説明

定着装置及び画像形成装置

【課題】
印刷速度を速めた場合においても、定着画像品質の不具合の発生を効果的に抑えることが可能な定着装置及び該定着装置を備えた画像形成装置の提供。
【解決手段】
加熱部材と、第1ローラと第2ローラとにより張設され、前記加熱部材により加熱されるベルト部材と、前記第1ローラと前記第2ローラとの張設位置に対峙する位置において前記ベルト部材を介して圧接ニップ部を形成する加圧部材を有する加圧手段と、前記ベルト部材を押圧する押圧部材とを備え、前記押圧部材は前記第1ローラと前記第2ローラとの張設位置の間に設けらることを特徴とする定着装置及び該定着装置と記録媒体上に現像剤画像を形成する画像形成手段とを備えた画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、複写機、ファクシミリ、複合機等の電子写真方式を利用した画像形成装置に関し、特に、記録媒体上に形成された現像剤像を定着させる定着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電子写真方式を利用した画像形成装置においては、感光体ドラムの表面を帯電ローラ等の帯電手段によって一様均一に帯電させた後、LED(Light Emitting Diode)、又はレーザ光等の露光手段によって感光体ドラムの表面を露光し、画像情報に応じた静電潜像を形成させる。そして、感光体ドラムの表面に形成された静電潜像には、現像ローラ等を備えた現像手段から帯電した現像剤が供給され、現像剤画像が形成される。
【0003】
感光体ドラムの表面で現像された現像剤画像は、給紙装置から給紙された記録媒体たる用紙に転写された後、定着装置において熱及び圧力が付与され定着される。
【0004】
このような構成を有する画像形成装置においては、ヒータにより加熱された無端の定着ベルトを介し、定着ローラに対向して配置された加圧ローラを該定着ローラに押圧して形成させたニップ部を現像剤画像転写後の用紙を挟持搬送させることにより、熱及び圧力を付与するベルト加熱方式の定着装置を備えるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−151115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のベルト加熱方式の定着装置では、定着ローラ及び加圧ローラのみでニップ部が形成されているため、例えば、印刷速度を速くしたときに定着画像品質が低下するといった欠点があった。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、印刷速度を速めた場合においても、定着画像品質の不具合の発生を効果的に抑えることが可能な定着装置及び該定着装置を備えた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る定着装置は、加熱部材と、第1ローラと第2ローラとにより張設され、前記加熱部材により加熱されるベルト部材と、前記第1ローラと前記第2ローラとの張設位置に対峙する位置において前記ベルト部材を介して圧接ニップ部を形成する加圧部材を有する加圧手段と、前記ベルト部材を押圧する押圧部材とを備え、前記押圧部材は前記第1ローラと前記第2ローラとの張設位置の間に設けられることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る画像形成装置は、記録媒体上に現像剤画像を形成する画像形成手段と、加熱部材と、第1ローラと第2ローラとにより張設され、前記加熱部材により加熱されるベルト部材と、前記第1ローラと前記第2ローラとの張設位置に対峙する位置において前記ベルト部材を介して圧接ニップ部を形成する加圧部材を有する加圧手段と、前記第1ローラと前記第2ローラとの張設位置の間に設けられ、前記ベルト部材を押圧する押圧部材とを有し、前記画像形成手段により形成された前記現像剤像を定着させる定着手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、印刷速度を速めた場合においても、定着画像品質の不具合の発生を効果的に抑えることが可能な定着装置及び該定着装置を備えた画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】プリンタの概略構成を説明するための概略断面図である。
【図2】プリンタの制御系統を説明するためのブロック図である。
【図3】定着装置の主要部構造を示す側面図である。
【図4a】第1定着ローラの構成を説明する図である。
【図4b】第2定着ローラの構成をを説明する図である。
【図5】加圧ローラの構成をを説明する図である。
【図6】パットの構成を説明する図である。
【図7】定着ベルトの構成を説明する図である。
【図8】ヒータの構成を説明する図である。
【図9】ニップ部Nの圧力分布を示した図である。
【図10a】評価レベルを説明する図である。
【図10b】評価レベルを説明する図である。
【図10c】評価レベルを説明する図である。
【図11】評価結果を説明する図である。
【図12a】ニップ部Nの圧力分布を示した図である。
【図12b】ニップ部Nの圧力分布を示した図である。
【図12c】ニップ部Nの圧力分布を示した図である。
【図12d】ニップ部Nの圧力分布を示した図である。
【図13】定着装置の主要部構造を示す側面図である。
【図14】パットの構成を説明する図である。
【図15】評価結果を説明する図である。
【図16】評価結果を説明する図である。
【図17】評価結果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、本発明は以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜可能である。
【0013】
[第1の実施形態]
図1は、本発明に係る定着装置を備えた画像形成装置としてのプリンタ1の概略構成を説明するための概略断面図である。プリンタ1は、電子写真方式によるカラー画像を記録媒体としての用紙に印刷することが可能なカラープリンタである。
【0014】
プリンタ1は、印刷前の用紙Pを収容する用紙カセット2を始点とし、プリンタ1の外筺を利用して形成されたスタッカ3を終点とする略S字状に形成された用紙搬送路4に沿って、給紙ローラ5a,5b、分離片6、搬送ローラ7、レジストローラ8、搬送ベルト9、定着装置14、及び排出ローラ16a,16bを備える。
【0015】
そして、搬送ベルト9の上面部には、画像形成手段として、用紙搬送路4上流側から順にブラック(k)、シアン(c)、マゼンタ(m)、イエロー(y)の現像剤としてのトナーTを収容した4つの独立した画像形成部11k,11c,11m,11yがプリンタ1本体から着脱自在に装着されている。また、後述する各画像形成部11k,11c,11m,11yが備える感光体ドラム18の直上には、感光体ドラム18の表面に画像情報に基づく光を照射する露光ヘッド12が配置されているとともに、搬送ベルト9の上面部を介した感光体ドラム18と対峙する位置には、感光体ドラム18に形成された現像剤画像を用紙Pに転写させる転写ローラ13が配置されている。
【0016】
用紙カセット2は、その内部に用紙Pを積層した状態で収納し、プリンタ1下部に着脱自在に装着されている。そして、用紙カセット2の上部に設けられた給紙ローラ5a,5b及び分離片6からなる給紙機構は、用紙カセット2に収納された用紙Pをその最上部から1枚ずつ取り出して用紙搬送経路4に繰り出す。
【0017】
搬送ローラ7は、給紙機構により繰り出された用紙Pを挟持搬送する。レジストローラ8は、搬送ローラ7により搬送された用紙Pの斜行を矯正し、用紙Pを搬送ベルト9に搬送する。
【0018】
搬送ベルト9は、用紙Pを静電吸着して図1中矢印方向へ搬送する無端のベルト部材である。
【0019】
画像形成部11k,11c,11m,11yは、収容されるトナーTのみが異なり、その他の構成は全て同一である。したがって、以下の説明においては、画像形成部11yを一例とし、トナーTの各色を示すk,c,m,yの添字を省略して説明する。
【0020】
画像形成部11は、露光ヘッド12から照射された光によって感光体ドラム18の表面に形成された静電潜像にトナーTを付着させて現像剤画像を形成する。このような画像形成部11yは、感光体ドラム18と、帯電ローラ19と、現像ローラ20と、供給ローラ21と、トナーカートリッジ22と、クリーニングブレード23とを備える。
【0021】
感光体ドラム18は、導電性支持体と光導電層とによって構成され、例えば、導電性支持体としてのアルミニウム等の金属シャフトに光導電層としての電荷発生層、及び電荷輸送層が順次積層されて構成された有機感光体である。そして、感光体ドラム18は、所定の方向に回転しながら、露光ヘッド12から照射された光に基づく静電潜像を形成する。
【0022】
帯電ローラ19は、例えば、ステンレス等の金属シャフトと半導電性エピクロロヒドリンゴムとによって構成されている。帯電ローラ19は、感光体ドラム18に対して所定の圧力をもって当接しており、高圧電源部52から印加された所定の電圧に基づき感光体ドラム18の表面を一様均一に帯電させる。
【0023】
現像ローラ20は、例えば、ステンレス等の金属シャフトの外周にカーボンブラックを分散させたウレタンゴムを配置し、その表面はイソシアネート処理が施されている。そして、現像ローラ20は、感光体ドラム18の表面に圧接するように配置され、感光体ドラム18の表面に形成された静電潜像にトナーTを供給し、現像剤画像を現像する。
【0024】
供給ローラ21は、例えば、ステンレス等の金属シャフトの外周に半導電性発泡シリコーンスポンジ層が配置されている。供給ローラ21は、現像ローラ20に対して所定の圧力をもって当接しており、トナーカートリッジ22から供給されたトナーTを現像ローラ20に供給する。
【0025】
トナーカートリッジ22は、トナーTを収容する箱型容器であり、収容したトナーTを容器底部に設けられた供給口を介し供給ローラ21に供給する。
【0026】
クリーニングブレード23は、例えば、ウレタン製のゴム部材であり、その一端は感光体ドラム18の表面の所定位置に当接する位置に配置されている。クリーニングブレード23は、感光体ドラム18の表面に残留するトナーTを掻き取ることで感光体ドラム18の表面をクリーニングする。
【0027】
なお、画像形成部11は、それぞれ一体的に構成されており、プリンタ1に対して着脱自在に装着されている。このため、プリンタ1の上部カバー15は開閉可能となるように構成されている。
【0028】
露光ヘッド12は、例えば、LED素子等の発光素子とレンズアレイとを有するLEDヘッドであり、画像情報に基づき該LED素子から照射される光が感光体ドラム18の表面に結像する位置となるように配置されている。
【0029】
転写ローラ13は、搬送ベルト9の上面部を介した感光体ドラム18と対峙する位置に配置され、高圧電源部52から印加された所定のバイアス電圧に基づき感光体ドラム18に形成された現像剤画像を用紙Pに転写させる。
【0030】
定着装置14はベルト加熱方式の装置であって、定着ベルトユニット31と、加圧手段である加圧部材としての加圧ローラ30とを備える。定着装置14は、画像形成部11よりも用紙搬送経路4下流側に配置されており、現像剤画像が転写された用紙Pが、所定の温度に維持されたニップ部を通過する際に熱及び圧力が付与され、トナーTが溶融することにより現像剤画像が定着される。定着装置14は、プリンタ1に対して一体的に装着される形態としてもよいし、プリンタ1から着脱自在に装着される形態としてもかまわない。なお、定着装置14に関しては、後ほど詳細に説明する。
【0031】
排出ローラ16a,16bは、定着ユニット14を通過した用紙Pを挟持搬送し、上部カバー15を利用して形成されたスタッカ3に該用紙Pを排出する。
【0032】
次に、プリンタ1の制御系統について説明する。図2は、本実施形態に係るプリンタ1の制御系統を説明するためのブロック図である。
【0033】
制御部50は、例えば、LAN(Local Area Network)ケーブル等の通信回線を介して、パーソナルコンピュータ等の上位装置と接続されている。また、制御部50は、マイクロプロセッサ等の演算装置を備え、プリンタ1内の各部を統括的に制御して印刷処理等を実行する機能、上位装置との通信を制御する機能等を有する。
【0034】
記憶部51は、例えば、ROM(Read Only Memory),RAM(Random Access Memory),HDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置を備え、制御部50が実行する制御プログラムやそれらに用いられる各種データ、制御部50による処理結果等を格納する。
【0035】
高圧電源52は、制御部50からの指示に基づき、帯電ローラ19,現像ローラ20,供給ローラ21,転写ローラ13等に所定の電圧を印加する。なお、帯電ローラ19,現像ローラ20,供給ローラ21,転写ローラ13等は、画像形成部11がプリンタ1に装着される際に高圧電源52と電気的に接続される。
【0036】
定着制御部53は、制御部50からの指示に基づき、給電回路54を制御して、後述する定着装置14のヒータ34へ加熱用の電力を供給させるとともに、定着モータ38へ電力を供給させ、第1の定着ローラ321を用紙搬送方向へ回転させる。また、定着制御部53には、ベルト温度センサ36及び加圧ローラ温度センサ37がそれぞれ接続されており、ベルト温度センサ36により検出された定着ベルト33の表面温度値、加圧ローラ温度検出センサ37により検出された加圧ローラの表面温度値がそれぞれ入力される。定着制御部53は、入力された定着ベルト33の表面温度値に基づき、給電回路54を介して、ヒータ34へ給電させる電力のON・OFFの切替えを行い、定着ベルト33の表面温度値を所定の定着温度値に維持する。
【0037】
次に、定着装置14について図3を用いて説明する。図3は、定着装置14の主要部構造を示す側面図である。
【0038】
定着装置14はベルト加熱方式の装置であって、定着ベルトユニット31と、加圧手段である加圧部材としての加圧ローラ30とを備える。図3に示すように、定着ベルトユニット31は、ベルト部材としての定着ベルト33の内側に、第1ローラとしての第1定着ローラ321,第2ローラとしての第2定着ローラ322,加熱部材としてのヒータ34,ヒータ34を保持し、定着ベルト33のガイドを兼ねるヒータホルダ35等が配置され、定着ベルト33はこれらの部材により張設されている。
【0039】
そして、押圧部材としてのパット401は、第1定着ローラ321の回転方向(用紙搬送方向)の上流側であり、第2定着ローラ322の回転方向(用紙搬送方向)の下流側、つまり、第1定着ローラ321と第2定着ローラ322との張設位置の間に設けられている。
【0040】
ここで、加圧手段である加圧部材としての加圧ローラ30と、定着ベルトユニット31の第1定着ローラ321,パット401,第2定着ローラ322の各々とは、定着ベルト33を介して対向かつ平行の対峙する位置に配置され、加圧ローラ30は、軸受け301に対する加圧ローラスプリング44の所定の押圧力にて第1ローラ321を押圧する方向に付勢されている。なお、加圧部材としては回転することは必須ではなく、表面が摩擦係数の低い材質で覆われた固定ガイドを用いてもかまわないが、本実施形態では、定着ベルト33に従動して回転する回転体を用いている。
【0041】
また、パット401は、圧縮コイルスプリング等からなるパットスプリング41によって定着ベルト33を介して加圧ローラ30を押圧する方向に付勢されている。さらに、第2定着ローラ322も軸受け326に対する第2定着ローラスプリング43の所定の押圧力にて加圧ローラ30を押圧する方向に付勢されている。
【0042】
また、ヒータホルダ35は、ヒータスプリング42の所定の押圧力により定着ベルト33を押圧する方向に付勢されている。なお、パットスプリング41,第2定着ローラスプリング43,ヒータスプリング42の付勢方向の反対側端部は図示せぬフレームに固定されている。
【0043】
以上により、定着ベルトユニット31と加圧ローラ30との間には、用紙搬送方向に所定の幅からなるニップ部Nが形成されることとなる。
【0044】
また、定着装置14のヒータ34とニップ部Nとの間の、ニップ部Nの定着ベルト33の回転方向上流側近傍には、定着ベルト33の内周面に摺接して定着ベルト33の内周面の温度を検出するサーミスタからなるベルト温度検出手段(以下、ベルト温度センサと称する)36が配置されている。また、加圧ローラ30の外周面に摺接して加圧ローラ30の表面温度を検出するサーミスタからなる加圧ローラ温度検出手段(以下、加圧ローラ温度センサと称する)37が配置されている。
【0045】
ここで、第1定着ローラ321,第2定着ローラ322,加圧ローラ30,パット401,定着ベルト33,ヒータ34の構成について詳細に説明する。
【0046】
第1定着ローラ321は、図4aに示すように、鉄、アルミニウム合金等の金属製のパイプ、又はシャフトからなる芯金321aと、シリコーンゴム、フッ素樹脂等の耐熱性弾性層321bとを備える。第1定着ローラ321は、図3に示すように、軸受け325によって回転可能に支持されており、芯金321aに設けられた定着ローラギアを介し定着モータ38から伝達される駆動力によって、用紙Pを搬送する方向に回転駆動する。
【0047】
第2定着ローラ322は、図4bに示すように、鉄、アルミニウム合金等の金属製のパイプ、又はシャフトからなる芯金322aと、シリコーンゴム、フッ素樹脂等の耐熱性弾性層322bとを備える。第2定着ローラ30は、図3に示すように、軸受け326によって回転可能に支持されており、第1定着ローラ321の回転に伴うニップ部Nにおける摩擦力によって従動回転する定着ベルト33の回転に伴って従動回転する。
【0048】
加圧ローラ30は、図5に示すように、鉄、アルミニウム合金等の金属製のパイプ、又はシャフトからなる芯金30aと、シリコーンゴム、フッ素樹脂等の耐熱性弾性層30bと、フッ素樹脂等からなる離型層30Cとから構成される。加圧ローラ30は、図3に示すように、軸受け301によって回転可能に支持されており、第1定着ローラ321の回転に伴うニップ部Nにおける摩擦力によって従動回転する定着ベルト33の回転に伴って従動回転する。
【0049】
パット401は、図6に示すように、鉄、アルミニウム合金等の金属からなる支持基材401aと、支持基材401aに接着固定された耐熱性弾性材401bと、耐熱性弾性材401bの表面に摺動層401cとを備える。ここで、耐熱性弾性層401bは、加圧ローラ30により形成されるニップ部Nの形状に対応した押圧面、すなわち、定着ベルト33を介して加圧ローラ30の曲率と同じように円弧面401dを有するように形成される。なお、摺動層401cは、定着ベルト33の内周面との摩擦抵抗を下げるために設けられている。パット401を定着ベルト33を介して加圧ローラ30を押圧する方向に付勢するパットスプリング41は、パット401の長手方向に複数配置されており、加圧ローラ30に対する長手方向圧力が均一となるように設定されている。ところで、ニップ部Nの幅は、パット401の円弧面401dの短手方向長さを変更することにより、適宜変更可能である。
【0050】
定着ベルト33は、図7に示すように、ニッケル,ポリイミド,ステンレス等からなる材料で形成された円筒状のベルト基材33aと、ベルト基材33aの外周面に形成されたシリコーンゴム、フッ素樹脂等の耐熱性弾性層33bと、耐熱性弾性層33bの外周面に形成されたフッ素樹脂等からなる離型層33cとを備える。定着ベルト33は、第1定着ローラ321の回転に伴うニップ部Nにおける摩擦力によって、第1定着ローラ321に従動回転し、ヒータ34により加熱される。
【0051】
ヒータ34は、図8に示すように、ステンレスやセラミックスなどの基板34a上にガラス等からなる電気絶縁層34bが設けられ、その上に電極34cを有する抵抗発熱体34dが形成され、これを保護層34eで保護した面状ヒータである。このような抵抗発熱体34dとしては、ニッケル−クロム合金、銀−パラジウム合金などの材料を用いることができる。また、保護層34eには、耐圧ガラスによるガラスコーティングが施されている。このような構成を有するヒータ34は、ヒータホルダ35の上面中央部の長手方向に沿って耐熱性接着剤等で固定支持されている。
【0052】
そして、ヒータ34を保持するヒータホルダ35は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK),液晶ポリマー(LCP)などの耐熱性の高い樹脂、又はアルミニウム合金等の金属で構成されている。ヒータホルダ35は、定着ベルト33内周面の加圧ローラ30の反対側において、第1定着ローラ321,第2定着ローラ322から離間されるとともに第1定着ローラ321に対向して配置される。また、ヒータホルダ35は、ヒータスプリング42の所定の押圧力によて定着ベルト33を押圧する方向に付勢されており、第1定着ローラ321,第2定着ローラ322,及びパット401とともに定着ベルト33を張架して回転可能に支持する。
【0053】
次に、このような構成を有するプリンタ1の印刷動作について説明する。
【0054】
まず、プリンタ1の制御部50は、上位装置から画像情報を含む印刷命令を受信すると、受信した画像情報に基づく印刷を開始する。制御部50は、給紙ローラ5a,5b及び分離片6からなる給紙機構を制御して、用紙カセット2に収納された用紙Pをその最上部から1枚ずつ取り出して用紙搬送経路4に繰り出させる。
【0055】
給紙機構により用紙搬送経路4に繰り出された用紙Pは、搬送ローラ7により挟持搬送される。そして、用紙Pはレジストローラ8により斜行が矯正されながら、搬送ベルト9まで搬送される。
【0056】
これと並行して、制御部50は高圧電源52を制御して、帯電ローラ19,現像ローラ20,供給ローラ21,転写ローラ13等に所定の電圧を印加させる。
【0057】
感光体ドラム18の表面に当接して設けられた帯電ローラ19は、高圧電源52から印加された所定の電圧に基づき、感光体ドラム18の表面を一様均一に帯電させる。次に、制御部50は露光ヘッド12を制御して、画像情報に対応した光を感光体ドラム18の表面に照射させ、画像情報に基づく静電潜像を形成させる。
【0058】
次に、現像ローラ20は、供給ローラ21から供給されたトナーTを感光体ドラム18の表面に形成された静電潜像に付着させて反転現像し、現像剤画像を形成させる。
【0059】
そして、用紙Pは搬送ベルト9により画像形成部11まで搬送される。画像形成部11k,11c,11m,11yの各感光体ドラム18の表面に形成された現像剤画像は、用紙Pの各感光体ドラム18と転写ローラ13との間を通過するタイミングに合わせて、転写ローラ13に印加されている所定のバイアス電圧により、順次用紙P上に転写される。
【0060】
現像剤画像が転写された用紙Pには、所定の温度に維持された定着装置14のニップ部を通過する際に熱及び圧力が付与され、トナーTが溶融することにより現像剤画像が定着される。
【0061】
現像剤画像が定着された用紙Pは、排出ローラ16a,16bにより挟持搬送され、上部カバー15を利用して形成されたスタッカ3に排出されて集積され、一連の印刷動作は終了する。
【0062】
次に、上記の一連の印刷動作時における定着装置14の定着動作について説明する。
【0063】
プリンタ1の制御部50は、上位装置から画像情報を含む印刷命令を受信すると、定着制御部53を制御して定着モータ38を駆動させる。定着モータ38の駆動にともない、第1定着ローラ321は、芯金321aに設けられた定着ローラギアを介し駆動モータ38から伝達される駆動力によって、用紙Pを搬送する方向に回転駆動する。
【0064】
第1定着ローラ321の回転駆動にともない、ニップ部Nにおける摩擦力により、定着ベルト33及び加圧ローラ30は従動回転を開始する。
【0065】
このとき、制御部50は、定着制御部53を制御して、ヒータ34へ給電回路54を介して電力を供給させることにより発熱させ、定着ベルト33の内周側から加熱させる。ヒータ34により加熱された定着ベルト33の表面温度値は、ベルト温度センサ36により検出され、定着制御部53に出力される。定着制御部53は、入力された定着ベルト33の表面温度値に基づき、給電回路54を介して、ヒータ34へ給電させる電力のON・OFFの切替えを行い、定着ベルト33の表面温度値を所定の定着温度値に維持する。
【0066】
このようにして、定着ベルト33のの表面温度値が所定の温度値に維持された状態において、現像剤画像が転写された用紙Pが搬送されると、該用紙Pは定着ベルト33を介して第2定着ローラ322,パット401,第1定着ローラ321と加圧ローラ30とで形成されたニップ部Nで挟持される。用紙P上の現像剤画像には、定着ベルト33を介して熱及び圧力が付与され、トナーTが溶融することにより現像剤画像が定着される。
【0067】
なお、定着ベルト33の過昇温防止の点から、第1定着ローラ321の回転開始タイミングは、ヒータ34のON時から時間を空けずに、回転を開始させることが好ましい。そこで、本実施形態では、ヒータ34のONと同時に第1定着ローラ321を回転させる設定とした。また、本実施形態における定着ベルト33の目標定着温度値は160℃となるように設定され、ヒータ34のON後の定着実行時に、該目標定着温度値を中央値とする所定の温度範囲となるように定着ベルト33の定着温度は制御される。
【0068】
[実施例1]
実施例1において、第1定着ローラ321の芯金321aとして、直径21mm,厚さ0.8mm,長さ230mmの鉄(STKM)からなるパイプを用いた。そして、耐熱性弾性層321bとして、厚さ2mmの発泡倍率2とした発泡シリコーンゴム(スポンジ)層で該パイプを被覆し、外径25mmのローラとした。なお、ローラ製品硬度は、ASKER−C70である。また、第1定着ローラ321の外形は、加圧ローラ30との長手方向における圧力分布が均一となるように、中央部が両端に対して外径が0.2mm大きくしたクラウン形状とした。
【0069】
第2定着ローラ321の芯金322aとして、直径18mm,厚さ0.8mm,長さ230mmの鉄(STKM)からなるパイプを用いた。そして、耐熱性弾性層322bとして、厚さ1mmの発泡倍率2とした発泡シリコーンゴム(スポンジ)層で該パイプを被覆し、外径20mmのローラとした。なお、ローラ製品硬度は、ASKER−C80である。また、第2定着ローラ322の外形は、加圧ローラ30との長手方向における圧力分布が均一となるように、中央部が両端に対して外径が0.1mm大きくしたクラウン形状とした。
【0070】
加圧ローラ30の芯金30aとして、直径33.6mm,厚さ0.5mm,長さ230mmの鉄(STKM)からなるパイプを用いた。そして、耐熱性弾性層30bとして、厚さ1.2mmの発泡倍率2とした発泡シリコーンゴム(スポンジ)層で該パイプを被覆後、さらに、離型層30cとして、厚さ30μmのパーフルオロビニルエーテル共重合体(PFA)樹脂チューブで耐熱性弾性層30bを被覆し、外径36mmのローラとした。なお、ローラ製品硬度は、ASKER−C75である。
【0071】
パット401の支持基材401aとして、アルミニウム合金(A6063)を用いた。そして、耐熱性弾性材401bとして、発泡倍率2とした発泡シリコーンゴム(スポンジ)層を用い、摺動層401として、厚さ30μmのシリコーン系樹脂を該耐熱性弾性材401bにコーティングした。なお、本実施例における円弧面401dの円弧長さは5mmと設定した。シリコーンゴム硬度はJISA40とした。円弧面401dの外形は、加圧ローラ30との長手方向における圧力分布が均一となるように、中央部が両端に対して0.1mm凸となるようなクラウン形状とした。ところで、本実施例においては、摺動層401をコーティング層として構成したが、シート状のフッ素樹脂で耐熱性弾性材401bを被覆するように構成してもかまわない。なお、本実施例においては、耐熱性弾性層401bは、加圧ローラ30により形成されるニップ部Nの形状に対応した押圧面、すなわち、定着ベルト33を介して加圧ローラ30の曲率と同じように円弧面401dを有するように形成されるものとしたが、円弧面401dはなく平面形状としてもかまわない。
【0072】
なお、本実施例においては、ニップ部Nにおけるパット401と第1定着ローラ321及び第2定着ローラ322との間隙は各々1mmと設定した。
【0073】
定着ベルト33のベルト基材33aとして、厚さ70μmのポリイミド(PI)樹脂製の円筒部材を用いた。そして、耐熱性弾性材33bとして、厚さ100μmの発泡倍率2とした発泡シリコーンゴム(スポンジ)層で該円筒部材を被覆後、さらに、離型層33cとして、厚さ15μmのPFA樹脂チューブで耐熱性弾性層33bを被覆し、無端ベルトとして形成した。また、定着ベルト33の内径は、ベルト周長が長いと昇温時間が長くなり、反対にベルト周長が短いとスペースが不足し、ニップ部Nの幅の確保に必要な定着ローラの外径、パット基材サイズでの配置が不可となる。したがって、本実施例においては、定着ベルト33の内径を45mmにと定した。
【0074】
ところで、加圧ローラ30は、軸受け301に対する加圧ローラスプリング44によって、片側15kgf、両側で30kgfの総押圧力にて第1ローラ321を押圧する方向に付勢されている。さらに、パット401は4kgfの総押圧力にて、第2定着ローラ322は片側2kgf、両側4kgfの総押圧力にて、それぞれ加圧ローラ30を押圧する方向に付勢されている。以上の構成により、加圧ローラ30と第1定着ローラ321とがなすニップ部幅を5mm、加圧ローラ30とパット401とがなすニップ部幅を4mm、加圧ローラ30と第2定着ローラ322とがなすニップ部幅を3mmと各々設定でき、本実施例におけるニップ部Nの幅は、約12〜14mmと設定した。
【0075】
このようにして設定したニップ部Nの圧力分布を示したのが図9である。前述したように、第1定着ローラ321と第2定着ローラ322との間の部分と加圧ローラ30との定着ベルト33を介した接触領域がニップ部Nである。
【0076】
ここで、ニップ領域Aは第2定着ローラ322が加圧ローラ30に、ニップ領域Cはパット401が加圧ローラ30に、ニップ領域Eは加圧ローラ30が第1定着ローラ321に、各々押圧されて生じる圧力分布を示す。ニップ領域A,C間及びニップ領域C,E間では、定着ベルト33が加圧ローラ30に押圧されることにより低加圧領域のニップ領域B,Dがそれぞれ形成されている。そのニップ領域B,Dにおいては、定着ベルト33はベルトのテンションによって加圧ローラ30に押圧されている。
【0077】
そして、本実施例においては、ニップ領域Eの長手方向平均圧力(以下、ニップ領域E圧力と称する)のピークを2〜2.5kgf/cmに、ニップ領域Cの長手方向平均圧力(以下、ニップ領域C圧力と称する)のピークを0.8〜1kgf/cmに、ニップ領域Aの長手方向平均圧力(以下、ニップ領域A圧力と称する)のピークを0.8kgf/cmとなるように設定されている。つまり、ニップ領域A圧力及びニップ領域C圧力は、ニップ領域E圧力よりも低くなるように設定される。
【0078】
上述した実施例1の構成に対し、ニップ部Nを構成する部材配置を検討するため、比較例を作成し、現像剤画像への影響を確認する評価試験を行った。
【0079】
[比較例1]
比較例1として、第1定着ローラ321と第2定着ローラ322との間にパット401を配置しない構成を用いた。
【0080】
[比較例2]
比較例2として、第2定着ローラ322を除き、パット401の円弧面401dの長さを5mmから10mmに伸ばした構成を用いた。
【0081】
[比較例3]
比較例3として、パット401の代わりに第2定着ローラ322と同じ構成の中間定着ローラを第1定着ローラ321と第2定着ローラ322との間に配置した構成を用いた。なお、上記比較例1〜比較例3のニップ部Nの長さは、実施例1のニップ部Nの長さと同じとなるように各部材の押圧力を調整した。
【0082】
[比較例4]
比較例4として、第2定着ローラ322を除き、パット401の円弧面401dの長さを5mmから3mmに短くした構成を用いた。
【0083】
評価試験は、プリンタ1へ上記実施例1,比較例1,比較例2,比較例3,比較例4の構成を有する定着装置14を装着し、電源投入後のウォームアップ終了時に、A4サイズの用紙P(沖データエクセレントペーパ;坪量64g/m)を10枚連続印刷することによって行った。
【0084】
このときの印刷パターンは単色トナーデューティ100%とし、印刷速度はA4縦送り40ppm,30ppm,20ppmの3水準として印刷を行った。そして、用紙P上の定着現像剤画像の乱れ、ずれ、ムラ等(以下、画像乱れと称する)の定着画像品位を評価項目とした。画像品位の評価は、用紙P上の未定着時のトナー位置から定着時にずれることによって生じた不均一部(画像乱れ)の有無を目視にて判断した。画像乱れは、トナーTが移動して用紙P上に地肌が見える、光沢ムラが見えるものである。本評価では、この画像乱れを図10a,図10b,図10cに示す3段階のレベルに分類した。すなわち、図10aに示すように画像乱れがないものと(○で示す)、定着画像に乱れが頁内に部分的に発生したものと(△で示す)、定着画像乱れが頁内に全面的に発生したものと(×で示す)の3段階のレベルである。
【0085】
上記評価条件における、上記実施例1,比較例1,比較例2,比較例3,比較例4の構成の評価結果を示したのが図11である。図11に示すように、第1定着ローラ321と第2定着ローラ322との間にパット401を配置した構成(実施例1)のみ、40ppmの印刷速度において、画像乱れが発生しないことが確認された。
【0086】
これに対して、比較例1の構成によるニップ部Nの圧力分布を示したのが図12aである。なお、図12a〜図12dにおいて、実施例1におけるニップ領域C,ニップ領域E,ニップ領域Aのそれぞれに対応する領域については、それぞれa〜dの添え字をつけて表現するものとする。図9に示すようなニップ領域Cにおけるパット401の押圧力が無くなると、実施例1におけるニップ領域B,Dに相当する領域が広くなり、結果としてニップ領域Fとして示す低加圧領域が発生する。ニップ領域Fでは、用紙Pのニップ部Nの通過時にトナー層から発生する空気、水蒸気等の動きを抑え込むことができなくなり、また、用紙P表面と定着ベルト33との間で微小すべりが生じ易くなり、画像乱れが発生しやすくなる。例えば、コート紙等のように通気性の低い用紙を使用した場合、より定着画像の乱れは大きくなる。
【0087】
実施例1においては、第1定着ローラ321と第2定着ローラ322との間にパット401を配置したことで、第1定着ローラ321と第2定着ローラ322との間の押圧力が小さくなることを防ぐことが可能であるとともに、低加圧領域であるニップ領域B,Dの幅が小さいため、定着画像の乱れが発生することを防止することができる。
【0088】
さらに、実施例1においては、パット401の耐熱性弾性材401bは、加圧ローラ30により形成されるニップ部Nの形状に対応した押圧面、すなわち、定着ベルト33を介して加圧ローラ30の曲率と同じように円弧面401dを有するように形成されているため、第1定着ローラ321と加圧ローラ30とのニップ部開始点及び第2定着ローラ322と加圧ローラ30とのニップ部終了点の各近傍まで、円弧形状先端部が入り込むことが可能であるため、低加圧領域であるニップ領域B,Dの幅を小さくすることができる。
【0089】
比較例2の構成によるニップ部Nの圧力分布を図12bに示す。比較例2においては、第2定着ローラ322によるニップ領域Aを補うために、円弧面401dの長さを2倍としたために、円弧面の形状を用紙搬送方向及び長手方向に一様な形状で製造することが困難となった。すなわち、比較例2の構成では、パット401による圧力が局部的に不均一となり(ニップ領域Cb〜Db)、定着画像の乱れが発生する結果となった。
【0090】
比較例3の構成によるニップ部Nの圧力分布を図12cに示す。比較例3においては、パット401から中間定着ローラとなったことで、ニップ領域Ccにおける両側で実施例1の領域B,Dに相当する押圧力が無くなることとなる。つまり、第1定着ローラ321との間に生じるニップ領域Bc及び第2定着ローラ322との間に生じるニップ領域Dcに低加圧領域が発生する。比較例3においては、ほぼ圧力の無いニップ領域Bc,Dcの幅が、比較例1におけるニップ領域Fに比べて短いために、低速度の領域では、定着画像の乱れ方は若干小さくなるものの、比較例1と同様の理由で定着画像の乱れは発生する。
【0091】
比較例4の構成によるニップ部Nの圧力分布を図12dに示す。比較例4においては、円弧面401dの長さが短いために、比較例2のようにパット401の長手方向の圧力は比較的に均一とすることができる。しかしながら、比較例2よりもニップ部Nの長さが短いため、印刷速度は低速となる。
【0092】
なお、第2定着ローラ322を除き、パット401を二つ並べた形態では、円弧面401dの長さの合計が比較例2と同等となり、パット401と加圧ローラ30との間において発生する摩擦力が倍増する。このような状態では、摺動時にパット401が定着ベルト33内周面に引っ掛かり、スティックスリップ等が発生して用紙搬送が不均一となる。その結果、定着画像の乱れが発生した。
【0093】
ところで、本実施形態においては、第1定着ローラの外径d1を第2定着ローラの外径d2よりも大きくなるように構成している。別試験にて、第1定着ローラの外径<第2定着ローラの外径(ニップ領域E圧力<ニップ領域A圧力)として評価を行ったところ、定着性の低下及び一部画像乱れが発生した。また、このように構成すると、用紙Pが分離ガイド38と定着ベルト33との間に入り込んでしまう用紙搬送不具合が発生した。
【0094】
定着画像の画像品位の低下は、第2定着ローラのみでは十分な定着が行われず、第1定着ローラの外径が第2定着ローラの外径よりも小さいときは、用紙Pがニップ部内のより下流に搬送されたときに完全に溶融トナーTを用紙Pに定着できないことを示している。
【0095】
すなわち、第1定着ローラの外径d1と第2定着ローラの外径d2との関係を
第1定着ローラの外径d1>第2定着ローラの外径d2
とすれば、ニップ部N上流側で溶融したトナーTをニップ部N下流側においてより強い圧力で抑えることができ、定着画像の乱れを防ぎ、かつ定着性を確保することができる。さらに、第2定着ローラの外径を小径とすることで、ヒータ34をニップ部Nの入口に近づけることができ、定着ベルトに伝達された熱の放熱を最小にして、トナーTに効率良く熱を伝達することができる。
【0096】
また、本実施形態においては、ニップ領域E圧力をニップ領域C圧力より大きく、またニップ領域C圧力とニップ領域A圧力と同等となるように構成されている。別試験にて、ニップ領域E圧力を用紙Pが分離できるピーク値とした上で、ニップ領域E圧力<ニップ領域C圧力<ニップ領域A圧力として評価を行ったところ、定着画像にジッタが発生することが確認された。
【0097】
パットの押圧力が過剰に大きくなると、定着ベルトとパットとの間の摩擦力が、定着ベルトと加圧ローラとの間の摩擦力よりも大きくなり、定着ベルトの走行性は著しく悪化する。このとき、定着ベルトにスリップスティック現象が発生することで、定着ベルトが等速で走行できず、定着画像の画像品位の低下を招いていると考えられる。また、ニップ領域C圧力とニップ領域A圧力との差を著しく大きくすると、ニップ領域Cにおける圧力不足を招来し、定着画像の乱れが発生した。
【0098】
以上の結果より、ニップ領域E圧力,ニップ領域C圧力,ニップ領域A圧力の関係を
ニップ領域E圧力>ニップ領域C圧力≧ニップ領域A圧力
とすることにより、パットによるニップ領域C圧力に起因する定着画像の画像品位の低下を防ぐことができる。
【0099】
以上のように、第1の実施形態によれば、定着装置の用紙搬送方向に対して、第1定着ローラと第2定着ローラとの間にパットを配置することにより、従来装置に比べ、ニップ部Nの長さを長くすることができ、印刷速度を速めた場合においても、定着画像品質の不具合の発生を効果的に抑えることができる。
【0100】
[第2の実施形態]
第2の実施形態の定着装置14は、第1の実施形態に対して、加圧ローラ30を加圧ベルトユニット45として構成したものである。なお、本実施形態の説明においては、第1の実施形態と同一な箇所については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0101】
図13に示すように、加圧ベルトユニット45は、ベルト部材としての定着ベルト33の内側に加圧手段である第3ローラとしての第1加圧ローラ323と、第1加圧ローラ323の回転方向(用紙搬送方向)の上流側であり、第4ローラとしての第2加圧ローラ324の回転方向(用紙搬送方向)の下流側、つまり、第1加圧ローラーラ323と第2加圧ローラ324との張設位置の間にパット402を備える。
【0102】
ここで、加圧手段である定着ベルトユニット31の第1定着ローラ321,パット401,第2定着ローラ322と、加圧ベルトユニット45の第1加圧ローラ323,パット402,第2加圧ローラ324との各々は、2つの定着ベルト33を介して対向かつ平行の対峙する位置に配置され、第1加圧ローラ323は、軸受け327に対する加圧ローラスプリング441の所定の押圧力にて第1ローラ321を押圧する方向に付勢されている。
【0103】
また、パット402は、圧縮コイルスプリング等からなるパットスプリング41の所定の押圧力にて2つの定着ベルト33を介して対向するパット401を押圧する方向に付勢されている。
【0104】
さらに、第2加圧ローラ324も軸受け328に対する第2加圧ローラスプリング442の所定の押圧力にて第2定着ローラ322を押圧する方向に付勢されている。
【0105】
以上により、定着ベルトユニット31と加圧ベルトユニット45との間には、用紙搬送方向に所定の幅からなるニップ部N2が形成されることとなる。
【0106】
また、加圧ベルトユニット45内のニップ部N2の用紙搬送方向上流側には、定着ベルトユニット31と同様に、ベルト温度検出手段36が配置されている。
【0107】
パット402は、図14に示すように、鉄、アルミニウム合金等の金属からなる支持基材402aと、支持基材402aに接着固定された耐熱性弾性材402bと、耐熱性弾性材402bの表面に摺動層402cとを備える。ここで、耐熱性弾性層402bは、加圧ローラ30により形成されるニップ部Nの形状に対応した押圧面、すなわち、2つの定着ベルト33の曲率と同じように平面402dを有するように形成される。なお、摺動層402cは、定着ベルト33の内周面との摩擦抵抗を下げるために設けられている。パット402を定着ベルト33を介してパット401を押圧する方向に付勢するパットスプリング41は、パット402の長手方向に複数配置されており、パット401に対する長手方向圧力が均一となるように設定されている。ところで、ニップ部Nの幅は、パット402の平面402dの短手方向長さを変更することにより、適宜変更可能である。
【0108】
また、2つの定着ベルト33は両方とも同一の45mmの内径を有し、第1の実施形態で説説明した定着ベルト33と同じ構成である。
【0109】
さらに、第1加圧ローラ323及び第2加圧ローラ324は、それぞれ第1定着ローラ321及び第2定着ローラ322と同一の構成を有する。
【0110】
ところで、第1加圧ローラ323は、軸受け327に対する加圧ローラスプリング441によって、片側20kgf、両側で40kgfの総押圧力にて第1ローラ321を押圧する方向に付勢されている。さらに、パット402は5kgfの総押圧力にて、第2加圧ローラ324は片側3kgf、両側6kgfの総押圧力にて、それぞれパット401及び第2定着ローラ322を押圧する方向に付勢されている。以上の構成により、第1加圧ローラ323と第1定着ローラ321とがなすニップ部幅を5mm、パット402とパット401とがなすニップ部幅を5mm、第2加圧ローラ324と第2定着ローラ322とがなすニップ部幅を4mmと各々設定でき、本実施例におけるニップ部Nの幅は、約14〜16mmと設定した。なお、このような構成を有する実施例を実施例2とした。
【0111】
このようにして設定した実施例2に係るニップ部N2の圧力分布を示したのが図15である。前述したように、第1定着ローラ321と第2定着ローラ322との間の部分と第1加圧ローラ323と第2加圧ローラ324との間の2つの定着ベルト33を介した接触領域がニップ部Nである。
【0112】
ここで、ニップ領域A2は第2加圧ローラ324が第2定着ローラ322に、ニップ領域C2はパット402がパット401に、ニップ領域E2は加圧ローラ323が第1定着ローラ321に、各々押圧されて生じる圧力分布を示す。ニップ領域A2,C2間及びニップ領域C2,E2間では、定着ベルト33が対向する定着ベルト33に押圧されることにより低加圧領域のニップ領域B2,D2がそれぞれ形成されている。そのニップ領域B2,D2においては、定着ベルト33はベルトのテンションによって互いに押圧されている。
【0113】
そして、実施例2においては、ニップ領域E2の長手方向平均圧力(以下、ニップ領域E2圧力と称する)のピークを2。5〜3.0kgf/cmに、ニップ領域C2の長手方向平均圧力(以下、ニップ領域C2圧力と称する)のピークを0.8〜1kgf/cmに、ニップ領域A2の長手方向平均圧力(以下、ニップ領域A2圧力と称する)のピークを0.8kgf/cmとなるように設定されている。つまり、ニップ領域A2圧力及びニップ領域C2圧力は、ニップ領域E2圧力よりも低くなるように設定される。
【0114】
上述した実施例2の構成に対し、ニップ部Nを構成する部材配置を検討するため、比較例を作成し、現像剤画像への影響を確認する評価試験を行った。
【0115】
[比較例5]
比較例5として、第2加圧ローラ323と第2加圧ローラ324との間にパット402を配置しない構成を用いた。
【0116】
評価試験は、第1の実施形態と同様に行い、印刷速度はA4縦送り50ppm,45ppm,40ppmの3水準として印刷を行った。
【0117】
上記評価条件における、上記実施例2,比較例5の構成の評価結果を示したのが図16である。図16に示すように、第1加圧ローラ323と第2加圧ローラ324との間にパット402を配置した構成(実施例2)のみ、50ppmの印刷速度において、画像乱れが発生しないことが確認された。
【0118】
これに対して、比較例5の構成によるニップ部Nの圧力分布を示したのが図17である。比較例5の構成では、パット402が存在しないために、パット401による圧力が局部的に不均一となり(ニップ領域C2´〜D2´)、定着画像の乱れが発生する結果となった。
【0119】
実施例2においては、第1加圧ローラ323と第2加圧ローラ324との間にパット402を配置したことで、第1加圧ローラ323と第2加圧ローラ324との間の押圧力が小さくなることを防ぐことが可能であるとともに、低加圧領域であるニップ領域B2,D2の幅が小さいため、定着画像の乱れが発生することを防止することができる。
【0120】
なお、本実施例の構成では、定着ベルト33内の第1定着ローラ321,パット401,第2定着ローラ322が軸固定されているため、対向する加圧ベルトユニット45の押圧力が上がっても安定した定着ベルト33の走行が可能となる。
【0121】
以上のように、第2の実施形態によれば、定着ベルトユニット内の各部材位置を固定として、加圧ベルトユニット内の部材にて加圧する構成として、押圧力を上げることができる。すなわち、本実施形態によれば、ニップ幅及び圧力を増やしての高速印刷が可能である。
【0122】
本実施形態の説明においては、画像形成装置としてカラープリンタを一例として説明したがが、本発明はこれに限定されず、電子写真方式を利用したモノクロプリンタ、複写機、ファクシミリ、複合機等にも適用可能である。
【0123】
また、各実施形態の説明においては、印刷用の用紙を普通紙として説明したが、これに限定されず、OHPシート、カード、はがき、坪量が250g/m相当以上の厚紙、封筒、熱容量の大きいコート紙等も利用可能である。
【0124】
さらに、各実施形態の説明においては、ヒータは面状ヒータとして説明したが、定着ベルトとの摺接面が定着ベルトと同程度の曲率を有するものであっても、円筒状のヒータ形状であってもよく、また、ハロゲンヒータであってもよい。更には、電磁誘導可能な材料で定着ベルトを構成することで誘導加熱することも可能であり、ヒータの種類や形状に限定されない。また、各実施形態の説明においては、ヒータは定着ベルトの内側に配置する形態として説明したが、定着ベルトの外側に設けてもかまわない。
【符号の説明】
【0125】
1 プリンタ
2 用紙カセット
3 スタッカ
4 用紙搬送路
5a,5b 給紙ローラ
6 分離片
7 搬送ローラ
8 レジストローラ
9 搬送ベルト
11k,11c,11m,11y 画像形成部
12 露光ヘッド
13 転写ローラ
14 定着装置
16a,16b 排出ローラ
18 感光体ドラム
19 帯電ローラ
20 現像ローラ
21 供給ローラ
22 トナーカートリッジ
23 クリーニングブレード
30 加圧ローラ
31 定着ベルトユニット
321 第1定着ローラ
322 第2定着ローラ
323 第1加圧ローラ
324 第2加圧ローラ
33 定着ベルト
34 ヒータ
35 ヒータホルダ
401,402 パット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱部材と、
第1ローラと第2ローラとにより張設され、前記加熱部材により加熱されるベルト部材と、
前記第1ローラと前記第2ローラとの張設位置に対峙する位置において前記ベルト部材を介して圧接ニップ部を形成する加圧部材を有する加圧手段と、
前記ベルト部材を押圧する押圧部材とを備え、
前記押圧部材は前記第1ローラと前記第2ローラとの張設位置の間に設けられること
を特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記加圧部材は、
回転体であること
を特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項3】
前記第1ローラの外径をd1とし、前記第2ローラの外径をd2としたとき、
d1>d2の関係を満たすこと
を特徴とする請求項1又は請求項2記載の定着装置。
【請求項4】
前記第1ローラと前記加圧部材との間に生じる長手方向平均圧力をE1とし、前記第2ローラと前記加圧部材との間に生じる長手方向平均圧力をA1とし、前記押圧部材と前記加圧部材との間に生じる長手方向平均圧力をC1としたとき、
E1>C1≧A1の関係を満たすこと
を特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の定着装置。
【請求項5】
前記加圧手段は、
第3ローラと第4ローラとにより張設された加圧ベルト部材と、
前記第3ローラと前記第4ローラとの張設位置の間に設けられ、前記加圧ベルト部材を押圧する他の押圧部材とを備えること
を特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項6】
前記第3ローラの外径をd3とし、前記第4ローラの外径をd4としたとき、
d3>d4の関係を満たすこと
を特徴とする請求項5記載の定着装置。
【請求項7】
前記第1ローラと前記第3ローラとの間に生じる長手方向平均圧力をE2とし、前記第2ローラと前記第4ローラとの間に生じる長手方向平均圧力をA2とし、前記押圧部材と前記他の押圧部材との間に生じる長手方向平均圧力をC2としたとき、
E2>C2≧A2の関係を満たすこと
を特徴とする請求項5又は請求項6記載の定着装置。
【請求項8】
前記押圧部材は、
前記加圧手段により形成される前記圧接ニップ部の形状に対応した押圧面を有すること
を特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項記載の定着装置。
【請求項9】
前記加熱部材は、
面状ヒータであること
を特徴とする請求項1乃至請求項8の何れか1項記載の定着装置。
【請求項10】
前記加熱部材は、
ハロゲンヒータであること
を特徴とする請求項1乃至請求項8の何れか1項記載の定着装置。
【請求項11】
記録媒体上に現像剤画像を形成する画像形成手段と、
加熱部材と、第1ローラと第2ローラとにより張設され、前記加熱部材により加熱されるベルト部材と、前記第1ローラと前記第2ローラとの張設位置に対峙する位置において前記ベルト部材を介して圧接ニップ部を形成する加圧部材を有する加圧手段と、前記第1ローラと前記第2ローラとの張設位置の間に設けられ、前記ベルト部材を押圧する押圧部材とを有し、前記画像形成手段により形成された前記現像剤像を定着させる定着手段とを備えること
を特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10a】
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【図10b】
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【図10c】
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【図11】
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【図12a】
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【図12b】
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【図12c】
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【図12d】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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