説明

定着装置及び画像形成装置

【課題】 画像形成品質を損なわずに画像形成速度の高速化に対応できる耐久性が高い定着装置を提供する。
【解決手段】 定着装置は、加熱ローラと、加熱ローラを外面で圧接しながら加熱ローラに従動回転する定着ベルトと、定着ベルトの内面に当接し外部からの押圧力を受けて定着ベルトを内面から圧接する弾性体が取り付けられた加圧パッドとを有する。さらに、定着装置は、上述の弾性体の、定着ベルトの移動方向の上流側部分を押圧する第1の押圧部材と、上述の弾性体の、定着ベルトの移動方向の下流側部分を押圧する、第1の押圧部材とは異なる第2の押圧部材とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は定着装置に関し、特に、加熱ローラに対して無端の定着ベルトを圧接配置し、加熱ローラと定着ベルトの間に形成されたニップ幅に記録媒体を通過させる、いわゆるベルトニップ方式の定着装置の改良に関する。また、本発明は、定着装置を有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のベルトニップ方式の定着装置は、熱源を内部に有する回転可能な加熱ローラと、この加熱ローラに圧接することで加熱ローラに従動して回転する無端の定着ベルトと、定着ベルトを内側から張架しつつ加熱ローラ側に押圧する加圧ローラと、定着ベルトを内側から付勢部材で加熱ローラ側に押圧する加圧パッドとを備え、定着ベルトを内側から加圧ローラと圧力パッドで加熱ローラ側に圧接することで加熱定着に機能するニップ幅を形成させている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−275371
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像形成装置は、記録媒体当りの画像形成時間が短いことが望まれているものである。画像形成時間は、各部を形成可能な状態にする立上り時間と、実際に記録媒体に画像を形成する形成時間との和で表される。形成時間を短くすることは、記録媒体の搬送速度を高速にすることを意味する。定着装置の場合、立上り時間を短くするため、加熱ローラ表面側の弾性層(例えば、シリコンゴムでなる)の厚さを薄くすることが行われている。高速な搬送速度の記録媒体に対し、トナーを確実に定着させる手法として、加熱温度を高くしたり、加圧ローラや圧力パッドと、加熱ローラとの圧接の際の圧力を高くしたり、ニップ幅を広げたりすることが挙げられる。しかし、加熱温度を高くすると、加熱ローラ表面の薄い弾性層が破壊されてしまう。
【0005】
そのため、加熱温度を高温に上げられず、この状況で高速化に対応するためには、加圧ローラや圧力パッドと、加熱ローラとの圧接の際の圧力を高くし、しかも、十分なニップ幅を確保することが望ましい。
【0006】
しかし、高圧力で広いニップ幅を確保しようとした場合には、(1)加熱ローラなどの駆動トルクが上昇し定着装置から排出される記録媒体にしわが生じる恐れが高まる、(2)加熱ローラや加圧ローラなどの磨耗が激しく耐久性を確保できない、などというような課題が生じる。
【0007】
そのため、画像形成品質を損なわずに画像形成速度の高速化に対応できる耐久性が高い定着装置や、そのような定着装置を有する画像形成装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の本発明は、定着用回転ローラと、前記定着用回転ローラを外面で圧接しながら前記定着用回転ローラと共に回転移動する定着用ベルトと、前記定着用ベルトの内面に当接し外部からの押圧力を受けて前記定着用ベルトを内面から圧接するベルト当接体とを有し、記録媒体上の現像剤像を定着させる定着装置において、(1)前記ベルト当接体の、前記定着用ベルトの移動方向の上流側部分を押圧する第1の押圧部材と、(2)前記ベルト当接体の、前記定着用ベルトの移動方向の下流側部分を押圧する、前記第1の押圧部材とは異なる第2の押圧部材とを有することを特徴とする。
【0009】
第2の本発明の画像形成装置は、第1の本発明の定着装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、画像形成品質を損なわずに画像形成速度の高速化に対応できる耐久性が高い定着装置及び画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態に係るカラー画像形成装置の構成を示す概略側面図である。
【図2】第1の実施形態に係る定着装置の構成を示す断面図である。
【図3】第1の実施形態に係る定着装置の構成要素である定着ベルトアセンブリの分解斜視図である。
【図4】第1の実施形態に係る定着装置の構成要素である加熱ローラの円筒体の層構造を示す断面図である。
【図5】第1の実施形態に係る定着装置の構成要素である加圧パッドを示す断面図である。
【図6】第1の実施形態に係る定着装置のニップ幅における圧力分布を示すグラフである。
【図7】第2の実施形態に係る定着装置の構成を示す断面図である。
【図8】変形実施形態(1)による加圧パッド周りの構成を示す断面図である。
【図9】変形実施形態(2)による加圧パッド周りの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(A)第1の実施形態
以下、本発明による定着装置及び画像形成装置の第1の実施形態を、図面を参照しながら説明する。第1の実施形態に係る画像形成装置は、カラー画像形成装置である。
【0013】
(A−1)第1の実施形態の構成
(A−1−1)カラー画像形成装置の構成
図1は、第1の実施形態に係るカラー画像形成装置1の機構的な構成を示す概略側面図である。なお、図1では、操作部、表示部、制御部などの電気的構成の図示を省略している。
【0014】
図1において、カラー画像形成装置1は、4つの色成分(黒(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C))毎に独立して設けられた画像形成ユニットとしての現像器2K、2Y、2M、2Cを有する。現像器2K、2Y、2M、2Cは、記録媒体の挿入側から排出側へ向かう媒体搬送路に沿って配置されている。現像器2Kは、帯電ローラ5Kと、この帯電ローラ5Kによって表面が一様に帯電される像担持体としての感光ドラム6Kと、感光ドラム6K上に静電潜像を形成させる露光装置としてのLEDヘッド3Kと、静電潜像をトナー画像に現像するための現像ローラ7Kと、該当する色成分の着色剤を含有する現像剤としてのトナーを収容している現像剤収容部としてのトナーカートリッジ10Kと、トナーを帯電させて現像ローラ7Kに供給するための現像ブレード8K及びスポンジローラ9Kとを有している。他の現像器2Y、2M、2Cはいずれも、現像器2Kと同様な構成を有しており、利用するトナーの色成分だけが異なっている。
【0015】
感光ドラム6K〜6Cには、感光ドラム6K〜6C上のトナー画像を記録媒体に転写させるための電圧が印加される転写部としての転写ローラ4K〜4Cが近接して設けられている。感光ドラム6K〜6Cと転写ローラ4K〜4Cとの間に搬送ベルト12が回転可能に配置されている。
【0016】
搬送ベルト12は、継ぎ目なしの無端のベルト状に形成されており、駆動ローラ13及び従動ローラ14間に掛け渡されている。駆動ローラ13は、従動ローラ14より、記録媒体の搬送方向の下流側に設けられている。駆動ローラ13は、図示しないベルトモータにより矢印d方向に回転し、感光ドラム6K〜6Cと転写ローラ4K〜4Cとの間に配置されている搬送ベルト12の上部側を、矢印e方向に走行させるようになされている。
【0017】
また、カラー画像形成装置1内の下方(図1における右下側)には、搬送路に記録媒体を供給するための給紙機構が設けられている。この給紙機構は、ホッピングローラ16と、レジストローラ17と、記録媒体収容カセット19とを有する。
【0018】
記録媒体収容カセット19は記録媒体を収容している。収容されている記録媒体が図示しない分離手段により1枚ずつ選択され、ホッピングローラ16により記録媒体収容カセット19から取り出されて、ガイド20に案内されてレジストローラ17に達する。記録媒体のスキュー(走行速度の揺れ)が、レジストローラ17と、レジストローラ17に相対するピンチローラ18とによって修正されるようになっている。
【0019】
レジストローラ17に達した記録媒体は、その後、レジストローラ17から吸着ローラ15と搬送ベルト12との間に導かれる。吸着ローラ15は、従動ローラ14との間で記録媒体を圧接して帯電させ、その記録媒体を搬送ベルト12の上側表面に静電吸着させるものである。
【0020】
センサ21及び22はそれぞれ、レジストローラ17の前後の搬送路近傍に配置され、設置位置近傍に記録媒体が存在することを検出するためのものである。駆動ローラ13側の搬送ベルト12からの排出側には、搬送ベルト12から分離に失敗した記録媒体をチェックし、あるいは記録媒体の後端位置を検出するためのセンサ23が設けられている。
【0021】
搬送ベルト12から分離されて記録媒体は、第1の実施形態に係る定着装置40に導かれる。定着装置40は、記録媒体上のトナーを加熱、溶融して記録媒体にトナー画像を定着させるものである。定着装置40の構成については後で詳述するが、定着装置40は、加熱ローラ25と、加熱ローラ25と一体になって記録媒体を加圧する定着ベルトアセンブリ26とを有する。加熱ローラ25の表面近くには、非接触サーミスタ41が配置され、加熱ローラ25の表面温度を検出している。定着ベルトアセンブリ26内部には、内部の加圧ローラの表面温度を検出する接触サーミスタ42が設けられている。
【0022】
定着装置40の下流側には、トナー画像が定着された記録媒体が定着装置40から排出されたことを検出するセンサ27が設けられている。センサ27より下流には、トナー画像が定着された記録媒体を、カラー画像形成装置1の筐体外部の記録媒体受け面30に排出する排出ガイド29が設けられている。
【0023】
搬送ベルト12の下側表面にはクリーニング機構が接している。クリーニング機構は、クリーニングブレード32と廃トナータンク33とを有する。従動ローラ14とクリーニングブレード32が搬送ベルト12の下側半分12bを挟むように、それぞれが対向する位置に設けられている。搬送ベルト12が、従動ローラ14に向かって矢印f方向に移動すると、クリーニングブレード32が、搬送ベルト12の表面に付着残留したトナーを廃トナータンク33に削り落とす。
【0024】
(A−1−2)定着装置の構成
次に、第1の実施形態に係る定着装置40の詳細構成について説明する。
【0025】
図2は、定着装置40の構成を示す断面図である。図2は、定着装置40への記録媒体の導入方向及び記録媒体の幅方向の双方に概ね直交している平面による断面図である。図3は、定着装置40の構成要素である定着ベルトアセンブリ26の分解斜視図であり、定着ベルトの内部に位置する構成要素については、定着ベルトから引き出して示している。
【0026】
第1の実施形態において定着用回転ローラに相当する加熱ローラ25は、外郭としての円筒体50と、円筒体50の中央部に、熱源としてのヒータ51を1又は複数内蔵して、回転可能なものである。但し、ヒータ51は固定され、回転しないものである(なお、回転可能であっても良い)。ヒータ51の種類は限定されないが、例えば、ハロゲンランプを適用できる。
【0027】
円筒体50は、図4に示すように、アルミニウム又は鉄等の高い熱伝導性を有する金属層50a、金属層50aの外側に形成された、圧接時のなじみを高める弾性層50b、弾性層50bの外側に形成された、定着ベルトアセンブリ26との接触から非接触への変化を容易にさせる離型層50cを有する。弾性層50bは、シリコンゴム等の弾性体でなる。離型層50cは、例えば、パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(以下、PFAと記載する)等の離型性の高い樹脂でなる。離型層50cは、当該樹脂チューブが弾性層50bの外周に被せられたり、当該樹脂が弾性層50bの外周にコーティングされたりして形成される。
【0028】
加熱ローラ25は、例えば、長手方向の長さが300mmで外径が30mmであり、このような加熱ローラ25の場合、金属層50aの厚みは0.4mmであり、弾性層50bの厚さは0.8mmであり、離型層50cの厚さは40μmである。
【0029】
弾性層50bは、弾性変形することで、記録媒体の表面の凹凸による段差や、カラー画像形成によるトナーの多層のため生じる段差に対して、加熱ローラ25表面を追従させて、定着ムラのない良好な定着を行なえるようにするものである。
【0030】
定着ベルトアセンブリ26は、主として、無端の定着ベルト60と、定着ベルト60内に配置された後述する各種の構成部材とからなっている。定着ベルト60は、第1の実施形態において定着用ベルトに相当するものである。
【0031】
定着ベルト60は、加熱ローラ25に圧接され、加熱ローラ25の回転に連動し、回動するものである。定着ベルト60は、定着圧を付与するための剛性と、加熱ローラ25表面の高温に対する耐熱性とを要するため、その材料は、ニッケル、ステンレス等の金属又は耐熱性樹脂であるポリイミド(以下、PIと記載する)をベースとし、柔軟性を得るため薄く形成されている、例えば、材料が金属の場合には、定着ベルト60の厚みは30〜50μm程度であり、PIの場合には、定着ベルト60の厚みは50〜100μm程度である。
【0032】
また、両面印刷時において記録媒体の定着後のトナー面が定着ベルト60に圧接されたときの記録媒体との分離性を高めるため、加熱ローラ25と同様に、定着ベルト60の表面(加熱ローラ25側)に、PFA等の離型性の高い樹脂のチューブが被せられたり、PFA等の離型性の高い樹脂がコーティングされていたりする。
【0033】
定着ベルト60の内部には、加圧ローラ61、加圧パッド62、ガイドパッド63、ガイドパッドスプリング64、加圧パッドスプリング65、スプリングホルダ66、ホルダ受け部67等を有する。また、定着ベルト60の内部の構成要素を支持するため、図3に示すように、定着装置40の長手方向の両端にはそれぞれ、支持用のフランジ68R、68Lが設けられている。
【0034】
ベルト内面ローラとしての加圧ローラ61は、定着ベルト60に内側に配置され、加圧パッド62と同様に、定着ベルト60を加熱ローラ25の方向に圧接するものである。加圧ローラ61は、加圧パッド62より記録媒体の搬送方向における下流側に配置されている。加圧ローラ61の両端の回転軸部分はそれぞれ、図3に示すように、ベアリング69R、69Lに遊挿され、加圧ローラ61は、定着ベルト60の走行により回転し得るものである。
【0035】
加圧ローラ61における圧接部分は円筒体になっており、円筒体部分は、内側から、金属層61a及び断熱層61bを有する。金属層61aは、圧接時に撓まない程度の強度を要する、鉄等の高い剛性を持つ材質でなっている。断熱層61bは、定着ベルト60から逃げ出す熱量を抑えると共に弾性変形によって記録媒体の表面段差を吸収するためのものであり、断熱・弾性部材であるシリコンゴムやシリコンスポンジ等でなっている。加圧ローラ61の一例として、金属層61aが鉄でなり、断熱層61bがシリコンスポンジでなっているものを挙げることができる。
【0036】
加圧ローラ61には、図示しないサーミスタ(図1の符号42参照)が接触しており、加圧ローラ61の表面温度を検出している。
【0037】
加圧ローラ61は、加圧パッド62と共に、加熱ローラ25と対向する部分に接触ニップ幅Nを形成し、加熱ローラ25の断熱層61bを径方向内側に弾性変形させることで、記録媒体の搬送方向と、接触ニップ幅Nの出口における加熱ローラ25の接線方向との角度を広げて離型性能を高めている。
【0038】
加圧パッド62は、定着ベルト60に内側に配置され、上述したように、加圧ローラ61と同様に、定着ベルト60を加熱ローラ25の方向に圧接するものである。加圧パッド62は、加圧ローラ61より記録媒体の搬送方向における上流側に配置されている。
【0039】
加圧パッド62は、図5に示すように、加圧パッド基材70とニップ幅形成用弾性体71を有する。なお、ニップ幅形成用弾性体71は、ベルト当接体に相当するものである。
【0040】
加圧パッド基材70は、底板部70aと、底板部70aの幅方向の一方の端部近傍に垂設された第1の立設板部70bとを有する。第1の立設板部70bの上端に、ニップ幅形成用弾性体71が接着されている。第1の立設板部70bの上端の幅は、加圧パッド62が圧接している部分と、加圧ローラ61が圧接している部分との隙間を小さくするように、第1の立設板部70bの中央部の幅より大きくなっており、大きくなった幅の部分は概ね加圧ローラ61側に寄っている。
【0041】
ニップ幅形成用弾性体71は、その上面(加熱ローラ25側の面)が、加熱ローラ25の外周面と同様な曲面形状を有するベルト押圧面71aとなっている。ニップ幅形成用弾性体71は、その幅が第1の立設板部70aの上端の幅より広く、広くなっている部分は、記録媒体の導入側に寄った自由端部71bとなっており、その残部が第1の立設板部70bの上端に接着されている固定部71cとなっている。自由端部71bにおける下面は、ガイドパッド62からの付勢力を受けるガイドパッド対向面71dとなっている。自由端部71bは、その先端側の厚みが薄くなっており、記録媒体の挿入時の抵抗を小さくするようになされている。
【0042】
加圧パッド基材70は、底板部70aの幅方向の他方の端部近傍に垂設された第2の立設板部70cを有し、第2の立設板部70cの高さは、第1の立設板部70bより低くなっている。第1の立設板部70b、底板部70a及び第2の立設板部70cで形成される溝部70dが、ガイドパッド62の脚部62cを受け入れるようになっている。
【0043】
ガイドパッド63の脚部63cの下端には、第1の立設板部70b及び第2の立設板部70cに向かう凸部63dが設けられ、一方、第1の立設板部70b及び第2の立設板部70cの所定の高さの位置には、他方の立設板部に向かう凸部70eが設けられている。これら凸部63d及び凸部70eが、ガイドパッド62の押圧方向の位置を規制するストッパ構造になっている。このストッパ構造は、ジャム媒体取り出しのために加熱ローラ25と定着ベルト60の圧接を図示しない機構でリリースした場合、ガイドパッド62が自由端部71bを押し過ぎて変形させることを防止するために設けられている。
【0044】
加圧パッド基材70には、定着ベルト60への付勢による塑性変形を防ぐため、アルミニウム、鉄等の金属が用いられ、定着ベルト60と圧接するニップ幅形成用弾性体71には、シリコンゴム等が用いられている。例えば、加圧パッド基材70は、材料としてアルミニウムを使用し、押出し加工によって幅方向に均一な断面形状を有するように形成する。例えば、ニップ幅形成用弾性体71は、材料としてシリコンゴムを使用して成形し、その表面に、摺動性の高いポリテトラフルオロエチレン(登録商標:テフロン)をコーティングして、定着ベルト60内面との摩擦力を低減したものを適用することができる。
【0045】
加圧パッド62の自由端部71bの下方には、断面形状が傘部と脚部とでなるきのこ状のガイドパッド63が配置されている。ガイドパッド63は、定着ベルト60をニップ幅に案内すると共に、ニップ幅形成用弾性体71の自由端部71bを定着ベルト60に押圧するものである。
【0046】
ガイドパッド63の脚部63cには、ガイドパッド付勢手段としてのガイドパッドスプリング64が挿入される孔(若しくは切り込み)が長手方向に所定間隔で設けられており、この孔にそれぞれ、ガイドパッドスプリング64が挿入されるようになされている。ガイドスプリンク64は、例えば、コイルスプリングでなっている。ガイドスプリンク64の数は、所望する付勢力を発揮できる数であれば良く、いずれかの数に限定されるものではないが、図3は、ガイドスプリンク64が9個の例を示している。ガイドスプリンク64が挿入されたガイドパッド63の脚部63cが、加圧パッド基材70の溝部70dの長手方向の一方の端部から挿入され、加圧パッド基材70の溝部70d内に配置されるようになされている。ガイドパッド63の脚部63cには、上述したように、ストッパ機能を発揮する凸部63dが設けられている。
【0047】
ガイドパッド63の傘部は、定着ベルト60の走行を案内する案内部分63aと、ニップ幅形成用弾性体71の自由端部71bをその下面から押圧する押圧部分63bと、加圧パッド基材70の第1の立設板部70bと接して当該ガイドパッド63の位置を安定させる位置規制部分63eとを有する。
【0048】
また、ガイドパッド63は、長手方向に見た中央部が両端よりも加熱ローラ25方向に強く付勢できるようにクラウン形状を有していることは好ましい態様である。加圧パッド62も、長手方向に見た中央部が両端よりも加熱ローラ25方向に強く付勢できるようにクラウン形状を有していることは好ましい態様である。加圧パッド62のクラウン形状は、ニップ幅形成用弾性体71の長手方向の厚みの変化で実現しても良く、第1の立設板部70bの長手方向の高さの変化で実現しても良い。
【0049】
ガイドパッド63は、ガイドパッドスプリング64の付勢力によって、ニップ幅形成用弾性体71の自由端部71bの下面に圧接することで、自由端部71bの上面を定着ベルト60内側から加熱ローラ25に圧接させている。
【0050】
なお、ガイドパッドスプリング64及びガイドパッド63が、第1の押圧部材に相当するものである。
【0051】
ガイドパッド63の材質は、耐熱性や強度が高い材質であれば良く、合成樹脂(例えば、ポリフェニレンスルファイド(PPS))や、アルミニウム、鉄等の金属が使用可能である。材質の一例としては、PPSを挙げることができる。
【0052】
ガイドパッド63が装着された加圧パッド62は、その全体が、加圧パッド基材70の底板部70a下面に接する、コイルスプリングでなる加圧パッドスプリング65によって付勢されるようになされている。加圧パッドスプリング65の数は、加圧パッド62を均一に付勢できる数があれば良く、限定されない。図3は、加圧パッドスプリング65が5個の例を示している。
【0053】
複数の加圧パッドスプリング65は、断面が直方体の棒状のスプリングホルダ66に等間隔に設けられた貫通孔66aに挿通される。貫通孔66aの長さ、言い換えると、スプリングホルダ66の厚みは、加圧パッドスプリング65の長さより短くなされ、加圧パッドスプリング65が、貫通孔66aに挿通されても付勢力を発揮できるようになされている。加圧パッドスプリング65が挿通されたスプリングホルダ66は、ホルダ受け部67の凹部67aに装着される。ホルダ受け部67の両端はそれぞれ、フランジ68R、68Lと係合し得るようになされている。
【0054】
なお、加圧パッドスプリング65及び加圧パッド基材70が、第2の押圧部材に相当するものである。
【0055】
加圧パッド62は、ガイドパッド63のガイドパッドスプリング64と加圧パッドスプリング65によって、媒体搬送方向に対して上流側と下流側で加熱ローラ25に対して、異なる圧接圧力を与えることが可能である。
【0056】
図6(A)は、定着装置40のニップ幅Nにおける圧力分布を示すグラフである。図6(B)は、比較例としての定着装置のニップ幅における圧力分布を示すグラフである。比較例の定着装置は、加圧パッド62とともにガイドパッド63で加圧する形態のものではなく、加圧パッド62により加圧する形態のものである。
【0057】
第1の実施形態の場合、ニップ幅Nは、3つにニップ幅領域N1〜N3に分けることができる。第1のニップ幅領域N1は、ガイドパッド63によって、定着ベルト60を介して加熱ローラ25を圧接している加圧パッド62の自由端部71bによるニップ幅領域である。第2のニップ幅領域N2は、定着ベルト60を介して加熱ローラ25を圧接している加圧パッド62の自由端部71b以外の部分(固定部71c)によるニップ幅領域である。第3のニップ幅領域N3は、定着ベルト60を介して加熱ローラ25を加圧ローラ61が圧接しているニップ幅領域である。各ニップ幅領域N1〜N3における最大圧接圧力(最大圧力)をそれぞれ、S1〜S3とする。
【0058】
定着ベルト60と加圧パッド61によって押圧される部分のニップ幅領域N1、N2では、主に、加熱ローラ25の表面温度の熱によりトナーTが溶解する。定着ベルト60と加圧ローラ61により押圧されるニップ幅領域N3では溶解したトナーを記録媒体に浸透させる。ここで、溶解したトナーを記録媒体の内部に一段と浸透させるように、上流側のニップ幅領域N1から、下流側のニップ幅領域N2、N3に向けて、押圧される部分の圧力が高くなる圧力分布(後述するS1≦S2≦S3)の関係を適用している。
【0059】
比較例としての定着装置は、上述した3つのニップ幅領域N1〜N3のうち、概ね2つのニップ幅領域N2及びN3でニップ幅が構成されている。ニップ幅領域N2を構成するニップ幅形成用弾性体は、記録媒体の導入側(上流側)が、加熱ローラ25の曲面になじむように厚くなっているが、導入時の摩擦抵抗を抑えるように奥側は薄くなっている。そのため、ニップ幅領域N2中に圧接圧力が落ち込む領域(例えば、0.5Kgf/cm以下になる領域)が存在し、比較例としての定着装置におけるニップ幅領域N2の圧力分布は2山を有する圧力分布となっている。その結果、ニップ幅領域N2の前半側で定着されたトナーの定着が不十分になり、ニップ幅領域N2の後半側でトナーが記録媒体から離れてしまい、定着画像上に部分的にトナーが付着していない部分が発生してしまう、画ズレという現象が発生する恐れがある。
【0060】
第1の実施形態の場合、加圧パッド62の自由端部71bにより記録媒体の導入のし易さが確保されており、自由端部71bと固定部71cとが一体となってニップ幅形成用弾性体71が形成されていて圧力が落ち込む領域がなく、しかも、ニップ幅領域N2に加えてニップ幅領域N1をも形成して広いニップ幅を稼ぐことができる。
【0061】
また、加圧パッド62の自由端部71bは、ガイドパッド63によって、加熱ローラ25に対して、フレキシブルに圧接できるため、加熱ローラ25の熱膨張や外径バラツキにも関係なく一様なニップ面を確保することができる。
【0062】
さらに、ニップ幅Nに搬送される記録媒体の厚い場合、記録媒体が第1のニップ幅領域N1に突入する際に、記録媒体の搬送速度が一瞬止まることで、その際に、現像器2K〜2Cの感光体ドラム6K〜6Cと接触している印刷面に横スジが発生する定着ショックを発生させてしまう。このような不都合を回避すべく、この第1の実施形態では、第1及び第2のニップ幅領域N1及びN2における最大圧力S1及びS2の関係を、S1≦S2の関係にして、記録媒体がスムーズに定着装置40内に搬送されるようにしている。
【0063】
また、第3のニップ幅領域N3における最大圧力S3は、記録媒体が加熱ローラ25から分離してその接線方向に排出され易くするために、加熱ローラ25の弾性層を変形させる必要がある圧力である。そのため、第3のニップ幅領域N3における最大圧力S3が、3つの最大圧力S1〜S3の中で最も大きいようにしている。すなわち、S1≦S2≦S3の関係を満足するように、第3のニップ幅領域N3における最大圧力S3が選定される。
【0064】
定着装置40として、最大圧力S1を0.5Kgf/cm、最大圧力S2を0.75Kgf/cm、最大圧力S3を2.5Kgf/cmに選定すると共に、ニップ幅領域N1の幅を3mm、ニップ幅領域N2の幅を4mm、ニップ幅領域N3の幅を6mmに選定した一例を挙げることができる。
【0065】
(A−2)第1の実施形態の動作
次に、第1の実施形態に係るカラー画像形成装置1及び定着装置40の動作を説明する。
【0066】
まず、カラー画像形成装置1の図示しない電源がオンされた場合の動作を説明する。
【0067】
電源がオンされると、カラー画像形成装置1の加熱ローラ25内部のヒータ59が点灯され、予め設定された温度に、非接触サーミスタ41又はサーミスタ42の検出温度に基づいて温度制御されて、定着可能状態になり、印刷開始指令が出される。このとき、図示しない機構制御部は、図示しないベルトモータ及びドラムモータを起動させ、ベルト駆動ローラ13を駆動させて搬送ベルト12を走行させると共に、各現像器2K〜2Yを駆動させる。このとき、各現像器2K〜2Y内のトナーは、スポンジローラ9K〜9Yと現像ローラ7K〜7Cに強く擦られて摩擦帯電する。
【0068】
その後、図示しない機構制御部は、図示しないホッピングモータを起動し、給紙ローラ16を回転させ、記録媒体収容カセット19の記録媒体をガイド20へ送り込む。記録媒体の先端が、レジストローラ17とピンチローラ18の間に到達すると、ホッピングモータは停止する。
【0069】
次に、図示しない機構制御部は、レジストローラ17及び加熱ローラ25をそれぞれ回転させ、これと同時に、図示しない吸着帯電電源をオンにして吸着ローラ15に電圧を供給させる。記録媒体は、レジストローラ17によって搬送され、その先端が吸着ローラ15と搬送ベルト12との間に達する。
【0070】
この時点で、記録媒体の先端は、吸着ローラ15と従動ローラ14間の静電力により搬送ベルト12に吸着される。さらに、レジストローラ17が回転すると、記録媒体は搬送ベルト12に吸引されながら矢印e方向に搬送される。
【0071】
各現像器2K〜2Yの帯電ローラ5K〜5C及び現像ローラ7K〜7Cに電圧を供給するために、図示しない機構制御部は、帯電バイアス電源、現像バイアス電源をオンする。以上により、各現像器2K〜2Yの感光ドラム6K〜6C表面は均一に帯電され、各現像器2K〜2Yの現像ローラ7K〜7Cは所定の高電圧に帯電される。これにより、帯電しているトナーは、現像ローラ7K〜7Cの表面に、現像ブレード8K〜8Cによって均一な厚さで付着する。
【0072】
次に、図示しない機構制御部は、記録媒体が所定の位置に到達したことを通知し、図示しない画像処理部は、ブラックの画像データに基づいて、LEDの点灯のオン・オフ信号をLEDヘッド3Kへ与える。LEDヘッド3Kは、与えられた画像データ信号に対応してLEDを点灯させ、帯電した感光ドラム6Kの表面に画像データに応じた1ライン分の静電潜像を形成する。LEDヘッド3Kに順次与えられた信号により、画像データは、1ページ分、次々に感光ドラム6Kの表面に静電潜像化される。静電潜像が形成された感光ドラム6Kの表面には、帯電した現像ローラ7Kからブラックトナーが供給されて付着される。感光ドラム6Kの回転により、静電潜像は、ブラックのトナーにより現像されてトナー画像が形成される。
【0073】
記録媒体の先端が、感光ドラム6Kと転写ローラ4Kの間に到達すると、図示しない機構制御部は、図示しない高圧制御部に指令を出し、ブラックの転写用電源をオンする。これにより、感光ドラム6Kの表面のトナー画像は、転写ローラ4Kにより電気的に記録媒体上に転写される。感光ドラム6Kの回転により、トナー画像は次々に記録媒体上に転写され、1ページ分のブラック画像が記録媒体に転写される。以上により、画像形成部2Kによる記録媒体へのブラックのトナー画像の転写が終了する。
【0074】
搬送ベルト12は引続き移動しており、記録媒体は、画像形成部2Kから画像形成部2Yへ移り、画像形成部2Yによるイエローのトナー画像の転写が行われる。イエローの画像形成動作はブラックの画像形成動作と同様であり、その詳細説明は省略する。以下、マゼンタ、シアンと連続して同様な動作により、トナー画像が転写される。
【0075】
以上のようにして、各色成分のトナー画像が記録媒体上に重ねて転写される。その後、記録媒体は、搬送ベルト12により定着装置40へ案内される。
【0076】
定着装置40においては、ヒータ51を発熱させて加熱ローラ25を加熱すると共に、加熱ローラ25を図示しない駆動モータにより回転させて、定着ベルトアセンブリ26の定着ベルト60及び加圧ローラ61を従動回転させる。
【0077】
加熱ローラ25の表面温度は非接触サーミスタ41より検出され、図示しない温度コントローラにより所定の温度に保たれている。
【0078】
なお、加熱ローラ25は、ヒータ51によって加熱されることにより、熱膨張で外径が増加する。また、加熱ローラ25の表面温度は、定着させる記録媒体P(図2参照)の厚さや記録媒体Pの連続数によって変化し、加熱ローラ25の外径も一定ではなく変化している。
【0079】
このような場合でも、加熱ローラ25に定着ベルト60を介して圧接している加圧パッド62は、自由端部71bが、ガイドパッドスプリング64によって付勢されたガイドパッド63によって定着ベルト60の内面から加熱ローラ25へ圧接されているため、加熱ローラ25の外径変化に追従でき、変化範囲が狭く変化が緩やかな圧力(図6参照)の広いニップ幅N(N1+N2+N3)を形成することができる。
【0080】
搬送ベルト12から送られてきた記録媒体Pは、この広いニップ幅Nを通過することで、トナーTの画像が記録媒体Pの表面上に定着され、排出ガイド29を通ってカラー画像形成装置1の筐体外部に排出される。
【0081】
(A−3)第1の実施形態の効果
第1の実施形態によれば、1本の加圧パッドにて加熱ローラとの接触域が広く、変化範囲が狭く変化が緩やかな圧力特性を有するニップ幅を容易に実現でき、高速対応可能な定着装置及びカラー画像形成装置を提供することができる。
【0082】
高速対応を可能としても、広いニップ幅を確保できるので、圧力の上限を押さえることができ、加熱ローラの駆動トルクに悪影響を及ぼすことがなく、排出される記録媒体にしわが生じる恐れを押さえることができ、また、圧力の上限を押さえることができるため、加熱ローラや加圧ローラなどの磨耗を抑えて耐久性を高めることができる。
【0083】
また、上述した効果を発揮させるために定着装置の構成部品を増やす必要はなく、コストの上昇を招くことはない。定着ベルト内部の1本の加圧パッドにて広いニップ幅を容易に確保できるので、小形の定着装置を実現することができる。
【0084】
さらに、加圧パッドの圧力特性として、記録媒体の搬送方向の上流側から下流側まで低圧領域を作ることない特性を形成することができるため、定着性を効率良く確保できる果がある。また、加圧パッドの圧力特性として、記録媒体の搬送方向の上流側から下流側に向けて、徐々に強める特性が可能になることでも定着性を効率良く確保することができる。
【0085】
ところで、広いニップ幅を、加圧パッド基材の上端の幅を広げ、そこにほぼ同じ幅の弾性体を設けて確保することも考えられる。しかし、このような方法では、加圧パッドの接触面と、加圧パッドが圧接する加熱ローラ表面との隙間がどのニップ幅位置でもなくなり、隙間に余裕がない分だけ均一な接触面を広い範囲で実現させることは困難であり、また、均一な接触面を広い範囲で実現させようとすると、加圧パッド基材の高い寸法精度が要求され、その分、コストが増加してしまう。
【0086】
第1の実施形態によれば、加圧パッド基材の上端に接着するニップ幅形成用弾性体に自由端部を設けて、広いニップ幅を確保するようにしたので、このような不都合を回避することができる。
【0087】
(B)第2の実施形態
次に、本発明による定着装置及び画像形成装置の第2の実施形態を、図面を参照しながら説明する。第2の実施形態は、定着装置が第1の実施形態と異なっている。
【0088】
(B−1)第2の実施形態の構成
図7は、第2の実施形態に係る定着装置の構成を示す断面図であり、第1の実施形態に係る図2、図3との同一、対応部分には同一、対応符号を付して示している。
【0089】
第2の実施形態に係る定着装置40Aのカラー画像形成装置における配置は、第1の実施形態と同様である(図1参照)。
【0090】
第2の実施形態に係る定着装置40Aは、加熱ベルト60Aを有する加熱ベルトアセンブリ26Aと、駆動ローラ25Aとを有する。すなわち、第2の実施形態は、ヒータを備える側の部材が第1の実施形態と異なっている。なお、加熱ベルト60Aは、第2の実施形態において定着用ベルトに相当するものである。
【0091】
加熱ベルトアセンブリ26Aは、主として、無端の加熱ベルト60Aと、加熱ベルト60Aの内部や外部に配置された後述する各種の構成部材とからなっている。加熱ベルト60Aは、駆動ローラ25Aに圧接され、駆動ローラ25Aに従動回転するものである。駆動ローラ25Aは、第2の実施形態において定着用回転ローラに相当するものである。
【0092】
加熱ベルト60Aの内部には、ベルト内面ローラとしての上側ローラ61A、加圧パッド62、ガイドパッド63、ガイドパッドスプリング64、加圧パッドスプリング65、スプリングホルダ66、ホルダ受け部67に加え、ヒータ80、ヒータホルダ81、ベルトガイド82、ベルト内基部83を有する。また、加熱ベルト60Aの外部には、プレッシャローラ84及びホルダローラ85を有する。ここで、上側ローラ61A(第1の実施形態の加圧ローラ61に対応する)、加圧パッド62、ガイドパッド63、ガイドパッドスプリング64、加圧パッドスプリング65、スプリングホルダ66及びホルダ受け部67は、第1の実施形態のものと同様である。但し、ホルダ受け部67は、長手方向の両端に設けられているフランジ(図3のフランジ68R、68L参照)に係合しているだけでなく、ベルト内基部83にも係合して位置が安定するようになされている。
【0093】
加熱ベルト60Aは、内側から付勢された上側ローラ61A及び加圧パッド62によって、駆動ローラ25Aと圧接している。駆動ローラ25Aは、中心部に圧接時に撓まない程度の強度を要するため、中心部に鉄等の高い剛性を持つ金属シャフト25Aaが設けられ、その外側には、加熱ベルト60Aから逃げ出す熱量を抑えるため、断熱部材であるシリコンゴムやシリコンスポンジ等の弾性層25Abが形成されている。また、シリコンゴムやシリコンスポンジ等の弾性層25Abの表面には、PFA等の離型性の高い樹脂のチューブが被せられたり、PFA等の離型性の高い樹脂がコーティングされたりして形成された離型層25Acが設けられている。一例として、駆動ローラ25Aの中心部にメッキされた鉄製シャフト(25Aa)を用い、弾性層25Abにシリコンゴムを用い、離型層25AcにPFAチューブを被せた駆動ローラ25Aを挙げることができる。
【0094】
加熱ベルト60Aは、ニッケル、ステンレス等の金属又は耐熱性のPIをベースとしており、柔軟性を得るために薄く形成されている。例えば、金属の場合は厚さは30〜50μm程度であり、PIの場合は厚さは50〜100μm程度である。第2の実施形態の定着装置40Aの具体例としては、PIを適用した場合を挙げることができる。
【0095】
加熱ベルト60Aのベースの表面にはシリコンゴム等の弾性層が形成され、弾性層の外には離型層が設けられ、離型層は、PFA等の離型性の高い樹脂のチューブが被せられたり、PFA等の離型性の高い樹脂がコーティングされたりして形成される。例えば、PFAチューブを適用する場合を挙げることができる。
【0096】
加熱ベルト60Aの表面には図示しない非接触サーミスタが配置されており、図示しない温度コントローラによって、加熱ベルト60Aの表面温度を所定温度にコントロールするようになされている。
【0097】
上側ローラ61A(第1の実施形態の加圧ローラ61に対応する)は、第2の実施形態においても、加熱ベルト60Aに内側に配置され、加圧パッド62と同様に、加熱ベルト60Aを駆動ローラ25Aの方向に圧接する。上側ローラ61Aは、第1の実施形態の加圧ローラ61と同様なものである。上側ローラ61Aの表面には、図示しないサーミスタが接触し、サーミスタの検出温度も温度コントロールに利用される。
【0098】
第2の実施形態の場合、上述したように、ヒータ80は、加熱ベルトアセンブリ26Aに設けられる。ヒータ80は、少なくとも一面が発熱する板状の面状ヒータであり、図示しないコネクタをつないで電流を流すことにより発熱する。ヒータ80は、ヒータホルダ81上に配置され、加熱ベルト60Aの内面と接触して熱を加熱ベルト60Aに伝達するものである。ヒータホルダ81は、ヒータ80と共に、加熱ベルト60Aを加熱するべく、加熱ベルト60Aと接する表面積が大きなものである。ヒータホルダ81の材質として、ヒータ80による熱に耐えるために鉄又はアルミニウムを適用できる。一例としては、ヒータホルダ81をアルミニウムで形成したものを挙げることができる
プレッシャローラ79は、加熱ベルト50Aの外面からヒータ80に対して一定の圧力を付与して、加熱ベルト50Aをヒータ80に圧接させるものである。これにより、加熱ベルト50Aの加熱効率を高めることができる。プレッシャローラ79は、圧接時に撓まない程度の強度を要するため、例えば、中心部に鉄等の高い剛性を持つ金属シャフトがあって、その外側に加熱ベルト60Aから逃げ出す熱量を抑えるため、断熱部材であるシリコンゴムやシリコンスポンジ等の断熱層が形成されているものである。
【0099】
ホルダローラ80は、加熱ベルト60Aの外面を所定圧力で圧接し、ヒータホルダ81と加熱ベルト60Aとが適切に圧接できるように、加熱ベルト60Aに張力を付与するものである。
【0100】
1又は複数(図7は2個の場合を示している)のベルトガイド82は、加熱ベルト60Aの回転を円滑にするようにガイドするものであり、かつ、空回りなどを抑えるように、図示しない付勢部材によって加熱ベルト60Aを内側から押圧して張力をかけている。ベルトガイド82は、耐熱性、耐磨耗性を必要とするため、例えば、PPS等の樹脂で形成されている。
【0101】
駆動ローラ25Aは、図示しないモータにより回転駆動され、記録媒体をニップ幅上で搬送するものである。記録媒体がニップ幅を通過することにより、ヒータ80によって加熱された熱がニップ幅で記録媒体上のトナーに与えられ、トナーが記録媒体に定着される。
【0102】
上側ローラ61A及び加圧パッド62は、対向するローラが、第1の実施形態の加熱ローラ25からヒータを備えない駆動ローラ25Aに変更になっているが、第1の実施形態と同様なものである。そのため、第1の実施形態で説明したように、ニップ幅Nを、3つのニップ幅領域N1〜N3に分割し、各ニップ幅領域N1〜N3での最大圧接圧力(最大圧力)をS1〜S3としたときに、S1≦S2≦S3の関係が成立するものとなっている。また、ニップ幅領域N1及びN2が連続し、ニップ幅領域N1及びN2の間には低圧力部は生じない。
【0103】
(B−2)第2の実施形態の動作
次に、第2の実施形態に係る定着装置40Aの動作を、定着装置40Aを有する図示しないカラー画像形成装置(図1参照)の動作と共に説明する。以下では、第1の実施形態との相違点を中心に動作を説明する。
【0104】
図示しないカラー画像形成装置の電源がオンされると、定着装置40Aは、まず、ヒータ80を発熱させて加熱ベルト60Aを加熱すると同時に、駆動ローラ25Aを図示しないモータにより回転させて、加熱ベルト60Aを従動回転させる。
【0105】
ヒータ80の温度が上昇し、ヒータ80の熱がヒータホルダ81に伝わる。ヒータホルダ81は、例えば、アルミニウム製で熱伝導率が高く、短時間でヒータ80とほぼ同じ温度まで表面温度が上昇する。加熱ベルト60Aは、ヒータ80とヒータホルダ81の両方によって加熱される。ここで、加熱ベルト60Aは、ヒータ80より広い面積にて加熱されるので、加熱ベルト60Aを短時間で定着可能な温度まで上昇させることができる。
【0106】
加熱ベルト60Aの表面温度は、図示しない非接触サーミスタにより検出され、図示しない温度コントローラにより、所定の温度に制御される。
【0107】
加熱ベルト60Aの表面温度が所定の温度に到達した時点で、記録媒体Pをニップ幅Nに移動させ、ニップ幅NにてトナーTを記録媒体Pに定着させる。
【0108】
ニップ幅N内において、上側ローラ61Aの弾性層は、弾性変形することにより記録媒体Pの表面の凹凸による段差や、カラー画像のようにトナーTが多層のために生じる段差を吸収し、上側ローラ61Aの表面を段差に追従させるので、定着ムラのない良好な定着を実行させることができる。
【0109】
加熱ベルト60Aと加圧パッド62によって押圧されるニップ域では、加圧パッド62の弾性体71の自由端部71bが、ガイドパッド63からの付勢によって、駆動ローラ25Aの曲率に沿って上流側のニップ幅領域N1を形成し、下流側は、加圧パッド基材70の立設板部70b上の弾性体部分(固定部)71cによってニップ幅領域N2を形成する。
【0110】
加熱ベルト60Aと上側ローラ61Aによって押圧される部分のニップ幅領域N1、N2では、主に、加熱ベルト60Aの表面温度の熱によりトナーTが溶解する。加熱ベルト60Aと上側ローラ61Aにより押圧されるニップ幅領域N3では溶解したトナーTを記録媒体Pに浸透させる。ここで、溶解したトナーTを記録媒体Pの内部に一段と浸透させるように、上流側のニップ幅領域N1から、下流側のニップ幅領域N2、N3に向けて、押圧される部分の圧力が高くなる圧力分布を適用している。
【0111】
また、加圧パッド62の弾性体71の自由端部71bは、その弾性により、駆動ローラ25Aの曲率に追従しているため、弾性体形状を厳しく管理することなく、容易に所望するニップ幅領域N1を形成することができる。
【0112】
(B−3)第2の実施形態の効果
第2の実施形態によれば、ベルト(加熱ベルト)側がトナー画像面にある上ベルト定着方式の定着装置においても、第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。すなわち、1本の加圧パッドにて、高速対応可能な定着装置及びカラー画像形成装置を提供することができる。
【0113】
(C)他の実施形態
上記各実施形態の説明においても、種々変形実施形態に言及したが、さらに、以下に例示するような変形実施形態を挙げることができる。
【0114】
上記各実施形態においては、加圧パッド62のニップ幅形成用弾性体71の自由端部71bは、加圧パッド62の溝部70dに配置されているガイドパッドスプリング64の付勢力で付勢されるガイドパッド63で押圧されるものであったが、図8に示すように、ガイドパッドスプリング64は、加圧パッド62や加圧パッドスプリング65の構成から独立して配置され、ガイドパッドスプリング64の付勢力を受けて加圧パッド62のニップ幅形成用弾性体71の自由端部71bを押圧するようにしても良く、このようにしても上記各実施形態と同様な効果を奏することができる。
【0115】
また、上記各実施形態においては、加圧パッド基材70に上端に設けられるニップ幅形成用弾性体71は、記録媒体の上流側にのみ自由端部を有するものを示したが、図9に示すように、ニップ幅形成用弾性体71は、記録媒体の下流側にも自由端部を有し、弾性体71にも加圧ローラ61や上側ローラ61Aにも接していないニップ幅内の領域を極力減少させるようにしても良い。
【0116】
さらに、上記各実施形態においては、ニップ幅形成用弾性体71が自由端部71bを備え、自由端部71bをガイドパッド63が押圧するものを示したが、自由端部71bであった部分をガイドパッド63に接着するなどし、自由端部71bでないようにしても良い。
【0117】
さらにまた、上記各実施形態においては、定着ベルト60又は加熱ベルト60Aが従動回転するものを示したが、これらベルト側が駆動側であっても良い。
【0118】
上記各実施形態においては、画像形成装置がカラー画像形成装置であるものを示したが、本発明の技術思想は、白黒画像形成装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0119】
1…カラー画像形成装置、25…加熱ローラ、25A…駆動ローラ、26…定着ベルトアセンブリ、26A…加熱ベルトアセンブリ、60…定着ベルト、60A…加熱ベルト、61…ベルト内面ローラとしての加圧ローラ、61A…ベルト内面ローラとしての上側ローラ、62…加圧パッド、63…ガイドパッド、64…ガイドパッドスプリング、65…加圧パッドスプリング、70…加圧パッド基材、70a…底板部、70b…第1の立設板部、70c…第2の立設板部、70d…溝部、71…ニップ幅形成用弾性体、71a…ベルト押圧面、71b…自由端部、71c…固定部、71d…ガイドパッド対向面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着用回転ローラと、前記定着用回転ローラを外面で圧接しながら前記定着用回転ローラと共に回転移動する定着用ベルトと、前記定着用ベルトの内面に当接し外部からの押圧力を受けて前記定着用ベルトを内面から圧接するベルト当接体とを有し、記録媒体上の現像剤像を定着させる定着装置において、
前記ベルト当接体の、前記定着用ベルトの移動方向の上流側部分を押圧する第1の押圧部材と、
前記ベルト当接体の、前記定着用ベルトの移動方向の下流側部分を押圧する、前記第1の押圧部材とは異なる第2の押圧部材と
を有することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記ベルト当接体による圧接圧力は、前記第1の押圧部材によって押圧されている上流側部分の方より、前記第1の押圧部材によって押圧されている下流側部分の方が高いことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記ベルト当接体が圧接する前記定着用ベルトのニップ幅領域より、前記定着用ベルトの移動方向の下流で、前記定着用ベルトの内面を圧接するベルト内面ローラを備え、
前記ベルト当接体による圧接圧力は、前記ベルト内面ローラによる圧接圧力より低いことを特徴とする請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記ベルト当接体の、前記定着用ベルトの移動方向の下流側部分は、前記第2の押圧部材の構成要素に取り付けられ、前記ベルト当接体の、前記定着用ベルトの移動方向の上流側部分は自由端部になっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の定着装置。
【請求項5】
前記第1の押圧部材は、前記ベルト当接体の上流側部分を圧接する面と前記定着用ベルトの移動を案内する面とを有するガイドパッドと、前記ガイドパッドを付勢するガイドパッド付勢手段と、前記ガイドパッドの付勢方向の限界位置を規定するストッパ構造とを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の定着装置。
【請求項6】
前記ガイドパッドは、長手方向において、その中央部が高いクラウン形状を有していることを特徴とする請求項5に記載の定着装置。
【請求項7】
前記ベルト当接体は、長手方向において、その中央部が厚いクラウン形状を有していることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の定着装置。
【請求項8】
前記定着用回転ローラがヒータを備えていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の定着装置。
【請求項9】
前記定着用ベルトに直接接して前記定着用ベルトを加熱するヒータを備えていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の定着装置。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれかに記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−41183(P2013−41183A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179142(P2011−179142)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】