて変化させて、被転写材にシワが発生するのを防止する技術が提案されている。
【0008】
また、特許文献2では、定着装置の被転写材進入方向上流側に設ける加熱ローラ側の案内部材を特定の形状として、被転写材にシワが発生するのを防止する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010-271504号公報
【特許文献2】特開平11-184285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1の提案技術では、被転写材の進行方向先端辺の両端部が中央部に対して湾曲している場合、被転写材の前記両端部が中央部よりも先に加圧ローラに当たり、ニップ部への進入が中央部よりも遅れる結果、被転写材にシワが発生する不具合を防止できない。
【0011】
また、特許文献2の提案技術では、カールの小さいあるいはカールのない被転写材の場合には、被転写材がニップ部に進入する前に定着ローラに先に接触して、トナーが溶融して画像に「にじみ」が発生することがある。
【0012】
本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、被転写材がカールしている場合であっても、ニップ部に被転写材を円滑に進入させて被転写材にシワが生じることを防止し、また画像に「にじみ」を生じさせることのない定着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、定着回転体と、この定着回転体に圧接してニップ部を形成する加圧回転体と、前記定着回転体を加熱する熱源と、搬送されてきた被転写材の未定着トナー像形成面と反対側の面と接触して、前記ニップ部に被転写材を案内するガイド部材とを備え、前記ニップ部に被転写材を通過させることによって未定着トナー像を被転写材に溶融定着させる定着装置であって、前記ガイド部材は、被転写材の搬送方向に対して垂直方向に細長い板状体であって、長手方向の両端部が、通常位置と通常位置よりも加圧回転体から離れた突出位置とに移動可能であることを特徴とする定着装置が提供される。
【0014】
ここで、前記ガイド部材としては、基部と、この基部の長手方向両端に揺動可能に支持された揺動部とを有するものが好ましい。
【0015】
また、前記ガイド部材の長手方向の両端部は、通常位置と突出位置との間で多段階に移動可能であるのが好ましい。
【0016】
さらに、被転写材のカール方向及びカール量を検出する検出手段をさらに設け、前記検出手段によって検出された被転写材のカール方向及びカール量に応じて、前記ガイド部材の長手方向の両端部を移動させるのが好ましい。
【0017】
前記ガイド部材の長手方向の両端部は、それぞれ独立して移動可能とするのが好ましい。
【0018】
そしてまた、前記ガイド部材の被転写材と接触する面に複数の吸引孔を形成すると共に、前記複数の吸引孔から空気を吸う吸気手段を設け、前記吸気手段によって前記複数の吸引孔から空気を吸い、被転写材が前記ガイド部材に沿って搬送されるようにしてもよい。
【0019】
また、少なくとも被転写材の先端が前記ガイド部材に到達した後、前記ニップ部を通過するまでの間、前記ガイド部材の長手方向の両端部を突出位置とするのが好ましい。
【0020】
本発明によれば、定着装置として前記のいずれかに記載の定着装置を用いたことを特徴とする画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明の定着装置では、ガイド部材の両端部を通常位置と突出位置とに移動可能とし、カールした被転写材が搬送されてきた場合には、ガイド部材の両端部を突出位置として、被転写材の搬送方向先端辺の左右両端部が中央部よりも先に加圧回転体に当たるのを防止する。これにより、被転写材がニップ部に円滑に進入するようになり、被転写材にシワが発生することが防止される。また、画像に「にじみ」が発生するのが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一実施形態を示す概略構成図。
【図2】定着装置付近の拡大構成図。
【図3】図2においてA1方向から見た図。
【図4】図2においてA2方向から見た図。
【図5】カールした用紙をガイド部材で定着装置に搬送する際の状態図。
【図6】図5のA3−A3線断面図。
【図7】検出手段の実施形態例を示す構成図。
【図8】図6においてA4方向から見た図。
【図9】揺動部の移動手段の実施形態例を示す構成図。
【図10】本発明に係る定着装置の他の実施形態を示す構成図。
【図11】本発明の定着装置の制御例を示すフローチャート。
【図12】従来の定着装置における、カールした用紙をガイド部材で定着装置に搬送する際の状態図。
【図13】図12のA5−A5線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を図に基づいてより詳しく説明するが本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。
【0024】
図1に、本発明に係る画像形成装置の一実施形態を示す概略構成図に示す。図1に示す画像形成装置7は、トナー像を担持し、反時計回りに回転駆動する円筒状の感光体(静電潜像担持体)Dの周囲に、感光体Dの表面を一様に帯電させる帯電装置2と、感光体D表面に光を照射して静電潜像を形成する露光装置3と、感光体Dにトナーを供給し感光体D上の静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置4と、現像装置4によって形成された感光体D上のトナー像を用紙(被転写材)Pに転写する転写ローラ(転写装置)5と、用紙Pに転写されずに感光体D上に残留したトナーを除去するクリーニング装置6とを備えている。
【0025】
帯電装置2は、スコロトロン方式の帯電装置であって、感光体Dに対向する面側が開口した箱状のシールド電極22と、シールド電極22内に張架された放電電極21と、シールド電極22の開口に取り付けられたグリッド電極23とを有する。放電電極21に数kVの電圧が印加されるとコロナ放電が発生し、これに感光体Dの表面が一様に帯電される。なお、帯電装置2の種類は特に限定されるものでなく、ローラ方式の帯電部材、ブレード状の帯電部材、ブラシ状の帯電部材等を用いてももちろん構わない。
【0026】
露光装置3は、帯電装置2によって一様に帯電された感光体Dの表面に、例えばパソコンなどの外部装置から入力される画像データに基づいて、選択的に光を照射して露光を行い、感光体Dの表面に所定の静電潜像を形成する。
【0027】
現像装置4は、ハウジング41と、感光体Dに対向し回転可能に設けられた現像ローラ42と、現像ローラ42に向かって現像剤を搬送する3つの搬送ローラ43とを備える。ハウジング41内にはトナーとキャリア(いずれも不図示)とからなる現像剤が収容されている。現像ローラ42に現像バイアス電圧を印加すると、現像ローラ42に印加される電圧と感光体Dの静電潜像との電位差に基づいて、トナーが感光体Dに移動し、感光体D上の静電潜像がトナーによって可視像化(トナー画像)される。
【0028】
転写ローラ5は、転写ローラ5に連結された駆動モータ(不図示)によって回転可能に設けられるとともに付勢部材(不図示)によって感光体Dに圧接している。また転写ローラ5には、不図示の電圧印加手段によって、トナーの帯電極性と逆極性の電圧が印加される。感光体Dと転写ローラ5との間を用紙が通過する際に、転写ローラ5に前記電圧が印加され、感光体Dに形成されたトナー画像が用紙Pに転写する。
【0029】
クリーニング装置6は、感光体Dに圧接するクリーニングブレード61を備え、感光体D表面に残留する未転写トナーを感光体Dから除去する。
【0030】
現像装置4の下部には、用紙Pを収納した給紙カセット51が配置されている。給紙カセット51内に収納された用紙Pは、給紙カセット51の上方側部に配置された給紙ローラ53の回転によって最上紙から順に1枚ずつ搬送路に送り出される。給紙カセット51から送り出された用紙Pは、感光体Dの回転とタイミングを合わせて転写ローラ5と感光体Dの間に送り出され、前述の通りトナー画像が用紙Pに転写される。
【0031】
画像形成装置7は、感光体Dから用紙Pに転写されたトナー画像を定着させる定着装置1を備えている。定着装置1は、熱源としてのハロゲンヒータHを内蔵した定着ローラ(定着回転体)11と、定着ローラ11に圧接する加圧ローラ(加圧回転体)12とを有する。定着ローラ11と加圧ローラ12とのニップ部Nを用紙Pが通過する際に、トナー画像が加熱及び加圧されて用紙Pに溶融定着する。その後、用紙Pは、排紙トレイ72へ排出される。また、用紙Pの両面に画像形成する場合は、定着装置1を通過した用紙Pはスイッチバックされて第2搬送路W2に送られ、第1搬送路W1に合流して、感光体Dと転写ローラ5の間に再び送られ、前記と同様にトナー画像が用紙Pに転写され、定着装置1で定着される。
【0032】
画像形成装置7には、画像形成装置7に関係する構成要素を総合的に制御する制御装置71を備えており、この制御装置71は、感光体D、現像ローラ42、転写ローラ5、給紙ローラ53及び定着ローラ11などの回転駆動、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、ハロゲンヒータHなどの作動を制御する。
【0033】
図2に、定着装置1の基本構造を示す概説図を示す。定着装置1は、定着ローラ11と加圧ローラ12とを備える。加圧ローラ12は、バネなどの不図示の付勢手段によって定着ローラ11に圧接し、定着ローラ11と加圧ローラ12との間にニップ部Nが形成される。定着ローラ11は、不図示の回転駆動手段によって図中反時計回りに回転し、これによって加圧ローラ12は時計回りに従動回転する。定着ローラ11の、ニップ部Nよりも回転方向下流側には、定着ローラ11の表面から用紙Pを剥がすための分離爪13が設けられている。
【0034】
ニップ部Nよりも用紙搬送方向上流側には、用紙Pのカールを検出する検出手段16と、ニップ部Nに用紙Pを案内するガイド部材14と、ガイド部材14の長手方向両端を揺動させる移動手段15とが設けられている。そして、ニップ部Nよりも用紙搬送方向下流側は、案内壁55aと案内壁55bとで第1搬送路W1が形成され、用紙Pを排紙トレイ72の方向に導く。
【0035】
まず、ガイド部材14について説明する。図3に、図2のA1方向から、案内壁54aを取り外した状態のガイド部材14と加圧ローラ12を見た図を示す。また、図4に、図2のA2方向から見た図を示す。ガイド部材14は、細長い板状の基部140と、基部140の長手方向両端に揺動支持部141で揺動可能に軸支された揺動部142a,142bとを有する。揺動部142a,142bは、揺動支持部141を中心として、基部140と同一平面をなす通常位置と、通常位置よりも加圧ローラ12から離れた突出位置とに移動可能である。
【0036】
図5に、搬送方向先端の幅方向両端部Pe(図6に図示)が加圧ローラ側にカールした用紙Pをガイド部材14で定着装置1に搬送する際の状態図を示す。また、図6に、図5のA3−A3線断面図を示す。なお、図6では定着ローラ11や案内壁54aを省略している。図6に示すように、ガイド部材14の揺動部142a,142bは突出位置とされ、両端部Peが加圧ローラ側にカールした用紙Pは、揺動部142a,142bによって幅方向中央部Pcよりも定着ローラ側に持ち上げられた状態でニップ部Nに案内される。これにより、用紙Pの先端部がガイド部材14を通過した所では、用紙Pの両端部Pe及び中央部Pcの、加圧ローラ12からの距離はほぼ同じになり、用紙Pの両端部Peと中央部Pcとはニップ部Nにほぼ同時に進入し用紙Pにおけるシワの発生は防止される。
【0037】
ガイド部材14の揺動部142a、142bの移動量は、用紙Pのカールの程度によって変化させる。具体的には、検出手段16によって用紙Pのカール量等を検出し、この検出結果に基づいて移動手段15を制御して、ガイド部材14の揺動部142a、142bを移動させる。図7に、用紙Pのカールを検出する検出手段16の一例を示す概説図を示す。検出手段16は、感光体Dと転写ローラ5とのニップ部よりも用紙搬送方向下流側に設けられている。検出手段16は、L字状の検出レバー162と、検出レバー162と一体に形成された扇型の検知板163と、検知板163の位置を検知する光センサ列165とを有する。検出レバー162は軸161に回動可能に取り付けられ、検出レバー162の一方端側は、案内壁54bから第1搬送路W1内に出没自在とされ、検出レバー162の他方端側には、装置本体に一方が固定された引張りコイルばね167が取り付けられ、検出レバー162は常に反時計回りに付勢されている。光センサ列165は、検知板163によって遮断又は反射される光を感知して検出レバー162の回転量を検出する。
【0038】
搬送されてきた用紙Pが検出レバー162に接触すると、検出レバー162は、引張りコイルばね167の付勢力に抗して時計回りに回転する。このとき、検出レバー162の回転角度は、用紙Pのカール量によって変化する。すなわち、用紙Pのカール量が大きいほど、検出レバー162の回転角度は大きくなる。検出レバー162が回転すると、前述のように、検出レバー162と共に検知板163が回転し、検知板163の回転量が光センサ列165によって検出される。上記構成の検出手段16は、図8に示すように、第1搬送路W1の幅方向両端部に設けるのが望ましい。
【0039】
なお、図7及び図8に示した検出手段は、用紙Pが検出レバー162に接触することによって用紙Pのカール量を検出する構成であったが、透過型フォトセンサーなど非接触で用紙Pのカール量を検出するものであってももちろん構わない。
【0040】
図9に、ガイド部材14の揺動部142a、142bを移動させる移動手段15の概説図を示す。この図に示す移動手段15a,15bは、検出手段16a,16b(図8に図示)の検出信号に基づいてそれぞれ独立して駆動するものであり、この図では、移動手段15aは、揺動部142aを突出位置に移動させた状態であり、移動手段15bは、揺動部142bを通常位置とした状態である。なお、移動手段15a,15bの駆動源を1つとして揺動部142a、142bを同じ量だけ移動させるようにしても構わない。この場合、検出手段16は1つで足りる。
【0041】
移動手段15a,15bは同じ構造であるので、以下、移動手段15aについて説明する。移動手段15aは、当接ピン151と、当接ピン151を軸方向に移動自在に保持するホルダー152と、モーターMとを備える。モーターMの駆動軸153の先端部には雄ねじ部材154が取り付けられ、当接ピン151に形成された穴155の内周面に螺刻された雌ねじに雄ネジ部材154が螺合している。そして、モーターMの駆動によって駆動軸153と共に雄ネジ部材154が回動し、当接ピン151を軸方向に移動させる。
【0042】
揺動部142a,142bの移動量は、連続的あってもよいし、多段階であってもよい。また、揺動部142a,142bの、突出位置から通常位置方向への移動は、揺動部142a,142bにそれぞれ設けられた引張りコイルばね159a,159bの付勢力によって行われる。
【0043】
なお、揺動部142a,142bを移動させる手段としては上記構成の他、ソレノイドなど従来公知の移動手段を用いることができる。ただし、ソレノイドを用いた場合、揺動部142a,142bは通常位置と突出位置との2つの位置間のみを移動することになる。
【0044】
図10に、本発明に係る定着装置の他の実施形態を示す。この図に示す定着装置は、前記実施形態の定着装置に、ガイド部材14に用紙Pを引き寄せる吸引手段を設けたものである。具体的には、ガイド部材14の基部140に多数の吸引孔143を形成すると共に、用紙Pの通過面と反対側に吸気ファン(吸気手段)17を配置し、基部140と吸気ファン17との間をダクト171で連結したものである。このような構成によれば、用紙Pの中央部Pcは、ガイド部材14の基部140に引き寄せられ、基部140に沿ってニップ部Nに搬送されるので、用紙Pの両端部Peがガイド部材14の揺動部142a,142bによって加圧ローラから離れる方向に変形されても、用紙Pは先端が浮くことなくニップ部Nに進入し、用紙Pのシワ発生が一層効果的に防止される。
【0045】
図11に、定着装置1の動作制御例を示すフローチャートを示す。ステップS1において画像形成設定が両面印刷かどうかがまず判断され、画像形成設定が両面印字であれば、ステップS2及びステップS3において用紙のカール方向及びカール量が所定方向及び所定量以上かが判断される。そして、用紙のカール方向及びカール量が所定方向及び所定量以上と判断されると、ステップS4において吸気ファン17が駆動される。次いで、ステップS5において移動手段15a、15bが駆動され、ガイド部材14の揺動部142a、142bが所定位置に移動される。そして、ステップS6において、所定時間が経過かしたかどうかが判断される。所定時間経過すれば、画像形成動作が終了したとして、ステップS7において一連のジョブが終了したかどうかが次に判断される。一連のジョブが終了していなければ、ステップS1に戻って上記制御が繰り返され、一連のジョブが終了すれば制御は終了される。なお、ステップS6で設定する所定時間は、用紙Pの先端がガイド部材14の位置に到達してニップ部Nを通過するまでの時間とすることが望ましい。
【0046】
一方、ステップS1,S2,S3において、画像形成設定が両面印字ではない場合、又は、用紙のカール方向が所定方向ではない場合、又は、用紙のカール量が所定量以上でない場合には、ガイド部材14の揺動部142a、142bは通常位置とされる。
【0047】
以上説明した実施形態では、定着ローラ11と加圧ローラ12の一対のローラ構成であったが、定着回転体及び加圧回転体として無端状ベルトを用いた構成など従来公知の構成のものを用いてもよい。さらに、定着回転体を加熱する熱源として、ハロゲンヒータの他、誘導加熱や抵抗発熱体など従来公知の構成のものを用いることができる。そして、本発明の画像形成装置としては、モノクロ及びカラーの複写機、プリンタ、ファクシミリ及びこれらの複合機などいずれであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の定着装置では、ガイド部材14の揺動部142a,142bを通常位置と突出位置とに移動可能とし、カールした用紙Pが搬送されてきた場合には、揺動部142a,142bを突出位置として、用紙Pの搬送方向先端側辺の左右両端Peが中央部Pcよりも先に加圧ローラ12に当たるのを防止するので、用紙Pが定着装置1のニップ部Nに円滑に進入するようになり、用紙Pにシワが発生することが防止され有用である。
【符号の説明】
【0049】
1 定着装置
7 画像形成装置
H ハロゲンヒータ(熱源)
N ニップ部
P 用紙(被転写材)
11 定着ローラ(定着回転体)
12 加圧ローラ(加圧回転体)
14 ガイド部材
16 検出手段
17 吸気ファン(吸気手段)
140 基部
142a、142b 揺動部
143 吸引孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着回転体と、この定着回転体に圧接してニップ部を形成する加圧回転体と、前記定着回転体を加熱する熱源と、搬送されてきた被転写材の未定着トナー像形成面と反対側の面と接触して、前記ニップ部に被転写材を案内するガイド部材とを備え、前記ニップ部に被転写材を通過させることによって未定着トナー像を被転写材に溶融定着させる定着装置において、
前記ガイド部材は、被転写材の搬送方向に対して垂直方向に細長い板状体であって、長手方向の両端部が、通常位置と通常位置よりも加圧回転体から離れた突出位置とに移動可能であることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記ガイド部材が、基部と、この基部の長手方向両端に揺動可能に支持された揺動部とを有するものである請求項1記載の定着装置。
【請求項3】
前記ガイド部材の長手方向の両端部が、通常位置と突出位置との間で多段階に移動可能である請求項1又は2記載の定着装置。
【請求項4】
被転写材のカール方向及びカール量を検出する検出手段をさらに備え、
前記検出手段によって検出された被転写材のカール方向及びカール量に応じて、前記ガイド部材の長手方向の両端部を移動させる請求項3記載の定着装置。
【請求項5】
前記ガイド部材の長手方向の両端部がそれぞれ独立して移動可能である請求項1〜4のいずれかに記載の定着装置。
【請求項6】
前記ガイド部材の被転写材と接触する面に複数の吸引孔を形成すると共に、前記複数の吸引孔から空気を吸う吸気手段を設け、前記吸気手段によって前記複数の吸引孔から空気を吸い、被転写材が前記ガイド部材に沿って搬送されるようにした請求項1〜5のいずれかに記載の定着装置。
【請求項7】
少なくとも被転写材の先端が前記ガイド部材に到達した後、前記ニップ部を通過するまでの間、前記ガイド部材の長手方向の両端部を突出位置とする請求項1〜6のいずれかに記載の定着装置。
【請求項8】
定着装置として請求項1〜7のいずれかに記載の定着装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
定着回転体と、この定着回転体に圧接してニップ部を形成する加圧回転体と、前記定着回転体を加熱する熱源と、搬送されてきた被転写材の未定着トナー像形成面と反対側の面と接触して、前記ニップ部に被転写材を案内するガイド部材とを備え、前記ニップ部に被転写材を通過させることによって未定着トナー像を被転写材に溶融定着させる定着装置において、
前記ガイド部材は、被転写材の搬送方向に対して垂直方向に細長い板状体であって、長手方向の両端部が、通常位置と通常位置よりも加圧回転体から離れた突出位置とに移動可能であることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記ガイド部材が、基部と、この基部の長手方向両端に揺動可能に支持された揺動部とを有するものである請求項1記載の定着装置。
【請求項3】
前記ガイド部材の長手方向の両端部が、通常位置と突出位置との間で多段階に移動可能である請求項1又は2記載の定着装置。
【請求項4】
被転写材のカール方向及びカール量を検出する検出手段をさらに備え、
前記検出手段によって検出された被転写材のカール方向及びカール量に応じて、前記ガイド部材の長手方向の両端部を移動させる請求項3記載の定着装置。
【請求項5】
前記ガイド部材の長手方向の両端部がそれぞれ独立して移動可能である請求項1〜4のいずれかに記載の定着装置。
【請求項6】
前記ガイド部材の被転写材と接触する面に複数の吸引孔を形成すると共に、前記複数の吸引孔から空気を吸う吸気手段を設け、前記吸気手段によって前記複数の吸引孔から空気を吸い、被転写材が前記ガイド部材に沿って搬送されるようにした請求項1〜5のいずれかに記載の定着装置。
【請求項7】
少なくとも被転写材の先端が前記ガイド部材に到達した後、前記ニップ部を通過するまでの間、前記ガイド部材の長手方向の両端部を突出位置とする請求項1〜6のいずれかに記載の定着装置。
【請求項8】
定着装置として請求項1〜7のいずれかに記載の定着装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−255948(P2012−255948A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129653(P2011−129653)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
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