説明

定着装置及び画像形成装置

【課題】温度過昇防止器が不要に温度上昇することを低減する。
【解決手段】媒体へ熱を供給する無端ベルトと、前記無端ベルトを張架する熱拡散部材と、 前記熱拡散部材を加熱する面状発熱体と、前記面状発熱体に対抗して配置される温度過昇防止器と、前記面状発熱体と温度過昇防止器の間に配置された加圧補助部材とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体上に転写されたトナー像を熱と圧力により定着する定着装置、及びその定着装置を備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トナー像形成部にて形成した白黒またはカラーのトナー像を用紙等の媒体上に転写する画像形成装置として、例えば電子写真プリンタ、複写機、ファクシミリ等があり、このような画像形成装置には定着装置が備えられている。従来のこの種の定着装置は、走行可能な無端状の定着ベルトと、この定着ベルトを加熱する面状発熱体と、この面状発熱体と共に定着ベルトを張架した定着ローラと、この定着ローラに定着ベルトを介して相対するように設けられた加圧ローラと、この加圧ローラと定着ベルトとの接触部に形成されたニップ部を有する構成を備えており、トナー像が転写された媒体をニップ部に送って通過させ、その際面状発熱体の熱と定着ローラ及び加圧ローラによる圧力を加えることでトナー像を媒体に定着させるものとなっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−322888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の技術は、面状発熱体の温度過昇を防止するために、温度過昇防止器を使用する場合については考慮されていないものである。
本発明は、このような問題を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのため、本発明の定着装置は、媒体へ熱を供給する無端ベルトと、前記無端ベルトを張架する熱拡散部材と、前記熱拡散部材を加熱する面状発熱体と、前記面状発熱体に対抗して配置される温度過昇防止器と、前記面状発熱体と温度過昇防止器の間に配置された加圧補助部材とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
このようにした本発明は、面状発熱体と温度過昇防止器の間に加圧補助部材を介在させることで、温度過昇防止器が不要に温度上昇することを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施例の構成を示す側面図
【図2】第1の実施例が備えられる画像形成装置の概略側面図
【図3】第1の実施例の主要部材を示す斜視図
【図4】図3のA―A線断面図
【図5】温度過昇防止器の取り付け構造を示す斜視図
【図6】定着ローラと加圧ローラの構造を示す側面図
【図7】加圧部材の構造を示す側面図
【図8】定着ベルトの構造を示す部分側面図
【図9】熱拡散部材を示す斜視図
【図10】面状発熱体の分解斜視図
【図11】第1の実施例との比較のために示した参考定着装置の側面図
【図12】参考定着装置における温度履歴を示す図
【図13】温度過昇防止器の最高到達温度を示す図
【図14】温度過昇防止器の立ち上がり時間を示す図
【図15】本発明の第2の実施例を示す主要部材の側面図
【図16】第2の実施例における加圧補助部材の斜視図
【図17】図4における要部拡大図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明による定着装置及び画像形成装置の実施例を説明する。
【実施例1】
【0009】
図1は定着装置の第1の実施例の構成を示す側面図、図2は第1の実施例が備えられる画像形成装置の概略側面図である。まず、図2の構成について説明する。本実施例の画像形成装置は電子写真プリンタで、媒体としての用紙12を収納する用紙収納部40、該用紙収納部40から繰り出された用紙12を搬送する複数の搬送ローラ等による用紙搬送部41、露光のための記録光を発光する露光部としてのLEDヘッド42、LEDヘッド42の発光に応じてトナー像を形成するトナー像形成部43、トナー像形成部43で形成されたトナー像を用紙12上に転写する転写部44、用紙12上にトナー像を定着させる定着装置45を備えている。
【0010】
ここで、トナー像形成部43及び転写部44、定着装置45は、用紙収納部40から繰り出された用紙12の搬送方向において、トナー像形成部43及び転写部44が上流側、定着装置45が下流側に位置するように配置されている。また、トナー像形成部43と転写部44は、用紙12の搬送経路を挟んで上下に対抗するように設けられ、LEDヘッド42はトナー像形成部43の上方の位置に配置されている。
【0011】
この構成において、図示しない印刷制御部が上位装置等から印刷指示を受けると、あるいは装置の入力部から印刷の指示が入力されると、用紙収納部40から用紙12が繰り出され、用紙搬送部41によって画像形成のタイミングに合わせてトナー像形成部43へ搬送される。
【0012】
LEDヘッド42は印刷情報に応じてトナー像形成部43を露光し、潜像としての画像を形成する。トナー像形成部43に形成された画像は図示しない現像手段によりトナー像化され、そのトナー像が転写部44により用紙12上に転写される。
その後、用紙12は用紙搬送部41によって定着装置45へ搬送され、定着装置45で熱と圧力により用紙12上にトナー像が定着された後、用紙12が用紙搬送部41により排出口に搬送されてスタッカ上に排出される。
【0013】
次に図1に示した定着装置について説明する。定着装置45は、面状発熱体1、加圧補助部材2、熱拡散部材3、無端状の定着ベルト4、第1の加圧部材としての加圧部材5、第2の加圧部材としての定着ローラ6、用紙12の搬送も行う加圧ローラ7、第1の付勢手段としての弾性部材8、支持部材9、及び第2の付勢手段としての弾性部材10、支持部材17、温度検知手段18により構成されており、定着ベルト4の内側には、加圧ローラ7を除く各部材つまり面状発熱体1、加圧補助部材2、熱拡散部材3、加圧部材5、定着ローラ6、弾性部材8、支持部材9、弾性部材10が配置され、定着ベルト4は熱拡散部材3、加圧部材5、及び定着ローラ6に巻き掛けられていて走行可能に張架されている。
【0014】
面状発熱体1は定着ベルト4を加熱する手段であって、加圧補助部材2に取り付けられている。熱拡散部材3は面状発熱体1の熱を拡散させて定着ベルト4に熱伝達させる手段である。弾性部材8は面状発熱体1、加圧補助部材2、及び熱拡散部材3に荷重を付与し、定着ベルト4にテンションを与える手段で、例えばコイルスプリング等が用いられており、この弾性部材8は加圧補助部材2と支持部材9の間に配され、支持部材9は本体装置に対して相対的に固定されており、弾性部材8を介して加圧補助部材2、及び面状発熱体1を支持している。
【0015】
加圧ローラ7は熱拡散部材3と反対側の位置で定着ベルト4の外周面と接触するように設けられており、加圧部材5と定着ローラ6は互いに隣接対向するように配置されていて、この加圧部材5及び定着ローラ6は定着ベルト4を加圧ローラ7に押し付けるように配置されている。ここで弾性部材10は加圧部材5を加圧ローラ7へと押圧しており、本体装置に対して相対的に固定されている支持部材17によって保持されている。定着ベルト4と加圧ローラ7との接触部はニップ部であり、トナー11によるトナー像が転写された用紙12がニップ部に送り込まれるものとなっている。
【0016】
尚、本定着装置には定着ベルト4の内周面に当接する温度検知手段18が設けられるが、この温度検知手段18は定着ベルト4の外周面に当接するものでもよく、あるいは微小なギャップを介して設ける非接触のものであってもよい。
【0017】
図3は定着装置45の主要部材を示す斜視図、図4は図3のA―A線断面図であり、面状発熱体1、加圧補助部材2、熱拡散部材3、弾性部材8、支持部材9等の構成を示している。図3に示したように面状発熱体1、加圧補助部材2、熱拡散部材3、及び支持部材9は同等の所定の長さを有し、加圧補助部材2と支持部材9の間に弾性部材8が複数配置されている。熱拡散部材3の下面(内面)には2段の凹部が形成されており、その奥側(上側)の凹部に面状発熱体1が嵌合して熱拡散部材3に面接触し、手前側(下側)の凹部に加圧補助部材2が嵌合して、加圧補助部材2の縁部が熱拡散部材3に接触するようにしている。
【0018】
また、支持部材9上の中央部には取り付け部材13がコイルスプリングによる複数の弾性部材14を介して取り付けられており、取り付け部材13上には温度過昇防止器15が取り付けられていて、この温度過昇防止器15は弾性部材14の付勢力により加圧補助部材2の下面に当接している。
【0019】
加圧補助部材2はアルミニウム、銅等の熱伝導性が良く加工性に優れた金属、またはこれらを主成分とする合金、あるいは耐熱性及び剛性の高い鉄、鉄系の合金類、ステンレス等で厚さが均一な平板状に形成されている。この加圧補助部材2は、従来の定着装置には使用されていないものである。温度過昇防止器15は、温度を検知すると共に検知した温度が一定の温度を超えた場合、面状発熱体1へ電力を供給する電源を切断するサーモスタットであり、本実施例においては動作温度の上限値は270℃となっている。
【0020】
図17は図4における要部拡大図で、面状発熱体1と加圧補助部材2と熱拡散部材3との関係を詳細に示している。熱拡散部材3には、面状発熱体1の位置を規制するための凹部が形成されている。凹部には面状発熱体1の定着ベルト4の移動方向に対する位置を規制する規制部3cが形成される。また、弾性部材8が面状発熱体1を付勢する方向に対する位置を規制し、面状発熱体1と熱拡散部材3とを当接させるための当接部3aが形成される。更に凹部には、加圧補助部材2から熱拡散部材3へと熱を伝達するための熱伝達部3bが形成されている。更に凹部には、加圧補助部材2の定着ベルト4の移動方向に対する位置を規制する規制部3dが形成される。
【0021】
ここで、当接部3aと熱伝達部3bとの弾性部材8が面状発熱体1を付勢する方向における距離をLとし、面状発熱体1の厚さをdとしたとき、L<dの関係となるように凹部が形成されている。このような関係にすることで、面状発熱体1を弾性部材8の付勢力によって加圧補助部材2を介して熱拡散部材3の当接部3aと確実に当接させることができる。
【0022】
また、L<dとしたとき、加圧補助部材2と熱伝達部3bとの間には空隙が発生する。この空隙によって加圧補助部材2と熱伝達部3bとの間の熱伝達が遮断されないようにするため、加圧補助部材2の表面積を面状発熱体1の表面積より大きく形成して、加圧補助部材2と面状発熱体1とが当接する面において加圧補助部材2が面状発熱体1から突出する突出領域Aを形成するようにして、その突出領域Aに熱伝導グリス19を塗布した。
【0023】
具体的には、図17に示すように、面状発熱体1の長手方向に対して略垂直な方向における幅をW1とし、加圧補助部材2の長手方向に対して略垂直な方向における幅をW2としたとき、W1<W2とし、加圧補助部材2の幅W2内において面状発熱体1と加圧補助部材2とを当接させるようにし、突出領域Aと熱伝達部3bとが対向するようにして、熱伝達部3bと加圧補助部材2との間の隙間を埋めるように熱伝導グリス19を加圧補助部材2に塗布した。また、図3に示すように、面状発熱体1の長手方向における幅、加圧補助部材2の長手方向における幅においても同様の関係を満たすようにした。
【0024】
熱伝導グリス19は、ベースオイルにシリコンオイルを用い、熱伝導性を向上させるために酸化亜鉛を添加したものを用いた。このようにすることで、加圧補助部材2と熱拡散部材3との部材間において、熱伝達が効率よく行われることになり、加圧補助部材2と熱拡散部材3との間で熱平衡状態になろうとする作用が働き、加圧補助部材2の温度が熱拡散部材3の温度と近くなるよう熱移動が行われる。これによって、加圧補助部材2の温度がいたずらに上昇することがなくなるため、温度過昇防止器15の温度がいたずらに上昇することを軽減することができる。更に、加圧補助部材2側に伝達された面状発熱体1の裏面Cからの熱を熱拡散部材3に伝達する効果も得られるため、面状発熱体1の効率よく熱拡散部材3に伝達することができ、そのため定着ベルト4が目標温度に達するまでの時間を低減する効果も得られる。
【0025】
図5は温度過昇防止器15の取り付け構造を示す斜視図で、温度過昇防止器15は取り付け部材13上に取り付けられて配線されており、取り付け部材13の両端部は弾性部材14に支持され、温度過昇防止器15は弾性部材14の付勢力により一定の荷重で加圧補助部材2の下面に当接させられている。
【0026】
図6は定着ローラ6と加圧ローラ7の構造を示す側面図である。同図(a)に示すように定着ローラ6と加圧ローラ7は芯金51と、この芯金51の表面を覆う弾性層52により構成されている。ここで芯金51は、一定の剛性を保つためにアルミニウムや、鉄、ステンレス等の金属パイプまたはシャフトが用いられ、弾性層52は、通常のシリコンゴムまたはスポンジ状のシリコンゴム、フッ素ゴム等の耐熱性の高いゴム材料が用いられる。また、同図(b)に示すように加圧ローラ7は芯金51の表面を覆う弾性層52上に離型層53を形成した構造としてもよい。
【0027】
定着ローラ6の一端には図示しないギアが設けられており、このギアが用紙搬送部41から伝達される回転力により駆動されることで、定着ローラ6は回転する。この定着ローラ6の回転力は摩擦力により定着ベルト4と加圧ローラ7に伝達され、これにより定着ベルト4と加圧ローラ7が従動し、図1における矢印方向にそれぞれ回転する。尚、用紙搬送部41からの回転力により回転駆動されるのは、加圧ローラ7でもよい。
【0028】
また、定着ローラ6は図示しないばね等の弾性部材により、加圧部材5は図1に示したコイルスプリング等の弾性部材8により、それぞれ定着ベルト4を介して加圧ローラ7に圧接するように付勢されていて、これにより加圧部材5が定着ベルト4を介して加圧ローラ7に当接する領域のニップ部と、定着ローラ6が定着ベルト4を介して加圧ローラ7に当接する領域のニップ部が連続的に形成されて1つのニップ部を構成している。
【0029】
図7は加圧部材5の構造を示す側面図であり、この図に示したように加圧部材5は、表層61と弾性層62と基材63により構成されている。表層61には通常のシリコン系樹脂、またはフッ素系樹脂等の耐熱性の高く表面摩擦抵抗が低い樹脂材料が用いられる。弾性層62は表層61と基材63の間に設けられる層で、弾性層52と同様に通常のシリコンゴム、またはスポンジ状のシリコンゴム、フッ素ゴム等の耐熱性の高いゴム材料が用いられる。また、基材63は一定の剛性を保つためにアルミニウムや、鉄、ステンレス等の金属材料が用いられる。このような構成による加圧部材5は、図1に示したコイルスプリング等の弾性部材8により定着ベルト4及び加圧ローラ7側へ押圧されることで、一定の圧力分布の領域を形成している。
【0030】
図8は定着ベルト4の構造を示す部分側面図である。定着ベルト4は、同図(a)に示すように薄い基体71上に、弾性層72を薄く形成したもので、この弾性層72上に離型層73を設けるものとしてもよい。
基体71は、ニッケル、ポリイミド、ステンレス等からなるものである場合は、強度と可撓性を両立させるため、厚さを30μm〜150μm程度とすることが好ましい。
【0031】
弾性層72としては耐熱性が高いシリコンゴムまたはフッ素樹脂が用いられるが、シリコンゴムを用いる場合は、低硬度と高熱伝導性を両立させるため、その厚さは50μm〜300μmにすることが好ましく、フッ素樹脂を用いる場合は、摩耗による減肉と高熱伝導性を両立させるため、その厚さは10μm〜50μmにすることが好ましい。
【0032】
離型層73は、弾性層72と同様に耐熱性が高く、また成型後の表面自由エネルギーが低い樹脂、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、FEP(パーフルオロエチレン−プロペンコポリマー)等の代表的なフッ素系樹脂を用いることができ、その厚さは10μm〜50μmであることが好ましい。
【0033】
また、定着ベルト4は、同図(b)に示すように薄い基体71上に離型層73を設けたものとしてもよい。
このような構成による定着ベルト4は、弾性層72または離型層73を外側にして熱拡散部材3、加圧部材5、定着ローラ6に巻き掛けられて張架されている。
【0034】
図9は熱拡散部材3を示す斜視図で、(a)は上面側、(b)は下面側の図である。本実施例における熱拡散部材3は、断面形状が円弧形で、下面側に長手方向全長に渡って上述した凹部が設けられ、全体がアルミニウムや銅等の熱伝導性が高くかつ加工性に優れた金属、またはこれらを主成分とする合金、あるいは耐熱性及び剛性の高い鉄や鉄系合金類、ステンレスなどで形成されている。この熱拡散部材3と面状発熱体1は特に接着することなしに、弾性部材8の付勢力により熱拡散部材3が面状発熱体1に押圧されることで一体化されている。
【0035】
図10は面状発熱体1の分解斜視図で、面状発熱体1には、セラミックヒータ、ステンレスヒータ等が用いられる。更に詳細に説明すると、面状発熱体1は、ステンレスヒータの場合、例えばSUS430等の基板90上に薄いガラス膜による電気絶縁層91を形成し、この電気絶縁層91上にニッケルクロム合金あるいは銀―パラジウム合金の粉末をスクリーン印刷によってペースト状に塗布して抵抗発熱体93を形成する。そして抵抗発熱体93の端部に、化学的に安定で電気的抵抗の低い金属や、タングステン等の高融点金属によって電極94を形成し、その上にガラスあるいはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、FEP(パーフルオロエチレン−プロペンコポリマー)等の代表的なフッ素系樹脂による保護膜95を形成して、これら電気絶縁層91、抵抗発熱体93、電極94を保護する構成としている。尚、保護膜95は基板90の下面側にも設けるようにしてもよい。
【0036】
上述した構成の作用について説明する。図1において定着ベルト4は熱拡散部材3に対して摺動しながら定着ローラ6により矢印方向に回転駆動されて走行し、面状発熱体1に電力が供給されることで接触部が加熱される。
温度検知手段18により定着ベルト4の表面(裏面)温度を検知し、これを基に図示しない制御部によって面状発熱体1の供給電力が制御され、定着ベルト4の表面を適正な温度に維持するが、この時の面状発熱体の温度の過昇を防ぐため、図4に示したように加圧補助部材2に温度過昇防止器15を当接させている。
【0037】
トナー11つまりトナー像が転写された用紙12は、定着ベルト4と加圧ローラ7との圧接部に形成されたニップ部を通して搬送され、その際トナー11と用紙12が、定着ベルト4により加熱され、加圧部材5と加圧ローラ7、定着ローラ6と加圧ローラ7により加圧されることで、トナー像が用紙に定着される。
また、上記は加圧補助部材2の厚さの範囲で規定したが、加圧補助部材2の熱容量をC2としたときの熱容量C2の範囲を11.75J/K以上、24.2J/K以下の範囲に設定することが好ましい。また、熱拡散部材3の熱容量をC1としたとき、熱容量C2を熱容量C1の30%以上、62%以下の熱容量とすることが好ましい。
【0038】
ここで、面状発熱体1は、図17に示すように表面Bと裏面Cがある。表面Bは抵抗発熱体93が配設されている側の面状発熱体1を構成する面であり、裏面Cは表面Bの反対面側であって面状発熱体1を構成する面である。ここで、表面Bは熱拡散部材3と当接し、裏面Cは加圧補助部材2と当接するよう構成した。抵抗発熱体93が配設される表面Bの方が裏面Cに対して熱上昇が速いためである。これによって、熱拡散部材3の温度をできるだけ速く高くし、加圧補助部材2への温度伝達をなるべく遅くする効果が得られる。熱は高いところから低いところへ伝達するため、加圧補助部材2の温度が早く上昇することによって、温度過昇防止器15の温度をいたずらに上昇させることを軽減することができる。
【0039】
図11は第1の実施例との比較のために示した定着装置(以下参考定着装置)の側面図で、この参考定着装置は図1に示した第1の実施例の定着装置のうちの加圧補助部材2を削除し、温度過昇防止器15を面状発熱体1に直接当接させたもので、その他は第1の実施例の定着装置と同様に構成されている。
【0040】
図12は参考定着装置における温度履歴を示す図であり、以下に示す条件のもとで、立ち上がり時間と、接触式の温度過昇防止器15の接触部の温度を測定したものである。ここで、立ち上がり時間とは、面状発熱体1への電力供給開始から、定着ベルト4の表面温度が目標とする定着温度160°Cに達するまでの時間である。
【0041】
「評価条件」
定着ベルト4: 内径45mm、基体はポリイミドで厚さは80μm、弾性層はシリコンゴムで厚さは150μm、離型層はPFAで厚さは30μm。
定着ベルト4の周速度: 60mm/s。
定着ローラ6: φ16、芯金はASKERでC硬度80度、弾性層はスポンジ状のシリコンゴムで厚さは1.5mm。
加圧ローラ7: φ36、芯金はASKERでC硬度80度、弾性層はスポンジ状のシリコンゴムで厚さは1.2mm。
【0042】
加圧部材5: 基材はアルミニウム等の金属材料、弾性層はJIS―A、硬度20度のシリコンゴムで厚さは1mm。
加圧部材5の加圧力:35kg。
面状発熱体1: ステンレスヒータで、幅12mm、1200W。
熱拡散部材3: 厚さ1mmのアルミニウム板で、熱容量C1=39.1J/K
ニップ部: 幅(全長)13mm。
【0043】
図12から分かるように、参考定着装置の常温からの立ち上がり時間は24秒程度であるが、そのとき面状発熱体1に当接している温度過昇防止器15の温度はオーバーシュートによりほぼ310℃に達している。一般に温度過昇防止器15の動作上限温度は27℃であることから、参考定着装置の構成では温度過昇防止器15を面状発熱体1に当接させて使用することは不可能である。
【0044】
本実施例の定着装置45は、面状発熱体1と温度過昇防止器15の間に加圧補助部材2を介在させた構造としており、温度過昇防止器15は弾性部材14の付勢力により加圧補助部材2の下面に当接させたものとなっている。このような構成による本実施例の定着装置45の使用条件を得るための評価を行った。
【0045】
「評価条件」
加圧補助部材2:アルミニウム板で、幅は16mm、長さは326mm、厚さは1mm(熱容量C2a=11.7J/K)、1.5mm(熱容量C2b=18J/K)、2mm(熱容量C2c=24.2J/K)の3種類とした。
この他の評価条件は参考定着装置の場合と同様である。
【0046】
本実施例の定着装置45においては厚さの異なる3種類の加圧補助部材2を用い、参考定着装置と同様に常温からの立ち上がり時間の温度履歴を測定した。図13はこの3種類の加圧補助部材2を用いた場合の温度検出手段18で検出した定着ベルト4の温度が目標温度である160℃に達したときのそれぞれの温度過昇防止器15の最高到達温度を示す図、図14はそれぞれの温度過昇防止器15の立ち上がり時間を示す図である。
【0047】
図13に示したように、加圧補助部材2は厚さを厚くすることで熱容量が大きくなり、それに伴って温度過昇防止器15が当接している位置の温度は低くなる。ここで、温度過昇防止器15の動作上限温度及びマージンを考慮すると、加圧補助部材2の厚さは1mm以上とすることが好ましい。
但し、図14に示すように加圧補助部材2の厚さを厚くすることで熱容量が大きくなるに従って立ち上がり時間は遅くなる。しかしながら、加圧補助部材2の厚さが2mmの場合でも、立ち上がり時間は24.3秒と、参考定着装置と比べても大幅な遅れはみられなかった。
【0048】
このことは、本実施例の定着装置45では、加圧補助部材2の分の熱容量が増えているが、面状発熱体1により加熱された加圧補助部材2の温度が熱拡散部材3の温度より早く上昇し、その際、加圧補助部材2から熱拡散部材3へ熱移動が発生して、結果的に定着ベルト4へ投入される熱容量が増加したためと推測される。従って、加圧補助部材2と熱拡散部材3とが接触していることも立ち上がり時間の短縮に効果があるものと云える。よって参考定着装置の立ち上がり時間と同等な条件としては、加圧補助部材2の厚さは2mm以下とすればよいことになる。
【0049】
以上の結果により、参考定着装置における立ち上がり時間を確保しつつ、温度過昇防止器15を加圧補助部材2に当接させて使用するには、加圧補助部材2の厚さを1mm以上、2mm以下とすればよい。
熱拡散部材3の熱容量をC1、加圧補助部材2の熱容量をC2、定着ベルト4の最高到達温度をT1max、温度過昇防止器15の最高到達温度をT2maxとしたとき、
T2max≧(C1×T1max)/(C2×α) …(1)
を満たすことで良好な効果が得られる。
【0050】
ここで、αは係数であり、本実施例においては定着ベルト4の最高到達温度をT1max=164℃、T2max=255℃、熱容量C1=39.1J/Kを固定の設計値として、加圧補助部材2の厚さを0.5mmずつ変化させることで熱容量C2を調整し、T2maxが270℃を超える加圧補助部材2の厚さが0.5mmであったため、加圧補助部材2の厚さ1.0mm(熱容量C2=11.7)を境界値として、下記数式に上記設計値を代入して境界値に対応するαを算出した。
【0051】
T2max≧(C1×T1max)/(C2×α)
α=2.14
式(1)にαを代入し、式(2)が得られる。
T2max≧(C1×T1max)/(C2×2.14) …(2)
【0052】
本実施例に示すように、面状発熱体1を加圧補助部材2によって熱拡散部材3に押し当てて、加圧補助部材2の面状発熱体1との当接面と反対側に温度過昇防止器15を当接させる構成においては、式(2)を満たすように設定することで、温度過昇防止器15の最高到達温度が所定値に達する前に定着ベルト4の温度を所定温度に達するようにすることができる。
【0053】
以上説明したように、本実施例によれば面状発熱体1と温度過昇防止器15との間に加圧補助部材2を設けることにより、温度過昇防止器15が不要に温度上昇することを低減することができる。
また、加圧補助部材2の厚さを1mm以上、2mm以下の範囲とすることで、所定の立ち上がり時間を確保しつつ温度過昇防止器15を動作上限温度範囲内に保つことができる。
【実施例2】
【0054】
図15は本発明の第2の実施例を示す主要部材の側面図で、この第2の実施例は第1の実施例における加圧補助部材2に代えて加圧補助部材16を用いるもので、本実施例の加圧補助部材16は、加圧補助部材2と同様にアルミニウム、銅等の熱伝導性が良く加工性に優れた金属、またはこれらを主成分とする合金、あるいは耐熱性及び剛性の高い鉄、鉄系の合金類、ステンレス等で形成されている。
【0055】
本実施例において、熱拡散部材3の内面に設置された面状発熱体1及び加圧補助部材16は、支持部材9に固定された弾性部材8により一定荷重にて押圧され、熱拡散部材3と共に定着ベルト4を張架している。
尚、この他の部分は上述した第1の実施例と同様である。
【0056】
加圧補助部材16は面状発熱体1と共にコイルスプリングによる複数の弾性部材14で押圧されており、そのため、外力による捩れや熱による反り等の変形が発生するおそれがある。加圧補助部材16に変形が発生すると、面状発熱体1、加圧補助部材16、熱拡散部材3の長手方向における接触状態に変化が生じる。それにより部材長手方向に温度ムラが発生し、図1に示すトナー11及び用紙12に接触して、トナー11によるトナー像を用紙12に定着させる定着ベルト4の表面温度にもムラが生じることになり、この現象は最終的にトナー像の光沢ムラの発生原因となる。
【0057】
そのため、この第2の実施例では加圧補助部材16を図16に示すような形状とする。図16は第2の実施例における加圧補助部材16の斜視図で、この図に示したように厚さが均一な平板状の加圧補助部材16の前後の縁部を同方向(上方)に折り曲げてコの字形に形成することにより、外力による変形や熱による反りを防ぐようにしたもので、このようにコの字形に形成した加圧補助部材16の内側に面状発熱体1を配置し、そしてこの加圧補助部材16の折り曲げた縁部分が熱拡散部材3の凹部に入り込んで熱拡散部材3に接触するようにしている。
また、本実施例では、立ち上がり時間及び温度過昇防止器15の使用範囲を確保するため、加圧補助部材16の熱容量を12.5J/K以上、25J/K以下の範囲とする。
【0058】
このようにした第2の実施例によれば、第1の実施例と同様の効果が得られる他、加圧補助部材16をコの字形に形成したことで、外力による変形や熱による反りを防ぐことができようにしているため、長手方向における熱伝導を均一にすることができ、それにより定着ベルト4における表面温度のムラの発生を防止できるので、光沢ムラのないトナー像の定着を実現できるという効果が得られる。
尚、上述した実施例は、画像形成装置を電子写真プリンタとして、それに備えられる定着装置について説明したが、MFPや、ファクシミリ、複写装置等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 面状発熱体
2 加圧補助部材
3 熱拡散部材
4 定着ベルト
5 加圧部材
6 定着ローラ
7 加圧ローラ
8 弾性部材
9 支持部材
10 弾性部材
11 トナー
12 用紙
13 取り付け部材
14 弾性部材
15 温度過昇防止器
16 加圧補助部材
40 用紙収納部
41 用紙搬送部
42 LEDヘッド
43 トナー像形成部
44 転写部
45 定着装置
51 芯金
52 弾性層
53 離型層
61 表層
62 弾性層
63 基材
71 基体
72 弾性層
73 離型層
90 基板
91 電気絶縁層
93 抵抗発熱体
94 電極
95 保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体へ熱を供給する無端ベルトと、
前記無端ベルトを張架する熱拡散部材と、
前記熱拡散部材を加熱する面状発熱体と、
前記面状発熱体に対抗して配置される温度過昇防止器と、
前記面状発熱体と温度過昇防止器の間に配置された加圧補助部材とを有することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記熱拡散部材は、前記面状発熱体と当接する凹部を有し、
前記凹部は、
前記熱拡散部材と当接する当接部と、
前記加圧補助部材と対向する熱伝達部を有することを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項3】
前記加圧補助部材の表面積は前記面状発熱体の表面積より大きく形成され、
前記加圧補助部材の前記面状発熱体より突出した領域が前記熱伝達部と対抗していることを特徴とする請求項2記載の定着装置。
【請求項4】
前記当接部と前記熱伝達部との距離は、前記面状発熱体の厚さよりも小さいことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記熱伝達部と前記加圧補助部材との間に熱伝導グリスを塗布したことを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項6】
前記加圧補助部材は、熱容量が11.75J/K以上、24.2J/K以下の範囲としたアルミニウム板であることを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項7】
前記加圧補助部材は、銅板としたことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項8】
前記加圧補助部材は、厚さが均一な平板としたことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項9】
前記加圧補助部材は、平板の両縁部を同方向に曲げてコの字形に形成したことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項10】
前記加圧補助部材は、縁部を前記熱拡散部材に接触させて配置したことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項11】
前記温度過昇防止器は、前記加圧補助部材に当接させて配置した
ことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項12】
定着装置を備えた画像形成装置において、
前記定着装置は、
媒体へ熱を供給する無端ベルトと、
前記無端ベルトを張架する熱拡散部材と、
前記熱拡散部材を加熱する面状発熱体と、
前記面状発熱体に対抗して配置される温度過昇防止器と、
前記面状発熱体と温度過昇防止器の間に配置された加圧補助部材とを有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−73121(P2013−73121A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213544(P2011−213544)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】