説明

定着装置及び画像形成装置

【課題】好ましいタイミングでクリーニング部材を更新し、クリーニング部材の消費効率やクリーニングの精度を向上させる。
【解決手段】定着装置において、定着ローラの目標温度と定着中の実測温度との差Tsの平均値Tsmに基づいて定着ローラの汚れ量の推定値cを求め(S8)、その推定値cの累積値である累積汚れ量dがウェブ交換閾値eを上回った場合に(S10)クリーニングウェブを更新するようにした(S11)。このとき、汚れ量の推定値cは、Tsmの値と対応する汚れ補正係数と、シートが定着部を通過するのに要した時間であるシート通過時間aの積として算出するとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、クリーニング装置を備えた定着装置、およびこのような定着装置を備えたデジタル複合機(以下「MFP」という)、デジタル複写機、ファクシミリ(FAX)装置、プリンタ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、静電潜像に対して付着させたトナー像を紙等のシートに転写してから、定着装置に搬送して加熱しながら加圧することによってトナー像をシートに定着する。そしてこのとき、トナー像と接触する定着部材にトナーが付着、堆積すると、定着性が低下し、更なるトナー付着の累積等が発生し、画質の悪化をもたらす原因となる。
このため、従来からトナー等の異物を除去するクリーニング装置を備えた定着装置が既に知られている。
【0003】
また、特許文献1には、クリーニング装置のクリーニング効果を高める目的で、印刷中に所定値以下の温度を一定時間連続して検知した場合に、定着部材上の残留トナーを拭取るために用いられるウェブの新規面への交換時間を短く再設定することにより交換を早める方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のクリーニング装置を備えた定着装置は、印刷枚数や印刷時間をカウントし、ウェブなどのクリーニング部材の新規面への交換タイミングを決定しているが、印刷条件によるトナーの定着性を考慮せずに一律同じ枚数や時間のタイミングでクリーニング部材を交換してしまうため、クリーニング精度、クリーニング部材の消費効率の面で問題があった。
【0005】
例えば、朝一番の時間帯に画像形成装置の電源を投入後、画質より印刷時間を優先させて印刷した場合、定着部材が十分に温まらずに定着性が低い状態でも印刷を開始することとなり、未定着トナーの粉体が定着部材に付着して汚れの原因となる。
また、連続印刷直後は定着部材の温度が所定の目標値を超過するオーバーシュート現象が発生する場合もあり、このまま続けて印刷を行うと、一回定着されたトナーが定着部材に圧接されるタイミングで紙から乖離してしまい、定着部材の汚れの原因となる。
【0006】
また、本来ならば、紙種、紙厚に応じてトナー定着に適した目標温度近辺で定着されるべきであるが、画質より印刷時間を優先するモードを選択した場合は、目標温度から離れた温度で定着を行うことになる場合もある。そして、このような場合、上記と同様、定着性が低下し上記例のように目標温度に近い温度で定着できず、結果的に定着部材に付着するトナー量が多くなる問題が発生する。
【0007】
また、特許文献1には、定着装置の駆動中に定着ローラの温度が所定値以下になったことを一定時間連続して検知した場合に、基準設定時間より短い設定時間でクリーニング部材を交換することが記載されている。しかし、特許文献1に記載の発明では、目標温度よりも高い温度で定着してしまう場合の残留トナーによる汚れが考慮されていない。
【0008】
この発明は、このような問題を解決し、より好ましいタイミングでクリーニング部材を更新し、クリーニング部材の消費効率やクリーニングの精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、この発明による定着装置は、未定着トナー画像を担持したシートを通過させ、そのシートにトナー像を定着させる定着手段を有する定着装置において、上記定着手段に付着した残留トナーを除去するためのクリーニング部材と、そのクリーニング部材を更新するクリーニング部材更新手段と、上記定着手段の温度を検出する温度検出手段と、上記定着手段の目標温度と上記温度検出手段により検出した上記シートの通過中の実際の検出温度との差の値に基づいて上記定着手段の汚れ量を推定する汚れ量推定手段と、上記汚れ量の推定値に応じて上記クリーニング部材の更新タイミングを決定する更新タイミング決定手段とを設けたものである。
【0010】
このような定着装置において、上記汚れ量推定手段が、上記差の値と対応する補正係数と上記シートの通過時間の積により上記定着手段の汚れ量を推定するようにするとよい。
あるいは、上記汚れ量推定手段が、上記差の値と対応する補正係数と上記シートの通過枚数の積により上記定着手段の汚れ量を推定するようにするとよい。
あるいはまた、上記汚れ量推定手段が、上記差の値と対応する補正係数と上記シートに形成された画像面積の積により上記定着手段の汚れ量を推定するようにするとよい。
【0011】
また、上記の各定着装置において、上記汚れ量推定手段が、上記補正係数を上記シートの種類又は厚さに応じて変更するようにするとよい。
あるいは、上記汚れ量推定手段が、上記補正係数を湿度検出センサにより検出した湿度に応じて変更するようにするとよい。
【0012】
さらに、上記汚れ量推定手段が、上記定着装置のジャム発生時に上記汚れ量の推定値を増加させ、上記クリーニング部材の更新タイミングを早めるようにするとよい。
また、この発明の画像形成措置は、上記のいずれかの定着装置を備えた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0013】
以上のようなこの発明による定着装置及びそれを備えた画像形成装置によれば、好ましいタイミングでクリーニング部材を更新し、クリーニング部材の消費効率やクリーニングの精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施形態である定着装置を備えた画像形成装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図2】図1に示した画像形成装置が備える定着装置の構成をより詳細に示す図である。
【図3】図1に示した画像形成装置の制御部のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図4】図3に示したCPUが実行する、クリーニング手段の制御に関する処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明を実施するための形態を図面に基づいて具体的に説明する。
図1は、この発明の実施形態である定着装置を備えた画像形成装置の構成を概略的に示す断面図である。
この画像形成装置は、原稿を読み取る読み取りユニット11、画像を形成する画像形成部12、自動原稿搬送装置(ADF)13、ADF13から送り出される原稿をスタックする原稿排紙トレイ14、給紙カセット15〜18を備える給紙部19、記録用紙をスタックする排紙部(排紙トレイ20)及び通信インタフェースを備え、後述する制御部100がこれらのハードウェアを制御することにより、複写機、スキャナ、プリンタ、ファクシミリ装置等として機能するデジタル複合機(MFP)である。
【0016】
そして、この画像形成装置においては、ADF13の原稿台21上に原稿Dをセットし、図示を省略した操作部に対するユーザからの操作、例えば、ユーザがプリントキーの押下操作をすると、最上位の原稿Dがピックアップローラ22の回転により、矢印B1方向へ送り出され、原稿搬送ベルト23の回転により、読み取りユニット11に固定されたコンタクトガラス24上へ給送され、そこで停止する。
コンタクトガラス24上に載置された原稿Dの画像は、画像形成部12とコンタクトガラス24の間に位置する読み取り装置25によって読み取る。
【0017】
読み取り装置25は、コンタクトガラス24上の原稿Dを照明する光源26、原稿画像を結像する光学系27、原稿画像を結像させるCCD等からなる光電変換素子28等を有している。
画像読み取り終了後、原稿Dを原稿搬送ベルト23の回転により矢印B2方向へ搬送して原稿排紙トレイ14上へ排出する。
このように、原稿Dを1枚ずつコンタクトガラス24上へ給送して原稿画像を読み取りユニット11によって読み取る。
【0018】
一方、画像形成部12の内部には、像担持体である感光体30が配置してある。
感光体30は、図において時計方向に回転駆動し、帯電装置31によって表面を所定の電位に帯電させる。
また、書き込みユニット32からは、読み取り装置25によって読み取った画像情報に応じて光変調したレーザ光Lを照射し、帯電させた感光体30の表面をこのレーザ光Lで露光し、これによって感光体30の表面に静電潜像を形成する。
【0019】
この静電潜像は、現像装置33を通るとき、トナー像として現像され、転写装置34によって感光体30と転写装置34の間に給送されたシートSに転写される。トナー像転写後の感光体30の表面は、クリーニング装置35によって清掃する。
画像形成部12の下部に配置した複数の給紙カセット15〜18には、紙等のシートSを収容してあり、いずれかの給紙カセット15〜18からシートSを矢印B3方向へ送り出し、そのシートSの表面に、上述のように感光体30の表面に形成したトナー像を転写する。
【0020】
次に、シートSを矢印B4で示すように画像形成部12内の定着装置1を通し、熱と圧力の作用によってシートSの表面に転写されたトナー像を定着させる。
定着装置1を通ったシートSを排出ローラ対37によって搬送し、矢印B5で示すように排紙トレイ20へ排出し、スタックする。
【0021】
次に、図2に、上述した画像形成装置が備える定着装置1の構成をより詳細に示す。
図2に示すように、この定着装置1はまず、定着手段として、図示しないハロゲンヒータなどの加熱源を内部に備える定着ローラ(加熱ローラ)3aと、この定着ローラ3aに圧接して定着ニップ部3cを形成した上で従動回転する加圧ローラ3bを備える。そして、図示のように未定着トナーを担持したシートSがこの定着ニップ部3cを通過することで、トナーが溶融してシートS上に定着される。
【0022】
そして、定着ローラ3aは、定着ニップ部3cにシートSの先端が入ってから、シートSの後端が定着ニップ部3cを抜けるまでの通紙時間を計測するために、定着入口センサ9,定着出口センサ10を備え、さらに定着ローラ3aの表面温度を検出するために温度センサである中央サーモパイル8も備えている。
【0023】
また、定着ローラ3aから残留トナーを除去するためのクリーニング手段として、クリーニングウェブ4,送り出しローラ5,押圧部6,巻き取りローラ7を備える。
そして、クリーニング部材であるクリーニングウェブ4を、押圧部6により所定圧力で定着ローラ3aに当接させており、この状態で定着ローラ3aが回転すると、定着ローラ3aに付着した残留トナーをクリーニングウェブ4の繊維の織目に浸透させて拭取ることができる。
【0024】
そして、ウェブモータ2を駆動して巻き取りローラ7を回転させることにより、クリーニングウェブ4の汚れた面を巻き取ると共に、従動回転する送り出しローラ5によって、クリーニングウェブ4の未使用面を送り出し、クリーニングウェブ4を未使用面に更新することができる。ウェブモータ2は、定着装置1自体が備えていても、外部の動力源であってもよい。
【0025】
なお、このクリーニング装置の初期状態では、送り出しローラ5にクリーニングウェブ4が大量に巻かれており、クリーニングウェブ4を使用するのに伴い、送り出しローラ5のクリーニングウェブ4は徐々に減少し、巻き取りローラ7のクリーニングウェブ4は徐々に増加する。
【0026】
次に、図3に、図1に示した画像形成装置の制御部のハードウェア構成を示す。
図3に示すように、画像形成装置の制御部100は、CPU101,ROM102,RAM103,エンジン部インタフェース(I/F)104,通信I/F105,ハードディスク装置(HDD)106を備え、これらがシステムバス107により接続されている。
【0027】
CPU101は、画像形成装置全体を管理および制御する中央処理装置である。
ROM102は、CPU101が実行するプログラムを格納している読み出し専用の記憶手段である。
RAM103は、CPU101が実行するプログラムを展開し、各種処理を行う際の作業領域として使用する読み書き可能な記憶手段である。
【0028】
エンジン部I/F104は、画像形成装置の画像形成に関わる給紙から印刷出力に至る各種機能を実行する、図1及び図2を用いて説明したハードウェアを含むエンジン部108と通信を行うためのインタフェースである。
通信I/F105は、画像形成装置が、他の装置とネットワーク又はUSBケーブルなどを介して通信を行うためのインタフェースである。
なお、通信I/F105は、ネットワークの規格や使用する通信プロトコル等に応じて適切なものを用意する。また、複数の規格に対応させて複数の通信I/F105を設けることも当然可能である。
HDD106は、制御プログラムや各種データを記憶する大容量記憶手段である。
【0029】
そして、このCPU101が画像形成装置を制御するための各種プログラムをROM102から読み出し、RAM103に展開した後、その各種プログラムを適宜実行して各部を制御することにより、この実施形態の特徴に係わる機能、つまり汚れ量推定手段及び更新タイミング決定手段などの機能を実現することができる。
【0030】
次に、CPU101が実行する、クリーニング手段の制御に関する処理について説明する。
図4にこの処理のフローチャートを示すが、この処理は、不図示の処理により画像形成するシートの厚さや種類に応じて定められる定着ローラ3aの目標温度と、図2に示した中央サーモパイル8による定着ローラ3aの温度の検出値との差分に基づいて、その他の条件も考慮し、定着ローラ3aの汚れ量を推定して、その汚れ量が所定値に達した場合にクリーニングウェブ4を更新するものである。
【0031】
CPU101は、画像形成装置において画像形成を開始する場合、画像形成に係る処理と並行して図4のフローチャートに示す処理を開始する。
この処理において、CPU101はまず、ステップS1で未定着トナー像を担持したシートの先端が定着ニップ部3cに入ったか否かを定着入口センサ9からの検出信号により判断し、入るまで待機する。入った場合はステップS2に進み、不図示のタイマによる計時を開始する。
【0032】
そして、ステップS3乃至S5の処理により、定着出口センサ10からの検出信号によりシートSの後端部が定着ニップ部3cを抜けたことを検出する(ステップS5でYESになる)まで、所定の温度サンプリング周期毎に、定着ローラ3aの目標温度と、サーモパイル8による検出温度との差Tsを算出して、各時点のTsを保存する。
そして、シートSの後端部が定着ニップ部3cを抜けると、処理はステップS6に進み、タイマの値を、シートSが定着ニップ部3cを通過するのに要した時間であるシート通過時間aとして保存すると共に、ステップS7で、ステップS4で保存した各Tsの平均値Tsmを算出する。
【0033】
そして、CPU101はステップS8で、以上のTsm及びシート通過時間aに基づいて、今回の定着(シートの通過)に係る定着ローラ3aの汚れ量の推定値cを算出する。
ここでは推定値cは、ステップS7で算出したTsmに応じて、所定のメモリに記憶している表1に示すテーブルに従って汚れ補正係数bを決定し、ステップS6で保存したシート通過時間aにこの汚れ補正係数bを乗じて求める。
【0034】
【表1】

そして、ステップS9で、前回のクリーニングウェブ4の更新からの累積汚れ量dに、ステップS8で求めた汚れ量の推定値cを加算する。
そして、ステップS10で、この累積汚れ量dがクリーニングウェブ4の更新が必要な汚れ量を示すウェブ交換閾値eを上回ったか否か判断し、上回っていれば、クリーニングウェブ4の更新を行う。
【0035】
すなわち、ステップS11で駆動時間fだけ図2に示したウェブモータ2を駆動して巻き取りローラ7を回転させ、汚れたクリーニングウェブ4を未使用面に更新すると共に、ステップS12で、累積汚れ量dをリセットする。なお、使用済みウェブを巻き取るに従って巻き取りローラ7の径が増加するため、駆動時間fは累積巻き取り量に応じて適宜補正する。
【0036】
そして、ステップS12の後は、ステップS13でまた実行すべき印刷が残っているか判断し、残っていればステップS1に戻って定着ニップ部3cへのシートSの進入監視を続行する。残っていなければ処理を終了する。このとき、累積汚れ量dの値は、次に処理を実行する時に参照できるよう、適当なメモリに保存しておく。
ステップS10でNOの場合も同様である。
【0037】
次に、この処理におけるクリーニングウェブ4の交換タイミング検出の具体例について説明する。
温度サンプリング周期を100ミリ秒(msec)、シート通過時間aを500msecとすると、用紙の先端が定着ニップ部3cに入って、後端が抜けるまでの間に5回サンプリングが可能である。
【0038】
そこで、ステップS4で算出した目標温度と検出温度の差分(Ts)をそれぞれ{6,7,6,8,8}と仮定する。そうすると、シート通過時間aにおけるTsの平均値Tsmは7と算出される(S7)。
このTsmが7の場合の汚れ補正係数bは上記の表1から1.1である。従って、このときの定着に係る汚れ量の推定値cは、
c=500(シート通過時間a)×1.1(汚れ補正係数b)=550
となる。そして、1枚の定着が完了する度に、この推定値cを累積汚れ量dに加算していき(S9)、累積汚れ量dが所定のウェブ交換閾値eを上回った時点で、クリーニングウェブ4の交換が必要であると判断する(S10)。
【0039】
ここで、1回の定着に係る汚れ量の推定値cを、シート通過時間aと、Tsmの値に応じた汚れ補正係数bとの積によって求めているのは、定着ローラ3aが長時間シートSに触れていればそれだけ汚れがつきやすいと考えられることと、定着ローラ3aの温度が目標温度から離れていた場合には、トナーの定着率が悪く、定着ローラ3aに汚れとして付着する量が多くなる、すなわち定着ローラ3aの汚れ量は定着ローラ3aの目標温度とシート通過時の実際の温度との差に依存すると考えられることとを考慮したものである。
【0040】
なお、定着ローラ3aの目標温度とシート通過時の実際の温度との差の平均値Tsmの各値と対応する汚れ補正係数bの値としては、Tsmの値毎に、シートSに転写されたトナーのうち定着ニップ部3cで定着されないトナーの割合を予め実験によって求め、その割合が高いほど大きな値を、例えば正比例関係で設定する。
そして、表1からわかるように、このように設定した汚れ補正係数bは、上記の定着ローラ3aの温度とトナーの定着率との関係を反映して、Tsmの値が0付近である場合に小さい値に、Tsmの値が大きい場合も小さい場合も、0から離れるにつれて大きい値になる。
【0041】
従って、定着ローラ3aの温度が高すぎる場合であっても低すぎる場合であっても、定着ローラ3aに汚れの発生し易い条件で定着を行った場合にこの点を適切に評価して早めにクリーニングウェブ4を更新することができる。逆に、汚れの発生しにくい条件で定着を行った場合でも、この点を適切に評価して汚れが蓄積するまでクリーニングウェブ4を更新しないようにすることができる。そしてこのことにより、クリーニング部材の消費効率やクリーニングの精度を向上させることができる。
【0042】
そして、以上説明したようにCPU101が汚れ量推定手段及び更新タイミング決定手段として機能することによって、定着ローラ3aに付着した残留トナーの汚れ量を、トナー定着に適した目標温度と実際の検出温度との差の値に基づいて推定し、より好ましいタイミングでクリーニング部材を未使用面に更新することができる。従って、クリーニング部材の消費効率やクリーニングの精度を向上することができる。
【0043】
以上で実施形態の説明を終了するが、この発明において、装置の具体的な構成や処理、データ及び計算式の具体的な内容が、上述した実施形態の内容に限られないことはもちろんである。
例えば、汚れ量の推定値cを求める計算式は、上述した実施形態のものに限られない。
まず、シート通過時間aに代えて、シート通過枚数(定着回数)を用いることも考えられる。この場合、Tsmとしては、複数枚の定着を行う間の目標温度と実測温度との差を用いる。使用するシートのサイズが概ね一定であるような環境では、このように汚れ量を推定しても、十分な精度を得ることができる。
【0044】
また、シート通過時間aに代えて、シートに形成される画像の面積を用いることもできる。定着ローラ3aの汚れ量は、シートのうち実際にトナーが転写されている部分の面積、すなわち、画像を形成した面積に依存すると考えられるためである。CPU101は、作像部及び転写部の制御も担当するので、これらの制御に使用するデータから、各シートのうちどの範囲に画像が形成されているかを、容易に把握することができる。
【0045】
なお、上述した実施形態におけるシート通過時間aについても、画像形成プロセスにおけるシートの搬送速度が一定であれば、シートの搬送方向のサイズに依存する値であると捉えることができる。従って、シート通過時間aを実測しなくても、画像形成に用いたシートのサイズとシート搬送速度とから、シート通過時間aを計算で求めることもできる。
【0046】
また、上記以外にも、画像形成に用いるシートの種類や厚さに応じて、定着ローラ3aの目標温度からのずれがトナーの定着率に与える影響や、絶対的な定着率のレベル自体が異なることが考えられる。従って、表1に示すテーブルを、画像形成に用いるシートの種類や厚さ毎に用意しておき、実際に用いたシートの種類や厚さと対応する汚れ補正係数bを用いることも考えられる。
【0047】
同様に、湿度もトナーの定着率に影響を与えることが考えられる。従って、表1に示すテーブルを、湿度の値毎に設けると共に、定着部の付近に湿度検出センサを設け、そのセンサが検出した湿度に応じた補正係数bを用いることも考えられる。
また、いずれの場合も、テーブル自体を複数設けることに代えて、シートの種類や厚さ、あるいは湿度に応じた係数を用意しておき、これを、その他の条件に基づいて求めた汚れ量の推定値cに加算又は乗算等することも考えられる。
【0048】
また、上記以外にも、定着部においてジャムが発生した場合、シート上のトナーが未定着のまま残り、定着ローラ3aの汚れの原因となる。従って、ジャムが発生した場合には累積汚れ量dにそのことにより生じる汚れに相当する値を加算し、クリーニングウェブ4の更新時期を早めるようにするとよい。
【0049】
また、上述の実施形態では、画像形成装置をMFPとして構成した例について説明したが、複写機、プリンタあるいはファクシミリ装置として構成することも可能である。
また、定着装置に専用の制御部を設けて汚れ量推定手段や更新タイミング決定手段として機能させることも可能である。また、クリーニング部材の構成についても、ウェブ状のものに限らず、ある程度の回数自動で更新可能なものであれば、どんなものでも採用することができる。
【0050】
また、この発明は、コンピュータに図4に示したような処理を実行させて定着装置におけるクリーニング部材の更新タイミングを決定する機能や更新を実行する機能を実現するためのプログラムや、このプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体、あるいはクリーニング部材の更新タイミング決定方法、更新方法として実施することもできる。
また、以上説明してきた実施形態及び変形例の構成は、相互に矛盾しない限り任意に組み合わせて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
この発明の定着装置は、MFP、複写機、ファクシミリ装置、プリンタ等の画像形成装置に搭載することができる。そして、この定着装置又はこの定着装置を備えた画像形成装置を利用することで、より好ましいタイミングでクリーニング部材を更新することができ、クリーニング部材の消費効率、クリーニングの精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0052】
1:定着装置 2:ウェブモータ 3a:定着ローラ 3b:加圧ローラ
3c:定着ニップ部 4:クリーニングウェブ 5:送り出しローラ
6:押圧部 7:巻き取りローラ 8:中央サーモパイル
9:定着入口センサ 10:定着出口センサ 11:読み取りユニット
12:画像形成部 13:自動原稿搬送装置 14:原稿排紙トレイ
15〜18:給紙カセット 19:給紙部 20:排紙トレイ
100:制御部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0053】
【特許文献1】特開2003−140504号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未定着トナー画像を担持したシートを通過させ、該シートにトナー像を定着させる定着手段を有する定着装置であって、
前記定着手段に付着した残留トナーを除去するためのクリーニング部材と、
該クリーニング部材を更新するクリーニング部材更新手段と、
前記定着手段の温度を検出する温度検出手段と、
前記定着手段の目標温度と前記温度検出手段により検出した前記シートの通過中の実際の検出温度との差の値に基づいて前記定着手段の汚れ量を推定する汚れ量推定手段と、
前記汚れ量の推定値に応じて前記クリーニング部材の更新タイミングを決定する更新タイミング決定手段とを設けたことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
請求項1記載の定着装置において、
前記汚れ量推定手段は、前記差の値と対応する補正係数と前記シートの通過時間の積により前記定着手段の汚れ量を推定することを特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項1記載の定着装置において、
前記汚れ量推定手段は、前記差の値と対応する補正係数と前記シートの通過枚数の積により前記定着手段の汚れ量を推定することを特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項1記載の定着装置において、
前記汚れ量推定手段は、前記差の値と対応する補正係数と前記シートに形成された画像面積の積により前記定着手段の汚れ量を推定することを特徴とする定着装置。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか一項記載の定着装置において、
前記汚れ量推定手段は、前記補正係数を前記シートの種類又は厚さに応じて変更することを特徴とする定着装置。
【請求項6】
請求項2乃至4のいずれか一項記載の定着装置において、
前記汚れ量推定手段は、前記補正係数を湿度検出センサにより検出した湿度に応じて変更することを特徴とする定着装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項記載の定着装置において、
前記汚れ量推定手段は、前記定着装置のジャム発生時に前記汚れ量の推定値を増加させ、前記クリーニング部材の更新タイミングを早めることを特徴とする定着装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項記載の定着装置を備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−197175(P2011−197175A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61842(P2010−61842)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】