定着装置及び画像形成装置
【課題】 カーボンナノチューブの長さ方向がベルト厚み方向に高い配向性で整列しており、厚み方向の熱伝導率が大幅に向上した加熱ベルトを備え、サーマルヘッドの熱を加熱ベルトの厚み方向に効率的に伝導することができる定着装置、及びこの定着装置を備えた画像形成装置を提供すること。
【解決手段】 合成樹脂からなる無端状の加熱ベルトと、該加熱ベルトに当接するサーマルヘッドを備えており、前記加熱ベルトは、前記合成樹脂に磁性体が付着したカーボンナノチューブが配合され、該カーボンナノチューブの長手方向が該ベルトの厚み方向に配向していることを特徴とする定着装置とする。
【解決手段】 合成樹脂からなる無端状の加熱ベルトと、該加熱ベルトに当接するサーマルヘッドを備えており、前記加熱ベルトは、前記合成樹脂に磁性体が付着したカーボンナノチューブが配合され、該カーボンナノチューブの長手方向が該ベルトの厚み方向に配向していることを特徴とする定着装置とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、複写機やプリンタ等の画像形成装置に用いられる定着装置、及びこの定着装置を用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
一般的に、複写機やプリンタ等の画像形成装置においては、用紙表面に形成されたトナー像を加熱溶融して定着させるための定着装置が備えられている。
従来、定着装置としては、ハロゲンヒータ等の発熱部材を内装した無端状の加熱ベルトと、加熱ベルト表面に圧接する加圧ローラとを備えたものが知られている。
【０００３】
このような定着装置においては、省エネルギー対応として、被加熱材（転写紙）上のトナー存在部分（画像部）のみをサーマルヘッド等で加熱し画像を定着させる装置がある（下記特許文献１参照）。
【０００４】
サーマルヘッドを備えた定着装置では、図６に示す如くサーマルヘッド（Ａ）の発熱領域（Ｃ）から発生した熱が、加熱ベルト（Ｂ）を介して被加熱材（Ｄ）上に形成された画像部（Ｅ）を加熱する。
しかし加熱ベルト（Ｂ）の熱伝導率が低く、更に加熱ベルト（Ｂ）内に熱が拡散するため（図６中黒矢印）、画像部（Ｅ）を効率的に加熱することは困難であった。
【０００５】
従って、加熱ベルトの熱伝導率を向上させる必要があった。
【０００６】
本願出願人は、下記特許文献２において、カーボンナノチューブが分散配合された加熱ベルトを提案している。
この加熱ベルトによれば、ベルトの熱伝導率を向上させることが可能となる。
【０００７】
しかしながら、この特許文献２の開示技術は、加熱ベルトとサーマルヘッドとを組み合わせて画像定着を図ろうとするものではなかった。また、加熱ベルトに分散配合されたカーボンナノチューブの長手方向をベルトの厚み方向に配向させるために、ベルト成形時に電界をかける方法を採用しているものの、カーボンナノチューブを高い配向性で整列させることが困難であった。従って、加熱ベルトの熱伝導率の大幅な向上は望めず、サーマルヘッドを用いたとしても、転写紙等の被加熱材においてその画像部分のみを集中的に加熱することも困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００８】
【特許文献１】特開２００２−２２９３６６号公報
【特許文献２】特開２００８−１８０９６５号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００９】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、熱伝導率が大幅に向上した加熱ベルトを備え、サーマルヘッドの熱を加熱ベルトに効率的に伝導することができる定着装置、及びこの定着装置を備えた画像形成装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【００１０】
請求項１に係る発明は、合成樹脂からなる無端状の加熱ベルトと、該加熱ベルトに当接するサーマルヘッドを備えており、前記加熱ベルトは、カーボンナノチューブが配合されていることを特徴とする定着装置に関する。
【００１１】
請求項２に係る発明は、前記加熱ベルトが、ベルト本体と、該ベルト本体の外面側に設けられた弾性層と、該弾性層の外面側に設けられたコーティング層とからなり、前記弾性層及び／又はコーティング層にカーボンナノチューブが配合されていることを特徴とする請求項１記載の定着装置に関する。
【００１２】
請求項３に係る発明は、前記カーボンナノチューブの長手方向が前記加熱ベルトの厚み方向に配向していることを特徴とする請求項１又は２記載の定着装置に関する。
【００１３】
請求項４に係る発明は、前記カーボンナノチューブに磁性体が付着していることを特徴とする請求項１乃至３いずれかに記載の定着装置に関する。
【００１４】
請求項５に係る発明は、前記加熱ベルト内に発熱部材が配設されていることを特徴とする請求項１乃至４いずれかに記載の定着装置に関する。
【００１５】
請求項６に係る発明は、前記サーマルヘッドの前記加熱ベルトとの当接部のヘッド形状が凸形状であることを特徴とする請求項１乃至５いずれかに記載の定着装置に関する。
【００１６】
請求項７に係る発明は、請求項１乃至６いずれかに記載の定着装置を備えていることを特徴とする画像形成装置に関する。
【００１７】
請求項８に係る発明は、前記サーマルヘッドが画像部及びその周辺部のみに通電されることを特徴とする請求項７記載の画像形成装置に関する。
【発明の効果】
【００１８】
請求項１に係る発明によれば、加熱ベルトが、合成樹脂にカーボンナノチューブを配合しているものであるため、熱伝導率に優れたものとなる。この加熱ベルトをサーマルヘッドで加熱することにより、熱応答性がよく、加えて被加熱材の画像形成部分を効率的に加熱することが可能な定着装置とすることができる。
【００１９】
請求項２に係る発明によれば、加熱ベルトが、ベルト本体と、該ベルト本体の外面側に設けられた弾性層と、該弾性層の外面側に設けられたコーティング層とからなり、弾性層及び／又はコーティング層にカーボンナノチューブが配合されていることにより、加熱ベルトの熱伝導率が向上したカラーの画像形成装置で好適に使用可能な定着装置となる。
【００２０】
請求項３に係る発明によれば、カーボンナノチューブの長手方向がベルトの厚み方向に配向しているものであるため、ベルトの厚み方向の熱伝導率に優れたものとなる。
【００２１】
請求項４に係る発明によれば、カーボンナノチューブに磁性体が付着しているため、カーボンナノチューブの長手方向がベルト厚み方向に高い配向性で整列しており、厚み方向の熱伝導率が大幅に向上した加熱ベルトとなる。
【００２２】
請求項５に係る発明によれば、加熱ベルト内に発熱部材が配設されているために、迅速且つ効率的に転写紙等の被加熱材を加熱することが可能な定着装置とすることができる。
【００２３】
請求項６に係る発明によれば、サーマルヘッドの加熱ベルトとの当接部のヘッド形状が凸形状であるため、転写紙等の被加熱材に対して加熱の必要な箇所にのみ効率的に加熱処理を施すことが可能となる。
【００２４】
請求項７に係る発明によれば、ウォームアップ時間が短く、画像形成処理後すぐに省電モードとしても、次のウォームアップ時でも短時間で画像形成処理ができ、加えて被加熱材の画像部分のみを加熱するため、画像形成時においても熱の無駄が少なく、省エネルギーに貢献できる画像形成装置となる。
【００２５】
請求項８に係る発明によれば、前記サーマルヘッドが画像部及びその周辺部のみに通電されるため、被加熱材に転写されたトナー部分のみを効率的に加熱することができ、熱の無駄を低減して省エネルギーとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【００２６】
【図１】本発明に係る定着装置を示す概略図である。
【図２】本発明に係る定着装置に用いられる加熱ベルトの拡大部分断面図であって、（ａ）は一層の加熱ベルト、（ｂ）は三層の加熱ベルトの例を示す図である。
【図３】加熱ベルトの製造方法についての説明図であって、（ａ）は平面図、（ｂ）は正面断面図、（ｃ）は（ａ）図のＡ方向矢視図である。
【図４】本発明に係る定着装置の被加熱材への画像定着時の模式図であって、（ａ）は平面図、（ｂ）は断面図である。
【図５】本発明に係る画像形成装置を示す断面図である。
【図６】一般的な定着装置における被加熱材への画像定着時の模式図であって、（ａ）は平面図、（ｂ）は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【００２７】
以下、本発明に係る定着装置及び画像形成装置の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図１は、本発明に係る定着装置を示す概略図である。
本発明に係る定着装置（１）は、サーマルヘッド（２）と、無端状の加熱ベルト（３）と、この加熱ベルト（３）の表面に圧接する加圧ローラ（４）とを備えている。
サーマルヘッド（２）は、加熱ベルト（３）の内面に当接し、加熱ベルト（３）を加熱するものであり、加圧ローラ（４）の圧接によるベルトの変形を規制して圧接部（ニップ部）の位置及び幅を維持する働きも有する。
定着装置（１）は、サーマルヘッド（２）が当接した加熱ベルト（３）と加圧ローラ（４）との圧接部（ニップ部）に用紙を挟んで搬送するように構成されている。
【００２８】
本発明に係る定着装置に用いられるサーマルヘッド（２）としては、公知のものを用いることができ、例えば、アルミナ基板上に発熱抵抗体を配置したものが挙げられる。またサーマルヘッドの、加熱ベルト（３）との当接部のヘッド形状を凸形状とすることで、被加熱材において加熱を必要とする箇所にのみ加熱処理を施すことができる。
【００２９】
また本発明に係る定着装置（１）は、加熱ベルト（３）の内部にハロゲンヒータ等の発熱部材（図示せず）を配設して、予備加熱を施すことができる構成としてもよい。
【００３０】
図２（ａ）は本発明に係る定着装置に用いられる加熱ベルト（３）の拡大部分断面図である。尚、図２において、左右方向がベルトの長さ方向であり、上下方向がベルトの厚み方向である。
加熱ベルト（３）はポリイミド等の合成樹脂からなる単層構造であり、該合成樹脂には
カーボンナノチューブ（５）が分散して配合されている。
【００３１】
図２（ｂ）は本発明に係る定着装置に用いられる加熱ベルト（３）の別の例を示す拡大部分断面図である。
この例の加熱ベルト（３）は、ベルト本体（３１）と、このベルト本体（３１）の外面側に設けられた弾性層（３２）と、この弾性層（３２）の外面側に設けられたコーティング層（３３）とからなる三層構造であり、主としてカラーの画像形成装置に用いられるものである。
【００３２】
ベルト本体（３１）を形成する合成樹脂は耐熱性に優れるものが望ましく、ポリイミド等から形成され、その厚みは例えば５０〜１００μｍとされる。
弾性層（３２）は、シリコーンゴム等から形成され、その厚みは例えば３０〜２００μｍとされる。
コーティング層（３３）は、フッ素樹脂等から形成され、その厚みは例えば２０〜２５０μｍとされる。コーティング層（３３）は、フッ素樹脂チューブフィルム（厚さ３０〜１００μｍ）を熱収縮させたもの等、コーティング処理以外により形成されたものであってもよい。
【００３３】
弾性層（３２）及び／又はコーティング層（３３）には、カーボンナノチューブ（５）が配合されている。図２（ｂ）では、弾性層（３２）のみにカーボンナノチューブ（５）を配合したものを示しているが、弾性層（３２）に代えて或いは加えてコーティング層（３３）にカーボンナノチューブ（５）を配合してもよい。
【００３４】
カーボンナノチューブ（５）は炭素からなる筒状の中空繊維であり、例えば幅（直径）に対して長さが数十倍以上のものを使用することができる。具体的には、例えば直径が０．０１〜０．５μｍ、長さが１〜１０μｍのものを使用することができる。
【００３５】
カーボンナノチューブ（５）は、上述したように、長手方向の熱伝導率が幅方向の熱伝導率に比べて大きいという特性を備えているため、図２（ａ）に示す如くカーボンナノチューブの長手方向をベルトの厚み方向に配向させて整列させることにより、厚み方向の熱伝導率が高い加熱ベルトが得られることとなる。
【００３６】
このカーボンナノチューブ（５）の配向性を高め、更に熱伝導率を向上させるために、カーボンナノチューブ（５）の表面に磁性体（図示せず）を付着させて、加熱ベルト（３）成形時に磁界を印加することが好ましい。
【００３７】
カーボンナノチューブ（５）の表面に付着させる磁性体の種類は、例えばフェライト、マグネタイト、ヘマタイト等が例示できるが、これらに限定されるものではない。また１種類のみを使用してもよいし、複数種類を混合して使用してもよい。
磁性体の粒径は、例えば数ｎｍ〜数十ｎｍとされる。これより大きいとカーボンナノチューブの表面に付着させることが困難となり、これより小さいものは製造が困難であるためである。
【００３８】
カーボンナノチューブ（５）の表面に磁性体を付着させる方法としては、例えば磁性体の前駆体となる水酸化鉄とカーボンナノチューブとを混合して加熱焼成することで、酸化鉄をカーボンナノチューブに担持させるという方法を挙げることができるが、この方法には限定されない。
【００３９】
本発明に係る定着装置（１）に用いられる加熱ベルト（３）の製造方法について説明する。特に、磁性体を付着したカーボンナノチューブ（５）を配合した加熱ベルト（３）の製造方法について詳述する。
本発明に係る定着装置（１）に用いられる加熱ベルト（３）には、上記したように磁性体を付着したカーボンナノチューブ（５）が分散配合されており、ベルトの厚み方向にこのカーボンナノチューブ（５）の長手方向が配向している。カーボンナノチューブ（５）を高配向性とするために、磁界を印加してベルトを成形する。
図３は加熱ベルト（３）の製造方法についての説明図であり、（ａ）は平面図、（ｂ）は正面断面図、（ｃ）は（ａ）図のＡ方向矢視図である。尚、（ａ）図中矢印付楕円はコイルに発生する磁界を表している。
図２（ａ）に示した加熱ベルト（３）を製造する場合、磁性体からなる円柱状の金型（６）を磁性体が付着したカーボンナノチューブ（５）を配合した溶融合成樹脂に浸漬することにより、金型（６）の外周面に当該溶融合成樹脂の層（７）を成形する。
次いで、当該溶融合成樹脂が冷却固化して無端状ベルトに成形されるまでの時間、磁界方向（図３（ｂ）矢印方向）がベルト厚み方向となる磁界を印加する。この磁界は、金型（６）の周囲に環状に配置された複数のコア（磁石）（８）に巻回されたコイル（９）に電流を流すことにより発生させることができる。
【００４０】
この磁界の印加により、溶融合成樹脂内に配合された磁性体が付着したカーボンナノチューブ（５）が、その長手方向が磁界の方向（ベルト厚み方向）となるように配向する。そして、その状態で溶融合成樹脂が冷却固化することにより、長手方向がベルト厚み方向に配向されたカーボンナノチューブ（５）を内部に含んだ加熱ベルト（３）（図２（ａ）参照）が成形される。
【００４１】
次に、図２（ｂ）に示した加熱ベルト（３）の製造方法について説明する（図示せず）。
先ず、磁性体からなる円柱状の金型（６）を溶融合成樹脂に浸漬した後、冷却固化することにより、金型（６）の外周面に当該溶融合成樹脂からなる無端状のベルト本体（３１）を成形する。
次いで、該ベルト本体（３１）の外面に磁性体が付着したカーボンナノチューブ（５）を配合した溶融合成樹脂を成形する。続いて、外周面にベルト本体（３１）が成形された状態の金型（６）を磁性体が付着したカーボンナノチューブ（５）を配合したシリコーンゴム等の溶融合成樹脂に浸漬することにより、ベルト本体（３１）の外周面に当該溶融合成樹脂の弾性層（３２）を成形する。ここで、弾性層（３２）の固化時に磁界を印加し、磁性体が付着したカーボンナノチューブ（５）の長手方向を弾性層（３２）の厚み方向に配向させる（図示せず）。弾性層（３２）の固化後、フッ素樹脂等の溶融合成樹脂に浸漬することにより、弾性層（３２）の外周面にコーティング層（３３）を成形する。
【００４２】
弾性層（３２）に代えて或いは加えてベルト本体（３１）又はコーティング層（３３）に磁性体が付着したカーボンナノチューブ（５）を配合した場合、弾性層（３２）成形時と同様にその成形時（固化時）に磁界を印加することで、磁性体が付着したカーボンナノチューブ（５）の長手方向を夫々の層の厚み方向に配向させることができる。
【００４３】
磁性体が付着したカーボンナノチューブ（５）を配向させる際に印加する磁界の強さは、１０００ＫＡ／ｍ〜１５００ＫＡ／ｍであることが好ましい。
上記した方法の他に、成形されたベルト本体（３１）に、磁性体が付着したカーボンナノチューブ（５）を配合した溶融合成樹脂を塗布して弾性層（３２）及び／又はコーティング層（３３）を成形してもよい。
【００４４】
上記した加熱ベルト（３）（図２（ａ）及び（ｂ）参照）の製造方法において、磁性体が付着したカーボンナノチューブ（５）を配合した溶融合成樹脂の成形時（固化時）に、成形用金型（６）を磁界内で回転させることが好ましい（図３（ａ）金型（６）中の実線矢印参照）。
溶融合成樹脂の成形時に成形用金型（６）を磁界内で回転させることにより、磁界のムラの影響を無くすことができ、カーボンナノチューブ（５）の配向性をより一層高めることが可能となるためである。
【００４５】
図４は、本発明における被加熱材への画像定着時の模式図である。
サーマルヘッド（２）の発熱領域（１０）から発生した熱が、加熱ベルト（３）中に分散配向させた磁性体が付着したカーボンナノチューブ（５）を介して被加熱材（１１）（例えば転写紙）上に形成された画像部（１２）を加熱して画像を定着させる。
図４の模式図においては、磁性体が付着したカーボンナノチューブ（５）が分散配向した一層のみの加熱ベルト（３）であるが、上述した弾性層（３２）及び／又はコーティング層（３３）を備えた加熱ベルト（３）（図２（ｂ）参照）としてもよい。
いずれの場合においても、加熱ベルト（３）の少なくとも一層に磁性体を付着したカーボンナノチューブ（５）を配合していることが望ましい。
【００４６】
本発明に係る定着装置（１）は、磁性体を付着したカーボンナノチューブ（５）を配合した加熱ベルト（３）とサーマルヘッド（２）を備えているため、図４（ｂ）中において熱伝導経路を黒塗りで示した如く、加熱ベルト（３）の厚み方向に対する熱伝導性に優れ、画像部（１２）を効率的に加熱することができる。
カーボンナノチューブ（５）の長手方向の良好な熱伝導性を利用することによって、加熱ベルト（３）内の熱拡散を制御する、即ち、熱の拡散方向を加熱ベルト（３）の厚み方向のみとして画像形成部分を加熱することが可能となる。
【００４７】
更に、サーマルヘッド（２）が画像部（１２）とその周辺部にのみ通電されることで、トナーが転写された画像部（１２）のみが加熱されることとなり、効率的に画像を定着することができる（図４（ｂ）参照）。
【００４８】
また、定着装置（１）内に発熱部材を設けて予備加熱を行うことで、より効率的に加熱して画像形成させることができる（図示せず）。
【００４９】
図５は、本発明に係る画像形成装置を示す断面図である。
図示例の画像形成装置はプリンタであるが、本発明に係る画像形成装置は複写機やファクシミリであってもよい。
本発明に係る画像形成装置は、上記説明したサーマルヘッド（２）及び加熱ベルト（３）を有する定着装置（１）を備えているものである。
【００５０】
図示例の画像形成装置は、プリンタ本体（１３）の内部にスライド変位可能に格納された給紙カセット（１４）と、給紙カセット（１４）の収納空間（１５）内に収納された用紙（図示せず）を取り出す給紙部（１６）と、プリンタ本体（１３）の正面に設置された手差しトレイ（１７）と、手差しトレイ（１７）にセットされた用紙（図示せず）を取り出す手差し給紙部（１８）と、各給紙部（１６），（１８）から供給された転写紙が搬送される搬送経路（１９）と、搬送経路（１９）のシート搬送方向上流側で各給紙部（１６），（１８）の合流部よりもシート搬送方向下流側に配置されたレジストローラ対（２０）と、レジストローラ対（２０）よりも搬送経路（１９）のシート搬送方向下流側に配置されて搬送中の転写紙の一面に画像を形成する画像形成部（２１）と、画像形成部（２１）よりも搬送経路（１９）のシート搬送方向下流側に配置されて搬送中の転写紙の一面に形成された画像（トナー画像）を定着する定着装置（１）と、定着装置（１）を通過した転写紙の他面に画像を形成する場合に搬送経路（１９）の定着装置（１）よりも搬送経路下流側からレジストローラ対（２０）よりも搬送経路（１９）のシート搬送方向上流側に引き戻す反転経路（２２）と、搬送経路（１９）の終端部に設けられた排紙部（２３）とを備えている。
【００５１】
画像形成部（２１）は、感光体ドラム（２４）と、感光体ドラム（２４）の周囲に配置された帯電デバイス（２５）、露光デバイス（２６）、現像デバイス（２７）、転写デバイス（２８）、クリーニングデバイス（２９）等を備えている。
これにより、画像形成部（２１）は、感光体ドラム（２４）が図示しない駆動手段によって所定のプロセススピード（周速度）で回転駆動され、その表面が帯電デバイス（２５）によって所定の極性・電位に均一に帯電される。
【００５２】
帯電後の感光体ドラム（２４）は、その表面に露光デバイス（２６）によって静電潜像が形成される。ここで、露光デバイス（２６）は、パーソナルコンピュータ等から出力された画像データに基づいて、感光体ドラム（２４）の表面にレーザー光（図示せず）を照射し、感光体ドラム（２４）の表面のレーザー光照射部分の電荷を除去して画像情報に応じた静電潜像を形成する。
【００５３】
感光体ドラム（２４）の表面に形成された静電潜像は、現像デバイス（２７）によってトナーコンテナ（３０）から供給された電荷を有するトナーが静電的に付着されてトナー像として現像される。さらに、そのトナー像は、転写デバイス（２８）によって搬送シートに転写像として転写される。この際、搬送シートにトナー像を転写した感光体ドラム（２４）は、クリーニングデバイス（２９）によって残留トナー等の除去処理並びに次の画像形成時の帯電のための除電処理が施される。
【００５４】
トナー像が転写された搬送シートは、サーマルヘッド（２）を有する定着装置（１）に搬送され、画像が定着された後、排紙部（２３）より排出される。
【００５５】
本発明に係る画像形成装置は、サーマルヘッド（２）と、カーボンナノチューブ（５）の長手方向がベルト厚み方向に高い配向性で整列し、厚み方向の熱伝導率が大幅に向上した加熱ベルト（３）とを有する定着装置（１）を備えているため、ウォームアップ時間が短く、画像形成処理後すぐに省電モードとしても、次のウォームアップ時でも短時間で画像形成処理ができ、更に画像形成時において省エネルギーに貢献できる画像形成装置となる。
【産業上の利用可能性】
【００５６】
本発明は、プリンタ、複写機、ファクシミリ等の定着装置を備えた画像形成装置に対して好適に利用される。
【符号の説明】
【００５７】
１・・・定着装置
２・・・サーマルヘッド
３・・・加熱ベルト
３１・・・ベルト本体
３２・・・弾性層
３３・・・コーティング層
５・・・カーボンナノチューブ
６・・・金型
７・・・溶融合成樹脂層
８・・・コア（磁石）
９・・・コイル
１０・・・発熱領域
１１・・・被加熱材
１２・・・画像部
【技術分野】
【０００１】
本発明は、複写機やプリンタ等の画像形成装置に用いられる定着装置、及びこの定着装置を用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
一般的に、複写機やプリンタ等の画像形成装置においては、用紙表面に形成されたトナー像を加熱溶融して定着させるための定着装置が備えられている。
従来、定着装置としては、ハロゲンヒータ等の発熱部材を内装した無端状の加熱ベルトと、加熱ベルト表面に圧接する加圧ローラとを備えたものが知られている。
【０００３】
このような定着装置においては、省エネルギー対応として、被加熱材（転写紙）上のトナー存在部分（画像部）のみをサーマルヘッド等で加熱し画像を定着させる装置がある（下記特許文献１参照）。
【０００４】
サーマルヘッドを備えた定着装置では、図６に示す如くサーマルヘッド（Ａ）の発熱領域（Ｃ）から発生した熱が、加熱ベルト（Ｂ）を介して被加熱材（Ｄ）上に形成された画像部（Ｅ）を加熱する。
しかし加熱ベルト（Ｂ）の熱伝導率が低く、更に加熱ベルト（Ｂ）内に熱が拡散するため（図６中黒矢印）、画像部（Ｅ）を効率的に加熱することは困難であった。
【０００５】
従って、加熱ベルトの熱伝導率を向上させる必要があった。
【０００６】
本願出願人は、下記特許文献２において、カーボンナノチューブが分散配合された加熱ベルトを提案している。
この加熱ベルトによれば、ベルトの熱伝導率を向上させることが可能となる。
【０００７】
しかしながら、この特許文献２の開示技術は、加熱ベルトとサーマルヘッドとを組み合わせて画像定着を図ろうとするものではなかった。また、加熱ベルトに分散配合されたカーボンナノチューブの長手方向をベルトの厚み方向に配向させるために、ベルト成形時に電界をかける方法を採用しているものの、カーボンナノチューブを高い配向性で整列させることが困難であった。従って、加熱ベルトの熱伝導率の大幅な向上は望めず、サーマルヘッドを用いたとしても、転写紙等の被加熱材においてその画像部分のみを集中的に加熱することも困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００８】
【特許文献１】特開２００２−２２９３６６号公報
【特許文献２】特開２００８−１８０９６５号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００９】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、熱伝導率が大幅に向上した加熱ベルトを備え、サーマルヘッドの熱を加熱ベルトに効率的に伝導することができる定着装置、及びこの定着装置を備えた画像形成装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【００１０】
請求項１に係る発明は、合成樹脂からなる無端状の加熱ベルトと、該加熱ベルトに当接するサーマルヘッドを備えており、前記加熱ベルトは、カーボンナノチューブが配合されていることを特徴とする定着装置に関する。
【００１１】
請求項２に係る発明は、前記加熱ベルトが、ベルト本体と、該ベルト本体の外面側に設けられた弾性層と、該弾性層の外面側に設けられたコーティング層とからなり、前記弾性層及び／又はコーティング層にカーボンナノチューブが配合されていることを特徴とする請求項１記載の定着装置に関する。
【００１２】
請求項３に係る発明は、前記カーボンナノチューブの長手方向が前記加熱ベルトの厚み方向に配向していることを特徴とする請求項１又は２記載の定着装置に関する。
【００１３】
請求項４に係る発明は、前記カーボンナノチューブに磁性体が付着していることを特徴とする請求項１乃至３いずれかに記載の定着装置に関する。
【００１４】
請求項５に係る発明は、前記加熱ベルト内に発熱部材が配設されていることを特徴とする請求項１乃至４いずれかに記載の定着装置に関する。
【００１５】
請求項６に係る発明は、前記サーマルヘッドの前記加熱ベルトとの当接部のヘッド形状が凸形状であることを特徴とする請求項１乃至５いずれかに記載の定着装置に関する。
【００１６】
請求項７に係る発明は、請求項１乃至６いずれかに記載の定着装置を備えていることを特徴とする画像形成装置に関する。
【００１７】
請求項８に係る発明は、前記サーマルヘッドが画像部及びその周辺部のみに通電されることを特徴とする請求項７記載の画像形成装置に関する。
【発明の効果】
【００１８】
請求項１に係る発明によれば、加熱ベルトが、合成樹脂にカーボンナノチューブを配合しているものであるため、熱伝導率に優れたものとなる。この加熱ベルトをサーマルヘッドで加熱することにより、熱応答性がよく、加えて被加熱材の画像形成部分を効率的に加熱することが可能な定着装置とすることができる。
【００１９】
請求項２に係る発明によれば、加熱ベルトが、ベルト本体と、該ベルト本体の外面側に設けられた弾性層と、該弾性層の外面側に設けられたコーティング層とからなり、弾性層及び／又はコーティング層にカーボンナノチューブが配合されていることにより、加熱ベルトの熱伝導率が向上したカラーの画像形成装置で好適に使用可能な定着装置となる。
【００２０】
請求項３に係る発明によれば、カーボンナノチューブの長手方向がベルトの厚み方向に配向しているものであるため、ベルトの厚み方向の熱伝導率に優れたものとなる。
【００２１】
請求項４に係る発明によれば、カーボンナノチューブに磁性体が付着しているため、カーボンナノチューブの長手方向がベルト厚み方向に高い配向性で整列しており、厚み方向の熱伝導率が大幅に向上した加熱ベルトとなる。
【００２２】
請求項５に係る発明によれば、加熱ベルト内に発熱部材が配設されているために、迅速且つ効率的に転写紙等の被加熱材を加熱することが可能な定着装置とすることができる。
【００２３】
請求項６に係る発明によれば、サーマルヘッドの加熱ベルトとの当接部のヘッド形状が凸形状であるため、転写紙等の被加熱材に対して加熱の必要な箇所にのみ効率的に加熱処理を施すことが可能となる。
【００２４】
請求項７に係る発明によれば、ウォームアップ時間が短く、画像形成処理後すぐに省電モードとしても、次のウォームアップ時でも短時間で画像形成処理ができ、加えて被加熱材の画像部分のみを加熱するため、画像形成時においても熱の無駄が少なく、省エネルギーに貢献できる画像形成装置となる。
【００２５】
請求項８に係る発明によれば、前記サーマルヘッドが画像部及びその周辺部のみに通電されるため、被加熱材に転写されたトナー部分のみを効率的に加熱することができ、熱の無駄を低減して省エネルギーとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【００２６】
【図１】本発明に係る定着装置を示す概略図である。
【図２】本発明に係る定着装置に用いられる加熱ベルトの拡大部分断面図であって、（ａ）は一層の加熱ベルト、（ｂ）は三層の加熱ベルトの例を示す図である。
【図３】加熱ベルトの製造方法についての説明図であって、（ａ）は平面図、（ｂ）は正面断面図、（ｃ）は（ａ）図のＡ方向矢視図である。
【図４】本発明に係る定着装置の被加熱材への画像定着時の模式図であって、（ａ）は平面図、（ｂ）は断面図である。
【図５】本発明に係る画像形成装置を示す断面図である。
【図６】一般的な定着装置における被加熱材への画像定着時の模式図であって、（ａ）は平面図、（ｂ）は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【００２７】
以下、本発明に係る定着装置及び画像形成装置の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図１は、本発明に係る定着装置を示す概略図である。
本発明に係る定着装置（１）は、サーマルヘッド（２）と、無端状の加熱ベルト（３）と、この加熱ベルト（３）の表面に圧接する加圧ローラ（４）とを備えている。
サーマルヘッド（２）は、加熱ベルト（３）の内面に当接し、加熱ベルト（３）を加熱するものであり、加圧ローラ（４）の圧接によるベルトの変形を規制して圧接部（ニップ部）の位置及び幅を維持する働きも有する。
定着装置（１）は、サーマルヘッド（２）が当接した加熱ベルト（３）と加圧ローラ（４）との圧接部（ニップ部）に用紙を挟んで搬送するように構成されている。
【００２８】
本発明に係る定着装置に用いられるサーマルヘッド（２）としては、公知のものを用いることができ、例えば、アルミナ基板上に発熱抵抗体を配置したものが挙げられる。またサーマルヘッドの、加熱ベルト（３）との当接部のヘッド形状を凸形状とすることで、被加熱材において加熱を必要とする箇所にのみ加熱処理を施すことができる。
【００２９】
また本発明に係る定着装置（１）は、加熱ベルト（３）の内部にハロゲンヒータ等の発熱部材（図示せず）を配設して、予備加熱を施すことができる構成としてもよい。
【００３０】
図２（ａ）は本発明に係る定着装置に用いられる加熱ベルト（３）の拡大部分断面図である。尚、図２において、左右方向がベルトの長さ方向であり、上下方向がベルトの厚み方向である。
加熱ベルト（３）はポリイミド等の合成樹脂からなる単層構造であり、該合成樹脂には
カーボンナノチューブ（５）が分散して配合されている。
【００３１】
図２（ｂ）は本発明に係る定着装置に用いられる加熱ベルト（３）の別の例を示す拡大部分断面図である。
この例の加熱ベルト（３）は、ベルト本体（３１）と、このベルト本体（３１）の外面側に設けられた弾性層（３２）と、この弾性層（３２）の外面側に設けられたコーティング層（３３）とからなる三層構造であり、主としてカラーの画像形成装置に用いられるものである。
【００３２】
ベルト本体（３１）を形成する合成樹脂は耐熱性に優れるものが望ましく、ポリイミド等から形成され、その厚みは例えば５０〜１００μｍとされる。
弾性層（３２）は、シリコーンゴム等から形成され、その厚みは例えば３０〜２００μｍとされる。
コーティング層（３３）は、フッ素樹脂等から形成され、その厚みは例えば２０〜２５０μｍとされる。コーティング層（３３）は、フッ素樹脂チューブフィルム（厚さ３０〜１００μｍ）を熱収縮させたもの等、コーティング処理以外により形成されたものであってもよい。
【００３３】
弾性層（３２）及び／又はコーティング層（３３）には、カーボンナノチューブ（５）が配合されている。図２（ｂ）では、弾性層（３２）のみにカーボンナノチューブ（５）を配合したものを示しているが、弾性層（３２）に代えて或いは加えてコーティング層（３３）にカーボンナノチューブ（５）を配合してもよい。
【００３４】
カーボンナノチューブ（５）は炭素からなる筒状の中空繊維であり、例えば幅（直径）に対して長さが数十倍以上のものを使用することができる。具体的には、例えば直径が０．０１〜０．５μｍ、長さが１〜１０μｍのものを使用することができる。
【００３５】
カーボンナノチューブ（５）は、上述したように、長手方向の熱伝導率が幅方向の熱伝導率に比べて大きいという特性を備えているため、図２（ａ）に示す如くカーボンナノチューブの長手方向をベルトの厚み方向に配向させて整列させることにより、厚み方向の熱伝導率が高い加熱ベルトが得られることとなる。
【００３６】
このカーボンナノチューブ（５）の配向性を高め、更に熱伝導率を向上させるために、カーボンナノチューブ（５）の表面に磁性体（図示せず）を付着させて、加熱ベルト（３）成形時に磁界を印加することが好ましい。
【００３７】
カーボンナノチューブ（５）の表面に付着させる磁性体の種類は、例えばフェライト、マグネタイト、ヘマタイト等が例示できるが、これらに限定されるものではない。また１種類のみを使用してもよいし、複数種類を混合して使用してもよい。
磁性体の粒径は、例えば数ｎｍ〜数十ｎｍとされる。これより大きいとカーボンナノチューブの表面に付着させることが困難となり、これより小さいものは製造が困難であるためである。
【００３８】
カーボンナノチューブ（５）の表面に磁性体を付着させる方法としては、例えば磁性体の前駆体となる水酸化鉄とカーボンナノチューブとを混合して加熱焼成することで、酸化鉄をカーボンナノチューブに担持させるという方法を挙げることができるが、この方法には限定されない。
【００３９】
本発明に係る定着装置（１）に用いられる加熱ベルト（３）の製造方法について説明する。特に、磁性体を付着したカーボンナノチューブ（５）を配合した加熱ベルト（３）の製造方法について詳述する。
本発明に係る定着装置（１）に用いられる加熱ベルト（３）には、上記したように磁性体を付着したカーボンナノチューブ（５）が分散配合されており、ベルトの厚み方向にこのカーボンナノチューブ（５）の長手方向が配向している。カーボンナノチューブ（５）を高配向性とするために、磁界を印加してベルトを成形する。
図３は加熱ベルト（３）の製造方法についての説明図であり、（ａ）は平面図、（ｂ）は正面断面図、（ｃ）は（ａ）図のＡ方向矢視図である。尚、（ａ）図中矢印付楕円はコイルに発生する磁界を表している。
図２（ａ）に示した加熱ベルト（３）を製造する場合、磁性体からなる円柱状の金型（６）を磁性体が付着したカーボンナノチューブ（５）を配合した溶融合成樹脂に浸漬することにより、金型（６）の外周面に当該溶融合成樹脂の層（７）を成形する。
次いで、当該溶融合成樹脂が冷却固化して無端状ベルトに成形されるまでの時間、磁界方向（図３（ｂ）矢印方向）がベルト厚み方向となる磁界を印加する。この磁界は、金型（６）の周囲に環状に配置された複数のコア（磁石）（８）に巻回されたコイル（９）に電流を流すことにより発生させることができる。
【００４０】
この磁界の印加により、溶融合成樹脂内に配合された磁性体が付着したカーボンナノチューブ（５）が、その長手方向が磁界の方向（ベルト厚み方向）となるように配向する。そして、その状態で溶融合成樹脂が冷却固化することにより、長手方向がベルト厚み方向に配向されたカーボンナノチューブ（５）を内部に含んだ加熱ベルト（３）（図２（ａ）参照）が成形される。
【００４１】
次に、図２（ｂ）に示した加熱ベルト（３）の製造方法について説明する（図示せず）。
先ず、磁性体からなる円柱状の金型（６）を溶融合成樹脂に浸漬した後、冷却固化することにより、金型（６）の外周面に当該溶融合成樹脂からなる無端状のベルト本体（３１）を成形する。
次いで、該ベルト本体（３１）の外面に磁性体が付着したカーボンナノチューブ（５）を配合した溶融合成樹脂を成形する。続いて、外周面にベルト本体（３１）が成形された状態の金型（６）を磁性体が付着したカーボンナノチューブ（５）を配合したシリコーンゴム等の溶融合成樹脂に浸漬することにより、ベルト本体（３１）の外周面に当該溶融合成樹脂の弾性層（３２）を成形する。ここで、弾性層（３２）の固化時に磁界を印加し、磁性体が付着したカーボンナノチューブ（５）の長手方向を弾性層（３２）の厚み方向に配向させる（図示せず）。弾性層（３２）の固化後、フッ素樹脂等の溶融合成樹脂に浸漬することにより、弾性層（３２）の外周面にコーティング層（３３）を成形する。
【００４２】
弾性層（３２）に代えて或いは加えてベルト本体（３１）又はコーティング層（３３）に磁性体が付着したカーボンナノチューブ（５）を配合した場合、弾性層（３２）成形時と同様にその成形時（固化時）に磁界を印加することで、磁性体が付着したカーボンナノチューブ（５）の長手方向を夫々の層の厚み方向に配向させることができる。
【００４３】
磁性体が付着したカーボンナノチューブ（５）を配向させる際に印加する磁界の強さは、１０００ＫＡ／ｍ〜１５００ＫＡ／ｍであることが好ましい。
上記した方法の他に、成形されたベルト本体（３１）に、磁性体が付着したカーボンナノチューブ（５）を配合した溶融合成樹脂を塗布して弾性層（３２）及び／又はコーティング層（３３）を成形してもよい。
【００４４】
上記した加熱ベルト（３）（図２（ａ）及び（ｂ）参照）の製造方法において、磁性体が付着したカーボンナノチューブ（５）を配合した溶融合成樹脂の成形時（固化時）に、成形用金型（６）を磁界内で回転させることが好ましい（図３（ａ）金型（６）中の実線矢印参照）。
溶融合成樹脂の成形時に成形用金型（６）を磁界内で回転させることにより、磁界のムラの影響を無くすことができ、カーボンナノチューブ（５）の配向性をより一層高めることが可能となるためである。
【００４５】
図４は、本発明における被加熱材への画像定着時の模式図である。
サーマルヘッド（２）の発熱領域（１０）から発生した熱が、加熱ベルト（３）中に分散配向させた磁性体が付着したカーボンナノチューブ（５）を介して被加熱材（１１）（例えば転写紙）上に形成された画像部（１２）を加熱して画像を定着させる。
図４の模式図においては、磁性体が付着したカーボンナノチューブ（５）が分散配向した一層のみの加熱ベルト（３）であるが、上述した弾性層（３２）及び／又はコーティング層（３３）を備えた加熱ベルト（３）（図２（ｂ）参照）としてもよい。
いずれの場合においても、加熱ベルト（３）の少なくとも一層に磁性体を付着したカーボンナノチューブ（５）を配合していることが望ましい。
【００４６】
本発明に係る定着装置（１）は、磁性体を付着したカーボンナノチューブ（５）を配合した加熱ベルト（３）とサーマルヘッド（２）を備えているため、図４（ｂ）中において熱伝導経路を黒塗りで示した如く、加熱ベルト（３）の厚み方向に対する熱伝導性に優れ、画像部（１２）を効率的に加熱することができる。
カーボンナノチューブ（５）の長手方向の良好な熱伝導性を利用することによって、加熱ベルト（３）内の熱拡散を制御する、即ち、熱の拡散方向を加熱ベルト（３）の厚み方向のみとして画像形成部分を加熱することが可能となる。
【００４７】
更に、サーマルヘッド（２）が画像部（１２）とその周辺部にのみ通電されることで、トナーが転写された画像部（１２）のみが加熱されることとなり、効率的に画像を定着することができる（図４（ｂ）参照）。
【００４８】
また、定着装置（１）内に発熱部材を設けて予備加熱を行うことで、より効率的に加熱して画像形成させることができる（図示せず）。
【００４９】
図５は、本発明に係る画像形成装置を示す断面図である。
図示例の画像形成装置はプリンタであるが、本発明に係る画像形成装置は複写機やファクシミリであってもよい。
本発明に係る画像形成装置は、上記説明したサーマルヘッド（２）及び加熱ベルト（３）を有する定着装置（１）を備えているものである。
【００５０】
図示例の画像形成装置は、プリンタ本体（１３）の内部にスライド変位可能に格納された給紙カセット（１４）と、給紙カセット（１４）の収納空間（１５）内に収納された用紙（図示せず）を取り出す給紙部（１６）と、プリンタ本体（１３）の正面に設置された手差しトレイ（１７）と、手差しトレイ（１７）にセットされた用紙（図示せず）を取り出す手差し給紙部（１８）と、各給紙部（１６），（１８）から供給された転写紙が搬送される搬送経路（１９）と、搬送経路（１９）のシート搬送方向上流側で各給紙部（１６），（１８）の合流部よりもシート搬送方向下流側に配置されたレジストローラ対（２０）と、レジストローラ対（２０）よりも搬送経路（１９）のシート搬送方向下流側に配置されて搬送中の転写紙の一面に画像を形成する画像形成部（２１）と、画像形成部（２１）よりも搬送経路（１９）のシート搬送方向下流側に配置されて搬送中の転写紙の一面に形成された画像（トナー画像）を定着する定着装置（１）と、定着装置（１）を通過した転写紙の他面に画像を形成する場合に搬送経路（１９）の定着装置（１）よりも搬送経路下流側からレジストローラ対（２０）よりも搬送経路（１９）のシート搬送方向上流側に引き戻す反転経路（２２）と、搬送経路（１９）の終端部に設けられた排紙部（２３）とを備えている。
【００５１】
画像形成部（２１）は、感光体ドラム（２４）と、感光体ドラム（２４）の周囲に配置された帯電デバイス（２５）、露光デバイス（２６）、現像デバイス（２７）、転写デバイス（２８）、クリーニングデバイス（２９）等を備えている。
これにより、画像形成部（２１）は、感光体ドラム（２４）が図示しない駆動手段によって所定のプロセススピード（周速度）で回転駆動され、その表面が帯電デバイス（２５）によって所定の極性・電位に均一に帯電される。
【００５２】
帯電後の感光体ドラム（２４）は、その表面に露光デバイス（２６）によって静電潜像が形成される。ここで、露光デバイス（２６）は、パーソナルコンピュータ等から出力された画像データに基づいて、感光体ドラム（２４）の表面にレーザー光（図示せず）を照射し、感光体ドラム（２４）の表面のレーザー光照射部分の電荷を除去して画像情報に応じた静電潜像を形成する。
【００５３】
感光体ドラム（２４）の表面に形成された静電潜像は、現像デバイス（２７）によってトナーコンテナ（３０）から供給された電荷を有するトナーが静電的に付着されてトナー像として現像される。さらに、そのトナー像は、転写デバイス（２８）によって搬送シートに転写像として転写される。この際、搬送シートにトナー像を転写した感光体ドラム（２４）は、クリーニングデバイス（２９）によって残留トナー等の除去処理並びに次の画像形成時の帯電のための除電処理が施される。
【００５４】
トナー像が転写された搬送シートは、サーマルヘッド（２）を有する定着装置（１）に搬送され、画像が定着された後、排紙部（２３）より排出される。
【００５５】
本発明に係る画像形成装置は、サーマルヘッド（２）と、カーボンナノチューブ（５）の長手方向がベルト厚み方向に高い配向性で整列し、厚み方向の熱伝導率が大幅に向上した加熱ベルト（３）とを有する定着装置（１）を備えているため、ウォームアップ時間が短く、画像形成処理後すぐに省電モードとしても、次のウォームアップ時でも短時間で画像形成処理ができ、更に画像形成時において省エネルギーに貢献できる画像形成装置となる。
【産業上の利用可能性】
【００５６】
本発明は、プリンタ、複写機、ファクシミリ等の定着装置を備えた画像形成装置に対して好適に利用される。
【符号の説明】
【００５７】
１・・・定着装置
２・・・サーマルヘッド
３・・・加熱ベルト
３１・・・ベルト本体
３２・・・弾性層
３３・・・コーティング層
５・・・カーボンナノチューブ
６・・・金型
７・・・溶融合成樹脂層
８・・・コア（磁石）
９・・・コイル
１０・・・発熱領域
１１・・・被加熱材
１２・・・画像部
【特許請求の範囲】
【請求項１】
合成樹脂からなる無端状の加熱ベルトと、該加熱ベルトに当接するサーマルヘッドを備えており、
前記加熱ベルトは、カーボンナノチューブが配合されていることを特徴とする定着装置。
【請求項２】
前記加熱ベルトが、ベルト本体と、該ベルト本体の外面側に設けられた弾性層と、該弾性層の外面側に設けられたコーティング層とからなり、前記弾性層及び／又はコーティング層にカーボンナノチューブが配合されていることを特徴とする請求項１記載の定着装置。
【請求項３】
前記カーボンナノチューブの長手方向が前記加熱ベルトの厚み方向に配向していることを特徴とする請求項１又は２記載の定着装置。
【請求項４】
前記カーボンナノチューブに磁性体が付着していることを特徴とする請求項１乃至３いずれかに記載の定着装置。
【請求項５】
前記加熱ベルト内に発熱部材が配設されていることを特徴とする請求項１乃至４いずれかに記載の定着装置。
【請求項６】
前記サーマルヘッドの前記加熱ベルトとの当接部のヘッド形状が凸形状であることを特徴とする請求項１乃至５いずれかに記載の定着装置。
【請求項７】
請求項１乃至６いずれかに記載の定着装置を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項８】
前記サーマルヘッドが画像部及びその周辺部のみに通電されることを特徴とする請求項７記載の画像形成装置。
【請求項１】
合成樹脂からなる無端状の加熱ベルトと、該加熱ベルトに当接するサーマルヘッドを備えており、
前記加熱ベルトは、カーボンナノチューブが配合されていることを特徴とする定着装置。
【請求項２】
前記加熱ベルトが、ベルト本体と、該ベルト本体の外面側に設けられた弾性層と、該弾性層の外面側に設けられたコーティング層とからなり、前記弾性層及び／又はコーティング層にカーボンナノチューブが配合されていることを特徴とする請求項１記載の定着装置。
【請求項３】
前記カーボンナノチューブの長手方向が前記加熱ベルトの厚み方向に配向していることを特徴とする請求項１又は２記載の定着装置。
【請求項４】
前記カーボンナノチューブに磁性体が付着していることを特徴とする請求項１乃至３いずれかに記載の定着装置。
【請求項５】
前記加熱ベルト内に発熱部材が配設されていることを特徴とする請求項１乃至４いずれかに記載の定着装置。
【請求項６】
前記サーマルヘッドの前記加熱ベルトとの当接部のヘッド形状が凸形状であることを特徴とする請求項１乃至５いずれかに記載の定着装置。
【請求項７】
請求項１乃至６いずれかに記載の定着装置を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項８】
前記サーマルヘッドが画像部及びその周辺部のみに通電されることを特徴とする請求項７記載の画像形成装置。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【公開番号】特開２０１１−１３３６３（Ｐ２０１１−１３３６３Ａ）
【公開日】平成２３年１月２０日（２０１１．１．２０）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００９−１５６０３２（Ｐ２００９−１５６０３２）
【出願日】平成２１年６月３０日（２００９．６．３０）
【出願人】（０００００６１５０）京セラミタ株式会社 (13,173)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２３年１月２０日（２０１１．１．２０）
【国際特許分類】
【出願日】平成２１年６月３０日（２００９．６．３０）
【出願人】（０００００６１５０）京セラミタ株式会社 (13,173)
【Ｆターム（参考）】
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